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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】車両用システムの制御装置
(51)【国際特許分類】
   F01P 7/16 20060101AFI20221213BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20221213BHJP
   F01P 3/20 20060101ALI20221213BHJP
   F16H 61/14 20060101ALI20221213BHJP
   B60K 5/04 20060101ALI20221213BHJP
   B60K 11/02 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
F01P7/16 504D
F16H57/04 G
F01P3/20 G
F16H61/14 601Z
B60K5/04 E
B60K11/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018230032
(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公開番号】P2020090948
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋臣
(72)【発明者】
【氏名】房州 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】坂井 俊彦
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-105604(JP,A)
【文献】特開2016-151215(JP,A)
【文献】特開2017-036741(JP,A)
【文献】特開2008-185002(JP,A)
【文献】特開2009-144529(JP,A)
【文献】特開2016-075262(JP,A)
【文献】特開2002-310270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 7/16
F16H 57/04
F01P 3/20
F16H 61/14
B60K 5/04
B60K 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された水冷式のエンジンと、
前記エンジンに接続された変速機と、
前記エンジンに接続され、前記エンジンに冷却水を送る第1ウォーターポンプと、
前記エンジンから流出する冷却水と前記変速機のオイルとの間で熱交換を行うオイルウォーマーであって、熱交換後の冷却水は前記第1ウォーターポンプに送られる、オイルウォーマーと、
前記エンジンから前記オイルウォーマーへと流れる前記冷却水の流量を調節するバルブ装置と
を備えた車両用システムを制御する制御装置であって、
前記エンジンが始動した際に、前記エンジン始動時の外気温が第1の所定値未満であれば、前記第1ウォーターポンプを動作状態とし、前記バルブ装置を開状態とし、
前記エンジンが始動した際に、前記エンジン始動時の外気温が前記第1の所定値以上であれば、前記第1ウォーターポンプを停止状態とし、前記バルブ装置を閉状態とし、
前記エンジン始動時の外気温が前記第1の所定値未満の場合に、前記第1ウォーターポンプが動作状態とされて前記バルブ装置が開状態とされたことにより前記オイルの温度が第2の所定値に達し、かつ前記エンジンの水温が第3の所定値以下であれば、前記第1ウォーターポンプを停止状態とし、前記バルブ装置を閉状態とする制御装置。
【請求項2】
前記エンジン始動時の外気温が前記第1の所定値未満であれば、前記変速機のロックアップを解除する請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記エンジン始動時の外気温が前記第1の所定値以上の場合に、前記第1ウォーターポンプが停止状態とされて前記バルブ装置が閉状態とされたことにより前記エンジンの水温が第4の所定値に達し、かつ前記オイルの温度が第5の所定値以下であれば、前記第1ウォーターポンプを動作状態とし、前記バルブ装置を開状態とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
車両に搭載された水冷式のエンジンと、
前記エンジンに接続された変速機と、
前記エンジンに接続され、前記エンジンに冷却水を送る第1ウォーターポンプと、
前記エンジンから流出する冷却水と前記変速機のオイルとの間で熱交換を行うオイルウォーマーであって、熱交換後の冷却水は前記第1ウォーターポンプに送られる、オイルウォーマーと、
前記エンジンから前記オイルウォーマーへと流れる前記冷却水の流量を調節するバルブ装置と、
前記バルブ装置と前記オイルウォーマーとの接続部に入口が接続する第2ウォーターポンプと、
前記第2ウォーターポンプの出口に接続し、前記第2ウォーターポンプから流入した冷却水を温める熱デバイスであって、前記熱デバイスの出口は、前記オイルウォーマーと前記第1ウォーターポンプとの接続部に接続される、熱デバイスと
を備えた車両用システムを制御する制御装置であって、
前記エンジンが始動した際に、前記エンジン始動時の外気温に応じて、前記第1ウォーターポンプと前記第2ウォーターポンプと前記バルブ装置とを制御して、前記エンジン始動時の外気温が第1の所定値以上であれば、前記第1ウォーターポンプと前記第2ウォーターポンプとを動作状態とし、前記バルブ装置を開状態とする制御装置。
【請求項5】
前記エンジンが始動した際に、前記エンジン始動時の外気温が前記第1の所定値未満であれば、前記第1ウォーターポンプを停止状態とし、前記第2ウォーターポンプを動作状態とし、前記バルブ装置を閉状態とする請求項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用システムの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、変速機シフトレンジが走行レンジの状態では、オイル弁を開とし、変速機のオイルの温度上昇を図ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-200406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、外気温に応じて変速機のオイルを効率的に温めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る制御装置は、車両に搭載された水冷式のエンジンと、前記エンジンに接続された変速機と、前記エンジンに接続され、前記エンジンに冷却水を送る第1ウォーターポンプと、前記エンジンから流出する冷却水と前記変速機のオイルとの間で熱交換を行うオイルウォーマーであって、熱交換後の冷却水は前記第1ウォーターポンプに送られる、オイルウォーマーと、前記エンジンから前記オイルウォーマーへと流れる前記冷却水の流量を調節するバルブ装置とを備えた車両用システムを制御する。本制御装置は、前記エンジンが始動した際に、前記エンジン始動時の外気温が第1の所定値未満であれば、前記第1ウォーターポンプを動作状態とし、前記バルブ装置を開状態とし、前記エンジンが始動した際に、前記エンジン始動時の外気温が前記第1の所定値以上であれば、前記第1ウォーターポンプを停止状態とし、前記バルブ装置を閉状態とし、前記エンジン始動時の外気温が前記第1の所定値未満の場合に、前記第1ウォーターポンプが動作状態とされて前記バルブ装置が開状態とされたことにより前記オイルの温度が第2の所定値に達し、かつ前記エンジンの水温が第3の所定値以下であれば、前記第1ウォーターポンプを停止状態とし、前記バルブ装置を閉状態とする
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、外気温に応じて変速機のオイルを効率的に温めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】車両用システムの構成と、ヒーター優先モードにおける制御状態とを示す説明図である。
図2】エンジン暖機モードにおける制御状態を示す説明図である。
図3】CVT暖機モードにおける制御状態を示す説明図である。
図4】熱害モードにおける制御状態を示す説明図である。
図5】制御装置による処理のフローチャートである。
図6】車両用システムの別の構成と、ヒーター優先モードにおける制御状態とを示す説明図である。
図7】エンジン暖機モードにおける制御状態を示す説明図である。
図8】CVT暖機モードにおける制御状態を示す説明図である。
図9】熱害モードにおける制御状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
【0009】
図1に、車両用システム1と、同システムに接続され、同システムを制御する制御装置4とを示す。車両用システム1は、車両に搭載される水冷式のエンジンENGと、同エンジンに冷却水を送る第1ウォーターポンプWPと、同エンジンに接続される無段変速機(不図示)とを備えている。この無段変速機を以下、単に「変速機」とも呼ぶ。
【0010】
車両用システム1はさらに、車室内を暖房するためのヒーター(暖房装置)に備えられたヒーターコアHTRと、変速機のトルクコンバータ内のオイル(トランスミッションオイル)を温めるトランスミッションオイルウォーマーTMOWと、ラジエータRADとを備えている。加えて、車両用システム1はクーラントコントロールバルブ装置CCVをも備えている。
【0011】
クーラントコントロールバルブ装置CCVは、エンジンENGの冷却水出口に接続され、エンジンENGから、ヒーターコアHTRとトランスミッションオイルウォーマーTMOWとラジエータRADとへ流れる冷却水の流量を調節するものである。クーラントコントロールバルブ装置CCVは、第1バルブV1と第2バルブV2と第3バルブV3とを有する。
【0012】
第1バルブV1の出口はヒーターコアHTRの冷却水入口に接続し、同ヒーターコアの冷却水出口は第1ウォーターポンプWPの冷却水入口に接続している。
第2バルブV2の出口はトランスミッションオイルウォーマーTMOWの冷却水入口に接続し、同トランスミッションオイルウォーマーの冷却水出口は第1ウォーターポンプWPの冷却水入口に接続している。
第3バルブV3の出口はラジエータRADの冷却水入口に接続し、同ラジエータの冷却水出口は第1ウォーターポンプWPの冷却水入口に接続している。
【0013】
第1ウォーターポンプWPは、エンジンENGにより駆動される機械式のポンプとすることができる。この第1ウォーターポンプWPの動作により、エンジンENGに冷却水が送られる。エンジンENG内を流れることによりエンジンENGの排熱を吸収した冷却水は、エンジンENGから流出した後、クーラントコントロールバルブ装置CCVへと送られる。
【0014】
開状態の第1バルブV1を経た冷却水は、ヒーターコアHTRに流入する。このヒーターコアHTRにおいては、流入した冷却水と車室内に送られる空気との間で熱交換が行われる。この熱交換により、車室内に送られる空気が温められる。熱交換後の冷却水は、第1ウォーターポンプWPを経てエンジンENGへと送られる。
【0015】
開状態の第2バルブV2を経た冷却水は、トランスミッションオイルウォーマーTMOWに流入する。このトランスミッションオイルウォーマーTMOWにおいては、流入した冷却水とトランスミッションオイルとの間で熱交換が行われる。この熱交換により、トランスミッションオイルが温められる。熱交換後の冷却水は、第1ウォーターポンプWPを経てエンジンENGへと送られる。
【0016】
開状態の第3バルブV3を経た冷却水は、ラジエータRADに流入する。このラジエータRADにおいては、流入した冷却水が冷却される。冷却後の冷却水は、第1ウォーターポンプWPを経てエンジンENGへと送られる。
【0017】
このように、エンジンENGから流出した冷却水は、クーラントコントロールバルブ装置CCVを経てヒーターコアHTRとトランスミッションオイルウォーマーTMOWとラジエータRADとのいずれかを経由してエンジンENGへと戻る。ヒーターコアHTRに送られる冷却水の流量は第1バルブV1により調節され、トランスミッションオイルウォーマーTMOWに送られる冷却水の流量は第2バルブV2により調節され、ラジエータRADに送られる冷却水の流量は第3バルブV3により調節される。
【0018】
車両用システム1はさらに、エンジンENGの水温を計測する水温計2と、外気温を計測する外気温センサ3と、変速機のオイル温度(油温)を計測する油温センサ(不図示)とを備えている。水温計2、外気温センサ3及び油温センサの各計測値は、制御装置4に送られる。
【0019】
制御装置4は、バルブ装置コントローラ41と、ウォーターポンプコントローラ42と、ロックアップ指示コントローラ43とを備えている。バルブ装置コントローラ41は、クーラントコントロールバルブ装置CCV内の第1バルブV1と第2バルブV2と第3バルブV3との開閉を制御する。ウォーターポンプコントローラ42は、第1ウォーターポンプWPの動作を制御する。ロックアップ指示コントローラ43は、変速機に対してロックアップ及びロックアップ解除の指示を行う。ロックアップとは、変速機のトルクコンバータの入力にあたるポンプインペラと出力にあたるタービンランナーとを、油圧を介さずに直接つなぐことである。
【0020】
図中、各バルブについて、開状態を符号Oにより示し、閉状態を符号Sにより示す。図1においては、第1ウォーターポンプWPが動作しており、第1バルブV1が開状態であり、第2バルブV2及び第3バルブV3が閉状態である。この場合、エンジンENGから流出した冷却水は第1バルブV1及びヒーターコアHTRを経てエンジンENGへと戻る。ヒーターコントローラHTRにおいては、前述のとおり、流入した冷却水と車室内に送られる空気との間で熱交換が行われる。このようなバルブ及びウォーターポンプの制御モードをヒーター優先モードと呼ぶ。
【0021】
図2においては、第1ウォーターポンプWPが動作しておらず、第1バルブV1と第2バルブV2と第3バルブV3とがいずれも閉状態である。この場合、冷却水の循環が停止し、エンジンENGの暖機が促進される。このようなバルブ及びウォーターポンプの制御モードをエンジン暖機モードと呼ぶ。
【0022】
図3においては、第1ウォーターポンプWPが動作しており、第1バルブV1が閉状態であり、第2バルブV2が開状態であり、第3バルブV3が閉状態である。この場合、エンジンENGから流出した冷却水は第2バルブV2及びトランスミッションオイルウォーマーTMOWを経てエンジンENGへと戻る。トランスミッションオイルウォーマーTMOWにおいては、前述のとおり、変速機のオイルが温められる。このようなバルブ及びウォーターポンプの制御モードをCVT暖機モードと呼ぶ。CVTとは無段変速機(Continuously Variable Transmission)のことである。
【0023】
図4においては、第1ウォーターポンプWPが動作しており、第1バルブV1が閉状態であり、第2バルブV2及び第3バルブV3が開状態である。この場合、エンジンENGから流出した冷却水の一部は第2バルブV2及びトランスミッションオイルウォーマーTMOWを経てエンジンENGへと戻り、残部は第3バルブV3及びラジエータRADを経てエンジンENGへと戻る。トランスミッションオイルウォーマーTMOWにおいては熱負荷が高く、油温の方が水温より高くなるため、冷却水によりオイルが冷却される。ラジエータRADにおいては冷却水が冷却される。このようなバルブ及びウォーターポンプの制御モードを熱害モードと呼ぶ。
【0024】
なお、図2図4においては、水温計2、外気温センサ3及び制御装置4の図示を省略している。
【0025】
図5に、制御装置4により行われる処理の流れを示す。まずステップS1において、制御装置4は、エンジンENGが始動しているかどうかを判定する。エンジンENGが始動していると判定された場合はステップS2が行われ、さもなければ再びステップS1が行われる。
【0026】
ステップS2において、制御装置4は、ヒーターがオフ状態であるかオン状態であるかを判定する。ヒーターがオン状態であると判定された場合はステップS3が行われ、ヒーターがオフ状態であると判定された場合はステップS4が行われる。
【0027】
ステップS3において、バルブ装置コントローラ41及びウォーターポンプコントローラ42は、図1に示したヒーター優先モードに基づいてバルブ及びウォーターポンプの制御を行う。その後、本処理は終了する。
【0028】
乗員によってヒーターがオン状態とされた場合、ステップS3において、車室内に送られることになる空気がヒーターコアにおいて温められる。この空気の温めは、エンジン暖機及びCVT暖機よりも優先して行われる。その結果、車室内の快適性が優先され、乗員の満足度を高めることができる。
【0029】
ステップS4において、バルブ装置コントローラ41は、外気温センサ3により計測された外気温が第1の所定値T1以上であるかどうかを判定する。外気温が第1の所定値T1未満であると判定された場合はステップS5~S8が行われる。所定値T1とは異なる条件で、外気温が低くなるとロックアップ解除状態となる。
【0030】
ステップS5において、バルブ装置コントローラ41及びウォーターポンプコントローラ42は、図3に示したCVT暖機モードに基づいてバルブ及びウォーターポンプの制御を行う。本ステップではさらに、ロックアップ指示コントローラ43は、変速機をロックアップ解除状態とする。
【0031】
上記ステップS4及びS5によれば、外気温が低温の場合、エンジン暖機の前にCVT暖機が優先して行われる。一般的に、外気温が低いとトランスミッションオイルの粘度が上昇し、フリクションが起きる可能性が高まるが、上記ステップS4及びS5によればオイルが温められてオイルの粘度が低下し、フリクションが起きる可能性を低減することができる。これは燃費の向上につながる。
【0032】
また、変速機がロックアップ解除状態とされることで、エンジン回転数が高くなり、トルクコンバータ内でオイルが回転して熱が生じるため、より効率的にオイルを温めることができる。これは暖機のさらなる向上につながる。一方、ロックアップが解除されると、エンジン回転数が上がり燃料を消費する。CVT暖機によりトランスミッションの温度を上げ、早くロックアップさせることができ、これは燃費のさらなる向上につながる。
【0033】
ステップS6において、バルブ装置コントローラ41は、油温センサから取得した油温の計測値が第2の所定値T2以上であるかどうかを判定する。油温の計測値が第2の所定値T2以上であると判定された場合はステップS7が行われ、さもなければステップS6が再び行われる。第2の所定値T2は例えば30℃とすることができる。
【0034】
ステップS7において、制御装置4は、水温計3から取得した水温の計測値が第3の所定値T3以下であるかどうかを判定する。水温の計測値が第3の所定値T3以下であると判定された場合はステップS8が行われ、さもなければ本処理は終了する。第3の所定値T3は例えば75℃とすることができる。
【0035】
ステップS8において、バルブ装置コントローラ41及びウォーターポンプコントローラ42は、図2に示したエンジン暖機モードに基づいてバルブ及びウォーターポンプの制御を行う。その後、本処理は終了する。
【0036】
ステップS6によれば、油温が第2の所定値T2に達するまでステップS5のCVT暖機モードが継続される。そして、油温が第2の所定値T2に達し、かつエンジンの水温が第3の所定値T3以下であれば、CVT暖機モードを停止して、CVT暖機よりも優先度が低いとして後回しとされたエンジン暖機がステップS8にて行われる。
【0037】
再びステップS4を参照する。同ステップにおいて、外気温が第1の所定値T1以上であると判定された場合はステップS9~S12が行われる。まず、ステップS9において、バルブ装置コントローラ41及びウォーターポンプコントローラ42は、図2に示したエンジン暖機モードに基づいてバルブ及びウォーターポンプの制御を行う。
【0038】
上記ステップS4及びS9によれば、外気温が高温の場合、CVT暖機の前にエンジン暖機が優先して行われ、燃費の向上が期待できる。
【0039】
ステップS10において、制御装置4は、水温計3から取得した水温の計測値が第4の所定値T4以上であるかどうかを判定する。水温の計測値が第4の所定値T4以上であると判定された場合はステップS11が行われ、さもなければステップS10が再び行われる。第4の所定値T4は例えば75℃とすることができる。
【0040】
ステップS11において、制御装置4は、油温センサから取得した油温の計測値が第5の所定値T5以下であるかどうかを判定する。第5の所定値T5は例えば50℃とすることができる。油温の計測値が第5の所定値T5以下であると判定された場合はステップS12が行われ、さもなければ本処理は終了する。
【0041】
ステップS12において、バルブ装置コントローラ41及びウォーターポンプコントローラ42は、図3に示したCVT暖機モードに基づいてバルブ及びウォーターポンプの制御を行う。その後、本処理は終了する。
【0042】
ステップS10によれば、エンジンの水温が第4の所定値T4に達するまでステップS9のエンジン暖機モードが継続される。そして、水温が第4の所定値T4に達し、かつ油温が第5の所定値T5以下であれば、エンジン暖機モードを停止して、エンジン暖機よりも優先度が低いとして後回しとされたCVT暖機がステップS12にて行われる。
【0043】
図1から図5に示した実施形態によれば、外気温が比較的低い場合にエンジン暖機よりもトランスミッションオイルの温めが優先され、外気温が比較的高い場合にトランスミッションオイルの温めよりもエンジン暖機が優先される。外気温が低温の場合、トランスミッションオイルの粘度が比較的高いが、エンジン暖機よりも優先して同オイルを温め粘度を下げて、フリクションを低減できる。これは燃費の向上につながる。また、外気温が高温の場合、トランスミッションオイルの温めよりエンジン暖機を優先することで、EGR(排気再循環)のタイミングが適切となる。これもまた燃費の向上をもたらす。
【0044】
本実施形態は、外気温が低いときにオイルの粘度が上昇することから、エンジン暖機よりもトランスミッションのオイルの温めを優先した方が燃費改善効果は高いという知見に基づいたものである。
【0045】
また、外気温に応じてエンジン暖機とCVT暖機とのいずれかが優先して行われ、その後、必要に応じて他方も行われるため、最終的にはパワートレイン全体を暖めて、熱の偏りをなくし燃費改善を図ることが可能である。
【0046】
このように、エンジンから冷却水に移動した熱を、トランスミッションオイルウォーマーに分配し、ヒーターコアに分配し、又はエンジンに再分配することができる。この分配は、外気温に応じて適切に行われるため、燃費の向上につながる。
【0047】
続いて、車両用システムの他の形態を示す。図6に示すように、車両用システム1aは、図1図4に示した車両用システム1の構成に加えて、第2ウォーターポンプeWPと熱デバイスTDとを備えている。第2ウォーターポンプeWPは電動式とすることができる。熱デバイスTDは、エンジンENGとは別の熱源であり、蓄熱タンクや排気熱回収器などが例として挙げられる。ウォーターポンプコントローラ42は、第1ウォーターポンプWPの動作だけではなく、第2ウォーターポンプeWPの動作も制御する。
【0048】
第2ウォーターポンプeWPの入口は、第2バルブV2の出口と、トランスミッションオイルウォーマーTMOWの第1冷却水出入口W1との接続部である第1接続部CN1に接続している。第2ウォーターポンプeWPの出口は、熱デバイスTDの冷却水入口に接続している。熱デバイスTDの冷却水出口は、トランスミッションオイルウォーマーTMOWの第2冷却水出入口W2と第1ウォーターポンプWPの入口との接続部である第2接続部CN2に接続している。
【0049】
図6に、第1ウォーターポンプWP及び第2ウォーターポンプeWPがともに動作しており、かつ第1バルブV1及び第2バルブV2が開状態であって第3バルブV3が閉状態である場合を示す。この場合、エンジンENGから流出した冷却水の一部は第1バルブV1及びヒーターコアHTRを経てエンジンENGへと戻り、残部は第2バルブV2と動作中の第2ウォーターポンプeWPと熱デバイスTDとを経てエンジンENGへと戻る。冷却水は、エンジンENG及び熱デバイスTDの両者によって比較的短時間で温められて、ヒーターコアHTRへ供給される。このようなバルブの制御モードを、車両用システム1aにおけるヒーター優先モードと呼ぶ。
【0050】
図7に、第1ウォーターポンプWP及び第2ウォーターポンプeWPがともに動作しており、かつ第2バルブV1のみが開状態であって、第1バルブV1及び第3バルブV3が閉状態の場合を示す。この場合、エンジンENGから流出した冷却水は、第2バルブV2と第2ウォーターポンプeWPと熱デバイスTDとを経てエンジンENGへと戻る。これにより、熱デバイスTDのない車両用システム1よりも短時間でエンジンENGの暖機を行うことができる。このようなバルブの制御モードを、車両用システム1aにおけるエンジン暖機モードと呼ぶ。
【0051】
図8に、第1ウォーターポンプWPが停止しており、第2ウォーターポンプeWPが動作しており、かつ第1バルブV1と第2バルブV2と第3バルブV3とがいずれも閉状態の場合を示す。動作中の第2ウォーターポンプeWPから流れ出た冷却水は、熱デバイスTDにより温められ、第2接続部CN2を経てトランスミッションオイルウォーマーTMOWの第2冷却水出入口W2へと流入する。トランスミッションオイルウォーマーTMOWにおいては、流入した冷却水とトランスミッションオイルとの間で熱交換が行われ、トランスミッションオイルが温められる。熱交換後の冷却水は、トランスミッションオイルウォーマーTMOWの第1冷却水出入口W1から動作中の第2ウォーターポンプeWPへと流れる。このようなバルブの制御モードを、車両用システム1aにおけるCVT暖機モードと呼ぶ。エンジンENGとは切り離して冷却水の循環がなされることで、CVTの暖機とエンジンENGの暖機とを並行して行うことができる。
【0052】
図9に、図4と同様の熱害モードを示す。すなわち、第1ウォーターポンプWPは動作しており、第2ウォーターポンプeWPは停止していて、第2バルブV2及び第3バルブV3が開状態、第1バルブV1は閉状態である。エンジンENGから流出した冷却水の一部は第2バルブV2及びトランスミッションオイルウォーマーTMOWを経てエンジンENGへと戻り、残部は第3バルブV3及びラジエータRADを経てエンジンENGへと戻る。
【0053】
なお、図7図9においては、水温計2、外気温センサ3及び制御装置4の図示を省略している。
【0054】
車両用システム1aも制御装置4により制御される。この場合に制御装置4により行われる処理の流れは、図5と同様である。
【0055】
図6図9に示した実施形態によれば、エンジンから冷却水に移動した熱だけではなく、熱デバイスから冷却水に移動した熱をも、トランスミッションオイルウォーマーに分配し、ヒーターコアに分配し、又はエンジンに再分配することができる。
【0056】
トランスミッションオイルウォーマーを単にオイルウォーマーと呼ぶこともできる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 車両用システム
ENG エンジン
WP 第1ウォーターポンプ
HTR ヒーターコア
TMOW トランスミッションオイルウォーマー
RAD ラジエータ
CCV クーラントコントロールバルブ装置
V1~V3 バルブ
2 水温計
3 外気温センサ

4 制御装置
41 バルブ装置コントローラ
42 ウォーターポンプコントローラ
43 ロックアップ指示コントローラ

1a 冷却システム
eWP 第2ウォーターポンプ
TD 熱デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9