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特許7193231ストーカ炉の燃焼制御装置及び方法、並びに、燃料移動量の検出装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ストーカ炉の燃焼制御装置及び方法、並びに、燃料移動量の検出装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/50 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
F23G5/50 C ZAB
F23G5/50 G
F23G5/50 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017216535
(22)【出願日】2017-11-09
(65)【公開番号】P2019086255
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-10-20
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 隼太
(72)【発明者】
【氏名】本村 聖
(72)【発明者】
【氏名】吉川 充
(72)【発明者】
【氏名】竹田 航哉
(72)【発明者】
【氏名】橋本 大
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】松下 聡
【審判官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-21686(JP,A)
【文献】特開平8-285241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごみからなる燃料を乾燥処理する乾燥帯、燃焼処理する燃焼帯、及び、灰化処理する後燃焼帯の順に上流から下流に向けて前記燃料を搬送するストーカ式の搬送機構を備えたストーカ炉において、前記搬送機構による前記燃料の移動量を検出する方法であって、
前記乾燥帯の前記燃料の着火領域より上流側の所定領域において燃料層の表面を熱画像カメラで複数の撮像タイミングで撮像するステップと、
撮像により得られた複数の熱画像に共通して写る少なくとも1つの特異箇所を画像処理によって抽出するステップと、
前記複数の熱画像にわたる前記特異箇所の変位量と、前記複数の熱画像の撮像タイミングの時間差とに基づいて、前記燃料の移動量を求めるステップと、を含む、
燃料移動量の検出方法。
【請求項2】
ごみからなる燃料を乾燥処理する乾燥帯、燃焼処理する燃焼帯、及び、灰化処理する後燃焼帯の順に上流から下流に向けて前記燃料を搬送するストーカ式の搬送機構を備えたストーカ炉において、前記搬送機構による前記燃料の移動量を検出する装置であって、
前記乾燥帯の前記燃料の着火領域より上流側の所定領域において燃料層の表面複数の撮像タイミングで撮像する熱画像カメラと、
前記熱画像カメラで得られた複数の熱画像に共通して写る少なくとも1つの特異箇所を抽出する画像処理部と、
前記複数の熱画像にわたる前記特異箇所の変位量と、前記複数の熱画像の撮像タイミングの時間差とに基づいて、前記燃料の移動量を求める燃料移動量演算部とを、備える、
燃料移動量の検出装置。
【請求項3】
ごみからなる燃料を乾燥処理する乾燥帯、燃焼処理する燃焼帯、及び、灰化処理する後燃焼帯の順に上流から下流に向けて前記燃料を搬送するストーカ式の搬送機構を備えたストーカ炉の燃焼制御方法であって、
前記乾燥帯の前記燃料の着火領域より上流側の所定の第1領域において燃料層の表面を熱画像カメラで撮像し、得られた熱画像から着火前の前記燃料の放射温度である燃料表面温度を求め、前記燃料表面温度から燃料発熱量を推定するステップと、
前記乾燥帯の前記着火領域より上流側の所定の第2領域において前記燃料層の表面を熱画像カメラで複数の撮像タイミングで撮像し、得られた複数の熱画像に共通して写る少なくとも1つの特異箇所を抽出し、前記複数の熱画像にわたる前記特異箇所の変位量と、前記複数の熱画像の撮像タイミングの時間差とに基づいて、燃料移動量を求めるステップと、
前記乾燥帯の燃料表面レベルを測定し、得られた前記燃料表面レベルから前記乾燥帯の燃料層厚を求めるステップと、
炉内への入熱量指標を検出し、検出された入熱量指標が所与の入熱量指標設定値となるように、前記燃料発熱量、前記燃料移動量、及び、前記燃料層厚に基づいて、前記燃料の投入量、ストーカ動作速度、及び、前記燃料の燃焼用空気の供給量の少なくとも一つを調整するステップとを含む、
ストーカ炉の燃焼制御方法。
【請求項4】
ごみからなる燃料を乾燥処理する乾燥帯、燃焼処理する燃焼帯、及び、灰化処理する後燃焼帯の順に上流から下流に向けて前記燃料を搬送するストーカ式の搬送機構を備えたストーカ炉の燃焼制御装置であって、
前記乾燥帯の前記燃料の着火領域より上流側の所定の第1領域において燃料層の表面を撮像する第1熱画像カメラと、
前記第1熱画像カメラで得られた熱画像から前記燃料の放射温度である燃料表面温度を求める第1画像処理部と、
前記燃料表面温度に基づいて燃料発熱量を求める燃料発熱量演算部と、
前記乾燥帯の前記着火領域より上流側の所定の第2領域において前記燃料層の表面複数の撮像タイミングで撮像する第2熱画像カメラと、
前記第2熱画像カメラで得られた複数の熱画像に共通して写る少なくとも1つの特異箇所を抽出する第2画像処理部と、
前記複数の熱画像にわたる前記特異箇所の変位量と、前記複数の熱画像の撮像タイミングの時間差とに基づいて、燃料移動量を求める燃料移動量演算部と、
前記乾燥帯の燃料表面レベルを測定するレベル計と、
前記レベル計で得られた前記燃料表面レベルから前記乾燥帯の燃料層厚を求める燃料層厚演算部と、
炉内への入熱量の指標となる量を検出する入熱量指標検出器と、
前記入熱量指標検出器で検出された入熱量指標が所与の入熱量指標設定値となるように、前記燃料発熱量、前記燃料移動量、及び、前記燃料層厚に基づいて、前記燃料の投入量、ストーカ動作速度、及び、前記燃料の燃焼用空気の供給量の少なくとも一つを調整する燃焼制御部とを備える、
ストーカ炉の燃焼制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストーカ式搬送機構を備えたストーカ炉の燃焼制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ストーカ式搬送機構を備えた燃焼炉(以下、「ストーカ炉」と称する)を備えた燃焼プラントが知られている。このような燃焼プラントの一例として、ごみを焼却するストーカ炉と、ストーカ炉へごみを投入するごみ投入ホッパと、ストーカ炉の煙道に設けられた排熱回収ボイラとを備えたごみ焼却プラントがある。ストーカ炉は、炉底にごみなどの燃料の移動方向に沿って設けられた複数段のストーカを備えている。燃料投入ホッパからストーカ炉内に投入された燃料は、燃料供給装置によってストーカ上へ送られ、ストーカ上を移動するうちに、乾燥され、一次燃焼して熱分解する。燃料の熱分解によって生じた熱分解ガスは、煙道で二次燃焼し、その燃焼排ガスの熱エネルギーが排熱回収ボイラで回収される。排熱回収ボイラでは、燃焼排ガスの熱エネルギーで水蒸気を生成する。生成された水蒸気は、発電設備で発電に利用される。
【0003】
上記のような燃焼プラントでは、発電設備での安定した発電量を担保するために、排熱回収ボイラの発生蒸気量が目標蒸気量となるように、ストーカ炉の自動燃焼制御が行われる。この自動燃焼制御では、排熱回収ボイラの発生蒸気量に基づいて、主に、ストーカの燃料移動量、燃焼空気供給量などを調整する。
【0004】
ストーカ炉では、一般に、ストーカの揺動によって燃料が移動することから、ストーカ動作速度の変更でストーカの燃料移動量が調整される。しかしながら、燃料の性状が変化すると、ストーカの燃料移動量がストーカ動作速度に必ずしも比例しないという事象が発生する。そのため、ストーカ炉の安定した自動燃焼制御が困難となっている。
【0005】
このような課題に対し、特許文献1では、ごみ焼却炉において、ごみ質(特に、ごみの比重や水分含有量)によってストーカの搬送面の摩擦係数が変化することが、ストーカ動作速度とごみ移動量(ごみ送り量)との関係に影響を与えていると推定し、ごみ投入ホッパ下部に設置されたごみ流速検出装置の検出値と、ごみ供給クレーンによるごみの掴み重量とから、ごみ比重を演算し、ごみ比重の演算値に基づいてストーカの傾斜角度や搬送面の形態を変化させることにより、搬送面の摩擦係数を調整し、ストーカ動作速度とごみ移動量との間に比例関係が成立するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公平2-22294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ストーカの燃料移動量は、ストーカの搬送面の摩擦係数に限らず、燃料が堆積している状態などの他の因子によっても影響を受けると考えられる。そのため、ストーカ動作速度と搬送面の傾斜によって燃料移動量を正確に推定することは難しい。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、ストーカ式搬送機構を備えたストーカ炉において、搬送機構による燃料移動量の推定精度を向上し、これにより安定した自動燃焼制御を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る燃料移動量の検出方法は、ごみからなる燃料を乾燥処理する乾燥帯、燃焼処理する燃焼帯、及び、灰化処理する後燃焼帯の順に上流から下流に向けて前記燃料を搬送するストーカ式の搬送機構を備えたストーカ炉において、前記搬送機構による前記燃料の移動量を検出する方法であって、
前記乾燥帯の前記燃料の着火領域より上流側の所定領域において燃料層の表面を熱画像カメラで複数の撮像タイミングで撮像するステップと、
撮像により得られた複数の熱画像に共通して写る少なくとも1つの特異箇所を画像処理によって抽出するステップと、
前記複数の熱画像にわたる前記特異箇所の変位量と、前記複数の熱画像の撮像タイミングの時間差とに基づいて、前記燃料の移動量を求めるステップと、を含むことを特徴としている。
【0010】
本発明の一態様に係る燃料移動量の検出装置は、ごみからなる燃料を乾燥処理する乾燥帯、燃焼処理する燃焼帯、及び、灰化処理する後燃焼帯の順に上流から下流に向けて前記燃料を搬送するストーカ式の搬送機構を備えたストーカ炉において、前記搬送機構による前記燃料の移動量を検出する装置であって、
前記乾燥帯の前記燃料の着火領域より上流側の所定領域において燃料層の表面複数の撮像タイミングで撮像する熱画像カメラと、
前記熱画像カメラで得られた複数の熱画像に共通して写る少なくとも1つの特異箇所を抽出する画像処理部と、
前記複数の熱画像にわたる前記特異箇所の変位量と、前記複数の熱画像の撮像タイミングの時間差とに基づいて、前記燃料の移動量を求める燃料移動量演算部とを、備えることを特徴としている。
【0011】
上記燃料移動量の検出装置及び方法によれば、ストーカ動作速度に基づいて燃料移動量を演算する場合と比較して、搬送機構による燃料移動量の推定精度が向上する。
【0012】
本発明の一態様に係るストーカ炉の燃焼制御方法は、ごみからなる燃料を乾燥処理する乾燥帯、燃焼処理する燃焼帯、及び、灰化処理する後燃焼帯の順に上流から下流に向けて前記燃料を搬送するストーカ式の搬送機構を備えたストーカ炉の燃焼制御方法であって、
前記乾燥帯の前記燃料の着火領域より上流側の所定の第1領域において燃料層の表面を熱画像カメラで撮像し、得られた熱画像から着火前の前記燃料の放射温度である燃料表面温度を求め、前記燃料表面温度から燃料発熱量を推定するステップと、
前記乾燥帯の前記着火領域より上流側の所定の第2領域において前記燃料層の表面を熱画像カメラで複数の撮像タイミングで撮像し、得られた複数の熱画像に共通して写る少なくとも1つの特異箇所を抽出し、前記複数の熱画像にわたる前記特異箇所の変位量と、前記複数の熱画像の撮像タイミングの時間差とに基づいて、燃料移動量を求めるステップと、
前記乾燥帯の燃料表面レベルを測定し、得られた前記燃料表面レベルから前記乾燥帯の燃料層厚を求めるステップと、
炉内への入熱量又はそれと相関する量を検出し、検出された入熱量が所与の入熱量設定値となるように、前記燃料発熱量、前記燃料移動量、及び、前記燃料層厚に基づいて、前記燃料の投入量、ストーカ動作速度、及び、前記燃料の燃焼用空気の供給量の少なくとも一つを調整するステップとを含むことを特徴としている。
【0013】
本発明の一態様に係るストーカ炉の燃焼制御装置は、燃料を乾燥処理する乾燥帯、燃焼処理する燃焼帯、及び、灰化処理する後燃焼帯の順に上流から下流に向けて前記燃料を搬送するストーカ式の搬送機構を備えたストーカ炉の燃焼制御装置であって、
前記乾燥帯の前記燃料の着火領域より上流側の所定の第1領域において燃料層の表面を撮像する第1熱画像カメラと、
前記第1熱画像カメラで得られた熱画像から前記燃料の放射温度である燃料表面温度を求める第1画像処理部と、
前記燃料表面温度に基づいて燃料発熱量を求める燃料発熱量演算部と、
前記乾燥帯の前記着火領域より上流側の所定の第2領域において前記燃料層の表面複数の撮像タイミングで撮像する第2熱画像カメラと、
前記第2熱画像カメラで得られた複数の熱画像に共通して写る少なくとも1つの特異箇所を抽出する第2画像処理部と、
前記複数の熱画像にわたる前記特異箇所の変位量と、前記複数の熱画像の撮像タイミングの時間差とに基づいて、燃料移動量を求める燃料移動量演算部と、
前記乾燥帯の燃料表面レベルを測定するレベル計と、
前記レベル計で得られた前記燃料表面レベルから前記乾燥帯の燃料層厚を求める燃料移動量演算部と、
炉内への入熱量又はそれと相関する量を検出する入熱量検出器と、
前記入熱量検出器で検出された入熱量が所与の入熱量設定値となるように、前記燃料発熱量、前記燃料移動量、及び、前記燃料層厚に基づいて、前記燃料の投入量、ストーカ動作速度、及び、前記燃料の燃焼用空気の供給量の少なくとも一つを調整する燃焼制御部とを備えることを特徴としている。
【0014】
上記ストーカ炉の燃焼制御装置及び方法によれば、ストーカ動作速度に基づいて燃料移動量を演算する場合と比較して、燃料移動量の推定精度が向上する。そして、このような燃料移動量を利用してストーカ炉の燃焼制御が行われることにより、安定した自動燃焼制御を実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ストーカ式搬送機構を備えたストーカ炉において、搬送機構によるごみ移動量の推定精度が向上するので、安定した自動燃焼制御の実現に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るストーカ炉を含む燃焼プラントの全体的な構成を示す概略図である。
図2図2は、燃焼プラントの制御系統の構成を示すブロック図である。
図3図3は、燃焼制御装置が行う自動燃焼制御のブロック線図である。
図4図4は、燃焼制御装置が行う自動燃焼制御のブロック線図である。
図5図5は、燃焼制御装置が行う自動燃焼制御のブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るストーカ炉1を含む燃焼プラント100の全体的な構成を示す概略図である。ここでは、ストーカ炉1を含む燃焼プラント100の一例として、ごみ焼却プラントを挙げて説明する。ごみ焼却プラントは、燃料であるごみを燃焼させて、その燃焼排ガスの熱エネルギーを排熱ボイラで回収し、回収した熱エネルギーで発電を行うものである。
【0018】
図1に示す燃焼プラント100は、燃料であるごみを貯蔵する燃料貯蔵設備3と、ストーカ炉1と、ストーカ炉1の排熱を回収するボイラ2とを含む。更に、燃焼プラント100は、ボイラ2で回収されたストーカ炉1の排熱を利用して発電を行う蒸気タービン34及び発電機35を含む。本実施形態に係る燃焼プラント100は、燃料貯蔵設備3及び発電設備(蒸気タービン34、発電機35)を含むが、それらは燃焼プラント100から独立していてもよい。
【0019】
〔燃料貯蔵設備3〕
燃料貯蔵設備3は、ストーカ炉1に隣設されて、ストーカ炉1で処理される燃料を一時的に貯蔵するピット60を有する。ピット60の上方には、ピット60内の燃料をストーカ炉1へ投入するクレーン6が設けられている。クレーン6は、バケット61を含み、クレーン駆動装置62によるクレーン6の動作により、バケット61をピット60上の任意の位置へ移動させることができる。クレーン6は、バケット61でピット60内の燃料を掴み、その燃料をストーカ炉1の後述する投入ホッパ12へ投入する。なお、図1ではクレーン6と投入ホッパ12と間にコンベヤが介在しているが、コンベヤは省略されてもよい。
【0020】
〔ストーカ炉1〕
ストーカ炉1は、ストーカ式の搬送機構15を備えた燃焼炉である。ストーカ炉1には、主燃焼室14(一次燃焼室)と、二次燃焼室19とが設けられている。主燃焼室14には、燃料を乾燥処理する乾燥帯55、燃料を燃焼処理する燃焼帯56、及び、燃料を灰化処理する後燃焼帯57の順に上流から下流に向けて燃料を搬送するストーカ式の搬送機構15が設けられている。
【0021】
搬送機構15は、乾燥帯55を形成する乾燥ストーカ15a、燃焼帯56を形成する燃焼ストーカ15b、及び、後燃焼帯57を形成する後燃焼ストーカ15cからなる複数段のストーカ15a,15b,15cを含む。後燃焼ストーカ15cの下流側には、主燃焼室14から焼却灰を排出する排出シュート18が設けられている。乾燥ストーカ15aの上方であって主燃焼室14の天井には、乾燥帯55の燃料を撮像する撮像装置71と、乾燥帯55の燃料の表面レベルを計測するレベル計72とが設けられている。
【0022】
ストーカ15a,15b,15cは、燃料を下流側へ送り出すように、ストーカ駆動装置42によって往復駆動される。ストーカ駆動装置42は、各ストーカ15a,15b,15cに対応して設けられた駆動シリンダ42a,42b,42cを含む。それらの駆動シリンダ42a,42b,42cによって、各ストーカ15a,15b,15cは連動して又は独立して揺動駆動される。
【0023】
各ストーカ15a,15b,15cの下部には一次燃焼空気51が導入される風箱が設けられており、各風箱からストーカ15a,15b,15cを貫いて主燃焼室14へ一次燃焼空気51が供給される。一次燃焼空気51の供給量は流量制御装置43によって調整される。流量制御装置43は、一次燃焼空気51を各風箱へ送る送風機43dと、各風箱への一次燃焼空気51の供給量を調整するダンパ43a,43b,43cとを含む。また、主燃焼室14の天井から主燃焼室14内へ向けて二次燃焼空気52が供給される。二次燃焼空気52の供給量は流量制御装置44によって調整される。
【0024】
主燃焼室14の入口には、シュート13を介して投入ホッパ12が接続されている。また、主燃焼室14の入口には、燃料を乾燥ストーカ15a上へ押し出すフィーダ41が設けられている。フィーダ41によって、主燃焼室14への燃料の投入量が調整される。
【0025】
上記構成のストーカ炉1では、投入ホッパ12からシュート13を通じて主燃焼室14の入口に投入された燃料が、フィーダ41によって乾燥ストーカ15a上へ押し出される。燃料は、乾燥帯55を通過するうちに、一次燃焼空気51と主燃焼室14の輻射熱とにより乾燥され、着火する。着火した燃料の一部は、燃焼帯56を通過するうちに熱分解して、可燃性の熱分解ガスを発生する。この熱分解ガスは、一次燃焼空気51に乗って主燃焼室14の上部へ移動して、二次燃焼空気52と共に炎燃焼する。この炎燃焼に伴う熱輻射により、燃料は更に昇温する。また、着火した燃料の残部は、燃焼帯56及び後燃焼帯57を通過するうちに燃焼し、燃焼後に残った焼却灰は排出シュート18から排出され、図示しない灰処理設備へ送られる。主燃焼室14の燃焼排ガスは、主燃焼室14の下流側の天井部分から吹き出す二次燃焼空気52と混合され、二次燃焼室19で完全燃焼する。
【0026】
〔ボイラ2〕
ストーカ炉1の二次燃焼室19の出口はボイラ2と接続されており、ストーカ炉1の燃焼排ガスはボイラ2に流入する。二次燃焼室19の出口又は放射室20の入口近傍には、ストーカ炉1の燃焼排ガスの温度を検出する温度センサ38が設けられている。ボイラ2には、放射室20(第1煙道)、第2煙道21及び第3煙道22からなる一連の燃焼排ガスの流路が設けられている。
【0027】
放射室20及び第2煙道21の壁には水管23が張り巡らされている。水管23を流れる熱回収水は、放射室20及び第2煙道21の熱を回収することにより、一部が気化して蒸気となった状態でボイラドラム24へ還流する。ボイラドラム24の蒸気は、過熱器25へ送られる。ボイラドラム24から過熱器25へ送られる蒸気の量(主蒸気量)は、過熱器25よりも蒸気の流れの下流側に設けられた蒸気流量計39により計測される。過熱器25は、第3煙道22内に設置された過熱管27を備えている。ボイラドラム24から送られてきた蒸気は、過熱管27を通過するうちに更に高温高圧に過熱され、発電機35を駆動する蒸気タービン34へ送られる。
【0028】
ボイラ2を通過した燃焼排ガスは、第3煙道22に設けられた排気口29から排気路28へ排出される。排気路28には、バグフィルタ31や誘引式送風機32などが設けられており、ボイラ2の排ガスは、バグフィルタ31でダストが分離された後、煙突33から大気へ排出される。
【0029】
上記構成の燃焼プラント100の運転は、燃焼制御装置10によって制御されている。図2は、燃焼プラント100の制御系統の構成を示す図である。図2に示すように、燃焼制御装置10は、通信装置64、処理装置65、入力装置66、表示装置67、及び各種の記憶装置M1~M3を備えている。各記憶装置M1~M3は別々の記憶装置で構成されてもよいし、複数の記憶装置が1つの記憶装置で構成されていてもよい。
【0030】
処理装置65は、CPU等の演算部と、ROM及びRAMなどの記憶部等を有するコンピュータであり、CPUが記憶部に予め記憶されている所定のプログラムを実行することにより、燃焼プラント100の動作を制御する。処理装置65は、1つのコンピュータにより構成されていてもよいし、複数のコンピュータに機能が分散して構成されていてもよい。
【0031】
入力装置66は、マウスやキーボードよって構成され、ユーザの操作による入力を受け付ける手段である。入力装置66は、ユーザの操作による入力情報を処理装置65へ出力する。
【0032】
表示装置67は、液晶ディスプレイなどの表示装置で構成され、処理装置65から与えられる表示データに応じた情報を画面に表示する。
【0033】
通信装置64は、処理装置65によって制御されることによって、無線又は有線の通信手段を利用して、フィーダ41、ストーカ駆動装置42、流量制御装置43,44、撮像装置71などとデータを送受信し、また、温度センサ38、蒸気流量計39、レベル計72などの各種計器から検出信号を受信する。
【0034】
記憶装置M1には、目標蒸気量と入熱量との関係を対応づける主蒸気量-入熱量対応式が記憶されている。記憶装置M2には、燃料表面温度と燃料の発熱量との関係を対応づける燃料表面温度-燃料発熱量対応式が記憶されている。記憶装置M3には、記憶装置M1,M2に記憶されているデータ以外で、自動燃焼制御を実行する上で必要となるデータが記憶されている。
【0035】
〔ストーカ炉1の燃焼制御方法〕
燃焼制御装置10は、ボイラ2で生成される蒸気圧力を一定に保つように、ストーカ炉1の自動燃焼制御を行う。燃焼制御装置10は、処理装置65が予め記憶装置M3又はメモリに記憶された所定のプログラムを実行することにより、第1画像処理部651、第2画像処理部652、燃料発熱量演算部653、燃料移動量演算部654、燃料層厚演算部655、燃焼制御部656などとして機能する。
【0036】
第1画像処理部651は、撮像装置71から熱画像を得て、この熱画像から燃料の表面温度分布を検出する。
【0037】
撮像装置71は、乾燥ストーカ15aに臨む姿勢で主燃焼室14の天井に取り付けられた1又は複数の熱画像カメラを含む。1又は複数の熱画像カメラは、バンドパスフィルタによって炎をキャンセルして燃料表面から輻射される赤外線を検出するフィルタ付熱画像カメラ71aと、バンドパスフィルタが取り付けられていないフィルタ無熱画像カメラ71bとを含む。但し、フィルタ付熱画像カメラ71aからバンドパスフィルタを取り外したものを、フィルタ無熱画像カメラ71bとして用いてもよい。フィルタ付熱画像カメラ71aとフィルタ無熱画像カメラ71bとの撮像領域は、実質的に同一であることが望ましい。
【0038】
フィルタ付熱画像カメラ71aは、赤外線エネルギーを検出する赤外線検出手段であって、乾燥帯55の燃料から生じる火炎中のCO,CO2,NOX,SOX、さらにはH2Oによる赤外線エネルギー吸収帯域を回避して、ガス体からの放射エネルギーを検出しないように、透過波長が約3.9(3.6~4)μmのバンドパスフィルタが取り付けられている。これにより、フィルタ付熱画像カメラ71aで得られる撮像画像、即ち、バンドパスフィルタを介した熱画像は、乾燥帯55の燃料から生じる火炎を透過して、輻射エネルギーを検出したものとなる。
【0039】
撮像装置71では、所定時間間隔で乾燥帯55の燃料表面をフィルタ付熱画像カメラ71a及びフィルタ無熱画像カメラ71bで撮像する。第1画像処理部651は、フィルタを介した熱画像と、フィルタを介さない熱画像とを得て、これらの熱画像を比較し、所定の温度差が検出された領域を乾燥帯55の着火領域と判断する。或いは、第1画像処理部651は、フィルタ付熱画像カメラ71aで撮像されたフィルタを介した熱画像を用いて、この熱画像中において基準温度との温度差が「着火した」と判断できる所定の温度差以上となる領域を、着火領域と判断してもよい。更に、第1画像処理部651は、着火領域のすぐ上流側の所定幅の領域を着火開始領域とし、着火開始領域における燃料表面温度の平均値を求める。
【0040】
第2画像処理部652は、撮像装置71からフィルタを介した熱画像を得て、異なる撮像タイミングの複数の熱画像から燃料の移動速度を検出する。なお、本実施形態では、第1画像処理部651と第2画像処理部652とが同じ熱画像を利用し、撮像装置71を共用するが、各画像処理部651,652に対し独立した撮像装置が設けられていてもよい。また、第1画像処理部651で利用される熱画像と、第2画像処理部652で利用される熱画像の撮像領域が異なっていてもよい。
【0041】
第2画像処理部652は、先のタイミングで撮像されたフィルタを介した熱画像から、燃料の温度が周囲のものよりも著しく異なる箇所、或いは、燃料の大きさが周囲のものよりも著しく大きい又は小さい箇所を特異箇所とし、その特徴点を抽出する。また、第2画像処理部652は、後のタイミングで撮像されたフィルタを介した熱画像から、先ほど抽出した特徴点に基づいて、複数の熱画像に共通する少なくとも1つの特異箇所を探し出す。更に、第2画像処理部652は、先の撮像タイミングの熱画像と後の撮像タイミングの熱画像との、共通する特異箇所の移動量を算出する。なお、乾燥帯55の燃料の大きさや温度は急激には変化しないことから、撮像タイミングをずらして撮像された複数の熱画像において共通する特異箇所を抽出することができる。また、第2画像処理部652が利用する複数の熱画像は、3以上であってもよい。
【0042】
燃料発熱量演算部653は、第1画像処理部651で求めた着火開始領域における燃料表面温度の平均値から、例えば、予め記憶装置M2に記憶された燃料表面温度-燃料発熱量対応式を利用して、燃料発熱量を演算する。求めた燃料発熱量は、「発熱量測定値82(図3、参照)」として燃焼制御に利用される。
【0043】
燃料移動量演算部654は、第2画像処理部652で求めた、先の撮像タイミングの熱画像と後の撮像タイミングの熱画像との、共通する特異箇所の移動量と、それらの撮像タイミングの時間差とから、燃料の移動量を算出する。求めた燃料移動量は、「燃料移動量測定値92(図4、参照)」として燃焼制御に利用される。
【0044】
上述の第2画像処理部652及び燃料移動量演算部654と、撮像装置71とにより、搬送機構15による燃料の移動量を検出する燃料移動量の検出装置が構成されてよい。
【0045】
燃料層厚演算部655は、レベル計72で検出された燃料の表面レベルに基づいて、乾燥ストーカ15aの搬送面(上面)レベルから燃料の表面レベルまでの距離、即ち、燃料の層厚を求めることができる。求めた燃料層厚は、「燃料層厚測定値83(図3、参照)」として燃焼制御に利用される。
【0046】
レベル計72は、マイクロ波を利用した非接触式のレベル計であって、乾燥帯55の燃料の表面レベルを検出する。上記のレベル計72として、パルスレーダー方式マイクロ波レベル計を用いてよい。パルスレーダー方式マイクロ波レベル計は、ホーンアンテナからパルスレーダー波を発射し、測定対象物に当たって反射する(エコー)が再びマイクロ波レベル計に戻ってくるまでの往復伝搬時間を測定し距離に演算する。
【0047】
本実施形態に係るレベル計72は、マイクロ波レベル計であるが、これに代えて、他の公知のレベル検出手段を用いてもよい。例えば、燃料層を複数の異なる方向から同時に撮影するステレオカメラを備え、ステレオカメラの撮像画像から求めた燃料の表面レベルに基づいて、乾燥ストーカ15aの搬送面レベルから燃料の表面レベルまでの距離、即ち、燃料の層厚を求めてもよい。
【0048】
燃焼制御部656は、炉内への入熱量指標の検出値、発熱量測定値82、燃料層厚測定値83、及び燃料移動量測定値92を用いて、検出された入熱量指標が所与の入熱量指標目標値となるように、ストーカ炉1の自動燃焼制御を行う。自動燃焼制御では、フィーダ41による燃料の投入量、搬送機構15による燃料の移動量、燃料を燃焼するために必要な一次燃焼空気51及び二次燃焼空気52の流量が調整される。
【0049】
本実施形態では、炉内への入熱量指標として、ボイラ2の主蒸気流量を用いる。本実施形態では、入熱量指標検出器として蒸気流量計39が用いられ、蒸気流量計39で検出された主蒸気流量が入熱量指標検出値となる。燃焼制御部656は、入熱量指標目標値に基づいて、「入熱量設定値81(図3、参照)」を設定する。本実施形態に係る入熱量指標目標値は、目標蒸気量であり、例えば、予め記憶装置M1に記憶された主蒸気量-入熱量対応式を利用して、目標蒸気量から入熱量設定値81を求めることができる。
【0050】
図3~5は、燃焼制御装置10の燃焼制御部656が行う自動燃焼制御のブロック線図である。図3に示すように、燃焼制御部656は、入熱量設定値81、発熱量測定値82、燃料層厚測定値83、及び、燃料移動量測定値92を取得して利用する。燃焼制御部656では、乗算器84で発熱量測定値82と燃料層厚測定値83とを掛け合わせた入熱量測定値85が演算され、減算器86で入熱量設定値81と入熱量測定値85との偏差が演算され、この偏差がPID制御器87に入力される。PID制御器87からは、取得した偏差に基づいて、燃料投入量設定値88、燃焼空気量設定値89、及び、燃料移動量設定値90が出力される。
【0051】
燃焼制御装置10は、燃焼空気量設定値89に基づいて、燃焼空気量設定値89と対応する一次燃焼空気及び二次燃焼空気が炉内へ供給されるように、一次燃焼空気流量制御装置43及び二次燃焼空気流量制御装置44の動作を制御する。なお、燃焼空気量設定値89には、一次燃焼空気設定値と二次燃焼空気設定値とが含まれていてよい。
【0052】
更に、図4に示すように、燃焼制御装置10の燃焼制御部656では、減算器91で燃料移動量設定値90と燃料移動量測定値92との偏差が演算され、この偏差がPID制御器93に入力される。PID制御器93からは、取得した偏差に基づいて、ストーカ動作速度94が出力される。ストーカ駆動装置42は、出力されたストーカ動作速度94を目標値に反影して、ストーカ15a,15b,15cを動作させる。なお、ストーカ式の搬送機構15では、ストーカ15a,15b,15cが所定時間間隔で揺動して燃料を押し出すことによって、燃料が搬送される。そのため、上記の「ストーカ動作速度」は、ストーカの揺動速度、及び、ストーカの揺動と停止の間隔によって定まる。ストーカ駆動装置42は、ストーカの揺動速度、及び、ストーカの揺動と停止の間隔のうちの少なくとも1つを調整することによって、ストーカ15a,15b,15cの動作速度を目標値に近づける。なお、各段のストーカ15a,15b,15cの動作速度は同じであってもよいし、互いに独立していてもよい。
【0053】
同様に、図5に示すように、燃焼制御装置10の燃焼制御部656では、減算器95で燃料投入量設定値88と燃料投入量測定値96との偏差が演算され、この偏差がPID制御器97に入力される。燃料投入量測定値96は、例えば、クレーン6による投入重量及び投入間隔に基づいて演算によって求めてもよいし、乾燥段の重量を計測する重量計を設けて、重量計で検出された乾燥段の重量変化から求めてもよい。PID制御器97からは、取得した偏差に基づいて、フィーダ操作量98が出力される。フィーダ操作量98は、乾燥段の燃料層厚測定値83及び燃料移動量測定値92をフィードバックして、調整されてもよい。フィーダ41は、出力されたフィーダ操作量98を目標値に反影して、フィーダ41を動作させる。フィーダ41は、フィーダ41の動作速度及び動作頻度のうち少なくとも一つを調整することによって、フィーダ操作量を目標値に近づける。
【0054】
以上に説明したように、本実施形態のストーカ炉1の燃焼制御装置10は、
乾燥帯55の燃料の着火領域より上流側の所定の領域(第1領域)を撮像する熱画像カメラ71a,71b(第1熱画像カメラ)と、
熱画像カメラ71a,71bで得られた熱画像から燃料の放射温度である燃料表面温度を求める第1画像処理部651と、
燃料表面温度に基づいて燃料発熱量を求める燃料発熱量演算部653と、
乾燥帯55の着火領域より上流側の所定の領域(第2領域)を撮像する熱画像カメラ71a(第2熱画像カメラ)と、
熱画像カメラ71aで得られた複数の熱画像に共通して写る少なくとも1つの特異箇所を抽出する第2画像処理部652と、
複数の熱画像にわたる特異箇所の変位量と、複数の熱画像の撮像タイミングの時間差とに基づいて、燃料移動量を求める燃料移動量演算部654と、
乾燥帯55の燃料表面レベルを測定するレベル計72と、レベル計72で得られた燃料表面レベルから乾燥帯55の燃料層厚を求める燃料層厚演算部655と、
炉内への入熱量の指標となる量を検出する入熱量指標検出器(本実施形態では、蒸気流量計39)と、
入熱量指標検出器で検出された入熱量指標が所与の入熱量指標設定値となるように、燃料発熱量、燃料移動量、及び、燃料層厚に基づいて、燃料の投入量、ストーカ動作速度、及び、燃料の燃焼用空気の供給量の少なくとも一つを調整する燃焼制御部656とを備える。
【0055】
また、本実施形態のストーカ炉の燃焼制御方法は、
乾燥帯55の燃料の着火領域より上流側の所定の領域(第1領域)を熱画像カメラ71a,71bで撮像し、得られた熱画像から着火前の燃料の放射温度である燃料表面温度を求め、燃料表面温度から燃料発熱量を推定するステップと、
乾燥帯55の着火領域より上流側の所定の領域(第2領域)を熱画像カメラ71aで撮像し、得られた複数の熱画像に共通して写る少なくとも1つの特異箇所を抽出し、複数の熱画像にわたる特異箇所の変位量と、複数の熱画像の撮像タイミングの時間差とに基づいて、乾燥帯55における燃料移動量を求めるステップと、
乾燥帯55の燃料表面レベルを測定し、得られた燃料表面レベルから乾燥帯55の燃料層厚を求めるステップと、
炉内への入熱量指標(本実施形態では、ボイラ2の主蒸気量)を検出し、検出された入熱量指標が所与の入熱量指標設定値となるように、燃料発熱量、燃料移動量、及び、燃料層厚に基づいて、燃料の投入量、ストーカ動作速度、及び、燃料の燃焼用空気の供給量の少なくとも一つを調整するステップとを含む。
【0056】
上記のストーカ炉1の燃焼制御装置10及び方法によれば、ストーカ動作速度に基づいて燃料移動量を演算する場合と比較して、燃料移動量の推定精度が向上する。そして、このような燃料移動量を利用してストーカ炉1の燃焼制御が行われることにより、安定した自動燃焼制御を実現することができる。
【0057】
更に、以上に説明したように、本実施形態の燃料移動量の検出装置は、乾燥帯55の燃料の着火領域より上流側の所定領域を撮像する熱画像カメラ71aと、熱画像カメラ71aで得られた複数の熱画像に共通して写る少なくとも1つの特異箇所を抽出する画像処理部652と、複数の熱画像にわたる特異箇所の変位量と、複数の熱画像の撮像タイミングの時間差とに基づいて、燃料の移動量を求める燃料移動量演算部654とを、備える。
【0058】
また、本実施形態の燃料移動量の検出方法は、乾燥帯55の燃料の着火領域より上流側の所定領域を熱画像カメラ71aで撮像するステップと、撮像により得られた複数の熱画像に共通して写る少なくとも1つの特異箇所を画像処理によって抽出するステップと、複数の熱画像にわたる特異箇所の変位量と、複数の熱画像の撮像タイミングの時間差とに基づいて、燃料の移動量を求めるステップと、を含む。
【0059】
上記のストーカ炉1の燃料移動量の検出装置及び方法によれば、ストーカ動作速度に基づいて燃料移動量を演算する場合と比較して、燃料移動量の推定精度が向上する。
【0060】
なお、本実施形態に係るストーカ炉1は並行流式であって、その主燃焼室14の天井は、燃料の投入側から途中で屈曲したのち、燃焼帯56及び後燃焼帯57の上方まで拡がり、一次空気及び燃焼ガスは乾燥帯55から後燃焼帯57に向けて流れる。このような炉では、主燃焼室14はの天井に設置される熱画像カメラ71aの視野を容易に確保することができる。
【0061】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明の精神を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。
【符号の説明】
【0062】
1 :ストーカ炉
2 :ボイラ
3 :燃料貯蔵設備
10 :燃焼制御装置
12 :投入ホッパ
14 :主燃焼室
15 :搬送機構
15a,15b、15c :ストーカ
19 :二次燃焼室
39 :蒸気流量計
41 :フィーダ
42 :ストーカ駆動装置
42a,42b,42c :駆動シリンダ
43 :一次燃焼空気流量制御装置
43a,43b,43c :ダンパ
43d :送風機
44 :二次燃焼空気流量制御装置
55 :乾燥帯
56 :燃焼帯
57 :後燃焼帯
64 :通信装置
65 :処理装置
651,652 :画像処理部
653 :燃料発熱量演算部
654 :燃料移動量演算部
655 :燃料層厚演算部
656 :燃焼制御部
66 :入力装置
67 :表示装置
71 :撮像装置
71a,71b :熱画像カメラ
72 :レベル計
100 :燃焼プラント
図1
図2
図3
図4
図5