(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221213BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20221213BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20221213BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H01L21/304 647Z
H05H1/24
H01L21/304 643A
B01J19/08 E
B08B3/08 A
(21)【出願番号】P 2019007507
(22)【出願日】2019-01-21
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】鰍場 真樹
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-078529(JP,A)
【文献】特開2013-063374(JP,A)
【文献】特開2009-054557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H05H 1/24
B01J 19/08
B08B 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ励起によって生成される励起成分を含む処理液で基板を処理する基板処理装置であって、
基板処理室と、
前記基板処理室内に配置され、基板を保持する基板保持具と、
前記基板処理室に接続され、前記基板処理室内に処理液を供給する処理液配管と、
電解室と、
前記電解室内にある電解液を電気分解する電解用電極と、
前記電解用電極に接続される電解用電源と、
前記電解室で発生した気体を前記電解液から分離する気液分離ユニットと、
前記気液分離ユニットと前記処理液配管とに接続され、前記気体を前記処理液配管に導入する導入ポートと、
前記処理液配管における前記基板処理室と前記導入ポートとの間の配管部分に配置される放電電極と、
前記放電電極に接続されるプラズマ電源と、
を備える、基板処理装置。
【請求項2】
請求項1の基板処理装置であって、
前記放電電極が、前記配管部分の外側に配置されている、基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2の基板処理装置であって、
両端が前記電解室に接続され、前記電解液を循環させる循環配管、
をさらに備え、
前記気液分離ユニットは、前記循環配管の途中に接続される、基板処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項の基板処理装置であって、
前記気液分離ユニットは、疎水性フィルターを含む、基板処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項の基板処理装置であって、
前記気液分離ユニットは、陰イオン交換膜を含む、基板処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項の基板処理装置であって、
前記気液分離ユニットは、陽イオン交換膜を含む、基板処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項の基板処理装置であって、
前記基板保持具に保持された基板を加熱するための加熱機構、
をさらに備える、基板処理装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項の基板処理装置であって、
前記プラズマ電源は、高周波電力またはパルス電圧を出力する、基板処理装置。
【請求項9】
請求項2の基板処理装置であって、
前記放電電極で挟まれる前記配管部分が、石英で形成されている、基板処理装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項の基板処理装置であって、
前記電解用電源に接続され、前記電解用電源が前記電解用電極に印加する電圧の大きさを制御する制御部、
をさらに備える、基板処理装置。
【請求項11】
プラズマ励起によって生成される励起成分を含む処理液で基板を処理する基板処理方法であって、
a)電解室に電解液を供給する工程と、
b)前記電解室において、前記電解液を電気分解する工程と、
c)前記工程b)によって生成される気体を前記電解液から分離する工程と、
d)前記工程c)によって分離された前記気体を処理液に導入する工程と、
e)前記工程d)によって前記気体が導入された前記処理液をプラズマ励起する工程と、
f)前記工程e)によってプラズマ励起された前記処理液を基板に供給する工程と、
を含む、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板処理装置および基板処理方法に関し、特に、液中プラズマを用いて基板を処理する技術に関する。処理対象となる基板には、例えば、半導体基板、液晶表示装置および有機EL(Electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板、プリント基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来、大気圧中においてプラズマを発生させる大気圧プラズマを用いて基板の表面を洗浄することが行われている。特に、基板の中でも半導体ウェハにおいては、微細化および高集積化が進行し、これに伴って半導体ウェハの表面に導入されるプラズマダメージが問題となっている。プラズマダメージを回避して洗浄の効率を向上させるために液体中においてプラズマを発生させて液体中にイオンやラジカルを生成する液中プラズマと呼ばれる技術が研究されている。
【0003】
液中プラズマの技術としては、液体そのものに外部から高電圧を印加して液中に気泡を発生させ、この気泡中にプラズマを生成する技術、および外部から気体を液中に供給して液中に生成する気泡に高電圧を印加してプラズマを生成する技術が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、被処理水を蓄えた処理槽と、処理槽内の第1の電極および第2の電極と、第1の電極の導電体が被処理水中に露出している表面を気泡内に位置させるように気泡を発生する気泡発生部と、気体を気泡発生部に供給する気体供給装置と、第1および第2の電極に接続するパルス電源と、第1の電極の少なくとも導電体が露出している表面が気泡内に位置しているときに第1および第2の電極間に電圧が印加されることが記載されている。
【0005】
また、特許文献2は、液体中プラズマ発生装置内に、電解質溶液を電気分解するための対向する直流電圧印加用電極の一対と、その単電極の一つおよび電気分解によって発生した気泡の双方に接着するように配置された誘電体で被覆された交流電圧印加用電極が電解質溶液中に浸漬し、交流電圧印加用電極からの交流電圧印加により直流電圧印加用電極を固定電極として誘電体バリア放電が励起され、プラズマが気泡内に生成されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-258159号公報
【文献】特開2009-54557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1のように、液体に直接高電圧を印加してプラズマを生成する場合、極めて高い電力を必要とするため、電力消費量の問題があった。一方、特許文献2のように、プラズマを生成する液体中に、電気分解で気体を発生させる電極を設けた場合、電力消費量を抑制できるものの、その電極が液中に溶出することによって液体が汚染されるおそれがあった。このため、基板処理に適用することが可能な処理液を得ることが困難であった。
【0008】
本発明は、基板処理に適用される処理液において、低消費電力かつ低汚染で液中プラズマを発生させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、第1態様は、プラズマ励起によって生成される励起成分を含む処理液で基板を処理する基板処理装置であって、基板処理室と、前記基板処理室内に配置され、基板を保持する基板保持具と、前記基板処理室に接続され、前記基板処理室内に処理液を供給する処理液配管と、電解室と、前記電解室内にある電解液を電気分解する電解用電極と、前記電解用電極に接続される電解用電源と、前記電解室で発生した気体を前記電解液から分離する気液分離ユニットと、前記気液分離ユニットと前記処理液配管とに接続され、前記気体を前記処理液配管に導入する導入ポートと、前記処理液配管における前記基板処理室と前記導入ポートとの間の配管部分に配置される放電電極と、前記放電電極に接続されるプラズマ電源とを備える。
【0010】
第2態様は、第1態様の基板処理装置であって、前記放電電極が、前記配管部分の外側に配置されている。
【0011】
第3態様は、第1態様または第2態様の基板処理装置であって、両端が前記電解室に接続され、前記電解液を循環させる循環配管、をさらに備え、前記気液分離ユニットは、前記循環配管の途中に接続される。
【0012】
第4態様は、第1態様から第3態様のいずれか1つの基板処理装置であって、前記気液分離ユニットは、疎水性フィルターを含む。
【0013】
第5態様は、第1態様から第4態様のいずれか1つの基板処理装置であって、前記気液分離ユニットは、陰イオン交換膜を含む。
【0014】
第6態様は、第1態様から第4態様のいずれか1つの基板処理装置であって、前記気液分離ユニットは、陽イオン交換膜を含む。
【0015】
第7態様は、第1態様から第6態様のいずれか1つの基板処理装置であって、前記基板保持具に保持された基板を加熱するための加熱機構をさらに備える。
【0016】
第8態様は、第1態様から第7態様のいずれか1つの基板処理装置であって、前記プラズマ電源は、高周波電力またはパルス電圧を出力する。
【0017】
第9態様は、第2態様の基板処理装置であって、前記放電電極で挟まれる前記配管部分が、石英で形成されている。
【0018】
第10態様は、第1態様から第9態様のいずれか1つの基板処理装置であって、前記電解用電源に接続され、前記電解用電源が前記電解用電極に印加する電圧の大きさを制御する制御部をさらに備える。
【0019】
第11態様は、プラズマ励起によって生成される励起成分を含む処理液で基板を処理する基板処理方法であって、a)電解室に電解液を供給する工程と、b)前記電解室において、前記電解液を電気分解する工程と、c)前記工程b)によって生成される気体を前記電解液から分離する工程と、d)前記工程c)によって分離された前記気体を処理液に導入する工程と、e)前記工程d)によって前記気体が導入された前記処理液をプラズマ励起する工程と、f)前記工程e)によってプラズマ励起された前記処理液を基板に供給する工程とを含む。
【発明の効果】
【0020】
第1態様の基板処理装置によると、電解液を電気分解することによって電解液中に酸素または水素などの気体を発生させ、これを気液分離ユニットで分離して処理液配管に供給するため、高純度の気体を処理液に導入できる。したがって、基板に供給される処理液が気体の導入によって汚染されることを抑制できる。また、電気分解で生成した気体を処理液に供給するため、処理液を低消費電力でプラズマ処理できる。
【0021】
第2態様の基板処理装置によると、放電電極が処理液配管の外側に配置されるため、放電電極の腐食などによって基板に供給される処理液が汚染されることを抑制できる。
【0022】
第3態様の基板処理装置によると、循環配管を設けることにより、電気分解によって発生した気体を電解液から分離できるとともに、当該気体が除去された電解液を電解室に戻すことができる。
【0023】
第4態様の基板処理装置によると、気液分離ユニットが疎水性フィルターを含むことにより、液体の通過を抑制しつつ気体を通過させることができるため、気体の分離効率を高めることができる。
【0024】
第5態様の基板処理装置によると、気液分離ユニットが陰イオン交換膜を含むことにより、水素ガスおよび酸素ガスと陰イオンである水酸化物イオンを導入ポートより処理液に導入される。この場合、酸化性活性種である酸素ラジカル、酸素イオン、オゾンがより多く生成されるため、基板表面の酸化処理効率を向上できる。
【0025】
第6態様の基板処理装置によると、気液分離ユニットが陽イオン交換膜を含むことにより、水素ガスおよび酸素ガスと陽イオンである水素イオンが導入ポートより処理液に導入される。この場合、還元性活性種である水素ラジカルおよび水素イオンがより多く生成されるため、基板表面の還元処理効率を向上できる。
【0026】
第7態様の基板処理装置によると、基板を加熱しつつ励起成分が溶け込んだ処理液で処理できる。
【0027】
第8態様の基板処理装置によると、液中プラズマを有効に発生させることができる。
【0028】
第9態様の基板処理装置によると、放電電極に挟まれる配管部分が石英で形成されていることにより、配管部分の内側において液中プラズマを発生させることができる。
【0029】
第10態様の基板処理装置によると、電解用電極に印加される電圧の大きさを制御することによって、電気分解により発生する気体の量を制御できる。
【0030】
第11態様の基板処理方法によると、電解液を電気分解することによって電解液中に酸素または水素などの気体を発生させ、これを気液分離ユニットで分離して処理液配管に供給するため、高純度の気体を処理液に導入できる。したがって、基板に供給される処理液が気体の導入によって汚染されることを抑制できる。また、電気分解で生成した気体を処理液に供給するため、処理液を低消費電力でプラズマ処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施形態の基板処理装置1のレイアウトを示す図解的な平面図である。
【
図2】実施形態の処理ユニット6を模式的に示す図である。
【
図3】気液分離ユニット76を図解的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0033】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」等)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」等)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」等)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸や面取り等を有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「~の上」とは、特に断らない限り、2つの要素が接している場合のほか、2つの要素が離れている場合も含む。
【0034】
<1. 実施形態>
図1は、実施形態の基板処理装置1のレイアウトを示す図解的な平面図である。基板処理装置1は、半導体ウェハである基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、インデクサブロック2、および処理ブロック3を備えている。
【0035】
インデクサブロック2は、キャリア保持部4、インデクサロボットIR、およびIR移動機構5を備える。キャリア保持部4は、複数の基板Wを収容することが可能なキャリアCを保持する。各キャリアCは、所定のキャリア配列方向Uに沿って配列された状態で、キャリア保持部4に保持される。IR移動機構5は、キャリア配列方向Uに沿ってインデクサロボットIRを水平方向に移動させる。インデクサロボットIRは、キャリア保持部4に保持されたキャリアCに基板Wを搬入する搬入動作、および基板WをキャリアCから搬出する搬出動作を行う。キャリアCは、例えば基板Wを密閉状態で収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard Mechanical Interface)ポッド、またはOC(Open Cassette)を含む。
【0036】
処理ブロック3は、インデクサブロック2に結合されている。処理ブロック3は、少なくとも1つの処理ユニット6(基板処理部)、少なくとも1つの流体ボックス7(モジュール装填部)、および少なくとも1のセンターロボットCRを備える。各処理ユニット6は、1つの基板Wを処理液で処理する。本実施形態の基板処理装置1は、例えば、12個の処理ユニット6、12個の流体ボックス7、1つのセンターロボットCRを備える。
【0037】
12個の処理ユニット6は、鉛直方向に積層された3つの処理ユニット6を含む4つのタワーに分割されている。各タワーは、平面視においてセンターロボットCRを取り囲む4つの箇所のうちの1つに設けられている。ここでは、キャリア配列方向Uに2つの上記タワーが並べられ、キャリア配列方向Uに直行する水平方向Hに2つの上記タワーが並べられている。
【0038】
各流体ボックス7は、配管およびバルブなどの流体機器を収容する筐体を含む。基板処理装置1は、1つの処理ユニット6に対して、1つの流体ボックス7を有する。各流体ボックス7は、対応する処理ユニット6に対して処理液を供給する。各流体ボックス7は、処理ユニット6に対して水平方向Hに隣接する位置に配されている。つまり、各タワーにおいて、3つの流体ボックス7が上下に配列されている。
【0039】
センターロボットCRは、各処理ユニット6にアクセスする。センターロボットCRは、各処理ユニット6に基板Wを搬入する搬入動作、および各処理ユニット6から基板Wを搬出する搬出動作を行う。センターロボットCRは、インデクサロボットIRによってキャリアCから搬出されてパス部PSに載置された未処理の基板Wを受け取る。そして、処理ユニット6は、当該未処理の基板Wを、いずれかの処理ユニット6に搬入する。
【0040】
センターロボットCRは、各処理ユニット6から処理済の基板Wを搬出するとともに、当該処理済の基板Wをパス部PSに載置する。処理済の基板Wは、インデクサロボットIRによってパス部PSからキャリアCに搬入される。インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRは、制御ユニット8によってその動作が制御される。
【0041】
図2は、実施形態の処理ユニット6を模式的に示す図である。処理ユニット6は、半導体ウェハなどの基板Wを1枚ずつ処理液で洗浄処理する装置である。処理ユニット6は、処理液中に電圧を印加することによって、気体を励起させることにより、酸素ラジカル、水素ラジカル、酸素イオン、水素イオン、またはオゾンなどの励起成分を生成させ、当該励起成分を含む処理液で基板Wを処理する。
【0042】
処理ユニット6は、隔壁610で囲まれた基板処理室60、スピンチャック61、ノズル62、およびカップ63を備える。スピンチャック61、ノズル62、およびカップ63は、基板処理室60の内側に配置されている。
【0043】
スピンチャック61は、基板Wを水平に保持して回転させる。スピンチャック61は、回転軸64、回転駆動モータ65、スピンベース66、複数の挟持部材67を有する。回転軸64は、鉛直方向に平行な回転軸線A1に沿って延びる円柱状の部材である。回転駆動モータ65は、回転軸64の下端部に連結されており、回転軸64を回転軸線A1まわりに回転させる。回転駆動モータ65は、制御ユニット8に接続されており、制御ユニット8からの制御信号に応じて動作する。スピンベース66は、回転軸64の上端部に設けられており、上面が水平面である円板状の部材である。各挟持部材67は、スピンベース66の上面の周縁部に分散して配されている。スピンチャック61は、各挟持部材67を基板Wの周端面に当接させることにより、スピンベース66の上方において基板Wを水平姿勢(主面の法線が鉛直方向に沿う姿勢)で支持する。また、スピンチャック61は、円形である基板Wの中心を回転軸線A1に一致させた状態で保持する。各挟持部材67によって基板Wを保持した状態で、回転駆動モータ65の駆動力を回転軸64に入力することによって、基板Wが回転軸線A1まわりに回転させる。
【0044】
スピンチャック61は、複数の挟持部材67の代わりに、基板Wをスピンベース66の上面に吸着する吸着機構を備えていてもよい。吸着機構は、例えば、スピンベース66の上面に形成された1つ以上の溝、当該各溝に接続された1つ以上の孔、当該各孔に接続されて孔内の雰囲気を吸引する真空ポンプなどによって構成され得る。
【0045】
ノズル62は、下端部に処理液を吐出する吐出口を有する。ノズル62は、当該吐出口を下方に向けた状態で、スピンチャック61の上方に配置される。なお、各処理ユニット6は、ノズル62をスピンチャック61の上方である上方位置と、スピンチャック61の上方から外れた外方位置との間でノズル62を水平方向に移動させる移動駆動モータを備えていてもよい。
【0046】
ノズル62は、流体ボックス7から供給される処理液をスピンチャック61に保持された基板Wの上面中央部に向けて吐出する。スピンチャック61によって回転する基板Wの上面に処理液が供給されると、その処理液が基板Wの上面中央部に着液した後、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの周縁に向かって広がる。したがって、スピンチャック61が基板Wを回転させつつ、ノズル62が処理液を吐出することによって、基板Wの上面全域に処理液が供給される。
【0047】
ノズル62は、基板W上での処理液の着液位置が固定されている固定ノズルであってもよいし、基板W上での処理液の着液位置が基板W上で移動する、いわゆるスキャンノズルであってもよい。
【0048】
カップ63は、上端が開放された有底筒状であり、スピンベース66の水平方向の周囲を取り囲むことが可能である。ノズル62から供給されて、基板Wの周囲に飛散する処理液は、カップ63における基板Wの周端面に対向する内周面によって受け止められる。このようにカップ63は、基板Wから飛散した処理液を受け止めて捕獲する。カップ63の底部には、捕獲された処理液を流体ボックス7に導くための排液配管(不図示)が適宜接続される。
【0049】
処理ユニット6は、ヒーター68を備えている。ヒーター68は、スピンベース66の内部の中空空間に設けられた抵抗線と、当該抵抗線に電気を供給する電源(不図示)を備える。抵抗線に電気が供給されることによって抵抗線が加熱されると、スピンベース66が加熱される。これによって、スピンベース66の上面から輻射熱が放射される。この輻射熱により、複数の挟持部材67に保持された基板Wが加熱される。ヒーター68は、加熱機構の一例である。ヒーター68は制御ユニット8に接続されており、制御ユニット8からの制御信号に応じて、抵抗線への電気供給のオンオフまたは電気供給量が制御される。
【0050】
なお、加熱機構は、ヒーター68に限定されるものではない。加熱機構は、例えば、基板処理室60の内側に熱風を供給する供給口を備えた熱風供給部としてもよい。当該供給口は、熱風が基板処理室60の内側を循環するように設けられていてもよいし、あるいは各挟持部材67に保持された基板Wの表面に向けられることにより、基板Wの表面に熱風が吹き付けられてもよい。
【0051】
処理ユニット6が基板Wを処理する場合、スピンチャック61によって回転する基板Wに、ノズル62から処理液としての薬液が供給される。処理ユニット6において、薬液による処理が所定時間行われた後、スピンチャック61によって回転する基板Wにノズル62から処理液としてのリンス液が供給される。これにより、基板Wに付着している薬液がリンス液によって洗い流される。リンス処理が所定時間にわたって行われた後は、スピンチャック61によって基板Wを高速回転させて当該基板Wを乾燥させる(スピンドライ)。
【0052】
本実施形態では、薬液およびリンス液などをひとまとめに「処理液」と称する場合がある。処理液は、基板Wの表面を処理するために使用される流体であり、フッ酸などの薬液や脱イオン水(DIW)などのリンス液、イソプロピルアルコール(Isopropyl Alcohol: IPA)などの有機溶剤を含む。
【0053】
薬液は、フッ酸に限らず、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、バッファードフッ酸(BHF)、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(例えば、クエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(例えば、TMAH(Tetramethylammonium Hydroxide:水酸化テトラメチルアンモニウム)など)、界面活性剤、腐食防止剤のうち1つ、または2つ以上の混合薬液であってもよい。混合薬液としては、SPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水混合液)、SC1(ammonia-hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素水混合液)、SC2(hydrochloric hydrogen peroxide mixed water solution:塩酸過酸化水素水混合水溶液)などが挙げられる。
【0054】
リンス液は、脱イオン水に限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(例えば、10~100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。有機溶剤は、IPAに限らず、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、メタノール、エタノール、アセトンおよびTrans-1,2ジクロロエチレンのうちの少なくとも1つを含む液であってもよい。また、有機溶剤は、単体成分のみからなる必要はなく、他の成分と混合した液体であってもよく、例えば、IPA液と純水との混合液、あるいはIPA液とHFE液との混合液であってもよい。
【0055】
流体ボックス7には、処理液ノズルに処理液を供給するための配管や配管に介装されたバルブなどの複数の流体機器が収容されている。ここでは、流体ボックス7には、処理液配管71、電解室72、2つの電解用電極73,73、電解用電源74、循環配管75、気液分離ユニット76、導入ポート77、2つの放電電極78,78、プラズマ電源79を備える。
【0056】
処理液配管71は、流体ボックス7の外部に設けられた処理液の供給源である処理液源とノズル62とに接続されている。処理液配管71は、処理液源からの処理液をノズル62に導く。処理液配管71には、ノズル62への処理液の供給をオンオフする開閉バルブ711が設けられている。開閉バルブ711は、制御ユニット8に接続されており、制御ユニット8からの制御信号に応じて開閉される。処理液配管71には、ポンプ712が設けられている。ポンプ712は、処理液源からノズル62へ向けて処理液を圧送する。ポンプ712は制御ユニット8に接続されており、制御ユニット8によってその動作が制御される。
【0057】
電解室72は、隔壁721で囲まれており、内側に貯留された電解液72Lを電気分解する。電解液72Lとしては、例えば水に硫酸を溶かし込んだ希硫酸を使用できる。ただし、電解液72Lは、希硫酸に限定されるものではなく、水中で電離するものであればよい。
【0058】
2つの電解用電極73,73は、電解室72の内側において、所定の間隔をあけて設けられている。2つの電解用電極73,73は、腐食しにくい金属(例えば、白金)で構成される。電解用電源74は、導電線741を介して2つの電解用電極73,73のそれぞれに接続されており、これらの間に電圧を印加する。電解用電極73,73は、電解用電源74によって電圧が印加されると、陽極または陰極として機能し、電解液72Lを電気分解する。この電気分解によって陰極には水素イオンが引き寄せられることによって水素が発生し、陽極では水酸化物イオンが引き寄せられることによって酸素が発生する。すなわち、この電気分解によって、電解液72L中に、気体B1として、水素、酸素、水素イオンおよび酸素イオンなどが生成される。
【0059】
電解用電源74は、直流電源として構成されている。電解用電源74は制御ユニット8に接続されており、制御ユニット8からの制御信号に応じて電解用電極73,73間における電圧印加のオンオフが制御される。また、電解用電源74は、制御ユニット8からの制御信号に応じて、電解用電極73,73間に印加する電圧の大きさを変更する。電圧の大きさが変更されることによって、電気分解によって生成される気体B1の単位時間あたりの量が変更される。この場合、必要に応じた量の気体B1を生成できるため、電解液72Lの使用量の削減を図ることができる。
【0060】
電解室72の下部には、電解液供給口722が設けられている。電解液供給口722には、電解液供給配管723が接続されている。電解液供給配管723は、流体ボックス7の外部に配置され、電解液72Lの供給源である電解液源に接続されている。電解液供給配管723は、電解液源からの電解液72Lを電解室72の内部に供給する。電解液供給配管723には、電解室72への電解液72Lの供給をオンオフする開閉バルブ724が設けられている。開閉バルブ724は、制御ユニット8に接続されており、制御ユニット8からの制御信号に応じて開閉される。また、電解液供給配管723における、循環配管75が接続される部分と電解液供給口722との間には、ポンプ725が設けられている。ポンプ725は、電解液源から電解室72への電解液72Lの圧送、または循環配管75における電解液72Lの循環圧送を行う。ポンプ725は制御ユニット8に接続され、制御ユニット8によってその動作が制御される。
【0061】
開閉バルブ724が開放されることによって電解室72内が電解液72Lで満たされると、一旦開閉バルブ724が閉じられる。そして、電解液72Lが消耗されたときに、開閉バルブ724が一時的に開放されることによって、新たな電解液72Lが補充される。また、電気分解に使用された電解液72Lは、図示しない排出ラインを通じて、電解室72外に排出される。
【0062】
電解室72の最上部(鉛直方向の最も高い部位)には、循環配管75が接続されている。電解室72における循環配管75が接続される部位は、2つの電解用電極73,73寄りも高い位置に設けられている。循環配管75は、電解液供給配管723における電解液供給口722と開閉バルブ724との間に接続されている。循環配管75は、電解室72から排出された処理液を、電解液供給配管723を介して電解室72に戻す循環ラインを構成する。循環配管75には、開閉バルブ751が設けられている。開閉バルブ751は、制御ユニット8に接続されており、制御ユニット8からの制御信号に応じて開閉される。
【0063】
気液分離ユニット76は、循環配管75における電解室72と開閉バルブ751との間に設けられている。気液分離ユニット76は、電解室72における電気分解によって発生した気体を捕捉することによって、電解液72Lから分離する。気体が捕捉された電解液72Lは、気液分離ユニット76を通過して、電解液供給配管723に導かれ、電解室72に戻される。気液分離ユニット76の構成については、後述する。
【0064】
導入ポート77は、気液分離ユニット76と処理液配管71とに接続されている。導入ポート77は、気液分離ユニット76における気泡排出口760に接続されており、気液分離ユニット76によって分離された気体を、処理液配管71を流れる処理液中に導入する。導入ポート77は、鉛直方向に延びる筒状であり、下端が気液分離ユニット76の上部に接続され、上端が処理液配管71に接続されている。ここでは、導入ポート77は、処理液配管71における開閉バルブ711と放電配管部713との間に接続されている。
【0065】
放電配管部713は、処理液配管71における鉛直方向に沿って延びる筒状の配管部分である。放電配管部713は、気液分離ユニット76より鉛直方向上側に配置されている。導入ポート77から処理液中に導入された気体は、気泡として放電配管部713内を上昇する。
【0066】
2つの放電電極78,78は、放電配管部713を間に挟んで設置されている。放電電極78,78のそれぞれは、例えば板状に形成されており、主面(最も面積が大きい面)が互いに対向するように配置されている。放電電極78,78のそれぞれは、導電線791を介してプラズマ電源79に接続されている。
【0067】
処理液配管71のうち、放電配管部713を除く配管部分はフッ素樹脂などの樹脂で構成されるが、放電配管部713は石英で構成されている。このため、放電電極78,78間にプラズマ電源79が電圧を印加することによって、放電電極78,78の間に配された放電配管部713の内外の空間に誘電体バリア放電を発生できる。なお、放電配管部713は、石英製であることは必須ではなく、樹脂製であってもよい。
【0068】
放電電極78,78は、放電配管部713の内側に配置されていてもよい。この場合、処理液中に放電電極78,78が設置されることになる。処理液中に放電電極78,78を配置する場合、腐食しにくい金属(例えば、白金)などで形成されるとよい。
【0069】
プラズマ電源79は、高周波電力またはパルス電圧を放電電極78,78に印加する。プラズマ電源79が放電電極78,78間に高周波電力またはパルス電圧を印加すると、処理液中の気泡状の気体B1が励起されることにより、放電配管部713内で、酸素ラジカル、水素ラジカル、酸素イオン、水素イオン、オゾンなどの励起成分が生成される(プラズマ発生)。これにより、当該励起成分が溶け込んだ処理液が生成される。
【0070】
放電配管部713にて生成された励起成分を含む処理液は、処理液配管71を通って、ノズル62に送られ、ノズル62の吐出口から基板Wの上面に向けて吐出される。励起成分を含む処理液で基板Wを処理することにより、基板Wの表面を有効に洗浄できる。
【0071】
図3は、気液分離ユニット76を図解的に示す図である。気液分離ユニット76は、循環配管75の途中に設けられた樹脂製の筐体761を有する。筐体761は、水平方向である第1方向D1に延びており、電解液72Lを第1方向D1に導く。筐体761内の開口面積は、循環配管75の開口面積よりも大きくなっている。筐体761内の鉛直方向上部には、第1方向D1に延びる疎水性フィルター素材763が敷き詰められている。導入ポート77内に処理液が充填されている場合、円錐台状部7611の上端部は、導入ポート77内の処理液に接する。
【0072】
筐体761の上部は、鉛直方向上側に向かって先細りとなる円錐台状部7611を有する。円錐台状部7611の内部にも疎水性フィルター素材763が敷き詰められている。円錐台状部7611の上端部は導入ポート77の下端部に接続されている。
【0073】
電解室72において、電気分解によって発生した気体B1を含む電解液72Lが、筐体761を通過すると、当該気体が疎水性フィルター素材763に捕捉される。そして、捕捉された気体B1は、気泡として大きく成長するとともに、疎水性フィルター素材763内を上側へ移動する。気体成分が除去された電解液72Lは、筐体761を第1方向D1に向かって進み、循環配管75へ導かれる。
【0074】
疎水性フィルター素材763内を上昇する気体B1は、円錐台状部7611内を通過して、導入ポート77内の処理液内に放出される。そして、導入ポート77に放出された気体B1は、導入ポート77の上端の開口を通過して処理液配管71内の処理液に導入される。気液分離ユニット76が疎水性フィルター素材763を備えていることにより、導入ポート77に向けて液体が通過することを抑制しつつ、気体を通過させることができる。このため、気液分離ユニット76において、気体の分離効率を高めることができる。
【0075】
なお、気液分離ユニット76は、
図3に示すような構成に限定されるものではない。気体B1を電解液72Lから分離して、導入ポート77に放出することが可能であれば、どのような構成であってもよい。
【0076】
気液分離ユニット76は、疎水性フィルター素材763の代わり、または疎水性フィルター素材763とともに、陰イオン交換膜を備えていてもよい。気液分離ユニット76が陰イオン交換膜を備える場合、水素ガスおよび酸素ガスと陰イオンである水酸化物イオンが、導入ポート77より処理液に供給される。この場合、放電配管部713において、酸化性活性種である酸素ラジカル、酸素イオン、オゾンがより多く生成される。この場合、酸化性活性種を含む処理液で基板Wを処理することができるため、基板W表面の酸化処理効率を向上し得る。
【0077】
イオン交換膜はイオンや気体を通過させるが水はほとんど通過させない性質を持つ。気液分離ユニット76に捕捉されなかった水素イオンは気液分離ユニット76の筐体761の下部領域を通過する電解液72Lに混在した状態で、循環配管75へ流される。
【0078】
気液分離ユニット76は、疎水性フィルター素材763の代わり、または疎水性フィルター素材763とともに、陽イオン交換膜を備えていてもよい。気液分離ユニット76が陽イオン交換膜を備える場合、水素ガスおよび酸素ガスと陽イオンである水素イオンが、導入ポート77より処理液に供給される。この場合、放電配管部713において、還元性活性種である水素ラジカルおよび水素イオンがより多く生成される。この場合、還元性活性種を含む処理液で基板Wを処理することができるため、基板W表面の還元処理効率を向上し得る。気液分離ユニット76に捕捉されなかった水酸化物イオンは、筐体761の下部領域を通過する電解液72Lに混在した状態で、循環配管75へ流される。
【0079】
制御ユニット8は、基板処理装置1の各部の動作を制御する。制御ユニット8のハードウェア構成は、例えば一般的なコンピュータと同一である。すなわち、制御ユニット8は、CPU(プロセッサー)、ROM、RAM(メモリー)、および固定ディスクを備えている。CPUは、各種演算処理を行う演算回路を含む。ROMは、基本プログラムを記憶している。RAMは、各種情報を記憶する揮発性の主記憶装置である。固定ディスクは、および制御アプリケーション(プログラム)またはデータなどを記憶する補助記憶装置である。CPU、ROM、RAM、および固定ディスクは、バスラインで接続されている。
【0080】
制御ユニット8には、画像を表示する表示部、およびキーボードまたはマウスなどを含む操作部が接続される(いずれも不図示)。表示部は、タッチパネルで構成されていてもよく、この場合、表示部は操作部としても機能する。
【0081】
制御部のバスラインには、読取装置および通信部が接続されてもよい。読取装置は、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスクなどのコンピュータ読み取り可能な非一過性の記録媒体から情報の読み取りを行う。通信部は、制御ユニット8と他のコンピュータ(サーバーなど)との間で情報通信を可能にする。プログラムが記録された記録媒体を読取装置で読み取ることにより、当該プログラムが制御ユニット8に提供される。なお、プログラムは、通信部を介して制御ユニット8に提供されてもよい。
【0082】
<動作>
次に、処理ユニット6において、基板Wを処理するときの一連の流れについて説明する。なお、以下に説明する各動作は、特に断らない限り、制御ユニット8の制御下で行われるものとする。また、電解室72内は電解液72Lで充填されており、かつ処理液配管71および導入ポート77も処理液で充填されているものとする。
【0083】
まず、制御ユニット8は、ノズル62が基板Wの上方から退避している状態で、基板Wを保持しているセンターロボットCR(
図1参照)のハンドを基板処理室60の内側に進入させることにより、基板Wが処理対象の表面を上方に向けた状態でスピンチャック61に渡され、スピンチャック61に保持される(基板保持工程)。基板Wがスピンチャック61に保持された後、ノズル62が基板Wの上方に移動される。
【0084】
続いて、制御ユニット8は、電解用電源74を動作させることにより、電解室72において電解液72Lを電気分解する(電気分解工程)。これにより、励起成分の原料となる気体B1(水素、酸素、水素イオンおよび酸素イオンなど)が生成される。
【0085】
電気分解によって生成された気体B1は電解液72Lとともに循環配管75を通って、気液分離ユニット76に送られる。気液分離ユニット76は、電解液72Lから気体B1を分離して、導入ポート77内の処理液中に放出する。処理液中に放出された気体B1は、導入ポート77に接続された処理液配管71の内側に導入される(導入工程)。気体B1は、処理液配管71の放電配管部713に到達する。
【0086】
制御ユニット8は、プラズマ電源79を駆動することによって、放電電極78,78間に電圧を印加する。これにより放電配管部713においてプラズマが発生する。すると、放電配管部713において気体B1から、酸素ラジカル、水素ラジカル、酸素イオン、水素イオン、オゾンなどの励起成分が生成される(プラズマ励起工程)。制御ユニット8は、励起成分が溶け込んだ処理液をノズル62から基板Wに供給する(処理液供給工程)。これにより、励起成分を含む処理液で基板Wが洗浄される。
【0087】
<効果>
上記特許文献1,2のように、プラズマを生成する液体中に電極が位置する場合、電極材料が液中に溶出するため、基板を処理する処理液が汚染されるおそれがある。また、特許文献1のように、外部から気体を処理液に導入する場合、清浄度の高い処理液を得るためには、高純度のガスを処理液に供給する必要があるため、ランニングコストが問題となる。
【0088】
これに対して、基板処理装置1では、流体ボックス7において、処理液配管71における基板処理室60と導入ポート77との間の放電配管部713に放電電極78,78が設けられる。このため、液中プラズマによって生成された活性を有する励起成分を含む処理液を基板Wに供給できる。また、電解液72Lの電気分解によって、励起成分の材料となる気体B1を生成できるため、ランニングコストの低下をはかることができる。
【0089】
また、電解液72Lを電気分解することによって電解液72L中に水素、酸素などの気体B1を発生させ、これを気液分離ユニット76で分離して処理液配管71に供給する。これにより、電解液72Lが直に処理液に接することを抑制しつつ、高純度の気体B1を処理液に導入できる。このため、基板Wに供給される処理液が、気体B1の導入によって汚染されることを抑制できる。
【0090】
また、放電電極78,78が放電配管部713の外側に配置されているため、放電電極78,78の腐食などによって基板Wに供給される処理液が汚染されることを抑制できる。
【0091】
<2. 変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0092】
上記実施形態では、基板処理装置1において、電解液72Lの電気分解によって生成された気体B1を電解液72Lから分離し、処理液配管71内の処理液に導入している。しかしながら、基板処理装置1の外部で生成されたガス(液中プラズマによって励起される気体)を、処理液配管71内の処理液に導入してもよい。この場合、例えば、ガスを貯留したボンベまたはタンク(ガス供給源)に接続されるガス供給配管を処理液配管71に接続して、放電配管部713にガスを導入してもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、回転駆動モータ65によって基板Wを回転させながら、ノズル62から処理液を吐出することにより、基板Wの上面全体に処理液を行き渡らせている。しかしながら、基板Wを回転させることは必須ではない。例えば、ノズル62の代わりに、基板Wの直径とほぼ同一長さを有する細隙状の吐出口を備えたスリットノズルを設け、当該スリットノズルを基板Wの上方で移動させつつ、吐出口から処理液を吐出させてもよい。この場合、基板Wを回転させずに基板Wの上面全体に処理液を供給できる。
【0094】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0095】
1 基板処理装置
6 処理ユニット
60 基板処理室
61 スピンチャック
62 ノズル
67 挟持部材
68 ヒーター
7 流体ボックス
71 処理液配管
713 放電配管部
72 電解室
723 電解液供給配管
72L 電解液
73 電解用電極
74 電解用電源
75 循環配管
76 気液分離ユニット
763 疎水性フィルター素材
77 導入ポート
78 放電電極
79 プラズマ電源
8 制御ユニット
B1 気体
W 基板