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  • 特許-無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
B32B27/32 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018209756
(22)【出願日】2018-11-07
(65)【公開番号】P2020075400
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】592184876
【氏名又は名称】フタムラ化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】緩詰 宏
(72)【発明者】
【氏名】岡本 健太郎
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/163835(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/163836(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/018282(WO,A1)
【文献】特開2014-124818(JP,A)
【文献】特開2010-005935(JP,A)
【文献】特開2017-214530(JP,A)
【文献】特開2016-027172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 5/00-5/02,5/12-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、中間層、シーラント層の3層からなる無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムであって、
前記基材層はポリプロピレン系樹脂を主体とし、
前記中間層バイオマス由来ポリエチレン系樹脂を1重量%以上とメタロセン系触媒を用いて重合されたポリプロピレン系樹脂を25重量%以上とからなり、
前記シーラント層はポリプロピレン系樹脂を主体とする
ことを特徴とする無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム。
【請求項2】
前記基材層のポリプロピレン系樹脂がメタロセン系触媒を用いて重合された請求項に記載の無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム。
【請求項3】
前記中間層のバイオマス由来ポリエチレン系樹脂が直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂からなり、190℃において荷重2.16kgで測定されたメルトフローレートが1~5g/10min、密度が0.91~0.93g/cmである請求項1または2に記載の無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂フィルムは、透明性、剛性、耐熱性、耐薬品性、ヒートシール性等に優れているため、包装資材として極めて便利である。ポリプロピレン系樹脂フィルムは、各種食品の充填、例えばレトルト食品用包装材のシーラントフィルムや雑貨の包装、各種工業用として広く活用されている。この種の無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムでは、より広範な分野にわたっての利用を可能とすることを目的として、透明性、耐熱性、耐白化性、ヒートシール性等を備えた汎用性の高い製品が提案されている(特許文献1等参照)。
【0003】
近年では、再生可能資源の利用度を高めて環境負荷を軽減した循環型社会への取り組みが積極的に求められている。再生可能資源は、主に植物や植物由来の原料を加工した資源であり、バイオマス資源とも称される。バイオマス資源の場合、植物体の生育に伴い大気中の二酸化炭素は吸収される。そして、バイオマス資源として燃料等に利用されると再び水と二酸化炭素に分解される。従って、二酸化炭素の量は増えない。つまり、バイオマス資源はカーボンニュートラルの点から今後大きく取り入れる必要のある資源である。
【0004】
バイオマス資源は燃料用途の他に各種樹脂製品へも利用されていることから、発明者らは鋭意検討を重ね、包装分野において多用される無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムにおいて、優れた透明性や耐衝撃性を備えるとともに、バイオマス資源に由来する樹脂を用いて環境負荷の低減を図ったシーラントフィルムを開発するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-214530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記状況に鑑み提案されたものであり、透明性や耐衝撃性に優れるとともに、環境への負荷が低減された無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、請求項1の発明は、基材層、中間層、シーラント層の3層からなる無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムであって、前記基材層はポリプロピレン系樹脂を主体とし、前記中間層バイオマス由来ポリエチレン系樹脂を1重量%以上とメタロセン系触媒を用いて重合されたポリプロピレン系樹脂を25重量%以上とからなり、前記シーラント層はポリプロピレン系樹脂を主体とすることを特徴とする無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムに係る。
【0008】
請求項の発明は、前記基材層のポリプロピレン系樹脂がメタロセン系触媒を用いて重合された請求項に記載の無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムに係る。
【0009】
請求項の発明は、前記中間層のバイオマス由来ポリエチレン系樹脂が直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂からなり、190℃において荷重2.16kgで測定されたメルトフローレートが1~5g/10min、密度が0.91~0.93g/cmである請求項1または2に記載の無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムに係る。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明に係る無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムによると、基材層、中間層、シーラント層の3層からなる無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムであって、前記基材層はポリプロピレン系樹脂を主体とし、前記中間層バイオマス由来ポリエチレン系樹脂を1重量%以上とメタロセン系触媒を用いて重合されたポリプロピレン系樹脂を25重量%以上とからなり、前記シーラント層はポリプロピレン系樹脂を主体とするため、優れた透明性と耐衝撃性を備えながら、最終製品の環境負荷の低減を図ることができる。
【0011】
請求項の発明に係る無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムによると、請求項の発明において、前記基材層のポリプロピレン系樹脂がメタロセン系触媒を用いて重合されたため、より優れた透明性が得られる。
【0012】
請求項の発明に係る無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムによると、請求項1または2の発明において、前記中間層のバイオマス由来ポリエチレン系樹脂が直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂からなり、190℃において荷重2.16kgで測定されたメルトフローレートが1~5g/10min、密度が0.91~0.93g/cmであるため、透明性や耐衝撃性がより高められる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例に係る無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施例に係る無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム10の概略断面図である。この樹脂フィルム10は、基材層11と、中間層20と、シーラント層30とからなる積層フィルムである。この樹脂フィルム10は、各層の原料樹脂が溶融されてTダイ等から所定の厚さで吐出されるTダイ法等の公知の製造方法により製造される。当該樹脂フィルム10は、生鮮食品、加工食品、菓子類等の食品包装資材、洗剤、化粧品、その他薬剤等の包装資材等に好適に使用される。この他、適宜工業用等のフィルム製品にも使用することができる。
【0015】
基材層11は、ポリプロピレン系樹脂を主体として構成される層である。ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)や、プロピレンとエチレンやブテン等の他のオレフィンとの共重合体(プロピレンコポリマー)等のプロピレンを主体とする重合体から選択される。特に、ポリプロピレン系樹脂は、メタロセン系触媒を用いて重合された重合体が好ましい。メタロセン系触媒を用いることにより、優れた透明性が得られる。基材層11には、必要に応じてアンチブロッキング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、着色剤等の添加剤が添加される。
【0016】
中間層20は、基材層11に積層された層であり、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂単独、またはバイオマス由来ポリエチレン系樹脂を1重量%以上とポリプロピレン系樹脂とからなる。中間層20は、樹脂フィルム10に占める厚さが3分の1以上、好ましくは過半数以上である。
【0017】
バイオマス由来ポリエチレン系樹脂は、植物原料を加工して得られたポリエチレン系樹脂である。具体的には、サトウキビ等の植物原料から抽出された糖液から酵母によるアルコール発酵を経てエタノールを生成し、エチレン化したのち公知の樹脂化の工程でポリエチレンを製造する。このバイオマス由来ポリエチレン系樹脂は、最終製品の環境負荷の低減に寄与する。そこで、樹脂フィルム10の多くを占める中間層20においてバイオマス由来ポリエチレン系樹脂の重量配合割合が増すことにより、環境負荷の低減への寄与が高められる。
【0018】
実施例のバイオマス由来ポリエチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂からなり、190℃において荷重2.16kgで測定されたメルトフローレート(MFR)が1~5g/10min、密度が0.91~0.93g/cmである。これにより、透明性や耐衝撃性がより高められる。
【0019】
中間層20に含まれるポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)や、プロピレンとエチレンやブテン等の他のオレフィンとの共重合体(プロピレンコポリマー)等のプロピレンを主体とする重合体から選択される。特に、透明性の観点から、メタロセン系触媒を用いて重合された分子量分布が狭くポリエチレン系樹脂と相溶性の高いポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0020】
シーラント層30は、ポリプロピレン系樹脂を主体として構成されたヒートシール性能を備えた層であり、中間層20の基材層11と反対側に積層される。ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)や、プロピレンとエチレンやブテン等の他のオレフィンとの共重合体(プロピレンコポリマー)等のプロピレンを主体とする重合体から選択される。特に、ポリプロピレン系樹脂は、メタロセン系触媒を用いて重合された重合体が好ましい。メタロセン系触媒を用いることにより、優れた透明性が得られる。
【実施例
【0021】
[フィルムの作製]
試作例1~22のフィルムについて、後述の材料配合割合(重量%)に基づいて各材料を混練、溶融してTダイ法により共押出し、フィルムを製膜した。なお、以下の各使用材料において、MFRはJIS K 7210(2014)に準拠し、ポリエチレン系樹脂は190℃、ポリプロピレン系樹脂は230℃で測定されたメルトフローレートである。
【0022】
[基材層の使用材料]
基材層では、ポリプロピレン系樹脂として下記の樹脂PP1,樹脂PP2、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂として下記の樹脂PE1を使用した。
・樹脂PP1:メタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレンランダム共重合体(日本ポリプロ株式会社製,商品名「WFW4M」,MFR:7.0g/10min,密度:0.9g/cm
・樹脂PP2:チーグラー触媒を用いて重合されたポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製,商品名「FW4BT」,MFR:6.5g/10min,密度:0.9g/cm
・樹脂PE1:直鎖状低密度ポリエチレン(ブラスケム社製,商品名「SLH118」,MFR:1.0g/10min,密度:0.916g/cm
【0023】
[中間層の使用材料]
中間層では、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂として下記の樹脂PE1~PE5、バイオマス由来ではないポリエチレン系樹脂として下記の樹脂PE6、ポリプロピレン系樹脂として前記の樹脂PP1,樹脂PP2をそれぞれ使用した。
・樹脂PE1:直鎖状低密度ポリエチレン(ブラスケム社製,商品名「SLH118」,MFR:1.0g/10min,密度:0.916g/cm
・樹脂PE2:直鎖状低密度ポリエチレン(ブラスケム社製,商品名「SLH218」,MFR:2.3g/10min,密度:0.916g/cm
・樹脂PE3:直鎖状低密度ポリエチレン(ブラスケム社製,商品名「SLL318」,MFR:2.7g/10min,密度:0.918g/cm
・樹脂PE4:低密度ポリエチレン(ブラスケム社製,商品名「STN7006」,MFR:0.6g/10min,密度:0.924g/cm
・樹脂PE5:高密度ポリエチレン(ブラスケム社製,商品名「SGE7252」,MFR:2.2g/10min,密度:0.953g/cm
・樹脂PE6:直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製,商品名「ユメリット2040FC」,MFR:5.0g/10min,密度:0.919g/cm
【0024】
[シーラント層の使用材料]
シーラント層では、ポリプロピレン系樹脂として前記の樹脂PP1、ポリエチレン系樹脂として前記の樹脂PE2(バイオマス由来),樹脂PE6(バイオマス由来ではない)をそれぞれ使用した。
【0025】
[試作例1]
試作例1は、基材層がポリプロピレン系樹脂(樹脂PP1)100重量%、中間層がバイオマス由来ポリエチレン系樹脂(樹脂PE2)5重量%とポリプロピレン系樹脂(樹脂PP1)95重量%、シーラント層がポリプロピレン系樹脂(樹脂PP1)100重量%からなり、基材層と中間層とシーラント層の膜厚の比率が1:3:1とされたフィルムである。試作例1のフィルムは、密度が0.900g/cm、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の割合が3.0%である。
【0026】
[試作例2]
試作例2は、中間層がバイオマス由来ポリエチレン系樹脂(樹脂PE2)10重量%とポリプロピレン系樹脂(樹脂PP1)90重量%とされ、それ以外は試作例1と同一に形成されたフィルムである。試作例2のフィルムは、密度が0.901g/cm、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の割合が6.0%である。
【0027】
[試作例3]
試作例3は、中間層がバイオマス由来ポリエチレン系樹脂(樹脂PE2)20重量%とポリプロピレン系樹脂(樹脂PP1)80重量%とされ、それ以外は試作例1と同一に形成されたフィルムである。試作例3のフィルムは、密度が0.902g/cm、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の割合が12.0%である。
【0028】
[試作例4]
試作例4は、中間層がバイオマス由来ポリエチレン系樹脂(樹脂PE2)30重量%とポリプロピレン系樹脂(樹脂PP1)70重量%とされ、それ以外は試作例1と同一に形成されたフィルムである。試作例4のフィルムは、密度が0.903g/cm、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の割合が18.0%である。
【0029】
[試作例5]
試作例5は、中間層がバイオマス由来ポリエチレン系樹脂(樹脂PE2)40重量%とポリプロピレン系樹脂(樹脂PP1)60重量%とされ、それ以外は試作例1と同一に形成されたフィルムである。試作例5のフィルムは、密度が0.904g/cm、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の割合が24.0%である。
【0030】
[試作例6]
試作例6は、中間層がバイオマス由来ポリエチレン系樹脂(樹脂PE2)50重量%とポリプロピレン系樹脂(樹脂PP1)50重量%とされ、それ以外は試作例1と同一に形成されたフィルムである。試作例6のフィルムは、密度が0.905g/cm、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の割合が30.0%である。
【0031】
[試作例7]
試作例7は、中間層がバイオマス由来ポリエチレン系樹脂(樹脂PE2)75重量%とポリプロピレン系樹脂(樹脂PP1)25重量%とされ、それ以外は試作例1と同一に形成されたフィルムである。試作例7のフィルムは、密度が0.907g/cm、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の割合が45.0%である。
【0032】
[試作例8]
試作例8は、中間層がバイオマス由来ポリエチレン系樹脂(樹脂PE2)100重量%とされ、それ以外は試作例1と同一に形成されたフィルムである。試作例8のフィルムは、密度が0.910g/cm、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の割合が60.0%である。
【0033】
[試作例9]
試作例9は、基材層と中間層とシーラント層の膜厚の比率が1.5:2:1とされ、それ以外は試作例8と同一に形成されたフィルムである。試作例9のフィルムは、密度が0.907g/cm、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の割合が44.4%である。
【0034】
[試作例10]
試作例10は、基材層と中間層とシーラント層の膜厚の比率が1:1:1とされ、それ以外は試作例8と同一に形成されたフィルムである。試作例10のフィルムは、密度が0.905g/cm、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の割合が33.3%である。
【0035】
[試作例11]
試作例11は、基材層と中間層とシーラント層の膜厚の比率が1:6:1とされ、それ以外は試作例8と同一に形成されたフィルムである。試作例11のフィルムは、密度が0.912g/cm、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の割合が75.0%である。
【0036】
[試作例12]
試作例12は、中間層がバイオマス由来ポリエチレン系樹脂(樹脂PE1)30重量%とポリプロピレン系樹脂(樹脂PP1)70重量%とされ、それ以外は試作例1と同一に形成されたフィルムである。試作例12のフィルムは、密度が0.903g/cm、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の割合が18.0%である。
【0037】
[試作例13]
試作例13は、中間層がバイオマス由来ポリエチレン系樹脂(樹脂PE3)30重量%とポリプロピレン系樹脂(樹脂PP1)70重量%とされ、それ以外は試作例1と同一に形成されたフィルムである。試作例13のフィルムは、密度が0.903g/cm、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の割合が18.0%である。
【0038】
[試作例14]
試作例14は、中間層がバイオマス由来ポリエチレン系樹脂(樹脂PE4)30重量%とポリプロピレン系樹脂(樹脂PP1)70重量%とされ、それ以外は試作例1と同一に形成されたフィルムである。試作例14のフィルムは、密度が0.904g/cm、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の割合が18.0%である。
【0039】
[試作例15]
試作例15は、中間層がバイオマス由来ポリエチレン系樹脂(樹脂PE5)30重量%とポリプロピレン系樹脂(樹脂PP1)70重量%とされ、それ以外は試作例1と同一に形成されたフィルムである。試作例15のフィルムは、密度が0.909g/cm、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の割合が18.0%である。
【0040】
[試作例16]
試作例16は、中間層がバイオマス由来ポリエチレン系樹脂(樹脂PE6)30重量%とポリプロピレン系樹脂(樹脂PP1)70重量%とされ、それ以外は試作例1と同一に形成されたフィルムである。試作例16のフィルムは、密度が0.903g/cm、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の割合が0.0%である。
【0041】
[試作例17]
試作例17は、中間層がバイオマス由来ポリエチレン系樹脂(樹脂PE2)30重量%とポリプロピレン系樹脂(樹脂PP2)70重量%とされ、それ以外は試作例1と同一に形成されたフィルムである。試作例17のフィルムは、密度が0.903g/cm、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の割合が18.0%である。
【0042】
[試作例18]
試作例18は、基材層がポリプロピレン系樹脂(樹脂PP2)100重量%とされ、それ以外は試作例4と同一に形成されたフィルムである。試作例18のフィルムは、密度が0.903g/cm、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の割合が18.0%である。
【0043】
[試作例19]
試作例19は、シーラント層がポリプロピレン系樹脂(樹脂PP1)70重量%とポリエチレン系樹脂(樹脂PE6)30重量%とされ、それ以外は試作例4と同一に形成されたフィルムである。試作例19のフィルムは、密度が0.904g/cm、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の割合が18.0%である。
【0044】
[試作例20]
試作例20は、中間層がバイオマス由来ポリエチレン系樹脂を含まずにポリプロピレン系樹脂(樹脂PP1)100重量%とされ、それ以外は試作例1と同一に形成されたフィルムである。試作例20のフィルムは、密度が0.900g/cm、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の割合が0.0%である。
【0045】
[試作例21]
試作例21は、シーラント層がポリエチレン系樹脂(樹脂PE2)100重量%とされ、それ以外は試作例4と同一に形成されたフィルムである。試作例21のフィルムは、密度が0.906g/cm、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の割合が38.0%である。
【0046】
[試作例22]
試作例22は、基材層がポリエチレン系樹脂(樹脂PE1)100重量%とされ、それ以外は試作例4と同一に形成されたフィルムである。試作例22のフィルムは、密度が0.906g/cm、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂の割合が38.0%である。
【0047】
[ラミネートフィルムの作製]
試作例1~22について、さらに他のフィルムを積層(ラミネート)して、実際の製品を想定したラミネートフィルムを作製した。ラミネートフィルムは、積層用のフィルムの表面にドライラミネート用に調製した接着剤(東洋モートン株式会社製,主剤:TM-329,硬化剤:CAT-8B,溶剤:酢酸エチル)を約3g/m塗布し、いったん接着剤を乾燥させた後、試作例1~22のフィルムの表面に積層用のフィルムを貼り合わせ、順次ローラを通して両フィルム同士を密着させて得た。なお、積層用のフィルムには、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製,「FOR」,厚さ20μm)を使用した。
【0048】
[フィルムの性能の評価]
試作例1~22のフィルムに関し、ヘーズ、ダート衝撃強さ、引張弾性率、ヒートシール温度、ヒートシール強度の各項目についてそれぞれ測定した。また、各試作例1~22のフィルムを用いたラミネートフィルムのヘーズを測定するとともに破袋試験を行った。総合評価では、後述の各項目における評価のすべてで良好な結果が得られた場合に「良(○)」、いずれかで好ましくない結果が1つ以上得られた場合やバイオマス由来の樹脂が含まれない(配合割合が0%)場合に「不可(×)」とした。その結果を後述の表1~表4に示した。
【0049】
[ヘーズの測定]
ヘーズ(%)の測定は、透明性の指標であって、JIS K 7136(2000)に準拠し、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製,NDH-4000)を使用して測定を行った。試作例1~22のフィルムでは、測定結果が8%以下を良品とした。また、試作例1~22のフィルムを用いたラミネートフィルムでは、測定結果が9%以下を良品とした。
【0050】
[ダート衝撃強さの測定]
ダート衝撃強さ(J)の測定は、耐衝撃性の指標であって、JIS K 7124(1999)に準拠し、低温槽付ダートインパクトテスター(東洋精機製作所製)を使用して、0℃と23℃の温度条件で貫通破壊に要した仕事量をそれぞれ測定した。試作例1~22のフィルムでは、測定結果が0℃の場合に0.1J以上、23℃の場合に0.2J以上をそれぞれ良品とした。
【0051】
[引張弾性率の測定]
引張弾性率(GPa)の測定は、加工適性の指標の1つであって、JIS K 7127(1999)に準拠し、引張試験機(株式会社オリエンテック製,RTF-1310)を使用して測定した。試作例1~22のフィルムでは、測定結果が0.2GPa以上を良品とした。
【0052】
[ヒートシール温度の測定]
ヒートシール温度(℃)は、加工適性の指標の1つであって、JIS Z 1713(2009)に準拠して測定した。このとき、フィルムを50mm×250mm(フィルムの幅方向×長さ方向)の長方形の試験片(ヒートシール用)に裁断した。2枚の試験片のシーラント層同士を重ね、ヒートシール試験機(株式会社東洋精機製作所製,熱傾斜試験機)を使用し、ヒートシール圧力を0.4MPa、ヒートシール時間を1秒とした。そして、5℃ずつ温度を傾斜(昇温)する条件にてヒートシールした。このとき、ヒートシーラーの熱板と試験片フィルムの間に融着防止用のセロファンフィルムを挟んだ。ヒートシールにより融着した試験片を180°に開き、小型卓上試験機(株式会社島津製作所製,EZ-SX)により未シール部分をチャックに挟み、シール部分をT字剥離した。そして、ヒートシール強度が3Nに到達する温度を内挿して求めた。試作例1~22のフィルムでは、測定結果が165℃以下を良品とした。
【0053】
[ヒートシール強度の測定]
ヒートシール強度(N/15mm)の測定は、加工適性の指標の1つであって、JIS Z 0238(1998)に準拠して測定した。このとき、フィルムを50mm×250mm(フィルムの幅方向×長さ方向)の長方形の試験片(ヒートシール用)に裁断した。2枚の試験片のシーラント層同士を重ね、ヒートシール試験機(株式会社東洋精機製作所製,熱傾斜試験機)を使用し、ヒートシール圧力を0.4MPa、ヒートシール時間を1秒とした。そして、前述のヒートシール温度の測定で求めたヒートシール温度よりも15℃高い温度でヒートシールした。このとき、ヒートシーラーの熱板と試験片フィルムの間に融着防止用のセロファンフィルムを挟んだ。ヒートシールにより融着した試験片を180°に開き、小型卓上試験機(株式会社島津製作所製,EZ-SX)により未シール部分をチャックに挟み、シール部分をT字剥離し、ヒートシール強度を求めた。試作例1~22のフィルムでは、測定結果が6N/15mm以上を良品とした。
【0054】
[破袋試験]
破袋試験(回目)では、ラミネートフィルムを袋の内面が無延伸ポリプロピレンフィルムとなるように、サイズ130mm×180mmの3方袋を作成し、この中に水道水150mLを注入し、残りの開口部をインパルスシーラー(富士インパルス株式会社製,VG-400)により封止(1.0sec)して、サンプル袋とした。1mの高さからサンプル袋の平面部から着地させる水平落下をサンプル袋が破袋するまで実施し、破袋した時点の実施回数を試験結果とした。各試作例1~22のフィルムを用いたラミネートフィルムでは、試験結果が10回目以上を良品とした。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
[結果と考察]
表1~表4に示すように、総合評価が「不可(×)」となったのは試作例16,20,21,22であった。試作例16はフィルムの性能面では良好な結果が得られたが、バイオマス由来の樹脂が含まれないため、総合評価を「不可(×)」とした。試作例20は、バイオマス由来の樹脂が含まれず、さらにダート衝撃強さや破袋試験の耐衝撃性で良好な結果が得られなかった。耐衝撃性で十分な性能が得られなかったのは、中間層にポリエチレン系樹脂が含まれていないためだと考えられる。試作例21,22は、フィルム単体とラミネートフィルムの双方のヘーズで良好な結果が得られなかった。これは、基材層またはシーラント層がポリエチレン系樹脂のみで構成されているためだと考えられる。
【0060】
これに対し、総合評価が「良(○)」となったのは試作例1~15,17,18,19であった。これらの試作例は、基材層とシーラント層がポリプロピレン系樹脂を主体として構成され、中間層がバイオマス由来ポリエチレン系樹脂を含むように構成される。特に、試作例1~8から理解されるように、中間層において、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂を微量(配合割合5重量%)に含んで構成される場合も、単独(配合割合100重量%)で構成される場合も、フィルムの品質が良好であることがわかった。従って、中間層のバイオマス由来ポリエチレン系樹脂は、単独または1重量%以上含まれていればよいと考えられる。
【0061】
また、試作例1~8から理解されるように、ヘーズやヒートシール温度に関しては、中間層におけるバイオマス由来ポリエチレン系樹脂の配合割合は影響しなかった。一方、ダート衝撃強さ及び破袋試験の耐衝撃性は、中間層におけるバイオマス由来ポリエチレン系樹脂の配合割合が増加するほど増加する傾向があり、引張弾性率及びヒートシール強度の加工適性は、中間層におけるバイオマス由来ポリエチレン系樹脂の配合割合が増加するほど低下する傾向があることがわかった。そこで、耐衝撃性と加工適性とのバランスの観点から、中間層のバイオマス由来ポリエチレン系樹脂の好ましい配合割合は5~75重量%、より好ましくは10~50重量%である。
【0062】
試作例4,12~16から理解されるように、中間層に含まれるポリエチレン系樹脂の種類(PE1~PE6)がいずれであっても、フィルムの品質は良好であった。従って、中間層のポリエチレン系樹脂は、MFRが1~5g/10min、密度が0.91~0.93g/cmが好ましいと考えられる。また特に、試作例4,12,13,14,15から理解されるように、中間層のポリエチレン系樹脂に低密度ポリエチレンまたは高密度ポリエチレンを使用した試作例14,15と比較して、直鎖状低密度ポリエチレンを使用した試作例4,12,13のヘーズが良好であった。従って、中間層のバイオマス由来ポリエチレン系樹脂に直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を使用することで、優れた透明性が得られた。
【0063】
試作例8,9,10,11から理解されるように、中間層の膜厚の比率が他層の膜厚の比率より高くなるほどダート衝撃強さが増加する傾向がみられた。従って、中間層の膜厚を増加させることにより、耐衝撃性が高まることがわかった。
【0064】
試作例4,17,18から理解されるように、基材層または中間層にメタロセン触媒を使用しないポリプロピレン系樹脂を含む試作例17,18と比較して、メタロセン触媒を使用したポリプロピレン系樹脂を含む試作例4のヘーズが良好であった。従って、基材層または中間層にポリプロピレン系樹脂が含まれる場合、メタロセン触媒を使用したポリプロピレン系樹脂を使用することで、優れた透明性が得られた。
【0065】
試作例4,19から理解されるように、シーラント層にポリエチレン系樹脂を含む試作例19と比較して、ポリプロピレン系樹脂単独の試作例4のヘーズが良好であった。従って、シーラント層はポリプロピレン系樹脂を主体とする(ポリエチレン系樹脂の割合が少ない)ことで、より優れた透明性が得られると考えられる。
【0066】
以上説明したとおり、本発明の無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムは、ポリプロピレン系樹脂を主体とする基材層と、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂単独またはバイオマス由来ポリエチレン系樹脂を1重量%以上とポリプロピレン系樹脂とからなる中間層と、ポリプロピレン系樹脂を主体とするシーラント層の3層からなる。特にバイオマス由来ポリエチレン系樹脂を含むことにより、優れた透明性と耐衝撃性を備えながら、最終製品の環境負荷の低減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムは、バイオマス由来ポリエチレン系樹脂を含むことにより、優れた透明性と耐衝撃性を備えて、最終製品の環境負荷の低減を図ることができる。従って、新たなシーラントフィルム等への活用が期待できるとともに、バイオマス資源の活用に有利となる。
【符号の説明】
【0068】
10 無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム
11 基材層
20 中間層
30 シーラント層
図1