(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】機械学習技法を用いたOCTアンギオグラフィにおけるアーチファクトを減少させるための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20221213BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20221213BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20221213BHJP
【FI】
A61B3/10 100
G01N21/17 620
G06T7/00 612
G06T7/00 350B
(21)【出願番号】P 2018543677
(86)(22)【出願日】2017-02-17
(86)【国際出願番号】 US2017018521
(87)【国際公開番号】W WO2017143300
(87)【国際公開日】2017-08-24
【審査請求日】2019-12-03
(32)【優先日】2016-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512310538
【氏名又は名称】オプトビュー,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,イー-シン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ベン ケー.
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ,ウトカルシュ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,チエンユアン
(72)【発明者】
【氏名】コー,トニー エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,ジェイ
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/154200(WO,A1)
【文献】特開平09-305757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/12
3/13-3/16
G01N 21/17
G06T 1/40
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーチファクトを低減する方法であって、
OCT画像及びOCTA画像の両方を提供するOCT/OCTAイメージャからOCT/OCTAデータを取得するステップと、
前記OCT/OCTAデータからOCTA/OCTボリュームデータを前処理するステップと、
前処理された前記OCTA/OCTボリュームデータから特徴を抽出するステップと、 分類カテゴリの組に関連する様々なタイプのアーチファクトの存在を示すデータで訓練される分類器において前記OCTA/OCTボリュームデータを分類して確率決定データを提供するステップであって、前記OCTA/OCTボリュームデータを分類するステップは、前記OCTA/OCTボリュームデータの各基本単位における、前記基本単位が分類カテゴリの組の1つに属する確率を表す確率決定データを返信することを含み、前記分類カテゴリは、純粋なフロー信号、純粋なプロジェクション・アーチファクト信号、及び
前記純粋なフロー信号及び前記純粋なプロジェクション・アーチファクト信号の混合信号を含むステップと、
前記確率決定データから割合データを決定するステップと、
前記割合データに応答してアーチファクトを減少させるステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記特徴を抽出するステップは、前記OCTA/OCTデータの各基本単位内の特徴を抽出するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基本単位は、単一のボクセルであり得る、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記基本単位は、複数のボクセルである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記OCTA/OCTデータを分類するステップは、訓練された分類器を使用して前記確率決定データを決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記訓練された分類器を訓練するステップをさらに含み、前記訓練された分類器を訓練することは、
トレーニングデータセットを提供し、
前記トレーニングデータセットを前処理し、
前記トレーニングデータセット内の特徴を抽出し、
前記トレーニングデータセットを分類して確率決定データを取得し、
前記確率決定データを人間のラベル付けされた確率データと比較し、
前記確率決定データが人間のラベル付けされた確率データと一致するように、訓練された分類器を改良することと
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
アーチファクトを低減する方法であって、
OCT画像及びOCTA画像の両方を提供するOCT/OCTAイメージャからOCT/OCTAデータを取得するステップと、
前記OCT/OCTAデータからOCTA/OCTボリュームデータを前処理するステップと、
前処理された前記OCTA/OCTボリュームデータから特徴を抽出するステップと、 分類カテゴリの組に関連する様々なタイプのアーチファクトの存在を示すデータで訓練される分類器において前記OCTA/OCTボリュームデータを分類して確率決定データを提供するステップであって、前記OCTA/OCTボリュームデータを分類するステップは、前記OCTA/OCTボリュームデータの各基本単位における、前記基本単位が分類カテゴリの組の1つに属する確率を表す確率決定データを返信することを含み、前記分類カテゴリは、純粋なフロー信号、純粋なプロジェクション・アーチファクト信号、及び
前記純粋なフロー信号及び前記純粋なプロジェクション・アーチファクト信号の混合信号を含むステップと、
前記確率決定データから割合データを決定するステップと、
前記割合データに応答してアーチファクトを減少させるステップと
を含み、
前記OCTA/OCTボリュームデータを前処理するステップは、
バックグラウンドノイズを超えるOCTA/OCT信号を有する領域を検出し、
前記バックグラウンドノイズを超えないOCTA/OCT信号の領域を除外し、
各OCTA/OCT-Aラインに沿ったランドマークを検出し、
全てのAスキャンを、選択したランドマークに合わせるために平坦化することと
を含む方法。
【請求項8】
アーチファクトを低減する方法であって、
OCT画像及びOCTA画像の両方を提供するOCT/OCTAイメージャからOCT/OCTAデータを取得するステップと、
前記OCT/OCTAデータからOCTA/OCTボリュームデータを前処理するステップと、
前処理された前記OCTA/OCTボリュームデータから特徴を抽出するステップと、 分類カテゴリの組に関連する様々なタイプのアーチファクトの存在を示すデータで訓練される分類器において前記OCTA/OCTボリュームデータを分類して確率決定データを提供するステップであって、前記OCTA/OCTボリュームデータを分類するステップは、前記OCTA/OCTボリュームデータの各基本単位における、前記基本単位が分類カテゴリの組の1つに属する確率を表す確率決定データを返信することを含み、前記分類カテゴリは、純粋なフロー信号、純粋なプロジェクション・アーチファクト信号、及び
前記純粋なフロー信号及び前記純粋なプロジェクション・アーチファクト信号の混合信号を含むステップと、
前記確率決定データから割合データを決定するステップと、
前記割合データに応答してアーチファクトを減少させるステップと
を含み、
前記確率決定データから割合データを決定するステップは、
各カテゴリに属する基本単位の確率を、前記基本単位内の単一の真のフロー信号の
割合値に変換する変換式又は行列
を適用することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2016年2月19日に出願された米国仮出願第62297649号の優先権を主張する。
【0002】
本発明の実施形態は、概して、光干渉断層撮影(Optical Coherence Tomography:OCT)アンギオグラフィの分野、及びその応用、特にOCTアンギオグラフィ(OCTA)データの改善された処理、及び、例えばプロジェクション・アーチファクト、低いOCT信号、及びノイズにより生ずる様々なエラーの効果を減少させるための方法及び装置に関する。
【0003】
OCTA(Optical Coherence Tomography Angiography)は、同じ場所で繰り返し行われるOCT測定を使用して、モーションコントラストを検出することによって血流を視覚化する非侵襲性の血管撮像様式である(例えば、非特許文献1を参照)。蛍光血管造影(FA)及びインドシアニングリーン(ICG)血管造影法とは異なり、OCTAイメージングは注射が不要であり、目の中などの組織内の血流又は脈管構造の深さ方向の解像度を有する三次元(3D)血管情報を提供する。FAは未だ異常血管機能をもたらす眼病変の診断のための最高の標準技術であるが、OCTAは、FAに関連する侵襲性を伴わずに、類似した、又は時には血管系異常に関する補足的な情報を提供する、非常に有望な技術である。
【0004】
しかしながら、OCTAの臨床的有用性は、人工物の撮像や、誤った分析をもたらす可能性のある様々な誤差源によって大きく影響を受ける可能性がある(例えば、非特許文献2を参照)。これらのアーチファクトには、プロジェクション・アーチファクト、低OCT信号に起因するシャドーイング、及びノイズが含まれるが、これらに限定されない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Talisa E. de Carlo et al "A review of optical coherence tomography angiography (OCTA)" Int J Ret Vit, April 2015
【文献】Richard F. Spaide et al. " Image Artifacts in Optical Coherence Tomography Angiography,"Retina, Nov 2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、エラーを軽減してOCTAの臨床的有用性を高めるための方法及び装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のいくつかの実施形態では、アーチファクトを低減する方法は、OCT/OCTAイメージャからOCT/OCTAデータを取得することと、OCTA/OCTボリュームデータを前処理することと、前処理されたOCTA/OCTボリュームデータから特徴を抽出することと、OCTA/OCTボリュームデータを分類して確率決定データを提供することと、前記確率決定データから割合データを決定することと、割合データに応答してアーチファクトを減少させることとを含む。
【0008】
これらの実施形態及び他の実施形態は、以下の図面に関して以下にさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】プロジェクション・アーチファクトを有するOCTA-Bスキャンの例示的な画像を示す。
【
図2】正常な被検者のOCTAイメージングの例示的な画像を示す。
【
図3】OCTA 三次元ボリュームおけるプロジェクション・アーチファクトを低減するためのステップを示すブロック図を示す。
【
図4】プロジェクション・アーチファクトが低減された後の
図1と同じ位置におけるOCTA-Bスキャンの例示的な画像を示す。
【
図5】プロジェクション・アーチファクトが低減された後の
図2に示された同じ正常対象物のOCTA撮像の例示的な画像を示す。
【
図6】OCTAボリュームにおいてプロジェクション・アーチファクトが減少する前後の脈絡膜血管新生(CNV)を有する加齢性黄斑変性(AMD)患者の外側網膜の例示的な画像を示す。
【
図7】プロジェクション・アーチファクト低減のために使用される分類器を訓練するためのステップを示すブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、本発明のいくつかの実施形態を説明する特定の詳細を説明する。しかしながら、いくつかの実施形態は、これらの特定の詳細の一部又は全部なしで実施され得ることは、当業者には明らかであろう。本明細書に開示された特定の実施形態は、例示的なものであって限定するものではない。当業者であれば、ここで具体的には説明しないが、本開示の範囲及び精神の範囲内にある他の要素を実現してもよい。
【0011】
本発明の態様及び実施形態を説明するこの説明及び添付の図面は、特許請求の範囲が保護された発明を限定するものとして解釈されるべきではない。この説明及び請求項の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができる。いくつかの例では、本発明を不明瞭にしないために、周知の構造及び技術は詳細には示されていないか又は記載されていない。
【0012】
1つの実施形態を参照して詳細に記載される要素及びそれらの関連する態様は、実際にはいつでも、それらが具体的に示され又は記載されていない他の実施形態に含まれてもよい。例えば、要素が一実施形態を参照して詳細に説明され、第2の実施形態を参照して記載されていない場合、要素は第2の実施形態に含まれると主張することができる。
【0013】
OCTAイメージングは、血流を伴う血管を検出する。従って、「流れ」及び「血管」という用語は、以下の説明において交換可能に使用される。OCTAは、流れ、特に血流を示す画像を生成するために、モーションコントラスト画像を使用する。特に、OCTAイメージャは、血流マップを構築するために、サンプルの同じ断面で得られた連続OCT-Bスキャン間の後方散乱OCT信号強度の差異を比較する。他の場所で議論されているように、OCTスキャンは、連続画像間の眼の動きに対して補正することができる。いくつかのシステムでは、OCT画像及び派生OCTA画像の両方を提供することができる。
【0014】
プロジェクション又はデコリレーションテール・アーチファクト(decorrelational-tail artifact)は、OCTA結果の臨床的有用性及び精度を制限する可能性のある最も重要なアーチファクトの1つである。現在のOCTA処理技術は、下にある組織が静止している場合であっても、血流領域の下にある組織において誤ったモーションコントラスト信号を生成する可能性がある。OCTA技法は、モーションコントラストを得る原理、すなわち、組織内の異なる深さでのOCT信号の変化を識別し定量化する原理に基づいている。光が血管又はフロー領域を通過するとき、前方散乱、屈折、吸収及び光路長変動などの様々な要因が、後続の深度での光領域(及び信号)の予測不可能な変化を引き起こす。フローの領域の下側から来る後方散乱光(従って信号)は、上方からの光領域及び信号の変化を継承するため、後方散乱光のレベルや上記の妨害により与えられる変化によって誤ったモーションコントラスト信号を生じることがある。これらの性質が変化し、測定毎に変化するので、これらの変化を定量化又は修正することは非常に困難である。
【0015】
図1は、プロジェクション・アーチファクトを示すOCTA―Bスキャンの例示的な画像を示す。
図1では、いくつかのプロジェクション・アーチファクトが矢印で示されている。
図1はさらに、内境界膜(ILM)及び網膜色素上皮(RPE)を示す。
図1は、ヒト網膜層におけるOCTA信号を示す。矢印は異なる網膜レベルでのプロジェクション・アーチファクトを示すが、血管の真の位置は上の網膜にある。従って、プロジェクション・アーチファクトを取り除かずに行われる定量分析は、誤解を招くか、不正確であるか、又は少なくとも最適ではない。
【0016】
プロジェクション・アーチファクトを低減する従来の方法が開示されており、二次元(2D)画像処理に基づいている(例えば、Yali Jia et al. "Quantitative Optical Coherence Tomography Angiography of Choroidal Neovascularization in Age-Related Macular Degeneration," Ophthalmology, July 2014、及びAnqi Zhang et al. "Minimizing Projection Artifacts for Accurate Presentation of Choroidal Neovascularization in OCT Micro- Angiography," Biomed Opt Exp, Sep 2015を参照)。これらの方法では、プロジェクション・アーチファクトを減少させる前に網膜層の分割(segmentation)が必要である。これは、大きな制約となり得る。なぜなら、病理学的組織の分割は不正確になることがあるからである。さらに、三次元的な視覚化及び分析は、これらのアプローチでは実現可能ではない。
【0017】
プロジェクション・アーチファクトを三次元方式で低減する方法が提案された(Miao Zhang et al. "Projection-resolved optical coherence tomographic angiography," Biomed Opt Exp, Mar 2016を参照)。しかし、それは単純な観察基準を使用し、疑わしいアーチファクトを完全に除去し、網膜及び脈絡膜の両方の層において血管破損及び大きな陰影を引き起こす。従って、より良好な視覚化及び定量的測定のためには、血管ネットワークの完全性を維持しながら、特に三次元方式でOCTAボリューム中のアーチファクトを低減する方法及び装置が必要とされる。
【0018】
シャドーイング・アーチファクトは、散乱不透明又は妨害の吸収の後にOCT信号が減衰されるときに生じる。OCT信号がないか、又は低いと、OCTA信号がないか、又は低くなる。これらのアーチファクトは、網膜上皮(浮腫)及び白内障などの患者の病状に起因する可能性がある。アーチファクトはまた、上部組織層における強い光吸収に起因し得る。シャドーイング効果を緩和するために、いくつかの撮像技術及び処理技術を適用することができる。OCTAのための続く画像処理及び分析は、シャドーイング効果を相殺するようにそれに応じて調整することができる。
【0019】
もう一つのアーチファクトはノイズである。システムノイズ、及びOCT入射光強度の変動は、流れのない静的組織の位置においても高いOCTA信号をもたらす可能性がある。OCTAノイズ又は偽陽性フローは、その短いセグメント及び隣接する構造化された血管からの隔離によって視覚的に識別することができる。しかし、ノイズの存在は、その後の小さな毛細管の定量化及び視覚化に影響を及ぼす。
【0020】
全体として、これらのアーチファクト又はこれらの異なる組み合わせは、OCTAの結果の臨床的有用性を著しく低下させ、誤った結論につながる可能性がある。本発明のいくつかの実施形態は、これらの課題を緩和し、得られたOCTA画像におけるアーチファクトの数を減らすための解決策を提供する。
【0021】
OCTAボリュームデータは、フローに関連しない人工信号からなることがある。プロジェクション・アーチファクト、シャドーイング、及びノイズを含む要因によって引き起こされるOCTAデータのエラーは、いくつかの実施形態及び本開示で論じられるいくつかの方法及び技術によって検出及び低減することができる。このアーチファクトの減少は、網膜微小血管系の視覚化の画像品質を向上させ、血流に関するその後の定量的測定の精度を改善させることができる。
【0022】
OCTAアーチファクトを低減するために使用される方法は、OCT及びOCTA三次元ボリュームの両方、二次元平面(Bスキャン)、及び一次元ライン(Aライン)データを処理するために一般化することができる。1つ又は複数の処理方法を適用してOCTA三次元ボリューム内のアーチファクトを減少させた後、アーチファクトを減らしたボリュームを真の三次元視覚化に使用することができる。他の実施形態では、アーチファクトを低減したボリュームを使用して二次元の正面(en face)投影画像を生成することができる。正面画像を生成する方法は、以前の出願で開示されている。例えば、John Davis et alによる、米国特許第8781214号(2014年7月)「Enhanced imaging for optical coherence tomography」に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
いくつかの実施形態では、OCTAデータは、前処理された原信号及びアーチファクト信号に対して異なる色スキームを使用することによって三次元及び/又は二次元で視覚化することができる。例えば、真の信号を持つボクセル/ピクセルはグレースケールで色分けされ、プロジェクション・アーチファクトは赤で色分けされ、陰影アーチファクトは青で色分けされる。
【0024】
さらに、アーチファクトが減少したOCTAボリュームから血管パラメータを計算することができる。いくつかの実施形態では、定量的測定は、3Dボリュームベースのパラメータ及び/又は2Dの正面(en face)画像ベースのパラメータを用いて計算することができる。パラメータは、これらに限定されるものではないが、流体の量/面積、非流体の量/面積、流量密度(体積/面積/長さ密度)、血管の内径、血管の分岐、及び蛇行を含む。
【0025】
<プロジェクション・アーチファクト>
図1及び
図2A~
図2Dは、Bスキャン(
図1)及び正面(en face)画像(
図2A~2D)によって示されるように、臨床評価に基づく網膜病変のない正常被検者におけるプロジェクション・アーチファクトを示す。
図2A~
図2Dは、正常な被検者のOCTA撮像の例示的な画像を示しており、
図2Aは、4つの網膜層の正面(en face)画像、表層毛細管叢を示し、
図2Bは、深層毛細血管叢を示し、
図2Cは、網膜外層を示し、
図2Dは脈絡膜毛細血管を示す。
図2A~2Dは、プロジェクション・アーチファクトが減少する前において前処理されたOCTAボリュームから生成されたものである。
【0026】
プロジェクション・アーチファクトは、
図1の矢印によって示されるように、異なる複数の網膜層に出現する。浅層の毛細血管叢(
図2A)からのプロジェクション・アーチファクトが最も顕著であり、深層毛細血管叢(
図2B)、網膜外層(
図2C)及び脈絡膜毛細血管層(
図2D)において、実際には毛細血管は存在しなくても、近似の血管パターンを有する偽OCTA信号を生じさせる。
【0027】
図3は、OCTA三次元ボリューム内のアーチファクトを低減するためのステップを示す例示的なフロー図を示す。OCTAイメージャ(ブロック301)は、先に出願された出願に記載された方法を使用して、OCTデータからOCTAボリュームを生成する。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるYali Jia et al. "Split-spectrum amplitude-decorrelation angiography with optical coherence tomography," Optics Express, Feb 2012を参照されたい。別の実施形態では、OCTイメージャを使用して、付加的な情報のための構造的OCTボリュームを提供することもできる。
図3に示すように、OCTA及びOCTイメージャは、単一のOCT/OCTAイメージャ301に結合されることも可能である。
【0028】
OCTAボリューム及びOCTボリュームデータ302は、まず、オプションの前処理プロセッサ303に渡される。前処理プロセッサ303は、バックグラウンドノイズを超えるOCT又はOCTA信号を有する領域をまず検出する。バックグラウンド領域は、処理時間を短縮するために後の処理ステップで除外することができる。次に、各OCT/OCTA-Aライン(深さ方向)に沿ってランドマークが検出される。これらのランドマークは、一次元のAライン信号プロファイルに沿ったピーク及び谷(valley)を含み、しばしば網膜層境界に関連付けられる。例えば、内境界膜(ILM)、内側及び外側の光受容体セグメント(IS/OS)の接合部、及び網膜色素上皮(RPE)は、通常、より強いOCT強度を有し、OCT-Aラインに沿ったピーク点として現れる。
【0029】
これらのランドマークの位置又は深度は、隣接するランドマーク(Aライン及びBスキャンを横切って)を平均化することによってさらに高精度なものとし得る。次に、すべてのAスキャンを、選択されたランドマークに深度を合わせるために、平坦化が実行される。これは、網膜セグメンテーションのために行われる一般的なステップであり、既に公知である。例えば、Mona K. Garvin et al. "Automated 3-D Intraretinal Layer Segmentation of Macular Spectral -Domain Optical Coherence Tomography Images," IEEE Trans Med Imaging, Sep 2009.を参照されたい。
【0030】
オプションの前処理プロセッサ303が適用されない場合、OCTA及びOCTボリューム302は、特徴抽出プロセッサ304に渡される。オプションの前処理プロセッサ303が適用される場合、前処理されたOCTA及びOCTボリュームは、前処理プロセッサ303からの出力(例えば、検出されたランドマーク)とともに、特徴抽出プロセッサ304に渡される。特徴抽出処理部304は、各基本単位の特徴を抽出する。基本単位は、単一のボクセル又は少数のボクセルによって形成される局所化された領域であってもよい。これらの特徴は、現在の基本単位の空間的な位置又は深さ、前処理されたOCT及びOCTA強度、後部組織層上への前部の真のフローの投影を考慮するプロジェクション・アーチファクトの性質に基づく特徴、血管の内径に関する情報などを含むが、特にこれらに限定されるものではない。
【0031】
現在の基本単位の空間的位置又は深さを含む特徴抽出は、例えば、ランドマークまでの距離(ピクセル又はミクロンで測定される)を含むことができる。そのような抽出はまた、ランドマークまでの相対距離(RD)を含むことができ、例えば、現在の基本単位(zcurrent)からランドマークAまでの相対距離(ZA)は、ランドマークAとBとの間の距離(ZB)で正規化することによって計算することができる。これは、以下の関係式によって与えられる。
【0032】
【0033】
前処理されたOCT及びOCTA強度を含む特徴抽出は、現在の基本単位のOCT強度、及び現在の基本単位のOCTA強度を含むことができる。更に、現在の基本単位からのx、y、z方向の各々におけるOCT強度の微分値(1次、2次、...)、及び現在の基本単位からのx、y、z方向の各々におけるOCTA強度の微分値(1次、2次、...)が含まれていてもよい。
【0034】
さらに、隣接する基本単位の強度及び微分値を使用することができる。特徴として含まれる隣接する基本単位のカーネルサイズは固定することができる。例えば、1つの単一ボクセルの基本単位については、3×3×3カーネル内の26個のボクセルを近傍として定義することができる。カーネルのサイズも動的に決定できる。例えば、より高いOCTA強度を有するボクセルにより大きいカーネルサイズを割り当てることができる。
【0035】
後部組織層への前部の真のフローの投影を考慮するためのプロジェクション・アーチファクトの性質に基づく特徴抽出は、次式で表される、Aラインに沿った深さ積算OCTA強度を含むことができる。
【0036】
【0037】
ここで、深さは、前部と後部の間の0から指標付けされる。このような特徴はまた、次式で表される、Aラインに沿った最大OCTA強度を含むことができる。
【0038】
【0039】
このような特徴はまた、Aラインに沿った最大OCTA強度が検出される同じ深さ位置における対応するOCT強度を含むことができる。これらの特徴のさらに別の例は、OCTAmax(z)の一次元(ID)の微分値を含む。
【0040】
特徴抽出は、血管の内径に関する情報も含むことができる。このような特徴には、x方向における現在の基本単位のOCTA強度の半分を有するクローゼット基本単位までの距離、y方向における現在の基本単位のOCTA強度の半分を有するクローゼット基本単位までのy方向の距離、+z方向における現在の基本単位のOCTA強度の半分を有するクローゼット基本単位までの距離、又は-z方向における現在の基本単位のOCTA強度の半分を有するクローゼット基本単位までの距離を含む。特徴が抽出された後、特徴の一部をさらに結合して単一の特徴にすることができる。
【0041】
特徴が抽出された後、抽出された特徴は分類器に渡される(ブロック305)。分類器は、十分に大きなデータセットで訓練され、各OCTAボクセルは人間の専門家によって手作業で分類され、プロジェクション・アーチファクトを含む様々なタイプのアーチファクトの存在を示す。分類器の訓練方法の詳細は、以下の[分類器の訓練]の欄と、
図7で説明している。いくつかの実施形態では、分類器は、観察基準で設計することもできる。次に分類器は、分類カテゴリの1つに属する各基本単位の確率又はスコアを返信する。例えば、純粋に真のフロー信号、純粋なアーチファクト信号、真のフローとアーチファクトの両方の混合物の3つのカテゴリを使用することができる。いくつかの実施形態では、分類器は、確率を提供することなく、どのカテゴリに属するかを予測するハード分類を返信することができる。
【0042】
次に、分類器によって提供される確率ボリューム又は分類結果は、変換処理装置に渡される(ブロック306)。真偽信号の混合が頻繁に生じるプロジェクション・アーチファクトの複雑さに起因して、成功したアーチファクト低減のため、各基本単位における真の信号の割合を決定する必要がある。従って、処理装置は確率又は分類の結果を、各基本単位の真の信号の割合に変換する。変換関数は、ファントム研究によって、又は臨床的理解を満たすために人間の網膜スキャンデータを最適化することによって経験的に決定された線形変換とすることができる。例えば、次の式のように行うことができる。
【0043】
【0044】
ここで、Percentagetrueは基本単位内の真の信号の割合であり、Probtrue及びProbmixedは、それぞれ、純粋な真のフロー信号グループに属する確率と、混合信号グループに属する確率である。パラメータw0、w1、及びw2は線形加重係数であり、経験的に決定することができる。
【0045】
割合が基本単位ごとに計算されると、割合値は基本単位のすべてのボクセルに割り当てられる。最後に、次式に示すように、各ボクセルの前処理されたOCTAデータ(OCTApre)をその割合に掛けることによってアーチファクトが低減される(ブロック307)。
【0046】
【0047】
こうして、処理後の、アーチファクトが減少したOCTAボリューム(OCTApost)が得られる。次に、減少後のOCTAデータは、表示に使用され得る(ブロック308)。表示は、ボリュームレンダリングを伴う三次元視覚化、正面(en face)投影画像の二次元視覚化、及びBスキャンを含むが、これに限定されない。アーチファクト低減されたOCTAデータは、フロー解析又は血管系関連の定量的パラメータを計算するためのさらなる解析(ブロック309)にも使用することができる。
【0048】
図4は、プロジェクション・アーチファクトが低減された後の、
図1と同じ位置におけるOCTA‐Bスキャンの例示的な画像を示す。矢印は、処理後にプロジェクション・アーチファクトが減少するいくつかの位置を示す。前処理されたBスキャン(
図1)に現れる細長い内網膜血管は短縮される。この円形形状の血管は、その物理的寸法とより一致している。IS/OS及びRPE層のプロジェクション・アーチファクトも大幅に削減される。
【0049】
図5Aから
図5Dは、プロジェクション・アーチファクトが低減された後の、
図2A~2Dに示された同じ正常被写体のOCTA結像の例示的な画像を示す。4つの正面(en face)画像は、表面毛細血管叢(
図5A)、深層毛細血管叢(
図5B)、網膜外層(
図5C)、及び脈絡膜毛細血管(
図5D)を含む。
図5A~
図5Dは、
図2A~
図2Dの前処理された正面(en face)画像と比較して、後処理された正面(en face)画像を示す。複製された血管ネットワークは、底面層から除去され、残りのネットワークは保存され、良好に接続される。
【0050】
図6A及び
図6Bは、OCTAボリュームにおいてプロジェクション・アーチファクトが低減された前(
図6A)と後(
図6B)における脈絡膜血管新生(CNV)を有する加齢性黄斑変性(AMD)患者の網膜外層の例示的な画像を示す。処理後、プロジェクション・アーチファクトが減少し、CNVネットワークがより良好に視覚化される(
図8)。CNV境界もまた、アウトライン化が容易であり、より信頼性の高い患者フォローアップが治療結果を評価することを可能にする。
【0051】
<分類器の訓練>
図7は、プロジェクション・アーチファクト低減のために使用される分類器を訓練するためのステップを示すブロック図を示す。ブロック305に示すプロジェクション・アーチファクト低減プロセスで使用される分類器は、十分に大量のデータで事前に訓練することができる。
図7は、分類器を訓練するためのステップを示す例示的な流れ図である。まず、ブロック701において、様々な年齢、性別及び網膜病変を有する対象からの共取得OCT及びOCTAボリュームデータを有する訓練データセットが、OCT/OCTAイメージャによって収集される。
【0052】
Aラインは、正常な被検者のOCT/OCTAボリュームからランダムに選択され、病理学的患者のスキャンにおいて病理領域内でランダムに選択される。次に、ブロック702において、人間の専門家がこれらのAラインのすべての基本単位を等級付けする。各基本単位にはカテゴリが付いている。例えば、カテゴリは、純粋なフロー信号、純粋なプロジェクション・アーチファクト信号、混合信号、ノイズ、及び未知の信号を含むことができる。ブロック707で、データセットのサブセットがテストデータセットとして使用され、トレーニングプロセス中には使用されない。
【0053】
OCT及びOCTAボリュームデータは、前のセクションで説明したように、ブロック703の前処理及び特徴抽出ステップを経る。次に、ブロック704において、ボリュームデータ、特徴、及び人間による等級付けラベルが分類器に渡される。例えば、機械学習モデルは、ロジスティック回帰、ランダムフォレストなどのアンサンブルモデル、ナイーブベイズ、サポートベクターマシン、又は異なるモデルの組み合わせに基づくことができる。訓練誤差は、ブロック705における訓練プロセスの間に計算される。分類器が訓練された後、テストデータセット(ブロック707)が分類器に入力され、ブロック706でテストエラーが計算される。次いで、ブロック708において、訓練エラー(ブロック705)及びテストエラー(ブロック706)が分類器を精緻化するために使用される。このステップの間、分類器のパラメータ及び特徴が、訓練データセット及びテストデータセットからの誤差のバランスを取りながら最小化するように改良される。
【0054】
本明細書に記載の方法は、OCTAボリューム内のプロジェクション・アーチファクトを低減するために適用されるが、ノイズ及びシャドーイング・アーチファクトなどの他のアーチファクトも、同じ処理によって低減され得る。この方法は、シャドーイング・アーチファクトのようなOCTボリューム内のアーチファクトを検出するためにも適用することができる。
【0055】
様々な態様及び実施形態が本明細書に開示されているが、他の態様及び実施形態は、当業者には明らかであろう。本明細書に開示された様々な態様及び実施形態は、例示のためのものであり、本発明の真の範囲及び精神は、以下の請求項によって示されている。当業者は、本明細書に記載の方法及び組成物の特定の実施形態に対する多くの均等物を、日常的な実験のみを用いて認識するか、又は確認することができるであろう。そのような等価物は、請求項に包含されることが意図される。