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特許7193285架橋ポリオレフィン樹脂発泡体及び成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】架橋ポリオレフィン樹脂発泡体及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20221213BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20221213BHJP
   C08L 23/02 20060101ALI20221213BHJP
   C08K 5/25 20060101ALI20221213BHJP
   C08K 7/24 20060101ALI20221213BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C08J9/04 103
C08J9/04 CES
C08J7/00 305
C08L23/02
C08K5/25
C08K7/24
B60R13/02 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018180745
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020050751
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100154391
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康義
(72)【発明者】
【氏名】金澤 太
(72)【発明者】
【氏名】宇野 拓明
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-007145(JP,A)
【文献】特開2018-053226(JP,A)
【文献】特開2007-215818(JP,A)
【文献】特開2015-151481(JP,A)
【文献】特開2014-195569(JP,A)
【文献】特開2000-006730(JP,A)
【文献】特開2014-000292(JP,A)
【文献】特開2012-115737(JP,A)
【文献】特開2016-113722(JP,A)
【文献】特開平10-060145(JP,A)
【文献】セピオライトの特性,日本,楠本化成株式会社,2022年05月23日,https://www.kusumoto.co.jp/product/coating-wt/filler/sepiolite/about-sepiolite.html,[令和4年5月23日検索],インターネット
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
B29C 44/00-44/60;67/20
B60R 13/01-13/04,13/08
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
A61L 9/00- 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂と消臭剤とを含む発泡性組成物を発泡してなる架橋ポリオレフィン樹脂発泡体であって、
前記発泡性組成物が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して前記消臭剤を0.2~6.5質量部含み、
前記消臭剤は、多孔質粒子と下記一般式(1)で示すヒドラジド類とを含み、
前記ポリオレフィン樹脂がポリプロピレン系樹脂を含有し、
前記多孔質粒子がシリカである、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【化1】

(式中、Rは、水素原子、基-NH-NH、又はモノ、ジ、トリもしくはテトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた残基を表し、nは1~4の整数を表す。)
【請求項2】
独立気泡率が70%以上である、請求項1に記載の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体。
【請求項3】
見掛け密度が20~100kg/mである、請求項1又は2に記載の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体。
【請求項4】
厚さが0.05~15mmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体。
【請求項5】
架橋度が15~65質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体を成形してなる成形体。
【請求項7】
架橋ポリオレフィン樹脂発泡体に表皮材が積層された、請求項6に記載の成形体。
【請求項8】
自動車内装材である、請求項6又は7に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
架橋ポリオレフィン樹脂発泡体は、優れた耐熱性及び断熱性を有しているので、従来から、断熱材、クッション材等として広範な分野で使用されている。特に、自動車用途では、天井、ドア、インストルメントパネル、クーラーカバー等の断熱材及び内装材として使用されている。
架橋ポリオレフィン樹脂発泡体は、ポリオレフィン樹脂及び発泡剤を含有する組成物を加熱して発泡させる方法により製造されることが多いが、ポリオレフィン樹脂の分解物に起因すると考えられる臭気が問題になることがある。例えば、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の成形体を自動車内装材として組み込んだ自動車内において、臭気が発生し、ユーザーが不快に感じることが多い。
架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の臭気を低減する技術として、例えば、活性炭素などの脱臭剤を用いる方法(特許文献1)、カーボンブラックなどを臭気抑制剤として用いる方法(特許文献2)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-60774号公報
【文献】特開平11-263863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の成形体からなる自動車内装材を備えた自動車内等において、特に夏場の暑い時期には、従来技術を用いても臭気を十分に低減することができないという問題がある。
そこで、本発明は、臭気の発生を低減できる架橋ポリオレフィン樹脂発泡体及びその架橋ポリオレフィン樹脂発泡体を成形してなる成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、多孔質粒子と所定のヒドラジド類とを含む消臭剤を発泡性組成物に含有させることにより、発泡体の臭気の発生を低減できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記[1]~[7]に関する。
[1]ポリオレフィン樹脂と消臭剤とを含む発泡性組成物を発泡してなる架橋ポリオレフィン樹脂発泡体であって、前記発泡性組成物が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して前記消臭剤を0.2~6.5質量部含み、前記消臭剤は、多孔質粒子と下記一般式(1)で示すヒドラジド類とを含む、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【化1】

(式中、Rは、水素原子、基-NH-NH、又はモノ、ジ、トリもしくはテトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた残基を表し、nは1~4の整数を表す。)
[2]独立気泡率が70%以上である、上記[1]に記載の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体。
[3]見掛け密度が20~100kg/mである、上記[1]又は[2]に記載の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体。
[4]厚さが0.05~15mmである、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体。
[5]架橋度が15~65質量%である、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体。
[6]上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体を成形してなる成形体。
[7]架橋ポリオレフィン樹脂発泡体に表皮材が積層された、上記[6]に記載の成形体。
[8]自動車内装材である、上記[6]又は[7]に記載の成形体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、臭気の発生を低減できる架橋ポリオレフィン樹脂発泡体及びその架橋ポリオレフィン樹脂発泡体を成形してなる成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[架橋ポリオレフィン樹脂発泡体]
本発明の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体は、ポリオレフィン樹脂と消臭剤とを含む発泡性組成物を発泡してなるものである。そして、発泡性組成物は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して消臭剤を0.2~6.5質量部含み、消臭剤は、多孔質粒子と下記一般式(1)で示すヒドラジド類とを含む。
【化2】

(式中、Rは、水素原子、基-NH-NH、又はモノ、ジ、トリもしくはテトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた残基を表し、nは1~4の整数を表す。)
【0008】
(ポリオレフィン樹脂)
発泡性組成物に含有されるポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、得られる架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の耐熱性、及び成形加工性を向上させる観点から、ポリプロピレン系樹脂を含むことが好ましく、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との双方を含むことがより好ましい。
【0009】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレンを主成分とするエチレン-プロピレンランダム共重合体、プロピレンを主成分とするエチレン-プロピレンブロック共重合体等が挙げられ、これらは1種類を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。中でも、プロピレンを主成分とするエチレン-プロピレンランダム共重合体を用いることが好ましい。
上記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(以下、「MFR」と記す)は、70g/10分以下が好ましく、より好ましくは50g/10分以下であり、さらに好ましくは25g/10分以下である。また、MFRの下限は、通常0.1g/10分である。
上記MFRは、JIS K 7210に準拠して、温度230℃、荷重21.2Nの条件下で測定した値である。
【0010】
ポリエチレン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンを主成分とするエチレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられ、これらは単独で使用しても2種以上併用してもよい。上記したポリエチレン系樹脂の中では、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、0.900~0.925g/cmであることが好ましく、0.902~0.922g/cmであることがより好ましい。
上記ポリエチレン系樹脂のMFRは、0.5~70g/10分が好ましく、より好ましくは1.5~50g/10分である。
上記MFRは、JIS K 7210に準拠して、温度190℃、荷重21.2Nの条件下で測定した値である。
【0011】
ポリオレフィン樹脂がポリプロピレン系樹脂を含有する場合は、耐熱性を向上させる観点から、ポリオレフィン樹脂中において、ポリプロピレン系樹脂を好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上含有することが好ましい。
ポリオレフィン樹脂が、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂とを含有する場合は、ポリプロピレン系樹脂の量の方が多いことが好ましく、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂との全量基準において、ポリプロピレン系樹脂が好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは55質量%以上である。このような配合量にすることにより、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の耐熱性と柔軟性が良好になる。
また、発泡性組成物は、ポリオレフィン樹脂以外のその他の樹脂を含んでもよいが、ポリオレフィン樹脂の含有量は、全樹脂基準で、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
なお、ポリオレフィン樹脂がポリプロピレン系樹脂を含有する場合、発泡性組成物を高温で発泡する必要がある。このため、ポリオレフィン樹脂がポリプロピレン系樹脂を含有する場合、臭気の原因物質である炭素数6~11のアルデヒド化合物が生成しやすくなる。しかし、本発明の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体では、消臭剤、その他の添加物や各種製造方法を調整することで、臭気の発生を低減している。
【0012】
(消臭剤)
発泡性組成物は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して消臭剤を0.2~6.5質量部含み、消臭剤は、多孔質粒子と上記一般式(1)で示すヒドラジド類とを含む。これにより、発泡性組成物が適切に発砲され、発泡体の見掛け密度を低くできるとともに、発泡体からの臭気の発生を効果的に低減することができる。
消臭剤の含有量がポリオレフィン樹脂100質量部に対して消臭剤を0.2質量部未満であると、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体からの臭気の発生の低減の程度が小さくなる。一方、消臭剤の含有量がポリオレフィン樹脂100質量部に対して消臭剤を6.5質量部よりも大きいと、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の見掛け密度が高くなり、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の柔軟性が悪くなる。また、消臭剤の含有量が大きすぎると、却って、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体からの臭気の発生の低減の程度が小さくなる。このような観点から、消臭剤の含有量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、好ましくは0.3~6.0質量部であり、より好ましくは0.4~5.5質量部であり、更に好ましくは0.5~5.0質量部である。
【0013】
消臭剤は、通常、粉体状である。消臭剤の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計で測定した体積基準のメジアン径で好ましくは0.1~100μmであり、より好ましくは0.5~20μmであり、更に好ましくは2~10μmである。
【0014】
<多孔質粒子>
消臭剤に含まれる多孔質粒子は、多孔質のものであれば特に限定されない。多孔質粒子の表面に上記一般式(1)で示すヒドラジド類を分散させるという観点から、多孔質粒子は、好ましくは、上記ヒドラジド類を担持できる多孔質粒子である。このような観点から、多孔質粒子は、好ましくは無機多孔質粒子であり、より好ましくはシリカ系多孔質粒子である。シリカ系多孔質粒子には、例えば、シリカゲル等のシリカ、ゼオライト、モンロリロナイト、ハイドロタルサイト等が挙げられる。シリカ系多孔質粒子以外の多孔質粒子には、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、リン酸アルミニウム等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中で、シリカゲル等のシリカ、ゼオライト、等が好ましく、シリカがより好ましい。消臭剤が多孔質粒子を含まないと、上記一般式(1)で示すヒドラジド類により、発泡剤による発泡が抑制され、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の嵩密度は高くなる。しかし、消臭剤が多孔質粒子を含むことにより、上記一般式(1)で示すヒドラジド類による発泡の抑制が押さえられ、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の嵩密度を低くすることができる。また、これにより、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体からの臭気の発生を効果的に抑制することができる。これは、多孔質粒子がヒドラジド類を担持することにより、ヒドラジド類が発泡を阻害しにくくなるためであると推測される。
【0015】
<ヒドラジド類>
上記一般式(1)で示すヒドラジド類には、例えば、分子中に1個のヒドラジド基を有するモノヒドラジド化合物、分子中に2個のヒドラジド基を有するジヒドラジド化合物、分子中に3個のヒドラジド基を有するトリヒドラジド化合物、分子中に4個のヒドラジド基を有するテトラヒドラジド化合物等を挙げることができる。Rがモノ、ジ、トリもしくはテトラカルボン酸からカルボキシル基を除いた残基である場合、その炭素数は、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~20であり、更に好ましくは1~15である。
【0016】
モノヒドラジド化合物には、例えば、下記の一般式(2)で示されるモノヒドラジド化合物が挙げられる。
【化3】

(式中、Rは水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は置換基を有することもあるアリール基を示す。)で表されるモノヒドラジド化合物を挙げることができる。
【0017】
上記一般式(1)において、Rで示されるアルキル基には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。Rで示されるアリール基には、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、これらの中でフェニル基が好ましい。またアリール基の置換基としては、例えば、水酸基、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、iso-ブチル基等の炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基等が挙げられる。
【0018】
上記一般式(2)のモノヒドラジド化合物としては、例えば、ラウリル酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、p-ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、ナフトエ酸ヒドラジド、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド等が挙げられる。
【0019】
ジヒドラジド化合物には、例えば、下記の一般式(3)で示されるジヒドラジド化合物等が挙げられる。
【化4】

(式中、Rは基-CO-又は基-CO-R-CO-を示す。Rは置換基を有することもある炭素数1~12のアルキレン基又は置換基を有することもあるアリーレン基を示す。)
【0020】
上記一般式(3)において、Rで示されるアルキレン基には、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基等の炭素数1~12の直鎖状アルキレン基等が挙げられる。好ましいアルキレン基は、炭素数2~6の直鎖状アルキレン基であり、更に好ましくはエチレン基、テトラメチレン基及びヘキサメチレン基である。アルキレン基の置換基には、例えば水酸基等が挙げられる。Rで示されるアリーレン基には、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基等が挙げられ、これらの中でもフェニレン基、ナフチレン基等が好ましい。アリーレン基の置換基には、上記アリール基の置換基と同様のものを挙げることができる。
【0021】
上記一般式(3)のジヒドラジド化合物には、例えば、カルボヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン-2酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、ダイマー酸ジヒドラジド、2,6-ナフトエ酸ジヒドラジド等の2塩基酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0022】
トリヒドラジド化合物には、例えば、クエン酸トリヒドラジド、トリニトロ酢酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド等が挙げられる。
【0023】
テトラヒドラジド化合物には、例えば、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド、ナフトエ酸テトラヒドラジド等が挙げられる。
【0024】
これらのヒドラジド類は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中で、ジヒドラジド化合物がより好ましく、ジヒドラジド化合物の中で、カルボヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等が更に好ましい。
【0025】
架橋ポリオレフィン樹脂発泡体からの臭気の発生をより効果的に抑制するという観点から、上記ヒドラジド類は、上記多孔質粒子に担持していることが好ましい。例えば、含浸法により、ヒドラジド類を多孔質粒子に担持することができる。
【0026】
消臭剤中の上記一般式(1)で示すヒドラジド類の含有量は、上記シリカ系物質及び上記ヒドラジド類の合計100質量部に対して、好ましくは10~90質量部であり、より好ましくは10~50質量部であり、更に好ましくは10~30質量部である。
【0027】
本発明の効果を損なわない範囲で、消臭剤は、多孔質粒子及び上記一般式(1)で示すヒドラジド類以外の化合物を含んでもよい。この場合、消臭剤中の多孔質粒子及び上記一般式(1)で示すヒドラジド類の含有量の合計は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。
【0028】
<酸化防止剤>
本発明の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体に用いる発泡性組成物は、酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤を含有することで、ポリオレフィン樹脂の酸化劣化を抑制することができるともに、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の臭気の発生を低減できる。ポリオレフィン樹脂100質量部に対して酸化防止剤を0.5~5.0質量部含有することが好ましく、1.0~4.0質量部含有することがより好ましい。
ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、酸化防止剤を0.5質量部以上とすることで、ポリオレフィン樹脂の酸化劣化がより抑制され、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の臭気の発生をより低減することができる。また、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、酸化防止剤を5.0質量部以下とすることで、過剰な酸化防止剤が臭気物質になることを抑制することができる。
【0029】
酸化防止剤の種類は特に限定されないが、例えば、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。これらの中では、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の臭気の発生の低減の観点から、フェノール系酸化防止剤が好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。これらの中でも、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが好ましい。
酸化防止剤は、1種類が単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0030】
<架橋助剤>
発泡性組成物には、架橋助剤を含有することが好ましい。発泡性組成物中の架橋助剤の含有量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して2.0~5.0質量部であることが好ましく、2.5~4.7質量部であることがより好ましい。
架橋助剤をポリオレフィン樹脂100質量部に対して2.0質量部以上とすることにより、発泡体の臭気の発生を低減することができる。これは、ポリオレフィン樹脂の架橋がある程度進行することにより、熱等による劣化が抑制され、その結果、臭気の原因物質の生成を抑制するためと考えられる。架橋助剤をポリオレフィン樹脂100質量部に対して5.0質量部以下とすることにより、発泡不良を防止しやすくなる。
また、発泡性組成物中の架橋助剤の量をこのような範囲としつつ、酸化防止剤の量を上記範囲とすることで、発泡体の臭気の原因物質の生成を抑制して、より効果的に発泡体の臭気の発生を低減できる。
なお、後述するように、発泡体の臭気の原因物質は、炭素数6~11のアルデヒド化合物であると考えられる。
【0031】
架橋助剤としては、例えば、3官能(メタ)アクリレート系化合物、2官能(メタ)アクリレート系化合物などの多官能(メタ)アクリレート系化合物、1分子中に3個の官能基を持つ化合物などが挙げられる。これら以外の架橋助剤としては、ジビニルベンゼン等の1分子中に2個の官能基を持つ化合物、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、エチルビニルベンゼン、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられる。
3官能(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等が挙げられる。
2官能(メタ)アクリレート系化合物としては、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート等が挙げられる。
1分子中に3個の官能基を持つ化合物としては、トリメリット酸トリアリルエステル、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
架橋助剤は、単独で又は2以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、発泡体の臭気の発生を低減する観点から、多官能(メタ)アクリレート系化合物が好ましく、2官能(メタ)アクリレート系化合物がより好ましく、1,9-ノナンジオールジメタクリレートが更に好ましい。
【0032】
<発泡剤>
発泡性組成物を発泡させる方法としては、化学的発泡法、物理的発泡法がある。化学的発泡法は、発泡性組成物に添加した化合物の熱分解により生じたガスにより気泡を形成させる方法であり、物理的発泡法は、低沸点液体(発泡剤)を発泡性組成物に含浸させた後、発泡剤を揮発させてセルを形成させる方法である。発泡法は特に限定されないが、化学的発泡法が好ましい。
発泡剤としては、熱分解型発泡剤が好適に使用され、例えば分解温度が140~270℃程度の有機系又は無機系の化学発泡剤を用いることができる。
有機系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。
【0033】
無機系発泡剤としては、酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
これらの中では、微細な気泡を得る観点、及び経済性、安全面の観点から、アゾ化合物、ニトロソ化合物が好ましく、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミンがより好ましく、アゾジカルボンアミドが特に好ましい。
発泡剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
発泡剤の発泡性組成物への添加量は、発泡体の見掛け密度を上記範囲にしやすい観点から、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して1~20質量部が好ましく、2~15質量部がより好ましく、3~12質量部が更に好ましい。
【0034】
<その他添加剤>
発泡性組成物には、必要に応じて、熱安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、充填材、防錆剤、分解温度調整剤等の発泡体に一般的に使用する添加剤を配合されてもよい。
【0035】
<独立気孔率>
本発明の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の独立気孔率は、好ましくは70%以上である。独立気孔率が70%以上であると、発泡体の臭気の発生をより低減することができる。
発泡体の独立気孔率は、臭気の発生をより低減するという観点から、より好ましくは80%以上であり、更に好ましくは85%以上である。
独立気泡率は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0036】
<見掛け密度>
本発明の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の見掛け密度は、特に限定されないが、好ましくは20~100kg/mであり、より好ましくは25~80kg/mであり、さらに好ましくは40~70kg/mである。見掛け密度が20kg/m以上であると、発泡体の機械的強度を良好にすることができ、見掛け密度が100kg/m以下であると、発泡体の柔軟性が確保しやすくなる。架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の見掛け密度は後述の実施例に記載の方法で測定される。
見掛け密度は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0037】
<厚さ>
架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の厚さは、特に制限されないが、0.05~15mmが好ましく、1~10mmがより好ましい。架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の厚さは後述の実施例に記載の方法で測定される。
厚さは、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0038】
<架橋度>
本発明の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の架橋度は、好ましくは15~65質量%である。架橋度が15~65質量%であると、発泡体の機械的強度、柔軟性及び成形性をバランスよく向上させることができる。発泡体の機械的強度、柔軟性及び成形性をバランスよく向上させることができるという観点から、本発明の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の架橋度は、より好ましくは20~55質量%であり、更に好ましくは30~50質量%である。
架橋度は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0039】
<アルデヒド化合物の含有量>
本発明の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体は、アルデヒド化合物含有窒素ガス中の炭素数6~11のアルデヒド化合物の濃度の合計が0.07体積ppm以下であることが好ましい。本発明者らは、前鋭意研究を重ねた結果、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の臭気の原因物質が炭素数6~11のアルデヒド化合物であることを見出した。なお、アルデヒド化合物含有窒素ガスとは、100mm×100mm×3.0mmの寸法の架橋オレフィン樹脂発泡体を2枚入れた10Lのサンプリングバックに5Lの窒素ガスを充填した後、サンプリングバックを80℃の加熱温度で2時間加熱することによって得られたガスである。より具体的には、後述の実施例の方法により得られたアルデヒド化合物含有窒素ガスである。炭素数6~11のアルデヒド化合物の濃度は、具体的には、n-ヘキシルアルデヒド、n-ヘプチルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド及びn-ウンデシルアルデヒドの合計の濃度である。
【0040】
上記アルデヒド化合物含有窒素ガス中の炭素数6~11のアルデヒド化合物の濃度の合計が0.07体積ppm以下であると、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の臭気の発生をより低減することができる。上記アルデヒド化合物含有窒素ガス中の炭素数6~11のアルデヒド化合物の濃度の合計は、0.06体積ppm以下であることがより好ましく、0.05体積ppm以下であることが更に好ましい。上記アルデヒド化合物含有窒素ガス中の炭素数6~11のアルデヒド化合物の濃度の合計をこのような範囲とすることにより、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の臭気の発生をより低減することができる。
【0041】
[架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法]
本発明の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体を製造する製造方法は、例えば、下記の工程1~工程3の工程を含んでもよい。
(工程1)ポリオレフィン樹脂を含有する発泡性組成物をシート状に加工し、発泡性シートを製造する工程
(工程2)該発泡性シートに対して電離性放射線を照射し架橋発泡性シートを製造する工程
(工程3)架橋発泡性シートを発泡させて、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体を製造する工程
【0042】
(工程1)
工程1は、ポリオレフィン樹脂を含有する発泡性組成物をシート状に加工し、発泡性シートを製造する工程である。発泡性組成物を、バンバリーミキサーや加圧ニーダ等の混練り機を用いて混練した後、押出機、カレンダ、コンベアベルトキャスティング等により連続的に押し出すことによりポリオレフィン樹脂発泡性シートを製造することができる。発泡性組成物には、ポリオレフィン樹脂及び消臭剤が含まれる。
【0043】
(工程2)
工程2は、発泡性シートに対して電離性放射線を照射し架橋発泡性シートを製造する工程である。
電離性放射線を照射する際の照射線量は、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の臭気の発生を低減するという観点から、好ましくは1.2~2.5Mradであり、より好ましくは1.3~2.3Mradであり、更に好ましくは1.4~2.1Mradである。
架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の臭気の発生をより低減する観点から、発泡性組成物中の架橋助剤の量を上記範囲に調整すると共に、電離性放射線の照射条件を上記範囲とすることが好ましい。
電離性放射性の照射は、発泡性シートの一方の面に対して行ってもよいし、両方の面に対して行ってもよいが、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の臭気の発生を低減する観点から、両方の面に対して行うことが好ましい。
電離性放射線としては、例えば、電子線、α線、β線、γ線、X線等が挙げられる。これらの中では、生産性及び照射を均一に行う観点から、電子線が好ましい。
【0044】
(工程3)
工程3は、架橋発泡性シートを発泡させて、シート状の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体を製造する工程である。架橋発泡性シートを発泡させる方法としては、オーブンのようなバッチ方式や、架橋発泡性シートを、連続的に加熱炉内を通す連続発泡方式を挙げることができる。
架橋発泡性シートを発泡させる際の温度は、160~280℃であることが好ましい。160℃以上にすることにより、発泡を進行しやすくすることができ、280℃以下としることにより、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の臭気の発生を低減することができる。架橋発泡性シートを発泡させる際の温度は、180~270℃であることがより好ましく、200~260℃であることが更に好ましい。
上記温度に調整するための方法としては、特に制限されないが、熱風を用いてもよいし、赤外線を用いてもよい。
また、架橋発泡性シートは、発泡後、又は発泡されつつMD方向又はCD方向の何れか一方又は双方に延伸されてもよい。
【0045】
[成形体]
本発明の成形体は、本発明の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体を成形してなるものである。本発明の成形体は、本発明の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体を公知の方法で成形して得られるものである。成形体を製造するに際し、基材、表皮材等の他の素材を架橋ポリオレフィン樹脂発泡体に積層し貼合わせて製造することができる。本発明の成形体は、好ましくは架橋ポリオレフィン樹脂発泡体に表皮材が積層されたものである。
【0046】
表皮材としては、ポリ塩化ビニルシート、ポリ塩化ビニルとABS樹脂との混合樹脂からなるシート、熱可塑性エラストマーシート、天然繊維や人造繊維を用いた織物、編物、不織布、人工皮革や合成皮革等のレザー、金属等が挙げられる。また、本革や、石や木等から転写した凹凸を付したシリコーンスタンパ等を用いて、表面に皮目や木目模様等の意匠が施された成形体としてもよい。
表皮材を架橋ポリオレフィン樹脂発泡体に貼合わせて成形することで、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体に表皮材が積層された成形体を得ることができる。
表皮材を貼り合わせる方法としては、例えば、押出ラミネート法、接着剤を塗布した後張り合わせる接着ラミネート法、熱ラミネート法(熱融着法)、ホットメルト法、高周波ウェルダー法、金属等では無電解メッキ法、電解メッキ法及び蒸着法等が挙げられるが、如何なる方法でも両者が接着されればよい。
【0047】
基材は成形体の骨格となるものであり、通常、熱可塑性樹脂が用いられる。基材用の熱可塑性樹脂としては、上述したポリオレフィン樹脂、エチレンとα-オレフィン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル等との共重合体、ABS樹脂、及びポリスチレン樹脂等を適用することができる。
【0048】
本発明の成形体の成形方法としては、スタンピング成形法、真空成形法、圧縮成形法、射出成形法等が挙げられる。これらの中ではスタンピング成形法、真空成形法が好ましい。真空成形法としては、雄引き真空成形法、雌引き真空成形法のいずれも採用しうるが、雄引き真空成形法がより好ましい。
本発明の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体を成形してなる成形体は、断熱材、クッション材等として使用することができる。本発明の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体を成形してなる成形体は、夏場の暑い時期においても、臭気が発生しにくいため、特に自動車分野において、天井材、ドア、インスツルメントパネル等の自動車内装材として好適に使用できる。
【実施例
【0049】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
ポリプロピレン系樹脂60質量部、及び直鎖状低密度ポリエチレン40質量部、フェノール系酸化防止剤2.5質量部、架橋助剤3質量部、消臭剤0.5質量部、発泡剤8質量部を混合して得た発泡性組成物を、単軸押出機により、温度180℃で溶融混練して、発泡性シートとした。該発泡性シートの両面をそれぞれ加速電圧1000keVにて電離性放射線(電子線)を2.0Mradで照射し、架橋発泡性シートを得た。その後、該架橋発泡性シートを、炉内温度250℃の縦型熱風式発泡炉に供給し、延伸しつつ加熱発泡させ、目的とする架橋ポリオレフィン樹脂発泡体を得た。
該架橋ポリオレフィン樹脂発泡体について、厚さ、見掛け密度、架橋度、独立気泡率、炭素数6~11のアルデヒド濃度、臭気評価を下記とおり行った。結果を表1に示した。
なお、実施例で用いた各原料の詳細は以下のとおりである。
・ポリプロピレン系樹脂:エチレン-プロピレンランダム共重合体、住友化学株式会社製、商品名「AD571」、密度0.90g/cm、MFR0.5g/10分(230℃)
・直鎖状低密度ポリエチレン:株式会社プライムポリマー製、商品名「ウルトラゼックス1020L」、密度0.909g/cm、MFR2g/10分(190℃)
・発泡剤:アゾジカルボンアミド、永和化成工業株式会社製、商品名「ビニホールAC-K3-TA」、分解温度:208℃
・架橋助剤:1,9-ノナンジオールジメタクリレート、共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステル1,9ND」、粘度8mPa・s/25℃
・フェノール系酸化防止剤:BASFジャパン株式会社製、商品名「イルガノックス1010」
・消臭剤1:シリカ(含有量:約80質量%)と、アジピン酸ヒドラジド(含有量:約20質量%)とを含む消臭剤、株式会社シナネンゼオミック製、商品名「ダッシュライト7MH」
・消臭剤2:アジピン酸ヒドラジド(多孔質粒子を含まない消臭剤)、大塚化学株式会社製、商品名「ケムキャッチ H-6000HS」、融点:180℃
【0051】
(実施例2~4、比較例1~3)
発泡性組成物の組成を表1のとおり変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2~4及び比較例1~4の発泡体を得た。
【0052】
(発泡体の厚さ)
実施例及び比較例の発泡体の厚さを、JIS K6767に準拠して測定した。
【0053】
(発泡体の見掛け密度)
実施例及び比較例の発泡体の見掛け密度を、JIS K7222に準拠して測定した。
【0054】
(架橋度)
発泡体から約100mgの試験片を採取し、試験片の質量A(mg)を精秤した。次に、この試験片を120℃のキシレン30cm中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の質量B(mg)を精秤した。得られた値から、下記式により架橋度(質量%)を算出した。
架橋度(質量%)=100×(B/A)
【0055】
(独立気泡率)
樹脂発泡シートから一辺が5cmの平面正方形状で、且つ一定厚みの試験片を切り出した。試験片の厚みを測定し、試験片の見掛け体積V1を算出するとともに試験片の重量W1を測定した。次に、気泡の占める見掛け体積V2を下記式に基づいて算出した。なお、試験片を構成している樹脂の密度は、1g/cmとした。
気泡の占める見掛け体積V2=V1-W1
続いて、試験片を23℃の蒸留水中に水面から100mmの深さに沈めて、試験片に15kPaの圧力を3分間に亘って加えた。水中で圧力を解放後、試験片を水中から取り出して試験片の表面に付着した水分を除去し、試験片の重量W2を測定し、下記式に基づいて連続気泡率F1し、そして独立気泡率F2を算出した。
連続気泡率F1(%)=100×(W2-W1)/V2
独立気泡率F2(%)=100-F1
【0056】
(アルデヒド化合物の分析)
発泡体からの放散ガスをサンプリングするために、10Lのサンプリングバック(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名「スカイピアバックAAK-10」)に100×100mmにカットした発泡体を2枚入れた。そして、ヒートシーラーを使用してサンプリングバックの開口部を閉じ、窒素ガスを5L充填した。このサンプリングバックを80℃の温度の恒温槽に2時間入れた。これにより、アルデヒド化合物含有窒素ガスが得られた。そして、サンプリングポンプ(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名「SP208-000DualII」)を使用して、サンプリングバック内のアルデヒド化合物含有窒素ガスを捕集管(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名「Tenax TA 150mg」)に1L捕集した。サンプリングの条件は以下のとおりであった。
ガス充填量:N、5L
加熱温度:80℃
捕集時間:1時間
捕集量:1~2L
捕集流量:400mL/min
【0057】
アルデヒド化合物含有窒素ガスをサンプリングした後、加熱脱着装置(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名「HandyTD TD265」)を使用して加熱脱着した。そして、ガスクロマトグラフ(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名「GC-4000Plus(Aタイプ)」)を使用したにおい嗅ぎシステム(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名「OPV277」)へ導入してアルデヒド化合物の分析を行った。加熱脱着およびガスクロマトグラフの条件は以下のとおりであった。
<加熱脱着条件>
システム圧力:190kPa
プレパージ時間:0min
加熱脱着温度:270℃
加熱脱着時間:5min
昇温速度:45℃/sec
<ガスクロマトグラフ条件>
カラム:InertCap Pure-WAX(ジーエルサイエンス株式会社製)、内径0.25mm、長さ60m、膜厚0.25μm
温度条件:40℃(6min hold)-10℃/min-240℃(14min hold)
キャリアガス:He、160kPa
注入方式:Split 10:1
注入口温度:270℃
検出器:FID
検出器温度:280℃
流量:35mL/min
メイクアップ流量:N 30mL/min
Air流量:250mL/min
【0058】
ガスクロマトグラフの測定結果からアルデヒド化合物含有窒素ガス中のアルデヒド化合物の濃度を算出するための検量線は以下のようにして作成した。
炭素数6~11のアルデヒド化合物(n-ヘキシルアルデヒド、n-ヘプチルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド及びn-ウンデシルアルデヒド)をそれぞれ電子天秤で約100mg採取し、20mLメスフラスコに投入した。そして、メタノールで希釈してアルデヒド混合標準溶液(濃度:5000μg/L)を作製した。このアルデヒド混合標準溶液をシリンジで0.2μL採取した。そして、捕集管(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名「Tenax TA 150mg」)もしくはサンプリングバック(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名「スカイピアバックAAK-10」)に採取したアルデヒド混合標準溶液を添加した。捕集管の場合は、におい嗅ぎシステム(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名「OPV277」)の検量線作成ツールにセットし、ドライパージ(50mL/min、2min)した。サンプリングバックの場合は、添加後に1Lの窒素を充填し、恒温槽を用いて80℃の温度で2時間加熱し、サンプリングバック内のガスを捕集管に全量捕集した。それぞれの捕集管を加熱脱着装置(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名「HandyTD TD265」)を使用して加熱脱着し、ガスクロマトグラフへ導入した。そして、ガスクロマトグラフの測定結果を使用して検量線を作成した。
【0059】
(臭気評価)
実施例及び比較例で得られた各発泡体について、臭気評価試験を行った。臭気評価試験の条件は以下のとおりであった。
サンプリング日数:発泡体作製直後
サンプリングサイズ:100cm
臭気瓶:100cmガラス容器
試験温度:80℃×2hr→60℃に冷却
嗅ぎ温度:60℃
試験人数:5名
臭いの嗅ぎ方:臭気瓶の蓋を開け、水平面に対して45°臭気瓶を傾けた。そして、鼻孔を臭気瓶の口部中央に置き、鼻孔を臭気瓶の口部から1cm離した状態で、5sec以上10sec以内、臭気瓶からの放散ガスの臭いを嗅いだ。
【0060】
臭気の評価は、以下のように行った。臭気強度の標準溶液として、下記のn-ブタノール濃度を有するn-ブタノール水溶液を使用した。これらの溶液をそれぞれ、1Lのガラス瓶に150mL計り取り、それらを基準臭とした。そして、これらの基準臭の臭気強度に基づいて発泡体の臭気を評価した。
強度等級1:n-ブタノール濃度0ml/L
強度等級1.5:n-ブタノール濃度1.4ml/L
強度等級2:n-ブタノール濃度2.0ml/L
強度等級2.5:n-ブタノール濃度3.6ml/L
強度等級3:n-ブタノール濃度6.0ml/L
強度等級3.5:n-ブタノール濃度9.0ml/L
強度等級4:n-ブタノール濃度18.0ml/L
強度等級4.5:n-ブタノール濃度22.7ml/L
強度等級5:n-ブタノール濃度30.0ml/L
強度等級5.5:n-ブタノール濃度57.0ml/L
強度等級6:n-ブタノールのみ
【0061】
実施例1~4及び比較例1~3の発泡体の厚さ、見掛け密度、独立気泡率、架橋度、アルデヒド化合物の分析結果及び臭気評価の結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
上記実施例の結果より、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、多孔質粒子と上記一般式(1)で示すヒドラジド類とをアルデヒド化合物とを含む消臭剤を0.2~6.5質量部含む発泡性組成物を発泡してなる実施例1~4の発泡体は、臭気評価において良好な結果が得られた。一方、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、上記消臭剤を6.5質量よりも多く含む発泡性組成物を発泡してなる比較例1の発泡体は、臭気評価において良好な結果を得ることができなかった。また、多孔質粒子を含まない発泡性組成物を発泡してなる比較例2,3の架橋ポリオレフィン樹脂発泡体も、臭気評価において良好な結果を得ることができなかった。
炭素数6~11のアルデヒド化合物の濃度の結果と臭気評価の結果とから、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の臭気の原因は、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体から放出される炭素数6~11のアルデヒド化合物であることがわかった。