(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
F02D 29/00 20060101AFI20221213BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20221213BHJP
F02D 29/04 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
F02D29/00 B
E02F9/20 M
F02D29/04 H
(21)【出願番号】P 2018183909
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 幸次
(72)【発明者】
【氏名】田中 哲二
(72)【発明者】
【氏名】青木 勇
(72)【発明者】
【氏名】抜井 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】阿彦 優貴
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-295682(JP,A)
【文献】特開2015-071976(JP,A)
【文献】特開2017-115832(JP,A)
【文献】特開2008-223307(JP,A)
【文献】国際公開第2010/116853(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
F02D 29/00
F02D 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に搭載されたエンジンと、
前記エンジンにより駆動される可変容量型の走行用油圧ポンプと、
前記走行用油圧ポンプと閉回路状に接続されて前記エンジンの駆動力を車輪に伝達する可変容量型の走行用油圧モータと、
前記車体に設けられた作業機と、
を備えた作業車両において、
前記走行用油圧モータの負荷圧力を検出する圧力検出器と、
前記エンジン及び前記走行用油圧モータを制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記圧力検出器で検出された圧力検出値が、前記作業車両
が前記作業機の上げ動作を行っていない状態で平地
を走行
している時に対応する
予め記憶された前記走行用油圧モータの負荷圧力よりも大きい所定
の圧力範
囲に含まれるか否かを判定し、
前記圧力検出器で検出された圧力検出値が前記所定
の圧力範
囲に含まれていると判定された場合に、前記所定
の圧力範
囲内において前記走行用油圧モータの押しのけ容積を最小値から最大値まで上昇させるモータ指令信号を前記走行用油圧モータに対して出力すると共に、前記所定
の圧力範
囲内に限り前記エンジンの最高回転速度を上昇させるエンジン指令信号を前記エンジンに対して出力する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両において、
前記コントローラは、
前記所定
の圧力範
囲内にお
ける所定の第1負荷圧力から前記所定の第1負荷圧力よりも大きい所定の第2負荷圧力に亘って、前記走行用油圧モータの押しのけ容積を最小値から最大値まで
徐々に上昇させる
ことを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項1に記載の作業車両において、
前記コントローラは、
前記圧力検出器で検出された圧力検出値が前記所定
の圧力範
囲に含まれていると判定された時に時間の計測を開始して、前記圧力検出器で検出された圧力検出値が前記所定
の圧力範
囲内に含まれている間の時間を計測し、
計測された計測時間が所定の設定時間以上である場合に、前記エンジン指令信号を前記エンジンに対して出力する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項4】
請求項3に記載の作業車両において、
前記コントローラは、
時間の計測を開始した後に前記圧力検出器で検出された圧力検出値が前記所定
の圧力範囲
に含まれないと判定されると、時間の計測を停止してリセットを行い、上昇させた前記エンジンの最高回転速度を元に戻す指令信号を前記エンジンに対して出力する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項5】
請求項1に記載の作業車両において、
前記作業機は、作業対象物を掘削する
ものであり、
前記作業車両の最大けん引力を必要とした作業時とは、前記作業機による掘削動作時である
ことを特徴とする作業車両。
【請求項6】
請求項1に記載の作業車両において、
前記所定の圧力範囲は、
前記作業車両が前記作業機の上げ動作を行っていない状態で平地を走行している時に対応する前記走行用油圧モータの負荷圧力よりも大きく、かつ、前記作業車両の最大けん引力を必要とした作業時に対応する前記走行用油圧モータの負荷圧力よりも小さい圧力範囲である
ことを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無段変速式の走行駆動システムを搭載した作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダやフォークリフト、トラクター等の作業車両には、無段変速式の走行駆動システムとして、エンジンで油圧ポンプを駆動させることによって発生した油圧を油圧モータで回転力に変換するHST(Hydraulic Static Transmission)式の走行駆動システムを採用したものがある。
【0003】
例えば特許文献1には、エンジンと、エンジンによって駆動される走行用油圧ポンプと、踏込み量に応じてアクセル開度を調整するアクセルペダルと、走行用油圧ポンプから吐出された圧油によって駆動される走行用油圧モータと、走行時にかかる走行負荷の大きさを検出する走行負荷検知部と、車速を検出する車速検出部と、エンジンを制御する制御装置と、を備えたホイールローダが開示されている。
【0004】
このホイールローダでは、制御装置が、走行負荷検知部で検出された走行負荷の大きさと、車速検出部で検出された車速の大きさと、に応じてエンジンを制御することにより燃料消費量を抑制しつつ最高車速での走行を可能にしている。具体的には、車速が最高車速に近づくほど大きく、車速が最高車速から離れるほど小さくなるように、アクセル開度の制限量が設定されると共に、走行負荷が小さいときには走行負荷が大きいときよりもアクセル開度の制限量が小さく設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のホイールローダにおけるエンジンの制御では、走行負荷が高く、かつ車速が微速である場合にはエンジンの回転数が高くなってしまう。走行負荷が高く、かつ車速が微速である場合としては、例えば、掘削動作時や前後進切り換え時が考えられる。掘削時はけん引力が最大値で一定となるため、エンジンの回転数を上昇させても走行性能はあがらず、また他方で、走行性能を高くする必要性もないため、エンジンの回転数を上昇させてしまうと燃費が悪化する。また、前後進切り換え時にエンジンの回転数を上昇させると、車速が急激に減速してしまい滑らかな運転になりにくい。
【0007】
そこで、本発明の目的は、燃費を低減しながらも、高い走行性能が必要な時だけ走行性能を向上させることが可能な作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、車体と、前記車体に搭載されたエンジンと、前記エンジンにより駆動される可変容量型の走行用油圧ポンプと、前記走行用油圧ポンプと閉回路状に接続されて前記エンジンの駆動力を車輪に伝達する可変容量型の走行用油圧モータと、前記車体に設けられた作業機と、を備えた作業車両において、前記走行用油圧モータの負荷圧力を検出する圧力検出器と、前記エンジン及び前記走行用油圧モータを制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記圧力検出器で検出された圧力検出値が、前記作業車両が前記作業機の上げ動作を行っていない状態で平地を走行している時に対応する予め記憶された前記走行用油圧モータの負荷圧力よりも大きい所定の圧力範囲に含まれるか否かを判定し、前記圧力検出器で検出された圧力検出値が前記所定の圧力範囲に含まれていると判定された場合に、前記所定の圧力範囲内において前記走行用油圧モータの押しのけ容積を最小値から最大値まで上昇させるモータ指令信号を前記走行用油圧モータに対して出力すると共に、前記所定の圧力範囲内に限り前記エンジンの最高回転速度を上昇させるエンジン指令信号を前記エンジンに対して出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、燃費を低減しながらも、高い走行性能が必要な時だけ走行性能を向上させることができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るホイールローダの外観を示す側面図である。
【
図2】ホイールローダによるVシェープローディングについて説明する説明図である。
【
図3】車速とけん引力との関係を示すグラフである。
【
図4】ホイールローダの油圧回路及び電気回路を示す図である。
【
図5】アクセルペダル踏込量と目標エンジン回転速度との関係を示すグラフである。
【
図6】(a)はエンジン回転速度とHSTポンプの押し退け容積との関係を示すグラフ、(b)はエンジン回転速度とHSTポンプの入力トルクとの関係を示すグラフ、(c)はエンジン回転速度とHSTポンプの吐出流量との関係を示すグラフである。
【
図7】コントローラが有する機能を示す機能ブロック図である。
【
図8】コントローラで実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】HSTモータ負荷圧力とHSTモータの押しのけ容積との関係を示すグラフである。
【
図10】HSTモータ負荷圧力とけん引力との関係を示すグラフである。
【
図11】コントローラによる制御が実行された場合におけるアクセルペダル踏込量と目標エンジン回転速度との関係を示すグラフである。
【
図12】コントローラによる制御が実行された場合における車速とけん引力との関係を示すグラフである。
【
図13】変形例におけるHSTモータ負荷圧力とHSTモータの押しのけ容積との関係を示すグラフである。
【
図14】変形例におけるHSTモータ負荷圧力とけん引力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る作業車両の一態様として、ホイールローダについて説明する。
【0012】
(ホイールローダ1の構成)
まず、本発明の実施形態に係るホイールローダ1の全体構成について、
図1を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るホイールローダ1の外観を示す側面図である。
【0014】
ホイールローダ1は、前フレーム1A及び後フレーム1Bで構成される車体と、車体の前部に設けられて作業対象物を掘削する作業機2と、を備えている。ホイールローダ1は、車体が中心付近で中折れすることにより操舵するアーティキュレート式の作業車両である。前フレーム1Aと後フレーム1Bとは、センタジョイント10によって左右方向に回動自在に連結されており、前フレーム1Aが後フレーム1Bに対して左右方向に屈曲する。
【0015】
前フレーム1Aには左右一対の前輪11Aが、後フレーム1Bには左右一対の後輪11Bが、それぞれ設けられている。なお、
図1では、左右一対の前輪11A及び後輪11Bのうち、左側の前輪11A及び後輪11Bのみを示している。
【0016】
また、後フレーム1Bには、オペレータが搭乗する運転室12と、エンジンやコントローラ、油圧ポンプ等の各機器を内部に収容する機械室13と、車体が傾倒しないように作業機2とのバランスを保つためのカウンタウェイト14と、が設けられている。後フレーム1Bにおいて、運転室12は前部に、カウンタウェイト14は後部に、機械室13は運転室12とカウンタウェイト14との間に、それぞれ配置されている。
【0017】
作業機2は、前フレーム1Aに取り付けられたリフトアーム21と、伸縮することによりリフトアーム21を前フレーム1Aに対して上下方向に回動させる一対のリフトアームシリンダ22と、リフトアーム21の先端部に取り付けられたバケット23と、伸縮することによりバケット23をリフトアーム21に対して上下方向に回動させるバケットシリンダ24と、リフトアーム21に回動可能に連結されてバケット23とバケットシリンダ24とのリンク機構を構成するベルクランク25と、一対のリフトアームシリンダ22やバケットシリンダ24へ圧油を導く複数の配管(不図示)と、を有している。なお、
図1では、一対のリフトアームシリンダ22のうち、左側に配置されたリフトアームシリンダ22のみを破線で示している。
【0018】
リフトアーム21は、各リフトアームシリンダ22のロッド220が伸びることにより上方向に回動し、各ロッド220が縮むことにより下方向に回動する。バケット23は、バケットシリンダ24のロッド240が伸びることによりチルト(リフトアーム21に対して上方向に回動)し、ロッド240が縮むことによりダンプ(リフトアーム21に対して下方向に回動)する。
【0019】
このホイールローダ1は、例えば露天掘り鉱山等において、作業対象物である土砂や鉱物等を作業機2により掘削してダンプトラック等へ積み込む荷役作業を行うための荷役作業車両である。
【0020】
次に、ホイールローダ1が掘削作業及び積み込み作業を行う際の方法の1つであるVシェープローディングについて、
図2を参照して説明する。
【0021】
図2は、ホイールローダ1によるVシェープローディングについて説明する説明図である。
【0022】
まず、ホイールローダ1は、作業対象物である地山100Aに向かって前進し(
図2に示す矢印X1)、バケット23を地山100Aに突入させた状態でチルトさせることにより掘削作業を行う。掘削作業が終わると、ホイールローダ1は、掘削した土砂や鉱物等の荷をバケット23に積んだ状態で元の場所に一旦後退する(
図2に示す矢印X2)。
【0023】
続いて、ホイールローダ1は、バケット23内の荷の積込先であるダンプトラック100Bに向かって前進し(
図2に示す矢印Y1)、ダンプトラック100Bの手前で停止する。
図2では、ダンプトラック100Bの手前で停止している状態のホイールローダ1を破線で示している。
【0024】
ホイールローダ1は、ダンプトラック100Bへの積み込み作業が終わると、バケット23内に荷が積まれていない状態で元の場所に後退する(
図2に示す矢印Y2)。このように、ホイールローダ1は、地山100Aとダンプトラック100Bとの間でV字形状に往復走行し、掘削作業及び積み込み作業を行う。
【0025】
また、ホイールローダ1は、作業現場の環境によっては、急な斜面を走行したり、作業機2を用いて作業面を均すドージング作業を行ったりすることがある。これらホイールローダ1における各種の動作では、車速を出す必要がある場合やけん引力が必要となる場合、あるいはその両方を必要とする場合がある。
【0026】
次に、ホイールローダ1における車速とけん引力との関係、すなわちホイールローダ1の走行性能について、
図3を参照して説明する。
【0027】
図3は、車速とけん引力との関係を示すグラフである。
【0028】
図3に示す領域αでは、車体のけん引力Fは比較的小さくてよい一方で車速は最高車速となる動作であり、例えば作業機2が上げ動作を行わない状態で平地を走行している時が相当する。なお、
図3に示すけん引力F1が、ホイールローダ1が最高車速で平地を走行する際に必要なけん引力である。
【0029】
図3に示す領域γでは、車速は0あるいは微速である一方で車体のけん引力Fは最大けん引力が必要となる動作であり、例えば作業機2による掘削動作時が相当する。
【0030】
そして、
図3に示す領域βは領域γと領域αとの間の領域に該当し、この領域では、車体のけん引力及び車速の両方が必要となる動作であり、例えばホイールローダ1が斜面を登る時(登坂走行時)やドージング作業時が相当する。なお、領域βにおける車体のけん引力Fは、最高車速での平地走行時のけん引力F1よりも大きいけん引力F2から最大けん引力よりも小さいけん引力F3までの間で変化し(F2≦F≦F3)、領域βにおける車速は、0あるいは微速から最高車速までの間で変化する。
【0031】
(ホイールローダ1の駆動システム)
次に、ホイールローダ1の駆動システムについて、
図4~6を参照して説明する。
【0032】
図4は、ホイールローダ1の油圧回路及び電気回路を示す図である。
図5は、アクセルペダル踏込量と目標エンジン回転速度との関係を示すグラフである。
図6(a)はエンジン回転速度とHSTポンプ41の押し退け容積との関係を示すグラフ、
図6(b)はエンジン回転速度とHSTポンプ41の入力トルクとの関係を示すグラフ、
図6(c)はエンジン回転速度とHSTポンプ41の吐出流量との関係を示すグラフである。
【0033】
ホイールローダ1は、閉回路の油圧回路を有したHST式走行駆動装置を備え、このHST式走行駆動装置は、
図4に示すように、エンジン3と、エンジン3により駆動される走行用油圧ポンプとしてのHSTポンプ41と、HSTポンプ41を制御するための圧油を補給するHSTチャージポンプ41Aと、一対の管路400A,400Bを介してHSTポンプ41と閉回路状に接続された走行用油圧モータとしてのHSTモータ42と、エンジン3やHSTポンプ41及びHSTモータ42等の各機器を制御するコントローラ5と、を有して構成されている。
【0034】
HSTポンプ41は、傾転角に応じて押し退け容積が制御される斜板式あるいは斜軸式の可変容量型の油圧ポンプである。傾転角は、コントローラ5から出力された指令信号にしたがってポンプ用レギュレータ410により調整される。
【0035】
HSTモータ42は、傾転角に応じて押し退け容積が制御される斜板式あるいは斜軸式の可変容量型の油圧モータであり、エンジン3の駆動力を車輪(前輪11A及び後輪11B)に伝達する。傾転角は、HSTポンプ41の場合と同様に、コントローラ5から出力された指令信号にしたがってモータ用レギュレータ420により調整される。
【0036】
HST式走行駆動装置では、まず、運転室12内に設けられたアクセルペダル61をオペレータが踏み込むとエンジン3が回転し、エンジン3の駆動力によりHSTポンプ41が駆動する。そして、HSTポンプ41から吐出した圧油によりHSTモータ42が回転し、HSTモータ42からの出力トルクがアクスル15を介して前輪11A及び後輪11Bに伝達されることにより、ホイールローダ1が走行する。
【0037】
具体的には、アクセルペダル61の踏込量がアクセルペダル61に取り付けられた踏込量センサ610で検出され、検出された踏込量がコントローラ5に入力される。そして、入力された踏込量に応じた目標エンジン回転速度が指令信号としてコントローラ5からエンジン3に対して出力される。エンジン3は、この目標エンジン回転速度にしたがって回転数が制御される。エンジン3の回転速度は、
図4に示すように、エンジン3の出力軸に設けられたエンジン回転速度センサ71で検出する。
【0038】
図5に示すように、アクセルペダル61の踏込量と目標エンジン回転速度とは比例関係にあり、アクセルペダル61の踏込量が大きくなると目標エンジン回転速度は速くなる。そして、アクセルペダル61の踏込量がS2になった時に目標エンジン回転速度が最高回転速度Nmax1となる。このエンジン3の最高回転速度Nmax1(以下、「第1エンジン最高回転速度Nmax1」とする)は、作業機2が上げ動作を行っていない状態(非動作状態)でホイールローダ1が平地を走行している時(
図3に示す領域α)や、作業機2による掘削動作時(
図3に示す領域γ)に対応した設定値であり、エンジン3の燃費効率が良好となる値である。
【0039】
図5において、アクセルペダル61の踏込量0~S1の範囲(例えば0%~20あるいは30%の範囲)は、アクセルペダル61の踏込量にかかわらず、目標エンジン回転速度が所定の最低回転速度Nminで一定となる不感帯として設定されている。なお、この不感帯の範囲は、任意に設定変更可能である。
【0040】
次に、エンジン3とHSTポンプ41との関係は、
図6(a)~(c)に示す通りである。
【0041】
図6(a)に示すように、エンジン回転速度がN1からN2までの間では、エンジン3の回転速度NとHSTポンプ41の押し退け容積qとは比例関係にあり、エンジン3の回転速度がN1からN2になるまで速くなるにつれて(N1<N2)、押し退け容積は0から所定の値qcまで大きくなる。エンジン回転速度がN2以上では、HSTポンプ41の押し退け容積は、エンジン回転速度にかかわらず所定の値qcで一定となる。
【0042】
HSTポンプ41の入力トルクは、押し退け容積に吐出圧力を積算したもの(入力トルク=押し退け容積×吐出圧力)である。
図6(b)に示すように、エンジン回転速度がN1からN2までの間では、エンジン3の回転速度NとHSTポンプ41の入力トルクTとは比例関係にあり、エンジン3の回転速度がN1からN2になるまで速くなるにつれて、入力トルクは0から所定の値Tcまで大きくなる。エンジン回転速度がN2以上では、HSTポンプ41の入力トルクは、エンジン回転速度にかかわらず所定の値Tcで一定となる。
【0043】
図6(c)に示すように、エンジン回転速度がN1からN2までの間では、HSTポンプ41の吐出流量Qとエンジン3の回転速度Nとは二次の比例関係にあり、エンジン3の回転速度がN1からN2になるまで速くなるにつれて、HSTポンプ41の吐出流量は0からQ1まで増加する。エンジン回転速度がN2以上では、エンジン3の回転速度NとHSTポンプ41の吐出流量Qとは一次の比例関係にある。
【0044】
したがって、エンジン3の回転速度Nが速くなるとHSTポンプ41の吐出流量Qが増え、HSTポンプ41からHSTモータ42に流入する圧油の流量が増えるため、HSTモータ42の回転数が増大し、車速が速くなる。
【0045】
HSTモータ42にかかる負荷圧力は、ホイールローダ1の前進時は一方の管路400A上に設けられた第1圧力センサ72Aで、ホイールローダ1の後進時は他方の管路400B上に設けられた第2圧力センサ72Bで、それぞれ検出する(
図4参照)。これら第1圧力センサ72A及び第2圧力センサ72Bは、走行用油圧モータであるHSTモータ42の負荷圧力を検出する圧力検出器の一態様である。なお、以下の説明において、「第1圧力センサ72A及び第2圧力センサ72B」を単に「圧力センサ72A,72B」とする場合がある。
【0046】
このように、HST式走行駆動装置では、HSTポンプ41の吐出流量を連続的に増減させることにより車速を制御(変速)するため、ホイールローダ1は滑らかな発進、及び衝撃の少ない停止が可能となる。なお、車速を制御する際には、必ずしもHSTポンプ41の吐出流量を調整する必要はなく、HSTモータ42の押し退け容積を調整してもよく、以下では、HSTモータ42の押し退け容積を調整する場合について説明する。
【0047】
ホイールローダ1の進行方向、すなわち前進又は後進の選択は、運転室12に設けられた前後進切換スイッチ62(
図4参照)によって行う。具体的には、オペレータが前後進切換スイッチ62で前進の位置に切り換えると、前進を示す前後進切換信号がコントローラ5に入力され、コントローラ5は、HSTポンプ41から吐出された圧油によって車体が前進方向となるように、ポンプ傾転を前進側にさせる指令信号をHSTポンプ41に対して出力する。そして、HSTポンプ41から吐出された圧油がHSTモータ42に導かれ、HSTモータ42が前進に対応する方向に回転して車体が前進する。車体の後進についても、同様の仕組みによって切り換わる。
【0048】
また、ホイールローダ1は、
図4に示すように、エンジン3により駆動されて作業機2に作動油を供給する荷役用油圧ポンプ43と、当該作動油を貯蔵する作動油タンク44と、リフトアーム21を操作するためのリフトアーム操作レバー210と、バケット23を操作するためのバケット操作レバー230と、リフトアームシリンダ22及びバケットシリンダ24のそれぞれと荷役用油圧ポンプ43との間に設けられて荷役用油圧ポンプ43からリフトアームシリンダ22及びバケットシリンダ24にそれぞれ供給される圧油の流れを制御するコントロールバルブ64と、を備える。
【0049】
荷役用油圧ポンプ43は、本実施形態では、固定式の油圧ポンプが用いられ、第1管路401によりコントロールバルブ64に接続されている。リフトアーム操作レバー210及びバケット操作レバー230はいずれも、運転室12(
図1参照)内に設けられている。例えば、オペレータがリフトアーム操作レバー210を操作すると、その操作量に比例したパイロット圧が操作信号として生成される。
【0050】
図4に示すように、生成されたパイロット圧は、コントロールバルブ64の一対の受圧室に接続された一対のパイロット管路64L,64Rに導かれて、コントロールバルブ64に作用する。これにより、コントロールバルブ64内のスプールが当該パイロット圧に応じてストロークし、作動油が流れる方向及び流量が決まる。コントロールバルブ64は、第2管路402によりリフトアームシリンダ22のボトム室に接続され、第3管路403によりリフトアームシリンダ22のロッド室に接続されている。
【0051】
荷役用油圧ポンプ43から吐出された作動油は、第1管路401に導かれ、コントロールバルブ64を介して第2管路402又は第3管路403に導かれる。作動油が第2管路402に導かれると、リフトアームシリンダ22のボトム室に流入し、これによりリフトアームシリンダ22のロッド220が伸長してリフトアーム21が上昇する。一方、作動油が第3管路403に導かれると、リフトアームシリンダ22のロッド室に流入し、リフトアームシリンダ22のロッド220が縮んでリフトアーム21が下降する。
【0052】
バケット23の操作についても、リフトアーム21の操作と同様に、バケット操作レバー230の操作量に応じて生成されたパイロット圧がコントロールバルブ64に作用することによってコントロールバルブ64のスプールの開口面積が制御され、バケットシリンダ24へ流出入する作動油量が調整される。なお、
図4では図示を省略しているが、リフトアーム21やバケット23の操作状態を検出するためのセンサ等が、油圧回路の各管路上に設けられている。
【0053】
(コントローラ5の構成)
次に、コントローラ5の構成について、
図7を参照して説明する。
【0054】
図7は、コントローラ5が有する機能を示す機能ブロック図である。
【0055】
コントローラ5は、CPU、RAM、ROM、HDD、入力I/F、及び出力I/Fがバスを介して互いに接続されて構成される。そして、リフトアーム操作レバー210やバケット操作レバー230、前後進切換スイッチ62といった各種の操作装置、及び圧力センサ72A,72Bや踏込量センサ610といった各種のセンサ等が入力I/Fに接続され、HSTポンプ41のポンプ用レギュレータ410やHSTモータ42のモータ用レギュレータ420、エンジン3等が出力I/Fに接続されている。
【0056】
このようなハードウェア構成において、ROMやHDD若しくは光学ディスク等の記録媒体に格納された演算プログラム(ソフトウェア)をCPUが読み出してRAM上に展開し、展開された演算プログラムを実行することにより、演算プログラムとハードウェアとが協働して、コントローラ5の機能を実現する。
【0057】
なお、本実施形態では、コントローラ5の構成をソフトウェアとハードウェアとの組み合わせにより説明しているが、これに限らず、ホイールローダ1の側で実行される演算プログラムの機能を実現する集積回路を用いて構成してもよい。
【0058】
図7に示すように、コントローラ5は、データ取得部51と、判定部52と、記憶部53と、時間計測部54と、モータ指令部55と、エンジン指令部56と、を含む。
【0059】
データ取得部51は、圧力センサ72A,72Bからそれぞれ出力された負荷圧力検出値Pに関するデータを取得する。判定部52は、圧力判定部52Aと、時間判定部52Bと、を含む。
【0060】
圧力判定部52Aは、データ取得部51で取得された負荷圧力検出値Pが、ホイールローダ1の平地走行時に対応する負荷圧力Pαよりも大きく、かつ作業機2による掘削動作時(車体の最大けん引力を必要とした作業時)に対応する負荷圧力Pγよりも小さい所定の圧力範囲(Pα<P<Pγ)に含まれているか否かを判定する。したがって、この「所定の圧力範囲」とは、前述した
図3に示す領域βにおける負荷圧力の範囲に相当する。
【0061】
時間判定部52Bは、後述する時間計測部54にて計測された計測時間tが所定の設定時間Tth以上であるか否かを判定する。ここで、「所定の設定時間Tth」とは、領域βに該当する動作、すなわちホイールローダ1の登坂走行やドージング作業を行っていることを判断することが可能な時間であり、例えば各動作の切り替え時やオペレータが誤ってアクセルペダル61を踏み込んでしまった場合等、HSTモータ42の負荷圧力が一瞬高くなるような場合の誤判定を排除するために設定された時間である。これにより、判定部52における誤判定が低減し、判定がより安定して精度が高くなる。
【0062】
記憶部53は、ホイールローダ1の平地走行時に対応する負荷圧力Pα、及び作業機2による掘削動作時に対応する負荷圧力Pγ、ならびに所定の設定時間Tthをそれぞれ記憶している。
【0063】
時間計測部54は、圧力判定部52Aにて負荷圧力検出値Pが所定の第2圧力範囲に含まれている(Pα<P<Pγ)と判定された時に時間の計測を開始し、負荷圧力検出値Pが所定の第2圧力範囲内に含まれている間の時間tを計測する。そして、時間計測部54は、圧力判定部52Aにて負荷圧力検出値Pが所定の圧力範囲に含まれない(P≦Pα又はP≧Pγ)と判定されると、時間tの計測を停止してリセットを行う。
【0064】
モータ指令部55は、圧力判定部52Aにて負荷圧力検出値Pが所定の圧力範囲に含まれている(Pα<P<Pγ)と判定された場合に、所定の圧力範囲内においてHSTモータ42の押しのけ容積qを最小値qminから最大値qmaxまで上昇させるモータ指令信号をHSTモータ42のモータ用レギュレータ420に対して出力する。
【0065】
本実施形態では、モータ指令部55は、圧力判定部52Aにて負荷圧力検出値Pが所定の圧力範囲に含まれている(Pα<P<Pγ)と判定され、かつ時間判定部52Bにて計測時間tが所定の設定時間Tth以上である(t≧Tth)と判定された場合に、モータ指令信号をHSTモータ42のモータ用レギュレータ420に対して出力する。
【0066】
エンジン指令部56は、圧力判定部52Aにて負荷圧力検出値Pが所定の圧力範囲に含まれている(Pα<P<Pγ)と判定された場合に、所定の圧力範囲内に限りエンジン3の最高回転速度Nmaxを第1エンジン最高回転速度Nmax1から第1エンジン最高回転速度Nmax1よりも大きい第2エンジン最高回転速度Nmax2(>Nmax1)に上昇させるエンジン指令信号をエンジン3に対して出力する。
【0067】
本実施形態では、エンジン指令部56は、圧力判定部52Aにて負荷圧力検出値Pが所定の圧力範囲に含まれている(Pα<P<Pγ)と判定され、かつ時間判定部52Bにて計測時間tが所定の設定時間Tth以上である(t≧Tth)と判定された場合に、エンジン指令信号をエンジン3に対して出力する。
【0068】
また、本実施形態では、エンジン指令部56は、圧力判定部52Aにて負荷圧力検出値Pが所定の圧力範囲に含まれない(P≦Pα又はP≧Pγ)と判定されると、第2エンジン最高回転速度Nmax2に上昇させたエンジン3の最高回転速度を第1エンジン最高回転速度Nmax1まで戻す指令信号をエンジン3に対して出力する。
【0069】
(コントローラ5内での処理)
次に、コントローラ5内で実行される具体的な処理の流れについて、
図8を参照して説明する。
【0070】
図8は、コントローラ5で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【0071】
まず、データ取得部51は、圧力センサ72A,72Bから出力された負荷圧力検出値Pを取得する(ステップS501)。
【0072】
次に、圧力判定部52Aは、ステップS501において取得した負荷圧力検出値Pに基づいて、当該負荷圧力検出値Pが、ホイールローダ1の平地走行時に対応する負荷圧力Pαよりも大きく、かつ作業機2による掘削動作時に対応する負荷圧力Pγよりも小さいか否か、すなわち所定の圧力範囲に含まれているか否かを判定する(ステップS502)。
【0073】
ステップS502において負荷圧力検出値Pが所定の圧力範囲に含まれている(Pα<P<Pγ)と判定された場合(ステップS502/YES)、時間計測部54は、時間tの計測を開始する(ステップS503)。続いて、時間判定部52Bは、ステップS503で計測された計測時間tが所定の設定時間Tth以上であるか否かを判定する(ステップS504)。
【0074】
ステップS504において計測時間tが所定の設定時間Tth以上である(t≧Tth)と判定された場合(ステップS504/YES)、モータ指令部55は、HSTモータ42の押しのけ容積qを最小値qminから最大値qmaxまで上昇させるモータ指令信号をモータ用レギュレータ420に対して出力する(ステップS505)。
【0075】
また、ステップS504において計測時間tが所定の設定時間Tth以上である(t≧Tth)と判定された場合(ステップS504/YES)、エンジン指令部56は、エンジン3の最高回転速度Nmaxを第1エンジン最高回転速度Nmax1から第2エンジン最高回転速度Nmax2(>Nmax1)まで上昇させるエンジン指令信号をエンジン3に対して出力する(ステップS506)。
【0076】
次に、データ取得部51は、圧力センサ72A,72Bから出力された負荷圧力検出値Pを再度取得する(ステップS507)。
【0077】
続いて、圧力判定部52Aは、ステップS507において再取得した負荷圧力検出値Pに基づいて、当該負荷圧力検出値Pが、所定の圧力範囲から外れたか否か、具体的には、ホイールローダ1の平地走行時に対応する負荷圧力Pα以下、又は作業機2による掘削動作時に対応する負荷圧力Pγ以上であるか否かを判定する(ステップS508)。
【0078】
ステップS508において負荷圧力検出値Pが所定の圧力範囲に含まれない(P≦Pα又はP≧Pγ)と判定された場合(ステップS508/YES)、時間計測部54は、時間tの計測を停止してリセットを行う(ステップS509)。
【0079】
そして、エンジン指令部56は、エンジン3の最高回転速度Nmaxを第2エンジン最高回転速度Nmax2から第1エンジン最高回転速度Nmax1に戻す指令信号をエンジン3に対して出力し(ステップS510)、コントローラ5における処理が終了する。
【0080】
ステップS502において負荷圧力検出値Pが所定の圧力範囲に含まれない(P≦Pα又はP≧Pγ)と判定された場合(ステップS502/NO)、ステップS504において計測時間tが所定の設定時間Tth未満である(t<Tth)と判定された場合(ステップS504/NO)、及びステップS508において再取得した負荷圧力検出値Pが所定の圧力範囲に含まれる(Pα<P<Pγ)と判定された場合(ステップS508/NO)、いずれもコントローラ5における処理が終了する。
【0081】
(コントローラ5による制御に伴う作用について)
次に、コントローラ5による制御に伴う作用について、
図9~12を参照して説明する。
【0082】
図9は、本実施形態におけるHSTモータ42の負荷圧力PとHSTモータ42の押しのけ容積qとの関係を示すグラフである。
図10は、本実施形態におけるHSTモータ42の負荷圧力Pとけん引力Fとの関係を示すグラフである。
図11は、コントローラ5による制御が実行された場合におけるアクセルペダル踏込量と目標エンジン回転速度との関係を示すグラフである。
図12は、コントローラ5による制御が実行された場合における車速とけん引力との関係を示すグラフである。
【0083】
図9及び
図10に示すように、HSTモータ42の負荷圧力Pが、ホイールローダ1の平地走行時に対応する負荷圧力Pαよりも大きく、かつ作業機2による掘削動作時に対応する負荷圧力Pγよりも小さい場合、すなわち圧力判定部52Aにおいて負荷圧力検出値Pが所定の圧力範囲内に含まれると判定されると(
図8に示すステップS502/YES)、HSTモータ42の押しのけ容積qを最小値qminから最大値qmaxまで一気に上昇させ、これに伴って車体のけん引力F(=HSTモータ42の負荷圧力P×HSTモータ42の押しのけ容積q)が一気に上昇する。
【0084】
このとき、
図11に示すように、エンジン3の最高回転速度Nmaxを第1エンジン最高回転速度Nmax1から第2エンジン最高回転速度Nmax2まで一気に上昇させるため、
図12に示す領域βでは、ホイールローダ1の車速も大きくなる。なお、
図11に示すように、第2エンジン最高回転速度Nmax2のときのアクセルペダル61の踏込量は、第1エンジン最高回転速度Nmax1に対応する踏込量S2よりも大きいS3となる(S3>S2)。また、
図12では、エンジン3の最高回転速度Nmaxを上昇させる前(=第1エンジン最高回転速度Nmax1)の走行性能線を一点鎖線で、エンジン3の最高回転速度Nmaxを上昇させた後(=第2エンジン最高回転速度Nmax2)の走行性能線を実線で、それぞれ示している。
【0085】
このように、ホイールローダ1が登坂走行やドージング作業を行う場合、すなわち領域βに該当する動作を行う場合には、けん引力Fを上昇させると共にエンジン3の最高回転速度Nmaxも上昇させるため、走行に使える馬力が増大し、走行性能を向上させることができる。他方、ホイールローダ1の平地走行や掘削動作を行う場合、すなわち領域α及び領域γのそれぞれに該当する動作を行う場合には、エンジン3の最高回転速度Nmaxは上昇させないため、燃費の低減を図ることができる。したがって、コントローラ5の制御により、ホイールローダ1では、燃費を低減しながらも、高い走行性能が必要な時だけ走行性能を向上させることが可能である。
【0086】
(変形例)
次に、本発明の変形例に係るホイールローダ1について、
図13及び
図14を参照して説明する。
図13及び
図14において、実施形態に係るホイールローダ1について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0087】
図13は、変形例におけるHSTモータ42の負荷圧力PとHSTモータ42の押しのけ容積qとの関係を示すグラフである。
図14は、変形例におけるHSTモータ42の負荷圧力Pとけん引力Fとの関係を示すグラフである。
【0088】
前述した実施形態では、モータ指令部55は、所定の圧力範囲内に含まれる任意の圧力値においてHSTモータ42の押しのけ容積qを最小値qminから最大値qmaxまで一気に上昇させたが、本変形例では、
図13に示すように、モータ指令部55は、所定の圧力範囲内における第1負荷圧力P1から第2負荷圧力P2に亘って、すなわち所定の幅を持たせてHSTモータ42の押しのけ容積qを最小値qminから最大値qmaxまで上昇させる。
【0089】
これにより、
図14に示すように、車体のけん引力Fも所定の幅(第1負荷圧力P1から第2負荷圧力P2まで)を持って上昇する。
【0090】
本変形例の場合であっても、実施形態で説明した作用及び効果と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0091】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明した。なお、本発明は上記した実施形態や変形例に限定されるものではなく、様々な他の変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態及び変形例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0092】
例えば、上記実施形態及び変形例では、作業車両の一態様としてホイールローダについて説明したが、これに限らず、例えばフォークリフトやトラクターといった作業機を備える作業車両や、作業機を備えていない道路作業用の車両等についても本発明を適用することが可能である。
【0093】
また、上記実施形態及び変形例では、荷役用油圧ポンプ43は固定容量型の油圧ポンプを用いたが、これに限らず、可変容量型の油圧ポンプを用いても良い。
【0094】
また、上記実施形態及び変形例では、コントローラ5は、圧力判定部52Aにおいて、領域βにおける負荷圧力の範囲、すなわちホイールローダ1の平地走行時に対応する負荷圧力Pαよりも大きく、かつホイールローダ1の最大けん引力を必要とした作業時に対応する負荷圧力Pγよりも小さい所定の圧力範囲(所定の第2圧力範囲)を判定の基準としていたが、これに限らず、領域β及び領域γを足し合わせた領域(領域β+領域γ)における負荷圧力の範囲、すなわちホイールローダ1の平地走行時に対応する負荷圧力Pαよりも大きい所定の第1圧力範囲(P>Pα)を判定の基準としてもよい。したがって、圧力判定部52Aは、圧力センサ72A,72Bで検出された負荷圧力検出値Pが所定の第1圧力範囲又は所定の第2圧力範囲に含まれているか否かを判定する。なお、この場合、コントローラ5では、
図8に示すステップS508においてP≦Pαであると判定された場合にのみステップS509へ進む。
【符号の説明】
【0095】
1:ホイールローダ(作業車両)
2:作業機
3:エンジン
5:コントローラ
11A:前輪
11B:後輪
41:HSTポンプ(走行用油圧ポンプ)
42:HSTモータ(走行用油圧モータ)
72A:第1圧力センサ(圧力検出器)
72B:第2圧力センサ(圧力検出器)
100A:地山(作業対象物)