(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】建物及び床の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04F 15/024 20060101AFI20221213BHJP
E04F 15/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
E04F15/024 603C
E04F15/00 101G
E04F15/024 603D
(21)【出願番号】P 2018121014
(22)【出願日】2018-06-26
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】浅野 翔平
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-125459(JP,A)
【文献】特開2004-011137(JP,A)
【文献】特開2001-115628(JP,A)
【文献】米国特許第05333423(US,A)
【文献】特開昭54-155623(JP,A)
【文献】実開平02-107616(JP,U)
【文献】特開2015-168984(JP,A)
【文献】特開2006-70524(JP,A)
【文献】特開平2-176069(JP,A)
【文献】特開平2-176067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/024
E04F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床版と固定材を一体化して床を施工可能な床構造を備えた建物であって、
前記建物の床版と、
前記床版に予め一体化された固定材と、
前記床版と一体化された固定材を2つ並設したときに、前記固定材間に間隙をおいて少なくとも2つの前記固定材を支持する天板を有する支持部材と、を備え、
前記天板は、前記固定材が嵌合可能な2つの受け部を備え、
前記受け部は、
前記固定材に下側から当接する底壁と、
前記固定材の長手方向において、前記固定材と係合する係合部と、を備え、
前記固定材は、角筒状の鋼材からなり、
前記係合部は、前記固定材の前記長手方向において、前記底壁の端部から前記固定材の開口端部の内側に向かって折り曲げられ前記底壁との間に隙間を有するように形成され、
前記固定材は、前記隙間に挿入されることで前記係合部と係合し、
前記支持部材の上部には、前記天板の高さを上下方向において変更するために前記間隙を通じて操作される被操作部が設けられ、
前記被操作部を操作することで、前記床版及び前記固定材の前記支持部材に対する高さ調整を可能にしたことを特徴とする床構造を備えた建物。
【請求項2】
前記受け部は
、
前記底壁から上方に突出し、前記固定材に外側から当接する外壁と、
前記底壁から上方に突出し、前記固定材に内側から当接する内壁と、を備えることを特徴とする請求項
1に記載の建物。
【請求項3】
前記外壁及び前記内壁は、互いに近接するように前記底壁から上方に突出していることを特徴とする請求項
2に記載の建物。
【請求項4】
2つの前記受け部は、接続部によって接続されており、
該接続部に前記被操作部が配置されていることを特徴とする請求項
1乃至
3のいずれか一項に記載の建物。
【請求項5】
前記床版には、前記被操作部の上方位置に穴又は切欠きが形成されていることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の建物。
【請求項6】
建物の床を構成する床版と固定材を一体化した状態で、前記床版を前記固定材とともに吊り上げる工程と、
前記床版を吊り上げている間に、前記固定材を支持する支持部材を、該支持部材の上部が少なくとも2つの前記固定材間に間隙をおいて支持するように前記固定材に組み付ける工程と、
前記床版及び前記固定材の前記支持部材に対する高さを調整するために、前記支持部材の上部に設けられた被操作部を操作する工程と、を含み、
前記固定材に前記支持部材を組み付ける工程では、前記固定材の長手方向において前記固定材に向かって前記支持部材を係合させるように組み付け、
前記被操作部を操作する工程は、前記間隙を通じて行われることを特徴とする床の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物及び床の施工方法に係り、特に、床版と固定材を一体化させて床を施工可能な床構造を備える建物、及び、当該床構造を備える床の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の床構造として、床を構成する床版が大引等の固定材によって固定され、固定材が束等の支持部材によって支持されている床構造は、既に知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の床構造では、支持部材(支柱)としての束が大引支持部と支柱本体とベース部とを備えている。ベース部は、土間床等に接地される。大引支持部は、角筒状の大引を嵌め込んで大引を固定する部分である。支柱本体は、大引支持部の下方位置で大引支持部を支持する。また、支柱本体は、その中途位置にターンバックルを備えており、ターンバックルを回すことで支柱本体の高さを変更することが可能である。これにより、大引支持部の上下位置を調整することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の床構造をはじめ、大引を束によって支持する床構造では、大引を束に組み付けてから束のベース部を接地させ、その後、束の支柱本体の中途部分に設けられた被操作部(例えば、ターンバックル)を操作して大引の上下位置を調整する。この際、支柱本体の被操作部を操作するには、支柱本体の側方から被操作部を把持したり操作用工具を被操作部に近付けたりする。このため、従来の床構造では被操作部が操作し難くなっており、特に、大引上に床版を載せた後に大引の上下位置を調整する場合には被操作部の操作が著しく困難となる。
【0005】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、一体化した床版と固定材の上下位置を容易に調整することが可能な床構造を採用した建物を提供することである。
また、本発明の他の目的は、一体化した状態の床版と固定材の上下位置を容易に調整することが可能な床の施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の建物によれば、床版と固定材を一体化して床を施工可能な床構造を備えた建物であって、前記建物の床版と、前記床版に予め一体化された固定材と、前記床版と一体化された固定材を2つ並設したときに、前記固定材間に間隙をおいて少なくとも2つの前記固定材を支持する天板を有する支持部材と、を備え、前記天板は、前記固定材が嵌合可能な2つの受け部を備え、前記受け部は、前記固定材に下側から当接する底壁と、前記固定材の長手方向において、前記固定材と係合する係合部と、を備え、前記固定材は、角筒状の鋼材からなり、前記係合部は、前記固定材の前記長手方向において、前記底壁の端部から前記固定材の開口端部の内側に向かって折り曲げられ前記底壁との間に隙間を有するように形成され、前記固定材は、前記隙間に挿入されることで前記係合部と係合し、前記支持部材の上部には、前記天板の高さを上下方向において変更するために前記間隙を通じて操作される被操作部が設けられ、前記被操作部を操作することで、前記床版及び前記固定材の前記支持部材に対する高さ調整を可能にしたことにより解決される。
【0007】
上記のように構成された本発明の建物によれば、固定材間の間隙を通じて被操作部を操作することで、一体化した床版と固定材の上下位置を容易に調整することが可能となる。
また、床版と一体化された固定材を2つ支持する際に天板がそれぞれの固定材と嵌合可能な2つの受け部を備えているため、2つの固定材が間隙をおいて適切に支持されるとともに、支持部材に対する固定材の組み付けを容易に行うことが可能となる。
また、受け部が固定材の長手方向において固定材と係合する係合部を備えているため、受け部における固定材の長手方向の位置が安定したものとなる。
【0009】
また、上記の構成において、前記受け部は、前記固定材に下側から当接する底壁と、該底壁から上方に突出し、前記固定材に外側から当接する外壁と、該底壁から上方に突出し、前記固定材に内側から当接する内壁と、を備えるとよい。
上記の構成では、底壁、外壁及び内壁に囲まれた空間に固定材が配置されるため、支持部材の天板によって、固定部材を適切に支持することが可能となる。
【0010】
また、上記の構成において、前記外壁及び前記内壁は、互いに近接するように前記底壁から上方に突出しているとよい。
上記の構成では、外壁及び内壁が固定材を挟み込むように配置されるため、支持部材の天板による固定部材の支持がより適切なものとなる。
【0011】
また、上記の構成において、2つの前記受け部は、接続部によって接続されており、該接続部に前記被操作部が配置されているとよい。
上記の構成では、2つの受け部を接続する接続部に被操作部が配置されているため、固定材間の間隙を通じた被操作部の操作が容易なものとなる。
【0013】
また、上記の構成において、前記床版には、前記被操作部の上方位置に穴又は切欠きが形成されているとよい。
上記の構成では、床版の被操作部の上方位置には、開口部として形成された穴又は切り欠きが設けられており、固定材の上下位置を調整する際には、この穴又は切り欠きを通じて被操作部の操作が可能であるため、被操作部を操作して固定材の上下位置を調整することが一層容易なものとなる。
【0014】
前記課題は、本発明の床の施工方法によれば、建物の床を構成する床版と固定材を一体化した状態で、前記床版を前記固定材とともに吊り上げる工程と、前記床版を吊り上げている間に、前記固定材を支持する支持部材を、該支持部材の上部が少なくとも2つの前記固定材間に間隙をおいて支持するように前記固定材に組み付ける工程と、前記床版及び前記固定材の前記支持部材に対する高さを調整するために、前記支持部材の上部に設けられた被操作部を操作する工程と、を含み、前記固定材に前記支持部材を組み付ける工程では、前記固定材の長手方向において前記固定材に向かって前記支持部材を係合させるように組み付け、前記被操作部を操作する工程は、前記間隙を通じて行われることにより解決される。
【0015】
上述した本発明の床の施工方法によれば、床版と一体化した固定材を吊り上げている間に支持部材の上部が少なくとも2つの固定材間に間隙をおいて支持するように固定材に組み付ける。その後、支持部材を接地させてから、支持部材の上部に設けられた被操作部を操作して、床版及び固定材の支持部材に対する高さ変更する。これにより、固定材の上下位置が調整される。この際、支持部材に間隙をおいて支持された2つの固定材間の間隙を通じて被操作部を操作する。このような手順であれば、固定材の上に既に床版が固定された状態であっても、固定材間の間隙から被操作部に容易にアクセスし得るので、当該被操作部を操作して固定材の上下位置を簡単に調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、固定材の上下位置を調整するために支持部材に設けられた被操作部を調整する際、固定材間の間隙を通じて、床版の上方から被操作部にアクセスすることが可能である。これにより、床版が固定材の上に固定された状態であっても、被操作部を容易に操作することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の建物における床構造の一例を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る支持部材の天板の外観図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る支持部材の天板の上面図及び正面図である。
【
図5A】大引を束に組み付ける直前の状態を示す図である。
【
図5B】大引が束に組み付けられた状態を示す図である。
【
図7】変形例に係る床の組み立て手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る建物及び床の施工方法(床施工方法)について
図1乃至9を参照しながら説明する。
【0019】
なお、以下では、互いに直交する3つの方向をX方向、Y方向及びZ方向と呼ぶこととする。ここで、X方向及びY方向は、水平方向である。より具体的に説明すると、X方向は、後述する大引20,22の長手方向(所定方向に相当)に該当し、Y方向は、大引20,22の長手方向と交差(直交)する方向に該当する。また、Z方向は、鉛直方向(上下方向)である。
【0020】
<建物1の構成>
第一実施例に係る建物(以下、建物1)は、例えば複数階建ての住宅や建屋であり、1階部分の床構造として、
図1に図示した床構造を採用している。
図1は、建物1における床構造の一例を示す模式図であり、X方向から床10及び床下ユニットFUを見た図である。なお、
図1に図示の床構造は、複数階建ての建物にのみ適用されるものではなく、平屋等、一階建ての建物にも適用可能である。
【0021】
床10は、パネル材である床版11を床設置スペースに敷きつめて不図示の化粧材を床版11の上に固定することで構成されている。床版11は、平面視で略長方形状の合板からなる。床下ユニットFUは、
図1に示すように床10と土間FLとの間に配置され、床10を下方から支えるものである。床下ユニットFUは、同図に示すように固定材としての大引20,22と、支持部材(支柱)としての束30と、を備えている。
【0022】
大引20,22は、角筒状の鋼材からなり、その上端面に床版11を載せた状態で当該床版11を固定する。床版11は、その長辺が大引20,22の長手方向(X方向)と交差した状態で大引20,22に固定される。また、大引20,22には、
図2に示すように、複数の床版11(例えば、4つの床版11)が大引20,22の長手方向、すなわちX方向に沿って並べられた状態で固定されている。
図2は、床10の組み立て手順を示す図である。
【0023】
床版11と大引20,22と関係について詳しく説明すると、
図2に図示のケースでは、4つの床版11を一単位(以下、パネル群と呼ぶ)とし、パネル群の下に2の大引20,22が配置されている。各大引20,22の上にはパネル群(すなわち、4つの床版11)がX方向に並べられた状態で配置されている。厳密に説明すると、各床版11は、平面視で略直方形状をなしており、その長辺が隣り合う床版11の長辺と重なるように配置されている。
【0024】
図2に示すように、一端側の大引20(以下、一端側の大引20)には、Y方向における各床版11の一方の端部が載っている。他端側の大引22(以下、他端側の大引22)には、Y方向における床版11の他方の端部が載っている。また、
図2に示すように、一端側の大引20及び他端側の大引22は、Y方向において床版11の端よりも内側に位置している。
【0025】
<束30(支持部材)の構成>
束30は、
図1に示すように、大引20,22の下方位置で大引20,22を支持する支持部材である。束30は、X方向に沿って略一定の間隔で大引20,22に組み付けられる。なお、
図2に図示した束30の数は、図示の都合上、大引20,22に対して実際に組み付けられる数よりも少なくなっている。
【0026】
また、束30は、
図1に示すように、2つの大引20,22を支持可能な天板31を有している。天板31は、束30の上方部分、より具体的には後述する筒状部35bの上方位置に設けられた上面視H字状の鋼材からなる。この天板31は、
図3及び
図4に示すように、2つの受け部である第一受け部32及び第二受け部33と、2つの受け部を接続する接続部34とを有する。天板31は、1枚の鋼板を切断、折り曲げ加工することで形成されている。
図4の上図は、天板31の上面図であり、
図4の下図は天板31の正面図である。
【0027】
第一受け部32は、互いに離間した状態で配置された一対の側壁である外壁32a及び内壁32bと、外壁32aと内壁32bを連結する底壁32cとを備えている。
図3及び
図4に示すように、外壁32a及び内壁32bは底壁32cから上方に突出している。ここで、第一受け部32と接続部34との接続部において、内壁32bが2つに分断されている。外壁32a及び内壁32bは若干の弾性を有し、外壁32a及び内壁32bの上端部同士の間隔(換言すると、第一受け部32の上端開口)が広がるように撓むことが可能である。
【0028】
第二受け部33は、互いに離間した状態で配置された一対の側壁である外壁33a及び内壁33bと、外壁33aと内壁33bを連結する底壁33cとを備えている。
図3及び
図4に示すように、外壁33a及び内壁33bは底壁33cから上方に突出している。ここで、第二受け部33と接続部34との接続部において、内壁33bが2つに分断されている。外壁33a及び内壁33bは若干の弾性を有し、外壁33a及び内壁33bの上端部同士の間隔(換言すると、第二受け部33の上端開口)が広がるように撓むことが可能である。
【0029】
ここで、束30は、
図1に示すように、上述した天板31と、鉛直方向に延出した支柱本体35と、支柱本体35の土台をなすベース部36とを有する。
【0030】
支柱本体35は、ベース部36に対して立設された部分であり、棒状のネジ部35aと、ネジ部35aが挿入される筒状部35bと、を有する。ネジ部35aの外周面には雄ネジが形成されており、筒状部35bの内周面に形成された雌ネジと係合(螺合)している。
【0031】
そして、ネジ部35aが順回転すると、ネジ部35aが筒状部35bに対して上昇し、支柱本体35の高さが増加する。反対に、ネジ部35aが逆回転すると、ネジ部35aが筒状部35bに対して下降し、支柱本体35の高さが減少する。このように支柱本体35を含む束30の高さは、ネジ部35aを回転させることで調整することが可能である。
【0032】
ネジ部35aを回転させる際には、ネジ部35aの上端部に設けられたネジ頂部37を、工具(例えばドライバーやプラグレンチ)によって操作する(回転させる)。つまり、ネジ頂部37は、束30の上部に設けられた被操作部に相当し、束30の高さを変更する際に操作される部分である。
【0033】
また、ベース部36は、土間FLに接地される部分であり、例えば、ゴム製のブロック体等によって構成されている。
【0034】
図5Aは、束30の天板31に大引20,22を組み付ける直前の状態を示す図であり、
図5Bは、束30の天板31に大引20,22に組み付けられた状態を示す図であり、束30の高さ調整が終了した段階の図である。なお、
図5A及び
図5Bは、法線方向がX方向であって後述の切り欠き11aを通過する断面を示した図となっている。
【0035】
接続部34には貫通孔34aが設けられており、
図5Aに示すように貫通孔34aにネジ部35aの上端部が挿通されている。換言すると、ネジ頂部37は、接続部34を貫通して上方に突出していることになる。ここで、接続部34の下面には、
図5A及び
図5Bに示すように、リング部材38(例えば、ワッシャー)が配置されている。リング部材38は、その孔と接続部34の貫通孔34aとが連通するように接続部34の下面に配置されている。ネジ部35aの上端部は、リング部材38を貫通して接続部34を貫くように配設されている。ここで、接続部34を貫通したネジ部35aの上端部には、
図1、
図5A及び
図5Bに示すようにリング部材38と接続されたナット(以下、上方ナット39)が取り付けられている。上方ナット39がネジ部35aの上端部に取り付けられることで、大引20,22に組み付けられた束30が大引20,22に対して固定される。
【0036】
そして、第一受け部32は、
図5Bに示すように、一対の側壁である外壁32a及び内壁32bと、底壁32cとによって囲まれたスペース内に大引20を入れ込むことで大引20と嵌合する。より具体的に説明すると、大引20は、
図5A及び
図5Bに示すように第一受け部32の上方から第一受け部32内部のスペースに入り込む。また、第一受け部32における一対の側壁である外壁32a及び内壁32bの間の間隔(横幅)は、大引20の両側部の間隔(横幅)と略一致する。このため、大引20を第一受け部32内に入れ込む際、第一受け部32の上端開口が広がるように外壁32a及び内壁32bが撓む。これにより、大引20がスムーズに第一受け部32内に入り込むようになる。
【0037】
同様に、第二受け部33は、
図5Bに示すように、一対の側壁である外壁33a及び内壁33bと、底壁33cとによって囲まれたスペース内に大引22を入れ込むことで大引22と嵌合する。より具体的に説明すると、大引22は、
図5A及び
図5Bに示すように第二受け部33の上方から第二受け部33内部のスペースに入り込む。また、第二受け部33における一対の側壁である外壁33a及び内壁33bの間の間隔(横幅)は、大引22の両側部の間隔(横幅)と略一致する。このため、大引22を第二受け部33内に入れ込む際、第二受け部33の上端開口が広がるように外壁33a及び内壁33bが撓む。これにより、大引22がスムーズに第二受け部33内に入り込むようになる。
【0038】
以上のように第一受け部32内に大引20が入り込み、第二受け部33に大引22が入り込むことで束30が大引20,22に組み付けられる。束30が大引20,22に組み付けられた状態において、ビス止め等を行うことで、大引20と第一受け部32との嵌合状態及び大引22と第二受け部33との嵌合状態(換言すると、大引20,22に対する束30の組み付け状態)を安定させることが可能となる。
【0039】
また、束30が大引20,22に組み付けられた状態では、
図5Bに示すように、ネジ頂部37を含むネジ部35aの上端部が天板31を貫通し、大引20,22の底よりも上方に突出している。ここで、
図1及び
図5Bに示すように、大引20及び大引22は、その間に間隙をおいて天板31によって支持されており、該間隙にネジ頂部37を含むネジ部35aの上端部が位置している。
【0040】
そして、
図5A及び
図5Bに示すように、束30が大引20,22に組み付けられた状態においてネジ部35aの上端部の直上位置に在る部分には併設された2つの床版11の切り欠き11aがそれぞれ位置している。この2つの切り欠き11aは、その幅がネジ頂部37の外径よりも大きくなるように形成されている。より詳しく説明すると、2つの切り欠き11aの幅は、上方ナット39の最外径よりも若干大きくなっている。
【0041】
そして、ネジ頂部37を操作する際には、切り欠き11aを通じて操作する形になる。つまり、大引20,22に組み付けられた束30の高さを変更する際には、切り欠き11aを通って接続部34を貫通したネジ頂部37を操作する。この際、切り欠き11aを通じてネジ頂部37までアクセスしてネジ頂部37を操作する形になる。
【0042】
以上の要領でネジ頂部37を操作すると、束30の高さが変更される。そして、束30の高さが変わると、これに伴って大引20,22の上下位置が変化する。つまり、ネジ頂部37の操作により、大引20,22に対する束30の組み付け位置が上下方向において変更される。ここで、組み付け位置とは、束30の高さ方向(すなわち、Z方向)において、束30のうち、大引20,22に組み付けられている部位の位置を意味する。
【0043】
より詳しく説明すると、ネジ頂部37の操作によって束30の天板31の高さが変化する一方で、ネジ頂部37に対する天板31及び大引20,22の位置(相対位置)は、天板31に接続された上方ナット39及びリング部材38によって保持される。したがって、束30の高さが変わると、大引20,22に対する束30の組み付け位置(具体的には、天板31の位置)が上下移動し、これに伴う形で大引20,22の上下位置が調整される。
【0044】
ここで、建物1の床構造では、大引20,22の上に床版11が既に固定された状態であっても、束30中のネジ頂部37を操作して束30の高さ(換言すると、大引20,22の上下位置)を変更することが可能である。かかる構成について
図2及び
図5Aを参照しながら説明すると、床版11において大引20,22の上に載った部分の近傍位置には開口部が設けられている。
【0045】
より詳しく説明すると、床版11において大引20又は大引22の上に載っている部分近傍(すなわち、X方向における床版11の端部)には、
図2に示すように開口部としての切り欠き11aが形成されている。切り欠き11aは、
図2に示すように、X方向において互いに隣り合う2つの床版11の各々の角部を略三角形状に面取りすることで形成されている。また、切り欠き11aは、大引20と大引22の間の間隙の直上位置に設けられている。
【0046】
以上のように、床版11において大引20,22の上に載っている部分の近傍、大引20,22に組み付けられた束30が有するネジ部35aの直上位置にある箇所には、開口部としての切り欠き11aが設けられている。つまり、束30の天板31を貫通しているネジ部35aの頂部(すなわちネジ頂部37)は、切り欠き11aを通じて床版11の上方空間に対して露出している。このため、ネジ頂部37は、切り欠き11aを通じて操作可能となる。このような構成であれば、床版11の上方から切り欠き11aを通じてネジ頂部37にアクセスしてネジ頂部37を操作することが可能となる。
【0047】
また、1つの束30の天板31に、2本の大引20,22が支持されており、断面視において、2本の縦材(大引20の左右の側壁及び大引22の左右の側壁)によって床版11が支えられるため、大引1本で支持する場合よりも、断面二次モーメントが大きくなり、構造の強度が向上するため、大引20,22の高さを低いものを用いることが可能となる。また、大引の上面に床版11が位置するため、床版11の上に不図示の断熱材を配置した場合、断熱材が連続した状態で配置可能であり、断熱効果に優れた床構造となる。
【0048】
<床の施工方法>
次に、本実施形態に係る床10の施工方法について説明する。なお、以下では、
図2に図示した構造の床10を施工する場合を例に挙げて説明する。
【0049】
本実施形態に係る床10を施工する上では、先ず、床版11をクレーン等によって吊り上げて所定の配置場所(具体的には、建設途中の建物において床版11を設置する場所)まで搬送する。この時点で、床版11は、既に大引20,22の上に固定されている。すなわち、床版11を吊り上げる工程では、
図6に示すように、床版11を大引20,22の上に固定した状態で床版11を大引20,22とともに吊り上げる。
図6は、床版11を吊り上げている状態を示す図である。
【0050】
また、大引20,22の上には複数の床版11(パネル群)がX方向に沿って並んだ状態で固定されている。したがって、床版11を大引20,22とともに吊り上げる際には、
図6に示すように、複数の床版11(パネル群)を大引20,22とともに吊り上げる。
【0051】
また、パネル群は複数の大引20,22に固定されており、一端側の大引20には、Y方向における各床版11の一方の端部が固定され、他端側の大引22には、Y方向における各床版11の他方の端部が固定されている。以上の状態で複数の床版11(パネル群)を複数の大引20,22とともに吊り上げる。このように本実施形態では、床版11を吊り上げる段階で複数の床版11が既に大引20,22に固定されている。これにより、複数の床版11を一度に吊り上げて効率よく搬送することが可能となる。
【0052】
本実施形態では、床版11を大引20,22とともに吊り上げている間に束30を大引20,22に組み付ける。具体的に説明すると、束30を大引20,22の下方から大引20,22に近付ける。そして、上述した手順により、束30が有する天板31の第一受け部32に大引20を嵌合させ、第二受け部33に大引22を嵌合させる。この際、束30が有するネジ部35aの上端部が、大引20及び大引22の間の間隙に配置される。これにより、ネジ頂部37を含むネジ部35aの上端部が束30の天板31を貫通した状態で、束30が大引20,22に組み付けられる(換言すると、大引20が第一受け部32に嵌合し、大引22が第二受け部33に嵌合する)。
【0053】
その後、束30のベース部36を土間FLに接地させた上で、大引20,22の上下位置(すなわち、床レベル)を調整するために、各束30が支柱本体35に備えたネジ部35aのネジ頂部37を操作して束30の高さを変更する。この際、床版11において、ネジ頂部37の上方位置に形成された切り欠き11aを通じてネジ頂部37を操作する。
【0054】
より詳しく説明すると、束30が大引20,22に組み付けられた状態において、ネジ頂部37の直上位置には、床版11に形成された切り欠き11aが設けられている。つまり、ネジ頂部37は、床版11の上方空間に対して露出している。これにより、床版11の上方から切り欠き11aを通じてネジ頂部37を操作し得るようになる。より詳しく説明すると、作業者(すなわち、床の施工者)は、切り欠き11aを通じて工具を差し込み、当該工具によってネジ頂部37を操作してネジ部35aを回転させる。
【0055】
そして、ネジ部35aの回転によって束30の高さが変更し、これに伴って大引20,22の上下位置(床レベル)が調整される。最終的に大引20,22の上下位置が所望の位置に達した時点で、作業者は、ネジ部35aの回転を停止する。天板31の下面と上面には、リング部材38及び上方ナット39が接続されているため、これにより、大引20,22が所望の高さに配置された状態で束30が大引20,22に対して固定されるようになる。
【0056】
その後、断熱材、化粧材の設置等を含む後段の工程が実施される。そして、床10の施工に関する一連の工程が実施されることで床10及び床下ユニットFUが完成し、これを以て床10の施工作業が終了する。
【0057】
<変形例>
以上までに、本発明の一実施形態に係る床構造を備えた建物及び床の施工方法について説明してきたが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0058】
特に、各部材の構造、材質、形状及び寸法等については、上記の実施形態の中で説明した内容に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて任意に設計することが可能である。
【0059】
例えば、床版11に設けられる、開口部としては、
図2に示した切り欠き11aに限定されるものではない。
図7は、変形例に係る床10の組み立て手順を示す図であり、
図2に対応する図である。例えば、
図2において切り欠き11aが形成されている箇所に、切り欠き11aの代わりに、
図7に示すように円穴11b(穴の一例)が形成されていてもよい。円穴11bが設けられていることで、天板31を貫通しているネジ部35aの頂部(ネジ頂部37)は、床版11の上方空間に対して露出するようになる。この結果、
図2Bに図示の構成においても、床版11の上方から円穴11bを通じてネジ頂部37にアクセスしてネジ頂部37を操作することが可能となる。
【0060】
また、床版に切り欠きや円穴を設けて開口部を形成する以外の例として、隣接する床版11の間を所定間隔離間した状態となるように大引20,22を配置することで、天板31を貫通しているネジ部35aの頂部(ネジ頂部37)が、床版11の上方空間に対して露出するように構成することも可能である。この場合、隣接する床版11の間に大引の長手方向に延在する開口部(間隙)が形成されることとなる。当該開口部(間隙)を、対応する形状を有する板材や、詰め物を用いて埋めることも可能である。
【0061】
また、受け部における大引の固定は、上述したビス止め以外の方法によって行うことも可能である。以下、受け部の変形例について
図8及び
図9を参照して説明を行う。
図8及び
図9では、第一受け部32のみを図示しているが、第二受け部33も同様の構成とすることが可能である。
【0062】
図8に示す第一受け部32では、外壁32a及び内壁32bが互いに近接するように底壁32cから上方に突出している。この場合、大引20が第一受け部32に嵌合した際に、外壁32a及び内壁32bが大引20を外側から挟み込むように配置されるため、天板31の第一受け部32に対する大引20の支持がより適切なものとなる。
【0063】
図9に示す第一受け部32では、大引20の長手方向において、大引20の端部と係合する係合部32dを備えている。より詳細には、第一受け部32の底壁32cから折り曲げられて係合部32dが形成されている。係合部32dは、若干の弾性を有し、角筒状の大引20を底壁32cと係合部32dの間に挿入することで、底壁32cと係合部32dの間の間隔が広がるように撓むことが可能である。
図9に示す例では、第一受け部32が大引20の長手方向において係合部32dと係合するため、第一受け部32における大引20の長手方向の位置が安定したものとなる。
【0064】
また、上記の実施形態においては、束30の上部に設けられたネジ頂部37を操作することにより束30の天板31の上下位置を調整することとしたが、これに限られない。例えば、ネジ部35aに取り付けられるリング部材38と上方ナット39とを連結して構成したナット体を回すことにより、天板31の上下位置を調整する機構としてもよい。
【0065】
また、ベース部36に対しては、下面に接着剤を塗布して土間FLと接合してもよいし、ベース部36から土間FLに向けて釘等の固着具を打ち込んで固定してもよい。
【0066】
<本発明に係る床構造を備えた建物及び床の施工方法の作用>
本発明に係る建物は、床版11と大引20,22(固定材)を一体化して床10を施工可能な床構造を備えた建物1であって、建物1の床版11と、床版11に予め一体化された大引20,22と、床版11と一体化された大引20,22を2つ並設したときに、大引20,22間に間隙をおいて少なくとも2つの大引20,22を支持する天板31を有する束30と、を備え、束30の上部には、天板31の高さを上下方向において変更するために間隙を通じて操作されるネジ頂部37(被操作部)が設けられ、ネジ頂部37を操作することで、床版11及び大引20,22の束30に対する高さ調整が可能である。
【0067】
上記の建物によれば、固定材である大引20,22の間隙を通じて、被操作部であるネジ頂部37を操作することで、一体化した床版11と大引20,22の上下位置を容易に調整することが可能となる。
【0068】
また、天板31が、2つの大引20,22が嵌合可能な2つの受け部、第一受け部32及び第二受け部33を備えているため、2つの大引20,22が間隙をおいて適切に支持されるとともに、束30に対する大引20,22の組み付けを容易に行うことが可能となる。
【0069】
また、受け部(第一受け部32及び第二受け部33)は、大引20、22に下側から当接する底壁32c,33cと、底壁32c,33cから上方に突出し、大引20、22に外側から当接する外壁32a,33aと、底壁32c,33cから上方に突出し、大引20、22に内側から当接する内壁32b,33bと、を備えており、底壁32c,33c、外壁32a,33a及び内壁32b,33bに囲まれた空間に大引20,22が配置されるため、支持部材の天板によって、大引20、22を適切に支持することが可能となる。
【0070】
また、外壁32a及び内壁32bは互いに近接するように底壁32cから上方に突出しており、外壁32a及び内壁32bが大引20を挟み込むように配置されるため、束30の天板31による大引20の支持がより適切なものとなる。
【0071】
また、2つの受け部(第一受け部32及び第二受け部33)は、接続部34によって接続されており、接続部34にネジ頂部37が配置されているため、大引20,22間の間隙を通じたネジ頂部37の操作が容易なものとなる。
【0072】
また、受け部(第一受け部32)は、大引20の長手方向において、大引20と係合する係合部32dを備えているため、受け部における大引20の長手方向の位置が安定したものとなる。
【0073】
また、床版11には、被操作部であるネジ頂部37の上方位置に切り欠き11a又は円穴11bが形成されているため、大引20,22の上下位置を調整する際には、この切り欠き11a又は円穴11bを通じてネジ頂部37の操作が可能であるため、被操作部を操作して大引20,22の上下位置を調整することが一層容易なものとなる。
【0074】
本発明に係る床の施工方法は、建物1の床10を構成する床版11と大引20,22を一体化した状態で、床版11を大引20,22とともに吊り上げる工程と、床版11を吊り上げている間に、大引20,22を支持する束30を、束30の上部が少なくとも2つの大引20,22間に間隙をおいて支持するように大引20,22に組み付ける工程と、床版11及び大引20,22の束30に対する高さを調整するために、束30の上部に設けられた被操作部であるネジ頂部37を操作する工程と、を含み、ネジ頂部37を操作する工程は、間隙を通じて行われる。
【0075】
上記の床の施工方法によれば、床版11と一体化した大引20,22を吊り上げている間に束30の上部が少なくとも2つの固定材20,22間に間隙をおいて支持するように束30に組み付ける。その後、束30を接地させてから、束30の上部に設けられたネジ頂部37を操作して、大引20,22の束30に対する高さ変更する。これにより、大引20,22の上下位置が調整される。この際、束30に間隙をおいて支持された2つの大引20,22間の間隙を通じてネジ頂部37を操作する。このような手順であれば、大引20,22の上に既に床版11が固定された状態であっても、大引20,22間の間隙からネジ頂部37に容易にアクセスし得るので、当該ネジ頂部37を操作して大引20,22の上下位置を簡単に調整することが可能となる。
【符号の説明】
【0076】
1 建物
10 床
11 床版
11a 切り欠き(開口部)
11b 円穴(開口部、穴)
20 大引(固定材)
22 大引(固定材)
30 束(支持部材)
31 天板
32 第一受け部
32a 外壁
32b 内壁
32c 底壁
32d 係合部
33 第二受け部
33a 外壁
33b 内壁
33c 底壁
34 接続部
34a 貫通孔
35 支柱本体
35a ネジ部
35b 筒状部
36 ベース部
37 ネジ頂部(被操作部)
38 リング部材
39 上方ナット
FU 床下ユニット
FL 土間