(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】連結機構、反射鏡装置および支持ユニット
(51)【国際特許分類】
G02B 7/183 20210101AFI20221213BHJP
B64G 1/66 20060101ALI20221213BHJP
G02B 7/192 20210101ALI20221213BHJP
G02B 7/198 20210101ALI20221213BHJP
【FI】
G02B7/183
B64G1/66 Z
G02B7/192
G02B7/198
(21)【出願番号】P 2019061778
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有木 茂
(72)【発明者】
【氏名】山本 純大
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-531328(JP,A)
【文献】特開2018-155836(JP,A)
【文献】国際公開第2006/006240(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/66
G02B 7/18 - 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長形のロッド主部と前記ロッド主部の端部に取り付けられたロッド端部とを有するロッドと、前記ロッドを
複数継ぐジョイントとを連結する連結機構において、
前記ジョイントは、
前記ロッド端部を取り付ける取付部であって、前記ロッド端部と接する球面状の当接面
であって前記ロッド端部の側に突き出た球面状の当接面が
前記ロッド端部の側の面に形成された取付部を備え、
前記ロッド端部は、
一端部が前記ロッド主部の端部にねじ込まれており、他端部に前記当接面と接する球面状の接合面
であって前記ロッド主部の側に凹んだ球面状の接合面が
前記ジョイントの側の面に形成された接合部を備えた連結機構。
【請求項2】
前記連結機構は、
前記ロッド端部の前記接合部と前記ジョイントの前記取付部とを連結するジョイントコネクタを備え、
前記ジョイントコネクタは、
前記接合部に形成された貫通孔を貫通した状態で、前記取付部に止められるコネクタ連結部と、前記貫通孔の縁部で止まるコネクタ頭部とを備え、
前記ロッド端部は、
前記貫通孔の縁部と前記コネクタ頭部との間に球面ワッシャを備えた請求項1に記載の連結機構。
【請求項3】
前記取付部には、前記コネクタ連結部が挿入される連結孔が形成されており、
前記連結孔の径は、前記コネクタ連結部の径より大きい請求項2に記載の連結機構。
【請求項4】
前記貫通孔の径は、前記コネクタ連結部の径より大きい請求項2または請求項3に記載の連結機構。
【請求項5】
前記ロッドと前記ジョイントとは、前記当接面と前記接合面とが摺動自在に取り付けられている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の連結機構。
【請求項6】
反射鏡を構成する複数の分割鏡の各々と、
前記複数の分割鏡の各々を傾動自在に支持台に取り付ける支持ユニットと
を備え、
前記支持ユニットは、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の連結機構により連結された前記ロッドと前記ジョイントとを備え、
前記ロッドは、
一方の端部が前記ジョイントに連結されており、他方の端部が前記複数の分割鏡の各々の裏面に取り付けられ、
前記ジョイントは、前記支持台に固定されている反射鏡装置。
【請求項7】
反射鏡を構成する複数の分割鏡の各々を傾動自在に支持台に取り付ける支持ユニットにおいて、
長形のロッド主部と、前記ロッド主部の両端部の各々に形成されたねじ機構により前記ロッド主部の両端部の各々に取り付けられたロッド端部と、を有するロッドと、
前記ロッドを継ぐジョイントであって前記ロッドの両端部の各々が連結されるジョイントと
を備え、
前記ジョイントは、
前記ロッド端部を取り付ける取付部であって、前記ロッド端部と接する球面状の当接面が形成された取付部を備え、
前記ロッド端部は、
一端部が前記ロッド主部の前記ねじ機構にねじ込まれており、他端部に前記当接面と接する球面状の接合面が形成された接合部を備え、
前記ロッド主部の一方の端部に形成されたねじ機構は右ねじであり、前記ロッド主部の他方の端部に形成されたねじ機構は左ねじである支持ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結機構および反射鏡装置に関する。特に、人工衛星といった宇宙航行体に搭載される反射鏡を支持するロッドとジョイントとの連結機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人工衛星といった宇宙航行体に搭載される反射鏡の大型化が進んでいる。非特許文献1には、複数の分割鏡をあたかも1枚の鏡のように組み合わせる技術が開示されている。複数の分割鏡を組み合わせる際には、複数の分割鏡の微調整が可能となるように粗調整する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Cryogenic Nano-Actuator for JWST Robert M. Warden
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1では、歪みに対する対策が十分ではなく、分割鏡を支持するロッドの長さを粗調整した場合に、ロッドとジョイントとの連結部分に歪みが残留する虞がある。また、分割鏡を支持するロッドとジョイントとの連結部分に歪みが残留することにより、反射鏡の鏡面精度が低下する虞がある。
【0005】
本発明は、主に、分割鏡を支持するロッドとジョイントとの連結部分における歪みの残留を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る連結機構は、長形のロッド主部と前記ロッド主部の端部に取り付けられたロッド端部とを有するロッドと、前記ロッドを継ぐジョイントとを連結する連結機構において、
前記ジョイントは、
前記ロッド端部を取り付ける取付部であって、前記ロッド端部と接する球面状の当接面が形成された取付部を備え、
前記ロッド端部は、
一端部が前記ロッド主部の端部にねじ込まれており、他端部に前記当接面と接する球面状の接合面が形成された接合部を備えた。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る連結機構では、ジョイントは、ロッド端部と接する球面状の当接面が形成された取付部を備える。また、ロッド端部は、一端部がロッド主部の端部にねじ込まれており、他端部に当接面と接する球面状の接合面が形成された接合部を備える。このように、本発明に係る連結機構によれば、球面状の当接面と球面状の接合面が接しているので、当接面と接合面とが摺動することにより、ロッドとジョイントとの連結部分の歪みを吸収し、ロッドとジョイントとの連結部分における歪みの残留を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る反射鏡の例を示す模式図。
【
図3】実施の形態1に係るロッドとジョイントの外観図。
【
図6】実施の形態1に係る連結機構において歪みの吸収を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施の形態について、図を用いて説明する。各図中、同一または相当する部分には、同一符号を付している。実施の形態の説明において、同一または相当する部分については、説明を適宜省略または簡略化する。また、以下の図では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、実施の形態の説明において、上、下、左、右、前、後、表、裏といった向きあるいは位置が示されている場合がある。これらの表記は、説明の便宜上の記載であり、装置、器具、あるいは部品の配置、方向、および、向きを限定するものではない。
【0010】
実施の形態1.
***構成の説明***
図1は、本実施の形態に係る反射鏡の例である反射鏡500,500aを示す模式図である。
反射鏡500,500aは、具体的には、人工衛星といった宇宙航行体に搭載される光学望遠鏡に使用される。
図1に示すように、大型の反射鏡500,500aは、複数の分割鏡100,100aが組み合わされて、あたかも1枚の鏡のように形成される。
【0011】
図2は、本実施の形態に係る反射鏡装置510の斜視図である。
反射鏡装置510は、反射鏡500を構成する複数の分割鏡100の各々と、複数の分割鏡100の各々を傾動自在に支持台300に取り付ける支持ユニット200とを備える。
支持ユニット200は、連結機構400により連結されたロッド10とジョイント20とを備える。ロッド10は、一方の端部がジョイント20に連結されており、他方の端部が複数の分割鏡100の各々の裏面に取り付けられている。ロッド10は、具体的には、炭素繊維を強化材とする強化プラスチックにより形成されている。ジョイント20は、支持台300に固定されている。ジョイント20は、ロッド10を継ぐ部品である。ジョイント20は、具体的には、スーパーインバーといった極低熱膨張合金により形成されている。
【0012】
分割鏡100の裏面とロッド10との間には、分割鏡100を微調整する微調整機構31が設けられる。また、ロッド10の両端部の各々には、分割鏡100を粗調整する粗調整機構32が設けられる。
【0013】
支持ユニット200は、6本のロッド10により構成されたトラス構造を有する。分割鏡100のアライメント調整には、ナノメータオーダーの駆動分解能を有する微調整が必要になる。また、微調整の前には、微調整のストローク内になるように粗調整が必要である。なお、アライメント調整とは、
図1に示すX,Y,Z方向の並進方向(シフト3軸)の調整と、RX,RY,RZ方向の回転方向(チルト3軸)の調整とが含まれる。
【0014】
粗調整は、ロッド10を粗調整機構32により回転させることで、トラス構造を構成する節点間の長さ調整を行い、分割鏡SUBASSYである反射鏡装置510のアライメント調整を可能にする。
【0015】
図3は、本実施の形態に係るロッド10とジョイント20の外観図である。
図4は、
図3におけるA部拡大図である。
図5は、
図4におけるB-B断面図である。
図3から
図5を用いて、本実施の形態に係るロッド10とジョイント20の連結機構400について説明する。
【0016】
連結機構400は、ロッド10とジョイント20とを連結する機構である。
ロッド10は、長形のロッド主部11とロッド主部11の端部に取り付けられたロッド端部13とを有する。ロッド主部11は円筒形を成し、両端部の各々にロッド端部13がねじ込まれる。ロッド端部13は、エンドフィッティングともいう。
【0017】
ここで、粗調整機構32について説明する。
粗調整機構32は、ロッド10の両端部の各々に設けられる。粗調整機構32は、ロッド主部11とロッド端部13とのねじ機構により実現される。ロッド10の一方の端部のねじ機構を右ねじ、ロッド10の他方の端部のねじ機構を左ねじとする。あるいは、ねじ機構を差動ねじにより実現してもよい。
【0018】
ロッド端部13の一端部は、ロッド主部11の端部にねじ込まれている。一端部とは、ロッド端部13におけるロッド主部11の側の端部である。ロッド端部13の一端部には、ねじ部131が形成されている。
このように、ロッド端部13がロッド主部11にねじ込まれているので、ロッド主部11を回転させることで、トラス構造を構成する節点間の長さ、すなわちロッド10自体の長さの粗調整をすることができる。
その後、微調整機構31により微調整をすることで、反射鏡装置510のアライメント調整が可能となる。
ロッド10の長さ調整後は、ロッド主部11とロッド端部13とをナット12で締結することにより固定する。
【0019】
次に、連結機構400について説明する。
ロッド端部13は、他端部にジョイント20の当接面211と接する球面状の接合面321が形成された接合部132を備える。他端部とは、ロッド端部13におけるジョイント20の側の端部である。
図4に示すように、ロッド端部13には、後述するジョイントコネクタ14の取り付け作業を行うための作業孔133が形成されている。そして、接合部132には、作業孔133のジョイント20の側の面からジョイント20に向かって、貫通孔322が形成される。貫通孔322は、ロッド10の軸方向に沿って形成される。
【0020】
ジョイント20は、ロッド端部13を取り付ける取付部210を備える。取付部210には、ロッド端部13の接合部132と接する球面状の当接面211が形成されている。また、取付部210には、後述するコネクタ連結部142が挿入される連結孔212が形成されている。連結孔212は、当接面211からロッド10の軸方向に沿って形成されている。連結孔212は、ロッド端部13に形成された貫通孔322と連通する。
【0021】
連結機構400は、ロッド端部13の接合部132とジョイント20の取付部210とを連結するジョイントコネクタ14を備える。
ジョイントコネクタ14は、接合部132に形成された貫通孔322を貫通した状態で、取付部210に止められるコネクタ連結部142を備える。また、ジョイントコネクタ14は、貫通孔322の縁部で止まるコネクタ頭部141を備える。つまり、ジョイントコネクタ14は、コネクタ頭部141と、コネクタ頭部141から延びたコネクタ連結部142とを有する。
【0022】
ロッド端部13は、貫通孔322の縁部とコネクタ頭部141との間に球面ワッシャ323を備える。球面ワッシャ323は、2段に分割されており、分割面が球面(球面)を成すワッシャである。
【0023】
次に、ロッド10とジョイント20との連結工程について説明する。
作業者は、ロッド10の接合面321とジョイント20の当接面とを当接させ、貫通孔322と連結孔212とを連通させる。そして、作業者は、作業孔133を介して、球面ワッシャ323を設置する。そして、作業者は、ジョイントコネクタ14のコネクタ連結部142を球面ワッシャ323および貫通孔322を貫通させ、連結孔212に係り止める。
以上の連結工程により、ロッド10とジョイント20とが連結される。
【0024】
***本実施の形態の効果の説明***
図6は、本実施の形態に係る連結機構400において歪みが生じた際の構造を示す図である。
通常、支持ユニット200に歪みが生じていない場合、
図5に示すように、ロッド10とジョイントコネクタ14とジョイント20とが、ロッド10の軸方向に沿って略直線状に配置される。しかし、粗調整によりロッド10の長さが変化すると、
図6に示すように、ロッド10とジョイントコネクタ14とジョイント20とが、略直線状に配置されずに歪みが生じる。
【0025】
本実施の形態に係る連結機構400では、ロッド10とジョイント20とは、当接面211と接合面321とが摺動自在に取り付けられている。すなわち、接合面321と当接面211とが滑らかな球面状で接しているので、摺動可能である。つまり、接合面321と当接面211とが滑らかに動くことが可能である。ここで、接合面321と当接面211とが滑らかな球面状で接している箇所を第1の摺動部401とする。
本実施の形態に係る連結機構400では、第1の摺動部401を有しているので、ロッド10とジョイント20との歪みを吸収でき、歪みを残留させることがない。
【0026】
また、本実施の形態に係る連結機構400では、連結孔212の径は、コネクタ連結部142の径より大きい。また、貫通孔322の径は、コネクタ連結部142の径より大きい。よって、本実施の形態に係る連結機構400によれば、
図6に示すように、歪みにより、コネクタ連結部142の軸方向と、連結孔212あるいは貫通孔322の軸方向がずれた場合でも、そのずれを吸収することができる。
【0027】
また、本実施の形態に係る連結機構400では、貫通孔322の縁部とコネクタ頭部141との間に球面ワッシャ323を備える。球面ワッシャ323において分割面が滑らかな球面状で接している箇所を第2の摺動部402とする。本実施の形態に係る連結機構400では、第2の摺動部402を有しているので、コネクタ頭部141が傾いた場合でも、そのずれを球面ワッシャ323により吸収することができる。よって、本実施の形態に係る連結機構400によれば、
図6に示すように、歪みにより、コネクタ頭部141が傾いた場合でも、そのずれを球面ワッシャ323により吸収することができる。
【0028】
以上のように、本実施の形態に係る反射鏡装置は、粗調整機構により、ミリメートルオーダーの分割鏡のアライメント調整を実施しても歪が残留しない。また、ロッド主部とロッド端部とがナットで締結されているので、衛星打上荷重に耐えうるという効果がある。また、モーターといったアクチュエータを用いる必要がなく、簡素、かつ、安価に、粗調整機構によるアライメント調整が可能となる。
【0029】
***他の構成***
本実施の形態では、主に、人工衛星に搭載される反射鏡に適用される連結機構について説明した。しかし、この連結機構は、ロッドとジョイントを有する構造体であれば適用可能である。
【0030】
以上の実施の形態1のうち、複数の部分を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、この実施の形態のうち、1つの部分を実施しても構わない。その他、この実施の形態を、全体としてあるいは部分的に、どのように組み合わせて実施しても構わない。
すなわち、実施の形態1では、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【0031】
なお、上述した実施の形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明の範囲、本発明の適用物の範囲、および本発明の用途の範囲を制限することを意図するものではない。上述した実施の形態は、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0032】
10 ロッド、11 ロッド主部、12 ナット、13 ロッド端部、14 ジョイントコネクタ、20 ジョイント、31 微調整機構、32 粗調整機構、100,100a 分割鏡、131 ねじ部、132 接合部、133 作業孔、141 コネクタ頭部、142 コネクタ連結部、200 支持ユニット、210 取付部、211 当接面、212 連結孔、300 支持台、321 接合面、322 貫通孔、323 球面ワッシャ、400 連結機構、401 第1の摺動部、402 第2の摺動部、500,500a 反射鏡、510 反射鏡装置。