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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】多目的の複合窓を有する研磨パッド
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20221213BHJP
   B24B 37/013 20120101ALI20221213BHJP
   B24B 37/20 20120101ALI20221213BHJP
【FI】
H01L21/304 622F
B24B37/013
B24B37/20
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018214517
(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公開番号】P2019195040
(43)【公開日】2019-11-07
【審査請求日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】15/815,121
(32)【優先日】2017-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/185,725
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・アール・ガディンスキ
(72)【発明者】
【氏名】マウリシオ・イー・グスマン
(72)【発明者】
【氏名】ネスター・エー・バスケス
(72)【発明者】
【氏名】ガンフア・ホウ
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-542863(JP,A)
【文献】特表2013-525124(JP,A)
【文献】特開2014-104521(JP,A)
【文献】特表2008-516452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/013
B24B 37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路ウェーハを研磨するのに適した研磨パッドであって、
研磨されるべき物品と接触する上部研磨層であって、研磨表面を有する上部研磨層と;
上部研磨層中の少なくとも1つの溝であって、前記上部研磨層の研磨表面から下方に延在しており、かつ、ある深さを有する少なくとも1つの溝と、
上部層内に位置する少なくとも1つの透過性窓であって、少なくとも1つの溝の所望の摩耗の深さよりも大きな厚さを有し、かつ、非蛍光透過性ポリマー;および蛍光透過性ポリマーを含む少なくとも1つの透過性窓と
を含み:
透過性窓が、蛍光透過性ポリマーを励起するのに十分な波長の活性化源で蛍光透過性ポリマーを活性化することによって、溝深さを測定することを可能にし、かつ、蛍光透過性ポリマーおよび非蛍光透過性ポリマーを通して光を送ることによって終点検出を可能にする、研磨パッド。
【請求項2】
境界界面が非蛍光透過性ポリマーと蛍光透過性ポリマーとを分離する、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
境界界面が研磨パッドの研磨表面と平行である、請求項2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
境界界面が、パッド摩耗の連続的な決定のために研磨パッドの研磨表面に対してある角度をなす、請求項2に記載の研磨パッド。
【請求項5】
境界界面が少なくとも1つの溝の深さ未満であるかまたは同等な終了位置を有する、請求項2に記載の研磨パッド。
【請求項6】
蛍光透過性ポリマーが蛍光部分を含み、そして、蛍光部分が透過性ポリマーに化学的に結合している、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項7】
蛍光部分がアクリレート結合基を含有する、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項8】
蛍光部分がメタクリレート結合基を含有する、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項9】
蛍光透過性ポリマーが、非蛍光透過性ポリマーと等しい速度で摩耗し、そして、蛍光透過性ポリマーが、2-ナフチルアクリレート;9-アントラセニルメチルメタクリレート;および1-ピレニルメチルメタクリレートから選択される少なくとも1つの蛍光部分を含む、請求項1に記載の研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、現在係属中の2017年11月16日に出願された米国特許出願第15/815,121号の一部継続出願である。
【背景技術】
【0002】
化学機械平坦化(CMP)は、多層3次元電気回路を正確に構築するために、集積回路の構成の層を平らにするかまたは平坦化するのに広く使用されている研磨プロセスの一種である。研磨されるべき層は、典型的には、基礎となる基板上に堆積されている薄膜(10,000オングストローム未満)である。CMPの目的は、ウェーハ表面上の過剰の材料を取り除いて、均一の厚さの極めて平坦な層を作製することであり、前記均一性は、ウェーハ全域にわたって延在する。除去速度および除去の均一性の制御が最も重要である。
【0003】
CMPは、ナノサイズの粒子を含有する液体(しばしば、スラリーと呼ばれる)を利用する。これは、回転するプラテン上に搭載される回転する多層ポリマーシートまたはパッドの表面上に供給される。ウェーハは、独立した回転手段を有する独立した固定具またはキャリアに搭載されて、制御された負荷下でパッドの表面に押し付けられる。これは、ウェーハと研磨パッドとの間で高速の相対運動を導く。パッド/ウェーハ接合部で捕捉されたスラリー粒子は、ウェーハ表面を摩耗させ、除去を導く。速度を制御し、ハイドロプレーニングを防止し、かつ、ウェーハ下にスラリーを効率良く輸送するために、種々のタイプのテクスチャが研磨パッドの上部表面に組み込まれる。各種の微細ダイヤモンドでパッドを摩耗することによって、微細スケールのテクスチャが生成される。これは、除去速度を制御および増加させるために行われ、一般的に、コンディショニングと称される。また、種々のパターンおよび寸法(例えば、XY、円形、放射状)のより大きなスケールの溝が流体力学およびスラリー移送の調節のために組み込まれる。
【0004】
CMPにおける有意義な挑戦は、所望の程度の最終膜厚および均一性を成し遂げてきた。初期のCMPプロセスは、厚さ標的に到達するのに必要な時間量を、工学用モニターウェーハ上で測定される除去速度に基づいて推定した。これは、所望のレベルの制御を提供しなかった。したがって、様々な製造過程の膜測定デバイスが過去20年以上にわたって開発されてきた。SiOなどの透過性材料のCMPのために、光学技術が一般的に採用されてきた。広く使用されている技術は、ウェーハ表面から反射された光の干渉スペクトルから膜厚を算出する干渉法である。これらの光源は、一般に、300~800nmの波長範囲を有する白色光であり、そして、反射された光は、分光計を介して解析される。これは、CMPプロセス中の膜厚の算出を可能にし、プロセスを停止する正確な適時選択を可能にする。これは、しばしば、終点と呼ばれる。
【0005】
デバイスウェーハ中の配線構造は、ダマシンプロセスを使用した絶縁体および導体材料の多層製造によって構成される。このプロセスでは、絶縁体(例えば、SiO)の層が堆積され、そして、あるパターンの陥凹がフォトリソグラフィおよびエッチングを介して作製される。次いで、導電材料(例えば、Cu)の層が堆積されて、過剰の材料または過装入分と共に陥凹を完全に充填するが、これらの過剰の材料または過装入分は、電気的に絶縁された配線構造を作製するために除去されなければならない。この除去もまたCMPを使用して行われる。このプロセスでは、金属に対して高い研磨速度および絶縁体相に対して低い研磨速度を有する選択スラリーが使用される。CMPプロセスの極めて重要な部分は、過装入分が完全に除去されたまたは清浄された時点の正確な決定である。清浄時点後の過度な研磨は、残りの配線金属を摩損する傾向にあり、抵抗変動および不均一表面をもたらすことから、この決定は重要である。反射率を含む様々な測定技術が使用されている。一般的に採用されている反射率技術は、入射レーザーを使用して表面を照射する。反射率の程度は、反射された光から算出することができる。CuおよびSiOの場合では、銅の過装入分が除去されたときに反射率の急激な低下が観察される。これもまた、一般的に、終点と呼ばれる。
【0006】
光学的終点決定のために最も広く使用されている方法は、研磨パッドの真下でプラテンの下または内に測定装置を配置することである。反射率測定値が取得され得るように、透過性の開口部または窓がパッド内に提供される。これらの窓は、研磨装置製造業者によって使用される終点決定システムの特定の要件に応じて、多くの異なるデザイン、寸法、および数で作製され得る。これらの窓の極めて重要な要件は、機械の特定の詳細にかかわらず、以下の通りである:(a)複光路式光学測定のための適度の信号を提供する、十分な光学透過性;(b)窓は、漏洩を回避するために、機械的に強くかつ研磨パッドの残部に強固に接着されなければならない;(c)窓の機械的特性は、変形を回避するために周囲のパッドに厳密に合致しなければならない;そして、(d)窓のコンディショニング摩耗率は、パッドの耐用年数にわたって平面接触を維持するために、周囲のパッドに厳密に合致しなければならない。典型的なCMPパッドは、その最も単純な形態で、研磨されるべきウェーハと接触しかつ窓および溝を含有する上部層と、コンプライアンスを調整しかつウェーハに適合する最上層より高い圧縮率の副層と、パッドをプラテン上に保持する底部接着層とを有する、多層構造である。一般に、窓の厚さは、溝深さよりも大きく、パッドの最上層の厚さに合致する。今日生産されているCMPパッドの大部分は、それらに組み込まれた終点決定窓を有する。
【0007】
研磨パッドの寿命は、デバイス製造業者によって設定されている一定レベルの性能を維持するその能力によって決定される。パッド寿命を制限する最も一般的な要因は、除去速度のドリフトと、ウェーハ領域にわたる除去の均一性の永久的変化である。パッド摩耗は、両方の問題の主な根本的原因である。ダイヤモンドコンディショニングは、厚さの連続的な低下を伴って、上部パッド表面上の摩耗を引き起こす。これが進行するにつれて、溝深さは連続的に減少する。最終的に、溝は、必要な流体力学状態を維持できなくなり、パッド寿命の終わりに達する。実際には、パッド寿命の推定は困難である。溝深さの機械的測定には、研磨機の停止が必要であるが、そのことは、処理能力および稼働率を低下させる。パッド摩耗および溝深さの変化を測定するために使用される最も一般的な技術は、非接触表面測定である。これらのタイプのアプローチの例は、米国特許第6,040,244号(超音波干渉法)、および米国特許第9,138,860号(レーザーまたは渦電流式変位センサー)に見いだされる。そのような技術は、その表面全体にわたるパッドの厚さおよび形状の変化を測定してパッド摩耗率を決定することができるが、市販のシステムは、非常に高価で、かつ、旧来の研磨機に容易に組み込むことができない。
【0008】
したがって、あらゆる研磨機で使用できる、パッドそれ自体に内蔵されるパッド摩耗インジケータを提供する種々の手段が開発されてきた。
【0009】
米国特許第5,913,713号は、上部パッド層の裏側に一連の溝または空洞を作製することによってパッド摩耗インジケータを提供するための方法を開示した。これらは、不透明または高コントラストな材料で充填され得た。パッドが摩耗するにつれて、これらの埋め込まれた溝は視認できるようになり、オペレーターがコントラストの程度に基づいてパッド寿命の終わりを判定することが可能になる。様々な高さの一連の空洞を使用することによって、各層に達する時間を記録することによりパッド摩耗を推定することができた。この技術は、労働集約型であり、かつ、比較的主観による。
【0010】
米国特許第6,090,475号は、測色パッド摩耗インジケータを提供する代替手段を開示した。本出願人は、製造中に有色色素を上部パッド層の底部表面に適用したところ、これはパッド内に所定の部分深さまで拡散した。コンディショニング摩耗は、色素を露出させ、これによってパッド交換を必要とする程度までパッド摩耗が進行したことを示した。この方法は、制御が極めて困難であり、そして、さらに、寿命が尽きる前にパッド摩耗率を測定する手段を提供しない。
【0011】
米国特許第6,106,661号は、上部パッド層上にパッド摩耗インジケータを作製するための方法を開示した。パッド表面にわたる様々な深さおよび位置の一連の陥凹を、最上パッド層の前面または後面のいずれかに作製し、場合により対比色の材料で充填した。コンディショニングプロセスによるパッド摩耗は、異なる色のスポットの出現によって明らかになる埋め込まれたインジケータを露出させた。また、パッドが陥凹の深さまで摩滅されたときに消失する未充填の陥凹型の形体(feature)またはトレンチの、上部パッド層の最上面への採用も開示した。該特許では、先行技術についても発明の実施例についても、流体力学および輸送の制御のための溝の組み込みへの言及はなかったし、また、どの図面にも溝が示されていなかった。摩耗データは、コンプライアンスの制御のために、上部パッド層の全体的な薄層化を測定することに向けられた。該特許は、米国特許第5,913,713号と同様に、その技術が全体的なパッド摩耗率を提供できることを開示した。
【0012】
最近、米国特許公開第2017/0157733号は、さらに別のパッド摩耗モニタリング技術を開示した。上部パッド層の最上面から底部まである間隔でデザインが変化する様々なパターンの配列からなるパッド上の位置に、複数のマーカーパターンが積層される。パッドが摩耗するにつれて、異なるマーカーが露出される。これを機械視覚システムと組み合わせて、パッドにおける摩耗の進行状況を提供することができる。
【0013】
上に引用されたパッドに基づくアプローチの全ては、それらの広範な用途を妨げている重大な欠陥を有する。これらの欠陥は、以下を含む:(1)欠陥を含むことによる研磨パッド製造プロセスへの大幅な追加費用;(2)結果の解釈は、ほとんど主観的である;(3)該アプローチは、物理的に干渉性であり、パッドの研磨特性を変える可能性を有する;(4)研磨ツールに複数のマーカーまたは高価な追加の計測学を加えることなしに、マーカーの露出の前に、いつパッドが限界の摩耗の深さに近づくかを使用者が決定するための簡単な手段がない;そして、(5)これらのアプローチのどれも、大部分の研磨パッドに使用される既存の終点決定システムと適合性ではない。
【0014】
上の考察から、追加の計測学なしに連続的な摩耗データを提供でき、既に使用されている既存の終点特徴と適合性である、効果的なパッド摩耗インジケータを開発することができれば、当技術分野の水準の大幅な改善となるであろうことは明らかである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の陳述
本発明の一態様は、集積回路ウェーハを研磨するのに適した研磨パッドであって、研磨されるべき物品と接触する上部研磨層であって、研磨表面を有する上部研磨層と;上部研磨層中の少なくとも1つの溝であって、前記上部研磨層の研磨表面から下方に延在しており、かつ、ある深さを有する少なくとも1つの溝と、上部層内に位置する少なくとも1つの透過性窓であって、少なくとも1つの溝の所望の摩耗の深さよりも大きな厚さを有し、かつ、非蛍光透過性ポリマー;および蛍光透過性ポリマーを含む少なくとも1つの透過性窓とを含み;
透過性窓が、蛍光透過性ポリマーを励起するのに十分な波長の活性化源で蛍光透過性ポリマーを活性化することによって、溝深さを測定することを可能にし、かつ、蛍光透過性ポリマーおよび非蛍光透過性ポリマーを通して光を送ることによって終点検出を可能にする、研磨パッドを含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、ウェーハ終点検出で使用するためのCMP研磨パッド中の従来の窓の概略図である。
図2図2は、ウェーハ終点検出で使用するためのCMP研磨パッド中の蛍光窓の概略図である。
図3図3は、角度がついた境界界面を有する、連続的なパッド研磨パッド摩耗検出およびウェーハ終点検出の組み合わせを提供するためのCMP研磨パッド中の蛍光窓の概略図である。
図3a図3aは、溝深さの半分が残っている図3の概略図である。
図3b図3bは、溝深さが全く残っていない図3の概略図である。
図4図4a~4dは、紫外線放射で照射したときの、図3のパッドの上から見た蛍光画像の変化を説明しており、クロスハッチングは、蛍光の存在を示す。
図5図5は、実施例1に記載される親ポリマーの透過スペクトルを描画する。
図6図6は、実施例1に記載される蛍光ポリマーの蛍光スペクトルを描画する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明の本質的な特徴は、光学的終点決定システムでの使用に十分に機能的であるパッド摩耗インジケータおよび窓の複数の機能を提供するための、多層研磨パッドにおける複合的な開口部または窓の使用である。これは、パッド窓に2つの層を組み込むことによって達成される。1つの層は、従来の窓材料である。第二の層は、第一の層と同じポリマーを、ポリマー構造それ自体の一部である蛍光部分と一緒に使用して作製される。界面がパッドにおける溝の深さを基準にするように2つの層の相対厚さを調整することによって、パッドの使用中の上部層の摩損を溝摩耗インジケータとして採用することができる。
【0018】
図1を参照すると、先行技術のCMP研磨パッド(12)は、上部または最上パッド層(1)および下部パッド層(2)を含む、多層複合材料からなる。上部パッド層(1)は、研磨表面(1a)を有する。研磨表面(1a)は、研磨されるべき基板と接触する表面である。研磨層(1)は、上部パッド層(1)の全体の厚さ未満である深さ(5)を有する一連の溝(3)を有する。研磨表面(1a)はまた、単一成分のポリマーの光学的終点窓(4)を有し、その最上表面は、上部パッド層(1)の研磨表面(1a)と同一平面上にあり、そして、全体の厚さは、上部パッド層(1)の厚さと等しい。図1~4は、同じ成分の識別表示を含む。
【0019】
図2を参照すると、従来のパッド(4)の窓は、上部または最上パッド表面(1)と同じ平面に配置される2つの層(6)および(7)を有する複合ポリマー窓(4)に置き換わっている。場合により、2つの層(6)は、研磨表面(1a)の表面のすぐ下の高さを有してよい。上部窓層(6)と下部窓層(7)との間の境界界面(8)は、研磨表面(1a)と平行な平面上に位置し、その研磨表面(1a)からの距離は、パッド溝(6)の陥凹の深さ(5)よりわずかに小さい。この実施態様では、最上窓層(6)は、蛍光特性を有し、すなわち、それは、紫外線放射で照射されると発光する。下部層(7)は、蛍光ポリマーが存在しないこと以外は蛍光層(6)と同一の組成の非蛍光ポリマーである。パッド(12)が研磨機に搭載されると、パッドの上部表面の照射は、窓の領域から生じる蛍光の発光をもたらすであろう。パッドが集積回路ウェーハを研磨するために使用され、コンディショニングされるにつれて、パッド摩耗が、上部窓層(6)を含む上部形体の全てにわたって起こる。経時的に、上部パッド層(1)ならびに上部窓層(6)が連続的に減少する。最終的に、その摩耗の深さは、上部窓層(6)が完全に除去されるのに十分となる。この時点で、パッドの紫外線放射への曝露は、蛍光を生成しない。この蛍光応答の喪失は、パッドがその耐用年数の終わりに達しており、交換すべきであることを知らせる。複合ポリマー窓の境界界面(8)を任意の所望の摩耗の深さに対して調整することができることが認識される。有利なことには、境界界面は、少なくとも1つの溝の深さ未満であるかまたは同等な終了位置を有する。例えば、使用者が溝深さ(5)の80%除去でパッド寿命の終わりを判定することを望む場合、それに沿って複合窓の界面を設定することができる。
【0020】
有利なことには、上部層(1)および上部窓層(6)は、ダイヤモンドコンディショニング中、同じ速度で摩耗する。本発明のこの実施態様は、パッド摩耗の進行を示す精密な手段を提供しない。上部窓層(6)がより薄くなるにつれて、総蛍光は、比例して減少するものとは期待されず、とりわけUV照射波長が層の最小透過波長より低い場合にそうである。
【0021】
代替的に、層(6)および(7)の蛍光および非蛍光を入れ替えることも可能である。この実施態様では、蛍光の到達は、パッド寿命の終わりを示す。
【0022】
図3は、上部層(1)の摩耗を連続的に決定するための実施態様である。この蛍光複合窓(4)は、傾斜した境界界面(8)を上部窓層および下部窓層の下に採用する。その傾斜は、上部パッド層(1)および研磨層(1a)の最上面に対してある角度をなす。この実施態様では、上部窓層(6)の最も厚い部分が溝深さ(5)と同等である上部パッド層(1)表面未満の深さになるように、界面の角度が調整される。複合窓の反対側では、境界界面(8)は、パッド(12)の上部表面にある。紫外線照射下で上から見たとき、図4aに示す通り、複合窓の全域が蛍光を発する。
【0023】
パッドが使用され、そして、摩耗が始まると、上部表面における複合ポリマーウェーハ界面の位置は、下部複合窓層(7)の一部が露出されるにつれて、複合窓の端部から離れて移動する。複合窓最上層(6)のより小さい面積が存在するので、紫外線照射下で観察される蛍光の量はそれに従って低減する。摩耗が継続するにつれて、露出される下部複合窓層(7)の割合は、摩耗の量に正比例して増加し、そして、窓の蛍光面積は、パッド摩耗の深さが溝深さ(3)と同等となるまで正比例して減少する。
【0024】
図3aは、溝(3)が深さ(9)を有するまで摩滅された窓(4)を説明する。この時点で、最上窓層(6)の幅(10)は、その元の幅の50%まで低減する。図3bを参照すると、この時点で、溝(3)は、それらの残りの溝深さ(9)まで摩滅されている。したがって、パッドが紫外線放射で照射されたときに蛍光は生成されない。窓の蛍光を発する部分の幅は、溝深さに対するパッド摩耗の量と相関があるので、そのようなパッドの使用者は、パッドを紫外線照射下で観察することによって、簡単に溝摩耗の範囲を即座にかつ定量的に決定することができる。さらに、経時的な蛍光画像の幅の変化を、パッドの摩耗率を正確に算出するために使用することができる。
【0025】
最も有利なことには、上部層(1)および上部窓層(6)は、同じ速度で摩耗し;そして、蛍光最上層(6)および非蛍光下部複合層(7)もまた同じ速度で摩耗する。境界界面(8)は、最も有利なことには、少なくとも1つの溝の深さ未満であるかまたは同等な位置を有する。場合により、2つの層(6)および(7)は、研磨表面(1a)の表面のすぐ下の高さを有してよい。その高さがパッド最上層表面(1)の高さよりも低いとき、パッド摩耗と共に蛍光信号が変化し始める前に研磨時間のずれがある。
【0026】
図4a~4dは、図3の研磨パッド(12)の摩耗に伴う蛍光の変化を説明する。図4aは、作製されたそのままのパッドの蛍光画像を表す。複合窓の全域が蛍光を発する。図4bは、溝深さの50%が摩耗によって除去された時点での複合窓の蛍光画像を表す。複合窓の面積の50%だけが蛍光を発する。図4cは、溝深さの75%が除去されたときの複合窓の蛍光画像を表す。複合窓の面積の25%だけが蛍光を発する。図4dは、摩耗の深さが所望の溝の仕上げ深さと同等かまたはより大きいときの複合窓の蛍光画像を表す。蛍光は観察されない。有利なことには、境界界面は、少なくとも1つの溝の深さ未満であるかまたは同等な終了位置を有する。最終位置は、4aから4dへの経路に沿った任意の位置であることができる。最も有利なことには、最終位置は、蛍光信号が存在しない位置4dである。
【0027】
代替的に、層(6)および(7)の蛍光および非蛍光を入れ替えることも可能である。次いで、蛍光の増加は、研磨パッド摩耗及び最終的には研磨パッド寿命の終わりを示す。複合窓の幾何学を、パッドの寿命の終わりを判定するあらゆる所望の溝深さ、または所望のパッド摩耗の深さに適合するよう、容易に変更することができる。傾斜した境界界面(8)を含む限り、本発明の複合窓の形状および寸法全体を調整して、任意の光学的終点決定システム(例えば、長方形、円形、単一の窓または複数の窓)と適合させてよい。また、蛍光応答を検出および定量するために目視観察以外の方法を採用できることも認識される。これらは、機械視覚システム、分光光度検出および解析システム、ならびに既存の光学的終点決定システムの変更を含む。
【0028】
本発明の全ての実施態様の他の極めて重要な特徴は、複合窓が二重の目的を果たすことができることである。パッド摩耗をモニタリングするために使用される蛍光効果以外に、複合窓は、既存の光学的終点決定システム用の従来の窓として機能するよう設計される。この適合性は、現在使用されているものと同じまたは同等な基礎ポリマーを使用して、複合窓が共に使用される上部パッド層(1)と合致する機械的特性およびコンディショニング摩耗率を複合窓が有することを確保することによって達成される。したがって、本発明のパッドが摩耗率の懸念なしに単独で使用されているが、光学的終点能を必要とする場合、それは十分に適切である。同様に、終点決定能なしの研磨機で使用するために、複合窓構造をパッド摩耗モニタリングに使用することができる。当業者に認識されるであろう通り、多種多様なポリマーを本発明の複合窓の構造に使用してよく、そして、ここに示される特定の実例は、最終材料特性が要件を満たす限りは、決して限定を意味するものではない。
【0029】
本発明の複合窓の光学的終点決定システムとの適合性は、蛍光の潜在性が光学的終点決定システムそれ自体にエラーまたは悪影響を及ぼさないことを必要とする。現在の光学的終点決定システムは、300nmから1000nm超までの光源および検出器を使用するので、複合窓の透過性は、光学的終点決定装置に使用される光の波長に対応する範囲にわたって広がらなければならない。したがって、複合窓の蛍光層において生成される蛍光の励起波長は、本発明の複合窓の両方の層が光学的終点決定システムの使用を可能にする正味の透過性を有するように、光学的終点決定装置に使用される光の波長よりも大幅に低くなければならない。
【0030】
測定のためにHeNe波長(632.8nm)を使用した光学的終点決定システムとの適合性のために、多種多様な蛍光種を採用してよい。有用な部分の実例は、フルオレセイン含有化合物(励起波長~470nmおよび発光波長~511nm)である。発光スペクトルが終点決定目的に使用されるレーザーと干渉しないので、この特定の種は都合がよい。
【0031】
白色光システムのために、透過性は、400nmまで広がらなければならない。400nmで必要な高い光透過を提供するために、これは、複合窓の蛍光層において~350nm未満の励起波長を有する蛍光種の使用を必要とする。これは、蛍光種の数を、アントラセニル、ピレニルおよびナフチル(naphyl)含有化合物などの共役芳香族基を含有するものに限定する。これらの部分は全て、UVにおいて励起波長を有し、そして、検出システムにおいて使用される最低の波長のより低い透過限界に近い発光波長を有する。
【0032】
近紫外の光源を利用した終点決定システムとの適合性のために、窓のより低い透過窓は、~300nmのカットオフ波長に移動する。これはさらに、ナフチル含有種に蛍光種を制限する。
【0033】
本発明の物品における蛍光種の使用についての追加の考慮事項は、これらが使用中に窓から浸出すべきではないこと、または、これらがスラリー成分と反応性であるべきではないことである。したがって、理想的なアプローチは、ポリマー構造に蛍光種を組み込むことである。これを達成する最も好適な手段は、基礎インジケータ組成物としてUV硬化性結合基を含有するウレタン/アクリレートコポリマーを利用することである。UV硬化性結合基部分の有利な例は、アクリレート、メタクリレートおよびアクリルアミド結合基を含む。有利なことには、蛍光部分は、透過性UV硬化性ポリマーに化学的に結合される。重合プロセスに蛍光アクリレートモノマーを添加することによって、広範囲の濃度で所望の蛍光種を含有する構造的に結合したポリマーを生成することができる。より重要なことには、蛍光モノマーの添加を、合成において使用される他のアクリレートモノマーの部分的代用として行うことができる。これは、未ドープの親と同じ物理的および機械的特性を有する蛍光ポリマーの生成を可能にし、これは、十分に合致した複合窓を作製するのに好ましい。
【0034】
蛍光モノマーは、多種多様なフルオロフォアで市販されている。本発明における特定用途の蛍光モノマーは、9-アントラセニルメチルメタクリレート(励起波長362nm、発光波長407nm)、1-ピレニルメチルメタクリレート(励起波長339nm、発光波長394nm)、2-ナフチルアクリレート(励起波長285nm、発光波長345nm)、および2-ナフチルメタクリレート(励起波長285nm、発光波長345nm)である。最も有利なことには、蛍光透過性ポリマーは、2-ナフチルアクリレート;9-アントラセニルメチルメタクリレート;および1-ピレニルメチルメタクリレートから選択される少なくとも1つの蛍光部分を含む。
【0035】
本発明の複合窓の作製を、2つの別個の層を流し込み成形、調製、および接着すること、好ましくは、硬化した非蛍光ポリマーの硬化したシートの最上部に未硬化の蛍光ポリマーの層を流し込み成形して、流し込み成形複合物を硬化して2つの層体を作製することを非限定的に含む多数の技術を介して調製することができる。これは、欠陥を含まない非常に高い界面強度を有する複合シートを作製する。界面の平面と複合窓全体の物理的な平面との間に可変の角度差を有する最終複合窓を調製する簡単かつ費用効率の高い手段は、まず平面の複合シートを作製し、該シートをブランク材に切断し、そして、図3に示すような所望の境界界面角度および最終窓寸法を達成するように最上表面および底部表面を機械加工することである。
【0036】
仕上げ複合窓の作製に続いて、それを最終研磨パッドに組み込んでよい。最上パッド層の開口部に窓を挿入してそれを所定の位置に固定すること、超音波で溶接すること、または最上パッド層を窓の周辺に射出成形もしくは圧縮成形などの技術を介して流し込み成形して、複合窓が所定の位置に流し込み成形された単一の網形状の最上パッド層を作製することを非限定的に含む、多数の手段によって最終アセンブリを達成することができる。
【実施例
【0037】
3つの試料を作製して、特性および性能に対する基礎ポリマーの効果および蛍光種濃度の効果を評価した。試料1aおよび1bについて、Voranol(商標)220-110多官能性ポリオール55.8gを4,4’-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(H12MDI)と混合し、80℃に加熱し、4時間保持して基礎プレポリマーを作製した。試料2について、Adiprene(商標)L325ポリウレタンプレポリマーを入手したままで使用した。上記の合成したおよび市販のプレポリマーに、ヒドロキシエチルメタクリレート37gを加え、混合し、80℃で12時間保持した。これは、アクリレートで末端キャップされたポリウレタン試料を生成した。本明細書の目的のために、ウレタンポリマーは、ウレタン、ウレアおよびウレタンとウレアのブレンドを含む。これらを蛍光性にするために、2-ナフチル(napthyl)アクリレートモノマー0.0137g(100ppm)を試料1aおよび試料2に加え、そして、0.137g(1000ppm)を試料1bに加えた。これらの配合物の各々に、0.1wt%のカンファーキノンUV開始剤および0.2wt%のN-メチルジエタノールアミンを共開始剤として加えて溶解した。次いで、これらの混合物を別個に2つのガラスプレート間に注いで挟み込み、ハロゲンバルブを介して5分間UV光に曝露させた。
【0038】
窓が使用されるパッド(VP5000)と比較した試料の機械的特性を表1に示す。試料1の特性は、伸び率以外は充填ハードパッドの特性に厳密に合致することが見いだされた。これらの特性から、これらの摩耗率は、同等なままのはずである。
【0039】
【表1】
【0040】
未ドープの親ポリマー窓の透過スペクトルを図5に示す。試料1(蛍光モノマーなし)は、300nmまで許容可能な透過を実証する。試料2は、そうではなく、その配合物に組み込まれると限定された蛍光を示すはずである。さらに、試料2は、光学的終点決定において使用される限定された透過波長範囲を有し、それは本発明におけるその使用を望ましくないものにする。
【0041】
ドープされたポリマー窓の蛍光スペクトルを図6に示す。予想通り、UV光が材料を通って伝達できず、ポリマー構造に結合された2-ナフチルアクリレートを励起できないので、試料1aは限定された蛍光を示す。2-ナフチルアクリレートドーピングが同じレベルである試料1aは、2-ナフチルアクリレートの報告された発光波長である345nmで顕著なピークを示す。蛍光モノマー含量が一桁大きい試料1bは、蛍光モノマードーピングを増加させることによって蛍光を増加させることができることを示す。その一次蛍光強度はヒトの視覚の限度(380nm)よりも低いが、その広い発光スペクトルによってヒトが蛍光を紫色として観察できることに留意すべきである。
【0042】
まとめると、本発明は、単一透過性ポリマー窓におけるパッド摩耗および終点検出の組み合わせを提供する。本発明は、ツールを高価なハードウェアソリューションで改造する必要性を伴わない、パッドおよび溝の両方の摩耗を可能にする。最後に、角度がついた境界界面の使用は、研磨パッドの摩耗率および溝寿命をモニタリングするためのガス計器と同様に機能することができる。
図1
図2
図3
図3a
図3b
図4
図5
図6