(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】樹脂成型装置及び樹脂成型品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 39/24 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
B29C39/24
(21)【出願番号】P 2019031057
(22)【出願日】2019-02-22
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】後藤 智行
(72)【発明者】
【氏名】花崎 昌則
(72)【発明者】
【氏名】花坂 周邦
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-167022(JP,A)
【文献】特開昭62-227617(JP,A)
【文献】特開2017-100285(JP,A)
【文献】特開2017-209903(JP,A)
【文献】特表2016-504181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂吐出機構と、流量センサと、樹脂成形機構と、制御部とを含み、
前記樹脂吐出機構は、プランジャと、液状樹脂を収容可能な樹脂収容部とを含み、かつ、前記液状樹脂が吐出される吐出口を有し、
前記樹脂吐出機構は、前記プランジャの移動により前記樹脂収容部に収容された前記液状樹脂を前記吐出口から吐出し、
前記流量センサは、前記樹脂吐出機構に取り付けられており、
前記流量センサは、前記液状樹脂の流量を測定し、
前記樹脂成形機構は、前記樹脂吐出機構から吐出された前記液状樹脂を用いて樹脂成形を行い、
前記制御部は、前記プランジャの動作を制御するとともに、前記流量センサで測定された前記液状樹脂の流量に基づいて前記プランジャのサックバックを制御することを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項2】
前記液状樹脂を吐出するための前記プランジャの動作停止後に、前記制御部により、前記液状樹脂の流量が0に近づくように前記プランジャのサックバックが制御される請求項1記載の樹脂成形装置。
【請求項3】
前記プランジャのサックバックを少なくとも2回行うことが可能な請求項2記載の樹脂成形装置。
【請求項4】
前記流量センサが超音波流量センサである請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項5】
前記流量センサが、前記樹脂収容部の前記吐出口側端部から前記吐出口までの間に設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項6】
樹脂吐出機構から液状樹脂を吐出する樹脂吐出工程と、
吐出された前記液状樹脂を用いて樹脂成形を行う樹脂成形工程とを含み、
前記樹脂吐出工程において、前記樹脂吐出機構に取り付けた流量センサを用いて前記液状樹脂の流量を測定し、その測定された流量に基づいて前記樹脂吐出機構におけるサックバックの制御を行うことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成型装置及び樹脂成型品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液状樹脂を樹脂成形する場合、液状樹脂の量のばらつきを抑制又は防止する必要がある。
【0003】
このために、特許文献1では、サックバックすることにより液状樹脂30の液切れを改善することで、所定量の液状樹脂30をキャビティに供給することが記載されている。具体的には、特許文献1の図面及びその説明によれば、樹脂成形装置において、サーボモータ31を回転させることによって、プランジャ35をシリンジ28内において進退させて、シリンジ28内の液状樹脂30をキャビティ16に対して吐出する。このとき、プランジャ35を経由して受け取る液状樹脂30の樹脂圧力を、サーボモータ31に加えられるトルク値としてサーボモータ31が有するエンコーダ39にて検出し、検出したトルク値に基づいてサックバックする。これにより、液状樹脂30の液切れを改善して、所定量の液状樹脂30をキャビティ16に供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、サックバックによりキャビティに供給する液状樹脂の供給量を制御するが、サックバックの設定を自動で行うことはできず、手動で行う必要がある。サックバックの設定は、液状樹脂の物性に応じて変更する必要があるため、手動での設定には熟練が必要であり、人によってばらつきが出るおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、液状樹脂の吐出量制御のためのサックバック設定を自動化できる樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明の樹脂成形装置は、
樹脂吐出機構と、流量センサと、樹脂成形機構と、制御部とを含み、
前記樹脂吐出機構は、プランジャと、液状樹脂を収容可能な樹脂収容部とを含み、かつ、前記液状樹脂が吐出される吐出口を有し、
前記樹脂吐出機構は、前記プランジャの移動により前記樹脂収容部に収容された前記液状樹脂を前記吐出口から吐出し、
前記流量センサは、前記樹脂吐出機構に取り付けられており、
前記流量センサは、前記液状樹脂の流量を測定し、
前記樹脂成形機構は、前記樹脂吐出機構から吐出された前記液状樹脂を用いて樹脂成形を行い、
前記制御部は、前記プランジャの動作を制御するとともに、前記流量センサで測定された前記液状樹脂の流量に基づいて前記プランジャのサックバックを制御することを特徴とする。
【0008】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、樹脂吐出機構から液状樹脂を吐出する樹脂吐出工程と、吐出された前記液状樹脂を用いて樹脂成形を行う樹脂成形工程とを含み、前記樹脂吐出工程において、前記樹脂吐出機構に取り付けた流量センサを用いて前記液状樹脂の流量を測定し、その測定された流量に基づいて前記樹脂吐出機構におけるサックバックの制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液状樹脂の吐出量制御のためのサックバック設定を自動化できる樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の樹脂成形装置における樹脂吐出機構、流量センサ及び制御部の構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の樹脂吐出機構、流量センサ及び制御部を含む本発明の樹脂成形装置の構成の一例を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図1の樹脂吐出機構による樹脂吐出の例を示す模式図である。
図3(a)は断面図であり、
図3(b)は平面図である。
【
図4】
図4は、
図1の樹脂吐出機構の変形例の一部を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法における液状樹脂の吐出量制御の一例を示すグラフである。
【
図6】
図6は、手動によりサックバックの設定を行った後に液状樹脂の吐出量制御を行う一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0012】
本発明の樹脂成形装置において、例えば、前記液状樹脂を吐出するための前記プランジャの動作停止後に、前記制御部により、前記液状樹脂の流量が0に近づくように前記プランジャのサックバックが制御されてもよい。この場合において、例えば、本発明の樹脂成形装置により、前記プランジャのサックバックを少なくとも2回行うことが可能であってもよい。
【0013】
本発明の樹脂成形装置において、例えば、前記流量センサが超音波流量センサであってもよい。
【0014】
本発明の樹脂成形装置において、例えば、前記流量センサが、前記樹脂収容部の前記吐出口側端部から前記吐出口までの間に設けられていてもよい。
【0015】
本発明の樹脂成形装置において、樹脂成形機構は、特に限定されないが、例えば、成形型を含んでいてもよいし、成形型以外の構成要素を含んでいても含んでいなくてもよい。成形型は特に限定されず、一般的な成形型でもよく、例えば、上型及び下型を含む成形型でもよい。本発明において、成形型は、特に限定されないが、例えば、金型、セラミック型等であってもよい。
【0016】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、例えば、本発明の樹脂成形装置を用いて行ってもよい。より具体的には、例えば、前記樹脂吐出工程において、前記プランジャの移動により、前記樹脂収容部に収容された前記液状樹脂を前記吐出口から吐出し、かつ、前記制御部により、前記プランジャの動作を制御するとともに、前記流量センサで測定された前記液状樹脂の流量に基づいて前記プランジャのサックバックを制御してもよい。また、前記樹脂成形工程において、前記樹脂成形機構により、吐出された前記液状樹脂を用いて樹脂成形を行ってもよい。
【0017】
本発明によれば、例えば、樹脂成形装置において、ディスペンサ(樹脂吐出機構)の吐出口近傍に設けた流量センサにより液状樹脂の流量を測定し、液状樹脂を吐出するためのプランジャの動作停止後に、流量が0に近づくようにプランジャ動作をフィードバック制御することで、ディスペンサのサックバック設定を自動化することができる。ただし、本発明はこれに限定されない。例えば、流量センサを設置する位置は、樹脂吐出機構の吐出口近傍に限定されず、どこでもよい。ただし、樹脂吐出機構の吐出口近傍に流量センサを設置すると、より正確に液状樹脂の流量を測定しやすい。なお、流量センサを樹脂吐出機構の吐出口近傍に設けるとは、例えば、吐出口から吐出される直前の液状樹脂の流量を測定可能な位置に流量センサを設けることを意味する。具体的には、例えば、流量センサが、樹脂収容部の吐出口側端部から吐出口までの間に設けられることを意味する。
【0018】
本発明において、「流量センサ」は、「流量計」と同義である。
【0019】
本発明において、「サックバック」は、プランジャを、液状樹脂を吐出させる方向と反対方向に移動させることをいう。具体的には、例えば、液状樹脂を吐出させる場合はプランジャを樹脂収容部の内部方向に押し込むのに対し、サックバックでは、プランジャを反対方向すなわち樹脂収容部の外部方向に引く。
【0020】
本発明において、「液状」は、例えば、流動性を有することを意味する。また、「流動性」は、任意の温度において流動性を有していればよく、例えば、常温において流動性を有していてもよいし、常温以外の温度において流動性を有していてもよい。また、本発明において「液状」は、例えば、常温において液状であって流動性を有していてもよいし、常温以外の温度において液状であって流動性を有していてもよい。また、本発明において、「流動性」及び「液状」のいずれの用語も、流動性の高低、言い換えれば粘度の程度を問わない。本発明において、「液状樹脂」は、例えば、常温において液状の樹脂であってもよいし、加熱による溶融で流動性を有する樹脂(溶融樹脂)であってもよい。
【0021】
本発明において、樹脂材料(樹脂成形するための樹脂)としては、特に制限されず、例えば、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。また、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂を一部に含んだ複合材料であってもよい。熱硬化性樹脂は、例えば、常温では液状樹脂であり、加熱すると粘度が低下し、更に加熱すると重合して硬化し、硬化樹脂となる。
【0022】
本発明において、「樹脂成形」は、特に限定されず、例えば、チップ等の部品を樹脂封止することであってもよいが、樹脂封止をせず、単に樹脂を成形することであってもよい。同様に、本発明において、「樹脂成形品」は、特に限定されず、例えば、チップ等の部品を樹脂封止した樹脂成形品(製品又は半製品等)であってもよいが、樹脂封止をせず、単に樹脂を成形した製品又は半製品等であってもよい。
【0023】
また、本発明において、「樹脂成形」は、例えば、成形対象物の一方又は両方の面を樹脂成形することであってもよい。しかし、本発明は、これに限定されず、例えば、成形対象物を用いずに、単に樹脂成形を行ってもよい。また、例えば、成形対象物の一方又は両方の面に固定されたチップ等の部品を樹脂封止してもよいが、部品を樹脂封止せず、単に成形対象物の一方又は両方の面を樹脂成形してもよい。
【0024】
本発明において、「樹脂成形」の方法は、特に限定されず、例えば、圧縮成形でもよいが、例えば、トランスファ成形、押出成形等であってもよい。
【0025】
本発明における、「樹脂成形」とは、例えば、樹脂が硬化(固化)して硬化樹脂が成形された状態であることを意味する。硬化樹脂の硬度は、特に限定されず、例えば、硬化樹脂が流動しない程度、又は、樹脂封止されたチップ等を保護するために必要な程度でよく、硬度の大小を問わない。また、本発明において、樹脂の硬化(固化)は、樹脂が完全に硬化(固化)した状態に限定されず、さらに硬化しうる状態でもよい。
【0026】
一般に、「電子部品」は、樹脂封止する前のチップをいう場合と、チップを樹脂封止した状態をいう場合とがあるが、本発明において、単に「電子部品」という場合は、特に断らない限り、チップが樹脂封止された電子部品(完成品としての電子部品)をいう。本発明における「チップ」は、具体的には、例えば、抵抗、キャパシタ、インダクタ等の受動素子のチップ、ダイオード、トランジスタ、集積回路(Integrated Circuit :IC)、電力制御用の半導体素子等の半導体チップ、センサ、フィルタ等のチップが挙げられる。また、本発明において、樹脂封止する部品は、チップに限定されず、例えば、チップ、ワイヤ、バンプ、電極、配線パターン等の少なくとも一つであってもよく、チップ状でない部品が含まれてもよい。
【0027】
本発明において、「樹脂成形品」は、特に限定されないが、例えば、チップを樹脂封止した電子部品であっても良い。また、本発明における「樹脂成形品」は、例えば、半導体製品、回路モジュール等の単数又は複数の電子部品を製造するための中間品であっても良い。また、本発明における「樹脂成形品」は、チップを樹脂封止した電子部品及びその中間品に限定されず、それ以外の樹脂成形製品等でも良い。
【0028】
以下、本発明の具体的な実施例を図面に基づいて説明する。各図は、説明の便宜のため、適宜省略、誇張等をして模式的に描いている。また、同一の構成要素については、同一の符号を付している。
【実施例1】
【0029】
本実施例では、本発明の樹脂成形装置の一例と、それを用いた本発明の樹脂成形品の製造方法の一例とについて説明する。
【0030】
まず、
図1の断面図に、本発明の樹脂成形装置における樹脂吐出機構、流量センサ及び制御部の構成の一例を示す。図示のとおり、ディスペンサ(樹脂吐出機構)19は、シリンジ(樹脂収容部)28と、プランジャ35とを含む。また、ディスペンサ19は、さらに、送出機構27とノズル29とを含む。そして、送出機構27とシリンジ28とノズル29とは、一体的に構成されている。送出機構27に設けられたサーボモータ31を回転させることによって、ボールねじ32、スライダ33、ロッド34をそれぞれ介してプランジャ35をシリンジ28内において進退させることができる。シリンジ28は、その内部に液状樹脂を収容可能である。ノズル29は、その先端に吐出口41を有し、シリンジ28内部に収容された液状樹脂を、吐出口41から吐出可能である。ノズル29における吐出口41の近傍には、流量センサ100が取り付けられ、吐出直前の液状樹脂の流量を測定可能である。なお、流量センサ100を取り付ける位置は、例えば、シリンジ28における吐出口41側端部(ノズル29が取り付けられた側の端部)から吐出口41までの間の任意の位置であってもよい。より具体的には、流量センサ100を取り付ける位置は、例えば、ノズル29内の任意の位置における液状樹脂の流量を測定可能な位置であってもよい。そして、制御部22によりプランジャ35の動作が制御されるとともに、流量センサ100で測定された液状樹脂の流量に基づいて、プランジャ35のサックバックが制御される。これにより、液状樹脂の吐出量制御のために従来は手動で行っていた事前のサックバック設定を自動化できる。したがって、本発明によれば、例えば、吐出動作及びサックバック動作の自動的な制御により液状樹脂の液だれ状態を早期に解消できる。また、例えば、液状樹脂の吐出量を自動で正確に制御でき、液状樹脂の供給量のばらつきを抑制又は防止できる。
【0031】
以下、
図1のディスペンサ19の構成及びその動作(使用方法)について、さらに具体的に説明する。
【0032】
図示のとおり、ディスペンサ19は、送出機構27とシリンジ28とノズル29とが接続されることによって一体的に構成される。したがって、シリンジ28又はノズル29を、それぞれ用途に応じて別のシリンジ28又はノズル29に交換できる。
【0033】
送出機構27は、サーボモータ31と、サーボモータ31によって回転するボールねじ32と、ボールねじナット(図示なし)に取り付けられ回転運動を直動運動に変換するスライダ33と、スライダ33の先端部に固定され内部に挿入孔を有するロッド34と、ロッド34の先端に取り付けられたプランジャ35とを備える。ボールねじ32はボールねじ軸受36とボールねじ32の先端に取り付けられた振れ止め部材37とによって支持される。スライダ33は、例えば、送出機構27の基台に設けられたガイドレール38に沿ってY方向に進退する。サーボモータ31が回転することによって、ボールねじ32、スライダ33、ロッド34をそれぞれ介してプランジャ35がY方向に進退する。
【0034】
サーボモータ31はモータの回転を制御できるモータである。サーボモータ31は、モータの回転を監視する回転検出器(エンコーダ)39を有する。エンコーダ39は、例えば、サーボモータ31の回転角、回転速度を検出して制御部22にフィードバックする。制御部22には、例えば、PLC(Programmable Logic Controller )、コントローラ、ドライバなどが設けられている。例えば、PLCの指令信号とエンコーダ39からのフィードバック信号とに基づき、制御部22がサーボモータ31の回転を制御することができる。例えば、サーボモータ31の回転を制御することによって、プランジャ35の位置制御、速度制御、トルク制御などを、精度よく行うことができる。
【0035】
なお、以下の説明において、特記する場合を除き、液状樹脂30の樹脂量及びプランジャ35の移動量という文言は、単位時間当りの樹脂量及び単位時間当りの移動量を意味する。送出機構27によって送出される液状樹脂30の樹脂量を所定時間内において一定に維持するためには、プランジャ35の移動量を所定時間内において一定に維持する必要がある。プランジャ35の移動量を所定時間内において一定に維持するためには、プランジャ35を一定の移動速度Vで前進させる。このことによって、所定時間内において所定量の液状樹脂30を安定して送出できる。
【0036】
液状樹脂30が収容されたシリンジ28は、シリンジ取り付け用のねじ40によって送出機構27の先端に接続されている。プランジャ35の外径とシリンジ28の内径とが一致するように、プランジャ35がシリンジ28内に挿入されている。プランジャ35の周囲には、シール材であるOリング(図示なし)が取り付けられている。サーボモータ31の回転を制御することによって、プランジャ35の移動量(ストローク)が制御される。シリンジ28の内断面積とプランジャ35の移動量との積によって、ディスペンサ19から吐出される液状樹脂30の樹脂量が算出される。
【0037】
ノズル29の先端には、前述のとおり、液状樹脂30を吐出する吐出口41が設けられている。吐出口41の方向は、真下、真横、斜め下など、任意の方向に設定される。更に、液状樹脂30の液だれが発生しないように、吐出口41の口径や形状を液状樹脂30の粘度によって最適にすることができる。
【0038】
以下において、
図1を参照して、ディスペンサ19が液状樹脂30を吐出する動作を説明する。サーボモータ31を回転させることによってボールねじ32が回転する。ボールねじ32が回転することによって、ボールねじナットに取り付けられたスライダ33がガイドレール38に沿って-Y方向に前進する。スライダ33が前進することにより、スライダ33と共にスライダ33に固定されたロッド34が-Y方向に前進する。シリンジ28内において、ロッド34が-Y方向に前進することによって、ロッド34の先端に取り付けられたプランジャ35が-Y方向に前進する。プランジャ35が-Y方向に前進することによって、シリンジ28内に収容されている液状樹脂30を押圧して-Y方向に押し出す。プランジャ35によって押し出された液状樹脂30がノズル29の先端に設けられた吐出口41から吐出される。
【0039】
前述のとおり、プランジャ35の動作は、制御部22により制御される。さらに、流量センサ100により液状樹脂30の流量が測定される。その測定された流量に基づいて、制御部22によりプランジャ35のサックバックが制御される。これにより、前述のとおり、液状樹脂の吐出量を自動で正確に制御可能であり、例えば、液状樹脂の供給量のばらつきを抑制又は防止できる。
【0040】
なお、液状樹脂30の粘度によっては、液状樹脂30の表面張力に起因してノズル29の吐出口41の下方に液状樹脂30が残留樹脂として残る場合がある。この場合には、シリンジ28内から送出される液状樹脂30の樹脂量が一定になるように制御したとしても、ノズル29から吐出されるはずの液状樹脂30がすべて吐出される、ということが実現されない。言い換えれば、液状樹脂30の一部分が残留樹脂として残る。したがって、ノズル29から吐出されるはずの液状樹脂30がすべてキャビティ16(
図3参照、後述)に吐出されることが実現されない、という事態が発生する。この事態を防止するためには、残留樹脂を残すことなく、ノズル29から吐出されるはずの液状樹脂30をすべて吐出する必要がある。
【0041】
図5のグラフを参照して、本実施例の樹脂吐出機構及び制御部を用いた液状樹脂の吐出量制御方法の一例について説明する。
図5(a)及び(b)のいずれのグラフも、横軸は、経過時間を表す。
図5(a)のグラフの縦軸は、プランジャ35の移動速度を示す。移動速度が正である(0よりも大きい)場合、プランジャ35が、シリンジ28の内部方向に押し込まれていること、すなわち、液状樹脂30を吐出させる(押し出す)方向に移動していることを表す。移動速度が負である(0よりも小さい)場合、プランジャ35が、シリンジ28の外部方向に引かれていること、すなわち、液状樹脂30を吐出させる方向と反対方向に移動していることを表す。そして、このように、プランジャ35を、液状樹脂30を吐出させる方向と反対方向に移動させることを「サックバック」という。また、
図5(b)のグラフの縦軸は、流量センサ100により測定される液状樹脂30の流量を表す。
【0042】
図5(a)に示すとおり、プランジャ35の押し込み開始から終了までの一定時間、プランジャ35の押し込み速度は一定に保たれる。これにより、
図5(b)に示すとおり、液状樹脂30の流量は、緩やかに上昇した後、プランジャ35の押し込み終了まで一定に保たれる。つぎに、(1)に示すとおり、プランジャ35の押し込み終了後、ただちにサックバックを開始する。なお、サックバック開始のタイミングは、例えば、あらかじめ制御部22に入力しておいてもよい。具体的には、例えば、液状樹脂30の粘度等から、所定量の液状樹脂30を吐出するために必要な時間を計算する。そして、その計算した時間に基づき、あらかじめ、プランジャ35の押し込み終了及びサックバック開始のタイミングを決定し、制御部22に入力しておくことができる。このサックバックにより、(2)に示すとおり、液状樹脂30の流量が減少して0になる。(1)のサックバック量は、あらかじめ制御部22に入力してもよいし、流量センサ100により測定される液状樹脂30の流量に応じて制御部22がサックバック量を制御してもよい。そして、(3)に示すとおり、液状樹脂30の流量が0になったところでプランジャ35の移動速度を0にする(すなわち、プランジャ35を停止させる)。このとき、(4)に示すように、サックバックにより液状樹脂30の流量がマイナスになる(逆流する)場合がある。この逆流が所定の流量以上継続する場合は、(5)に示すとおり、プランジャ35を、再度、液状樹脂35を吐出させる方向に移動させる。そして、(6)に示すように液状樹脂30の流量が0になったら、(7)に示すようにプランジャ35の移動速度を0にする(プランジャ35を停止させる)。(4)~(7)を繰り返して、プランジャ35の移動速度及び液状樹脂30の流量を0に近づける。理想的には0になることが好ましいが、必ずしも0にする必要はなく、実用上問題のない範囲で十分小さい値になればよい。なお、(3)~(7)の動作は、流量センサ100で測定された液状樹脂30の流量に基づいて、制御部22がプランジャ35のサックバックを制御することにより行うことができる。本発明において、プランジャのサックバックを制御することは、例えば、
図5(b)(4)及び
図5(a)(5)に示すとおり、プランジャを押し出してサックバックし過ぎを是正することも含む。
【0043】
つぎに、
図6のグラフを参照して、手動によりサックバックの設定を行った後に液状樹脂の吐出量制御を行う一例を示す。
図6(a)及び(b)のいずれのグラフも、横軸は、経過時間を表す。
図6(a)のグラフの縦軸は、
図5(a)と同様にプランジャ35の移動速度を示す。また、
図6(b)のグラフの縦軸は、液状樹脂35がプランジャ35を押圧することによりサーボモータ31に伝わる負荷トルクの値(以下、単に「トルク」という。)を表す。
図6の例では、手動でサックバックの設定をした場合のプランジャの移動速度及びトルク値の変化を示しており、サックバック動作は一度しか行わない。この例でのサックバックの設定においては、吐出量及び吐出状態を観察しながら、吐出時間、サックバック開始タイミング、サックバック量(プランジャ移動量)、サックバック速度(プランジャ移動速度)等について、テスト吐出を行い、吐出口の液状樹脂の状態を目視で判断する。実際には、テスト吐出は複数回繰り返すことになる。
【0044】
図6(a)に示すとおり、プランジャ35の押し込み開始から終了までの一定時間、プランジャ35の押し込み速度は一定に保たれる。これにより、
図6(b)に示すとおり、液状樹脂30の流量は、緩やかに上昇した後、プランジャ35の押し込み終了まで一定に保たれる。ここまでは、
図5と同様である。
【0045】
図6に示した例では、
図6(a)(b)に示すとおり、プランジャ35の押し込み終了直後のトルクが大きく、トルクが低下して0に近づいたあたりでサックバックを行うよう予めサックバックが設定されている。このため、プランジャ35の押し込み終了からサックバック開始までの間にも液状樹脂30が吐出され続ける。このため、液状樹脂30の吐出量が過多になるおそれがある。したがって、プランジャ35の押し込み終了からサックバック開始までの間に吐出される液状樹脂30の量をあらかじめ考慮してプランジャ35の押し込み終了及びサックバック開始のタイミングを決定する必要がある。また、液状樹脂30の種類の変更により濃度等が変化すると、プランジャ35の押し込み終了及びサックバック開始のタイミングも変化する。これらの理由により、手動でのサックバック制御には熟練が必要である。さらに、プランジャ35の押し込み終了からサックバック開始までの間の時間がロスになり、液状樹脂吐出の作業効率が低下するおそれがある。
【0046】
これに対し、本発明によれば、制御部によりサックバックを自動で制御する。このため、例えば
図5に示したように、サックバックを速やかに行い、かつ精密に制御することができて、液状樹脂の吐出量過多を抑制又は防止しやすい。なお、
図5(b)のグラフに、手動でサックバック制御した場合の樹脂流量の例を点線で示す。本発明の例(実線)と比較すると、本発明により液状樹脂の吐出量過多を抑制又は防止しやすいことが分かる。
また、
図6で説明した液状樹脂の吐出量制御において行った手動によるサックバックの設定を不要にすることができる。
【0047】
なお、
図5及び6のグラフは例示であり、本発明をなんら限定しない。
【0048】
また、本発明において、液状樹脂の流量を測定する流量センサは、特に限定されず、例えば、公知の流量センサ又は一般的な流量センサを適宜使用できる。本発明で使用可能な流量センサとしては、例えば、超音波流量センサ、熱式流量センサ等が挙げられるが、超音波流量センサが好ましい。本発明で用いることができる超音波流量センサとしては、例えば、キーエンス社製のクランプオン式流量センサである商品名「FD-X」シリーズ(商品名FD-XS1、FD-XS8、FD-XS20)等が挙げられる。
【0049】
超音波流量センサでは、例えば、以下のようにして流体の流量を測定できる。すなわち、まず、流体の流路の上流及び下流の2点にそれぞれセンサを設ける。そして、これら2点のセンサ間で、上流から下流に向かう超音波の速度と、下流から上流に向かう超音波の速度とを測定できるようにする。上流から下流に向かう超音波は、流体の速度の影響で超音波の速度が速くなる。一方、下流から上流に向かう超音波は、流体の流れに逆らって進行するため、超音波の速度が遅くなる。したがって、上流から下流に向かう超音波の速度と、下流から上流に向かう超音波の速度との差を算出することで、それに基づいて流体の流速を算出し、さらに流体の流量を算出できる。なお、本発明では、流体として液状樹脂を用い、液状樹脂の流量を測定(算出)できる。
【0050】
超音波流量センサは、上記の測定原理により、理論上、流体の温度及び粘度による影響を受けることなく流体の流量を測定できる。したがって、超音波流量センサを用いれば、熱式流量センサと比較して、流体の温度及び粘度による流量の測定誤差を抑制又は防止しやすい。また、配管の外側に取り付け可能なクランプオン式の流量センサであれば、配管を切断せずに容易に取り付け可能であり、液状樹脂に触れることなく流量を測定することができ、洗浄が不要である。
【0051】
つぎに、
図2の平面図に、本発明の樹脂成形装置の構成の一例を示す。また、
図3の断面図に、
図2の樹脂成形装置における成形型(樹脂成形機構)の構成の一例と、その成形型に液状樹脂を吐出(供給)する方法の一例を示す。
【0052】
図2に示すとおり、この樹脂成形装置1は、基板供給・収納モジュール2と、4つの成形モジュール3A、3B、3C、3Dと、供給モジュール4とを、それぞれ構成要素として備える。構成要素である基板供給・収納モジュール2と、成形モジュール3A~3Dと、供給モジュール4とは、それぞれ他の構成要素に対して互いに着脱されることができ、かつ、交換されることができる。
【0053】
基板供給・収納モジュール2には、封止前基板5を供給する封止前基板供給部6と封止済基板7を収納する封止済基板収納部8とが設けられている。封止前基板5には、例えば、光素子として発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)チップなどが装着される。基板供給・収納モジュール2には、ローダ9とアンローダ10とが設けられ、ローダ9とアンローダ10とを支えるレール11がX方向に沿って設けられている。ローダ9とアンローダ10とは、レール11に沿ってX方向に移動可能である。
【0054】
レール11に支えられたローダ9及びアンローダ10は、基板供給・収納モジュール2と各成形モジュール3A、3B、3C、3Dと供給モジュール4との間を、X方向に移動可能である。ローダ9には、各成形モジュール3A、3B、3C、3Dにおいて、封止前基板5を上型に供給するための移動機構12が設けられる。各成形モジュールにおいて、移動機構12はY方向に移動する。アンローダ10には、各成形モジュール3A、3B、3C、3Dにおいて、封止済基板7を上型から受け取る移動機構13が設けられている。各成形モジュールにおいて、移動機構13はY方向に移動可能である。
【0055】
各成形モジュール3A、3B、3C、3Dには、昇降可能な下型14と、下型14に相対向して配置された上型(図示なし、
図3(a)参照)とが設けられる。上型と下型14とは成形型を構成する。この上型と下型14とで構成される成形型は、本発明の樹脂成形装置における「樹脂成形機構」に該当する。上型と下型14とは、それぞれ「樹脂成形機構」の一部であるということができる。各成形モジュール3A、3B、3C、3Dは、上型と下型14とを型締め及び型開きする型締め機構15を有する。液状樹脂が収容され硬化する空間であるキャビティ16が下型14に設けられている。キャビティ16は、下型14において、液状樹脂が収容される収容部であるといえる。キャビティ16における型面は離型フィルム17によって被覆される。
【0056】
供給モジュール4には、キャビティ16に液状樹脂を供給する樹脂供給機構18が設けられている。樹脂供給機構18は、レール11によって支えられ、レール11に沿ってX方向に移動可能である。樹脂供給機構18には、液状樹脂の吐出機構であるディスペンサ19が設けられている。各成形モジュール3A、3B、3C、3Dにおいて、ディスペンサ19は移動機構20によってY方向に移動可能であり、キャビティ16に液状樹脂を吐出することができる。
図1に示されるディスペンサ19は、予め主剤と硬化剤とが混合された液状樹脂を使用する1液タイプのディスペンサである。主剤としては、例えば、熱硬化性と透光性とを有するシリコーン樹脂やエポキシ樹脂などが使用できる。
【0057】
供給モジュール4には真空引き機構21が設けられている。真空引き機構21は、各成形モジュール3A、3B、3C、3Dにおいて上型と下型14とを型締めする直前にキャビティ16から、空気を強制的に吸引して排出することができる。供給モジュール4には、樹脂成形装置1全体の動作を制御する制御部22が設けられている。
図2においては、真空引き機構21と制御部22とを供給モジュール4に設けた場合を示した。しかし、本発明はこれに限定されず、例えば、真空引き機構21と制御部22とを他のモジュールに設けてもよい。
【0058】
つぎに、
図2及び3を参照して、樹脂供給機構18が下型14に設けられたキャビティ16に液状樹脂30(
図3参照)を供給する機構について、説明する。なお、
図3(a)は断面図であり、
図3(b)は平面図である。また、液状樹脂30は、特に限定されず、例えば、常温において液状である液状樹脂でもよい。また、液状樹脂30は、例えば、常温において固形状の樹脂材料を溶融させて生成した溶融樹脂を使用してもよい。液状樹脂及び溶融樹脂は、いずれも液状樹脂の一態様である。液状樹脂は流動性材料の一態様である。
【0059】
図2の各成形モジュール3A、3B、3C、3Dには、
図3(a)に示すとおり、上型23と下型14とフィルム押え部材24とが設けられている。上型23と下型14とは、前述のとおり成形型(樹脂成形機構)を構成する。各成形モジュール3A、3B、3C、3Dは、成形型を型締めし型開きする型締め機構15(
図2参照)を有する。
【0060】
図3(a)に示すとおり、離型フィルム17は、キャビティ16の型面及びその周囲の型面を被覆する。フィルム押え部材24は、キャビティ16の周囲において、離型フィルム17を下型14の型面に押さえ付けて固定するための部材である。フィルム押え部材24は中央部に開口を有し、その開口の内部に成形型が位置する。上型23には、例えば、LEDチップ25などが装着された封止前基板5が、吸着又はクランプなどによって固定されて配置されている。キャビティ16の内部には、それぞれのLEDチップ25に対応する個別キャビティ26が設けられている。
【0061】
同図に示すとおり、キャビティ16の全面を覆うようにして、離型フィルム17が供給される。下型14に設けられたヒータ(図示なし)によって離型フィルム17が加熱される。加熱された離型フィルム17は軟化して伸長する。キャビティ16の周囲において、フィルム押え部材24により、軟化した離型フィルム17が下型14の型面に押さえ付けられて固定される。各個別キャビティ26における型面に沿うようにして、軟化した離型フィルム17が吸着される。なお、
図3(a)においては、フィルム押え部材24を用いる場合を示した。これに限らず、離型フィルム17とフィルム押え部材24とを使用しなくてもよい。
【0062】
図1に示したとおり、ディスペンサ19は、所定量の液状樹脂30を送出する送出機構27と、液状樹脂30を貯留(収容)するシリンジ28と、液状樹脂30を吐出するノズル29とを有する。ディスペンサ19において、送出機構27とシリンジ28とノズル29とが接続されて一体的に構成される。したがって、各構成要素(送出機構27、シリンジ28、ノズル29)を互いに着脱でき、各構成要素単位を同種で異なる構成単位に交換できる。例えば、異なる材料や異なる粘度などを有する液状樹脂30を予め複数のシリンジ28に貯留して保管しておき、製品に応じて必要なシリンジ28をディスペンサ19に取り付けて使用できる。加えて、容量が異なるシリンジ28を選択して使用できる。
【0063】
ノズル29を交換することによって、液状樹脂30が吐出される方向を真下、真横、斜め下など、任意の方向に設定できる。加えて、液状樹脂30の粘度に対応してノズル29の吐出口の口径を変更できる。更に、シリンジ28とノズル29との間にスタティックミキサを設けることができる。例えば、液状樹脂30に添加剤として蛍光体などが添加された場合であっても、スタティックミキサによって液状樹脂30が攪拌されることにより、蛍光体が沈殿することなく均一な状態で液状樹脂30を吐出できる。
【0064】
ディスペンサ19は、上下方向(Z方向)にも移動させることができる。
図3(a)及び(b)に示されたディスペンサ19を、鉛直面内(Y軸とZ軸とを含む面内)又は水平面内(X軸とY軸とを含む面内)において、ある1点を中心にして部分的に回転するように往復動させることができる。この場合には、ディスペンサ19の先端部が円弧の一部分を描くようにして往復動する。
【0065】
つぎに、
図2及び3を参照して、樹脂成形装置1の動作として成形モジュール3Cを使用する場合について説明する。この方法は、樹脂成形装置1を用いた本発明の樹脂成形品の製造方法の一例である。まず、例えば、LEDチップ25が装着された封止前基板5を、LEDチップ25が装着された面を下側にして、封止前基板供給部6からローダ9に受け渡す。次に、ローダ9を、基板供給・収納モジュール2からレール11に沿って成形モジュール3Cまで+X方向に移動させる。
【0066】
次に、成形モジュール3Cにおいて、移動機構12を使用して、ローダ9を下型14と上型23(
図3(a)参照)との間の所定の位置まで-Y方向に移動させる。LEDチップ25が装着された面を下側にした封止前基板5を、上型23の下面に吸着又はクランプによって固定する。封止前基板5を上型の下面に配置した後に、基板供給・収納モジュール2における元の位置まで、ローダ9を移動させる。
【0067】
次に、樹脂供給機構18を使用して、ディスペンサ19を、供給モジュール4における待機位置から、レール11に沿って成形モジュール3Cまで-X方向に移動させる。このことによって、樹脂供給機構18を、モジュール3Cにおける下型14の近傍の所定の位置まで移動させる。移動機構20を使用して、ディスペンサ19を下型14の上方における所定の位置まで移動させる。
【0068】
次に、
図3(a)及び(b)に示すように、ディスペンサ19のノズル29から液状樹脂30を吐出する。具体的には、ディスペンサ19のノズル29から下型14に設けられたキャビティ16に向かって液状樹脂30を吐出する。このことによって、キャビティ16に液状樹脂30を供給する。
【0069】
次に、液状樹脂30をキャビティ16に供給した後に、移動機構20を使用してディスペンサ19を樹脂供給機構18まで後退させる。樹脂供給機構18を供給モジュール4における元の待機位置まで移動させる。
【0070】
次に、成形モジュール3Cにおいて、型締め機構15を使用して下型14を上昇させることによって、上型23と下型14とを型締めする。型締めすることによって、封止前基板5に装着されたLEDチップ25を、キャビティ16に供給された液状樹脂30に浸漬させる。このとき、下型14に設けられたキャビティ底面部材(図示なし)を使用して、キャビティ16内の液状樹脂30に所定の樹脂圧力を加えることができる。
【0071】
なお、型締めする過程において、真空引き機構21を使用してキャビティ16内を吸引してもよい。このことによって、キャビティ16内に残留する空気や液状樹脂30中に含まれる気泡などが成形型の外部に排出される。加えて、キャビティ16内が所定の真空度に設定される。
【0072】
次に、下型14に設けられたヒータ(図示なし)を使用して、液状樹脂30を硬化させるために必要な時間だけ、液状樹脂30を加熱する。このことによって、液状樹脂30を硬化させて硬化樹脂を形成する。このことにより、封止前基板5に装着されたLEDチップ25を、キャビティ16の形状に対応して形成された硬化樹脂によって樹脂封止する。液状樹脂30を硬化させた後に、型締め機構15を使用して上型23と下型14とを型開きする。
【0073】
次に、ローダ9を、アンローダ10が成形モジュール3Cまで移動することを妨げない適当な位置まで退避させる。例えば、基板供給・収納モジュール2から、成形モジュール3D又は供給モジュール4における適当な位置まで、ローダ9を退避させる。その後に、アンローダ10を、基板供給・収納モジュール2からレール11に沿って成形モジュール3Cまで+X方向に移動させる。
【0074】
次に、成形モジュール3Cにおいて、移動機構13を下型14と上型23との間の所定の位置まで-Y方向に移動させた後に、移動機構13が上型23から封止済基板(樹脂成形品)7を受け取る。封止済基板7を受け取った後、移動機構13をアンローダ10まで戻す。アンローダ10を基板供給・収納モジュール2に戻して、封止済基板7を封止済基板収納部8に収納する。この時点で、最初の封止前基板5の樹脂封止が完了して、最初の封止済基板7が完成する。この方法は、樹脂成形品である封止済基板7を製造する方法であるから、前述のとおり、樹脂成形装置1を用いた本発明の樹脂成形品の製造方法の一例であるといえる。
【0075】
次に、成形モジュール3D又は供給モジュール4における適当な位置まで退避させていたローダ9を、基板供給・収納モジュール2に移動させる。封止前基板供給部6からローダ9に次の封止前基板5を受け渡す。以上のようにして樹脂封止を繰り返す。
【0076】
制御部22は、封止前基板5の供給、樹脂供給機構18及びディスペンサ19の移動、液状樹脂30の吐出、上型23と下型14との型締め及び型開き、封止済基板7の収納などの動作を制御する。
【0077】
加えて、特定の成形モジュールにおいてディスペンサ19の吐出状態が正常でないと判断された場合には、制御部22が、その成形モジュールの動作が正常でないことを示す警報を発してもよい。これにより、作業者はその成形モジュールを一時停止するなどの適切な対応を行うことができる。制御部22がその成形モジュールの動作を停止させてもよい。
【0078】
また、例えば、ディスペンサ19において、シリンジ28又はノズル29を異なるシリンジ28又はノズル29に交換できる。シリンジ28又はノズル29を交換することによって、異なる材料や異なる粘度を有する液状樹脂30を製品に応じて使い分けることができる。
【0079】
本実施例によれば、前述のとおり、制御部22がプランジャ35の動作を制御するとともに、流量センサ100で測定された液状樹脂30の流量に基づいて、プランジャ35のサックバックを制御する。これにより、例えば、異なる材料や異なる粘度を有する液状樹脂30を使用する場合においても、所定時間内における液状樹脂30の吐出量を一定に維持できる。このことにより、例えば、液状樹脂30の材料や粘度が異なった場合においても、樹脂成形装置1の生産効率を安定させることができる。さらに、例えば、液状樹脂30の粘度に対応して、ノズル29の吐出口41の口径を最適化できる。したがって、ディスペンサ19を非常に簡単な構成にすることができるとともに、製品に応じて最適な液状樹脂30を使用することができる。
【0080】
また、以上において説明したとおり、本実施例の樹脂成形装置1は、液状樹脂30の吐出装置として機能する。言い換えれば、樹脂成形装置1は、液状樹脂30の吐出装置に相当する。加えて、ディスペンサ19は、前述のとおり、液状樹脂30の吐出機構として機能する。言い換えれば、ディスペンサ19は、液状樹脂30を吐出する吐出機構であって、本発明の「樹脂吐出機構」に相当する。
【0081】
なお、
図4に、本実施例の変形例の一例を示す。
図4は、ディスペンサ19すなわち樹脂吐出機構の一部と、流量センサ100のみを示す断面図である。より具体的には、
図4は、シリンジ28及びプランジャ35の先端部分と、ノズル29及び吐出口41と、シリンジ28及びノズル29内の液状樹脂30と、ノズル29の吐出口41近傍に取り付けられた流量センサ100のみを示す。図示のとおり、この樹脂吐出機構は、ノズル29が長くて柔軟性を有し、変形可能である(フレキシブルである)こと以外は、
図1のディスペンサ19と同様である。また、
図4の樹脂成形装置において、図示していない部分は、
図1~3と同様である。
【0082】
図4の構成によれば、例えば、以下のような利点がある。従来技術においては、単にノズルを延長させた場合、サックバック応答性が悪くなったが、本変形例の場合、吐出口近傍に超音波センサを設けるため、吐出口近傍の流量情報を用いてサックバックの制御を行うことができる。そのため、ノズルを延長させ、空いているスペースにシリンジを配置することができるため、シリンジ28を大容量にすることができる。シリンジ28の容量は特に限定されないが、例えば、20オンス(530mL)以上の大容量にすることも可能である。また、ノズル29が長くて柔軟性を有し、変形可能であるため、ノズル29の先端を、シリンジ28とは独立して動かすことができる。すなわち、ノズル29の先端の動きの自由度が高い。このため、例えば、液状樹脂30吐出後に、ノズル29の先端を動かすことで、吐出口41に付着して残留した液状樹脂30を吐出口41から落下させることができる。
【0083】
本実施例においては、LEDチップを樹脂封止する際に使用される樹脂成形装置及び樹脂成形方法を例に挙げて説明した。しかし、本発明は、これに限定されない。例えば、樹脂封止する対象はIC、トランジスタなどの半導体チップでもよく、受動素子でもよい。プリント基板、セラミックス基板などの基板に装着された1個又は複数個の電子部品を樹脂封止する際に本発明を適用できる。
【0084】
加えて、本発明は、電子部品を樹脂封止する場合に限らず、レンズ、光学モジュール、導光板などの光学部品を樹脂成形によって製造する場合や、一般的な樹脂成形品を製造する場合などに適用できる。
【0085】
また、例えば、主剤と硬化剤とからなる2種類の液状樹脂を実際に樹脂成形する際に一定の割合で混合して使用する2液タイプの樹脂材料がある。このような2液タイプの樹脂材料を使用する樹脂成形装置においても、本発明を適用できる。
【0086】
また、本実施例においては、圧縮成形による樹脂成形装置及び樹脂成形方法を説明した。しかし、本発明は、これに限定されず、例えば、トランスファ成形による樹脂成形装置及び樹脂成形方法に本発明を適用できる。この場合には、例えば、成形型に設けられた円筒状の空間からなる樹脂収納部(下方にプランジャと呼ばれる昇降部材が配置され、通常は固形樹脂からなる樹脂材料が収納される部分であり、ポットと呼ばれる)に、液状樹脂が吐出される。この場合には、上述したポットが、液状樹脂を収容する樹脂収容部に相当する。
【0087】
本実施例においては、下型に設けられたキャビティに液状樹脂を吐出する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、基板の上面を含む空間であってその基板の上面に実装されているチップ(半導体チップ、受動部品のチップなどの電子部品のチップ)を含む空間に、基板の上面に実装されているチップを覆うようにして液状樹脂を吐出してもよい。また、例えば、シリコンウェーハなどの半導体基板の上面を含む空間に、半導体基板に形成されている半導体回路などの機能部を覆うようにして液状樹脂を吐出してもよい。また、例えば、最終的に成形型のキャビティに収容されるはずのフィルムにおける上面を含む空間に液状樹脂を吐出してもよい。この空間は、例えば、フィルムがくぼむことによって形成される凹部である。液状樹脂は、フィルムがくぼむことによって形成された凹部に吐出される。このフィルムの目的としては、離型性の向上、フィルムの表面における凹凸からなる形状の転写、フィルムに予め形成された図柄の転写などが挙げられる。フィルムの凹部に収容された液状樹脂を、フィルムとともに、適切な搬送機構を使用して搬送して最終的に成形型のキャビティに収容する。いずれの場合においても、空間に吐出された液状樹脂は、例えば、最終的に成形型のキャビティの内部に収容され、成形型が型締めした状態でキャビティの内部において硬化されてよい。また、いずれの場合においても、例えば、相対向する1対の成形型の外部において収容部に液状樹脂を吐出し、その収容部を少なくとも含む構成要素を成形型の間に搬送できる。
【0088】
本実施例においては、基板供給・収納モジュール2と供給モジュール4との間に、4個の成形モジュール3A、3B、3C、3DをX方向に並べて装着した。基板供給・収納モジュール2と供給モジュール4とを1つのモジュールにして、そのモジュールに1個の成形モジュール3AをX方向に並べて装着してもよい。さらに、その1つのモジュールに成形モジュール3AをX方向に並べて装着し、成形モジュール3Aに他の成形モジュール3Bを装着してもよい。
【0089】
さらに、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。
【符号の説明】
【0090】
1 樹脂成形装置
2 基板供給・収納モジュール
3A、3B、3C、3D 成形モジュール
4 供給モジュール
5 封止前基板
6 封止前基板供給部
7 封止済基板(樹脂成形品)
8 封止済基板収納部
9 ローダ
10 アンローダ
11 レール
12、13、20 移動機構
14 成形型の下型(樹脂成形機構)
15 型締め機構
16 キャビティ
17 離型フィルム
18 樹脂供給機構
19 ディスペンサ(樹脂吐出機構)
21 真空引き機構
22 制御部
23 成形型の上型(樹脂成形機構)
24 フィルム押え部材
25 LEDチップ
26 個別キャビティ
27 送出機構
28 シリンジ(樹脂収容部)
29 ノズル(吐出部)
30 液状樹脂
31 サーボモータ(回転機構)
32 ボールねじ(回転軸)
33 スライダ(直動部材)
34 ロッド
35 プランジャ(移動部材)
36 ボールねじ軸受
37 振れ止め部材
38 ガイドレール
39 エンコーダ(検出部)
40 シリンジ取り付け用のねじ
41 吐出口
100 流量センサ