(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】標定システム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/08 20200101AFI20221213BHJP
【FI】
G01R31/08
(21)【出願番号】P 2018066448
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-02-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505399236
【氏名又は名称】株式会社フジクラ・ダイヤケーブル
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 健
(72)【発明者】
【氏名】常陰 照嗣
(72)【発明者】
【氏名】富澤 拓也
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-045405(JP,A)
【文献】特開2015-230289(JP,A)
【文献】特開昭54-082690(JP,A)
【文献】特開平02-231580(JP,A)
【文献】特開2005-091022(JP,A)
【文献】特開昭60-169774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/08-31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧ケーブルの遮蔽層に接続される場合に交流接地するための交流接地部を
含む標定装置と、
前記高圧ケーブルの防食層に絶縁不良箇所があるか否かを診断する診断装置と、
前記高圧ケーブルの遮蔽層の一方端部を前記診断装置または前記標定装置に接続するオーバーラップ接点式のリレーを含む切替装置とを備え、
前記標定装置は、前記高圧ケーブルの遮蔽層の一方端部と接続され、前記高圧ケーブルの防食層に絶縁不良箇所がある場合に、その絶縁不良箇所の位置を通電下で標定するように構成されていることを特徴とする標定
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧ケーブルの絶縁が劣化した場合に、その劣化した場所の特定を行う故障点特定装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この故障点特定装置は、マーレーループ法を用いて故障点の場所を特定するように構成されており、直流電源と一対の可変抵抗と検流計とを備えている。直流電源は、一方端子が一対の可変抵抗の間に接続され、他方端子が接地されている。一対の可変抵抗は、一方端部が直流電源に接続されている。一方の可変抵抗の他方端部には、健全相の高圧ケーブルの導体の一方端部が接続されている。他方の可変抵抗の他方端部には、故障相の高圧ケーブルの導体の一方端部が接続されている。健全相の高圧ケーブルおよび故障相の高圧ケーブルは、同様に構成され、同じ長さを有する。故障相の高圧ケーブルは故障点を有し、故障点は地絡抵抗を介して接地されている。健全相の高圧ケーブルの導体の他方端部と、故障相の高圧ケーブルの導体の他方端部とが接続されている。検流計は、一対の可変抵抗の他方端部間に接続されている。
【0004】
この状態では、一方の可変抵抗と、他方の可変抵抗と、健全相の高圧ケーブルの全長および故障相の高圧ケーブルの他方端部から故障点までの抵抗と、故障相の高圧ケーブルの一方端部から故障点までの抵抗とによってホイートストンブリッジ回路が構成される。そして、このホイートストンブリッジ回路に直流電源から直流電圧を印加し、検流計の検出値がゼロになる平衡状態になるように一対の可変抵抗の抵抗値が調整される。故障相の高圧ケーブルにおける故障点までの距離は、平衡状態になる一対の可変抵抗の抵抗値と、高圧ケーブルの長さとに基づいて算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記した従来の故障点特定装置では、故障点の場所を特定するときに、高圧ケーブルを非活線状態にする必要がある。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、高圧ケーブルが活線状態であっても、防食層の絶縁不良箇所の位置を標定することが可能な標定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による標定システムは、高圧ケーブルの遮蔽層に接続される場合に交流接地するための交流接地部を含む標定装置と、高圧ケーブルの防食層に絶縁不良箇所があるか否かを診断する診断装置と、高圧ケーブルの遮蔽層の一方端部を診断装置または標定装置に接続するオーバーラップ接点式のリレーを含む切替装置とを備える。標定装置は、高圧ケーブルの遮蔽層の一方端部と接続され、高圧ケーブルの防食層に絶縁不良箇所がある場合に、その絶縁不良箇所の位置を通電下で標定するように構成されている。
【0009】
このように構成することによって、高圧ケーブルが活線状態であっても、遮蔽層に発生する誘導電圧を交流接地部により抑制することができるので、防食層の絶縁不良箇所の位置を標定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の標定システムによれば、高圧ケーブルが活線状態であっても、防食層の絶縁不良箇所の位置を標定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態による標定システムを示したブロック図である。
【
図2】
図1の標定システムによって標定される高圧ケーブルを説明するための断面図である。
【
図3】
図1の標定システムの切替装置を示した回路図である。
【
図4】
図3の切替装置のリレーの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図5】
図1の標定システムの標定装置を示した回路図である。
【
図6】
図5の標定装置の直流電源の出力電圧を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
まず、
図1~
図5を参照して、本発明の一実施形態による標定装置3を備える標定システム100について説明する。
【0014】
標定システム100は、高圧ケーブル150の防食層150d(
図2参照)における絶縁不良箇所(故障点)の位置を活線状態(通電下)で標定するように構成されている。高圧ケーブル150は、たとえば、3本設けられ、6600Vの三相交流を送電可能に構成されている。各高圧ケーブル150は、
図2に示すように、導体150aと、導体150aの周囲を覆う絶縁層150bと、絶縁層150bの周囲を覆う遮蔽層(シールド)150cと、遮蔽層150cの周囲を覆う防食層(シース)150dとを含んでいる。各高圧ケーブル150は、同様に構成され、同じ長さを有する。
【0015】
標定システム100は、
図1に示すように、切替装置1と診断装置2と標定装置3とを備え、切替装置1および診断装置2が配線41を介して接続されるとともに、切替装置1および標定装置3が配線42を介して接続されている。
【0016】
切替装置1には、配線43を介して高圧ケーブル150の遮蔽層150cの一方端部が接続されている。配線43は3本設けられ、その3本の配線43がそれぞれ3本の高圧ケーブル150に接続されている。この切替装置1は、高圧ケーブル150の遮蔽層150cの一方端部を診断装置2または標定装置3に接続するために設けられている。具体的には、切替装置1は、
図3に示すように、オーバーラップ接点式(MBB接点式)のリレー11を含み、そのリレー11によって遮蔽層150cを診断装置2または標定装置3に接続するように構成されている。
【0017】
リレー11は、3本の配線43と対応するように3つ設けられている。また、3つのリレー11と対応するように配線41および42が3本ずつ設けられている。リレー11は、配線43に接続される共通端子11aと、配線41に接続される常閉端子11bと、配線42に接続される常開端子11cとを含んでいる。このリレー11では、非作動時に、常閉端子11bが共通端子11aに接触されるとともに、常開端子11cが共通端子11aから離間されている。その一方、作動時には、常閉端子11bが共通端子11aから離間されるとともに、常開端子11cが共通端子11aに接触されている。このため、リレー11の非作動時に、高圧ケーブル150の遮蔽層150cがリレー11を介して診断装置2に接続され、リレー11の作動時に、高圧ケーブル150の遮蔽層150cがリレー11を介して標定装置3に接続されている。
【0018】
また、リレー11は、オーバーラップ接点式であり、作動状態が切り替えられる際に一時的に常閉端子11bおよび常開端子11cの両方が共通端子11aに接触されるように構成されている。
図4に示すように、非作動状態から作動状態に切り替えられる場合には、常開端子11cがオン(共通端子11aと接触)されてから、常閉端子11bがオフ(共通端子11aから離間)されるようになっており、常閉端子11bおよび常開端子11cの両方がオンされるオーバーラップ期間T1が設定されている。また、作動状態から非作動状態に切り替えられる場合には、常閉端子11bがオンされてから、常開端子11cがオフされるようになっており、常閉端子11bおよび常開端子11cの両方がオンされるオーバーラップ期間T2が設定されている。すなわち、高圧ケーブル150の遮蔽層150cの接続先が診断装置2と標定装置3との間で切り替えられる場合には、遮蔽層150cが一時的に診断装置2および標定装置3の両方に接続されるようになっている。
【0019】
診断装置2は、
図1に示すように、高圧ケーブル150の防食層150dに絶縁不良箇所があるか否かを活線状態で診断するために設けられている。この診断装置2は、高圧ケーブル150の遮蔽層150cと接地との間に直流電圧を印加して防食層150dの絶縁抵抗値を測定し、その絶縁抵抗値が所定値以下の場合に絶縁不良箇所があると診断するように構成されている。診断装置2は、たとえば、3本の高圧ケーブル150のそれぞれについて絶縁不良箇所の有無の診断を行うようになっている。
【0020】
診断装置2には、切替装置1を介して遮蔽層150cに接続される場合に交流接地するための交流接地部(図示省略)が設けられている。この交流接地部は、たとえば交流接地用のコンデンサを含み、そのコンデンサの一方電極が配線41に接続され、他方電極が接地されている。コンデンサは3つ設けられ、3つのコンデンサがそれぞれ3本の配線41に対応するように設けられている。このため、診断装置2が切替装置1を介して遮蔽層150cに接続された場合には、遮蔽層150cが交流的に接地された状態になる。なお、コンデンサの静電容量は、遮蔽層150cの対地電圧を十分に低減させることが可能な値(たとえば150μF)に設定されている。
【0021】
標定装置3は、高圧ケーブル150の防食層150dに絶縁不良箇所がある場合に、その絶縁不良箇所の位置を活線状態で標定(特定)するために設けられている。この標定装置3は、絶縁不良箇所がある故障相の高圧ケーブル150と、絶縁不良箇所がない健全相の高圧ケーブル150とを用いて、マーレーループ法によって絶縁不良箇所の位置を標定するように構成されている。標定装置3は、
図5に示すように、直流電源31と、一対の可変抵抗32aおよび32bと、検流計33と、選択回路34と、交流接地部35とを含んでいる。
【0022】
直流電源31は、一方端子が可変抵抗32aおよび32bの間に接続され、他方端子が接地されている。直流電源31は、出力電圧が調整可能であり、故障相の高圧ケーブル150の防食層150dの絶縁抵抗値に応じて出力電圧が調整されるようになっている。
【0023】
可変抵抗32aおよび32bは、一方端部が直流電源31に接続され、他方端部が選択回路34に接続されている。検流計33は、可変抵抗32aおよび32bの他方端部間に接続されている。
【0024】
選択回路34は、3本の高圧ケーブル150の中から健全相の高圧ケーブル150を選択して可変抵抗32aに接続するとともに、3本の高圧ケーブル150の中から故障相の高圧ケーブル150を選択して可変抵抗32bに接続するために設けられている。選択回路34には、3本の配線42が接続されるとともに、可変抵抗32aおよび32bの他方端部が接続されている。すなわち、選択回路34は、健全相の高圧ケーブル150に対応する配線42を可変抵抗32aの他方端部に接続するとともに、故障相の高圧ケーブル150に対応する配線42を可変抵抗32bの他方端部に接続するようになっている。
【0025】
交流接地部35は、切替装置1を介して遮蔽層150cに接続される場合に交流接地するために設けられている。この交流接地部35は、たとえば交流接地用のコンデンサ35aを含み、そのコンデンサ35aの一方電極が配線42に接続され、他方電極が接地されている。コンデンサ35aは3つ設けられ、3つのコンデンサ35aがそれぞれ3本の配線42に対応するように設けられている。このため、標定装置3が切替装置1を介して遮蔽層150cに接続された場合には、遮蔽層150cが交流的に接地された状態になる。なお、コンデンサ35aの静電容量は、遮蔽層150cの対地電圧を十分に低減させることが可能な値(たとえば150μF)に設定されている。
【0026】
また、標定装置3による絶縁不良箇所の標定が行われる場合には、切替装置1により高圧ケーブル150が標定装置3に接続されている。また、健全相の高圧ケーブル150の遮蔽層150cの他方端部(配線43が接続される側とは反対側の端部)と、故障相の高圧ケーブル150の遮蔽層150cの他方端部(配線43が接続される側とは反対側の端部)とが接続される。このため、可変抵抗32aと、可変抵抗32bと、健全相の高圧ケーブル150の全長および故障相の高圧ケーブル150の他方端部から絶縁不良箇所までの抵抗と、故障相の高圧ケーブル150の一方端部から絶縁不良箇所までの抵抗とによってホイートストンブリッジ回路が構成される。そして、このホイートストンブリッジ回路に直流電源31から直流電圧を印加し、検流計33の検出値がゼロになる平衡状態になるように一対の可変抵抗32aおよび32bの抵抗値が調整される。故障相の高圧ケーブル150における絶縁不良箇所までの距離は、平衡状態になる一対の可変抵抗32aおよび32bの抵抗値と、高圧ケーブル150の長さとに基づいて算出される。具体的には、以下の式(1)により算出される。
【0027】
Lx=(2×Rb×L)/(Ra+Rb) ・・・(1)
式(1)において、Lxは、故障相の高圧ケーブル150の一方端部から絶縁不良箇所までの距離であり、Lは、高圧ケーブル150の長さである。Raは、平衡状態のときの可変抵抗32aの抵抗値であり、Rbは、平衡状態のときの可変抵抗32bの抵抗値である。
【0028】
-標定システムの動作例-
次に、
図1~
図6を参照して、本実施形態による標定システム100の動作例について説明する。
【0029】
まず、標定システム100(
図1参照)では、切替装置1のリレー11(
図3参照)が非作動状態であり、高圧ケーブル150の遮蔽層150c(
図2参照)が診断装置2(
図1参照)に接続されている。この状態で、診断装置2により、高圧ケーブル150の防食層150d(
図2参照)に絶縁不良箇所があるか否かが活線状態で診断される。すなわち、診断装置2による診断は、高圧ケーブル150が通電された状態で行われる。なお、診断装置2には交流接地部が設けられており、遮蔽層150cが交流的に接地されている。この診断装置2による診断は、所定の時間間隔毎(たとえば1日に1回)に行われる。
【0030】
具体的には、高圧ケーブル150の遮蔽層150cと接地との間に直流電圧が印加され、防食層150dの絶縁抵抗値が測定される。そして、その絶縁抵抗値が所定値以下の場合に絶縁不良箇所があると診断される。この診断は、たとえば、3本の高圧ケーブル150に対してそれぞれ行われる。
【0031】
そして、高圧ケーブル150の防食層150dに絶縁不良箇所があると診断された場合には、切替装置1のリレー11が作動状態に切り替えられ、高圧ケーブル150の遮蔽層150cが標定装置3(
図5参照)に接続される。ここで、リレー11がオーバーラップ接点式(
図4参照)であることから、切り替えの際に遮蔽層150cが一時的に非接地状態にならないようになっている。
【0032】
標定装置3では、選択回路34により、健全相の高圧ケーブル150の遮蔽層150cが可変抵抗32aに接続され、故障相の高圧ケーブル150の遮蔽層150cが可変抵抗32bに接続される。具体的には、健全相の高圧ケーブル150の遮蔽層150cの一方端部が、配線43、リレー11、配線42および選択回路34を介して可変抵抗32aの他方端部に接続される。故障相の高圧ケーブル150の遮蔽層150cの一方端部が、配線43、リレー11、配線42および選択回路34を介して可変抵抗32bの他方端部に接続される。また、健全相の高圧ケーブル150の遮蔽層150cの他方端部と、故障相の高圧ケーブル150の遮蔽層150cの他方端部とが接続される。すなわち、標定装置3では、高圧ケーブル150の遮蔽層150cを用いて標定するようになっている。
【0033】
そして、標定装置3により、高圧ケーブル150の防食層150dにおける絶縁不良箇所の位置が活線状態で標定される。すなわち、標定装置3による標定は、高圧ケーブル150が通電された状態で行われる。なお、標定装置3には交流接地部35が設けられており、遮蔽層150cが交流的に接地されている。
【0034】
具体的には、直流電源31により可変抵抗32aおよび32bの間に直流電圧が印加される。この直流電源31の出力電圧は、故障相の高圧ケーブル150の防食層150dの絶縁抵抗値に応じて調整される。この絶縁抵抗値は診断装置2によって測定された値である。具体的には、
図6に示すように、絶縁抵抗値がR1未満の場合には、出力電圧値がV1に設定され、絶縁抵抗値がR1以上R2未満の場合には、出力電圧値がV1よりも大きいV2に設定され、絶縁抵抗値がR2以上の場合には、出力電圧値がV2よりも大きいV3に設定される。たとえば、R1が1MΩであり、R2が2MΩであり、V1が50Vであり、V2が100Vであり、V3が150Vである。これにより、測定電流(絶縁不良箇所において地絡抵抗を介して接地に流れる漏れ電流)を適切にすることが可能である。
【0035】
そして、検流計33の検出値がゼロになるように可変抵抗32aおよび32bの抵抗値が調整される。すなわち、ホイートストンブリッジ回路が平衡状態になるように可変抵抗32aおよび32bの抵抗値が調整される。次に、ホイートストンブリッジ回路が平衡状態になると、上記した式(1)を用いて故障相の高圧ケーブル150における絶縁不良箇所までの距離が算出される。
【0036】
-効果-
本実施形態では、上記のように、標定装置3が交流接地部35を備えることによって、高圧ケーブル150が活線状態であっても、遮蔽層150cに発生する誘導電圧を交流接地部35により抑制することができるので、防食層150dの絶縁不良箇所の位置を標定することができる。
【0037】
また、本実施形態では、高圧ケーブル150の防食層150dに絶縁不良箇所があるか否かを活線状態で診断する診断装置2と、高圧ケーブル150の遮蔽層150cを診断装置2または標定装置3に接続する切替装置1とを設けることによって、診断装置2により高圧ケーブル150の防食層150dに絶縁不良箇所があるか否かを活線状態で診断し、防食層150dに絶縁不良箇所があると診断された場合に、高圧ケーブル150を非活線状態にすることなく、切替装置1により接続先を切り替えて標定装置3による絶縁不良箇所の位置の標定を行うことができる。ここで、絶縁不良箇所の絶縁不良の程度は温度や湿度等によって日々変動するが、本実施形態では、防食層150dに絶縁不良箇所があると診断されると接続先が切り替えられ、その絶縁不良箇所の位置が標定されるので、時間の経過に伴う絶縁不良の回復によって標定できなくなることが抑制される。その結果、高圧ケーブル150の防食層150dに絶縁不良箇所がある場合に、その絶縁不良箇所の位置を適切に標定することができる。
【0038】
また、本実施形態では、切替装置1がオーバーラップ接点式のリレー11を含むことによって、リレー11が切り替えられる際に遮蔽層150cが一時的に非接地状態になるのを抑制することができる。すなわち、リレー11の切替前後において遮蔽層150cが交流的に接地された状態を保つことができるので、安全性の向上を図ることができる。
【0039】
また、本実施形態では、故障相の高圧ケーブル150の防食層150dの絶縁抵抗値に応じて直流電源31の出力電圧を調整することによって、測定電流を適切にすることができる。
【0040】
-他の実施形態-
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0041】
たとえば、上記実施形態では、切替装置1と診断装置2と標定装置3とを備える標定システム100の標定装置3に本発明を適用する例を示したが、これに限らず、切替装置および診断装置が設けられていない単体の標定装置に本発明を適用するようにしてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、高圧ケーブル150の防食層150dの絶縁抵抗値に応じて出力電圧が調整される例を示したが、これに限らず、高圧ケーブルの防食層の絶縁抵抗値にかかわらず出力電圧が一定であってもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、一対の可変抵抗32aおよび32bが設けられる例を示したが、これに限らず、一対の可変抵抗に代えて、直流電源に接続される摺動端子を有する可変抵抗が設けられていてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、配線42と接地との間に1つのコンデンサ35aが設けられる例を示したが、これに限らず、配線と接地との間に複数のコンデンサが並列に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、高圧ケーブルの防食層における絶縁不良箇所の位置を標定する標定システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 切替装置
2 診断装置
3 標定装置
11 リレー
35 交流接地部
100 標定システム
150 高圧ケーブル
150c 遮蔽層
150d 防食層