(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】反射型マスクブランク、反射型マスクの製造方法、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/54 20120101AFI20221213BHJP
G03F 1/24 20120101ALI20221213BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G03F1/54
G03F1/24
G03F7/20 503
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2018546378
(86)(22)【出願日】2017-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2017037685
(87)【国際公開番号】W WO2018074512
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-03-26
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2016206953
(32)【優先日】2016-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】池邊 洋平
(72)【発明者】
【氏名】笑喜 勉
【合議体】
【審判長】瀬川 勝久
【審判官】松川 直樹
【審判官】加々美 一恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007-138747(WO,A1)
【文献】特開2008-122698(JP,A)
【文献】特開2007-188069(JP,A)
【文献】特開2002-261005(JP,A)
【文献】特開2013-218301(JP,A)
【文献】特開2006-78825(JP,A)
【文献】特開2008-268980(JP,A)
【文献】特開2013-83933(JP,A)
【文献】特開平8-184955(JP,A)
【文献】特開2006-324268(JP,A)
【文献】特開2006-173502(JP,A)
【文献】特開昭59-50443(JP,A)
【文献】特開2002-299227(JP,A)
【文献】特開平7-114173(JP,A)
【文献】特開平3-34414(JP,A)
【文献】特開2015-133514(JP,A)
【文献】特開2014-53576(JP,A)
【文献】特開2012-209481(JP,A)
【文献】特開2016-139675(JP,A)
【文献】特開2016-126319(JP,A)
【文献】特開2016-167052(JP,A)
【文献】特開2016-63020(JP,A)
【文献】特開2016-46370(JP,A)
【文献】特開2013-210424(JP,A)
【文献】特開2005-236074(JP,A)
【文献】特許第5971122(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/027
H01L21/30
G03F1/00-1/86
G03F7/20-7/24
G03F9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、多層反射膜、吸収体膜及びエッチングマスク膜をこの順で有する反射型マスクブランクであって、
前記吸収体膜は、ニッケル(Ni)を含む材料からなり、
前記エッチングマスク膜は、クロム(Cr)を含む材料からなることを特徴とする反射型マスクブランク。
【請求項2】
前記エッチングマスク膜は、クロム(Cr)を含み、実質的に酸素(O)を含有しない材料からなることを特徴とする請求項1に記載の反射型マスクブランク。
【請求項3】
前記エッチングマスク膜の膜厚は、3nm以上15nm以下であることを特徴とする請求項
2に記載の反射型マスクブランク。
【請求項4】
前記吸収体膜は、その表層にニッケル化合物の酸化層を有し、
前記酸化層の厚さは、1nm以上5nm以下であることを特徴とする請求項1乃至
3の何れか一つに記載の反射型マスクブランク。
【請求項5】
前記吸収体膜は、前記ニッケル(Ni)に、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、テルル(Te)、パラジウム(Pd)、タンタル(Ta)及びタングステン(W)のうち少なくとも1つを添加したニッケル化合物を含む材料からなることを特徴とする請求項1乃至
4の何れか一つに記載の反射型マスクブランク。
【請求項6】
前記ニッケル化合物のNi含有比率は、50原子%以上100原子%未満であることを特徴とする請求項
4又は
5に記載の反射型マスクブランク。
【請求項7】
前記吸収体膜は、位相シフト機能を有することを特徴とする請求項1乃至
6の何れか一つに記載の反射型マスクブランク。
【請求項8】
前記多層反射膜と吸収体膜との間に保護膜を有し、
前記保護膜は、ルテニウム(Ru)を含む材料からなることを特徴とする請求項1乃至
7の何れか一つに記載の反射型マスクブランク。
【請求項9】
請求項
1乃至
8の何れか一つに記載の反射型マスクブランクの前記エッチングマスク膜上にレジストパターンを形成し
、
前記レジストパターンをマスクにして、塩素系ガスと酸素ガスを含むドライエッチングガスにより前記エッチングマスク膜をドライエッチングでパターニングしてエッチングマスクパターンを形成し、
前記エッチングマスクパターンをマスクにして、実質的に酸素を含まない塩素系ガスを含むドライエッチングガスにより前記吸収体膜をドライエッチングでパターニングして吸収体パターンを形成することを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【請求項10】
前記吸収体パターンを形成した後、前記エッチングマスクパターンを剥離すること特徴とする請求項
9に記載の反射型マスクの製造方法。
【請求項11】
EUV光を発する露光光源を有する露光装置に、請求項
9又は10に記載の反射型マスクの製造方法により得られた反射型マスクをセットし、被転写基板上に形成されているレジスト膜に転写パターンを転写する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造などに使用される露光用マスクを製造するための原版である反射型マスクブランクに関する。また、本発明は、この反射型マスクブランクを用いて製造される反射型マスクの製造方法、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造における露光装置の光源の種類は、波長436nmのg線、同365nmのi線、同248nmのKrFレーザ、及び同193nmのArFレーザなどがある。より微細なパターン転写を実現するため、露光装置の光源の波長は徐々に短くなっている。更に微細なパターン転写を実現するため、波長が13.5nm近傍の極端紫外線(EUV:Extreme Ultra Violet)を用いたEUVリソグラフィが開発されている。EUVリソグラフィでは、EUV光に対して透明な材料が少ないことから、反射型のマスクが用いられる。この反射型マスクの基本構造は、低熱膨張基板上に露光光を反射する多層反射膜及び多層反射膜を保護するための保護膜が形成され、保護膜の上に、所望の転写用パターンが形成された構造である。また、反射型マスク(反射マスク)の代表的なものとして、EUV光を十分吸収する比較的厚い吸収体パターン(転写用パターン)を有するバイナリー型反射マスクと、EUV光を光吸収により減光させ、且つ多層反射膜からの反射光に対してほぼ位相が反転(約180°の位相反転)した反射光を発生させる比較的薄い吸収体パターン(転写用パターン)を有する位相シフト型反射マスク(ハーフトーン位相シフト型反射マスク)がある。位相シフト型反射マスク(ハーフトーン位相シフト型反射マスク)は、透過型光位相シフトマスクと同様に、位相シフト効果によって高い転写光学像コントラストが得られるので、解像度を向上させることができる。また、位相シフト型反射マスクの吸収体パターン(位相シフトパターン)の膜厚が薄いことから、精度良く微細な位相シフトパターンを形成できる。
【0003】
EUVリソグラフィでは、光透過率の関係から、多数の反射鏡からなる投影光学系が用いられている。そして、反射型マスクに対してEUV光を斜めから入射させることにより、これらの複数の反射鏡が投影光(露光光)を遮らないようにしている。入射角は、現在、反射マスク基板垂直面に対して6°とすることが主流である。投影光学系の開口数(NA)の向上とともに、より斜入射となる角度(8°程度)にする方向で検討が進められている。
【0004】
EUVリソグラフィでは、露光光が斜めから入射されるため、シャドーイング効果と呼ばれる固有の問題がある。シャドーイング効果とは、立体構造を持つ吸収体パターンへ露光光が斜めから入射されることにより影ができることにより、転写形成されるパターンの寸法及び/又は位置が変わる現象のことである。吸収体パターンの立体構造が壁となって日陰側に影ができ、転写形成されるパターンの寸法及び/又は位置が変わる。例えば、配置される吸収体パターンの向きと、斜入射光の入射方向との関係により、斜入射光の入射方向に対する吸収体パターンの向きが異なると、転写パターンの寸法と位置に差が生じ、転写精度が低下する。
【0005】
このようなEUVリソグラフィ用の反射型マスク及びこれを作製するためのマスクブランクに関連する技術が特許文献1から特許文献5に開示されている。また、特許文献1及び特許文献2には、シャドーイング効果について、開示されている。従来、EUVリソグラフィ用の反射型マスクとして位相シフト型反射マスクを用いることが提案されている。位相シフト型反射マスクの場合には、バイナリー型反射マスクの場合よりも位相シフトパターンの膜厚を比較的薄くすることができる。そのため、シャドーイング効果による転写精度の低下の抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-080659号公報
【文献】特開2009-212220号公報
【文献】特開2005-268750号公報
【文献】特開2004-39884号公報
【文献】特許第5009649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
パターンを微細にするほど、及びパターン寸法及びパターン位置の精度を高めるほど半導体装置の電気的特性及び性能が上がり、集積度を向上することができ、チップサイズを低減できる。そのため、EUVリソグラフィには従来よりも一段高い高精度微細寸法パターン転写性能が求められている。現在、hp16nm(half pitch 16nm)世代対応の超微細高精度パターン形成が要求されている。このような要求に対し、シャドーイング効果を小さくするために、反射型マスクの吸収体パターンの更なる薄膜化が求められている。特に、EUV露光の場合において、吸収体膜(位相シフト膜)の膜厚を50nm以下とすることが要求されている。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑み、反射型マスクのシャドーイング効果をより低減するとともに、微細で高精度な吸収体パターンを形成できる反射型マスクブランクを提供することを目的とする。また、この反射型マスクブランクを用いて作製される反射型マスクを提供すること、及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0010】
(構成1)
基板上に、多層反射膜、吸収体膜及びエッチングマスク膜をこの順で有する反射型マスクブランクであって、
前記吸収体膜は、ニッケル(Ni)を含む材料からなり、
前記エッチングマスク膜は、クロム(Cr)を含む材料又はケイ素(Si)を含む材料からなることを特徴とする反射型マスクブランク。
【0011】
(構成2)
前記エッチングマスク膜は、クロム(Cr)を含み、実質的に酸素(O)を含有しない材料からなることを特徴とする構成1に記載の反射型マスクブランク。
【0012】
(構成3)
前記多層反射膜と吸収体膜との間に保護膜を有し、
前記保護膜は、ルテニウム(Ru)を含む材料からなることを特徴とする構成1又は2に記載の反射型マスクブランク。
【0013】
(構成4)
構成1乃至3の何れか一つに記載の反射型マスクブランクの前記エッチングマスク膜上にレジストパターンを形成し、前記エッチングマスク膜は、クロム(Cr)を含む材料からなり、
前記レジストパターンをマスクにして、塩素系ガスと酸素ガスを含むドライエッチングガスにより前記エッチングマスク膜をドライエッチングでパターニングしてエッチングマスクパターンを形成し、
前記エッチングマスクパターンをマスクにして、実質的に酸素を含まない塩素系ガスを含むドライエッチングガスにより前記吸収体膜をドライエッチングでパターニングして吸収体パターンを形成することを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【0014】
(構成5)
構成1乃至3の何れか一つに記載の反射型マスクブランクの前記エッチングマスク膜上にレジストパターンを形成し、前記エッチングマスク膜は、ケイ素(Si)を含む材料からなり、
前記レジストパターンをマスクにして、フッ素含有ガスを含むドライエッチングガスにより前記エッチングマスク膜をドライエッチングでパターニングしてエッチングマスクパターンを形成し、
前記エッチングマスクパターンをマスクにして、実質的に酸素を含まない塩素系ガスを含むドライエッチングガスにより前記吸収体膜をドライエッチングでパターニングして吸収体パターンを形成することを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【0015】
(構成6)
前記吸収体パターンを形成した後、前記エッチングマスクパターンを剥離すること特徴とする構成4又は5に記載の反射型マスクの製造方法。
【0016】
(構成7)
EUV光を発する露光光源を有する露光装置に、構成4乃至6の何れか一つに記載の反射型マスクの製造方法により得られた反射型マスクをセットし、被転写基板上に形成されているレジスト膜に転写パターンを転写する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の反射型マスクブランク(これによって作製される反射型マスク)によれば、吸収体膜の膜厚を薄くすることができて、シャドーイング効果を低減でき、且つ微細で高精度な吸収体パターンを、側壁ラフネスを少なく、しかも安定した断面形状で形成できる。したがって、この構造の反射型マスクブランクを用いて製造された反射型マスクは、マスク上に形成される吸収体パターン自体を微細で高精度に形成できるとともに、シャドーイングによる転写時の精度低下を防止できる。また、この反射型マスクを用いてEUVリソグラフィを行うことにより、微細で高精度な半導体装置の製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の反射型マスクブランクの概略構成を説明するための要部断面模式図である。
【
図2】反射型マスクブランクから反射型マスクを作製する工程を要部断面模式図にて示した工程図である。
【
図3】吸収体膜の厚さと波長13.5nmの光に対する反射率との関係を示す図である。
【
図4】吸収体膜の厚さと波長13.5nmの光における位相差との関係を示す図である。
【
図5】各膜厚で成膜された吸収体膜を有する基板のEUV反射率スペクトルを示す図である。
【
図6】Ni膜で形成された吸収体膜とTaBN膜で形成された吸収体膜のHVバイアスを示す図である。
【
図7】比較例1の反射型マスクブランクを用いて反射型マスクの作製する場合の工程を、要部断面模式図にて示した工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。なお、図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付して、その説明を簡略化ないし省略することがある。
【0020】
<反射型マスクブランクの構成及びその製造方法>
図1は、本発明の反射型マスクブランクの構成を説明するための要部断面模式図である。
図1に示されるように、反射型マスクブランク100は、基板1と、多層反射膜2と、保護膜3と、EUV光を吸収する吸収体膜4と、エッチングマスク膜(エッチング用ハードマスク)5とを有し、これらがこの順で積層される。多層反射膜2は、第1主表面(表面)側に形成され、露光光であるEUV光を反射する。保護膜3は、多層反射膜2を保護するために設けられる。保護膜3は、後述する吸収体膜4をパターニングする際に使用するエッチャント、及び洗浄液に対して耐性を有する材料で形成される。エッチングマスク膜5は、吸収体膜4をエッチングする際のマスクとなる。また、基板1の第2主表面(裏面)側には、通常、静電チャック用の裏面導電膜6が形成される。
【0021】
以下、各層ごとに説明をする。
【0022】
<<基板>>
基板1としては、EUV光による露光時の熱による吸収体パターンの歪みを防止するため、0±5ppb/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するものが好ましく用いられる。この範囲の低熱膨張係数を有する素材として、例えば、SiO2-TiO2系ガラス、多成分系ガラスセラミックス等を用いることができる。
【0023】
基板1の転写パターン(後述の吸収体膜4がこれを構成する)が形成される側の第1主表面は、少なくともパターン転写精度、位置精度を得る観点から高平坦度となるように表面加工されている。EUV露光の場合、基板1の転写パターンが形成される側の主表面の132mm×132mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.03μm以下である。また、第1主表面の反対側の第2主表面は、露光装置にセットするときに静電チャックされる面である。第2主表面は、132mm×132mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.03μm以下である。なお、反射型マスクブランク100における第2主表面側の平坦度は、142mm×142mmの領域において、平坦度が1μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.3μm以下である。
【0024】
また、基板1の表面平滑度の高さも極めて重要な項目である。転写用位相シフトパターンが形成される第1主表面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.1nm以下であることが好ましい。なお、表面平滑度は、原子間力顕微鏡で測定することができる。
【0025】
更に、基板1は、その上に形成される膜(多層反射膜2など)の膜応力による変形を防止するために、高い剛性を有していることが好ましい。特に、基板1は、65GPa以上の高いヤング率を有していることが好ましい。
【0026】
<<多層反射膜>>
多層反射膜2は、反射型マスク200において、EUV光を反射する機能を付与するものである。多層反射膜2は、屈折率の異なる元素を主成分とする各層が周期的に積層された多層膜の構成を有する。
【0027】
一般的に、多層反射膜2として、高屈折率材料である軽元素又はその化合物の薄膜(高屈折率層)と、低屈折率材料である重元素又はその化合物の薄膜(低屈折率層)とが交互に40から60周期程度積層された多層膜が用いられる。多層膜は、基板1側から高屈折率層と低屈折率層をこの順に積層した高屈折率層/低屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層してもよいし、基板1側から低屈折率層と高屈折率層をこの順に積層した低屈折率層/高屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層してもよい。なお、多層反射膜2の最表面の層(即ち多層反射膜2の基板1と反対側の表面層)は、高屈折率層であることが好ましい。上述の多層膜において、基板1に、高屈折率層と低屈折率層をこの順に積層した積層構造(高屈折率層/低屈折率層)を1周期として複数周期積層する場合、最上層が低屈折率層となる。多層反射膜2の最表面の低屈折率層は、容易に酸化されてしまうので、多層反射膜2の反射率が減少する。反射率の減少を避けるため、最上層の低屈折率層上に、高屈折率層を更に形成して多層反射膜2とすることが好ましい。一方、上述の多層膜において、基板1に、低屈折率層と高屈折率層をこの順に積層した積層構造(低屈折率層/高屈折率層)を1周期として、複数周期積層する場合は、最上層が高屈折率層となる。この場合には、高屈折率層を更に形成する必要がない。
【0028】
本実施形態において、高屈折率層としては、ケイ素(Si)を含む層が採用される。Siを含む材料としては、Si単体の他に、Siに、ボロン(B)、炭素(C)、窒素(N)、及び/又は酸素(O)を含むSi化合物を用いることができる。Siを含む層を高屈折率層として使用することによって、EUV光の反射率に優れたEUVリソグラフィ用反射型マスク200が得られる。また、本実施形態において、基板1としてはガラス基板が好ましく用いられる。Siはガラス基板との密着性においても優れている。また、低屈折率層としては、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、及び白金(Pt)から選ばれる金属単体、又はこれらの合金が用いられる。例えば波長13nmから14nmのEUV光に対する多層反射膜2としては、好ましくはMo膜とSi膜を交互に40から60周期程度積層したMo/Si周期積層膜が用いられる。なお、多層反射膜2の最上層である高屈折率層をケイ素(Si)で形成し、当該最上層(Si)とRu系保護膜3との間に、ケイ素と酸素とを含むケイ素酸化物層を形成することができる。ケイ素酸化物層を形成することにより、反射型マスク200の洗浄耐性を向上させることができる。
【0029】
上述の多層反射膜2の単独での反射率は通常65%以上であり、上限は通常73%である。なお、多層反射膜2の各構成層の厚さ、及び周期は、露光波長により適宜選択することができ、例えばブラッグ反射の法則を満たすように選択することができる。多層反射膜2において、高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ複数存在する。複数の高屈折率層の厚さが同じである必要はなく、複数の低屈折率層の厚さが同じである必要はない。また、多層反射膜2の最表面のSi層の膜厚は、反射率を低下させない範囲で調整することができる。最表面のSi(高屈折率層)の膜厚は、3nmから10nmとすることができる。
【0030】
多層反射膜2の形成方法は当該技術分野において公知である。例えばイオンビームスパッタリング法により、多層反射膜2の各層を成膜することができる。上述したMo/Si周期多層膜の場合、例えばイオンビームスパッタリング法により、先ずSiターゲットを用いて厚さ4nm程度のSi膜を基板1上に成膜し、その後Moターゲットを用いて厚さ3nm程度のMo膜を成膜する。このSi膜/Mo膜を1周期として、40から60周期積層することにより、多層反射膜2を形成する。なお、多層反射膜2の最表面の層はSi層であることが好ましい。
【0031】
<<保護膜>>
保護膜3は、後述する反射型マスク200の製造工程におけるドライエッチング及び洗浄から多層反射膜2を保護するために、多層反射膜2の上に形成される。また、電子線(EB)を用いた位相シフトパターンの黒欠陥修正の際に、保護膜3によって多層反射膜2を保護することができる。
図1に、保護膜3が1層の場合を示す。保護膜3を、3層以上の積層構造とすることができる。例えば、保護膜3の最下層と最上層を、上記Ruを含有する物質からなる層とし、最下層と最上層との間に、Ru以外の金属、若しくは合金を介在させた構造とすることができる。保護膜3の材料としては、ルテニウムを主成分として含む材料、例えばRu金属単体、Ruにチタン(Ti)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ホウ素(B)、ランタン(La)、コバルト(Co)、レニウム(Re)などの金属を含有したRu合金を用いることができる。また、これらの保護膜3の材料は、窒素を更に含むことができる。これらの材料の中で、特にTiを含有したRu系保護膜を用いることが好ましい。Tiを含有したRu系保護膜を用いる場合には、多層反射膜2の表面からRu系保護膜への多層反射膜構成元素であるケイ素の拡散が小さくなる。そのため、マスク洗浄時の表面荒れが少なくなり、膜はがれも起こしにくくなるという特徴がある。表面荒れの低減は、EUV露光光に対する反射率低下防止に直結する。そのため、表面荒れの低減は、EUV露光の露光効率改善、及びスループット向上のために重要である。
【0032】
保護膜3の材料としてRu合金を用いる場合、Ru合金のRu含有比率は50原子%以上100原子%未満、好ましくは80原子%以上100原子%未満、更に好ましくは95原子%以上100原子%未満である。特に、Ru合金のRu含有比率が95原子%以上100原子%未満の場合には、保護膜3への多層反射膜構成元素(ケイ素)の拡散を抑えつつ、EUV光の反射率を十分確保することができる。更にこの保護膜3は、マスク洗浄耐性、吸収体膜4をエッチング加工した時のエッチングストッパ機能、及び多層反射膜経時変化防止の保護膜機能を兼ね備えることが可能となる。
【0033】
EUVリソグラフィの場合、露光光に対して透明な物質が少ないので、マスクパターン面への異物付着を防止するEUVペリクルが技術的に簡単ではない。このことから、ペリクルを用いないペリクルレス運用が主流となっている。また、EUVリソグラフィの場合、EUV露光によってマスクにカーボン膜が堆積したり、酸化膜が成長するといった露光コンタミネーションが起こる。そのため、EUV反射型マスク200を半導体装置の製造に使用している段階で、度々洗浄を行ってマスク上の異物及びコンタミネーションを除去する必要がある。このため、EUV反射型マスク200では、光リソグラフィ用の透過型マスクに比べて桁違いのマスク洗浄耐性が要求されている。Tiを含有したRu系保護膜を用いることにより、硫酸、硫酸過水(SPM)、アンモニア、アンモニア過水(APM)、OHラジカル洗浄水及び濃度が10ppm以下のオゾン水などの洗浄液に対する洗浄耐性を特に高くすることができる。そのため、EUV反射型マスク200に対するマスク洗浄耐性の要求を満たすことが可能となる。
【0034】
保護膜3の厚さは、その保護膜3としての機能を果たすことができる限り特に制限されない。EUV光の反射率の観点から、保護膜3の厚さは、好ましくは、1.0nmから8.0nm、より好ましくは、1.5nmから6.0nmである。
【0035】
保護膜3の形成方法として、公知の膜形成方法を特に制限なく採用することができる。保護膜3の形成方法の具体例として、スパッタリング法及びイオンビームスパッタリング法が挙げられる。
【0036】
<<吸収体膜>>
保護膜3の上に、EUV光を吸収するための吸収体膜4が形成される。吸収体膜4の材料としては、EUV光を吸収する機能を有し、ドライエッチングにより加工が可能な材料を用いる。本実施形態の吸収体膜4の材料として、ニッケル(Ni)単体又はNiを主成分として含むニッケル化合物を用いる。NiはTaに比べてEUV光の消衰係数が大きく、塩素(Cl)系ガスでドライエッチングすることが可能な材料である。Niの13.5nmにおける屈折率nは約0.948、消衰係数kは約0.073である。これに対して、従来の吸収体膜の材料の例であるTaBNの場合、屈折率nは約0.949、消衰係数kは約0.030である。
【0037】
ニッケル化合物としては、ニッケルに、ホウ素(B)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)、リン(P)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、テルル(Te)、パラジウム(Pd)、タンタル(Ta)及びタングステン(W)を添加した化合物が挙げられる。ニッケルに、これらの元素を添加することにより、エッチング速度を速めて加工性を向上させること、及び/又は洗浄耐性を向上させることができる。これらのニッケル化合物のNi含有比率は50原子%以上100原子%未満であることが好ましく、80原子%以上100原子%未満であることがより好ましい。
【0038】
上述のニッケル及びニッケル化合物を材料とする吸収体膜4は、公知の方法、例えばDCスパッタリング法、又はRFスパッタリング法などのマグネトロンスパッタリング法により形成することができる。
【0039】
吸収体膜4は、バイナリー型の反射型マスクブランク100のための、EUV光の吸収を目的とした吸収体膜4であることができる。また、吸収体膜4は、位相シフト型の反射型マスクブランク100のための、EUV光の位相差を考慮した位相シフト機能を有する吸収体膜4であることができる。
【0040】
EUV光の吸収を目的とした吸収体膜4の場合、吸収体膜4に対するEUV光の反射率が2%以下となるように、膜厚が設定される。
図3に示すように、吸収体膜4をNi膜で形成した場合、膜厚が30nm、34.8nm及び39.5nmで、13.5nmでの反射率が各々1.7%、1.1%及び0.007%となる。これに対して、吸収体膜をTaBN膜で形成した場合、膜厚が50nm以下で反射率を2%以下とすることができない。
【0041】
位相シフト機能を有する吸収体膜4の場合、吸収体膜4が形成されている部分では、EUV光を吸収して減光しつつパターン転写に悪影響がないレベルで一部の光を反射させる。一方、吸収体膜4が形成されていないフィールド部からの反射光は、保護膜3を介して多層反射膜2から反射される。位相シフト機能を有する吸収体膜4により、吸収体膜4が形成されている部分と、フィールド部からの反射光との間で、所望の位相差を形成することができる。吸収体膜4は、吸収体膜4からの反射光と多層反射膜2(フィールド部)からの反射光との位相差が160°から200°となるように形成される。180°近傍の反転した位相差の光同士がパターンエッジ部で干渉し合うことにより、投影光学像の像コントラストが向上する。その像コントラストの向上にともなって解像度が上がり、露光量裕度、焦点裕度等の露光に関する各種裕度が拡がる。パターン及び露光条件にもよるが、一般的には、この位相シフト効果を十分得るための反射率の目安は、絶対反射率で1%以上、多層反射膜2(保護膜3付き)に対する反射比で2%以上である。
図4に示すように、吸収体膜4をNi膜で形成した場合、膜厚が39nmで位相差が約160°となる。これに対して、吸収体膜をTaBN膜で形成した場合、50nm以下の膜厚で位相差を160°から200°とすることができない。
【0042】
吸収体膜4は単層の膜であることができる。また、吸収体膜4は2層以上の複数の膜からなる多層膜であることができる。吸収体膜4が単層膜の場合は、マスクブランク製造時の工程数を削減できて生産効率が上がるという特徴がある。吸収体膜4が多層膜の場合には、上層膜が、光を用いたマスクパターン検査時の反射防止膜になるように、その光学定数と膜厚を適当に設定する。このことにより、光を用いたマスクパターン検査時の検査感度が向上する。このように、多層膜の吸収体膜4を用いることによって、吸収体膜4に様々な機能を付加させることが可能となる。吸収体膜4が位相シフト機能を有する吸収体膜4の場合には、多層膜の吸収体膜4を用いることによって、光学面での調整の範囲が拡がり、所望の反射率が得やすくなる。
【0043】
ニッケル化合物の吸収体膜4の表面には、酸化層を形成することが好ましい。ニッケル化合物の酸化層を形成することにより、得られる反射型マスク200の吸収体パターン4aの洗浄耐性を向上させることができる。酸化層の厚さは、1.0nm以上が好ましく、1.5nm以上がより好ましい。また、酸化層の厚さは、5nm以下が好ましく、3nm以下がより好ましい。Ni酸化層の厚さが1.0nm未満の場合には薄すぎて効果が期待できず、5nmを超えるとマスク検査光に対する表面反射率に与える影響が大きくなり、所定の表面反射率を得るための制御が難しくなる。
【0044】
酸化層の形成方法は、吸収体膜が成膜された後のマスクブランクに対して、温水処理、オゾン水処理、酸素を含有する気体中での加熱処理、酸素を含有する気体中での紫外線照射処理及びO2プラズマ処理等を行うことなどが挙げられる。
【0045】
<<エッチングマスク膜>>
吸収体膜4上にはエッチングマスク膜5が形成される。エッチングマスク膜5の材料としては、エッチングマスク膜5に対する吸収体膜4のエッチング選択比が高い材料を用いる。ここで、「Aに対するBのエッチング選択比」とは、エッチングを行いたくない層(マスクとなる層)であるAとエッチングを行いたい層であるBとのエッチングレートの比をいう。具体的には「Aに対するBのエッチング選択比=Bのエッチング速度/Aのエッチング速度」の式によって特定される。また、「選択比が高い」とは、比較対象に対して、上記定義の選択比の値が大きいことをいう。エッチングマスク膜5に対する吸収体膜4のエッチング選択比は、1.5以上が好ましく、3以上が更に好ましく、5以上がより好ましい。
【0046】
エッチングマスク膜5に対する吸収体膜4のエッチング選択比が高い材料として、クロム(Cr)を含む材料、又はケイ素(Si)を含む材料を挙げることができる。したがって、エッチングマスク膜5の材料として、クロム(Cr)を含む材料、又はケイ素(Si)を含む材料を用いることができる。
【0047】
エッチングマスク膜5のクロム(Cr)を含む材料としては、例えば、クロムに、窒素、酸素、炭素及びホウ素から選ばれる一以上の元素を含有するクロム化合物等が挙げられる。クロム化合物としては、例えば、CrN、CrON、CrCN、CrCON、CrBN、CrBON、CrBCN及びCrBOCN等が挙げられる。塩素系ガスでのエッチング選択比を上げるためには、実質的に酸素を含まない材料とすることが好ましい。実質的に酸素を含まないクロム化合物として、例えばCrN、CrCN、CrBN及びCrBCN等が挙げられる。クロム化合物のCr含有比率は、50原子%以上100原子%未満であることが好ましく、80原子%以上100原子%未満であることがより好ましい。また、「実質的に酸素を含まない」とは、クロム化合物における酸素の含有量が10原子%以下、好ましくは5原子%以下であるものが該当する。なお、前記材料は、本発明の効果が得られる範囲で、クロム以外の金属を含有することができる。
【0048】
エッチングマスク膜5のケイ素(Si)を含む材料としては、例えば、ケイ素に、窒素、酸素、炭素及び水素から選ばれる一以上の元素を含有するケイ素化合物、ケイ素及び金属を含む金属ケイ素(金属シリサイド)、並びにケイ素化合物及び金属を含む金属ケイ素化合物(金属シリサイド化合物)等が挙げられる。ケイ素を含む材料として、具体的には、SiO、SiN、SiON、SiC、SiCO、SiCN、SiCON、MoSi、MoSiO、MoSiN、及びMoSiON等を挙げることができる。なお、前記材料は、本発明の効果が得られる範囲で、ケイ素以外の半金属又は金属を含有することができる。
【0049】
NiはTaに比べて塩素系ガスのドライエッチング速度が遅い。そのため、Niを含む材料からなる吸収体膜4上に直接レジスト膜11を形成しようとすると、レジスト膜11を厚くしなければならず、微細なパターンを形成することが難しい。一方、吸収体膜4上にCr及び/又はSiを含む材料からなるエッチングマスク膜5を形成することにより、レジスト膜11の厚さを厚くすることなく、吸収体膜4のエッチングを行うことが可能となる。したがって、エッチングマスク膜5を用いることにより、微細な吸収体パターン4aを形成できる。
【0050】
エッチングマスク膜5の膜厚は、転写パターンを精度よく吸収体膜4に形成するエッチングマスクとしての機能を得る観点から、3nm以上であることが望ましい。また、エッチングマスク膜5の膜厚は、レジスト膜11の膜厚を薄くする観点から、20nm以下が望ましく、15nm以下であることがより望ましい。
【0051】
<<裏面導電膜>>
基板1の第2主表面(裏面)側(多層反射膜2形成面の反対側)には、一般的に、静電チャック用の裏面導電膜6が形成される。静電チャック用の裏面導電膜6に求められる電気的特性は通常100Ω/square以下である。裏面導電膜6は、例えばマグネトロンスパッタリング法又はイオンビームスパッタリング法により、クロム、タンタル等の金属及び合金のターゲットを使用して形成することができる。代表的な裏面導電膜6の材料は、光透過型マスクブランクなどのマスクブランク製造でよく用いられるCrN及びCrである。裏面導電膜6の厚さは、静電チャック用としての機能を満足する限り特に限定されないが、通常10nmから200nmである。また、この裏面導電膜6はマスクブランク100の第2主表面側の応力調整も兼ね備えている。裏面導電膜6は、第1主表面側に形成された各種膜からの応力とバランスをとって、平坦な反射型マスクブランク100が得られるように調整されている。
【0052】
<反射型マスク及びその製造方法>
本実施形態の反射型マスクブランク100を使用して、反射型マスク200を製造することができる。ここでは概要説明のみを行い、後に実施例において図面を参照しながら詳細に説明する。
【0053】
反射型マスクブランク100を準備して、その第1主表面のエッチングマスク膜5に、レジスト膜11を形成する(反射型マスクブランク100としてレジスト膜11を備えている場合は不要)。次に、このレジスト膜11に所望のパターンを描画(露光)し、更に現像、リンスすることによって、所定のレジストパターン11aを形成する。
【0054】
反射型マスクブランク100を用いる場合、先ず、上述のレジストパターン11aをマスクとしてエッチングマスク膜5をエッチングしてエッチングマスクパターン5aを形成する。次に、レジストパターン11aをアッシング及びレジスト剥離液などで除去する。その後、このエッチングマスクパターン5aをマスクにしてドライエッチングを行うことにより、吸収体膜4がエッチングされ、吸収体パターン4aが形成される。その後、エッチングマスクパターン5aをドライエッチングによって除去する。最後に、酸性及び/又はアルカリ性の水溶液を用いたウェット洗浄を行う。
【0055】
ここで、エッチングマスク膜5がクロム(Cr)を含む材料からなる場合には、エッチングマスク膜5のパターンの形成、及びエッチングマスクパターン5aの除去のためのエッチングガスとしては、Cl2、SiCl4、CHCl3、及びCCl4等の塩素系ガスとO2とを所定の割合で含む混合ガスを挙げることができる。
【0056】
また、エッチングマスク膜5がケイ素(Si)を含む材料からなる場合には、エッチングマスク膜5のパターンの形成、及びエッチングマスクパターン5aの除去のためのエッチングガスとしては、CF4、CHF3、C2F6、C3F6、C4F6、C4F8、CH2F2、CH3F、C3F8、SF6及びF2等のフッ素系ガス、並びにフッ素系ガスと、He、H2、N2、Ar、C2H4及びO2等との混合ガス(これらを総称して「フッ素含有ガス」という。)を挙げることができる。
【0057】
吸収体膜4のエッチングガスとしては、Cl2、SiCl4、CHCl3及びCCl4等の塩素系のガス、塩素系ガス及びHeを所定の割合で含む混合ガス、並びに塩素系ガス及びArを所定の割合で含む混合ガス等を挙げることができる。吸収体膜4のエッチングにおいて、エッチングガスに実質的に酸素が含まれていないので、Ru系保護膜に表面荒れが生じることがない。本明細書において、「エッチングガスに実質的に酸素が含まれていない」とは、エッチングガス中の酸素の含有量が5原子%以下であることを意味する。
【0058】
なお、エッチングマスクパターン5aの形成直後にレジストパターン11aを除去せず、レジストパターン11a付きエッチングマスクパターン5aをマスクとして吸収体膜4をエッチングする方法もある。この場合は、吸収体膜4をエッチングする際にレジストパターン11aが自動的に除去され、工程が簡略化されるという特徴がある。一方、レジストパターン11aが除去されたエッチングマスクパターン5aをマスクとして吸収体膜4をエッチングする方法では、エッチングの途中に消失するレジストからの有機生成物(アウトガス)の変化ということがなく、安定したエッチングができるという特徴がある。
【0059】
以上の工程により、シャドーイング効果が少なく、且つ側壁ラフネスの少ない高精度微細パターンを有する反射型マスク200が得られる。
【0060】
<半導体装置の製造方法>
本実施形態の反射型マスク200を使用してEUV露光を行うことにより、半導体基板上に、反射型マスク200上の吸収体パターン4aに基づく所望の転写パターンを、シャドーイング効果による転写寸法精度の低下を抑えて形成することができる。また、本実施形態の反射型マスク200の吸収体パターン4aが、側壁ラフネスの少ない微細で高精度なパターンであるため、高い寸法精度で所望のパターンを半導体基板上に形成できる。このリソグラフィ工程に加え、被加工膜のエッチング、絶縁膜、導電膜の形成、ドーパントの導入、及びアニールなど種々の工程を経ることで、所望の電子回路が形成された半導体装置を製造することができる。
【0061】
より詳しく説明すると、EUV露光装置は、EUV光を発生するレーザープラズマ光源、照明光学系、マスクステージ系、縮小投影光学系、ウエハステージ系、及び真空設備等から構成される。光源には、デブリトラップ機能、露光光以外の長波長の光をカットするカットフィルタ及び真空差動排気用の設備等が備えられている。照明光学系及び縮小投影光学系は反射型ミラーから構成される。EUV露光用反射型マスク200は、その第2主表面に形成された導電膜により静電吸着されてマスクステージに載置される。
【0062】
EUV光源の光は、照明光学系を介して反射型マスク200の主表面の法線(主表面に垂直な直線)に対して6°から8°傾けた角度で反射型マスク200に照射される。この入射光に対する反射型マスク200からの反射光は、入射とは逆方向にかつ入射角度と同じ角度で反射(正反射)し、通常1/4の縮小比を持つ反射型投影光学系に導かれ、ウエハステージ上に載置されたウエハ(半導体基板)上のレジストへの露光が行われる。EUV露光装置の中で、少なくともEUV光が通る場所は真空排気される。露光にあたっては、マスクステージとウエハステージを縮小投影光学系の縮小比に応じた速度で同期させてスキャンし、スリットを介して露光を行うというスキャン露光が主流となっている。レジストへの露光の後、露光済レジスト膜を現像することによって、半導体基板上にレジストパターンを形成することができる。本発明では、シャドーイング効果の小さな薄膜で、しかも側壁ラフネスの少ない高精度な位相シフトパターンを持つマスクが用いられている。このため、半導体基板上に形成されたレジストパターンは、高い寸法精度を持つ所望のレジストパターンとなる。このレジストパターンをマスクとして使用してエッチング等を実施することにより、例えば半導体基板上に所定の配線パターンを形成することができる。このような露光工程、被加工膜加工工程、絶縁膜及び導電膜の形成工程、ドーパント導入工程、アニール工程、並びにその他の必要な工程を経ることで、半導体装置が製造される。
【実施例】
【0063】
以下、実施例について図面を参照しつつ説明する。なお、実施例において同様の構成要素については同一の符号を使用し、説明を簡略化若しくは省略する。
【0064】
図2は、実施例1及び2の反射型マスクブランク100から反射型マスク200を作製する工程を示す要部断面模式図である。
図7は、比較例1の反射型マスクブランクから反射型マスク200の作製を試みた工程を、要部断面模式図にて示した工程図である。
【0065】
(実施例1)
先ず、実施例1の反射型マスクブランク100について、説明する。実施例1の反射型マスクブランク100は、裏面導電膜6と、基板1と、多層反射膜2と、保護膜3と、吸収体膜4と、エッチングマスク膜5とを有する。吸収体膜4はニッケル、エッチングマスク膜5はクロム系材料からなる。なお、
図2(a)に示されるように、エッチングマスク膜5上にはレジスト膜11が形成される。
【0066】
先ず、実施例1の反射型マスクブランク100に用いる基板1について説明する。基板1として、第1主表面及び第2主表面の両面が研磨された6025サイズ(約152mm×152mm×6.35mm)の低熱膨張ガラス基板であるSiO2-TiO2系ガラス基板を準備した。平坦で平滑な主表面となるように、SiO2-TiO2系ガラス基板(基板1)に対して、粗研磨加工工程、精密研磨加工工程、局所加工工程、及びタッチ研磨加工工程よりなる研磨を行った。
【0067】
SiO2-TiO2系ガラス基板1の第2主表面(裏面)に、CrNからなる裏面導電膜6を、マグネトロンスパッタリング(反応性スパッタリング)法により、下記の条件にて形成した。なお、本明細書で、混合ガスの割合は、導入するガスの体積%である。
裏面導電膜形成条件:Crターゲット、ArとN2の混合ガス雰囲気(Ar:90%、N:10%)、膜厚20nm
【0068】
次に、裏面導電膜6が形成された側と反対側の基板1の主表面(第1主表面)上に、多層反射膜2を形成した。基板1上に形成される多層反射膜2は、波長13.5nmのEUV光に適した多層反射膜2とするために、MoとSiからなる周期多層反射膜とした。多層反射膜2は、MoターゲットとSiターゲットを使用し、Arガス雰囲気中でイオンビームスパッタリングにより基板1上にMo層及びSi層を交互に積層して形成した。先ず、Si膜を4.2nmの厚さで成膜し、続いて、Mo膜を2.8nmの厚さで成膜した。これを1周期とし、同様にして40周期積層し、最後にSi膜を4.0nmの厚さで成膜することにより、多層反射膜2を形成した。ここでは積層周期を40周期としたが、これに限るものではない。積層周期を、例えば60周期にすることができる。積層周期を60周期とした場合、40周期よりも工程数は増えるが、EUV光に対する多層反射膜2の反射率を高めることができる。
【0069】
引き続き、Arガス雰囲気中で、Ruターゲットを使用したイオンビームスパッタリングによりRu保護膜3を2.5nmの厚さで成膜した。
【0070】
次に、DCスパッタリング法により、吸収体膜4としてNi膜を形成した。Ni膜は、Arガス雰囲気にてニッケル(Ni)をターゲットに用いて、30nm、34.8nm及び39.5nmの膜厚で各々成膜し、3枚の吸収体膜付き基板を作成した。上記形成したNi膜の波長13.5nmにおける屈折率n、消衰係数(屈折率虚部)kは、それぞれ以下であった。
Ni:n=約0.948、k=約0.073
【0071】
作成した3枚の吸収体膜付き基板(吸収体膜4の厚さ:30nm、34.8nm、及び39.5nm)に対して、EUV反射率スペクトルの測定を行ったところ、
図5に示すスペクトルが得られた。波長13.5nmにおける吸収体膜付き基板の反射率は、
図5に実線で示す通り、各々1.4%、0.73%、0.18%であり、全て2%以下であった。また、参考として、
図5に、シミュレーション結果を破線で示す。
図5から、実測とシミュレーションのスペクトルはよい一致を示していることがわかった。
【0072】
作成した3枚の吸収体膜付き基板に対して、エッチングマスク膜5としてCrN膜を、マグネトロンスパッタリング(反応性スパッタリング)法により、下記の条件にて、各々形成した。
エッチングマスク膜形成条件:Crターゲット、ArとN2の混合ガス雰囲気(Ar:90%、N:10%)
膜厚:10nm(吸収体膜4の厚さ30nm)、11.6nm(吸収体膜4の厚さ34.8nm)、13.2nm(吸収体膜4の厚さ39.5nm)
ラザフォード後方散乱分析法によりエッチングマスク膜5の元素組成を測定したところ、Cr:90原子%、N:10原子%であった。
【0073】
次に、実施例1の反射型マスクブランク100を用いて、実施例1の反射型マスク200を製造した。
【0074】
反射型マスクブランク100のエッチングマスク膜5の上に、レジスト膜11を100nmの厚さで形成した(
図2(a))。このレジスト膜11に所望のパターンを描画(露光)し、更に現像、リンスすることによって、所定のレジストパターン11aを形成した(
図2(b))。次に、レジストパターン11aをマスクにして、CrN膜(エッチングマスク膜5)のドライエッチングをCl
2ガスとO
2の混合ガス(Cl
2+O
2ガス)を用いて行った。このドライエッチングにより、エッチングマスクパターン5aを形成することができた(
図2(c))。引き続き、Ni膜(吸収体膜4)のドライエッチングを、Cl
2ガスを用いて行うことで、吸収体パターン4aを形成した(
図2(d))。
【0075】
Ni膜からなる吸収体膜4は、Ta系材料と比較すると、エッチングしにくい。実施例1の場合には、吸収体膜4の上にエッチングマスク膜5が形成されていることにより、Ni膜からなる吸収体膜4を容易にエッチングすることができた。また、転写パターンを形成するためのレジスト膜11を薄膜化することできるので、微細パターンを有する反射型マスク200が得られる。エッチングマスク膜5がない場合、Cl2ガスによる吸収体膜4のドライエッチング中に、レジストパターン11aもエッチングされてしまうため、レジスト膜11の膜厚を厚くしておく必要がある。厚いレジスト膜11の場合には、解像度が低くなる。また、レジストパターン11aのアスペクト比(高さ/線幅)が大きくなると、パターン現像、及びリンスの時に、パターン倒れが生じる。実施例1では、吸収体膜4の上に、エッチング選択性の高い材料からなるエッチングマスク膜5が形成されていることにより、吸収体膜4を容易にエッチングでき、レジスト膜11を薄膜化できたので、解像度の低下及びパターン倒れという問題の発生を抑制できた。ここで、エッチングマスク膜5に対する吸収体膜4のエッチング選択比は、6.7であった。
【0076】
その後、レジストパターン11aをアッシング及びレジスト剥離液などで除去した。また、エッチングマスクパターン5aを、Cl
2ガスとO
2の混合ガスを用いたドライエッチングによって除去した。最後に純水(DIW)を用いたウェット洗浄を行った。上述の工程で、実施例1の反射型マスク200を製造した(
図2(e))。なお、必要に応じてウェット洗浄後、マスク欠陥検査を行い、マスク欠陥修正を適宜行う。
【0077】
実施例1の反射型マスク200では、エッチングマスク膜5はクロム系材料であるため、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスでの加工性が良く、高い精度でエッチングマスクパターン5aを形成することができた。また、吸収体パターン4aの膜厚は各々30nm、34.8nm及び39.5nmあり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、シャドーイング効果を低減することができた。
【0078】
また、膜厚30nmの吸収体パターン4aが形成された反射型マスク200のHVバイアスを評価した。
図6に示すように、Ni膜の方がTaBN膜よりも約1/3程度HVバイアスを小さくできた。
【0079】
また、膜厚30nmの吸収体パターン4aが形成された反射型マスク200のDIWに対する洗浄耐性を評価した。洗浄耐性の評価により、洗浄前後で減膜は約0.08nmであり、洗浄耐性に問題がないことが確認できた。より具体的には、洗浄前は表層1.10nmのNi酸化層とバルク部分が28.29nmであったのが、洗浄後は各々1.10nm、28.21nmであった。
【0080】
実施例1の反射型マスク200の洗浄耐性には問題がなく、吸収体パターン4aの表面に、Ni酸化層が存在することから、吸収体パターン4aの表面のNi酸化層が、洗浄耐性に良い影響を与え、洗浄耐性を向上させたことが示唆される。なお、実施例1のNi酸化層は、自然酸化による酸化層であり、酸化層の厚さは均一ではないものと思われる。Ni酸化層を意図的に所定の膜厚で均一に形成した場合には、更に洗浄耐性を向上させることができることが推測される。洗浄耐性を向上させるために、Ni酸化層の厚さは、1.0nm以上が好ましく、1.5nm以上がより好ましいと推察できる。また、Ni酸化層の厚さは、5nm以下が好ましく、3nm以下がより好ましいと推測できる。
【0081】
実施例1で作成した反射型マスク200をEUVスキャナにセットし、半導体基板上に被加工膜とレジスト膜が形成されたウエハに対してEUV露光を行った。そして、この露光済レジスト膜を現像することによって、被加工膜が形成された半導体基板上にレジストパターンを形成した。
【0082】
このレジストパターンをエッチングにより被加工膜に転写し、また、絶縁膜、導電膜の形成、ドーパントの導入、及びニールなど種々の工程を経ることで、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
【0083】
(実施例2)
実施例2の反射型マスクブランク100について、説明する。実施例1と同様に、実施例2の反射型マスクブランク100は、裏面導電膜6と、基板1と、多層反射膜2と、保護膜3と、吸収体膜4と、エッチングマスク膜5とを有する。実施例2の反射型マスクブランク100は、エッチングマスク膜5がケイ素系材料からなること以外は、実施例1と同様である。
【0084】
実施例1と同様に、3枚の吸収体膜付き基板を作製した。これらの3枚の吸収体膜付き基板に対して、エッチングマスク膜5としてSiO2膜をRFスパッタリング法により下記の条件にて各々形成した。
エッチングマスク膜形成条件:SiO2ターゲット、Arガス雰囲気(Ar:100%)
膜厚:13nm(吸収体膜4の厚さ30nm)、15.1nm(吸収体膜4の厚さ34.8nm)、17.2nm(吸収体膜4の厚さ39.5nm)
【0085】
ラザフォード後方散乱分析法によりエッチングマスク膜5の元素組成を測定したところ、エッチングマスク膜5はSiO2膜であることを確認した。
【0086】
次に、実施例2の反射型マスクブランク100を用いて、実施例2の反射型マスク200を製造した。
【0087】
実施例1と同様に、反射型マスクブランク100のエッチングマスク膜5の上に、レジスト膜11を100nmの厚さで形成した(
図2(a))。このレジスト膜11に所望のパターンを描画(露光)し、更に現像、リンスすることによって所定のレジストパターン11aを形成した(
図2(b))。次に、レジストパターン11aをマスクにしてSiO
2膜(エッチングマスク膜5)のドライエッチングを、フッ素含有ガス(具体的には、CF
4ガス)を用いて行った。このドライエッチングにより、エッチングマスクパターン5aを形成ことができた(
図2(c))。引き続き、Ni膜(吸収体膜4)のドライエッチングを、Cl
2ガスを用いて行うことで、吸収体パターン4aを形成した(
図2(d))。
【0088】
実施例2では、実施例1と同様に、吸収体膜4の上にエッチングマスク膜5が形成されていることにより、Ni膜からなる吸収体膜4を容易にエッチングすることができた。また、転写パターンを形成するためのレジスト膜11を薄膜化することできるので、微細パターンを有する反射型マスク200が得られる。実施例2では、吸収体膜4の上に、エッチング選択性の高い材料からなるエッチングマスク膜5が形成されていることにより、吸収体膜4を容易にエッチングでき、レジスト膜11を薄膜化できた。したがって、実施例2では、解像度の低下及びパターン倒れという問題の発生を抑制できた。ここで、エッチングマスク膜5に対する吸収体膜4のエッチング選択比は、5.2であった。
【0089】
その後、レジストパターン11aをアッシング及びレジスト剥離液などで除去した。また、エッチングマスクパターン5aを、フッ素含有ガス(具体的には、CF
4ガス)を用いたドライエッチングによって除去した。最後に純水(DIW)を用いたウェット洗浄を行った。上述の工程で、実施例2の反射型マスク200を製造した(
図2(e))。なお、必要に応じてウェット洗浄後、マスク欠陥検査を行い、マスク欠陥修正を適宜行う。
【0090】
実施例2の反射型マスク200では、エッチングマスク膜5はケイ素系材料であるため、フッ素含有ガスでの加工性が良く、高い精度でエッチングマスクパターン5aを形成することができた。また、吸収体パターン4aの膜厚は各々30nm、34.8nm及び39.5nmであり、従来のTa系材料で形成された吸収体膜よりも薄くすることができ、シャドーイング効果を低減することができた。
【0091】
実施例2の反射型マスク200は、実施例1と同様に、HVバイアスを小さくすることができ、洗浄耐性に問題がないことが確認できた。また、実施例1と同様に、実施例2の反射型マスク200を用いることにより、所望の特性を有する半導体装置を製造することができた。
【0092】
(比較例1)
比較例1の反射型マスクブランクについて、説明する。比較例1の反射型マスクブランクは、裏面導電膜6と、基板1と、多層反射膜2と、保護膜3と、吸収体膜4とを有する。ただし、比較例1の反射型マスクブランクは、実施例1とは異なり、エッチングマスク膜5を有しない。比較例1の反射型マスクブランクの基板1、多層反射膜2、保護膜3及び吸収体膜4は、実施例1と同じである。
【0093】
次に、
図7(a)に示すように、比較例1の反射型マスクブランクを用いて、比較例1の反射型マスク200の製造を試みた。
【0094】
反射型マスクブランクの吸収体膜4の上に、レジスト膜11を100nmの厚さで形成した(
図7(a))。このレジスト膜11に所望のパターンを描画(露光)し、更に現像、リンスすることによって所定のレジストパターン11aを形成した(
図7(b))。次に、Ni膜(吸収体膜4)のドライエッチングを、Cl
2ガスを用いて行うことで、吸収体パターン4aを形成することを試みた(
図7(c))。その後、レジストパターン11aをアッシング及びレジスト剥離液などで除去し、
図7(d)に示すような反射型マスク200を得ることを予定していた。
【0095】
Ni膜からなる吸収体膜4は、Ta系材料と比較すると、エッチングしにくい。そのため、比較例1の場合、吸収体膜4の上にエッチングマスク膜5が形成されていなかったことにより、Ni膜からなる吸収体膜4を容易にエッチングすることができなかった。すなわち、吸収体パターン4aが形成される前に、エッチングによりレジストパターン11aが消失してしまった。したがって、比較例1の場合、
図7(c)に示す吸収体パターン4a、及び
図7(d)に示すような反射型マスク200を得ることができなかった。
【0096】
比較例1の結果から、吸収体膜4の上にエッチングマスク膜5が形成されていない場合には、非常に厚いレジスト膜11が必要であるといえる。即ち、エッチングマスク膜5がない場合、Cl2ガスによる吸収体膜4のドライエッチング中にレジストパターン11aもエッチングされてしまうため、レジスト膜11の膜厚を厚くしておく必要がある。しかしながら、厚いレジスト膜11を有する場合には解像度が低くなるという問題が生じる。またレジストパターン11aのアスペクト比(高さ/線幅)が大きくなると、パターン現像、及びリンスの時に、パターン倒れが生じるという問題が生じる。
【符号の説明】
【0097】
1 基板
2 多層反射膜
3 保護膜
4 吸収体膜
4a 吸収体パターン
5 エッチングマスク膜
5a エッチングマスクパターン
6 裏面導電膜
11 レジスト膜
11a レジストパターン
100 反射型マスクブランク
200 反射型マスク