(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】人力駆動車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
B62M 6/45 20100101AFI20221213BHJP
B62J 45/40 20200101ALI20221213BHJP
B62M 6/50 20100101ALI20221213BHJP
B62M 6/55 20100101ALI20221213BHJP
【FI】
B62M6/45
B62J45/40
B62M6/50
B62M6/55
(21)【出願番号】P 2017210988
(22)【出願日】2017-10-31
【審査請求日】2019-10-09
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】謝花 聡
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】大谷 光司
【審判官】藤井 昇
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3212742(JP,U)
【文献】特開平11-99983(JP,A)
【文献】特開平11-99984(JP,A)
【文献】特開2000-103383(JP,A)
【文献】特開2015-93671(JP,A)
【文献】特開2016-88387(JP,A)
【文献】特開2013-95306(JP,A)
【文献】特開2000-103382(JP,A)
【文献】特開2011-201373(JP,A)
【文献】特開2018-1837(JP,A)
【文献】特開2001-80570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M6/40-6/55, 6/90, 9/122, 9/132
B62J1/06-1/08, 43/13, 43/26-43/30, 45/40-45/423
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車両の推進をアシストするモータを制御する制御部を含み、
前記制御部は、前記人力駆動車両に入力される人力駆動力に応じて前記モータを制御し、前記人力駆動車両の搭乗者の姿勢のみに応じて、前記人力駆動力の変化に対する前記モータの出力トルクの応答特性を変更
し、
前記応答特性は、前記人力駆動力が減少する場合における第1応答特性、および、前記人力駆動力が増加する場合における第2応答特性を含み、
前記制御部は、前記搭乗者の姿勢に応じて、前記第1応答特性および前記第2応答特性の少なくとも一方を変更し、
前記制御部は、前記搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合、前記搭乗者の姿勢が座り漕ぎの場合よりも、前記人力駆動力の変化に対して前記モータの出力トルクの変化の遅れが小さくなるように前記第1応答特性を変更する、人力駆動車両用制御装置。
【請求項2】
人力駆動車両の推進をアシストするモータを制御する制御部を含み、
前記制御部は、前記人力駆動車両に入力される人力駆動力に応じて前記モータを制御し、前記人力駆動車両の搭乗者の姿勢のみに応じて、前記人力駆動力の変化に対する前記モータの出力トルクの応答特性を変更
し、
前記応答特性は、前記人力駆動力が減少する場合における第1応答特性、および、前記人力駆動力が増加する場合における第2応答特性を含み、
前記制御部は、前記搭乗者の姿勢に応じて、前記第1応答特性および前記第2応答特性の少なくとも一方を変更し
前記制御部は、前記搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合、前記搭乗者の姿勢が座り漕ぎの場合よりも、前記人力駆動力の変化に対して前記モータの出力トルクの変化の遅れが小さくなるように前記第2応答特性を変更する、人力駆動車両用制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記搭乗者の姿勢に応じて前記人力駆動力に対する前記モータの出力トルクの比率を変更する、請求項
1または2に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合、前記搭乗者の姿勢が座り漕ぎの場合よりも前記人力駆動力に対する前記モータの出力トルクの比率を高くする、請求項
3に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項5】
前記搭乗者の姿勢を検出する第1検出部をさらに含む、請求項1
~4のいずれか一項に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項6】
前記人力駆動力を検出する第2検出部をさらに含む、請求項1
~5のいずれか一項に記載の人力駆動車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人力駆動車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人力駆動車用制御装置として、例えば、特許文献1のものが知られている。この人力駆動車用制御装置は、搭乗者がスイッチを操作することによって、モータの出力特性を変更している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の人力駆動車用制御装置では、スイッチを操作しなければ、モータの出力特性を変更することができない。
本発明の目的は、スイッチを操作しなくてもモータの出力特性を変更することができる人力駆動車用制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に従う人力駆動車両用制御装置は、人力駆動車両の推進をアシストするモータを制御する制御部を含み、前記制御部は、前記人力駆動車両に入力される人力駆動力に応じて前記モータを制御し、前記人力駆動車両の搭乗者の姿勢に応じて、前記人力駆動力の変化に対する前記モータの出力トルクの応答特性を変更する。
上記第1側面に従えば、搭乗者の姿勢に応じて人力駆動力の変化に対するモータの出力トルクの応答特性が変更されるため、スイッチを操作しなくてもモータの出力特性を変更することができる。また搭乗者の姿勢に応じて好適なモータの制御を行うことができる。
【0006】
前記第1側面に従う第2側面の人力駆動車両用制御装置において、前記応答特性は、前記人力駆動力が減少する場合における第1応答特性、および、前記人力駆動力が増加する場合における第2応答特性を含み、前記制御部は、前記搭乗者の姿勢に応じて、前記第1応答特性および前記第2応答特性の少なくとも一方を変更する。
上記第2側面に従えば、第1応答特性および第2応答特性の少なくとも一方を変更することによって、第1応答特性および第2応答特性の少なくとも一方を用いてモータの制御が行われる期間において、搭乗者の姿勢に応じて好適なモータの制御を行うことができる。
【0007】
前記第2側面に従う第3側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記搭乗者の姿勢に応じて、前記第1応答特性を変更する。
上記第3側面に従えば、第1応答特性を用いてモータの制御が行われる期間において、搭乗者の姿勢に応じて好適なモータの制御を行うことができる。
【0008】
前記第2または第3側面に従う第4側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合、前記搭乗者の姿勢が座り漕ぎの場合よりも、前記人力駆動力の変化に対して前記モータの出力トルクの変化の遅れが小さくなるように前記第1応答特性を変更する。
上記第4側面に従えば、搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合、かつ、人力駆動力が減少する場合に、モータの出力トルクが人力駆動力の変化に応じて変化しやすくなるため、立ち漕ぎおよび座り漕ぎに適したモータの制御を行うことができる。
【0009】
前記第2側面に従う第5側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合、前記搭乗者の姿勢が座り漕ぎの場合よりも、前記人力駆動力の変化に対して前記モータの出力トルクの変化の遅れが小さくなるように前記第2応答特性を変更する。
上記第5側面に従えば、搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合、かつ、人力駆動力が増加する場合に、モータの出力トルクが人力駆動力の変化に応じて変化しやすくなるため、立ち漕ぎおよび座り漕ぎに適したモータの制御を行うことができる。
【0010】
本発明の第6側面に従う人力駆動車両用制御装置は、人力駆動車両の推進をアシストするモータを制御する制御部を含み、前記制御部は、前記モータの出力トルクが所定値以下になるように、前記人力駆動車両に入力される人力駆動力に応じて前記モータを制御し、搭乗者の姿勢に応じて、前記所定値を変更する。
上記第6側面に従えば、登場者の姿勢に応じてモータが出力可能なトルクが変更されるため、搭乗者の姿勢に応じて好適なモータの制御を行うことができる。
【0011】
前記第6側面に従う第7側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合、前記搭乗者の姿勢が座り漕ぎの場合よりも前記所定値を高くする。
上記第7側面に従えば、搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合に所定値が高くなるため、立ち漕ぎに適したモータの制御を行うことができる。
【0012】
前記第1~第7側面のいずれか1つに従う第8側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記搭乗者の姿勢に応じて前記人力駆動力に対する前記モータの出力トルクの比率を変更する。
上記第8側面に従えば、搭乗者の姿勢に応じて人力駆動力に対するモータの出力トルクの比率が変更されるため、搭乗者の姿勢に応じて好適なモータの制御を行うことができる。
【0013】
前記第8側面に従う第9側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合、前記搭乗者の姿勢が座り漕ぎの場合よりも前記人力駆動力に対する前記モータの出力トルクの比率を高くする。
上記第9側面に従えば、搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合に人力駆動力に対するモータの出力トルクの比率が高くなるため、立ち漕ぎに適したモータの制御を行うことができる。
【0014】
前記第1~第9側面のいずれか1つに従う第10側面の人力駆動車両用制御装置において、前記搭乗者の姿勢を検出する第1検出部をさらに含む。
上記第10側面に従えば、第1検出部によって搭乗者の姿勢を好適に検出することができる。
【0015】
前記第10側面に従う第11側面の人力駆動車両用制御装置において、前記第1検出部は、前記人力駆動車両のクランクに与えられる力を検出するセンサ、ペダルに与えられる力を検出するセンサ、フレームに与えられる力を検出するセンサ、サドルに与えられる力を検出するセンサ、シートポストに与えられる力を検出するセンサ、ハンドルバーに与えられる力を検出するセンサ、前記人力駆動車両に搭載されるカメラ、前記人力駆動車両のロール方向の傾斜を検出するセンサ、および、人力駆動車両のロール方向の加速度を検出するセンサの少なくとも1つを含む。
上記第11側面に従えば、第1検出部に含まれるセンサまたはカメラによって搭乗者の姿勢を好適に検出することができる。
【0016】
本発明の第12側面に従う人力駆動車両用制御装置は、人力駆動車両の推進をアシストするモータを、前記人力駆動車両に入力される人力駆動力に応じて制御する制御部を含み、前記制御部は、前記人力駆動力に応じて、前記人力駆動力の変化に対する前記モータの出力トルクの応答特性を変更する。
上記第12側面に従えば、人力駆動力に応じて人力駆動力の変化に対するモータの出力トルクの応答特性が変更されるため、搭乗者の駆動力に応じて好適なモータの制御を行うことができる。
【0017】
前記第12側面に従う第13側面の人力駆動車両用制御装置において、前記応答特性は、前記人力駆動力が減少する場合における第1応答特性、および、前記人力駆動力が増加する場合における第2応答特性を含み、前記制御部は、人力駆動車両の搭乗者の姿勢に応じて、前記第1応答特性および前記第2応答特性の少なくとも一方を変更する。
上記第13側面に従えば、第1応答特性および第2応答特性の少なくとも一方を変更することによって、第1応答特性および第2応答特性の少なくとも一方を用いてモータの制御が行われる期間において、搭乗者の姿勢に応じて好適なモータの制御を行うことができる。
【0018】
前記第13側面に従う第14側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動力に応じて、前記第1応答特性を変更する。
上記第14側面に従えば、搭乗者の駆動力が減少する場合に、搭乗者の姿勢に応じて好適なモータの制御を行うことができる。
【0019】
前記第14側面に従う第15側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動力が第1駆動力以上の場合、前記人力駆動力が前記第1駆動力未満の場合よりも、前記人力駆動力の変化に対して前記モータの出力トルクの変化の遅れが小さくなるように前記第1応答特性を変更する。
上記第15側面に従えば、人力駆動力が第1駆動力以上の場合、モータの応答速度が速くなるように第1応答特性を変更するので、搭乗者の駆動力に応じて好適なモータの制御を行うことができる。
【0020】
本発明の第16側面に従う人力駆動車両用制御装置は、人力駆動車両の推進をアシストするモータを制御する制御部を含み、前記制御部は、前記人力駆動車両に入力される人力駆動力に応じて、前記モータの出力トルクが所定値以下となるように前記モータを制御し、前記人力駆動力に応じて、前記所定値を変更する。
上記第16側面に従えば、人力駆動力に応じて所定値が変更されるため、搭乗者の駆動力に応じて好適なモータの制御を行うことができる。
【0021】
前記第16側面に従う第17側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動力が第2駆動力以上の場合、前記人力駆動力が前記第2駆動力未満の場合よりも前記所定値を高くする。
上記第17側面に従えば、人力駆動力が第2駆動力以上の場合、所定値が高くなるため、搭乗者の駆動力に応じて好適なモータの制御を行うことができる。
【0022】
前記第1~第17側面のいずれか1つに従う第18側面の人力駆動車両用制御装置において、前記人力駆動力を検出する第2検出部をさらに含む。
上記第18側面に従えば、第2検出部によって人力駆動力を好適に検出できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の人力駆動車両用制御装置は、スイッチを操作しなくてもモータの出力特性を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態の人力駆動車両用制御装置の電気的な構成を示すブロック図。
【
図2】
図1の制御部によって実行されるモータの出力トルクTを設定する処理のフローチャート。
【
図3】
図1の制御部によって実行される第1応答特性を変更する処理のフローチャート。
【
図4】人力駆動力と、第1実施形態の人力駆動車両用制御装置によって制御されるモータの出力トルクとの関係を示すグラフ。
【
図5】
図4よりも比率の低いアシストモードにおける人力駆動力とモータの出力トルクとの関係を示すグラフ。
【
図6】第2実施形態の制御部によって実行される第1応答特性および第2応答特性を変更する処理のフローチャート。
【
図7】第3実施形態の制御部によって実行されるモータの出力トルクの所定値を変更する処理のフローチャート。
【
図8】第4実施形態の制御部によって実行されるモータの第1応答特性を変更する処理のフローチャート。
【
図9】第5実施形態の制御部によって実行されるモータの出力トルクの所定値を変更する処理のフローチャート。
【
図10】第1実施形態の変形例の制御部によって実行される第1応答特性および比率を変更する処理のフローチャート。
【
図11】第3実施形態の変形例の制御部によって実行されるモータの出力トルクの所定値および比率を変更する処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
図1を参照して、実施形態の人力駆動車両用制御装置30について説明する。人力駆動車両用制御装置30は、人力駆動車両Bに設けられる。人力駆動車両Bは、少なくとも人力駆動力によって駆動することができる車両である。人力駆動車両Bは、例えば、自転車を含む。人力駆動車両Bは、車輪の数が限定されず、例えば1輪車および3輪以上の車両も含む。自転車は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、および、リカンベントを含む。以下、実施の形態において、人力駆動車両Bを、自転車として説明する。
【0026】
人力駆動車両Bは、フレーム、クランク、および、駆動輪を含む。クランクには、人力駆動力が入力される。クランクは、フレームに回転可能に支持されるクランク軸と、クランク軸の両端部にそれぞれ設けられるクランクアームとを含む。各クランクアームには、ペダルが連結される。駆動輪は、フレームに支持される。クランクと駆動輪とは、駆動機構によって連結される。駆動機構は、クランク軸に結合される第1回転体を含む。クランク軸と第1回転体とは、第1ワンウェイクラッチを介して結合されていてもよい。第1ワンウェイクラッチは、クランクが前転した場合に、第1回転体を前転させ、クランクが後転した場合に、第1回転体を後転させないように構成される。第1回転体は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。駆動機構は、連結部材と、第2回転体とをさらに含む。連結部材は、第1回転体の回転力を第2回転体に伝達する。連結部材は、例えば、チェーン、ベルト、または、シャフトを含む。
【0027】
第2回転体は、駆動輪に連結される。第2回転体は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。第2回転体と駆動輪との間には、第2ワンウェイクラッチが設けられていることが好ましい。第2ワンウェイクラッチは、第2回転体が前転した場合に、駆動輪を前転させ、第2回転体が後転した場合に、駆動輪を後転させないように構成される。
【0028】
人力駆動車両Bは、前輪および後輪を含む。以下の実施形態では、後輪を駆動輪として説明するが、前輪が駆動輪であってもよい。
【0029】
人力駆動車両用制御システム10は、モータ12、モータ12の駆動回路14、変速機16、変速機16のアクチュエータ18、操作部20、バッテリ22、および、人力駆動車両用制御装置30を含む。
【0030】
モータ12および駆動回路14は、同一のハウジングに設けられることが好ましい。駆動回路14は、バッテリ22からモータ12に供給される電力を制御する。駆動回路14は、人力駆動車両用制御装置30の制御部32と有線または無線によって通信可能に接続されている。駆動回路14は、例えばシリアル通信によって制御部32と通信可能である。駆動回路14は、制御部32からの制御信号に応じてモータ12を駆動させる。モータ12は、人力駆動車両Bの推進をアシストする。モータ12は、電気モータを含む。モータ12は、ペダルから後輪までの人力駆動力の伝達経路、または、前輪に回転を伝達するように設けられる。モータ12は、人力駆動車両Bのフレーム、後輪、または、前輪に設けられる。一例では、モータ12は、クランク軸からフロント回転体までの動力伝達経路に結合される。モータ12とクランク軸との間の動力伝達経路には、クランク軸を人力駆動車両Bが前進する方向に回転させた場合にクランクの回転力によってモータ12が回転しないようにワンウェイクラッチが設けられるのが好ましい。モータ12および駆動回路14が設けられるハウジングには、モータ12および駆動回路14以外の構成が設けられてもよく、例えばモータ12の回転を減速して出力する減速機が設けられてもよい。
【0031】
変速機16は、人力駆動車両Bの変速比Rを変更可能に構成される。変速機16は、変速比Rを段階的に変更可能に構成される。アクチュエータ18は、変速機16に変速動作を実行させる。変速機16は、制御部32によって制御される。アクチュエータ18は、制御部32と有線または無線によって通信可能に接続されている。アクチュエータ18は、例えば電力線通信(PLC;power line communication)によって制御部32と通信可能である。アクチュエータ18は、制御部32からの制御信号に応じて変速機16に変速動作を実行させる。変速機16は、内装変速機および外装変速機(ディレイラ)の少なくとも一方を含む。変速機16およびアクチュエータ18は、省略されてもよい。変速機16は、ワイヤによって操作される変速機であってもよい。
【0032】
操作部20は、ユーザが操作可能である。操作部20は、人力駆動車両Bの推進をアシストするモータ12の制御モードを変更するように構成される。制御モードは、人力駆動車両Bに入力される人力駆動力に応じてモータ12を駆動するアシストモードを含む。アシストモードは、人力駆動力をアシストするアシスト力の強さの異なる複数のアシストモードを含むことが好ましい。制御モードはモータ12を駆動しないオフモード、および操作部20の操作に応じてモータ12を駆動するウォークモードの少なくとも一方をさらに含んでいてもよい。操作部20は、人力駆動車両Bのハンドルバーに取り付けられる。操作部20は、例えば操作部材と、操作部材の動きを検出するセンサと、センサの出力信号に応じて、制御部32と通信を行う電気回路とを含む。操作部20は、制御部32と有線または無線によって通信可能に接続されている。操作部20は、例えばPLCによって制御部32と通信可能である。ユーザによって操作部20が操作されることによって、操作部20は、制御部32に出力信号を送信する。操作部20は、モータ12の制御モードを変更するための1つ以上の操作部材を含む。各操作部材は、プッシュスイッチ、レバー式スイッチ、または、タッチパネルによって構成される。操作部20は、ウォークモードにおいてモータ12を駆動するための操作部材を含んでいてもよい。
【0033】
バッテリ22は、1または複数のバッテリセルを含む。バッテリセルは、充電池を含む。バッテリ22は、人力駆動車両Bに設けられ、バッテリ22と有線で電気的に接続されている他の電機部品、例えば、モータ12、アクチュエータ18および人力駆動車両用制御装置30に電力を供給する。バッテリ22は、制御部32と有線または無線によって通信可能に接続されている。バッテリ22は、例えばPLCによって制御部32と通信可能である。バッテリ22は、フレームの外部に取り付けられてもよく、少なくとも一部がフレームの内部に収容されてもよい。
【0034】
人力駆動車両用制御装置30は、制御部32を含む。一例では、人力駆動車両用制御装置30は、記憶部34、第1検出部36、第2検出部38、および、車速センサ42をさらに含む。
【0035】
第1検出部36は、搭乗者の姿勢を検出する。第1検出部36は、センサ36A、36B、36C、36D、36E、36F、36H、36I、および、カメラ36Gの少なくとも1つを含む。
【0036】
センサ36Aは、人力駆動車両Bのクランクに与えられる力を検出する。センサ36Aは、クランクに与えられる力に応じた信号を出力する。搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合、搭乗者の姿勢が座り漕ぎの場合よりも、クランクに与えられる力は大きい。制御部32は、センサ36Aによって検出されるクランクに与えられる力の大きさによって搭乗者の姿勢を判定する。例えば、制御部32は、人力駆動力TAが第1駆動力TA1未満から第1駆動力TA1以上になった場合、搭乗者の姿勢が座り漕ぎから立ち漕ぎに変化したと判定する。制御部32は、人力駆動力TAが第1駆動力TA1以上から第1駆動力TA1未満になった場合、搭乗者の姿勢が立ち漕ぎから座り漕ぎに変化したと判定する。制御部32は、人力駆動力TAが第1駆動力TA1とは異なる第3駆動力TA3以上から第3駆動力TA3未満になった場合、搭乗者の姿勢が立ち漕ぎから座り漕ぎに変化したと判定するようにしてもよい。
【0037】
センサ36Bは、ペダルに与えられる力を検出する。センサ36Bは、例えば、ペダルに設けられる踏力計またはパワーメータを含む。センサ36Bは、ペダルに与えられる力に応じた信号を出力する。搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合、座り漕ぎの場合よりも、ペダルに与えられる力は大きい。制御部32は、センサ36Bによって検出されるペダルに与えられる力の大きさによって搭乗者の姿勢を判定する。制御部32は、例えば、ペダルに与えられる力の大きさと、クランクの回転角度とが所定の関係を満たす場合、搭乗者が立ち漕ぎしていると判定してもよい。制御部32は、ペダルに与えられる力の大きさが所定値以上になると、搭乗者が立ち漕ぎしていると判定してもよい。
【0038】
センサ36Cは、フレームに与えられる力を検出する。センサ36Cは、例えば、フレームに設けられて、フレームの歪みを検出する。センサ36Cは、フレームに与えられる力に応じた信号を出力する。搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合、搭乗者の姿勢が座り漕ぎの場合よりも、フレームの歪みは大きい。制御部32は、センサ36Cによって検出されるフレームの歪みの大きさによって搭乗者の姿勢を判定する。センサ36Cは、例えば歪センサを含む。制御部32は、例えば、フレームの歪量が所定値以上になると、搭乗者が立ち漕ぎしていると判定する。
【0039】
センサ36Dは、サドルに与えられる力を検出する。センサ36Dは、例えば、サドルに設けられて、サドルにかかる搭乗者の荷重を検出する。センサ36Dは、サドルに与えられる力に応じた信号を出力する。搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合、搭乗者の姿勢が座り漕ぎの場合よりも、サドルに与えられる力は小さい。制御部32は、センサ36Dによって検出されるサドルに与えられる力の大きさによって搭乗者の姿勢を判定する。センサ36Dは、例えば圧力センサを含む。制御部32は、例えば、サドルにかかる搭乗者の荷重が所定値未満になると、搭乗者が立ち漕ぎしていると判定する。
【0040】
センサ36Eは、シートポストに与えられる力を検出する。センサ36Eは、例えば、シートポストに設けられて、シートポストにかかる搭乗者の荷重を検出する。センサ36Eは、シートポストに与えられる力に応じた信号を出力する。搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合、搭乗者の姿勢が座り漕ぎの場合よりも、シートポストに与えられる力は小さい。制御部32は、センサ36Eによって検出されるシートポストに与えられる力の大きさによって搭乗者の姿勢を判定する。センサ36Eは、例えば歪センサを含む。制御部32は、例えば、シートポストの荷重が所定値未満になると、搭乗者が立ち漕ぎしていると判定する。
【0041】
センサ36Fは、ハンドルバーに与えられる力を検出する。センサ36Fは、例えば、ハンドルバーに設けられて、ハンドルバーにかかる搭乗者の荷重を検出する。センサ36Fは、ハンドルバーに与えられる力に応じた信号を出力する。搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合、搭乗者の姿勢が座り漕ぎの場合よりも、ハンドルバーに与えられる力は大きい。制御部32は、センサ36Fによって検出されるハンドルバーに与えられる力の大きさによって搭乗者の姿勢を判定する。センサ36Fは、例えば歪センサを含む。制御部32は、例えばハンドルバーの荷重が所定値以上になると、搭乗者が立ち漕ぎしていると判定する。
【0042】
カメラ36Gは、人力駆動車両Bに搭載される。カメラ36Gは、例えば、ハンドルバーに設けられて、ハンドルバーよりも後方の画像を検出する。カメラ36Gは、搭乗者の撮像を出力する。制御部32は、カメラ36Gによって取得される搭乗者の撮像データによって搭乗者の姿勢を判定する。制御部32は、例えば搭乗者の撮像データと、所定の画像データとを比較して、類似度が所定値以上であれば搭乗者が立ち漕ぎしていると判定する。
【0043】
センサ36Hは、人力駆動車両Bのロール方向の傾斜を検出する。センサ36Hは、例えば傾斜センサを含む。傾斜センサは、例えばジャイロセンサおよび加速度センサの少なくとも一方を含む。センサ36Hは、例えば、フレームに設けられて、フレームのロール方向の傾斜を検出する。センサ36Hは、人力駆動車両Bのロール方向の傾斜に応じた信号を出力する。搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合、搭乗者の姿勢が座り漕ぎの場合よりも、フレームのロール方向の移動量が大きくなる。制御部32は、センサ36Hによって検出される人力駆動車両Bのロール方向の傾斜によって搭乗者の姿勢を判定する。制御部32は、例えばフレームのロール方向の傾斜が所定値以上になり所定値未満になることが繰り返されると、搭乗者が立ち漕ぎしていると判定する。
【0044】
センサ36Iは、人力駆動車両Bのロール方向の加速度を検出する。センサ36Iは、例えば加速度センサを含む。センサ36Iは、例えば、フレームに設けられて、フレームのロール方向の加速度を検出する。センサ36Iは、人力駆動車両Bのロール方向の加速度に応じた信号を出力する。搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合、搭乗者の姿勢が座り漕ぎの場合よりも、フレームのロール方向の加速度が大きくなる。制御部32は、センサ36Iによって検出される人力駆動車両Bのロール方向の加速度によって搭乗者の姿勢を判定する。制御部32は、例えばフレームのロール方向の加速度が所定値以上になり所定値未満になることが繰り返されると、搭乗者が立ち漕ぎしていると判定する。
【0045】
第2検出部38は、人力駆動力TAを検出する。第2検出部38は、人力駆動力TAに応じた信号を出力する。第2検出部38は、ペダルを介して駆動機構に入力される人力駆動力TAを検出する。第2検出部38は、クランク軸からフロント回転体までの間の人力駆動力TAの伝達経路に設けられてもよく、クランク軸またはフロント回転体に設けられてもよく、クランクアームまたはペダルに設けられてもよい。第2検出部38は、例えば、歪センサ、光学センサ、および、圧力センサ等を用いて実現することができる。歪センサは、歪ゲージ、磁歪センサ、および、圧電センサを含む。第2検出部38は、クランクアームまたはペダルに加えられる人力駆動力TAに応じた信号を出力するセンサであれば、いずれのセンサを採用することもできる。第2検出部38は、制御部32と有線または無線によって通信可能に接続されている。第2検出部38は、人力駆動力TAに応じた信号を制御部32に出力する。第1検出部36と第2検出部38とは、同一のセンサを含んでいてもよい。例えば、第1検出部36がセンサ36Aを含む場合、第2検出部38もセンサ36Aを含んでいてもよい。この場合、第1検出部36および第2検出部38とは、1つの検出部によって構成されていてもよい。第1検出部36と第2検出部38とは、各別のセンサを含んでいてもよい。
【0046】
車速センサ42は、車輪の回転速度を検出する。車速センサ42は、有線または無線によって制御部32と電気的に接続されている。車速センサ42は、フレームのチェーンステイに取り付けられる。車速センサ42は、制御部32と有線または無線によって通信可能に接続されている。車速センサ42は、後輪に取り付けられる磁石と車速センサ42との相対位置の変化に応じた信号を制御部32に出力する。制御部32は、車輪の回転速度に基づいて人力駆動車両Bの車速Vを演算する。車速センサ42は、リードスイッチを構成する磁性体リード、または、ホール素子を含むことが好ましい。車速センサ42は、フロントフォークに設けられ、前輪に取り付けられる磁石を検出する構成としてもよい。
【0047】
制御部32は、予め定められる制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。制御部32は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。記憶部34には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部34は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。制御部32および記憶部34は、例えばモータ12が設けられるハウジングに設けられる。
【0048】
制御部32は、人力駆動車両Bに入力される人力駆動力TAに応じてモータ12を制御する。制御部32は、人力駆動車両Bに入力される人力駆動力TAに対するモータ12の出力トルクTMの比率が比率Aになるようにモータ12を制御する。人力駆動力TAおよびモータ12の出力トルクTMは、トルクで表される。制御部32は、少なくとも一部の車速Vにおいて比率Aが異なる複数のアシストモードでモータ12を制御可能である。アシストモードが、例えば第1モード、第2モード、および、第3モードの3つの動作モードを含む場合、比率Aは、第1比率A1、第1比率A1よりも小さい第2比率A2、および、第2比率A2よりも小さい第3比率A3を含む。第1モードにおける比率Aは、第1比率A1である。第2モードにおける比率Aは、第2比率A2である。第3モードにおける比率Aは、第3比率A3である。アシストモードは、2つまたは4つ以上のアシストモードを含んでいてもよい。制御部32は、車速Vが予め定める速度以上になった場合、モータ12の駆動を停止する。予め定める速度は、例えば時速25kmまたは時速45kmである。
【0049】
制御部32は、操作部20からの信号に応じて比率Aを変更する。制御部32は、操作部20からの信号に応じてアシストモードを変更することによって、比率Aを変更する。
【0050】
制御部32は、モータ12の出力トルクTMが所定値TMX以下になるように、人力駆動力TAに応じてモータ12を制御する。所定値TMXは、モータ12の出力特性に応じた出力トルクTMの上限値以下の値が設定される。
【0051】
制御部32は、人力駆動車両Bの搭乗者の姿勢に応じて、人力駆動力TAの変化に対するモータ12の出力トルクTMの応答特性を変更する。応答特性に関する情報は、記憶部34に記憶されている。制御部32は、搭乗者の姿勢に応じて、第1応答特性および第2応答特性を変更する。応答特性を変更することによって、人力駆動力TAの変化に対するモータ12の出力トルクTMの変化の遅れDを変更することができる。一例では、制御部32は、人力駆動力TAに対してフィルタ処理を行うことによって、遅れDを変更する。制御部32は、モータ12への指令信号に対してフィルタ処理を行うことによって、遅れDを変更してもよい。制御部32は、例えばローパスフィルタを含む。フィルタは、時定数を含む。
【0052】
応答特性は、人力駆動力TAが減少する場合における第1応答特性、および、人力駆動力TAが増加する場合における第2応答特性を含む。第1応答特性が設定されているときの遅れDは、第2応答特性が設定されているときの遅れD以上であることが好ましい。制御部32は、搭乗者の姿勢に応じて、第1応答特性および第2応答特性の少なくとも一方を変更する。本実施形態では、制御部32は、搭乗者の姿勢に応じて、第1応答特性を変更する。制御部32は、搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合、搭乗者の姿勢が座り漕ぎの場合よりも、遅れDが小さくなるように第1応答特性を変更する。
【0053】
図2を参照して、モータ12の出力トルクTMを設定する処理について説明する。制御部32は、操作部20が操作されてアシストモードが設定されると、処理を開始して
図2に示すフローチャートのステップS11に移行する。制御部32は、アシストモードが設定されている限り、所定周期ごとにステップS11からの処理を実行する。
【0054】
制御部32は、ステップS11において、人力駆動力TAが減少しているか否かを判定する。制御部32は、人力駆動力TAが減少していると判定した場合、ステップS12に移行する。制御部32は、ステップS12において、応答特性を第1応答特性に設定し、ステップS14に移行する。
【0055】
制御部32は、ステップS11において、人力駆動力TAが減少していないと判定した場合、ステップS13に移行する。制御部32は、ステップS13において、応答特性を第2応答特性に設定し、ステップS14に移行する。
【0056】
制御部32は、ステップS14において、人力駆動力TA、比率A、および、応答特性に応じてモータ12の出力トルクTMを演算する。具体的には、制御部32は、ステップS12またはステップS13によって設定された応答特性を用いて人力駆動力TAにフィルタ処理を行った後の数値に比率Aを乗算することによって、モータ12の出力トルクTMを演算する。制御部32は、人力駆動力TAに比率Aを乗算することによって得られる数値に、ステップS12またはステップS13によって設定された応答特性を用いてフィルタ処理を行ない、モータ12の出力トルクTMを演算してもよい。
【0057】
次に、制御部32は、ステップS15において、ステップS14で演算したモータ12の出力トルクTMが所定値TMXよりも大きいか否かを判定する。制御部32は、モータ12の出力トルクTMが所定値TMXよりも大きいと判定した場合、ステップS16に移行する。制御部32は、ステップS16において、ステップS14で演算したモータ12の出力トルクTMを所定値TMXに変更して、ステップS14に移行する。制御部32は、ステップS17において、ステップS16によって変更されたモータ12の出力トルクTMがモータ12から出力されるようにモータ12を制御して処理を終了する。
【0058】
制御部32は、ステップS15において、モータ12の出力トルクTMが所定値TMXよりも大きくないと判定した場合、ステップS16の処理を行わず、ステップS17に移行する。この場合、制御部32は、ステップS17において、ステップS14で演算したモータ12の出力トルクTMがモータ12から出力されるようにモータ12を制御して処理を終了する。
【0059】
図3を参照して、第1応答特性を変更する処理について説明する。制御部32は、操作部20が操作されてアシストモードが設定されると、処理を開始して
図3に示すフローチャートのステップS21に移行する。制御部32は、アシストモードが設定されている限り、所定周期ごとにステップS21からの処理を実行する。
【0060】
制御部32は、ステップS21において、搭乗者の姿勢が座り漕ぎから立ち漕ぎに変化したか否かを判定する。制御部32は、第1検出部36の出力に応じて搭乗者の姿勢が座り漕ぎから立ち漕ぎに変化したか否かを判定する。制御部32は、搭乗者の姿勢が座り漕ぎから立ち漕ぎに変化したと判定した場合、ステップS22に移行する。
【0061】
制御部32は、ステップS22において、遅れDが小さくなるように第1応答特性を変更し、ステップS23に移行する。例えば、制御部32は、第1応答特性が用いられる場合のフィルタに含まれる時定数を小さくすることによって遅れDを小さくする。
【0062】
制御部32は、ステップS23において、搭乗者の姿勢が立ち漕ぎから座り漕ぎに変化したか否かを判定する。制御部32は、第1検出部36の出力に応じて搭乗者の姿勢が立ち漕ぎから座り漕ぎに変化したか否かを判定する。制御部32は、搭乗者の姿勢が立ち漕ぎから座り漕ぎに変化していないと判定した場合、ステップS23の判定処理を繰り返す。制御部32は、搭乗者の姿勢が立ち漕ぎから座り漕ぎに変化したと判定した場合、ステップS24に移行する。
【0063】
制御部32は、ステップS24において、遅れDが大きくなるように第1応答特性を変更し、処理を終了する。例えば、制御部32は、第1応答特性が用いられる場合のフィルタに含まれる時定数を大きくすることによって遅れDを大きくする。ステップS24によって、第1応答特性が用いられている場合の遅れDは、ステップS22によって変更される前の遅れDになることが好ましい。
【0064】
制御部32は、
図3の処理によって設定される第1応答特性を用いて
図2のステップS12およびステップS14の処理を実行する。
【0065】
図4に示される破線L11は、人力駆動力TAの時間変化の一例を示す。人力駆動力TAは、クランクの回転角度に応じて周期的に変化する。
図4の実線L12は、破線L11に示す人力駆動力TAが入力されている場合、かつ、搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合のモータ12の出力トルクTMの変化を示す。
図4の一点鎖線L13は、破線L11に示す人力駆動力TAが入力されている場合、かつ、搭乗者の姿勢が座り漕ぎの場合、かつ、人力駆動力TAが減少している場合のモータ12の出力トルクTMの変化を示す。
図4の一点鎖線L13に示されるように、搭乗者の姿勢が座り漕ぎの場合、モータ12の出力トルクTMの低下速度が緩やかになる。一方、
図4の実線L12に示されるように、搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合、モータ12の出力トルクTMの変化は、搭乗者の姿勢が座り漕ぎの場合よりもモータ12の出力トルクの低下速度が速くなる。
【0066】
図5は、
図4よりも比率Aの低いアシストモードが設定されている場合のモータ12の出力トルクTMの変化を示す。
図5に示される破線L21は、人力駆動力TAの時間変化の一例を示す。
図5の破線L21で示される人力駆動力TAは、
図4の破線L11で示される人力駆動力TAと等しい。
図5の実線L22は、搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合のモータ12の出力トルクTMの変化を示す。
図5の一点鎖線L23は、搭乗者の姿勢が座り漕ぎの場合、かつ、人力駆動力TAが減少している場合のモータ12の出力トルクTMの変化を示す。
【0067】
(第2実施形態)
図1および
図6を参照して、第2実施形態の人力駆動車両用制御装置30について説明する。第2実施形態の人力駆動車両用制御装置30は、
図3に示す第1応答特性を変更する処理に代えて
図6に示す第1応答特性および第2応答特性を変更する処理を実行する点以外は、第1実施形態の人力駆動車両用制御装置30と同様であるので、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0068】
制御部32は、搭乗者の姿勢に応じて、第1応答特性および第2応答特性の少なくとも一方を変更する。本実施形態では、制御部32は、搭乗者の姿勢に応じて、第1応答特性および第2応答特性の両方を変更する。制御部32は、搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合、搭乗者の姿勢が座り漕ぎの場合よりも、遅れDが小さくなるように第1応答特性を変更する。制御部32は、搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合、搭乗者の姿勢が座り漕ぎの場合よりも、遅れDが小さくなるように第2応答特性を変更する。
【0069】
図6を参照して、第1応答特性および第2応答特性を変更する処理について説明する。制御部32は、操作部20が操作されてアシストモードが設定されると、処理を開始して
図6に示すフローチャートのステップS21に移行する。制御部32は、アシストモードが設定されている限り、所定周期ごとにステップS21からの処理を実行する。
【0070】
制御部32は、ステップS21において、搭乗者の姿勢が座り漕ぎから立ち漕ぎに変化したか否かを判定する。制御部32は、第1検出部36の出力に応じて搭乗者の姿勢が座り漕ぎから立ち漕ぎに変化したか否かを判定する。制御部32は、搭乗者の姿勢が座り漕ぎから立ち漕ぎに変化したと判定した場合、ステップS22に移行する。
【0071】
制御部32は、ステップS22において、遅れDが小さくなるように第1応答特性を変更し、ステップS25に移行する。例えば、制御部32は、第1応答特性が用いられる場合のフィルタに含まれる時定数を小さくすることによって遅れDを小さくする。制御部32は、ステップS25において遅れDが小さくなるように第2応答特性を変更し、ステップS23に移行する。例えば、制御部32は、第2応答特性が用いられる場合のフィルタに含まれる時定数を小さくすることによって遅れDを小さくする。ステップS22およびステップS25の処理の順番は入れ替えてもよい。
【0072】
制御部32は、ステップS23において、搭乗者の姿勢が立ち漕ぎから座り漕ぎに変化したか否かを判定する。制御部32は、第1検出部36の出力に応じて搭乗者の姿勢が立ち漕ぎから座り漕ぎに変化したか否かを判定する。制御部32は、搭乗者の姿勢が立ち漕ぎから座り漕ぎに変化していないと判定した場合、ステップS23の判定処理を繰り返す。制御部32は、搭乗者の姿勢が立ち漕ぎから座り漕ぎに変化したと判定した場合、ステップS24に移行する。
【0073】
制御部32は、ステップS24において、遅れDが大きくなるように第1応答特性を変更し、ステップS26に移行する。例えば、制御部32は、第1応答特性が用いられる場合のフィルタに含まれる時定数を大きくすることによって遅れDを大きくする。ステップS24によって、第1応答特性が用いられている場合の遅れDは、ステップS22によって変更される前の遅れDになることが好ましい。
【0074】
制御部32は、ステップS26において遅れDが大きくなるように第2応答特性を変更し、処理を終了する。例えば、制御部32は、第2応答特性が用いられる場合のフィルタに含まれる時定数を大きくすることによって遅れDを大きくする。ステップS26によって、第2応答特性が用いられている場合の遅れDは、ステップS25によって変更される前の遅れDになることが好ましい。ステップS24およびステップS26の処理の順番は入れ替えてもよい。制御部32は、
図6の処理によって設定される第1応答特性を用いて
図2のステップS12およびステップS14の処理を実行する。制御部32は、
図6の処理によって設定される第2応答特性を用いて、
図2のステップS13およびステップS14の処理を実行する。
【0075】
(第3実施形態)
図1および
図7を参照して、第3実施形態の人力駆動車両用制御装置30について説明する。第3実施形態の人力駆動車両用制御装置30は、
図3に示す第1応答特性を変更する処理に代えて
図7に示す所定値TMXを変更する処理を実行する点以外は、第1実施形態の人力駆動車両用制御装置30と同様であるので、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0076】
制御部32は、搭乗者の姿勢に応じて、所定値TMXを変更する。制御部32は、搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合、搭乗者の姿勢が座り漕ぎの場合よりも所定値TMXを高くする。
【0077】
図7を参照して、所定値TMXを変更する処理について説明する。制御部32は、操作部20が操作されてアシストモードが設定されると、処理を開始して
図7に示すフローチャートのステップS41に移行する。制御部32は、アシストモードが設定されている限り、所定周期ごとにステップS41からの処理を実行する。
【0078】
制御部32は、ステップS41において、搭乗者の姿勢が座り漕ぎから立ち漕ぎに変化したか否かを判定する。制御部32は、搭乗者の姿勢が座り漕ぎから立ち漕ぎに変化していないと判定した場合、処理を終了する。制御部32は、搭乗者の姿勢が座り漕ぎから立ち漕ぎに変化したと判定した場合、ステップS42に移行する。
【0079】
制御部32は、ステップS42において、所定値TMXを増加させ、ステップS43に移行する。制御部32は、ステップS43において、搭乗者の姿勢が立ち漕ぎから座り漕ぎに変化したか否かを判定する。制御部32は、搭乗者の姿勢が立ち漕ぎから座り漕ぎに変化していないと判定した場合、再びステップS43の判定処理を行う。制御部32は、搭乗者の姿勢が座り漕ぎから立ち漕ぎに変化したと判定した場合、ステップS44に移行する。制御部32は、ステップS44において、所定値TMXを減少し、処理を終了する。制御部32は、ステップS44において、所定値TMXをステップS42で増加する前の所定値TMXに戻すことが好ましい。
【0080】
(第4実施形態)
図1および
図8を参照して、第4実施形態の人力駆動車両用制御装置30について説明する。第4実施形態の人力駆動車両用制御装置30は、
図3に示す第1応答特性を変更する処理に代えて
図8に示す第1応答特性を変更する処理を実行する点以外は、第1実施形態の人力駆動車両用制御装置30と同様であるので、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0081】
制御部32は、人力駆動力TAに応じて、応答特性を変更する。制御部32は、人力駆動力TAに応じて、第1応答特性を変更する。制御部32は、人力駆動力TAが第1駆動力TA1以上の場合、人力駆動力が第1駆動力TA1未満の場合よりも、遅れDが小さくなるように第1応答特性を変更する。
【0082】
図8を参照して、第1応答特性を変更する処理について説明する。制御部32は、操作部20が操作されてアシストモードが設定されると、処理を開始して
図8に示すフローチャートのステップS51に移行する。制御部32は、アシストモードが設定されている限り、所定周期ごとにステップS51からの処理を実行する。
【0083】
制御部32は、ステップS51において、人力駆動力TAが第1駆動力TA1以上か否かを判定する。制御部32は、人力駆動力TAが第1駆動力TA1以上ではないと判定した場合、処理を終了する。制御部32は、人力駆動力TAが第1駆動力TA1以上と判定した場合、ステップS52に移行する。
【0084】
制御部32は、ステップS52において、遅れDが小さくなるように第1応答特性を変更し、ステップS53に移行する。例えば、制御部32は、第1応答特性が用いられる場合のフィルタに含まれる時定数を小さくすることによって遅れDを小さくする。
【0085】
制御部32は、ステップS53において、人力駆動力TAが第1駆動力TA1未満か否かを判定する。制御部32は、人力駆動力TAが第1駆動力TA1未満ではないと判定した場合、ステップS53の判定処理を繰り返す。制御部32は、人力駆動力TAが第1駆動力TA1未満と判定した場合、ステップS54に移行する。
【0086】
制御部32は、ステップS54において、遅れDが大きくなるように第1応答特性を変更し、処理を終了する。例えば、制御部32は、第1応答特性が用いられる場合のフィルタに含まれる時定数を大きくすることによって遅れDを大きくする。ステップS54によって、第1応答特性が用いられている場合の遅れDは、ステップS52によって変更される前の遅れDになることが好ましい。
【0087】
制御部32は、人力駆動力TAが第1駆動力TA1以上の場合に遅れDが小さくなるように第1応答特性を変更するため、搭乗者の姿勢が変化しない場合であっても、人力駆動力TAが大きい場合には、人力駆動車両Bが人力駆動力TAの変化と対応したアシストをするため、搭乗者が違和感を覚えにくい。
【0088】
(第5実施形態)
図1および
図9を参照して、第5実施形態の人力駆動車両用制御装置30について説明する。第5実施形態の人力駆動車両用制御装置30は、
図7に示す所定値TMXを変更する処理に代えて
図9に示す所定値TMXを変更する処理を実行する点以外は、第3実施形態の人力駆動車両用制御装置30と同様であるので、第3実施形態と共通する構成については、第3実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0089】
制御部32は、人力駆動力TAに応じてモータ12の出力トルクTMが所定値TMX以下となるようにモータ12を制御する。制御部32は、人力駆動力TAに応じて、所定値TMXを変更する。制御部32は、人力駆動力TAが第2駆動力TA2以上の場合、人力駆動力TAが第2駆動力TA2未満の場合よりも所定値TMXを高くする。
【0090】
図9を参照して、所定値TMXを変更する処理について説明する。制御部32は、操作部20が操作されてアシストモードが設定されると、処理を開始して
図9に示すフローチャートのステップS61に移行する。制御部32は、アシストモードが設定されている限り、所定周期ごとにステップS61からの処理を実行する。
【0091】
制御部32は、ステップS61において、人力駆動力TAが第2駆動力TA2以上か否かを判定する。制御部32は、人力駆動力TAが第2駆動力TA2以上ではないと判定した場合、処理を終了する。制御部32は、人力駆動力TAが第2駆動力TA2以上と判定した場合、ステップS62に移行する。
【0092】
制御部32は、ステップS62において、所定値TMXを増加させ、ステップS63に移行する。制御部32は、ステップS63において、人力駆動力TAが第2駆動力TA2未満か否かを判定する。制御部32は、人力駆動力TAが第2駆動力TA2未満ではないと判定した場合、再びステップS63の判定処理を行う。制御部32は、人力駆動力TAが第2駆動力TA2未満と判定した場合、ステップS64に移行する。制御部32は、ステップS64において、所定値TMXを減少し、処理を終了する。制御部32は、ステップS64において、所定値TMXをステップS62で増加する前の所定値TMXに戻すことが好ましい。
【0093】
(変形例)
上記各実施形態に関する説明は、本発明に従う人力駆動車両用制御装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う人力駆動車両用制御装置は、例えば以下に示される上記各実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、各実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0094】
・各実施形態の制御部32は、搭乗者の姿勢に応じて比率Aを変更してもよい。制御部32は、搭乗者の姿勢が立ち漕ぎの場合、搭乗者の姿勢が座り漕ぎの場合よりも比率Aを高くする。
【0095】
例えば、第1実施形態において、制御部32は、
図10のフローチャートに示す処理を行ってもよい。
図10のフローチャートにおいて、
図3のフローチャートと同じ処理には、同様の参照符号を付して説明を省略する。制御部32は、ステップS22の処理の後、ステップS71に移行する。制御部32は、ステップS71において比率Aを高くし、ステップS23に移行する。例えば、制御部32は、アシストモードを比率Aの1段階高いモードに変更することによって比率Aを高くする。制御部32は、ステップS24の処理の後、ステップS72に移行する。制御部32は、ステップS72において、比率Aを低くして処理を終了する。制御部32は、ステップS72において、比率AをステップS71によって比率Aを高くする前の比率Aに戻すことが好ましい。例えば、制御部32は、アシストモードを比率Aの1段階低いモードに変更することによって比率Aを低くする。
【0096】
例えば、第3実施形態において、制御部32は、
図11のフローチャートに示す処理を行ってもよい。
図11のフローチャートにおいて、
図7のフローチャートと同じ処理には、同様の参照符号を付して説明を省略する。制御部32は、ステップS42の処理の後、ステップS73に移行する。制御部32は、ステップS73において比率Aを高くし、ステップS43に移行する。例えば、制御部32は、アシストモードを比率Aの1段階高いモードに変更することによって比率Aを高くする。制御部32は、ステップS44の処理の後、ステップS74に移行する。制御部32は、ステップS74において、比率Aを低くして処理を終了する。制御部32は、ステップS74において、比率AをステップS73によって比率Aを高くする前の比率Aに戻すことが好ましい。例えば、制御部32は、アシストモードを比率Aの1段階低いモードに変更することによって比率Aを低くする。
【0097】
・第2実施形態において、制御部32は、搭乗者の姿勢に応じて、第2応答特性のみを変更するようにしてもよい。例えば、
図6のフローチャートからステップS22およびステップS24の処理を省略する。
【0098】
・第3実施形態において、制御部32は、搭乗者の姿勢に応じて、第1応答特性および第2応答特性の少なくとも一方を変更するようにしてもよい。例えば、
図7のステップS42の後に、
図6のステップS22,S25と同様の処理を実行する。ステップS22,S25は、ステップS42の前に実行してもよい。また、例えば、
図7のステップS44の後に、
図6のステップS24,S26と同様の処理を実行する。ステップS24,S26は、ステップS44の前に実行してもよい。
【0099】
・第4実施形態において、人力駆動力TAに応じて第2応答特性を変更してもよい。例えば、制御部32は、
図8のステップS52の処理の後、遅れDが小さくなるように第2応答特性を変更し、ステップS53に移行する。制御部32は、
図8のステップS54の処理の後、遅れDが大きくなるように第2応答特性を変更して処理を終了する。
【0100】
・第5実施形態において、制御部32は、人力駆動力TAに応じて第1応答特性および第2応答特性の少なくとも一方を変更するようにしてもよい。例えば、
図9のステップS62の後に、
図6のステップS22,S25と同様の処理を実行する。ステップS22,S25は、ステップS62の前に実行してもよい。また、例えば、
図9のステップS64の後に、
図6のステップS24,S26と同様の処理を実行する。ステップS24,S26は、ステップS64の前に実行してもよい。
【符号の説明】
【0101】
B…人力駆動車両、12…モータ、30…人力駆動車両用制御装置、32…制御部、36…第1検出部、36A…センサ、36B…センサ、36C…センサ、36D…センサ、36E…センサ、36F…センサ、36G…カメラ、36H…センサ、36I…センサ、38…第2検出部。