(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】化学療法及び放射線療法誘発性認知機能障害、神経障害及び不活動を治療するためのNAD+の標的化
(51)【国際特許分類】
A61K 31/455 20060101AFI20221213BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221213BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20221213BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20221213BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
A61K31/455
A61P25/00
A61P25/28
A61P39/02
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2017556614
(86)(22)【出願日】2016-04-28
(86)【国際出願番号】 US2016029765
(87)【国際公開番号】W WO2016176437
(87)【国際公開日】2016-11-03
【審査請求日】2019-04-24
【審判番号】
【審判請求日】2021-01-08
(32)【優先日】2015-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506093452
【氏名又は名称】ニューサウス イノベーションズ ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シンクレア,デビッド,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ウー,リンゼイ
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】田中 耕一郎
【審判官】原田 隆興
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-501343(JP,A)
【文献】特表2011-514356(JP,A)
【文献】国際公開第2014/152864(WO,A1)
【文献】特表2011-514356(JP,A)
【文献】Seminars in Oncology,2011年,Vol.38, No.3,pp.431-438
【文献】Journal of Pain and Symptom Management, Volume 41, Issue 1, January 2011, Pages 126-139
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K45/00-45/08
A61K31/00-33/44
CAplus/MEDLINE/REGISTRY/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における化学療
法誘発性神経毒性損傷を予防するための組成物であって、被験体におけるNAD
+のレベルを増加させる化合物を含み、前記化学療
法誘発性神経毒性損傷が、化学療
法誘発性認知機能障害(CICI)を含み、前記被験体が、
i) 化学療法
剤への曝露を受けた被験体
であって、CICIがまだ誘発されていない被験体であるか、又は
ii) 化学療法
剤への曝露を受けている被験体であるか、又は
iii) 化学療法
剤への曝露を受ける予定である被験体であり、
NAD
+のレベルを増加させる化合物が、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、ニコチン酸、ニコチンアミド、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチン酸モノヌクレオチド、
又はニコチン酸リボシド
、あるいはそれらの塩から選択されるNAD
+前駆体である、
上記組成物。
【請求項2】
化学療法
剤が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、シクロホスファミド、アルトレタミン、プリカミジン、クロラムブシル、クロルメチン、イホスファミド、メルファラン、カルムスチン、ホテムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ブスルファン、ダカルバジン、メクロレタミン、プロカルバジン、テモゾロミド、チオTEPA、ウラムスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ヘキサメチルメラミン、エトポシド、テニポシド、メトトレキセート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、カペシタビン、シタラビン、フルオロウラシル、フルクスリジン、ゲムシタビン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、バルルビシン、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、マイトマイシン、トポテカン、イリノテカン、アミノレブリン酸、メチルアミノレブリネート、ポルフィマーナトリウム、ベルテポルフィン、アリトレチノイン、アルトレタミン、アムサクリン、アナグレリド、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、ベキサロテン、ボルテゾミブ、セレコキシブ、デニロイキン、ディフティトックス、エルロチニブ、エストラムスチン、ゲフィチニブ、ヒドロキシカルバミド、イマチニブ、ペントスタチン、マソプロコール、ミトタン、ペガスパルガーゼ、
及び/又はトレチノイン
、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
被験体が化学療法
剤への曝露を受けると同時に投与するためのものである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
被験体が化学療法
剤への曝露を受ける前に投与するためのものである、請求項1又は2のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
被験体が化学療法
剤への曝露を受けた後に投与するためのものである、請求項1又は2のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
NAD
+のレベルを増加させる化合物が、1日当たり0.5~5グラムの用量で投与される、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
被験体がヒトである、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
被験体における化学療
法誘発性神経毒性損傷を予防するための医薬の製造における組成物の使用であって、前記組成物が被験体におけるNAD
+のレベルを増加させる化合物を含み、前記化学療
法誘発性神経毒性損傷が化学療
法誘発性認知機能障害(CICI)を含み、前記被験体が、
i) 化学療法
剤への曝露を受けた被験体
であって、CICIがまだ誘発されていない被験体であるか、又は
ii) 化学療法
剤への曝露を受けている被験体であるか、又は
iii) 化学療法
剤への曝露を受ける予定である被験体であり、
NAD
+のレベルを増加させる化合物が、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、ニコチン酸、ニコチンアミド、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチン酸モノヌクレオチド、
又はニコチン酸リボシド
、あるいはそれらの塩から選択されるNAD
+前駆体である、
上記使用。
【請求項9】
化学療法
剤が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、シクロホスファミド、アルトレタミン、プリカミジン、クロラムブシル、クロルメチン、イホスファミド、メルファラン、カルムスチン、ホテムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ブスルファン、ダカルバジン、メクロレタミン、プロカルバジン、テモゾロミド、チオTEPA、ウラムスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ヘキサメチルメラミン、エトポシド、テニポシド、メトトレキセート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、カペシタビン、シタラビン、フルオロウラシル、フルクスリジン、ゲムシタビン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、バルルビシン、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、マイトマイシン、トポテカン、イリノテカン、アミノレブリン酸、メチルアミノレブリネート、ポルフィマーナトリウム、ベルテポルフィン、アリトレチノイン、アルトレタミン、アムサクリン、アナグレリド、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、ベキサロテン、ボルテゾミブ、セレコキシブ、デニロイキン、ディフティトックス、エルロチニブ、エストラムスチン、ゲフィチニブ、ヒドロキシカルバミド、イマチニブ、ペントスタチン、マソプロコール、ミトタン、ペガスパルガーゼ、
及び/又はトレチノイン
、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項8に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年4月28日に出願された米国特許出願第62/153,876号の利益を主張し、その全体が示されるかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦支援研究又は開発に関する記載
適用なし
【背景技術】
【0003】
化学療法及び放射線療法が神経毒性である可能性があり、神経障害及び/又は認知機能障害をもたらし得る神経損傷を生じることはよく知られている。かなりの数の癌生存者が、治療後に進行中の認知的問題を報告し、記憶力、ワーキングメモリー及び注意力に関する困難性を明らかにしている[2]。その結果生じる、日常機能、職場復帰及び生活の質に与える影響は、患者が直面する最も困難な生存者問題として報告されている[3]。このような化学療法誘発性認知機能障害(CICI)は、幾つかの方法で確認されている。第一に、客観的な神経心理学テストは、17~50%の生存者において、処理速度、注意力/集中力、実行機能、並びに言語記憶及び視覚記憶の障害を示し、これは治療後何年間も持続する[4]。第二に、癌生存者の神経画像研究により、記憶タスク及び実行機能タスクにおけるパフォーマンスの障害が、脳形態学における変化及びこれらのタスクに重要な領域(例えば、海馬及び前頭葉皮質)における活性化パターン[5,6]、並びに認知機能障害に関連する広範な白質異常[7]と相関していることが明らかになった。
【0004】
さらなる証拠は、化学療法及び放射線療法が神経毒性副作用を有することを示す。多くの患者(特にタキサン類(例えばドセタキセル)及び白金化合物(例えばオキサリプラチン)の投与を受けている患者)が、化学療法中に痛みを伴い、且つ日常生活に支障を来すほどの神経障害を発症している。推定値は、治療中に化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)を経験している患者の70~90%で変動する[8]。CIPNは、進行性の持続的なピリピリ感、無感覚、極めて強い疼痛、並びに寒冷及び接触に対する過敏性として現れる可能性があり、手及び足において始まり、腕及び脚にも影響を与える場合がある。CIPNは治療中の苦痛の大きな源であり、投与量減量又は、稀な場合には化学療法の中止のいずれかにつながる治療の律速因子となり得る。これらの影響は持続する。治療後6か月目では、患者の30%がCIPNを経験し続けており[8]、患者の10~20%は回復しない[9]。CIPNは、治療後の患者の生活の質、睡眠及び気分に明らかに重篤な負の影響を有する[9]。
【0005】
重要なことに、認知検査における障害は、運動活性、又は不安、快感消失若しくは抑鬱様行動の変化の不存在下で生じ得る[16]。さらに、認知機能障害は、実験用ラットにおいてアロディニアより長く持続し、認知検査における不十分なパフォーマンスは、疼痛を伴う身体障害とは関連していないことを示している[11]。
【0006】
化学療法は、不活動、倦怠感及び無気力をもたらす場合があり、これらは健康の下方スパイラルの一因となり得る。自発的活動を増加させる治療介入はこれを緩和し、癌生存者の身体的健康、神経学的健康及びメンタルヘルスを改善し得る。
【0007】
化学療法は、癌生存者の生活の質を損ない得る抑鬱、不安、睡眠障害などの概日リズム障害、メンタルヘルス問題、神経精神医学的及び神経心理学的障害をもたらす可能性がある。
【0008】
NAD+レベルは年齢と共に低下し[17]、ヒト及び齧歯類においてはカロリー制限及び運動により上昇する。NAD+を上昇させる治療介入(例えば、カロリー制限及び運動)は、癌リスクを低下させ、腫瘍増殖を予防し[19、20]、CIPN及びCICIを低下させる[42]ことが示されている。
【0009】
NAD+前駆体であるニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びニコチンアミドリボシド(NR)は、代謝作用を改善し、高齢マウスにおいては老化の態様を回復させることが示されている[17]。
【0010】
軸索変性は、神経変性疾患及び末梢神経障害においてしばしば生じる。切開された軸索の変性は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)合成酵素、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(Nmnat1)を有する融合タンパク質の過剰発現を有するワーラー変性遅延(Wlds)マウスにおいて遅延される。Wld(s)及びNmnat1自体はいずれも、神経細胞培養物における軸索変性の予防において機能的である。
【0011】
NAD+レベルは、損傷神経細胞、疾患神経細胞、又は変性神経細胞において低下する(Araki et al Science 2004)。
【0012】
手短に言えば、化学療法及び/又は放射線療法による抗癌治療は、生存者の生活の質に大きな影響を及ぼす重篤な副作用という代償を払って多くの癌について生存率の増加を与え、CIPN及び認知機能障害の場合には、進行中の治療の実行可能性に影響を及ぼす。従って、化学療法及び/又は放射線療法誘発性認知機能障害及び/又は神経障害を治療又は予防するための新たな治療戦略に対する必要性がある。
【0013】
神経傷害又は障害は、様々な原因を有し得る。
【0014】
神経傷害は、認知欠損(例えば、記憶力の低下、処理速度の遅延、集中力/注意力の低下、空間記憶、言語記憶及び視覚記憶障害、実行機能障害、社会的相互作用障害、言語及び非言語コミュニケーション障害、及び社会的相互作用障害を引き起こし得る。
【0015】
神経傷害はさらに、メンタルヘルス障害、例えば抑鬱、不安、自傷及び自殺の危険性、薬物中毒及び薬物乱用を引き起こし得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【文献】Munir, F., et al., Cognitive Intervention for Breast Cancer Patients Undergoing Adjuvant Chemotherapy: A Needs Analysis. Cancer Nurs, 2011. 34(5): p. 385-92.
【文献】Boykoff, N., M. Moieni, and S.K. Subramanian, Confronting chemobrain: an in-depth look at survivors' reports of impact on work, social networks, and health care response. J Cancer Surviv, 2009. 3(4): p. 223-32.
【文献】Vardy, J Cognitive function in breast cancer survivors. Cancer Treat Res, 2009. 151: p. 387-419.
【文献】Inagaki, M., et al., Smaller regional volumes of brain gray and white matter demonstrated in breast cancer survivors exposed to adjuvant chemotherapy. Cancer, 2007. 109(1): p. 146-56.
【文献】Silverman, D.H., et al., Altered frontocortical, cerebellar, and basal ganglia activity in adjuvant-treated breast cancer survivors 5-10 years after chemotherapy. Breast Cancer Res Treat, 2007. 103(3): p. 303-11.
【文献】Ferguson, R. J., et al., Brain structure and function differences in monozygotic twins: possible effects of breast cancer chemotherapy. J Clin Oncol, 2007. 25(25): p. 3866-70.
【文献】Seretny, M., et al., Incidence, prevalence, and predictors of chemotherapy-induced peripheral neuropathy: A systematic review and meta-analysis. Pain, 2014. 155(12): p. 2461-70.
【文献】Park, S.B., et al., Mechanisms underlying chemotherapy-induced neurotoxicity and the potential for neuroprotective strategies. Curr Med Chem, 2008. 15(29): p. 3081-94.
【文献】Dubois, M., et al., Chemotherapy-induced long-term alteration of executive functions and hippocampal cell proliferation: Role of glucose as adjuvant. Neuropharmacology, 2013. 79C: p. 234-248.
【文献】Fardell, J.E., J. Vardy, and I.N. Johnston, Predictors oflong-term cognitive outcomes due to oxaliplatin chemotherapy; the role of dose and peripheral neuropathy. Asia Pacific Journal of Clinical Oncology, 2011. 7(S4): p. 155.
【文献】Gomes, A.P., et al., Declining NAD(+) Induces a Pseudohypoxic State Disrupting Nuclear-Mitochondrial Communication during Aging. Cell, 2013. 155(7): p. 1624-38.
【文献】Meynet, O. and J.E. Ricci, Caloric restriction and cancer: molecular mechanisms and clinical implications. Trends Mol Med, 2014. 20(8): p. 419-27.
【文献】Lagopoulos, L. and R. Stalder, The influence of food intake on the development of diethylnitrosamine-induced liver tumours in mice. Carcinogenesis, 1987. 8(1): p. 33-7.
【文献】Winocur, G., et al., Physical exercise prevents suppression of hippocampal neurogenesis and reduces cognitive impairment in chemotherapy-treated rats. Psychopharmacology (Berl), 2014. 231(11): p. 2311-20.
【文献】Araki et al Science 2004
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
一態様において、本発明は、被験体における神経障害及び/又は疼痛;並びに痙攣、神経筋麻痺、感覚喪失/無感覚、ピリピリ感、運動技能の喪失、性機能障害などの関連する障害を予防し、治療し又はそれらに対して増加した抵抗性を提供する方法について開示する。本方法は、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を被験体に投与するステップを含む。
【0018】
別の態様において、本発明は、被験体における記憶力、処理速度、実行機能、注意力、集中力、及び総合的な知能を含む認知機能を改善する方法である。本方法は、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を被験体に投与するステップを含む。
【0019】
別の態様において、本発明は、被験体における認知欠損、神経認知欠損及び/又は神経発生的障害を予防又は治療する方法である。本方法は、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を被験体に投与するステップを含む。
【0020】
別の態様において、本発明は、被験体における自発的活動の増加、持久力及びスタミナの向上のための方法である。本方法は、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を被験体に投与するステップを含む。
【0021】
別の態様において、本発明は、それを必要とする被験体における不活動、倦怠感、無気力、及び憂鬱を予防又は治療する方法である。本方法は、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を被験体に投与するステップを含む。
【0022】
別の態様において、本発明は、被験体における抑鬱、不安、心的外傷後ストレス障害、及び他のメンタルヘルス及び心理的障害を予防又は治療する方法である。本方法は、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を被験体に投与するステップを含む。
【0023】
別の態様において、本発明は、被験体における神経損傷及び/又は障害に関連する性機能障害を予防又は治療する方法である。本方法は、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を被験体に投与するステップを含む。
【0024】
別の態様において、本発明は、被験体における神経機能及び運動技能を改善する方法である。本方法は、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を被験体に投与するステップを含む。
【0025】
別の態様において、本発明は、被験体における神経毒性損傷を予防又は治療する方法である。本方法は、心理的又は身体的ストレス、有毒化学薬品への曝露、放射線、ショック、爆発性ショック、感電、機械的傷害、外科的傷害、熱傷害、疲弊、低酸素、酸素欠乏、失血、脳卒中、炎症、自己炎症、感染、創傷治癒、栄養不良、薬物中毒、薬物過剰摂取、又は他の傷害を受けた被験体、あるいは前記ストレスに曝される予定の被験体に、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を投与し、これにより神経毒性損傷を予防するステップを含む。
【0026】
本発明者らは、本明細書において、NAD+レベルの上昇が、認知パフォーマンスを改善し、神経認知低下を予防することを開示する。
【0027】
本発明者らは、本明細書において、NAD+レベルの上昇が、疼痛を治療し、疼痛に対する抵抗性を増加させることを開示する。
【0028】
本発明者らは、本明細書において、NAD+レベルの上昇が、自発的活動、持久力及びスタミナを向上させることを開示する。
【0029】
第一の態様において、本開示は、疾患、心理的ストレス、身体的ストレス、有毒化学薬品への曝露、放射線、ショック、爆発性ショック、感電、機械的傷害、外科的傷害、熱傷害、疲弊、低酸素、酸素欠乏、失血、脳卒中、栄養不良、薬物中毒、薬物過剰摂取、創傷治癒、炎症、感染、汚染(例えば大気汚染及び水質汚染)への曝露、又は他の傷害中の、神経組織に対する毒性及び損傷を予防する方法を包含する。
【0030】
一部の実施形態において、予防される神経毒性損傷は、神経認知機能障害を引き起こす損傷である。
【0031】
一部の実施形態において、予防される神経毒性損傷は、疼痛及び/又は末梢神経障害を引き起こす損傷である。
【0032】
一部の実施形態において、予防される神経毒性損傷は、身体的不活動、無気力又は倦怠感を引き起こす損傷である。
【0033】
一部の実施形態において、予防される神経毒性損傷は、抑鬱、不安、心的外傷後ストレス障害、睡眠障害又は他の概日リズム障害、メンタルヘルス障害又は他の神経心理学的障害を引き起こす損傷である。
【0034】
別の態様において、本開示は、疼痛を治療し、増加した疼痛に対する抵抗性を提供する方法を包含する。
【0035】
本発明者らは、本明細書において、NAD+レベルの上昇が、健常な神経組織に対する化学療法誘発性毒性に対するロバストな保護を提供し、化学療法及び/又は放射線療法誘発性末梢神経障害(CIPN)、化学療法及び/又は放射線療法誘発性認知機能障害(CICI)、及び化学療法及び/又は放射線療法誘発性不活動、無気力、倦怠感、不安、抑鬱、睡眠障害又は他の概日リズム障害、メンタルヘルス障害又は他の神経心理学的障害を予防又は治療し得ることを開示する。
【0036】
別の態様において、本開示は、被験体における化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷を予防する方法を包含する。本方法は、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を、化学療法を受けた、化学療法及び/又は放射線療法を受けている、あるいは化学療法及び/又は放射線療法を受ける予定の被験体に投与し、これにより化学療法誘発性神経毒性損傷を予防するステップを含む。
【0037】
一部の実施形態において、予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷は、化学療法誘発性認知機能障害(CICI)に関連する損傷である。
【0038】
一部の実施形態において、予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷は、化学療法及び/又は放射線療法誘発性末梢神経障害(CIPN)に関連する損傷である。
【0039】
一部の実施形態において、予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性損傷は、化学療法及び/又は放射線療法誘発性不活動、無気力又は倦怠感に関連する損傷である。
【0040】
一部の実施形態において、予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性損傷は、化学療法及び/又は放射線療法誘発性の抑鬱、不安、睡眠障害、概日リズム障害、メンタルヘルス障害、又は他の神経心理学的又は神経精神医学的障害に関連する損傷である。
【0041】
一部の実施形態において、薬剤は、化学療法剤が被験体に投与される前に、それと同時に、又はその後に投与される。一部のこのような実施形態において、化学療法剤は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、シクロホスファミド、アルトレタミン、プリカミジン、クロラムブシル、クロルメチン、イホスファミド、メルファラン、カルムスチン、ホテムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ブスルファン、ダカルバジン、メクロレタミン、プロカルバジン、テモゾロミド、チオTEPA、ウラムスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ヘキサメチルメラミン、エトポシド、テニポシド、メトトレキセート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、カペシタビン、シタラビン、フルオロウラシル、フルクスリジン、ゲムシタビン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、バルルビシン、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、マイトマイシン、トポテカン、イリノテカン、アミノレブリン酸、メチルアミノレブリネート、ポルフィマーナトリウム、ベルテポルフィン、アリトレチノイン、アルトレタミン、アムサクリン、アナグレリド、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、ベキサロテン、ボルテゾミブ、セレコキシブ、デニロイキン、ディフティトックス、エルロチニブ、エストラムスチン、ゲフィチニブ、ヒドロキシカルバミド、イマチニブ、ペントスタチン、マソプロコール、ミトタン、ペガスパルガーゼ、トレチノイン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0042】
一部の実施形態において、薬剤は、放射線療法の前に、それと同時に、又はその後に投与される。
【0043】
一部の実施形態において、NAD+のレベルを増加させる薬剤は、NAD+前駆体である。一部のこのような実施形態において、NAD+前駆体は、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、ニコチン酸、ニコチンアミド、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチン酸モノヌクレオチド、ニコチン酸リボシド、AICAR、アデノシン、アデニン、アデノシン一リン酸、前述のいずれかのものの類似体、ヘテロ-若しくはホモ-ダイマー、オリゴマー又はポリマー、あるいはそれらの塩又はプロドラッグからなる群から選択される。
【0044】
一部の実施形態において、NAD+のレベルを増加させる薬剤は、1日当たり0.5~5グラムの用量で投与される。
【0045】
一部の実施形態において、NAD+のレベルを増加させる薬剤は、NAD+生合成に関与する酵素、かかる酵素の酵素的に活性な断片、NAD+生合成に関与する酵素をコードする核酸、及びかかる核酸の酵素的に活性な断片からなる群から選択される。一部のこのような実施形態において、酵素は、NMNAT-1、NMNAT2、NMNAT3又はNAMPTである。
【0046】
一部の実施形態において、NAD+のレベルを増加させる薬剤は、NAD+生合成に関与する酵素に対する活性化剤である。
【0047】
一部の実施形態において、NAD+のレベルを増加させる薬剤は、NAD+消費酵素(例えばCD38又はPARP)の阻害剤である。一実施形態において、薬剤として、例えば、アピゲニン、ルテオリン、トリホスチン8、並びにGSKによって開発された幾つかの化合物:チオゾロキノリン、チオゾロキナゾリン、チオゾロキノリノン、チオゾロキナゾリノン(thiozoloquin(az)olin(on)es)が挙げられる。Haffner CD et al J Med Chem 2015を参照のこと。
【0048】
一部の実施形態において、被験体はヒトである。
【0049】
別の態様において、本開示は、被験体における化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷の予防において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤を包含する。
【0050】
一態様において、本発明は、神経毒性傷害の予防において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤である。
【0051】
別の態様において、本発明は、神経認知低下及び神経障害低下の予防において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤である。
【0052】
別の態様において、本発明は、疼痛、神経障害及び関連する障害の予防又は治療;並びに疼痛、神経障害及び関連する障害に対する増加した抵抗性の提供において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤である。
【0053】
別の態様において、本発明は、認知パフォーマンスの改善において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤である。
【0054】
別の態様において、本発明は、自発的活動、持久力及びスタミナの向上において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤である。
【0055】
別の態様において、本発明は、痙攣、振戦、攣縮、麻痺、神経筋麻痺、聴力喪失、視覚障害、味覚喪失の予防、技能、歩行、及びコーディネーションの低下の改善又は予防において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤である。
【0056】
別の態様において、本発明は、神経損傷又は神経障害に関連する性機能障害の予防又は治療において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤である。
【0057】
別の態様において、本発明は、神経機能及び運動技能の改善において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤である。
【0058】
一部の実施形態において、予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷は、化学療法及び/又は放射線療法誘発性認知機能障害(CICI)に関連する損傷である。
【0059】
一部の実施形態において、予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷は、化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)に関連する損傷である。
【0060】
一部の実施形態において、予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷は、化学療法及び/又は放射線療法誘発性不活動、無気力又は倦怠感に関連する損傷である。
【0061】
一部の実施形態において、予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷は、化学療法及び/又は放射線療法誘発性の抑鬱、不安、睡眠障害、概日リズム障害、又は他の心理的障害に関連する損傷である。
【0062】
一部の実施形態において、薬剤はNAD+前駆体である。一部のこのような実施形態において、NAD+前駆体は、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、ニコチン酸、ニコチンアミド、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチン酸モノヌクレオチド、ニコチン酸リボシド、AICAR、アデノシン、アデニン、アデノシン一リン酸、前述のいずれかのものの類似体、ヘテロ-若しくはホモ-ダイマー、オリゴマー又はポリマー、あるいはそれらの塩又はプロドラッグからなる群から選択される。
【0063】
一部の実施形態において、NAD+上昇剤は、NAD+消費酵素(例えばCD38又はPARP酵素)の阻害剤である。
【0064】
一部の実施形態において、薬剤は、NAD+生合成に関与する酵素、かかる酵素の酵素的に活性な断片、NAD+生合成に関与する酵素をコードする核酸、及びかかる核酸の酵素的に活性な断片からなる群から選択される。一部のこのような実施形態において、酵素は、NMNAT-1、NMNAT2、NMNAT3又はNAMPTである。
【0065】
一部の実施形態において、NAD+のレベルを増加させる薬剤は、NAD+生合成に関与する酵素に対する活性化剤である。
【0066】
一部の実施形態において、本発明は、神経損傷又は神経低下を予防するための医薬の製造において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤である。
【0067】
一部の実施形態において、本発明は、神経認知機能の改善を含む、神経機能を改善するための医薬の製造において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤である。
【0068】
別の態様において、本開示は、被験体における化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷を予防するための医薬の製造において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤を包含する。
【0069】
一部の実施形態において、予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷は、化学療法及び/又は放射線療法誘発性認知機能障害(CICI)に関連する損傷である。
【0070】
一部の実施形態において、予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷は、化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)に関連する損傷である。
【0071】
一部の実施形態において、NAD+のレベルを増加させる薬剤は、NAD+前駆体である。一部のこのような実施形態において、NAD+前駆体は、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、ニコチン酸、ニコチンアミド、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチン酸モノヌクレオチド、ニコチン酸リボシド、AICAR、アデノシン、アデニン、アデノシン一リン酸、前述のいずれかのものの類似体、ヘテロ-若しくはホモ-ダイマー、オリゴマー又はポリマー、あるいはそれらの塩又はプロドラッグからなる群から選択される。
【0072】
一部の実施形態において、薬剤は、NAD+生合成に関与する酵素、かかる酵素の酵素的に活性な断片、NAD+生合成に関与する酵素をコードする核酸、及びかかる核酸の酵素的に活性な断片からなる群から選択される。一部のこのような実施形態において、酵素は、NMNAT-1、NMNAT2、NMNAT3又はNAMPTである。
【0073】
一部の実施形態において、薬剤は、NAD+生合成に関与する酵素に対する活性化剤である。
【0074】
別の態様において、本発明は、被験体における神経毒性損傷、神経障害を治療し、又は神経機能を改善する方法である。本方法は、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を、それを必要とする被験体に投与し、これにより神経毒性損傷の症状の1つを低減するステップを含む。
【0075】
一実施形態において、治療される神経毒性損傷は、認知機能障害に関連する損傷である。
【0076】
一実施形態において、治療される神経毒性損傷は、末梢神経障害及び/又は疼痛に関連する損傷である。
【0077】
一実施形態において、治療される神経毒性損傷は、不活動、無気力及び倦怠感に関連する損傷である。
【0078】
一実施形態において、治療される神経毒性損傷は、抑鬱、不安、心的外傷後ストレス障害、睡眠障害、概日リズムの乱れ、及び他の神経心理学的障害に関連する損傷である。
【0079】
別の態様において、本開示は、被験体における化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷を治療する方法を包含する。本方法は、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量をそれを必要とする被験体に投与し、これにより化学療法誘発性神経毒性損傷の1つ以上の症状を低減するステップを含む。
【0080】
一部の実施形態において、治療される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷は、化学療法誘発性認知機能障害(CICI)に関連する損傷である。
【0081】
一部の実施形態において、治療される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷は、化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)に関連する損傷である。
【0082】
一部の実施形態において、化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷の1つ以上の症状としては、限定するものではないが、例えば、火傷感、ピリピリ感、感覚の喪失、指を使用して物を拾い上げる又は保持することの困難性、物の取り落し、平衡困難性、歩行中のつまずき又はよろめき、あるいは圧力又は温度感受性が挙げられる。
【0083】
一実施形態において、治療される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性は、不活動、無気力及び倦怠感に関連する損傷である。
【0084】
一実施形態において、治療される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性は、抑鬱、不安、睡眠障害、概日リズム攪乱、及び他のメンタルヘルス又は神経心理学的障害に関連する損傷である。
【0085】
一部の実施形態において、NAD+上昇剤は、既存の疼痛治療薬、例えばパラセタモール、アスピリン、イブプロフェン、オピオイドと組み合わせて与えられ、共投与される疼痛治療薬の効力を高め、必要用量を低減し、又は既存の疼痛治療薬の組み合わせにおいて一部の薬剤を置換し、あるいは疼痛に対する増加した抵抗性を提供する。
【0086】
一部の実施形態において、NAD+のレベルを増加させる薬剤は、NAD+前駆体である。一部のこのような実施形態において、NAD+前駆体は、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、ニコチン酸、ニコチンアミド、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチン酸モノヌクレオチド、ニコチン酸リボシド、AICAR、アデノシン、アデニン、アデノシン一リン酸、前述のいずれかのものの類似体、ヘテロ-若しくはホモ-ダイマー、オリゴマー又はポリマー、あるいはそれらの塩又はプロドラッグからなる群から選択される。
【0087】
一部の実施形態において、NAD+のレベルを増加させる薬剤は、NAD+消費酵素(例えばCD38又はPARP)の阻害剤である。
【0088】
一部の実施形態において、NAD+のレベルを増加させる薬剤は、1日当たり0.5~5グラムの用量で投与される。一部の実施形態において、NAD+のレベルを増加させる薬剤は、NAD+生合成に関与する酵素、かかる酵素の酵素的に活性な断片、NAD+生合成に関与する酵素をコードする核酸、及びかかる核酸の酵素的に活性な断片からなる群から選択される。一部のこのような実施形態において、酵素は、NMNAT-1、NMNAT2、NMNAT3又はNAMPTである。
【0089】
一部の実施形態において、NAD+のレベルを増加させる薬剤は、NAD+生合成に関与する酵素に対する活性化剤である。
【0090】
一実施形態において、被験体は、競走馬、コンパニオンペット及び家畜からなる群から選択される哺乳動物である。
【0091】
一部の実施形態において、被験体はヒトである。
【0092】
別の態様において、本発明は、被験体における神経損傷の治療において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤である。
【0093】
一実施形態において、治療又は予防される神経損傷は、認知機能障害に関連する損傷である。
【0094】
一実施形態において、治療又は予防される神経損傷は、末梢神経障害及び/又は疼痛に関連する損傷である。
【0095】
一実施形態において、治療又は予防される神経損傷は、不活動、無気力及び倦怠感に関連する損傷である。
【0096】
一実施形態において、治療又は予防される神経損傷は、抑鬱、不安、睡眠障害、概日リズム攪乱、メンタルヘルス障害、及び他の神経心理学的障害に関連する損傷である。
【0097】
一実施形態において、治療又は予防される神経損傷は、心理的ストレス又は感情的ストレスに関連する損傷、及び関連する障害、例えば心的外傷後ストレス障害である。
【0098】
別の態様において、本発明は、疼痛の予防、治療及び/又は疼痛に対する抵抗性の増加において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤である。
【0099】
別の態様において、本発明は、認知パフォーマンス、運動技能、自発的活動、スタミナ及び持久力を高め、疼痛及び神経障害に対する抵抗性を提供するため、被験体における神経機能の改善において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤である。
【0100】
別の態様において、本開示は、被験体における化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷の治療において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤を包含する。
【0101】
一部の実施形態において、治療される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷は、化学療法及び/又は放射線療法誘発性認知機能障害(CICI)に関連する損傷である。
【0102】
一部の実施形態において、予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷は、化学療法及び/又は放射線療法誘発性末梢神経障害(CIPN)に関連する損傷である。
【0103】
一実施形態において、予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷は、不活動、無気力及び倦怠感である。
【0104】
一実施形態において、予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷は、抑鬱、不安、睡眠障害、概日リズム障害、メンタルヘルス障害及び他の神経心理学的障害である。
【0105】
一部の実施形態において、薬剤はNAD+前駆体である。一部のこのような実施形態において、NAD+前駆体は、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、ニコチン酸、ニコチンアミド、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチン酸モノヌクレオチド、ニコチン酸リボシド、AICAR、アデノシン、アデニン、アデノシン一リン酸、前述のいずれかのものの類似体、ヘテロ-若しくはホモ-ダイマー、オリゴマー又はポリマー、あるいはそれらの塩又はプロドラッグからなる群から選択される。
【0106】
一部の実施形態において、薬剤は、NAD+生合成に関与する酵素、かかる酵素の酵素的に活性な断片、NAD+生合成に関与する酵素をコードする核酸、及びかかる核酸の酵素的に活性な断片からなる群から選択される。一部のこのような実施形態において、酵素は、NMNAT-1、NMNAT2、NMNAT3又はNAMPTである。
【0107】
一部の実施形態において、薬剤は、NAD+生合成に関与する酵素に対する活性化剤である。
【0108】
別の態様において、本開示は、被験体における化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷を治療するための医薬の製造において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤を包含する。
【0109】
一部の実施形態において、治療される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷は、化学療法及び/又は放射線療法誘発性認知機能障害(CICI)に関連する損傷である。
【0110】
一部の実施形態において、予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷は、化学療法及び/又は放射線療法誘発性末梢神経障害(CIPN)に関連する損傷である。
【0111】
一部の実施形態において、薬剤はNAD+前駆体である。一部のこのような実施形態において、NAD+前駆体は、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、ニコチン酸、ニコチンアミド、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチン酸モノヌクレオチド、ニコチン酸リボシド、AICAR、アデノシン、アデニン、アデノシン一リン酸、前述のいずれかのものの類似体、ヘテロ-若しくはホモ-ダイマー、オリゴマー又はポリマー、あるいはそれらの塩又はプロドラッグからなる群から選択される。
【0112】
一部の実施形態において、薬剤は、NAD+生合成に関与する酵素、かかる酵素の酵素的に活性な断片、NAD+生合成に関与する酵素をコードする核酸、及びかかる核酸の酵素的に活性な断片からなる群から選択される。一部のこのような実施形態において、酵素は、NMNAT-1、NMNAT2、NMNAT3又はNAMPTである。
【0113】
一部の実施形態において、薬剤は、NAD+生合成に関与する酵素に対する活性化剤である。
【0114】
別の実施形態において、薬剤は、疼痛及び神経障害を予防し、治療し又はこれらに対する抵抗性を増加させるために使用される。この非限定的例としては、化学物質曝露、放射線曝露、光線曝露、創傷、心的外傷、機械的ストレス、熱ストレス、高温、低温、日焼け、神経障害性疾患、又は神経に対する損傷をもたらす疾患が挙げられる。
【0115】
別の実施形態において、薬剤は、鎮痛剤、例えばパラセタモール、アスピリン、イブプロフェン、又はオピオイドと組み合わせて、又は前記鎮痛剤の代わりに投与される。本明細書中に開示される薬剤との共投与を用いて、鎮痛剤の必要用量を低減し、及び/又は特定の鎮痛剤の効力を高めるか、又は特定の鎮痛剤に対する必要性を置換することができる。
【0116】
別の実施形態において、薬剤は、記憶喪失又は認知機能障害をもたらす神経障害、例えばアルツハイマー病、認知症又はパーキンソン病を治療するために使用される。
【0117】
別の態様において、本発明は、疼痛耐性を改善するための、NAD+を増加させる薬剤である。
【0118】
別の態様において、本発明は、幻肢を治療するための、NAD+を増加させる薬剤である。
【0119】
別の態様において、本発明は、疼痛の治療のための、疼痛治療薬(例えばイブプロフェン、アスピリン、パラセタモール、オピオイド、及び他の疼痛治療薬)の前に、それと同時に、それと組み合わせて、それによる治療後に、又はそれの代わりに送達される、NAD+を増加させる薬剤である。
【0120】
別の態様において、本発明は、疼痛及び神経障害を治療するための、抗炎症治療薬(例えば、限定するものではないが、デキサメタゾン及びメチルプレドニゾロンからなる群から選択されるコルチコステロイド薬、並びにイブプロフェン、アスピリン、インドメタシン、COX-2阻害剤及びメフェナム酸からなる群から選択される非ステロイド系抗炎症剤)の前に、それと同時に、それと組み合わせて、それによる治療後に、又はそれの代わりに送達される、NAD+を増加させる薬剤である。
【0121】
別の態様において、本発明は、自発的身体活動、スタミナ及び持久力を向上させるための、NAD+を増加させる薬剤である。
【0122】
別の態様において、本発明は、認知パフォーマンスを改善するための、NAD+を増加させる薬剤である。
【0123】
別の態様において、本発明は、抑鬱、不安、心的外傷後ストレス障害、薬物乱用、及び他のメンタルヘルス又は神経心理学的障害を治療するための、又はこれらから保護するための、NAD+を増加させる薬剤である。
【0124】
別の態様において、本発明は、糖尿病性神経障害を予防又は治療するための、NAD+を増加させる薬剤である。
【0125】
別の態様において、本発明は、薬物乱用及び薬物中毒を予防又は治療するための、NAD+を増加させる薬剤である。
【0126】
別の態様において、本発明は、汚染(例えば大気汚染、水質汚染、及び食物汚染)に対する曝露によって引き起こされる神経認知的障害又は神経発生的障害を予防するための、NAD+を増加させる薬剤である。
【0127】
別の態様において、本発明は、神経及び神経細胞の損傷を予防又は治療する薬剤である。
【0128】
一実施形態において、NAD+前駆体は、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、ニコチン酸、ニコチンアミド、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチン酸モノヌクレオチド、ニコチン酸リボシド、AICAR、アデノシン、アデニン、アデノシン一リン酸、前述のいずれかのものの類似体、ヘテロ-若しくはホモ-ダイマー、オリゴマー又はポリマー、あるいはそれらの塩又はプロドラッグからなる群から選択される。
【0129】
一実施形態において、薬剤は、NAD+生合成に関与する酵素、かかる酵素の酵素的に活性な断片、NAD+生合成に関与する酵素をコードする核酸、及びかかる核酸の酵素的に活性な断片からなる群から選択される。
【0130】
一実施形態において、酵素は、NMNAT-1、NMNAT2、NMNAT3又はNAMPTである。
【0131】
一実施形態において、薬剤は、NAD+生合成に関与する酵素に対する活性化剤である。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【
図1】
図1A~1D。雄SDラットを、NMN(200mg/kg)の共投与を伴う又は伴わないドキソルビシン(4mg/kg)の単独腹腔内注射の24時間前及び24時間後、NMNの飲料水への添加(500mg/L)の前にベースライン試験に供した。3日目の、A) 自発的ホイールランニング、その後のB) 機械的アロディニア(疼痛)についてのvon Frey試験。8日目に、C) 新規位置認識試験を用いて短期空間記憶を評価した。9日目に、D) 新規物体認識試験を用いて、短期物体記憶を評価した。n=8、*p<0.05、**p<0.01、****p<0.0001。Dunnの多重比較試験、Kruskal Wallis一方向ANOVA。
【
図2】
図2A~2B。A) 脳におけるNMNAT3-His導入遺伝子の発現のためのHis-tagウエスタンブロット。B) NMNAT3トランスジェニック動物の組織(肝臓)におけるパルミトイル-カルニチンミトコンドリア呼吸。
【
図3】
図3A~3C。A) ミトコンドリア呼吸をプローブするための実験デザイン[43]、B) クラーク型電極におけるO2消費量の例示的トレース、C) 高齢のNMN治療マウスの筋ミトコンドリアの呼吸能の変化。
【発明を実施するための形態】
【0133】
詳細な説明
I. 定義:
本明細書中で使用される「1つの(a)」又は「1つの(an)」実体という語は、1つ以上のその実体を指し;例えば、「1つの化合物(a compound)」は、1つ以上の化合物又は少なくとも1つの化合物を指す。それ自体、用語「a」(又は「an」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」は、本明細書中で互換的に使用することができる。
【0134】
本明細書中で使用される用語「任意選択の」又は「任意選択により」は、その後に記載される事象又は状況が起こり得るが、必ず起こるわけではなく、その記載が、その事象又は状況が起こる場合と、それが起こらない場合とを包含することを意味する。例えば、「任意選択の結合」は、その結合が存在していても、又は存在していなくてもよく、その記載は単結合、二重結合、又は三重結合を包含することを意味する。
【0135】
本明細書中で使用される用語「神経障害」は、神経細胞及び/又は支持細胞(例えば、神経膠、筋細胞、線維芽細胞等)に関わる任意の疾患又は症状、特に、軸索損傷に関わる疾患又は症状を指す。軸索損傷は、心的外傷により、疾患又は症状に起因する非機械的傷害により、又は化学的に誘導される傷害又は損傷によって引き起こされる可能性がある。このような損傷の結果は、軸索の変性又は機能障害及び機能的な神経活動の喪失であり得る。このような軸索損傷を生じさせる、又はこのような軸索損傷に関連する疾患及び症状は、多くの神経障害性疾患及び症状の一つである。このような神経障害としては、末梢神経障害、中枢神経障害、及びそれらの組み合わせが挙げられる。さらに、末梢神経障害の兆候は、主に中枢神経系に集中した疾患によって生じる場合があり、中枢神経系の兆候は、本質的に末梢性又は全身性の疾患により生じ得る。
【0136】
本明細書中で使用される用語「化学療法誘発性末梢神経障害」すなわち「CIPN」は、化学療法を受けている患者の30~40パーセントを苦しめる、手及び足(腕及び脚に進行する場合がある)並びに食道における、疼痛、無感覚、ピリピリ感、及び寒冷に対する感受性を特徴とする、進行性の持続的な、多くの場合不可逆的な症状を指す。CIPNにおいては、抗癌薬は、感覚機能及び運動機能の両方を損なう可能性がある。その症状は、通常は手及び/又は足において始まり、腕及び脚を上ってくる。その症状は、ピリピリ感又は無感覚のように感じられる場合もある。他の場合、その症状は、むしろ、射撃痛及び/又は灼熱痛、あるいは温度に対する感受性である。この症状は鋭い刺すような痛みを含み得る。CIPNは、聴力喪失、かすみ目及び味覚の変化につながる場合もある。CIPNは、シャツのボタンを留める、財布の中の小銭を分類する、又は歩くなどの通常の日常タスクを行うことを困難にする場合がある。さらに、運動神経機能障害は、痙攣、微細運動活動(例えば、書くこと又は電話のダイヤルを回すこと)の困難性、歩行困難、麻痺、攣縮、振戦及び脱力感として現れる。同様の障害は、放射線療法中に観察される。
【0137】
化学療法剤は、それらの作用機序及び/又はそれらが作用する細胞内標的に従って一般的にグループ化されている。例えば、化学療法剤は、DNA相互作用剤(トポイソメラーゼ阻害剤、DNA鎖切断剤及びDNA副溝結合剤を含む)、アルキル化剤、抗代謝産物、チューブリン相互作用剤及びホルモン剤として分類することができる。本出願の方法を適用し得る化学療法剤は、これらの例示的グループのいずれかから選択することができるが、これらに限定されるものではない。化学療法剤及びそれらの投与方法の詳細な考察については、Dorr, et al, Cancer Chemotherapy Handbook, 第2版, 15-34頁, Appleton and Lang(Connecticut, 1994)を参照されたい(参照により本明細書に組み込まれる)。
【0138】
CIPNに関連する化学療法薬又は剤としては、限定するものではないが、三酸化ヒ素(Torisenox)、シタラビン(Cytosar-U、Depocyt、ジェネリック医薬品)、エトポシド、ヘキサメチルメラミン(アルトレタミン[Hexalen])、イホスファミド(Ifex、ジェネリック医薬品)、メトトレキセート(Trexall、ジェネリック医薬品)、プロカルバジン(Matulane)及びビンブラスチン、サリドマイド、エポチロン類(例えばイクサベピロン(Ixempraキット))、ビンカアルカロイド類(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン類(パクリタキセル及びドセタキセル)、エポチロン類(イクサベピロン)、サリドマイド(Thalomid)、レナリドミド、プロテアソーム阻害剤、例えばボルテゾミブ(Velcade)、及び白金ベース薬(シスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチン)が挙げられる。
【0139】
ほんの一例として、本発明の方法によれば、化学療法剤は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、シクロホスファミド、アルトレタミン、プリカミジン、クロラムブシル、クロルメチン、イホスファミド、メルファラン、カルムスチン、ホテムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ブスルファン、ダカルバジン、メクロレタミン、プロカルバジン、テモゾロミド、チオTEPA、ウラムスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ヘキサメチルメラミン、エトポシド、テニポシド、メトトレキセート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、カペシタビン、シタラビン、フルオロウラシル、フルクスリジン、ゲムシタビン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、バルルビシン、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、マイトマイシン、トポテカン、イリノテカン、アミノレブリン酸、メチルアミノレブリネート、ポルフィマーナトリウム、ベルテポルフィン、アリトレチノイン、アルトレタミン、アムサクリン、アナグレリド、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、ベキサロテン、ボルテゾミブ、セレコキシブ、デニロイキン、ディフティトックス、エルロチニブ、エストラムスチン、ゲフィチニブ、ヒドロキシカルバミド、イマチニブ、ペントスタチン、マソプロコール、ミトタン、ペガスパルガーゼ、及びトレチノインから選択することができる。
【0140】
CIPNが生じるか否か、及びどの程度かは、薬物及び/又は放射線療法の選択、使用期間、総消費量及び患者が既に末梢神経障害を有しているか否かによって決まる。症状は主に感覚(疼痛、ピリピリ感、無感覚、痙攣、神経筋麻痺及び温度感受性)であるが、運動神経に影響を及ぼす場合もあり、また時々、自律神経系にも影響を及ぼす。
【0141】
CIPNは、多くの場合、最初の化学療法投与の後に続き、治療が続くにつれて重篤度が増すが、この進行は、通常、治療の完了時には安定する。白金ベース薬は例外である;これらの薬物を用いると、感覚は、治療終了後数か月間悪化し続け、CIPNは治療後数十年間持続する場合がある。一部のCIPNは不可逆的であると考えられる。多くの場合、疼痛は、薬物又は他の治療によって改善することができるが、無感覚は、通常は治療に対して抵抗性である。
【0142】
CIPN管理の中心の1つは、オピオイドベースの薬物療法である。オピオイド療法は、オピオイド中毒、離脱症状、呼吸抑制、便秘、眩暈、吐気、嘔吐、便秘、及び身体的依存性などの臨床的チャレンジを示す。さらに、オピオイド治療薬の処方は、乱用及び犯罪活動の機会を与える。医学的観点、心理的観点から、また法執行の観点から、オピオイドベースの治療薬に対する代替物が好ましい。
【0143】
CIPNは、レジャー、仕事及び家族関係を破壊し、CIPNの疼痛は、多くの場合、睡眠及び気分障害、疲労及び機能的困難性を伴う。2007年のアメリカの研究は、大半の患者が、予想されるCIPNについて説明を受けた記憶がなく、症状をモニターしている医師が、CIPNが日常生活にどのように影響しているかについてほとんど質問せず、実際的な影響(例えば器用さ及び歩行)を重要視していたことを見出した。何がCIPNの症状を引き起こすかについては知られていないが、微小管及びミトコンドリアの損傷、及び神経細胞の近くの漏れやすい血管は、探索される可能性の一部である。
【0144】
本明細書中で使用される用語「化学療法誘発性認知機能不全又は障害」、「CICI」、「化学療法後認知機能障害」、すわなち「PCCI」は、化学療法から生じ得る認知機能障害を指す。化学療法を受ける約20~30%の人々が、一定レベルの化学療法後認知機能障害を経験する。
【0145】
CICIは、癌患者の生活の質及び人生そのものに深刻な影響を及ぼし得る。CICIは様々に現れる可能性があり、例えば、脳症症候群及び錯乱状態、発作活動、頭痛、脳血管性合併症及び脳卒中、視力低下、小脳機能障害、及びミエロパシーを伴う脊髄損傷が挙げられる。現在では、治療の結果として、癌生存者の一部は、化学療法の完了後、何年にもわたって持続し得る認知問題を経験することが知られている。認知問題としては、注意力欠損、記憶喪失、及び混乱した思考過程が挙げられる。70%以下の患者が、治療期間のはるか後までそれらの認知の困難性が持続することを報告している。
【0146】
化学療法及び/又は放射線療法誘発性認知機能障害の病因はほとんど知られていないが、幾つかの候補機構、例えば酸化ストレス、血液脳関門(BBB)の障害、神経炎症、神経発生の低下等が示唆されている。
【0147】
本明細書中で使用される用語「治療する」、「治療」、「予防する」及び「予防」は、症状又は症候を治療し、症状又は疾患の確立を妨げ、あるいは症状若しくは疾患又は他の望ましくない症候の進行を、それが何であれ何らかの方法で予防し、妨げ、遅らせ又は回復させる任意の及び全ての使用を指す。従って、用語「治療する」及び「予防する」などは、それらの最も広い文脈で考えられ、例えば、「治療」は、必ずしも患者が完全回復まで治療されることを意味するわけではない。同様に、本文脈において、「治療」は、その範囲内に既存の神経損傷又は神経障害の回復も包含するが、必ずしもこのような神経損傷又は神経障害の不存在下で期待され得る正常レベルまでの完全回復が生じたわけではない。
【0148】
本明細書中で使用される用語「神経障害に関連する症状」は、少なくとも部分的に、神経損傷、特に末梢神経系の神経細胞に対する損傷に関連する症状を指す。上記症状は、このような損傷によって特徴づけられ、このような損傷の結果として直接的又は間接的に生じ得るか、又はそれ自体がこのような神経損傷をもたらし得る。典型的には、「神経障害に関連する症状」は、神経障害(典型的には末梢神経障害)と共通する少なくとも1つの症状を有し、このような症状としては、例えば、疼痛、感覚喪失(無感覚を含む)、四肢又は体肢におけるピリピリ感又は灼熱感、知覚異常、筋力低下、神経筋反射の低下、けいれん、神経筋麻痺、及び性機能障害が挙げられる。
【0149】
本明細書中で使用される用語「被験体」は、治療又は療法のために選択されるヒト又は非ヒト動物を意味する。本明細書中で使用される「治療上有効量」及び「有効量」という語句は、少なくとも被験体の細胞の亜母集団において合理的な望ましい治療効果を生じるために有効な薬剤の量を意味する。
【0150】
本明細書中で使用される用語「プロドラッグ」は、生物学的条件下(in vitro又はin vivo)で加水分解され、酸化されあるいは反応して、本明細書中で本発明の方法において有用であると記載される化合物を与えることができる化合物の誘導体を意味する。プロドラッグは、典型的には、生物学的条件下での反応の際に活性化合物を与えるように設計されるが、複数のプロドラッグは1つのプロドラッグとして類似の活性を有し得る。プロドラッグを一般的に記載している、Goodman and Gilman (The Pharmacological Basis of Therapeutics, 第8版, McGraw-Hill, Int. Ed. 1992, "Biotransformation of Drugs", p 13-15); T. Higuchi and V. Stella (Pro-drugs as Novel Delivery Systems, A.C.S. Symposium SeriesのVol. 14); 及びBioreversible Carriers in Drug Design (E.B. Roche編, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987)による参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書中に記載される化合物のプロドラッグは、前記成分中に日常的な操作又はin vivoで修飾が切断されて親成分となるように存在する官能基を修飾することによって調製することができる。プロドラッグの典型例は、例えばWO 99/33795、WO 99/33815、WO 99/33793及びWO 99/33792に記載されており、これらはそれぞれ、これらの教示について参照することにより本明細書に組み込まれる。プロドラッグは、高められたバイオアベイラビリティによって特徴付けられ、in vivoで活性阻害剤へと容易に代謝される。
【0151】
プロドラッグの例としては、限定するものではないが、本明細書中に記載される化合物の類似体又は誘導体が挙げられ、生体加水分解性部分(例えば生体加水分解性アミド、生体加水分解性エステル、生体加水分解性カーバメート、生体加水分解性カーボネート、生体加水分解性ウレイド、及び生体加水分解性ホスフェート類似体)をさらに含む。プロドラッグの他の例として、NO、N02、ONO、又はON02部分を含む、本明細書中に記載される化合物の誘導体が挙げられる。プロドラッグは、当業者に公知の方法、例えば、BURGER'S MEDICINAL CHEMISTRY AND DRUG DISCOVERY (1995) 172-178, 949-982 (Manfred E. Wolff編, 第5版)(この文献の全ての教示は参照により本明細書に組み込まれる)により記載される方法を用いて調製される。
【0152】
本明細書中で使用される用語「塩」又は「製薬上許容される塩」は、健全な医学的判断の範囲で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴うことのない、ヒト及び下等動物の組織と接触させた使用に適しており、合理的な利益/リスク比で釣り合っている塩を指す。
【0153】
製薬上許容される塩は、当技術分野において周知である。例えば、Berge et al.は、J. Pharmaceutical Sciences (1977) 66: 1-19において、製薬上許容される塩について詳細に記載している。本発明の化合物の製薬上許容される塩としては、好適な無機及び有機の酸及び塩基から誘導される塩が挙げられる。製薬上許容可能な非毒性酸付加塩の例は、無機酸(例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸)と、又は有機酸(例えば酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸又はマロン酸)と形成される、あるいは当技術分野において使用される他の方法(例えばイオン交換)を用いて形成されるアミノ基の塩である。他の製薬上許容される塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、カンフル酸塩、カンフルスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホネート、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホネート、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオネート、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホネート、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。適切な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩及びN+(Cl-4アルキル)4塩が挙げられる。代表的なアルカリ塩又はアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。さらなる製薬上許容される塩としては、適切な場合、対イオン(例えばハライドイオン、ヒドロキシドイオン、カルボキシレートイオン、スルフェートイオン、ホスフェートイオン、ニトレートイオン、低級アルキルスルホネートイオン及びアリールスルホネートイオン)を用いて形成される非毒性アンモニウム、第四級アンモニウム、及びアミンカチオンが挙げられる。
【0154】
本明細書中で使用される用語「溶媒和物」は、本発明の化合物と好適な無機溶媒(例えば水和物)又は有機溶媒(例えば、限定するものではないが、アルコール、ケトン、エステルなど)によって形成され得る任意の組み合わせを包含する。このような塩、水和物、溶媒和物等及びその調製は当業者に明らかであり;例えば、US 6,372,778、US 6,369,086、US 6,369,087及びUS 6,372,733に記載されている塩、水和物、溶媒和物等が挙げられる。
【0155】
本明細書中で使用される用語「NAD+前駆体」は、生理学的条件下でNAD+に組み込まれ得る前駆体化合物を指す。一部の例示的NAD+前駆体としては、限定するものではないが、トリプトファン、キノリン酸、ニコチン酸、ニコチンアミド、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチン酸モノヌクレオチド、ニコチン酸リボシド、AICAR、アデノシン、アデニン、アデノシン一リン酸、及びこれらの類似体(アナログ)、ヘテロ-又はホモ-ダイマー、オリゴマー、ポリマー及びプロドラッグが挙げられる。
【0156】
本明細書中で使用される用語「NAD+レベルを増加させる」は、被験体におけるNAD+レベルを増加させ得る任意の手段又は方法を指す。例えば、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を被験体に投与することにより、被験体におけるNAD+レベルを増加させることができる。このような薬剤の例としては、上記の及び当業者に理解される任意のNAD+前駆体、例えばNMN又はその塩若しくはプロドラッグが挙げられる。薬剤の他の例としては、例えば、NAD+生合成に関与する酵素(例えばNMNAT-1又はNAMPT)又はその酵素的に活性な断片、あるいはNAD+生合成に関与する酵素をコードする核酸又はその酵素的に活性な断片が挙げられる。
【0157】
NAD+レベルは、NAD+生合成に関与する酵素の活性を高めることによって増加させることができる(de novo合成又はサルベージ経路)。NAD+生合成に関与する酵素、例えばニコチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ1(NPT1)、ピラジンアミダーゼ/ニコチンアミダーゼ1(PNC1)、ニコチン酸モノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ1(NMAl)、ニコチン酸モノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ2(NMA2)、ニコチンアミドN-メチルトランスフェラーゼ(NNMT)、ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT又はNAMPRT)、ニコチン酸/ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ1(NMNAT-1)、及びニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ2(NMNAT-2);は、米国特許第7,977,049号に記載されており、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0158】
一実施形態において、被験体におけるNAD+レベルは、上記のタンパク質又はNAD+生合成に関与する酵素の活性レベルを増加させる薬剤を被検体に投与することによって増加させることができる。
【0159】
特定の実施形態において、このような使用のための薬剤としては、例えば、NAD+に対する可溶性前駆体(例えば、トリプトファン、キノリン酸、ニコチンアミドモノヌクレオチド、ニコチンアミドリボシド、及びニコチン酸)、フィセチン、ケルセチン、レスベラトロール、DOI、ヒドロキシチロソール、ピロロキノリンキノン、メトホルミン、アピゲニン、ルテオリン、トリホスチン8、ベルベリン、CD38阻害剤、SRT-1720、SIRT1活性化剤、式I~XVのいずれか1つの化合物、又はその機能的誘導体が挙げられる。
【0160】
本明細書中に記載される用語「精製された」は、所与の化合物の純度を指す。例えば、所与の化合物が組成物の主成分である、すなわち少なくとも50%w/w純粋である場合、化合物は「精製されている」。従って、「精製された」は、少なくとも純度50%w/w、少なくとも純度60%w/w、少なくとも純度70%、少なくとも純度80%、少なくとも純度85%、少なくとも純度90%、少なくとも純度92%、少なくとも純度94%、少なくとも純度96%、少なくとも純度97%、少なくとも純度98%、少なくとも純度99%、少なくとも純度99.5%、及び少なくとも純度99.9%を包含し、ここで「実質的に純粋な」は、少なくとも純度97%、少なくとも純度98%、少なくとも純度99%、少なくとも純度99.5%、及び少なくとも純度99.9%を包含する。
【0161】
本明細書中に記載される用語「代謝産物」は、それを必要とする被験体への投与後にin vivoで生成される化合物を指す。
【0162】
用語「約」は、引用される数値が、標準的な実験誤差内で変動する範囲の一部であることを意味する。
【0163】
本明細書中に記載される用語「塩」は、カチオン及びアニオンを含む化合物を指し、これはプロトン受容部分のプロトン化及び/又はプロトン供与部分の脱プロトン化によって生成することができる。プロトン受容部分のプロトン化は、生理学的アニオンの存在によって電荷が釣り合っているカチオン種の形成をもたらすが、プロトン供与部分の脱プロトン化は、生理学的カチオンの存在により電荷が釣り合っているアニオン種の形成をもたらすことに留意すべきである。
【0164】
「製薬上許容可能な塩」という語句は、製薬上許容し得る塩を意味する。製薬上許容可能な塩の例としては、限定するものではないが、(1) 無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など)と共に形成される酸付加塩;又は有機酸(例えばグリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンフルスルホン酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、サリチル酸、ムコン酸など)と共に形成される酸付加塩、あるいは(2) 上記にリストされる無機酸のいずれかのコンジュゲート塩基と共に形成される塩基付加塩であって、コンジュゲート塩基が、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、NHgR'''4-g+(式中、R'''はC1-3アルキルであり、gは、0、1、2、3、又は4の中から選択される数字である)の中から選択されるカチオン性成分を含む、上記塩基付加塩が挙げられる。「製薬上許容可能な塩」への言及は全て、同じ酸付加塩の、本明細書中で定義される溶媒付加形態(溶媒和物)又は結晶形態(多形)を包含することが理解されなければならない。
【0165】
用語「製剤」又は「剤形」は、活性化合物の固体製剤及び液体製剤の両方を包含することが意図され、当業者であれば、活性成分が、所望の用量及び薬物動態パラメータに応じて異なる製剤で存在し得ることを理解するだろう。
【0166】
本明細書中で使用される用語「賦形剤」は、医薬組成物を調製するために使用される化合物であって、一般的には安全、非毒性、且つ生物学的にもその他の点でも望ましくないものでない化合物を指し、動物への使用並びにヒトへの医薬的使用に許容可能な賦形剤を包含する。
【0167】
以下の構造:
【0168】
【化1】
に対応する「ニコチンアミド」は、B-複合体ビタミンであるナイアシンの2つの主要形態のうちの1つである。ナイアシンの他の主要形態はニコチン酸であるが;本明細書中で詳細に考察されるように、ニコチン酸よりはむしろニコチンアミドの方が、哺乳動物におけるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)生合成の主要基質である。ニコチンアミドは、ナイアシンアミドとして知られている他、3-ピリジンカルボキサミド、ピリジン-3-カルボキサミド、ニコチン酸アミド、ビタミンB3、及びビタミンPPとしても知られている。ニコチンアミドは、分子式C
6H
6N
2Oを有し、その分子量は122.13ダルトンである。ニコチンアミドは、様々な供給源から市販されている。
【0169】
以下の構造:
【0170】
【化2】
に対応する「ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド」(NAD)は、Namptによって触媒されるニコチンアミドのNMNへの変換、及びその後の、Nmnatによって触媒されるNMNのNADへの変換から生成される。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)は、分子式C
21H
27N
7O
14P
2及び分子量663.43を有する。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)は、Sigma-Aldrich(St. Louis, Mo.)のような供給源から市販されている。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドは2つの形態(酸化形態及び還元形態)で存在し、それぞれNAD
+及びNADHと略される。
【0171】
以下の構造:
【0172】
【化3】
に対応する「ニコチンアミドモノヌクレオチド」(NMN)は、NAD生合成経路(Namptによって触媒される反応)においてニコチンアミドから生成される。NMNは、NAD生合成経路(Nmnatにより触媒される反応)においてNADにさらに変換される。ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)は、分子式C
11H
15N
2O
8P及び分子量334.22を有する。ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)は、Sigma-Aldrich (St. Louis, Mo.)のような供給源から市販されている。
【0173】
以下の構造:
【0174】
【化4】
に対応する「ニコチンアミドリボシド」(NR)は、例えば、米国特許第8,106,184号に記載されるように特徴付けられ、合成される。
【0175】
「ニコチン酸モノヌクレオチド」(NaMN)は、以下の構造:
【0176】
【0177】
「ニコチン酸リボシド」(NaR)は、以下の構造:
【0178】
【0179】
以下の構造:
【0180】
【化7】
に対応する「5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミドリボヌクレオチド」(AICAR)は、アデニンジヌクレオチド(AMP)の前駆体である。
【0181】
II. NAD+レベルの増加は、化学療法投与中の短期及び長期の化学療法及び/又は放射線療法誘発性末梢神経障害及び認知欠損を予防する
化学療法及び放射線療法は抗癌治療の重要な構成要素であり、多くの癌において生存率の劇的な増加をもたらした。癌細胞の殺傷においては有効であるが、治療における主要な制限要因は、化学療法剤及び放射線療法が、身体全体の健常な組織(脳及び神経系を含む)に対して広範な毒性を有するという事実である。短期的にはこの毒性は有痛性の神経障害、疲労、及び神経心理学的障害をもたらし、これらは全て、一般的には治療後数年まで広がる。従って、化学療法及び/又は放射線療法によって引き起こされる神経障害及び神経心理学的障害の予防及び治療は、癌患者の生活の質の改善及び患者の長期健康転帰の改善における重要な目標である。
【0182】
化学療法及び/又は放射線療法誘発性NAD+損失は、癌化学療法から生じる神経心理学的障害及び神経障害性疼痛の根底にあり得る混乱した遺伝子発現、混乱したミトコンドリア機能、及び代謝能の低下をもたらす可能性がある。このNAD+の低下及びそれに続く代謝障害及びエピジェネティック機能障害は、細胞透過性NAD+前駆体ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を用いた治療によって救済することができる。出願人らの予備データは、短期のNMN治療が、アントラサイクリン系の化学治療薬ドキソルビシンによって引き起こされる神経認知欠損、例えば記憶障害、自発的活動の低下、及び機械的アロディニアを救済することを示している。
【0183】
一態様において、本発明は、被験体におけるNAD+レベルを増加させることにより、化学療法投与中の短期及び長期の化学療法及び/又は放射線療法誘発性末梢神経障害及び認知欠損を予防又は治療する方法である。出願人らは、被験体におけるNAD+レベルの増加が、短期及び長期の化学療法誘発性末梢神経障害の予防又は治療をもたらし得ることを見出した。例として、出願人らは、被験体におけるNAD+レベルを増加させるためのNAD+前駆体(すなわちNMN)の投与が、短期及び長期の化学療法誘発性末梢神経障害の予防又は治療をもたらし得ることを示す。
【0184】
一実施形態において、化学療法及び/又は放射線療法の投与中に、それを必要とする被験体において化学療法及び/又は放射線療法誘発性末梢神経障害及び認知欠損を予防又は治療する方法は、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を被験体に投与するステップを含む。
【0185】
一実施形態において、薬剤はNAD
+前駆体である。一つの具体的実施形態において、NAD
+前駆体は、NMN若しくはその塩、又はそのプロドラッグである。実施例1及び
図1は、NAD
+前駆体であるNMNが、ドキソルビシンによって引き起こされる記憶障害、不活動及びアロディニアの治療及び予防において有効であることを示した。
図1に示されるとおり、ドキソルビシンの単回投与は、自発的ホイールランニングの低下、疼痛の増加及び短期空間記憶の低下を含む神経認知欠損を引き起こした。際立ったことに、NMNの投与は、これらの測定の全てにおいて、ドキソルビシンの作用を低下させ、NMN治療が、化学療法及び/又は放射線療法治療によって引き起こされる神経認知欠損を少なくとも緩和し得ることを裏付ける。
【0186】
開示される方法は、NAD+レベルを増加させるための任意の他のNAD+前駆体の使用も含み得る。例えば、被験体におけるNAD+レベルを増加させるために、当業者に理解される任意の他のNAD+前駆体を被験体に投与することができる。一部の例示的なNAD+前駆体としては、トリプトファン、キノリン酸、ニコチン酸、ニコチンアミド、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)及びニコチンアミドリボシド(NR)が挙げられる。
【0187】
一実施形態において、さらなるNAD+前駆体は、別の公知のNAD+前駆体(例えばNMN)のダイマー化、オリゴマー化、及びポリマー化から形成することができる。
【0188】
開示される方法は、NAD+レベルを増加させるための任意の他の薬剤の使用も包含し得る。一実施形態において、薬剤は、NAD+生合成に関与する酵素若しくはその酵素的に活性な断片、又はNAD+生合成に関与する酵素をコードする核酸若しくはその酵素的に活性な断片である。例えば、NAD+生合成に関与する酵素若しくはその酵素的に活性な断片、又はNAD+生合成に関与する酵素をコードする核酸若しくはその酵素的に活性な断片の有効量を投与することにより、被験体におけるNAD+レベルを増加させることができる。
【0189】
NAD+生合成に関与する酵素としては、US 7,977,049(この文献は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるニコチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ1(NPT1)、ピラジンアミダーゼ/ニコチンアミダーゼ1(PNC1)、ニコチン酸モノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ1(NMA1)、ニコチン酸モノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ2(NMA2)、ニコチンアミドN-メチルトランスフェラーゼ(NNMT)、ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT又はNAMPRT)、ニコチン酸/ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ1(NMNAT-1)、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ2(NMNAT-2)及びニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ3(NMNAT-3)が挙げられる。
【0190】
NAD+レベルは、NAD+生合成に関与する酵素の活性を増加させることによって増加させることができる(de novo合成又はサルベージ経路)。従って、一実施形態において、本発明の薬剤は、関連酵素の活性を増加させることができる任意の物質であり得る。例えば、薬剤は、当技術分野において関連酵素を活性化させることが知られている活性化剤のいずれかであってよい。
【0191】
NAD+レベルを増加させるための任意の手段を用いて、化学療法及び/又は放射線療法投与中の、短期及び長期の化学療法及び/又は放射線療法誘発性の末梢神経障害及び認知欠損を予防又は治療することができる。
【0192】
一実施形態において、化学療法及び/又は放射線療法誘発性末梢神経障害(CIPN)の症状としては、限定するものではないが、灼熱感、ピリピリ感(「ピン及び針」感)、感覚の喪失(無感覚又は単なる圧力、接触、熱又は寒さを感じる能力の低下であり得る)、指を使用して物を拾い上げる又は保持することの困難性、物の取り落し、平衡障害、歩行中のつまずき又はよろめきに関する困難性、通常を上回る圧力痛又は温度痛(主に寒さ;これは寒冷感受性と呼ばれる)、筋委縮、筋力低下、嚥下困難、便秘、排尿困難、血圧変化、神経伝達速度の変化(反射低下又は無反射)、痙攣、神経筋麻痺、及び性機能障害が挙げられる。これらの症状の多くはまた、カルシウムシグナル伝達調節不全にも関連している。
【0193】
一実施形態において、このような末梢神経障害の典型的な症状としては、腕、手、脚及び/又は足の脱力感、無感覚、知覚異常(異常な感覚、例えば灼熱感、くすぐったさ、チクチク感又はピリピリ感)、性機能障害及び疼痛が挙げられる。神経障害は、ミトコンドリア機能障害にも関連し得る。このような神経障害は、エネルギーレベルの低下(すなわち、NAD及びATPのレベルの低下)を示し得る。
【0194】
一つの具体的実施形態において、CIPNの症状としては、接触性アロディニア及び寒冷アロディニア、機械的痛覚過敏及び温熱性痛覚過敏、短期又は長期記憶喪失、空間認識における困難性、実行機能における困難性、又は作業記憶喪失が挙げられる。
【0195】
化学療法剤及び/又は放射線療法剤の使用は、当業者に周知である。
【0196】
化学療法及び/又は放射線療法の投与中の被験体におけるCIPN及び認知欠損を予防又は治療するため、本発明の薬剤を、化学療法剤の投与と同時に又は化学療法剤の投与の直後、あるいは化学療法及び/又は放射線療法の完了の一定期間後、被験体に投与することができる。
【0197】
一実施形態において、治療上有効量の本発明の薬剤は、化学療法剤と共投与することができる。
【0198】
別の実施形態において、治療上有効量の本発明の薬剤は、化学療法剤の投与の直後に投与することができる。用語「直後」により、被験体が依然として化学療法治療下にあるときに、薬剤が被験体に投与されることを意味する。
【0199】
別の実施形態において、治療上有効量の本発明の薬剤を、これらの薬剤が化学療法の効力を妨げ、又は腫瘍増殖を増加させる可能性を回避するため、化学療法治療が終了した後に投与することができる。
【0200】
別の実施形態において、治療上有効量の本発明の薬剤を、長期の、持続性の神経障害問題又は認知問題を有する癌生存者に投与してもよい。
【0201】
一実施形態において、本発明は、被験体におけるNAD+のレベルを増加させることができる薬剤を含む組成物又は製剤について開示する。このような組成物又は製剤は、賦形剤、担体、希釈剤、及び同等の媒体;並びに本明細書中に記載される又は当業者に理解される化合物の中から選択される製薬上許容可能な媒体を付加的に含む。
【0202】
一実施形態において、本発明は、本明細書中に開示される疾患又は健康状態のいずれかの治療及び/又は予防のための医薬の製造のための組成物又は製剤について開示する。本組成物又は製剤は、賦形剤、担体、希釈剤、及び同等の媒体;並びに本明細書中に記載される又は当業者に理解される化合物の中から選択される製薬上許容可能な媒体を包含する。
【0203】
II. NAD+レベルの増加は、既存の化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経認知障害を回復させる
一態様において、本発明は、被験体におけるNAD+レベルを増加させることにより、既存のCIPN及び認知欠損を治療し回復させる方法である。
【0204】
化学療法及び/又は放射線療法投与中の短期及び長期のCIPN及び認知欠損の予防又は治療に加えて、出願人らは、NAD+レベルの増加が、被験体における既存のCIPN及び認知欠損を治療し又は回復させることもできることを想定する。
【0205】
一実施形態において、それを必要とする被験体における既存のCIPN及び認知欠損を治療し又は回復させるための方法は、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を被験体に投与するステップを含む。
【0206】
一実施形態において、薬剤は、上記の又は当業者に理解される任意のNAD+前駆体である。
【0207】
一つの具体的実施形態において、NAD+前駆体は、NMN若しくはその塩、又はそのプロドラッグである。
【0208】
一実施形態において、薬剤は、NAD+生合成に関与する酵素若しくはその酵素的に活性な断片、又はNAD+生合成に関与する酵素をコードする核酸若しくはその酵素的に活性な断片である。酵素は、上記の又は当業者に理解される酵素のいずれかであってよい。
【0209】
一つの具体的実施形態において、酵素は、NMNAT-1、NMNAT2、NMNAT3又はNAMPTである。
【0210】
一実施形態において、薬剤は、NAD+生合成に関与する酵素に対する活性化剤であってもよい。
【0211】
一実施形態において、被験体はヒトである。
【0212】
被験体における既存のCIPN及び認知欠損を予防又は治療するため、本発明の薬剤を、化学療法剤又は放射線療法の投与後に被験体に投与することができる。好ましくは、本発明の薬剤は、化学療法治療又は放射線療法の後に投与することができる。
【0213】
一実施形態において、本発明は、被験体におけるNAD+のレベルを増加させることができる薬剤を含む組成物又は製剤について開示する。このような組成物又は製剤は、賦形剤、担体、希釈剤、及び同等の媒体;並びに本明細書中に記載される又は当業者に理解される化合物の中から選択される製薬上許容可能な媒体を含む。
【0214】
一実施形態において、本発明は、本明細書中に開示される疾患又は健康状態のいずれかの治療及び/又は予防のための医薬の製造のための組成物又は製剤について開示する。本組成物又は製剤は、賦形剤、担体、希釈剤、及び同等の媒体;及び本明細書中に記載される又は当業者に理解される化合物の中から選択される製薬上許容可能な媒体を包む。
【0215】
III. NAD+の増加は、疼痛を治療する
一実施形態において、本発明は、神経障害性疼痛を含む急性又は慢性疼痛を、単独で又は既存の疼痛治療と組み合わせて治療又は予防するために、治療上有効量の本発明の薬剤を投与する方法を提供する。疼痛は、例えば、限定するものではないが、特定の医薬品への曝露(例えば化学療法)、放射線、化学物質曝露、創傷、熱傷、日焼け、ショック、爆発性ショック、感電、炎症、感染、創傷治癒、高温、低温、機械的ストレス、手術、神経障害性疾患、栄養不良、薬物中毒、薬物過剰摂取又は神経障害及び/又は疼痛をもたらす疾患などの因子によって誘発され得る。
【0216】
別の実施形態において、薬剤を使用して、鎮痛剤(例えばパラセタモール、アスピリン、イブプロフェン、又はオピオイド)と組み合わせて又は鎮痛剤の代わりに疼痛を治療することができる。本明細書中に開示される薬剤との共投与を用いて、鎮痛剤の必要用量を低減し、及び/又は特定の鎮痛剤の効力を高めるか、又は特定の鎮痛剤に対する必要性を置換することができる。
【0217】
別の実施形態において、薬剤は、疼痛に対する抵抗性を提供するために用いられる。
【0218】
IV. NAD+の増加は認知欠損を治療し、神経認知機能を改善する
一実施形態において、本発明は、健常な又は障害を有する個体における記憶力を高め、認知機能を改善する方法を提供する。認知機能の非限定的例としては、処理速度、実行機能、注意持続時間及び集中力、言語記憶、視覚記憶及び空間記憶が挙げられる。
【0219】
別の実施形態において、本発明は、認知欠損に関連する任意の疾患を治療する方法を提供する。一部の例示的疾患は以下に挙げられる。しかしながら、出願人らは、本発明が、当業者に理解される任意の認知欠損疾患に適用可能であることを想定する。具体的には、本発明は、認知機能における障害を治療する方法を提供し、その非限定的例としては、処理速度、実行機能、注意持続時間及び集中力、言語記憶、視覚記憶及び空間記憶が挙げられる。
【0220】
別の実施形態において、本発明は、汚染、例えば大気汚染(例えば、PM2.5粒子及びPM10粒子)、水質汚染、及び食物の汚染混入に対する曝露によって引き起こされる神経認知障害及び/又は神経発生障害を予防及び/又は治療する方法を提供する。
【0221】
別の実施形態において、本発明は、心理的ストレス、例えば、戦闘任務、警察活動及び心的外傷後ストレス障害を引き起こし得る他の環境によって引き起こされる神経認知欠損及びメンタルヘルス障害を予防及び/又は治療する方法を提供する。
【0222】
別の実施形態において、本発明は、薬物乱用及び/又は薬物中毒を予防及び/又は治療する方法を提供する。
【0223】
本態性振戦(ET)は、最も一般的な運動障害である。これは、ゆっくりと進行する姿勢振戦及び/又は運動時振戦(通常は両上肢に影響を及ぼす)を特徴とする症候群である。
【0224】
パーキンソン病(PD)は、ドーパミン作動性黒質線条体神経細胞の損失に関連する進行性神経変性障害である。
【0225】
アルツハイマー疾患(AD)は、認知症の最も一般的な形態である。これは脳の進行性変性疾患であり、高齢に強く関連している。時間の経過とともに、疾患を有する人々は、彼らの、思考し且つはっきりと論理的に考える能力、状況を判断する能力、問題を解決する能力、集中する能力、有用な情報を記憶する能力、自分自身の面倒を見る能力、及びさらに話す能力さえも失う。多くの神経変性疾患、例えばアルツハイマー病は、脳においてそれらの生物学的影響を及ぼす。一部の実施形態において、開示されるダイマー、オリゴマー及びポリマーは、血液脳関門(BBB)を通過し得る遊離化合物を放出する。
【0226】
ハンチントン病(HD)は、治療不能の、成人発症の、常染色体優性遺伝性疾患であり、大脳基底核及び皮質中の特定の神経細胞集団中の細胞消失を伴う。
【0227】
運動失調は、正常姿勢及び運動の円滑性を維持することの不能として定義される。神経学的症状及び兆候、例えばてんかん発作及び運動障害(例えばジストニア、舞踏病)は、運動失調に関連し得る。
【0228】
緊張病は、見かけ上覚醒している人の、外部刺激に対する見かけ上の無反応状態である。てんかんは、自発的な再発性のてんかん発作によって特徴付けられる慢性症状として定義され;てんかん発作は、一過性の、過同期的な神経細胞の放電に関連する臨床的事象として定義される。
【0229】
神経弛緩性悪性症候群(NMS)は、抗精神病薬の使用の重篤な合併症として生じ得る異常高熱、硬直及び自律神経系失調症の組み合わせを指す。
【0230】
舞踏病は、任意の肢の、突然の、短時間の、非律動的、非反復運動によって特徴付けられる不随意の異常運動であり、多くの場合、パターン化されていない顔のゆがみに関連する。妊娠舞踏病(CG)は、妊娠中に生じる舞踏病に与えられる用語である。
【0231】
大脳皮質基底核神経節変性症(CBGD)の臨床的特徴としては、進行性の認知症、パーキンソン症、及び四肢の失行が挙げられる。中枢神経系又は末梢神経系経路の機能障害は、自律神経系機能障害を引き起こし得る。
【0232】
ジストニアは、持続的な筋収縮の症候群であり、通常は弯曲及び反復運動又は姿勢異常を生じる。書痙は、タスク特異的限局性ジストニアの一形態である。
【0233】
精神遅滞(MR)は、知能が著しく制限される症状である。発達障害は、個人が特定の社会環境において期待される活動及び役割を果たす能力を制限する症状を表す。しばしば、MR及び発達障害は、脳傷害の結果として同時に存在する。
【0234】
神経有棘赤血球症は、運動障害、人格の変化、認知力低下、軸索神経障害、及びてんかん発作により特徴付けられる進行性の神経性疾患である。大半の患者は、疾患経過中のある時点で末梢血塗抹標本上に有棘赤血球症を有する。
【0235】
ペリツェウス・メルツバッハー病(PMD)及びX連鎖性痙性対麻痺2型(SPG2)は、同じ遺伝子(プロテオリピドタンパク質1(PLP1)遺伝子)の突然変異誘発によって引き起こされるX連鎖性疾患の臨床スペクトルの対極にあり、中枢神経系(CNS)髄鞘形成障害をもたらす。臨床的兆候としては、通常、眼振、喘鳴、痙性四肢不全麻痺、低血圧、認知機能障害、運動失調、振戦、及びMRIスキャン上の広範性白質脳症の幾つかの組み合わせが挙げられる。
【0236】
進行性核上性麻痺(PSP)(スティール・リチャードソン・オルゼウスキー症候群としても知られる)は、認知、眼球運動、及び姿勢に影響を及ぼす神経変性疾患である。
【0237】
線条体黒質変性症(SD)は、多系統萎縮症(MSA)の症状を示す神経変性疾患である。他の症状は、Shy-Drager症候群(例えば、自律神経障害優位)及び散発性オリーブ橋小脳変性(sOPCA、小脳優位)である。
【0238】
虚血性脳卒中は、脳の一部への血液供給の喪失に起因して生じ、虚血性カスケードを開始する。60秒~90秒間超酸素を奪われると脳組織は機能を停止し、数時間後に不可逆的傷害を受け、組織死(すなわち梗塞)をもたらす可能性がある。アテローム性動脈硬化症は、血管の管腔を狭め血流の低下をもたらすことにより、血管内で血餅の形成を生じることにより、又はアテローム性動脈硬化プラークの分解を介して小塞栓のシャワーを放出することによって血液供給を妨げ得る。塞栓性梗塞は、塞栓が、循環系中の他の部分、典型的には心房性細動の結果として心臓において、又は頸動脈において形成された場合に起こる。これらの塞栓はちぎれて脳循環に入り、その後脳血管に詰まって閉塞させる。
【0239】
側副循環により、虚血の影響を受けた脳組織の領域には、重症度のスペクトルがある。このように、組織の一部は直ぐに死滅する可能性があるが、他の部分は傷害を受けただけであり、回復する可能性がある。組織が回復する可能性がある虚血領域は、虚血性ペナンブラと呼ばれる。
【0240】
虚血性脳組織中では酸素又はグルコースが枯渇するため、高エネルギーリン酸化合物(例えばアデニン三リン酸(ATP))の産生ができず、組織細胞の生存に必要なエネルギー依存性プロセスの失敗につながる。これは、細胞傷害及び細胞死をもたらす一連の相関する事象を引き起こす。これらの事象としてミトコンドリア不全が挙げられ、ミトコンドリア不全はさらにエネルギー枯渇につながり、アポトーシスによる細胞死を引き起こし得る。他のプロセスとして、膜イオンポンプ機能の喪失が挙げられ、これは、脳細胞中の電解質不均衡につながる。過剰濃度で毒性作用を有する興奮性神経伝達物質の放出も存在する。
【0241】
脊髄損傷すなわちミエロパシーは、感覚及び運動の喪失をもたらす脊髄の障害である。脊髄損傷の2つの一般的なタイプは以下のとおりである:外傷:自動車事故、転倒、銃撃、ダイビング事故等。疾患:ポリオ、二分脊椎症、腫瘍、フリードライヒ運動失調症等。脊髄は、機能を喪失するまで完全に切断されていなくてもよいことに留意することが重要である。実際、脊髄は、脊髄損傷の大半の症例において、インタクトなままである。
【0242】
外傷性脳傷害(TBI)、脳に対する外傷性傷害(頭蓋内傷害、又は単に頭部傷害とも呼ばれる)は、急性外傷が脳傷害を引き起こす場合に生じる。TBIは、閉鎖性頭部傷害又は穿通性頭部傷害から生じる可能性があり、後天性脳傷害(ABI)の2つのサブセットの1つである。他方のサブセットは、非外傷性脳傷害(すなわち、脳卒中、髄膜炎、酸素欠乏)である。損傷を受ける可能性がある脳の部分としては、大脳半球、小脳、及び脳幹が挙げられる。TBIの症状は、脳への損傷の程度に応じて、軽度、中程度、又は重度であり得る。転帰は、完全回復~永久障害又は死亡のいずれかであり得る。昏睡状態も、子供の脳に影響を及ぼし得る。TBIに由来する損傷は、限局性である(脳の一領域に限定される)場合もあれば、広範性である(脳の2つ以上の領域に関与する)場合もある。脳への広範性損傷は、高い頻度で、脳振盪(頭の突然の動きに応答した脳の振動)、広範性軸索傷害、又は昏睡状態に関連する。局所的傷害は、神経行動学的兆候、片側不全麻痺又は他の限局性神経学的欠損に関連し得る。
【0243】
傷害を引き起こす可能性がある、脳に対する別の損傷は、酸素欠乏である。酸素欠乏は、組織への十分な血流が存在しているにも関わらず、器官組織への酸素供給の不在が存在する症状である。低酸素は、酸素の完全な不在というよりはむしろ酸素供給の低下を指し、虚血は、脳が膨張する症例において見られる不十分な血液供給である。これらの症例のいずれかにおいて十分な酸素が存在しない場合、虚血カスケードと呼ばれる生化学カスケードが引き起こされ、脳細胞が数分以内に死滅する可能性がある。このタイプの傷害は、多くの場合、溺水被害者、心臓発作患者(特に心停止している患者)、又は、後で循環(血液量減少)ショックによる脳への血流の低下を引き起こす、他の傷害に由来する著しい失血に苦しんでいる人々に見られる。関連の症状、例えば、重篤な創傷治癒又は出血を伴って生じ得る関連の症状(例えば、エボラサイトカインストーム抑制)も、開示される薬剤で治療することができる。
【0244】
化学療法後認知機能障害は、一時的な又は長期の神経認知欠損、例えば記憶喪失、処理速度の低下、実行機能の喪失、及びIQの全体的低下を特徴とする。これらの問題は、化学療法を受けている患者に広く適用可能であり、発達的に重要な局面(例えば、小児期)に化学療法を有する又は化学療法を受けている患者に対しては特に問題である。
【0245】
V. 自発的活動、無気力、倦怠感及びメンタルヘルス障害を改善するためのNAD+の増加
一実施形態において、開示される薬剤を使用して、健常な個人における自発的身体活動を増加させることができる。
【0246】
開示される薬剤を使用して、健常状態、疾患に曝露された状態又は傷害を受けた状態のヒト又は動物における身体的スタミナ及び持久力を向上させることができる。
【0247】
開示される薬剤を使用して、抑鬱又は抑鬱様症状を治療することができる。
【0248】
別の実施形態において、開示される薬剤を使用して、それを必要とする影響を受けた個人における不活動、無気力及び倦怠感を予防又は治療することができる。非限定的例として、吐気、疾患、傷害、心的外傷後ストレス障害又はメンタルヘルス障害に苦しむ患者などが挙げられる。
【0249】
開示される薬剤を使用して、自傷リスクの増加を含む抑鬱又は抑鬱様症状を予防又は治療することができる。
【0250】
開示される薬剤を使用して、常習行為、例えば薬物乱用を予防又は治療することができる。
【0251】
開示される薬剤を使用して、社会的発達(例えば言語及び非言語コミュニケーション)の障害を予防又は治療することができる。
【0252】
別の例において、開示される薬剤を用いて、心理的障害及びメンタルヘルス障害、例えば抑鬱、不安、心的外傷後ストレス障害、睡眠障害、概日リズム障害を治療することができる。
【0253】
別の実施形態において、開示される薬剤を使用して、化学療法誘発性不活動、無気力、倦怠感及び抑鬱を治療することができる。
【0254】
VI. 医薬製剤及び投与経路
医薬製剤
開示される薬剤は、従来の担体及び賦形剤と一緒に製剤化することが可能であり、この担体及び賦形剤は、通常の実務に従って選択される。錠剤は、賦形剤、流動促進剤、充填剤、結合剤などを含み得る。水性製剤は、滅菌形態で調製され、経口投与以外による送達が意図される場合、一般的には等張性である。全ての製剤は、任意選択で、"Handbook of Pharmaceutical Excipients" (1986)に示されるような賦形剤を含む。可能性のある賦形剤としては、例えば、アスコルビン酸及び他の抗酸化剤、キレート剤(例えばEDTA)、炭水化物(例えばデキストラン)、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ステアリン酸などが挙げられる。製剤のpHは、任意選択で約3~約11であるが、通常は約7~10である。
【0255】
開示される薬剤は、徐放性担体、例えばセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストラン、ヒアルロン酸などと共に製剤化することができる。
【0256】
活性成分は単独で投与することが可能であるが、医薬製剤として提供することが好ましい場合がある。製剤は、動物用用途及びヒト用用途のいずれについても、上記に定義される少なくとも1種の活性成分を、その1種以上の許容可能な担体、及び任意選択で他の治療成分と共に含む。担体(1種又は複数種)は、製剤の他の成分と適合しており、それらの受容者に対して生理学的に無害であるという意味において「許容可能」でなければならない。
【0257】
上記の製剤は、前述の投与経路に適した製剤を包含する。製剤は、単位剤形で好都合に提供することが可能であり、薬学の技術分野において周知の方法のいずれかによって調製することができる。技術及び製剤は、一般的に、Remington's Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co., Easton, Pa.)に見出される。このような方法は、活性成分を、1種以上の副成分を構成する担体と合わせるステップを含む。一般的に、製剤は、活性成分を、液体担体又は微細化固体担体又はその両方と均一且つ緊密に合わせることによって調製され、その後、必要であれば生成物を成形する。
【0258】
経口投与に適した開示される薬剤の製剤は、それぞれ所定量の活性成分を含むカプセル剤、カシェ剤又は錠剤などの別々の単位として;粉末剤又は顆粒剤として;水性又は非水性液体中の溶液又は懸濁液として;又は水中油液体エマルション若しくは油中水液体エマルションとして提供することができる。活性成分は、ボーラス、舐剤又はペーストとして投与してもよい。
【0259】
錠剤は、圧縮又は成形により、任意選択で1種以上の副成分と共に作製することができる。圧縮錠剤は、好適な装置中で活性成分を流動形態(例えば粉末剤又は顆粒剤)に圧縮し、任意選択で結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、表面活性成分又は分散剤と混合することによって調製することができる。成形錠剤は、好適な装置中で不活性液体希釈剤により湿らせた粉末活性成分の混合物を成形することによって作製することができる。上記の錠剤は、任意選択でコーティング又は分割してもよく、任意選択で錠剤からの活性成分の持続放出又は制御放出を提供するように製剤化される。
【0260】
本発明のエマルションの油相は、公知成分から公知の方法で構成することができる。この相は、単なる乳化剤(別段の場合は利尿剤としても知られる)を含み得るが、望ましくは少なくとも1種の乳化剤と脂肪若しくは油との混合物、又は脂肪及び油の両方との混合物を含む。好ましくは、親水性乳化剤は、安定化剤として作用する親油性乳化剤と一緒に含まれる。また、油と脂肪の両方を含めることも好ましい。同時に、安定化剤(1種又は複数種)を伴う又は伴わない乳化剤(1種又は複数種)は、いわゆる乳化ワックスを構成し、乳化ワックスは、油及び脂肪と共に、クリーム製剤の油性分散相を形成するいわゆる乳化軟膏剤基剤を構成する。
【0261】
本発明の製剤における使用に適した利尿剤及びエマルション安定化剤としては、Tween(商標)60、Span(商標)80、セトステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ミリスチルアルコール、グリセリルモノステアリン酸及びラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0262】
製剤に適した油又は脂肪の選択は、所望の化粧特性の達成に基づく。クリーム剤は、好ましくは、チューブ又は他の容器からの漏出を回避するために好適な稠度を有する、非グリース状、非染色性且つ洗浄可能な生成物であるべきである。直鎖又は分岐鎖、一塩基性又は二塩基性アルキルエステル、例えばジイソアジペート、イソセチルステアレート、ココナッツ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、イソプロピルミリステート、デシルオレエート、イソプロピルパルミテート、ブチルステアレート、2-エチルヘキシルパルミテート又はクロダモールCAPとして知られる分岐鎖エステルのブレンドを使用することが可能であり、最後の3つが好ましいエステルである。これらは、必要とされる特性に応じて、単独で又は組み合わせて使用することができる。あるいは、高融点脂質、例えば白色軟パラフィン及び/若しくは液体パラフィン又は他の鉱油が使用される。
【0263】
開示される薬剤の医薬製剤は、1種以上のこのような化合物の組み合わせを、1種以上の製薬上許容可能な担体又は賦形剤、及び任意選択で他の治療剤と共に含み得る。活性成分を含有する医薬製剤は、意図される投与方法に適した任意の形態であり得る。経口用途用に用いられる場合、例えば、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性若しくは油性懸濁剤、分散性散剤若しくは顆粒剤、エマルション、硬若しくは軟カプセル剤、シロップ剤又はエリキシル剤を調製することができる。経口用途用に意図される組成物は、医薬組成物の製造のために当技術分野で公知の任意の方法に従って調製することが可能であり、このような組成物は、口当たりの良い調製物を提供するために、1種以上の薬剤、例えば甘味剤、香味剤、着色剤及び保存剤を含み得る。錠剤の製造に適した非毒性の製薬上許容可能な賦形剤と混合して活性成分を含む錠剤が許容可能である。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム又は炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム;顆粒化剤及び崩壊剤、例えばトウモロコシデンプン又はアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチン又はアカシア;及び滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクであり得る。錠剤は、コーティングされていなくてもよいし、又は胃腸管での崩壊及び吸着を遅延させ、これにより長期間にわたる持続的作用を提供するために、公知技術(マイクロカプセル化を含む)によりコーティングされていてもよい。例えば、時間遅延物質、例えばグリセリルモノステアレート又はグリセリルジステアレートを、単独で又はワックスと共に用いることができる。
【0264】
経口用途用の製剤は、活性成分が不活性固体希釈剤(例えばリン酸カルシウム又はカオリン)と混合されている硬ゼラチンカプセル剤として、又は活性成分が水又は油性媒体(例えばピーナッツ油、液体パラフィン又はオリーブ油)と混合されている軟ゼラチンカプセル剤として提供することも可能である。
【0265】
水性懸濁剤は、活性物質を、水性懸濁剤の製造に適した賦形剤との混合物中に含む。このような賦形剤としては、例えば、懸濁剤(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム及びアカシアガム)、並びに分散剤又は湿潤剤(例えば、天然ホスファチド(例えばレシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート))などが挙げられる。水性懸濁剤は、1種以上の保存剤(例えばエチル又はn-プロピルp-ヒドロキシ-安息香酸塩)、1種以上の着色剤、1種以上の香味剤及び1種以上の甘味剤(例えばスクロース又はサッカリン)も含み得る。
【0266】
油性懸濁剤は、活性成分を植物油(例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油若しくはヤシ油)又は鉱油(例えば液体パラフィン)に懸濁することによって製剤化することができる。経口懸濁剤は、増粘剤(例えばビーズワックス、硬パラフィン又はセチルアルコール)を含み得る。口当たりの良い経口調製物を提供するために、甘味剤(例えば上記に示されるもの)及び香味剤を添加してもよい。これらの組成物は、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸)の添加によって保存することができる。
【0267】
水の添加による水性懸濁剤の調製に適した分散性散剤及び顆粒剤は、分散剤又は湿潤剤、懸濁剤、及び1種以上の保存剤との混合物中に活性成分を提供する。好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤は、上記に開示されるものによって例示される。さらなる賦形剤、例えば甘味剤、香味剤及び着色剤も提供され得る。
【0268】
本発明の医薬組成物は、水中油エマルションの形態であってもよい。油相は、植物油、例えばオリーブ油又はラッカセイ油、鉱油(例えば液体パラフィン)、又はこれらの混合物であり得る。好適な乳化剤としては、例えば、天然ガム(例えばアカシアガム及びトラガカントガム)、天然ホスファチド(例えばダイズレシチン)、脂肪酸に由来するエステル又は部分エステル及びヘキシトール無水物(例えばソルビタンモノオレエート)、並びにこれらの部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。エマルションは、甘味剤及び香味剤も含み得る。シロップ剤及びエリキシル剤は、甘味剤(例えばグリセロール、ソルビトール又はスクロース)と共に製剤化することができる。このような製剤は、鎮痛剤、保存剤、香味剤又は着色剤も含み得る。
【0269】
医薬組成物は、滅菌注射可能調製物(例えば滅菌注射可能水性懸濁剤又は油性懸濁剤)の形態であり得る。この懸濁剤は、公知技術に従って、上記に言及される好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて製剤化することができる。滅菌注射可能調製物は、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒中の滅菌注射可能溶液又は懸濁液(例えば1,3-ブタン-ジオール中溶液)であってもよいし、又は凍結乾燥粉末剤として調製することもできる。許容可能なビヒクル及び溶媒の中でも、利用し得るビヒクル及び溶媒は、水、リンガー溶液及び等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌固定油は、溶媒又は懸濁媒体として従来法で用いることができる。この目的のために、合成モノ-又はジグリセリドを含む任意のブランドの固定油を用いることができる。さらに、脂肪酸(例えばオレイン酸)を、注射可能剤の調製において同様に使用することができる。
【0270】
担体物質と組み合わせて単一剤形を生成し得る活性成分の量は、治療されるホスト及び特定の投与様式に応じて異なる。例えば、ヒトへの経口投与用に意図される時間放出製剤は、適切且つ簡便な量の担体物質と組み合わせて約1~1000mgの活性物質を含んでいてよく、この量は、総組成物の約5~約95%(重量:重量)で変動し得る。医薬組成物は、投与のために容易に測定可能な量を提供するために調製することができる。例えば、静脈内注入用に意図される水溶液は、約30mL/時間の速度で適切な容量の注入が行われ得るように、溶液1ミリリットル当たり約3~500μgの活性成分を含有し得る。
【0271】
目への局所投与に適した製剤として、活性成分が好適な担体(特に活性成分用の水性溶媒)中に溶解又は懸濁されている点眼薬も挙げられる。活性成分は、好ましくは、このような製剤中に、0.5~20%、有利には0.5~10%、特に約1.5%w/wの濃度で存在する。
【0272】
口への局所投与に適した製剤として、風味付けされた基剤(通常はスクロース及びアカシア又はトラガカント)中に活性成分を含むロゼンジ剤;不活性基剤(例えばゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシア)中に活性成分を含むトローチ剤;並びに好適な液体担体中に活性成分を含むマウスウォッシュが挙げられる。
【0273】
直腸投与用の製剤は、例えばココアバター又はサリチル酸塩を含む適切な基剤を有する坐剤として提供され得る。
【0274】
肺内又は鼻腔内投与に適した製剤は、例えば、0.1~500ミクロン(例えば0.5、1、30、35等)の範囲内の粒径を有し、鼻腔を通した急速な吸入により、又は肺胞嚢に到達するように口を通した吸入によって投与される。好適な製剤としては、例えば、活性成分の水性又は油性溶液が挙げられる。エアロゾル投与又は乾燥粉末剤投与に適した製剤は、従来の方法に従って調製することが可能であり、他の治療剤、例えば以下に記載されるHCV感染の治療又は予防において今まで用いられていた化合物と共に送達し得る。
【0275】
膣内投与に適した製剤は、活性成分に加えて当技術分野において適切であることが公知の担体を含む、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤又はスプレー製剤として提供することができる。
【0276】
非経口投与に適した製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、及び製剤を意図される受容者の血液と等張にする溶質を含み得る水性及び非水性滅菌注射溶液;並びに懸濁剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性滅菌懸濁剤が挙げられる。
【0277】
製剤は、単位用量容器又は複数回用量容器(例えば密閉アンプル及びバイアル)で提供することが可能であり、使用の直前に滅菌液体担体(例えば注射用水)の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)条件中で保存することができる。即席の注射溶液及び懸濁液は、先に記載された種類の滅菌散剤、顆粒剤及び錠剤から調製される。好ましい単位剤形製剤は、本活性成分の、本明細書中上記に列挙される1日用量又は単位1日副用量、あるいはそれらの適切な画分を含む単位剤形製剤である。
【0278】
上記に特に言及した成分に加えて、本製剤は、目的とする製剤タイプに関連する技術分野において慣用的な他の薬剤を含み得ることが理解されるべきであり、例えば、経口投与に適した製剤は、香味剤を含み得る。
【0279】
本開示はさらに、上記に定義される少なくとも1種の活性成分を、そのための動物用担体と共に含む動物用組成物を提供する。
【0280】
動物用担体は、本組成物を投与する目的のために有用な物質であって、別の点では不活性であるか又は獣医学の分野において許容可能な固体、液体又は気体物質であってよく、活性成分と適合する物質である。これらの動物用組成物は、経口的に、非経口的に又は任意の他の望ましい経路によって投与することができる。
【0281】
開示される薬剤は、所与の活性成分の低頻度の投与を可能とするため、又は所与の活性成分の薬物動態学的プロファイル若しくは毒性プロファイルを改善するために活性成分の放出が制御及び調節されている、活性成分として1種以上の本発明の化合物を含む制御放出医薬製剤(「制御放出製剤」)を提供するために使用される。非限定的例において、治療モノマーの放出速度と逆相関し得る開示されるオリゴマー及びポリマーのサイズは、サイズ排除クロマトグラフィー、膜を通したろ過、遠心分離又は他の方法を用いて選択することができる。
【0282】
活性成分の有効用量は、少なくとも、治療対象の症状の性質、毒性、化合物が予防的に(低用量で)用いられるか又は活発なウイルス感染に対して用いられるか、送達方法、及び医薬製剤に応じて決定され、従来の用量漸増研究を用いて臨床医により決定される。活性成分の有効用量は、1日当たり約0.0001~約100mg/kg体重;典型的には1日当たり約0.01~約10mg/kg体重;より典型的には1日当たり約0.01~約5mg/kg体重;最も典型的には1日当たり約0.05~約0.5mg/kg体重であることが予想され得る。例えば、体重約70kgの成人のヒトの1日候補用量は、1mg~1000mg、好ましくは5mg~500mgにわたり、単回用量形態又は複数回用量形態を採リ得る。
【0283】
投与経路
1種以上の開示される薬剤(本明細書中活性成分と呼ばれる)は、治療対象の症状に対して適切な任意の経路によって投与される。好適な経路としては、経口、直腸、鼻腔内、局所(頬側及び舌下を含む)、膣内及び非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄腔内及び硬膜外を含む)などが挙げられる。好ましい経路は、例えば受容者の症状によって異なり得ることが理解されるであろう。本発明の化合物の利点は、これらが経口的に生体利用可能であり、経口的に投与し得ることである。
【0284】
別の実施形態において、開示される薬剤の1種以上が、所望の領域への局所適用、くも膜下投与、開示される薬剤への組織の浸漬、あるいは徐放性デバイス、徐放性ゲル剤、又は徐放性マトリックスの外科的配置を通して手術中に投与される。
【実施例】
【0285】
VII. 選択された例示的実施形態(実施例)の説明
以下の実施例は、例示的目的のためにのみ提供され、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。実際、本明細書中に示され且つ記載されるものに加えて、前述の記載及び以下の実施例から、本発明の様々な改変が当業者に明らかであり、また添付の特許請求の範囲の範囲内に入る。
【0286】
実施例1:
NAD+前駆体であるNMNは、ドキソルビシンによって引き起こされる記憶障害、不活動及びアロディニアの治療及び予防において有効である。
【0287】
この実施例における戦略は、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)として公知の細胞透過性NAD
+前駆体を動物に投与することにより、化学療法治療中のNAD
+レベルを上昇させることである。NMNは、良性化合物であり、身体中の全細胞内に見られ、核、細胞質/ゴルジ体及びミトコンドリアにそれぞれ局在しているNMNAT酵素(NMNAT1~3)により1段階でNAD
+に変換される。化学療法誘発性記憶喪失についての先の研究[11~15、37、38]を考慮して、NMNが、ドキソルビシン(一般的に使用されるアントラサイクリン化学治療薬)によって引き起こされる神経認知欠損を回復させることができたか否かが決定された。予想されたとおり、ドキソルビシンの単回投与は、自発的ホイールランニングの低下、疼痛の増加及び短期空間記憶の低下を含む神経認知欠損を引き起こした(
図1)。際立ったことに、NMNの投与は、これらの測定の全てにおいてドキソルビシンの影響を低下させ、NMN治療が、化学療法治療によって引き起こされる神経認知欠損を緩和し得るという本発明者らの仮説の証拠を提供する。
【0288】
図1は、雄のスプラーグドーリーラットを、NMNの共投与(200mg/kg)を伴う又は伴わないドキソルビシンの単回腹腔内注射(4mg/kg)の24時間前及び24時間後、NMNの飲料水への添加(500mg/L)の前に、ベースライン試験に供したことを示す。
【0289】
上記のデータは、NAD+前駆体であるNMNが、ドキソルビシンによって引き起こされる記憶障害、不活動及びアロディニアの治療及び予防において有効であることを示唆している。
【0290】
予言的拡張において、NAD+前駆体は、モーリス水迷路によって評価される記憶(例えば空間認識及び長期記憶)の他のパラメータ;逆転学習のモーリス水迷路試験によって測定される実行機能;及び場所試験に相当するモーリス水迷路によって評価されるワーキングメモリーも改善する。
【0291】
機械的アロディニアに加えて、別の予言的拡張において、NMNは、接触性及び温熱性アロディニアからの保護も提供する。
【0292】
予言的拡張において、NMNは、他の化学治療薬(例えばオキサリプラチン又はドセタキセル)からの保護を提供する。
【0293】
実施例2
実施例1の結果の拡張
この予言的実施例において、本発明者らは、4つの方法で上記の実験結果を拡張する方法を概略する。第1に、本発明者らは、化学療法後のNMN投与が、既存のCIPN及びCICIに関連する神経病変の回復において有効であることを提案する。第2に、本発明者らは、NAD+生合成酵素のNMNATl及びNMNAT3を過剰発現するマウスが、CIPN及びCICIに関連する神経病変から保護されることを提案する。第3に、本発明者らは、脳及び神経組織の組織学的特性決定及び分子特性決定により、NMN治療、又はNMNAT1若しくはNMNAT3の過剰発現が、化学療法誘発性細胞アポトーシス、壊死、老化、炎症、ミトコンドリア機能障害、代謝機能不全、DNA損傷、及び神経損傷の他のマーカーからの保護を示すことが示されることを提案する。
【0294】
上記の実施例において、NAD+治療化合物による動物の治療は、ランニングホイール、代謝ケージのレーザービームブレーク及びビデオモニタリングによって測定されるとおり、自発的活動の増加を示す。
【0295】
実施例3:
身体活動、運動コーディネーション、スタミナ及び持久力を向上させるNMNの能力の試験
この予言的実施例において、NAD+上昇剤による別段健康な動物の治療は、トレッドミル上の長距離走、加速ロータロッドの成績、及び自発的活動を増加させる。
【0296】
実施例4:
外科的神経損傷を予防又は治療するためのNMNの能力の試験
この予言的実施例において、NAD+上昇剤による別段健康な動物の治療は、トレッドミル上の長距離走、加速ロータロッドの成績、及び自発的活動を増加させる。
【0297】
実施例5:
NMN治療、NMNATl及びNMNAT3過剰発現中の脳内の化学療法に対する分子応答の研究
この予言的実施例において、本発明者らは、NMNがそれを介してCIPN及びCICIから保護する分子経路の詳細な特性決定の実施を提案する。本発明者らは、実施例3及び5に記載されるような、NMN治療を用いた又はNMNAT1及びNMNAT3トランスジェニックマウスにおけるドキソルビシンを反復し、ドキソルビシン投与の一週間後に動物を選抜して、以下に記載される分子分析用の組織を入手する。仮説実施例3に挙げられるNMN治療のため、本発明者らは、化学療法などの毒物によって引き起こされる細胞老化の非侵襲的画像化を可能とするトランスジェニックレポーターマウスの系統を使用する。実施例5に記載されるとおり、本発明者らはさらに、NMNAT1及びNMNAT3トランスジェニックマウス並びにそれらのWT同腹子におけるドキソルビシン治療を反復する。
【0298】
ミトコンドリア機能は、新たに単離される脳ミトコンドリアにおいて評価され、電子伝達系の各複合体の活性は、先に報告された[43]、また
図3に示されるクラーク型溶存酸素電極において評価される。電子伝達系の各複合体に特異的な基質及び阻害剤が添加され、各複合体の活性の計算を可能とする。これらのデータは任意のミトコンドリア機能障害の性質の特定において重要であり、本発明者らは、本発明者らが予備データ(
図2B及び3C)並びに最近の刊行物[17]において見出したとおり、NMN又はNMNAT3の過剰発現がミトコンドリア機能障害を回復させると予測する。
【0299】
アポトーシスは、切断カスパーゼ3及びγH2AXのウエスタンブロッティングにより測定される。DNA損傷及びPARP活性は、ポリ-ADPリボース(PAR)のウエスタンブロッティングによって評価される。アポトーシスの免疫組織化学的分析は、以下に記載されるとおりに評価される。
【0300】
遺伝子発現は、コーディングRNA及び非コーディングRNAを検出するRNAシークエンシングを用いて海馬においてプロファイルされる。
【0301】
組織化学:
幾つかの実験において、マウスに4%パラホルムアルデヒドを麻酔下で灌流し、脳を取り出し、後固定して切開する。組織は、CIPN及びCICIに関連する病変の組織学的分析用に調製される。試験対象の組織は、脊髄、脳、末梢神経、後根神経節を含む。組織は、神経発生マーカーとしてのKi67、DNA損傷及びアポトーシスのマーカーとしてのTUNEL、及び神経膠細胞活性化のGFAPについて染色される。
【0302】
検出力計算:
これらの研究の主要転帰は、脳ミトコンドリアの複合体IVの呼吸能である。作用サイズをf=0.3と仮定し、本発明者らは、1実験当たり126匹の動物を必要とする。本発明者らは、後続の組織学的分析のため、パラホルムアルデヒドの経心腔的灌流用の別の動物を必要とし、さらに94匹の動物(f=0.35)を必要とする。NMN治療、NMNAT1及びNMNAT3過剰発現に伴い、本発明者らは、この目的のために合計660匹のマウスを必要とする。
【0303】
本発明者らは、NMNが、化学療法誘発性NAD+損失、ミトコンドリア機能障害、神経毒性、細胞老化、及びアポトーシスから保護することを予想する。
【0304】
他の実施形態及び用途は、本明細書の考慮及び本明細書中に開示される本発明の実施から、当業者に明らかであろう。本発明は、本明細書中に例示及び記載される特定の試薬、製剤、反応条件等には限定されないが、以下の特許請求の範囲の範囲内に入るそれらの改変形態を包含することが理解される。
【0305】
実施例6:
神経細胞に対する外科的傷害
この予言的実施例において、マウスは、外科的操作による神経損傷に供される。
【0306】
外科的操作の前に、腹腔内注射、経口胃管栄養法又は飲料水への添加を介して、マウスにNMN及び/又はAICARが送達される。
【0307】
疼痛は、多様なアロディニア試験を介して手術後に評価され、NMN及び/又はAICAR前処置が、疼痛又は神経障害をもたらす神経損傷を予防することが予想される。
【0308】
別の予言的実施例において、NMNは手術中に神経に適用され、アロディニアはその後に評価される。手術中のNMN放出デバイスの適用又は埋め込みが、疼痛又は神経障害をもたらす神経損傷を低減又は予防することが予想される。
【0309】
任意の理由で本明細書中に引用される全ての参考文献は、全ての雑誌の引用及び米国/外国特許及び特許出願を含め、参照により本明細書中に具体的且つ全体的に組み込まれる。
本発明は、以下の態様を含む。
[項1]
被験体における神経障害及び/又は疼痛;並びに痙攣、神経筋麻痺、感覚喪失/無感覚、ピリピリ感、運動技能の喪失、性機能障害を含む関連する障害を予防し、治療し又はそれらに対して増加した抵抗性を提供する方法であって、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を被験体に投与するステップを含む、上記方法。
[項2]
被験体における記憶力、処理速度、実行機能、注意力、集中力、及び総合的な知能を含む認知機能を改善する方法であって、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を被験体に投与するステップを含む、上記方法。
[項3]
被験体における認知欠損、神経認知欠損又は神経発生的障害を予防又は治療する方法であって、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を被験体に投与するステップを含む、上記方法。
[項4]
被験体における自発的活動、持久力及びスタミナの向上を増大させる方法であって、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を被験体に投与するステップを含む、上記方法。
[項5]
それを必要とする被験体における不活動、倦怠感、無気力、及び憂鬱を予防又は治療する方法であって、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を被験体に投与するステップを含む、上記方法。
[項6]
被験体における抑鬱、不安、心的外傷後ストレス障害、及び他のメンタルヘルス及び心理的障害を予防又は治療する方法であって、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を被験体に投与するステップを含む、上記方法。
[項7]
被験体における神経損傷及び/又は障害に関連する性機能障害を予防又は治療する方法であって、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を被験体に投与するステップを含む、上記方法。
[項8]
被験体における神経機能及び運動技能を改善する方法であって、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を被験体に投与するステップを含む、上記方法。
[項9]
被験体における神経毒性損傷を予防又は治療する方法であって、心理的又は身体的ストレス、有毒化学薬品への曝露、放射線、ショック、爆発性ショック、感電、機械的傷害、外科的傷害、熱傷害、疲弊、低酸素、酸素欠乏、失血、脳卒中、炎症、自己炎症、感染、創傷治癒、栄養不良、薬物中毒、薬物過剰摂取又は他の傷害を受けた被験体、あるいは前記ストレスに曝される予定の被験体に、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を投与し、これにより神経毒性損傷を予防するステップを含む、上記方法。
[項10]
被験体における化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷を予防する方法であって、化学療法及び/又は放射線療法を受けた被験体、化学療法及び/又は放射線療法を受けている被験体、又は化学療法及び/又は放射線療法を受ける予定の被験体に、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量を投与し、これにより化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷を予防するステップを含む、上記方法。
[項11]
予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷が、化学療法及び/又は放射線療法誘発性認知機能障害(CICI)に関連する損傷である、項10に記載の方法。
[項12]
予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷が、化学療法及び/又は放射線療法誘発性末梢神経障害(CIPN)に関連する損傷である、項10に記載の方法。
[項13]
予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷が、化学療法及び/又は放射線療法誘発性不活動に関連する損傷である、項10に記載の方法。
[項14]
予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷が、化学療法及び/又は放射線療法誘発性の抑鬱、不安、憂鬱、心的外傷後ストレス障害、睡眠障害、概日リズム障害、又は他のメンタルヘルス/心理的障害に関連する損傷である、項10に記載の方法。
[項15]
薬剤が、化学療法剤及び/又は放射線療法剤が被験体に投与される前に、それと同時に、又はその後に投与される、項8~14のいずれか1項に記載の方法。
[項16]
予防される神経毒性損傷が、認知機能障害に関連する損傷である、項9に記載の方法。
[項17]
予防される神経毒性損傷が、疼痛及び/又は末梢神経障害に関連する損傷である、項9に記載の方法。
[項18]
予防される神経毒性損傷が、不活動、無気力、及び倦怠感に関連する損傷である、項9に記載の方法。
[項19]
予防される神経毒性損傷が、化学療法及び/又は放射線療法誘発性の抑鬱、不安、憂鬱、心的外傷後ストレス障害又は他のメンタルヘルス/心理的障害に関連する損傷である、項9に記載の方法。
[項20]
薬剤が、傷害の前に、それと同時に、又はその後に投与される、項9及び16~19のいずれか1項に記載の方法。
[項21]
化学療法剤及び/又は放射線療法剤が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、シクロホスファミド、アルトレタミン、プリカミジン、クロラムブシル、クロルメチン、イホスファミド、メルファラン、カルムスチン、ホテムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ブスルファン、ダカルバジン、メクロレタミン、プロカルバジン、テモゾロミド、チオTEPA、ウラムスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ヘキサメチルメラミン、エトポシド、テニポシド、メトトレキセート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、カペシタビン、シタラビン、フルオロウラシル、フルクスリジン、ゲムシタビン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、バルルビシン、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア、マイトマイシン、トポテカン、イリノテカン、アミノレブリン酸、メチルアミノレブリネート、ポルフィマーナトリウム、ベルテポルフィン、アリトレチノイン、アルトレタミン、アムサクリン、アナグレリド、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、ベキサロテン、ボルテゾミブ、セレコキシブ、デニロイキン、ディフティトックス、エルロチニブ、エストラムスチン、ゲフィチニブ、ヒドロキシカルバミド、イマチニブ、ペントスタチン、マソプロコール、ミトタン、ペガスパルガーゼ、トレチノイン、及び/又は放射線放出同位体の直接照射若しくは投与によるα、β及びγ線照射、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、項10~15のいずれか1項に記載の方法。
[項22]
NAD+のレベルを増加させる薬剤がNAD+前駆体である、項1~20のいずれか1項に記載の方法。
[項23]
NAD+前駆体が、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、ニコチン酸、ニコチンアミド、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチン酸モノヌクレオチド、ニコチン酸リボシド、AICAR、アデノシン、アデニン、アデノシン一リン酸、前述のいずれかのものの類似体、ヘテロ-若しくはホモ-ダイマー、オリゴマー又はポリマー、あるいはそれらの塩又はプロドラッグからなる群から選択される、項22に記載の方法。
[項24]
NAD+のレベルを増加させる薬剤が、NAD+消費酵素、例えばCD38又はPARPの阻害剤である、項1~20のいずれか1項に記載の方法。
[項25]
NAD+のレベルを増加させる薬剤が、NAD+生合成に関与する酵素、かかる酵素の酵素的に活性な断片、NAD+生合成に関与する酵素をコードする核酸、及びかかる核酸の酵素的に活性な断片からなる群から選択される、項1~20のいずれか1項に記載の方法。
[項26]
酵素が、NMNAT-1、NMNAT2、NMNAT3又はNAMPTである、項25に記載の方法。
[項27]
NAD+のレベルを増加させる薬剤が、NAD+生合成に関与する酵素に対する活性化剤である、項1~10のいずれか1項に記載の方法。
[項28]
NAD+のレベルを増加させる薬剤が、1日当たり0.5~5グラムの用量で投与される、項1~27のいずれか1項に記載の方法。
[項29]
被験体がヒトである、項1~17のいずれか1項に記載の方法。
[項30]
神経毒性傷害の予防において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤。
[項31]
神経認知低下及び神経障害低下の予防において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤。
[項32]
疼痛、神経障害及び関連する障害の予防又は治療;並びに疼痛、神経障害及び関連する障害に対する増加した抵抗性の提供において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤。
[項33]
認知パフォーマンスの向上において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤。
[項34]
自発的活動、持久力、スタミナの向上において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤。
[項35]
痙攣、振戦、攣縮、麻痺、神経筋麻痺、聴力喪失、視覚障害、味覚喪失の予防、技能、歩行、及びコーディネーションの低下の改善又は予防において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤。
[項36]
神経損傷又は神経障害に関連する性機能障害の予防又は治療において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤。
[項37]
神経機能及び運動技能の改善において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤。
[項38]
被験体における化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷の予防において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤。
[項39]
予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷が、化学療法及び/又は放射線療法誘発性認知機能障害(CICI)に関連する損傷である、項38に記載の薬剤。
[項40]
予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷が、化学療法及び/又は放射線療法誘発性末梢神経障害(CIPN)に関連する損傷である、項38に記載の薬剤。
[項41]
予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷が、化学療法及び/又は放射線療法誘発性不活動、無気力又は倦怠感に関連する損傷である、項38に記載の薬剤。
[項42]
予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷が、化学療法及び/又は放射線療法誘発性の抑鬱、不安、睡眠障害、概日リズム障害、又は他の心理的障害に関連する損傷である、項38に記載の薬剤。
[項43]
薬剤がNAD+前駆体である、項28~42のいずれか1項に記載の薬剤。
[項44]
NAD+前駆体が、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、ニコチン酸、ニコチンアミド、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチン酸モノヌクレオチド、ニコチン酸リボシド、AICAR、アデノシン、アデニン、アデノシン一リン酸、前述のいずれかのものの類似体、ヘテロ-若しくはホモ-ダイマー、オリゴマー又はポリマー、あるいはそれらの塩又はプロドラッグからなる群から選択される、項43に記載の薬剤。
[項45]
NAD+上昇剤が、NAD+消費酵素、例えばCD38又はPARPの阻害剤である、項28~42のいずれか1項に記載の薬剤。
[項46]
薬剤が、NAD+生合成に関与する酵素、かかる酵素の酵素的に活性な断片、NAD+生合成に関与する酵素をコードする核酸、及びかかる核酸の酵素的に活性な断片からなる群から選択される、項28~42のいずれか1項に記載の薬剤。
[項47]
酵素が、NMNAT-1、NMNAT2、NMNAT3又はNAMPTである、項46に記載の薬剤。
[項48]
NAD+のレベルを増加させる薬剤が、NAD+生合成に関与する酵素に対する活性化剤である、項28~42のいずれか1項に記載の薬剤。
[項49]
神経損傷又は神経低下を予防するための医薬の製造において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤。
[項50]
神経認知機能の改善を含む、神経機能を改善するための医薬の製造において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤。
[項51]
被験体における化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷を予防するための医薬の製造において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤。
[項52]
予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷が、化学療法及び/又は放射線療法誘発性認知機能障害(CICI)に関連する損傷である、項51に記載の薬剤。
[項53]
予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷が、化学療法及び/又は放射線療法誘発性末梢神経障害(CIPN)に関連する損傷である、項38に記載の薬剤。
[項54]
NAD+のレベルを増加させる薬剤がNAD+前駆体である、項49~51のいずれか1項に記載の組成物。
[項55]
NAD+前駆体が、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、ニコチン酸、ニコチンアミド、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチン酸モノヌクレオチド、ニコチン酸リボシド、AICAR、アデノシン、アデニン、アデノシン一リン酸、前述のいずれかのものの類似体、ヘテロ-若しくはホモ-ダイマー、オリゴマー又はポリマー、あるいはそれらの塩又はプロドラッグからなる群から選択される、項54に記載の薬剤。
[項56]
薬剤が、NAD+生合成に関与する酵素、かかる酵素の酵素的に活性な断片、NAD+生合成に関与する酵素をコードする核酸、及びかかる核酸の酵素的に活性な断片からなる群から選択される、項49~53のいずれか1項に記載の薬剤。
[項57]
酵素が、NMNAT-1、NMNAT2、NMNAT3又はNAMPTである、項56に記載の薬剤。
[項58]
薬剤が、NAD+生合成に関与する酵素に対する活性化剤である、項49~53のいずれか1項に記載の薬剤。
[項59]
被験体における神経毒性損傷、神経障害を治療し又は神経機能を改善する方法であって、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量をそれを必要とする被験体に投与し、これにより神経毒性損傷の症状の1つを低減するステップを含む、上記方法。
[項60]
治療される神経毒性損傷が、認知機能障害に関連する損傷である、項59に記載の方法。
[項61]
治療される神経毒性損傷が、末梢神経障害及び/又は疼痛に関連する損傷である、項59に記載の方法。
[項62]
治療される神経毒性損傷が、不活動、無気力及び倦怠感に関連する損傷である、項59に記載の方法。
[項63]
治療される神経毒性損傷が、抑鬱、不安、心的外傷後ストレス障害、睡眠障害、概日リズムの乱れ、及び他の神経心理学的障害に関連する損傷である、項59に記載の方法。
[項64]
被験体における化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷を治療する方法であって、被験体におけるNAD+のレベルを増加させる薬剤の有効量をそれを必要とする被験体に投与し、これにより化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷の1つ以上の症状を低減するステップを含む、上記方法。
[項65]
治療される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷が、化学療法及び/又は放射線療法誘発性認知機能障害(CICI)に関連する損傷である、項64に記載の方法。
[項66]
治療される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷が、化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)に関連する損傷である、項64に記載の方法。
[項67]
化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷の1つ以上の症状が、火傷感、ピリピリ感、感覚の喪失、指を使用して物を拾い上げる又は保持することの困難性、物の取り落し、平衡困難性、歩行中のつまずき又はよろめき、圧力又は温度感受性、及び性機能障害からなる群から選択される、項64~66のいずれか1項に記載の方法。
[項68]
治療される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性が、不活動、無気力及び倦怠感に関連する損傷である、項64に記載の方法。
[項69]
治療される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性が、抑鬱、不安、睡眠障害、概日リズム攪乱、及び他のメンタルヘルス又は神経心理学的障害に関連する損傷である、項64に記載の方法。
[項70]
NAD+のレベルを増加させる薬剤がNAD+前駆体である、項59~69のいずれか1項に記載の方法。
[項71]
NAD+前駆体が、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、ニコチン酸、ニコチンアミド、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチン酸モノヌクレオチド、ニコチン酸リボシド、AICAR、アデノシン、アデニン、アデノシン一リン酸、前述のいずれかのものの類似体、ヘテロ-若しくはホモ-ダイマー、オリゴマー又はポリマー、あるいはそれらの塩又はプロドラッグからなる群から選択される、項70に記載の方法。
[項72]
NAD+のレベルを増加させる薬剤が、1日当たり0.5~5グラムの用量で投与される、項59~69のいずれか1項に記載の方法。
[項73]
NAD+のレベルを増加させる薬剤が、NAD+生合成に関与する酵素、かかる酵素の酵素的に活性な断片、NAD+生合成に関与する酵素をコードする核酸、及びかかる核酸の酵素的に活性な断片からなる群から選択される、項59~72のいずれか1項に記載の方法。
[項74]
酵素が、NMNAT-1、NMNAT、NMNAT3又はNAMPTである、項73に記載の方法。
[項75]
NAD+のレベルを増加させる薬剤が、NAD+生合成に関与する酵素に対する活性化剤である、項59~72のいずれか1項に記載の方法。
[項76]
被験体がヒトである、項59~75のいずれか1項に記載の方法。
[項77]
被験体が、動物、例えば競走馬、コンパニオンペット又は家畜である、項59~75のいずれか1項に記載の方法。
[項78]
被験体における神経損傷の治療において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤。
[項79]
疼痛の予防、治療及び/又は疼痛に対する抵抗性の増加において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤。
[項80]
認知パフォーマンス、運動技能、自発的活動、スタミナ及び持久力を高め、疼痛及び神経障害に対する抵抗性を提供するため、被験体における神経機能の改善において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤。
[項81]
治療又は予防される神経損傷が、認知機能障害に関連する損傷である、項78に記載の薬剤。
[項82]
治療又は予防される神経損傷が、末梢神経障害及び/又は疼痛に関連する損傷である、項78に記載の薬剤。
[項83]
治療又は予防される神経損傷が、不活動、無気力及び倦怠感に関連する損傷である、項78に記載の薬剤。
[項84]
治療又は予防される神経損傷が、抑鬱、不安、睡眠障害、概日リズム攪乱、メンタルヘルス障害、及び他の神経心理学的障害に関連する損傷である、項78に記載の薬剤。
[項85]
治療又は予防される神経損傷が、心理的ストレス又は感情的ストレス並びに関連する障害、例えば心的外傷後ストレス障害に関連する損傷である、項78に記載の薬剤。
[項86]
被験体における化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷の治療において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤。
[項87]
治療される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷が、化学療法及び/又は放射線療法誘発性認知機能障害(CICI)に関連する損傷である、項86に記載の薬剤。
[項88]
予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷が、化学療法及び/又は放射線療法誘発性末梢神経障害(CIPN)に関連する損傷である、項86に記載の薬剤。
[項89]
予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷が、不活動、無気力及び倦怠感である、項86に記載の薬剤。
[項90]
予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷が、抑鬱、不安、睡眠障害、概日リズム障害、メンタルヘルス障害及び他の神経心理学的障害である、項86に記載の薬剤。
[項91]
薬剤がNAD+前駆体である、項78~90のいずれか1項に記載の薬剤。
[項92]
NAD+前駆体が、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、ニコチン酸、ニコチンアミド、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチン酸モノヌクレオチド、ニコチン酸リボシド、AICAR、アデノシン、アデニン、アデノシン一リン酸、前述のいずれかのものの類似体、ヘテロ-若しくはホモ-ダイマー、オリゴマー又はポリマー、あるいはそれらの塩又はプロドラッグからなる群から選択される、項91に記載の薬剤。
[項93]
薬剤が、NAD+生合成に関与する酵素、かかる酵素の酵素的に活性な断片、NAD+生合成に関与する酵素をコードする核酸、及びかかる核酸の酵素的に活性な断片からなる群から選択される、項78~91のいずれか1項に記載の薬剤。
[項94]
酵素が、NMNAT-1、NMNAT、NMNAT3又はNAMPTである、項93に記載の薬剤。
[項95]
薬剤が、NAD+生合成に関与する酵素に対する活性化剤である、項78~91のいずれか1項に記載の薬剤。
[項96]
被験体における化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷を治療するための医薬の製造において使用するための、NAD+のレベルを増加させる薬剤。
[項97]
治療される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷が、化学療法及び/又は放射線療法誘発性認知機能障害(CICI)に関連する損傷である、項96に記載の薬剤。
[項98]
予防される化学療法及び/又は放射線療法誘発性神経毒性損傷が、化学療法及び/又は放射線療法誘発性末梢神経障害(CIPN)に関連する損傷である、項96に記載の薬剤。
[項99]
疼痛耐性を改善するための、NAD+を増加させる薬剤。
[項100]
幻肢を治療するための、NAD+を増加させる薬剤。
[項101]
疼痛の治療のための、疼痛治療薬、例えばイブプロフェン、アスピリン、パラセタモール、オピオイド、及び他の疼痛治療薬の前に、それと同時に、それと組み合わせて、それによる治療後に、又はそれの代わりに送達される、NAD+を増加させる薬剤。
[項102]
疼痛及び神経障害を治療するための、デキサメタゾン及びメチルプレドニゾロンからなる群から選択されるコルチコステロイド薬を含む抗炎症治療薬、並びにイブプロフェン、アスピリン、インドメタシン、COX-2阻害剤及びメフェナム酸からなる群から選択される非ステロイド系抗炎症剤の前に、それらと同時に、それらと組み合わせて、それらによる治療後に、又はそれらの代わりに送達される、NAD+を増加させる薬剤。
[項103]
自発的身体活動、スタミナ及び持久力を向上させるための、NAD+を増加させる薬剤。
[項104]
認知パフォーマンスを改善するための、NAD+を増加させる薬剤。
[項105]
抑鬱、不安、心的外傷後ストレス障害、薬物乱用、及び他のメンタルヘルス又は神経心理学的障害を治療し又はそれらから保護するための、NAD+を増加させる薬剤。
[項106]
糖尿病性神経障害を予防又は治療するための、NAD+を増加させる薬剤。
[項107]
薬物乱用及び薬物中毒を予防又は治療するための、NAD+を増加させる薬剤。
[項108]
大気汚染、水質汚染、及び食物汚染を含む汚染に対する曝露によって引き起こされる神経認知的障害又は神経発生的障害を予防するための、NAD+を増加させる薬剤。
[項109]
神経及び神経細胞の損傷を予防又は治療する薬剤。
[項110]
薬剤がNAD+前駆体である、項78~91及び99~109のいずれか1項に記載の薬剤。
[項111]
NAD+前駆体が、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、ニコチン酸、ニコチンアミド、ニコチンアミドリボシド(NR)、ニコチン酸モノヌクレオチド、ニコチン酸リボシド、AICAR、アデノシン、アデニン、アデノシン一リン酸、前述のいずれかのものの類似体、ヘテロ-若しくはホモ-ダイマー、オリゴマー又はポリマー、あるいはそれらの塩又はプロドラッグからなる群から選択される、項110に記載の薬剤。
[項112]
薬剤が、NAD+生合成に関与する酵素、かかる酵素の酵素的に活性な断片、NAD+生合成に関与する酵素をコードする核酸、及びかかる核酸の酵素的に活性な断片からなる群から選択される、項78~91及び99~109のいずれか1項に記載の薬剤。
[項113]
酵素が、NMNAT-1、NMNAT2、NMNAT3又はNAMPTである、項112に記載の薬剤。
[項114]
薬剤が、NAD+生合成に関与する酵素に対する活性化剤である、項78~91及び99~109のいずれか1項に記載の薬剤。
【0310】