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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】田植機
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20221213BHJP
   A01C 11/02 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
A01B69/00 303T
A01C11/02 311E
A01C11/02 311V
A01C11/02 350H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019035813
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2019165719
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2018056172
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 健太
(72)【発明者】
【氏名】宮井 謙一
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 愼右
(72)【発明者】
【氏名】大伴 章悟
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-112962(JP,A)
【文献】実用新案登録第2556588(JP,Y2)
【文献】特許第5772396(JP,B2)
【文献】特開2006-071599(JP,A)
【文献】特開2008-092818(JP,A)
【文献】実開平03-061818(JP,U)
【文献】特開2012-129667(JP,A)
【文献】国際公開第2016/043344(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/054997(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
A01C 11/00 - 11/02
G05D 1/00 - 1/02
H01Q 1/12 - 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する機体と、
前記機体の後方に配置された苗植付装置と、
前記苗植付装置に補給するための予備苗を載置可能な左右の予備苗台と、
前記左右の予備苗台からそれぞれ上方に延びる左右の支持フレームと、
前記左右の支持フレームに連結されるユニットフレームと、
前記ユニットフレームに支持され、前記機体の位置情報を取得する測位ユニットと、を備え、
前記測位ユニットは、前記支持フレームの上端よりも上方に位置する使用状態と、前記支持フレームの上端よりも下方に位置する格納状態とに、左右方向の回動軸を中心に機体前方側へ回動して変更可能であ
前記格納状態を第1格納状態としたとき、前記測位ユニットは、前記第1格納状態と前記使用状態との間に位置する第2格納状態に変更可能であり、
前記第2格納状態で前記測位ユニットを固定可能である、田植機。
【請求項2】
前記ユニットフレームは、前記回動軸を中心に回動可能に前記左右の支持フレームに連結されており、
前記ユニットフレームは、前記測位ユニットの機体後方側への回動を規制する規制部を備えている、請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
前記機体のエンジンを覆い、開閉可能に構成されているボンネットをさらに備え、
前記測位ユニットの前記第1格納状態では、平面視で前記測位ユニットと前記ボンネットが重なり、かつ前記ボンネットを開閉可能である、請求項1又は2に記載の田植機。
【請求項4】
前記支持フレームは、サンバイザーの前部を支持し、
前記ユニットフレームは、前記回動軸を中心に回動可能に前記左右の支持フレームの中途部に連結されている、請求項1~3の何れか1項に記載の田植機。
【請求項5】
前記測位ユニットは、測位装置と、前記測位装置を内部に収納するケース部と、を備え、
前記ケース部は、水抜き穴を備え、前記水抜き穴の開口は、前記測位ユニットの使用状態では上方を向いていない、請求項1~4の何れか1項に記載の田植機。
【請求項6】
前記水抜き穴の開口は、前記測位ユニットが前記第1格納状態と前記第2格納状態のどちらの状態でも下方を向いている、請求項に記載の田植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、位置情報を取得する計測ユニットが予備苗フレームの上端部よりも上方に位置する使用状態と、使用状態に対して上下反転し、計測ユニットが予備苗フレームの上端部よりも下方に位置する格納状態と、に状態変更可能となっている田植機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-112962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、田植機の作業空間を快適にするためにサンバイザー等を搭載することがある。その場合、計測ユニットが衛星からの測位情報を取得する特性から使用状態でサンバイザーよりも上方に位置し、かつ使用状態と格納状態を変更可能にする必要があるが、特許文献1ではこのような検討は何らなされていない。
【0005】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、測位ユニットの後方に部材を搭載した場合にも、測位ユニットを使用状態と格納状態に変更することができる田植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の田植機は、走行する機体と、
前記機体の後方に配置された苗植付装置と、
前記苗植付装置に補給するための予備苗を載置可能な左右の予備苗台と、
前記左右の予備苗台からそれぞれ上方に延びる左右の支持フレームと、
前記左右の支持フレームに連結されるユニットフレームと、
前記ユニットフレームに支持され、前記機体の位置情報を取得する測位ユニットと、を備え、
前記測位ユニットは、前記支持フレームの上端よりも上方に位置する使用状態と、前記支持フレームの上端よりも下方に位置する格納状態とに、左右方向の回動軸を中心に機体前方側へ回動して変更可能であるものである。
【0007】
本発明によれば、測位ユニットの後方に、例えばサンバイザー、バックミラー、補強フレーム等の部材を搭載した場合にも、測位ユニットを、これらの部材を避けて使用状態と格納状態に変更することができる。
【0008】
本発明において、前記ユニットフレームは、前記回動軸を中心に回動可能に前記左右の支持フレームに連結されており、
前記ユニットフレームは、前記測位ユニットの機体後方側への回動を規制する規制部を備えているものでもよい。
【0009】
この構成によれば、測位ユニットを後方へ回動させる誤操作を防ぐことができる。
【0010】
本発明において、前記機体のエンジンを覆い、開閉可能に構成されているボンネットをさらに備え、
前記測位ユニットの格納状態では、平面視で前記測位ユニットと前記ボンネットが重なり、かつ前記ボンネットを開閉可能であるものでもよい。
【0011】
この構成によれば、測位ユニットを格納状態としてもボンネットを開閉することができる。
【0012】
本発明において、前記支持フレームは、サンバイザーの前部を支持し、
前記ユニットフレームは、前記回動軸を中心に回動可能に前記左右の支持フレームの中途部に連結されているものでもよい。
【0013】
この構成によれば、測位ユニットの後方にサンバイザーを搭載した場合にも、測位ユニットをサンバイザーを避けて使用状態と格納状態に変更することができる。
【0014】
本発明において、前記格納状態を第1格納状態としたとき、前記測位ユニットは、前記第1格納状態と前記使用状態との間に位置する第2格納状態に変更可能であり、
前記第2格納状態で前記測位ユニットを固定可能であることが好ましい。
【0015】
例えば、第1格納状態を田植機を使用しない状態とし、第2格納状態は、測位ユニットを必要としない田植機の操縦を行う状態として、作業に応じて測位ユニットの位置を適切に変更することが可能となる。第2格納状態では、第1格納状態に比べ、操縦座席に座ったオペレータからの視認性を向上できる。
【0016】
本発明において、前記測位ユニットは、測位装置と、前記測位装置を内部に収納するケース部と、を備え、
前記ケース部は、水抜き穴を備え、前記水抜き穴の開口は、前記測位ユニットの使用状態では上方を向いていないことが好ましい。
【0017】
この構成によれば、測位ユニットの使用状態において、ケース部内に水抜き穴から雨が侵入しにくくなっている。
【0018】
本発明において、前記水抜き穴の開口は、前記測位ユニットが前記第1格納状態と前記第2格納状態のどちらの状態でも下方を向いていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、測位ユニットの第1格納状態及び第2格納状態において、ケース部内に侵入した水を水抜き孔から排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係る田植機の全体構成を示す左側面図である。
図2】ユニットフレーム周辺を右後方から見た斜視図である。
図3A図2のA領域の分解斜視図である。
図3B図2のB領域の拡大図である。
図4】測位ユニットが格納状態にある田植機を示す左側面図である。
図5】運転操作部を左後方から見た斜視図である。
図6】タブレットステー周辺の斜視図である。
図7】第2実施形態に係る田植機の全体構成を示す左側面図である。
図8】第2実施形態に係る田植機の一部を示す平面図である。
図9】第3実施形態に係る田植機の一部を示す斜視図である。
図10】第3実施形態に係る田植機の一部を示す左側面図である。
図11】第4実施形態に係るユニットフレーム周辺を右後方から見た斜視図である。
図12】測位ユニットの状態の変更を示す左側面図である。
図13A図11のC領域の分解斜視図である。
図13B図11のD領域の拡大図である。
図14】測位ユニットの全体構成を示す斜視図である。
図15】使用状態における測位ユニットの断面図である。
図16】第1格納状態及び第2格納状態における測位ユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
<第1実施形態>
まず、田植機1の概略構造について説明する。図1は、本実施形態に係る田植機1の左側面図である。なお、以下の説明では、走行機体2の進行方向(図1の左方向)に向かって左側を単に左側と称し、同じく進行方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0023】
田植機1は、走行機体2と、走行機体2を支持する左右一対の前輪3,3及び左右一対の後輪4,4と、走行機体2の前部に搭載されるエンジン5とを備えている。エンジン5からの動力を後方のミッションケース6に伝達して、前輪3,3及び後輪4,4を駆動させることにより、走行機体2が前後進走行するように構成されている。ミッションケース6の左右側方にフロントアクスルケース7を突出させ、フロントアクスルケース7から左右外向きに延びる前車軸に前輪3が舵取り可能に取り付けられている。ミッションケース6の後方に筒状フレーム8を突出させ、筒状フレーム8の後端側にリアアクスルケース9を固設し、リアアクスルケース9から左右外向きに延びる後車軸に後輪4が取り付けられている。
【0024】
図1に示されるように、走行機体2の前部及び中央部の上面側には、オペレータ搭乗用の作業ステップ(車体カバー)10が設けられている。作業ステップ10の前部の上方にはボンネット11が配置され、ボンネット11の内部にエンジン5を設置している。ボンネット11は、エンジン5を覆い、開閉可能に構成されている。
【0025】
また、ボンネット11の後部上面側にある運転操作部12には、操向ハンドル13と走行主変速レバー14とが設けられている。作業ステップ10の上面のうちボンネット11の後方には、シートフレーム15を介して操縦座席16が配置されている。操縦座席16と操向ハンドル13との間の空間には、手すりを設けてもよい。手すりは、正面視でU字状をしており、ボンネット11の左右側方のフロアに両端が固定される。手すりの高さは、操向ハンドル13より低くなっている。
【0026】
走行機体2の後端部にリンクフレーム17が立設されている。リンクフレーム17には、ロワーリンク18及びトップリンク19からなる昇降リンク機構20を介して、苗植付装置21が昇降可能に連結されている。筒状フレーム8の上面後部に、油圧式の昇降シリンダ22のシリンダ基端側を上下回動可能に支持させる。昇降シリンダ22のロッド先端側はロワーリンク18に連結している。昇降シリンダ22の伸縮動にて昇降リンク機構20を上下回動させる結果、苗植付装置21が昇降動する。
【0027】
オペレータは、作業ステップ10の側方にある乗降ステップ23から作業ステップ10上に搭乗し、運転操作にて圃場内を移動しながら、苗植付装置21を駆動させて圃場に苗を植え付ける苗植え作業(田植え作業)を実行する。
【0028】
図1に示すように、苗植付装置21は、エンジン5からミッションケース6を経由した動力が伝達される植付入力ケース24と、植付入力ケース24に連結する八条用四組(二条で一組)の植付伝動ケース25と、各植付伝動ケース25の後端側に設けられた苗植機構26と、八条植え用の苗載台27と、各植付伝動ケース25の下面側に配置された田面均平用のフロート28とを備えている。苗植機構26には、一条分二本の植付爪29を有するロータリケース30が設けられている。植付伝動ケース25に二条分のロータリケース30が配置されている。ロータリケース30の一回転によって、二本の植付爪29が各々一株ずつの苗を切り取ってつかみ、フロート28にて整地された田面に植え付ける。
【0029】
ボンネット11の左右側方には、苗植付装置21に補給するための予備苗を載置可能な予備苗台31が設けられている。本実施形態では、左右に4つずつ予備苗台31が設けられている。また、ボンネット11の左右側方には、予備苗台31を支持する予備苗フレーム32が前後方向に間隔をあけて2本ずつ設けられている。また、予備苗フレーム32の上部には、前後方向に並べられた2本の予備苗フレーム32の上端に連結される連結フレーム33が設けられている。
【0030】
連結フレーム33は、側方視で略L字状をしており、連結フレーム33の上端には、上方に延びる支持フレーム34が接続されている。左右の支持フレーム34の上部には、ユニットフレーム35が回動可能に連結される。
【0031】
図2は、ユニットフレーム35周辺を右後方から見た斜視図である。ユニットフレーム35は、正面視で略U字状をしており、両端が支持フレーム34に回動可能に連結される。ユニットフレーム35には、測位ユニット36が固定されている。
【0032】
図3Aは、図2に示す支持フレーム34及びユニットフレーム35のA領域の分解斜視図である。支持フレーム34の上端には、支持プレート341が設けられている。支持プレート341は、平面視でL字状をしており、支持フレーム34の外周面に溶接固定されている。支持プレート341の左右方向内側の支持面341aには、上から第1固定用孔342、位置決め孔343、回動用孔344の3つの貫通孔が形成されている。第1固定用孔342は、ユニットフレーム35を支持プレート341にボルト345で固定するための孔である。位置決め孔343は、ユニットフレーム35に設けられる位置決めピン353(後述する)が挿入される孔である。回動用孔344は、ユニットフレーム35に設けられる回動ピン354(後述する)が挿入される孔である。
【0033】
ユニットフレーム35の下端には、回動プレート351が設けられている。回動プレート351は、支持プレート341に対向するようにユニットフレーム35の外周面に溶接固定されている。回動プレート351には、第2固定用孔352が形成されている。支持プレート341の第1固定用孔342と回動プレート351の第2固定用孔352にボルト345を挿入してナットで締結することにより、ユニットフレーム35を支持フレーム34に固定することができる。
【0034】
また、回動プレート351には、L字状の位置決めピン353が設けられている。位置決めピン353の先端は、回動プレート351から突出して支持プレート341の位置決め孔343に挿入されるように構成されている(ただし、図3Aでは位置決めピン353の先端は見えていない)。位置決めピン353は、支持プレート341に向かう方向(図3Aの左方向)に付勢されており、付勢力に抗して位置決めピン353を引っ張ることで位置決めピン353の先端を位置決め孔343から抜くことができる。
【0035】
また、回動プレート351には、支持プレート341に向かって突出する回動ピン354が形成されている。回動ピン354は、支持プレート341の回動用孔344に挿入され、回動軸として機能する。すなわち、回動プレート351は、回動ピン354の回りで支持プレート341に対して回動する。これにより、ユニットフレーム35は、支持フレーム34に対して図2に示す左右方向の回動軸35aを中心に回動することができ、図1に示す使用状態と、図4に示す格納状態とに状態を変更することができる。測位ユニット36は、使用状態では支持フレーム34の上端よりも上方に位置し、格納状態では支持フレーム34の上端よりも下方に位置している。なお、図4に示す格納状態においては、平面視で測位ユニット36とボンネット11が重なり、かつボンネット11を開閉可能である。
【0036】
回動プレート351を図2の状態から回動させる場合には、ボルト345を外した後、位置決めピン353を右方向に引っ張って位置決め孔343から抜く。一方、回動プレート351を支持プレート341に固定する場合には、位置決めピン353と位置決め孔343で位置決めを行った後、ボルト345で本固定することができるため、安全に容易に固定することができる。なお、回動ピン354には雄ねじが形成されており、回動時にはナットを緩め、固定時にはナットを完全に締めるようにしている。
【0037】
図3Bは、図2に示す支持フレーム34及びユニットフレーム35のB領域の拡大図である。右側の回動部分は、前述の左側の回動部分と略同じ構造であるため、異なる部分のみ説明する。右側の回動プレート351には、位置決めピン353の代わりに、ストッパピン355(規制部に相当する)が形成されている。ストッパピン355は、支持フレーム34に向かう方向(図3Bの右方向)に突出しており、支持フレーム34の後部に当接することで、使用状態のユニットフレーム35が走行機体2の後方側へ回動することを規制する。また、ストッパピン355は、支持プレート341の後部に当接することで、格納状態のユニットフレーム35が走行機体2の後方側へ回動することも規制する。
【0038】
ユニットフレーム35の左右方向中央部には、測位ユニット36が設けられている。測位ユニット36は、測位用アンテナ、位置情報受信機、慣性計測装置(IMU)等を備える。測位用アンテナは、例えば衛星測位システム(GNSS)等の測位システムを構成する測位衛星からの信号を受信するものである。測位用アンテナは、測位ユニット36の上面に取り付けられている。測位用アンテナで受信された測位信号は、位置情報受信機に入力され、位置情報受信機は、入力された測位信号を信号処理して測位情報を取得する。慣性計測装置は、走行機体2の姿勢(ロール角、ピッチ角、ヨー角)を特定することが可能なユニットである。
【0039】
衛星測位システムを用いた測位方法として、予め定められた基準点に設置された基準局からの補正情報により田植機1(移動局)の衛星測位情報を補正して、田植機1の現在位置を求める測位方法を適用可能としている。例えば、D-GPS測位(ディファレンシャルGPS測位)、RTK測位(リアルタイムキネマティック測位)等の各種の測位方法を適用することができる。本実施形態では、RTK測位を適用している。
【0040】
図1及び図2に示すように、測位ユニット36の下部には、水浸入防止板360を備える。水浸入防止板360は、下方向に突となるように折り曲げた板部材である。図1に示す使用状態では、水浸入防止板360の折り曲げられた屈曲部360aは、測位ユニット36の前後方向中央よりも前方側に位置している。これにより、水浸入防止板360から垂れてきた水滴が後述するタブレット37に当たりにくい。一方、図4に示す格納状態では、水浸入防止板360は、測位ユニット36の底面に設けられた水抜き孔からの水の侵入を防止する。
【0041】
図5は、運転操作部12周辺の斜視図である。運転操作部12の右側には、タッチパネルを有するタブレット37が設けられている。タブレット37は、測位ユニット36により取得した位置情報を表示することができる。また、タブレット37は、例えば設定した経路に沿って田植機1を自動走行させる際、走行経路を表示したり、自動走行の指示を行ったりするために使用される。
【0042】
タブレット37は、図6に示すようなタブレットステー38で支持される。タブレットステー38は、予備苗フレーム32に固定される基端部38aと、基端部38aに対して水平方向に回動する先端部38bとを備える折り畳み構造である。先端部38bがタブレット37を支持する。
【0043】
タブレットステー38の基端部38aは、前後の予備苗フレーム32の間に亘って配置されている。タブレットステー38の基端部38aの上面には、収納ボックス39が設けられている。収納ボックス39は、前後の予備苗フレーム32の間であって、かつ上下の予備苗台31の間に配置されている。収納ボックス39の底面は、左右方向中央でタブレットステー38の基端部38aの上面に固定されている。収納ボックス39は、防水性があり、通信機器等の電子機器が収納される。収納ボックス39の底面には、電子機器接続用のハーネスを引き込むための孔(不図示)が設けられている。孔には防水ゴムが設けられている。
【0044】
基端部38aには、タブレットステー38を折り畳んだ際に、タブレット37が収納ボックス39に干渉することを防ぐためのストッパ381が設けられている。ストッパ381の先端は、タブレットステー38を折り畳んだ際、先端部38bの背面に当接する。
【0045】
先端部38bの先端には、タブレット37を上下方向から挟み込んで固定するホルダ382が設けられている。ホルダ382は、先端部38bに固定されるホルダ下部382aと、ホルダ下部382aに向かって付勢されたホルダ上部382bとを備える。ホルダ下部382aに載置されたタブレット37をホルダ上部382bで挟んで固定する。
【0046】
ホルダ下部382aの両端には、タブレット37が横にずれることを防止する横ずれ防止板382cを設けている。横ずれ防止板382cは、ホルダ下部382aに設けているため、ホルダ382に固定したタブレット37の端子にも容易にアクセスできる。また、ホルダ上部382bには、視認性を上げるためにタブレット用のサンバイザーを設けてもよい。また、ホルダ下部382aには、タブレット37を充電可能なワイヤレス充電の機能を設けてもよい。
【0047】
ボンネット11内には、IMUリセットスイッチを設けるのが好ましい。自動走行機能を有する田植機1では、測位ユニット36内にある慣性計測装置(IMU)で車両の位置情報を記憶しているが、例えばトラックで田植機1を輸送して位置情報がずれた場合、また、田植機1の測位情報を取得する動作中に誤って田植機1を後進させた場合にリセットする必要がある。通常作業では、IMUリセットスイッチは操作しないため、IMUリセットスイッチはボンネット11内に設けるのが好ましい。
【0048】
<第2実施形態>
図7は、サンバイザー40が搭載された田植機1の左側面図である。サンバイザー40は、第1サンバイザーフレーム41と第2サンバイザーフレーム42とで支持されている。第1サンバイザーフレーム41はサンバイザー40の前部を支持し、第2サンバイザーフレーム42はサンバイザー40の後部を支持する。第2実施形態では、ユニットフレーム35は、左右の第1サンバイザーフレーム41の中途部に回動可能に連結されている。すなわち、測位ユニット36及びユニットフレーム35は、第1サンバイザーフレーム41の上端よりも上方に位置する使用状態と、第1サンバイザーフレーム41の上端よりも下方に位置する格納状態とに、左右方向の回動軸35aを中心に機体前方側へ回動して変更可能であるため、測位ユニット36及びユニットフレーム35がサンバイザー40にぶつかることはない。
【0049】
よって、第2実施形態に係る田植機1は、サンバイザー40と、サンバイザー40を支持する第1サンバイザーフレーム41(本発明の支持フレームに相当)と、第1サンバイザーフレーム41の中途部に回動可能に支持されたユニットフレーム35と、ユニットフレーム35に支持され、機体の位置情報を取得する測位ユニット36と、を備え、測位ユニット36は、サンバイザー40の前端よりも上方で機体方向前方に位置する使用状態と、使用状態よりも下方でサンバイザー40の前端よりも下方に位置する格納状態とに、機体左右方向の回動軸35aを中心に機体前方側へ回動して変更可能である。
【0050】
図8は、第2実施形態に係る田植機1の平面図である。タブレット37は、平面視でサンバイザー40と重なるように配置される。これにより、タブレット37の雨除けに効果があり、さらに日光反射を抑えて視認性が上がる。
【0051】
また、タブレット37は、予備苗台31の左右方向内側の後端と操縦座席16の外側端とを結んだ直線Lよりも前方側に配置される。これにより、予備苗台31にある苗を苗載台27に補給するときに、タブレット37が邪魔とならない。さらに、タブレットステー38を折り畳んでタブレット37を予備苗台31の前に収納した状態においても、予備苗台31の前の通路は通行可能な幅を確保している。なお、第1実施形態及び後述する第3実施形態でも同じである。
【0052】
<第3実施形態>
図9及び図10は、ボンネット11の左右側方に1本ずつ予備苗フレーム32,32を設け、各予備苗フレーム32に8つずつ予備苗台31を設けた形態を示している。予備苗台31は、予備苗フレーム32を軸として回動可能に構成されている。この第3実施形態では、左右の予備苗フレーム32の間隔が大きく、ユニットフレーム35の左右幅が広いため、ユニットフレーム35を支持する支持部材43を設けている。支持部材43は、ボンネット11の右側方のフロアから立設されている。支持部材43を設けることで、ユニットフレーム35が補強され、測位ユニット36の防振効果が得られる。支持部材43の配置は上記の構成に限定されず、ボンネット11の左側方のフロアから立設される配置にしてもよい。
【0053】
タブレット37は、支持部材43に設けられたホルダ382に固定されている。また、支持部材43は、測位ユニット36、タブレット37に接続される電気配線の経路としても利用することができる。また、支持部材43は、手すりとしても利用できる。
【0054】
第1実施形態及び第2実施形態では、支持フレーム34及び第1サンバイザーフレーム41を連結フレーム33に接続しているが、支持フレーム34及び第1サンバイザーフレーム41は、連結フレーム33と一体としてもよい。また、第3実施形態のように、支持フレーム34を連結フレーム33を介することなく予備苗フレーム32に直接接続してもよい。
【0055】
<第4実施形態>
図11は、第4実施形態に係るユニットフレーム35周辺を右後方から見た斜視図である。ユニットフレーム35は、正面視で略U字状をしており、両端が支持フレーム34に回動可能に連結される。ユニットフレーム35には、測位ユニット36が固定されている。
【0056】
第4実施形態の測位ユニット36は、格納状態として、第1格納状態と第2格納状態とを有する。測位ユニット36は、図12(a)に示す使用状態と、図12(c)に示す第1格納状態と、第1格納状態と使用状態との間に位置する図12(b)に示す第2格納状態とに状態を変更することができる。
【0057】
第1格納状態は、使用状態から160°回転しており、第2格納状態は、使用状態から115°回転している。測位ユニット36は、使用状態では支持フレーム34の上端よりも上方に位置し、第1格納状態及び第2格納状態では支持フレーム34の上端よりも下方に位置している。測位ユニット36は、第2格納状態で固定可能に構成されている。例えば、第1格納状態を田植機1を使用しない状態とし、第2格納状態は、測位ユニット36を必要としない田植機1の操縦を行う状態として、作業に応じて測位ユニット36の位置を適切に変更することが可能となる。第2格納状態では、第1格納状態に比べ、操縦座席16に座ったオペレータからの視認性を向上できる。
【0058】
図13Aは、図11に示す支持フレーム34及びユニットフレーム35のC領域の分解斜視図である。支持フレーム34の上端には、支持プレート341が設けられている。支持プレート341は、平面視でL字状をしており、支持フレーム34の外周面に溶接固定されている。支持プレート341の左右方向内側の支持面341aには、上から第1固定用孔342、第1位置決め孔343a、回動用孔344、第2位置決め孔343b、第3位置決め孔343cの5つの貫通孔が形成されている。第1固定用孔342は、ユニットフレーム35を支持プレート341にボルト345で固定するための孔である。第1位置決め孔343a、第2位置決め孔343b、及び第3位置決め孔343cは、ユニットフレーム35に設けられる位置決めピン353(後述する)が挿入される孔である。回動用孔344は、ユニットフレーム35に設けられる回動ピン354(後述する)が挿入される孔である。
【0059】
ユニットフレーム35の下端には、回動プレート351が設けられている。回動プレート351は、支持プレート341に対向するようにユニットフレーム35の外周面に溶接固定されている。回動プレート351には、第2固定用孔352a、第3固定用孔352b、及び第4固定用孔352cが形成されている。支持プレート341の第1固定用孔342と回動プレート351の第2固定用孔352a、第3固定用孔352b、又は第4固定用孔352cとにボルト345を挿入してナットで締結することにより、ユニットフレーム35を支持フレーム34に固定することができる。測位ユニット36の使用状態では、第2固定用孔352aを用いてユニットフレーム35が支持フレーム34に固定される。測位ユニット36の第1格納状態では、第3固定用孔352bを用いてユニットフレーム35が支持フレーム34に固定される。測位ユニット36の第2格納状態では、第4固定用孔352cを用いてユニットフレーム35が支持フレーム34に固定される。
【0060】
また、回動プレート351には、L字状の位置決めピン353が設けられている。位置決めピン353の先端は、回動プレート351から突出して支持プレート341の第1位置決め孔343a、第2位置決め孔343b、又は第3位置決め孔343cに挿入されるように構成されている(ただし、図13Aでは位置決めピン353の先端は見えていない)。測位ユニット36の使用状態では、位置決めピン353が第1位置決め孔343aに挿入される。測位ユニット36の第2格納状態では、位置決めピン353が第2位置決め孔343bに挿入される。測位ユニット36の第1格納状態では、位置決めピン353が第3位置決め孔343cに挿入される。位置決めピン353は、支持プレート341に向かう方向(図13Aの左方向)に付勢されており、付勢力に抗して位置決めピン353を引っ張ることで位置決めピン353の先端を第1位置決め孔343a、第2位置決め孔343b、又は第3位置決め孔343cから抜くことができる。
【0061】
また、回動プレート351には、支持プレート341に向かって突出する回動ピン354が形成されている。回動ピン354は、支持プレート341の回動用孔344に挿入され、回動軸として機能する。すなわち、回動プレート351は、回動ピン354の回りで支持プレート341に対して回動する。これにより、ユニットフレーム35は、支持フレーム34に対して図11に示す左右方向の回動軸35aを中心に回動することができ、図12に示す使用状態と、第1格納状態と、第2格納状態とに状態を変更することができる。測位ユニット36は、使用状態では支持フレーム34の上端よりも上方に位置し、第1格納状態及び第2格納状態では支持フレーム34の上端よりも下方に位置している。なお、第1格納状態においては、平面視で測位ユニット36とボンネット11が重なり、かつボンネット11を開閉可能である。
【0062】
回動プレート351を図11の状態から回動させる場合には、ボルト345を外した後、位置決めピン353を右方向に引っ張って第1位置決め孔343aから抜く。一方、回動プレート351を支持プレート341に固定する場合には、位置決めピン353と第1位置決め孔343a、第2位置決め孔343b、又は第3位置決め孔343cとで位置決めを行った後、ボルト345で本固定することができるため、安全に容易に固定することができる。なお、回動ピン354には雄ねじが形成されており、回動時にはナットを緩め、固定時にはナットを完全に締めるようにしている。
【0063】
図13Bは、図11に示す支持フレーム34及びユニットフレーム35のD領域の拡大図である。右側の回動部分は、前述の左側の回動部分と略同じ構造であるため、異なる部分のみ説明する。右側の回動プレート351には、位置決めピン353の代わりに、ストッパピン355(規制部に相当する)が形成されている。ストッパピン355は、支持フレーム34に向かう方向(図13Bの右方向)に突出しており、支持フレーム34の後部に当接することで、使用状態のユニットフレーム35が走行機体2の後方側へ回動することを規制する。また、ストッパピン355は、支持プレート341の後部に当接することで、第1格納状態のユニットフレーム35が走行機体2の後方側へ回動することも規制する。
【0064】
ユニットフレーム35の左右方向中央部には、測位ユニット36が設けられている。測位ユニット36は、測位用アンテナ、位置情報受信機、慣性計測装置(IMU)等を備える。測位用アンテナは、例えば衛星測位システム(GNSS)等の測位システムを構成する測位衛星からの信号を受信するものである。測位用アンテナで受信された測位信号は、位置情報受信機に入力され、位置情報受信機は、入力された測位信号を信号処理して測位情報を取得する。慣性計測装置は、走行機体2の姿勢(ロール角、ピッチ角、ヨー角)を特定することが可能なユニットである。
【0065】
衛星測位システムを用いた測位方法として、予め定められた基準点に設置された基準局からの補正情報により田植機1(移動局)の衛星測位情報を補正して、田植機1の現在位置を求める測位方法を適用可能としている。例えば、D-GPS測位(ディファレンシャルGPS測位)、RTK測位(リアルタイムキネマティック測位)等の各種の測位方法を適用することができる。本実施形態では、D-GPS測位を適用している。
【0066】
図14は測位ユニット36の斜視図であり、図15は測位ユニット36の左右方向中央で一部を切断した断面図である。測位ユニット36は、測位装置361と、測位装置361を内部に収納するケース部362と、を備えている。測位装置361は、D-GPS測位を実行することができる。測位装置361とケース部362は、平板状のベース座363の下面からボルトにより締結されている。ベース座363は、ユニットフレーム35に固定されている。
【0067】
ケース部362は、底面が開放された箱状をしている。ケース部362の下部外縁は、ベース座363の周囲を覆っている。ケース部362の後壁の下部には、切り欠き362cが形成され、切り欠き362cにはグロメット364が嵌められている。グロメット364は、測位装置361からケース部362の外へ延びるハーネス361aを支持する。
【0068】
使用状態におけるケース部362の前部上面には、水抜き穴362aが形成されている。ケース部362の上面には、前後方向に延びる凹部362bが設けられている。凹部362bは、前側よりも後側が深くなるように構成されており、水抜き穴362aは凹部362bの後壁に形成されている。測位ユニット36の使用状態において、水抜き穴362aの開口は、前方を向いており、上方を向いていない。これにより、測位ユニット36の使用状態において、水抜き穴362aからケース部362内に雨が侵入しにくくなっている。
【0069】
一方、図16に示す測位ユニット36の第1格納状態と第2格納状態のどちらの状態においても、水抜き穴362aの開口は、水平方向よりも下方を向いている。これにより、測位ユニット36の第1格納状態及び第2格納状態において、ケース部362内に侵入した水は、水抜き穴362aから排出される。
【0070】
また、ベース座363の前部には、排水孔363aが形成されている。これにより、使用状態において水抜き穴362aからケース部362内に雨が侵入した場合にも、排水孔363aから雨水を排出することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1 田植機
2 走行機体
11 ボンネット
21 苗植付装置
27 苗載台
31 予備苗台
32 予備苗フレーム
34 支持フレーム
35 ユニットフレーム
35a 回動軸
36 測位ユニット
361 測位装置
362 ケース部
362a 水抜き穴
37 タブレット
40 サンバイザー
41 第1サンバイザーフレーム
353 位置決めピン
354 回動ピン
355 ストッパピン


図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16