(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】螺旋管用帯状部材及びその補強帯材
(51)【国際特許分類】
B29C 63/32 20060101AFI20221213BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B29C63/32
F16L1/00 J
(21)【出願番号】P 2019019090
(22)【出願日】2019-02-05
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】津田 直弥
(72)【発明者】
【氏名】馬場 達郎
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-204718(JP,A)
【文献】特開2017-057920(JP,A)
【文献】特開平08-296767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/32
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の断面を有して帯長方向へ延び、かつ螺旋状に巻回されて
埋設管の内周にライニングされる螺旋管
状の更生管となる帯状部材であって、
樹脂製の帯本体と、
前記帯本体の前記帯長方向及び幅方向と直交する表裏方向における裏側部に設けられた鋼製の補強帯材と、
を備え、
前記帯本体が、平坦な平帯部と、前記平帯部の裏側面の幅方向に互いに離れて前記表裏方向の裏側へ突出するように設けられた一対のリブを含み、前記補強帯材が、
前記帯本体に係止される一対の腕板部と、
前記一対の腕板部の互いに対向する端部から裏側へ立ち上がる一対の側板部と、
前記一対の側板部の裏側の端部間に架け渡された天板部と、
を含み、
前記補強帯材が前記一対のリブを跨いでおり、
前記天板部が、
前記一対のリブに被さるように幅30mm以上であり、かつ前記表裏方向の裏側へ凸又は表側へ凹をなす波打ち変形抑制部を有していることを特徴とする帯状部材。
【請求項2】
前記天板部の幅方向の全域又は一部が、裏側へ凸又は表側へ凹の円弧状の断面に形成されることによって前記波打ち変形抑制部を構成し、前記天板部の前記表裏方向に沿う高さが、前記天板部の幅の2分の1~4分の1であることを特徴とする請求項1に記載の帯状部材。
【請求項3】
前記天板部の幅方向の一部が、表側へ凹む凹状断面に形成されることによって前記波打ち変形抑制部を構成し、
前記波打ち変形抑制部の前記表裏方向に沿う高さが、前記側板部の高さの5分の1~10分の1であることを特徴とする請求項1に記載の帯状部材。
【請求項4】
前記天板部の幅方向の全域又は一部が、波形断面に形成されることによって前記波打ち変形抑制部を構成していることを特徴とする請求項1に記載の帯状部材。
【請求項5】
一定の断面を有して帯長方向へ延び、かつ螺旋状に巻回されて
埋設管の内周にライニングされる螺旋管
状の更生管となる帯状部材における樹脂製の帯本体の前記帯長方向及び幅方向と直交する表裏方向における裏側部に設けられた鋼製の補強帯材であって、
前記帯本体に係止される一対の腕板部と、
前記一対の腕板部の互いに対向する端部から裏側へ立ち上がる一対の側板部と、
前記一対の側板部の裏側の端部間に架け渡された天板部と、
を含み、
前記帯本体の平坦な平帯部の裏側面の幅方向に互いに離れて前記表裏方向の裏側へ突出するように設けられた一対のリブを、前記補強帯材が跨いでおり、
前記天板部が、
前記一対のリブに被さるように幅30mm以上であり、かつ前記表裏方向の裏側へ凸又は表側へ凹をなす波打ち変形抑制部を有していることを特徴とする帯状部材の補強帯材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、螺旋状に巻回されることによって螺旋管となる帯状部材に関し、特に帯状部材の樹脂製の帯本体を補強する鋼製の補強帯材の形状に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、老朽化した下水道管等の埋設管の更生方法として、帯状部材を埋設管の内周面に沿って螺旋状に巻回して、螺旋管からなる更生管を形成する方法が知られている(特許文献1等参照)。特許文献1の帯状部材は、ポリ塩化ビニル等の樹脂からなる一定断面の帯本体を含む。該帯本体の裏側部(螺旋管となったとき外周側を向く側部)に鋼製の補強帯材が設けられている。
【0003】
当該補強帯材は、概略M字状の断面に形成され、帯本体と同方向に延びている。補強帯材の幅方向の両側の一対の腕板部が、帯本体に係止されている。これら腕板部の互いに対向する内端部から一対の側板部が裏側(外周側)へ立ち上がっている。一対の側板部の裏側(外周側)を向く先端部間に天板部が架け渡されている。天板部は、平坦に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者の知見によれば、この種の帯状部材においては、寸法ないしは断面形状によっては、巻癖すなわち曲率を付けた後、その曲率を小さくするか直線状になるまで曲げ戻すと、天板部に波打ち変形(波打ったような跡)が形成され、座屈が起こりやすくなる。座屈せずとも、天板部に波打ち変形が残ることで、外観不良や更生管の強度低下に繋がる。特に、天板部が平坦かつ幅30mm以上であると、波打ち変形が形成されやすい。これは天板部の剛性が低下することに起因するものと考えられる。
本発明は、かかる事情に鑑み、螺旋管となる帯状部材において、巻癖付与や曲げ戻し等の曲率変更操作により補強帯材の天板部が波打ち変形を来たすのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、発明者は鋭意研究を行った。
具体的には、補強帯材の特に天板部の断面形状を種々設定して、曲率変更操作を行った場合の天板部の波打ち変形の有無ないしは度合いをCAE(Computer Aided Engineering)解析によって評価した。その結果、天板部の帯長方向と直交する断面を所定の非直線形状とすることによって、波打ち変形を抑制できることが判明した。
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものであり、一定の断面を有して帯長方向へ延び、かつ螺旋状に巻回されて螺旋管となる帯状部材であって、
樹脂製の帯本体と、
前記帯本体の前記帯長方向及び幅方向と直交する表裏方向における裏側部に設けられた鋼製の補強帯材と、
を備え、前記補強帯材が、
前記帯本体に係止される一対の腕板部と、
前記一対の腕板部の互いに対向する端部から裏側へ立ち上がる一対の側板部と、
前記一対の側板部の裏側の端部間に架け渡された天板部と、
を含み、前記天板部が、幅30mm以上であり、かつ前記表裏方向の裏側へ凸又は表側へ凹をなす波打ち変形抑制部を有していることを特徴とする。
【0007】
前記天板部の幅方向の全域又は一部が、裏側へ凸又は表側へ凹の円弧状の断面に形成されることによって前記波打ち変形抑制部を構成し、前記天板部の前記表裏方向に沿う高さが、前記天板部の幅の2分の1~4分の1であることが好ましい。
【0008】
前記天板部の幅方向の一部が、表側へ凹む凹状断面に形成されることによって前記波打ち変形抑制部を構成し、前記波打ち変形抑制部の前記表裏方向に沿う高さが、前記側板部の高さの5分の1~10分の1であることが好ましい。
【0009】
前記天板部の幅方向の全域又は一部が、波形断面に形成されることによって前記波打ち変形抑制部を構成していることが好ましい。
【0010】
本発明に係る帯状部材の補強帯材は、一定の断面を有して帯長方向へ延び、かつ螺旋状に巻回されて螺旋管となる帯状部材における樹脂製の帯本体の前記帯長方向及び幅方向と直交する表裏方向における裏側部に設けられた鋼製の補強帯材であって、
前記帯本体に係止される一対の腕板部と、
前記一対の腕板部の互いに対向する端部から裏側へ立ち上がる一対の側板部と、
前記一対の側板部の裏側の端部間に架け渡された天板部と、
を含み、前記天板部が、幅30mm以上であり、かつ前記表裏方向の裏側へ凸又は表側へ凹をなす波打ち変形抑制部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、螺旋管用帯状部材に対して巻癖付与及び曲げ戻し等の曲率変更操作を行っても、補強帯材における天板部の波打ち変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る帯状部材の断面図である。
図1(b)は、前記帯状部材の補強帯材の断面図である。
【
図2】
図2は、前記帯状部材によって更生施工中の埋設管の側面断面図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線に沿う、前記埋設管の正面断面図である。
【
図5】
図5(a)は、本発明の第2実施形態に係る帯状部材の断面図である。
図5(b)は、前記第2実施形態の帯状部材の補強帯材の断面図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明の第3実施形態に係る帯状部材の断面図である。
図6(b)は、前記第3実施形態の帯状部材の補強帯材の断面図である。
【
図7】
図7(a)は、本発明の第4実施形態に係る帯状部材の断面図である。
図7(b)は、前記第4実施形態の帯状部材の補強帯材の断面図である。
【
図8】
図8は、実施例1~3のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施例1~3のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態>
図2に示すように、本発明形態は、例えば老朽化した既設の埋設管1の更生に適用される。埋設管1としては下水道管が挙げられるが、これに限らず、農業用水管、上水道管、ガス管、水力発電導水管などであってもよい。
図3に示すように、本形態における埋設管1の断面は、例えば馬蹄形ないしは卵形等の異形断面(非真円形断面)になっている。
【0014】
図2及び
図3に示すように、埋設管1の内周に更生管9がライニングされることによって、埋設管1が更生されている。更生管9は、帯状部材10からなる螺旋管である。
図1(a)に示すように、帯状部材10は、帯長方向(
図1の紙面と直交する方向)へ延びるとともに、帯長方向と直交する断面形状が一定に形成されている。
図4に示すように、該帯状部材10が、埋設管1の内周面に沿って螺旋状に巻回されるとともに、帯状部材10の幅方向(
図4の左右方向)の一側縁と他側縁との互いに一周違いに対向する側縁部どうしが凹凸嵌合によって接合され、螺旋管状の更生管9となる。
【0015】
詳しくは、
図1(a)に示すように、帯状部材10は、帯本体11と、補強帯材20を含む。帯本体11は、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂によって構成されている。帯本体11は、平坦な平帯部12と、第1嵌合部13と、第2嵌合部14と、リブ15を有し、一定の断面形状に形成されて、
図1(a)の紙面と直交する帯長方向へ延びている。平帯部12の厚み方向が、帯状部材10の表裏方向(
図1(a)において上下)へ向けられている。平帯部12の表側面(
図1(a)において下面)は平滑面になっている。平帯部12の裏側面(
図1(a)において上面)に2つ(複数)のT字断面のリブ15が設けられている。
図4に示すように、更生管9(螺旋管)においては、帯状部材10の裏側部が更生管9の外周側へ向けられる。平帯部12の表側面が更生管9の内周面を構成する。
【0016】
図1(a)に示すように、平帯部12の幅方向(帯長方向及び表裏方向と直交する方向)の一側縁には第1嵌合部13が設けられ、他側縁には第2嵌合部14が設けられている。これら嵌合部13,14は、互いに相補関係をなす凹凸断面形状に形成されている。
図4に示すように、更生管9(螺旋管)においては、これら嵌合部13,14どうしが凹凸嵌合される。
【0017】
図1(a)に示すように、帯本体11の裏側部には、鋼製の補強帯材20が設けられている。補強帯材20によって帯本体11ひいては帯状部材10が補強されている。更には、更生管9(
図2、
図3)の強度が高められている。
なお、本実施形態の更生管9は、当該更生管9だけで管渠の所要強度を担う自立管である。補強帯材20は、前記所要強度の発現に寄与している。
【0018】
図1(a)及び(b)に示すように、補強帯材20は、天板部21と、一対の側板部22と、一対の腕板部23を有して、概略Ω字形状の断面に形成され、帯本体11と同方向(
図1の紙面直交方向)へ延びている。補強帯材20の断面形状は、左右対称である。該補強帯材20が、帯本体11の裏側部における一対のリブ15を跨ぐようにして、第1、第2嵌合部13,14間に配置されている。
【0019】
補強帯材20は、例えば鋼板をロールフォーミング加工することによって製造される。
補強帯材20の厚みt
20は、好ましくはt
20=0.5mm~2mm程度であり、より好ましくはt
20=1.2mm程度である。
表裏方向(
図1(b)の上下方向)における、補強帯材20の全体高さH
20(側板部22及び天板部21の合計高さ)は、リブ15の高さの好ましくは1.5倍~数倍、より好ましくは2倍程度である。具体的には好ましくはH
20=15mm~30mm程度、より好ましくはH
20=20mm程度である。
【0020】
補強帯材20の幅方向の両側部には、それぞれ断面L字状の腕板部23が設けられている。これら腕板部23が平帯部12の裏側面に当接されている。腕板部23の斜めをなす先端部は、嵌合部13,14の係止突起13c,14cに係止されている。
腕板部23の高さH23は、補強帯材20全体の高さH20の数分の1であり、好ましくは3分の1程度である。
【0021】
一対の腕板部23の互いに対向する端部から裏側(
図1(b)において上側)へ一対の側板部22が立ち上がっている。側板部22は、平帯部12に対してほぼ直交されている。一対の側板部22は、2つのリブ15を幅方向の外側から挟んでいる。各側板部22が、対応するリブ15に近接又は当接している。一対の側板部22の高さは互いに同一であり、かつリブ15の高さとほぼ等しく、かつ腕板部23の高さとほぼ等しい。
【0022】
一対の側板部22の裏側を向く先端部(
図1(b)において上端部)間に天板部21が架け渡されている。天板部21の幅W
21は、好ましくはW
21=30mm以上であり、より好ましくはW
21=30mm~100mm程度である。
天板部21の帯長方向と直交する断面は、所定の非直線形状をなしている。詳しくは、天板部21の幅方向の全域が裏側(
図1(b)において上側)へ凸の円弧状の断面に形成されている。当該円弧状の部分すなわち天板部21の幅方向の全域によって波打ち変形抑制部24が構成されている。
言い換えると、天板部21は、裏側へ凸をなす波打ち変形抑制部24を有している。波打ち変形抑制部24は、天板部21の幅方向の全域に及ぶとともに裏側へ断面円弧状に湾曲されている。
【0023】
天板部21ひいては波打ち変形抑制部24の表裏方向に沿う高さH24は、天板部21の幅W21の好ましくは2分の1~4分の1程度であり、より好ましくは3分の1程度である。
波打ち変形抑制部24Bの高さH24は、補強帯材20全体の高さH20の好ましくは3分の2~4分の1程度であり、より好ましくは2分の1程度である。
波打ち変形抑制部24の中心角θ24は、θ24=90°~180°程度が好ましい。
【0024】
図2及び
図3に示すように、老朽化した既設埋設管1の更生施工現場においては、前記の帯状部材10が、巻癖(曲率)を付与された状態で、人孔4を経由して埋設管1の内部に挿入される。そして、
図2及び
図3において二点鎖線にて示す製管装置3によって埋設管1の内周に沿う更生管9(螺旋管)に製管される。該更生管9は、異形断面の埋設管1の周方向の位置に応じて曲率が異なり、小曲率部9a、大曲率部9b、直線部9cが存在する。曲率部9a,9bのうち特に小曲率部9aにおいては、巻癖の付いた帯状部材10を曲げ戻しながら製管を行う。更に直線部9cにおいては、巻癖の付いた帯状部材10を真っすぐになるまで曲げ戻す必要がある。
【0025】
帯状部材10の補強帯材20には、かかる巻癖付与及び曲げ戻し等の曲率変更操作によって応力が発生し、特に天板部21が波打つように変形しようとする。これに対して、波打ち変形抑制部24によって前記応力を均すことで、天板部21の波打ち変形を抑制することができる。天板部21の幅W21が30mm以上であっても、波打ち変形を確実に抑制することができる。この結果、天板部21の座屈を防止でき、製管を円滑に行なうことができる。
【0026】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を適宜省略する。
<第2実施形態>
図5(a)は、本発明の第2実施形態に係る帯状部材10Bを示し、同図(b)は、その補強帯材20Bを示したものである。補強帯材20Bにおいては、一対の側板部22が、第1実施形態(
図1)よりも裏側(図において上側)へ高く突出している。側板部22の高さは、補強帯材20B全体の高さH
20Bと等しい。補強帯材20Bの全体高さH
20Bは、第1実施形態と同様にリブ15の高さの好ましくは1.5倍~数倍、より好ましくは2倍程度である。具体的には好ましくはH
20B=15mm~50mm程度、より好ましくはH
20B=20mm程度である。
【0027】
補強帯材20Bにおいては、一対の側板部22の間の天板部21の幅方向の全域が表側(
図5(b)において下側)へ凹む円弧状の断面に形成されている。当該円弧状の部分すなわち天板部21の幅方向の全域によって波打ち変形抑制部24Bが構成されている。
言い換えると、天板部21は、表側へ凹をなす波打ち変形抑制部24Bを有している。波打ち変形抑制部24Bは、天板部21の幅方向の全域に及ぶとともに表側へ断面円弧状に湾曲されている。
【0028】
波打ち変形抑制部24Bの高さH24Bは、天板部21の幅W21の好ましくは2分の1~4分の1程度であり、より好ましくは3分の1程度である。
波打ち変形抑制部24Bの高さH24Bは、補強帯材20B全体の高さH20Bの好ましくは3分の2~4分の1程度であり、より好ましくは2分の1程度である。
波打ち変形抑制部24Bの中心角θ24Bは、好ましくはθ24B=90°~180°程度である。
前記の波打ち変形抑制部24Bを有する帯状部材10Bによれば、巻癖付与や曲げ戻し等の曲率変更操作を行っても、天板部21の波打ち変形を抑制することができる。したがって、天板部21の座屈を防止でき、製管を円滑に行なうことができる。
【0029】
<第3実施形態>
図6(a)は、本発明の第3実施形態に係る帯状部材10Cを示し、同図(b)は、その補強帯材20Cを示したものである。補強帯材20Cにおいては、天板部21の幅方向の中央部(一部)が表側へ凹む凹状断面に形成されている。当該凹状断面の部分によって波打ち変形抑制部24Cが構成されている。
なお、補強帯材20Cの一対の側板部22の高さは、補強帯材20C全体の高さH
20Cと等しく、補強帯材20Cの全体高さH
20Cは、リブ15の高さの好ましくは1.5倍~数倍、より好ましくは2倍程度である。具体的には好ましくはH
20C=15mm~50mm程度、より好ましくはH
20C=20mm程度である。
【0030】
図6(b)に示すように、波打ち変形抑制部24Cの溝幅W
24Cは、天板部21の幅W
21より小さく(W
24C<W
21)、好ましくは天板部21の幅W
21の2分の1~4分の1程度、より好ましくは天板部21の幅W
21の3分の1程度である。
波打ち変形抑制部24Cの高さH
24Cは、補強帯材20Cの全体高さH
20Cの好ましくは2分の1~10分の1程度、より好ましくは5分の1程度である。
前記の波打ち変形抑制部24Cを有する帯状部材10によれば、巻癖付与や曲げ戻し等を行っても、天板部21の波打ち変形を抑制することができる。これによって、天板部21の座屈を防止でき、製管を円滑に行なうことができる。
【0031】
<第4実施形態>
図7(a)は、本発明の第4実施形態に係る帯状部材10Dを示し、同図(b)は、その補強帯材20Dを示したものである。補強帯材20Dにおいては、天板部21の帯長方向と直交する断面が、波形断面に形成されている。当該波形断面の部分によって波打ち変形抑制部24Dが構成されている。波打ち変形抑制部24Dは、天板部21の幅方向の全域に及んでいる。
なお、補強帯材20Dの一対の側板部22の高さは、補強帯材20D全体の高さH
20Dと等しく、補強帯材20Dの全体高さH
20Dは、リブ15の高さの好ましくは1.5倍~数倍、より好ましくは2倍程度である。具体的には好ましくはH
20D=15mm~50mm程度、より好ましくはH
20D=20mm程度である。
【0032】
波打ち変形抑制部24Dにおける波の形状は、正弦波状である。
波打ち変形抑制部24Dにおける波の山の数は、図では4つであるが、これに限らず3つ以下でもよく、5つ以上でもよく、好ましくは2つ~5つである。
波打ち変形抑制部24Dにおける波の高さH24Dは、補強帯材20Dの全体高さH20Dの好ましくは2分の1~10分の1程度、より好ましくは5分の1程度である。
前記の波打ち変形抑制部24Dを有する帯状部材10によれば、巻癖付与や曲げ戻し等により天板部21の波打ち変形を抑制することができる。これによって、天板部21の座屈を防止でき、製管を円滑に行なうことができる。
【0033】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、波打ち変形抑制部の断面形状は、天板23の幅方向に沿って非直線状かつ波打ち変形を抑制可能であればよく、実施形態の断面形状に限らない。
第1、第2実施形態(
図1、
図5)の円弧断面の波打ち変形抑制部24,24Bは、天板部21の幅方向の全域に及んでいるのに限らず、天板部21の幅方向の一部だけに形成されていてもよい。
第3実施形態(
図6)の凹状断面の波打ち変形抑制部24Cは、天板部21の幅方向の一部に配置されていればよく、幅方向の一側縁又は他側縁に片寄って配置されていてもよい。
第4実施形態(
図7)の波形断面の波打ち変形抑制部24Dは、天板部21の幅方向の全域に及んでいるのに限らず、天板部21の幅方向の一部(例えば中央部)だけに設けられていてもよい。波打ち変形抑制部24Dにおける波の形状は、正弦波状に限らず、三角波状でもよく、四角波状でもよい。
埋設管1の断面形状は、馬蹄形ないしは卵形などの異形(非真円形)に限らず、真円形であってもよい。
【実施例1】
【0034】
実施例を説明する。本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
図1(b)に示す補強帯材20の断面形状をモデル化し、有限要素法によってCAE解析を行った。
補強帯材20の高さは、20mmに設定した。
補強帯材20の厚さは、1.2mmに設定した。
補強帯材20の図心高さは、下端から11.26mmであった。
補強帯材20の幅方向に沿うX軸に関する断面二次モーメントは、4979.04mm
4であった。
前記補強帯材20の裏側部が凸になるよう巻癖を付与した後、前記裏側部が凹になるよう逆曲げ(曲げ戻し)した場合の天板23における応力分布をシミュレーションした。
補強帯材20の図心における巻癖時の曲率半径は350mmに設定した。
補強帯材20の図心における逆曲げ時の曲率半径は350mmに設定した。
【0035】
図8及び
図9のグラフは、天板23の幅方向中央部における帯長方向に沿うセンターライン上における応力の幅方向成分(
図8)及び帯長方向成分(
図9)の分布のシミュレーション結果を、引張側を正、圧縮側を負として示したものである。
これらグラフから明らかな通り、実施例1の補強帯材20によれば天板部21の全域にわたって応力がほぼ一様であり、波打ち変形を十分に抑制できることが確認された。
補強帯材20の前記センターライン上における応力の幅方向成分の最大値と最小値の差は、58.825MPaであり、かつ帯長方向成分の最大値と最小値の差は、35.61MPaであった。
【実施例2】
【0036】
図5(b)に示す補強帯材20Bの断面形状をモデル化し、有限要素法によってCAE解析を行った。
補強帯材20Bの高さは、20mmに設定した。
補強帯材20Bの厚さは、1.2mmに設定した。
補強帯材20Bの図心高さは、下端から11.45mmであった。
補強帯材20Bの幅方向に沿うX軸に関する断面二次モーメントは、4749.9mm
4であった。
前記補強帯材20Bの裏側部が凸になるよう巻癖を付与した後、前記裏側部が凹になるよう逆曲げ(曲げ戻し)した場合の天板23における応力分布をシミュレーションした。
補強帯材20Bの図心における巻癖時の曲率半径は350mmに設定した。
補強帯材20Bの図心における逆曲げ時の曲率半径は350mmに設定した。
図8及び
図9に示すように、実施例2の補強帯材20Bによれば天板部21の全域にわたって応力がほぼ一様であり、波打ち変形を十分に抑制できることが確認された。
補強帯材20Bのセンターライン上における応力の幅方向成分の最大値と最小値の差は、61.291MPaであり、かつ帯長方向成分の最大値と最小値の差は、26.457MPaであった。
【実施例3】
【0037】
図6(b)に示す補強帯材20Cの断面形状をモデル化し、有限要素法によってCAE解析を行った。
補強帯材20Cの高さは、20mmに設定した。
補強帯材20Cの厚さは、1.2mmに設定した。
補強帯材20Cの図心高さは、下端から12.74mmであった。
補強帯材20Cの幅方向に沿うX軸に関する断面二次モーメントは、6505.16mm
4であった。
前記補強帯材20Cの裏側部が凸になるよう巻癖を付与した後、前記裏側部が凹になるよう逆曲げ(曲げ戻し)した場合の天板23における応力分布をシミュレーションした。
補強帯材20Cの図心における巻癖時の曲率半径は350mmに設定した。
補強帯材20Cの図心における逆曲げ時の曲率半径は350mmに設定した。
図8及び
図9に示すように、実施例3の補強帯材20Cによれば天板部21の全域にわたって応力がほぼ一様であり、波打ち変形を十分に抑制できることが確認された。
補強帯材20Cのセンターライン上における応力の幅方向成分の最大値と最小値の差は、21.295MPaであり、かつ帯長方向成分の最大値と最小値の差は、59.918MPaであった。
【実施例4】
【0038】
図7(b)に示す補強帯材20Dの断面形状をモデル化し、有限要素法によってCAE解析を行った。
補強帯材20Dの高さは、20mmに設定した。
補強帯材20Dの厚さは、1.2mmに設定した。
補強帯材20Dの図心高さは、下端から13.20mmであった。
補強帯材20Dの幅方向に沿うX軸に関する断面二次モーメントは、6934.72mm
4であった。
前記補強帯材20Dの裏側部が凸になるよう巻癖を付与した後、前記裏側部が凹になるよう逆曲げ(曲げ戻し)した場合の天板23における応力分布をシミュレーションした。
補強帯材20Dの図心における巻癖時の曲率半径は350mmに設定した。
補強帯材20Dの図心における逆曲げ時の曲率半径は350mmに設定した。
その結果、実施例4の補強帯材20Dによれば天板部21の全域にわたって応力が小さく、かつほぼ一様であり、波打ち変形を十分に抑制できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、例えば老朽化した下水道管の更生技術に適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 埋設管
3 製管装置
9 更生管
10 帯状部材
10B,10C,10D 帯状部材
11 帯本体
20 補強帯材
20B,20C,20D 補強帯材
21 天板部
22 側板部
23 腕板部
24 波打ち変形抑制部
24B,24C,24D 波打ち変形抑制部
W21 天板部の幅