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特許7193360バルーンシール応力の軽減並びにそれに関するシステム及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】バルーンシール応力の軽減並びにそれに関するシステム及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20221213BHJP
【FI】
A61M25/10 502
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019011570
(22)【出願日】2019-01-25
(62)【分割の表示】P 2016500331の分割
【原出願日】2014-02-21
(65)【公開番号】P2019093168
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2019-02-22
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】61/799,638
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/185,223
(32)【優先日】2014-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】キャリー ブイ.キャンベル
(72)【発明者】
【氏名】シーナ ジャルディーニ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ エル.ゲープフリッチ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー イー.モールディング
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン エム.トラップ
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】井上 哲男
【審判官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-52219(JP,A)
【文献】特表2010-500113(JP,A)
【文献】特表2010-500108(JP,A)
【文献】特開2005-230535(JP,A)
【文献】国際公開第2010/079494(WO,A1)
【文献】特開2011-206124(JP,A)
【文献】特表2006-504848(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0012934(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
A61F 2/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部分及び2か所の肩部分を有する拡張可能なバルーンの第1のシール部分と第2のシール部分にかかる円周方向の応力を軽減するための該拡張可能なバルーンを製造するための方法であって、
第1の直径の円周面を形成するように膨張可能な本体部分を含むバルーンを準備する工程、
該バルーンを第1の端部でシールして第1のシール部分を形成し、第2の端部で第2のシール部分を形成する工程、ここで各シール部分は第1の直径よりも小さい第2の直径を有する、
該2か所の肩部分のうちの少なくとも1か所の少なくとも一部に沿って前記バルーンの周りに負荷分散部材を配置する工程、ここで該負荷分散部材は該肩部分の少なくとも1つが、少なくとも肩部分の区域に沿って該第1の直径と該第2の直径の間の中間直径を超えて膨らむのを抑制する、そして
該負荷分散部材を使用して、該中間直径で1つまたは複数の円周方向の段を含む段付き形状を形成する工程、ここで前記少なくとも1つの肩部分は前記本体部分の円周面に垂直な面を含む、
を含む方法。
【請求項2】
前記バルーンの周りに負荷分散部材を配置する工程は、バルーンの周りに延伸フルオロポリマーを含むポリマー材料を巻き付けることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記負荷分散部材が構造補強部材を含んでいる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記負荷分散部材が、本体部分の材料よりも伸張性が低い第2の材料で高密度化又は吸収済みの材料を含んでいる、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記延伸フルオロポリマーが、高密度化済み延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含むか、あるいはフッ素化エチレンプロピレン(FEP)、PATT、熱可塑性材料、又はナイロンの第二の材料を吸収させたePTFEを含む、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概してバルーンカテーテルに関連する不具合の発生を低減するためのバルーンシール応力の軽減に関する。
【背景技術】
【0002】
バルーンカテーテルは、内部人工器官を展開させる医療処置において使用することが多い。よくある状況では、シールによってカテーテルシャフトに固定されているバルーンを水圧でふくらませ、それによって、その上を覆う内部人工器官を、送達用の小さい直径から動作用の大きい直径まで展開させる。経皮経管的血管形成(PTA)又は局所的な薬物送達といった医療処置に使用されるバルーンでは、10~30気圧程度の高いバルーン圧力が必要なこともある。好ましくないバルーンの不具合を予防又は緩和するためにバルーンシールを頑強にする、或いはシールに加える応力を軽減することが、特に高圧で適用する際に有益になり得る。
【0003】
加えて、バルーンシールに加える応力の大きさを軽減することは、特に、使用圧力範囲へ膨らむと、前もって形成された(pre-formed)形状又は前もって成形された(pre-molded)形状を維持しないような材料から構築された拡張可能なバルーンにとって有益になり得る。しかし、これらのタイプの材料は、膨張の際のバルーンの肩領域の形状が問題となる。肩領域に膨らむことができる材料を用いる斯かるバルーンでは、膨張の際の肩壁面の形状につき、動作長(working length)とシールとの間の直径が先細になっていない、例えば肩がより垂直(直角)または略垂直である、あるいは時に逆の状態になると考えられることが多い。これは、膨張により、動作長の端部からバルーンシール向かって先細になる肩壁面形状、例えば円錐形、になる略膨張不可能な(例えば、非柔軟性の)材料で特に前もって形成又は成形された材料から作られたバルーンと対照的である。肩部が先細でないと、隣接しているバルーンシールにかかる応力が大きくなってしまう。バルーンが円錐形ではなくより「直角な」肩部を有している場合のバルーンシールは、そのシール部においてより高い圧力に耐えることになる。そうした肩形状を有するバルーンは、斯かるシール圧を軽減するデザインの利益を享受できる。
【発明の概要】
【0004】
本開示のバルーンは、負荷分散部材を追加すること等により、負荷分散形状を有する肩部分を有する。
【0005】
開示の一態様によると、バルーンは、第1の直径まで膨らむことができ(inflatable)、且つ、巻き付けられた(wrapped)ポリマー材料を含んでいる本体部分;それぞれ第1の直径より小さい第2の直径を有する2か所のシール部分;及びそれぞれ第1の直径と第2の直径の間の移行を規定する2か所の肩部分を含んでいてもよく、ここで、少なくとも1か所の肩部分は、肩部分の少なくとも一部に沿いが第1の直径と第2の直径の間の直径を超えて膨らむのを抑制するのに適した負荷分散部材を含んでいる。本体部分は2か所の肩部の間に延伸し、2か所の肩部及び本体部分は2か所のシール部分の間に延伸する。
【0006】
本発明のもう1つの態様によると、バルーンは、第1の直径まで膨らむことができる本体部分;それぞれ第1の直径より小さい第2の直径を有する2か所のシール部分;及びそれぞれ第1の直径と第2の直径の間の移行を規定する2か所の肩部分を含んでいてもよく、ここで少なくとも1か所の肩部分は、バルーンの膨張のときに階段状の形状を含んでいる。
【0007】
本発明のもう1つの態様によると、本体部分及び2か所の肩部分を有する拡張可能な(expandable)バルーン上のシール部分にかかる円周方向の応力(hoop stress)を軽減するための方法は、該2か所の肩部分のうちの少なくとも1か所の少なくとも一部に沿ってバルーンの周りに負荷分散部材を配置する工程を含み、ここで、該バルーンは巻き付けられたポリマー材料を含んでいる。
【0008】
本開示の様々な態様は、あらゆる組合せによるさまざまな追加又は代替の特徴を含み得る。様々な実施態様において、巻き付けられたポリマー材料は、延伸ポリテトラフルオロエチレンなどの延伸フルオロポリマーであってもよい。様々な実施態様において、本体部分の外縁及びシール部分の内縁は、互いに長手方向にオフセットされていてもよい。様々な実施態様において、負荷分散部材は、構造補強部材部材を含んでいてもよい。様々な実施態様において、負荷分散部材は、肩部分の実質的な部分(substantial portion)に沿って広がっていてもよい。様々な実施態様において、肩部分は先細の形状を含んでいてもよい。様々な実施態様において、負荷分散部材は、切頭円錐形状の構造補強部材を含んでいてもよい。様々な実施態様において、負荷分散部材は、円錐形の形をしたマンドレルに巻き付けられ、場合により高密度化又は吸収済み(densified or imbibed)の材料を含んでいてもよい。様々な実施態様において、負荷分散部材は、先細の形状に成形された膨張性の低いポリマー材料を含んでいてもよい。様々な実施態様において、肩部分は階段状の形状を含んでいてもよい。様々な実施態様において、負荷分散部材は、肩部分の中間部分に区分して設けても(isolated)よい。様々な実施態様において、負荷分散部材は、巻き付けられたポリマー材料より高い硬度(durometer)を有する材料を含んでいてもよい。様々な実施態様において、負荷分散部材は、高密度化済みのePTFE又は吸収済みのePTFEのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。様々な実施態様において、負荷分散部材は、膨張性が低いポリマー膜による複数の巻き付けを含んでいてもよい。様々な実施態様において、負荷分散部材は、バルーンの本体部分の外側に配置されていてもよい。様々な実施態様において、負荷分散部材は、パターンカット補強部材、適宜ニチノールを含んでいてもよい。
【0009】
添付図面は、本開示の更なる理解をもたらすために含まれており、本願明細書の一部に援用され、且つ、本願明細書の一部を構成し、本開示の実施態様を例示し、そして、本明細書の記載と共に本開示の原理を説明する役割を担っている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、直角状の肩部を有するバルーンカテーテルの横断面図を例示する。
【0011】
図2A図2Aは、本開示による階段状の肩形状を有するバルーンカテーテルの横断面図を例示する。
【0012】
図2B図2Bは、本開示による円錐形の肩形状を有するバルーンカテーテルの横断面図を例示する。
【0013】
図2C図2Cは、本開示による階段状の肩形状を有する別のバルーンカテーテルの横断面図を例示する。
【0014】
図3図3A~Cは、圧力が上がるまで膨らませた本開示によるバルーンカテーテルに関する例を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
当業者は、本開示の様々な実施態様は予定の機能を果たすように構成された多数の方法及び装置によって実現できることが容易に分かるだろう。言い換えると、予定の機能を果たすために他の方法及び装置を本出願に組み込むことができる。本出願において参照する添付図面は、全てが縮尺通りに描かれておらず、本発明の様々な実施態様を図解するために誇張する場合があり、この点に関して、図面は限定的なものと見なされるべきではない。最後に、本開示について様々な原理及び確信に関連して説明するが、本開示は、理論に拘束されるべきではない。
【0016】
概して、本開示はバルーンシールに直接かかる応力を軽減するデバイス、システム及び方法に関する。
【実施例
【0017】
図1に関して、本開示はバルーン100を含む。概して、バルーン100は、つぶれた形態と拡張形態を含む。拡張形態では、バルーン100は、バルーン100の各端部に肩部分110をさらに含む。肩部分110とは、バルーン100の直径が、バルーン100の本体部分又は動作長120のより大きい直径と、バルーン100のシール部分130のより小さい直径との間で円周方向に移行する領域である。図1に示すように、これらの肩領域は、膨らんだときに、先細形状ではなく、略垂直及び/又は直角な形状を想定してもよい。
【0018】
例示されるように、シール部分130は一般に、カテーテル140の周りにバルーン100を固定し、バルーン100とカテーテル140との間の液体密封の接合部分を設ける働きをする。カテーテル140は一般的に、膨張媒体を用いてバルーンを膨張させるための膨張管腔と出口(図示せず)を備える。一実施態様において、シール部分130は、フィルムの少なくとも一面に又は少なくとも部分的に、ポリマー及び/又は接着剤を吸収させるか堆積させたポリマー膜による複数の巻き付けなどの補強特徴を含んでいる。例えば、少なくとも部分的にシアノアクリレートを吸収させたePTFEフィルムによる複数の巻き付けを用いてシール補強を形成できる。
【0019】
バルーン100は、バルーン100の実質的な部分を覆うバルーンカバーをさらに含む。本明細書中に使用される場合、形状及び以下で記載した構造形態がバルーンと同じ又は同様の様式でバルーンカバーにも適用されるので、「バルーン」に対してなされる言及は「バルーンカバー」を含むようにも解釈されるものとする。
【0020】
バルーン100は、対応~準対応する材料又は膨張性が制限されたバルーンを構築するのに使用される材料、例えば巻き付けられたポリマー材料を含む。例えば、バルーン100は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(「ePTFE」)、延伸修飾PTFE、PTFEの延伸コポリマー、延伸ポリエチレンなどといったフルオロポリマーを1つ若しくは複数含む。様々な実施態様において、バルーン100は、バルーン100形成するためにePTFEフィルムを巻き付けることによるなどして、螺旋状に、円周方向に、軸方向に配向したバルーン壁面を含んでいてもよい。本明細書中に使用される場合、「軸方向」という用語は、「長手方向」という用語と互換可能である。本明細書中に使用される場合、「円周方向」は長手方向の軸に対して垂直な角度を実質的に意味する。本明細書中に使用される場合、「螺旋状」は、長手方向の軸に平行でなく、且つ、実質的に垂直でもない角度を意味する。様々な実施態様において、螺旋状に配向するバルーン材料を形成するために、フィルムが管状の形へと螺旋状に巻き付けられる。配向とは、強度又は微細構造特徴、例えば微細繊維などの特定の特性についての方向を指してもよい。
【0021】
同様の特性を有するその他の材料も本開示の範囲内にある。例えば、バルーン100は、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA又はアクリル)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、改質ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、セルロースアセテートブチレート(CAB)を含む非晶質汎用熱可塑性材料;ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE又はLLDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)を含む半結晶性汎用プラスチック;ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、改質ポリフェニレンオキシド(Mod PPO)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、改質ポリフェニレンエーテル(Mod PPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含む非晶質エンジニアリング熱可塑性材料;ポリアミド(PA又はナイロン)、ポリオキシメチレン(POM又はアセタール)、ポリエチレンテレフタレート(PET,熱可塑性ポリエステル)、ポリブチレンテレフタレート(PBT,熱可塑性ポリエステル)、超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)を含む半結晶性エンジニアリング熱可塑性材料;ポリイミド(PI,イミド化プラスチック)、ポリアミドイミド(PAI,イミド化プラスチック)、ポリベンゼンイミダゾール(PBI,イミド化プラスチック)を含む高性能熱可塑性材料;ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルイミド(PEI),ポリエーテルスルホン(PES),ポリアリールスルホン(PAS)を含む非晶質高性能熱可塑性材料;ポリフェニレンスルフィド(PPS),ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含む半結晶性高性能熱可塑性材料;及びフッ素化エチレンプロピレン(FEP)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、エチレン、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)を含む半結晶性高性能熱可塑性材料、フルオロポリマーなどの一般的に知られているさまざまな材料から作られ得る。他の一般的に知られている医療品グレードの材料は、エラストマー有機ケイ素ポリマー、ポリエーテルブロックアミド又は熱可塑性コポリエーテル(PEBAX)を含む。加えて、拡張可能なバルーンは、ウレタン、シリコーン、フルオロエラストマー、エラストマー、及びポリエーテルブロックアミドから作製されてもよい。
【0022】
本開示によると、図2A~2Cに関して、バルーン100の肩部分110は、膨らむと負荷分散形状を含むようになってもよい。さらに、バルーン100の肩部分110は、膨らむと負荷分散形状になりやすくする1若しくは複数の負荷分散部材を含んでいてもよい。
【0023】
負荷分散形状は一般に、バルーンシールに直接かかる応力を軽減するような、バルーン100の肩部分110の任意の膨らんだ形状である。理論値によって拘束する意図ではないが、円周方向及び端部の応力は、シールに隣接したバルーン直径に正比例するため、全直径からシール直径までゆるやかに(例えば、傾斜若しくは曲線状に)又は階段状に減少するにつれて低減すると考えられる。この点で、バルーン100は長手方向沿いに延伸する軸を含み得て、本体部分120の外縁121とシール部分130の内縁131は、長手方向でオフセットされていても又は隙間があってもよい。より詳しく述べると、非限定的な例によると、負荷分散形状は階段状の形状又は円錐形の形状を含んでいてもよい。
【0024】
例えば、そして、図2A及び2Cに図示するように、階段状の形状は、バルーン100の本体部分120のより大きい直径と、バルーン100のシール部分130のより小さい直径との間の中間的な直径を有する1若しくは複数の円周状の段差部112を含んでいてもよい。例示したように、段差部112は、本体部分120の直径よりも小さい直径の円周状の隆起を含んでいてもよい。その隆起は、長手方向の軸に対して実質的に平行に配向されていてもよい。階段状のバルーン肩部110は、隆起に隣接する約90度の角度を成す少なくとも2か所の部分を含んでいてもよいが、他に90度より大きいまたは小さい角度も本開示の範囲内にある。
【0025】
図2Bに示すように、円錐形又は先細の形状は、バルーン100の本体部分120のより大きい直径とバルーン100のシール部分130のより小さい直径との間に円周状のテーパー114を含む。例示したとおり、テーパー114は約35~65度の角度を成すが、記載した範囲より大きいまたは小さい角度も本開示の範囲内にある。
【0026】
他の形状、例えば、バルーン100の本体部分120のより大きい直径とバルーン100のシール部分130のより小さい直径との間に曲線状の移行部を含む形状もまた、本開示の範囲内にある。
【0027】
様々な実施態様において、負荷分散形状は、1若しくは複数の負荷分散部材によってバルーンの肩に設けられる。負荷分散部材の少なくとも一部は本体部分よりも膨張性が低い。膨張性が低い負荷分散部材は、本体部分の材料より高い硬度又は剛性の材料、本体部分材料又は構築物よりも膨張性が低い材料及び/又は構築物、或いは中間直径、すなわち、バルーンの本体部分のより大きい直径とバルーンのシールのより小さい直径との間の直径、を超えて肩部分が膨らむのを抑制する任意の材料又は構築物を含みうる。様々な実施態様において、負荷分散部材は、バルーンの本体部分又は動作長の外側、例えば内部人工器官の管腔表面及び/又は周囲組織と接触することが意図される部分、に存在し、肩部分から離れて存在するか、またはバルーンのシールに向かう方向のみに沿って延伸する。
【0028】
いくつかの実施態様において、負荷分散部材は、負荷分散形状になるのを促進するものの、肩110の実質的な部分に沿って広がるわけではない;例えば、その負荷分散部材は肩の中間部に区分して設ける。限定されない例として、図2Aに示すように、負荷分散部材は、円周状の段差部112をつけやすくし、肩の形状を階段状にするバンド113を含んでいてもよい。他の実施態様において、負荷分散部材は、肩110の実質的な部分に沿って広がっている。例えば、図2Bに示すように、負荷分散部材は、肩の形状が円錐形又は先細になるように肩110の実質的な部分に沿って広がる切頭円錐115を含んでいてもよい。他の形状もまた本開示の範囲内にある。
【0029】
図2Cに示すように、他の実施態様では、肩部分110が、複数の負荷分散部材、例えば2つ以上のバンド113、を含んでいてもよい。
【0030】
いくつかの実施態様において、負荷分散部材は、バルーン材料が変形しているバルーンの一領域(例えば、バンド又は切頭円錐領域)である。斯かる変形の例として、肩の標的領域に沿ってバルーン材料、例えばePTFE、を高密度化することが挙げられる。斯かる高密度化は、先細の負荷分散形状を作り出すために階層化してもよい。様々な実施態様において、高密度化は、バルーン材料の標的領域に圧力及び/又は局所的な熱を加えることによって(例えば、焼結、レーザー処理、パターン状のレーザー処理などによって)達成される。
【0031】
別のこうした変形は、概して膨張性が低い又は全く膨張できない材料(例えば、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、PATT、熱可塑性材料、ナイロンなど)を、バルーンの肩の標的領域にコーティングするか又は吸収させることを含む。例えば、ePTFEバルーン材料を含む説明に役立つ実施態様において、吸収させることは、標的領域において、多孔性ePTFEの細孔を、概して膨張性が低いポリマー材料で少なくとも部分的に満たすことを伴う。
【0032】
様々な実施態様において、肩部分は、バルーンの本体部分の材料より高い硬度を有する第2の材料を本質的に含む又はかかる材料から成っていてもよい。言い換えれば、本体部分の材料は、本体部分からシールまで肩部分に沿いに連続しておらず、肩部分の少なくとも一部で第2の材料をはさんでもよい。
【0033】
様々な実施態様において、負荷分散部材は、バルーン領域に追加された(例えば、バンド又は切頭円錐の形状を有する)構造補強部材であってもよい。斯かる構造補強部材は、バルーン層と層の間、バルーンとバルーンカバーの間、バルーンの表面、及び/又はバルーン壁の裏に位置していてもよい。斯かる構造補強部材は、(熱処理及び/又は接着剤の使用などにより)バルーン/バルーンカバーに接着しても又は別の方法で適切な位置に固定してもよい。斯かる実施態様の態様によると、構造補強部材は、巻き付けられた部材、成形された部材、織られた若しくは編まれた部材、金型切断又はレーザー切断部材、又はその他の適切に造形された補強構築物を含んでいてもよい。
【0034】
例えば、構造補強部材は、先に記載のとおり適切な形状のマンドレルに巻き付けられた高密度化又は吸収済みの材料を含んでいてもよい。
【0035】
例えば、構造補強部材は、適切な形状に成形(例えば、吹込又は押出成形)した本体部分より高い硬度のポリマー材料を含んでいてもよい。
【0036】
例えば、構造補強部材は、パターンカット補強部材又は類似の構造物を含んでいてもよい。パターンカット補強部材は、ニチノール又は他の類似する形状記憶材料を含み得る。例えば、ニチノール補強部材は、階段状の形状にしやすくするためにステント環のような折りたたみ可能な環状部材を含んでいてもよい。あるいは、ニチノール補強部材は、拡張状態において切頭円錐形状となるような、例えば、環状基部、を含んでいてもよく、これは、シールと同位置であってもよく、バルーンが膨張すると切頭円錐状の負荷分散形状を形成するようにバンドから延伸する複数のニチノールの筋交いを有することで形成されていてもよい。
【0037】
これにより、本開示によると、負荷分散形状は、バルーンシールに直接かかる応力を軽減し、その結果、バルーンカテーテルに関連する不具合の発生を低減する。
【0038】
階段状の負荷分散形状を含むePTFE巻き付けバルーンカバーの作製例:
【0039】
階段状のバルーンは次のようにして製造される。ePTFEバルーンカバー(例えば、巻き付けられたePTFEフィルムを含むカバー)は、第1の直径(例えば、8ミリメートル)でマンドレルに載置し、約0.070インチ(1.778ミリメートル)の首直径を有する首部分まで直径を狭める又は小さくする。次に、カバーを、約4ミリメートルまで拡張し、同様の大きさのマンドレルに載置できる。次いで、テトラフルオロエチレンの熱可塑性コポリマーとペルフルオロアルキルビニルエーテル(米国特許第7,462,675号に記載、この文献の全体を参照により本明細書中に援用する)で被覆した異方性ePTFEフィルム細片(幅約5mm)を、肩部分の一部になるカバー部分のカバーの周りに巻き付けてもよい。フィルム細片の強靭方向がバルーンの円周の周りに配向されるように、フィルムを少なくとも2回巻き付けることができる。ePTFEフィルム細片は、Kennedyの米国特許第7,521,010号(この文献の全体を参照により本明細書中に援用する)の教示に略従って製造される2~6μmの密度の強度のあるePTFEであってもよい。コポリマーコーティングの厚さは1~3μmの範囲であり得る。5mmのePTFEフィルム細片を巻き付けたカバー部を、巻き付け後に加熱処理して、層同士及び層とカバー間を接着させる。次いで、カバーをバルーン上に配置し、各端部においてカテーテルに固定できる。
【0040】
カバー付きバルーンは特定の温度で収縮(shrink or contract)するように構成された材料でできたチューブ(例えば、FEP収縮チューブ)内に挿入し、カバー付きバルーンを位置決めした後で摂氏約260度で加熱できる。カバー付きバルーンは、半径方向の押し潰し機を使用して、4mmの中間直径から約0.100インチ(2.5ミリメートル)に直径を低減する又はサイズを小さくしてもよい。
【0041】
これにより、上述のように、バルーンが階段状の負荷分散形状に製造できる。図3A~3Cは、14から24気圧まで圧力を上げて膨らませた斯かるカバー付きバルーン300を示す。見てとれるように、低圧の場合、高圧下に比べ、本体部分120のバルーンの直径と円周状の段差部312の直径の差が小さいが、バルーン300の本体の直径が高圧下で大きくなっていても、円周状の段差部312は中間直径を超えて膨らむことはできない。
【0042】
本開示の要旨又は範囲から逸脱することなく様々な変形及び変更がされ得ることは、当業者に明らかである。よって、本明細書中に記載した実施態様は、添付の請求項及び均等物の範囲内に含まれる限り、本開示の変形及び変更をも包含する意図である。
【0043】
以上の説明において、装置及び/又は方法の構造及び機能の詳細と一緒に様々な代替策を含めて多数の特徴及び利点を示した。開示は単に例示的なものであり、網羅的であることを意図しない。当業者には、特に、構造、材料、要素、構成部品、形状、サイズ及び部品の配列に関して、特許請求の範囲において表示される用語の広義の一般的意味によって示される全ての範囲で、本発明の原則内での組合せを含めて様々な改変を加えることができることが、明らかであろう。これらの様々な改変が請求項の主旨及び範囲から逸脱しない限り、これらの改変は本発明に包含される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3