IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インテュイティブ サージカル オペレーションズ, インコーポレイテッドの特許一覧

特許7193340手術器具のためのシース並びに関連するデバイス及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】手術器具のためのシース並びに関連するデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 50/00 20160101AFI20221213BHJP
【FI】
A61B50/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018529175
(86)(22)【出願日】2016-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-31
(86)【国際出願番号】 US2016067705
(87)【国際公開番号】W WO2017120028
(87)【国際公開日】2017-07-13
【審査請求日】2019-12-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】62/276,471
(32)【優先日】2016-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510253996
【氏名又は名称】インテュイティブ サージカル オペレーションズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ローダー,ジェフリー アール.
(72)【発明者】
【氏名】パーク,ウィリアム ジェイ.
【合議体】
【審判長】村上 聡
【審判官】内藤 真徳
【審判官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-18101(JP,U)
【文献】実開平3-101901(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00,17/00-17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術器具のためのシースであって、
遠位端と近位端とを有するスリーブと、
該スリーブの近位端部分にある保持機構とを含み、
該保持機構は、
前記近位端部分で前記スリーブに取り付けられるように構成されるスリーブ取付部分と、
該スリーブ取付部分から延びる係止環とを含み、
該係止環は、前記手術器具のコネクタ部分を受け入れるように構成され、
前記係止環は、弾性部分を含み、該弾性部分は、該弾性部分が撓んでいない第1の位置から、該弾性部分が第1の位置に対して径方向外向きに撓んだ第2の位置に撓むことができ、
前記弾性部分は、前記係止環の部分に加えられる径方向内向きに方向付けられる力に応答して前記第2の位置に撓むことができ、
前記弾性部分の前記第2の位置において、当該シースは、前記手術器具に対して移動可能であり、
前記弾性部分の前記第1の位置において、前記弾性部分は、前記シースを前記手術器具上の所定の位置に保持するように前記コネクタ部分と係合させられる、
シース。
【請求項2】
前記係止環は、前記第1の位置において円形の内部横断面及び細長い内部横断面のうちの一方を有し、前記第2の位置において前記円形の内部横断面及び前記細長い内部横断面のうちの他方を有する、請求項に記載のシース。
【請求項3】
前記係止環は、前記保持機構の近位端部分で前記係止環の対向する横方向側面に位置付けられ、前記径方向内向きに方向付けられる力を受けるように構成される、一対の力適用面を含む、請求項1に記載のシース。
【請求項4】
前記スリーブは、円形の内部横断面及び細長い内部横断面のうちの1つを有する、請求項1に記載のシース。
【請求項5】
前記弾性部分は、方向外向きに前記第2の位置に撓むように構成される第1及び第2の対向して配置される弾性部分を含む、請求項1に記載のシース。
【請求項6】
前記保持機構は、前記スリーブ取付部分の内面に1つ又はそれよりも多くの長手に延びるスプラインを更に含み、該1つ又はそれよりも多くの長手に延びるスプラインは、当該シースが前記手術器具上に組み立てられた設定において、前記コネクタ部分の1つ又はそれよりも多くの相補的な構成と相互作用して、前記手術器具に対する当該シースの回転を防止するように構成される、請求項1に記載のシース。
【請求項7】
前記第2の位置において、前記弾性部分は、前記コネクタ部分と係合して、遠位方向における前記手術器具に対する当該シースの軸方向移動を防止するように構成される、請求項1に記載のシース。
【請求項8】
前記保持機構は、内側保持機構部及び外側保持機構部を含み、該内側保持機構部及び該外側保持機構部は、該内側保持機構部と該外側保持機構部との間で前記スリーブの前記近位端部分をクランプするように構成される、請求項1に記載のシース。
【請求項9】
記コネクタ部分は、傾斜した外面プロファイルを備える突起を含み、前記傾斜した外面プロファイルは、前記保持機構が、前記コネクタ部分の上で移動させられて、当該シースが前記手術器具と組み立てられる設定にされるときに、前記弾性部分を弾性的に変形させて、前記弾性部分を前記突起の周りで変形させるように構成される、請求項1に記載のシース。
【請求項10】
前記突起は、当該シースが前記手術器具と組み立てられる設定において前記弾性部分に当接するように構成される肩部を定める、請求項に記載のシース。
【請求項11】
遠隔手術部位に導入されるように構成される遠位端を有する器具シャフトと、シースコネクタ部分とを含む、手術器具と、
前記器具シャフトを少なくとも部分的に覆うように構成されるシーススリーブと、
該シーススリーブの近位端部分に配置されるシーススリーブ保持機構とを含み、
該シーススリーブ保持機構及び前記シースコネクタ部分のうちの少なくとも一方は、弾性部分を有する係止環を含み、
前記弾性部分は、前記弾性部分が撓んでいない状態にある第1の位置と前記弾性部分が前記第1の位置に対して撓んだ第2の位置との間で撓むことができ、
前記弾性部分は、前記係止環の部分に加えられる径方向内向きに方向付けられる力に応答して前記第2の位置に撓むことができ、
前記弾性部分は、前記弾性部分の前記第1の位置において前記器具シャフトを少なくとも部分的に覆う位置に前記シーススリーブを保持するように前記シースコネクタ部分と係合させられ、
前記弾性部分は、前記弾性部分の前記第2の位置において、前記第1の位置に対して径方向外向きに撓んだ位置にあり、前記シーススリーブが前記器具シャフトに対して移動されるのを可能にする、
手術器具シースアセンブリ。
【請求項12】
前記シーススリーブ保持機構は、前記シーススリーブの近位端部分に配置され、前記シーススリーブの遠位端は、前記器具シャフトの前記遠位端に近接して位置付けられるように構成される、請求項11に記載の手術器具シースアセンブリ。
【請求項13】
前記シーススリーブ保持機構は、前記シーススリーブの前記近位端部分に取り付けられる、請求項11に記載の手術器具シースアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
この特許出願は、2016年1月8日に出願された「SHEATHS FOR SURGICAL INSTRUMENTS, AND RELATED DEVICES AND METHODS」という名称の米国仮特許出願第62/276,471号の優先権及び出願日の利益を主張し、その全文を本明細書中に参照として援用する。
【0002】
本開示の態様は、外科器具と共に使用するための保護シース、並びに関連するデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
遠隔操作される手術器具(例えば、ロボット技術で操作される器具のような、少なくとも部分的にコンピュータ支援で操作される手術器具)並びに手動操作される(例えば、腹腔鏡検査、胸腔鏡検査)手術器具を含むことができる、遠隔制御される手術器具が、しばしば、最小侵襲医療処置において使用される。そのような処置の間に、患者の体内に挿入されたカニューレを通じて延びることがある外科器具を遠隔操作して手術部位で処置を行うことができる。例えば、遠隔操作手術システム(例えば、ロボット手術システム)では、カニューレ及び手術器具を患者側カートのマニピュレータアームに取り付けることができ、外科医コンソールでの遠隔操作を介してそれらを遠隔操作してよい。
【0004】
そのような処置中に使用される器具は、多数の別個のコンポーネント(例えば、ジョイント及びリンク構造のような、ケーブル及び機械的部材)を有する複雑な機械的デバイスであることがある。従って、コストを削減するためには、器具が再使用可能であることが望ましい。しかしながら、手術器具の再使用は、一般的に、多数の小さなコンポーネント及びそのような器具内の狭い介在空間によってより困難にされる厳格な洗浄及び滅菌処置を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最小侵襲手術器具の洗浄処置を容易にするために並びに/或いはそのような器具の使用毎の費用を削減するために、使用中に器具シャフトを覆うシースが使用される。しかしながら、外科要員による器具上のシースの取付け及び取外しを容易にすることが望ましい。更に、使用中の偶発的な取外し及び器具に対する再配置を防止する器具への堅固な取付けを提供しながら、製造が比較的安価なシースを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の例示的な実施形態は、1つ又はそれよりも多くの問題を解決することがあり、且つ/或いは後続の記述から明らかになる1つ又はそれよりも多くの望ましい構成(features)を実証することがある。
【0007】
様々な例示的な実施形態によれば、手術器具のためのシースが、遠位端と近位端とを有するスリーブと、スリーブの近位端にある保持機構とを含んでよい。保持機構は、近位端でスリーブに取り付けられるように構成されるスリーブ取付部分と、スリーブ取付部分から延びる係止環とを含んでよく、係止環は、手術器具のコネクタ部分を受け入れるように構成される。係止環は、シースが手術器具に対して移動可能である第1の設定(first configuration)と、係止構成がコネクタ部分と係合してシースを手術器具上の所定の位置に保持するように構成される第2の設定(second configuration)との間で移動可能である、係止構成を更に含んでよい。
【0008】
更なる例示的な実施形態によれば、手術器具シースアセンブリが、遠隔の手術部位に導入されるように構成される遠位端を有するシャフトと、シースコネクタ部分とを含む、手術器具と、手術器具のシャフトを少なくとも部分的に覆うように構成されるシーススリーブと、シーススリーブの近位端部分に配置されるシーススリーブ保持機構とを含んでよい。シース保持機構及びシースコネクタ部分のうちの少なくとも一方は、移動可能な係止構成を含むことができ、移動可能な係止構成は、シースが器具に対して移動させられるのを可能にする第1の設定と、器具シャフトを少なくとも部分的に覆うようシーススリーブを所定の位置に保持するようシースをコネクタ部分に係合可能に係止する第2の設定とを有する。
【0009】
更に他の例示的な実施形態において、保護シースを手術器具に組み立てる方法が、手術器具の遠位作動端を覆う保護シースを手術器具の比較的近位に配置されるシースコネクタ部分に前進させるステップと、シースの保持機構を移動させてシースコネクタ部分と整列させるステップと、移動可能な係止構成を、保持機構がシースコネクタ部分に対して移動させられるのを許容する第1の設定からシースコネクタ部分及び保持機構上の相補的な係合構成(engagement features)を係止可能に係合させてシースを器具上の所定の位置に保持する第2の設定に移動させるステップとを含んでよい。
【0010】
更なる例示的な実施形態では、手術器具のシャフトから保護シースを取り外す方法が、横方向内向きに向けられる力を保持機構の近位端部分に適用して近位端部分を第1の設定から第2の設定に変形させるステップを含んでよく、第1の設定において、保持機構は、器具上のシースの位置を保持するために器具のコネクタ部分と係合させられ、第2の設定において、保持機構は、コネクタ部分から外され、シースは器具に対して移動可能である。方法は、保持機構が第2の設定にある間に、保持機構をコネクタ部分から離れる方向に遠位に移動させて、シースを取り外すステップを更に含んでよい。
【0011】
追加的の目的、構成、及び/又は利点は、部分的には後続の記述中に示され、部分的には本記述から明らかになり、或いは本開示及び/又は請求項の実施によって学習されることがある。これらの目的及び利点の少なくとも一部は、添付の請求項において特に指摘された要素及び組み合わせによって実現され且つ達成されることがある。
【0012】
前述の一般的な記述及び後続の詳細な記述は、例示的又は例証的であるに過ぎず、請求項を限定しない。むしろ均等物を含む請求項の全幅に範囲に権利が付与されるべきである。
【0013】
以下の詳細な記述から単独で又は添付の図面と共に本開示を理解することができる。図面は、本開示の更なる理解を提供するために含められ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本教示の1つ又はそれよりも多くの例示的な実施形態を例示し、本記述と共に特定の原理及び動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ある例示的な実施形態に従った遠隔操作手術システムの患者側カートの斜視図である。
【0015】
図2】ある例示的な実施形態に従った図1の遠隔操作手術システムと共に使用するための手術器具の概略的な斜視図である。
【0016】
図3】ある例示的な実施形態に従った手術器具シースの概略的な斜視図である。
【0017】
図4A】ある例示的な実施形態に従った、組み立てられていない設定における手術器具のシース保持器本体及びシースコネクタ部分の斜視図である。
【0018】
図4B】組み立てられた設定における図4Aのシース保持器本体及びシースコネクタ部分の斜視図である。
【0019】
図5】他の例示的な実施形態に従った手術器具のシース保持器本体及びシースコネクタ部分の斜視図である。
【0020】
図6】更に他の実施形態に従った手術器具のシース保持器本体及びシースコネクタ部分の斜視図である。
【0021】
図7A】他の例示的な実施形態に従ったシース保持器本体の頂部及び側部斜視図である。
【0022】
図7B図7Aの実施形態に従ったシース保持器本体の底部及び側部斜視図である。
【0023】
図7C】他の例示的な実施形態に従った手術器具の詳細な部分斜視図である。
【0024】
図7D図7Cの手術器具上で組み立てられた設定における図7A及び図7Bのシース保持器本体の斜視図である。
【0025】
図8A】他の例示的な実施形態に従った、組み立てられていない設定におけるシース及びシース保持器本体の斜視図である。
【0026】
図8B】部分的に組み立てられた設定における図8Aの実施形態に従ったシース及びシース保持器本体の斜視図である。
【0027】
図8C】完全に組み立てられた設定における図8A及び図8Bのシース及びシース保持器本体の斜視図である。
【0028】
図9A】更に他の実施形態に従った器具シャフト上のシースの斜視図である。
【0029】
図9B】例示的な実施形態に従った手術器具のシース接続デバイス及び図9Aのシースの断面図である。
【0030】
図9C図9A及び図9Bの実施形態に従ったシース及びシース接続デバイスの断面図である。
【0031】
図9D図9A乃至図9Cの実施形態に従ったシース及びシース接続デバイスの断面図である。
【0032】
図10A】他の例示的な実施形態に従ったシース及び器具の斜視図である。
【0033】
図10B】組み立てられた設定における図10Aのシース及び器具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
例示的な実施形態を例示するこの記述及び添付の図面は、限定として解釈されるべきでない。様々な機械的、構成的、構造的、電気的、及び動作的な変更が、この記述及び均等物を含む請求項の範囲から逸脱せずに行われることがある。幾つかの場合には、開示を不明瞭にしないために、周知の構造及び技法を詳細に示さず、詳細に記載しない。2以上(2つ又はそれよりも多く)の図における同等の番号は、同一又は類似の要素を表している。更に、1つの実施形態を参照して詳細に記載される要素及びそれらの関連する構成(features)は、実用的である場合にはいつでも、それらが特に示されても記載されてもいない他の実施形態に含まれることがある。例えば、ある要素が1つの実施形態を参照して詳細に記載されており、第2の実施形態を参照して記載されていないならば、その要素は、それにも拘わらず、第2の実施形態に含まれていると主張されることがある。
【0035】
本明細書及び添付の請求項の目的のために、他のことが示されていないならば、明細書及び請求項において使用される量、百分率、割合、及び他の数値を表す全ての数字は、それらが既にそのように修正されていない限り、全ての場合において「約」という用語によって修正されるものとして理解されなければならない。従って、逆のことが示されていない限り、以下の明細書及び添付の請求項に示される数値パラメータは、取得することが求められている所望の特性に依存して変化することがある近似値である。最低限でも、請求項の範囲への均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告される有効数字の数及び通常の丸め技法の適用の観点から解釈されるべきである。
【0036】
本明細書及び添付の請求項において使用されるとき、単数形の表現及びいずれかの単語のあらゆる単数形の使用は、1つの参照に明示的且つ明白に限定されない限り、複数の参照を含む。本明細書において使用されるとき、「含む」という用語及びその文法上の変形は、列挙される品目の置換又は列挙される品目への追加であり得る他の同等の品目を除外しないよう、リスト中の品目の引用が限定的であることを意図しない。
【0037】
更に、この記述の用語法は、本開示又は請求項を限定することを意図しない。例えば、「頂」、「底」、「下方」、「上」、「下」、「上方」、「近位」、「遠位」及び同等の表現のような、空間的に相対的な用語は、図の向きに例示されるような他の要素又は構成に対する1つの要素又は構成の関係を記述するために使用されることがある。これらの空間的に相対的な用語は、図に示す位置及び向きに加えて、使用中又は動作中のデバイスの異なる位置(即ち、場所)及び向き(即ち、回転的な配置)を包含することを意図する。例えば、図中のデバイスが反転されるならば、他の要素又は構成の「下方」又は「下」として記載される要素は、その場合には、他の要素または機能の「上方」又は「上」になる。よって、例示的な用語「下方」は、上方及び下方の両方の位置及び向きを含むことができる。デバイスは他の方法で(90度回転されて或いは他の向きに)方向付けされてよく、本明細書において使用する空間的に相対的な記述子は相応して解釈される。手術器具の相対的な近位及び遠位の方向は、図中に印されている。
【0038】
本開示は、様々な外科デバイスシース、そのようなシースのコンポーネント、そのようなシース及び関連コンポーネントの製造方法、システム、及び使用方法を想定する。本開示の例示的な実施形態によれば、最小侵襲外科処置のための器具は、シャフト、リスト機構、及び/又は手術器具の他の関節及び部分を覆う、取外し可能な(例えば、交換可能な)シースを利用する。シースは、手術器具の対応する(例えば、相補的な)シースコネクタ部分(同様に「シース接続部分」)と係合するように構成される保持機構を含むことがある。係合を通じて、保持機構は、外科処置を行う手術器具の使用中に、シースを器具に係止(ロック)して、手術器具の主軸の少なくとも部分及び/又は手術器具のリスト機構の少なくとも部分の上の所定の位置でシースを保持するように構成されてよい。保持機構は、医師、看護師、及び他の手術室又は病院職員のような、操作者による手作業の配置及び除去を容易にするように構成されてよい。例えば、幾つかの例示的な実施形態において、保持機構は、シースを片手で取り外し且つ装着するのを可能にするように構成されてよい。
【0039】
様々な例示的な実施形態において、シースをコネクタ部分との係合から係止解除(ロック解除)するのに十分な保持機構に対する力が存在しないときに、シースが器具から取り外されるのを防止するよう、保持機構は、手術器具に対するシースの移動を防止するために、手術器具のコネクタ部分と係止可能(ロック可能)に係合するように構成されてよい。更に、様々な例示的な実施形態において、本開示の保持機構は、シースが手術器具上で(係止可能に係合させられた)組み立てられた設定(assembled configuration)にあるときに手術器具に対するシースの回転を防止するように構成される、回転防止構成を含んでよい。そのような構成は、あらゆる回転向きにおいて或いは限定的な数の回転向きにおいて手術器具上のシースの組付けを可能にし、後者は、それらの構成が回転整列機構として働くことも可能にする。幾つかの実施形態において、手術器具の対応するシースコネクタ構造は、手術器具上に如何なる可動部品も含まないことがある。そのような構成(arrangement)は、手術器具の信頼性及び頑健性を高めることがあり、シース及び器具の組み立てにおいて使用者を容易にすることがある。例えば、再使用可能であるように設計される手術器具について、例示的な実施形態は、シースの接続に関係する器具の部分が故障することによって器具を再使用する能力に悪影響を与える危険性を最小限に抑える、シース保持および接続設計を提供する。
【0040】
本開示は、シーススリーブ本体を保持機構に接合する比較的安価な技法に加えて、比較的安価であり且つ押出及び/又は成形を介した製造を許容する、保持機構を含むシース用の材料を使用する、例示的な実施形態も想定する。
【0041】
本明細書に記載する様々な例示的な実施形態は、遠隔操作手術システムの患者側カートと共に使用される手術器具に関して議論されるが、本開示は、遠隔操作手術システム用の手術器具との使用に限定されない。例えば、本明細書に記載する手術器具を用いて組み立てるためのシースの様々な例示的な実施形態を手持ち式の手動外科器具と共に使用することができる。
【0042】
ここで図1を参照すると、遠隔操作手術システムの患者側カート100の例示的な実施形態が示されている。遠隔操作手術システムは、ユーザから入力を受信して患者側カート100に取り付けられる器具を制御する外科医コンソール(図示せず)を更に含んでよい。遠隔操作手術システムは、任意的に、例えば、それらの各々の全文を本明細書中に参照として援用する、2013年12月5日に公開された「Multi-Port Surgical Robotic System Architecture」という名称の米国特許出願公開第2013/0325033A1号、2013年12月5日に公開された「Redundant Axis and Degree of Freedom for Hardware-Constrained Remote Center Robotic Manipulator」という名称の米国特許出願公開第2013/0325031号、及び2014年10月7日に公開された「Surgical System Instrument Mounting」という名称の米国特許第8,852,208号に記載されるような、補助的な制御/ビジョンカート(図示せず)も含むことができる。更に、本明細書に記載する例示的な実施形態は、例えば、Single-Site(登録商標)シングルオフィス手術技術を具備する又は具備しないda Vinci Si(登録商標)Surgical System又はda Vince Xi(登録商標)Surgical Systemのような、da Vinci(登録商標)Surgical Systemと共に使用されてよく、Intuitive Surgical Inc.が全てを商品化している。しかしながら、当業者は、他の外科システムが、別個の補助/制御カートの部分として想定されるというよりもむしろ、例えば、患者側カート及び/又は外科医コンソールのような、例えば、手術システムの他のコンポーネント内のコントローラ及びプロセッサを含む、本開示のシース及び手術器具と共に使用されるものとして想定されることを理解するであろう。当業者が理解するように、制御及び処理アーキテクチャを手術システムの様々なコンポーネントの間に分散させることもできる。
【0043】
例示的な実施形態によれば、患者側カート100は、ベース102と、メインコラム104と、メインコラム104に接続されたメインブーム106とを含む。患者側カート100は、複数の(患者側マニピュレータと呼ぶこともある)遠隔操作マニピュレータアーム110,111,112,113も含み、各遠隔操作マニピュレータアームは、図2の例示的な実施形態に示すように、メインブーム106に接続されている。マニピュレータアーム110,111,112,113は、それぞれ、器具マウント部分120を含んでよく、器具130が器具マウント部分120に取り付けられてよく、器具130は、マニピュレータアーム110に取り付けられるものとして例示されている。マニピュレータアーム110,111,112,113の部分は、外科医コンソールでユーザによって提供される命令に従って外科処置中に操作されてよい。ある例示的な実施形態では、外科医コンソールから送信される(複数の)信号又は(複数の)入力が制御/ビジョンカートに送信され、制御/ビジョンカートは(複数の)入力を解釈し、患者側カート100に送信されるべき(複数の)命令又は(複数の)出力を生成して、器具130(図1では1つだけのそのような器具が取り付けられている)及び/又は患者側カート100で器具130を連結するマニピュレータアーム110の部分の操作を引き起こす。
【0044】
器具マウント部分120は、作動インターフェースアセンブリ122と、カニューレマウント124とを含んでよい。器具130のシャフト132が、外科処置中にカニューレマウント124及び取り付けられるカニューレを通じて遠隔部位に延びる。例示的な実施形態によれば、器具130の近位端にある力伝達機構134が、作動インターフェースアセンブリ122と機械的に連結される。当業者は、供給源(例えば、器具を支持するマニピュレータアーム上の電気モータ)から機械的な入力の力を受け取り、受け取った力を出力の力に変換及び/又は方向転換して、器具の比較的遠位端部分にあるコンポーネント(例えば、リスト、エンドエフェクタなど)を駆動させる、手術器具の力伝達機構をよく知っている。カニューレマウント124は、カニューレ136を保持するように構成されてよく、器具130のシャフト132は、外科処置中にカニューレ136を通じて手術部位に延びることがある。作動インターフェースアセンブリ122は、当業者がよく知っているように、外科医コンソールでの入力命令に応答し、力伝達機構134に力を伝達して、器具130を作動させるように制御される、様々な駆動機構及び他の機構を含んでよい。
【0045】
図1の例示的な実施形態は、例示の容易さのためにマニピュレータアーム110のみに取り付けられた器具130を示しているが、器具はマニピュレータアーム110,111,112,113のいずれかに及びそれぞれに取り付けられてよい。器具130は、鉗子又はグラスパ、針ドライバ、メス、はさみ、ステープラ、焼灼ツールなどのような、エンドエフェクタを備える、手術器具であってよく、或いは、遠隔手術部位の情報(例えば、視覚化、電気生理学的活動、圧力、流体流、及び/又は他の感知データ)を提供するために外科処置中に使用される内視鏡撮像器具又は他の感知器具であってよい。図1の例示的な実施形態において、エンドエフェクタ又は感知器具を備える手術器具は、マニピュレータアーム110,111,112,113のいずれかに取り付けられ、それらのいずれかと共に使用されてよい。しかしながら、本明細書に記載する実施形態は、図1の患者側カートの例示的な実施形態に限定されず、患者側カート構成を含む様々な他の遠隔操作手術システム構成が、本明細書に記載する例示的な実施形態と共に使用されてよい。
【0046】
図2は、手術器具230の例示的な実施形態をより詳細に示している。手術器具230は、シャフト233と、シャフト233の近位端に配置された力伝達ハウジング234と、シャフト233の遠位端に配置されたエンドエフェクタ240とを含む。図2の例示的な実施形態は、医療処置中に概ね広範囲に動く器具230のコンポーネントである、リスト機構231(wrist mechanism)及びエンドエフェクタ240を有する手術器具の実施形態を更に例示している。例示の実施形態において、リスト機構231は、延長部材235(extended member)をシャフト233に接続するジョイント232を含み、延長部材235は、エンドエフェクタ240を取り付けるマルチ部材リスト236(multi-member wrist)に繋がる。ジョイント232は、部材235の動きのための2つの角度的な自由度を有することができ、部材235は、その拡張された長さの結果として、リスト236及びエンドエフェクタ240のために有意な範囲の空間運動をもたらす。リスト236は、医療処置中にエンドエフェクタ240を移動させ且つ方向付ける1以上(1つ又はそれよりも多く)の自由度をもたらすように独立して制御されてよい、複数の椎骨を含む。リスト機構231の詳細は、ここでは、1つの種類のリスト機構の例示として提供されているに過ぎない。多くの他の種類のリスト機構が知られており、本明細書に記載するような取外し可能なシースと共に使用されることができる。例えば、Cooper et al.に発効した他の「Surgical tool having Positively Positionable Tendon-Actuated Multi-Disk Wrist Joint」という名称の米国特許第6,817,974号は、複数のディスク及びテンドン制御されたジョイントを含む幾つかの既知のリスト機構を記載している。加えて、当業者は、エンドエフェクタがシャフトに直接的に連結されて、手術器具が如何なるリスト機構を欠いてもよいことを理解するであろう。
【0047】
図2は、シャフト233が洗浄孔222を任意的に含んでよいことも例示しており、洗浄孔222は医療処置の間の器具230の内部の洗浄を容易にする。幾つかの場合において、そのような洗浄孔は、医療処置中に患者内に維持されることがある高圧領域からの生物学的材料又は気体流のための流路を作り出すという欠点を有する。しかしながら、本開示の例示的な実施形態によれば、交換可能なシースを器具230に装着し、洗浄孔222をシールして、生物学的材料又は気体が洗浄孔内に入り込むのを防止するのを助け、医療処置中に圧力差を維持するのを助ける。更に、医療処置の間にシースを取り外して、器具230を洗浄するときに洗浄孔222及び器具の他の部分にアクセスすることを可能にする。例えば、延長部材234にある孔のような、及び/又は隣接するリスト構造の間の空間によって創り出される間隙開口及び/又はエンドエフェクタがシャフトに連結される場所を介する、洗浄通路(図示せず)が、リスト機構231内にあることもできる。シースは、リスト機構231をシール(封止)することもできるが、汚染の場合には、シースによって保護される器具の洗浄を許容するために、シースを取り外すことができる。比較的大きいことがある或いはより低い機械的負荷要件を有するカメラ器具では、使用中に生体材料が有するカメラシステムへのアクセスの量を低減させながら、容易な洗浄を可能にするように、洗浄孔を大きく作ることができる。幾つかの状況において、一般には生体材料と直接的に接触しないカメラシステムのような器具は、完全なシールを必要としないことがある。
【0048】
ここで図3を参照すると、器具130(図1)又は器具230(図2)のような手術器具のシャフトの少なくとも一部を覆うように構成された保護シースの例示的な実施形態が例示されている。非限定的な例として、図3のシース300は、その全体を本明細書中に参照として援用する2015年7月28日にPark et al.に発効した「Sheath for Surgical Instrument」という名称の米国特許第9,089,351号に少なくとも記載されているシースと、機能、材料、及び/又は構造が類似する。シース300は、近位端302と、遠位端304とを有し、近位端302は、様々な例示的な実施形態において、保護シース300が手術器具に組み付けられるときに、伝達ハウジングに近接して配置されることがあり、遠位端304は、保護シース300が手術器具に組み付けられるときに、手術器具のリスト機構又はエンドエフェクタに近接して配置されることがある。よって、例示的な実施形態において、シースは、手術器具の近位端伝達ハウジングからエンドエフェクタ又は撮像キャプチャデバイスのような感知要素まで器具シャフトの実質的に全長を覆うように延びて、エンドエフェクタ又は器具がその意図される機能を果たすことができるように、エンドエフェクタ又は器具の十分な露出を可能にしてよい。
【0049】
様々な開示する例示的な実施形態のシースは、器具シャフトが伝達ハウジングと接触する場所に配置される手術器具のシースコネクタ部分と係止可能に係合するように構成されるが、当業者は、適切な修正を伴う伝達ハウジングに対して遠位のシャフトに沿う場所を含む手術器具に沿う他の場所にコネクタ部分を設けることができることを理解するであろう。
【0050】
保護シース300は、近位端302又はその近くに配置される保持機構306を含む。保持機構306は、器具上で組み立てられた設定(configuration)においてシース300を係止可能に係合して保持するために、手術器具の部分に配置される1以上の対応する(例えば、相補的な)(図3には示されていない)構成と相互作用するように構成される。保持機構306は、シース300のスリーブ308に取り付けられるものとして図3に例示されているが、保持機構306は、例えば、図10A及び図10Bの例示的な実施形態に関連して以下により詳細に記載するような、シース300のスリーブ308に形成される1以上の構成であってよく、或いはそのような1以上の構成を含んでよい。
【0051】
本明細書中の様々な例示的な実施形態に従ったシーススリーブは、他の手術及び構造物がシースなどを擦ることに起因する損傷から保護するよう比較的耐久性がある、気体がシーススリーブ壁を透過するのを可能にするが、生体材料及び液体の通過を阻止する、多孔質材料生体材料、誘電材料を含む、様々な特性を所望に付与するように選択される、様々な比較的フレキシブルな生体適合性材料で作られてよい。シーススリーブを単一の材料で作ることができるが、本開示は、例えば、異なる材料の層及び/又はスリーブの異なる長さ部分に沿って異なる特性を有する材料のような、異なる材料で作られるシーススリーブも想定する。例示的な実施形態では、本明細書中に参照として援用する2015年7月28日に発行された(「SHEATH FOR SURGICAL INSTRUMENT」という名称の)米国特許第9,089,351B2号に開示される、そのような構造を作るために使用される様々なシースチューブ/本体構造及び材料を使用して、本開示のシーススリーブを作ることができる。
【0052】
図4A乃至図9Dに関連して示し且つ記載するような幾つかの例示的な実施形態において、シース保持機構は、手術器具の相補的な構成(complimentary feature)との係止可能な係合をもたらすように構成される1以上の弾性部分を含む。弾性部分は、シースが器具の上に適合されるときに、弾性部分が器具の相補的な構成を越えて移動するに応じて撓む(deflect)ように構成され、ひとたびシース300が器具と組み立てられると、手術器具の相補的な構成と係合するように構成される。
【0053】
保持機構の1以上の力適用面への十分な力の適用は、保持機構を器具の相補的な構成から外すことにより器具からのシースの取外しを可能にするよう、弾性部分を撓ませる。
【0054】
図4Aは、例示的な実施形態においてコネクタ部分が器具シャフトと伝達ハウジング(例えば、図2のハウジング234)との間の接合部に設けられた、図2の手術器具230と類似の構成を有してよい、手術器具1030のシースコネクタ部分413と相互作用するように構成された保持機構402を含む、シース400の例示的な実施形態を示している。図4Aの実施形態において、保持機構402は、シーススリーブ405の近位端に固着された概ねチューブ形状の保持器本体403を含む。保持器本体403は、その遠位端部分に配置されたシーススリーブ取付部分406を有する。シーススリーブ取付部分406は、以下に更に詳細に記載するように、シース400のスリーブ405に固着されるように構成される。シーススリーブ取付部分406から近位に延びるのは、保持器本体403の近位端408を定める係止環404(locking collar)である。係止環404は、1以上の弾性部材410を含む。弾性部材410は、図4Aに示すように、保持器本体403と一体的に形成(例えば、成形)されてよく、或いは保持器本体403とは別個に形成された保持機構402のコンポーネントを含んでよい。
【0055】
シース400が器具上で組み立てられた設定にあるとき、弾性部材410は、器具1030のシースコネクタ部分413の1以上の相補的な保持構成412と係止可能に係合するように構成される。図示の例示的な実施形態において、シースコネクタ部分413の相補的な保持構成412は、傾斜部分414(ramped portion)を備える円周方向に配置された突起を含み、傾斜突起414は、器具シャフト1032の長手軸に対して鋭角を備える概ね円錐台形(切頭円錐形)の表面プロファイルを有してよい。より具体的には、傾斜部分414は、手術器具の軸方向に沿って遠位から近位への方向に上向き及び外向きに延びる。このようにして、弾性部材410の表面が傾斜部分414の始まりに接触するようになると、継続的な力が保持器本体403に加えられて、保持器本体を接続部分413の上でスライドさせるに応じて、弾性部材410は傾斜部分414によって徐々に広げられる。最終的に、弾性部材410は相補的な保持構成412を越えて近位に移動し、それらの初期的な変形されていない設定に戻る。保持構成412の保持面416は、シャフト1032の長手軸に対して実質的に直交して配置され、弾性部材410との相互作用によって、シースが器具上に組み立てられた設定におけるシースの軸方向下向きの移動を防止する肩部(ショルダ)を提供する。換言すると、弾性部材の変形させられていない設定において、弾性部材は、表面416によって提供される肩部と接触するようになり、保持機構402の、よって、シースの遠位方向における軸方向の移動を防止する。
【0056】
当業者は、保持機構412がコネクタ部分413の円周の周りの連続的な構成であってよく或いは円周の周りの選択的な位置に配置された複数の構成であってよく、それは器具に対する所望の回転位置にシースを方向付けるのを助けることがあることを理解するであろう。
【0057】
シース400は、器具1030のシースコネクタ部分413上で保持器本体403の係止環404を前進させることによって、器具1030上の組み立てられた設定において配置されてよい。係止環404を軸方向に移動させて手術器具のシースコネクタ部分413と係合させると(即ち、近位方向に係止環404を移動させると)、保持機構412の傾斜部分414は弾性部材410と接触するようになる。近位方向への係止環404の継続的な移動は、弾性部材410を傾斜部分414によって横方向(例えば、径方向)に外向きに撓ませる。径方向外向きの弾性部材410の撓みは、相補的な保持構成412が弾性部材410の間を通り、弾性部材410を越えて軸方向に移動するのを可能にする。
【0058】
図4Bに示すように、ひとたび弾性部材410が相補的な保持構成412の傾斜部分414をクリアすると、弾性部材410はそれらの初期的な撓んでいない設定に戻り、相補的な保持構成412の保持面416の近位に位置付けられる。弾性部材410がそれらの撓んでいない設定に戻り、器具1030のシースコネクタ部分413の部分と接触するとき、弾性部材410の比較的急激な動きは、シース400が器具1030のシースコネクタ部分413と完全に係合したことの可聴表示又は触覚表示を生み出すことがある。例えば、そのような表示は、可聴ノイズ(例えば、「クリック」)、操作者の触感をもたらす保持構成412を通じて進む低周波数振動波、又は同等物のうちの1以上を含んでよい。保持面416の肩部の故に、相補的な保持構成412の保持面416(図4A)と1以上の弾性部材410との間の機械的干渉は、シース400を器具1030シャフト1032上の所定の位置に保持(係止)して、器具又はシース保持機構402に対して作用する十分な力がない場合に、手術器具に対する保持機構402の軸方向の移動及び分解を防止する。
【0059】
(例えば、外科処置における)器具1030及びシース400の使用に続いて、シース400を取り外して器具1030を洗浄する(例えば、滅菌する)こと、例えば、再使用のために器具を再処理することが必要であるか或いは望ましいことがある。依然として図4Bを参照すると、器具1030からシース400を取り外すために、例えば、弾性部材410から実質的に90度だけ離れた近位端408上の場所で、径方向内向きに方向付けられた力418(例えば、締付力)が保持器本体403の近位端408に加えられてよい。例えば、保持器本体403は、力適用面420,422で操作者によって把持されてよい(例えば、狭窄されてよい)。力適用面420,422に加えられる径方向内向きの力は、弾力部材410がシースコネクタ部分413から離れる方向に撓む間に、力適用構成420,422に及びその周りに配置される保持器本体403の近位端408の部分を器具130のシースコネクタ部分413に向かって内向きに撓ませる。換言すれば、圧縮力418が力適用面420,422に加えられるときに、弾性部材410の横(例えば、径方向)方向距離が増加することがある。横方向(例えば、径方向)に保持構成412を越える弾性部材410の外向きの撓みは、弾性部材410が相補的な保持構成412をクリアすることを可能にし、保持構成402及びシーススリーブを器具1030に対して遠位に移動させることによって、係止環404が器具1030から取り外されたシース400及びコネクタ部分413から外される(係止解除される)ことを可能にする。
【0060】
幾つかの例示的な実施形態において、弾性部材410及び/又は保持器本体403の他の部分は、力418の下で弾性的に変形する。追加的に又は代替的に、弾性部材410及び/又は保持器本体403の他の部分は、力418の下で塑性変形する。幾つかの実施形態において、シース400は、1回の使用の後に処分されてよい。
【0061】
シース400の保持器本体403は、弾性部材410及び力適用面420,422の撓みを容易にする弾性材料で作られてよい。非限定的な例として、保持器本体403は、ナイロン、ポリエーテルブロックアミド(PEBOX)、高密度ポリエチレン(HDPE)、又は他のポリマのような、熱可塑性物質で作られる。幾つかの実施形態において、保持器本体403は、繊維強化ポリマのような複合材料で作られ、且つ/或いは非ポリマ材料を含んでよい。保持器本体403は、射出成形、鋳造、機械加工のようなネガティブ製造プロセス(negative manufacturing processes)、及び/又は溶融堆積モデリング(fused deposition modeling)、粉末床焼結(powder bed sintering)などのような付加的な製造プロセス(additive manufacturing processes)のような、成形プロセスを使用して作られてよい。幾つかの実施形態において、保持器本体403及びシーススリーブ405は、シーススリーブ405への保持器本体403の取付けを容易にするために、同一又は類似の材料で作られる。1つの例示的な実施形態において、保持器本体403及びシーススリーブ405は、両方とも、ポリエーテルブロックアミドを含む。しかしながら、保持器本体403及びシース400の他の部分又はコンポーネントは、適切な特性を示す任意の材料を含んでよい。例えば、幾つかの実施形態において、材料は、少なくとも部分的に、剛性、弾性率、又は所望であることがある他の機械的特性に基づいて、選択されてよい。非限定的な例として、幾つかの適切な材料は、約500MPa~約5000MPaの範囲の弾性率を示してよい。他の適切な材料は、例えば、約500MPa未満の又は約5000MPaを超える弾性率を含んでよいのに対し、壁厚は調整されて補償される。幾つかの実施形態において、材料は、成形性、機械加工性などのような、製造特性に基づいて、選択されてもよい。原料は、少なくとも部分的に、原材料のコスト、そのような材料と共に機能するのに適した製造プロセスと関連付けられるコストなどに基づいて、選択されてよい。幾つかの実施形態では、例えば、1回の使用(即ち、使捨て)に限定されたシースについては、比較的低コストの材料が望ましいことがある。他の材料選択基準は、非限定的に、材料が有意な劣化を伴わずに様々な滅菌プロセス(例えば、ガンマ線滅菌、エチレンオキシド滅菌、オートクレーブ、電子ビーム滅菌など)に耐える材料の能力、及び、例えば、ラテックスを含まないことのような、材料の生体適合性を含んでよい。
【0062】
保持器本体403及びシーススリーブ405は、任意の適切な方法によって互いに取り付けられてよい。非限定的な例として、保持器本体403及びシーススリーブ405は、超音波溶接、レーザ溶接、スピン溶着などのような、溶接プロセスによって互いに融着されてよい。幾つかの例示的な実施形態では、接着剤を使用して保持器本体403をシーススリーブ405に固着してよい。1つの例示的な実施形態において、保持器本体403は、1以上のスポット溶接を使用してシーススリーブ405に固着される。幾つかの実施形態において、シーススリーブ405は、図8A乃至図8Cに関連して以下により詳細に記載するように、機械的な取付装置を用いて保持器本体403に固着されてよい。
【0063】
保持器本体403は、シース400の装着及び取外しのための弾性部材410の変形を容易にするように構成された幾何学的形状を有してよい。例えば、図4A及び図4Bの実施形態において、保持器本体403は、シーススリーブ取付部分406に沿う円形の内部横断面から、近位端408及び係止環404にある細長い(例えば、長円形又は楕円形の)内部横断面まで漸進的に移行する断面形状を有してよい。初期的な非変形状態において、力適用面420,422は、長円形体の長軸Amaの両端に向けられるのに対し、弾性部材410の部分は、長円形体の短軸Amiに位置付けられる。力適用面420,422に力が加えられると、長軸Amaは長くなるのに対し、短軸Amiは短くなり、少なくとも弾性部材410の周りの近位端408及び係止環404の細長い断面形状は変形する。幾つかの実施形態では、力適用面420,422に加えられる力に起因する変形の下で、主軸Ama及び短軸Amiは実質的に等しくなり、少なくとも弾性部材410を含む並びに力適用面420,422に近接する近位端408での保持器本体403の断面形状は、実質的に円形になる。短軸Amiが十分な長さだけ伸長する結果、弾性部材410は、器具1030の相補的な保持構成412から外れる(係止解除される)のを許容するのに十分な量だけ、径方向外向きに撓む。
【0064】
保持器本体403は、弾性部材410を十分に変形させてシース400を取り外すために力適用面420,422に加えられるのに必要な圧縮力418が特定の閾値より下であるように、構成されてよい。例えば、保持器本体403は、シース400を取り外すために力適用面420,422に加えられるのに必要な力418が十分に低いので、操作者(例えば、医師、看護師など)が、手作業で、例えば、片手で力418を加えることによってシース400を取り外すことができるように、構成されてよい。非限定的な例として、力適用面420,422に加えられることが必要とされる圧縮力418は、約2ポンド-力(lb)~約10ポンド-力(lb)の範囲、例えば、約4ポンド-力(lb)であってよい。しかしながら、例えば、使用者の手によって力が加えられる代わりに、力を加えるように設計されたツールが使用されるならば、必要とされる加えられる力はより高くてよい。
【0065】
力適用面420,422に加えられるのに必要とされる圧縮力418の大きさは、少なくとも部分的に、保持器本体403を構成する材料の特性に依存することがある。例えば、相対的に高い弾性係数を有する材料は、比較的低い弾性係数を有する材料と比較して、相応してより高い力を必要とすることがある。加えて、保持器本体403の幾何学的形状は、器具1030からシース400を取り外すのに必要とされる力418の大きさに影響を及ぼすことがある。例えば、保持器本体403の比較的厚い壁及び比較的厚い弾性部材410は、比較的より薄いコンポーネントよりも、シース400を取り外すのに比較的より大きな力を必要とすることがある。
【0066】
力適用面420,422は、操作者による操作を容易にするように構成された構成を含んでよい。例えば、力適用面420,422は、握りを向上させるために及び/又は力適用面420,422の触覚認識を可能にするために、隆起424(ridges)、ローレット切り(knurling)、又は他のテクスチャ(textures)若しくは構成(features)のような、構成(features)を含んでよい。
【0067】
加えて、保持器本体403は、シース400を取り外す弾性部材410の撓みをもたらす圧縮力418の大きさを変更するように構成されたレリーフ(reliefs)を含んでよい。レリーフは、弾性部材410に応力を集中させて、所与の加えられる力についてより大きな弾性部材410の撓みをもたらすよう、係止環404のフレキシビリティ(例えば、弾性変形性)を増大させることがある。更に、レリーフは、係止環404において塑性変形、破損などを引き起こす、さもなければ比較的高い応力を受けることがある、係止環404の領域を解放することがある。図4A及び図4Bに示すレリーフ426は、「I」形状の切欠部分として構成されているが、図示の構成と異なる構成が想定される。係止環の壁の切欠部分を設けることの他に、レリーフは、保持器本体403の円周の周りの特定の場所で異なる及び/又はより薄い材料を使用することによるような、保持器本体の壁の他の薄肉化によって、提供されてよい。加えて、幾つかの実施形態は、如何なるレリーフをも含まなくてよい。そのような実施形態は、上述の弾性部材410と実質的に同様に相補的な保持構成412と相互作用するように構成された保持器本体403の近位端408に配置された1以上の径方向内向きに延びる突起又は肩部を含んでよい。例えば、保持器本体403は、内面にアンダーカット(undercut)を含んでよく、その部分は、相補的な保持構成412の近位方向に面する表面と相互作用する遠位方向に面する表面を形成する。
【0068】
様々な例示的な実施形態は、ひとたびシースが器具上の組み立てられた設定になると、器具に対するシースの回転を防止することも想定する。例えば、使用中又は輸送中の器具に対するシースの回転は、シース400を裂かせ、引き裂かせ、或いは他の方法で劣化させることがある。しかしながら、装着の容易さ及び速さのために、器具に対する特定の回転的な整列においてシースを整列させることを操作者に求めることは望ましくないことがある。
【0069】
従って、図5は、本開示の例示的な実施形態に従って保持機構500の他の実施形態を示している。保持機構500の機能性は、多くの点において、図4A及び図4Bに関連して記載した保持機構402の機能性と類似してよい。明瞭性のために、器具10300(図4A)のシャフト1032(図4A)は、図5の例示から省略されている。シース保持機構500は、複数の長手方向に向けられた並びに円周方向に離間させられた内部スプライン505を含む、係止環404の遠位部分の内面502を有する。器具(図示せず)のシースコネクタ部分513が、内部スプライン505と相互作用するように構成された複数の長手方向に向けられた並びに円周方向に離間させられた凹部510を備える、外面508を有してよい。シース保持機構500が器具のシースコネクタ部分513と係合させられると、内部スプライン505は凹部内に受け入れられて、シースコネクタ部分513に対してシース保持機構500を整列させ、且つシースコネクタ部分513に対するシース保持機構500の回転を防止し、よって、保持機構500がシースコネクタ部分513上で組み立てられ且つ係止された設定において、器具に対するシースの回転を防止する。
【0070】
幾つかの実施形態において、内部スプライン505及び凹部510は、シースコネクタ部分506とのシース保持機構500の自己整列を容易にするように構成された構成及び/又は幾何学的形状を含んでよい。例えば、凹部510間のコネクタ部分のエッジ及び/又は内部スプライン505は、丸い先端512(leading ends)を有することができる。シース保持機構500がスライドしてシースコネクタ部分513と係合すると、丸い先端512は、内部スプライン505及び凹部510の自己整列を容易にする。よって、シース保持機構500は、使用者による最小の又は皆無の外部回転力で、シースコネクタ部分513と自己整列するように構成される。シース保持機構500を器具1030のシースコネクタ部分513に装着し得る回転の向きの数は、少なくとも部分的に、内部スプライン505及び凹部510の数及び/又は構成によって決定されてよい。例えば、内部スプライン505及び凹部510のピッチは、シース保持機構500をシースコネクタ部分513に装着し得る回転の向きの数を決定することがあり、ピッチが大きければ大きいほど、可能な装着される回転の向きはより多く、ピッチが小さければ小さいほど、可能な装着される回転の向きはより少ない。
【0071】
加えて、幾つかの実施形態において、シース保持機構500及びシースコネクタ部分513は、1以上の所定の回転の向きにおいてシースコネクタ部分513とのシース保持機構500の整列を要求するように構成される構成を含んでよい。例えば、シース保持機構500をシースコネクタ部分513上に完全に装着することができる前に、異なるサイズ、形状、及び/又は構成を有する1以上の内部スプライン及び対応する1以上の凹部が互いに回転的に整列させられなければならないよう、内部スプラインのうちの1以上の内部スプライン及び凹部のうちの対応する1以上の凹部は、残余の内部スプライン及び凹部とは異なるサイズ、形状、及び/又は構成を有してよい。
【0072】
例えば、図6に示すように、シース保持機構5000は、複数の内部スプライン5050を含み、シースコネクタ部分5130は、複数の凹部5100を含む。複数の凹部5100のうちの少なくとも1つの凹部5102は、複数の凹部5100のうちの他の凹部とは異なる寸法(例えば、シースコネクタ部分5130の周りの異なる円周方向の幅W)を有し、複数の内部スプライン5050のうちの対応する少なくとも1つの内部スプライン(図示せず)は、シース保持機構5000をシースコネクタ部分5130上に完全に装着することができる前に、対応する少なくとも1つの内部スプライン(図示せず)と整列させられなければならない。図6の実施形態は、複数の凹部5100の他の凹部よりも大きな幅wを有する少なくとも1つの凹部5102を示しているが、少なくとも1つの凹部5102の追加的な又は他の寸法又は構成が、複数の凹部の他の凹部に対して変更されてよい。例えば、少なくとも1つの凹部5102及び対応する少なくとも1つの内部スプラインの長さ、深さ(例えば、径方向の寸法)又は形状のうちの1以上は、複数の凹部5100の他の凹部及び複数の内部スプライン5050の他の内部スプラインに対して変更されてよい。
【0073】
幾つかの実施形態は、多数の可能な装着の向きを提供するために、シース保持機構5000及びシースコネクタ部分5130の円周の周りで離間させられてよい、他のスプライン及び凹部とは異なる寸法を有する複数のスプライン及び対応する凹部を含んでよい。例えば、他のスプライン及び凹部とは異なる寸法を有する2つのスプライン及び対応する凹部は、180度だけ離された2つの可能な装着の向きを提供するために、シース保持機構5000及びシースコネクタ部分5130の円周の周りで180度だけ離間させられてよい。他のスプライン及び凹部とは異なる寸法を有する3つのスプライン及び対応する凹部は、120度だけ離された3つの装着の向きを提供するために、120度だけ離間させられてよく、他のスプライン及び凹部とは異なる4つのスプライン及び対応する凹部は、90度だけ離された4つの装着の向きを提供するために、90度だけ離間させられてよいなどである。シースコネクタ部分5130に対するシース保持機構5000の回転の向きを制約することは、シースの設計及び/又は材料特性を、シースを取り付ける手術器具のエンドエフェクタ及び/又は器具シャフトの特定の動作又は動作範囲に合わせて調整することを可能にする。当業者は、所望の係合及び/又は回転的な整列を達成するために、様々な他の構成、配置、並びにスプライン及び凹部の数が使用されてよいことを理解するであろう。
【0074】
図7A及び図7Bは、本開示に従ったシース保持機構の更に他の例示的な実施形態を示している。シース保持機構500は、以下に記載する相違を伴って、図4図5の例示的な実施形態と同様に構成されてよい。この実施形態では、図7Cに部分的に描く器具シャフト632のような、細長い(例えば、長円形の又は楕円形の)外側横断面形状を有する器具シャフトを覆うように構成された、細長い(例えば、長円形の又は楕円形の)断面(図示せず)の類似の形状のシーススリーブを受けるように構成されるように、シース保持機構600は、図7に示すような、実質的に細長い(例えば、長円形の又は楕円形の)内部横断面形状を備える、シーススリーブ取付部分606を含む。シース保持機構600の断面形状は、シーススリーブ取付部分603の長円形状から、図7に示すような、近位端を含む係止環604での実質的に円形の内部横断面形状に漸進的に移行してもよい。図4及び図5の実施形態におけるように、対向して配置された弾性部材610及び対向して配置された力適用面620,622が係止環604の近位端に設けられ、弾性部材610は、それぞれの力適用面620,622から90度だけオフセットさせられている。
【0075】
図7Cを参照すると、シース保持機構600及び関連するシーススリーブ(図示せず)は、シースコネクタ部分613と器具シャフト632とを備える器具に装着されてよい。シースコネクタ部分613は、例えば、長円形又は楕円形のような、シース保持機構600のシーススリーブ取付部分606の開口及び断面形状に対応する形状を有してよい。シースコネクタ部分613は、複数の突起614のような相補的な保持構成を含んでよい。例えば、図7Cに示すように、シースコネクタ部分613は、その長円形状の長軸の両端に配置される2つの突起614を含んでよい。シースは、シース保持機構600及びスリーブを器具(図示せず)の遠位端の上で案内して、シースコネクタ部分613の上で器具シャフト632に沿ってシース保持機構600及びシーススリーブを前進させることによって、器具上に装着されてよい。シース保持機構600の係止環604が楕円形(長円形)のシースコネクタ部分613に接触すると、係止環604の開口の円形の断面とシース取付部分606の長円形の断面との間の漸進的な移行は、(例えば、シース取付部分606の長軸が第1の向きにおいて又は第1の向きから180度だけ回転させられた第2の向きにおいてシャフト632及びシースコネクタ部分613の長軸と整列させられるように)、シース保持機構600を、2つの向きのうちの1つにおいて楕円形(又は長円形)のシースコネクタ部分613及び手術器具のシャフト632との整列するよう方向付ける。
【0076】
上記で議論した図3図5の例示的な実施形態と同様の方法において、器具に対する近位方向へのシースの継続的な前進で、シース保持機構600の弾性部材610は、それらがシースコネクタ部分613の突起614の遠位に位置付けられた傾斜表面と接触するようになると、横方向に(例えば、径方向に)外向きに撓んで、それらが突起614を越えて近位方向に移動する十分な隙間を提供することを可能にする。それらの弾性の故に、それらがひとたび突起614を越えると、弾性部材610は、図7Dに示すように、それらの初期的な位置に戻る(即ち、変形させられていない設定に戻る)。図7Dに示す、保持機構600がシースコネクタ部分613上に組み立てられた設定において、突起614と弾性部材610との間の干渉は、保持機構600及びシースが器具に対して軸方向に移動するのを防止し、よって、シースを器具シャフト632上の所定の位置に係止する。突起614は、図3図5の例示的な実施形態の保持構成に関して上述したものと類似する表面を有して、弾性部材610と突起614との干渉をもたらすことにより、保持機構600及び保持機構に取り付けられたシーススリーブが器具に対して軸方向に取り外されるのを防止する。
【0077】
シース保持機構600及びシースを器具から取り外すために、横方向(例えば、径方向)内向きに向けられる力618を力適用面620,622に加えて、係止環604を、少なくともシース保持機構600の弾性部材610を含む近位端部分で、その円形の断面形状から細長い(例えば、長円形又は楕円形の)断面形状に変形させることにより、弾性部材610の間の距離を増大させる。十分な適用される力618の下で、弾性部材610の間の距離は、突起614から外れる(係止解除する)ように増加し、保持機構600を突起614を越えて遠位に移動させるのに十分な隙間を提供する。次に、シース保持機構600をシースコネクタ部分613から外し、シースを器具から取り外すことができる。
【0078】
更に他の例示的な実施形態において、シース保持機構は、熱融着又は接着結合とは対照的に、シーススリーブへの機械的な取付けをもたらすように構成されてよい。幾つか場合において、シースのスリーブは、シーススリーブの材料特性、保持機構の材料特性、又はそれらの両方の故に、シースの保持機構に融着又は結合することが困難又は不可能なことがある。例えば、幾つかの実施形態において、シーススリーブは、保持機構が作られる可能性が高い他の材料に容易に溶着又は他の方法で結合しないことがある、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような材料で作られてよい。従って、シースのシーススリーブ及び保持機構は、以下に記載するように、機械的取付けコンポーネントを使用して互いに取り付けられてよい。
【0079】
ここで図8Aの例示的な実施形態を参照すると、シース700は、シーススリーブ702と、外側保持機構部703と内側保持機構部707とを有する保持機構とを含む。外側保持機構部703は、以下に記載するように、内側保持機構部707への取り付けのための係合構成(engagement feature)を含むことを除いて、図3図5の保持機構の実施形態と同様に構成されてよい。例えば、外側保持機構部703は、シーススリーブ702の近位部分を受け入れるように構成され、シーススリーブ取付部分706と、シーススリーブ取付部分706から延びる係止環704とを有する。内側保持機構部707は、図8B及び図8Cに示すように、シーススリーブ702の近位端部分708内に挿入されるように構成される。外側保持機構部703及び内側保持機構部707は、内側保持機構部707を外側保持機構部703に機械的に連結するように構成されるインターロック構成を含んで、シーススリーブ702の近位端部分708をそれらの間に捕捉する。例えば、内側保持機構部707は、外側保持機構部703のシーススリーブ取付部分706の遠位端712と係合するように構成された撓み可能な保持タブ709を含んでよい。
【0080】
ここで図8Cを参照すると、外側保持機構部703をシーススリーブ702の近位端部分708の上に並びにスリーブ702の近位端部分708内に位置付けられる内側保持機構部707の上に位置付けることができる(図8B)。図8Aに見ることができるように、近位端部分708は、内側保持機構部707の撓みタブ709を受け入れるように位置付けられ且つ構成された、スリーブの側壁に長手方向に向けられた切欠部分711を含む。図8A図8Cの例示的な実施形態では、内側保持機構部707の周りに互いに対向して配置された2つの撓み可能な保持タブ709と、スリーブ702の近位端部分708の周りに互いに対向して配置された2つの切欠部分711とがある。しかしながら、当業者は、本開示が2つの撓み可能な保持タブの使用に限定されず、1つ又は2つよりも多くを含む任意の数が使用されてよいことを理解するであろう。
【0081】
外側保持機構部703のスリーブ取付部分706がスリーブ702の近位端部分708を越えてタブ709上の径方向外向きに延びる突起7091と係合させられるときに、内側保持機構部707上の保持タブ709は内向きに撓む。外側保持機構部703が図8Cに示すその最終的な位置に達すると、スリーブ取付部分706の遠位端712は、切欠部分711の端の直ぐ上に位置するようになり、径方向外向き延びる突起7091がスリーブ取付部分706の内面との接触から解放されるのを可能にすることにより、撓み可能な保持タブ709を、突起7091が切欠部分711を通じて延びる撓み可能な保持タブの初期的な設定に戻し、且つ外側保持機構部703の遠位軸方向移動を防止する表面を提供する(図8Cを参照)。よって、内側保持機構部707及び外側保持機構部703によってシーススリーブ702に作用する機械的な相互作用(例えば、締付力)は、スリーブ702を保持機構に固定する。
【0082】
シース及び器具シースコネクタ部分の他の例示的な実施形態が、図9A乃至図9Dに示されている。図9Aに示すように、シース900は、近位端部分902と、近位端部分に固定された保持機構903とを有する。保持機構は、シーススリーブ取付部分906と、係止環904とを含み、係止環904は、係止環904を撓み可能なセグメント910に分けるよう、概ね軸方向に延びる切欠き又は弱化された若しくはより薄い材料の領域のような、長手方向に延びるレリーフ907を有する。係止環904の自由端で、撓み可能なセグメント910は、傾斜した先端を有する環状の外向きに延びる(棘の形状であることができる)突起912で終端し、その表面は、シースの近位から遠位の方向に内向きにテーパ状になっている。
【0083】
ここで図9Bを参照すると、シース900は、器具のシースコネクタ部分914を備える組み立てられた設定に配置されてもよい。シースコネクタ部分914は、付勢要素(例えば、コイルバネ)921によって遠位位置(例えば、図9Bに示す位置)に付勢された内側環916及び外側環918を含む。球状に付勢された保持器部材920(例えば、玉軸受)が、貫通孔917内に捕捉され、貫通孔917は、外側環918が図9Cに描く係止位置にあるときに、外側環918の内面が貫通孔の外面開口を閉塞する結果として、内側環916の横方向側壁を通じて延びる。図9Bを参照すると、シース保持機構903が内側環916内に挿入されると、係止環904のセグメント908は、突起912の先端が保持部材920を押すときに、径方向内向きに撓む。図9Cに示すように、ひとたび突起912が保持部材920を越えて近位に移動すると、セグメント908は初期的な撓まされていない位置に戻る。図9Cに示すように、シースが器具シャフト932上で組み立てられた(係止された)設定において、突起912の遠位対向面は、保持器部材920と係合する肩部を形成して、シース900が遠位に移動してシースコネクタデバイス914から外されるのを防止する。
【0084】
ここで図9Dを参照すると、外側環918の内面にある環状レリーフ924が保持部材920と整列するまで、外側環918を付勢要素921の付勢力に抗して内側環916に対して軸方向及び近位方向に移動させることによって、シース900は係止解除されて、シースコネクタデバイス914から、よって、器具シャフト932から取り外されてよい。よって、保持部材920は、外側環918のレリーフ924内に少なくとも部分的に受け入れられるよう径方向外向きに移動することが可能にされて、係止環904及び突起912が保持部材920を越えて遠位に移動して、シース900がシースコネクタデバイス914及び器具から取り外されるのを可能にする。
【0085】
ここで図10Aを参照すると、シース1000及び器具1130の対応するシース接続部分1113の他の例示的な実施形態が示されており、シースは、器具のシースコネクタ部分1113と係合させられるように構成された構成を有するチューブ状スリーブである。シース1000は、横方向壁にあり且つ少なくとも外面を通じる、孔、凹部、又は他のネガティブなレリーフ構成のような、雌構成1004を備える近位端部分1002を含み、それらのうちの複数は、近位端部分1002の周囲の周りで円周方向に離間させられてよい。器具のシースコネクタ部分1113は、器具シャフト1132が器具伝達ハウジング1106に繋がる接合部に位置付けられてよい。シースコネクタ部分1113は、シース1000の近位端部分1002内に受け入れられるように構成された内側環1115を含むことができる。内側環1115は、内側環1115の外面から径方向外向きに延びる、例えば、棘又は他の類似の突起のような、1以上の雄構成1114を含む。雄構成1114は、シース1000の雌構成1004内に嵌入するように位置付けられ且つ構成される。シースコネクタ部分1113は、例えば、圧縮ばね又は他の付勢要素のような、付勢デバイス1116によって遠位位置に付勢される、外側環1112を更に含む。環1112は、付勢デバイス1116が拡張位置にあり、環1112を図10Bに示す遠位位置に押すときに、雄構成1114を少なくとも部分的に覆うように位置付けられる。
【0086】
シース1000を装着するために、環1112は、器具に対して近位方向に、例えば、器具伝達ハウジング1106に向かって引っ込められる。環1112のこの位置において、必要であれば、孔1004が雄構成1114と整列して、雄構成のうちの1以上をそれぞれ受け入れるまで、シース1000を雄構成1114の上でスライドさせ、回転させることができる。次に、環1112を解放することは、環1112を雄構成1114の上で移動させ、コネクタ部分1113及びシース10000を互いに係止し、シースとの雄構成1114の係合解除から守る。このようにして、シース1000は、器具に組み立てられ、器具シャフト1032に対して横方向および軸方向に移動することが防止される。
【0087】
本明細書に記載し且つ示す様々な例示的な実施形態において、器具のシースコネクタ部分は、器具シャフトが伝達ハウジングから延びる接合部に位置付けられ、それにより、シーススリーブが器具シャフトの実質的に全長に延びることを可能にする。しかしながら、本開示は、シースコネクタ部分を器具シャフトに沿う他の場所に位置付けることを想定し、その設定において、シースは器具シャフトの全長を覆うように延在しない。
【0088】
更に、シース及び/又は器具上に設けられる相補的な保持構成の係合に依存する様々な例示的な実施形態において、当業者は、例えば、非限定的に、器具上でのシースの装着の容易さ、製造の容易さ、組立構成における器具に対するシースの回転及び/又は軸方向移動を防止する傾向のある所望の保持力などを含む、要因に基づいて、それらの構成の数及び配置に対する修正が所望に変更されてよいことを理解するであろう。一例として、様々な例示的な実施形態は、相補的で係合可能な雄構成及び雌構成を含む。当業者は、本開示の範囲から逸脱せずに、適切な変更を伴って様々なコンポーネント上での雄構成及び雌構成の場所を逆転させることができることを理解するであろう。
【0089】
更なる修正及び代替的な実施形態は、本明細書中の開示を考慮して当業者に明らかであろう。例えば、デバイス、システム、及び方法は、動作の明瞭性のために図面及び記述から省略された追加的なコンポーネント又はステップを含んでよい。従って、この記述は例示に過ぎないものとして解釈されるべきであり、この記述は本開示を実施する一般的な方法を当業者に教示する目的のためにある。本明細書に示し且つ記載する様々な実施形態は例示的なものとして理解されるべきであることが理解されるべきである。要素及び材料、並びにそれらの要素及び材料の配置は、本明細書に例示し且つ記載するものと置換されてよく、部品及びプロセスは逆転させられてよく、本教示の特定の構成は独立して利用されてよく、当業者に明らかなように、全ては本明細書中の記述の利益を得た後にある。本開示及び後続の請求項の範囲から逸脱せずに、本明細書に記載する要素に変更が行われてよい。
【0090】
本明細書に示す特定の例及び実施形態は非限定的であり、本開示の範囲から逸脱せずに、構造、寸法、材料、及び方法論に対する変更が行われてよいことが理解されるべきである。
【0091】
本開示に従った他の実施形態は、本明細書に開示する本発明の明細書及び実施から当業者には明らかであろう。本明細書及び例は、例示的に過ぎないものとして考えられるべきことが意図されており、以下の請求項による均等物を含む、それらの全範囲の権利を享受する資格がある。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B