(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】喫煙材の加熱
(51)【国際特許分類】
A24F 40/51 20200101AFI20221213BHJP
H05B 3/44 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
A24F40/51
H05B3/44
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019220056
(22)【出願日】2019-12-05
(62)【分割の表示】P 2017172628の分割
【原出願日】2014-03-19
【審査請求日】2019-12-20
(32)【優先日】2013-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519138265
【氏名又は名称】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100094318
【氏名又は名称】山田 行一
(72)【発明者】
【氏名】サリーム、フォズィア
【審査官】竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05468936(US,A)
【文献】国際公開第2013/034459(WO,A1)
【文献】特開2003-293869(JP,A)
【文献】特開2007-080892(JP,A)
【文献】国際公開第2011/063970(WO,A1)
【文献】特開平07-192906(JP,A)
【文献】特開平04-324276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00 - 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙材を加熱するために配置されたヒーターを含む器具であって、ヒーターは、支持体と、支持体の内部に位置する少なくとも1つの加熱エレメントとを含み、支持体を加熱して、支持体が吸引のための喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるようにされており、前記ヒーターは、当該器具のコントローラーに制御信号又は測定信号を与えるために前記支持体の内部に位置する少なくとも1つの電気回路を含み、前記少なくとも1つの電気回路は、温度測定回路を含
み、
前記少なくとも1つの加熱エレメントは、プリント加熱エレメントであり、前記少なくとも1つの電気回路は、プリント電気回路であり、
前記温度測定回路は、前記少なくとも1つの加熱エレメント上に、隣接して又は前記少なくとも1つの加熱エレメントの下にプリントされる、
器具。
【請求項2】
前記加熱エレメントの熱膨張係数は支持体の熱膨張係数に実質的に等しいことを特徴とする請求項1記載の器具。
【請求項3】
前記加熱エレメントおよび支持体は化学的に結合した構造体を形成するために焼結されていることを特徴とする請求項1又は2項記載の器具。
【請求項4】
前記支持体はセラミック材を含み、前記加熱エレメントは電気抵抗線材を含むことを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の器具。
【請求項5】
前記支持体は、加熱している間喫煙材体を含むように構成された喫煙材加熱チェンバーに近接していることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の器具。
【請求項6】
前記支持体の内部に層状に配置された複数の加熱エレメントを含むことを特徴とする請 求項1乃至5いずれか1項記載の器具。
【請求項7】
前記加熱エレメントの層は、支持体を介して加熱エレメントビアによって相互接続されていることを特徴とする請求項6記載の器具。
【請求項8】
喫煙材を少なくとも120℃の喫煙材揮発温度に加熱するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項記載の器具。
【請求項9】
喫煙材を120℃~250℃の喫煙材揮発温度に加熱するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至8いずれか1項記載の器具。
【請求項10】
喫煙材を130℃~180℃の喫煙材揮発温度に加熱するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至9いずれか1項記載の器具。
【請求項11】
温度測定回路は、抵抗温度検出器を含むことを特徴とする請求項
1乃至10いずれか1項記載の器具。
【請求項12】
支持体と、該支持体を加熱して支持体が吸引のための少なくとも1つの喫煙材の成分を揮発させるようにする支持体の内部に位置する少なくとも1つの加熱エレメントとを含むヒーターの使用であり、前記ヒーターは、当該器具のコントローラーに制御信号又は測定信号を与えるために前記支持体の内部に位置する少なくとも1つの電気回路を含み、前記 少なくとも1つの電気回路は、温度測定回路を含
み、
前記少なくとも1つの加熱エレメントは、プリント加熱エレメントであり、前記少なくとも1つの電気回路は、プリント電気回路であり、
前記温度測定回路は、前記少なくとも1つの加熱エレメント上に、隣接して又は前記少なくとも1つの加熱エレメントの下にプリントされる、
ヒーターの使用。
【請求項13】
支持体の内部に位置する少なくとも1つの加熱エレメントを使用して当該支持体を喫煙材揮発温度に加熱することと、加熱された支持体が吸引のための少なくとも1つの喫煙材の成分を揮発させるようにすることとを含む喫煙材の加熱方法であって、少なくとも1つの電気回路が、コントローラーに制御信号又は測定信号を与えるために前記支持体の内部に位置し、前記少なくとも1つの電気回路は、温度測定回路を含
み、
前記少なくとも1つの加熱エレメントは、プリント加熱エレメントであり、前記少なくとも1つの電気回路は、プリント電気回路であり、
前記温度測定回路は、前記少なくも1つの加熱エレメント上に、隣接して又は前記少なくとも1つの加熱エレメントの下にプリントされる、
喫煙材の加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喫煙材を加熱することに関する。
【背景技術】
【0002】
紙巻きタバコおよびシガーなどの喫煙品は、使用の際タバコを燃やしてタバコ煙を発生させる。タバコ煙を発生させずにいくつかの化合物を放出する製品を製造することによってこれら喫煙品の代替え品を提供しようとする試みがなされている。このような製品の例としてはタバコを熱するが燃やさずに化合物を放出する、いわゆる発熱するが燃焼しない(heat-not-burn)喫煙品というものがある。
【発明の概要】
【0003】
本発明では、支持体と、喫煙材揮発温度に支持体を加熱して、吸引のための少なくとも1つの喫煙材の成分を支持体が揮発させるように配された少なくとも1つのプリント加熱エレメントとを含む喫煙材加熱器具が提供される。
【0004】
加熱エレメントは少なくとも部分的に支持体の内部に位置してもよい。
【0005】
加熱エレメントの熱膨張係数は支持体の熱膨張係数に実質的に等しくてもよい。
【0006】
加熱エレメントは支持体に化学的に結合させてもよい。
【0007】
加熱エレメントと支持体は、単独の焼結された構造体であってもよい。
【0008】
加熱エレメントは支持体内の電気抵抗線であってもよい。
【0009】
支持体はセラミック材を含んでもよい。
【0010】
支持体は、加熱している間、喫煙材体を含むように構成された喫煙材加熱チェンバーに近接してもよい。
【0011】
本発明の器具は、支持体中で層状に配置された複数の加熱エレメントを含んでもよい。
【0012】
加熱エレメントの層は、支持体を介して加熱エレメントビアによって相互接続されてもよい。
【0013】
本発明では吸入のための喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるために喫煙材を加熱するように構成されたヒーターを含む器具が提供され、ヒーターは実質的に熱膨張係数が等しい支持体と加熱エレメントとを含む。
【0014】
加熱エレメントは支持体にプリントされたものであってもよい。
【0015】
加熱エレメントは、隣接する喫煙材加熱チェンバー内に位置する喫煙材の少なくとも1つの成分を支持体が揮発させるのに充分な温度に支持体を加熱するために配置されてもよい。
【0016】
加熱エレメントは少なくとも部分的に支持体の内部に位置してもよい。
【0017】
加熱エレメントは支持体に化学的に結合させてもよい。
【0018】
ヒーターは加熱エレメントと支持体とを含む焼結された構造体であってもよい。
【0019】
加熱エレメントは支持体内の電気抵抗線であってもよく、および/または支持体はセラミック材を含んでもよい。
【0020】
本発明の器具は、支持体の内部に層状に配置された複数の加熱エレメントを含んでもよい。
【0021】
加熱エレメントの層は支持体を介して加熱エレメントビアによって相互接続されてもよい。
【0022】
本発明では吸入のための喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるために喫煙材を加熱するように構成されたヒーターを含む器具が提供され、ヒーターはセラミック材と電気抵抗加熱エレメントからなる多層構造を含む。
【0023】
加熱エレメントはセラミック材内の電気抵抗線であってもよい。
【0024】
加熱エレメントは焼結された構造体中でセラミック材に化学的に結合させてもよい。
【0025】
セラミック材の熱膨張係数は、加熱エレメントの熱膨張係数に実質的に等しくてもよい。
【0026】
加熱エレメントはタングステンを含んでもよく、セラミック材は窒化アルミニウムセラミックを含んでもよい。
【0027】
加熱エレメントは支持体にプリントされたものであってもよい。
【0028】
加熱エレメントはセラミック材に隣接する加熱チェンバー内に位置する喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるのに充分な温度にセラミック材を加熱するために配置されてもよい。
【0029】
加熱エレメントはセラミック材の内部に位置してもよい。
【0030】
加熱エレメントの層はセラミック材を介して加熱エレメントビアによって相互接続されてもよい。
【0031】
本発明では喫煙材を加熱するために配置されたヒーターを含む器具が提供され、ヒーターは、支持体と、支持体の内部に位置する少なくとも1つの加熱エレメントとを含み、支持体を加熱して、支持体が吸引のための喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるようにする。
【0032】
ヒーターは熱膨張が一致した構造体を含んでもよい。
【0033】
加熱エレメントの熱膨張係数は支持体の熱膨張係数に実質的に等しくてもよい。
【0034】
加熱エレメントおよび支持体は化学的に結合した構造体を形成するために焼結させてもよい。
【0035】
支持体はセラミック材を含んでもよく、加熱エレメントは電気抵抗線材を含んでもよい。
【0036】
支持体は、加熱している間、喫煙材体を含むように構成された喫煙材加熱チェンバーに近接してもよい。
【0037】
本発明の器具は、支持体の内部に層状に配置された複数の加熱エレメントを含んでもよい。
【0038】
加熱エレメントの層は、支持体を介して加熱エレメントビアによって相互接続されてもよい。
【0039】
本発明の器具は、喫煙材を少なくとも120℃の喫煙材揮発温度に加熱するように構成してもよい。
【0040】
本発明の器具は、喫煙材を120℃~250℃の喫煙材揮発温度に加熱するように構成してもよい。
【0041】
本発明の器具は、喫煙材を130℃~180℃の喫煙材揮発温度に加熱するように構成してもよい。
【0042】
本発明は、支持体を喫煙材揮発温度に加熱し、これにより支持体が吸引のための少なくとも1つの喫煙材の成分を揮発させるようにする少なくとも1つのプリント加熱エレメントの使用を容易にする。
【0043】
本発明は、喫煙材を加熱して吸引のための喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるために実質的に熱膨張係数が等しい支持体と加熱エレメントとを含むヒーターの使用を容易にする。
【0044】
本発明は、喫煙材を加熱して吸引のための喫煙材の少なくとも1つの成分を揮発させるためにセラミック材と電気抵抗加熱エレメントとからなる多層構造を含むヒーターの使用を容易にする。
【0045】
本発明は、支持体を加熱して支持体が吸引のための少なくとも1つの喫煙材の成分を揮発させるようにする支持体と支持体の内部に位置する少なくとも1つの加熱エレメントとを含むヒーターの使用を容易にする。
【0046】
本発明では喫煙材の加熱方法が提供され、この方法は支持体を喫煙材揮発温度に支持体を加熱するために配置された少なくとも1つのプリント加熱エレメントを使用して加熱すること、加熱された支持体が吸引のための少なくとも1つの喫煙材の成分を揮発させるようにすることを含む。
【0047】
本発明では喫煙材の加熱方法が提供され、この方法は支持体を喫煙材揮発温度に支持体の内部に位置する少なくとも1つの加熱エレメントを使用して含む加熱すること、加熱された支持体が吸引のための少なくとも1つの喫煙材の成分を揮発させるようにすることを含む。
【0048】
あくまで例示を目的として、本発明の実施態様を添付図面を参照し、以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】層の間をビアによって相互接続された支持体と加熱エレメントとを含む喫煙材ヒーターの層の略図である。
【
図2】芳香化合物および/またはニコチンを喫煙材から放出させるために喫煙材を加熱するように構成された器具の略式断面図である。
【
図3】芳香化合物および/またはニコチンを喫煙材から放出させるために喫煙材を加熱するように構成された器具の一部を切り欠いて示した斜視図である。
【
図4】喫煙材が半径方向に延びた加熱セクションに分割される長尺のヒーターの周囲に供されている喫煙材を加熱するように構成された器具の一部を切り欠いて示した斜視図である。
【
図5】喫煙材が半径方向に延びた加熱セクションに分割される長尺のヒーターの周囲に供されている喫煙材を加熱するように構成された器具の一部を切り欠いて示した分解図である。
【
図6】パフ中に加熱領域を作動させ、加熱チェンバーを開閉する方法を示すフロー図である。
【
図7】喫煙材を加熱するように構成された器具を流れる気体流の略図である。
【
図8】ヒーターを使用して喫煙材を加熱するために使用される加熱パターンを示すグラフである。
【
図9】加熱中に喫煙材を圧縮するように構成された喫煙材コンプレッサーの略図である。
【
図10】喫煙中に喫煙材を膨張させるように構成された喫煙材膨張装置の略図である。
【
図11】パフのために喫煙材を加熱し、膨張させる間に喫煙材を圧縮する方法を示すフロー図である。
【
図12】熱損失から喫煙材を断熱するように構成された真空断熱セクションの略式断面図である。
【
図13】熱損失から喫煙材を断熱するように構成された真空断熱セクションの別の略式断面図である。
【
図14】高温断熱壁から低温断熱壁への間接経路に続く熱抵抗性の熱の逃げ道の略式断面図である。
【
図15】喫煙材体に対して可動である熱シールドと透明窓の略式断面図であり、選択的に熱エネルギーを窓を介して喫煙材の異なるセクションに伝えることができる。
【
図16】加熱チェンバーがチェックバルブによって密閉されている喫煙材を加熱するように構成された器具の一部の略式断面図である。
【
図17】喫煙材を加熱するように構成された器具を断熱するように構成された深真空のセクションの一部の略式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本明細書中で使用する「喫煙材」なる用語は、加熱した際に揮発した成分を供するあらゆる材料を含み、そしてあらゆるタバコ含有材を含み、例えばタバコ、タバコ派生物、膨張タバコ、再生タバコまたはタバコ代替え品の内の1つ以上を含んでもよい。
【0051】
喫煙材を加熱するための器具1は、エネルギー源2、ヒーター3および加熱チェンバー4を含む。エネルギー源2は、リチウムイオンバッテリー、ニッケルバッテリー、アルカリバッテリーおよび/またはそれに類似するものなどのバッテリーを含んでもよく、ヒーター3に電気的に結合され、必要に応じて電気エネルギーをヒーター3に供給する。当然のことながらこのバッテリーに加えてまたはこれとは別にエネルギー源2は、1つ以上の燃料電池および/または別のバッテリーではない電気源などの他の種類のエネルギー源2を含むことも可能である。加熱チェンバー4は、喫煙材5を収容するように構成されており、喫煙材5を加熱チェンバー4中で加熱することができる。例えば、加熱チェンバー4はヒーター3に隣接して位置してもよく、ヒーター3からの熱エネルギーがその中の喫煙
材5を加熱する。ヒーター3からの熱が喫煙材5を加熱し、喫煙材5を燃焼させずに喫煙材の芳香化合物およびニコチンを揮発させる。喫煙材5はタバコブレンドを含んでもよい。マウスピース6が設けられており、これを介して器具1のユーザーは、器具1の使用の際に揮発した化合物を吸引することができる。
【0052】
ハウジング7は、エネルギー源2およびヒーター3などの装置1の構成部品を含んでもよい。
図2に略式に示すようにハウジング7はほぼ円筒状の管であってもよく、エネルギー源2がその第1端部8の方に位置し、ヒーター3および加熱チェンバー4がそれと反対の第2端部9の方に位置している。エネルギー源3とヒーター3は、ハウジング7の長手方向軸に沿って延びてもよい。例えば
図2に示すようにエネルギー源2およびヒーター3は、エネルギー源2の1つの端面がヒーター3の1つの端面の方に向くように端部と端部が面した構成でハウジング7の中央長手軸に沿って位置合わせすることができる。マウスピース6は、加熱チェンバー4と喫煙材5に隣接してハウジング7の第2端部9に位置してもよい。
【0053】
ハウジング7の長さは約130mmであってもよい。エネルギー源の長さは、一例として約59mmであってもよい。ヒーター3および加熱領域4の長さは、約50mmであってもよい。加熱チェンバー4の深さ、例えば直径は約5mm~約15mm、例えば約8mm~約10mmであってもよい。エネルギー源2の直径は、約10.0mm~約15.0mm、例えば14.6mmであってもよい。ハウジング7の直径は、約11mm~約18mmであってもよい。例えば、ハウジングの第1端部8の直径は、18mmであってもよく、ハウジングの第2端部9でのマウスピース6の直径は15mmであってもよい。また上記のもの以外の寸法のものも使用可能である。
【0054】
ハウジング7は、揮発した喫煙材化合物を器具1のマウスピース6からユーザーが吸引することができるように器具1の使用の際にユーザーが掴むのに適したものである。
【0055】
エネルギー源2とヒーター3の間に断熱部を設けて、一方から他方へ熱が直接伝わらないようにしてもよい。
【0056】
ヒーター3はプリントヒーター3であってもよい。例えば、ヒーター3は支持体3aと、支持体3a上または内部に印刷されてもよい1つ以上の加熱エレメント3bとを含んでもよい。以下に説明するように加熱エレメント3bは、喫煙材5を加熱している間、支持体3aの温度が加熱エレメント3bの温度と実質的に合致するように急速で支持体3aを加熱するように構成してもよい。
【0057】
支持体3aは窒化アルミニウムセラミックなどのセラミック材であってもよく、加熱エレメント3bはエレメント3b内を流れる電流によって加熱される電気抵抗線エレメント3bであってもよい。例えば、加熱エレメント3bはタングステンなどの電気抵抗金属であってもよい。加熱エレメント3b内の電流は、ヒーター3に電気的に結合したエネルギー源2によって供給される起電力によって生じさせてもよい。
【0058】
加熱エレメント3bは支持体3aを加熱するために支持体3内部または上に配置される。上述したように支持体3a上または内部に加熱エレメント3bが配置されることによって加熱エレメント3bとほぼ同じ温度に支持体3aを加熱するようになっている。
【0059】
支持体3aは加熱エレメント3bによって喫煙材5の揮発温度に加熱され、加熱された支持体3aからの熱がマウスピース6を介して吸引するための喫煙材5の成分を揮発させてもよい。従って、加熱領域4の喫煙材5は加熱エレメント3bと加熱された支持体3aの両方によって加熱される。加熱中に支持体3aの温度が上昇する速度は、加熱エレメン
ト3bの温度が上昇する速度と実質的に同じであってもよい。従って、加熱エレメント3bと支持体3aの温度は喫煙材5を加熱している間ほぼ等しくてもよい。
【0060】
ヒーター3は、ヒーター3の周囲面が主に加熱された支持体3aの周囲面となるように配置され、従って喫煙材5は、加熱エレメント3bによって直接加熱されるのではなく、加熱された支持体3aから放出される熱によって主に加熱されるようにしてもよい。例えば、以下に説明し、
図1に略式に示すように加熱エレメント3bは、支持体3aの内部に主にまたは全体的に位置してもよく、支持体3aの層によって隔てられる加熱エレメント3bからなる複数の個別の加熱層であってもよい。
【0061】
加熱エレメント3bの熱膨張係数は支持体3aの熱膨張係数に合致してもよい。特に加熱エレメント3bの熱膨張係数の値は、支持体3aの熱膨張係数の値に実質的に等しくてもよい。加熱エレメント3bおよび支持体3aは、従って膨張が合致したヒーター構造体3を共に形成してもよい。
【0062】
支持体3aと加熱エレメント3bの熱膨張係数が合致しているということは、加熱エレメント3bの熱膨張が支持体3aの対応する膨張に合致するということを意味する。同様に加熱エレメント3bの熱収縮は支持体3aの対応する収縮に合致する。構造体の膨張が合致するという特性は、ヒーター3全体として加熱/冷却中にヒーター構造全体の同じ速度で同じ量で実質的に膨張/収縮するということを意味する。ヒーター構造体3にかかる膨張および収縮応力は小さく、ヒーターをヒーター構造体3に顕著な材料応力を及ぼすことなく、迅速、顕著かつ常習的な温度遷移を経るようにすることができる。
【0063】
支持体3aおよび加熱エレメント3bはヒーター構造体3内で化学的に結合させてもよい。例えば、支持体3aと加熱エレメント3b間の化学結合を支持体3aと加熱エレメント3bを熱を加えることによって融着させて中実のヒーター構造体3を製する焼結工程中に形成してもよい。
【0064】
より具体的には最初に液状の加熱エレメント材3bを支持体材料3aの1つ以上の表面に塗布し、加熱エレメント材3bを有する支持体3aを層状にし、層状の集合体を焼結して、結合したヒーター構造体3を形成することによって化学的に結合したヒーター構造体3を製造してもよい。これを
図1に略式に示している。
【0065】
液状の加熱エレメント材3bの塗布は、例えば液状材料3bを支持体材料3aにプリントすることによって行うことができる。支持体3aへの液状加熱エレメント3bの塗布は、支持体3a上の加熱エレメント材3bの位置において例えば数ミクロメートルまたは数ナノメートル程度の低い許容差が得られるように極めて正確に行って、これにより支持体3aの極めて特定の所望の領域に加熱エレメント3bを形成するようにしてもよい。好適なプリント方法は、インク状の液体3bを支持体材料3a上に印刷するスクリーンプリンターを使用するものである。
【0066】
支持体材料3aは、焼結中の化学結合の形成前に層状のヒーター構造体3を形成しやすくする好適なバインダーおよび/または可塑剤を含んでもよい。加えてまたはそれとは別に液状の加熱エレメント材3bは、好適なバインダーおよび/または可塑剤を含んでもよい。これらは支持体材料3aに含まれるバインダーおよび/または可塑剤と同じ組成であってもよい。
【0067】
加熱エレメント材3bが塗布される支持体材料3aは、セラミックテープからなる予備焼結セクションなどの支持体3aの予備焼結層を含んでもよく、これらは1枚1枚積み重なって支持体3aと加熱エレメント材3bの両方を含む層状構造を形成する。1つ以上の
ビア(vias)を支持体材料3aの層に形成して、液状加熱材3bがビアを満たし、究極的にはヒーター3において加熱エレメントの層3b間の相互接続を形成するようにしてもよい。特に加熱エレメント3bの各層は、支持体3aのビアを通過する加熱エレメント3bのセクションによって加熱エレメント3bの1つ以上の他の個別の層に相互接続されてもよい。
【0068】
ビアはあらゆる好適な方法で形成してもよい。例えば、ビアは支持体3aの層がヒーター構造体3内で重ねられて層状にされる前に支持体3aの個々の層に穴を空けることによって形成してもよい。支持体3aの層の穴は、層状構造において位置合わせされ、複数の加熱エレメント3bの層間の相互接続が焼結中に生じるようにしてもよい。層3bの間に形成されたビアは、三次元形状を含むあらゆる好適な形状のものであってもよい。
【0069】
必要に応じて複数の電気回路を支持体3aにプリントして器具1のコントローラー12へまたはコントローラー12から制御信号または測定信号を供するようにしてもよい。例えば、1つ以上の抵抗温度検出器(RTD)を組み込んだ温度測定回路をヒーターエレメント3b上に、エレメントに隣接してまたはエレメントの下にまたは支持体3aのどこかにプリントして、ヒーター3の温度をコントローラー12によって監視し、調整して喫煙材5に所望の揮発または予備揮発温度が得られるようにしてもよい。
【0070】
支持体層3aおよび加熱エレメント材3bからなる集合体が焼結されてヒーター3の化学結合および粘着性が得られる前に、集合体から上記のバインダーおよび/または可塑剤を除去してもよい。化学結合および合致した熱膨張係数により頑丈なヒーター構造体3が得られ、これは加熱領域4の新たに装填された喫煙材5を加熱するおよび揮発させるために繰り返し再利用可能である。
【0071】
ヒーター3は上述の層化技術を使用してあらゆる好適な形状に製造することができる。例えば、ヒーター3は喫煙材加熱領域4の周囲に位置する実質的に中空の円筒であってもよく、これにより熱がヒーター3によって半径方向内方に発せられる。この一例は
図2に関連して説明されている。これとは別に喫煙材加熱領域4がヒーター3の周囲に位置してもよい。一例としてはヒーター3が径方向外方に加熱領域4内に熱を発する同軸構造が挙げられるが、以下に説明することから明らかなように他の形状も可能である。
【0072】
膨張が合致し、化学的に結合したヒーター構造体3の具体例は、加熱支持体3aが予備焼結された窒化アルミニウムセラミックテープを含み、加熱エレメント材3bがセラミックテープ3aにスクリーン印刷されるタングステン含有インクを 含むものである。セラミックテープ3aに加熱エレメント材3bがプリントされ、穴が空けられて上述のビアが形成されると、セラミックテープ3aは重ねられ、テープ3aのビアによって互いに連結された加熱エレメント材3bの内部層を含む構造体を形成する。この集合体は、その後焼結されて粘着性のある化学結合したヒーター3を形成する。ヒーター3の作動中、窒化アルミニウム支持体3aおよびタングステン加熱エレメント3bは、約4.5ppm/℃の割合で膨張および収縮し、従って構造3の特定の部分に全く応力を加えることなくヒーター構造体3全体として膨張、収縮する。
【0073】
ヒーター3の厚さは2mm未満または1mm未満など薄く、他の種類のヒーターを使用した場合と比較して器具1の全体寸法を小さくすることに貢献できる。例えば、ヒーター3の厚さは、約0.3mm~約1.0mmなど約0.1mm~2.0mmであってもよいが、6.5mm以下の厚いヒーター3も同じように可能である。
【0074】
ヒーター3は喫煙材5を所望の温度範囲に加熱するおよび維持するために広い範囲の出力に亘って操作可能である。例えば、ヒーター3の出力は0~約2000watts/i
n2の範囲であってもよく、喫煙材5の温度が所望の温度範囲に維持され、調整されるように器具1のコントローラー12によって制御可能にしてもよい。コントローラー12は、上述の温度測定回路を使用してヒーター3の周囲面および/または喫煙材5の内側でのヒーター3の内側の温度の測定に基づいてヒーター3の出力を調節してもよい。
【0075】
コントローラー12はヒーター3またはヒーター3の個々の領域10を所定の時間で予め設定した温度間で循環させてもよく、または加熱様式に応じてヒーター3および/またはヒーター3の個々の領域10の温度を変えてもよい。コントローラー12および好適な加熱様式のいくつかの例を以下により詳しく説明する。ヒーター3は、嵩が小さく、従ってこれを使用することによって装置1全体の嵩を小さくすることに役立つ。
【0076】
図2に示し、上記で大まかに触れたようにヒーター3は別々の加熱領域10を複数備えてもよい。複数の加熱領域10は互いに独立して作動可能で、異なる領域10を異なる時間に起動して喫煙材5を加熱することができるようになっていてもよい。これはヒーター3の特定の領域10に位置する加熱エレメント3bを異なる時間に起動させることによって行ってもよい。加熱領域10はヒーター3の中にどのような幾何学的な配置で配置されてもよい。しかしながら、
図2に示す具体例では、加熱領域10は、その1つ1つが主に喫煙材5の異なる領域を個別に加熱できるように、ヒーター3内に幾何学的に配置されている。
【0077】
例えば
図2を参照するとヒーター3は実質的に長尺の構成で複数の軸方向に整列した加熱領域10を含んでもよい。領域10は、それぞれ上述の結合した支持体3aと加熱エレメント3bからなる構造体3の独立して温度制御可能なセクションなどのヒーター3の個別のセクションを含んでもよい。例えば複数の加熱領域10は全てがヒーター3の長手方向軸に沿って互いに整列していて、ヒーター3の長さに沿って複数の独立した加熱区域を提供していてもよい。
【0078】
図2を参照すると、各加熱領域10は中空の加熱筒10を構成してもよく、この加熱筒10はヒーター3の全体の長さより大幅に短い有限長の環10でもよい。複数の加熱領域10を軸方向に整列させて配置することによって加熱チェンバー4の外側が画定され、加熱領域10が加熱チェンバー4内に置かれた喫煙材5を加熱するように構成される。上述したように熱は主に内方に加熱チェンバー4の中心長手方向軸に向かって加えられる。複数の加熱領域10は互いにその半径方向の面すなわち横断面を向き合わせて、ヒーター3の長さに沿って配置されている。各加熱領域10の横断面とそれらの隣り合う加熱領域10の横断面とは、
図2に示し以下に述べるように断熱部18によって分離されていてもよく、またはその隣り合う加熱領域10と接続または接触してもよい。
【0079】
図2および3に示すようにこれとは別にヒーター3をケーシング7の中心領域に配置してもよく、ヒーター3の長手方向表面の周りに加熱チェンバー4および喫煙材5を配置してもよい。この配列では、ヒーター3が放射する熱エネルギーはヒーター3の長手方向表面から外向きに移動し、加熱チェンバー4および喫煙材5に入る。
【0080】
加熱領域10はそれぞれがヒーター3の独立したセクションを構成してもよい。
図1~4に示すように各加熱領域10は、ヒーター3全体の長さよりも大幅に短い有限長を有する加熱筒10を構成してもよい。しかしながら、ヒーター3の他の構成を代わりに用いることも可能であり、つまり円筒断面をしたヒーター3を用いる必要もなくなる。複数の加熱領域10を、それらの横断面が互いにヒーター3の長さに沿って向き合うように整列させてもよい。各領域10の横断面がその隣の領域10の横断面に接触していてもよい。あるいは領域10の横断面の間に断熱部または熱反射層を存在させて、領域10の1つ1つから放射される熱エネルギーが隣り合う領域10を実質的に加熱せず、主に加熱チェンバ
ー4および喫煙材5に移動するようにしてもよい。各加熱領域10は他の領域10と実質的に同じ寸法を有してもよい。
【0081】
このようにして加熱領域10の特定の1つを起動すると、その加熱領域10は例えば半径方向の隣に配置された喫煙材5に熱エネルギーを供給し、残りの喫煙材5を実質的に加熱しない。
図3を参照すると、喫煙材5の加熱領域は、起動されている加熱領域10の周りに配置された環状の喫煙材5を構成してもよい。したがって喫煙材5の例えば環状または実質的に中実円筒状の複数のセクションを別々に加熱することができ、それぞれの部分は複数の加熱領域10の特定の1つに直接隣接して配置された喫煙材5に相当し、喫煙材料体5全体よりも大幅に小さい嵩および体積を有する。
【0082】
加えてまたはそれとは別にヒーター3は、ヒーター3の中心長手方向軸周りの異なる複数の場所に配置され長手方向に延びる長尺の加熱領域10を備えてもよい。複数の加熱領域10は長さが異なってもまたは実質的に同じ長さでもよく、それぞれがヒーター3の実質的に全長に沿って延びるようになっている。
【0083】
喫煙材5の加熱部分は、長手方向の加熱領域10に平行かつそれに直接隣接して位置する喫煙材5の長手方向のセクションを構成してもよい。従って先に説明したように、喫煙材5の複数のセクションを別々に加熱することができる。
【0084】
さらに以下で説明するように加熱領域10は個別にそして選択的に作動させることができる。
【0085】
喫煙材5は加熱チェンバー4に挿入可能なカートリッジ11内に含まれてもよい。例えば
図2に示すように、カートリッジ11はヒーター3の凹みに収まる円筒のような実質的に中実の喫煙材料体5を含有することができる。この構成では、喫煙材料体の外面がヒーター3と向かい合う。あるいは
図3に示す様に、カートリッジ11はヒーター3の周りに挿入可能な喫煙材料の管11を構成することができ、喫煙材料の管11の内面がヒーター3の長手方向面と向き合うようになる。喫煙材料の管11は中空でもよい。管11の中空中心部の直径は、管11がヒーター3の周りにきっちり嵌るようにヒーター3の直径すなわち横断寸法と実質的に同じでもまたはそれよりも僅かに大きくてもよい。カートリッジ11の長さはヒーター3の長さとほぼ同じでもよく、ヒーター3がカートリッジ11をその全長に沿って加熱できるようになっている。
【0086】
器具1のハウジング7は開口部を備え、その開口部を通ってカートリッジ11を加熱チェンバー4に挿入することができるようにしてもよい。開口部は例えば、ハウジングの第2の端部9に配置された開口部を構成し、その開口部にカートリッジ11を挿入し加熱チェンバー4内に直接押し込むことができるようになっていてもよい。好ましくは、器具1の使用中はこの開口部は喫煙材5を加熱するために閉じられる。あるいはハウジング7の一部は第2の端部9において器具1から取り外し自在であり、喫煙材5を加熱チェンバー4に挿入することができるようになっている。必要なら使用済み喫煙材5をヒーター3からスライド式に外すおよび/または分離するように構成されたユーザーが操作可能な内部機構のような喫煙材料取り外し装置を器具1に設けてもよい。例えば使用済みの喫煙材5をハウジング7の開口部から押し戻してもよい。必要ならその後新しいカートリッジ11を挿入することができる。
【0087】
先に述べたように、器具1は器具1の作動を制御するように構成されたコントローラー12、例えばマイクロコントローラー12を備えてもよい。制御器12は器具1のエネルギー源2およびヒーター3のような他の部品に電気的に接続されており、信号の送受信によって他の部品の作動を制御できるようになっている。特にコントローラー12はヒータ
ー3の起動を制御して喫煙材5を加熱するように構成されている。例えば、コントローラー12はヒーター3を起動するように構成され、これにはユーザーの器具1のマウスピース6での吸引に応答して1つ以上の加熱領域10を選択的に起動することを含んでもよい。その際、コントローラー12はパフセンサー13と適切な連通結合を介して連通させてもよい。パフセンサー13はマウスピース6でパフが発生したときを検出するように構成されており、検出するとパフを示す信号をコントローラー12に送るように構成されている。電子信号を用いてもよい。コントローラー12はヒーター3を起動し、これにより喫煙材5を加熱することによってパフセンサー13からの信号に対して応答してもよい。しかしながら、ヒーター3の起動にパフセンサー13を用いることは必須ではなく、ヒーター3を起動する要因を供する他の代替手段を用いることができる。例えばコントローラー12は別の種類の起動要因、例えばユーザーが操作できるアクチュエーターの起動に応じてヒーター3を起動してもよい。その結果、加熱中に放出された揮発した化合物をユーザーがマウスピース6から吸入することができる。コントローラー12は、ハウジング7内の適切であればどの位置に配置してもよい。一例示的位置は
図5に示すようにエネルギー源2とヒーター3/加熱チェンバー4の間である。
【0088】
ヒーター3が上記のように2つ以上の加熱領域10を備える場合、加熱領域10を所定の順序または様式で起動するようにコントローラー12を構成してもよい。例えば、複数の加熱領域10を加熱チェンバー4に沿って、または加熱チェンバー4の周りで連続的に起動するようにコントローラー12を構成してもよい。各加熱領域10を、パフセンサー13が吸引を検出するのに応答して起動してもよく、または後述のような別の方法で起動してもよい。
【0089】
図6を参照すると、一例示的加熱方法は、1回目のパフのような起動要因が検知される第1の工程S1を備え、その後1回目のパフまたは他の起動要因に応じて喫煙材5の第1のセクションが加熱される第2の工程S2が続いてもよい。第3の工程S3では、封止可能な吸排気バルブ24を開けて空気を加熱チェンバー4から引き込み、マウスピース6から器具1の外に出せるようにしてもよい。第4の工程でバルブ24は閉じられる。これらのバルブ24についてはこの後
図30で詳細に述べる。第5のS5工程、第6のS6工程、第7のS7工程、および第8のS8工程では、第2の起動要因、例えば2回目のパフに応じて、加熱チェンバー吸排気バルブ24をそれに合わせて開放ならびに閉鎖することによって喫煙材5の第2のセクションを加熱してもよい。第9のS9工程、第10のS10工程、第11のS11工程、および第12のS12工程では、第3の起動要因、例えば3回目のパフに応じて、加熱チェンバー吸排気バルブ24をそれに合わせて開放ならびに閉鎖することによって喫煙材5の第3のセクションを加熱してもよく、同様に続く。上記のように、パフセンサー13以外の手段を代わりに使用することができる。例えば器具1のユーザーが制御スイッチを作動させて新規にパフしていることを示してもよい。このようにして、新規のパフごとに喫煙材5の新規のセクションを加熱してニコチンおよび芳香性化合物を揮発させてもよい。喫煙材5の加熱領域10の数および/または別々に加熱可能なセクションの数はカートリッジ11の予定のパフ数と一致していてもよい。あるいは別々に加熱することが可能な各喫煙材セクション5を対応した加熱領域10によって、複数回の吸引、例えば2回、3回、または4回の吸引ごとに加熱し、前の喫煙材部分の加熱中に複数回の吸引が終了した場合のみ、喫煙材5の新規部分を加熱するようにしてもよい。
【0090】
各加熱領域10を個々のパフに応じて起動する代わりに、マウスピース6での最初の1回のパフに応じて複数の加熱領域10を連続的に代わる代わる起動してもよい。例えば、特定の喫煙材カートリッジ11の予定吸引時間の間中、複数の加熱領域10を定期的な所定の間隔で起動させてもよい。吸引時間は例えば約1~約4分でもよい。したがって
図6に示す少なくとも第5の工程S5および第9の工程S9は任意である。各加熱領域10を1回または複数回の吸引時間に相当する所定の時間作動させて、別々に加熱可能な対応す
る喫煙材セクション5をこの時間だけ加熱するようにしてもよい。あるカートリッジ11の全ての加熱領域10が起動したらユーザーにそのカートリッジ11の交換の必要性を示すようにコントローラー12を構成してもよい。コントローラー12は例えばハウジング7の外面の表示ライトを点灯させてもよい。
【0091】
当然のことながらヒーター3全体を作動させるのではなく、個々の加熱領域10を順番に作動させることは、喫煙材5を加熱するのに必要なエネルギーがカートリッジ11の吸い込み時間全体に亘ってヒーター3をフルに作動させた場合に必要とされるエネルギーに比較して減少することを意味する。従ってエネルギー源2の最大限必要とされる出力も小さくなる。このことはより小さくかつ軽量なエネルギー源2を装置1に設置できることを意味する。
【0092】
コントローラー12は、パフとパフの間にヒーター3の作動を停止する、またはヒーター3に供給される電力を減少させるように構成してもよい。これはエネルギーを節約し、エネルギー源2の寿命を延ばす。例えばユーザーが装置1のスイッチを入れる、またはユーザーが口にマウスピース6を入れたことを検知するなどのなんらかの他の要因に応答して、コントローラー12がヒーター3または喫煙材5を加熱するために使用される次の加熱領域10を半作動させて、喫煙材5の成分を揮発させるための準備として暖まるように構成してもよい。この半作動では、ニコチンを揮発させるほど充分な温度に喫煙材5を加熱しない。好適な温度は、100℃以下であるが、120℃以下の温度でもよい。パフセンサー13によるパフの検知または所定の時間の経過などのなんらかの他の要因に応答して、コントローラー12は、ユーザーによって吸引されるニコチンおよび他の芳香性化合物を素早く揮発させるために当該ヒーター3または加熱領域10で喫煙材5を加熱することができる。喫煙材5がタバコを含む場合、ニコチンおよび他の芳香性化合物を揮発させるのに好適な温度は、150℃~250℃または130℃~180℃など120℃超の温度である。したがって、一例示的完全作動温度は180℃~250℃である。必要なら、喫煙材5を揮発温度まで加熱するのに用いられる最大電流の供給に電気二重層コンデンサー(super-capacitor)を用いることができる。適切な加熱様式の一具体例を
図8に示し、ここでは、複数の最大値はそれぞれ別の加熱領域10の完全起動を表している。図からわかるように、喫煙材5はほぼ吸引時間、この例では2秒だけ揮発温度に維持されている。
【0093】
ヒーター3の作動モードの3つの例を以下に説明する。
【0094】
第1の作動モードにおいて、ある特定の加熱領域10が完全に起動している間、ヒーターの他の全ての加熱領域10の作動は停止している。従って新しい加熱領域10が起動すると、前の加熱領域は作動を停止する。電力は、作動している領域10にのみ供給される。
【0095】
代わって第2の作動形態では、ある特定の加熱領域10が完全に起動している間、他の加熱領域10の1つ以上が半起動していてもよい。他の加熱領域10の1つ以上を半起動させることは、加熱チェンバー4内の喫煙材5から揮発したニコチンなどの成分が凝集するのを実質的に妨げるのに充分な温度にこれらの他の加熱領域10を加熱することを含んでもよい。半起動した加熱領域10の温度は完全に起動している加熱領域10の温度未満である。半起動した領域10に隣接して配置されている喫煙材5は、その成分を揮発させるほどの温度までは加熱されない。
【0096】
代わって第3の作動形態では、ある加熱領域10が起動すると、その加熱領域10はヒーター3のスイッチが切られるまで完全に起動したままになる。したがってカートリッジ11からの吸引中はより多数の加熱領域10が起動されるほどヒーター3に供給される電
力は増える。上述の第2の形態と同様に加熱領域10を連続的に起動することによって、加熱チェンバー4内の喫煙材5から揮発したニコチンのような成分の濃縮が実質的に抑制される。
【0097】
器具1は、ヒーター3と加熱チェンバー4/喫煙材5の間に配置された遮熱部100を備えてもよい。遮熱部100は、熱エネルギーが遮熱部100を通過して実質的に流れないように構成されており、したがってこの遮熱部100を用いると、ヒーター3が起動され熱エネルギーを発しているときであっても、喫煙材5を選択的に加熱されないようにすることができる。
図15を参照すると遮熱部100は、例えばヒーター3の周りに同軸に配置された熱反射材料からなる円筒状の層を備えてもよい。あるいは
図2を参照して述べたようにヒーター3が加熱チェンバー4および喫煙材5の周りに配置されている場合は、遮熱部100は加熱チェンバー4の周りに同軸にかつヒーター3の内部に同軸に配置された熱反射材料の円筒状の層を備えてもよい。遮熱部100は、ヒーター3を喫煙材5から隔離するように構成された断熱層を追加的にまたは代わりに備えてもよい。
【0098】
遮熱部100は実質的に熱透過性の窓101を備え、これによって熱エネルギーが窓101を通って加熱チェンバー4および喫煙材5に伝わるようになる。従って、喫煙材5の窓101と整列しているセクションは加熱され、残りの部分は加熱されない。遮熱部100および窓101は喫煙材5に対して回転自在または可動式でもよいため、遮熱部100および窓101を回転または移動させることによって喫煙材5の異なるセクションを選択的にかつ別々に加熱することができる。その効果は上記の加熱領域10を選択的かつ別々に起動させることにより得られる効果と同様である。例えば、遮熱部100および窓101をパフ検出器13の信号に応じて徐々に回転または移動させてもよい。加えてまたは代わりに遮熱部100および窓101を所定の加熱経過時間で徐々に回転または移動させてもよい。遮熱部100および窓101の移動または回転をコントローラー12の電子信号で制御してもよい。遮熱部100/窓101と喫煙材5の相対的な回転またはその他の移動を、コントローラー12に制御されたステッピングモーター3cで駆動してもよい。これを
図15に説明している。あるいは遮熱部100および窓101をハウジング7のアクチュエーターのようなユーザーの制御を用いて手動で回転させてもよい。遮熱部100は円筒状である必要はなく、必要なら適切に位置決めされた長手方向に延びる1つ以上の要素および/または板を構成してもよい。
【0099】
当然のことながらヒーター3、遮熱部100、および窓101に対して喫煙材5を相対回転または相対移動させても同様の結果を得ることができる。例えば、加熱チェンバー4がヒーター3の周りで回転自在でもよい。この場合、遮熱部100の移動に関する上記の記述を、加熱チェンバー4の遮熱部100に対する相対移動の代わりに適用することができる。
【0100】
遮熱部100はヒーター3の長手方向表面にコーティングを含んでもよい。この場合、ヒーター表面の一部領域はコーティングされず、熱透過窓101を形成している。ヒーター3を例えばコントローラー12による制御またはユーザーによる制御によって回転または移動させて、喫煙材5の異なるセクションを加熱することができる。代わりに遮熱部100および窓101は別個の遮蔽3aを構成してもよく、これはコントローラー12による制御またはその他のユーザーによる制御によって、ヒーター3および喫煙材5の両方に対し相対回転または相対移動することができる。
【0101】
器具1は吸気口14を備えてもよく、これによって、吸引中に外気をハウジング7内に吸引し、加熱された喫煙材5内を通過させることができる。吸気口14はハウジング7の開口部14を構成してもよく、喫煙材5および加熱チェンバー4からハウジング7の第1の端部8に向かって上流に配置されてもよい。これを
図2に示す。別の具体例を
図7に示
す。吸気口14を通って吸引された空気は加熱された喫煙材5内を移動し、その中で芳香蒸気のような喫煙材の蒸気が混入され、その後マウスピース6からユーザーによって吸入される。必要なら
図7に示す様に器具1は、喫煙材5に入る前の空気を暖めるように、および/またはマウスピース6から吸引される前の空気を冷やすように構成された熱交換器15を備えてもよい。例えば熱交換器15は、マウスピース6に入る空気から抽出された熱を用いて喫煙材5に入る前の新しい空気を暖めるように構成されてもよい。
【0102】
器具1は喫煙材圧縮器16を備えてもよく、これは起動されると喫煙材5を圧縮するように構成されている。また器具1は喫煙材膨張器17も備えることができ、これは起動されると喫煙材5を膨張させるように構成されている。喫煙材圧縮器16および膨張器17は実際には以下の説明のように同一の装置として実装されてもよい。喫煙材圧縮器16および膨張器17はコントローラー12による制御によって必要に応じて作動してもよい。この場合、コントローラー12は電気信号のような信号を圧縮器16または膨張器17に送るように構成されており、それによって圧縮器16または膨張器17がそれぞれ喫煙材5を圧縮あるいは膨張させる。代わり圧縮器16および膨張器17を器具1のユーザーがハウジング7の手動式の制御によって起動して、喫煙材5を必要に応じて圧縮または膨張させてもよい。
【0103】
基本的に圧縮器16は、喫煙材5を圧縮しそれによって加熱中の喫煙材5の密度を上げるように構成されている。喫煙材の圧縮により喫煙材体5の熱伝導率が大きくなり、したがってニコチンおよび他の芳香性化合物のより急速な加熱、およびその結果生じる急速な揮発をもたらす。これは、ユーザーがニコチンおよび芳香成分をパフの検出に応じて実質的な遅れなく吸入することができるようになることから好ましい。したがって、コントローラー12はパフの検出に応じて圧縮器16を起動して、喫煙材5を所定の加熱時間だけ、例えば1秒間圧縮してもよい。例えばコントローラー12の制御の下で、所定の時間加熱したら喫煙材5の圧縮を緩めるように圧縮器16を構成してもよい。あるいは、喫煙材5が所定の閾温度に達するのに応じて圧縮を緩めるか、あるいは圧縮を自動的に終了してもよい。適切な閾温度は約120~250℃の範囲でもよく、ユーザーが選択できてもよい。温度感知器を用いて喫煙材5の温度を検出してもよい。
【0104】
基本的に膨張器17は、喫煙材5を膨張させ、それによってパフしている間の喫煙材5の密度を下げるように構成されている。喫煙材5が膨張すると、加熱チェンバー4内の喫煙材料5はゆるく配列され、気体、例えば入り口14から喫煙材5を通過する空気が流れやすくなる。従って、この空気は、揮発したニコチンおよび芳香成分をマウスピース6にさらに運び、吸引に供することができる。コントローラー12は、上記の圧縮時間の直後に膨張器17を起動して喫煙材5を膨張させ、空気がより自由に喫煙材5を経由して吸引されるようにしてもよい。膨張器17の起動と同時に可聴音を出し、あるいは他の表示をして、喫煙材5が加熱されたことおよびパフを開始できることをユーザーに示してもよい。
【0105】
図8および9を参照すると、圧縮器16および膨張器17は、ばね駆動のロッドを備えてもよく、これはばねが圧縮状態から開放されると加熱チェンバー4内の喫煙材5を圧縮するように構成されている。これが
図8および9に概略説明されているが、当然のことながら他の実装法を用いることができる。例えば圧縮器16は、上記の管状の加熱チェンバー4とほぼ等しい厚みを有する環を備え、この環がばねまたは他の手段によって加熱チェンバー4に押し込まれて喫煙材5を圧縮してもよい。あるいは圧縮器16をヒーター3の一部として構成し、ヒーター3自身がコントローラー12の制御の下で喫煙材5を圧縮および膨張させるように構成されてもよい。喫煙材5を圧縮および膨張させる一方法を
図11に示す。この方法は、加熱チェンバー4で喫煙材5を圧縮する第1工程P1と、圧縮された 喫煙材5を加熱する第2工程P2と、喫煙材5の閾温度を検出する第3の工程P3
と、例えば圧縮力を開放することによって喫煙材5を膨張させる第4工程S4と、例えば封止可能な吸排気バルブ24を開くことによって喫煙材加熱チェンバー4に外気を入れる第5工程S5とを含む。
【0106】
ヒーター3は上述の断熱部18と一体でもよい。例えば
図2を参照すると、断熱部18は実質的に細長い中空の本体を備え、例えば実質的に円筒状の管のような断熱部18でもよく、これは加熱チェンバー4の周りに同軸に配置されており、これに加熱領域10が一体化されている。断熱部18は複数の凹みが設けられ、内向きの表面形状21を成している層を備えてもよい。加熱領域10はこれらの凹みに配置されているため、加熱領域10は加熱チェンバー4内の喫煙材料5と面する。加熱チェンバー4に面する加熱領域10の表面は、凹みがない断熱部18の複数領域の内側表面21と面一でもよい。
【0107】
ヒーター3と断熱部18を一体化すると、喫煙材加熱チェンバー4の方を向いている加熱領域10の内向きの側部を除き、加熱領域10の全ての側部が断熱部18で実質的に取り囲まれることになる。そのようにして、ヒーター3により放射される熱は喫煙材5に集中し、器具1の他の部分またはハウジング7の外気中に消散しない。
【0108】
またヒーター3を断熱部18と一体にすると、ヒーター3と断熱部18の組み合わせの厚みを減らすこともできる。このようにすると器具1の直径、具体的にはハウジング7の外径をさらに減らすことができる。あるいは、ヒーター3と断熱部18を一体化して厚みを低減するとさらに広い喫煙材加熱チェンバー4を器具1に収容することができ、あるいはハウジング7の全幅を少しも広げることなく追加的な要素を取り入れることができる。
【0109】
これとは別にヒーター3を断熱部18と一体にするのではなく、断熱部18に隣接させてもよい。例えば、ヒーター3が
図2に示すように加熱チェンバー4の外側に配置される場合、断熱部18をその内方に向いた面がヒーター3に向くようにヒーター3の外側の周囲に配置してもよい。ヒーター3を加熱チェンバー4の内部に配置する場合は、ヒーター3を断熱部18の外方に向いた面22の周囲に位置させてもよい。
【0110】
必要なら、ヒーター3と断熱部18の間に障壁が在ってもよい。例えばステンレス鋼の層がヒーター3と断熱部18の間に在ってもよい。この障壁は、ヒーター3と断熱部18の間に嵌るステンレス鋼管を備えてもよい。障壁の厚みは器具の寸法を実質的に大きくしないように薄くてもよい。一例示的厚みは約0.1~1.0mmである。
【0111】
さらに複数の加熱領域10の横断面の間に熱反射層が在していてもよい。各加熱領域10の1つから放射される熱エネルギーが隣の加熱領域10を実質的に加熱しないが加熱領域10の周囲表面から主に内向きに加熱チェンバー4と喫煙材5に移動するように、複数の加熱領域10を相対的に配置してもよい。各加熱領域10は他の領域10と実質的に同じ寸法を有してもよい。
【0112】
ヒーター3を器具1内に感圧接着剤を用いて接着または固定してもよい。例えばヒーター3を上記の断熱部18または障壁に感圧接着剤を用いて接着してもよい。あるいはヒーター3をカートリッジ11または喫煙材加熱チェンバー4の外面に接着してもよい。
【0113】
感圧接着剤を使用する代わりに、自己溶融テープを用いてヒーター3を器具1内の所定位置に固定してもよく、または所定位置に固定する締め具で固定してもよい。これらの方法の全てによってヒーター3を確実に固定することができ、ヒーター3から喫煙材5に熱を効率的に伝達することが可能になる。他の種類の固定も可能である。
【0114】
上記のように喫煙材5とハウジング7の外面19との間に設けられている断熱部18に
よって器具1からの熱損失が減り、したがって喫煙材5が加熱される効率が改善する。例えば
図2を参照すると、ハウジング7の壁が、加熱チェンバー4の外周周りに延びている断熱部18の層を備えてもよい。断熱層18の長さは、実質的に加熱チェンバー4および喫煙材5の周りに同軸に配置された断熱部18の管長でもよい。これを
図2に示す。なお、断熱部18を喫煙材料カートリッジ11の一部として構成することができ、この場合断熱部18は喫煙材5の外側に同軸に配置されることになる。
【0115】
図12を参照すると、断熱部18は真空断熱部18を構成してもよい。例えば断熱部18は金属材料のような壁材料19で囲まれた層を構成してもよい。断熱部18の内部領域すなわち中心部20は、例えば重合体、エアロゲル、または他の適切な材料を含む連続気泡性の多孔質材料を備え、低圧に減圧されていてもよい。内部領域20内の圧力は0.1~0.001ミリバールの範囲でもよい。断熱部18の壁19は、中心部20と壁19の外面の間の圧力差によって壁19に働く力に耐えるだけ十分に強く、それによって断熱部18がつぶれないようにしている。例えば壁19は約100μmの厚みを有するステンレス鋼の壁19を備えてもよい。断熱部18の熱伝導率は0.004~0.005W/mKの範囲でもよい。断熱部18の熱通過率は約150~約250℃の温度範囲で約1.10~約1.40W/(m
2K)でもよい。断熱部18の気体の伝導率は無視できる。壁材料19の内面に反射コーティングを施して、断熱部18を介した放射伝搬による熱損失を最小にしてもよい。このコーティングには例えば約0.3~1.0μmの厚みを有するアルミニウムIR反射被覆を含んでもよい。中心領域20内が減圧状態であれば、中心領域20の厚みが非常に薄い場合でも断熱部18が機能することになる。この断熱特性は実質的にその厚みに影響されない。このことにより器具1全体を小さくすることが容易になる。
【0116】
図12に示す様に、壁19は内向きセクション21および外向きセクション22を備えてもよい。内向きセクション21は実質的に喫煙材5および加熱チェンバー4と向き合う。外向きセクション22は実質的にハウジング7の外側と向き合う。器具1の作動中、内向きセクション21はヒーター3の熱エネルギーによってより暖かくてもよく、外向き部分22は断熱部18の影響によって冷える。内向きセクション21および外向きセクション22は、例えば実質的に平行で長手方向に延びヒーター3と少なくとも同じ長さの複数の壁19を構成してもよい。壁の外向きセクション22の内面すなわち減圧された中心領域20に面している表面は中心部20内の気体を吸収するコーティングを備えてもよい。適切なコーティングは酸化チタンコーティングである。
【0117】
断熱部18は、米国特許第7,374,063号に記載のインスロン(登録商標)成形真空熱障壁(Insulon Shaped-Vacuum Thermal Barrier)のような超高真空断熱部を備え
てもよい。そのような断熱部18の全体的な厚みは極めて薄くてもよい。一例示的厚みは約1mm~約1μm、例えば約0.1mmであが、他のそれより厚いまたは薄い厚みも可能である。断熱部18の断熱特性は実質的にその厚みの影響を受けず、したがって器具1からの熱損失を実質的に少しも増やすことなく薄い断熱部18を用いることができる。非常に薄い断熱部18によって、ハウジング7および器具1全体を先に述べた大きさより小さくできるようにしてもよく、器具1の厚み、例えば直径を紙巻きタバコ、葉巻、およびシガリロのような喫煙品とほぼ等しくすることができるようにしてもよい。また、器具1を軽量化して上記の小型化と同様の利点を提供してもよい。
【0118】
上記の断熱部18は気体吸収材料を備えて中心領域20内の真空の維持または真空化を容易にしてもよいが、気体吸収材料は高真空断熱部18には用いられない。気体吸収材料がないことは断熱部18の厚みを非常に薄く保つことの助けとなり、すなわち器具1全体を小さくすることが容易になる。
【0119】
超高断熱部18の形状によって、断熱部の真空度を製造中に断熱部18の中心領域20から分子を抽出するのに用いられる真空よりも上げることができる。例えば断熱部18の内部の高真空を、それを作る真空炉室の真空度より高くすることもできる。断熱部18の内部の真空は例えば10
-7トール程度でもよい。
図17を参照すると、高真空断熱部18の中心領域20の一端は先細りし、外向きセクション22および内向きセクション21が出口25に収束するようになっており、断熱部18の製造中に出口25を通って中心領域20内の気体が除去されて高真空が作られるようになっていてもよい。
図17には外向きセクション22が内向きセクション21の方に収束するように説明されているが、内向きセクション21が外向きセクション22に収束する逆の配置を代わりに用いることができる。断熱壁19の収束端は中心領域20内の気体分子を出口25の外に出し、それによって中心部20の高真空を作るように構成されている。出口25は封止可能で、領域20の減圧後に中心領域20の高真空を維持する。出口25の封止は、例えば中心部20から気体を除去した後に出口25のろう付け材料を加熱して出口25にろう付け封止を作ることで封止することができる。別の密封技術を用いることもできる。
【0120】
中心領域20を減圧するために、断熱部18を実質的に減圧された低圧の環境内、例えば真空炉チェンバー中に置いて、中心領域20内の気体分子が断熱部18の外の低圧環境に流れ込むようにしてもよい。中心領域20内の圧力が低下すると、中心領域20の先細りした形状および具体的には上記の収束部21、22が、残留気体分子を出口25経由で中心部20から出すのに影響するようになる。特に、中心領域20内の気体の圧力が低いときは、中心部20内の残留気体分子を出口25へ導き、中心部20から気体が出ていく可能性を低圧環境の外部から気体が中心部20に入る可能性よりも高くするのに、収束している内向き部分21および外向き部分22の案内効果は有効である。このようにして中心部20の形状によって中心部20内の圧力を断熱部18の外の環境の圧力よりも低圧にすることができる。
【0121】
必要なら上記の様に、1種以上の低放射率コーティングが壁19の内向きセクション21および外向きセクション22の内面に存在して、放射による熱損失を実質的に防止してもよい。
【0122】
断熱部18の形状を本明細書では全体に実質的に円筒状または類似の形状であると述べたが、断熱部18を別の形状にして、例えば種々の形状および大きさの加熱チェンバー4、ヒーター3、ハウジング7、またはエネルギー源2のような種々の構成の器具1を収容し断熱することも可能である。例えば、上記のインスロン(登録商標)成形真空熱障壁のような高真空断熱部18の大きさおよび形状には、実質的にその製造過程による制限はない。上記の集束構造の形成に適切な材料にはセラミック、金属、半金属、およびこれらの組合せがある。
【0123】
図13の概略説明を参照すると、断熱部18の1つ以上の端部において熱橋23によって壁の内向きセクション21と壁の外向きセクション22を接続して、低圧の中心部20を完全に取り囲み収容してもよい。熱橋23は内向きセクション21および外向きセクション22と同じ材料で形成された壁19を備えてもよい。適切な材料は上述のようにステンレス鋼である。熱橋23は断熱中心部20よりも大きな熱伝導率を有し、したがって不都合なことに熱を器具1から外に伝えてしまうことがあり、その際に喫煙材5を加熱する効率が低下する。
【0124】
熱橋23による熱損失を減らすため、熱橋23を延長して内向きセクション21から外向きセクション22への熱の流れに対する抵抗を大きくしてもよい。これを
図14に概略説明する。例えば熱橋23は壁19の内向きセクション21と壁19の外向きセクション22の間の遠回りの経路をたどってもよい。これを、長手方向のある距離に亘って断熱部
18を設けることによって容易にしてもよく、この距離は、熱橋23が内向きセクション21から外向きセクション22まで遠回りの経路に沿って徐々に延びることができるようにヒーター3、加熱チェンバー4、および喫煙材5の長さよりも長く、そうすることによって、ヒーター3、加熱チェンバー4、および喫煙材5がないハウジング7の長手方向のある場所では、中心部20の厚みがゼロになる。
【0125】
図16を参照すると上記のように、断熱部18で断熱された加熱チェンバー4は閉じると加熱チェンバー4を封止する吸排気バルブ24を備えてもよい。バルブ24はそのようにしてチェンバー4への空気の不必要な出入りを防ぎ、喫煙材の香りがチェンバー4から出ないようにすることができる。吸排気バルブ24を例えば断熱部18に設けてもよい。例えばパフとパフの間はバルブ24をコントローラー12で閉じ、その間は揮発した物質がチェンバー4内に留まるようにしてもよい。パフとパフの間の揮発物質の分圧は飽和蒸気圧に達し、従って蒸発物質の量は加熱チェンバー4内の温度だけで決まる。これによりパフからパフまで、揮発したニコチンおよび芳香性化合物の確実な一定供給が促進される。パフしている間、コントローラー12はバルブ24を開けるように構成されており、空気がチェンバー4を通って流れて揮発した喫煙材料成分をマウスピース6に運ぶことができるようになっている。チェンバー4に酸素が絶対入らないようにする膜をバルブ24内に配置することができる。バルブ24を呼気起動式にして、マウスピース6でのパフの検出に応じてバルブ24が開くようにしてもよい。バルブ24はパフ終了の検出に応じて閉じてもよい。あるいはバルブ24はその開放後に所定時間が経過したら閉じてもよい。この所定時間をコントローラー12で計時してもよい。必要なら機械式または他の適切な開放/閉鎖手段を設けて、バルブ24が自動的に開いたり閉じたりするようにしてもよい。例えばユーザーによるマウスピース6の吸引で生じる気体の移動を用いてバルブ24を開けたり閉めたりしてもよい。したがってバルブ24の起動にコントローラー12の使用は必ずしも必要ではない。
【0126】
ヒーター3、例えば各加熱領域10で加熱される喫煙材5の質量は0.2~1.0gの範囲でもよい。喫煙材料5が加熱される温度はユーザーが制御可能でもよく、その温度は例えば上記のような150~250℃の温度範囲内の任意の温度でもよい。器具1全体の質量は70~125gの範囲でもよいが、上述の種類のヒーター3および/または高真空断熱部18を採用する場合は軽くすることができる。容量が1000~3000mAhで電圧が3.7Vの電池2を用いることができる。加熱領域10は、1つのカートリッジ11の喫煙材料5の約10~40のセクションを別々にかつ選択的に加熱するように構成されていてもよい。
【0127】
当然のことながら、上記の選択肢の何れかを単独で用いることも、または組み合わせて用いることもできる。
【0128】
種々の問題の対処と技術の発展のため、本開示全体は種々の実施形態を例示的に示しており、これらの実施形態では特許請求された発明が実践され、優れた器具を提供することができる。本開示の利点および特徴は実施形態の単なる代表的な具体例であり、包括的でも排他的でもない。これらは特許請求された特徴の理解と教示の単なる補助に提供されている。当然だが、本開示の利点、実施形態、具体例、機能、特徴、構造、および/または他の側面は本開示を特許請求の範囲に規定されたとおりに限定するあるいは特許請求の範囲の均等物に限定すると考えるべきではなく、本開示の範囲および/または思想から乖離することなく他の実施形態を利用しても改変してもよいと考えるべきである。種々の実施形態は、開示された構成要素、成分、特徴、部品、工程、手段他の組合せを適切に備えても、これらで構成されても、基本的にこれらで構成されてもよい。また本開示は、現在は特許請求されていないが将来特許請求される可能性がある他の発明を含む。