(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】砂防堰堤の計画支援装置、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G09B 29/00 20060101AFI20221213BHJP
E02B 7/02 20060101ALI20221213BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G09B29/00 F
E02B7/02 B
G09B29/10
(21)【出願番号】P 2018160880
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100119987
【氏名又は名称】伊坪 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100196829
【氏名又は名称】中澤 言一
(72)【発明者】
【氏名】板野 友和
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-272173(JP,A)
【文献】特開2013-210600(JP,A)
【文献】特開2003-296760(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0097826(KR,A)
【文献】砂防基本計画策定指針(土石流・流木対策編)解説,国土技術政策総合研究所資料,2016年04月,No. 904,40-51頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 29/00-29/14
E02B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
所定エリア内の標高を示す数値標高データと砂防堰堤を設置するための設置条件に関する設置条件データとを記憶する記憶部と、
砂防堰堤を設置する位置の候補を示す
、複数の設置候補位置に関する情報を取得する取得部と、
前記複数の設置候補位置のそれぞれについて、当該設置候補位置と前記数値標高データとに基づいて、前記砂防堰堤による堆積物の推定堆砂域を算出する算出部と、
前記複数の設置候補位置のそれぞれについて、前記推定堆砂域が前記設置条件を満たすか否かを判定し、前記設置条件を満たすと判定された前記設置候補位置のうち最大の計画捕捉量を有する設置候補位置を設置位置として判定する判定部と、
前記設置位置を前記表示部に表示する表示処理部と、
を備えることを特徴とする砂防堰堤の計画支援装置。
【請求項2】
前記設置候補位置と、前記設置候補位置から最低河床線に沿った上流の地点の位置との第1勾配を取得し、
前記第1勾配に所定割合を乗算した第2勾配を取得し、
前記設置候補位置に設置された前記砂防堰堤の所定高さの位置からの前記第2勾配の平面を算出し、
前記数値標高データに基づく地表面と算出された前記平面とに基づいて、前記砂防堰堤による堆積物の前記推定堆砂域を算出する、算出部を更に備える、請求項1に記載の砂防堰堤の計画支援装置。
【請求項3】
前記取得部は、
ユーザによって入力された前記最低河床線に関する情報を取得し、
前記最低河床線の最も下流側の地点を、最初の前記設置候補位置とし、
最初の設置候補位置から前記最低河床線上の上流側に向かって所定距離ごとに離れた地点を、それぞれ前記設置候補位置と
する、請求項2に記載の砂防堰堤の計画支援装置。
【請求項4】
前記設置条件データは、前記所定エリア内の
保護地物の形状を示す形状データを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の砂防堰堤の計画支援装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記推定堆砂域を示す位置データと、前記設置条件データに含まれる各形状の位置データとに基づいて、前記推定堆砂域が前記各形状の少なくとも一部を含まないという前記設置条件を満たすか否かを判定する、請求項4に記載の砂防堰堤の計画支援装置。
【請求項6】
記憶部及び表示部を備え、砂防堰堤の計画を支援するためのコンピュータを制御する制御プログラムであって、
所定エリア内の標高を示す数値標高データと砂防堰堤を設置するための設置条件に関する設置条件データと
を前記記憶部に記憶し、
砂防堰堤を設置する位置の候補を示す
、複数の設置候補位置に関する情報を取得し、
前記複数の設置候補位置のそれぞれについて、当該設置候補位置と前記数値標高データとに基づいて、前記砂防堰堤による堆積物の推定堆砂域を算出し、
前記複数の設置候補位置のそれぞれについて、前記推定堆砂域が前記設置条件を満たすか否かを判定し、前記設置条件を満たすと判定された前記設置候補位置のうち最大の計画捕捉量を有する設置候補位置を設置位置として判定し、
前記設置位置を前記表示部に表示する、
ことを前記コンピュータに実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂防堰堤の計画支援装置、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
砂防堰堤は、土石流等が発生した際に上流から流れ出る土砂及び流木等を受け止め、砂防堰堤よりも下流に流れる水及び土砂等の量を調節するための施設である。砂防堰堤は、当該砂防堰堤よりも上流側に堆積した土砂及び流木等によって上流側の川の勾配を緩やかにすることで、川底及び河岸が削られることを防止し、且つ、土石流の破壊力を低減させることを可能とする。
【0003】
砂防堰堤の設置を計画する場合、計画者は、砂防堰堤の設置を検討する検討範囲を設定し、「砂防基本計画策定指針(土石流・流木対策編)解説」等に基づく計画捕捉量及び計画発生抑制量等に関する条件を満たす位置を調査する。例えば、特許文献1には、数値標高データを記憶するGIS(Geographic Information System)が砂防堰堤を設置した場合の堆砂域をシミュレーションする技術について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のGIS等の計画支援装置では、砂防堰堤を設置した場合の堆砂域の結果が、調査者等のユーザに提示されるだけであった。このため、計画支援装置のユーザは、砂防堰堤を設置するための設置条件(例えば、堆砂域が防災施設を含まない。)が考慮された砂防堰堤の設置位置を決定するためには、各種の地図情報を目視で参照して判断する必要があった。
【0006】
ユーザが目視等で各種の設置条件を判断する場合、砂防堰堤の設置位置の決定までに膨大な作業時間が発生するだけでなく、ユーザの作業ミス等により誤った結果が提示される場合があった。
【0007】
本発明は、このような課題を解決すべくなされたものであり、砂防堰堤の計画を策定する時間を低減させるとともに当該計画の確度を向上させることが可能な砂防堰堤の計画支援装置、及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る砂防堰堤の計画支援装置は、表示部と、所定エリア内の標高を示す数値標高データと砂防堰堤を設置するための設置条件に関する設置条件データとを記憶する記憶部と、砂防堰堤を設置する位置の候補を示す設置候補位置に関する情報を取得する取得部と、砂防堰堤の設置候補位置と数値標高データとに基づく砂防堰堤による堆積物の推定堆砂域が設置条件を満たすか否かを判定する判定部と、設置条件を満たすと判定された砂防堰堤の設置候補位置を表示部に表示する表示処理部と、を備える。
【0009】
また、本発明に係る砂防堰堤の計画支援装置において、設置候補位置と、設置候補位置から最低河床線に沿った上流の地点の位置との第1勾配を取得し、第1勾配に所定割合を乗算した第2勾配を取得し、設置候補位置に設置された砂防堰堤の所定高さの位置からの第2勾配の平面を算出し、数値標高データに基づく地表面と算出された平面とに基づいて、砂防堰堤による堆積物の推定堆砂域を算出する、算出部を更に備えることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る砂防堰堤の計画支援装置において、取得部は、ユーザによって入力された最低河床線に関する情報を取得し、最低河床線の最も下流側の地点を、最初の設置候補位置とし、最初の設置候補位置から最低河床線上の上流側に向かって所定距離ごとに離れた地点を、それぞれ設置候補位置とし、算出部は、複数の設置候補位置のそれぞれについて、推定堆砂域を算出し、判定部は、複数の設置候補位置のそれぞれについて、推定堆砂域が設置条件を満たすか否かを判定し、設置条件を満たすと判定された設置候補位置が複数ある場合は、最大の計画捕捉量を有する設置候補位置を設置位置として判定し、表示処理部は、判定された設置位置を表示部に表示することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る砂防堰堤の計画支援装置において、設置条件データは、所定エリア内の、防災施設の敷地及び私有地等の敷地形状を示す形状データ、交通施設等の平面形状を示す形状データ、並びに、公園、環境保全地域及び森林地域の形状を示す形状データを含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る砂防堰堤の計画支援装置において、判定部は、推定堆砂域を示す位置データと、設置条件データに含まれる各形状の位置データとに基づいて、推定堆砂域が各形状の少なくとも一部を含まないという設置条件を満たすか否かを判定することが好ましい。
【0013】
本発明に係る制御プログラムは、記憶部及び表示部を備え、砂防堰堤の計画を支援するためのコンピュータを制御する制御プログラムであって、所定エリア内の標高を示す数値標高データと砂防堰堤を設置するための設置条件に関する設置条件データと記憶部に記憶し、砂防堰堤を設置する位置の候補を示す設置候補位置に関する情報を取得し、砂防堰堤の設置候補位置と数値標高データとに基づく砂防堰堤による堆積物の推定堆砂域が設置条件を満たすか否かを判定し、設置条件を満たすと判定された砂防堰堤の設置候補位置を表示部に表示する、ことをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る計画支援装置、及び制御プログラムによって、砂防堰堤の計画を策定する時間を低減させるとともに当該計画の確度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】計画支援装置1の概略構成の一例を示す図である。
【
図2】(a)及び(b)は、表示部13に表示される画面の一例を示す図である。
【
図3】(a)及び(b)は、表示部13に表示される画面の一例を示す図である。
【
図4】(a)及び(b)は、推定堆砂域の一例を説明するための模式図である。
【
図5】(a)及び(b)は、表示部13に表示される画面の一例を示す図である。
【
図6】表示部13に表示される画面の一例を示す図である。
【
図7】(a)及び(b)は、計画捕捉量の算出方法の一例を説明するための模式図である。
【
図8】表示部13に表示される画面の一例を示す図である。
【
図9】(a)は、数値標高データのデータ構造の一例を説明するための模式図であり、(b)は、設置条件データのデータ構造の一例を示す図である。
【
図10】計画支援処理の動作フローの一例を示す図である。
【
図11】推定堆砂域算出処理の動作フローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0017】
(計画支援装置1)
図1は、計画支援装置1の概略構成の一例を示す図である。
【0018】
計画支援装置1は、例えば、砂防堰堤の計画を支援するためのパーソナル・コンピュータ(PC,Personal Computer)である。計画支援装置1は、サーバ装置でもよい。計画支援装置1は、多機能携帯電話(所謂「スマートフォン」)、携帯電話(所謂「フィーチャーフォン」)、携帯情報端末(Personal Digital Assistant,PDA)、タブレット端末又はタブレットPC等でもよい。また、計画支援装置1は、携帯ゲーム機、携帯音楽プレイヤ又はノートPC等でもよい。
【0019】
計画支援装置1は、所定エリア内の標高を示す数値標高データと砂防堰堤を設置するための設置条件に関する設置条件データとを記憶し、砂防堰堤の設置候補位置と数値標高データとに基づく推定堆砂域が設置条件を満たすか否かを判定する機能を有する。また、計画支援装置1は、設置条件を満たすと判定された砂防堰堤の設置候補位置を表示部に表示する機能を有する。
【0020】
数値標高データは、例えば、DEM(Digital Elevation Model,数値標高モデル)データである。DEMデータには、2次元地図を区切った複数のメッシュのそれぞれの中心点に対応する標高値を示す数値データが含まれる。メッシュは、緯度及び経度に応じて区切られた、地図上の略正方形の区画である。例えば、メッシュは、1m単位の略正方形形状に地図を区切ることにより構成される区画である。メッシュを構成する区画の形状は、1m単位の略正方形形状に限らず、5m単位の略正方形形状、10m単位の略正方形形状、又は10mを超える単位の略正方形形状でもよい。
【0021】
また、数値標高データは、DTM(Digital Terrain Model,数値地形モデル)データでもよい。DTMデータは、例えば、DEMデータにおいて、建物及び樹木等の地物を取り除いた地表面の高さを表示するデータモデルであり、DEMデータの一種である。また、数値標高データは、TIN(triangulated irregular network,不規則三角形網)データでもよい。TINデータは、地図上の複数の地点のそれぞれについて、近傍の地点と線分で結ばれることにより形成された仮想的な不規則三角形の形状の区画に関するデータを含み、且つ、複数の地点のそれぞれに対応する標高値を示す数値データが含まれる。
【0022】
また、数値標高データは、標高・傾斜度メッシュデータでもよい。標高・傾斜度メッシュデータには、例えば、DEMデータの各メッシュにおける、標高値(平均値、最高値及び最低値)を示す数値データ、最大傾斜角度及び方角を示す数値データ、並びに最小傾斜角度・方角を示す数値データ等が含まれる。
【0023】
数値標高データは、地図上の所定エリアに対応したデータである。所定エリアは、例えば、流域ごとに区分されたエリア、地方(関東地方等)ごとに区分けされたエリア、都道府県ごとに区分けされたエリア、市区町村ごとに区分けされたエリアである。
【0024】
推定堆砂域は、砂防堰堤を設置した場合において土石流等が発生した際に当該砂防堰堤よりも上流側に堆積すると推定される土砂及び流木等の堆積領域を2次元地図平面上に投影したものである。推定堆積域は、例えば、「砂防基本計画策定指針(土石流・流木対策編)解説」等で規定される計画捕捉量に対応する2次元地図平面上の領域である。以下、砂防堰堤によって堆積される土砂及び流木等を「堆積物」と称する場合がある。
【0025】
砂防堰堤を設置するための設置条件は、例えば、当該砂防堰堤による堆積物の推定堆砂域が、防災施設の敷地及び私有地等の敷地の少なくとも一部を含まないという条件である。また、設置条件は、推定堆砂域が、高速道路、国道、又は鉄道の線路等の交通施設の少なくとも一部を含まないという条件でもよい。また、設置条件は、推定堆砂域が、「公園区域及び公園計画」により定められた国立・国定公園、「自然環境保全法」により基づく自然環境保全地域、及び、「土地利用基本計画」等で定める森林地域等、の少なくとも一部を含まないという条件でもよい。
【0026】
砂防堰堤を設置するための設置条件は、上記の条件に限定されない。例えば、設置条件は、推定堆砂域が、国、県、又は市区町村等によって開発の防止が定められた地域、防災上必要な空地、無線通信基地局等のインフラ施設等、の少なくとも一部を含まないという条件でもよい。以下、砂防堰堤による堆積物の推定堆砂域に含まれてはいけない地物(防災施設の敷地及び私有地等、交通施設、国立・国定公園、自然環境保全地域、森林地域、開発の防止が定められた地域、防災上必要な空地、無線通信基地局等のインフラ施設等)を、「保護地物」と称する場合がある。
【0027】
砂防堰堤を設置するための設置条件に関する設置条件データは、保護地物の形状を示す形状データである。設置条件データは、例えば、防災施設の敷地及び私有地等の敷地形状を示す形状データ、交通施設等の平面形状を示す形状データ、並びに、公園、環境保全地域及び森林地域の形状を示す形状データである。設置条件データは、保護地物の中心点又は代表点を示すポイントデータ(緯度及び経度データ)でもよい。
【0028】
計画支援装置1は、上述のような機能を実現するために、例えば、記憶部11、操作部12、表示部13及び処理部14を備える。
【0029】
記憶部11は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ装置、磁気テープ装置、磁気ディスク装置、又は光ディスク装置のうちの少なくとも一つを備える。記憶部11は、処理部14での処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、制御プログラム及びデータ等を記憶する。記憶部11に記憶されるドライバプログラムは、操作部12を制御する入力デバイスドライバプログラム、及び、表示部13を制御する出力デバイスドライバプログラム等である。記憶部11に記憶される制御プログラムは、砂防堰堤の計画支援処理を実行するためのアプリケーションプログラム等である。記憶部11に記憶される各種プログラムは、例えばCD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部11にインストールされてもよい。記憶部11に記憶されるデータは、数値標高データ、設置条件データ等である。また、記憶部11は、所定の処理に係る一時的なデータを一時的に記憶してもよい。
【0030】
操作部12は、例えば、キーボード、マウス、又は、タッチパネル等のポインティングデバイスである。ユーザは、操作部12を用いて、文字、数字及び記号、若しくは、表示部13の表示画面上の位置等を入力することができる。操作部12は、ユーザにより操作されると、その操作に対応する信号を発生する。そして、発生した信号は、ユーザの指示として、処理部14に供給される。
【0031】
表示部13は、液晶ディスプレイである。なお、表示部13は、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等でもよい。表示部13は、処理部14から供給された映像データに応じた映像や、画像データに応じた画像等を表示する。
【0032】
処理部14は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を備える。処理部14は、計画支援装置1の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。処理部14は、記憶部11に記憶されているプログラム及びユーザによる操作部12の操作に応じて入力された各種指示等に基づいて、各種情報処理を適切な手順で実行し、且つ、表示部13の動作を制御する。処理部14は、記憶部11に記憶されているオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム及び制御プログラムに基づいて各種情報処理を実行する。また、処理部14は、複数のプログラムを並列に実行することができる。
【0033】
処理部14は、少なくとも表示処理部141、取得部142、算出部143、及び判定部144を備える。これらの各部は、処理部14が備えるプロセッサで実行されるプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、これらの各部は、ファームウェアとして計画支援装置1に実装されてもよい。
【0034】
以下、
図2,3,5,6及び8を参照して、計画支援装置1の表示部13に表示される各種画面の一例について説明するとともに、
図4及び7を参照して、推定堆砂域の一例及び計画捕捉量の算出方法の一例について説明する。
【0035】
(地図画面200)
図2(a)は、計画支援装置1の表示部13に表示される地図画面200の一例を示す図である。
【0036】
地図画面200は、例えば、本実施形態における砂防堰堤の計画支援処理を実行するための制御プログラムが、ユーザによる操作部12の操作に応じて入力された開始指示に従って起動されたときに表示される。開始指示は、例えば、表示部13に表示された制御プログラムを示す起動アイコン等が、ユーザによる操作部12の操作に応じて指定された場合に入力される。
【0037】
図2(a)に示す地図画面200には、記憶部11に記憶された所定エリア内の数値標高データに基づく地図画像が含まれる。ユーザによる操作部12の操作に応じて、地図画面200上の複数の任意の地点が順次入力された場合、入力された複数の地点を順番に接続したベクトルデータが生成され、生成されたベクトルデータに基づく線分が地図画面上に重畳して表示される。ベクトルデータは、最初に入力された地点の緯度及び経度を示すデータと、2番目以降の各順番に入力された地点の緯度及び経度を示すデータと、最後に入力された地点の緯度及び経度を示すデータとを含む。
【0038】
図2(a)に示す例では、ユーザによって入力された複数の地点に基づくベクトルデータが生成され、生成されたベクトルデータによって示される最低河床線201が地図画面上に重畳して表示される。最低河床線は、例えば、渓流線又は谷線等である。最低河床線201を示すベクトルデータは、最初に入力された地点201a、2番目以降の各順番に入力された地点、及び、最後に入力された地点201b、のそれぞれの緯度及び経度を示すデータを含む。計画支援装置1は、最初に入力された地点201aを最低河床線201の下流側の地点であると認識し、最後に入力された地点201bを最低河床線201の上流側の地点であると認識する。
【0039】
(選択画面210)
図2(b)は、計画支援装置1の表示部13に表示される選択画面210の一例を示す図である。
【0040】
選択画面210は、ユーザが砂防堰堤の種別を入力するための画面であり、種別選択オブジェクト211及び設定オブジェクト212を含む。
【0041】
種別選択オブジェクト211は、砂防堰堤に係る複数の種別の何れかを選択するための操作オブジェクトである。
図2(b)に示す種別選択オブジェクト211には、複数のボタン型のオブジェクトと、複数のオブジェクトのそれぞれに対応する砂防堰堤の種別を示す文字情報(「透過型」、「不透過型」、及び「部分透過型」等)が含まれる。
【0042】
ユーザによる操作部12の操作に応じて入力された選択画面210上の入力位置が、種別選択オブジェクト211に含まれるボタン型のオブジェクトのいずれかの表示領域内である場合、入力位置に対応するボタン型のオブジェクトが、選択されたことを示す表示態様に変更される。また、ユーザによる操作部12の操作に応じて入力された選択画面210上の入力位置が、種別選択オブジェクト211に含まれる、砂防堰堤の種別を示す文字情報のいずれかの表示領域内である場合、入力位置に対応する文字情報のボタン型のオブジェクトが、選択されたことを示す表示態様に変更される。
【0043】
設定オブジェクト212は、砂防堰堤の種別の選択を決定するためのボタンオブジェクトである。設定オブジェクト212は、アイコン画像又はテキスト等でもよい。ユーザによる操作部12の操作に応じて入力された選択画面210上の入力位置が、設定オブジェクト212の表示領域内である場合、選択決定情報が計画支援装置1に入力される。選択決定情報には、選択されたボタン型のオブジェクトに対応する砂防堰堤の種別を示す種別データが含まれる。このように、ユーザが設定オブジェクト212を選択する操作を行った場合、ユーザによって選択された砂防堰堤の種別を示す種別データを含む選択決定情報が計画支援装置1に入力される。
【0044】
(地図画面300)
図3(a)は、計画支援装置1の表示部13に表示される地図画面300の一例を示す図である。
【0045】
図3(a)に示す地図画面300には、
図2(a)に示す地図画面200に、ユーザによって入力された検討範囲データによって示される検討範囲301が重畳されている画面である。例えば、ユーザによる操作部12の操作に応じて、地図画面300の複数の任意の地点が順次入力された場合、入力された複数の地点が順番に接続され且つ最後の地点が最初の地点に接続されたベクトルデータが検討範囲データとして生成される。そして、生成されたベクトルデータに基づく閉領域が検討範囲301として地図画面上に重畳して表示される。
【0046】
検討範囲データは、最低河床線201に基づいて自動的に生成されてもよい。例えば、最低河床線201を中心とし且つ最低河床線201と垂直な所定の幅(約400m等)を有する閉領域を検討範囲とする検討範囲データが自動的に算出されてもよい。
【0047】
(地図画面310)
図3(b)は、計画支援装置1の表示部13に表示される地図画面310の一例を示す図である。
【0048】
図3(b)に示す地図画面310は、
図3(a)に示す地図画面300に、最低河床線201上の複数の設置候補位置のマーク311(311a、311b、311c、311d、・・・)が重畳されている画面である。
【0049】
複数の設置候補位置は、最低河床線201上の緯度及び経度に対応し、隣接する設置候補位置同士の距離は、最低河床線201に沿った所定距離(例えば、100m)である。各設置候補位置には
図3(b)に示すマーク311(311a、311b、311c、311d、・・・)が表示される。
図3(b)に示す例では、マーク311aに対応する設置候補位置は、地点201aの位置である。
【0050】
例えば、検討範囲301が表示されると、計画支援装置1によって、複数の設置候補位置が、最低河床線201の下流側から上流側に向かって所定距離ごとに自動的に算出される。また、設置候補位置を算出するための所定のメニューをユーザが選択することで、計画支援装置1によって複数の設置候補位置が自動的に算出されてもよい。そして、地図画面310において、算出された複数の設置候補位置のそれぞれにマーク311が表示される。
【0051】
(推定堆砂域)
複数の設置候補位置が算出されると、計画支援装置1によって推定堆砂域が算出される。以下、
図4(a)及び(b)を参照して、推定堆砂域の一例について説明する。
【0052】
図4(a)は、マーク311に対応する設置候補位置に砂防堰堤401が設置された場合における推定堆砂域406の一例を説明するための斜視
図400である。
図4(b)は、マーク311に対応する設置候補位置に砂防堰堤401が設置された場合における最低河床線201方向の鉛直断面図である。
【0053】
図4(a)及び(b)に示す砂防堰堤401は、選択画面210においてユーザによって選択された「不透過型」の砂防堰堤である。「砂防基本計画策定指針(土石流・流木対策編)解説」等で規定される計画捕捉量は、砂防堰堤401の最高点から伸び且つ計画時堆砂勾配を有する平面403と、砂防堰堤401の最高点から伸び且つ平常時堆砂勾配を有する平面404と、地表面とで囲まれる立体形状405の体積(m
3)である。
【0054】
地表面は、記憶部11に記憶される数値標高データに基づいて算出される。例えば、数値標高データがDEMデータである場合、複数の中心点の緯度、経度及び標高値に基づいて、複数の中心点のそれぞれが3次元仮想空間内に配置され、隣接する3つの中心点によって形成される三角形のポリゴンが隙間なく複数生成されることで、地表面が算出される。また、中心点に基づいて、各メッシュの頂点の標高値が推定され、各メッシュの頂点の緯度、経度及び標高値に基づいて、各頂点が3次元仮想空間内に配置され、隣接する3つの頂点によって形成される三角形のポリゴンが隙間なく複数生成されることで、地表面が算出されてもよい。
【0055】
計画時堆砂勾配は、現河床勾配402に所定割合(例えば、0.5よりも大きい割合)を乗算した勾配であり、平常時堆砂勾配は、現河床勾配402に所定割合(例えば、0.5)を乗算した勾配である。現河床勾配402は、マーク311に対応する設置候補位置の標高(H0m)と、当該設置候補位置から最低河床線201に沿って所定の距離L0(例えば200m)上流の地点の標高(H1m)との勾配((H1-H0)/L0)である。
【0056】
推定堆砂域406は、砂防堰堤の上流側且つ地表面との最初の交線で囲まれた平面403の区域を2次元地図平面上に投影したものである。
【0057】
(地図画面500)
図5(a)は、計画支援装置1の表示部13に表示される地図画面500の一例を示す図である。
【0058】
図5(a)に示す地図画面500は、
図3(b)に示す地図画面310に、推定堆砂域501(501a、501b、501c、501d、・・・)が重畳されている画面である。地図画面500に検討範囲301が含まれてもよい。また、地図画面500には、4つの推定堆砂域501a、501b、501c、501dが含まれるが、全ての設置候補位置に対する推定堆砂域が含まれてもよい。以下、4つの推定堆砂域501a、501b、501c、501dを例にして説明する。
【0059】
(地図画面510)
図5(b)は、計画支援装置1の表示部13に表示される地図画面510の一例を示す図である。
【0060】
図5(b)に示す地図画面510は、
図5(a)に示す地図画面500に、保護地物の形状511が重畳されている画面である。例えば、計画支援装置1が記憶する保護地物のうち、保護地物の形状511の少なくとも一部が検討範囲301と重畳する保護地物が、計画支援装置1によって自動的に選択される。そして、選択された保護地物の形状511が計画支援装置1によって表示される。保護地物の形状511の表示は、保護地物を表示させるための所定のメニューをユーザが選択することで実行されてもよい。
【0061】
(地図画面600)
図6は、計画支援装置1の表示部13に表示される地図画面600の一例を示す図である。
【0062】
図6に示す地図画面600は、
図5(b)に示す地図画面510において、保護地物の形状511と重畳する推定堆砂域501a及び501bの表示態様が変更されている画面である。このように、保護地物の少なくとも一部を含む推定堆砂域501a及び501bが自動的に検出され、且つ、全ての保護地物の少なくとも一部も含まない推定堆砂域501c及び501dが自動的に検出される。これにより、計画支援装置1は、砂防堰堤を設置するための設置条件を満たす推定堆砂域501c及び501dを、ユーザの目視等の作業を行わずに自動的に検出することが可能となる。
【0063】
(計画捕捉量の算出)
そして、設置条件を満たす推定堆砂域501c及び501dのうち、計画捕捉量が最大の推定堆砂域に対応する設置候補位置が、砂防堰堤の設置位置として決定する。以下、
図7(a)及び(b)を参照して、計画捕捉量の算出方法の一例について説明する。
【0064】
図7(a)は、
図4(a)と同様の砂防堰堤401が設置された場合における計画捕捉量の算出方法の一例を説明するための斜視
図700である。
図7(b)は、
図4(b)と同様の砂防堰堤401が設置された場合における最低河床線201方向の鉛直断面図である。
【0065】
「砂防基本計画策定指針(土石流・流木対策編)解説」等で規定される計画捕捉量は、砂防堰堤401の最高点から伸び且つ計画時堆砂勾配を有する平面403と、砂防堰堤401の最高点から伸び且つ平常時堆砂勾配を有する平面404と、地表面と、で囲まれる立体形状405の体積(m3)である。
【0066】
計画支援装置1は、例えば、立体形状405の体積を平均断面法によって算出する。例えば、
図7(a)及び(b)に示す分割面S1、分割面S2及び分割面S3は、最低河床線201又は最低河床線201を2次元地図平面上に投影した線分と垂直な面である。立体形状405のうちの分割面S1及び分割面S2で囲まれる分割形状V1の体積は、「分割面S1の面積と分割面S2の面積の和」に「分割面S1及び分割面S2の間の距離L1」を乗算した値を、「2」で除算した値である。同様に、立体形状405のうちの分割面S2及び分割面S3で囲まれる分割形状V2の体積は、「分割面S2の面積と分割面S3の面積の和」に「分割面S2及び分割面S3の間の距離L2」を乗算した値を、「2」で除算した値である。
【0067】
計画支援装置1は、立体形状405を、最低河床線201又は最低河床線201を2次元地図平面上に投影した線分と垂直な複数の面で分割し、隣接する面の間の分割形状の体積を上述の算出方法で算出し、全ての分割形状の体積の和を立体形状405の体積として算出する。
【0068】
(地図画面800)
図8は、計画支援装置1の表示部13に表示される地図画面800の一例を示す図である。
【0069】
図8に示す地図画面800は、
図6に示す地図画面600において、砂防堰堤を設置するための設置条件を満たす推定堆砂域501c及び501dのうち、最大の計画捕捉量を有する推定堆砂域501d及び設置候補位置のマーク311dが明瞭に表示される画面である。このように、地図画面800において、設置条件を満たす推定堆砂域と設置条件を満たさない推定堆砂域とが識別できるように、設置条件を満たす推定堆砂域と設置条件を満たさない推定堆砂域とは、それぞれ異なる表示態様で表示される。なお、地図画面800において推定堆砂域501d以外の推定堆砂域の表示が行わなくてもよい。
【0070】
以下、
図9を参照して、記憶部11に記憶される各種データのデータ構造の一例を説明する。
【0071】
(数値標高データ)
図9(a)は、数値標高データのデータ構造の一例ある。
【0072】
図9(a)に示す数値標高データは、DEMデータの一例である。DEMデータには、2次元地図を区切った複数のメッシュのそれぞれの中心点に対応する標高値を示す数値データが含まれる。
図9(a)に示されるメッシュは、5m単位の略正方形形状に地図を区切ることにより構成される区画である。
【0073】
数値標高データには、少なくとも各メッシュを一意に識別するためのメッシュID(Identification)と、メッシュの形状を規定する4つの位置データ(緯度及び経度を示す数値データ)と、メッシュの中心点の標高値を示す数値データとが含まれる。
【0074】
(設置条件データ)
図9(b)は、設置条件データのデータ構造の一例である。
【0075】
設置条件データには、各保護地物について、地物ID、ベクトルデータ、種別等が、互いに関連付けて記憶されている。
【0076】
地物IDは、各保護地物を一意に識別するための識別情報である。
【0077】
ベクトルデータは、保護地物の外形形状(閉領域)を示す複数の位置データ(緯度及び経度を示す数値データ)である。
【0078】
種別は、保護地物の種別を示すデータ(ID又は文字情報等)であり、例えば、防災施設を示すデータ、私有地を示すデータ、交通施設を示すデータ、公園を示すデータ、自然環境保全地域を示すデータ、森林地域を示すデータ等を含む。また、種別は、開発の防止が定められた地域を示すデータ、防災上必要な空地を示すデータ、無線通信基地局等のインフラ施設を示すデータ等を含んでもよい。
【0079】
(計画支援処理)
図10は、計画支援装置1の表示処理部141、取得部142、算出部143、及び判定部144による計画支援処理の動作フローの一例を示す図である。この計画支援処理は、予め記憶部11に記憶されている制御プログラムに基づいて、主に処理部14により、計画支援装置1の各要素と協働して実行される。
【0080】
計画支援処理が開始される前に、ユーザによる操作部12の操作に応じて、表示処理部141は、記憶部11から数値標高データを読み出し、地図画面200を表示部13に表示しているものとする。例えば、表示処理部141は、読み出した数値標高データに含まれる標高値を示す数値データに基づいて、略同一の標高値を有する中心点を直線又は曲線で結ぶことで等高線を表示する。
【0081】
まず、ユーザによる操作部12の操作に応じて、地図画面200上に複数の任意の地点が順次入力された場合、取得部142は、入力された複数の地点を順番に接続したベクトルデータを生成し、生成したベクトルデータを最低河床線データとして取得する(ステップS101)。表示処理部141は、生成された最低河床線データに基づいて最低河床線201を地図画面200上に重畳して表示する。なお、表示処理部141は、最低河床線データを記憶部11に記憶してもよい。この場合、表示処理部141は、ユーザによる操作部12の操作に応じて、記憶部11に記憶された最低河床線データを読み出して、読み出した最低河床線データに基づいて最低河床線201を地図画面200上に重畳して表示する。なお、最低河床線データは、設置候補位置に関する情報の一例である。
【0082】
次に、ユーザが設定オブジェクト212を選択する操作を行った場合、取得部142は、ユーザによって選択された砂防堰堤の種別を示す種別データを含む選択決定情報を取得する(ステップS102)。
【0083】
次に、ユーザによる操作部12の操作に応じて地図画面200の複数の任意の地点が順次入力された場合、取得部142は、入力された複数の地点が順番に接続され且つ最後の地点が最初の地点に接続されたベクトルデータを検討範囲データとして取得する(ステップS103)。表示処理部141は、生成された検討範囲データに基づいて検討範囲301を地図画面300上に重畳して表示する。
【0084】
次に、取得部142は、砂防堰堤の設置候補の位置を示す設置候補位置データを取得する(ステップS104)。例えば、取得部142は、最低河床線データに基づいて、最初に入力された地点201aを、1番目の設置候補位置として設定する。次に、取得部142は、1番目の設置候補位置から最低河床線201上の上流側に向かって所定距離離れた地点を、2番目の設置候補位置として設定する。以降、同様に、取得部142は、n番目の設置候補位置から最低河床線201上の上流側に向かって所定距離離れた地点を、(n+1)番目の設置候補位置として設定する。取得部142は、このようにして設定された全ての設置候補位置の位置(緯度及び経度)を示すデータを設置候補位置データとして取得する。なお、複数の設置候補位置を示す設置候補位置データは、ユーザによる操作部12の操作に応じて入力された地図画面310上の任意の地点を示すデータでもよい。
【0085】
算出部143は、取得した設置候補位置データのうちの何れか一つの設置候補位置データについて、推定堆砂域算出処理を実行する(ステップS105)。推定堆砂域算出処理の詳細は後述する。例えば、ステップS106~S109は、取得した設置候補位置データのうち、下流から順番に一つの設置候補位置データについて実行される。
【0086】
算出部143は、ステップS105において算出された推定堆砂域における計画捕捉量を算出する(ステップS106)。算出部143は、砂防堰堤401の最高点から伸び且つ計画時堆砂勾配を有する平面403と、砂防堰堤401の最高点から伸び且つ平常時堆砂勾配を有する平面404と、地表面と、で囲まれる立体形状405を、最低河床線201と垂直な複数の分割面で分割する。砂防堰堤401の最高点は、例えば、設置候補位置に示される緯度及び経度を有し、且つ、設置候補位置の直近の標高データに、ユーザによって入力された砂防堰堤401の高さを加算した値(最高点標高値)を有している。算出部143は、砂防堰堤401の最高点から、最低河床線201に沿って、例えば1mごとに最低河床線201と垂直な複数の分割面を設定する。算出部143は、立体形状405を複数の分割面で分割した各分割形状の体積の和を立体形状の405の体積(計画捕捉量)として算出する。なお、各分割面の間の距離は1mであるため、各分割形状の体積(m3)は、各分割形状を形成した2つの分割面の面積の和の1/2である。
【0087】
次に、判定部144は、ステップS105において算出された推定堆砂域について、砂防堰堤を設置するための設置条件が満たされているか否かを判定する(ステップS107)。判定部144は、記憶部11に記憶された設定条件データを読み出し、設定条件データのベクトルデータと検討範囲データとに基づいて、検討範囲に少なくとも一部でも含まれる保護地物の地物IDを設定条件データから抽出する。次に、判定部144は、抽出された地物IDに関連付けられたベクトルデータと推定堆砂域の形状を示すベクトルデータとに基づいて、保護地物の形状の少なくとも一部が推定堆砂域に含まれているか否かを判定する。判定部144は、推定堆砂域に、抽出された全ての保護地物の形状の少なくとも一部が含まれていない場合、砂防堰堤を設置するための設置条件が満たされていると判定する。
【0088】
設置条件が満たされていないと判定された場合(ステップS107-No)、判定部144は、ステップS110に処理を進める。
【0089】
設置条件が満たされていると判定された場合(ステップS107-Yes)、判定部144は、ステップS106において算出された計画捕捉量が、他の設置候補位置データに対する計画捕捉量と比べて最大の計画捕捉量であるか否かを判定する(ステップS108)。
【0090】
ステップS106において算出された計画捕捉量が、他の設置候補位置データに対する計画捕捉量と比べて最大の計画捕捉量でないと判定された場合(ステップS108-No)、判定部144は、ステップS110に処理を進める。
【0091】
ステップS106において算出された計画捕捉量が、他の設置候補位置データに対する計画捕捉量と比べて最大の計画捕捉量であると判定された場合(ステップS108-Yes)、判定部144は、設置候補位置データを設置位置データとして記憶部11に記憶する(ステップS109)。
【0092】
次に、判定部144は、全ての設置候補位置データについてステップS105~S109の処理が実行されたか否かを判定する(ステップS110)。
【0093】
ステップS105~S109の処理が実行されていない設置候補位置データがある場合(ステップS110-No)、判定部144は、ステップS105に処理を戻す。
【0094】
全ての設置候補位置データについてステップS105~S109の処理が実行されたと判定された場合(ステップS110-Yes)、表示処理部141は、記憶部11に記憶された設置位置データに対応する位置にマーク311dを表示しするとともに、マーク311dに対応する推定堆砂域501dを表示し(ステップS111)、計画支援処理を終了する。
【0095】
表示処理部141は、判定部144による上述の各種判定処理が実行されるたびに地図画面600又は800を更新して、更新した地図画面600又は800を表示部13に表示してもよい。
【0096】
(推定堆砂域算出処理)
図11は、計画支援装置1の算出部143による推定堆砂域算出処理の動作フローの一例を示す図である。
図11に示される推定堆砂域算出処理は、
図10のステップS105において実行される。
【0097】
算出部143は、現河床勾配を示す数値データを取得する(ステップS201)。例えば、現河床勾配を示す数値データは、ユーザによる操作部12の操作に応じて入力された数値データである。現河床勾配を示す数値データは、算出部143が、記憶部11に記憶された数値標高データから、設置候補位置の標高値と、当該設置候補位置から最低河床線201に沿って200m上流の地点の標高値とを抽出し、抽出された設置候補位置の標高値と200m上流の地点の標高値とに基づいて算出した値を示す数値データでもよい。
【0098】
次に、算出部143は、計画堆砂勾配を示す数値データを取得する(ステップS202)。例えば、計画堆砂勾配を示す数値データは、ステップS201で取得された現河床勾配を示す数値データに、ユーザによる操作部12の操作に応じて入力された所定割合を乗算した勾配を示す数値データである。
【0099】
そして、算出部143は、推定堆砂域を算出する(ステップS203)。例えば、算出部143は、設置候補位置に設置した場合の砂防堰堤401の最高点から伸び且つ計画時堆砂勾配を有する平面403が最初に地表面と交わる交線と、最高点における最低河床線201との垂直な線とで形成される領域の外形形状を算出する。そして、算出部143は、算出された領域の外形形状を2次元地図平面に投影した推定堆砂域を算出する。
【0100】
算出部143は、ステップS203を実行すると、推定堆砂域算出処理を終了する。
【0101】
以上、詳述したとおり、本実施形態の計画支援装置1において、砂防堰堤を設置するための設置条件を満たす砂防堰堤の設置位置が自動的にユーザに提示される。このような計画支援装置1によって、砂防堰堤の計画を策定する時間が低減し且つ当該計画の確度を向上させることが可能となる。
【0102】
(変形例1)
なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではない。例えば、算出部143は、選択画面210によって、「透過型」又は「部分透過型」が選択された場合、それぞれの種別に対応する計画捕捉量の算出手法に基づいて計画捕捉量を算出する。
【0103】
(変形例2)
また、判定部144は、推定堆砂域501が少なくとも一つの保護地物の形状の全てを含む場合に限り、砂防堰堤を設置するための設置条件が満たされていないと判定してもよい。この場合、推定堆砂域501が保護地物の形状の一部のみを含む場合、砂防堰堤を設置するための設置条件が満たされていると判定する。
【0104】
この場合、表示処理部141は、推定堆砂域501が保護地物の形状を全く含まない場合における推定堆砂域501の表示態様と、推定堆砂域501が保護地物の形状の一部のみを含む場合における推定堆砂域501の表示態様を異なるように表示してもよい。
【0105】
当業者は、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換、及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0106】
1 計画支援装置
11 記憶部
12 操作部
13 表示部
14 処理部
141 表示処理部
142 取得部
143 算出部
144 判定部