(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ハイドレート製造装置、および、ハイドレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/00 20060101AFI20221213BHJP
C01B 13/10 20060101ALI20221213BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20221213BHJP
C07B 63/00 20060101ALI20221213BHJP
C07C 7/20 20060101ALI20221213BHJP
C07C 5/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B01J19/00 A
C01B13/10 Z
C01B32/50
C07B63/00 E
C07C7/20
C07C5/00
(21)【出願番号】P 2018220083
(22)【出願日】2018-11-26
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】592009281
【氏名又は名称】株式会社IHIプラント
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢島 智美
(72)【発明者】
【氏名】中村 至高
(72)【発明者】
【氏名】中山 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】森 美栄
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 亮
(72)【発明者】
【氏名】西塚 史郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮
(72)【発明者】
【氏名】戸村 重男
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-243862(JP,A)
【文献】特開2013-198882(JP,A)
【文献】特開2009-186180(JP,A)
【文献】特開2009-242734(JP,A)
【文献】国際公開第2012/057206(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00
C01B 13/10-11
C01B 32/50-55
C07B 63/00
C07C 5/00、7/20
C10L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも原料水が循環する循環路と、
前記循環路に設けられ、前記原料水および原料ガスを混合する気液混合部と、
前記循環路に設けられ、前記原料水を冷却する冷却部と、
前記冷却部の入口と出口との差圧、前記気液混合部の入口と出口の差圧、前記冷却部の入口と前記気液混合部の出口との差圧、または、前記冷却部の出口と前記気液混合部の入口との差圧を測定する差圧測定部と、
前記循環路を循環する原料水の流速を測定する流速測定部と、
前記差圧測定部によって測定された差圧
を、前記流速測定部によって測定された流速
で除算した制御値に基づいて、前記冷却部による前記原料水の冷却を停止させる制御部と、
を備えるハイドレート製造装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記冷却部によって冷却を開始した際の前記制御値に対する、前記制御値の比率が1.5以上の所定の閾値以上である場合に、前記冷却部による前記原料水の冷却を停止させる請求項
1に記載のハイドレート製造装置。
【請求項3】
前記原料水を加熱する加熱部を備え、
前記制御部は、前記冷却部による前記原料水の冷却を停止させる場合に、前記加熱部を駆動させて、前記循環路内、前記気液混合部内、および、前記冷却部内のうちいずれか1または複数の温度をハイドレートの平衡温度より2K以上の所定の温度まで増加させる請求項1
または2に記載のハイドレート製造装置。
【請求項4】
前記循環路に設けられたポンプを備え、
前記制御部は、前記冷却部による前記原料水の冷却を停止させる場合に、前記ポンプの駆動を維持して、前記循環路内、前記気液混合部内、および、前記冷却部内のうちいずれか1または複数の温度をハイドレートの平衡温度より2K以上の所定の温度まで増加させる請求項1から
3のいずれか1項に記載のハイドレート製造装置。
【請求項5】
少なくとも原料水を循環路に循環させ、
前記原料水を冷却部で冷却し、
前記原料水および原料ガスを気液混合部で混合し、
前記冷却部の入口と出口との差圧、前記気液混合部の入口と出口の差圧、前記冷却部の入口と前記気液混合部の出口との差圧、または、前記冷却部の出口と前記気液混合部の入口の差圧を測定し、
前記循環路を循環する原料水の流速を測定し、
測定した前記差圧
を、測定した前記流速
で除算した制御値に基づいて、前記冷却部による前記原料水の冷却を停止させるハイドレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハイドレート製造装置、および、ハイドレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クラスレートハイドレートは、水分子同士の水素結合によって形成されるクラスレート構造(籠状構造)の内部に、水分子以外の分子が包接された結晶である。クラスレートハイドレートにおける籠状構造を形成する水分子は、ホスト分子と称される。また、包接される(包み込まれる)分子はゲスト物質(ゲスト分子)と称される。
【0003】
このようなクラスレートハイドレートのうち、ゲスト物質としてガスを包接したものは、ガスハイドレートと呼ばれる。ガスハイドレートとして、例えば、メタンハイドレート、二酸化炭素ハイドレート、オゾンハイドレート等が知られている。ガスハイドレートは、自体の体積の120倍以上のゲスト物質を包蔵することができるため、ガス包蔵性が高い物質として注目されている。
【0004】
ハイドレートを製造する技術として、原料ガスと水(原料水)とを混合し、所定の温度に冷却することによってハイドレートを製造するハイドレート製造装置が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなハイドレート製造装置の運転中に、装置内でハイドレートが想定外に生成されてしまうと、装置を構成する配管等が閉塞するおそれがある。このため、配管等を閉塞させずに、装置を運転できる技術の開発が希求されている。
【0007】
そこで、本開示は、このような課題に鑑み、配管等の閉塞を防止することが可能なハイドレート製造装置、および、ハイドレートの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るハイドレート製造装置は、少なくとも原料水が循環する循環路と、循環路に設けられ、原料水および原料ガスを混合する気液混合部と、循環路に設けられ、原料水を冷却する冷却部と、冷却部の入口と出口との差圧、気液混合部の入口と出口の差圧、冷却部の入口と気液混合部の出口との差圧、または、冷却部の出口と気液混合部の入口との差圧を測定する差圧測定部と、循環路を循環する原料水の流速を測定する流速測定部と、差圧測定部によって測定された差圧を、流速測定部によって測定された流速で除算した制御値に基づいて、冷却部による原料水の冷却を停止させる制御部と、を備える。
【0010】
また、制御部は、冷却部によって冷却を開始した際の制御値に対する、制御値の比率が1.5以上の所定の閾値以上である場合に、冷却部による原料水の冷却を停止させてもよい。
【0013】
また、ハイドレート製造装置は、原料水を加熱する加熱部を備え、制御部は、冷却部による原料水の冷却を停止させる場合に、加熱部を駆動させて、循環路内、気液混合部内、および、冷却部内のうちいずれか1または複数の温度をハイドレートの平衡温度より2K以上の所定の温度まで増加させてもよい。
【0014】
また、ハイドレート製造装置は、循環路に設けられたポンプを備え、制御部は、冷却部による原料水の冷却を停止させる場合に、ポンプの駆動を維持して、循環路内、気液混合部内、および、冷却部内のうちいずれか1または複数の温度をハイドレートの平衡温度より2K以上の所定の温度まで増加させてもよい。
【0015】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るハイドレートの製造方法は、少なくとも原料水を循環路に循環させ、原料水を冷却部で冷却し、原料水および原料ガスを気液混合部で混合し、冷却部の入口と出口との差圧、気液混合部の入口と出口の差圧、冷却部の入口と気液混合部の出口との差圧、または、冷却部の出口と気液混合部の入口の差圧を測定し、循環路を循環する原料水の流速を測定し、測定した差圧を、測定した流速で除算した制御値に基づいて、冷却部による原料水の冷却を停止させる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、配管等の閉塞を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態にかかるハイドレート製造装置の概略的な構成を説明する図である。
【
図2】原料ガス供給部の概略的な構成を説明する図である。
【
図3】制御部による第1冷却部および加熱部の制御を説明する図である。
【
図4】第1の実施形態にかかるハイドレート製造装置による閉塞防止処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図5】第2の実施形態にかかるハイドレート製造装置の概略的な構成を説明する図である。
【
図6】第2の実施形態にかかるハイドレート製造装置による閉塞防止処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図7】第1の変形例のハイドレート製造装置の概略的な構成を説明する図である。
【
図8】第2の変形例のハイドレート製造装置の概略的な構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
[第1の実施形態:ハイドレート製造装置100]
図1は、第1の実施形態にかかるハイドレート製造装置100の概略的な構成を説明する図である。
図1に示すように、ハイドレート製造装置100は、循環路110と、貯留部120と、循環水ポンプ130と、気液混合部140と、第1冷却部150と、ハイドレートポンプ160と、第2冷却部162と、補給水供給部170と、原料ガス供給部180と、加熱部190と、差圧測定部200と、流速測定部210と、制御部220とを含む。なお、
図1中、実線の矢印は、ガス、液体、および、固体の流れを示し、破線の矢印は、信号の流れを示す。また、本実施形態では、補助ガスとして二酸化炭素を採用する場合を例に挙げて説明する。
【0021】
循環路110は、少なくとも原料水が循環する流路である。循環路110は、貯留部120外に配される環形状の配管で構成される。循環路110は、貯留部120の鉛直下部(原料水が収容される箇所)に接続される。
【0022】
貯留部120は、循環路110に設けられる。貯留部120は、例えば、断熱材で被覆された円筒形状の容器で構成される。貯留部120は、後述する第1冷却部150において生成されたハイドレート(オゾンハイドレート、酸素ハイドレート、二酸化炭素ハイドレート、および、オゾン-二酸化炭素ハイドレート)、原料水、および、未反応ガスを貯留する。なお、オゾンハイドレートは、ゲスト分子としてオゾンが包接されたハイドレートである。酸素ハイドレートは、ゲスト分子として酸素が包接されたハイドレートである。二酸化炭素ハイドレートは、ゲスト分子として二酸化炭素が包接されたハイドレートである。オゾン-二酸化炭素ハイドレートは、ゲスト分子としてオゾンおよび二酸化炭素が包接されたハイドレートである。
【0023】
循環水ポンプ130(ポンプ)は、循環路110に設けられる。循環水ポンプ130は、貯留部120側に吸入口が接続され、後述する気液混合部140側に吐出口が接続される。循環水ポンプ130は、制御部220による制御処理に応じて駆動される。循環水ポンプ130が駆動されると、貯留部120に貯留された原料水は、循環路110および貯留部120を循環する。
【0024】
気液混合部140は、循環路110における循環水ポンプ130の吐出側に設けられる。気液混合部140は、後述する原料ガス供給部180から供給される原料ガス(オゾン、酸素、および、二酸化炭素)と、循環水ポンプ130から供給された原料水とを混合する。気液混合部140は、例えば、液相(原料水)において原料ガスの気泡(マイクロバブル)が実質的に均等に分布するようなミキサーで構成される。
【0025】
第1冷却部150(冷却部)は、循環路110における気液混合部140と貯留部120との間に設けられる。第1冷却部150には、気液混合部140によって原料ガスが混合(溶解)された原料水(以下、「混合水」と称する場合がある)が供給される。第1冷却部150は、例えば、シェルアンドチューブや二重管型の熱交換器であり、R-404A等の冷却媒体によって混合水を冷却する。第1冷却部150は、オゾンハイドレートの生成圧力条件におけるオゾンハイドレートの生成温度条件(例えば、272K(-1℃)~275K(2℃)程度)まで混合水を冷却する。これにより、第1冷却部150において、ハイドレートが生成されることになる。なお、オゾンハイドレートの生成圧力条件(飽和圧力条件)は、例えば、1.2MPa~3.5MPaである。
【0026】
また、本実施形態では、補助ガスとして二酸化炭素が原料ガスに含まれている。二酸化炭素は、オゾンハイドレートの生成反応を促進する促進物質として機能する。二酸化炭素を原料ガスに含ませてオゾンハイドレートを生成することにより、オゾンハイドレートの生成圧力を低減させたり、生成温度を高くしたりすることが可能となる。これにより、気液混合部140、後続の機器および配管等の設計圧力を低減することができる。したがって、ハイドレート製造装置100は、原料ガスの昇圧や気液混合部140、後続の機器および配管等に要するコストを削減することが可能となる。
【0027】
また、気液混合部140は、反応に適した気泡径の状態でオゾンと水とを接触させている。これにより、極小バブルによるバブル内の異常昇圧を回避することが可能となる。したがって、異常昇圧に伴う温度上昇によるオゾンの減衰を防止することができる。さらに、ハイドレートの微細化を防止できるため、貯留部120において分離し易いハイドレートを生成することが可能となる。
【0028】
こうして、第1冷却部150において生成されたハイドレートは、貯留部120へ送出される。なお、ハイドレートの生成反応は、原料水と気泡(マイクロバブル)との混合接触によって行われる。このため、ハイドレートの生成反応時間は、気泡の表面積と水との混合状態によって異なるが、例えば、気泡径が100μm~200μmでは、約80%の収率で5~15秒程度である。したがって、第1冷却部150のみならず、第1冷却部150から貯留部120へ送出される間にもハイドレートが生成される。
【0029】
また、第1冷却部150におけるガス中のオゾン濃度が、オゾンハイドレートの生成濃度条件未満となると、オゾンハイドレートの生成反応は進行しなくなる。このため、オゾンハイドレートの生成濃度条件未満となった未反応ガスは、ハイドレート、および、原料水とともに、混合物となって貯留部120に送出される。
【0030】
そして、貯留部120は、ハイドレートの生成をさらに行うとともに、混合物を、ハイドレート、未反応ガス、および、原料水へと分離する。ハイドレートの比重は1.15程度であり、原料水の比重1.0程度よりも大きい。したがって、比重差によって、ハイドレートは、貯留部120の底部に沈降し、ガスである未反応ガスは、貯留部120の上部の気相部に滞留することとなる。つまり、混合物を貯留部120に導入して静置するだけで、比重差によってハイドレート、未反応ガス、および、原料水に分離することができる。
【0031】
なお、本実施形態では、混合物が貯留部120の接線方向に噴射されて導入される。これにより、混合物を貯留部120内で旋回させ、ハイドレートの結晶を凝集させて分離しやすくし、分離効率を向上させることができる。また、未反応ガスの気泡と水との接触効率を向上させることができ、貯留部120におけるハイドレートの生成効率を向上させることが可能となる。
【0032】
このようにして、貯留部120によって分離されたハイドレートは、ハイドレートポンプ160により、第2冷却部162に送出される。そして、第2冷却部162において、ハイドレートは、長期間保存したときの減衰率を低減するために、-25℃程度まで冷却される。第2冷却部162によって冷却されたハイドレートは、貯蔵部において貯蔵される。
【0033】
また、ハイドレートポンプ160に導入されるハイドレートに随伴される原料水は、約60質量%~約90質量%であり、ハイドレートに随伴された原料水は、ハイドレートポンプ160によって、例えば30質量%程度まで減水される。こうして、ハイドレートポンプ160によって分離された分離水は、バルブ164を介して循環路110に導入される。
【0034】
一方、貯留部120によって分離された原料水は、上記分離水とともに循環水ポンプ130によって循環路110を循環することとなる。また、貯留部120によって分離された未反応ガスは、圧力調整弁122を通じて外部(例えば、デオゾナイザ)に排気される。
【0035】
圧力調整弁122は、制御部220によって、貯留部120内の気相(未反応ガス)の圧力がオゾンハイドレートの生成圧力条件に維持されるように開度が調整される。
【0036】
補給水供給部170は、ハイドレートの生成によって減少した分(結晶水分)の水(補給水)を循環路110に供給する。これにより、貯留部120において、未反応ガス中の原料ガスを吸収して回収することができる。
【0037】
原料ガス供給部180は、気液混合部140に原料ガスを供給する。
図2は、原料ガス供給部180の概略的な構成を説明する図である。
図2に示すように、原料ガス供給部180は、オゾン発生器250と、オゾン供給管252と、流量調整弁254と、補助ガス供給源260と、補助ガス供給管262と、流量調整弁264と、原料ガス供給管270とを含む。なお、
図2中、実線の矢印は、ガスの流れを示し、破線の矢印は、信号の流れを示す。
【0038】
オゾン発生器250は、例えば、オゾナイザである。オゾン発生器250には、不図示の酸素供給源(例えば、酸素ボンベ、PSA(Pressure Swing Adsorption)装置等)から酸素が供給される。そして、オゾン発生器250において、放電環境下に酸素が曝されることにより、オゾンを含むガス(例えば、10質量%以上、0.4MPa程度)が生成される。オゾン発生器250において生成されたオゾンおよび酸素を含むガス(以下、単に「オゾン」と称する)は、オゾン供給管252、および、原料ガス供給管270を通じて気液混合部140に供給される。
【0039】
オゾン供給管252は、オゾン発生器250と原料ガス供給管270とを接続する。流量調整弁254は、オゾン供給管252に設けられる。
【0040】
補助ガス供給源260は、二酸化炭素(補助ガス)の供給源である。補助ガス供給源260は、例えば、液化二酸化炭素ボンベ等の二酸化炭素を貯留する容器である。補助ガス供給源260に貯留された二酸化炭素は、補助ガス供給管262、および、原料ガス供給管270を通じて気液混合部140に供給される。
【0041】
補助ガス供給管262は、補助ガス供給源260と原料ガス供給管270とを接続する。流量調整弁264は、補助ガス供給管262に設けられる。
【0042】
図1に戻って説明すると、加熱部190は、原料水(混合水および混合物)を加熱する。本実施形態において、加熱部190は、第1冷却部150に供給される冷却媒体を加熱することで、原料水を加熱する。加熱部190の具体的な構成については、後に詳述する。
【0043】
差圧測定部200は、第1冷却部150の入口と出口との差圧を測定する。
【0044】
流速測定部210は、循環路110を循環する原料水の流速を測定する。本実施形態において、流速測定部210は、循環路110における、貯留部120と循環水ポンプ130の吸入側との間を通過する原料水の流速を測定する。
【0045】
制御部220は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。制御部220は、ROM(Read Only Memory:読み出し専用メモリ)からCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。制御部220は、ワークエリアとしてのRAM(Random Access Memory:読み書き可能なメモリ)や他の電子回路と協働してハイドレート製造装置100全体を管理および制御する。
【0046】
本実施形態において、制御部220は、原料ガス供給部180を構成する流量調整弁254、264、循環水ポンプ130、第1冷却部150、および、加熱部190を制御する。
【0047】
制御部220は、気液混合部140に供給される原料ガス中のオゾンと二酸化炭素とが、所定の割合(例えば、二酸化炭素が60質量%、オゾンが40質量%)となり、気液混合部140に供給する原料ガスの流量が所定の供給流量となるように、流量調整弁254、264の開度を調整する。なお、本実施形態において、制御部220は、流量調整弁254を開弁して所定の開度に維持し、流量調整弁264の開度を調整することで、原料ガス中の二酸化炭素の割合と、原料ガスの供給流量を制御する。
【0048】
また、制御部220は、循環路110を循環する原料水の流量が所定の循環流量となるように、循環水ポンプ130を制御する。さらに、制御部220は、第1冷却部150を運転させる。
【0049】
また、制御部220は、差圧測定部200によって測定された差圧、および、流速測定部210によって測定された流速に基づいて、第1冷却部150による原料水(混合水)の冷却を停止させる。具体的に説明すると、制御部220は、第1冷却部150によって冷却を開始した際の制御値(以下、「初期値」と称する)に対する、制御値の比率(制御値/初期値)が1.5以上の所定の閾値以上である場合に、第1冷却部150による原料水の冷却を停止させる。なお、制御値は、差圧を流速で除算した値(差圧/流速)である。具体的に説明すると、制御値は、下記式(1)から算出される。
制御値 = ΔP / u7/4 …式(1)
上記式(1)において、ΔP[MPa]は差圧を示す。uは、循環路110内の原料水の流速[m/s]を示す。
【0050】
また、閾値は、1.5以上3.0以下の所定の値(例えば、2.0)である。
【0051】
また、制御部220は、第1冷却部150による原料水の冷却を停止させる場合に、加熱部190を駆動させて、循環路110内、気液混合部140内、および、第1冷却部150内のうちいずれか1または複数の温度を、ハイドレートの平衡温度より2K以上8K以下の所定の温度まで増加させる。
【0052】
図3は、制御部220による第1冷却部150および加熱部190の制御を説明する図である。なお、
図3中、実線の矢印は、混合水、混合物、および、冷却媒体の流れを示し、破線の矢印は、信号の流れを示す。
【0053】
図3に示すように、第1冷却部150は、本体152と、冷媒供給管154と、冷媒通過管156と、冷媒排出管158と、バルブ154a、158aとを含む。本体152は、循環路110に設けられる。原料水と原料ガスとを含む混合水は、本体152内を通過する。
【0054】
冷媒供給管154は、冷却媒体の供給源(冷却媒体の冷却源)と、冷媒通過管156とを接続する。冷媒通過管156は、本体152内に設けられる。冷媒排出管158は、冷媒通過管156と冷却媒体の供給源とを接続する。バルブ154aは、冷媒供給管154に設けられる。バルブ158aは、冷媒排出管158に設けられる。
【0055】
加熱部190は、冷媒抜出管192と、加熱器194と、冷媒返送管196と、バルブ192a、196aとを含む。冷媒抜出管192は、冷媒排出管158におけるバルブ158aの上流側と、加熱器194とを接続する。加熱器194は、例えば、電気ヒータで構成される。加熱器194は、冷却媒体を加熱する。冷媒返送管196は、加熱器194と、冷媒供給管154におけるバルブ154aの下流側とを接続する。バルブ192aは、冷媒抜出管192に設けられる。バルブ196aは、冷媒返送管196に設けられる。
【0056】
制御部220は、初期値に対する制御値の比率が閾値未満であると判定した場合、バルブ154a、158aを開弁する、または、バルブ154a、158aの開弁状態を維持する。また、この際、制御部220は、バルブ192a、196aを閉弁する、または、バルブ192a、196aの閉弁状態を維持する。さらに、制御部220は、この際、加熱器194の駆動を停止させる、または、加熱器194の停止を維持する。
【0057】
一方、制御部220は、初期値に対する制御値の比率が閾値以上であると判定した場合、バルブ154a、158aを閉弁する、または、バルブ154a、158aの閉弁状態を維持する。また、この際、制御部220は、バルブ192a、196aを開弁する、または、バルブ192a、196aの開弁状態を維持する。さらに、制御部220は、この際、加熱器194の駆動を開始させる、または、加熱器194の駆動を維持する。
【0058】
[ハイドレートの製造方法]
続いて、ハイドレート製造装置100を用いたハイドレートの製造方法について説明する。初期状態において、制御部220は、気液混合部140に供給する原料ガスの流量が所定の供給流量となるように、流量調整弁254、264の開度を調整する。また、制御部220は、循環路110を循環する原料水の流量が所定の循環流量となるように、循環水ポンプ130を制御する。さらに、制御部220は、バルブ154a、158aを開弁して、第1冷却部150の運転を開始する。
【0059】
こうして、少なくとも原料水が循環路110を循環し、気液混合部140によって原料水および原料ガスが混合され、第1冷却部150によって混合水(原料水および原料ガス)が冷却される。これにより、ハイドレート製造装置100において、オゾンハイドレート、酸素ハイドレート、二酸化炭素ハイドレート、および、オゾン-二酸化炭素ハイドレートが生成される。
【0060】
また、制御部220は、バルブ192a、196aを閉弁し、加熱器194を停止させておく。
【0061】
さらに、差圧測定部200は、第1冷却部150によって冷却を開始した際の差圧を測定する。また、流速測定部210は、第1冷却部150によって冷却を開始した際の流速を測定する。そして、制御部220は、初期値(第1冷却部150によって冷却を開始した際の制御値)を算出する。制御部220は、算出した初期値を不図示のメモリに記憶させておく。
【0062】
そして、本実施形態において、所定の時間間隔毎に生じる割込によって閉塞防止処理が繰り返し遂行される。
【0063】
図4は、第1の実施形態にかかるハイドレート製造装置100による閉塞防止処理の流れを説明するフローチャートである。
図4に示すように、第1の実施形態にかかる閉塞防止処理は、差圧測定工程S110と、流速測定工程S120と、制御値算出工程S130と、比率算出工程S140と、第1判定工程S150と、第2判定工程S160と、第3判定工程S170と、停止工程S180と、再開工程S190とを含む。
【0064】
[差圧測定工程S110]
差圧測定部200は、第1冷却部150の入口と出口との差圧を測定する。
【0065】
[流速測定工程S120]
流速測定部210は、循環路110を循環する原料水の流速を測定する。
【0066】
[制御値算出工程S130]
制御部220は、差圧測定工程S110において測定した差圧、および、流速測定工程S120において測定した流速に基づいて、制御値(差圧/流速)を算出する。
【0067】
[比率算出工程S140]
制御部220は、メモリを参照し、初期値に対する制御値の比率(制御値/初期値)を算出する。
【0068】
[第1判定工程S150]
制御部220は、比率が第1閾値以上であるか否かを判定する。その結果、比率が第1閾値以上であると判定した場合に(S150におけるYES)、制御部220は、第2判定工程S160に処理を移す。一方、比率が第1閾値以上ではない、つまり、比率が第1閾値未満であると判定した場合に(S150におけるNO)、再開工程S190に処理を移す。なお、第1閾値は、例えば、2.0である。
【0069】
[第2判定工程S160]
制御部220は、比率が第2閾値以上であるか否かを判定する。その結果、比率が第2閾値以上であると判定した場合に(S160におけるYES)、制御部220は、停止工程S180に処理を移す。一方、比率が第2閾値以上ではない、つまり、比率が第2閾値未満であると判定した場合に(S160におけるNO)、制御部220は、第3判定工程S170に処理を移す。なお、第2閾値は、第1閾値より大きい値である。第2閾値は、例えば、3.0である。
【0070】
[第3判定工程S170]
制御部220は、流速測定工程S120で測定した流速が、所定の下限値未満であるか否かを判定する。その結果、流速が下限値未満であると判定した場合には(S170におけるYES)、制御部220は、停止工程S180に処理を移す。一方、流速が下限値未満ではない、つまり、下限値以上であると判定した場合には(S170におけるNO)、制御部220は、再開工程S190に処理を移す。なお、下限値は、例えば、第1冷却部150によって冷却を開始した際の原料水の流速(初期状態の流速)の1/2の流速である。
【0071】
[停止工程S180]
制御部220は、バルブ154a、158aを閉弁する。これにより、第1冷却部150による原料水の冷却が停止される。
【0072】
また、制御部220は、バルブ192a、196aを開弁する。そして、制御部220は、加熱器194を駆動させる。
【0073】
[再開工程S190]
制御部220は、バルブ154a、158aが閉弁されていれば、開弁する。制御部220は、バルブ154a、158aが開弁されていれば、開弁状態を維持する。
【0074】
また、制御部220は、バルブ192a、196aが開弁されていれば、閉弁する。制御部220は、バルブ192a、196aが閉弁されていれば、閉弁状態を維持する。
【0075】
さらに、制御部220は、加熱器194が駆動されていれば、停止させる。制御部220は、加熱器194が停止されていれば、停止状態を維持する。
【0076】
以上説明したように、本実施形態のハイドレート製造装置100およびハイドレートの製造方法は、原料ガス中に二酸化炭素を含有させるため、二酸化炭素を含有させない場合と比較して、オゾンハイドレートの生成反応を低圧で進行させることができる。これにより、オゾンの減衰率(減衰量)を低減することが可能となる。
【0077】
また、本実施形態のハイドレート製造装置100およびハイドレートの製造方法では、比率が閾値以上になると、制御部220は、第1冷却部150による原料水の冷却を停止させる。これにより、循環路110内、気液混合部140内、および、第1冷却部150内のハイドレートによる閉塞を未然に防止することが可能となる。
【0078】
なお、上記したように、閾値は、1.5以上の所定の値である。具体的に説明すると、比率が1.5であると、第1冷却部150によって冷却を開始した際の原料水の流速(初期状態の流速)と比較して、原料水の流速が半減する。したがって、ハイドレート製造装置100は、閾値を1.5とすることにより、原料水の流速が半減したときに、これ以上のハイドレートの生成を停止させることができる。これにより、ハイドレート製造装置100は、循環路110内、気液混合部140内、および、第1冷却部150内のハイドレートによる閉塞を未然に防止することが可能となる。
【0079】
さらに、閾値は、好ましくは、2.0以上の所定の値である。比率が2.0である場合、循環路110を循環する混合水(原料水および原料ガス)および混合物(原料水、未反応ガス、およびハイドレート)のレイノルズ数が臨界レイノルズ数(乱流から臨界域(乱流と層流の間の領域)へ変化する際のレイノルズ数、例えば、2000以上4000以下)となる。したがって、ハイドレート製造装置100は、閾値を2.0とすることにより、循環路110内、気液混合部140内、および、第1冷却部150内が乱流から臨界域に変化したときに、これ以上のハイドレートの生成を停止させることができる。これにより、ハイドレート製造装置100は、循環路110内、気液混合部140内、および、第1冷却部150内のハイドレートによる閉塞を未然に防止することが可能となる。
【0080】
なお、循環路110を循環する混合物(流体)のレイノルズ数は、下記式(2)から算出される。
Re = D × ρ × u / μ …式(2)
上記式(2)において、Reは、レイノルズ数を示す。Dは、循環路110の内径[m]を示す。ρは、混合物の密度[kg/m3]を示す。uは、循環路110内の原料水の流速[m/s]を示す。μは、粘度[Pa・s]を示す。また、Dおよびρは固定値である。uは、流速測定部210による測定によって得られる実測値である。μは、混合物中のハイドレートの濃度と粘度との関係(例えば、Vibeke andersson et.al., Flow Properties of Hydrate-in-Water Slurries, Annals of the new York academy of science, 322-329(2000))から算出される。
【0081】
なお、混合物中のハイドレートの濃度は、下記式(3)から算出される。
Chyd = Vgen × T / Lg …式(3)
上記式(3)において、Chydは、混合物中のハイドレートの濃度[質量%]を示す。Vgenは、ハイドレートの生成速度[kg/h]を示す。Tは、ハイドレート製造装置100の運転時間[h]を示す。Lgは、循環路110および貯留部120の原料水の液量[kg]を示す。
【0082】
また、ハイドレートの生成速度Vgenは、下記式(4)から算出される。
Vgen = (Fi - Fu) × 60 / 22.4 ×Mw / 0.3 / 1000 …式(4)
上記式(4)において、Fiは、原料ガス供給部180による原料ガスの供給流量[L/min]を示す。Fuは、圧力調整弁122を通じて貯留部120から排気される未反応ガスの流量[L/min]を示す。Mwは、原料ガスの分子量を示す。
【0083】
また、上記したように、制御部220は、比率が第1閾値(2.0)以上であり、第2閾値(3.0)未満であり、かつ、流速が下限値未満である場合に、第1冷却部150による原料水の冷却を停止させる。また、制御部220は、比率が第2閾値(3.0)以上である場合に、第1冷却部150による原料水の冷却を停止させる。これにより、ハイドレート製造装置100は、ハイドレートによる閉塞の兆しがあった場合に、これ以上のハイドレートの生成を確実に停止させることができる。
【0084】
一方、制御部220は、比率が第1閾値(2.0)以上であり、第2閾値(3.0)未満であっても、流速が下限値以上である場合には、第1冷却部150による原料水の冷却を停止させない。これにより、ハイドレート製造装置100は、循環路110内、気液混合部140内、および、第1冷却部150内のいずれか1または複数において、ハイドレートが蓄積されているものの、閉塞が認められない場合に、不要にハイドレートの生成を停止させてしまう事態を回避することが可能となる。
【0085】
また、ハイドレート製造装置100は、加熱部190を備える。このため、加熱部190は、第1冷却部150内の原料水を加熱することができる。したがって、加熱部190は、循環路110内、気液混合部140内、および、第1冷却部150内のいずれか1または複数に堆積したハイドレートを溶解させることが可能となる。これにより、ハイドレート製造装置100は、循環路110内、気液混合部140内、および、第1冷却部150内のいずれか1または複数のハイドレートによる閉塞を防止することができる。
【0086】
また、制御部220は、第1冷却部150を停止させている間、循環水ポンプ130の駆動を維持する。このため、循環水ポンプ130による入熱により、循環路110内、気液混合部140内、および、第1冷却部150内の原料水、混合水および混合物を加熱することができる。したがって、ハイドレート製造装置100は、循環路110内、気液混合部140内、および、第1冷却部150内のいずれか1または複数に堆積したハイドレートを溶解させることが可能となる。これにより、ハイドレート製造装置100は、循環路110内、気液混合部140内、および、第1冷却部150内のいずれか1または複数のハイドレートによる閉塞を防止することができる。
【0087】
また、上記したように、制御部220は、加熱部190および循環水ポンプ130を駆動させて、第1冷却部150内の温度を、ハイドレートの平衡温度より2K以上8K以下の所定の温度まで増加させる。第1冷却部150内の温度をハイドレートの平衡温度より2K以上の所定の温度まで増加させることにより、堆積したハイドレートを確実に溶解させることができる。また、第1冷却部150内の温度をハイドレートの平衡温度より8K以下の所定の温度まで増加させることにより、原料水(混合水)の温度が不要に上昇してしまう事態を回避することができる。これにより、ハイドレート製造装置100は、再開工程S190において、ハイドレートの生成を早期に再開させることが可能となる。
【0088】
また、本実施形態のハイドレート製造装置100は、流量調整弁254の開度を維持し、流量調整弁264の開度を調整して、原料ガス中の二酸化炭素の割合、および、供給流量を制御する。これにより、オゾン発生器250を常時定格運転させることができる。したがって、オゾン発生器250を効率よく運転させることができ、オゾン発生器250に要する電力コストを低減することが可能となる。
【0089】
[第2の実施形態:ハイドレート製造装置300]
上記第1の実施形態において、制御部220は、差圧および流速に基づいて、第1冷却部150による原料水の冷却を停止させる構成を例に挙げて説明した。しかし、制御部320は、他の値に基づいて、第1冷却部150による原料水の冷却を停止させてもよい。
【0090】
図5は、第2の実施形態にかかるハイドレート製造装置300の概略的な構成を説明する図である。
図5に示すように、ハイドレート製造装置300は、循環路110と、貯留部120と、循環水ポンプ130と、気液混合部140と、第1冷却部150と、ハイドレートポンプ160と、第2冷却部162と、補給水供給部170と、原料ガス供給部180と、加熱部190と、第1流量測定部310と、第2流量測定部312と、制御部320とを含む。なお、
図5中、実線の矢印は、ガス、液体、および、固体の流れを示し、破線の矢印は、信号の流れを示す。また、上記ハイドレート製造装置100と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0091】
第1流量測定部310は、原料ガス供給部180による原料ガスの供給流量を測定する。第2流量測定部312は、圧力調整弁122を通じて貯留部120から排気される未反応ガスの流量(以下、「排気流量」と称する場合がある)を測定する。
【0092】
制御部320は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。制御部320は、ROM(Read Only Memory:読み出し専用メモリ)からCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。制御部320は、ワークエリアとしてのRAM(Random Access Memory:読み書き可能なメモリ)や他の電子回路と協働してハイドレート製造装置300全体を管理および制御する。
【0093】
本実施形態において、制御部320は、第1流量測定部310によって測定された供給流量と、第2流量測定部312によって測定された排気流量とに基づき、上記式(4)からハイドレートの生成速度Vgenを算出する。
【0094】
そして、制御部320は、上記式(3)にハイドレートの生成速度Vgenを代入して、循環路110を流れるハイドレートの濃度Chydを算出する。
【0095】
制御部320は、ハイドレートの濃度Chydが所定の濃度閾値(閾値)以上である場合に、第1冷却部150による原料水の冷却を停止する。濃度閾値は、5質量%(wt%)以上の所定の値(例えば、14質量%)である。
【0096】
また、制御部320は、第1冷却部150による原料水の冷却を停止させる場合に、加熱部190を駆動させて、第1冷却部150内の温度を、ハイドレートの平衡温度より2K以上8K以下の所定の温度まで増加させる。
【0097】
[ハイドレートの製造方法]
続いて、ハイドレート製造装置300を用いたハイドレートの製造方法について説明する。初期状態において、制御部320は、気液混合部140に供給する原料ガスの流量が所定の供給流量となるように、流量調整弁254、264の開度を調整する。また、制御部320は、循環路110を循環する原料水の流量が所定の循環流量となるように、循環水ポンプ130を制御する。さらに、制御部320は、バルブ154a、158aを開弁する。
【0098】
こうして、少なくとも原料水が循環路110を循環し、気液混合部140によって原料水および原料ガスが混合され、第1冷却部150によって混合水(原料水および原料ガス)が冷却される。これにより、ハイドレート製造装置300において、オゾンハイドレート、酸素ハイドレート、二酸化炭素ハイドレート、および、オゾン-二酸化炭素ハイドレートが生成される。
【0099】
また、制御部320は、バルブ192a、196aを閉弁し、加熱器194を停止させておく。
【0100】
そして、本実施形態において、所定の時間間隔毎に生じる割込によって閉塞防止処理が繰り返し遂行される。
【0101】
図6は、第2の実施形態にかかるハイドレート製造装置300による閉塞防止処理の流れを説明するフローチャートである。
図6に示すように、第2の実施形態にかかる閉塞防止処理は、流速測定工程S120と、第1流量測定工程S210と、第2流量測定工程S220と、濃度算出工程S230と、第1判定工程S240と、第2判定工程S250と、第3判定工程S170と、停止工程S180と、再開工程S190とを含む。なお、上記第1の実施形態にかかるハイドレート製造装置100の閉塞処理と実質的に等しい処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0102】
[第1流量測定工程S210]
第1流量測定部310は、原料ガス供給部180による原料ガスの供給流量を測定する。
【0103】
[第2流量測定工程S220]
第2流量測定部312は、圧力調整弁122を通じて貯留部120から排気される未反応ガスの排気流量を測定する。
【0104】
[濃度算出工程S230]
制御部320は、供給流量および排気流量に基づき、上記式(4)からハイドレートの生成速度Vgenを算出する。また、制御部320は、上記式(3)にハイドレートの生成速度Vgenを代入して、循環路110を流れるハイドレートの濃度Chydを算出する。
【0105】
[第1判定工程S240]
制御部320は、ハイドレートの濃度Chydが第1濃度閾値以上であるか否かを判定する。その結果、ハイドレートの濃度Chydが第1濃度閾値以上であると判定した場合に(S240におけるYES)、制御部320は、第2判定工程S250に処理を移す。一方、ハイドレートの濃度Chydが第1濃度閾値以上ではない、つまり、ハイドレートの濃度Chydが第1濃度閾値未満であると判定した場合に(S240におけるNO)、再開工程S190に処理を移す。なお、第1濃度閾値は、例えば、14質量%である。
【0106】
[第2判定工程S250]
制御部320は、ハイドレートの濃度Chydが第2濃度閾値以上であるか否かを判定する。その結果、ハイドレートの濃度Chydが第2濃度閾値以上であると判定した場合に(S250におけるYES)、制御部320は、停止工程S180に処理を移す。一方、ハイドレートの濃度Chydが第2濃度閾値以上ではない、つまり、ハイドレートの濃度Chydが第2濃度閾値未満であると判定した場合に(S250におけるNO)、制御部320は、第3判定工程S170に処理を移す。なお、第2濃度閾値は、第1濃度閾値より大きい値である。第2濃度閾値は、例えば、18質量%である。
【0107】
以上説明したように、本実施形態のハイドレート製造装置300およびハイドレートの製造方法では、ハイドレートの濃度Chydが濃度閾値以上になると、制御部320は、第1冷却部150による原料水の冷却を停止させる。これにより、循環路110内、気液混合部140内、および、第1冷却部150内のハイドレートによる閉塞を未然に防止することが可能となる。
【0108】
なお、上記したように、濃度閾値は、5質量%以上の所定の値である。具体的に説明すると、ハイドレートの濃度Chydが5質量%であるとき、上記比率は1.5である。つまり、ハイドレートの濃度Chydが5質量%であると、第1冷却部150によって冷却を開始した際の原料水の流速(初期状態の流速)と比較して、原料水の流速が半減する。したがって、ハイドレート製造装置300は、濃度閾値を5質量%とすることにより、原料水の流速が半減したときに、これ以上のハイドレートの生成を停止させることができる。これにより、ハイドレート製造装置300は、循環路110内、気液混合部140内、および、第1冷却部150内のハイドレートによる閉塞を未然に防止することが可能となる。
【0109】
さらに、濃度閾値は、好ましくは、14質量%以上の所定の値である。具体的に説明すると、ハイドレートの濃度Chydが14質量%であるとき、上記比率は2.0である。つまり、ハイドレートの濃度Chydが14質量%である場合、循環路110を循環する混合水(原料水および原料ガス)および混合物(原料水、未反応ガス、およびハイドレート)のレイノルズ数が臨界レイノルズ数(乱流から臨界域へ変化する際のレイノルズ数、例えば、2000以上4000以下)となる。したがって、ハイドレート製造装置300は、濃度閾値を14質量%とすることにより、循環路110内、気液混合部140内、および、第1冷却部150内が乱流から臨界域に変化したときに、これ以上のハイドレートの生成を停止させることができる。これにより、ハイドレート製造装置300は、循環路110内、気液混合部140内、および、第1冷却部150内のハイドレートによる閉塞を未然に防止することが可能となる。
【0110】
また、上記したように、制御部320は、ハイドレートの濃度Chydが第1濃度閾値(14質量%)以上であり、第2濃度閾値(18質量%)未満であり、かつ、流速が下限値未満である場合に、第1冷却部150による原料水の冷却を停止させる。また、制御部320は、ハイドレートの濃度Chydが第2濃度閾値(18質量%)以上である場合に、第1冷却部150による原料水の冷却を停止させる。これにより、ハイドレート製造装置300は、ハイドレートによる閉塞の兆しがあった場合に、これ以上のハイドレートの生成を確実に停止させることができる。なお、ハイドレートの濃度Chydが18質量%であるとき、上記比率は3.0である。
【0111】
一方、制御部320は、ハイドレートの濃度Chydが第1濃度閾値(14質量%)以上であり、第2濃度閾値(18質量%)未満であっても、流速が下限値以上である場合には、第1冷却部150による原料水の冷却を停止させない。これにより、ハイドレート製造装置300は、循環路110内、気液混合部140内、および、第1冷却部150内のいずれか1または複数において、ハイドレートが蓄積されているものの、閉塞が認められない場合に、不要にハイドレートの生成を停止させてしまう事態を回避することが可能となる。
【0112】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0113】
例えば、上記第1の実施形態において、差圧測定部200が、第1冷却部150の入口と出口との差圧を測定する場合を例に挙げて説明した。これにより、制御部220は、ハイドレートの堆積量が最も多い第1冷却部150において、閉塞の兆しを早期に検出することができる。しかし、差圧測定部200は、気液混合部140の入口と出口の差圧、第1冷却部150の入口と気液混合部140の出口との差圧、または、第1冷却部150の出口と気液混合部140の入口との差圧を測定してもよい。
【0114】
また、上記第1の実施形態および第2の実施形態の停止工程S180において、制御部220、320は、循環水ポンプ130の駆動を維持する構成を例に挙げて説明した。しかし、制御部220、320は、停止工程S180において、加熱部190を駆動させていれば、循環水ポンプ130を停止してもよい。この際、制御部220、320は、加熱部190を制御して、循環路110内、気液混合部140内、および、第1冷却部150内のうちいずれか1または複数の温度を、ハイドレートの平衡温度より2K以上8K以下の所定の温度まで増加させる。
【0115】
同様に、上記第1の実施形態および第2の実施形態の停止工程S180において、制御部220、320は、加熱部190を駆動させる構成を例に挙げて説明した。しかし、制御部220、320は、停止工程S180において、循環水ポンプ130を駆動させていれば、加熱部190を駆動させずともよい。つまり、加熱部190は、必須の構成ではない。この際、制御部220、320は、循環水ポンプ130を制御して、循環路110内、気液混合部140内、および、第1冷却部150内のうちいずれか1または複数の温度を、ハイドレートの平衡温度より2K以上8K以下の所定の温度まで増加させる。
【0116】
なお、本開示および実施例では、平衡温度を基準とした温度で説明しているが、平衡温度とはハイドレートが安定に存在する圧力に応じた温度であることは言うまでもなく、実施例では4MPa以下で実施している。
【0117】
また、上記第1の実施形態および第2の実施形態において、補助ガスとして二酸化炭素を原料ガスに含ませる場合を例に挙げて説明した。しかし、補助ガスは、オゾンハイドレートの生成を促進させるガスであれば、種類に限定はない。例えば、補助ガスとしてキセノンを原料ガスに含ませてもよい。
【0118】
また、上記第1の実施形態および第2の実施形態において、ハイドレート製造装置100、300がオゾンハイドレート、酸素ハイドレート、二酸化炭素ハイドレート、および、オゾン-二酸化炭素ハイドレートを生成する場合を例に挙げて説明した。しかし、ハイドレート製造装置100、300が生成するハイドレートの種類に限定はない。
【0119】
また、上記第1の実施形態において、気液混合部140の下流側に第1冷却部150が設けられたハイドレート製造装置100について説明した。しかし、気液混合部140と第1冷却部150との位置関係に限定はない。
図7は、第1の変形例のハイドレート製造装置400の概略的な構成を説明する図である。
図7に示すように、ハイドレート製造装置400は、第1冷却部150の下流側に気液混合部140を備えてもよい。
【0120】
同様に、上記第2の実施形態において、気液混合部140の下流側に第1冷却部150が設けられたハイドレート製造装置300について説明した。しかし、気液混合部140と第1冷却部150との位置関係に限定はない。
図8は、第2の変形例のハイドレート製造装置500の概略的な構成を説明する図である。
図8に示すように、ハイドレート製造装置500は、第1冷却部150の下流側に気液混合部140を備えてもよい。
【0121】
なお、本開示および実施例は、圧力をMPa単位で、流速をm/s単位で説明しているが、これらに依存する制御値は、圧力や流速の単位が異なっていても、換算することで技術的に同義となるものである。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本開示は、ハイドレート製造装置、および、ハイドレートの製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0123】
100 ハイドレート製造装置
110 循環路
130 循環水ポンプ(ポンプ)
140 気液混合部
150 第1冷却部(冷却部)
190 加熱部
200 差圧測定部
210 流速測定部
220 制御部
300 ハイドレート製造装置
320 制御部
400 ハイドレート製造装置
500 ハイドレート製造装置