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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】風力・波力複合式発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/14 20060101AFI20221213BHJP
   F03D 3/06 20060101ALI20221213BHJP
   F03D 13/25 20160101ALI20221213BHJP
【FI】
F03B13/14
F03D3/06 F
F03D13/25
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019058552
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020159262
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】田 啓祥
(72)【発明者】
【氏名】馮 徳民
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特許第4821008(JP,B2)
【文献】特開2011-190764(JP,A)
【文献】特開2018-123821(JP,A)
【文献】特開2013-96373(JP,A)
【文献】特開2012-201219(JP,A)
【文献】国際公開第2010/080043(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/14
F03D 3/06
F03D 13/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海面に浮かぶ浮体と、
前記浮体に支持され前記浮体の上方に突出する上下方向に延在する回転軸を有する発電機と、
前記回転軸に取着され風を受けることにより前記回転軸を回転させる羽根体と、
前記回転軸に設けられ前記浮体の傾動に伴う鉛直線に対する前記回転軸の傾動により、前記羽根体で回転される前記回転軸の回転方向と同一の方向に前記回転軸を回転させるジャイロ機構と、
を備えることを特徴とする風力・波力複合式発電装置。
【請求項2】
前記ジャイロ機構は、
前記回転軸に、この回転軸と直交する軸線回り回転可能に支持されたフライホイールと、
前記フライホイールに回転力を付与するスピンモータとを備える、
ことを特徴とする請求項1記載の風力・波力複合式発電装置。
【請求項3】
前記フライホイールは前記回転軸を挟んで同一の前記軸線上に2つ設けられ、
2つの前記フライホイールは互いに反対方向に回転する、
ことを特徴とする請求項2記載の風力・波力複合式発電装置。
【請求項4】
前記浮体は、前記浮体の上部を構成する上壁を備え、
前記発電機は前記上壁の下方の前記浮体の箇所に設けられ、
前記上壁に前記回転軸が挿通される挿通孔が設けられ、
前記挿通孔に前記回転軸を回転可能に支持する軸受と前記軸受を前記挿通孔の径方向に変位可能に支持する粘弾性部材とが設けられ、
前記発電機は、発電機本体を有し、
前記回転軸は、前記発電機本体の内部に位置する内部回転軸と、前記発電機本体の外部に位置し前記内部回転軸と動力伝達機構を介して一体回転可能にかつ傾動可能に連結された外部回転軸を含んで構成され、
前記羽根体と前記ジャイロ機構は前記外部回転軸に設けられている、
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載の風力・波力複合式発電装置。
【請求項5】
前記内部回転軸の上部に下方に凸の球面からなる軸受面を有する軸受部材が前記内部回転軸と一体に回転可能に設けられ、
前記外部回転軸の下端は前記軸受面に載置され、
前記動力伝達機構は前記外部回転軸と前記軸受部材とを連結している、
ことを特徴とする請求項4記載の風力・波力複合式発電装置。
【請求項6】
前記浮体は、前記浮体の上部を構成する上壁を備え、
前記発電機は前記上壁の下方の前記浮体の箇所に設けられ、
前記上壁に前記回転軸が挿通される挿通孔が設けられ、
前記挿通孔に前記回転軸を回転可能に支持する軸受と前記軸受を前記挿通孔の径方向に変位可能に支持する粘弾性部材とが設けられ、
前記発電機は、前記浮体の箇所において前記回転軸の下端を中心に傾動可能に支持されている、
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載の風力・波力複合式発電装置。
【請求項7】
前記羽根体は前記上壁の上方に位置する前記外部回転軸の箇所に設けられ、
前記ジャイロ機構は前記上壁の下方に位置する前記外部回転軸の箇所に設けられている、
ことを特徴とする請求項4から6の何れか1項記載の風力・波力複合式発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力・波力複合式発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置として、垂直軸の回りに複数の羽根体を取り付けた風車を設け、風力によって風車を回転させることで垂直軸に結合された発電機を駆動して発電を行なう垂直軸型風力発電装置が提案されている(特許文献1参照)。
また、波力発電装置として、ドーナツ状の浮体の中央部にコントロールモーメントジャイロを設け、波浪による浮体の揺れによってコントロールモーメントジャイロのジンバルを回転させ発電機を駆動して発電するジャイロ式波力発電装置が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4769236号
【文献】特許第4469620号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、風力発電装置、波力発電装置の何れもそれぞれ単独ではエネルギー利用率がそれほど高くないため、発電量を確保する上で改善の余地がある。
そこで、風力発電装置および波力発電装置の双方を浮体に併設することで発電量を確保することが考えられるが、単に2つの発電装置を設けただけでは発電装置の設置スペースが大きくなってしまう。
また、上記の波力発電装置は、浮体がコントロールモーメントジャイロを収容するためにドーナツ状を呈する特殊な形状となっている。
そのため、例えば、既存の漁船などを浮体として利用して発電装置を構成する場合、限られた漁船のスペースを有効に利用する上で不利となり、また、漁船の大掛かりな改造が必要となるおそれがある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、発電量を確保すると共に、設置スペースのコンパクト化、設置の簡単化を図る上で有利な風力・波力複合式発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、海面に浮かぶ浮体と、前記浮体に支持され前記浮体の上方に突出する上下方向に延在する回転軸を有する発電機と、前記回転軸に取着され風を受けることにより前記回転軸を回転させる羽根体と、前記回転軸に設けられ前記浮体の傾動に伴う鉛直線に対する前記回転軸の傾動により、前記羽根体で回転される前記回転軸の回転方向と同一の方向に前記回転軸を回転させるジャイロ機構とを備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記ジャイロ機構は、前記回転軸に、この回転軸と直交する軸線回り回転可能に支持されたフライホイールと、前記フライホイールに回転力を付与するスピンモータとを備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記フライホイールは前記回転軸を挟んで同一の前記軸線上に2つ設けられ、2つの前記フライホイールは互いに反対方向に回転することを特徴とする。
また、本発明は、前記浮体は、前記浮体の上部を構成する上壁を備え、前記発電機は前記上壁の下方の前記浮体の箇所に設けられ、前記上壁に前記回転軸が挿通される挿通孔が設けられ、前記挿通孔に前記回転軸を回転可能に支持する軸受と前記軸受を前記挿通孔の径方向に変位可能に支持する粘弾性部材とが設けられ、前記発電機は、発電機本体を有し、前記回転軸は、前記発電機本体の内部に位置する内部回転軸と、前記発電機本体の外部に位置し前記内部回転軸と動力伝達機構を介して一体回転可能にかつ傾動可能に連結された外部回転軸を含んで構成され、前記羽根体と前記ジャイロ機構は前記外部回転軸に設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記内部回転軸の上部に下方に凸の球面からなる軸受面を有する軸受部材が前記内部回転軸と一体に回転可能に設けられ、前記外部回転軸の下端は前記軸受面に載置され、前記動力伝達機構は前記外部回転軸と前記軸受部材とを連結していることを特徴とする。
また、本発明は、前記浮体は、前記浮体の上部を構成する上壁を備え、前記発電機は前記上壁の下方の前記浮体の箇所に設けられ、前記上壁に前記回転軸が挿通される挿通孔が設けられ、前記挿通孔に前記回転軸を回転可能に支持する軸受と前記軸受を前記挿通孔の径方向に変位可能に支持する粘弾性部材とが設けられ、前記発電機は、前記浮体の箇所において前記回転軸の下端を中心に傾動可能に支持されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記羽根体は前記上壁の上方に位置する前記外部回転軸の箇所に設けられ、前記ジャイロ機構は前記上壁の下方に位置する前記外部回転軸の箇所に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、昼間、夜間に拘わらず、波浪が生じれば発電がなされることは無論のこと、風および波浪の双方が生じた場合は、風力による回転力と、ジャイロ機構による回転力との双方により回転軸が回転されるため、回転軸の回転が増速されるので、発電効率を高めて発電量を確保する上で有利となる。
また、浮体に互いに独立した風力発電装置と波力発電装置を併設する場合に比較して回転軸、発電機が1つで足りるため、発電装置の設置スペースのコンパクト化を図る上で有利となる。
また、既存の漁船などの船舶を浮体として利用でき、設置の簡単化を図る上で有利となる。
また、回転する外部回転軸によりジャイロ効果が発揮され、浮体の姿勢が安定するので浮体の過剰な揺れを抑制する上で有利となる。
また、ジャイロ機構を、回転軸に回転可能に支持されたフライホイールとフライホイールに回転力を付与するスピンモータとを備えたものとすると、ジャイロ機構を簡単に構成する上で有利となる。
また、フライホイールとして互いに反対方向に回転する2つのフライホイールを設けると、2つのフライホイールの歳差運動によって回転軸に作用する回転力がより大きなものとなるため、回転軸の回転が増速され、発電効率を高め発電量を確保する上でより有利となる。
また、浮体の上壁の挿通孔に回転軸を回転可能に支持する軸受と軸受を挿通孔の径方向に変位可能に支持する粘弾性部材とを設け、回転軸を、発電機本体の内部に位置する内部回転軸と、発電機本体の外部に位置し内部回転軸と動力伝達機構を介して一体回転可能にかつ傾動可能に連結された外部回転軸とを含んで構成すると、風力による回転力と、フライホイールの歳差運動による回転力との双方により回転軸が回転されるため、回転軸の回転が増速されるので、発電効率を高めて発電量を確保する上で有利となる。
また、回転軸の傾動により粘弾性部材が挿通孔の径方向に変形することでエネルギー吸収機能を発揮するため、外部回転軸に作用する応力を軽減する上で有利となる。
また、粘弾性部材の変形により外部回転軸がより傾動しやすくなるため、回転する外部回転軸によるジャイロ効果がより発揮され、浮体の過剰な揺れを抑制する上でより有利となる。
また、軸受面を有する軸受部材を内部回転軸と一体に回転可能に設け、外部回転軸の下端を軸受面に載置されるようにすると、簡単な構成により外部回転軸がジャイロ効果を発揮させる上で有利となる。
また、浮体の上壁の挿通孔に回転軸を回転可能に支持する軸受と軸受を挿通孔の径方向に変位可能に支持する粘弾性部材とを設け、発電機を浮体の箇所において回転軸の下端を中心に傾動可能に支持すると、風力による回転力と、フライホイールの歳差運動による回転力との双方により回転軸が回転されるため、回転軸の回転が増速されるので、発電効率を高めて発電量を確保する上で有利となる。
また、回転軸の傾動により粘弾性部材が挿通孔の径方向に変形することでエネルギー吸収機能を発揮するため、外部回転軸に作用する応力を軽減する上で有利となる。
また、粘弾性部材の変形により外部回転軸がより傾動しやすくなるため、回転する外部回転軸によるジャイロ効果がより発揮され、浮体の過剰な揺れを抑制する上でより有利となる。
また、発電機、ジャイロ機構を浮体の上壁の下方に、また羽根体を浮体の上壁の上方に設置すると、直接海水に接触しないことから、耐久性の高い風力・波力複合式発電装置を得る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】(A)は第1の実施の形態に係る風力・波力複合式発電装置の側面断面図、(B)は正面断面図である。
図2】実施の形態に係る風力・波力複合式発電装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3】ジャイロ機構の設計に関する説明図である。
図4】(A)は第2の実施の形態に係る風力・波力複合式発電装置の側面断面図、(B)は正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、本実施の形態の風力・波力複合式発電装置10は、浮体12と、発電機14と、発電機14の回転軸16と、羽根体18と、ジャイロ機構20とを含んで構成されている。
浮体12は、海面Aに浮かぶものであり、下方に凸状の壁部で構成された浮体本体1202と、浮体本体1202の上縁全周を接続し浮体本体1202の上部を構成する上壁(甲板)1204とを備えている。
なお、図1において符号22は浮体12と海底Bとを結ぶことで浮体12を係留する係留ロープを示す。
このような浮体12として漁船などの既存の船舶を改造して利用することができる。
【0009】
発電機14は、浮体12に支持され、本実施の形態では、上壁1204の下方の浮体12の箇所である底部1206に設けられ、したがって、浮体12の内部に設けられている。
発電機14は、発電機本体1402を有している。
発電機14の回転軸16は、浮体12の上方に突出して上下方向に延在している。
本実施の形態では、回転軸16は、発電機本体1402の内部に位置する内部回転軸16Aと、発電機本体1402の外部に位置し内部回転軸16Aと一体回転可能に連結された外部回転軸16Bを含んで構成されている。
発電機14は、外部回転軸16Bと共に内部回転軸16Aが回転されることで、発電機本体1402の内部の回転子を回転させて発電を行なう。
【0010】
また、浮体12の上壁1204に外部回転軸16Bが挿通される挿通孔1210が設けられている。
挿通孔1210には、外部回転軸16Bを回転可能に支持する軸受26が設けられている。
【0011】
羽根体18は、外部回転軸16Bに取着され風を受けることにより外部回転軸16Bを回転させるものである。
本実施の形態では、羽根体18は上壁1204の上方に位置する外部回転軸16Bの箇所に設けられている。
羽根体18は、外部回転軸16Bの周方向に間隔をおいて複数設けられ、各羽根体18は外部回転軸16Bの上端寄りの箇所から上壁1204寄りの箇所にわたって延在する上下方向に縦長の矩形状を呈している。
なお、羽根体18として、従来公知の様々な垂直軸型風力発電装置の羽根体18が使用可能である。
【0012】
ジャイロ機構20は、外部回転軸16Bに設けられ浮体12の傾動に伴う鉛直線Cに対する外部回転軸16Bの傾動により、羽根体18で回転される外部回転軸16Bの回転方向と同一の方向に外部回転軸16Bを回転させるものである。
本実施の形態では、ジャイロ機構20は上壁1204の下方に位置する外部回転軸16Bの箇所に設けられている。
図1図2に示すように、ジャイロ機構20は、フライホイール32と、フライホイール室34と、スピンモータ36とを含んで構成され、浮体12の内部に設けられている。
フライホイール32は、外部回転軸16Bと直交する軸線に沿って外部回転軸16Bから突設された支軸38に回転可能に支持され、したがって、フライホイール32は、外部回転軸16Bと直交する軸線回りに回転可能に支持されている。
また、後述する歳差運動による回転軸16の回転の回転力、回転速度が適切なものとなるように、言い換えると、ジャイロ効果を確保しジャイロモーメントを調整するためにジャイロ機構20は次のように設計される。
すなわち、図3に示すように、フライホイール32の中心点3202と回転軸16の中心軸1610との最短距離Lとしたとき、この最短距離Lを適宜設計し、また、フライホイール32の中心点3202を通る中心軸3204と、支軸38とがなす角度をθとしたとき、この角度θを0度以上45度以下の範囲で適宜設計すればよい。
本実施の形態では、フライホイール32は外部回転軸16Bを挟んで同一の軸線上に互いに対向するように2つ設けられている。
フライホイール室34は、各フライホイール32を収容するものであり気密に構成され、図2に示す真空ポンプ40によってフライホイール室34が負圧となるように保持され、フライホイール32の空気抵抗を低減し、スピンモータ36の消費電力の抑制が図られている。
スピンモータ36は、フライホイール32に回転力を付与してフライホイール32を高速回転させるものであり、本実施の形態では、スピンモータ36は外部回転軸16Bに取着されており、スピンモータ36が図示しない動力伝達機構を介して2つのフライホイール32を互いに反対方向に回転させるように構成されている。
【0013】
次に図2を参照して電気的な構成について説明する。
風力・波力複合式発電装置10は、充電装置42、バッテリ(二次電池)44を備えている。
充電装置42は、発電機14で発電された電力によってバッテリ44を充電するものである。
バッテリ44は、電力を蓄え、直接に船で地上へ運搬し,消費者に供給する。あるいは、不図示の送電線を介して地上の送電設備に電力を供給する。
また、バッテリ44の電力の一部はスピンモータ36と真空ポンプ40に供給され、それらスピンモータ36と真空ポンプ40が駆動される。これらスピンモータ36および真空ポンプ40の消費電力は、発電機14によって発電される電力に比較して僅かなものである。
また、スピンモータ36と真空ポンプ40に対して発電機14で発電された電力を直接供給するようにしてもよい。
【0014】
次に、本実施の形態の風力・波力複合式発電装置10の動作について説明する。
海上においては、(A)波浪が有り風が無い状態、(B)波浪と風の双方が有る状態が存在するため、それぞれの状態について説明する。なお、風が有れば波浪が生じるため、波浪が無く風が有る状態は存在しないものと考える。
【0015】
(A)波浪が有り風が無い状態の海面Aに浮体12が浮いた場合について説明する。
この場合、浮体12が揺れることで外部回転軸16Bが鉛直線Cに対して傾動すると、互いに反対向きに回転しているフライホイール32に歳差運動が生じる。この歳差運動は外部回転軸16B(回転軸16)を回転する回転力として作用するため、この回転力によっても外部回転軸16Bが回転し発電機14が駆動され発電が行われ、充電装置42を介してバッテリ44が充電される。
【0016】
(B)次に、波浪と風の双方が有る状態の海面Aに浮体12が浮いた場合について説明する。
この場合は、浮体12の揺れに伴うフライホイール32の歳差運動による回転力と、風力による回転力との双方により外部回転軸16Bが回転されて発電機14により発電が行われ、充電装置42を介してバッテリ44が充電される。
【0017】
本実施の形態によれば、昼間、夜間に拘わらず、波浪が生じれば発電がなされることは無論のこと、風と波浪の双方が生じた場合は、風力による回転力と、フライホイール32の歳差運動による回転力との双方により回転軸16が回転されるため、回転軸16の回転が増速されるので、発電効率を高めて発電量を確保する上で有利となる。
また、浮体12に互いに独立した風力発電装置と波力発電装置を併設する場合に比較して回転軸16、発電機14が1つで足りるため、発電装置の設置スペースのコンパクト化を図る上で有利となる。
したがって、例えば、小型の漁船のように限られたスペースしかない浮体12であっても発電効率の高い風力・波力複合式発電装置10を設置することができ有利となる。
また、発電機14、回転軸16、羽根体18、ジャイロ機構20を浮体12に設置するにあたって、従来の波力発電装置のように浮体12をドーナツ状にする必要がないため、既存の漁船などの船舶を浮体12として利用でき、設置の簡単化を図る上で有利となる。
また、発電機14、ジャイロ機構20は、浮体12の内部に設置され、あるいは、浮体12の上壁1204の下方に設置されているので直接海水に接触しないことから、耐久性の高い風力・波力複合式発電装置10を得る上で有利となる。
また、回転する外部回転軸16Bによりジャイロ効果が発揮され、浮体12の姿勢が安定するので浮体12の過剰な揺れを抑制する上で有利となる。
【0018】
また、フライホイール32は1つであってもよいが、本実施の形態のように、フライホイール32を回転軸16を挟んで2つ設け、2つのフライホイール32の回転方向を互いに反対方向とすると、回転軸16が鉛直線Cに対して傾動した際に2つのフライホイール32の双方に同一の回転方向の歳差運動が生じる。
したがって、歳差運動によって回転軸16に作用する回転力がより大きなものとなるため、回転軸16の回転が増速され、発電効率を高め発電量を確保する上でより有利となる。
また、フライホイール32を3つ以上設けても良いことは無論である。
【0019】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について図4を参照して説明する。
なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の部分、部材については第1の実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略し、異なった箇所を重点的に説明する。
図4に示すように、第2の実施の形態では、内部回転軸16Aと外部回転軸16Bとを動力伝達機構30を介して一体回転可能にかつ傾動可能に連結した点が第1の実施の形態と異なっている。
すなわち、内部回転軸16Aの上部に下方に凸の球面からなる軸受面2402を有する軸受部材24が内部回転軸16Aと一体に回転可能に設けられている。
外部回転軸16Bの下端1602は軸受面2402に載置されている。
動力伝達機構30は外部回転軸16Bと軸受部材24とを一体に回転可能に連結しており、例えば、動力伝達機構30はユニバーサルジョイントで構成されている。
したがって、外部回転軸16Bは、その下端1602が軸受面2402上で下端1602を中心として傾動可能となり、また、動力伝達機構30を介して内部回転軸16Aと一体に回転可能となる。
発電機14は、外部回転軸16Bと共に内部回転軸16Aが回転されることで、発電機本体1402の内部の回転子を回転させて発電を行なう。
【0020】
また、浮体12の上壁1204の挿通孔1210には、外部回転軸16Bを回転可能に支持する軸受26に加えて、軸受26を挿通孔1210の径方向に変位可能に支持する粘弾性部材28が設けられている。
粘弾性部材28はゴム材料など従来公知の様々な粘弾性を有する材料が使用可能である。
したがって、外部回転軸16Bは、その下端1602が軸受面2402に載置され、その中間部が軸受26および粘弾性部材28に支持されることで、外部回転軸16Bはその下端1602を中心として傾動可能に支持されることになる。
また、図3(A)において符号φは外部回転軸16Bが傾動した場合における鉛直線Cに対する外部回転軸16Bのなす角度を示す。この角度φが、例えば、絶対値で0度以上10度以下の範囲となるように外部回転軸16Bの傾動が不図示のストッパにより規制されている。
なお、ジャイロ機構20および電気的な構成は第1の実施の形態と同様であり、図3に示した最短距離L、角度θも第1の実施の形態と同様に設計される。
【0021】
次に、第2の実施の形態の風力・波力複合式発電装置10の動作について説明する。
(A)波浪が有り風が無い状態の海面Aに浮体12が浮いた場合について説明する。
この場合、浮体12が揺れることで外部回転軸16Bが鉛直線Cに対して傾動すると、第1の実施の形態と同様に、フライホイール32に生じた歳差運動が回転軸16を回転する回転力として作用するため、回転軸16が回転し発電機14が駆動され発電が行われ、充電装置42を介してバッテリ44が充電される。
【0022】
(B)次に、波浪と風の双方が有る状態の海面Aに浮体12が浮いた場合について説明する。
この場合は、第1の実施の形態と同様に、浮体12の揺れに伴うフライホイール32の歳差運動による回転力と、風力による回転力との双方により回転軸16が回転されて発電機14により発電が行われ、充電装置42を介してバッテリ44が充電される。
【0023】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が奏されることは無論のこと、風力による回転力と、フライホイール32の歳差運動による回転力との双方により回転軸16が回転されるため、回転軸16の回転が増速されるので、発電効率を高めて発電量を確保する上でより有利となる。
【0024】
また、羽根体18に作用する風力により、あるいは、浮体12が波浪により傾くことで、外部回転軸16Bが傾動し、傾動した外部回転軸16Bにより粘弾性部材28が挿通孔1210の径方向に変形する(水平方向に変形する)ことでエネルギー吸収機能を発揮するため、外部回転軸16Bに作用する応力を軽減する上で有利となる。
また、粘弾性部材28の変形により外部回転軸16Bがより傾動しやすくなるため、回転する外部回転軸16Bによるジャイロ効果がより発揮され、浮体12の過剰な揺れを抑制する上でより有利となる。
【0025】
次に変形例について説明する。
第2の実施の形態では、外部回転軸16Bをその下端1602を支点として傾動可能に支持するために、外部回転軸16Bの下端1602を軸受面2402に載置し、外部回転軸16Bの中間部を軸受26および粘弾性部材28に支持するようにした場合について説明したが、以下の変形例のように構成してもよい。
すなわち、この変形例では、実施の形態と同様に、外部回転軸16Bの中間部を軸受26および粘弾性部材28に支持する一方、外部回転軸16Bを発電機14の内部回転軸16Aと一体的に連結すると共に、発電機14を、浮体12の箇所において外部回転軸16Bの下端1602を中心に傾動可能に、かつ、回転不能に支持する。
このように発電機14を支持する構造として、発電機14の下部を球面軸受などで傾動可能に、かつ、回転不能に支持する従来公知の様々な支持構造が使用可能である。
このような変形例によっても第2の実施の形態と同様に、風力による回転力と、フライホイール32の歳差運動による回転力との双方により回転軸16が回転されるため、回転軸16の回転が増速されるので、発電効率を高めて発電量を確保する上でより有利となる。
【符号の説明】
【0026】
10 風力・波力複合式発電装置
12 浮体
1204 上壁
1210 挿通孔
14 発電機
1402 発電機本体
16 回転軸
16A 内部回転軸
16B 外部回転軸
1602 下端
18 羽根体
20 ジャイロ機構
24 軸受部材
2402 軸受面
26 軸受
28 粘弾性部材
30 動力伝達機構
32 フライホイール
36 スピンモータ
38 支軸
A 海面
B 海底
C 鉛直線
図1
図2
図3
図4