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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】固液分離装置および濾過装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 33/04 20060101AFI20221213BHJP
   B01D 39/08 20060101ALI20221213BHJP
   B01D 24/46 20060101ALI20221213BHJP
   B01D 33/44 20060101ALI20221213BHJP
   B01D 33/58 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B01D33/04 D
B01D33/04 B
B01D39/08 Z
B01D33/36
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018229943
(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公開番号】P2020089857
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000165273
【氏名又は名称】月島機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】島田 純
(72)【発明者】
【氏名】須賀 利大
(72)【発明者】
【氏名】陳 貴吉
(72)【発明者】
【氏名】栗田 新平
(72)【発明者】
【氏名】古川 智浩
【審査官】谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-104892(JP,A)
【文献】特開昭62-081297(JP,A)
【文献】特開平09-075638(JP,A)
【文献】特開2003-154221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 33/04
B01D 33/36
B01D 39/08
C02F 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に回転させられる分離ロールの外周に、無端状の濾過ベルトが巻き掛けられるとともに、この濾過ベルトの外周にはシールベルトが巻き掛けられ、このシールベルトのさらに外周には圧搾ベルトが巻き掛けられて、これら濾過ベルト、シールベルト、および圧搾ベルトが上記分離ロールの回転方向に沿って走行可能とされており、
上記濾過ベルトとシールベルトとの間に供給された被処理物が、上記分離ロールの外周で該濾過ベルトとシールベルトとの間に挟み込まれて上記圧搾ベルトによって圧搾されるとともに、この分離ロールの内周部に形成された通気ガスチャンバーを介して通気ガスが上記分離ロールの径方向外周に噴出して通気されることによって脱液させられる固液分離装置において、
上記シールベルトは、マルチフィラメントの織布、またはマルチフィラメントとモノフィラメントを組み合わせた織布であって、上記圧搾ベルトよりも薄いことを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
上記シールベルトの厚さが3mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項3】
上記シールベルトの通気度は、上記濾過ベルトの通気度よりも高く、かつ5cc/cm/分~1000cc/cm/分の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の固液分離装置。
【請求項4】
上記圧搾ベルトの通気度が3000cc/cm/分以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の固液分離装置。
【請求項5】
上記圧搾ベルトは、引っ張り応力を作用させたときに、20N/mm以上の引っ張り応力で破断することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の固液分離装置。
【請求項6】
上記圧搾ベルトは、縦糸がポリアリレート繊維またはポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維であることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の固液分離装置。
【請求項7】
複数のロールに巻き掛けられて走行させられる濾布上に、供給手段から被処理物が供給されて、この供給手段よりも上記濾布の走行方向側に備えられた濾過手段により上記被処理物が濾過される濾過装置であって、
上記濾過手段よりも上記走行方向側には、請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の固液分離装置が配設されていて、上記複数のロールのうち上記濾過手段よりも上記走行方向側に位置するロールが上記分離ロールとされるとともに、上記濾布が上記濾過ベルトとされていることを特徴とする濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離ロールの外周に濾過ベルトと、シールベルトと、圧搾ベルトとが順に巻き掛けられ、濾過ベルトとシールベルトとの間に供給されて挟み込まれた被処理物を、圧搾ベルトによって圧搾するとともに、分離ロールから噴出させられた通気ガスによって通気して脱液する固液分離装置、およびこのような固液分離装置を備えた濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような固液分離装置として、例えば特許文献1には、周方向に回転させられる分離ロールの外周に、無端状の一対の分離濾布(濾過ベルトとシールベルト)が重ね合わされて巻き掛けられるとともに、該一対の分離濾布の外周にはさらに圧搾ベルトが巻き掛けられて、これら一対の分離濾布と上記圧搾ベルトとが上記分離ロールの回転方向に沿って走行可能とされており、上記一対の分離濾布の間に供給された被処理物が、上記分離ロールの外周で該分離濾布の間に挟み込まれて上記圧搾ベルトによって圧搾されるとともに、この分離ロールの内周部に形成された通気ガスチャンバーを介して通気ガスが上記分離ロールの径方向外周に噴出して通気されることによって脱液させられる固液分離装置が記載されている。
【0003】
また、同じく上記特許文献1には、複数のロールに巻き掛けられて走行させられる濾布上に、供給手段から被処理物が供給されて、この供給手段よりも上記濾布の走行方向側に備えられた濾過手段により上記被処理物が濾過される濾過装置であって、上記濾過手段よりも上記走行方向側には、上述の固液分離装置が配設されていて、上記複数のロールのうち上記濾過手段よりも上記走行方向側に位置するロールが上記分離ロールとされるとともに、上記濾布が上記濾過ベルトとされた濾過装置も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4381462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1に記載された固液分離装置は、分離ロールにおいて、その外周に巻き掛けられた濾過ベルトとシールベルトとの間に被処理物が挟み込まれ、さらにシールベルトの外周に圧搾ベルトが巻き掛けられて、分離ロールの内周部から噴出させられる通気ガスにより通気脱液を行うものであるが、被処理物を挟み込んだ状態でベルトが3枚重ねとなる。
【0006】
このため、特に最も内周に位置する濾過ベルトと、この濾過ベルトとの間に被処理物が挟み込まれる中間のシールベルトとでは、被処理物の厚さによって周速差が生じるとともに、ベルトの幅方向の両端部には段差が形成されるので、シールベルトに皺が発生し易くなる。そして、このようにシールベルトに皺が発生すると、圧搾ベルトによる加圧によって皺の部分からシールベルトが折れ曲がり、長時間の固液分離を行ううちにはシールベルトが破断するおそれがある。
【0007】
本発明は、このような背景の下になされたもので、上述のような固液分離装置および濾過装置において、シールベルトに皺が発生するのを抑えて長時間の固液分離を行ってもシールベルトの破断を防止することが可能な固液分離装置および濾過装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の固液分離装置は、周方向に回転させられる分離ロールの外周に、無端状の濾過ベルトが巻き掛けられるとともに、この濾過ベルトの外周にはシールベルトが巻き掛けられ、このシールベルトのさらに外周には圧搾ベルトが巻き掛けられて、これら濾過ベルト、シールベルト、および圧搾ベルトが上記分離ロールの回転方向に沿って走行可能とされており、上記濾過ベルトとシールベルトとの間に供給された被処理物が、上記分離ロールの外周で該濾過ベルトとシールベルトとの間に挟み込まれて上記圧搾ベルトによって圧搾されるとともに、この分離ロールの内周部に形成された通気ガスチャンバーを介して通気ガスが上記分離ロールの径方向外周に噴出して通気されることによって脱液させられる固液分離装置において、上記シールベルトは、マルチフィラメントの織布、またはマルチフィラメントとモノフィラメントを組み合わせた織布であって、上記圧搾ベルトよりも薄いことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の濾過装置は、複数のロールに巻き掛けられて走行させられる濾布上に、供給手段から被処理物が供給されて、この供給手段よりも上記濾布の走行方向側に備えられた濾過手段により上記被処理物が濾過される濾過装置であって、上記濾過手段よりも上記走行方向側には、上述のような固液分離装置が配設されていて、上記複数のロールのうち上記濾過手段よりも上記走行方向側に位置するロールが上記分離ロールとされるとともに、上記濾布が上記濾過ベルトとされていることを特徴とする。
【0010】
このように構成された固液分離装置および濾過装置では、固液分離装置のシールベルトが圧搾ベルトよりも薄く、またマルチフィラメントの織布、またはマルチフィラメントとモノフィラメントを組み合わせた織布であるので、圧搾ベルトによって被処理物が圧搾される際に圧搾ベルトとのなじみがよく、追従性が高い。このため、シールベルトに皺が発生するのを抑えることができ、皺に起因するシールベルトの破断を長期に亙って防止することができる。なお、このようなシールベルトの皺の発生を確実に防ぐには、シールベルトの厚さは3mm以下であることが望ましい。
【0011】
また、上記シールベルトの通気度を、上記濾過ベルトの通気度よりも高く、かつ5cc/cm/分~1000cc/cm/分の範囲内とすることにより、シールベルトの目詰まりを防いで効率的な固液分離を行うことができる。シールベルトの通気度が濾過ベルトの通気度以下であったり、5cc/cm/分未満であったりすると、シールベルトが目詰まりし易くなって被処理物から液分を分離し難くなる。ただし、シールベルトの通気度が1000cc/cm/分を上回ると、シールベルトの強度が損なわれて破断が生じ易くなるとともに、通気によって液分とともに被処理物がシールベルトを通過して漏れるため、被処理物の回収率が低下する。
【0012】
一方、上記圧搾ベルトの通気度は3000cc/cm/分以上であるのが望ましい。圧搾ベルトの通気度が3000cc/cm/分未満であると、通気ガスが圧搾ベルトを通り難くなるとともに圧搾ベルトに目詰まりが生じ易くなり、シールベルトによって被処理物から分離した液分を効率的に脱液することができなくなるおそれがある。
【0013】
また、この圧搾ベルトは、引っ張り応力を作用させたときに、20N/mm以上の引っ張り応力で破断することが望ましい。このように高い引っ張り応力まで圧搾ベルトに破断が生じないようにすることにより、通気ガスの噴出圧力を高くすることができ、さらに効率的な固液分離を促すことが可能となる。なお、このような高い耐引っ張り応力を確保するには、上記圧搾ベルトは、その縦糸がポリアリレート繊維またはポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維であることが望ましい。
【0014】
さらに、上記濾過ベルトは、マルチフィラメントの織布、モノフィラメントの織布、スパンテーブルの織布のうち1種、またはマルチフィラメント、モノフィラメント、スパンテーブルのうち何れか少なくとも2種を組み合わせた織布であることが望ましい。これにより、上述のように通気ガスの噴出圧力を高くしても、通気ガスの噴出による濾過ベルトの損傷を防ぐことができ、濾過ベルトの交換頻度を少なくして効率的な固液分離を一層確実に促すことが可能となるとともに経済的でもある。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、シールベルトに皺が発生するのを抑えて、このような皺によるシールベルトの破断を長期に亙って防止することができるとともに、濾過ベルトや圧搾ベルトの損傷を防ぐことができ、効率的な固液分離を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の濾過装置の一実施形態の概略を示す側面図である。
図2図1に示す濾過装置に用いられる、本発明の固液分離装置の一実施形態を示す側面図である。
図3図2に示す固液分離装置を図2の右側から見た一部破断背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図3は、本発明の固液分離装置および該固液分離装置を備えた濾過装置の一実施形態を示すものである。本実施形態における濾過装置は水平式真空濾過装置の構成とされており、図1に示すように、無端状の濾過ベルト1が、中心軸線を水平にして互いに平行に配置された複数のロール2に巻き掛けられて周回するように張り渡され、このうちの1つが駆動ロール2Aとされて上記中心軸線回りに回転駆動させられることにより、濾過ベルト1のうち装置上部に水平に渡された水平部1Aが矢線Fで示す走行方向に移動するように走行可能とされている。そして、この水平部1Aの走行方向F後方側に配設された供給手段3から供給された被処理物Pが、その直ぐ走行方向F側の駆動ロール2Aとの間に配設された濾過手段4によって濾過ベルト1を介して濾過される。
【0018】
ここで、上記駆動ロール2Aは、上記水平部1Aの走行方向F側の端部に位置し、図2に示すようにモータ等の駆動手段5により可変減速機6を介して回転させられることによって、連続的、あるいは所定のピッチで間欠的に濾過ベルト1を走行させる。また、濾過手段4において被処理物Pは、水平部1Aにおいて濾過ベルト1を支持する図示されない真空トレイにより液分が濾過ベルト1を介して吸引されて濾過される。そして、さらにこの濾過手段4よりも上記走行方向F側に、図1に破線で示すように本発明の一実施形態の固液分離装置が配設されている。
【0019】
この実施形態の固液分離装置では、図2および図3に示すように、回転方向Tに向けて周方向に回転させられる分離ロール7の外周に、無端状の濾過ベルト1とシールベルト8とが、濾過手段4によって濾過された被処理物Pを間に挟み込むように重ね合わされて巻き掛けられつつ、上記回転方向Tに沿って走行可能とされている。ここで、本実施形態では、上記濾過装置におけるロール2のうちの上記駆動ロール2Aが分離ロール7とされ、また濾過ベルト1は、濾過装置の濾過ベルト1がそのままこの分離ロール7に巻き掛けられている。
【0020】
この分離ロール7(駆動ロール2A)は概略中空の円筒状とされるとともに、その円筒面部分には図3に示すように分離ロール7の中心軸線方向において上記濾過ベルト1の幅の範囲よりも内側に、また周方向には分離ロール7の全周に亙って、多数の貫通孔9が開口させられている。一方、分離ロール7の内周部には、これらの貫通孔9にそれぞれ連通する複数の通気ガスチャンバー10が、上記中心軸線方向には貫通孔9が形成された範囲と略等しい範囲で、また周方向には分離ロール7の全周に亙って分離ロール7の内周部を略等間隔に弧状に仕切るようにして、互いに隔絶されて形成されている。
【0021】
また、分離ロール7のさらに内周部には、中心軸線方向一端側(図3における右側)から通気ガスチャンバー10と同数の通気配管11が挿通されていて、それぞれ各通気ガスチャンバー10と接続されており、これらの通気配管11に供給されたエアー(圧縮空気)やスチーム等の通気ガスAが、この通気ガスチャンバー10を介して上記貫通孔9から分離ロール7の外周に噴出して通気させられる。なお、通気ガスAは、図示されない供給源からロータリージョイント(あるいは多段回転継手)12を介して、回転する分離ロール7に固定された通気配管11に供給される。
【0022】
さらに、このロータリージョイント12に接続された分離ロール7側の通気ガス分岐チャンバー12Aと各通気配管11との間には、各通気配管11ごとに自動弁13が備えられている。ここで、この自動弁13の開閉操作は、分離ロール7に取り付けられて各通気ガスチャンバー10の回転位置に応じて動作するリミットスイッチ13Aによって、上記通気ガス分岐チャンバー12Aからの通気ガスAが信号ガスとして供給配管13Bを介して該自動弁13に供給または非供給の状態となることにより、制御される。
【0023】
そして、こうして制御される自動弁13により、本実施形態では、分離ロール7の周方向に濾過ベルト1およびシールベルト8が巻き掛けられた範囲にある通気ガスチャンバー10のうち、さらに所定の回転位置にある通気ガスチャンバー10のみに、分離ロール7の回転に伴い順次切り替えられながら、通気ガスAが連続して供給されるように構成されている。すなわち、通気ガスチャンバー10がこの所定の回転位置にあるときには、自動弁13が開いて常に通気ガスAが通気ガスチャンバー10に供給されて貫通孔9から噴出させられる一方、この所定の回転位置以外の位置では、自動弁13が閉じられて通気が行われないように制御される。
【0024】
一方、シールベルト8は、濾過ベルト1とほぼ等しい幅とされており、分離ロール7の外周においては濾過ベルト1の外側に巻き掛けられてこの分離ロール7(駆動ロール2A)の回転方向Tに向けて濾過ベルト1と一体的に走行方向Fと同じ走行方向Gに走行可能とされている。また、この走行方向Gにおいて分離ロール7の次にシールベルト8が巻き掛けられるロール2Bは、図2に示すように濾過ベルト1が巻き掛けられたロール2と共通とされ、このロール2Bからシールベルト8は下方に向けて濾過ベルト1と反対側に引き出されて離間し、複数のロール14に巻き掛けられて再び分離ロール7の外周に至るように無端状に巻回されている。
【0025】
そして、このように濾過ベルト1とシールベルト8が重ね合わされて巻き掛けられた分離ロール7の外周には、このうちシールベルト8のさらに外周に圧搾ベルト15が巻き掛けられている。この圧搾ベルト15も、濾過ベルト1およびシールベルト8とともに分離ロール7の外周で、その回転方向Tに沿って走行方向F、Gと同じ走行方向Hに走行可能とされている。
【0026】
また、この圧搾ベルト15は、本実施形態では濾過ベルト1およびシールベルト8よりは幅広とされて、その幅方向の両端が図3に示すように濾過ベルト1とシールベルト8の幅方向の両端をそれぞれ越えて濾過ベルト1およびシールベルト8に覆い被さるように分離ロール7に巻き掛けられている。ただし、圧搾ベルト15の横幅は、濾過ベルト1およびシールベルト8間に挟み込まれて圧搾される被処理物Pのケーキ幅よりも広ければ、必ずしも濾過ベルト1およびシールベルト8よりも幅広である必要はなく、すなわち濾過ベルト1およびシールベルト8と略等しい幅であったり、これより幅狭であったりしてもよい。
【0027】
さらに、走行方向Hにおいて圧搾ベルト15は、分離ロール7の次に上記濾過ベルト1とシールベルト8が巻き掛けられた共通の上記ロール2Bに巻き掛けられ、次いで図2に示すように分離ロール7と上記ロール14に巻回されたシールベルト8との間に配設された複数のロール16に順次巻き掛けられる。その後に、分離ロール7に至る直前でシールベルト8が巻き掛けられるロール14Aにシールベルト8とともに巻き掛けられて、再び分離ロール7の外周に至るように無端状に巻回されている。
【0028】
なお、この圧搾ベルト15が巻き掛けられるロール2B、14A、16は、濾過ベルト1だけが巻き掛けられるロール2およびシールベルト8だけが巻き掛けられるロール14よりも大径とされるとともに、分離ロール7よりは小径とされている。さらに、複数のロール16のうちの1つは、支持軸17Aを中心にシリンダ装置17Bによって回動可能とされた圧搾ベルト緊張装置17のアーム17Cに取り付けられていて、こうしてアーム17Cを回動させて所定の位置で位置決めすることにより、圧搾ベルト15に所定の張力が与えられる。
【0029】
また、複数のロール16のうちの他の1つは、その少なくとも一端が、やはりシリンダ装置18Aにより圧搾ベルト15の走行方向Hに向けて進退する圧搾ベルト蛇行修正装置18のブラケット18Bに取り付けられていて、こうしてブラケット18Bを走行方向Hに進退させて該走行方向Hに対する当該ロール16の傾きを微調整することにより、圧搾ベルト15の走行に蛇行が生じたときには、これを修正する。ただし、これらのロール16も含めて、本実施形態の濾過装置および固液分離装置において、上記駆動ロール2A(分離ロール7)以外のロール2、14、16は、いずれも駆動手段に連結されない従動ロールとされている。
【0030】
さらに、圧搾ベルト15の走行経路には圧搾ベルト洗浄装置19が設けられ、シールベルト8の走行経路には分離濾布洗浄装置20が設けられ、濾過ベルト1の走行経路にも図示されない洗浄装置が設けられる。また、固液分離装置の底部には受け皿21が配設されている。さらにまた、上記ロール2Bの下方には、この固液分離装置によって固液分離された被処理物Pのケーキを排出する排出口22が設けられる。
【0031】
さらにまた、このロール2Bからそれぞれその走行方向F、Gに向けて互いに反対向きに離れてゆく濾過ベルト1およびシールベルト8に対しては、被処理物Pと接していた面に接するようにスクレーパ23やワイヤー等が配設される。また、分離ロール7に濾過ベルト1、シールベルト8および圧搾ベルト15が巻き掛けられた部分のさらに外周には、断面円弧状の回収板24が圧搾ベルト15と間隔をあけて配設されていて、通気によって分離された液分を回収して上記受け皿21に導く。
【0032】
そして、このような構成の固液分離装置および濾過装置において、上記シールベルト8は、マルチフィラメントの織布、またはマルチフィラメントとモノフィラメントを組み合わせた織布であって、圧搾ベルト15よりも薄い。このシールベルトの厚さは3mm以下であることが望ましい。また、このシールベルト8の通気度は、濾過ベルト1の通気度よりも高く、かつ5cc/cm/分~1000cc/cm/分の範囲内でとされるのが望ましい。
【0033】
一方、上記圧搾ベルト15の通気度は、3000cc/cm/分以上であることが望ましい。また、この圧搾ベルト15は、引っ張り応力を作用させたときに、20N/mm以上の引っ張り応力で破断する強度を有することが望ましい。さらに、この圧搾ベルト15は、縦糸がポリアリレート繊維またはポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維であることが望ましい。なお、上記濾過ベルト1は、マルチフィラメントの織布、モノフィラメントの織布、スパンテーブルの織布のうち1種、またはマルチフィラメント、モノフィラメント、スパンテーブルのうち何れか少なくとも2種を組み合わせた織布であることが望ましい。
【0034】
このような固液分離装置および濾過装置の一実施形態では、濾過装置の濾過手段4によって濾過された被処理物Pは、固液分離装置の分離ロール7の外周で濾過ベルト1とシールベルト8との間に挟み込まれるとともに、さらにその外周に圧搾ベルト15が高張力で巻き掛けられることにより、分離ロール7の径方向内周側に押圧力を受けて圧搾され、脱液される。従って、分離ロール7に形成された貫通孔9から噴出させられる通気ガスAによる脱液作用と、圧搾ベルト15での圧搾による脱液作用とによって、被処理物Pの液分をより効率的に除去することが可能となり、この固液分離装置による被処理物Pの固液分離工程の後段に乾燥工程があるような場合でも、この乾燥工程における負荷を低減することができる。
【0035】
また、被処理物Pを挟み込んで分離ロール7に巻き掛けられた濾過ベルト1とシールベルト8および圧搾ベルト15とは、被処理物Pの厚さ分だけ分離ロール7の中心軸線からの距離が異なり、しかも濾過ベルト1が分離ロール7(駆動ロール2A)に直接巻き掛けられて走行させられるのに対し、シールベルト8と圧搾ベルト15はこの濾過ベルト1と被処理物Pを介して従動的に走行させられる。このため、分離ロール7の外周ではこれら濾過ベルト1とシールベルト8に周速差が生じ、この周速差により被処理物Pには周方向に剪断しようとする剪断力が作用して、この剪断力と上記押圧力とによって被処理物Pは効率的に圧搾され、脱液される。
【0036】
そして、上記構成の固液分離装置および濾過装置では、固液分離装置のシールベルト8が圧搾ベルト15よりも薄く、またマルチフィラメントの織布、またはマルチフィラメントとモノフィラメントを組み合わせた織布であるので、圧搾ベルト15によりシールベルト8を介して被処理物Pが圧搾される際に圧搾ベルト15とのなじみがよく、追従性が高い。このため、上述のように濾過ベルト1とシールベルト8に周速差が生じたり、あるいは被処理物Pの厚さによって濾過ベルト1とシールベルト8の幅方向(分離ロール7の中心軸線方向)の両端部に段差が形成されたりしても、シールベルト8に皺が生じるのを抑えることができる。
【0037】
このため、そのような固液分離装置および濾過装置によれば、このような皺の部分が圧搾ベルト15によって加圧されることによって折れ曲がり、長時間の固液分離を行ううちに早期に破断してしまうような事態が生じるのを防ぐことができる。従って、上記構成の固液分離装置および濾過装置によれば、長期に亙って安定した固液分離を行うことができて効率的であるとともに経済的でもある。
【0038】
また、このようにシールベルト8に皺が発生して早期に破断してしまうのを確実に防ぐには、上述のようにシールベルト8の厚さは3mm以下であることが望ましい。シールベルト8の厚さが3mmよりも暑いと、皺が発生して折り目が付いたときに元に戻り難くなってしまい、この折り目の部分から破断が生じ易くなってしまう。
【0039】
さらに、このようにシールベルト8の破断を防ぎつつ、より効率的な固液分離を図るには、シールベルト8の通気度は、濾過ベルト1の通気度よりも高く、かつ5cc/cm/分~1000cc/cm/分の範囲内とするのが望ましい。シールベルト8の通気度が濾過ベルト1の通気度以下であったり、5cc/cm/分未満であったりすると、シールベルト8が目詰まりし易くなって被処理物Pから液分を効率的に分離することが困難となるおそれがある。一方、シールベルト8の通気度が1000cc/cm/分を上回ると、シールベルト8の強度が損なわれて破断が生じ易くなるとともに、通気によって液分とともに被処理物Pがシールベルト8を通過して漏れるため、被処理物Pの回収率が低下する。
【0040】
また、圧搾ベルト15の通気度は、3000cc/cm/分以上であるのが望ましい。圧搾ベルト15の通気度が3000cc/cm/分を下回ると、圧搾ベルト15を通気ガスAが通り難くなるとともに圧搾ベルト15に目詰まりが生じ易くなってしまい、被処理物Pから分離した液分をシールベルト8から圧搾ベルト15を介して効率的に脱液することができなくなるおそれがある。
【0041】
さらに、この圧搾ベルト15は、引っ張り応力を作用させたときに、20N/mm以上の引っ張り応力(張力)で破断するような強度を有することが望ましい。このような高い引っ張り応力まで圧搾ベルト15に破断が発生しないようにすることにより、通気ガスAの噴出圧力を高くすることができるので、さらに効率的な固液分離を促すことが可能となる。
【0042】
ここで、このような高い引っ張り応力にも破断を生じないような強度を圧搾ベルト15に確保するには、この圧搾ベルト15は、その縦糸がポリアリレート繊維またはポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維であることが望ましい。なお、横糸にはそれほど高い引っ張り応力は作用しないので、通常の強度を有するものであれば、特に限定はされない。
【0043】
さらにまた、濾過ベルト1は、マルチフィラメントの織布、モノフィラメントの織布、スパンテーブルの織布のうち1種、またはマルチフィラメント、モノフィラメント、スパンテーブルのうち何れか少なくとも2種を組み合わせた織布であることが望ましい。これにより、上述のように通気ガスAの噴出圧力を高くしても、通気ガスAの噴出による濾過ベルト1の損傷を防ぐことができるので、濾過ベルト1の交換頻度を少なくすることができ、一層確実に効率的な固液分離を行うことが可能となる。また、濾過ベルト1の交換頻度が少なくなるので、経済的でもある。
【符号の説明】
【0044】
1 濾過ベルト
2、14、16 ロール
2A 駆動ロール
3 供給手段
4 濾過手段
7 分離ロール
8 シールベルト
9 貫通孔
10 通気ガスチャンバー
11 通気配管
13 自動弁
15 圧搾ベルト
17 圧搾ベルト緊張装置
A 通気ガス
P 被処理物
F 濾過ベルト1の走行方向
G シールベルト8の走行方向
H 圧搾ベルト15の走行方向
T 分離ロール7の回転方向
図1
図2
図3