(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ポリゴンミラー、導光装置及び光走査装置
(51)【国際特許分類】
G02B 26/12 20060101AFI20221213BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20221213BHJP
【FI】
G02B26/12 101
B23K26/082
(21)【出願番号】P 2019020877
(22)【出願日】2019-02-07
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】中澤 睦裕
(72)【発明者】
【氏名】大串 修己
【審査官】佐藤 洋允
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-130715(JP,A)
【文献】特開平04-367815(JP,A)
【文献】特開平04-095915(JP,A)
【文献】特開2017-138298(JP,A)
【文献】国際公開第2017/135225(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第1415994(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10 - 26/12
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心として回転するポリゴンミラーにおいて、
複数の辺のうち2つ以上の辺に、
前記回転軸に垂直な平面に対して傾斜した平面状に形成された第1反射面と、
前記回転軸に垂直な平面に対して傾斜した平面状に形成された第2反射面と、
がそれぞれ配置され、
当該ポリゴンミラーに入射する光は、前記第1反射面で反射した後、前記第2反射面で反射し、
複数の辺に、前記回転軸に垂直な平面に対して前記第1反射面が傾斜する方向が逆である2つの辺が含まれており、
前記2つの辺の一方と、他方との間で、前記第1反射面と前記第2反射面との間の前記回転軸の方向での距離が等しいことを特徴とするポリゴンミラー。
【請求項2】
請求項
1に記載のポリゴンミラーであって、
複数の辺に、前記回転軸に垂直な平面に対して前記第1反射面が傾斜する方向が同じである2つの辺が含まれており、
前記2つの辺の一方と、他方との間で、前記第1反射面と前記第2反射面との間の距離が異なることを特徴とするポリゴンミラー。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のポリゴンミラーと、
前記ポリゴンミラーの複数の前記辺のうち、一方の辺で偏向された光を、第1走査領域に導く第1光反射部と、
他方の辺で偏向された光を、前記第1走査領域とは異なる第2走査領域に導く第2光反射部と、
を備えることを特徴とする導光装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の導光装置を備え、
前記第1光反射部及び前記第2光反射部のそれぞれは、光を反射させる複数の反射面を備え、
前記第1光反射部及び前記第2光反射部のそれぞれは、回転する前記ポリゴンミラーから放射される光を2回以上反射して、直線状の走査線に含まれる任意の被照射点に導き、
前記ポリゴンミラーへの光の入射位置から前記被照射点までの光路長が、前記走査線における全ての被照射点にわたって略一定であり、
前記ポリゴンミラーから前記第1光反射部及び前記第2光反射部によって導かれた光の前記走査線上での走査速度が略一定であることを特徴とする光走査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、光走査のために光を偏向させるポリゴンミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光源からの光をポリゴンミラー等によって導いて、直線状の走査線に沿って走査させる技術が、画像形成装置やレーザ加工装置等において広く利用されている。特許文献1は、ポリゴンミラーを備える光走査装置を開示する。
【0003】
特許文献1の光走査装置は、投光手段と、光反射手段と、を備えている。投光手段はポリゴンミラーを有しており、所定の方向から入射された光を回転するポリゴンミラーの正多角形の各辺の反射面で反射することにより、当該ポリゴンミラーが回転しながら光を出射する。光反射手段は、投光手段から放射された光を複数の反射部により反射し、所定の走査線上の任意の被照射点に導く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の構成は、ポリゴンミラーの1つの辺に相当する光偏向範囲によって、走査線の全体が構成されている。従って、長い走査線を実現しようとすると、光偏向角度範囲をある程度確保する必要があるので、辺の数を多くすることが難しかった。ポリゴンミラーの多角形の辺が少ない場合、多角形の頂点付近で光が反射するときに走査の歪みが大きくなる場合があり、改善が望まれていた。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、走査範囲を高速で切換可能で、歪みの少ない走査が可能なポリゴンミラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のポリゴンミラーが提供される。即ち、このポリゴンミラーは、回転軸を中心として回転する。前記ポリゴンミラーの複数の辺のうち2つ以上の辺に、第1反射面と、第2反射面と、がそれぞれ配置される。前記第1反射面は、前記回転軸に垂直な平面に対して傾斜した平面状に形成される。前記第2反射面は、前記回転軸に垂直な平面に対して傾斜した平面状に形成される。当該ポリゴンミラーに入射する光は、前記第1反射面で反射した後、前記第2反射面で反射する。複数の前記辺の間で、前記回転軸に垂直な平面に対して前記第1反射面が傾斜する方向、及び、前記第1反射面と前記第2反射面との間の前記回転軸の方向での距離のうち、少なくとも何れかが異なる。
【0009】
これにより、ポリゴンミラーが回転するのに応じて、光が出射面で反射する位置(出射位置)が、回転軸方向で不連続的に切り換わる。従って、回転軸方向での出射位置に応じて異なる走査領域に出射光を導くことで、走査領域を高速で切り換えながら複数の領域の走査を行うことができる。逆に言えば、ポリゴンミラーの辺の数を増やして、多数の領域を走査する構成を容易に実現できる。従って、ポリゴンミラーの辺を短くすることができるので、それぞれの走査領域の両端部における走査の歪みを低減することができる。
【0010】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の導光装置が提供される。即ち、この導光装置は、前記のポリゴンミラーと、第1光反射部と、第2光反射部と、を備える。前記第1光反射部は、前記ポリゴンミラーの複数の前記辺のうち、一方の辺で偏向された光を、第1走査領域に導く。前記第2光反射部は、他方の辺で偏向された光を、前記第1走査領域とは異なる第2走査領域に導く。
【0011】
これにより、複数の走査領域に光を導くことで、様々な場所の走査を柔軟に行うことができる。それぞれの走査領域での走査の歪みが低減されているので、全体として高品質の走査を行うことができる。
【0012】
本発明の第3の観点によれば、以下の構成の光走査装置が提供される。即ち、この光走査装置は、前記の導光装置を備える。前記第1光反射部及び前記第2光反射部のそれぞれは、光を反射させる複数の反射面を備える。前記第1光反射部及び前記第2光反射部のそれぞれは、回転する前記ポリゴンミラーから放射される光を2回以上反射して、直線状の走査線に含まれる任意の被照射点に導く。前記ポリゴンミラーへの光の入射位置から前記被照射点までの光路長が、前記走査線における全ての被照射点にわたって略一定である。前記ポリゴンミラーから前記光反射部によって導かれた光の前記走査線上での走査速度が略一定である。
【0013】
これにより、複数の走査領域を切り換えながら走査することで、全体として長距離の直線走査を実現することができる。ところで、ポリゴンミラーの回転位相が、多角形の頂点に相当する部分に入射光の照射範囲が掛かる回転位相のときは、反射光の光強度が安定せず、事実上、光走査に用いることができない。また、ポリゴンミラーの1辺に対応する出射光の偏向角度範囲を分割して異なる走査領域に導く構成としている場合、その分割の境界に出射光の角度が差し掛かる回転位相のときは、同様に、光走査に用いることができない。この点、上記の構成では、入射光が多角形の頂点に照射されるポリゴンミラーの回転位相と、走査領域の切り換わりに相当するポリゴンミラーの回転位相と、を共通にすることができる。従って、光走査に使うことができないポリゴンミラーの回転位相の範囲が増加しにくくなるので、光を走査のために効率良く用いながら、歪みの少ない走査を実現できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、走査範囲を高速で切換可能で、歪みの少ない走査が可能なポリゴンミラーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置の構成を模式的に示す斜視図。
【
図2】レーザ発振器から照射されたレーザ光がワークに照射されるまでの光路を示す模式図。
【
図4】ポリゴンミラーの回転に伴って、レーザ光がポリゴンミラーから出射する出射位置が切り換わる様子を示す斜視図。
【
図6】ポリゴンミラーの回転によるレーザ光の偏向によって焦点が移動する軌跡である仮想円弧の位置が、第2光案内部によって変換される様子を説明する概念図。
【
図7】ポリゴンミラーと第2光案内部を示す斜視図。
【
図8】レーザ光がポリゴンミラーから出射する出射位置の切換により、異なる照射ゾーンにレーザ光が照射されることを説明する模式図。
【
図9】レーザ光がポリゴンミラーによって反射し、ワークに照射されるまでの光路を簡易的に示す図。
【
図12】第2変形例のポリゴンミラーに対応する第2光案内部の構成を示す模式図。
【
図13】第2光案内部を変更した第3変形例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置100の構成を模式的に示す斜視図である。
図2は、レーザ発振器21から照射されたレーザ光がワーク10に照射されるまでの光路を示す模式図である。
図3は、ポリゴンミラー5の斜視図である。
図4は、ポリゴンミラー5の回転に伴って、レーザ光がポリゴンミラー5から出射する出射位置が切り換わる様子を示す斜視図である。
図5は、ポリゴンミラー5の分解斜視図である。
【0017】
図1に示すレーザ加工装置(光走査装置)100は、レーザ光を用いて走査することによって、当該レーザ光により板状のワーク10を加工することができる。加工作業は様々に考えられるが、例えば、ワーク10の切断加工、及び、基板であるワーク10の表面に成膜された薄膜を除去するパターニング加工等を挙げることができる。
【0018】
本実施形態のレーザ加工装置100は、生成したレーザ光(光)をワーク10上で走査させることで、上記の加工作業を行う。走査とは、レーザ光等の光の照射位置を所定方向で変化させることである。
【0019】
レーザ加工装置100は、主として、ワーク搬送装置1と、レーザユニット2と、制御装置3と、を備える。
【0020】
ワーク搬送装置1は、水平姿勢のワーク10を所定の方向に一定の速度で搬送する。なお、水平姿勢とは、
図1に示すように、ワーク10の厚み方向を上下方向とした姿勢である。
【0021】
レーザユニット2は、レーザ光を生成するとともに、当該レーザ光によってワーク10を走査する。レーザユニット2の詳細な構成は後述する。
【0022】
制御装置3は、ワーク搬送装置1及びレーザ発振器21の動作を制御する。制御装置3は、例えば、CPU、ROM、RAM、タイマ等からなるコンピュータによって実現される。
【0023】
次に、レーザユニット2について詳細に説明する。レーザユニット2は、レーザ発振器21と、導光装置22と、を備えている。
【0024】
レーザ発振器21は、レーザ光の光源として機能する。レーザ発振器21は、パルス発振により、時間幅が短いパルスレーザを発生する。パルスレーザの時間幅は特に限定されないが、例えばナノ秒オーダー、ピコ秒オーダー、又はフェムト秒オーダー等の短い時間間隔とすることができる。レーザ発振器21は、連続波発振によりCW(Continuous Wave)レーザを発生しても良い。レーザ発振器21は、レーザ光を導光装置22に向けて照射する。
【0025】
導光装置22は、レーザ発振器21で発生したレーザ光をワーク10に導く。導光装置22は、例えば、レンズ、プリズム等の光学部品から構成されている。
【0026】
本実施形態の導光装置22は、
図2に示すように、第1光案内部4と、ポリゴンミラー5と、第2光案内部(導光部)6と、を備える。なお、これらの光学部品の少なくとも一部は、導光装置22の筐体22aの内部に配置されている。
【0027】
第1光案内部4は、レーザ発振器21が発生したレーザ光をポリゴンミラー5まで導く光学部品から構成されている。第1光案内部4は、レーザ光の光路に沿ってレーザ発振器21側から順に、導入レンズ41と、導入プリズム42と、第1導入ミラー43と、第2導入ミラー44と、を備える。
【0028】
導入レンズ41は、レーザ発振器21で生成されたレーザ光を焦点において収束させるために用いられる。導入レンズ41を通過したレーザ光が、導入プリズム42、第1導入ミラー43、第2導入ミラー44によって、ポリゴンミラー5へ導かれる。
【0029】
導入プリズム42、第1導入ミラー43及び第2導入ミラー44は、ポリゴンミラー5よりも光路の上流側で、ワーク10の表面上に焦点を位置させるために必要な光路長を確保するために光路を折り曲げる光学ユニットを構成する。なお、上記の第1光案内部4を構成する光学部品は適宜に省略しても良いし、他のプリズム又はミラーを導入レンズ41とポリゴンミラー5との間に適宜に追加しても良い。また、導入レンズ41の位置も、ポリゴンミラー5の前(ポリゴンミラー5よりも光路の上流側)であれば良い。即ち、導入プリズム42、第1導入ミラー43及び第2導入ミラー44のうち、一部又は全てが、導入レンズ41よりも上流側に配置されても良い。
【0030】
ポリゴンミラー5は、その中心を通る回転軸5aを中心として回転可能に取り付けられている。回転軸5aに沿ってポリゴンミラー5を見たときに、当該ポリゴンミラー5は正多角形状となっている。本実施形態において、ポリゴンミラー5の多角形は、辺の数が16である16角形である。ただし、ポリゴンミラー5の辺の数は任意である。
【0031】
ポリゴンミラー5は、
図3に示すように、複数の第1反射面51と、複数の第2反射面52と、を備える。具体的には、多角形状に形成されたポリゴンミラー5のそれぞれの辺ごとに、1つの第1反射面51と、1つの第2反射面52と、が形成されている。第1反射面51と第2反射面52とは、互いに対応するように配置されている。
【0032】
第1反射面51及び第2反射面52は、平面状に形成されている。第1反射面51は、回転軸5aの周囲に並べて設けられている。第2反射面52は、回転軸5aの周囲に並べて設けられている。
【0033】
複数の第1反射面51は何れも、回転軸5aに垂直な仮想平面に対して傾斜して配置されている。ポリゴンミラー5の多角形が有する辺のうち、周方向で隣り合う任意の2つの辺において、それぞれの第1反射面51は、逆向きに、かつ、互いに等しい角度(具体的には、45°)で、回転軸5aに垂直な仮想平面に対して傾斜している。第1反射面51が設けられる位置は、ポリゴンミラー5の多角形が有する辺の何れにおいても、回転軸5aの方向で変化しない。
【0034】
複数の第2反射面52は何れも、回転軸5aに垂直な仮想平面に対して傾斜して配置されている。ポリゴンミラー5の多角形が有する辺のうち、周方向で隣り合う任意の2つの辺において、それぞれの第2反射面52は、逆向きに、かつ、互いに等しい角度(具体的には、45°)で、回転軸5aに垂直な仮想平面に対して傾斜している。周方向で隣り合う任意の2つの辺において、第2反射面52が設けられる位置は、回転軸5aの方向で互いに異なっている。
【0035】
第2反射面52の位置及び傾斜の向きは、当該辺において第2反射面52に対応する第1反射面51の傾斜の向きと対応している。従って、ポリゴンミラー5の多角形の何れの辺においても、第2反射面52と第1反射面51とは、V字をなすように配置される。
【0036】
第2導入ミラー44によって導入されたレーザ光(入射光)は、ポリゴンミラー5に対して、回転軸5aと垂直な方向に、ポリゴンミラー5の中心に向けて照射される。レーザ光が照射される位置は、ポリゴンミラー5の外周面のうち、第1反射面51が周方向に並んでいる部分である。
【0037】
例えば
図4(a)を参照して説明すると、ポリゴンミラー5に入射したレーザ光は、第1反射面51に当たって反射した後、第2反射面52に当たって更に反射して、ポリゴンミラー5から出射する。ポリゴンミラー5の多角形のある辺に光が当たっている状態で、ポリゴンミラー5が回転すると、第1反射面51及び第2反射面52の向きが連続的に変わるので、第2反射面52から出射する光の向きが、太線矢印で示す向きで滑らかに変化する。こうして、出射光の偏向が実現される。
【0038】
第1反射面51も第2反射面52も、回転軸5aに垂直な仮想平面に対する傾斜角度が45°である。従って、ポリゴンミラー5からの出射光は、回転軸5aと垂直な仮想平面内で偏向する。また、第1反射面51及び第2反射面52の傾斜の向きと、第2反射面52の位置と、がポリゴンミラー5の多角形の辺ごとに切り換わっている。従って、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、レーザ光がポリゴンミラー5の多角形のどの辺に当たるかに応じて、ポリゴンミラー5からの出射光の出射位置(言い換えれば、出射光の偏向角度範囲を含む平面)が、回転軸5aの方向で不連続的に切り換わる。
図4(a)の状態では、出射位置は入射位置よりも回転軸5aの方向で一側(
図4の奥側)にあり、
図4(b)の状態では、出射位置は入射位置よりも回転軸5aの方向で反対側(
図4の手前側)にある。何れの状態でも、出射光は、回転軸5aと垂直な仮想平面内で偏向する。
【0039】
本実施形態のポリゴンミラー5は、
図5に示すように、回転軸5aの方向に2分割したものを組み合わせて構成される。分割された部品のそれぞれは、互いに同一の形状となっている。分割された部品のそれぞれにおいて、ポリゴンミラー5の多角形の辺の1つおきに、互いに対応する第1反射面51と第2反射面52が配置される。これにより、製造が容易になる。ただし、ポリゴンミラー5をどのように製造するかについては限定されない。例えば、ポリゴンミラー5が1つの部品から構成されても良い。
【0040】
図2に示す第2光案内部6は、ポリゴンミラー5から出射したレーザ光を適宜反射して、ワーク10の表面に導く。以下では、ワーク10にレーザ光が照射される点を被照射点と呼ぶことがある。
【0041】
第2光案内部6は、レーザ光を複数回反射してワーク10の表面に導くように構成されている。第2光案内部6は、
図2に示すように、複数の反射ミラーを有する第1導光ユニット61と、複数の導光部品を有する第2導光ユニット62と、を備えている。
【0042】
第1導光ユニット61及び第2導光ユニット62は、ポリゴンミラー5からのレーザ光の出射位置及び偏向角度にかかわらず、ワーク10の表面までの光路長が略一定に維持されるように配置されている。従って、ポリゴンミラー5の回転位相にかかわらず、レーザ光の焦点がワーク10の表面近傍に実質的に位置した状態を維持することができる。
【0043】
以下、第2光案内部6の機能について詳細に説明する。
図6は、ポリゴンミラー5の回転によるレーザ光の偏向によって焦点が移動する軌跡である仮想円弧の位置が、第2光案内部6によって変換される様子を説明する概念図である。
【0044】
第2光案内部6が設けられない場合を仮定すると、ポリゴンミラー5から出射したレーザ光の焦点(レーザ発振器21から一定距離離れた点)は、
図6の上側に描かれた鎖線で示すように、ポリゴンミラー5の回転角が1つの辺に相当する角度だけ変化するのに伴って円弧状の軌跡を描く。この軌跡の中心は、ポリゴンミラー5によってレーザ光を偏向させる偏向中心Cである。軌跡の半径は、偏向中心Cから焦点までの光路長に相当する。
【0045】
上述したように、ポリゴンミラー5の多角形のどの辺にレーザ光が当たるかに応じて、ポリゴンミラー5からのレーザ光の出射位置が、回転軸5aの方向に2段階で切り換わる。従って、
図4の上側の円弧状の軌跡は1つに見えるが、実際は、2つの軌跡(仮想円弧DA1,DA2)が重なっている。
【0046】
第2光案内部6は、偏向中心Cから焦点までの光路を折り曲げることで、2つの仮想円弧DA1,DA2のそれぞれの位置を、ワーク10上で概ね走査方向に並ぶように変換する。即ち、仮想円弧DA1,DA2の位置は、対応する仮想弦VC1,VC2の向きが走査線Lとほぼ一致するように、第2光案内部6によって変換される。これにより、位置が変換された2つの仮想円弧DA1,DA2の集合体は、走査線Lの長さをカバーするように、全体として略直線状に延びる。
【0047】
このように、第1導光ユニット61及び第2導光ユニット62は、ポリゴンミラー5からレーザ光が出射する出射位置が2段階で切り換わることにより生成される2つの仮想円弧DA1,DA2の弦VC1,VC2が、走査方向と同じ方向となるように(走査方向に並ぶように)、光を複数回反射させる。
【0048】
このように複数の仮想円弧DA1,DA2をそれぞれ異なる位置に変換するには、仮想円弧DA1,DA2に応じて、光を異なる向きに反射させる必要がある。この点、上述したように、ポリゴンミラー5からレーザ光が出射する位置は、2つの仮想円弧DA1,DA2毎に、回転軸5aの方向で異なる。従って、円弧毎に光を異なる向きに反射させる構成を、反射ミラー及び導光部品等の機械的な干渉を容易に回避しながら実現することができる。
【0049】
第2光案内部6により、仮想円弧DA1,DA2の両端の2点が走査線L上に再配置され、仮想円弧DA1,DA2(即ち、当該2点を繋ぐ曲線)が、走査線Lよりも光軸方向下流側へと再配置される。ポリゴンミラー5の回転に伴って、レーザ光の焦点は、このように位置が変換された円弧DA1,DA2に沿って移動する。
【0050】
円弧の中心角が大きくなければ、仮想円弧DA1,DA2は、対応する仮想弦VC1,VC2と近似する。従って、ポリゴンミラー5の回転による焦点の仮想円弧DA1,DA2に沿う移動は、走査線Lに沿う等速直線運動と実質的に等しいと考えることができる。
【0051】
以上により、レーザ光の焦点を、ワーク10の表面近傍で、実質的に直線に沿ってかつ等速で走査することができる。
【0052】
次に、第1導光ユニット61及び第2導光ユニット62について詳細に説明する。
図7は、ポリゴンミラー5と第2光案内部6を示す斜視図である。
図8は、レーザ光がポリゴンミラー5から出射する出射位置の切換により、異なる照射ゾーンにレーザ光が照射されることを説明する模式図である。
図9は、レーザ光がポリゴンミラー5によって反射し、ワーク10に照射されるまでの光路を簡易的に示す図である。
【0053】
第1導光ユニット61は、
図7及び
図8に示すように、第1反射ミラー61aと、第2反射ミラー61bと、を備える。第2導光ユニット62は、第1導光部品62aと、第2導光部品62bと、を備える。第1反射ミラー61aと第1導光部品62aにより、第1光反射部71が構成される。第2反射ミラー61bと第2導光部品62bにより、第2光反射部72が構成される。
【0054】
第1反射ミラー61a及び第2反射ミラー61bは、ポリゴンミラー5からの出射光の、回転軸5aの方向での2つの出射位置のそれぞれに対応して設けられている。
図7に示すように、第1反射ミラー61a及び第2反射ミラー61bは、ポリゴンミラー5の回転軸5aの方向で、互いに異なる位置に設けられている。
【0055】
第1反射ミラー61aは、
図4(a)の太線矢印のように出射光が偏向する角度範囲にわたって、光を第1導光部品62aに向けて反射するように配置されている。
【0056】
第1導光部品62aは、第1反射ミラー61aに対応して配置されている。第1導光部品62aは、第1反射ミラー61aから導かれた光を、回転軸5aの方向にズラしながら反射する。
図7では第1導光部品62aが簡略化して描かれているが、第1導光部品62aは、例えばV字状の反射ミラーから構成することができる。
【0057】
第1導光部品62aで反射した光は、第1反射ミラー61aと第2反射ミラー61bとの間に配置される仮想平面に沿って導かれて、ワーク10の仮想弦VC1の部分に照射される。この仮想弦VC1に相当する照射ゾーン(第1走査領域)が、
図4(a)の出射光の偏向角度範囲に対応している。
【0058】
第2反射ミラー61bは、
図4(b)の太線矢印のように出射光が偏向する範囲にわたって、光を第2導光部品62bに向けて反射するように配置されている。
【0059】
第2導光部品62bは、第2反射ミラー61bに対応して配置されている。第2導光部品62bは、第2反射ミラー61bから導かれた光を、回転軸5aの方向にズラしながら反射する。
図7では第2導光部品62bが簡略化して描かれているが、第2導光部品62bは、例えばV字状の反射ミラーから構成することができる。
【0060】
第2導光部品62bで反射した光は、第1反射ミラー61aと第2反射ミラー61bとの間に配置される仮想平面に沿って導かれて、ワーク10の仮想弦VC2の部分に照射される。この仮想弦VC2に相当する照射ゾーン(第2走査領域)が、
図4(b)の出射光の偏向角度範囲に対応している。
【0061】
以上の構成で、ポリゴンミラー5を回転させると、レーザ光の焦点は、2つの照射ゾーンの走査を交互に反復する。具体的には、ポリゴンミラー5のある辺に光が当たっているときは、ポリゴンミラー5からの出射光が第1光反射部71で反射することで、
図8(a)の仮想弦VC1に相当する照射ゾーンの走査が行われる。一方、その隣の辺に光が当たっているときは、ポリゴンミラー5からの出射光が第2光反射部72で反射することで、
図8(b)の仮想弦VC2に相当する照射ゾーンの走査が行われる。なお、
図8においては、ポリゴンミラー5を、光が反射する1辺だけに注目した3角形で簡易的に示している。以上により、全体として、長い走査線Lに沿った直線状の走査を実現することができる。
【0062】
本実施形態の構成では、ポリゴンミラー5を回転させるだけで、出射光の偏向角度が所定の角度範囲の一端から他端まで変化する周期に同期したタイミングで、出射光の出射位置を回転軸5aの方向で切り換えることができる。従って、回転軸5aの方向で異なった位置から出射される光をそれぞれ異なる場所に導くことで、照射ゾーンを高速で切り換えることができる。
【0063】
また、本実施形態では、出射光の出射位置が回転軸5aの方向で不連続的に変化することを利用して、照射ゾーンの切換を実現している。従って、出射光の偏向角度範囲を(周方向で)分割してそれぞれの光を異なる場所に導くことで照射ゾーンを切り換える場合と比較して、ポリゴンミラー5の1つの辺に相当する出射光の偏向角度範囲を小さくすることができる。即ち、ポリゴンミラー5の辺の数を増やすことができる。
【0064】
多角柱状のポリゴンミラーで考えると、光がポリゴンミラーに当たって反射する点(反射点)と、ポリゴンミラーの回転軸と、の間の距離は、厳密に考えると一定ではない。ポリゴンミラーの多角形を考えたときに、各辺の2等分点に光が当たるときに、反射点と回転軸との距離は最短となる。光が当たる点が上記の2等分点から辺の端部に近づくに従って、反射点と回転軸との距離が増大する。このように、ポリゴンミラー5の回転に応じて、反射点の位置は周期的に変動する。
【0065】
この反射点の位置変動は、光路長の変動に繋がる。従って、特にポリゴンミラーの多角形の辺の端部(言い換えれば、頂点)付近に光が当たるときに、走査に歪みが生じる原因となる。
【0066】
この点、本実施形態のポリゴンミラー5は、上述のように辺の数を増やすことができるので、1つ1つの辺を短くすることができる。この結果、走査に歪みをもたらす反射点の位置変動を小さくすることができる。即ち、ポリゴンミラー5の頂点(稜線)に近い部分にレーザ光が当たる状況での歪みを低減することができる。
【0067】
更に、本実施形態のポリゴンミラー5では、光が当たる点が当該ポリゴンミラー5の頂点を通過することで、出射光の偏向角度が所定の角度範囲の端から端へ非連続的に移動するのと、出射光の出射位置が回転軸5aの方向で非連続的に変化して照射ゾーンが切り換わるのと、が同時に行われる。従って、ポリゴンミラー5にレーザ光を照射できないタイミングを実質的に増やさないようにすることができる。
【0068】
以下、具体的に説明する。レーザ光は無限に細い訳ではなく、ある程度の太さを有している。従って、レーザ光がポリゴンミラー5に当たるとき、その照射領域は、ある程度の面積を持っている。
【0069】
ポリゴンミラー5は回転するので、レーザ光の照射領域にポリゴンミラー5の頂点(稜線)が含まれるタイミングが繰返し生じる。このタイミングでは、ポリゴンミラー5から出射してワーク10に照射される光の強度が安定しないため、加工等の作業を良好に行うことができない。従って、このタイミングでは、レーザ光がポリゴンミラー5に入射しないように、レーザ発振器21からのレーザ光の照射を一時的に中断する。
【0070】
特許文献1の構成では、ポリゴンミラーの1つの辺による出射光の偏向角度範囲を(周方向で)分割して、分割されたそれぞれの光を異なる照射ゾーンに導いていた。この構成では、レーザ光の照射領域にポリゴンミラー5の頂点が含まれるタイミングだけでなく、偏向角度範囲が分割される境界に出射光が差し掛かるタイミングにおいても、ワーク10に照射される光の強度が安定しないため、上述と同様にレーザ光を遮断する必要があった。
【0071】
この点、本実施形態では、レーザ光の照射領域をポリゴンミラー5の頂点が通過するときに、照射ゾーンの切換が同時に行われる。従って、レーザ光を遮断しなければならないタイミングを実質的に増やさずに(特許文献1と同程度の照射率で)、走査の歪みを低減する効果を発揮することができる。
【0072】
ポリゴンミラー5に照射されるレーザ光の径は、例えば数ミリメートルとすることが考えられる。しかし、例えば焦点において100分の1ミリメートルオーダーまでレーザ光を絞りたいと考えると、ポリゴンミラー5に照射される時点での径を20~30ミリメートルとしなければならない場合もある。このようにレーザ光の径が大きい場合、ポリゴンミラー5の辺が長くないと、レーザ光を遮断しなければならない時間の割合が増えてしまう。一方で、ポリゴンミラー5の辺を長くすることは、ポリゴンミラー5が大型化する原因となる。この意味で、レーザ光を遮断しなければならないタイミングを増やさないで良い本実施形態の構成は、レーザ光の有効活用とポリゴンミラー5の小型化を両立できる点で有利である。
【0073】
図9(a)には、
図7及び
図8の構成において、レーザ光がポリゴンミラー5に反射して第1反射ミラー61a又は第2反射ミラー61bに到達するまでの光路が模式的に示されている。
図9(b)には、第1反射ミラー61a又は第2反射ミラー61bで反射したレーザ光が、第1導光部品62a又は第2導光部品62bで反射して、ワーク10に到達するまでの光路が模式的に示されている。
【0074】
図9(a)に示すように、ポリゴンミラー5からのレーザ光の出射位置P1,P2は、ポリゴンミラー5へのレーザ光の入射位置Q1に関して対称となるように、回転軸5aの方向で切り換わる。言い換えれば、回転軸5aの方向で考えたときに、一方の出射位置P1から入射位置Q1までの距離と、他方の出射位置P2から入射位置Q1までの距離と、は等しくなっている。従って、第1導光ユニット61及び第2導光ユニット62を対称的に構成することで、レーザ光の出射位置P1,P2が回転軸5aの方向で切り換わっても、ワーク10に到達するまでの光路長が概ね変化しないようにすることが容易である。従って、簡素な構成で、歪みの少ない走査を実現できる。
【0075】
以上に説明したように、本実施形態のポリゴンミラー5は、回転軸5aを中心として回転する。ポリゴンミラー5の複数の辺のうち2つ以上の辺に、第1反射面51と、第2反射面52と、がそれぞれ配置される。第1反射面51は、回転軸5aに垂直な仮想平面に対して傾斜した平面状に形成される。第2反射面52は、回転軸5aに垂直な仮想平面に対して傾斜した平面状に形成される。ポリゴンミラー5に入射する光は、第1反射面51で反射した後、第2反射面52で反射する。複数の辺の間で、回転軸5aに垂直な仮想平面に対して第1反射面51が傾斜する方向が異なる。
【0076】
これにより、ポリゴンミラー5が回転するのに応じて、光がポリゴンミラー5から出射する位置(出射位置)が、回転軸5aの方向で不連続的に切り換わる。従って、回転軸5aの方向での出射位置に応じて異なる走査領域に出射光を導くことで、走査領域を高速で切り換えながら複数の領域の走査を行うことができる。逆に言えば、ポリゴンミラー5の辺の数を増やして、多数の領域を走査する構成を容易に実現できる。従って、ポリゴンミラー5の辺を短くすることができるので、それぞれの走査領域の両端部における走査の歪みを低減することができる。
【0077】
また、本実施形態のポリゴンミラー5において、複数の辺に、回転軸5aに垂直な仮想平面に対して第1反射面51が傾斜する方向が逆である2つの辺が含まれている。前記2つの辺の一方と、他方との間で、第1反射面51と第2反射面52との間の回転軸5aの方向での距離が等しい。
【0078】
これにより、ポリゴンミラー5からの出射位置が回転軸5aの方向で切り換わっても、出射後の光をそれぞれの走査領域に導く構成を対称的とすることで、光路長の変動を小さくすることができる。従って、高品質の走査を実現することができる。
【0079】
また、本実施形態の導光装置22は、ポリゴンミラー5と、第1光反射部71と、第2光反射部72と、を備える。第1光反射部71は、ポリゴンミラー5の複数の辺のうち一方の辺で偏向された光を、
図8(a)に示すように、仮想弦VC1に対応する走査領域に導く。第2光反射部72は、ポリゴンミラー5の他方の辺で偏向された光を、
図8(b)に示すように、仮想弦VC2に対応する走査領域に導く。
【0080】
これにより、複数の走査領域に光を導くことで、様々な場所の走査を柔軟に行うことができる。それぞれの走査領域での走査の歪みが低減されているので、全体として高品質の走査を行うことができる。
【0081】
また、本実施形態のレーザ加工装置100は、導光装置22を備える。第1光反射部71及び第2光反射部72のそれぞれは、光を反射させる複数の反射面を備える。第1光反射部71及び第2光反射部72は、回転するポリゴンミラー5から放射される光を複数回反射して、直線状の走査線Lに含まれる任意の被照射点に導く。ポリゴンミラー5への光の入射位置から被照射点までの光路長が、走査線Lにおける全ての被照射点にわたって略一定である。ポリゴンミラー5から第1光反射部71及び第2光反射部72によって導かれた光の走査線L上での走査速度が略一定である。
【0082】
これにより、複数の走査領域を切り換えながら走査することで、全体として長距離の直線走査を実現することができる。ところで、ポリゴンミラーの回転位相が、多角形の頂点に相当する部分に入射光の照射範囲が掛かる回転位相のときは、反射光の光強度が安定せず、事実上、光走査に用いることができない。また、ポリゴンミラーの1辺に対応する出射光の偏向角度範囲を分割して異なる照射ゾーンに導く構成としている場合、その分割の境界に出射光の角度が差し掛かる回転位相のときは、同様に、光走査に用いることができない。この点、本実施形態の構成では、入射光が多角形の頂点に照射されるポリゴンミラー5の回転位相と、照射ゾーンの切り換わりに相当するポリゴンミラー5の回転位相と、を共通にすることができる。従って、光走査に使うことができないポリゴンミラー5の回転位相の範囲が増加しにくくなるので、光を走査のために効率良く用いながら、歪みの少ない走査を実現できる。
【0083】
次に、上記ポリゴンミラー5の複数の変形例を説明する。なお、本変形例以降の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0084】
図10に示す第1変形例のポリゴンミラー5xは、回転軸5aの方向で見たとき、正12角形となるように構成されている。それぞれの辺に、第1反射面51と第2反射面52とが配置されている。本変形例のポリゴンミラー5xでは、回転軸5aに垂直な仮想平面に対して第1反射面51が傾斜する方向は、全ての辺において同じである。また、回転軸5aに垂直な仮想平面に対して第2反射面52が傾斜する方向も、全ての辺において同じである。周方向で隣り合う任意の2つの辺において、第2反射面52が設けられる位置は、回転軸5aの方向で互いに異なっている。従って、隣り合う2つの辺の間で、第1反射面51と第2反射面52との間の回転軸5aの方向での距離が異なっている。
【0085】
本変形例においても、ポリゴンミラー5xに入射したレーザ光は先ず第1反射面51で反射し、その後、第2反射面52で反射して、ポリゴンミラー5xから出射する。ポリゴンミラー5xからレーザ光が出射する出射位置は、レーザ光がポリゴンミラー5xの何れの辺に当たるかに応じて、回転軸5aの方向で、2段階で切り換わる。
【0086】
本変形例のポリゴンミラー5xは、
図3のポリゴンミラー5と異なり、2つの出射位置と入射位置との関係が非対称的である。従って、本変形例のポリゴンミラー5xでは、出射位置が切り換えられるのに応じて、ポリゴンミラー5xに入射してから出射するまでの光路長が多少変化する。しかしながら、この光路長の差は、第2光案内部6の反射ミラー等の位置を適宜調整することにより相殺することができる。
【0087】
このように、本変形例のポリゴンミラー5xにおいては、当該ポリゴンミラー5xの多角形の複数の辺に、回転軸5aに垂直な仮想平面に対して第1反射面51が傾斜する方向が同じである2つの辺が含まれている。周方向で隣り合う2つの辺の一方と、他方との間で、第1反射面51と第2反射面52との間の距離が異なる。
【0088】
これにより、簡単な構成で、ポリゴンミラー5xからレーザ光が出射する位置の切換を実現することができる。
【0089】
図11に示す第2変形例のポリゴンミラー5yは、回転軸5aの方向で見たとき、正32角形となるように構成されている。本変形例のポリゴンミラー5yでは、
図3のポリゴンミラー5における第1反射面51の傾斜の向きの切換と、
図10のポリゴンミラー5xにおける第1反射面51と第2反射面52との距離の切換と、を組み合わせて、レーザ光の出射位置を回転軸5aの方向で4段階に切換可能としたものである。ポリゴンミラー5yの回転に伴って、レーザ光の出射位置は、4つの位置の間で循環的に切り換わる。
【0090】
このポリゴンミラー5yを用いる場合、第2光案内部6は
図12に示すように、4つの出射位置で偏向する出射光を、対応する4つの照射ゾーンに導くように構成することができる。このために、第1導光ユニット61は、第1反射ミラー61aと、第2反射ミラー61bと、第3反射ミラー61cと、第4反射ミラー61dと、を備える。第2導光ユニット62は、第1導光部品62aと、第2導光部品62bと、第3導光部品62cと、第4導光部品62dと、を備える。
【0091】
次に、第2光案内部6に関する変形例を説明する。
【0092】
ポリゴンミラー5の1辺に相当する偏向角度範囲(言い換えれば、仮想円弧DA1,DA2)のそれぞれを周方向で分割して、分割後の円弧が走査線L上に並ぶように第2光案内部6を構成することもできる。この変形例の構成が、
図13に示されている。
【0093】
図13の変形例では、回転軸5aの方向で2つある出射位置のそれぞれについて、出射光の偏向角度範囲が2つに分割されている。この分割は、レーザ光の偏向範囲の一部だけに対応するように反射ミラー等を配置することで実現することができる。これにより、計4つの照射ゾーン(仮想弦VC1~VC4に対応する照射ゾーン)に、レーザ光が導かれている。
【0094】
仮想円弧を分割して短くすることで、それぞれの円弧が、直線に対して更に良好に近似するようになる。従って、走査の歪みを低減することができる。
【0095】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0096】
ポリゴンミラー5,5x,5yの多角形の辺の数は、任意に変更することができる。
【0097】
ポリゴンミラー5,5x,5yからの光の出射位置を、2段階でも4段階でもなく、例えば3段階、8段階等で切り換えるように変更することもできる。
【0098】
第1反射面51及び第2反射面52を、プリズムを用いて実現することもできる。同様に、第2導光部品62bを、プリズムを用いて実現することもできる。
【0099】
ワーク搬送装置1を省略しても良い。即ち、固定されたワーク10に対して、レーザユニット2の位置を調整しながら、レーザ加工を行っても良い。
【0100】
ポリゴンミラー5,5x,5yによる光走査は、レーザ加工以外の用途に用いられても良い。
【符号の説明】
【0101】
5,5x,5y ポリゴンミラー
5a 回転軸
6 第2光案内部
22 導光装置
51 第1反射面
52 第2反射面
71 第1光反射部
72 第2光反射部
100 レーザ加工装置(光走査装置)