(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】2サイクルエンジンの潤滑油供給装置
(51)【国際特許分類】
F01M 3/00 20060101AFI20221213BHJP
F01M 1/16 20060101ALI20221213BHJP
F02B 25/14 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
F01M3/00 C
F01M1/16 E
F01M1/16 A
F02B25/14 A
(21)【出願番号】P 2018235334
(22)【出願日】2018-12-17
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】317019683
【氏名又は名称】三菱重工メイキエンジン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】霜上 純
(72)【発明者】
【氏名】仲出川 大補
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 大介
(72)【発明者】
【氏名】上野山 和之
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-096233(JP,A)
【文献】特開平06-033723(JP,A)
【文献】特開平03-286115(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0218979(US,A1)
【文献】特開昭50-127024(JP,A)
【文献】特開平11-324631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 3/00
F01M 1/16
F02B 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体に吸気管を介して潤滑油を供給する2サイクルエンジンの潤滑油供給装置であって、
前記潤滑油で満たされることになる貯留空間及び前記貯留空間以外の気体空間からなる内部空間を画定するタンク本体を有する潤滑油タンクと、
前記貯留空間と前記吸気管の内部とが連通するように、前記潤滑油タンクと前記吸気管におけるスロットルバルブの下流側とを接続するための潤滑油供給路と、を備え
、
前記気体空間と前記エンジン本体のクランクケース内とが連通するように、前記潤滑油タンクと前記エンジン本体とを接続するための圧力導入路をさらに備え、
前記圧力導入路は、
前記エンジン本体に形成されている第1圧力通路と、
前記吸気管の管壁に形成された第2圧力通路であって前記吸気管を前記エンジン本体に取り付けた状態で前記第1圧力通路に接続される第2圧力通路と、を含む、
ことを特徴とする2サイクルエンジンの潤滑油供給装置。
【請求項2】
前記内部空間の圧力を所定範囲内に収めるための圧力調整手
段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の2サイクルエンジンの潤滑油供給装置。
【請求項3】
前記圧力調整手段は、
前記圧力導入路の一部を構成する、前記内部空間の圧力と前記クランクケース内の圧力とに差を設けるための圧力差生成手段、あるいは、
前記潤滑油タンクに設けられた、前記気体空間と外部とを連通する連通孔を通して前記内部空間の圧力を前記所定範囲に保つための圧力保持手段の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項2に記載の2サイクルエンジンの潤滑油供給装置。
【請求項4】
前記圧力調整手段は、前記圧力差生成手段を少なくとも含み、
前記圧力導入路は、前記第2圧力通路と前記潤滑油タンクとを接続する管部材をさらに含み、
前記圧力導入路は、前記クランクケース内で生じる正圧および負圧が前記気体空間に導入されるように形成されており、
前記圧力差生成手段は、前記圧力導入路の一部の断面積が小さくされた絞り部で
あって前記第2圧力通路と前記管部材との接続箇所に形成された絞り部であることを特徴とする請求項3に記載の2サイクルエンジンの潤滑油供給装置。
【請求項5】
前記潤滑油供給路に設置される、前記内部空間の圧力が前記吸気管の内部の圧力よりも所定値を超えて大きくなる場合に開弁する逆止弁を、さらに備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の2サイクルエンジンの潤滑油供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料と潤滑油とを分離してクランクケース内に供給する2サイクルエンジンの潤滑油供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2サイクルエンジンの潤滑油供給方式として、燃料(ガソリン)および潤滑油(2サイクルオイル)を分離してクランク室に供給する分離供給方式(分離潤滑方式)が知られている。例えば、特許文献1には、吸気通路に潤滑油を噴射する潤滑油噴射ノズルと、潤滑油タンクの潤滑油を潤滑油噴射ノズルに離れた位置から送出する電気式送出器と、を備え、制御装置によって電気的に潤滑油の送出を制御することにより精度の高い潤滑油供給が可能な分離潤滑装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、クランクケース内に発生する圧力が導入され、該圧力が正圧時のみ潤滑油供給通路を開くバルブ機構を備える潤滑油供給装置が開示されている。具体的には、潤滑油タンクから装置に供給される潤滑油(潤滑油)に常時正圧を加えることで、装置本体内に設けられた潤滑油流出通路を開閉するバルブまで潤滑油を供給しておく。このバルブはクランクケース内圧により開閉されるようになっており、その正圧による力が戻しばねによるバルブを押し下げる力に打ち勝つと開弁することにより、潤滑油流出通路を介してエンジンに潤滑油が供給され、負圧時およびゼロ圧時には戻しばねにより閉弁するようになっている。なお、潤滑油に正圧を加える方法として、潤滑油タンクを潤滑油供給装置より高い位置に配設する方法、潤滑油タンク内にチェック弁を介してクランクケース内に正圧のみを加えるようにすることにより潤滑油タンク内を常に正圧に維持する方法、及び潤滑油タンクと潤滑油供給装置の間に潤滑油ポンプを設置する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-27620号公報
【文献】特開平5-296016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、電気式送出器などを必要とするため、その分だけ潤滑油供給装置の複雑性が増すと共に、装置が大型化し易い。同様に、特許文献2では、例えば潤滑油タンク内にチェック弁を介してクランクケース内の正圧のみを加えるようにすることで潤滑油タンク内を常に正圧にする場合には、ポンプが不要である反面、クランクケース内圧により開閉される上述したバルブが必要である。
【0006】
また、特許文献2では、上述の通り、クランクケース内圧により開閉されるバルブはクランクケース内の正圧時に開弁するが、この正圧時には、吸気通路とクランクケースとの間がピストン側壁やスロットルバルブ等で閉じられる。そして、この吸気通路におけるリードバルブの上流側は、エアクリーナーなどを介して外部に連通しているため、クランクケース内の正圧時には外気圧(大気圧)になる。よって、潤滑油は、スロットルバルブの上流側から吸気通路に供給されるので、潤滑油タンクに溜めた正圧と吸気通路の圧力との圧力差(差圧)が十分に得られない場合(後述する
図2参照)には、潤滑油の供給量が適切にならない場合が生じ得る。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、クランクケース内に生じる負圧を利用して適切な量の潤滑油を供給可能な2サイクルエンジンの潤滑油供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る2サイクルエンジンの潤滑油供給装置は、
エンジン本体に吸気管を介して潤滑油を供給する2サイクルエンジンの潤滑油供給装置であって、
前記潤滑油で満たされることになる貯留空間及び前記貯留空間以外の気体空間からなる内部空間を画定するタンク本体を有する潤滑油タンクと、
前記貯留空間と前記吸気管の内部とが連通するように、前記潤滑油タンクと前記吸気管におけるスロットルバルブの下流側とを接続するための潤滑油供給路と、を備える。
【0009】
上記(1)の構成によれば、潤滑油タンク内の潤滑油は、潤滑油供給路により、吸気管内(吸気通路)のスロットルバルブの下流側に供給される。吸気通路におけるスロットルバルブの下流側は、エンジンの吸入、圧縮工程におけるクランクケース内の圧力に応じた高い負圧が生じる。よって、この負圧によって潤滑油タンクの潤滑油が吸気通路に吸い込まれることにより、クランクケース内と吸気通路とが連通するエンジンの吸入、圧縮工程に、エンジン本体(クランクケース内)に潤滑油を供給することができる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記気体空間と前記エンジン本体のクランクケース内とが連通するように、前記潤滑油タンクと前記エンジン本体とを接続するための圧力導入路と、
前記内部空間の圧力を所定範囲内に収めるための圧力調整手段と、をさらに備える。
【0011】
上記(2)の構成によれば、潤滑油タンクには、圧力導入路を介してクランクケース内の圧力(クランクケース圧)が導入される共に、潤滑油タンク内の圧力は、圧力調整手段によって、クランクケース圧と同レベルで高くなることや、同レベルの負圧になるなど同レベルで低くなることがないようにされる。
【0012】
これによって、クランクケース圧の正圧時(燃焼、掃気工程)には、クランクケース圧によって潤滑油タンク内の潤滑油を押し出すことができるので、クランクケース内と吸気通路とが連通されていない状態になるエンジンの燃焼、掃気工程においても、潤滑油を吸気通路(エンジン本体)に供給することができる。この際、圧力調整手段によって潤滑油タンク内の圧力がクランクケース圧と同レベルで高くされないので、潤滑油が過剰に押し出されるのを防止することができ、潤滑油の供給量を適正化することができる。
【0013】
また、クランクケース圧の負圧時(吸気、圧縮工程)には、圧力調整手段によって、その負圧により潤滑油タンク内の圧力が低くなり過ぎるのを防止することができ、潤滑油タンク内と吸気管内との圧力差を適切に設けることができる。これと共に、潤滑油タンクから潤滑油が流出するのに伴って潤滑油タンク内の圧力が下がることにより、潤滑油タンクからの潤滑油の流出を妨げる力が生じるのを防止することができる。よって、潤滑油の供給量を適正化することができる。
【0014】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記圧力調整手段は、
前記圧力導入路の一部を構成する、前記内部空間の圧力と前記クランクケース内の圧力とに差を設けるための圧力差生成手段、あるいは、
前記潤滑油タンクに設けられた、前記気体空間と外部とを連通する連通孔を通して前記内部空間の圧力を前記所定範囲に保つための圧力保持手段の少なくとも一方を含む。
【0015】
上記(3)の構成によれば、圧力調整手段により、燃焼、掃気工程においてクランクケース圧によって高められた潤滑油タンク内の圧力が、吸入、圧縮工程でクランクケース圧が低下した分だけ低下しないようにされる。これによって、潤滑油タンクの潤滑油を加圧することができ、潤滑油タンク内と吸気管内との圧力差をより大きくすることができる。
【0016】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記圧力導入路は、前記クランクケース内で生じる正圧および負圧が前記気体空間に導入されるように形成されており、
前記圧力差生成手段は、前記圧力導入路の一部の断面積が小さくされた絞り部である。
上記(4)の構成によれば、圧力導入路が有する絞り部により、圧力差生成手段を形成することができる。
【0017】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)~(4)の構成において、
前記潤滑油供給路に設置される、前記内部空間の圧力が前記吸気管の内部の圧力よりも所定値を超えて大きくなる場合に開弁する逆止弁を、さらに備える。
上記(5)の構成によれば、潤滑油供給路を介した吸気管から潤滑油供給路への逆流を防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、クランクケース内に生じる負圧を利用して適切な量の潤滑油を供給可能な2サイクルエンジンの潤滑油供給装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエンジンの構成を概略的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るアイドリング時におけるクランク角に対する各種圧力の推移を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るスロットル全開時におけるクランク角に対する各種圧力の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る2サイクルエンジンの潤滑油供給装置1を概略的に示す図である。本発明の2サイクルエンジンの潤滑油供給装置1(以下、適宜、単に、潤滑油供給装置1)は、ガソリンなどの燃料と潤滑油sとを分離してクランクケース75の内部に供給する分離供給方式(分離潤滑方式)の装置であり、2サイクルエンジン(以下、単に、エンジン)のエンジン本体7に吸気管8を介して潤滑油sを供給するよう構成される。
図1に示すように、エンジン本体7は、シリンダ部71と、シリンダ部71内を往復動するピストン72と、クランク軸73と、ピストン72とクランク軸73とを連結するコネクティングロッド74と、クランク軸73を収容するクランクケース75と、を備えている。
【0022】
そして、上記のシリンダ部71には、吸気管8が接続される吸気ポート71iと、排気管(不図示)が接続される排気ポート71eと、掃気ポート71sと、が形成されている。
図1に示す実施形態では、吸気管8の端部には、少なくとも一部が樹脂で成形された、エンジン本体7の高温を断熱するための管状のインシュレータ部81が設けられており、吸気管8のインシュレータ部81の内部が吸気ポート71iに連通するように、吸気管8とエンジン本体7とが接続されている。そして、吸気管8の内部とクランクケース75の内部(クランク室75a)とが吸気ポート71iを介して連通しており、吸気管8の内部に供給された燃料、および潤滑油供給装置1により供給された潤滑油sが、エンジンの吸気、圧縮工程における、シリンダ部71内におけるピストン72の上昇により生じる負圧によって引かれることで、吸気管8の内部および吸気ポート71iにより形成される吸気通路8pを通ってクランク室75aに供給される。
【0023】
また、上記ピストン72の上面とシリンダ部71の内面とにより燃焼室76が形成されている。そして、スパークプラグなどの点火プラグ77により混合気が着火されて爆発し、膨張する燃焼ガスにより押し下げられるが、ピストン72の下降に従ってまずは排気ポート71eが開くことで、燃焼ガスが外部に排出される。さらに、ピストン72が下降していくと、ピストン72によりふさがれていた掃気ポート71sが開く。この掃気ポート71sはクランク室75aにつながっており、クランク室75aで圧縮されていた混合気が、掃気ポート71sを通ってシリンダ部71の内部に吹き出すことで、シリンダ部71の内部に残っている燃焼ガス(排ガス)が押し出される(燃焼、掃気工程)。
【0024】
また、吸気通路8pの途中には、クランク室75aから吸気管8への混合気の逆流を防止するための不図示のリードバルブ(逆止弁)が設けられていても良い。このリードバルブ(不図示)は、燃焼、掃気工程においてピストン72が上死点から下死点に向けて下降するのに伴いクランク室75aの圧力が高く(大きく)なると閉弁する。リードバルブ(不図示)が閉弁すると、吸気管8の内部とクランク室75aとが連通されていない状態になるが、吸気管8の他端は外部と連通しているので、吸気管8の内部は外気圧(大気圧)となる。逆に、リードバルブは、吸気、圧縮工程においてピストン72が下死点から上死点に向けて上昇するのに伴いクランク室75aの圧力が低く(小さく)なると開弁する。これによって、吸気管8の内部とクランク室75aとは連通した状態となり、不図示のエアクリーナーを介して外部の空気が吸入される。このように吸入された空気(吸気)は、吸気管8の内部に設置されたスロットルバルブ84によって流量を調節されながら、吸気通路8pを下流のクランク室75aに向けて流れていく。
図1に示す実施形態では、スロットルバルブ84は、吸気通路8pにおける上述したインシュレータ部81の上流側(吸気管8内)に設けられている。なお、他の幾つかの実施形態では、リードバルブが設けられていなくても良く、例えばピストンにより吸気ポート71iを上述のように開閉するなど、リードバルブに代わる他の手段を用いても良い。
【0025】
次に、上述したような構成を備える2サイクルエンジンの潤滑油供給装置1について、詳細に説明する。
図1に示すように、潤滑油供給装置1は、潤滑油タンク2と、潤滑油供給路Lsと、を備える。
【0026】
潤滑油タンク2は、潤滑油sで満たされることになる貯留空間S1及び貯留空間S1以外の気体空間S2からなる内部空間Sを画定するタンク本体21を有する。つまり、タンク本体21の内部空間Sに潤滑油sを貯留した状態でエンジンは運転されるが、その状態において、内部空間Sのうちの潤滑油sが貯留されている空間が貯留空間S1となり、内部空間Sのうちの潤滑油sが貯留されていない空間が気体空間S2となる。
【0027】
図1に示す実施形態では、タンク本体21には、内部空間Sに潤滑油sを供給あるいは排出するためのキャップ26によって開閉可能な開口部23が設けられており、タンク本体21は、開口部23側が上を向くようにエンジンに設置されるようになっている。また、タンク本体21の表面には、潤滑油sを貯蔵した際の潤滑油sの液面ssの推奨位置が、上限ラベルTuおよび下限ラベルTbによって表示されている。この上限ラベルTuよりもタンク本体21の開口部23側を上部、下限ラベルTbよりもタンク本体21の開口部23の反対側を下部と呼ぶと、本実施形態では、貯留空間S1は、少なくともタンク本体21の下部(下限ラベルTbよりも下方)の空間を含み、気体空間S2は少なくともタンク本体21の上部(上限ラベルTuよりも上方)の空間を含む。なお、例えば、潤滑油sの液面ss(
図1参照)が、上限ラベルTuと下限ラベルTbとの間に位置する場合、潤滑油sの液面ssよりも開口部23側が気体空間S2であり、開口部23の反対側(タンク本体21の底部21b側)が貯留空間S1となる。
【0028】
潤滑油供給路Lsは、タンク本体21の内部の貯留空間S1と吸気管8の内部(吸気通路8p)とが連通(直接連通)するように、潤滑油タンク2と吸気管8におけるスロットルバルブ84の下流側とを接続するよう構成される。
図1に示す実施形態では、潤滑油供給路Lsは、例えばゴム製のホースなどの管状の管部材hsを含んで構成されており、タンク本体21の上部と、吸気管8のインシュレータ部81とを接続するように構成されている。具体的には、タンク本体21には、貯留空間S1と外部とを連通する出口部24が、開口部23とは別に設けられている。また、インシュレータ部81には、吸気管8の内部と外部とを連通する潤滑油供給孔85が形成されている。そして、潤滑油供給路Lsによって、潤滑油タンク2の出口部24、潤滑油供給路Lsの内部、および潤滑油供給孔85を介して、潤滑油タンク2の貯留空間S1(内部空間S)と、吸気通路8pとが連通するようになっている。
【0029】
なお、
図1に示す実施形態では、潤滑油供給孔85が形成されたインシュレータ部81の部分(第1部分81a)は金属であり、残りの部分(第2部分81b)が樹脂であるが、他の幾つかの実施形態では、第2部分81bをなくし、上記の第1部分81aを断熱材としても良い。上記の出口部24は貯留空間S1に面するようにタンク本体21に形成された出口開口24aを少なくとも有してれば良い。あるいは出口部24は気体空間S2にあったとしても、ホース等を通じて、その吸入経路がS2に連通していれば良い。本実施形態では、出口部24は、この出口開口24aの縁から外部に突出する出口突出部24pをさらに有しており、潤滑油供給路Lsは出口部24の出口突出部24pに接続されている。また、本実施形態では、出口部24は、タンク本体21の側壁部21sにおける下限ラベルTbよりも底部21b側に設けられているが、底部21bに設けられても良い。また、潤滑油供給孔85は、インシュレータ部81に限定されず、吸気管8の壁に形成されれば良い。
【0030】
上述した構成を備える潤滑油供給装置1は、エンジンの運転時には、潤滑油タンク2に潤滑油sが貯蔵されている状態となっている。そして、エンジンの吸気、圧縮工程においてピストン72の上昇により生じるエンジン本体7内の負圧により、吸気管8の内部も負圧となる。この時、吸気管8の内部におけるスロットルバルブ84の下流側は、特にアイドリング時にはスロットルバルブ84が閉側にあるため、吸気管8の内部におけるスロットルバルブ84の上流側よりも圧力が低い状態となり易い。よって、タンク本体21の内部空間Sの圧力が例えば大気圧になっている場合や、後述するように加圧された状態である場合においては、タンク本体21の圧力とスロットルバルブ84の下流側との圧力差の方が、タンク本体21の圧力とスロットルバルブ84の上流側との圧力差よりも大きくなりやすい。したがって、上述の通り、潤滑油供給路Lsの一端を、吸気管8におけるスロットルバルブ84の下流側に接続することで、吸気、圧縮工程における負圧により生じるタンク本体21の内部空間Sの圧力と吸気管8の内部との圧力差によって、潤滑油タンク2から潤滑油sを吸気管8の内部に供給することが可能となる。
【0031】
上記の構成によれば、潤滑油タンク2内の潤滑油sは、潤滑油供給路Lsにより、吸気管8内(吸気通路8p)のスロットルバルブ84の下流側に供給される。吸気通路8pにおけるスロットルバルブ84の下流側は、エンジンの吸入、圧縮工程におけるクランクケース75内の圧力に応じた高い負圧が生じる。よって、この負圧によって潤滑油タンク2の潤滑油sが吸気通路8pに吸い込まれることにより、クランクケース75内と吸気通路8pとが連通するエンジンの吸入、圧縮工程に、エンジン本体7(クランクケース75内)に潤滑油sを供給することができる。
【0032】
幾つかの実施形態では、上述した潤滑油供給装置1は、潤滑油タンク2の内部を加圧する手段を、さらに備えていても良い。
具体的には、幾つかの実施形態では、
図1に示すように、上述した潤滑油供給装置1は、潤滑油タンク2の気体空間S2とエンジン本体7のクランクケース75内(クランク室75a)とが連通(直接連通)するように、潤滑油タンク2とエンジン本体7とを接続するための圧力導入路Lpと、潤滑油タンク2の内部空間Sの圧力を所定範囲内に収めるための圧力調整手段3と、をさらに備える。つまり、圧力導入路Lpにより潤滑油タンク2の内部空間Sにクランク室75aの圧力(正圧及び負圧)を伝えると共に、圧力調整手段3によって、潤滑油タンク2内の圧力がクランク室75aの圧力変動と同じ圧力レベルで変動しないようにしている(後述する
図2~
図3参照)。
【0033】
例えば、クランク室75aの圧力が高すぎると、その圧力によって潤滑油タンク2内の潤滑油sが強く押されることになるので、潤滑油sの供給量が過剰になる可能性がある。他方、クランク室75aの圧力が負圧になると、この負圧に引かれることで、潤滑油タンク2内の潤滑油sが吸気管8に供給できない可能性がある。よって、圧力調整手段3により、潤滑油タンク2内の圧力がクランク室75aの圧力と同レベルで高くなることや、同レベルの負圧になるなど同レベルで低くなることがないようにすることが可能となるので、潤滑油供給路Lsを介した潤滑油タンク2内と吸気管8内との圧力差を適切に設けることが可能となる。
【0034】
これについて、
図2~
図3を用いて説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係るアイドリング時におけるクランク角に対する各種圧力の推移を示す図である。また、
図3は、本発明の一実施形態に係るスロットル全開時におけるクランク角に対する各種圧力の推移を示す図である。なお、
図2~
図3に示す実施形態では、後述する圧力保持手段32によって、潤滑油タンク2内の圧力が、0(ゲージ圧)を中心に、±αの範囲に保持されているものとして説明する。つまり、上記の所定範囲を規定する上限値が+αであり、下限値が-αである。この上限値および下限値の各々の絶対値は、異なっていても良い。また、吸気通路8pにリードバルブ(不図示)が設けられているものとして説明する。
【0035】
例えば
図2に示すエンジンのアイドリング時には、スロットルバルブ84の開度が閉側にある。そして、
図2に示す実施形態では、クランク室75aの圧力(クランクケース圧)は、ピストン運動に応じて負圧の領域において上下に変動している。より具体的には、クランクケース圧(理論値)は、吸気、圧縮工程においてピストン72が下死点(BDC)から上死点(TDC)に向かって上昇するのに従って低くなっていき、上死点付近で最低の-β2となる(負圧が最大)。また、クランクケース圧は、燃焼、掃気工程においてピストン72が上死点(TDC)から下死点(BDC)に向かって下降するのに従って高くなっていき、下死点(BDC)付近で最高の-β1(-β1>-β2)となる。なお、本実施形態では-β1=-αとなっている。
【0036】
他方、吸気管8内の圧力(以下、吸気管内圧)は、ピストン72が下死点(BDC)から上死点(TDC)に向かって上昇する際(吸気、圧縮工程)にはリードバルブ(不図示)が開いているため、クランクケース圧と同様に推移するが、例えば上死点(TDC)では-β3になるなど、クランクケース圧よりも圧力の変化が大きい状態で推移する。また、吸気管内圧は、ピストン72が上死点(TDC)から下死点(BDC)に向かって下降する際(燃焼、掃気工程)には、クランクケース圧が高くなるのに従って上述した通りリードバルブ(不図示)が閉じられ、吸気管8内とクランク室75aとが連通しない状態になるので、0(大気圧)付近で一定となって推移する。
【0037】
よって、吸気、圧縮工程でクランク室75aにおける負圧が大きくなると、潤滑油タンク2内の圧力よりも吸気管内圧の方が低くなることで、吸気管内圧と潤滑油タンク2内の圧力との圧力差(|タンク圧-吸気管内圧|)が生じる。なお、タンク圧は、気体空間S2の圧力であっても良い。そして、この圧力差に応じて、潤滑油タンク2内の潤滑油sがクランク室75aに引っ張られるなどすることで、潤滑油供給路Lsから吸気管8内に潤滑油sが供給される。
図2では、潤滑油タンク2から潤滑油sが供給された分だけ潤滑油タンク2内の圧力(タンク圧)が下がっている。
【0038】
なお、
図1に示す実施形態では、圧力導入路Lpを介して潤滑油タンク2の内部空間Sとクランク室75aとが連通しているため、吸気、圧縮工程においてクランク室75aにおける負圧の大きさに応じて潤滑油タンク2内の圧力も下げられていくが、圧力保持手段32により潤滑油タンク2内の圧力は下限値(-α)を下回らないようになっている。また、
図2では、BDC付近のタンク圧は、負圧がほとんどない為、圧力保持手段32(32a)により0付近に調整されている。
【0039】
同様に、例えば
図3に示すスロットルバルブ84の開時(
図3では全開時)には、スロットルバルブ84による吸気の吸入時の圧損がアイドリング時よりも小さい状態である。そして、
図3に示す実施形態では、クランクケース圧は、ピストン運動に応じて正圧の領域における+β6(TDC)と+β7(BDC)との間において上下に変動している(+β6<+β7)。また、吸気管内圧は、例えば上死点(TDC)ではクランクケース圧が-β5であるのに対して、-β4(-β5>-β4)になるなど、クランクケース圧よりも圧力の変化が大きい状態で同様に推移している。
【0040】
よって、吸気、圧縮工程でクランク室75aにおける負圧が大きくなると、潤滑油タンク2内の圧力よりも吸気管内圧の方が低くなることで、吸気管内圧と潤滑油タンク2内の圧力との圧力差(|タンク圧-吸気管内圧|)が生じる。そして、この圧力差に応じて、潤滑油タンク2内の潤滑油sがクランク室75aに引っ張られるなどすることで、潤滑油供給路Lsから吸気管8内に潤滑油sが供給される。
図3では、潤滑油タンク2から潤滑油sが供給された分だけ潤滑油タンク2内の圧力(タンク圧)が下がっている。
【0041】
他方、燃焼、掃気工程においてクランク室75aは正圧であり、この正圧が潤滑油タンク2内に導入されることで加圧される。よって、吸気管内圧と潤滑油タンク2内の圧力との圧力差(|タンク圧-吸気管内圧|)に応じて、潤滑油タンク2内の潤滑油sが潤滑油供給路Lsに押し出されることで、潤滑油sが吸気管8内に供給される。
図3では、潤滑油タンク2内の圧力は圧力保持手段32により上限値(+α)を上回らないようになっており、また、リードバルブ(不図示)が閉じているため吸気管内圧は大気圧程度である。よって、潤滑油タンク2内は、大気圧と比較して+αだけ加圧された状態であり、タンク圧-吸気管内圧は最大で+αとなる。
【0042】
また、上記の圧力導入路Lpは、
図1に示す実施形態では、第1圧力通路p1と、この第1圧力通路p1に接続される第2圧力通路p2と、第2圧力通路p2と潤滑油タンク2の入口部25とを接続する例えばゴム製のホースなどの管部材hpと、を含んで構成されている。詳述すると、潤滑油タンク2は、気体空間S2と外部とを連通する入口部25を有している。
図1に示すように、この入口部25は、上記の入口開口25aの縁から外部に突出する入口突出部25pをさらに有しも良い。また、入口部25は、タンク本体21の天井部21cに設けられている。ただし、本実施形態に本発明は限定されない。他の幾つかの実施形態では、入口部25は、気体空間S2に面するようにタンク本体21に形成された入口開口25aを有してれば良い。また、入口部25は、タンク本体21の上部であれば、タンク本体21の側壁部21sであっても良い。
【0043】
他方、第1圧力通路p1は、エンジン本体7のクランク室75aと外部とを連通するように、エンジン本体7に形成されている。より詳細には、第1圧力通路p1は、クランクケース75(壁)とシリンダ部71のシリンダ壁に跨って形成されており、シリンダ壁の部分の端部は、吸気ポート71iの端部が形成されているのと同じ面に開口している。また、第2圧力通路p2は、吸気管8の管壁に形成されており、吸気管8をエンジン本体7に取り付けた状態で、第1圧力通路p1に接続されるようになっている。この第2圧力通路p2は、吸気通路8pに沿って形成された部分を有するが、そのエンジン本体7の反対側に位置する端部(外部接続端)は、外部に開口している。より詳細には、第2圧力通路p2の外部接続端は、上述したインシュレータ部81から吸気管8の外部に開口している。
【0044】
そして、上述した潤滑油タンク2の入口突出部25pと、第2圧力通路p2の外部接続端とが上記の管部材hpで接続されることで、圧力導入路Lpが構成されている。これによって、潤滑油タンク2の内部空間Sは、圧力導入路Lpを介してクランク室75aに連通しており、潤滑油タンク2の内部空間Sには、クランク室75aで生じるピストン72の上下運動による圧力の脈動が導入されるようになっている。つまり、クランク室75aの圧力が、正圧、負圧を含めて潤滑油タンク2の内部空間Sに導入されるようになっている。
【0045】
上記の構成によれば、潤滑油タンク2には、圧力導入路Lpを介してクランクケース75内の圧力(クランクケース圧)が導入される共に、潤滑油タンク2内の圧力は、圧力調整手段3によって、クランクケース圧と同レベルで高くなることや、同レベルの負圧になるなど同レベルで低くなることがないようにされる。これによって、クランクケース圧が正圧時(燃焼、掃気工程)には、クランクケース圧によって潤滑油タンク2内の潤滑油sを押し出すことができるので、クランクケース75内と吸気通路8pとが連通されていない状態になるエンジンの燃焼、掃気工程においても、潤滑油sを吸気通路8p(エンジン本体7)に供給することができる。この際、圧力調整手段3によって潤滑油タンク2内の圧力がクランクケース圧と同レベルで高くされないので、潤滑油sが過剰に押し出されるのを防止することができ、潤滑油sの供給量を適正化することができる。
【0046】
また、クランクケース圧が負圧時(吸気、圧縮工程)には、圧力調整手段3によって、その負圧により潤滑油タンク2内の圧力が低くなり過ぎるのを防止することができ、潤滑油タンク2内と吸気管8内との圧力差を適切に設けることができる。これと共に、潤滑油タンク2から潤滑油sが流出するのに伴って潤滑油タンク2内の圧力が下がることにより、潤滑油タンク2からの潤滑油sの流出を妨げる力が生じるのを防止することができる。よって、潤滑油sの供給量を適正化することができる。
【0047】
次に、上記の圧力調整手段3に関する実施形態について、説明する。
幾つかの実施形態では、圧力調整手段3は、
図1に示すような、クランクケース75内で生じる正圧および負圧が気体空間S2に導入されるように形成された圧力導入路Lpの一部を構成する、潤滑油タンク2の内部空間Sの圧力とクランクケース75内(クランク室75a)の圧力とに差を設けるための圧力差生成手段31であっても良い。換言すれば、圧力差生成手段31は、潤滑油タンク2の内部空間Sの圧力がクランクケース75側に逃げないように(逃げにくいように)するための手段である。他の幾つかの実施形態では、圧力調整手段3は、
図1に示すような、潤滑油タンク2に設けられた、気体空間S2と外部とを連通する連通孔27を通して内部空間Sの圧力を所定範囲に保つための圧力保持手段32であっても良い。その他の幾つかの実施形態では、圧力調整手段3は、上記の圧力差生成手段31、および上記の圧力保持手段32の両方で構成されていても良い。これによって、潤滑油タンク2の潤滑油sを適切に加圧することが可能となる。
【0048】
図1に示す実施形態では、圧力調整手段3は、上記の圧力差生成手段31、および上記の圧力保持手段32の両方で構成されている。より詳細には、圧力差生成手段31は、圧力導入路Lpの一部の断面積が小さくされた部分である絞り部となっている。他方、圧力保持手段32は上述したキャップ26の内側に設けられたキャップ内ブリーザである。つまり、圧力保持手段32は、上述したキャップ26が着脱される開口部23の内部の少なくとも一部を上記の連通孔27として利用しており、この連通孔27に設置される第1逆止弁32aと、第2逆止弁32bとを有する。第1逆止弁32aは、潤滑油タンク2内の圧力が上限値を超えると開弁し、この上限値以下になると閉弁する。第2逆止弁32bは、潤滑油タンク2内の圧力が、上記の上限値よりも小さい下限値を下回ると開弁し、この下限値以上になると開弁する。そして、連通孔27は、第1逆止弁32aまたは第2逆止弁32bが開弁しない限り、閉じられた状態となっている。第1逆止弁32aと第2逆止弁32bは別体であっても、一体であっても良い。
【0049】
なお、他の幾つかの実施形態では、圧力差生成手段31は、クランクケース75内で生じる正圧のみを潤滑油タンク2内に導入する逆止弁であっても良い。つまり、この逆止弁は、クランク室75aが正圧の時に開弁し、負圧の時に閉弁する。この実施形態では、圧力保持手段32は、滑油タンク2内の圧力が上限値を超えると開弁する第1逆止弁32aのみで構成されていても良い。
【0050】
上記の構成によれば、圧力調整手段3により、燃焼、掃気工程において上昇するクランクケース圧によって高められた潤滑油タンク2内の圧力が、吸入、圧縮工程でクランクケース圧が低下した分だけ低下しないようにされる。これによって、潤滑油タンク2の潤滑油sを加圧することができ、潤滑油タンク2内と吸気管8内との圧力差をより大きくすることができる。
【0051】
また、幾つかの実施形態では、
図1に示すように、潤滑油供給装置1は、潤滑油供給路Lsに設置される、潤滑油タンク2の内部空間Sの圧力が吸気管8の内部の圧力(吸気管管内圧)よりも所定値を超えて大きくなる場合に開弁する逆止弁4(
図4参照)を、さらに備える。
図4は、
図1に示す逆止弁4の拡大図である。なお、
図4の紙面の上側に潤滑油供給路Lsが接続される。
図4に示すように、逆止弁4は、バルブ本体41と、弁体42と、シート部43と、を有している。また、バルブ本体41の内部に潤滑油供給孔85の少なくとも一部を構成するタンク側給油孔44、および管側給油孔45が形成されている。
【0052】
そして、タンク側給油孔44の圧力が、管側給油孔45の圧力よりも低い場合には、弁体42がシート部43に着座した閉状態(不図示)になる。逆に、タンク側給油孔44の圧力が、管側給油孔45の圧力よりも所定値(規定値)を超えて高い場合には、
図4に示すように、弁体42がシート部43から離間された開状態になる。この所定値は0であって良い。このように逆止弁4が開状態になると、タンク側給油孔44から管側給油孔45の方向に潤滑油sが流れる。この逆止弁4によって、潤滑油供給路Lsを介した吸気管8から潤滑油タンク2への逆流を防止することができる。なお、
図4に示す弁体42は、球状の形状をしているが、他の幾つかの実施形態では、所定の厚さを有する膜状(板状)の形状をしていても良い。
【0053】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0054】
1 潤滑油供給装置
2 潤滑油タンク
21 タンク本体
21b 底部
21c 天井部
21s 側壁部
23 開口部
24 出口部
24a 出口開口
24p 出口突出部
25 入口部
25a 入口開口
25p 入口突出部
26 キャップ
27 連通孔
3 圧力調整手段
31 圧力差生成手段
32 圧力保持手段
32a 第1逆止弁
32b 第2逆止弁
4 逆止弁
41 バルブ本体
42 弁体
43 シート部
44 タンク側給油孔
45 管側給油孔
7 エンジン本体
71 シリンダ部
71e 排気ポート
71i 吸気ポート
71s 掃気ポート
72 ピストン
73 クランク軸
74 コネクティングロッド
75 クランクケース
75a クランク室
76 燃焼室
77 点火プラグ
8 吸気管
8p 吸気通路
81 インシュレータ部
81a 第1部分
81b 第2部分
84 スロットルバルブ
85 潤滑油供給孔
S 潤滑油タンクの内部空間
S1 貯留空間
S2 気体空間
Ls 潤滑油供給路
Lp 圧力導入路
hp 管部材(圧力導入路)
hs 管部材(潤滑油供給路)
p1 第1圧力通路
p2 第2圧力通路
Tb 下限ラベル
Tu 上限ラベル
s 潤滑油
ss 潤滑油の液面