(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】削孔装置
(51)【国際特許分類】
E21B 12/00 20060101AFI20221213BHJP
E21B 21/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
E21B12/00
E21B21/00 Z
(21)【出願番号】P 2018242388
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000115463
【氏名又は名称】ライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 淳
(72)【発明者】
【氏名】中田 隼
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-035492(JP,U)
【文献】特開2012-077487(JP,A)
【文献】独国実用新案第202007005616(DE,U1)
【文献】特開昭63-197794(JP,A)
【文献】特開昭58-185897(JP,A)
【文献】特開2006-187854(JP,A)
【文献】特開2001-054837(JP,A)
【文献】特開昭62-248794(JP,A)
【文献】特開2010-222826(JP,A)
【文献】特開2009-084812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 12/00
E21B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に向かって延在させるガイドセルと、このガイドセルに沿って前後移動するドリフターと、このドリフターに支持され前記ガイドセルに沿って延在するロッドと、このロッドの先端部に備わり前記地盤を削孔するビットとを有し、
前記ガイドセルの先端部に補助具が備わり、
この補助具は、前記ドリフター側に位置する基端縁から前記地盤側に位置する先端縁に向かうに従って径が広がる外側管と、この外側管内を通り基端縁が前記外側管の基端縁と連なる内側管とを有し、
前記内側管は、先端縁が前記外側管の先端縁よりも前記地盤側に突出
し、
この内側管内を前記ロッドが通る構成とされている、
ことを特徴とする削孔装置。
【請求項2】
前記外側管に吸引口が形成され、
前記外側管と前記内側管との間に流れ込んだ削孔排土が前記吸引口から排出される構成とされている、
請求項
1に記載の削孔装置。
【請求項3】
前記ガイドセルに固定された支持具と、この支持具に固定され前記ガイドセルに沿って伸縮する緩衝具とを有し、
この緩衝具に前記補助具が固定されている、
請求項1
又は請求項2に記載の削孔装置。
【請求項4】
前記ガイドセルの先端部に、前記地盤を撮影する撮影機と前記地盤までの距離を計測する3台以上の距離計とを有する計測手段が備わり、
この計測手段が前記補助具よりも前記ドリフター側に位置している、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の削孔装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面やトンネル切羽面等の地盤を削孔する削孔装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
法面補強工事においてロックボルト等を打設するために法面を削孔する場合や、トンネル切羽面を削孔する場合等においては、削孔装置が使用される。この削孔装置としては、例えば、特許文献1が開示するものが存在する。同文献の削孔装置(削岩機)は、「ガイドシエルに沿い、かつ先端にビットを固着したロッドの先端部を支承し、かつビットによるさく岩部をカバーする吸引フードを、ガイドシエルに摺動自在に支持し、かつ吸引フードとガイドシエルとをシリンダ装置にて連結した」ものである。この削孔装置を使用すると、削孔に伴って発生し、空気中に舞う削孔排土は、吸引フード内に集塵される。しかしながら、同文献の削孔装置は、種々の原因で故障し易いと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする主たる課題は、故障の少ない削孔装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段は、次のとおりである。
【0006】
(請求項1に記載の手段)
地盤に向かって延在させるガイドセルと、このガイドセルに沿って前後移動するドリフターと、このドリフターに支持され前記ガイドセルに沿って延在するロッドと、このロッドの先端部に備わり前記地盤を削孔するビットとを有し、
前記ガイドセルの先端部に補助具が備わり、
この補助具は、前記ドリフター側に位置する基端縁から前記地盤側に位置する先端縁に向かうに従って径が広がる外側管と、この外側管内を通り基端縁が前記外側管の基端縁と連なる内側管とを有し、
前記内側管は、先端縁が前記外側管の先端縁よりも前記地盤側に突出し、
この内側管内を前記ロッドが通る構成とされている、
ことを特徴とする削孔装置。
【0007】
(請求項2に記載の手段)
前記外側管に吸引口が形成され、
前記外側管と前記内側管との間に流れ込んだ削孔排土が前記吸引口から排出される構成とされている、
請求項1に記載の削孔装置。
【0008】
(請求項3に記載の手段)
前記ガイドセルに固定された支持具と、この支持具に固定され前記ガイドセルに沿って伸縮する緩衝具とを有し、
この緩衝具に前記補助具が固定されている、
請求項1又は請求項2に記載の削孔装置。
【0009】
(請求項4に記載の手段)
前記ガイドセルの先端部に、前記地盤を撮影する撮影機と前記地盤までの距離を計測する3台以上の距離計とを有する計測手段が備わり、
この計測手段が前記補助具よりも前記ドリフター側に位置している、
請求項1~3のいずれか1項に記載の削孔装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、故障の少ない削孔装置になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
【0013】
図1に本実施の形態に係る削孔装置Xを示した。本形態の削孔装置Xは、法面(傾斜面)等の地盤Gに向かって(
図3参照)延在させるガイドセル1と、このガイドセル1に沿って前後移動(ガイドセル1の先端側及び後端側へ移動)するドリフター3と、このドリフター3に支持されガイドセル1に沿って延在するロッド2と、このロッド2の先端部に備わり地盤Gを削孔するビット4とを有する。
【0014】
ガイドセル1は、直線状かつ長尺状である。ガイドセル1の長さは、例えば、2~10mである。ガイドセル1は、削孔時において地盤Gに対して適宜の角度になるように、本形態においては垂直になるように誘導(ポイントセット)される。この誘導の例は、後述する。
【0015】
ロッド2は、棒状であり、例えば、断面略円形状、断面略四角形状等とされる。
【0016】
ドリフター3は、ロッド2及びビット4を回転し、また打撃する。この回転及び打撃によって、地盤Gの削孔が進む。
【0017】
ビット4は、地盤Gに突き当てられ、地盤Gを削孔(穿孔)する。ビット4の直径は、例えば、38~65mmである。
【0018】
以上のほか、本形態の削孔装置Xには、補助具10が備わる。この補助具10は、ガイドセル2の先端部に位置する。補助具10は、
図2に詳細に示すように、外側管11及び内側管12を有する二重管構造とされている。
【0019】
外側管11は、基端縁11Aから先端縁11Bに向かうに従って径が徐々に広がるラッパ状(ラッパ管)とされている。この外側管11の存在により、掘削排土Gxの飛散が防止され、例えば、削孔面(G)の周囲、例えば、道路等への掘削排土Gxの飛散が防止される。
【0020】
なお、本明細書においては、ドリフター3側を基端縁11A、地盤G側を先端縁11Bとしている(内側管12の場合も同様。)。また、外側管11の一部に、基端縁11Aから先端縁11Bに向かうに従って径が広がらない領域が存在することを否定するものではない。
【0021】
一方、内側管12は、外側管11内を通り、ドリフター3側の基端縁12Aが外側管11の基端縁11Aと連なっている(繋がっている)。内側管12は、外側管11と同軸的に配置されている。削孔装置Xのロッド2は、内側管12内を通っている。
【0022】
内側管12は、地盤G側に位置する先端縁12Bが外側管11の先端縁11Bよりも地盤G側に突出している。この突出長L1は、例えば3~15cm、好ましくは5~10cmである。内側管12の先端部(外側管11から突出する部分。)は、
図3に示すように、削孔時において削孔C内に嵌入(挿入)させることができる。内側管12の先端部を削孔C内に嵌入させると、削孔時における削孔方向(ガイドレール1やロッド2の延在方向)に直交する方向への振動が抑えられ、削孔装置Xの故障が少なくなる。
【0023】
本形態の外側管11は、必要により、
図2に他の形態例として示すように、吸引口13Aを有するものとすることができる。この形態においては、吸引口13Aを介して吸引管13が外側管11内を臨んでいる(連通している)。この吸引口13Aや吸引管13を有する形態においては、外側管11と内側管12との間に流れ込んだ削孔排土Gxが吸引口13Aから排出され、吸引管13を通して適宜の場所に送られる。掘削排土Gxの流れは、吸引管13に図示しない吸引装置を接続する等して積極的に作り出しても、自然に任せてもよい。また、
図1及び
図3に示すように、吸引管13や吸引口13Aを備えないこともできる。
【0024】
なお、削孔排土Gxとは、地盤Gの削孔に伴って排出され、削孔装置Xに向かって跳ね上がり、あるいは舞い上がってくる地盤Gを由来とする土砂等を意味する。
【0025】
削孔排土Gxがドリフター3や後述する計測手段5等にかかるのを防止するという観点や、外側管11内を通して円滑に排出(処理)する等の観点から、外側管11の拡径角度α(
図2参照)は、例えば、20~40°であると好適である。この点、拡径角度αが小さ過ぎると、掘削土砂Gxが内側管12内のロッド2との間に入り込み易くなり、削孔装置Xが故障する原因となり得るとの問題もある。この問題と同様の観点で、外側管11の基端縁11Aと内側管12の基端縁12Aとが連なっており、削孔排土Gxがドリフター3や計測手段5側へ通り抜けないことが重要な意味を有する。
【0026】
本形態の削孔装置Xには、
図1及び
図3に示すように、更にガイドセル1に固定された支持具16と、この支持具16に固定された緩衝具17とが備わる。支持具16は、ガイドセル1に対して垂直上方に延在している。また、緩衝具17は、支持具16に対して垂直前方(地盤G側)に延在している。
【0027】
緩衝具17は、当該緩衝具17の延在方向、つまりガイドセル1の延在方向に(ガイドセル1に沿って)伸縮(伸び縮み)する。緩衝具17は、例えば、ばね、弾力性を有する素材等で構成される。
【0028】
前述した補助具10は、上記緩衝具17の先端部(地盤G側)に固定されている。本形態の補助具10は、
図3に示すように、削孔時において地盤Gに突き当てられるが、以上の構成によると、緩衝具17の存在(介在)により、削孔装置Xを構成する他の機器、例えば、ドリフター3や計測手段5等への振動の伝達が抑えられる。したがって、削孔装置Xが故障し難くなる。
【0029】
本形態の削孔装置Xには、更に計測手段5が備わる。この計測手段5は、ガイドセル1の先端部で、かつ補助具10よりもドリフター3側に位置している。したがって、削孔排土Gxが計測手段5にかかるおそれが少なく、計測手段5の故障が少なくなる。また、前述したように補助具10の存在によって掘削排土Gxの飛散が防止されるため、視界不良が生じず、計測手段5による各種情報の計測に支障が生じるおそれがない。
【0030】
計測手段5の機能・構成等は、種々考えることができる。本形態の計測手段5には、地盤Gを撮影する図示しない撮影機と、地盤Gまでの距離を計測する3台以上の図示しない距離計とが備わる。
【0031】
撮影機は、例えば、削孔前においてガイドセル1を位置決めするのに利用することができる。撮影機は、例えば、ビデオカメラ等によって構成される。また、撮影機は、本形態では1台の場合を想定しているが、2台以上の複数台であってもよい。
【0032】
距離計は、得られた(計測された)距離情報に基づいてガイドセル1の姿勢角、つまり傾斜角度及び水平(方位)角度を算出するために利用することができる。この点で、距離計は、3台以上の複数台が必要とされる。
【0033】
なお、距離計によって得られる傾斜角度及び水平角度は、地盤(傾斜面)Gに対する相対角度であり、後述する支持手段7が設置された地盤(水平面)に対する絶対角度ではない。したがって、本形態によると、法面等からなる地盤Gの傾斜が一定(一様)でなかったとしても、ガイドセル1を適切な角度に誘導することができる。
【0034】
(その他)
本形態の削孔装置Xは、例えば、
図3に概念的に示すような支持手段7によって支持される。支持手段7は、例えば、バックホウやラフタークレーン等の地盤(平地)上を走行可能な重機で構成される。
【0035】
支持手段7には、図示しないアーム等が備わり、このアームの先端部に図示しない回転台座等を介してガイドセル1が取り付けられる。この取り付けは、ガイドセル1がアームの先端部において回転(旋回)自在となるように行われる。したがって、ガイドセル1を含む削孔装置Xの誘導は、例えば、ガイドセル1の回転やアームの屈曲、支持手段7本体の回転等によって行われる。
【0036】
支持手段7には、前述した撮影機によって得られた撮影情報や、距離計によって得られた距離情報、後述する測長器によって得られた計測値等を表示するための、表示手段8を搭載しておくと好適である。この点、支持手段7のオペレータが削孔位置を直接視認することができればよいが、通常、この視認は困難である。そこで、本形態は、表示手段8に表示された各種情報に基づいて支持手段7のオペレータがガイドセル1を誘導(ポイントセット)するように構成するものである。この形態によると、支持手段7のオペレータに対して削孔位置に配置された別の作業員(いわゆる手元誘導員)から削孔装置Xを誘導するための指示等をする必要がなくなり、省人化が可能になる。なお、前述した撮影機は、以上の目的が達成されるように、向きや撮影範囲が設定される。また、各種情報(信号)の表示手段8への送信は、通常、無線方式である。
【0037】
傾斜角度や水平角度は、算出値をそのまま表示手段8に表示することもできる。ただし、当該算出値と共に、又は当該算出値に変えて算出値と予め設定された設計値との差異を表示すると好適である。当該差異を表示すると、オペレータが認識し易くなり、ガイドセル1の誘導が容易になる。なお、設計値とは、地盤Gに対してどのような角度で削孔を行うか予め設定された値である。
【0038】
本形態の削孔装置Xには、例えば、エンコーダ等の図示しない測長器を備えることができる。この測長器は、ガイドセル1の後端部に備え、ドリフター3までの距離を計測するものとすると好適である(ドリフター位置把握型)。このドリフター位置把握型によると、測長器の故障を可及的に防ぐことができる。このドリフター位置把握型の具体的構成としては、例えば、測長器に巻き出し及び巻き戻し自在のワイヤー等からなる紐材を備え、この紐材の先端部をドリフター3に固定する形態を考えることができる。なお、本形態においては、例えば、1~8mの削孔長を想定している。
【0039】
測長器で得られた計測値は、好ましくは、前述した表示手段8に送られ、当該表示手段8に表示される。この形態によると、支持手段7のオペレータは、現時点においてどの程度削孔が進んでいるかを確認することができる。結果、地盤Gの削孔位置において別の作業員(いわゆる手元誘導員)が削孔Cに検尺等を差し込み、もって削孔長を計測する等の必要がなくなり、省人化が実現される。
【0040】
前述した計測手段5は、箱体の中に前述した撮影機及び距離計等が収められた構成とすることができる。この場合、箱体は、略コ字状とされる。このコ字状は、開口部分が下方を向いており、当該開口部分をロッド2が通り抜けるものである。
【0041】
箱体内には、撮影機や距離計の他、例えば、ジャイロスコープや加速度計、これらを組み合わせ慣性計測装置(IMU)、GPS等の他の計測手段を備えることもできる。この点、加速度計を使用すると、ガイドセル1を含む削孔装置Xのロール角(ロッド2の軸方向を中心とする回転角度)や傾斜角を計測することができる。このロール角や傾斜角は、上記3台以上の距離計によって測定される相対角(地盤Gに対する角度)とは異なり、支持手段7、ないしはこの支持手段7の設置地盤に対する絶対角である。
【0042】
なお、以上のロール角や傾斜角も、表示手段8に表示することができる。この表示は、前述した傾斜角度及び水平角度と共に表示することも、これらと切替可能となるように表示することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、法面やトンネル切羽面等の地盤(削孔面)を削孔するための削孔装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 ガイドセル
2 ロッド
3 ドリフター
4 ビット
5 計測手段
7 支持手段
8 表示手段
10 補助具
11 外側管
11A (外側管の)基端縁
11B (外側管の)先端縁
12 内側管
12A (内側管の)基端縁
12B (内側管の)先端縁
13 吸引管
13A 吸引口
16 支持具
17 緩衝具
C 削孔
G 地盤
X 削孔装置