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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20221213BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20221213BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H01L29/78 612C
G02F1/1368
G09F9/30 338
H01L29/78 612B
H01L29/78 618B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019068402
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020167326
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】津吹 将志
(72)【発明者】
【氏名】内田 真
(72)【発明者】
【氏名】中村 卓
【審査官】田付 徳雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-046140(JP,A)
【文献】特開2018-128693(JP,A)
【文献】特開平02-165125(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0076239(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
G02F 1/1368
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
前記表示部に配置され、第1半導体層を含む第1トランジスタと、
前記表示部に配置され、前記第1半導体層と異なる層に設けられた第2半導体層を有する第2トランジスタと、
前記第1トランジスタと接続された第1信号線と、
前記第2トランジスタと接続された第2信号線と、
前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタに重畳するゲート線と、
前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタ上に設けられた表示素子と、を含む、
表示装置。
【請求項2】
前記表示部は、第1画素と、第2画素と、を有し、
前記第1トランジスタは前記第1画素に含まれ、
前記第2トランジスタは前記第2画素に含まれる、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1信号線と、前記第2信号線とは、同一の層に設けられる、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1半導体層と、前記第2半導体層とは一部において重畳する、
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記ゲート線は、第1ゲート線と、前記第1ゲート線と重畳し、前記第1ゲート線と異る層に設けられた第2ゲート線とを含み、
前記第1トランジスタの前記第1半導体層は、前記第1ゲート線と前記第2ゲート線と
の間にあり、
前記第1ゲート線および前記第2ゲート線の一方は、前記第2トランジスタの前記第2半導体層と、前記1ゲート線および前記第2ゲート線の他方との間にある、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示部を囲む周辺部に配置された駆動回路を有し、
前記駆動回路は、第3トランジスタを含み、
前記第3トランジスタの第3半導体層は、前記第1トランジスタの前記第1半導体層と同一の層に配置される、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第1半導体層の材料と、前記第2半導体層の材料とは異なる
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記第1半導体層は、酸化物半導体材料を含み、
前記第2半導体層は、シリコンを含む、
請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記第1半導体層および前記第2半導体層は、酸化物半導体材料を含む、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項10】
前記表示素子は、液晶素子である、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気器具及び電子機器に用いられる表示装置として、液晶の電気光学効果を利用した液晶表示装置や、有機エレクトロルミネセンス(有機EL:Organic Electro-Luminescence)素子を用いた有機エレクトロルミネセンス表示装置が開発されている。近年、表示装置に対して、大面積化、高解像度化、高フレームレート化などの要求が高まってきており、これらの要求を満たすための取り組みが盛んに行われている。特に、高精細化された表示装置は、拡張現実(AR;Augmented Reality)または仮想現実(VR;Virtual Reality)用途として今後ニーズが高まることが予想される。
【0003】
従来、これらの表示装置においては、半導体層としてシリコンを用いたトランジスタが用いられてきた。最近では、シリコンに替わって、酸化物半導体を用いたトランジスタの開発が進められている。酸化物半導体を用いたトランジスタは、高移動度を実現できることが期待されている。さらに、酸化物半導体は、大面積で形成できるとともに、アモルファスシリコンと比較して高耐圧性に優れるといった利点を有する。特許文献1には、酸化物半導体を用いた表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-165528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高精細の表示装置を製造するうえで、表示部の半導体層を同一表面に形成する場合、配置できる各層の面積に制限が生じるとともに、製造装置の加工制限が生じてしまう。そのため、より高精細な表示装置を実現することに支障が生じる。
【0006】
上記問題に鑑み、本発明の一実施形態は、高精細の表示装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る表示装置は、表示部と、前記表示部に配置され、第1半導体層を含む第1トランジスタと、表示部において第1トランジスタと隣接し、前記第1半導体層と異なる層に設けられた第2半導体層を有する第2トランジスタと、前記第1トランジスタと接続された第1信号線と、前記第2トランジスタと接続された第2信号線と、前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタに重畳するゲート線と、前記第1トランジスタおよび前記第2トランジスタ上に設けられた表示素子と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る表示装置の平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る表示装置の画素回路の回路図である。
図3】本発明の一実施形態に係る表示装置の表示部の一部を拡大した上面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る表示装置の表示部の一部を拡大した断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るトランジスタの製造方法の断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るトランジスタの製造方法の断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係るトランジスタの製造方法の断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係るトランジスタの製造方法の断面図である。
図9】本発明の一実施形態に係るトランジスタの製造方法の断面図である。
図10】本発明の一実施形態に係るトランジスタの製造方法の断面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る表示装置の表示部の一部を拡大した断面図である。
図12】本発明の一実施形態に係る表示装置の表示部の一部を拡大した上面図である。
図13】本実施例に係るトランジスタの断面図である。
図14】本実施例に係るトランジスタの信頼性評価結果である。
図15】本実施例に係るトランジスタの信頼性評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号(又は数字の後にA、Bなどを付した符号)を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有さない。
また、本明細書において、ある部材又は領域が他の部材又は領域の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限りこれは他の部材又は領域の直上(又は直下)にある場合のみでなく他の部材又は領域の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の部材又は領域の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。なお、以下の説明では、特に断りのない限り、断面視においては、第1基板に対して第2基板が配置される側を「上」又は「上方」といい、その逆を「下」又は「下方」として説明する。
【0010】
また、本明細書において、「AとBとが接続されている」とは、AとBとが直接接続されているものの他、電気的に接続されているものを含むものとする。ここで、「AとBとが電気的に接続されている」とは、AとBとの間で、何らかの電気的作用を有する対象物が存在するとき、AとBとの電気信号の授受を可能とするものをいう。
【0011】
その他、本発明の属する分野における通常に知識を有する者であれば認識できるものである場合、特段の説明を行わないものとする。
【0012】
<第1実施形態>
(1-1.表示装置の構成)
図1は、表示装置10の上面図を示す。図1において、表示装置10は、基板100、基板200、複数の画素103を有する表示部101と、ソースドライバとしての機能を有する駆動回路106と、ゲートドライバとしての機能を有する駆動回路107を有する周辺部104、フレキシブルプリント基板108、および端子部109を有する。
【0013】
図1において、画素103は、マトリクス状に設けられ、表示素子(後述する液晶素子170)を含む。周辺部104は、表示部101の外側に配置され、表示部101を囲むように設けられる。画素103、駆動回路106、駆動回路107およびフレキシブルプリント基板108は、それぞれ電気的に接続されている。外部装置からの情報(信号)は、フレキシブルプリント基板108、および端子部109を介して駆動回路106および駆動回路107に入力される。ゲート線113は、駆動回路106と接続される。ゲート線113は、第1方向D1に延びるとともに、第1方向D1と交差する第2方向D2に並んで配置される。信号線115は、駆動回路107と接続される。信号線115は、第2方向に延びるとともに、第1方向に並んで配置される。
【0014】
図2に、表示装置10の表示部101が有する画素回路30の回路図を示す。なお、以下で説明する画素回路30の回路構成は一例であって、これに限定されるものではない。
【0015】
画素回路30は、少なくともトランジスタ110(トランジスタ110-1およびトランジスタ110-2)、トランジスタ111、並びにトランジスタ110およびトランジスタ111のそれぞれに接続される容量素子120及び液晶素子170を含む。なお、トランジスタ110およびトランジスタ111をまとめて半導体装置ということができる。また、トランジスタ110-1と、トランジスタ110-2を区別する必要がない場合には、トランジスタ110と記載して説明する。同様に信号線115-1、信号線115-2、および信号線115-3を区別する必要がない場合には信号線115と記載して説明する場合がある。
【0016】
トランジスタ110(トランジスタ110-1)は、液晶素子170(液晶素子170-1)に接続され、液晶素子170-1に含まれる液晶の配向を制御するトランジスタである。トランジスタ110-1では、ゲート-ソース間電圧によってドレイン電流が制御される。トランジスタ110-1では、ゲートがゲート線113に接続され、ドレインが信号線115-1に接続され、ソースまたはドレインの他方が液晶素子170の第1電極に接続される。液晶素子170-1の第2電極は、共通電位線117に接続される。容量素子120(容量素子120-1)の一方の電極は、トランジスタ110-1のドレインと接続される。容量素子120の他方の電極は、容量配線119と接続される。トランジスタ110-1は、画素103(画素103-1)の構成要素である。
【0017】
トランジスタ111は、液晶素子170(液晶素子170-2)に接続され、液晶素子170-2に含まれる液晶の配向を制御するトランジスタである。トランジスタ111は、ゲート-ソース間電圧によってドレイン電流が制御される。トランジスタ111は、ゲートがゲート線113に接続され、ドレインが信号線115-2に接続され、ソースまたはドレインの他方が液晶素子170-2の第1電極に接続される。液晶素子170-2の第2電極は、共通電位線117に接続される。容量素子120(容量素子120-2)の一方の電極は、トランジスタ111のドレインと接続される。容量素子120-2の他方の電極は、容量配線119と接続される。トランジスタ111は、画素103(画素103-2)の構成要素である。
【0018】
トランジスタ110-2は、液晶素子170-3に接続され、液晶素子170-3に含まれる液晶の配向を制御するトランジスタである。トランジスタ110-2は、ゲート-ソース間電圧によってドレイン電流が制御される。トランジスタ110-2は、ゲートがゲート線113に接続され、ドレインが信号線115-3に接続され、ソースまたはドレインの他方が液晶素子170-2の第1電極に接続される。液晶素子170-3の第2電極は、共通電位線117に接続される。容量素子120-3の一方の電極は、トランジスタ110-2のドレインと接続される。容量素子120-3の他方の電極は、容量配線119と接続される。トランジスタ110-2は、画素103(画素103-3)の構成要素である。
【0019】
なお、この例では、トランジスタ110-1、トランジスタ111、およびトランジスタ110-2は、ゲート線113に接続されているが、後述するように、異なるゲート線に接続されてもよい。
【0020】
上述の構成に基づき、駆動回路106から送信された映像信号および駆動回路107から送信された走査信号(ゲート信号)がそれぞれの画素103に入力されることにより表示部101において静止画および動画が表示される。
【0021】
(1-2.画素の構成)
次に、表示装置10の表示部101に設けられた画素103-1、画素103-2および画素103-3の各構成について、図面を用いて説明する。
【0022】
図3は、図1に示した表示装置10における表示部101の領域101a上面図である。図4は、画素103-1のA1-A2間、画素103-2のB1-B2間、および画素103-3のC1-C2間の断面図である。図3および図4に示すように、表示部101は、基板100、トランジスタ110(トランジスタ110-1およびトランジスタ110-2)、トランジスタ111、液晶素子170および基板200を含む。各構成について、以下に詳細に説明する。
【0023】
(1-2-1.トランジスタの構成)
図3および図4に示すように、トランジスタ110のうちトランジスタ110-1は、半導体層142、絶縁層143、ゲート線113、絶縁層146、絶縁層153、絶縁層154、ソース・ドレイン電極147、および信号線115-1を有する。トランジスタ110-2は、トランジスタ110-1と同様の構成を有するので、説明を省略する。
【0024】
トランジスタ111は、トランジスタ110に隣接して配置されている。トランジスタ111は、絶縁層143、ゲート線113、絶縁層146、酸化物半導体層152、絶縁層153、ゲート線114、絶縁層154、および信号線115-2を有する。
【0025】
図3に示すように、半導体層142と、酸化物半導体層152とは、平面視において、離隔して設けられている。また、半導体層142および酸化物半導体層152には、ゲート線113およびゲート線114が重畳して配置されている。
【0026】
半導体層142(第1半導体層ともいう)は、絶縁層141上に設けられる。半導体層142は、シリコン材料を含む。具体的には、半導体層142は、ポリシリコンを含む。なお、半導体層142は、ポリシリコンに限定されず、アモルファスシリコン、微結晶シリコン、または単結晶のシリコンが用いられてもよい。
【0027】
絶縁層143は、ゲート絶縁層として機能する。絶縁層143には、高誘電率の材料が用いられる。絶縁層143には、窒化シリコン(SiNx)、酸化シリコン(SiOx)、酸化窒化シリコン(SiOxy)、窒化アルミニウム(AlNx)、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化窒化アルミニウム(AlOxy)などが用いられる(x、yは任意の整数)。絶縁層143は、上記の材料の単層構造又は積層構造であってもよい。なお、酸化物半導体層152と接する絶縁層143は、酸化シリコン膜などの酸素を含む絶縁層であることが好ましい。
【0028】
ゲート線113(第1ゲート線ともいう)は、絶縁層143上に設けられる。トランジスタ110において、ゲート線113は、半導体層142に重畳して配置される。ゲート線113には、導電材料として、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、ビスマス(Bi)などが用いられる。また、ゲート線113には、これらの金属の合金が用いられてもよい。また、ゲート線113には、ITO(酸化インジウム・スズ)、IGO(酸化インジウム・ガリウム)、IZO(酸化インジウム・亜鉛)、GZO(ガリウムがドーパントとして添加された酸化亜鉛)等の導電性酸化物が用いられてもよい。また、これらの膜が積層されてもよい。
【0029】
絶縁層146は、絶縁層143上に設けられる。絶縁層146は、ゲート線113と酸化物半導体層152との間に設けられ、ゲート絶縁層としての機能を有する。絶縁層146には、絶縁層143と同様の材料が用いられてもよい。
【0030】
酸化物半導体層152(第2半導体層ともいう)は、絶縁層146上に設けられる。そのため、トランジスタ111は、トランジスタ110とは異なる層に半導体層が設けられるということができる。酸化物半導体層152は、ゲート線113に重畳して配置される。酸化物半導体層152には、半導体層142とは異なる酸化物半導体材料を含む。具体的には、酸化物半導体層152は、インジウムやガリウムなどの第13族元素を含むことができる。また、酸化物半導体層152には、異なる複数の第13族元素を含有してもよい。酸化物半導体層152は、さらに、第12族元素を含んでいてもよい。例えば、酸化物半導体層152には、インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む化合物(IGZO)が用いられる。
【0031】
また、酸化物半導体層152は、その他の元素を含んでもよい。このとき、酸化物半導体層152は、第14族元素であるスズ、第4族元素であるチタンやジルコニウムなどを含んでもよい。
【0032】
酸化物半導体層152のその他の具体例として、InOx、ZnOx、SnOx、In-Ga-O、In-Zn-O、In-Al-O、In-Sn-O、In-Hf-O、In-Zr-O、In-W-O、In-Y-O、In-Ga-Zn-O、In-Al-Zn-O、In-Sn-Zn-O、In-Hf-Zn-O、In-Ga-Sn-O、In-Al-Sn-O、In-Hf-Sn-O、In-Ga-Al-Zn-O、In-Ga-Hf-Zn-O、In-Sn-Ga-Zn-O等の材料が用いられてもよい。酸化物半導体層152の結晶性は限定されず、単結晶、多結晶、微結晶、又は非晶質でもよい。
【0033】
絶縁層153は、絶縁層146上に設けられる。絶縁層153は、ゲート線114と酸化物半導体層152との間に設けられ、ゲート絶縁層としても機能する。絶縁層153は、絶縁層143と同様の材料が用いられてもよい。
【0034】
ゲート線114およびソース・ドレイン電極147は、半導体層142および絶縁層153上に設けられる。ゲート線114は、ゲート線113、半導体層142および酸化物半導体層152に重畳して配置される。ソース・ドレイン電極147は、半導体層142と一部において接続される。ゲート線114およびソース・ドレイン電極147には、抵抗の低い金属材料が用いられる。具体的には、ゲート線114およびソース・ドレイン電極147には、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、ビスマス(Bi)などが用いられる。また、ゲート線114およびソース・ドレイン電極147には、これらの金属の合金が用いられてもよい。また、ゲート線114およびソース・ドレイン電極147には、これらの膜が積層されてもよい。
【0035】
絶縁層154は、絶縁層153上に設けられる。絶縁層154には、絶縁層143と同様の材料が用いられてもよいし、有機材料が用いられてもよい。具体的には、絶縁層154には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの有機樹脂が用いられてもよい。
【0036】
信号線115-1、信号線115-2および信号線115-3は、絶縁層154上に設けられる。つまり、信号線115-1と、信号線115-2と、信号線115-3とは、同一の層上に設けられているということができる。これにより、表示部を設計する際の自由度を高めることができる。信号線115-1および信号線115-3は、ソース・ドレイン電極147と接続される。信号線115-2は、酸化物半導体層152と接続される。信号線115-1および信号線115-2には、ソース・ドレイン電極147と同様の材料が用いられてもよい。
【0037】
上記の構成おいて、トランジスタ110においては、半導体層142の上側にゲート線113およびゲート線114が重畳して配置されている。言い換えれば、ゲート線113は、半導体層142とゲート線114との間に配置されている。このとき、トランジスタ110では、ゲート線114は、半導体層142に対して直接電圧を印加しない構成を有する。本実施形態では、トランジスタ110は、トップゲート・トップコンタクト構造を有する。
【0038】
一方、トランジスタ111では、酸化物半導体層152は、ゲート線113と、ゲート線114との間に設けられる。このとき、ゲート線113は、酸化物半導体層152の下側からゲート電圧を印加することができ、ゲート線114は、酸化物半導体層152の上側から電圧を印加することができる。ゲート線113およびゲート線114には、同一の電位を与えることができる。本実施形態では、トランジスタ111は、デュアルゲート・トップコンタクト構造を有する。
【0039】
本実施形態の場合、表示部101において隣接する画素が有するトランジスタに用いられる半導体層がそれぞれ異なる位置に配置される。これにより、高精細の表示装置を製造する上での半導体層の設計および加工時の制約は、二つ隣の画素が有するトランジスタの半導体層の配置によって決められる(本実施形態の場合、トランジスタ110-1に対するトランジスタ110-2が相当する)。そのため、表示部においてそれぞれの画素が有するトランジスタの半導体層を加工・形成することが容易となる。したがって、さらに高精細の表示装置を製造しやすくなる。
【0040】
また、トランジスタ110の半導体層142にポリシリコンまたは単結晶シリコンを用いた場合、電界効果移動度が高い特長を有する。そのため、表示部101の外側に設けられた周辺部104の駆動回路106および駆動回路107には、トランジスタ110の半導体層142と同一の層の半導体層を有するトランジスタ(第3トランジスタともいう)を配置することが望ましい。第3トランジスタは、高い電界効果移動度を有することができる。これにより、第3トランジスタを含む駆動回路は表示装置の駆動速度を高めることができ、高速表示にも対応することができる。
【0041】
(1-2-2.表示装置のその他の構成)
次に、表示部101におけるその他の各構成について以下に説明する。
【0042】
基板100には、ガラス基板又は有機樹脂基板が用いられる。有機樹脂基板としては、例えば、ポリイミドが用いられる。なお、有機樹脂基板は、ポリイミドに限定されず、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、環状オレフィン・コポリマー、シクロオレフィンポリマーが用いられてもよい。基板100および基板200の厚さは、適宜設定することができる。例えば、有機樹脂基板の場合、厚さを数マイクロメートルから数十マイクロメートルにするができる。この場合、可撓性を有するシートディスプレイを実現することが可能となる。
【0043】
絶縁層141は、下地膜としての機能を有する。絶縁層141は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコンなどが用いられる。絶縁層141は、単層であっても、積層であってもよい。上記材料を用いることで、基板100から不純物、代表的にはアルカリ金属、水、水素等の酸化物半導体層152への拡散を抑制することができる。
【0044】
平坦化層160は、絶縁層154上に設けられる。平坦化層160には、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の有機材料が用いられる。これらの材料は、溶液塗布法により膜を形成することが可能であり、平坦化効果が高いという特長がある。
【0045】
共通電極171は、平坦化層160上に設けられている。共通電極171には、透明導電材料が用いられる。この例では、酸化インジウム錫(ITO)が用いられる。なお、これに限定されず、酸化亜鉛(ZnO)、または酸化インジウム亜鉛(IZO)などが用いられてもよい。また、図4では、共通電極171は、各画素に配置されているが、各画素に跨って設けられてもよい。
【0046】
また、共通電極171上に導電層173が設けられてもよい。導電層173には、ゲート線113およびゲート電極層145bと同様に抵抗の低い材料が用いられる。具体的には、導電層173には、チタン、アルミニウム、チタンの積層膜が用いられる。なお、導電層173は、必ずしも設けられなくてもよい。
【0047】
絶縁層172は、共通電極171および平坦化層160上に設けられる。絶縁層172には、酸化シリコン膜又は窒化シリコン膜が用いられる。
【0048】
画素電極175aおよび画素電極175bは、絶縁層172上に設けられる。画素電極175aおよび画素電極175bには、共通電極171と同様に透明導電材料が用いられる。この例では、酸化インジウム錫(ITO)が用いられる。画素電極175aは、開口部を介してソース・ドレイン電極147と接続される。画素電極175bは、開口部を介して酸化物半導体層152と接続される。そのため、画素電極175bは、ソース・ドレイン電極として機能することができる。なお、図示しないが、画素電極175bは、別の電極を介してソース・ドレイン電極と接続してもよい。なお、画素電極175aおよび画素電極175bは、図示しないが、平面視において画素ごとに分離され、かつ櫛歯状に設けられている。
【0049】
遮光層192は、基板200側に設けられる。遮光層192は、遮光性する機能を有する。例えば、顔料を分散した樹脂、染料を含む樹脂の他、黒色クロム膜等の無機膜、カーボンブラック、複数の無機酸化物の固溶体を含む複合酸化物等を用いることができる。
【0050】
カラーフィルタ層195は、遮光層192の開口部に設けられる。カラーフィルタ層195は、液晶素子170から透過して出射された光に対して特定の波長帯域の光を透過する機能を有する。例えば、赤色、緑色、または青色の波長帯域の光を透過させることができる。
【0051】
平坦化層190は、カラーフィルタ層195および遮光層192上に設けられる。平坦化層190には、平坦化層160と同様の材料が用いられる。
【0052】
画素電極175(画素電極175aまたは画素電極175b)と、平坦化層190との間には液晶層180が設けられる。画素電極175(画素電極175aまたは画素電極175b)、共通電極171および液晶層180で構成される本実施形態の液晶素子170は、FFS(Fringe Field Switching)液晶素子である。なお、液晶素子はFFS液晶素子に限定されず、TN(Twisted Nematic)型液晶素子でもよいし、VA(Vertical Alignment)型液晶素子でもよい。
【0053】
基板200は、ガラス基板、石英基板、フレキシブル基板(ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、環状オレフィン・コポリマー、シクロオレフィンポリマー、その他の可撓性を有する樹脂基板)を用いることができる。
【0054】
(1-3.表示装置の製造方法)
次に、表示装置10の製造方法について、トランジスタ110およびトランジスタ111を中心に図5乃至図10を参照して説明する。
【0055】
まず、図5に示すように、基板100上に設けられた絶縁層141上に半導体層142を形成する。半導体層142は、CVD法、スパッタリング法、蒸着法などにより形成される。この例では、CVD法により形成されたシリコン膜が用いられる。半導体層142は、熱処理またはレーザ照射により多結晶化され、ポリシリコンとなる。例えば、加熱処理に用いられる温度は、500℃以上である。半導体層142は、フォトリソグラフィ法、およびドライエッチング法またはウェットエッチング法により所望の形状となるように加工される。
【0056】
次に、図6に示すように、絶縁層143およびゲート線113を形成する。
【0057】
絶縁層143は、上述した材料を用いてスパッタリング法、熱CVD法、又はプラズマCVD法により形成される。この例では、絶縁層143には、CVD法により形成された厚さ30nm以上300nm以下の酸化シリコン膜が用いられる。
【0058】
ゲート線113は、絶縁層143上に導電膜を成膜し、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法またはウェットエッチング法により所望の形状となるように加工する。当該導電膜は、スパッタリング法により、上述した材料を用いて、単層構造又は積層構造で形成される。また、ゲート線113の膜厚は、100nm以上1000nm以下とすることが好ましい。この例では、ゲート線113として、モリブデンとタングステンの合金膜が用いられる。
【0059】
次に、図7に示すように、絶縁層146および酸化物半導体層152を形成する。絶縁層146は、酸化珪素膜、窒化珪素膜またはその積層膜が用いられる。絶縁層146の膜厚は50nm以上600nm以下である。
【0060】
酸化物半導体層152は、絶縁層143上に、スパッタリング法を用いて形成され、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法により所望の形状となるように加工される。酸化物半導体層152の膜厚は、30nm以上200nm以下である。
【0061】
酸化物半導体層152に対応する酸化物半導体膜をスパッタリング法により成膜する際に、酸化物半導体ターゲットに印加する電源は、直流電流(DC)でも交流電源(AC)でもよく、酸化物半導体ターゲットの形状や組成などによって決定することができる。酸化物半導体ターゲットとしては、例えば、InGaZnOであれば、In:Ga:Zn:O=1:1:1:4(In23:Ga23:ZnO=1:1:2)などを使用することができる。また、組成比は、トランジスタの特性などの目的に応じて決定することができる。
【0062】
また、酸化物半導体膜を成膜する際に、酸素ガス、酸素及び希ガスの混合ガス、又は希ガスを用いてもよい。酸化物半導体膜を成膜するためのスパッタリングガスとして、この例では、酸素及び希ガスの混合ガス雰囲気で行うことが好ましく、希ガスに対する酸素ガス流量比が5%以上であることがより好ましい。酸素ガス流量比を5%以上にすることにより、酸化物半導体膜に酸素が添加されやすくなるため好ましい。
【0063】
また、酸化物半導体層152を形成した後に加熱処理を行ってもよい。加熱処理は、窒素、乾燥空気、又は大気の存在下で、大気圧又は低圧(真空)で行うことができる。加熱処理は、325℃以上450℃以下、好ましくは350℃以上400℃以下で行うことが望ましい。また、加熱時間は、例えば、15分以上12時間以下、好ましくは30分以上2時間以下で行うことが望ましい。加熱処理により、酸化物半導体層152のダメージが生じた領域(バックチャネル領域)または酸化物半導体層152の内部に存在する酸素欠損に酸素を補填することができる。これにより、酸化物半導体層152に含まれる酸素欠損を低減することができ、結晶欠陥が少なく、結晶性が高い酸化物半導体層152が得られる。また、加熱処理により、酸化物半導体層152の水素濃度を低減することができる。さらに、加熱処理により、絶縁層143および絶縁層146内に含まれる欠陥準位密度が低減される。これにより、酸化物半導体層152を有するトランジスタ111の信頼性を、半導体層142を有するトランジスタ110と同様の信頼性を有するように向上させることができる。
【0064】
次に、図8に示すように、絶縁層153、ゲート線114およびソース・ドレイン電極147を形成する。絶縁層153は、絶縁層146と同様の材料、方法および膜厚により形成される。
【0065】
ソース・ドレイン電極147およびゲート線114は、半導体層142に重畳するように絶縁層143、絶縁層146および絶縁層153に開口部を設けた後、半導体層142および絶縁層153上に、ソース・ドレイン電極147およびゲート線114となる導電膜を形成する。当該導電膜は、上述の材料を用いてスパッタリング法により形成される。なお、当該導電膜は、スパッタリング法に限定されず、CVD法や印刷法により形成してもよい。ソース・ドレイン電極147の膜厚は、100nm以上1000nm以下であることが好ましい。この例では、ソース・ドレイン電極147としてチタン、アルミニウム、チタンがスパッタリング法により成膜され、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法により、所望の形状に加工される。
【0066】
次に、図9に示すように、絶縁層154および信号線115-1、信号線115-2、および信号線115-3を形成する。絶縁層154は、絶縁層143と同様の材料、方法および膜厚により形成される。
【0067】
信号線115-1は、ソース・ドレイン電極147に重畳するように絶縁層154に開口部を設けた後、ソース・ドレイン電極147および絶縁層154上に形成される。信号線115-2は、ソース・ドレイン電極147と同様の材料、方法および膜厚により形成され、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法により、所望の形状に加工される。
【0068】
次に、図10に示すように、平坦化層160、共通電極171、導電層173、絶縁層172、画素電極175aおよび画素電極175bを形成する。絶縁層154および絶縁層172は、絶縁層143と同様の材料、方法および膜厚により形成される。
【0069】
平坦化層160は、絶縁層154および信号線115-1上に上述した材料を用いて塗布法または印刷法により形成される。
【0070】
共通電極171は、上述した材料を用いて、スパッタリング法により形成され、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法により、所望の形状に加工される。また、共通電極171上には、抵抗を下げるために、導電層173を適宜形成してもよい。導電層173には、アルミニウムなどの抵抗の低い材料をスパッタリング法により形成することができる。導電層173は、ソース・ドレイン電極147および信号線115と重畳するようにフォトリソグラフィ法およびドライエッチング法により加工・形成される。
【0071】
画素電極175aは、ソース・ドレイン電極147に重畳するように、絶縁層172、平坦化層160、および絶縁層154に開口部を設けた後、ソース・ドレイン電極147および絶縁層172上に形成される。画素電極175bは、酸化物半導体層152と重畳するように、絶縁層172、平坦化層160、絶縁層154、および絶縁層153に開口部を設けた後、酸化物半導体層152および絶縁層172上に形成される。画素電極175aおよび画素電極175bは、共通電極171と同様の材料および方法により形成され、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法により、所望の形状に加工される。
【0072】
その他、液晶層180、平坦化層190、遮光層192およびカラーフィルタ層195は、一般的な方法により形成することができるので、説明を省略する。以上の方法により、表示装置10を製造することができる。
【0073】
本実施形態では、トランジスタ110およびトランジスタ111はそれぞれ半導体層の形成時に加えられる温度が異なる。トランジスタ110の半導体層142は、トランジスタ111の酸化物半導体層152よりも高い温度での処理を要する。一方、トランジスタ111の酸化物半導体層152は、半導体層142よりも上に配置されるとともに、半導体層142よりも低い温度で形成されるため、トランジスタ111形成時の熱によってトランジスタ110は影響をうけない(または影響が小さい)。したがって、表示装置を製造するときのプロセス温度の制約が抑えられる。また、隣接するトランジスタの半導体層を異なる層に形成することにより、隣接するトランジスタ間の距離(例えば半導体層)を近づけた場合においても加工の制約が抑えられる。例えば、i線ステッパを適用した場合の露光限界は1.5μmであるが、本構成は異なる層に形成するため、この制約をうけない。これにより、一般的な製造装置を用いても加工しやすい特長を有する。以上より、本実施形態を用いることにより、高精細の表示装置を製造しやすくなる。
【0074】
<第2実施形態>
第1実施形態において、トランジスタ110がシリコン材料を含む半導体層142を含み、トランジスタ111が酸化物半導体材料を含む酸化物半導体層152を含む例を示したが、これに限定されない。本実施形態では、第1実施形態の表示装置と半導体層に用いられる材料が異なる表示装置について説明する。
【0075】
(表示部101Aの構成)
図11は、表示部101Aの断面図である。図11図4と同様の断面図である。図11に示すように、表示部101は、基板100、トランジスタ111A、液晶素子170、遮光層192および基板200に加えて、トランジスタ112(トランジスタ112-1およびトランジスタ112-2)、中間層144、絶縁層163、絶縁層164を含む。中間層144は、金属材料、絶縁材料に限定されず、配線基板などを含んでもよい。
【0076】
トランジスタ111Aは、絶縁層143、ゲート線113、絶縁層146、酸化物半導体層152、絶縁層153、ゲート線114、絶縁層154、絶縁層163、絶縁層164および信号線115A-2を有する。
【0077】
トランジスタ112は、絶縁層143、ゲート線113、絶縁層146、絶縁層153、ゲート線114、絶縁層154、酸化物半導体層162、絶縁層163、ゲート線116、絶縁層164および信号線115A-1を有する。
【0078】
酸化物半導体層162は、絶縁層154上に設けられる。酸化物半導体層162は、酸化物半導体層152と同様の材料および方法により形成される。
【0079】
絶縁層163は、絶縁層154および酸化物半導体層162上に設けられる。絶縁層163は、絶縁層143と同様の材料および方法により形成される。
【0080】
信号線115A-1は、トランジスタ112において、酸化物半導体層162と絶縁層163および絶縁層164に設けられた開口部において酸化物半導体層162と接続される。信号線115A-2は、トランジスタ111において、絶縁層153、絶縁層154、絶縁層163および絶縁層164に設けられた開口部において酸化物半導体層152と接続される。信号線115A-1および信号線115A-2は、いずれも絶縁層164上に設けられるため、同一層上に設けられるということができる。信号線115A-1および信号線115A-2が同一層上に設けられることは、回路設計がしやすい特長を有する。
【0081】
上記の構成おいて、トランジスタ112においては、酸化物半導体層162の下側にゲート線113およびゲート線114が配置され、酸化物半導体層162の上側にゲート線116が設けられている。このとき、トランジスタ112では、ゲート線114およびゲート線116は、酸化物半導体層162に対して上側または下側から電圧を印加できるのに対して、ゲート線113は、酸化物半導体層162に対して直接電圧を印加しない構成を有している。すなわち、ゲート線114およびゲート線116がトランジスタ112のゲートとして機能する。
【0082】
一方、トランジスタ111では、酸化物半導体層152は、ゲート線113と、ゲート線114との間に設けられる。このとき、ゲート線113は、酸化物半導体層152の下側からゲート電圧を印加することができ、ゲート線114は、酸化物半導体層152の上側から電圧を印加することができる。すなわち、ゲート線113およびゲート線114がトランジスタ112のゲートとして機能する。
【0083】
本実施形態では、隣接するトランジスタの半導体層が異なる層に配置されるとともに、それぞれ酸化物半導体材料を含む。これにより、トランジスタ間の距離(例えば半導体層)を近づけた場合において加工の制約が抑えられる。したがって、本実施形態を用いることにより、高精細の表示装置を製造しやすくなる。また、共に酸化物半導体層を用いることにより、画素電極とのコンタクト部で遮光されず、開口率が向上する。
【0084】
<第3実施形態>
第1実施形態において、半導体層142と、酸化物半導体層152とが、平面視において離隔して設けられている例を示したが、これに限定されない。本実施形態では、第1実施形態の表示装置と半導体層の配置が異なる表示装置について説明する。
【0085】
図12は、表示部101Bの領域101Ba上面図である。表示部101Bおよび領域101Baは、第1実施形態の表示部101、領域101aにそれぞれ対応する。図12に示すように、トランジスタ110B-1の半導体層142Bと、トランジスタ111Bの酸化物半導体層152Bとは、一部(この例では、領域142Ba)において重畳して配置されてもよい。これにより、設計の自由度がさらに高まり、高精細の表示装置を提供しやすくなる。
【実施例1】
【0086】
本実施例では、本発明の一実施形態に係るトランジスタ110およびトランジスタ111を基板上に作製し、Id-Vg特性を評価した結果について説明する。図13は、Id-Vg特性を評価するために作製したトランジスタ310およびトランジスタ311の断面図である。トランジスタ310およびトランジスタ311の作製方法を以下に示す。
【0087】
まず、ガラス基板上に酸化シリコンの絶縁層341を形成し、その上に半導体層342として膜厚50nmのアモルファスシリコン膜を成膜し、600℃で加熱処理を行い多結晶化させ、パターンニング法およびドライエッチング法を用いて加工した。
【0088】
次に、半導体層342上に絶縁層343としてプラズマCVD法により膜厚100nmの酸化シリコン膜を350℃で成膜した。
【0089】
次に、絶縁層346上にゲート線113に相当するゲート電極345として、DCスパッタリング法により膜厚200nmのモリブデンおよびタングステンの合金膜(MoW)を成膜し、パターンニング法およびドライエッチング法を用いて加工した。
【0090】
次に、ゲート電極345上に、絶縁層346を形成した。絶縁層346として、プラズマCVD法により、膜厚150nmの窒化シリコン膜と膜厚100nmの酸化シリコン膜の積層膜を350℃で成膜した。
【0091】
次に、絶縁層343上に、ゲート電極345と重畳するように、酸化物半導体層352を形成した。酸化物半導体層352として、ACスパッタリング法により、膜厚75nmのIGZO膜を400℃で成膜し、パターニング法およびドライエッチング法を用いて加工した。
【0092】
次に、絶縁層346および酸化物半導体層352上に、絶縁層353としてプラズマCVD法により、膜厚200nmの酸化シリコン膜の積層膜を350℃で成膜した。
【0093】
次に、絶縁層353上に開口部を形成後、ソース・ドレイン電極347およびゲート線114に相当するゲート電極314を形成した。ソース・ドレイン電極347およびゲート線114として、スパッタリング法により、膜厚50nmのチタン(Ti)、膜厚200nmのアルミニウム(Al)、膜厚50nmのチタン(Ti)を積層成膜し、パターニング法およびドライエッチング法によりを一括で加工した。
【0094】
次に、ソース・ドレイン電極347上に、絶縁層354を形成した。絶縁層354として、プラズマCVD法により、膜厚300nmの酸化シリコン膜を350℃で成膜した。
【0095】
次に、絶縁層354上に開口部を形成後、信号線115に相当するソース・ドレイン電極315を形成した。ソース・ドレイン電極315として、スパッタリング法により、膜厚50nmのチタン(Ti)、膜厚200nmのアルミニウム(Al)、膜厚50nmのチタン(Ti)を積層成膜し、パターニング法およびドライエッチング法によりを一括で加工した。以上により、トランジスタ310およびトランジスタ311を作製した。
【0096】
本実施例では、作製された32個のトランジスタ310および84個のトランジスタ311のId-Vg特性を評価した。トランジスタ310のId-Vg特性の測定では、トランジスタ310のゲート電極345に印加する電圧(Vg)を-2Vから+8Vまで0.1Vステップで印加した。また、ソース・ドレイン電極347およびソース・ドレイン電極315-1のうちソース電極に印加する電圧(Vs)を0Vとし、ドレイン電極に印加する電圧(Vd)を0.1V及び10Vとした。トランジスタ310のId-Vg特性の測定は、室温で行った。トランジスタ311のId-Vg特性の測定では、トランジスタ311のゲート電極345に印加する電圧(Vg)を、-15Vから+15Vまで0.1Vステップで印加した。また、ソース・ドレイン電極315-2のうちソース電極に印加する電圧(Vs)を0Vとし、ドレイン電極に印加する電圧(Vd)を0.1V及び10Vとした。トランジスタ311のId-Vg特性の測定は、室温で行った。
【0097】
図14は、32個のトランジスタ310のId-Vg特性評価結果である。図15は、84個のトランジスタ311のId-Vg特性評価結果である。表1は、32個のトランジスタ310のId-Vg特性評価結果として、閾値電圧(Vth)をまとめたものである。表2は、84個のトランジスタ311のId-Vg特性評価結果として、閾値電圧(Vth)をまとめたものである。閾値電圧(Vth)とは、MOSFETにおけるドレイン電流を流すために必要なゲート電圧をいう。
【表1】
【表2】
【0098】
図14および表1に示すように、トランジスタ310の閾値電圧(Vth(V))の平均値(Average)、3σ、最大値(Mix)および最小値(Min)は、それぞれ0.81V、0.37V、1.08V、0.51Vであった。
【0099】
図15および表2に示すように、トランジスタ311の閾値電圧(Vth(V))の平均値(Average)、3σ、最大値(Mix)および最小値(Min)は、それぞれ0.70V、0.26V、0.88V、0.50Vであった。
【0100】
したがって、本実施例のトランジスタ310およびトランジスタ311の特性は、ほぼ同等の数値を示し、特性ばらつきも少なく、安定した特性を示すことが分かった。
【0101】
以上より、本発明の一実施形態のトランジスタを組み合わせ用いることにより、高精細の表示装置を提供することできる。
【0102】
なお、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例および修正例に想到し得るものであり、それら変更例および修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
10・・・表示装置,30・・・画素回路,100・・・基板,101・・・表示部,103・・・画素,104・・・周辺部,106・・・駆動回路,107・・・駆動回路,108・・・フレキシブルプリント基板,109・・・端子部,110・・・トランジスタ,111・・・トランジスタ,112・・・トランジスタ,113・・・ゲート線,114・・・ゲート線,115・・・信号線,116・・・ゲート線,117・・・共通電位線,119・・・容量配線,120・・・容量素子,141・・・絶縁層,142・・・半導体層,143・・・絶縁層,144・・・中間層,145・・・絶縁層,146・・・絶縁層,147・・・ソース・ドレイン電極,149・・・絶縁層,152・・・酸化物半導体層,153・・・絶縁層,154・・・絶縁層,160・・・平坦化層,162・・・酸化物半導体層,163・・・絶縁層,164・・・絶縁層,170・・・液晶素子,171・・・共通電極,172・・・絶縁層,173・・・導電層,175・・・画素電極,180・・・液晶層,190・・・平坦化層,192・・・遮光層,195・・・カラーフィルタ層,200・・・基板,310・・・トランジスタ,311・・・トランジスタ,314・・・ゲート電極,315・・・ソース・ドレイン電極,341・・・絶縁層,342・・・半導体層,343・・・絶縁層,345・・・ゲート電極,346・・・絶縁層,347・・・ソース・ドレイン電極,352・・・酸化物半導体層,353・・・絶縁層,354・・・絶縁層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15