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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】吸収体およびこれを用いた吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/53 20060101AFI20221213BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20221213BHJP
   A61F 13/539 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
A61F13/53 100
A61F13/533 100
A61F13/539
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017114574
(22)【出願日】2017-06-09
(65)【公開番号】P2018202100
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2019-06-19
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 勝彦
【合議体】
【審判長】久保 克彦
【審判官】石田 智樹
【審判官】井上 茂夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-75464(JP,A)
【文献】特開2017-18287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性本体と、この吸収性本体を包むラップ材とを具えた吸収体であって、前記ラップ材が相互に重なり合う部分を有し、このラップ材の相互に重なり合う部分は、前記吸収性本体の一方の表面であって肌当接面側の全面に亘って配置され、この吸収性本体の一方の表面および前記ラップ材の相互に重なり合う部分には、前記ラップ材と前記吸収性本体が一体的に圧搾された凹部が形成されており、前記凹部は、前記重なり合う部分の形成範囲内に設けられていることを特徴とする吸収体。
【請求項2】
前記重なり合う部分の形成範囲内には、前記凹部が規則的に施された凹部形成領域が設けられ、
前記凹部形成領域には、前記凹部の配列構成によって、全体としてエンボスパターンが形成され、
前記エンボスパターンは、前記吸収体の周縁部には形成されておらず、
前記凹部形成領域は、前記エンボスパターンが形成されない凹部非形成領域によって取り囲まれた状態となっていることを特徴とする請求項1に記載の吸収体。
【請求項3】
前記ラップ材は、相互に重ね合わされて前記吸収性本体と共に前記凹部を形成する第1ラップ部および第2ラップ部と、前記吸収性本体の他方の表面側に位置する第3ラップ部とを有する一枚のラップ材にて構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吸収体。
【請求項4】
前記ラップ材は、相互に重ね合わされて前記吸収性本体と共に前記凹部を形成する第1ラップ部および第2ラップ部を有する第1のラップ材と、前記吸収性本体の他方の表面側に位置する第3ラップ部を有する第2のラップ材とで構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吸収体。
【請求項5】
前記ラップ材は、相互に重ね合わされて前記吸収性本体と共に前記凹部を形成する第1ラップ部および第2ラップ部と、前記吸収性本体の他方の表面側に位置する第3ラップ部とを有し、前記第1ラップ部が第1のラップ材にて形成され、前記第2ラップ部と前記第3ラップ部とが前記第1のラップ材とは異なる第2のラップ材にて形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吸収体。
【請求項6】
前記ラップ材は、その坪量が30g/m2以下の不織布およびティシュの少なくとも一方にて構成されていることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の吸収体。
【請求項7】
前記第1ラップ材が不織布にて構成されていることを特徴とする請求項4または請求項5に従属する請求項6に記載の吸収体。
【請求項8】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらトップシートとバックシートとの間に配される請求項1から請求項6の何れか一項に記載の吸収体とを具えたことを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
前記凹部が前記液透過性のトップシートにも一体的に形成されていることを特徴とする請求項2から請求項5および請求項7の何れか一項に従属する請求項8に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性本体とこの吸収性本体を包むラップ材とを具えた吸収体ならびにこの吸収体を液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートとの間に配した吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
子供用または大人用のおむつ,女性用生理用品,軽中度失禁パッド,ペット用排泄処理用品など、液透過性のトップシートとバックシートとの間に吸収体を介在させた各種吸収性物品が知られている。このような吸収性物品において、尿などの液体を吸収保持するための吸収体は、吸収性本体とラップ材とから構成される。吸収性本体は、主にフラッフ状パルプ、すなわちセルロース繊維と、高吸液性樹脂(superabsorbent polymer)、すなわちSAPとの混合体であり、ラップ材は、この吸収性本体を包む難水溶性のティッシュや熱可塑性不織布からなる。
【0003】
このような吸収性物品の一例として、例えば特許文献1,2などが知られている。これらは、着用者と接する側の吸収体の表面に尿などの体液の通路となる凹部を形成し、吸収体の全域にて体液が迅速に拡散吸収されるように配慮したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-093482号公報
【文献】特開2016-214406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、上記ラップ材は、上述のごとく難水溶性のティッシュや熱可塑性不織布などのやわらかい素材からなり、しかも単層からなることから、製造時、保管時、着用時などの吸収体の変形に基づいて破断しやすく、また、破断した際に吸収性本体を構成する材料が飛び出すことに繋がりやすい、との課題を見出した。特許文献1,2に開示された吸収性物品の吸収体に凹部を形成する場合、通常はエンボス加工などによって行われる。この場合、吸収体の吸収性本体を覆うラップ材も吸収性本体と共にエンボス加工されるため、基本的に伸びが小さいラップ材は、凹部の断面形状やエンボスの深さによって、加工時の応力集中により破れてしまう可能性がある。従って、このような場合には上記の課題が特に顕在化しやすい。吸収性本体を包むラップ材が破れてしまうと、この破れた部分から吸収性本体を構成するセルロース繊維やSAPが飛び出し、吸収性本体の形状、つまり吸収体の輪郭形状が崩れてしまい、その本来の機能を最大限に発揮させることができなくなるおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、凹部が形成された吸収体において、その製造時や保管時あるいは着用時に発生する変形などに基づくラップ材の破れや、この破れに起因した吸収体を構成する材料の飛び出しを防止し得る吸収体およびこの吸収体を用いた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の形態は、吸収性本体と、この吸収性本体を包むラップ材とを具えた吸収体であって、前記ラップ材が相互に重なり合う部分を有し、このラップ材の相互に重なり合う部分は、前記吸収性本体の一方の表面側に位置し、この吸収性本体の一方の表面および前記ラップ材の相互に重なり合う部分には、凹部が一体的に形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明においては、吸収体に外力が加わった場合、ラップ材の相互に重なり合う部分においてラップ材自体の破れが抑制され、また、相互に重なり合う部分における何れか一方のラップ材が破れた場合であっても、吸収性本体を構成する材料の飛び出しが抑制される。
【0009】
ラップ材が相互に重なり合う部分の位置や大きさは、破れのおきやすい箇所などに応じて適宜設定することができるけれども、着用者の肌に近い吸収性本体の表面にすることが好ましい。また、ラップ材の破れや吸収性本体を構成する材料の飛び出しを十分に防止するという観点から、吸収性本体の一方の表面全体の面積に対するラップ材の相互に重なり合う部分の面積の割合を10%以上にすることが好ましく、より好ましくは20%以上、最も好ましくは50%以上である。
【0010】
この場合、相互に重ね合わされて吸収性本体と共に凹部を形成する第1ラップ部および第2ラップ部と、吸収性本体の他方の表面側に位置する第3ラップ部とを有する一枚のラップ材にてラップ材を構成することができる。あるいは、相互に重ね合わされて吸収性本体と共に凹部を形成する第1ラップ部および第2ラップ部を有する第1のラップ材と、吸収性本体の他方の表面側に位置する第3ラップ部を有する第2のラップ材とでラップ材を構成することも可能である。あるいは、ラップ材が相互に重ね合わされて吸収性本体と共に凹部を形成する第1ラップ部および第2ラップ部と、吸収性本体の他方の表面側に位置する第3ラップ部とを有し、第1ラップ部を第1のラップ材にて形成すると共に第2ラップ部および第3ラップ部を第1のラップ材とは異なる第2のラップ材にて形成することも可能である。
【0011】
ラップ材をその坪量が30g/m2以下の不織布およびティシュの少なくとも一方にて構成することが好ましい。この場合、第1ラップ材を不織布にて構成することが特に有効である。
【0012】
本発明の第2の形態は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらトップシートとバックシートとの間に配される本発明の第1の形態による吸収体とを具えたことを特徴とする吸収性物品にあり、このような吸収性物品として、例えば子供用または大人用のおむつ,女性用生理用品,軽中度失禁パッド,ペット用排泄処理用品などを挙げることができる。
【0013】
本発明の第2の形態による吸収性物品において、凹部を液透過性のトップシートにも一体的に形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の形態によると、吸収性本体と、この吸収性本体を包むラップ材とを具えた吸収体のラップ材が相互に重なり合う部分を有するので、吸収体に外力が加わってもラップ材を破れ難くすることができる。また、万一、相互に重なり合う部分を構成するラップ材のいずれかが破れた場合であっても吸収性本体を構成する材料の飛び出しを抑制できる。
【0015】
吸収性本体の一方の表面全体の面積に対するラップ材の相互に重なり合う部分の面積の割合を10%以上にした場合、ラップ材の破れや吸収性本体を構成する材料の飛び出しを充分に防止することができる。
【0016】
特に、ラップ材を、相互に重ね合わされて吸収性本体と共に凹部を形成する第1ラップ部および第2ラップ部と、吸収性本体の他方の表面側に位置する第3ラップ部とを有する一枚のラップ材にて構成した場合、吸収性本体を完全にくるむことができる。結果として、吸収性本体の型崩れおよび吸収性本体を構成する材料の飛び出しをより確実に防止することができる。あるいは、ラップ材を、第1のラップ材と、第2のラップ材とで構成した場合、特性の異なる2種類のラップ材をその目的に応じて使用することができる。しかも、一枚のラップ材を用いるよりも容易に吸収体を製造することが可能となる。
【0017】
ラップ材をその坪量が30g/m2以下の不織布およびティシュの少なくとも一方にて構成した場合、吸収体の硬化による風合いの低下を阻止することができる。特に、相互に重ね合わされて吸収性本体と共に凹部を形成する第1のラップ材を不織布にて構成した場合、凹部の形成に伴って発生する可能性のあった第1のラップ材の破れおよび吸収性本体を構成する材料の飛び出しを抑制する効果が特に顕著となる。
【0018】
本発明の第2の形態によると、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらトップシートとバックシートとの間に配される本発明の第1の形態による吸収体とを具えているので、吸収体に外力が加わってもラップ材を破れ難くすることができる。また、万一、相互に重なり合う部分を構成するラップ材のいずれかが破れた場合であっても吸収性本体を構成する材料の飛び出しが抑制される。
【0019】
凹部を液透過性のトップシートにも一体的に形成した場合、外力が加わると吸収体を含む吸収性物品全体が凹部にて曲がり易くなり、着用性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明による吸収性物品をテープ型使い捨ておむつに応用した一実施形態の外観を示す立体投影図である。
図2図1に示したテープ型使い捨ておむつの展開状態をその肌当接面側から見た一部破断平面図である。
図3図2に示したテープ型使い捨ておむつを分解状態で表す立体投影図である。
図4図2中のIV-IV矢視に沿った断面図である。
図5図1に示したテープ型使い捨ておむつに用いられる吸収体の平面図である。
図6】本発明による吸収体の他の実施形態の断面図である。
図7】本発明による吸収体の別な実施形態の断面図である。
図8】本発明による吸収体のさらに別な実施形態の断面図である。
図9】本発明による吸収体の異なる実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明による吸収性物品をテープ型使い捨ておむつに適用した一実施形態について、図1図9を参照しながら詳細に説明するが、本発明による吸収性物品は、このようなテープ型使い捨ておむつに限定されない。例えば、パンツ型使い捨ておむつや尿漏れパッドなど、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらトップシートとバックシートとの間に配される吸収体とを具えた各種吸収性物品に本発明を適用可能である。
【0022】
本実施形態によるテープ型使いすておむつの使用状態における外観を図1に示し、その内側の肌当接面側を表にして展開した状態の外観を図2に示し、これをさらに分解した状態の外観を図3に示す。また、図2中のIV-IV矢視に沿った断面構造を模式的に図4に示し、吸収体の平面形状を図5に示す。
【0023】
すなわち、本実施形態におけるテープ型使い捨ておむつ(以下、単におむつと記述する)10は、液不透過性のカバーシート11およびバックシート12と、吸収体13と、液透過性のトップシート14と、左右一対のサイドシート15とを有する。トップシート14が重ね合わされるバックシート12は、トップシート14とほぼ同じ寸法形状を有し、良好な手触りを得るために薄い不織布にて形成されたカバーシート11に接合される。吸収体13は、バックシート12と、このバックシート12に重ね合わされるトップシート14との間に配され、バックシート12とトップシート14とが直接接するこれらの外周縁部は相互に一体的に接合されている。液不透過性のサイドシート15の長手方向両端部(図2中、上下両端部)は、カバーシート11の上下両端部に重ね合わされ、バックシート12およびトップシート14の左右両側縁部と、カバーシート11とに対してそれぞれ一体的に接合されている。カバーシート11およびサイドシート15は、バックシート12およびトップシート14の前後両側の左右、すなわち幅方向両側縁から外側へ延出する前後一対のサイドフラップ部10f,10rを有する。これら前後のサイドフラップ部10f,10rの間の股下領域10Gには、着用者に脚周り開口部10tとなる一対の円弧状凹部10cが形成されている。
【0024】
本実施形態においては、トップシート14の左右両側に覆い重なる左右一対のサイドシート15の内側部分(図2中、中央側)がトップシート14に対して非接合状態となっている。この内側部分に立体ギャザー15aを形成するため、サイドシート15の内側端縁部に糸ゴム16が伸張状態で接合されている。
【0025】
このおむつ10の後身頃領域10R側のカバーシート11には、ウエスト周り開口部10wに沿って配設される横に細長いウエスト周り弾性シート17が伸長状態で接合されている。本実施形態におけるウエスト周り弾性シート17は、ベースシート18と、このベースシート18に伸長状態で相互に平行に接合される複数本の糸ゴム19と、これら糸ゴム19を覆うようにベースシート18に接合されるアッパーシート20とで構成される。このウエスト周り弾性シート17は、ウエストギャザー17aを形成して着用者のウエスト周りのフィット性を良好にする機能を有する。
【0026】
後身頃領域10R側のサイドフラップ部10rの幅方向両側縁部には、左右一対のファスニングテープ21の基端部がウエスト周り弾性シート17の両端部に重ね合わせて接合されている。これらファスニングテープ21を介して後身頃領域10R側のサイドフラップ部10rを前身頃領域10F側のサイドフラップ部10fに重ね合わせることにより、ウエスト周り開口部10wと脚周り開口部10tとが形成される。ファスニングテープ21は、その幅方向(図2中、左右方向)に沿って伸縮性を持たせた伸縮シートで構成され、その先端部分に面ファスナー22が取り付けられている。面ファスナー22は、前身頃領域10F側のカバーシート11に接合された面ファスナーシート23に対して繰り返し剥離可能に接合可能である。従って、弾性力を伴ってファスニングテープ21を引き延ばしてその面ファスナー22の部分を前身頃領域10Fの面ファスナーシート23に接合することにより、着用者のウエスト周りに対して常に適切な締め付け力を与えることができる。
【0027】
また、吸収体13の両側縁の外側の長手方向に沿った股下領域10Gから前身頃領域10F側および後身頃領域10R側にかけて脚周り弾性部材24が配されている。本実施形態では糸ゴムにて形成した脚周り弾性部材24は、カバーシート11とサイドシート15との間に伸長状態で固定され、レッグギャザー24aを形成して着用者の脚周りのフィット性を良好にする機能を有する。
【0028】
本実施形態における吸収体13は、主にパルプ、すなわちセルロース繊維とSAPとで構成される吸収性本体25と、このシート状をなす吸収性本体25を包む難水溶性のコアラップ、すなわちラップ材26とで構成される。
【0029】
本実施形態におけるラップ材26は、その坪量が30g/m2以下の不織布またはティシュにて構成される。このため、ラップ材26自体の液体の吸収量は、吸収体13全体の液体の吸収量の10%以下である。ラップ材26は、メルトブローンポリマーや熱可塑性バインダー繊維および液体噴射可能な結合剤などのバインダー繊維をなるべく含んでいないことが好ましい。前記バインダー繊維のラップ材26における配合比は、典型的には乾燥質量でラップ材26の5%未満とすることが好ましく、3%未満であることがさらに好ましく、0%であることが特に好ましい。また、このラップ材26は、第1ラップ部27と、第2ラップ部28と、第3ラップ部29とが連続してつながった一枚のラップ材26にて構成されている。より具体的には、第1ラップ部27および第2ラップ部28は、相互に重ね合わされた状態で吸収性本体25とトップシート14との間に配され、第3ラップ部29は、吸収性本体25とバックシート12との間に配されている。このように、本実施形態では一枚のラップ材26が吸収性本体25に対して一方向に一回転半巻き付けられた状態となっているため、吸収性本体25の型崩れや吸収性本体を構成する材料の飛び出しを確実に阻止することができる。また、ラップ材が複数枚の別体から構成される場合のように、複数の原反ロールを準備する必要がなく、製造装置の構成をよりシンプルにすることができる。なお、吸収性本体25に対するラップ材26の巻き付け方向を図4に示す方向(右巻き)に対して逆方向(左巻き)にしてもかまわない。
【0030】
吸収体13は、おむつ10の前身頃領域10Fから股下領域10Gを通って後身頃領域10Rまで達するように、これらに対応した前身頃部分と股下部分と後身頃部分とを有する。吸収体13の股下部分には、両脚の太股部分を取り囲む左右一対の脚周り開口部10tに合わせて、円弧状をなす一対の円弧状凹部13tが形成され、股下部分の幅が前身頃部分および後身頃部分の幅に比べて狭くなっている。
【0031】
なお、この円弧状凹部13tを吸収体13に形成することは必須ではない。また、吸収体13の輪郭形状も本実施形態のような細長い形状以外に、楕円形や円形または正方形など、様々な形状を採用することができる。さらに、着用対象者やその用途などに応じて図5中、上下方向となる長手方向と、これに直交する図5中、左右方向となる幅方向との比率を任意に変更することが可能である。
【0032】
図2および図4に示すように、本実施形態の吸収体13は、トップシート14と共にその表面からバックシート12に向かってエンボス加工を規則的に施したエンボスパターン形成領域、すなわち凹部形成領域ZRを有する。この凹部形成領域ZRには、エンボス加工による凹部30の配列構成によって、全体として、いわゆる斜め格子状のエンボスパターンが形成される。このエンボスパターンの具体的構成などに関しては、本発明の特徴ではなく、例えば特許文献1,2などに開示された周知のものを適宜採用することが可能である。
【0033】
本実施形態における凹部30は、トップシート14と、ラップ材26の第1ラップ部27および第2ラップ部28と、吸収性本体25とを共に一体的に圧縮して形成される。本実施形態では、ラップ材26の相互に重なり合う部分、すなわち第1ラップ部27および第2ラップ部28に凹部30が形成されるため、従来のものよりも、着用時やエンボス加工の際や着用中などにラップ材26の破れや吸収性本体を構成する材料の飛び出しなどを抑制することができる。また、凹部30の形態が維持されやすくなる。
【0034】
また、図2および図5に示すように、エンボスパターンは、吸収体13の周縁部には形成されておらず、従って凹部形成領域ZRは、このエンボスパターンが形成されない凹部非形成領域ZNによって取り囲まれた状態となっている。この凹部非形成領域ZNの存在により、エンボスパターンを構成する凹部30を伝って、尿などの液体が吸収体13の周縁部から漏れることを抑制することができる。なお、図5には便宜的に凹部形成領域ZRと凹部非形成領域ZNとの境界を二点鎖線で示してある。
【0035】
加えて、凹部30は、トップシート14と、ラップ材26の第1ラップ部27および第2ラップ部28と、吸収性本体25とを共に圧縮接合して形成されているので、凹部30の底面から尿などの液体があまり吸収されない傾向を持つ。従って、凹部30に流れ込む液体は、凹部30の側壁を通って吸収性本体25の凹部形成領域ZRへと吸収され、さらに凹部非形成領域ZNへと浸透する。
【0036】
各凹部30を適切な深さおよびパターンにて形成することにより、着用者の体重が加わっても、その溝構造を維持することができると共に、おむつ10の股下領域10Gにおける吸収体13の肌当接面において、柔らかな肌触りを維持することができる。従って、斜め格子状のエンボスパターンにより、脚の様々な動きに対しておむつ10がよれるなど変形を抑制できるとともに、その肌触りを柔らかいものとして、肌への刺激を極力抑えることが可能である。
【0037】
上述した実施形態では、吸収性本体25に対して一枚のラップ材26を一方向に巻き付けるようにしたが、逆方向に折り返すことによって第1ラップ部27と第2ラップ部28とを形成することも可能である。このような本発明による吸収体の他の実施形態を先の図4と同様な断面構造にて図6に示すが、先の実施形態と同一機能の要素にはこれと同一符号を記すに止め、重複する説明を省略する。すなわち、本実施形態においては、吸収性本体25の幅方向他端側にてラップ材26を折り返し、第1ラップ部27と第2ラップ部28とを重ね合わせるようにしている。しかしながら、図7に示すように、吸収性本体25の幅方向一端側にてラップ材26を内側に折り返すようにしてもかまわない。この場合、第1ラップ部27と第2ラップ部28との上下関係が逆になることに注意されたい。何れの場合であっても、折り返し位置を吸収性本体25に対するラップ材26の巻き付け方向に応じて、折り返し位置を吸収性本体25の幅方向一端側および他端側の何れかに変更することができる。
【0038】
しかしながら、図6に示した実施形態では、図4に示した実施形態の有利な特徴を有しながらも、一枚のラップ材26をいわゆるZ折りに折り返しているため、図4に示した実施形態よりも吸収体13の製造が容易である。
【0039】
上述した実施形態では、一枚のラップ材26にて吸収性本体25を包むようにしたが、二枚のラップ材26a,26bにて吸収性本体25を包むことも可能である。このような本発明による吸収体13のさらに別な実施形態を先の図4と同様な断面構造にて図8に示すが、先の実施形態と同一機能の要素にはこれと同一符号を記すに止め、重複する説明を省略する。すなわち、本実施形態におけるラップ材26は、第1ラップ部27および第2ラップ部28を有する第1のラップ材26aと、第3ラップ部29を有する第2のラップ材26bとで構成されている。第1のラップ材26aは、相互に重ね合わされてトップシート14と吸収性本体25との間に配され、トップシート14および吸収性本体25と共に凹部30を形成する。また、第2のラップ材26bは、吸収性本体25の他方の表面側、すなわちバックシート12と吸収性本体25との間に配される。本実施形態における第1のラップ材26aは、吸収性本体25の表面の幅方向他端側にて折り返しているが、吸収性本体25の表面の幅方向一端側にて折り返すことも可能である。
【0040】
本実施形態では、2枚のラップ材26a,26bを用いているため、第1のラップ材26aと第2のラップ材26bとを特性の異なるもので構成することが可能である。例えば、第1のラップ材26aの強度が第2のラップ材26bよりも高くなるように、これらの坪量や厚みなどを異ならせることにより、エンボス加工の際に第1のラップ材26aをさらに破れ難くすることができる。あるいは、熱可塑性不織布にて第1のラップ材26aを構成し、ティシュにて第2のラップ材26bを構成した場合、エンボス加工に対する戻り変形がティシュよりも熱可塑性不織布の方が少ない傾向にあるので、凹部30の型崩れをより確実に抑制することが可能である。
【0041】
上述した実施形態では、二枚のラップ材26a,26bを吸収性本体25の表面側と裏面側とに分けて配したが、二枚のラップ材26a,26bを吸収性本体25の表面側で相互に重ね合わせるように配することも可能である。このような本発明による吸収体13の異なる実施形態を先の図4と同様な断面構造にて図9に示すが、先の実施形態と同一機能の要素にはこれと同一符号を記すに止め、重複する説明を省略する。すなわち、本実施形態においては、第1ラップ部27が第1のラップ材26aにて形成され、第2ラップ部28と第3ラップ部29とが第1のラップ材26aとは異なる第2のラップ材26bにて形成されている。第2のラップ材26bは、吸収性本体25の幅方向一端側で折り返され、第1のラップ材26aと重ね合わされた状態となっている。この場合、第1のラップ材26aを吸収性本体25の表面と第2のラップ材26bの第2ラップ部28との間に配することも可能である。
【0042】
本実施形態では、第2のラップ材26bを吸収性本体25の幅方向一端側で折り返して吸収性本体25を包んだ状態となっているため、図6に示した実施形態と同様に、吸収性本体25の幅方向一端側の型崩れを確実に阻止することができる。また、第2のラップ材26bの大きさを変更して第2ラップ部28に対する第1ラップ部27の重なり合う面積を100%未満にしたり、これらの重なり合う位置を容易に変更することができる。ただし、ラップ材26a,26bの破れや吸収性本体25を構成する材料の飛び出しを十分に防止するという観点から、第2ラップ部28に対する第1ラップ部27の重なり合う面積を10%以上にすることが好ましい。
【0043】
このように、本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。例えば、ラップ材26の重なり合う部分を二重ではなく、三重以上にしたり、使用するラップ材を三枚以上としたり、あるいは吸収性本体25の裏面側にもラップ材26の重なり合う部分を形成することも可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のない構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。
【符号の説明】
【0044】
10 テープ型使い捨ておむつ(おむつ)
12 バックシート
13 吸収体
14 トップシート
25 吸収性本体
26 ラップ材
27 第1ラップ部
28 第2ラップ部
29 第3ラップ部
30 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9