(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】空気掘削具
(51)【国際特許分類】
E21B 7/18 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
E21B7/18
(21)【出願番号】P 2019071184
(22)【出願日】2019-04-03
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】松本 聡碩
(72)【発明者】
【氏名】岡本 道孝
(72)【発明者】
【氏名】上本 勝広
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 里衣
(72)【発明者】
【氏名】田口 翔大
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-214799(JP,A)
【文献】特開昭63-004130(JP,A)
【文献】特開2000-087389(JP,A)
【文献】特開2006-249829(JP,A)
【文献】特開2006-022547(JP,A)
【文献】登録実用新案第3157239(JP,U)
【文献】実開昭63-045862(JP,U)
【文献】特開平06-262597(JP,A)
【文献】特開2004-298694(JP,A)
【文献】米国特許第5339909(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00-19/24
E21B 44/00-44/10
E02F 5/00-7/10
E02F 1/00-3/26
E02F 3/46-3/60
E02F 3/627-3/815
E02F 3/88-3/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状とされた噴射ノズルの内部において圧縮空気を通すと共に前記圧縮空気を噴射して掘削を行う空気掘削具であって、
前記噴射ノズルの先端部に取り付けられる追加ノズル
と、
前記噴射ノズルに接続されており前記噴射ノズルから見て前記追加ノズルとは反対側に位置する管状部と、
を備え、
前記追加ノズルは、前記圧縮空気を外部に噴射する複数の噴射孔を有
し、
複数の前記噴射孔が千鳥状に分散して配置されており、
前記管状部の径方向外側に広がる笠部を有しない、
空気掘削具。
【請求項2】
前記追加ノズルは、前記追加ノズルの長手方向の端部に先端を有し、
前記先端は、筒状部と、前記筒状部の前記長手方向の端部に位置する湾曲部とを備え、
前記湾曲部には前記長手方向に貫通する前記噴射孔が形成されている、
請求項1に記載の空気掘削具。
【請求項3】
前記空気掘削具は、掘削された土砂を吸引するエジェクタと共に用いられ、
前記エジェクタは現場において地上に固定されている、
請求項1又は2に記載の空気掘削具。
【請求項4】
前記追加ノズルは、前記噴射ノズルに対して脱着可能とされている、
請求項1
~3のいずれか一項に記載の空気掘削具。
【請求項5】
前記噴射ノズルの先端部の内周面には雌螺子が形成されており、
前記追加ノズルは、前記雌螺子と螺合する雄螺子を外周に備え、
前記追加ノズルは、前記雄螺子が前記雌螺子に螺合することによって前記噴射ノズルに対して脱着可能とされている、
請求項1~
4のいずれか一項に記載の空気掘削具。
【請求項6】
前記追加ノズルは、前記噴射ノズルの反対側に位置する前記追加ノズルの先端面から窪む溝部を有する、
請求項1~
5のいずれか一項に記載の空気掘削具。
【請求項7】
前記追加ノズルは、複数の前記噴射孔を有し、
複数の前記噴射孔は、前記溝部の底面に開口している、
請求項
6に記載の空気掘削具。
【請求項8】
前記溝部は、前記先端面の一端から他端まで延びており、
複数の前記噴射孔は、前記溝部の底面において分散して配列されている、
請求項
6又は
7に記載の空気掘削具。
【請求項9】
前記追加ノズルは、複数の前記噴射孔を有し、
複数の前記噴射孔は、前記噴射ノズルの反対側に位置する前記追加ノズルの先端面において円形状に配列されている、
請求項1~
8のいずれか一項に記載の空気掘削具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気によって掘削を行う空気掘削具に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮空気を噴射することによって掘削を行う空気掘削具が知られている。例えば、特許文献1には、高圧エアを噴射することによって掘削を行う掘削装置が記載されている。掘削装置は、バルブ及び開閉レバーを介してエアホースに接続される外側スチールパイプ及び内側パイプを備える。エアホースはエアコンプレッサーに接続されており、開閉レバーを開くと、高圧エアがエアコンプレッサーから高圧エアホースを介して内側パイプに供給される。
【0003】
内側パイプ及び外側スチールパイプの高圧エアホースとの反対側には、外側スチールパイプに連続する先端部が取り付けられる。先端部には高圧エアが噴出する開口部が形成されている。高圧エアは、内側パイプの内部を通って開口部から外側スチールパイプの外部に噴出する。このように噴出する高圧エアを土砂等に当てることによって土砂等の掘削が行われる。外側スチールパイプの先端部の付近には、笠状の防塵カバーが調節ネジによって取り付けられている。
【0004】
特許文献2には、空気式土砂処理装置が記載されている。空気式土砂処理装置は先端に噴射ノズルが取り付けられた地中挿入管を備えており、地中挿入管は空気供給管を介してコンプレッサーに接続されている。地中挿入管と空気供給管との間には回動式のレバー付きのボールコックが介在し、ボールコックのレバーを回動させることによって地中挿入管の開閉がなされる。
【0005】
地中挿入管の空気供給管との反対側の端部には噴射ノズルが取り付けられており、噴射ノズルの雌螺子に地中供給管の雄螺子がねじ込まれることによって噴射ノズルが地中挿入管に取り付けられる。噴射ノズルは円筒状を成しており、噴射ノズルの中央には噴射ノズルの軸線方向に延びる縮径孔が形成されている。縮径孔の直径は地中挿入管の内径よりも小さくなっており、コンプレッサーからの空気は地中挿入管及び縮径孔を介して外部に噴射される。このように、コンプレッサーからの空気を縮径孔を介して地中に噴射することにより、土砂を掘削することが可能である。また、地中挿入管の噴射ノズルの付近には、地中挿入管の外周面に支持された支持部と、支持部から径方向外側且つ噴射ノズル側に拡径したテーパ筒状の笠部とが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実用新案登録第3157239号公報
【文献】特開2006-22547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した掘削装置及び空気式土砂処理装置のように、管状部材の先端側に笠部が設けられる場合、高圧エアの噴出による土砂等の飛散を笠部によって抑えることが可能となる。しかしながら、管状部材を持って掘削作業を行う作業者から見て笠部は管状部材を通る高圧エアの噴出孔の手前に設けられるため、笠部が邪魔となって噴出孔から噴出する高圧エアを視認することができない。従って、笠部が邪魔となって高圧エアをどこに当てているのかを視認することができないため、掘削作業の作業性がよくないという問題がある。
【0008】
一方、管状部材から笠部を外すと土砂等の飛散を抑えることができないという問題がある。具体的には、前述したように、空気が通る孔は、管状部材の中央に管状部材の軸線方向に延びるように形成されている。すなわち、前述した内側パイプ及び噴射ノズルでは、中央に1つの孔が形成されており、中央に形成された1つの孔から空気が集中して高圧となって噴射される。従って、空気を噴射すると土砂等が広範囲に飛散するので、舞い上がる土砂等によって作業者の視界を妨げたり、作業者が土砂等を吸引したりする懸念がある。更に、広範囲に飛散した土砂等が工事現場の外部に飛散することにより、工事現場の周囲の環境を損なう懸念もある。
【0009】
本発明は、土砂等の飛散を抑えると共に、作業性及び安全性を高めることができる空気掘削具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面に係る空気掘削具は、管状とされた噴射ノズルの内部において圧縮空気を通すと共に圧縮空気を噴射して掘削を行う空気掘削具であって、噴射ノズルの先端部に取り付けられる追加ノズルと、噴射ノズルに接続されており噴射ノズルから追加ノズルとは反対側に位置する管状部と、を備え、追加ノズルは、圧縮空気を外部に噴射する複数の噴射孔を有し、複数の噴射孔が千鳥状に分散して配置されており、管状部の径方向外側に広がる笠部を有しない。
追加ノズルは、追加ノズルの長手方向の端部に先端を有し、先端は、筒状部と、筒状部の長手方向の端部に位置する湾曲部とを備え、湾曲部には長手方向に貫通する噴射孔が形成されている。
空気掘削具は、掘削された土砂を吸引するエジェクタと共に用いられ、エジェクタは現場において地上に固定されている。
【0011】
この空気掘削具は、管状とされた噴射ノズルを備え、噴射ノズルの先端部に更に追加ノズルが取り付けられる。この追加ノズルは、圧縮空気を外部に噴射する複数の噴射孔を有する。よって、噴射ノズルの内部を通る圧縮空気が複数の噴射孔に分散されることにより、1つの噴射孔に圧縮空気が集中することを抑制することができる。従って、複数の噴射孔のそれぞれから分散された圧縮空気が噴射されるので、圧縮空気の噴射に伴う土砂等の飛散を低減させることができる。その結果、土砂等が広範囲に飛散することを抑制することができるので、土砂等が作業者の視界を妨げたり作業者が土砂等を吸引したりする事態を解消することが可能となる。また、土砂等の広範囲にわたる飛散を抑制することができるので、工事現場の外部への土砂等の飛散を抑制することができ、工事現場の周囲の環境を損なう可能性を抑えることができる。更に、土砂等の広範囲にわたる飛散が抑制されるので、前述した笠部を不要とすることができる。従って、笠部が邪魔とならないので、笠部が視界を妨げて作業の邪魔になる事態を回避することができ、噴射孔からの圧縮空気を視認しながら作業を行うことができる。その結果、掘削作業の作業性及び安全性を高めることができる。
【0012】
本発明の別の側面に係る空気掘削具は、管状とされた噴射ノズルの内部において圧縮空気を通すと共に圧縮空気を噴射して掘削を行う空気掘削具であって、噴射ノズルの先端部に取り付けられる追加ノズルを備え、追加ノズルは、圧縮空気を外部に噴射すると共に一方向に長く延びる扁平状の噴射孔を有する。
【0013】
この空気掘削具では、噴射ノズルの先端部に更に追加ノズルが取り付けられ、追加ノズルは、圧縮空気を外部に噴射すると共に一方向に長く延びる扁平状の噴射孔を有する。よって、噴射ノズルの内部を通る圧縮空気は一方向に長く延びる扁平状の噴射孔から外部に噴射され、圧縮空気が通る噴射孔の断面積を広くすることができるので、噴射孔への圧縮空気の集中を抑制することができる。従って、一方向に長く延びる扁平状の噴射孔から圧縮空気が噴射されるので、圧縮空気の噴射に伴う土砂等の飛散を抑制することができる。その結果、前述の一側面に係る空気掘削具と同様、土砂等の広範囲への飛散を抑制することができ、土砂等が作業者の視界を妨げたり作業者が土砂等を吸引したりすることを抑制することができると共に、工事現場の周囲の環境を損なう可能性を抑えることができる。そして、土砂等の広範囲にわたる飛散を抑制できるので、前述した笠部を不要とすることができる。従って、笠部が作業者の視界を妨げることを回避することができ、作業者は噴射孔からの圧縮空気を視認しながら作業を行うことができるので、掘削作業の作業性及び安全性を高めることができる。
【0014】
また、追加ノズルは、噴射ノズルに対して脱着可能とされていてもよい。この場合、追加ノズルが詰まったとき等に追加ノズルを外して追加ノズルを洗浄することができる。また、追加ノズルを容易に交換することができるので、互いに異なる種類の追加ノズルが用意されている場合に他の種類の追加ノズルへの交換を簡単に行うことができる。
【0015】
また、噴射ノズルの先端部の内周面には雌螺子が形成されており、追加ノズルは、雌螺子と螺合する雄螺子を外周に備え、追加ノズルは、雄螺子が雌螺子に螺合することによって噴射ノズルに対して脱着可能とされていてもよい。この場合、噴射ノズルの内周面の雌螺子に追加ノズルの外周面の雄螺子が螺合するので、噴射ノズル及び追加ノズルの径の肥大化を抑制することができる。また、噴射ノズルの雌螺子に追加ノズルの雄螺子を螺合して追加ノズルの取り付けを行うことができるので、噴射ノズルへの追加ノズルの脱着を容易に行うことができる。
【0016】
また、追加ノズルは、噴射ノズルの反対側に位置する追加ノズルの先端面から窪む溝部を有してもよい。この場合、追加ノズルの先端面を土砂等に押し付けたときに、溝部と土砂等との間に空隙が形成される。従って、追加ノズルから土砂等に噴射される圧縮空気は当該空隙を通って分散して放出されるので、噴射孔から噴射される圧縮空気の圧力を分散することができる。従って、圧縮空気の噴射に伴う土砂等の飛散をより確実に抑制することができる。
【0017】
また、追加ノズルは、複数の噴射孔を有し、複数の噴射孔は、溝部の底面に開口していてもよい。この場合、追加ノズルの先端面を土砂等に押し付けたときに、溝部の底面に開口している複数の噴射孔のそれぞれと土砂等との間に空隙が形成される。よって、追加ノズルから土砂等に噴射される圧縮空気は当該空隙を介して土砂等に噴射されるので、土砂等に噴射される圧縮空気の圧力を抑えることができる。従って、土砂等の飛散を更に確実に抑制することができる。
【0018】
また、溝部は、先端面の一端から他端まで延びており、複数の噴射孔は、溝部の底面において分散して配列されていてもよい。この場合、溝部が先端面の一端から他端まで延びているので、噴射孔からの圧縮空気が溝部を通って先端面の一端及び他端に開放されることにより、噴射される圧縮空気の集中を抑制することができる。また、溝部の底面に複数の噴射孔が分散して配列されているので、複数の噴射孔のそれぞれから圧縮空気を分散して噴射することができる。従って、圧縮空気の噴射に伴う土砂等の飛散を一層確実に抑制することができる。
【0019】
また、追加ノズルは、複数の噴射孔を有し、複数の噴射孔は、噴射ノズルの反対側に位置する追加ノズルの先端面において円形状に配列されていてもよい。この場合、円形状に配列された複数の噴射孔のそれぞれから圧縮空気が噴射されるので、各噴射孔から分散された圧縮空気を噴射することができる。その結果、土砂等の飛散を更に確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、土砂等の飛散を抑えると共に、作業性及び安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係る空気掘削具が用いられる掘削作業が行われる工事現場の例を示す図である。
【
図2】
図1の空気掘削具のパイプ部を示す側面図である。
【
図3】
図1の空気掘削具の例示的な追加ノズルの側面図である。
【
図4】
図3の追加ノズルの噴射孔の例示的な断面図である。
【
図5】
図3の追加ノズルの噴射孔の例示的な正面図である。
【
図6】第2実施形態に係る空気掘削具の追加ノズルを示す側面図である。
【
図7】
図6の追加ノズルの噴射孔の例示的な正面図である。
【
図8】第3実施形態に係る空気掘削具の追加ノズルを示す側面図である。
【
図9】
図9の追加ノズルの噴射孔の例示的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、図面を参照しながら本発明に係る空気掘削具の実施形態について詳細に説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率及び角度等は図面に記載のものに限定されない。
【0023】
本明細書において、「噴射ノズル」とは、内部に圧縮空気を通す管状の部材を示している。「圧縮空気」は、圧縮された空気を示しており、例えば、土砂等を掘削するためにコンプレッサ等によって圧縮された空気を含んでいる。「掘削」は、土砂等を掘ること、硬い土砂等をほぐして柔らかくすること、及び岩盤又はコンクリート躯体の表面等にこびりついた泥を削ること等を含んでいる。「追加ノズル」は、噴射ノズルに追加で取り付けられるノズルを示しており、例えば、既存の噴射ノズルの先端部に取り付けられる管状のノズルを含んでいる。
【0024】
まず、本実施形態に係る空気掘削具1が用いられる工事現場の例である現場Aについて説明する。
図1に模式的に示されるように、例えば、空気掘削具1は、街路樹Gの植え替えのために街路樹Gの下部G1の土砂Bを掘削する。空気掘削具1は、例えば重機が入らない狭隘な現場Aで用いられる。すなわち、空気掘削具1は狭隘な現場Aにおいて土砂Bを掘削することが可能な器具であり、狭い現場Aであっても土砂Bの掘削を効果的に行うことが可能である。
【0025】
一例として、空気掘削具1は、掘削された土砂Bを吸引するエジェクタEと共に用いられる。例えば、エジェクタEは、現場Aにおいて地上A1に固定されており、エジェクタEには第1の搬送管P1及び第2の搬送管P2が接続されている。なお、エジェクタEは、地上A1に固定されていなくてもよく、作業者がエジェクタEを持ちエジェクタEを土砂Bに近づけて土砂Bを吸引してもよい。第1の搬送管P1は、例えば、土砂Bを吸入する吸入管であり、第2の搬送管P2は吸入された土砂Bを搬送する搬送用ホースである。一例として、第1の搬送管P1は硬質の管であり、第2の搬送管P2は可撓性を有するホースである。
【0026】
例えば、第1の搬送管P1は吸引された土砂Bを搬送し、土砂Bの搬送経路における第1の搬送管P1の下流側にエジェクタEが設けられる。エジェクタEは土砂Bを搬送する鋼管E1を備えており、土砂Bの搬送経路における鋼管E1の下流側に第2の搬送管P2が設けられる。第2の搬送管P2の下流側には、例えば、第2の搬送管P2から排出された土砂Bが蓄積されており、蓄積された土砂Bは所定の搬送先に搬送される。
【0027】
エジェクタEは、例えば、第1の搬送管P1及び第2の搬送管P2が接続される鋼管E1と、コンプレッサCからの圧縮空気Kが導入される導入管E2と、導入管E2から2本に分岐する分岐管E3とを備える。導入管E2の内部にはコンプレッサCから圧縮空気Kが送り込まれ、導入管E2の内部に送り込まれた圧縮空気Kは2本の分岐管E3のそれぞれに流れる。各分岐管E3を流れる圧縮空気Kは鋼管E1において合流して第2の搬送管P2に向かって流れる。
【0028】
コンプレッサCの圧縮空気KはエジェクタEにおいて加速され、土砂Bの搬送方向への空気流を生じさせる。具体的には、エジェクタEの内部に圧縮空気Kが流れることによってエジェクタEの上流側に位置する第1の搬送管P1の内部に負圧が生じ、この負圧によって第1の搬送管P1の先端から第1の搬送管P1の内部に土砂Bが吸入される。そして、第1の搬送管P1、鋼管E1及び第2の搬送管P2の内部において土砂Bが搬送される。
【0029】
例えば、エジェクタEに圧縮空気Kを供給するコンプレッサCは空気掘削具1に圧縮空気Kを供給し、空気掘削具1は供給された圧縮空気Kを土砂Bに噴射して土砂Bを掘削する。本実施形態に係る空気掘削具1は、例えば、コンプレッサCから延びると共にコンプレッサCからの圧縮空気Kが導入される導入管2と、圧縮空気Kの経路における導入管2の下流側に設けられるパイプ部3と、パイプ部3の導入管2との反対側の端部に取り付けられた追加ノズル10とを備える。一例として、導入管2はエアホースである。
【0030】
図2は、空気掘削具1の例示的なパイプ部3を示す側面図である。一例として、パイプ部3は圧縮空気Kを噴射して掘削を行うエアスコップである。例えば、パイプ部3は、長手方向D1に長く延びると共に、長手方向D1に交差する交差方向D2に一定量延び出している。一例として、パイプ部3の長手方向D1の長さは1000mm以上且つ1200mm以下であり、パイプ部3の交差方向D2の長さは100mm以上且つ200mm以下である。但し、これらの値は適宜変更可能である。
【0031】
パイプ部3は、例えば、導入管2から圧縮空気Kを受け入れる空気受け入れ部4と、空気受け入れ部4の導入管2との反対側の端部に設けられる噴射ノズル5と、空気受け入れ部4及び噴射ノズル5を互いに接続する持ち手6とを備える。一例として、空気受け入れ部4は、導入管2が取り付けられる取付部4bと、取付部4bから延び出すホース4cと、持ち手6に接続されると共にパイプ部3の圧縮空気Kの供給路を開閉するバルブ部4dとを備える。
【0032】
例えば、空気受け入れ部4の取付部4bの外周面には雄螺子が形成されており、この雄螺子に導入管2とのジョイント部の雌螺子が螺合することによって空気受け入れ部4に導入管2が接続される。ホース4cは、例えば、可撓性材料によって構成されており、取付部4bから延びると共に取付部4bに対して90°曲げられている。バルブ部4dは、例えば、ボールコックであり、バルブ部4dの把持部4fが回動することによって圧縮空気Kの供給路が開閉される。
【0033】
持ち手6は、例えば、バルブ部4dから噴射ノズル5まで直線状に延びている。一例として、持ち手6は、バルブ部4dに接続される第1の管状部6bと、噴射ノズル5に接続される第2の管状部6cと、第1の管状部6b及び第2の管状部6cを互いに接続する第3の管状部6dとを備える。一例として、第1の管状部6b及び第2の管状部6cは共に金属製であり、第3の管状部6dは可撓性材料によって構成されている。なお、従来の空気掘削具では、第2の管状部6cの付近に土砂Bの飛散を抑制すると共に第2の管状部6cの径方向外側に広がる笠部が設けられていた。しかしながら、本実施形態に係る空気掘削具1は、径方向外側に広がる笠部を有しない。
【0034】
噴射ノズル5は、第2の管状部6cの先端に固定された管状部分であり、噴射ノズル5の内部には外部に噴射する圧縮空気Kが供給される。噴射ノズル5を含むパイプ部3は、例えば、既存のエアスコップであり、噴射ノズル5の先端部5bを土砂Bに当てて土砂Bを掘削することも可能である。
【0035】
本実施形態に係る空気掘削具1は、例えば、
図3に示されるように、噴射ノズル5に取り付けられる追加ノズル10を備える。
図3は、例示的な追加ノズル10を示す側面図である。追加ノズル10は、例えば、噴射ノズル5に対して脱着可能とされている。噴射ノズル5の先端部5bの内周面には雌螺子が形成されており、追加ノズル10は、当該雌螺子と螺合する雄螺子11を外周に備える。
【0036】
追加ノズル10は、雄螺子11が当該雌螺子に螺合することによって噴射ノズル5に脱着可能とされている。追加ノズル10は、例えば、噴射ノズル5の内周面に形成された雌螺子に螺合すると共に追加ノズル10の長手方向X1の端部に位置する雄螺子11と、雄螺子11の反対側の端部に位置する先端部12と、雄螺子11及び先端部12の間に位置する第1のナット部13、第2のナット部14及び第3のナット部15とを備える。一例として、追加ノズル10の長手方向X1の長さL1は80mm以上且つ120mm以下である。
【0037】
追加ノズル10は雄螺子11を外周に備えており、例えば、雄螺子11の直径は追加ノズル10の雄螺子11以外の部分(先端部12、第1のナット部13、第2のナット部14及び第3のナット部15)の直径よりも小さい。第1のナット部13は、雄螺子11の根元に設けられており、雄螺子11から拡径している。一例として、第1のナット部13と第2のナット部14との間には第1の縮径部16が形成されており、第2のナット部14と第3のナット部15との間には第2の縮径部17が形成されている。例えば、雄螺子11、第1のナット部13、第1の縮径部16、第2のナット部14、第2の縮径部17及び第3のナット部15は、この順で長手方向X1に沿って並んでいる。
【0038】
先端部12は、例えば、第3のナット部15の第2の縮径部17との反対側に設けられる。先端部12は、追加ノズル10の他の部位からネジによって脱着可能とされていてもよい。一例として、先端部12は、第3のナット部15から縮径する縮径部12bと、縮径部12bに対して拡径する第4のナット部12cと、第4のナット部12cよりも追加ノズル10の長手方向X1の端部側に位置する先端12dとを有する。先端12dは、第4のナット部12cから縮径された筒状の部位を示している。
【0039】
図4は、追加ノズル10の先端12dの例示的な縦断面を示す図である。
図5は、先端12dを長手方向X1に沿って見た正面図である。
図4及び
図5に示されるように、先端12dは、例えば、筒状部12fと、筒状部12fの長手方向X1の端部に位置する湾曲部12gとを備える。一例として、筒状部12fは円筒状を成しており、筒状部12fの内部には圧縮空気Kが通される。
【0040】
例えば、湾曲部12gは、筒状部12fの長手方向X1の端部から長手方向X1の外側に湾曲する板状の部位である。一例として、湾曲部12gは長手方向X1に突出する球状とされている。湾曲部12gには長手方向X1に貫通する複数の噴射孔12hが形成されており、噴射孔12hから追加ノズル10の外部に圧縮空気Kが噴射される。湾曲部12gは、長手方向X1の外側を向く湾曲した先端面12jと、先端面12jから長手方向X1に窪む溝部12kとを有する。
【0041】
長手方向X1から見た先端面12jの形状は、例えば、円形状とされており、先端面12jは中心に向かうに従って球面状に突出している。溝部12kは、例えば、長手方向X1に交差する方向X2に長く延びており、先端面12jの方向X2の一端から他端まで延びている。一例として溝部12kは方向X2に沿って直線状に延びている。溝部12kは、先端面12jから延びると共に方向X3に沿って並ぶ一対の内側面12mと、各内側面12mの先端面12jとの反対側に位置する底面12pとを有する。なお、方向X3は、長手方向X1及び方向X2の双方に交差する方向を示しており、例えば長手方向X1及び方向X2のそれぞれと直交する方向である。
【0042】
底面12pは、例えば、方向X2の中央を含む領域に設けられる頂面12qと、頂面12qの方向X2の両端側のそれぞれに位置する一対の傾斜面12rとを含む。一例として、頂面12q及び各傾斜面12rは平坦状とされており、各傾斜面12rは頂面12qから方向X2の両端側に向かうに従って追加ノズル10の長手方向X1の内側(溝部12kが深くなる方向)に傾斜している。これにより、圧縮空気Kを方向X2の両端側に逃がしやすくすることが可能である。
【0043】
複数の噴射孔12hは、底面12pにおいて分散して配置されている。ここで、「複数の噴射孔が分散して配置されている」とは、追加ノズルの先端に複数の噴射孔が満遍なく配置された状態を示しており、例えば、複数の噴射孔が追加ノズルの先端の中心に対して互いに対称となるように配置されている状態、複数の噴射孔が格子状に分散して配置されている状態、又は複数の噴射孔が同心円状に分散して配置されている状態が含まれる。
【0044】
本実施形態では、複数の噴射孔12hが千鳥状に分散して配置されている。例えば、底面12pには、方向X2に沿って配置される複数の噴射孔12hの組Mが複数設けられており、組Mの数は一例として3である。3つの組Mは方向X3に沿って配列されており、3つの組Mのうち方向X3の中央に位置する組Mは、7個の噴射孔12hを含む。また、3つの組Mのうち方向X3の両側のそれぞれに位置する組Mは、6個の噴射孔12hを含む。
【0045】
方向X3の中央に位置する組Mの噴射孔12hのうち1つの噴射孔12hは、例えば、先端面12jの中心に設けられる。一例として、頂面12qに1つの噴射孔12hが形成されると共に、当該1つの噴射孔12h以外の噴射孔12hは全て傾斜面12rに形成されている。例えば、長手方向X1から見たときの先端面12jの直径L2は10mm以上且つ30mm以下であり、溝部12kの方向X3の幅L3は5mm以上且つ10mm以下であり、各噴射孔12hの直径L4は0.5mm以上且つ2.0mm以下である。
【0046】
以上、追加ノズル10の先端部12について詳細に説明したが、先端部12の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は前述した例に限定されず適宜変更可能である。例えば、噴射孔12hの形状、大きさ、数及び配置態様も
図5の例に限られず適宜変更可能である。以下では、本実施形態に係る追加ノズル10を備えた空気掘削具1の作用効果について詳細に説明する。
【0047】
図2~
図5に示されるように、空気掘削具1は、管状とされた噴射ノズル5を備え、噴射ノズル5の先端部5bに更に追加ノズル10が取り付けられる。追加ノズル10は、圧縮空気Kを外部に噴射する複数の噴射孔12hを有する。よって、噴射ノズル5の内部を通る圧縮空気Kが複数の噴射孔12hに分散されることにより、1つの噴射孔に圧縮空気が集中することを抑制することができる。
【0048】
従って、複数の噴射孔12hのそれぞれから分散された圧縮空気Kが噴射されるので、圧縮空気Kの噴射に伴う土砂B等の飛散を低減させることができる。その結果、土砂B等が広範囲に飛散することを抑制することができるので、土砂B等が作業者の視界を妨げたり作業者が土砂B等を吸引したりする事態を解消することが可能となる。また、土砂B等の広範囲にわたる飛散を抑制することができるので、現場Aの外部への土砂等の飛散を抑制することができ、現場Aの周囲の環境を損なう可能性を抑えることができる。そして、各噴射孔12hから圧縮空気Kを分散して噴射する場合には、噴射に伴う騒音を低減させることができる。
【0049】
更に、土砂B等の広範囲にわたる飛散が抑制されるので、土砂B等の飛散を抑制する笠部を不要とすることができる。従って、笠部が邪魔とならないので、笠部が視界を妨げて作業の邪魔になる事態を回避することができ、噴射孔12hからの圧縮空気Kを視認しながら作業を行うことができる。その結果、掘削作業の作業性及び安全性を高めることができる。
【0050】
また、噴射ノズル5の内部を通る圧縮空気Kが複数の噴射孔12hに分散されることにより、噴射される圧縮空気Kの圧力を低減させることができるので、圧縮空気Kの噴射に伴う空気掘削具1(パイプ部3)の暴れを抑制することができる。従って、パイプ部3の長さを短くすることができ、パイプ部3を軽量化させることができると共に、空気掘削具1の取り扱いを容易にすることができる。
【0051】
また、追加ノズル10は、噴射ノズル5に対して脱着可能とされている。よって、追加ノズル10が詰まったとき等に追加ノズル10を外して追加ノズル10を洗浄することができる。また、追加ノズル10を容易に交換することができるので、互いに異なる種類の追加ノズル10が用意されている場合に他の種類の追加ノズル10への交換を簡単に行うことができる。
【0052】
また、噴射ノズル5の先端部5bの内周面には雌螺子が形成されており、追加ノズル10は、当該雌螺子と螺合する雄螺子11を外周に備え、追加ノズル10は、雄螺子11が当該雌螺子に螺合することによって噴射ノズル5に脱着可能とされている。よって、噴射ノズル5の内周面の雌螺子に追加ノズル10の外周面の雄螺子11が螺合するので、噴射ノズル5及び追加ノズル10の径の肥大化を抑制することができる。また、噴射ノズル5の雌螺子に追加ノズル10の雄螺子11を螺合して追加ノズル10の取り付けを行うことができるので、噴射ノズル5への追加ノズル10の脱着を容易に行うことができる。
【0053】
また、追加ノズル10は、噴射ノズル5の反対側に位置する追加ノズル10の先端面12jから窪む溝部12kを有してもよい。この場合、追加ノズル10の先端面12jを土砂B等に押し付けたときに、溝部12kと土砂B等との間に空隙が形成される。従って、追加ノズル10から土砂B等に噴射される圧縮空気Kは当該空隙を通って分散して放出されるので、噴射孔12hから噴射される圧縮空気Kの圧力を分散することができる。よって、圧縮空気Kの噴射に伴う土砂B等の飛散をより確実に抑制することができる。
【0054】
また、追加ノズル10は、複数の噴射孔12hを有し、複数の噴射孔12hは、溝部12kの底面12pに開口していてもよい。この場合、追加ノズル10の先端面12jを土砂B等に押し付けたときに、溝部12kの底面12pに開口している複数の噴射孔12hのそれぞれと土砂B等との間に空隙が形成される。よって、追加ノズル10から土砂B等に噴射される圧縮空気Kは当該空隙を介して土砂B等に噴射されるので、土砂B等に噴射される圧縮空気Kの圧力を抑えることができる。従って、土砂Bの飛散を更に確実に抑制することができる。
【0055】
また、溝部12kは、先端面12jの一端から他端まで延びており、複数の噴射孔12hは、溝部12kの底面12pにおいて分散して配列されていてもよい。この場合、溝部12kが先端面12jの一端から他端まで延びているので、噴射孔12hからの圧縮空気Kが溝部12kを通って先端面12jの一端及び他端に開放されることにより、噴射される圧縮空気Kの集中を抑制することができる。また、溝部12kの底面12pに複数の噴射孔12hが分散して配列されているので、複数の噴射孔12hのそれぞれから圧縮空気Kを分散して噴射することができる。従って、圧縮空気Kの噴射に伴う土砂B等の飛散を一層確実に抑制することができる。
【0056】
更に、
図1に示されるように、追加ノズル10を備えた空気掘削具1は、土砂Bを吸引及び搬送するエジェクタEと共に用いられる。従って、空気掘削具1によって土砂B等の広範囲にわたる飛散を抑制しながら土砂Bの掘削を行い、掘削された土砂BがエジェクタEによって吸引及び搬送される。従って、空気掘削具1によって効率よく掘削した土砂BをエジェクタEによって速やかに吸引及び搬送することができるので、土砂Bの掘削作業をスムーズに行うことができる。
【0057】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る追加ノズル20について
図6及び
図7を参照しながら説明する。
図6及び
図7に示されるように、追加ノズル20は、例えば、噴射ノズル5の内周面に形成された雌螺子に螺合すると共に追加ノズル20の長手方向X1の端部に位置する雄螺子21と、雄螺子21の反対側の端部に位置する先端部22と、雄螺子21及び先端部22の間に位置する拡径部23とを備える。一例として、追加ノズル20の長手方向X1の長さL5は、20mm以上且つ40mm以下である。以降の説明では、重複を回避するため、第1実施形態と重複する説明を適宜省略する。
【0058】
拡径部23は、雄螺子21の根元に設けられており、雄螺子21から拡径している。長手方向X1から見た拡径部23の形状は、例えば、六角形状とされている。先端部22は、拡径部23の雄螺子21との反対側に設けられる。先端部22は、追加ノズル20の他の部位からネジによって脱着可能とされていてもよい。一例として、先端部22は、拡径部23から縮径する筒状部22bと、筒状部22bの拡径部23との反対側に位置するテーパ部22cとを有する。
【0059】
筒状部22bは、例えば、円筒状とされている。テーパ部22cは、筒状部22bの長手方向X1の端部から徐々に縮径するテーパ面22dと、追加ノズル20の長手方向X1の一端に位置する先端面22fとを有する。長手方向X1から見た先端面22fの形状は、例えば、円環状とされており、円環状の先端面22fの内側に長手方向X1に窪む円形状の凹部22gが形成されている。
【0060】
凹部22gの径方向外側には凹部22gから放射状に延びる複数の溝部22hが形成されており、溝部22hによって先端面22fが複数に分断されている。分断された先端面22fのそれぞれには、圧縮空気Kを追加ノズル20の外部に噴出する噴射孔22jが形成されている。例えば、溝部22h及び噴射孔22jのそれぞれは、先端面22fの周方向に沿って交互に配置されている。
【0061】
一例として、溝部22h及び噴射孔22jは、共に先端面22fの周方向に沿って等間隔に配置されている。例えば、溝部22hの数、及び噴射孔22jの数は8であり、溝部22h及び噴射孔22jは共に45°の位相角度をもって配置されている。また、各溝部22hは、凹部22gから径方向外側に延びると共に追加ノズル20の長手方向X1の中央側に向かって延びておりテーパ面22d及び筒状部22bまで延びている。一例として、先端面22fの直径L6は10mm以上且つ20mm以下であり、各噴射孔22jの直径L7は0.5mm以上且つ2.0mm以下である。
【0062】
以上、第2実施形態に係る追加ノズル20は、圧縮空気Kを外部に噴射する複数の噴射孔22jを有する。よって、噴射ノズル5の内部を通る圧縮空気Kが複数の噴射孔22jに分散されることにより、土砂B等の飛散を抑制することができるので、第1実施形態と同様の効果が得られる。更に、第2実施形態では、先端面22fから窪む複数の溝部22hが放射状に形成されており、各溝部22hは先端面22fから長手方向X1に沿って延びている。従って、圧縮空気Kを各溝部22hに効率よく分散できるので、土砂B等の飛散をより確実に抑制することができる。
【0063】
また、追加ノズル20は、複数の噴射孔22jを有し、複数の噴射孔22jは、噴射ノズル5の反対側に位置する追加ノズル20の先端面22fにおいて円形状に配列されている。よって、円形状に配列された複数の噴射孔22jのそれぞれから圧縮空気Kが噴射されるので、各噴射孔22jから分散された圧縮空気Kを噴射することができる。その結果、土砂B等の飛散を更に確実に抑制することができる。
【0064】
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に係る追加ノズル30について
図8及び
図9を参照しながら説明する。
図8及び
図9に示されるように、追加ノズル30は、例えば、噴射ノズル5の内周面に形成された雌螺子に螺合すると共に追加ノズル30の長手方向X1の端部に位置する雄螺子31と、雄螺子31の反対側の端部に位置する先端部32と、雄螺子31及び先端部32の間に位置する第1のナット部13、拡径部33及び第3のナット部15とを備える。一例として、追加ノズル30の長手方向X1の長さL8は80mm以上且つ120mm以下である。
【0065】
一例として、拡径部33は、雄螺子31側に位置する第1の筒状部33bと、先端部32側に位置する第2の筒状部33cと、第1の筒状部33bから第2の筒状部33cまで延びるテーパ部33dとを有する。第2の筒状部33cの直径は第1の筒状部33bの直径よりも大きく、テーパ部33dの直径は第1の筒状部33bから第2の筒状部33cに向かうに従って徐々に大きくなっている。
【0066】
先端部32は、例えば、第3のナット部15の第2の縮径部17との反対側に設けられる。先端部32は、追加ノズル30の他の部位に対してネジによって脱着可能とされていてもよい。一例として、先端部32は、第4のナット部12cと、第4のナット部12cよりも追加ノズル30の長手方向X1の端部側に位置する先端32dとを有する。先端32dは、第4のナット部12cに対して小径とされると共に長手方向X1に突出する部位を示している。
【0067】
先端32dは、例えば、長手方向X1に湾曲して突出する先端面32gを有する。一例として、先端面32gは半球状に突出している。先端面32gには長手方向X1に貫通する噴射孔32hが形成されており、噴射孔32hから追加ノズル30の外部に圧縮空気Kが噴射される。長手方向X1から見た先端面32gの形状は、例えば、円形状とされており、先端面32gは中心に向かうに従って球面状に突出している。
【0068】
噴射孔32hは、先端面32gにおいて方向X2に長く延びる扁平状とされている。例えば、噴射孔32hは、先端面32gにおいて方向X2に直線状に延びており、先端面32gの方向X2の一端から他端まで延びていてもよい。換言すれば、噴射孔32hは、方向X2に延びる長辺、及び方向X3に延びる短辺を有する長方形状とされている。一例として、噴射孔32hの方向X2の長さL9は10mm以上且つ20mm以下であり、噴射孔32hの方向X3の幅L10は0.5mm以上且つ2.0mm以下である。
【0069】
以上、第3実施形態に係る追加ノズル30は、圧縮空気Kを外部に噴射すると共に方向X2に長く延びる扁平状の噴射孔32hを有する。よって、噴射ノズル5の内部を通る圧縮空気Kは方向X2に長く延びる扁平状の噴射孔32hから外部に噴射され、圧縮空気Kが通る噴射孔32hの断面積を広くすることができるので、噴射孔への圧縮空気の集中を抑制することができる。
【0070】
従って、方向X2に長く延びる扁平状の噴射孔32hから圧縮空気Kが噴射されるので、圧縮空気Kの噴射に伴う土砂等の飛散を抑制することができる。その結果、前述の空気掘削具1等と同様、土砂B等の広範囲への飛散を抑制することができ、土砂B等が作業者の視界を妨げたり作業者が土砂B等を吸引したりすることを抑制することができると共に、現場Aの周囲の環境を損なう可能性を抑えることができる。
【0071】
そして、土砂B等の広範囲にわたる飛散を抑制できるので、前述した笠部を不要とすることができる。従って、笠部が作業者の視界を妨げることを回避することができ、作業者は噴射孔32hからの圧縮空気Kを視認しながら作業を行うことができるので、掘削作業の作業性及び安全性を高めることができる。よって、前述した各実施形態と同様の効果が得られる。
【0072】
以上、本発明に係る空気掘削具の実施形態について説明した。しかしながら、本発明に係る空気掘削具は、前述した各実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、空気掘削具の各部の構成は、各請求項の要旨を変更しない範囲において種々の変形が可能である。
【0073】
例えば、前述の実施形態では、円形状の噴射孔12hを有する追加ノズル10、及び扁平状の噴射孔32hを有する追加ノズル30、について説明した。しかしながら、追加ノズルの噴射孔の形状は、例えば、楕円を含む長円状、多角形状、波形形状又はX字状であってもよく、適宜変更可能である。更に、噴射孔の大きさ、数及び配置態様についても前述した各実施形態に限られず適宜変更可能である。
【0074】
例えば、前述した実施形態では、雄螺子11の雌螺子に対する螺合によって噴射ノズル5に脱着可能とされた追加ノズル10について説明した。しかしながら、噴射ノズルへの追加ノズルの脱着手段は、雄螺子及び雌螺子以外のものであってもよい。例えば、噴射ノズル及び追加ノズルの一方にラッチ等の係合部が設けられると共に他方に被係合部が設けられ、被係合部に係合部が係合することによって追加ノズルが噴射ノズルに脱着可能とされていてもよい。更に、追加ノズルは噴射ノズルに対して脱着可能とされていなくてもよい。
【0075】
また、前述した実施形態では、噴射ノズル5がパイプ部3に設けられており、パイプ部3が既存のエアスコップである例について説明した。しかしながら、パイプ部は既存のエアスコップに限られず、パイプ部の各部の形状、大きさ、材料、数及び配置態様は適宜変更可能である。更に、噴射ノズルはパイプ部3以外のものに接続されていてもよく、噴射ノズルが接続される対象のものは特に限定されない。
【0076】
また、前述した実施形態では、街路樹Gの下部G1の土砂Bを掘削する空気掘削具1について説明した。しかしながら、本発明に係る空気掘削具は、街路樹の下部の土砂以外の箇所を掘削するものであってもよく、圧縮空気によって種々のものを掘削することが可能である。例えば、硬い地盤をほぐして柔らかくする空気掘削具であってもよいし、岩盤又はコンクリート躯体の表面にこびりついた泥等の洗浄を行う空気掘削具であってもよく、空気掘削具の用途、及び空気掘削具が用いられる現場の種類は適宜変更可能である。
【0077】
(実施例)
続いて、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されない。この実施例の実験では、
図5に示される複数の噴射孔12hが千鳥状に配列された多孔扇形の実施例1に係る追加ノズル、
図7に示される円形状の複数の噴射孔22jが形成された円形型の実施例2に係る追加ノズル、
図9に示される扁平状の噴射孔32hが形成された実施例3に係る追加ノズル、及び追加ノズルを有しない比較例、のそれぞれを用いて土砂Bを掘削した。比較例では、中央に円形の噴射孔が形成された噴射ノズル5から圧縮空気Kを噴射し、追加ノズルを設けない態様とした。
【0078】
図10に示されるように、多孔扇形の実施例1に係る追加ノズル、円形型の噴射孔の実施例2に係る追加ノズル、扁平状の噴射孔の実施例3に係る追加ノズル、及び比較例に係る噴射ノズル5、のそれぞれから圧縮空気Kを噴射して音量を測定すると共に、土砂Bの最大飛散高Y1、掘削の平均直径Y2、及び掘削の深さY3を測定した。音量については、掘削地点から0m、1m、3m及び5mのそれぞれの箇所において測定した。測定した音量の結果を以下の表1に示す。
【0079】
【0080】
表1に示されるように、掘削地点から0mの位置における掘削の音量は、実施例1の多孔扇形の追加ノズルを取り付けると、比較例よりも22.4%減少した(107dBから83dBに減少した)。また、掘削地点から0mの位置における掘削の音量は、実施例3の扁平状の噴射孔の追加ノズルを取り付けると、比較例よりも19.6%減少した(107dBから86dBに減少した)。更に、掘削地点から3mの位置における掘削の音量は、実施例2の円形状の噴射孔の追加ノズルを取り付けると、比較例よりも14.3%減少した(84dBが72dBに減少した)。以上のように、実施例1~3のいずれかの追加ノズルを取り付けた場合、比較例よりも確実に掘削の音量を低減できることが分かった。
【0081】
また、含水比が6.4%の砂地盤である土砂Bを5分間連続して掘削した場合の最大飛散高Y1、平均直径Y2及び深さY3の測定結果を以下の表2に示す。
【0082】
【0083】
以上の表2より、追加ノズルを有しない比較例の場合には、土砂Bの最大飛散高Y1が1.3m以上となり、掘削した土砂Bが作業者の上半身に達する高さまで舞い上がることが分かった。一方、実施例1~3の追加ノズルを取り付けた場合には土砂Bの最大飛散高Y1を1.0m以下に抑えることができ、更に、実施例1の多孔扇形の噴射孔を有する追加ノズルを取り付けた場合には土砂Bの最大飛散高Y1を0.8m以下に抑えられることが分かった。一方、掘削の平均直径Y2については実施例1~3及び比較例共に0.27m~0.3mであり、掘削の深さY3については実施例1~3及び比較例共に0.27m~0.47mであり、大差が無いことが分かった。以上のように、実施例1~3の追加ノズルを取り付けた場合には、所望の掘削力を維持しつつ、比較例よりも土砂Bの最大飛散高及び騒音を効果的に抑えられることが分かった。
【符号の説明】
【0084】
1…空気掘削具、2…導入管、3…パイプ部、4…空気受け入れ部、4b…取付部、4c…ホース、4d…バルブ部、4f…把持部、5…噴射ノズル、5b…先端部、10,20,30…追加ノズル、11,21,31…雄螺子、12,22,32…先端部、12b…縮径部、12c…ナット部、12d,32d…先端、12f…筒状部、12g…湾曲部、12h…噴射孔、12j…先端面、12k…溝部、12m…内側面、12p…底面、12q…頂面、12r…傾斜面、13…第1のナット部、14…第2のナット部、15…第3のナット部、16…縮径部、17…縮径部、22b…筒状部、22c…テーパ部、22d…テーパ面、22f…先端面、22g…凹部、22h…溝部、22j…噴射孔、23…拡径部、32g…先端面、32h…噴射孔、33…拡径部、33d…テーパ部、A…現場、A1…地上、B…土砂、C…コンプレッサ、D1…長手方向、D2…交差方向、E…エジェクタ、E1…鋼管、E2…導入管、E3…分岐管、G…街路樹、K…圧縮空気、L1…長さ、L2…直径、L3…幅、L4,L6,L7…直径、L10…幅、M…組、P1…第1の搬送管、P2…第2の搬送管、X1…長手方向、X2,X3…方向、Y1…最大飛散高、Y2…平均直径、Y3…深さ。