(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着剤層、及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 201/00 20060101AFI20221213BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20221213BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20221213BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J133/04
C09J7/38
C09J11/08
(21)【出願番号】P 2019065069
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 顕士
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 真由
(72)【発明者】
【氏名】岡本 昌之
(72)【発明者】
【氏名】本田 哲士
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-252672(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110709(WO,A1)
【文献】特開2008-308646(JP,A)
【文献】特開2015-013946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースポリマーと、少なくとも1種のオリゴマーとを含む粘着剤組成物であって、
前記オリゴマーは、側鎖に少なくとも1種の色素構造を有するビニルモノマーを少なくとも含むモノマー組成物を重合して得られるオリゴマーであることを特徴とする、
粘着剤組成物。
【請求項2】
前記ベースポリマーが(メタ)アクリル系ポリマーである、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記オリゴマーが(メタ)アクリル系オリゴマーである、請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系オリゴマーが、側鎖に少なくとも1種の色素構造を有する(メタ)アクリル系モノマーの単独重合体である、請求項3に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系オリゴマーが、側鎖に少なくとも1種の色素構造を有する(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体である、請求項3に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記オリゴマーの重量平均分子量が1,000~50,000である、請求項1~5のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層。
【請求項8】
請求項7に記載の粘着剤層を備える粘着シート。
【請求項9】
透明フィルム上に前記粘着剤層を備える請求項8に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着剤層、及び粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着テープは加工工程や貼り合わせ等の作業で位置の把握が容易なため、透明のテープが好んで使用されてきた。一方、デザインの変化や、意匠性および視認性向上等の目的で、着色された粘着テープも使用されている。
【0003】
粘着テープの着色には顔料や染料がよく用いられる。例えば、特許文献1には、アクリル系ポリマーと、フェノール樹脂と、エポキシ樹脂と、着色剤とを含有し、アクリル系ポリマー100重量部に対して着色剤を10重量部以下を含有する接着剤組成物において、着色剤として顔料や染料が好適に用いられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、顔料や染料を用いて粘着テープを着色する場合、粘着剤組成物中に凝集物が発生するおそれがあり、分散剤を用いないと良好な分散性が得られなかった。また、色素成分が粘着剤組成物からブリードアウトしてしまい、粘着テープを剥離した後、被着体に色素成分が残存してしまう問題もあった。さらに、顔料や染料の種類によっては粘着物性を悪化させる原因にもなり得る。また、顔料の分散性向上のため高酸価の樹脂を使用する場合があり、その場合、鉄やステンレス、ITOといった金属被着体の腐食という別の問題が生じうる。
【0006】
したがって本発明は、有色の粘着剤組成物において、粘着力が良好であり、高酸価の樹脂や分散剤を用いない場合でも分散性が良好で、かつ色素成分のブリードアウトが生じない粘着剤組成物を提供することを一つの課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、側鎖に少なくとも1種の色素構造を有するビニルモノマーから得られるオリゴマーを用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の一態様は、ベースポリマーと、少なくとも1種のオリゴマーとを含む粘着剤組成物であって、オリゴマーは、側鎖に少なくとも1種の色素構造を有するビニルモノマーを少なくとも含むモノマー組成物を重合して得られるオリゴマーであることを特徴とする、粘着剤組成物に関する。
【0009】
本発明の一態様において、粘着剤組成物は、上記ベースポリマーが(メタ)アクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0010】
本発明の一態様において、粘着剤組成物は、上記オリゴマーが(メタ)アクリル系オリゴマーであることが好ましい。
【0011】
本発明の一態様において、粘着剤組成物は、上記(メタ)アクリル系オリゴマーが、側鎖に少なくとも1種の色素構造を有する(メタ)アクリル系モノマーの単独重合体であってよい。
【0012】
本発明の一態様において、粘着剤組成物は、上記(メタ)アクリル系オリゴマーが、側鎖に少なくとも1種の色素構造を有する(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体であってよい。
【0013】
本発明の一態様において、粘着剤組成物は、上記オリゴマーの重量平均分子量が1,000~50,000であることが好ましい。
【0014】
本発明の一態様は、上記粘着剤組成物からなる粘着剤層に関する。
【0015】
本発明の一態様は、上記粘着剤層を備える粘着シートに関する。
【0016】
本発明の一態様において、上記粘着シートは、透明フィルム上に上記粘着剤層を備えてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、粘着力が良好であり、高酸価の樹脂や分散剤を用いない場合でも分散性が良好で、かつ色素成分のブリードアウトが生じない、有色の粘着剤組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る粘着剤層の概略断面図の一例である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る粘着シートの概略断面図の一例である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る粘着シートの概略断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本明細書において、範囲を示す「A~B」は、「A以上B以下」を意味する。また、本明細書において、「質量%」は「重量%」と同義とし、「質量部」は「重量部」と同義として扱う。
【0020】
[粘着剤組成物]
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、ベースポリマーと、少なくとも1種のオリゴマーとを含む粘着剤組成物であって、上記オリゴマーは、側鎖に少なくとも1種の色素構造を有するビニルモノマーを少なくとも含むモノマー組成物を重合して得られることを特徴とする。
上記粘着剤組成物は、色素として、側鎖に色素構造を有するビニルモノマーを重合して得られるオリゴマーを用いるため、高酸価の樹脂や分散剤を用いない場合でも分散性が良好であり、かつ色素成分のブリードアウトが生じない。
以下、上記粘着剤組成物が含有する各成分について詳細に説明する。
【0021】
<ベースポリマー>
本態様に係る粘着剤組成物において、粘着剤組成物を構成するベースポリマーとしては特に限定されず、粘着剤に用いられる公知のポリマーを用いることが可能である。例えば、(メタ)アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ビニルアルキルエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ウレタン系ポリマー、フッ素系ポリマー、エポキシ系ポリマーなどが挙げられる。なかでも、色素による着色が明瞭となるという観点から、透明度が高い(メタ)アクリル系ポリマーがより好ましい。なお、かかるポリマーは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物において、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含有する態様について中心に説明するが、本発明は当該態様に限定されるものではない。
【0023】
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物はベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含み得る。典型的には、上記粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーを主成分とするアクリル系粘着剤組成物であり得る。アクリル系粘着剤組成物は、透明性に優れる。
【0024】
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物としては、例えば、エステル末端に炭素原子数1以上20以下の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを40質量%以上の割合で含むモノマー成分から構成されたアクリル系ポリマーをベースポリマーとして含有するものが好ましい。以下、炭素原子数がX以上Y以下のアルキル基をエステル末端に有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを「(メタ)アクリル酸CX-Yアルキルエステル」と表記することがある。特性のバランスをとりやすいことから、一態様に係るアクリル系ポリマーのモノマー成分全体のうち(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルの割合は、50質量%よりも多いことが適当であり、例えば55質量%以上であってよく、60質量%以上でもよく、70質量%以上でもよい。同様の理由から、モノマー成分のうち(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルの割合は、例えば99.9質量%以下であってよく、99.5質量%以下でもよく、99質量%以下でもよい。他の一態様に係るアクリル系ポリマーのモノマー成分全体に占めるC1-20(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、例えば98質量%以下であってよく、粘着剤層の凝集性向上の観点から95質量%以下であってもよく、85質量%以下(例えば80質量%未満)でもよく、70質量%以下でもよく、60質量%以下でもよい。
【0025】
(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルの非限定的な具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等が挙げられる。
【0026】
これらのうち、少なくとも(メタ)アクリル酸C4-20アルキルエステルを用いることが好ましく、少なくとも(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルを用いることがより好ましい。例えば、上記モノマー成分としてアクリル酸n-ブチル(BA)およびアクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)の一方または両方を含むことが好ましく、少なくともBAを含むアクリル系粘着剤が特に好ましい。好ましく用いられ得る(メタ)アクリル酸C4-20アルキルエステルの他の例としては、アクリル酸イソノニル、メタクリル酸n-ブチル(BMA)、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)、アクリル酸イソステアリル(iSTA)等が挙げられる。
【0027】
いくつかの態様において、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルを40質量%以上の割合で含み得る。モノマー成分に占める(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルの割合は、例えば50質量%以上であってよく、60質量%以上でもよく、65質量%以上でもよい。上述したいずれかの下限値以上の割合で(メタ)アクリル酸C6-18アルキルエステルを含むモノマー成分であってもよい。
また、粘着剤層の凝集性を高める観点から、モノマー成分に占める(メタ)アクリル酸C4-18アルキルエステルの割合は、通常、99.5質量%以下とすることが適当であり、95質量%以下でもよく、85質量%以下でもよく、75質量%以下でもよい。上述したいずれかの上限値以下の割合で(メタ)アクリル酸C6-18アルキルエステルを含むモノマー成分であってもよい。
【0028】
上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとともに、必要に応じて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のモノマー(共重合性モノマー)を含んでいてもよい。共重合性モノマーとしては、極性基(例えば、カルボキシ基、水酸基、窒素原子含有環等)を有するモノマーや、ホモポリマーのガラス転移温度が比較的高い(例えば10℃以上の)モノマーを好適に使用することができる。極性基を有するモノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、粘着剤の凝集力を高めたりするために役立ち得る。共重合性モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
共重合性モノマーの非限定的な具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0030】
カルボキシ基含有モノマー:例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等。
【0031】
酸無水物基含有モノマー:例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等。
【0032】
水酸基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等。
【0033】
スルホン酸基またはリン酸基を含有するモノマー:例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等。
【0034】
エポキシ基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルや(メタ)アクリル酸-2-エチルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有アクリレート、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル等。
【0035】
シアノ基含有モノマー:例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
【0036】
イソシアネート基含有モノマー:例えば、2-イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等。
【0037】
アミド基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(n-ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(t-ブチル)(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルカルボン酸アミド類;水酸基とアミド基とを有するモノマー、例えば、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(1-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;アルコキシ基とアミド基とを有するモノマー、例えば、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド;その他、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン等。
【0038】
アミノ基含有モノマー:例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等。
【0039】
エポキシ基を有するモノマー:例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等。
【0040】
窒素原子含有環を有するモノマー:例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-(メタ)アクリロイル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-ビニルモルホリン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン、N-ビニルピラゾール、N-ビニルイソオキサゾール、N-ビニルチアゾール、N-ビニルイソチアゾール、N-ビニルピリダジン等(例えば、N-ビニル-2-カプロラクタム等のラクタム類)等。
【0041】
スクシンイミド骨格を有するモノマー:例えば、N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシヘキサメチレンスクシンイミド等。
【0042】
マレイミド類:例えば、N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド等。
【0043】
イタコンイミド類:例えば、N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルへキシルイタコンイミド、N-シクロへキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等。
【0044】
(メタ)アクリル酸アミノアルキル類:例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル等。
【0045】
アルコキシ基含有モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル(アルコキシアルキル(メタ)アクリレート)類;(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキレングリコール(例えばアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート)類。
【0046】
アルコキシシリル基含有モノマー:例えば3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリレートや、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有ビニル化合物等。
【0047】
ビニルエステル類:例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等。
【0048】
ビニルエーテル類:例えば、メチルビニルエーテルやエチルビニルエーテル等のビニルアルキルエーテル等。
【0049】
芳香族ビニル化合物:例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等。
【0050】
オレフィン類:例えば、エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等。
【0051】
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル:例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート。
【0052】
芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル:例えば、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート。
【0053】
その他、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の複素環含有(メタ)アクリレート、塩化ビニルやフッ素原子含有(メタ)アクリレート等のハロゲン原子含有(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等のケイ素原子含有(メタ)アクリレート、テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリル酸エステル等。
【0054】
このような共重合性モノマーを使用する場合、その使用量は特に限定されないが、通常はモノマー成分全体の0.01質量%以上とすることが適当である。共重合性モノマーの使用効果をよりよく発揮する観点から、共重合性モノマーの使用量をモノマー成分全体の0.1質量%以上としてもよく、0.5質量%以上としてもよい。また、粘着特性のバランスをとりやすくする観点から、共重合性モノマーの使用量は、通常、モノマー成分全体の50質量%以下とすることが適当であり、40質量%以下とすることが好ましい。
【0055】
いくつかの態様において、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、窒素原子を有するモノマーを含み得る。これにより、粘着剤の凝集力を高め、経時後の剥離力を好ましく向上させることができる。窒素原子を有するモノマーの一好適例としては、窒素原子含有環を有するモノマーが挙げられる。窒素原子含有環を有するモノマーとしては上記で例示したもの等を用いることができ、例えば、下記一般式(1)で表わされるN-ビニル環状アミドが挙げられる。
【0056】
【0057】
ここで、一般式(1)中、R1は2価の有機基であり、具体的には-(CH2)n-である。nは2~7(好ましくは2,3または4)の整数である。なかでも、N-ビニル-2-ピロリドンを好ましく採用し得る。窒素原子を有するモノマーの他の好適例としては、(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0058】
窒素原子を有するモノマー(好ましくは窒素原子含有環を有するモノマー)の使用量は特に制限されず、例えばモノマー成分全体の1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上または7質量%以上とすることができる。一態様では、窒素原子を有するモノマーの使用量は、モノマー成分全体の10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。また、窒素原子を有するモノマーの使用量は、モノマー成分全体の例えば40質量%以下とすることが適当であり、35質量%以下としてもよく、30質量%以下としてもよく、25質量%以下としてもよい。他の一態様では、窒素原子を有するモノマーの使用量は、モノマー成分全体の例えば20質量%以下としてもよく、15質量%以下としてもよい。
【0059】
いくつかの態様において、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、水酸基含有モノマーを含み得る。水酸基含有モノマーの使用により、粘着剤の凝集力や架橋(例えば、イソシアネート架橋剤による架橋)の程度を好適に調節し得る。水酸基含有モノマーを使用する場合における使用量は特に制限されず、例えばモノマー成分全体の0.01質量%以上であってよく、0.1質量%以上でもよく、0.5質量%以上でもよく、1質量%以上、5質量%以上または10質量%以上でもよい。また、粘着剤層の吸水性を抑制する観点から、いくつかの態様において、水酸基含有モノマーの使用量は、モノマー成分全体の例えば40質量%以下とすることが適当であり、30質量%以下としてもよく、25質量%以下としてもよく、20質量%以下としてもよい。他の一態様では、水酸基含有モノマーの使用量は、モノマー成分全体の例えば15質量%以下としてもよく、10質量%以下としてもよく、5質量%以下としてもよい。
【0060】
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物において、アクリル系ポリマーのモノマー成分は、上記で例示したアルコキシアルキル(メタ)アクリレートやアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを含んでよく、含まなくてもよい。本態様に係る技術の一態様では、アクリル系ポリマーのモノマー成分のうちアルコキシアルキル(メタ)アクリレートの割合は20質量%未満であり、かつアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの割合は20質量%未満である。これにより、粘着剤層は、ゲル化等の問題なくシート形成しやすい。上記モノマー組成を採用することにより、モノマー混合物の固形分濃度を所定範囲に保持して所望の高分子量体(例えば、重量平均分子量(Mw)30×104超、典型的にはMw40×104以上)を好ましく重合することができる。上記モノマー成分に占めるアルコキシアルキル(メタ)アクリレートの割合は、好ましくは10質量%未満、より好ましくは3質量%未満、さらに好ましくは1質量%未満であり、特に好ましい一態様では、上記モノマー成分はアルコキシアルキル(メタ)アクリレートを実質的に含まない(含有量0~0.3質量%)。同様に、上記モノマー成分に占めるアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの割合は、好ましくは10質量%未満、より好ましくは3質量%未満、さらに好ましくは1質量%未満であり、特に好ましい一態様では、上記モノマー成分はアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを実質的に含まない(含有量0~0.3質量%)。
【0061】
また、好ましい一態様に係るアクリル系ポリマーのモノマー成分は、ゲル化抑制の観点から、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの合計割合が20質量%未満に制限されている。上記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの合計割合は、より好ましくは10質量%未満、さらに好ましくは3質量%未満、特に好ましくは1質量%未満であり、一態様では、上記モノマー成分はアルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを実質的に含まない(含有量0~0.3質量%)。
同様に、本態様に係るアクリル系ポリマーのモノマー成分は、アルコキシ基含有モノマーを20質量%未満の割合で含むか、含まないものであり得る。上記モノマー成分に占めるアルコキシ基含有モノマーの量は、好ましくは10質量%未満、より好ましくは3質量%未満、さらに好ましくは1質量%未満であり、特に好ましい一態様では、上記モノマー成分はアルコキシ基含有モノマーを実質的に含まない(含有量0~0.3質量%)。
【0062】
いくつかの態様において、アクリル系ポリマーのモノマー成分に占めるカルボキシ基含有モノマーの割合は、例えば2質量%以下であってよく、1質量%以下でもよく、0.5質量%以下(例えば0.1質量%未満)でもよい。アクリル系ポリマーのモノマー成分としてカルボキシ基含有モノマーを実質的に使用しなくてもよい。ここで、カルボキシ基含有モノマーを実質的に使用しないとは、少なくとも意図的にはカルボキシ基含有モノマーを使用しないことをいう。このような組成のアクリル系ポリマーは、耐水信頼性の高いものとなりやすく、また金属を含む被着体に対しては金属腐食防止性を有するものとなり得る。
【0063】
また、好ましい一態様において、アクリル系ポリマーのモノマー成分は、親水性モノマーの割合が制限されている。ここで、本明細書における「親水性モノマー」は、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、水酸基含有モノマー、窒素原子を有するモノマー(典型的には、(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー、N-ビニル-2-ピロリドン等の窒素原子含有環を有するモノマー)およびアルコキシ基含有モノマー(典型的には、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートおよびアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート)をいうものとする。この態様において、アクリル系ポリマーのモノマー成分のうち上記親水性モノマーの割合は32質量%以下であることが好ましく、例えば30質量%以下であってもよく、28質量%以下であってもよい。特に限定されるものではないが、アクリル系ポリマーのモノマー成分のうち上記親水性モノマーの割合は1質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。
【0064】
いくつかの態様において、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを含み得る。これにより、粘着剤の凝集力を高め、経時後の剥離力を向上させることができる。脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとしては上記で例示したもの等を用いることができ、例えばシクロヘキシルアクリレートやイソボルニルアクリレートを好ましく採用し得る。脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを使用する場合における使用量は特に制限されず、例えばモノマー成分全体の1質量%以上、3質量%以上または5質量%以上とすることができる。一態様では、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの使用量は、モノマー成分全体の10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよい。脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの使用量の上限は、凡そ40質量%以下とすることが適当であり、例えば30質量%以下であってもよく、25質量%以下(例えば15質量%以下、さらには10質量%以下)であってもよい。
【0065】
上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分の組成は、該モノマー成分の組成に基づいてFoxの式により求められるガラス転移温度Tgが-75℃以上10℃以下となるように設定され得る。いくつかの態様において、上記Tgは、凝集性や耐衝撃性等の観点から、0℃以下であることが適当であり、-10℃以下であることが好ましく、-20℃以下または-30℃以下であってもよい。また上記Tgは、例えば-60℃以上であってよく、-50℃以上でもよく、-45℃以上または-40℃以上でもよい。
【0066】
ここで、上記Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
なお、上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。
【0067】
Tgの算出に使用するホモポリマーのガラス転移温度としては、公知資料に記載の値を用いるものとする。例えば、以下に挙げるモノマーについては、該モノマーのホモポリマーのガラス転移温度として、以下の値を使用する。
2-エチルヘキシルアクリレート -70℃
n-ブチルアクリレート -55℃
イソステアリルアクリレート -18℃
メチルメタクリレート 105℃
メチルアクリレート 8℃
シクロヘキシルアクリレート 15℃
N-ビニル-2-ピロリドン 54℃
2-ヒドロキシエチルアクリレート -15℃
4-ヒドロキシブチルアクリレート -40℃
ジシクロペンタニルメタクリレート 175℃
イソボルニルアクリレート 94℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 228℃
【0068】
上記で例示した以外のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度については、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons,Inc.,1989)に記載の数値を用いるものとする。本文献に複数種類の値が記載されている場合は、最も高い値を採用する。
【0069】
上記Polymer Handbookにもホモポリマーのガラス転移温度が記載されていないモノマーについては、以下の測定方法により得られる値を用いるものとする(特開2007-51271号公報参照)。具体的には、温度計、攪拌機、窒素導入管および還流冷却管を備えた反応器に、モノマー100質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部および重合溶媒として酢酸エチル200質量部を投入し、窒素ガスを流通させながら1時間攪拌する。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し10時間反応させる。次いで、室温まで冷却し、固形分濃度33質量%のホモポリマー溶液を得る。次いで、このホモポリマー溶液を剥離ライナー上に流延塗布し、乾燥して厚さ約2mmの試験サンプル(シート状のホモポリマー)を作製する。この試験サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートで挟み込み、粘弾性試験機(ARES、TA Instruments社製)を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、温度領域-70~150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより粘弾性を測定し、tanδのピークトップ温度をホモポリマーのTgとする。
【0070】
本態様に係るアクリル系ポリマーは、特に限定されるものではないが、SP値が23.0(MJ/m3)1/2以下であることが好ましい。上記SP値は、より好ましくは21.0(MJ/m3)1/2以下(例えば20.0(MJ/m3)1/2以下)である。上記SP値の下限は特に限定されず、例えば凡そ10.0(MJ/m3)1/2以上であり、また凡そ15.0(MJ/m3)1/2以上であることが適当であり、好ましくは18.0(MJ/m3)1/2以上である。
【0071】
なお、アクリル系ポリマーのSP値は、Fedorsの算出法[「ポリマー・エンジニアリング・アンド・サイエンス(POLYMER ENG. & SCI.)」,第14巻,第2号(1974),第148~154ページ参照]すなわち、式:
SP値δ=(ΣΔe/ΣΔv)1/2
(上式中、Δeは、25℃における各原子または原子団の蒸発エネルギーΔeであり、Δvは、同温度における各原子または原子団のモル容積である。);
にしたがって計算することができる。上記SP値を有するアクリル系ポリマーは、当業者の技術常識に基づき、適切にモノマー組成を決定することにより得ることができる。
【0072】
上記粘着剤組成物は、上述のような組成のモノマー成分を、重合物、未重合物(すなわち、重合性官能基が未反応である形態)またはこれらの混合物の形態で含む。上記粘着剤組成物は、粘着剤(粘着成分)が水に分散した形態の水分散型粘着剤組成物、有機溶媒中に粘着剤を含む形態の溶剤型粘着剤組成物、紫外線や放射線等の活性エネルギー線により硬化して粘着剤を形成するように調製された活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、加熱溶融状態で塗工され、室温付近まで冷えると粘着剤を形成するホットメルト型粘着剤組成物等の種々の形態であり得る。好ましい一態様に係る粘着剤組成物は、溶剤型粘着剤組成物または無溶剤型粘着剤組成物である。無溶剤型粘着剤組成物には、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物およびホットメルト型粘着剤組成物が包含される。
【0073】
重合にあたっては、重合方法や重合態様等に応じて、公知または慣用の熱重合開始剤や光重合開始剤を使用し得る。このような重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0074】
熱重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばアゾ系重合開始剤、過酸化物系開始剤、過酸化物と還元剤との組合せによるレドックス系開始剤、置換エタン系開始剤等を使用することができる。より具体的には、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレート等のアゾ系開始剤;例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;例えばフェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;例えば過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組合せ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組合せ等のレドックス系開始剤;等が例示されるが、これらに限定されない。なお、熱重合は、例えば20~100℃(典型的には40~80℃)程度の温度で好ましく実施され得る。
【0075】
光重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばケタール系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等を用いることができる。
【0076】
このような熱重合開始剤または光重合開始剤の使用量は、重合方法や重合態様等に応じた通常の使用量とすることができ、特に限定されない。例えば、重合対象のモノマー100質量部に対して重合開始剤を凡そ0.001~5質量部(典型的には凡そ0.01~2質量部、例えば凡そ0.01~1質量部)を用いることができる。
【0077】
上記重合には、必要に応じて、従来公知の各種の連鎖移動剤(分子量調節剤あるいは重合度調節剤としても把握され得る。)を使用することができる。連鎖移動剤としては、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、α-チオグリセロール等のメルカプタン類を用いることができる。あるいは、硫黄原子を含まない連鎖移動剤(非硫黄系連鎖移動剤)を用いてもよい。非硫黄系連鎖移動剤の具体例としては、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等のアニリン類;α-ピネン、ターピノーレン等のテルペノイド類;α-メチルスチレン、α―メチルスチレンダイマー等のスチレン類;ジベンジリデンアセトン、シンナミルアルコール、シンナミルアルデヒド等のベンジリデニル基を有する化合物;ヒドロキノン、ナフトヒドロキノン等のヒドロキノン類;ベンゾキノン、ナフトキノン等のキノン類;2,3-ジメチル-2-ブテン、1,5-シクロオクタジエン等のオレフィン類;フェノール、ベンジルアルコール、アリルアルコール等のアルコール類;ジフェニルベンゼン、トリフェニルベンゼン等のベンジル水素類;等が挙げられる。
連鎖移動剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、モノマー成分100質量部に対して、例えば凡そ0.01~1質量部程度とすることができる。本態様に係る技術は、連鎖移動剤を使用しない態様でも好ましく実施され得る。
【0078】
上記の各種重合法を適宜採用して得られるアクリル系ポリマーの分子量は特に制限されず、要求性能に合わせて適当な範囲に設定され得る。アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、通常は凡そ10×104以上(例えば20×104以上)であり、凝集力と接着力とをバランスよく両立する観点から、30×104超とすることが適当である。一態様に係るアクリル系ポリマーは、高温環境下においても良好な接着信頼性を得る観点から、好ましくは40×104以上(典型的には凡そ50×104以上、例えば凡そ55×104以上)のMwを有する。本態様に係る技術の好ましい一態様によると、モノマー組成の設計によってゲル化が抑制され得るので、適切な固形分濃度を設定して上記範囲の高分子量体を生産性よく得ることができる。アクリル系ポリマーのMwの上限は、通常は凡そ500×104以下(例えば凡そ150×104以下)であり得る。上記Mwは凡そ75×104以下であってもよい。ここでMwとは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。GPC装置としては、例えば機種名「HLC-8320GPC」(カラム:TSKgelGMH-H(S)、東ソー社製)を使用すればよい。後述の実施例においても同様である。上記Mwは、粘着剤組成物中、粘着剤層中いずれかにおけるアクリル系ポリマーのMwであり得る。
【0079】
いくつかの態様に係る粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物であり得る。ここでいう活性エネルギー線の例には、紫外線、可視光線、赤外線のような光や、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線のような放射線等が含まれ、重合反応、架橋反応、開始剤の分解等の化学反応を引き起こし得るエネルギーをもったエネルギー線が挙げられる。
【0080】
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物の一好適例として、光硬化型粘着剤組成物が挙げられる。光硬化型の粘着剤組成物は、厚手の粘着剤層であっても容易に形成し得るという利点を有する。なかでも紫外線硬化型粘着剤組成物が好ましい。
【0081】
光硬化型粘着剤組成物は、典型的には、該組成物のモノマー成分のうち少なくとも一部(モノマーの種類の一部であってもよく、分量の一部であってもよい。)を重合物の形態で含む。上記重合物を形成する際の重合方法は特に限定されず、従来公知の各種重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合等の熱重合(典型的には、熱重合開始剤の存在下で行われる。);紫外線等の光を照射して行う光重合(典型的には、光重合開始剤の存在下で行われる。);β線、γ線等の放射線を照射して行う放射線重合;等を適宜採用することができる。なかでも光重合が好ましい。
【0082】
好ましい一態様に係る光硬化型粘着剤組成物は、モノマー成分の部分重合物を含む。このような部分重合物は、典型的にはモノマー成分に由来する重合物と未反応のモノマーとの混合物であって、好ましくはシロップ状(粘性のある液状)を呈する。以下、かかる性状の部分重合物を「モノマーシロップ」または単に「シロップ」ということがある。モノマー成分を部分重合させる際の重合方法は特に制限されず、上述のような各種重合方法を適宜選択して用いることができる。効率や簡便性の観点から、光重合法を好ましく採用し得る。光重合によると、光の照射量(光量)等の重合条件によって、モノマー成分の重合転化率(モノマーコンバーション)を容易に制御することができる。
【0083】
上記部分重合物におけるモノマー混合物の重合転化率は、特に限定されない。上記重合転化率は、例えば凡そ70質量%以下とすることができ、凡そ60質量%以下とすることが好ましい。上記部分重合物を含む粘着剤組成物の調製容易性や塗工性等の観点から、通常、上記重合転化率は、凡そ50質量%以下が適当であり、凡そ40質量%以下(例えば凡そ35質量%以下)が好ましい。重合転化率の下限は特に制限されないが、典型的には凡そ1質量%以上であり、通常は凡そ5質量%以上とすることが適当である。
【0084】
モノマー成分の部分重合物を含む粘着剤組成物は、例えば、該粘着剤組成物の調製に用いられるモノマー成分の全量を含むモノマー混合物を適当な重合方法(例えば光重合法)により部分重合させることにより得ることができる。また、モノマー成分の部分重合物を含む粘着剤組成物は、該粘着剤組成物の調製に用いられるモノマー成分のうちの一部を含むモノマー混合物の部分重合物または完全重合物と、残りのモノマー成分またはその部分重合物との混合物であってもよい。なお、本明細書において「完全重合物」とは、重合転化率が95質量%超であることをいう。
【0085】
<オリゴマー>
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は少なくとも1種のオリゴマーを含み得る。本発明におけるオリゴマーは、側鎖に少なくとも1種の色素構造を有するビニルモノマーを少なくとも含むモノマー組成物を重合して得られる。すなわち、当該オリゴマーは、モノマー単位として、側鎖に少なくとも1種の色素構造を有するビニルモノマーを少なくとも含む。
本発明の一実施形態に係る粘着剤組成物は、側鎖に色素構造を有するビニルモノマーを構成単位として含むオリゴマーを、色素成分として用いるため、顔料や染料を用いた場合の分散性の悪化および色素のブリードアウトの問題を回避できる。
【0086】
上記側鎖に少なくとも1種の色素構造を有するビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル系モノマー、芳香族ビニルモノマー、脂肪族炭化水素モノマー等が挙げられる。(メタ)アクリル系ベースポリマーとの相溶性が良く、透明性を維持する観点から、好ましくは、(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、特に制限されないが、例えば、上述した各種の(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル;上述した各種の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート;上述した各種の芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート;テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリレート;等の(メタ)アクリル系モノマーを挙げることができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0087】
芳香族ビニルモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン系モノマー等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0088】
脂肪族炭化水素モノマーとしては、特に制限されないが、例えば、オレフィンモノマー、ジエンモノマー等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0089】
本発明におけるオリゴマーとしては、上記側鎖に少なくとも1種の色素構造を有するビニルモノマー以外の、その他のモノマーを含んでもよい。かかるモノマーとしては、上記と同様で、特に制限されるものではなく、例えば、(メタ)アクリル系モノマー、芳香族ビニルモノマー、脂肪族炭化水素モノマー等が挙げられる。
【0090】
本発明におけるオリゴマーにおいて、上記側鎖に少なくとも1種の色素構造を有するビニルモノマーは、オリゴマー100質量部あたり、0.1質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましい。また、ベースポリマーとの相溶性の観点から、90質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、70質量部以下であることがさらに好ましい。
【0091】
本発明におけるオリゴマーとしては、(メタ)アクリル系オリゴマーであることが好ましい。
かかる(メタ)アクリル系オリゴマーは、側鎖に少なくとも1種の色素構造を有する(メタ)アクリル系モノマーの単独重合体であってよい。
また、かかる(メタ)アクリル系オリゴマーは、「側鎖に少なくとも1種の色素構造を有するビニルモノマー」と「側鎖に少なくとも1種の色素構造を有するビニルモノマー以外のモノマー」との共重合体であってもよい。この場合、「側鎖に少なくとも1種の色素構造を有するビニルモノマー」と「側鎖に少なくとも1種の色素構造を有するビニルモノマー以外のモノマー」の全量のうち、(メタ)アクリル系モノマーに相当するモノマーが、50質量%以上であることが好ましい。より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
上記「側鎖に少なくとも1種の色素構造を有するビニルモノマー以外のモノマー」は、好ましくは、「側鎖に色素構造を有さない(メタ)アクリル系モノマー」であり、より好ましくは、「側鎖に色素構造を有さない(メタ)アクリル酸アルキルエステル」である。
【0092】
(メタ)アクリル系オリゴマーが「側鎖に少なくとも1種の色素構造を有するビニルモノマー」と「側鎖に少なくとも1種の色素構造を有するビニルモノマー以外のモノマー」との共重合体である場合において、好ましい組み合わせとしては、「側鎖に少なくとも1種の色素構造を有する(メタ)アクリル系モノマー」と「側鎖に色素構造を有さない(メタ)アクリル系モノマー」の組み合わせであり、より好ましい組み合わせとしては、「側鎖に少なくとも1種の色素構造を有する(メタ)アクリル系モノマー」と「側鎖に色素構造を有さない(メタ)アクリル酸アルキルエステル」の組み合わせである。
(メタ)アクリル系モノマーおよび(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、上述したものを使用できる。
【0093】
また、(メタ)アクリル系オリゴマーは、イソブチル(メタ)アクリレートやt-ブチル(メタ)アクリレートのようなアルキル基が分岐構造を有するアルキル(メタ)アクリレート;脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートや芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート;等に代表される、比較的嵩高い構造を有する(メタ)アクリル系モノマーをモノマー単位として含んでいることが、接着性向上の観点からは好ましい。また、アクリル系オリゴマーの合成の際や粘着剤層の作製の際に紫外線を採用する場合には、重合阻害を起こしにくいという点で、エステル末端に飽和炭化水素基を有するモノマーが好ましく、例えばアルキル基が分岐構造を有するアルキル(メタ)アクリレートや飽和脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを好適に用いることができる。
【0094】
(メタ)アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分としては、上記の(メタ)アクリル系モノマーに加えて、必要に応じて官能基含有モノマーを用いることもできる。官能基含有モノマーとしては、N-ビニル-2-ピロリドン、N-アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有複素環を有するモノマー;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;AA、MAA等のカルボキシ基含有モノマー;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;が挙げられる。これらの官能基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。官能基含有モノマーを用いる場合、アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分に占める官能基含有モノマーの割合は、例えば1質量%以上、2質量%以上または3質量%以上とすることができ、また、例えば15質量%以下、10質量%以下または7質量%以下とすることができる。
【0095】
本発明におけるオリゴマーが一分子中に有する色素構造は、同一の色素構造であってもよく、異なる色素構造であってもよい。なお、本発明において、異なる色素構造とは、色素骨格が異なる色素構造のみならず、色素骨格が同一であって、かつ、色素骨格に結合している置換基の種類が異なる色素構造を含むこととする。なお、本発明において、色素構造とは、色素化合物に由来する構造を意味する。例えば、色素化合物が有する任意の原子を1個以上取り除いた構造が挙げられる。
【0096】
色素構造は、その種類に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、可視領域(好ましくは、波長400~700nmの範囲、より好ましくは400~650nmの範囲)に吸収を有する色素化合物に由来する構造であってもよく、赤外領域に吸収を有する色素化合物(好ましくは、極大吸収波長が700~1200nmの範囲に有する化合物)に由来する構造であってもよい。可視領域に吸収を有する色素化合物に由来する構造が好ましい。
【0097】
色素構造としては、例えば、トリアリールメタン色素構造、キサンテン色素構造、アントラキノン色素構造、シアニン色素構造、スクアリリウム色素構造、キノフタロン色素構造、フタロシアニン色素構造、サブフタロシアニン色素構造、アゾ色素構造、ピラゾロトリアゾール色素構造、ジピロメテン色素構造、イソインドリン色素構造、チアゾール色素構造、ベンズイミダゾロン色素構造、ぺリノン色素構造、ピロロピロール色素構造、ジケトピロロピロール色素構造、ジインモニウム色素構造、ナフタロシアニン色素構造、リレン色素構造、ジベンゾフラノン色素構造、メロシアニン色素構造、クロコニウム色素構造、オキソノール色素構造などが挙げられる。
なかでも、トリアリールメタン色素構造、キサンテン色素構造、シアニン色素構造が好ましい。
本発明におけるビニルモノマーは側鎖に上記色素構造を少なくとも1種有することができる。
【0098】
本発明におけるオリゴマーは、側鎖に少なくとも1種の色素構造を有するビニルモノマーを少なくとも含むモノマー組成物を重合することにより形成され得る。重合方法や重合態様は特に限定されず、従来公知の各種重合方法(例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合、光重合、放射線重合等)を、適宜の態様で採用することができる。必要に応じて使用し得る重合開始剤(例えばアゾ系重合開始剤)の種類は、概ねアクリル系ポリマーの合成に関して例示したとおりであり、重合開始剤量や、任意に使用される連鎖移動剤(例えばn-ドデシルメルカプタン(NDM)等のメルカプタン類)の量は、所望の分子量となるよう技術常識に基づいて適切に設定されるので、詳細な説明は省略する。
【0099】
本発明におけるオリゴマーは、ベースポリマーとの相溶性の観点から、重量平均分子量(Mw)が1,000~50,000であることが好ましい。より好ましくは2,000以上、さらに好ましくは3,000以上であり、また、より好ましくは25,000以下、さらに好ましくは10,000以下である。
ここで重量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。GPC装置としては、例えば機種名「HLC-8320GPC」(カラム:TSKgelGMH-H(S)、東ソー社製)を使用すればよい。後述の実施例においても同様である。上記Mwは、粘着剤組成物中、粘着剤層中いずれかにおけるオリゴマーのMwであり得る。
【0100】
また、本発明におけるベースポリマーとオリゴマーとの組み合わせは、相溶性が良好であるという観点から、(メタ)アクリル系ポリマーと(メタ)アクリル系オリゴマーとの組み合わせが好ましい。
【0101】
本発明に係る粘着剤組成物は、着色性の観点から、上記ベースポリマー100質量部に対して、上記オリゴマーを0.01質量部以上含有することが好ましく、1質量部以上含有することがより好ましく、5質量部以上含有することがさらに好ましい。また、粘着力等物性への影響の観点から、上記オリゴマーの含有量は、通常、100質量部以下とすることが適当であり、好ましくは90質量部以下、より好ましくは80質量部以下である。
【0102】
(その他成分)
本発明の一実施態様に係る粘着剤組成物は、本発の効果が阻害されない範囲において、必要に応じ、粘着付与樹脂(例えば、ロジン系、石油系、テルペン系、フェノール系、ケトン系等の粘着付与樹脂)、粘度調整剤(例えば増粘剤)、レベリング剤、可塑剤、充填剤、安定剤、防腐剤、老化防止剤等の粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤をその他の任意成分として含み得る。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
なお、本態様に係る技術は、上述の粘着付与樹脂を用いることなく、良好な接着力を発揮することができるので、粘着剤組成物における上記粘着付与樹脂の含有量は、ベースポリマー100質量部に対して例えば10質量部未満、さらには5質量部未満とすることができる。上記粘着付与樹脂の含有量は1質量部未満(例えば0.5質量部未満)であってもよく、0.1質量部未満(0質量部以上0.1質量部未満)であってもよく、上記粘着剤組成物は粘着付与樹脂を含まないものであり得る。
【0103】
本発明の一実施態様に係る粘着剤組成物は、透明性を向上させ色素により着色を顕著にするという観点からは、粘着剤組成物に占めるベースポリマー以外の成分の量は制限されていることが好ましい。本態様に係る技術において、粘着剤組成物におけるベースポリマー以外の成分の量は、通常、凡そ30質量%以下であり、凡そ15質量%以下であることが適当であり、好ましくは凡そ12質量%以下(例えば凡そ10質量%以下)である。一態様に係る粘着剤組成物におけるベースポリマー以外の成分の量は、凡そ5質量%以下であってもよく、凡そ3質量%以下であってもよく、凡そ1.5質量%以下(例えば凡そ1質量%以下)であってもよい。このようにベースポリマー以外の成分量が制限された組成は、本態様に係る粘着剤組成物に対して好ましく採用され得る。
【0104】
<粘着剤層>
本発明の一実施形態に係る粘着剤層は上記粘着剤組成物から形成される。
図1に粘着剤層11の一構成例の模式的な断面図を示す。
【0105】
上記粘着剤層は、粘着剤組成物の硬化層であり得る。すなわち、該粘着剤層は、粘着剤組成物を適当な表面に付与(例えば塗布)した後、硬化処理を適宜施すことにより形成され得る。2種以上の硬化処理(乾燥、架橋、重合等)を行う場合、これらは、同時に、または多段階にわたって行うことができる。
【0106】
モノマー成分の部分重合物(ポリマーシロップ)を用いた粘着剤組成物では、典型的には、上記硬化処理として、最終的な共重合反応が行われる。すなわち、部分重合物をさらなる共重合反応に供して完全重合物を形成する。例えば、光硬化性の粘着剤組成物であれば、光照射が実施される。必要に応じて、架橋、乾燥等の硬化処理が実施されてもよい。例えば、光硬化性粘着剤組成物で乾燥させる必要がある場合(例えば、モノマー成分の部分重合物が有機溶剤に溶解した形態の光硬化性粘着剤組成物の場合)は、該組成物を乾燥させた後に光硬化を行うとよい。
【0107】
完全重合物を用いた粘着剤組成物では、典型的には、上記硬化処理として、必要に応じて乾燥(加熱乾燥)、架橋等の処理が実施される。多官能性モノマーの添加により光硬化性(光架橋性)が付与された溶剤型粘着剤組成物の場合は、該組成物を乾燥させた後に光硬化を行うとよい。ここで、上記組成物を乾燥させた後とは、上記乾燥を経て得られた後述の粘着シートを被着体に貼り合わせた後であってもよい。後述する粘着シートは、被着体に貼り合わせた後に光硬化させることを含む手法により上記被着体への貼付けを行う態様で用いられ得る。
【0108】
二層以上の多層構造の粘着剤層は、あらかじめ形成した粘着剤層を貼り合わせることによって作製することができる。あるいは、あらかじめ形成した第一の粘着剤層の上に粘着剤組成物を塗布し、該粘着剤組成物を硬化させて第二の粘着剤層を形成してもよい。被着体への貼合せ後に光硬化させる貼付け態様で用いられる後述の粘着シートの有する粘着剤層が多層構造である場合、上記光硬化させる粘着剤層は、上記多層構造に含まれる一部の層(例えば一つの層)であってもよく全部の層であってもよい。
【0109】
上記粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用のコーターを用いて実施することができる。後述する基材を有する形態の粘着シートでは、基材上に粘着剤層を設ける方法として、該基材に粘着剤組成物を直接付与して粘着剤層を形成する直接法を用いてもよく、剥離面上に形成した粘着剤層を基材に転写する転写法を用いてもよい。
【0110】
粘着剤層の厚さは特に限定されず、例えば3μm~2000μm程度であり得る。段差追従性など被着体との密着性の観点から、いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば5μm以上であってよく、10μm以上が適当であり、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上である。粘着剤層の厚さは、50μm以上でもよく、50μm超でもよく、70μm以上でもよく、100μm以上でもよく、120μm以上でもよい。また、粘着剤層の凝集破壊による糊残りの発生を防止する観点から、いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば1000μm以下であってよく、700μm以下でもよく、500μm以下でもよく、300μm以下、200μm以下または170μm以下でもよい。本態様に係る技術は、粘着剤層の厚さが130μm以下、90μm以下、60μm以下(例えば40μm以下)である後述の粘着シートの形態でも好適に実施することができる。なお、二層以上の多層構造を有する粘着剤層を有する後述の粘着シートでは、上記粘着剤層の厚さとは、被着体に貼り付けられる粘着面から該粘着面とは反対側の表面までの厚さをいう。
【0111】
<粘着シート>
本発明の一実施形態に係る粘着シートは上記粘着剤層を有する。本実施形態の粘着シートは、粘着剤層をシート状基材(支持体)の片面又は両面に有する形態の基材付き粘着シートであってもよく、粘着剤層が剥離シートに保持された形態等の基材レスの粘着シートであってもよい。ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。
なお、粘着剤層は典型的には連続的に形成されるが、かかる形態に限定されるものではなく、例えば、点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。また、本実施形態の粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態の粘着シートであってもよい。
【0112】
(基材)
いくつかの態様に係る粘着シートは、粘着剤層の他方の背面に接合した基材を含む基材付き粘着シートの形態であり得る。
図2に、本発明の一実施形態に係る粘着シートにおいて、基材の片面上に粘着剤層が形成されている一構成例の模式的な断面図を示す。
図2に示される粘着シート1は、基材21と、基材の片面上に形成された粘着剤層11とを備える。また別の態様として、
図3に基材21の両面上に粘着剤層が形成されている一構成例の模式的な断面図を示す。
図3に示される粘着シート2は、基材21と、基材の両面上に形成された第1の粘着剤層11及び第2の粘着剤層12を備える。
【0113】
基材の材質は特に限定されず、粘着シートの使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。好ましくは透明フィルムである。使用し得る基材の非限定的な例としては、ポリプロピレンやエチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィンを主成分とするポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステルを主成分とするポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルを主成分とするポリ塩化ビニルフィルム等のプラスチックフィルム;ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリクロロプレンフォーム等の発泡体からなる発泡体シート;各種の繊維状物質(麻、綿等の天然繊維、ポリエステル、ビニロン等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維等であり得る。)の単独または混紡等による織布および不織布;和紙、上質紙、クラフト紙、クレープ紙等の紙類;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;等が挙げられる。これらを複合した構成の基材であってもよい。このような複合構造の基材の例として、例えば、金属箔と上記プラスチックフィルムとが積層した構造の基材、ガラスクロス等の無機繊維で強化されたプラスチックシート等が挙げられる。
【0114】
本発明の一実施態様に係る粘着シートの基材としては、各種のフィルム(以下、支持フィルムともいう。)を好ましく用いることができる。上記支持フィルムは、発泡体フィルムや不織布シート等のように多孔質のフィルムであってもよく、非多孔質のフィルムであってもよく、多孔質の層と非多孔質の層とが積層した構造のフィルムであってもよい。いくつかの態様において、上記支持フィルムとしては、独立して形状維持可能な(自立型の、あるいは非依存性の)樹脂フィルムをベースフィルムとして含むものを好ましく用いることができる。ここで「樹脂フィルム」とは、非多孔質の構造であって、典型的には実質的に気泡を含まない(ボイドレスの)樹脂フィルムを意味する。したがって、上記樹脂フィルムは、発泡体フィルムや不織布とは区別される概念である。上記樹脂フィルムは、単層構造であってもよく、二層以上の多層構造(例えば三層構造)であってもよい。
【0115】
樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ノルボルネン構造等の脂肪族環構造を有するモノマーに由来するポリシクロオレフィン、ナイロン6、ナイロン66、部分芳香族ポリアミド等のポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー等の樹脂を用いることができる。上記樹脂フィルムは、このような樹脂の1種を単独で含む樹脂材料を用いて形成されたものであってもよく、2種以上がブレンドされた樹脂材料を用いて形成されたものであってもよい。上記樹脂フィルムは、無延伸であってもよく、延伸(例えば一軸延伸または二軸延伸)されたものであってもよい。
【0116】
樹脂フィルムを構成する樹脂材料の好適例として、ポリエステル系樹脂、PPS樹脂およびポリオレフィン系樹脂が挙げられる。ここで、ポリエステル系樹脂とは、ポリエステルを50質量%を超える割合で含有する樹脂のことをいう。同様に、PPS樹脂とはPPSを50質量%を超える割合で含有する樹脂のことをいい、ポリオレフィン系樹脂とはポリオレフィンを50質量%を超える割合で含有する樹脂のことをいう。
【0117】
ポリエステル系樹脂としては、典型的には、ジカルボン酸とジオールを重縮合して得られるポリエステルを主成分として含むポリエステル系樹脂が用いられる。ポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。
【0118】
ポリオレフィン樹脂としては、1種のポリオレフィンを単独で、または2種以上のポリオレフィンを組み合わせて用いることができる。該ポリオレフィンは、例えばα-オレフィンのホモポリマー、2種以上のα-オレフィンの共重合体、1種または2種以上のα-オレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体等であり得る。具体例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、エチレンプロピレンゴム(EPR)等のエチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体等が挙げられる。低密度(LD)ポリオレフィンおよび高密度(HD)ポリオレフィンのいずれも使用可能である。ポリオレフィン樹脂フィルムの例としては、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、中密度ポリエチレン(MDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム、2種以上のポリエチレン(PE)をブレンドしたポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)をブレンドしたPP/PEブレンドフィルム等が挙げられる。
【0119】
基材として好ましく利用し得る樹脂フィルムの具体例として、PETフィルム、PENフィルム、PPSフィルム、PEEKフィルム、CPPフィルムおよびOPPフィルムが挙げられる。強度の点から好ましい例として、PETフィルム、PENフィルム、PPSフィルムおよびPEEKフィルムが挙げられる。入手容易性、寸法安定性、光学特性等の観点から好ましい例としてPETフィルムが挙げられる。
【0120】
樹脂フィルムには、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤(染料、顔料等)、充填材、スリップ剤、アンチブロッキング剤等の公知の添加剤を、必要に応じて配合することができる。添加剤の配合量は特に限定されず、粘着シートの用途等に応じて適宜設定することができる。
【0121】
樹脂フィルムの製造方法は特に限定されない。例えば、押出成形、インフレーション成形、Tダイキャスト成形、カレンダーロール成形等の従来公知の一般的な樹脂フィルム成形方法を適宜採用することができる。
【0122】
上記基材は、このような樹脂フィルムから実質的に構成されたものであり得る。あるいは、上記基材は、上記樹脂フィルムの他に、補助的な層を含むものであってもよい。上記補助的な層の例としては、光学特性調整層(例えば反射防止層)、基材または粘着シートに所望の外観を付与するための印刷層やラミネート層、帯電防止層、下塗り層、剥離層等の表面処理層が挙げられる。また、上記基材は、後述する光学部材であってもよい。
【0123】
基材の厚さは、特に限定されず、粘着シートの使用目的や使用態様等に応じて選択し得る。基材の厚さは、例えば1000μm以下であってよく、500μm以下でもよく、100μm以下でもよく、70μm以下でもよく、50μm以下でもよく、25μm以下でもよく、10μm以下でもよく、5μm以下でもよい。基材の厚さが小さくなると、粘着シートの柔軟性や被着体の表面形状への追従性が向上する傾向にある。また、取扱い性や加工性等の観点から、基材の厚さは、例えば2μm以上であってよく、5μm超または10μm超でもよい。いくつかの態様において、基材の厚さは、例えば20μm以上であってよく、35μm以上でもよく、55μm以上でもよい。
【0124】
基材のうち粘着剤層に接合される側の面には、必要に応じて、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤(プライマー)の塗布、帯電防止処理等の従来公知の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、基材と粘着剤層との密着性、言い換えると粘着剤層の基材への投錨性を向上させるための処理であり得る。プライマーの組成は特に限定されず、公知のものから適宜選択することができる。下塗り層の厚さは特に制限されないが、通常、0.01μm~1μm程度が適当であり、0.1μm~1μm程度が好ましい。
【0125】
基材のうち粘着剤層に接合される側とは反対側の面(以下、背面ともいう。)には、必要に応じて、剥離処理、接着性または粘着性向上処理、帯電防止処理等の従来公知の表面処理が施されていてもよい。例えば、基材の背面を剥離処理剤で表面処理することにより、ロール状に巻回された形態の粘着シートの巻戻し力を軽くすることができる。剥離処理剤としては、シリコーン系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤、オレフィン系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、脂肪酸アミド系剥離処理剤、硫化モリブデン、シリカ粉等を用いることができる。
【0126】
(剥離ライナー)
本実施形態の粘着シートにおいては、使用時まで上記粘着剤層が剥離ライナー(セパレーター、剥離フィルム)により保護されていてもよい。
【0127】
剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙などを使用でき、特に限定されないが、例えば、剥離処理層を有する基材、フッ素系ポリマーからなる低接着性基材、無極性ポリマーからなる低接着性基材などを用いることができる。
剥離処理層を有する基材としては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等が挙げられる。
フッ素系ポリマーからなる低接着性基材のフッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。
無極性ポリマーからなる低接着性基材の無極性ポリマーとしては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等が挙げられる。なお、剥離ライナーは公知ないし慣用の方法により形成することができる。また、剥離ライナーの厚さ等も特に制限されない。
【0128】
本態様に係る技術において、粘着シートのヘイズ値は凡そ10%以下であることが適当であり、凡そ5%以下(例えば凡そ3%以下)であり得る。上記ヘイズ値は1.0%以下であることが好ましい。このように透明性の高い粘着シートは、本発明において変色または着色させた場合の外観の変化が顕著であるという点から好ましい。粘着シートのヘイズ値は、1.0%未満であってよく、0.7%未満であってもよく、0.5%以下(例えば0~0.5%)であってもよい。粘着シートに関するこれらのヘイズ値は、本態様に係る技術における粘着剤層のヘイズ値にも好ましく適用され得る。
【0129】
ここで「ヘイズ値」とは、測定対象に可視光を照射したときの全透過光に対する拡散透過光の割合をいう。くもり価ともいう。ヘイズ値は、以下の式で表すことができる。
Th[%]=Td/Tt×100
上記式において、Thはヘイズ値[%]であり、Tdは散乱光透過率、Ttは全光透過率である。ヘイズ値の測定は、後述する実施例に記載の方法にしたがって行うことができる。ヘイズ値は、例えば、粘着剤層の組成や厚さ等の選択によって調節することができる。
【0130】
本態様に係る技術は、例えば、電子部材用途、光学部材用途、建築部材用途などに好ましく用いることが出来る。
【実施例】
【0131】
以下、本発明の実施の形態について、実施例を用いてより詳細に説明する。
【0132】
<粘着剤組成物の作製>
〔粘着剤溶液の作製〕
(粘着剤溶液A1)
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、モノマー成分としてn-ブチルアクリレート(BA)97質量部、アクリル酸(AA)2質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)1質量部、重合溶媒として酢酸エチル122質量部を仕込み、熱重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部を投入して窒素雰囲気下で溶液重合を行うことにより、Mwが70万のアクリル系ポリマーを含有する粘着剤溶液A1を得た。
【0133】
(粘着剤溶液A2)
モノマー成分をn-ブチルアクリレート(BA)95質量部、アクリル酸(AA)5質量部とした他は粘着剤溶液A1の調製と同様にして、Mwが65万の粘着剤溶液A2を調製した。
【0134】
(粘着剤溶液A3)
モノマー成分をn-ブチルアクリレート(BA)95質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)5質量部とした他は粘着剤溶液A1の調製と同様にして、Mwが60万の粘着剤溶液A3を調製した。
【0135】
上記粘着剤溶液の配合について以下表1にまとめて示す。
【0136】
【0137】
〔染料オリゴマー溶液の作製〕
(染料オリゴマー溶液B1)
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、モノマー成分として、n-ブチルアクリレート(BA)90質量部、及び側鎖に色素構造を有するビニルモノマーである青色重合性染料RDW-B01(富士フィルム和光純薬製)10質量部、連鎖移動剤として、n-ドデシルメルカプタン(NDM)5質量部、重合溶媒として、酢酸エチル122質量部を仕込み、熱重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部を投入して窒素雰囲気下で溶液重合を行うことにより、Mwが5,000の(メタ)アクリル系青色染料オリゴマーを含有する染料オリゴマー溶液B1を得た。
【0138】
(染料オリゴマー溶液B2)
重合性染料を黄色のRDW-Y02(富士フィルム和光純薬製)10質量部とした他は染料オリゴマーB1の調製と同様にして、Mwが5,000の染料オリゴマー溶液B2を得た。
【0139】
(染料オリゴマー溶液B3)
n-ドデシルメルカプタン(NDM)の使用量を上記モノマー成分100質量部あたり20質量部とした他は染料オリゴマーB1の調製と同様にして、Mwが1,300の染料オリゴマー溶液B3を得た。
【0140】
(染料オリゴマー溶液B4)
n-ドデシルメルカプタン(NDM)の使用量を上記モノマー成分100質量部あたり0.1質量部とした他は染料オリゴマーB1の調製と同様にして、Mwが48,000の染料オリゴマー溶液B4を得た。
【0141】
(染料オリゴマー溶液B5)
n-ドデシルメルカプタン(NDM)の使用量を上記モノマー成分100質量部あたり30質量部とした他は染料オリゴマーB1の調製と同様にして、Mwが600の染料オリゴマー溶液B4を得た。
【0142】
(染料オリゴマー溶液B6)
n-ドデシルメルカプタン(NDM)の使用量を上記モノマー成分100質量部あたり0.02質量部とした他は染料オリゴマーB1の調製と同様にして、Mwが120,000の染料オリゴマー溶液B6を得た。
【0143】
上記染料オリゴマー溶液の配合について以下表2にまとめて示す。
【0144】
【0145】
〔粘着剤組成物の作製〕
(粘着剤組成物C1)
上記で得られた粘着剤溶液A1に、該溶液の調製に使用したポリマー成分100質量部あたり、上記染料オリゴマー溶液B1を1質量部、イソシアネート系架橋剤コロネートL(東ソー製)0.8質量部を加え、均一に混合して粘着剤組成物C1を調製した。
【0146】
(粘着剤組成物C2)
染料オリゴマー溶液B1の使用量を5質量部とした他は粘着剤組成物C1の調製と同様にして、粘着剤組成物C2を調製した。
【0147】
(粘着剤組成物C3)
用いた粘着剤溶液を粘着剤溶液A2とし、コロネートL0.8質量部の代わりにテトラッドCを0.08質量部(三菱ガス化学製)用いた他は粘着剤組成物C2の調製と同様にして、粘着剤組成物C3を調製した。
【0148】
(粘着剤組成物C4)
用いた粘着剤溶液を粘着剤溶液A3とした他は粘着剤組成物C2の調製と同様にして、粘着剤組成物C4を調製した。
【0149】
(粘着剤組成物C5)
用いた染料オリゴマー溶液を、染料オリゴマー溶液B1を2.5質量部、B2を2.5質量部とした他は粘着剤組成物C2の調製と同様にして、粘着剤組成物C5を調製した。
【0150】
(粘着剤組成物C6)
用いた染料オリゴマー溶液を染料オリゴマー溶液B1を2.5質量部とし、有機顔料Pigment Blue 15(東京化成工業製)を2.5質量部、分散剤アジスパーPB821(味の素ファインテクノ製)を0.5質量部加えた他は粘着剤組成物C2の調製と同様にして、粘着剤組成物C6を調製した。
【0151】
(粘着剤組成物C7)
用いた染料オリゴマー溶液を染料オリゴマー溶液B3とした他は粘着剤組成物C2の調製と同様にして、粘着剤組成物C7を調製した。
【0152】
(粘着剤組成物C8)
用いた染料オリゴマー溶液を染料オリゴマー溶液B4とした他は粘着剤組成物C2の調製と同様にして、粘着剤組成物C8を調製した。
【0153】
(粘着剤組成物C9)
用いた染料オリゴマー溶液を染料オリゴマー溶液B5とした他は粘着剤組成物C2の調製と同様にして、粘着剤組成物C9を調製した。
【0154】
(粘着剤組成物C10)
用いた染料オリゴマー溶液を染料オリゴマー溶液B6とした他は粘着剤組成物C2の調製と同様にして、粘着剤組成物C10を調製した。
【0155】
(粘着剤組成物C11)
染料オリゴマー溶液B1の代わりに有機顔料Pigment Blue 15を1質量部用いた他は粘着剤組成物C1の調製と同様にして、粘着剤組成物C11を調製した。
【0156】
(粘着剤組成物C12)
有機顔料をPigment Blue 15を2.5質量部、Pigment Yellow 74(Oakwood Products, Inc.製)を2.5質量部とした他は粘着剤組成物C11の調製と同様にして、粘着剤組成物C12を調製した。
【0157】
(粘着剤組成物C13)
染料オリゴマー溶液B1を用いなかった他は粘着剤組成物C1の調製と同様にして、粘着剤組成物C13を調製した。
【0158】
(粘着剤組成物C14)
分散剤アジスパーPB821(味の素ファインテクノ製)を0.5質量部加えた他は粘着剤組成物C11の調製と同様にして、粘着剤組成物C14を調製した。
【0159】
(粘着剤組成物C15)
有機顔料Pigment Blue 15の使用量を5質量部とした他は粘着剤組成物C14の調製と同様にして、粘着剤組成物C15を調製した。
【0160】
(粘着剤組成物C16)
用いた粘着剤溶液を粘着剤溶液A2とし、コロネートL0.8質量部の代わりにテトラッドCを0.08部(三菱ガス化学製)用い、分散剤を用いなかった他は粘着剤組成物C15の調製と同様にして、粘着剤組成物C16を調製した。
【0161】
<粘着シートの作製>
(実施例1)
ポリエステルフィルムの片面が剥離面となっている厚さ38μmの剥離フィルムR1(三菱樹脂株式会社、MRF#38)に粘着剤組成物C1を塗布し、135℃で2分間乾燥させて、厚さ30μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層に、コロナ処理された厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り合わせることにより、PETフィルム(支持体)と粘着剤層と剥離フィルムR1とがこの順に積層した粘着シート1を得た。
【0162】
(実施例2~10)
粘着剤組成物C1に代えて粘着剤組成物C2~C10をそれぞれ用いた他は実施例1と同様にして、粘着シート2~10を作製した。
【0163】
(比較例1、2)
粘着剤組成物に代えて粘着剤組成物C11、C12をそれぞれ用いた他は実施例1と同様にして、粘着シート11、12を作製した。
【0164】
(参考例1~4)
粘着剤組成物に代えて粘着剤組成物C13~C16をそれぞれ用いた他は実施例1と同様にして、各例に係る粘着シート13~16を作製した。
【0165】
<分散性の評価>
上記で作製した粘着シート1~16における染料オリゴマーないし公知な有機顔料の分散性については、以下のとおり、凝集物の存在の程度により評価した。
○(分散性良好):10cm×10cmの試験片において目視可能な凝集物が認められなかった
△(分散性やや良好):10cm×10cmの試験片において目視可能な凝集物が10個未満認められた
×(分散性不良):10cm×10cmの試験片において目視可能な凝集物が10個以上認められた
結果を表3に示す。なお、表3中、「-」は本評価を実施していないことを意味する。
【0166】
<ブリードアウト性の評価>
上記で作製した粘着シート1~16のブリードアウト性については、以下のとおり、剥離後の被着体への色素成分の残存の程度により評価した。なお、下記評価における色素成分の残存する領域は、粘着剤層の比重を1.17g/cm3として、剥離前後の粘着シートの重量変化を測定することにより求めた。
○(ブリードアウト性良好):2.5cm×7cmの剥離面において色素成分の残存が認められなかった
△(ブリードアウト性やや良好):2.5cm×7cmの剥離面において10%未満の領域で色素成分の残存が認められた
×(ブリードアウト性不良):2.5cm×7cmの剥離面において10%以上の領域で色素成分の残存が認められた
結果を表3に示す。なお、表3中、「-」は本評価を実施していないことを意味する。
【0167】
<粘着力の測定>
上記で作製した粘着シート1~16について、粘着力を測定した。
粘着力の測定は、粘着シート1~16をそれぞれ幅25mm、長さ10cmになるように切断し、剥離ライナーを剥離除去した。
続いて、アルカリガラスに、各粘着シートを2kgローラーで1往復して圧着して貼付した。
引張試験機(AUTOGRAPH AGS-X、(株)島津製作所製)を用いて、剥離角度180度、剥離速度300mm/minで引きはがした際の力を粘着力(N/25mm)として測定した。
結果を表3に示す。なお、表3中、「-」は本測定を実施していないことを意味する。
【0168】
【0169】
染料オリゴマーを含有する実施例1~10の粘着シートは、分散性及びブリードアウト性ともに良好であった。中でも、染料オリゴマーの重量平均分子量(Mw)が1,000~50,000である実施例1~8では、分散性及びブリードアウト性ともに特に良好であった。また、実施例6の粘着シートは、顔料を含有するものの、分散剤をともに含むため、良好な結果が得られた。
一方、比較例1、2の粘着シートは、染料オリゴマーではなく顔料を含有するため、分散性及びブリードアウト性ともに不良であった。
なお、参考例2、3の粘着シートは、比較例1における粘着剤組成物に分散剤を添加している。そのため、比較例1の粘着シートでは分散性及びブリードアウト性ともに不良であったが、参考例2、3の粘着シートでは、分散性及びブリードアウト性ともに良好であった。また、参考例4の粘着シートは、高酸価のポリマーを含有する粘着剤溶液を使用したため、分散性及びブリードアウト性ともに良好であった。
【符号の説明】
【0170】
1、2 粘着シート
11、12 粘着剤層
21 基材