IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリンパス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-医療機器および医療機器の製造方法 図1
  • 特許-医療機器および医療機器の製造方法 図2
  • 特許-医療機器および医療機器の製造方法 図3
  • 特許-医療機器および医療機器の製造方法 図4
  • 特許-医療機器および医療機器の製造方法 図5
  • 特許-医療機器および医療機器の製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】医療機器および医療機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20221213BHJP
   A61B 1/005 20060101ALI20221213BHJP
   C09D 201/02 20060101ALI20221213BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20221213BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20221213BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20221213BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20221213BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
A61B1/00 717
A61B1/00 714
A61B1/005 511
A61B1/005 521
C09D201/02
C09D163/00
C09D5/00 D
B32B27/30 D
B32B27/38
B05D1/36 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019042807
(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公開番号】P2020142002
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】真柄 敬
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-151693(JP,A)
【文献】特開2011-204806(JP,A)
【文献】国際公開第2009/157545(WO,A1)
【文献】特開2002-308965(JP,A)
【文献】特開2010-278427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
C09D 201/02
C09D 163/00
C09D 5/00
B32B 27/30
B32B 27/38
B05D 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素を含む樹脂基材と、
前記樹脂基材の上に形成されているイソシアネートを含む下地層と、
前記下地層の上に形成されたエポキシ樹脂層と、
を備え、
前記下地層は、前記下地層の材料であるイソシアネートと前記エポキシ樹脂層とが化学反応することによって生成されるオキサゾリドン環を含み、
前記樹脂基材と前記下地層との少なくとも一方は炭素同士の不飽和結合を有する物質を含み、前記樹脂基材と前記下地層とが3次元的な凹凸構造をなして複合している、
医療機器。
【請求項2】
フッ素を含む樹脂基材と、有機溶媒にイソシアネートが混合された溶液とを、少なくとも一方に炭素同士の不飽和結合を有する他の物質を含む状態で準備することと、
前記溶液を前記樹脂基材の表面に付着させ、前記溶液を乾燥させることによって、下地層を形成することと、
前記下地層の上にエポキシ樹脂原料を塗布し、前記エポキシ樹脂原料を硬化させることによって、エポキシ樹脂層を形成することと共に、前記下地層のイソシアネートと前記エポキシ樹脂原料との化学反応によりオキサゾリドン環を生成し、前記樹脂基材と前記下地層とを3次元的な凹凸構造をなして複合させることと、
を含む、医療機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器および医療機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡などの医療機器の消毒、滅菌には種々の薬剤が用いられる場合がある。薬剤は、細菌に作用するとともに医療機器の構成部品にも作用する。薬剤は、医療機器の構成部品の材料を劣化させる場合がある。
例えば、特許文献1には、消毒、滅菌後のエポキシ接着剤の剥がれ等を抑制する目的で、エポキシ接着剤中にアクリルゴム微粒子を分散させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-218102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような関連技術には、以下のような問題がある。
特許文献1に記載の技術では、接着せん断強度および接着剥離強度の向上を目的として、ビスフェノール系エポキシ樹脂にアクリルゴムをブレンドし、ビスフェノール系エポキシ樹脂を変性させる。この結果、金属部材同士またはゴム部品同士における接着せん断強度および接着剥離強度が向上する。
しかし、医療機器の構成部材の一部外表面には、フッ素系材料が露出している場合がある。フッ素系材料は難接着材料であるので、特許文献1の技術を用いても接着剤の密着性自体が低い。この結果、被着体の少なくとも一方がフッ素系材料の場合、消毒、滅菌の薬液のアタックによって接着剤の浮き、剥がれなどが発生しやすいという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、フッ素を含む樹脂基材を被着体とする接着部の耐久性を向上できる医療機器および医療機器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る医療機器は、フッ素を含む樹脂基材と、前記樹脂基材の上に形成されているイソシアネートを含む下地層と、前記下地層の上に形成されたエポキシ樹脂層と、を備え、前記下地層は、前記下地層の材料であるイソシアネートと前記エポキシ樹脂層とが化学反応することによって生成されるオキサゾリドン環を含み、前記樹脂基材と前記下地層との少なくとも一方は炭素同士の不飽和結合を有する物質を含み、前記樹脂基材と前記下地層とが3次元的な凹凸構造をなして複合している。
【0008】
本発明の第2の態様に係る医療機器の製造方法は、フッ素を含む樹脂基材と、有機溶媒にイソシアネートが混合された溶液とを、少なくとも一方に炭素同士の不飽和結合を有する他の物質を含む状態で準備することと、前記溶液を前記樹脂基材の表面に付着させ、前記溶液を乾燥させることによって、下地層を形成することと、前記下地層の上にエポキシ樹脂原料を塗布し、前記エポキシ樹脂原料を硬化させることによって、エポキシ樹脂層を形成することと共に、前記下地層のイソシアネートと前記エポキシ樹脂原料との化学反応によりオキサゾリドン環を生成し、前記樹脂基材と前記下地層とを3次元的な凹凸構造をなして複合させることと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の医療機器および医療機器の製造方法によれば、フッ素を含む樹脂基材を被着体とする接着部の耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の医療機器の構成例を示す模式的な斜視図である。
図2】本発明の実施形態の医療機器における接着部の模式的な平面図である。
図3図2におけるA-A断面図である。
図4】本発明の実施形態の医療機器の製造方法の模式的な工程説明図である。
図5】本発明の実施形態の第1変形例の医療機器における接着部の模式的な断面図である。
図6】本発明の実施形態の第2変形例の医療機器における接着部の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本発明の実施形態の医療機器および医療機器について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
図1は、本発明の実施形態の医療機器の構成例を示す模式的な斜視図である。図2は、本発明の実施形態の医療機器における接着部の模式的な平面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の内視鏡1(医療機器)は、挿入部2と、操作部7とを備える。
挿入部2は患者の体内に挿入される。挿入部2は管状である。挿入部2は可撓性を有する。挿入部2は、挿入方向の先端側から順に、先端部3、湾曲部4、および可撓管部5を有する。挿入部2の内部には、処置具を挿通する処置具チャンネルが長手方向に設けられてもよい。
【0014】
先端部3は、内視鏡1の最先端部に配置されている。先端部3は円柱状の外形を有する。先端部3は、撮像素子と、撮像光学系とを内部に含んでいる。先端部3の先端には、撮像窓および照明窓が形成されている。挿入部2が処置具チャンネルを備える場合には、先端部3の先端に処置具チャンネルの開口が設けられている。
【0015】
湾曲部4は、先端部3の基端側に連結されている。湾曲部4は、先端部3の向きを変更する。湾曲部4は湾曲可能な管状の部位である。
湾曲部4は、例えば複数の節輪を含む。節輪は円環状である。節輪は隣の節輪に回動可能に連結されている。湾曲部4において、節輪の内部には、複数のアングルワイヤーが挿通されている。
さらに湾曲部4の内部には、例えば、電気配線およびライトガイドなどの部材が収容されている。電気配線は先端部3の撮像素子に接続されている。ライトガイドは照明窓まで延ばされている。
電気配線およびライトガイドなどの部材は、後述する可撓管部5の内部に挿通されている。電気配線およびライトガイドなどの部材は、後述する操作部7まで延びている。
【0016】
図2に示すように、湾曲部4の最外部には、外皮4A(樹脂基材)が配置されている。
外皮4Aは、節輪の外周を覆うチューブである。外皮4Aは、可撓性を有する樹脂材料で形成される。本実施形態では、外皮4Aの樹脂材料には、生体組織等との摺動性を向上する目的で、フッ素が含まれる。
外皮4Aの樹脂材料としては、フッ素を含むエチレンプロピレン系樹脂、フッ素を含むスチレン系樹脂、フッ素を含むオレフィン系樹脂、フッ素を含む塩化ビニル系樹脂、フッ素を含むポリエステル系樹脂、フッ素を含むポリウレタン系樹脂、およびフッ素を含むナイロン系樹脂からなる群から選ばれた1種類以上の樹脂が用いられてもよい。
ここで、「フッ素を含む樹脂」とは、樹脂に含まれる化合物の一部にフッ素原子が含まれていることを意味する。
例えば、フッ素原子は、樹脂ポリマーの側鎖に配されていてもよいし、末端に配されていてもよい。例えば、フッ素原子は、樹脂材料に添加される化合物の一部に配されてもよい。例えば、外皮4Aが複数の樹脂材料の複合体からなる場合、複数の樹脂材料の少なくとも1つの樹脂材料がフッ素原子を含んでいればよい。
「フッ素を含む樹脂」は、表面の少なくとも一部にフッ素基が露出するので、表面の摺動性が良好になる。一方、「フッ素を含む樹脂」の表面において、フッ素基に由来する疎水性が高くなるので、接着剤に対する接着性は低下する。
【0017】
外皮4Aに用いる樹脂材料は、炭素同士の不飽和結合を有する物質をさらに含むことがより好ましい。前記物質の種類は特に限定されない。例えば、前記物質の例としては、フッ素を含むアクリル樹脂、フッ素を含むビニルエステル樹脂、フッ素を含むビニル酢酸樹脂、フッ素を含むビニリデン樹脂などが挙げられる。
【0018】
図1に示すように、可撓管部5は、湾曲部4と、後述する操作部7と、を繋ぐ管状部分である。
可撓管部5は、例えば、図示略の蛇管と、外皮5A(図2参照、樹脂基材)と、を備える。蛇管は金属あるいは樹脂製の帯状部材が螺旋状に巻かれた部材である。
図2に示すように、外皮5Aは、可撓管部5の最外部に配置されている。外皮5Aは、蛇管の外周を覆うチューブである。外皮5Aにおいて湾曲部4に対向する端部は、湾曲部4における外皮4Aの端部と対向している。
外皮5Aの外径は、外皮4Aの外径と同じでもよいし、異なっていてもよい。図2に示す例では、外皮5Aの外径と外皮4Aの外径とは、互いに等しい。
【0019】
外皮5Aは、可撓性を有する樹脂材料で形成される。本実施形態では、外皮5Aの樹脂材料には、生体組織等との摺動性を向上する目的で、フッ素が含まれる。
外皮5Aの樹脂材料としては、外皮4Aと同様、フッ素を含む樹脂材料が用いられる。外皮4Aとして使用可能な樹脂材料はすべて、外皮5Aの樹脂材料にも使用可能である。ただし、外皮5Aの材料としては、外皮4Aと同じ樹脂材料が用いられてもよいし、外皮4Aと異なる樹脂材料が用いられてもよい。
【0020】
特に図示しないが、可撓管部5の内部には、少なくとも第1アングルワイヤーおよび第2アングルワイヤーを含む2系統のアングルワイヤーが配置されている。各アングルワイヤーはコイルシースに挿通されている。各アングルワイヤーは湾曲部4から基端側に延出されている。
可撓管部5の内部には、湾曲部4と同様、上述の電気配線およびライトガイドなどの部材が挿通されている。
【0021】
図2に示す例では、外皮4A、5Aにおいて互いに対向する端部は、軸方向において互いに突き当てられた状態で、接着部6によって互いに接合されている。
接着部6は、外皮4A、5Aの各端部の外周部と、外皮4A、5Aの突き当て部と、を全周にわたって被覆している。
ただし、外皮4A、5Aは、軸方向において離間していてもよい。この場合、外皮4A、5Aの間の隙間には、接着部6が充填されている。
接着部6の詳細構成については、後述する。
【0022】
図1に示すように、操作部7は、術者が内視鏡1の操作を行う装置部分である。操作部7を通して行う操作としては、例えば、湾曲部4の湾曲量を変更する目的で、アングルワイヤーを牽引する操作が挙げられる。操作部7は、術者が把持する操作部本体と、操作部本体上に設けられた各種の操作部材とを備える。例えば、各種の操作部材は、操作ノブ、操作スイッチなどであってもよい。
【0023】
次に、接着部6の詳細構成について説明する。
図3は、図2におけるA-A断面図である。ただし、図3は拡大図なので、外皮4A、5Aよりも内側は図示されていない。
【0024】
図3に示すように、接着部6は、下地層11と、エポキシ樹脂層12と、を備える。
下地層11は、エポキシ樹脂層12と接合する下地層本体13と、外皮4A、5Aの表面に形成された複合層14と、からなる。
下地層本体13は、少なくともエポキシ樹脂層12との間に形成されたオキサゾリドン環を含む物質からなる。下地層本体13の原料はイソシアネートである。下地層本体13にオキサゾリドン環が含有される理由は、後述する製造工程においてイソシアネートとエポキシ樹脂層12とが化学反応することによってオキサゾリドン環が生成されるからである。
ただし、下地層本体13には、エポキシ樹脂層12に含有されるエポキシ樹脂以外のポリマー、水分等とイソシアネートが反応した物質、未反応のイソシアネートなどが含まれていてもよい。
【0025】
複合層14は、外皮4Aと下地層本体13との間に形成された第1複合層14Aと、外皮5Aと下地層本体13との間に形成された第2複合層14Bと、からなる。ただし、外皮4A、5Aの当接部の近傍においては、第1複合層14Aおよび第2複合層14Bは明確な境界を形成することなく混じりあっているので、図3においても境界線の図示は省略されている。
【0026】
第1複合層14Aは、外皮4Aの材料(第1基材材料と称する)と下地層本体13の材料(下地材料と称する)とが複合して形成された層状部である。第1複合層14Aは、下地材料に第1基材材料が混じり始める上境界面14cと、第1基材材料に下地材料が混ざらなくなる下境界面14aとの間に形成される。
例えば、第1複合層14Aにおいて、第1基材材料および下地材料は、全体的に界面がはっきりしない状態で互いに混じり合っていてもよい。
例えば、第1複合層14Aにおいて、第1基材材料および下地材料は、明確な界面が形成される状態または互いに混じり合った境界部が形成される状態で複合していてもよい。ただし、界面もしくは境界部が形成される場合、界面もしくは境界部は層厚方向における凹凸が形成された形状を有する。この場合、第1複合層14Aにおいて層厚方向に交差する断面を取ると、第1基材材料および下地材料は、断面内にまだら状に分布した複合層を形成している。
層厚方向における第1基材材料および下地材料の組成比は特に限定されない。ただし、第1複合層14Aと、エポキシ樹脂層12および外皮4Aとの接合力をより強固にする目的では、上境界面14cに近づくほど第1基材材料の組成比が増大することがより好ましく、下境界面14aに近づくほど下地材料の組成比が増大することがより好ましい。
【0027】
第2複合層14Bは、外皮5Aの材料(第2基材材料と称する)と下地材料とが複合して形成された層状部である。第2複合層14Bは、上境界面14cと、第2基材材料に下地材料が混ざらなくなる下境界面14bとの間に形成される。
第2複合層14Bは、第1基材材料および外皮4Aをそれぞれ第2基材材料および外皮5Aに置き換えた以外は、第1複合層14Aと同様に形成されている。
【0028】
下地層本体13の厚さは、0nmを超え100nm以下であってもよい。下地層本体13の厚さは、20nm以上70nm以下であることがより好ましい。
下地層本体13の厚さが、0nmであると、エポキシ樹脂層12と、複合層14に含まれる第1基材材料および第2基材材料の一部とが接触するので、第1基材材料および第2基材材料に含まれるフッ素基によって、エポキシ樹脂層12との接着強度が低下するおそれがある。
下地層本体13の厚さが、100nmを超えると、下地層11の内部応力が大きくなるので、外皮4A、5Aとの密着強度が低下するおそれがある。
【0029】
複合層14の厚さは、2nm以上800nm以下であってもよい。複合層14の厚さは、10nm以上300nm以下であることがより好ましい。
複合層14の厚さが、2nm未満であると、外皮4A、5Aと、下地層11との間の接合力が低くなりすぎるおそれがある。
複合層14の厚さが、800nmを超えると、複合層14の内部応力が大きくなるので、エポキシ樹脂層12との密着強度が低下するおそれがある。
【0030】
下地層11は、炭素同士の不飽和結合を有する物質をさらに含むことがより好ましい。前記物質の例としては、2-イソシアナトエチルアクリラート、2-イソシアナトエチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0031】
エポキシ樹脂層12は、下地層11の下地層本体13上に形成されている。エポキシ樹脂層12は、下地層本体13を周方向の全周にわたって形成されている。
エポキシ樹脂層12の材料は、原料となるエポキシ系樹脂および硬化剤の混合物(エポキシ樹脂原料)が硬化して形成されている。
エポキシ系樹脂はエポキシ基を有する樹脂材料であれば特に限定されない。例えば、エポキシ系樹脂としては、シリコーン官能基、ウレタン官能基、アクリル官能基で変性された樹脂が用いられてもよい。エポキシ系樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ヒダントイン系エポキシ樹脂、イソシアヌレート系エポキシ樹脂などが挙げられる。
エポキシ系樹脂を硬化させる硬化剤の種類は、エポキシ系樹脂の種類に応じて選択できる。例えば、硬化剤としては、芳香族アミン系硬化剤、脂肪族アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ポリアミド系硬化剤などが挙げられる。
エポキシ樹脂層12には、種々の添加物、例えば、酸化防止剤、金属不活性化剤、紫外線吸収剤などが添加されていてもよい。
【0032】
内視鏡1の製造方法について、接着部6の製造方法を中心として説明する。
図4は、本発明の実施形態の医療機器の製造方法の模式的な工程説明図である。
【0033】
まず外皮4A、5Aが準備される。特に、本実施形態では、接着部6は、外皮4A、5Aがそれぞれ節輪、蛇管を被覆する状態に組み立てられる。さらに、外皮4A、5Aは、互いの端部が突き当てられる。
これと並行して、下地層11を形成する下地溶液が準備される。下地溶液は、イソシアネートと、必要に応じて下地層11に含有させる物質と、有機溶媒と、を混合して調製される。
【0034】
イソシアネートの種類は特に限定されない。イソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などが用いられてもよい。
炭素同士の不飽和結合を有する点で、より好ましいイソシアネートの例としては、2-イソシアナトエチルアクリラート、2-イソシアナトエチルメタクリレート、メタクリル酸2-(0-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、2-イソシアナトエチルアクリラートなどが挙げられる。
【0035】
有機溶媒の種類は、下地層11を形成するイソシアネートを溶解できれば特に限定されない。ただし、下地溶液の有機溶媒として、表面エネルギーの小さい有機溶媒を用いると、樹脂基材により容易に塗布することができる。例えば、有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフランなどが用いられてもよい。以上に例示した有機溶媒は、水よりも表面エネルギーが小さいので、フッ素を含む樹脂基材の塗布に好適である。
【0036】
下地溶液は、樹脂基材の表面に付着される。下地溶液の付着させ方は、特に限定されない。
例えば、下地溶液は、樹脂基材の表面に塗布されてもよい。下地溶液の塗布方法としては、例えば、ディッピング、刷毛塗り、スプレー塗布などが用いられてもよい。
例えば、樹脂基材が下地溶液に浸漬されることによって、樹脂基材に下地溶液が付着されてもよい。
図4(a)に示す例では、下地溶液15は、外皮4Aの表面4aと、外皮5Aの表面5aとに、ディッピングによって塗布される。下地溶液15の塗布厚さは、下地層11の目標厚さに応じて適宜設定される。
【0037】
下地溶液15が、表面4a、5aに付着すると、下地溶液15と外皮4A、5Aとの相互作用が開始する。
下地溶液15中のイソシアネートは化学的に活性である。イソシアネートは、外皮4A、5Aにおいて反応可能な化学構造にアタックし、外皮4A、5Aとの間に化学結合を形成する。
特に、下地溶液15中に炭素同士の不飽和結合を有する物質が含まれる場合、イソシアネートとの化学反応を媒介として、炭素同士の不飽和結合を有する物質が、外皮4A、5Aの成分と化学結合する。
このようにして、下地溶液15と、外皮4A、5Aとの相互作用が進行すると、表面4a、5aが浸食されたり、表面4a、5aに反応物が付加されたりして、それぞれ微細な凹凸構造S4、S5が形成される。これにより、凹凸構造S4、S5の厚さの範囲に、第1基材材料と下地材料、および第2基材材料と下地材料とが複合した、第1複合層14A、第2複合層14Bがそれぞれ形成される。
一方、外皮4A、5Aから離れた部位の下地溶液15は、乾燥の進行、あるいは加熱が行われる場合には加熱の進行、に伴って固化するので、複合層14上にイソシアネートを含む下地層本体13が形成される。
複合層14の厚さは、下地溶液15と、外皮4A、5Aとの相互作用が進行を制御することによって調整可能である。例えば、下地溶液15の乾燥までの外皮4A、5Aへの付着時間、乾燥時間、乾燥温度などの設定によって調整できる。
【0038】
このようにして、外皮4A、5A上に、複合層14および下地層本体13がこの順に積層する。このとき、複合層14は、外皮4A、5Aとの化学結合を含むので、外皮4A、5Aと強固に接合する。この結果、下地層11の形成前に、表面4a、5aにフッ素基が露出していたとしても、フッ素基は下地層11によって被覆される。
【0039】
この後、図4(c)に示すように、下地層11の上に、液状のエポキシ樹脂原料16を塗布する。例えば、エポキシ樹脂原料16は、エポキシ系樹脂および硬化剤を含む混合物として調製される。
エポキシ樹脂原料16の塗布方法は特に限定されない。例えば、エポキシ樹脂原料16は、刷毛塗りなどによって塗布されてもよい。
下地層11上には、フッ素基が露出していないので、エポキシ樹脂原料16は容易に塗布される。エポキシ樹脂原料16の塗布後、必要に応じて加熱するなどして、エポキシ樹脂原料16を硬化させる。
エポキシ樹脂原料16の硬化が終了すると、エポキシ樹脂層12が形成される。
【0040】
この硬化過程において、下地層11と接触したエポキシ樹脂原料16は、下地層11内のイソシアネートと化学結合することによって、下地層11と強固に接合する。この結果、下地層11には、イソシアネートとエポキシ樹脂原料16との化学反応に由来するオキサゾリドン環が含有される。
特に、下地層11に炭素同士の不飽和結合を有する物質が含有される場合、イソシアネートとの化学反応を媒介として、炭素同士の不飽和結合を有する物質が、エポキシ樹脂原料16と化学結合する。この結果、エポキシ樹脂層12は、下地層11とより強固に接合する。
【0041】
本実施形態の内視鏡1によれば、フッ素を含む樹脂で形成された外皮4A、5Aの表面に、下地層11を挟んで、エポキシ樹脂層12が配置された接着部6を有する。
エポキシ樹脂層12は、フッ素基が露出しない下地層11の表面と密着して硬化するので、下地層11と強固に密着する。
さらに、外皮4A、5Aと下地層11との間、および下地層11とエポキシ樹脂層12との間には、下地材料に含有されるイソシアネートに由来する化学結合が形成されている。この結果、外皮4A、5Aと下地層11との間、および下地層11とエポキシ樹脂層12との間の接合力が向上する。
特に、本実施形態では、外皮4A、5Aと下地層11とが、複合層14を間に挟んで接合されている。この結果、第1基材材料および第2基材材料と、下地材料とが、3次元的な凹凸構造をなして複合する点でも、外皮4A、5Aと下地層11との間の接合力が向上する。
このようにして、接着部6の接合力を向上できるので、フッ素を含む樹脂基材を被着体とする接着部の耐久性を向上できる。
【0042】
[第1変形例]
本実施形態の第1変形例の医療機器について説明する。
図5は、本発明の実施形態の第1変形例の医療機器における接着部の模式的な断面図である。図5における断面は、図2におけるA-A断面に相当する。
【0043】
図1、2に示すように、本変形例の内視鏡1Aは、実施形態の内視鏡1の接着部6に代えて、接着部26を備える。
図5に模式的に示すように、接着部26は、実施形態における接着部6の下地層11に代えて下地層21を備える。
以下、上述の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0044】
下地層21は、複合層14が形成されていない以外は、実施形態の接着部6と同様に構成される。すなわち、下地層21は、実施形態の下地層本体13と同様の下地材料からなる層状部である。
このような接着部26は、下地溶液15の塗布条件等を調整することによって、製造できる。具体的には、本変形例における乾燥前の下地溶液15と外皮4A、5Aとの接触時間は、下地溶液15中のイソシアネートが外皮4A、5Aと化学結合を形成可能な長さであって、かつ下地溶液15が外皮4A、5Aを浸食しない程度の長さに設定される。
【0045】
本変形例の内視鏡1Aによれば、複合層が形成されないので、接着部6に比べると接合力は低下するが、イソシアネートによる化学結合による接合力は、接着部6と同等である。このため、接着部26によれば、実施形態と同様、外皮4A、5A上に直接エポキシ樹脂層12を形成する場合に比べて、高い接合力が得られるので、フッ素を含む樹脂基材を被着体とする接着部の耐久性を向上することができる。
【0046】
[第2変形例]
次に、本実施形態の第2変形例の医療機器について説明する。
図6は、本発明の実施形態の第2変形例の医療機器における接着部の模式的な断面図である。図6における断面は、図2におけるA-A断面に相当する。
【0047】
図1、2に示すように、本変形例の内視鏡1Bは、実施形態の内視鏡1と同様、接着部6を備える。ただし、図6に模式的に示すように、本変形例では、下地層11の外周部に緊縛糸30が配置されている。
以下、実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0048】
本変形例では、緊縛糸30は、外皮4A、5Aを、その内側に配置された管状の口金(図示略)に固定する目的で下地層11の外周部に巻き付けられている。
緊縛糸30の材質は、特に限定されない。例えば、緊縛糸30の材料としては、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、絹などが用いられてもよい。
【0049】
本変形例におけるエポキシ樹脂層12は、外皮4A、5Aの外周部に下地層11が形成され、下地層11に緊縛糸30が巻き付けられた後、形成される。このため、本変形例における接着部6は、エポキシ樹脂層12の内部に緊縛糸30を含んでいる。
【0050】
本変形例の内視鏡1Bによれば、緊縛糸30によって、外皮4A、5Aの外周部に凹凸形状が形成される。接着部6のエポキシ樹脂層12は、緊縛糸30を覆った状態で下地層11上に形成されている。エポキシ樹脂層12は、外力が作用しても、外皮4A、5Aの平滑な表面に接合される場合に比べてより強固に接合される。
このため、本変形例の内視鏡1Bによれば、フッ素を含む樹脂基材を被着体とする接着部の耐久性を向上することができる。
【0051】
なお、上記実施形態および各変形例の説明では、医療機器が内視鏡の場合の例で説明した。しかし、本発明の医療機器を用いることができる医療機器は内視鏡には限定されない。本発明の医療機器は、例えば、処置具、注射器、洗浄器具、治療機器などの医療機器に用いられてもよい。
【0052】
上記実施形態および各変形例の説明では、樹脂基材がチューブ状の外皮4A、5Aの場合の例で説明した。しかし樹脂基材はチューブ状には限定されない。例えば、樹脂基材は、板状、シート状、棒状、塊状などの形状を有していてもよい。
樹脂基材は、医療機器の部材であればどの部材に用いられてもよい。
【0053】
上記実施形態および各変形例の説明では、フッ素を含む2つの樹脂基材が隣接配置され、各樹脂基材を下地層およびエポキシ樹脂層で覆われる場合の例で説明した、
しかし、2つの樹脂基材は、層厚方向に対向されてもよい。この場合、各樹脂基材の表面に下地層が形成され、各下地層の間にエポキシ樹脂層が形成される。
さらに、エポキシ樹脂層の上には、エポキシ樹脂層によって接合可能な材料からなる適宜の被着体が配置されてもよい。この場合、被着体は、下地層およびエポキシ樹脂層の介在によって、フッ素を含む樹脂基材と接合される。
【0054】
上記実施形態および各変形例の説明では、下地溶液と樹脂基材との接触時に、複合層が形成される例で説明した。しかし、下地層は、樹脂基材の原料と下地層本体の原料とが複合された第1下地溶液を塗布した後、複合層上に、下地層本体の原料からなる第2下地溶液を塗布することによって、形成されてもよい。
【実施例
【0055】
次に、上述した実施形態および第1変形例の医療機器の実施例について、比較例とともに説明する。
下記[表1]に、実施例1~6、比較例1の構成および評価結果を示す。ただし、[表1]では、部材名の符号は省略されている。
【0056】
【表1】
【0057】
[実施例1]
実施例1は、第1変形例に対応する実施例である。実施例1では、評価用サンプルに用いる樹脂基材として、フッ素を含むエチレンプロピレン樹脂製の内視鏡用チューブ(以下、チューブと称する)が準備された。フッ素を含むエチレンプロピレン樹脂としては、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合樹脂が用いられた。
チューブの形状は、厚さ2mm、外径15mm、長さ2000mmであった。樹脂基材は、後述する各実施例および比較例1にも共通に用いられた。
実施例1の下地層21は、MDIをアセトン溶媒で1質量%に溶解した下地溶液15を用いて、以下のようにして形成された。
下地溶液15にチューブの端部を3秒間浸漬させて、チューブの外周に、全周にわたって幅100mmの範囲に下地溶液15を付着させた。
下地溶液15の乾燥およびMDIとチューブとの相互作用を促進する目的で、チューブを、30分間、60℃に加熱した。これにより、チューブの外周面に下地層21が形成された。
エポキシ樹脂層12を形成する目的で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と芳香族アミン系硬化剤との混合物からなる液状のエポキシ樹脂原料16が準備された。
硬化後の厚さが100μmになる分量のエポキシ樹脂原料16が下地層21上に塗布された。塗布方法としては、刷毛塗りが用いられた。
塗布後のチューブは、2時間、80℃に加熱されることによって、硬化された。
このようにして、実施例1の評価用サンプルが製造された。
実施例1の評価サンプルを断面観察することによって、下地層21の組成を解析したところ、[表1]に示すように、複合層は形成されていないか、形成されていたとしても測定限度未満であった。
【0058】
[実施例2、3]
実施例2、3は、実施形態に対応する実施例である。
実施例2、3の評価用サンプルは、チューブの下地溶液15への浸漬時間が、それぞれ10秒間、20秒間とされた以外は、実施例1と同様にして製造された。
実施例2、3の評価用サンプルを断面観察することによって、下地層11の組成を解析したところ、[表1]に示すように、複合層14の厚さは、それぞれ、2nm、300nmであった。
【0059】
[実施例4]
実施例4は、実施形態に対応する実施例である。
実施例4では、下地溶液15として、1.0gのカレンズAOI(登録商標)(商品名;昭和電工株式会社製)を、9.0gのメチルエチルケトン(MEK)に混合した溶液が用いられた。カレンズAOI(登録商標)は、2-イソシアナトエチルアクリラートからなる。2-イソシアナトエチルアクリラートは、炭素同士の二重結合を1分子当たり、1つ含んでいるイソシアネートである。
実施例4の下地層11は、下地溶液15にチューブの端部を15秒間浸漬させた以外は、実施例1と同様にして形成された。
実施例4のエポキシ樹脂層12は、実施例1と同様にして形成された。
実施例4の評価用サンプルを断面観察することによって、下地層11の組成を解析したところ、[表1]に示すように、複合層14の厚さは、100nmであった。
【0060】
[実施例5]
実施例5は、実施形態に対応する実施例である。
実施例5では、下地溶液15として、1.0gのカレンズAOI(登録商標)(商品名;昭和電工株式会社製)および0.1gのパーヘキサ(登録商標)25B(商品名;日本油非株式会社製)を、9.0gのMEKに混合した溶液が用いられた。パーヘキサ(登録商標)25Bは、過酸化物であり、不飽和炭素結合の反応架橋剤として用いられた。
実施例5の評価用サンプルは、下地溶液15に0.1gのパーヘキサ(登録商標)25PEが追加された以外は、実施例4と同様にして製造された。
実施例6の評価用サンプルを断面観察することによって、下地層11の組成を解析したところ、[表1]に示すように、複合層14の厚さは、100nmであった。
【0061】
[実施例6]
実施例6は、実施形態に対応する実施例である。
実施例6では、下地溶液15として、TDIをアセトン溶媒で1質量%に溶解した下地溶液15が用いられた以外は、実施例2と同様にして製造された。
実施例6の評価用サンプルを断面観察することによって、下地層11の組成を解析したところ、[表1]に示すように、複合層14の厚さは、4nmであった。
【0062】
[比較例1]
比較例1の評価用サンプルは、チューブの表面に下地層を形成することなく、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂層12を形成することによって、製造された。
【0063】
[評価]
[表1]に示すように、各実施例および比較例1の評価としては、クロスカット試験が行われた。
クロスカット試験は、酢酸/過酢酸/過酸化水素水混合溶液に24時間浸漬された各評価用サンプルに対して実施された。クロスカット試験は、JIS K5600-5-6のクロスカット法に準拠して行われた。評価結果は、同JISによる分類0~5によって表された。分類の番号は、値が小さいほど密着性が良好であることを示す。
評価結果が分類0~2だった場合、チューブとエポキシ樹脂層との密着性は良好(good、[表1]では「○」)と判定された。評価結果が分類3~5だった場合、チューブとエポキシ樹脂層との密着性は不良(no good、[表1]では「×」)と判定された。
【0064】
[評価結果]
[表1]に示すように、クロスカット試験の結果は、実施例1が分類2、実施例2、3、6が分類1、実施例4、5が分類0であった。
このため、実施例1~6はいずれも密着性が良好と判定された。
これに対して、比較例1におけるクロスカット試験の判定は、分類3であったので、密着性は不良と判定された。
このように、実施例1~6は、下地層が形成された結果、フッ素を含む樹脂基材とエポキシ樹脂層との密着性が良好になったと考えられる。これに対して、比較例1は、下地層が形成されなかった結果、フッ素を含む樹脂基材とエポキシ樹脂層との密着性が不良だったと考えられる。
実施例4、5は、いずれも下地層11に炭素同士の不飽和結合を有する物質が含まれていたので、この物質と、樹脂基材の材料またはエポキシ系樹脂とが、イソシアネートと化学結合した結果、密着性がより良好になったと考えられる。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施形態、各変形例を、各実施例とともに説明したが、本発明はこの実施形態、各変形例、および各実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
また、本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0066】
1、1A、1B 内視鏡(医療機器)
2 挿入部
4 湾曲部
4A、5A 外皮(樹脂基材)
5 可撓管部
6、26 接着部
11、21 下地層
12 エポキシ樹脂層
13 下地層本体
14 複合層
14a、14b 下境界面
14A 第1複合層
14B 第2複合層
14c 上境界面
15 下地溶液
16 エポキシ樹脂原料
30 緊縛糸
S4、S5 凹凸構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6