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特許7193272表面保護フィルム用基材、該基材の製造方法、該基材を用いた表面保護フィルム、および表面保護フィルム付光学フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】表面保護フィルム用基材、該基材の製造方法、該基材を用いた表面保護フィルム、および表面保護フィルム付光学フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20221213BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20221213BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221213BHJP
   B29C 55/12 20060101ALI20221213BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20221213BHJP
   B29K 69/00 20060101ALN20221213BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B32B27/36
B32B27/00 M
B29C55/12
B29K67:00
B29K69:00
B29L7:00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018159532
(22)【出願日】2018-08-28
(65)【公開番号】P2020033419
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】中原 歩夢
(72)【発明者】
【氏名】清水 享
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-198956(JP,A)
【文献】特開2018-197848(JP,A)
【文献】特開2014-218645(JP,A)
【文献】特開2010-275364(JP,A)
【文献】特開2010-271447(JP,A)
【文献】特開平05-339395(JP,A)
【文献】特開2004-231907(JP,A)
【文献】特開2014-201619(JP,A)
【文献】特開平08-041304(JP,A)
【文献】特開2017-177342(JP,A)
【文献】特開2020-033418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02;5/12-5/22
B29C 55/00-55/30
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオレン環含有ポリエステルと芳香族ポリカーボネートとのポリマーアロイを含むフィルムで構成され、面内位相差Re(550)が30nm以下であり、MIT試験における破断までの折り曲げ回数が500回以上である、表面保護フィルム用基材と、
粘着剤層と、
を含む、表面保護フィルム
【請求項2】
前記フルオレン環含有ポリエステルが、ジカルボン酸成分(A)とジオール成分(B)とを共重合成分として含み、該ジカルボン酸成分(A)が下記式(1a)および(1b)で表されるジカルボン酸から選択される少なくとも1つのフルオレンジカルボン酸成分(A1)を含む、請求項1に記載の表面保護フィルム:
【化1】
式(1a)および式(1b)において、RおよびRはそれぞれ置換基であり、k、mおよびnはそれぞれ0~4の整数であり、XおよびXはそれぞれ置換または非置換の2価の炭化水素基である。
【請求項3】
前記フルオレン環含有ポリエステルが、前記フルオレンジカルボン酸成分(A1)由来の構成単位を、前記ジカルボン酸成分(A)由来の構成単位全量に対して50モル%以上含む、請求項2に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
前記ジオール成分(B)が、下記式(2)で表されるフルオレンジオール成分(B1)を含む、請求項2または3に記載の表面保護フィルム:
【化2】
式(2)において、Zは芳香族炭化水素環であり、RおよびRはそれぞれ置換基であり、pはそれぞれ0~4の整数であり、qおよびrはそれぞれ0又は1以上の整数であり、Rはそれぞれアルキレン基である。
【請求項5】
全光線透過率が80%以上であり、ヘイズが1.0%以下である、請求項1から4のいずれかに記載の表面保護フィルム。
【請求項6】
光学フィルムと、該光学フィルムに剥離可能に貼り合わせられた請求項1から5のいずれかに記載の表面保護フィルムと、を含む、表面保護フィルム付光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護フィルム用基材、該基材の製造方法、該基材を用いた表面保護フィルム、および表面保護フィルム付光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
光学フィルム(例えば、偏光板、偏光板を含む積層体)には、当該光学フィルムが適用される画像表示装置が実際に使用されるまでの間、当該光学フィルム(最終的には、画像表示装置)を保護するために表面保護フィルムが剥離可能に貼り合わせられている。実用的には、光学フィルム/表面保護フィルムの積層体が表示セルに貼り合わせられて画像表示装置が作製され、当該積層体が貼り合わせられた状態で画像表示装置が光学試験(例えば、点灯試験)に供され、その後の適切な時点で表面保護フィルムが剥離除去される。表面保護フィルムは、代表的には、基材としての樹脂フィルムと粘着剤層とを有する。従来の表面保護フィルムによれば、光学検査の際に光漏れ、着色、虹ムラ等が発生し、光学検査の精度低下の原因となる場合がある。その結果、画像表示装置自体には問題がないにもかかわらず出荷前の光学検査で不良と判断されてしまう場合があり、これにより、画像表示装置の製造から出荷までの効率が低下してしまうという問題がある。さらに、表面保護フィルム(実質的には、基材)は、貼り合わせ時および剥離時の操作性を考慮して、優れた可撓性が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-190406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、優れた可撓性または耐折り曲げ性を有し、かつ、光学検査時の光漏れ、着色および虹ムラを良好に抑制し得る表面保護フィルム用基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態による表面保護フィルム用基材は、フルオレン環含有ポリエステルと芳香族ポリカーボネートとのポリマーアロイを含むフィルムで構成され、面内位相差Re(550)が30nm以下であり、MIT試験における破断までの折り曲げ回数が500回以上である。
1つの実施形態においては、上記フルオレン環含有ポリエステルは、ジカルボン酸成分(A)とジオール成分(B)とを共重合成分として含み、該ジカルボン酸成分(A)が下記式(1a)および(1b)で表されるジカルボン酸から選択される少なくとも1つのフルオレンジカルボン酸成分(A1)を含む:
【化1】
式(1a)および式(1b)において、RおよびRはそれぞれ置換基であり、k、mおよびnはそれぞれ0~4の整数であり、XおよびXはそれぞれ置換または非置換の2価の炭化水素基である。
1つの実施形態においては、上記フルオレン環含有ポリエステルは、上記フルオレンジカルボン酸成分(A1)由来の構成単位を、上記ジカルボン酸成分(A)由来の構成単位全量に対して50モル%以上含む。
1つの実施形態においては、上記ジオール成分(B)は、下記式(2)で表されるフルオレンジオール成分(B1)を含む:
【化2】
式(2)において、Zは芳香族炭化水素環であり、RおよびRはそれぞれ置換基であり、pはそれぞれ0~4の整数であり、qおよびrはそれぞれ0又は1以上の整数であり、Rはそれぞれアルキレン基である。
1つの実施形態においては、上記表面保護フィルム用基材は、全光線透過率が80%以上であり、ヘイズが1.0%以下である。
本発明の別の局面によれば、上記表面保護フィルム用基材の製造方法が提供される。この製造方法は、フルオレン環含有ポリエステルと芳香族ポリカーボネートとのポリマーアロイを含むフィルム形成材料をフィルム状に成形すること、および、該成形されたフィルムを逐次二軸延伸または同時二軸延伸することを含む。
1つの実施形態においては、上記製造方法においては、上記逐次二軸延伸または同時二軸延伸における延伸速度は10%/秒以下である。
本発明のさらに別の局面によれば、表面保護フィルムが提供される。この表面保護フィルムは、上記表面保護フィルム用基材と粘着剤層とを含む。
本発明のさらに別の局面によれば、表面保護フィルム付光学フィルムが提供される。この表面保護フィルム付光学フィルムは、光学フィルムと、該光学フィルムに剥離可能に貼り合わせられた上記表面保護フィルムと、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、フルオレン環含有ポリエステルと芳香族ポリカーボネートとのポリマーアロイを含むフィルムを所定の延伸条件(代表的には、延伸速度)で延伸することにより、非常に小さい面内位相差と優れた可撓性または耐折り曲げ性とを両立した表面保護フィルム用基材を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0008】
A.表面保護フィルム用基材
本発明の実施形態による表面保護フィルム用基材は、フルオレン環含有ポリエステルと芳香族ポリカーボネートとのポリマーアロイを含むフィルムで構成される。ポリマーアロイは、ポリマーブレンドであってもよく、共重合体であってもよい。好ましくは、ポリマーブレンドである。フルオレン環含有ポリエステルおよび芳香族ポリカーボネートは、異種の高分子であるにもかかわらず、混合すると完全相溶状態または安定なミクロ相分離状態となり、相溶化剤を用いなくても容易にポリマーブレンドを形成できる。フルオレン環含有ポリエステルおよび芳香族ポリカーボネートの混合方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。混合方法の具体例としては、溶媒にフルオレン環含有ポリエステルおよび芳香族ポリカーボネートを溶解する方法、混練機または押出機によりフルオレン環含有ポリエステルおよび芳香族ポリカーボネートを溶融混合する方法が挙げられる。溶融混合が好ましい。表面保護フィルム用基材を作製した後の残存溶媒による光学的特性(例えば、位相差、波長分散特性など)の低下を防止できるからである。
【0009】
フルオレン環含有ポリエステルは、ジカルボン酸成分(A)とジオール成分(B)とを共重合成分として含む。ジカルボン酸成分(A)は、フルオレンジカルボン酸成分(A1)を含む。フルオレンジカルボン酸成分としては、例えば、下記式(1a)および(1b)で表されるジカルボン酸が挙げられる。これらのジカルボン酸は、単独で用いてもよく組み合わせて用いてもよい。
【化3】
式(1a)および式(1b)において、RおよびRはそれぞれ置換基であり、k、mおよびnはそれぞれ0~4の整数であり、XおよびXはそれぞれ置換または非置換の2価の炭化水素基である。
【0010】
式(1a)において、置換基Rとしては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(例えば、フェニル基などのC6-10アリール基)]などの非反応性置換基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基などのC1-12アルキル基が挙げられる。好ましくはC1-8アルキル基であり、より好ましくはC1-4アルキル基(例えば、メチル基)である。それぞれの置換基Rは、同一であってもよく異なっていてもよい。さらに、置換基Rの置換数kが2以上である場合、フルオレン環中の同一ベンゼン環内の2以上の基Rは、同一であってもよく異なっていてもよい。なお、フルオレン環を構成する2つのベンゼン環における置換基Rの結合位置(置換位置)は、例えば、フルオレン環の2-位、7-位、2-および7-位が挙げられる。
【0011】
置換基Rの置換数kは、例えば0~2の整数であり、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。なお、フルオレン環を構成する2つのベンゼン環において、それぞれの置換数kは、同一であってもよく異なっていてもよい。
【0012】
式(1b)において、置換基Rおよび置換数mはそれぞれ、式(1a)における置換基Rおよび置換数kと同様である。
【0013】
式(1b)において、メチレン基の繰り返し数nは、例えば0~3の整数であり、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0または1である。
【0014】
式(1a)および(1b)において、XおよびXで表される炭化水素基としては、例えば、直鎖状または分岐鎖状アルキレン基が挙げられる。具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、1,2-ブタンジイル基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-8アルキレン基が挙げられる。好ましいアルキレン基は、直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキレン基)である。炭化水素基の置換基としては、例えば、アリール基(フェニル基など)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基など)が挙げられる。
【0015】
それぞれのXは、同一であってもよく異なっていてもよい。XおよびXは、同一であってもよく異なっていてもよい。Xは、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C2-4アルキレン基(例えば、エチレン基、プロピレン基などの直鎖状または分岐鎖状C2-3アルキレン基)であり、Xは、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-3アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基)である。
【0016】
式(1a)で表されるジカルボン酸成分としては、例えば、9,9-ビス(カルボキシC2-6アルキル)フルオレンおよびこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。具体例としては、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシプロピル)フルオレンが挙げられる。式(1b)で表されるジカルボン酸成分としては、例えば、9-(ジカルボキシC2-8アルキル)フルオレンおよびこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。具体例としては、9-(1-カルボキシ-2-カルボキシエチル)フルオレン、9-(2,3-ジカルボキシプロピル)フルオレンが挙げられる。
【0017】
フルオレン環含有ポリエステルは、フルオレンジカルボン酸成分(A1)由来の構成単位を、ジカルボン酸成分(A)由来の構成単位全量に対して、好ましくは10モル%以上(例えば、30モル%以上)、より好ましくは50モル%以上(例えば、60モル%以上)、さらに好ましくは70モル%以上(例えば、80モル%以上)、特に好ましくは90モル%以上(例えば、95モル%以上)含む。ジカルボン酸成分(A)は、実質的にすべてがフルオレンジカルボン酸成分(A1)であってもよい。
【0018】
ジカルボン酸成分(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、他のジカルボン酸成分をさらに含んでいてもよい。他のジカルボン酸成分としては、例えば、芳香族ジカルボン酸成分(A2)[ただし、フルオレンジカルボン酸成分(A1)を除く]、脂環族ジカルボン酸成分(A3)、脂肪族ジカルボン酸成分(A4)、およびこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0019】
ジオール成分(B)は、下記式(2)で表されるフルオレンジオール成分(B1)を含む。フルオレンジオール成分(B1)は、単独のジオール化合物であってもよく、複数のジオール化合物の組み合わせであってもよい。
【化4】
式(2)において、Zは芳香族炭化水素環であり、RおよびRはそれぞれ置換基であり、pはそれぞれ0~4の整数であり、qおよびrはそれぞれ0又は1以上の整数であり、Rはそれぞれアルキレン基である。
【0020】
式(2)において、Zで表される芳香族炭化水素環(アレーン環)としては、例えば、ベンゼン環などの単環式芳香族炭化水素環(単環式アレーン環)、多環式芳香族炭化水素環(多環式アレーン環)が挙げられる。多環式芳香族炭化水素環としては、例えば、縮合多環式芳香族炭化水素環(縮合多環式アレーン環)、環集合芳香族炭化水素環(環集合アレーン環)が挙げられる。ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-12アレーン環が好ましく、ベンゼン環などのC6-10アレーン環がより好ましい。それぞれのZは、同一であってもよく異なっていてもよい。
【0021】
式(2)において、置換基Rおよび置換数pはそれぞれ、式(1a)における置換基Rおよび置換数kと同様である。
【0022】
置換基Rとしては、例えば、ハロゲン原子、直鎖状または分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基、ビス(アルキルカルボニル)アミノ基が挙げられる。置換基Rは、好ましくは、アルキル基(例えば、メチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基などのC5-8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、フェニル基などのC6-14アリール基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルコキシ基)であり、より好ましくは、アルキル基(例えば、メチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基)、アリール基(例えば、フェニル基などのC6-10アリール基)である。なお、置換基Rがアリール基である場合には、置換基Rは、環Zとともに上記環集合アレーン環を形成してもよい。それぞれのRは、同一であってもよく異なっていてもよい。
【0023】
置換基Rの置換数qは、例えば0~8の整数であり、好ましくは0~4(例えば、0~3)の整数であり、より好ましくは0~2の整数(例えば、0または1)である。置換数qは0であってもよい。なお、置換基Rの結合位置(置換位置)は特に限定されない。
【0024】
式(2)において、置換基Rとしては、例えば、エチレン基、プロピレン基(1,2-プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2-ブタンジイル基、テトラメチレン基などの直鎖状または分岐鎖状C2-6アルキレン基が挙げられる。好ましくは直鎖状または分岐鎖状C2-4アルキレン基であり、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状C2-3アルキレン基(特に、エチレン基)である。オキシアルキレン基(OR)の繰り返し数(付加モル数)rは、例えば0~15(例えば、1~10)の整数であり、好ましくは0~8(例えば、1~6)の整数であり、より好ましくは0~4(例えば、1~2)の整数であり、さらに好ましくは0または1(例えば、1)である。なお、式(2)における基[-O-(RO)-H]の置換位置は特に限定されない。
【0025】
式(2)で表されるジオールとしては、例えば、9,9-ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類、9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類が挙げられる。
【0026】
ジオール成分(B)は、重合反応性を高めるとともに、フルオレン環含有ポリエステルに柔軟性を付与して成形性などを向上できる点から、さらに、アルカンジオール(B2)[またはアルキレングリコール(B2)]を含んでいてもよい。アルカンジオール(B2)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、テトラメチレングリコール(1,4-ブタンジオール)、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオールなどの直鎖状または分岐鎖状C2-12アルカンジオールが挙げられる。フルオレン環含有ポリエステルにおけるフルオレンジオール(B1)に由来する構成単位とアルカンジオール(B2)に由来する構成単位との割合B1/B2(モル比)は、例えば0/50~100/0(例えば、50/50~99/1)であり、好ましくは60/40~97/3(例えば、65/35~95/5)であり、より好ましくは68/32~92/8(例えば、70/30~90/10)であり、さらに好ましくは73/27~88/12(例えば、75/25~85/15)である。
【0027】
ジオール成分(B)は、必要に応じて他のジオールをさらに含んでいてもよい。他のジオールとしては、例えば、ポリアルキレングリコール(またはポリアルカンジオール)(B3)、脂環族ジオール(B4)、芳香族ジオール(B5)およびその水添物が挙げられる。これらの他のジオールは、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
フルオレン環含有ポリエステルは、フルオレンジオール成分(B1)およびアルカンジオール成分(B2)由来の構成単位を、ジオール成分(B)由来の構成単位全量に対して、例えば10モル%以上(例えば、30モル%~100モル%)、好ましくは50モル%以上(例えば、60モル%~99モル%)、より好ましくは70モル%以上(例えば、80モル%~98モル%)、さらに好ましくは90モル%以上(例えば、95モル%~97モル%)含む。ジオール成分(B)は、実質的にすべてがフルオレンジオール成分(B1)およびアルカンジオール成分(B2)であってもよい。
【0029】
芳香族ポリカーボネートは、ジオール成分(C)を重合成分とするポリカーボネートである。ジオール成分(C)は、芳香族ジオール(C1)を少なくとも含む。芳香族ジオール(C1)としては、例えば、上記のフルオレンジオール(例えば、9,9-ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類、9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類)、ジヒドロキシアレーン(例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール)、芳香脂肪族ジオール(例えば、ベンゼンジメタノール)、ビスフェノール類(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールC、ビスフェノールG、ビスフェノールS)、ビフェノール類(例えば、p,p’-ビフェノール)、およびこれらのジオール成分のC2-4アルキレンオキシド(またはアルキレンカーボネート、ハロアルカノール)付加体[例えば、ビスフェノールAの1モルに対して、2~10モル程度のエチレンオキシドが付加した付加体]が挙げられる。これらの芳香族ジオール(C1)は、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。芳香族ジオール(C1)は、好ましくは、ビフェノール類、ビスフェノール類またはそのC2-4アルキレンオキシド付加体を含む。
【0030】
ポリマーアロイにおけるフルオレン環含有ポリエステルと芳香族ポリカーボネートとの割合PE/PC(重量比)は、例えば1/99~99/1(例えば、10/90~97/3)であり、好ましくは30/70~95/5であり、より好ましくは50/50~90/10であり、さらに好ましくは60/40~88/12(例えば、65/35~85/15)であり、特に好ましくは67/33~83/17(例えば、70/30~80/20)である。
【0031】
ポリマーアロイは、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、下記式(3)で表される化合物を添加剤として含んでいてもよい。
【0032】
【化5】
式(3)において、Zはそれぞれ単環式または縮合多環式芳香族炭化水素環であり、RおよびRはそれぞれ置換基であり、s、tおよびuは0以上の整数である。
【0033】
ポリマーアロイは、任意の適切な添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤(エステル類、フタル酸系化合物、エポキシ化合物、スルホンアミド類など)、難燃剤(無機系難燃剤、有機系難燃剤、コロイド難燃物質など)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、帯電防止剤、充填剤(酸化物系無機充填剤、非酸化物系無機充填剤、金属粉末など)、発泡剤、消泡剤、滑剤、離型剤(天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪酸又はその金属塩、酸アミド類など)、易滑性付与剤(例えば、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、カオリンなどの無機微粒子;(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂(架橋ポリスチレン樹脂など)などの有機微粒子)、相溶化剤が挙げられる。添加される添加剤の数、種類、組み合わせおよび添加量は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0034】
ポリマーアロイの詳細は、例えば特開2017-198956号公報に記載されており、当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0035】
本発明の実施形態においては、表面保護フィルム用基材の面内位相差Re(550)は30nm以下であり、好ましくは20nm以下であり、より好ましくは15nm以下であり、さらに好ましくは10nm以下であり、特に好ましくは5nm以下である。面内位相差Re(550)は小さいほど好ましく、その下限は理想的には0nmであり、例えば1nmであり得る。面内位相差Re(550)がこのような範囲であれば、本発明の表面保護フィルム用基材を用いた表面保護フィルムを画像表示装置の光学検査に供した場合に、光漏れ、着色および虹ムラを良好に抑制することができる。その結果、画像表示装置の光学検査の精度を顕著に向上させることができ、画像表示装置の製造から出荷までの効率を向上させることができる。このような面内位相差Re(550)は、上記のような特定のポリマーアロイを含むフィルムを後述するような所定の延伸条件で延伸することにより実現することができる。なお、本明細書において「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re=(nx-ny)×dによって求められる。したがって、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。ここで、「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率である。
【0036】
表面保護フィルム用基材の厚み方向位相差Rth(550)は、好ましくは95nm以下であり、より好ましくは85nm以下である。厚み方向位相差Rth(550)は小さいほど好ましく、その下限は理想的には0nmである。厚み方向位相差Rth(550)がこのような範囲であれば、上記の光学検査において斜め方向の光漏れ、着色および虹ムラを良好に抑制することができる。その結果、大型の画像表示装置の光学検査においても精度を顕著に向上させることができる。表面保護フィルム用基材のNz係数は、好ましくは3.0~10である。したがって、表面保護フィルム用基材の屈折率特性は、例えばnx>ny>nzの関係を示し得る。Nz係数がこのような範囲であれば、光学検査において斜め方向の光漏れ、着色および虹ムラをさらに良好に抑制することができる。「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth=(nx-nz)×dによって求められる。したがって、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。ここで、「nz」は厚み方向の屈折率である。さらに、「Nz係数」は、Nz=Rth(λ)/Re(λ)で求められる。
【0037】
表面保護フィルム用基材は、面内位相差が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、面内位相差が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、面内位相差が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。
【0038】
表面保護フィルム用基材の全光線透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、特に好ましくは95%以上である。さらに、表面保護フィルム用基材のヘイズは、好ましくは1.0%以下であり、より好ましくは0.7%以下であり、さらに好ましくは0.5%以下であり、特に好ましくは0.3%以下である。本発明の実施形態によれば、上記のような非常に小さい面内位相差Re(550)を有し、かつ、このように非常に優れた透明性を有する表面保護フィルム用基材を実現することができる。
【0039】
本発明の実施形態においては、表面保護フィルム用基材は、MIT試験における破断までの折り曲げ回数が500回以上であり、好ましくは1000回以上であり、より好ましくは1500回以上であり、さらに好ましくは2000回以上である。すなわち、表面保護フィルム用基材は、非常に優れた可撓性または耐折り曲げ性を有し得る。表面保護フィルム用基材のこのような優れた可撓性または耐折り曲げ性に起因して、貼り合わせ時および剥離時の操作性に優れ、かつ、割れが抑制された表面保護フィルムを得ることができる。本発明の実施形態によれば、このような優れた可撓性または耐折り曲げ性と上記のような非常に小さい面内位相差Re(550)とを両立することができる。このような両立を実現したことが、本発明の成果の1つである。なお、MIT試験は、JIS P 8115に準拠して行われ得る。
【0040】
表面保護フィルム用基材の弾性率は、好ましくは、引張速度100mm/minにおいて50MPa~350MPaである。弾性率がこのような範囲であれば、搬送性および操作性に優れた表面保護フィルムを得ることができる。本発明の実施形態によれば、優れた弾性率(強さ)と上記のような優れた可撓性または耐折り曲げ性(柔らかさ)とを両立することができる。なお、弾性率は、JIS K 7127:1999に準拠して測定される。
【0041】
表面保護フィルム用基材の引張伸度は、好ましくは70%~200%である。引張伸度がこのような範囲であれば、搬送中に破断しにくいという利点を有する。なお、引張伸度は、JIS K 6781に準拠して測定される。
【0042】
表面保護フィルム用基材の厚みは、代表的には10μm~100μmであり、好ましくは20μm~70μmである。
【0043】
B.表面保護フィルム用基材の製造方法
本発明の実施形態による表面保護フィルム用基材の製造方法は、上記A項に記載のポリマーアロイを含むフィルム形成材料(樹脂組成物)をフィルム状に成形すること、および、該成形されたフィルムを延伸することを含む。
【0044】
フィルム形成材料は、上記ポリマーアロイに加えて、他の樹脂を含んでいてもよく、添加剤を含んでいてもよく、溶媒を含んでいてもよい。添加剤としては、上記で説明したものが挙げられる。
【0045】
フィルム形成材料からフィルムを形成する方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。具体例としては、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、キャスト塗工法(例えば、流延法)、カレンダー成形法、熱プレス法等が挙げられる。押出成形法またはキャスト塗工法が好ましい。得られるフィルムの平滑性を高め、良好な光学的均一性を得ることができるからである。成形条件は、使用される樹脂の組成や種類、表面保護フィルム用基材に所望される特性等に応じて適宜設定され得る。
【0046】
フィルムの延伸方法は、代表的には二軸延伸であり、より詳細には逐次二軸延伸または同時二軸延伸である。面内位相差Re(550)が小さく、かつ、可撓性または耐折り曲げ性に優れた表面保護フィルム用基材が得られるからである。逐次二軸延伸または同時二軸延伸は、代表的にはテンター延伸機を用いて行われる。したがって、フィルムの延伸方向は、代表的にはフィルムの長さ方向および幅方向である。
【0047】
延伸温度は、表面保護フィルム用基材に所望される面内位相差および厚み、使用される樹脂の種類、使用されるフィルムの厚み、延伸倍率等に応じて変化し得る。具体的には、延伸温度は、フィルムのガラス転移温度(Tg)に対し、好ましくはTg+5℃~Tg+50℃であり、より好ましくはTg+10℃~Tg+30℃である。このような温度で延伸することにより、本発明の実施形態において適切な特性を有する表面保護フィルム用基材が得られ得る。
【0048】
延伸倍率は、表面保護フィルム用基材に所望される面内位相差および厚み、使用される樹脂の種類、使用されるフィルムの厚み、延伸温度等に応じて変化し得る。二軸延伸(例えば、逐次二軸延伸または同時二軸延伸)を採用する場合には、第1の方向(例えば、長さ方向)の延伸倍率と第2の方向(例えば、幅方向)の延伸倍率とは、好ましくはその差ができる限り小さく、より好ましくは実質的に等しい。このような構成であれば、面内位相差Re(550)が小さく、かつ、可撓性または耐折り曲げ性に優れた表面保護フィルム用基材が得られ得る。二軸延伸(例えば、逐次二軸延伸または同時二軸延伸)を採用する場合には、延伸倍率は、第1の方向(例えば、長さ方向)および第2の方向(例えば、幅方向)のそれぞれについて、例えば1.1倍~3.0倍であり得る。
【0049】
本発明の実施形態においては、延伸速度は、好ましくは10%/秒以下であり、より好ましくは7%/秒以下であり、さらに好ましくは5%/秒以下であり、特に好ましくは2.5%/秒以下である。上記のような特定のポリマーアロイを含むフィルムをこのような小さい延伸速度で延伸することにより、面内位相差Re(550)が小さく、かつ、可撓性または耐折り曲げ性に優れた表面保護フィルム用基材が得られ得る。延伸速度の下限は、例えば1.2%/秒であり得る。延伸速度が小さすぎると、生産性が実用的でなくなる場合がある。なお、二軸延伸(例えば、逐次二軸延伸または同時二軸延伸)を採用する場合には、第1の方向(例えば、長さ方向)の延伸速度と第2の方向(例えば、幅方向)の延伸速度とは、好ましくはその差ができる限り小さく、より好ましくは実質的に等しい。このような構成であれば、面内位相差Re(550)をより小さくし、かつ、可撓性または耐折り曲げ性をより優れたものとすることができる。
【0050】
C.表面保護フィルム
上記A項およびB項に記載の表面保護フィルム用基材は、表面保護フィルムに好適に用いられ得る。したがって、本発明の実施形態は、表面保護フィルムも包含する。本発明の実施形態による表面保護フィルムは、上記A項およびB項に記載の表面保護フィルム用基材と粘着剤層とを含む。
【0051】
粘着剤層を形成する粘着剤としては、任意の適切な粘着剤が採用され得る。粘着剤のベース樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂が挙げられる。このようなベース樹脂は、例えば、特開2015-120337号公報または特開2011-201983号公報に記載されている。これらの公報の記載は、本明細書に参考として援用される。耐薬品性、浸漬時における処理液の浸入を防止するための密着性、被着体への自由度等の観点から、アクリル系樹脂が好ましい。粘着剤に含まれ得る架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物が挙げられる。粘着剤は、例えばシランカップリング剤を含んでいてもよい。粘着剤の配合処方は、目的および所望の特性に応じて適切に設定され得る。
【0052】
粘着剤層の貯蔵弾性率は、好ましくは1.0×10Pa~1.0×10Paであり、より好ましくは2.0×10Pa~5.0×10Paである。粘着剤層の貯蔵弾性率がこのような範囲であれば、ロール形成時のブロッキングを抑制することができる。なお、貯蔵弾性率は、例えば、温度23℃および角速度0.1rad/sでの動的粘弾性測定から求めることができる。
【0053】
粘着剤層の厚みは、好ましくは1μm~60μmであり、より好ましくは3μm~30μmである。厚みが薄すぎると、粘着性が不十分となり、粘着界面に気泡等が入り込む場合がある。厚みが厚すぎると、粘着剤がはみ出すなどの不具合が生じやすくなる。
【0054】
実用的には、表面保護フィルムが実際に使用される(すなわち、光学フィルムまたは画像表示装置に貼り合わせられる)までの間、粘着剤層表面にセパレーターが剥離可能に仮着されている。セパレーターを設けることにより、粘着剤層を保護するとともに、表面保護フィルムをロール状に巻き取ることが可能となる。セパレーターとしては、例えば、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン)フィルム、不織布または紙などが挙げられる。セパレーターの厚みは、目的に応じて任意の適切な厚みを採用することができる。セパレーターの厚みは、例えば10μm~100μmである。
【0055】
D.表面保護フィルム付光学フィルム
上記C項に記載の表面保護フィルムは、光学フィルム(最終的には、画像表示装置)が実際に使用されるまでの間、当該光学フィルムを保護するために用いられる。したがって、本発明の実施形態は、表面保護フィルム付光学フィルムも包含する。本発明の実施形態による表面保護フィルム付光学フィルムは、光学フィルムと、当該光学フィルムに剥離可能に貼り合わせられた上記C項に記載の表面保護フィルムとを含む。
【0056】
光学フィルムは、単一フィルムであってもよく積層体であってもよい。光学フィルムの具体例としては、偏光子、位相差フィルム、偏光板(代表的には、偏光子と保護フィルムとの積層体)、タッチパネル用導電性フィルム、表面処理フィルム、ならびに、これらを目的に応じて適切に積層した積層体(例えば、反射防止用円偏光板、タッチパネル用導電層付偏光板、位相差層付偏光板、プリズムシート一体型偏光板)が挙げられる。
【実施例
【0057】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における各特性の測定方法は以下の通りである。なお、特に明記しない限り、実施例における「部」および「%」は重量基準である。
【0058】
(1)面内位相差Re(550)および厚み方向位相差Rth(550)
実施例および比較例で得られた表面保護フィルム用基材(二軸延伸フィルム)を長さ4cmおよび幅4cmに切り出し、測定試料とした。当該測定試料について、Axometrics社製、製品名「Axoscan」を用いて面内位相差および厚み方向位相差を測定した。測定波長は550nm、測定温度は23℃であった。
(2)ヘイズ
上記(1)と同様の測定試料について、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、HM-150型)を用いてヘイズを測定した。測定温度は23℃であった。
(3)MIT試験
MIT試験は、JIS P 8115に準拠して行った。具体的には、実施例および比較例で得られた表面保護フィルム用基材(二軸延伸フィルム)を長さ15cmおよび幅1.5cmに切り出し、測定試料とした。測定試料をMIT耐折疲労試験機BE-202型(テスター産業(株)製)に取り付け(荷重1.0kgf、クランプのR:0.38mm)、試験速度90cpmおよび折り曲げ角度90°で2000回を上限として繰り返し折り曲げを行い、測定試料が破断した時の折り曲げ回数を試験値とした。
(4)虹ムラ
実施例および比較例で得られた表面保護フィルム用基材(二軸延伸フィルム)を、クロスニコル状態の2枚の偏光板の間に配置した。その際、表面保護フィルム用基材の長さ方向と一方の偏光板の透過軸方向とが平行となるように表面保護フィルム用基材を配置した。その状態で下側偏光板の下側から蛍光灯の光を照射し、虹ムラの有無を目視により観察した。以下の基準で評価した。
○:虹ムラは認められなかった
△:虹ムラがわずかに認められた
×:虹ムラが顕著に認められた
(5)可撓性または耐折り曲げ性
表面保護フィルム用基材(二軸延伸フィルム)について180°折り曲げ試験を100回繰り返し、破断の有無を確認した。以下の基準で評価した。
○:破断は認められなかった
×:破断が認められた
【0059】
<実施例1>
1-1.ポリマーアロイの調製
原料として下記を用いた。
FDPM:9,9-ビス(2-メトキシカルボニルエチル)フルオレン[9,9-ビス(2-カルボキシエチル)フルオレン(またはフルオレン-9,9-ジプロピオン酸)のジメチルエステル]、特開2005-89422号公報の実施例1記載のアクリル酸t-ブチルをアクリル酸メチル[37.9g(0.44モル)]に変更したこと以外は同様にして合成したもの
BPEF:9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製
EG:エチレングリコール
PC:ビスフェノールA型ポリカ-ボネート樹脂、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユーピロンH-4000」
【0060】
FDPM 1.00モル、BPEF 0.80モル、EG 2.20モルに、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10-4モルおよび酢酸カルシウム・1水和物8×10-4モルを加え、撹拌しながら徐々に加熱溶融した。230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10-4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで、徐々に昇温、減圧しながらEGを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、フルオレン環含有ポリエステルのペレットを調製した。得られたペレットをH-NMRにより分析したところ、フルオレン環含有ポリエステルに導入されたジカルボン酸成分の100モル%がFDPM由来であり、導入されたジオール成分の80モル%がBPEF由来、20モル%がEG由来であった。得られたフルオレン環含有ポリエステルのガラス転移温度Tgは126℃、重量平均分子量Mwは43600であった。
【0061】
得られたフルオレン環含有ポリエステルとPCとを20/80(重量比)で二軸混練機で混練し、ポリマーアロイのペレットを作製した。
【0062】
1-2.ポリマーアロイフィルムの作製
得られたポリマーアロイを80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(いすず化工機社製、スクリュー径25mm、シリンダー設定温度:255℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:255℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み160μmのポリマーアロイフィルムを作製した。
【0063】
1-3.表面保護フィルム用基材の作製
上記で得られたポリマーアロイフィルムを、長さ方向および幅方向にそれぞれ2倍に同時二軸延伸した。延伸温度は[Tg+20℃](すなわち、146℃)、延伸速度は長さ方向および幅方向ともに1.4%/秒であった。このようにして、表面保護フィルム用基材(厚み40μm)を得た。得られた表面保護フィルム用基材のRe(550)は8nmであり、Rth(550)は80nmであり、ヘイズは0.3%であり、MIT試験値は上限の2000回を超えるものであった。得られた表面保護フィルム用基材を上記(4)および(5)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0064】
<実施例2>
延伸速度を長さ方向および幅方向ともに3.1%/秒としたこと以外は実施例1と同様にして表面保護フィルム用基材を得た。得られた表面保護フィルム用基材のRe(550)は10nmであり、Rth(550)は81nmであり、ヘイズは0.2%であり、MIT試験値は上限の2000回を超えるものであった。得られた表面保護フィルム用基材を上記(4)および(5)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0065】
<実施例3>
延伸速度を長さ方向および幅方向ともに6.5%/秒としたこと以外は実施例1と同様にして表面保護フィルム用基材を得た。得られた表面保護フィルム用基材のRe(550)は20nmであり、Rth(550)は85nmであり、ヘイズは0.3%であり、MIT試験値は上限の2000回を超えるものであった。得られた表面保護フィルム用基材を上記(4)および(5)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0066】
<実施例4>
延伸速度を長さ方向および幅方向ともに10%/秒としたこと以外は実施例1と同様にして表面保護フィルム用基材を得た。得られた表面保護フィルム用基材のRe(550)は30nmであり、Rth(550)は91nmであり、ヘイズは0.2%であり、MIT試験値は上限の2000回を超えるものであった。得られた表面保護フィルム用基材を上記(4)および(5)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0067】
<比較例1>
ポリマーアロイフィルムの代わりに市販のノルボルネン系樹脂フィルム(日本ゼオン社製、商品名「ゼオノア」、Tg:150℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして表面保護フィルム用基材を得た。得られた表面保護フィルム用基材のRe(550)は2nmであり、Rth(550)は8nmであり、ヘイズは0.1%であり、MIT試験値は150回であった。得られた表面保護フィルム用基材を上記(4)および(5)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0068】
<比較例2>
ポリマーアロイフィルムの代わりに超高位相差ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製、商品名「ダイアホイル」、Tg:81℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして表面保護フィルム用基材を得た。得られた表面保護フィルム用基材のRe(550)は4500nmであり、Rth(550)は6000nmであり、ヘイズは1.3%であり、MIT試験値は上限の2000回を超えるものであった。得られた表面保護フィルム用基材を上記(4)および(5)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
<評価>
表1から明らかなように、本発明の実施例の表面保護フィルム用基材は、虹ムラが防止され、かつ、優れた耐折り曲げ性(または可撓性)を有することがわかる。これは、特定のポリマーアロイを含むフィルムを所定値以下の延伸速度で延伸することにより実現され得ると推察される。さらに、実施例1~4を比較すると明らかなように、延伸速度を小さくするほど優れた特性(小さい面内位相差)が得られることがわかる。なお、光漏れおよび着色についても虹ムラと同様の結果が得られることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の表面保護フィルム用基材は、表面保護フィルムに好適に用いられる。本発明の表面保護フィルムは、光学フィルム(最終的には、画像表示装置)が実際に使用されるまでの間、当該光学フィルムを保護するために用いられる。本発明の表面保護フィルム用基材および表面保護フィルムを用いることにより、画像表示装置の光学検査の精度を顕著に向上させることができる。