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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】積層型電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/105 20210101AFI20221213BHJP
   H01M 50/133 20210101ALI20221213BHJP
   H01M 50/126 20210101ALI20221213BHJP
【FI】
H01M50/105
H01M50/133
H01M50/126
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019071455
(22)【出願日】2019-04-03
(65)【公開番号】P2020170640
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】飯野 準也
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-007356(JP,A)
【文献】国際公開第2011/089965(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/112395(WO,A1)
【文献】特開2006-093120(JP,A)
【文献】特表2015-505138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交互に積層された第1電極板及び第2電極板を有する膜電極接合体と、
前記膜電極接合体を収容する外装体であって、第1辺と、前記第1辺に対向する第2辺と、前記第1辺が延びる方向とは異なる方向に延びる第3辺及び第4辺と、を含む矩形状の第1部材及び第2部材を有し、前記第1部材と前記第2部材との間に前記膜電極接合体を収容する収容空間が画成されている収容領域と、前記収容領域の外周に位置し、前記第1部材と前記第2部材とが接合されている封止領域と、を含む、外装体と、
前記第1電極板又は前記第2電極板に電気的に接続するとともに、前記第1辺又は前記第2辺において前記第1部材と前記第2部材との間を通って、前記外装体の外部へと延びるタブと、を備え、
前記封止領域は、前記外装体の前記第1辺に沿って延びる第1辺封止領域と、前記外装体の前記第2辺に沿って延びる第2辺封止領域と、前記第1辺封止領域から前記第2辺封止領域まで前記外装体の前記第3辺に沿って延びる第3辺封止領域と、前記第1辺封止領域から前記第2辺封止領域まで前記外装体の前記第4辺に沿って延びる第4辺封止領域と、を有し、
前記第4辺封止領域は、第1平坦部と、前記第1平坦部よりも前記第2辺側に位置する第2平坦部と、前記第1平坦部と前記第2平坦部との間に位置し、前記第1平坦部及び前記第2平坦部よりも厚い第1肉厚部と、を有する、積層型電池。
【請求項2】
前記第1部材及び前記第2部材は、基材と、前記基材よりも前記収容空間側に位置する熱可塑性樹脂層と、を含み、
前記第1部材の前記熱可塑性樹脂層と、前記第2部材の前記熱可塑性樹脂層とは、前記封止領域において、前記第1部材と前記第2部材とを接合する外装体接合層を形成している、請求項1に記載の積層型電池。
【請求項3】
前記第1肉厚部における前記外装体接合層は、前記第1平坦部及び前記第2平坦部における前記外装体接合層の厚みの2.5倍以上4.5倍以下の厚みを有する、請求項2に記載の積層型電池。
【請求項4】
前記第4辺封止領域は、前記第2平坦部よりも前記第2辺側に位置し、前記第2平坦部よりも厚い第2肉厚部をさらに有する、請求項2又は3に記載の積層型電池。
【請求項5】
前記第2肉厚部における前記外装体接合層は、前記第2平坦部における前記外装体接合層の厚みの2.5倍以上4.5倍以下の厚みを有する、請求項4に記載の積層型電池。
【請求項6】
前記第4辺封止領域は、前記第2平坦部よりも前記第2辺側に位置する第3平坦部をさらに有し、
前記第2肉厚部は、前記第2平坦部と前記第3平坦部との間に位置し、前記第3平坦部の厚みよりも大きな厚みを有する、請求項4又は5に記載の積層型電池。
【請求項7】
前記第2肉厚部における前記外装体接合層は、前記第3平坦部における前記外装体接合層の厚みの2.5倍以上4.5倍以下の厚みを有する、請求項6に記載の積層型電池。
【請求項8】
前記第1肉厚部と前記第2肉厚部との間の距離は、前記第1辺封止領域と前記第2辺封止領域との間の距離の、0.05倍以上0.3倍以下の大きさを有する、請求項4乃至7のいずれか一項に記載の積層型電池。
【請求項9】
前記第1平坦部は、前記第1辺封止領域まで広がり、
前記第2平坦部は、前記第2辺封止領域まで広がる、請求項2又は3に記載の積層型電池。
【請求項10】
前記第1肉厚部と前記第2辺封止領域との間の距離は、前記第1辺封止領域と前記第2辺封止領域との間の距離の、0.05倍以上0.3倍以下である、請求項9に記載の積層型電池。
【請求項11】
前記第2平坦部は、前記第1平坦部の厚みよりも大きな厚みを有する、請求項2乃至10のいずれか一項に記載の積層型電池。
【請求項12】
前記第2平坦部は、前記第1辺封止領域、前記第2辺封止領域及び前記第3辺封止領域の厚みよりも大きな厚みを有する、請求項2乃至11のいずれか一項に記載の積層型電池。
【請求項13】
前記第2平坦部における前記外装体接合層は、前記収容領域における前記第1部材の前記熱可塑性樹脂層の厚みと前記第2部材の前記熱可塑性樹脂層の厚みとを合計した厚みの、90%以上の厚みを有する、請求項2乃至12のいずれか一項に記載の積層型電池。
【請求項14】
前記第1平坦部における前記外装体接合層は、前記収容領域における前記第1部材の前記熱可塑性樹脂層の厚みと前記第2部材の前記熱可塑性樹脂層の厚みとを合計した厚みの、90%未満の厚みを有する、請求項2乃至13のいずれか一項に記載の積層型電池。
【請求項15】
前記第1辺封止領域、前記第2辺封止領域及び前記第3辺封止領域における前記外装体接合層は、前記収容領域における前記第1部材の前記熱可塑性樹脂層の厚みと前記第2部材の前記熱可塑性樹脂層の厚みとを合計した厚みの、90%未満の厚みを有する、請求項2乃至14のいずれか一項に記載の積層型電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1で提案されているように、正極板と負極板とを交互に積層してなる積層型電池が広く普及している。積層型電池の一例として、リチウムイオン二次電池が例示され得る。リチウムイオン二次電池は、他の形式の積層型電池と比較して大容量であることを特徴の一つとしている。このような特徴を有するリチウムイオン二次電池は、今般、車載用途や定置住宅用途等の種々の用途での更なる普及を期待されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池に代表される積層型電池においては、正極板及び負極板などの電極板を有する膜電極接合体が、熱可塑性樹脂を含むフィルムによって構成された外装体の内部に収容されている。外装体の周囲は、外装体を加熱しながら押圧することによって熱可塑性樹脂を溶融させることにより形成された接合層によって外部から封止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-152140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外装体を接合する際、外装体を構成するフィルムの面に異物が存在していると、接合層の接合強度が低くなることが考えられる。
【0006】
本発明は、このような課題を効果的に解決し得る積層型電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による積層型電池は、交互に積層された第1電極板及び第2電極板を有する膜電極接合体と、前記膜電極接合体を収容する外装体であって、第1辺と、前記第1辺に対向する第2辺と、前記第1辺が延びる方向とは異なる方向に延びる第3辺及び第4辺と、を含む矩形状の第1部材及び第2部材を有し、前記第1部材と前記第2部材との間に前記膜電極接合体を収容する収容空間が画成されている収容領域と、前記収容領域の外周に位置し、前記第1部材と前記第2部材とが接合されている封止領域と、を含む、外装体と、前記第1電極板又は前記第2電極板に電気的に接続するとともに、前記第1辺又は前記第2辺において前記第1部材と前記第2部材との間を通って、前記外装体の外部へと延びるタブと、を備え、前記封止領域は、前記外装体の前記第1辺に沿って延びる第1辺封止領域と、前記外装体の前記第2辺に沿って延びる第2辺封止領域と、前記第1辺封止領域から前記第2辺封止領域まで前記外装体の前記第3辺に沿って延びる第3辺封止領域と、前記第1辺封止領域から前記第2辺封止領域まで前記外装体の前記第4辺に沿って延びる第4辺封止領域と、を有し、前記第4辺封止領域は、第1平坦部と、前記第1平坦部よりも前記第2辺側に位置する第2平坦部と、前記第1平坦部と前記第2平坦部との間に位置し、前記第1平坦部及び前記第2平坦部よりも厚い第1肉厚部と、を有する。
【0008】
本発明による積層型電池において、前記第1部材及び前記第2部材は、基材と、前記基材よりも前記収容空間側に位置する熱可塑性樹脂層と、を含み、前記第1部材の前記熱可塑性樹脂層と、前記第2部材の前記熱可塑性樹脂層とは、前記封止領域において、前記第1部材と前記第2部材とを接合する外装体接合層を形成していてもよい。
【0009】
本発明による積層型電池において、前記第1肉厚部における前記外装体接合層は、前記第1平坦部及び前記第2平坦部における前記外装体接合層の厚みの2.5倍以上4.5倍以下の厚みを有してもよい。
【0010】
本発明による積層型電池において、前記第4辺封止領域は、前記第2平坦部よりも前記第2辺側に位置し、前記第2平坦部よりも厚い第2肉厚部をさらに有してもよい。
【0011】
本発明による積層型電池において、前記第2肉厚部における前記外装体接合層は、前記第2平坦部における前記外装体接合層の厚みの2.5倍以上4.5倍以下の厚みを有してもよい。
【0012】
本発明による積層型電池において、前記第4辺封止領域は、前記第2平坦部よりも前記第2辺側に位置する第3平坦部をさらに有し、前記第2肉厚部は、前記第2平坦部と前記第3平坦部との間に位置し、前記第3平坦部の厚みよりも大きな厚みを有してもよい。
【0013】
本発明による積層型電池において、前記第2肉厚部における前記外装体接合層は、前記第3平坦部における前記外装体接合層の厚みの2.5倍以上4.5倍以下の厚みを有してもよい。
【0014】
本発明による積層型電池において、前記第1肉厚部と前記第2肉厚部との間の距離は、前記第1辺封止領域と前記第2辺封止領域との間の距離の、0.05倍以上0.3倍以下の大きさを有してもよい。
【0015】
本発明による積層型電池において、前記第1辺封止領域まで広がり、前記第2平坦部は、前記第2辺封止領域まで広がってもよい。
【0016】
本発明による積層型電池において、前記第1肉厚部と前記第2辺封止領域との間の距離は、前記第1辺封止領域と前記第2辺封止領域との間の距離の、0.05倍以上0.3倍以下であってもよい。
【0017】
本発明による積層型電池において、前記第2平坦部は、前記第1平坦部の厚みよりも大きな厚みを有してもよい。
【0018】
本発明による積層型電池において、前記第2平坦部は、前記第1辺封止領域、前記第2辺封止領域及び前記第3辺封止領域の厚みよりも大きな厚みを有してもよい。
【0019】
本発明による積層型電池において、前記第2平坦部における前記外装体接合層は、前記収容領域における前記第1部材の前記熱可塑性樹脂層の厚みと前記第2部材の前記熱可塑性樹脂層の厚みとを合計した厚みの、90%以上の厚みを有してもよい。
【0020】
本発明による積層型電池において、前記第1平坦部における前記外装体接合層は、前記収容領域における前記第1部材の前記熱可塑性樹脂層の厚みと前記第2部材の前記熱可塑性樹脂層の厚みとを合計した厚みの、90%未満の厚みを有してもよい。
【0021】
本発明による積層型電池において、前記第1辺封止領域、前記第2辺封止領域及び前記第3辺封止領域における前記外装体接合層は、前記収容領域における前記第1部材の前記熱可塑性樹脂層の厚みと前記第2部材の前記熱可塑性樹脂層の厚みとを合計した厚みの、90%未満の厚みを有してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の積層型電池によれば、外装体の接合強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の一実施の形態を説明するための図であって、積層型電池を示す斜視図である。
図2図2は、図1の積層型電池に含まれる膜電極接合体を示す斜視図である。
図3図3は、図1の積層型電池に含まれる膜電極接合体を示す平面図である。
図4図4は、図1の積層型電池に含まれる膜電極接合体を示す断面図である。
図5図5は、図3のV-V線に沿った断面を示す断面図である。
図6図6は、図3の外装体の封止領域のVI-VI線に沿った断面の一例を示す断面図である。
図7図7は、図3の外装体の封止領域のVII-VII線に沿った断面の一例を示す断面図である。
図8図8は、膜電極接合体を外装体の内部に収容する収容工程を示す図である。
図9図9は、収容工程において、外装体の第1部材と第2部材を接合する接合工程を示す図である。
図10図10は、収容工程において、外装体の第1部材と第2部材を接合する接合工程を示す図である。
図11図11は、初期充電工程において、外部領域辺において外装体の第1部材と第2部材を接合した様子を示す図である。
図12図12は、初期充電工程において、外装体の収容空間を、開口領域を通して外部に連通させた様子を示す図である。
図13図13は、封止工程において、外装体の開口領域において第1部材と第2部材を接合する様子を示す図である。
図14図14は、比較例に係る外装体の開口領域を示す図である。
図15図15は、開口領域の変形例を示す図である。
図16図16は、開口領域の変形例を示す図である。
図17図17は、開口領域の変形例を示す図である。
図18図18は、肉厚部の変形例を示す図である。
図19図19は、封止工程の第1の変形例を示す図である。
図20図20は、封止工程の第2の変形例を示す図である。
図21図21は、封止工程の第2の変形例を示す図である。
図22図22は、封止工程の第2の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0025】
まず、本発明による積層型電池の一実施の形態について説明する。図1図7は、本発明による積層型電池の一実施の形態を説明するための図である。図1は、積層型電池の一具体例を示す斜視図である。積層型電池1は、膜電極接合体2と、膜電極接合体2を収容する外装体3と、膜電極接合体2に取り付けられたタブ16,26と、タブ16,26に取り付けられたシーラント18,28と、を備える。タブ16,26及びシーラント18,28は、外装体3の内部から部分的に外部へと延び出している。
【0026】
図2は、図1において外装体3に収容されている膜電極接合体2を示す斜視図であり、外装体3が二点鎖線で示されている。図3は、積層型電池1を示す平面図である。以下、積層型電池1の各構成要素について説明する。
【0027】
(膜電極接合体)
膜電極接合体2は、交互に積層された第1電極板10及び第2電極板20を有している。本実施の形態においては、膜電極接合体2がリチウムイオン二次電池を構成する例について説明する。この例において、第1電極板10は正極板10Xを構成し、第2電極板20は負極板20Yを構成するものとする。ただし、以下に説明する作用効果の記載からも理解され得るように、ここで説明する一実施の形態は、リチウムイオン二次電池に限定されることなく、第1電極板10及び第2電極板20を交互に積層してなる膜電極接合体2に広く適用され得る。
【0028】
図4は、膜電極接合体2を示す断面図である。図2図4に示すように、膜電極接合体2は、複数の正極板10X(第1電極板10)及び負極板20Y(第2電極板20)を有している。正極板10X及び負極板20Yは、積層方向dL(図4参照)に沿って交互に配列されている。膜電極接合体2及び積層型電池1は、全体的に偏平形状を有し、積層方向dLへの厚さが薄く、積層方向dLに直交する方向d1,d2に広がっている。
【0029】
図示された非限定的な例において、正極板10X及び負極板20Yは、長方形形状の外輪郭を有している。正極板10X及び負極板20Yは、積層方向dLに直交するとともにタブ16,26が延びる方向である第1方向d1に長手方向を有し、積層方向dL及び第1方向d1の両方に直交する第2方向d2に短手方向を有する。正極板10X及び負極板20Yは、第1方向d1にずらして配置されている。より具体的には、複数の正極板10Xは、第1方向d1における一側(図2の右上側)に寄って配置され、複数の負極板20Yは、第1方向d1における他側(図2の左下側)に寄って配置されている。正極板10X及び負極板20Yは、第1方向d1における中央において、積層方向dLに重なり合っている。
【0030】
正極板10X(第1電極板10)は、図示するように、シート状の外形状を有している。正極板10X(第1電極板10)は、正極集電体11X(第1電極集電体11)と、正極集電体11X上に設けられた正極活物質層12X(第1電極活物質層12)と、を有している。リチウムイオン二次電池において、正極板10Xは、放電時にリチウムイオンを放出し、充電時にリチウムイオンを吸蔵する。
【0031】
正極集電体11Xは、互いに対向する第1面11a及び第2面11bを主面として有している。正極活物質層12Xは、正極集電体11Xの第1面11a及び第2面11bの少なくとも一方の面上に形成される。具体的には、正極集電体11Xの第1面11a又は第2面11bが、膜電極接合体2のうちの積層方向dLにおける最外面を形成する場合、正極集電体11Xの当該面には正極活物質層12Xが設けられない。この正極集電体11Xの配置に関連した構成を除き、積層型電池1に含まれる複数の正極板10Xは、正極集電体11Xの両側に正極活物質層12Xを有し、互いに同一に構成され得る。
【0032】
正極集電体11X及び正極活物質層12Xは、積層型電池1(リチウムイオン二次電池)に適用され得る種々の材料を用いて種々の製法により、作製され得る。一例として、正極集電体11Xは、アルミニウム箔によって形成され得る。正極活物質層12Xは、例えば、正極活物質、導電助剤、バインダーとなる結着剤を含んでいる。正極活物質層12Xは、正極活物質、導電助剤及び結着剤を溶媒に分散させてなる正極用スラリーを、正極集電体11Xをなす材料上に塗工して固化させることで、作製され得る。正極活物質として、例えば、一般式LiM(ただし、Mは金属であり、x及びyは金属Mと酸素Oの組成比である)で表される金属酸リチウム化合物が用いられる。金属酸リチウム化合物の具体例として、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等が例示され得る。導電助剤としては、アセチレンブラック等が用いられ得る。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン等が用いられ得る。
【0033】
図2に示すように、正極集電体11X(第1電極集電体11)は、第1接続領域a1及び第1接続領域a1に隣接する第1有効領域b1を有している。正極活物質層12X(第1電極活物質層12)は、正極集電体11Xの第1有効領域b1のみに配置されている。第1接続領域a1及び第1有効領域b1は、正極板10Xの長手方向に配列されている。第1接続領域a1は、第1有効領域b1よりも正極板10Xの長手方向における外側(図2における右上側)に位置している。複数の正極集電体11Xは、第1接続領域a1において、抵抗溶接や超音波溶接、テープによる貼着、融着等によって接合され、電気的に接続している。一方、第1有効領域b1は、負極板20Yの後述する負極活物質層22Yに対面する領域内に位置している。このような第1有効領域b1の配置により、正極活物質層12Xからのリチウムの析出を防止することができる。
【0034】
次に、負極板20Y(第2電極板20)について説明する。負極板20Yも、正極板10Xと同様に、シート状の外形状を有している。負極板20Y(第2電極板20)は、負極集電体21Y(第2電極集電体21)と、負極集電体21Y上に設けられた負極活物質層22Y(第2電極活物質層22)と、を有している。リチウムイオン二次電池において、負極板20Yは、放電時にリチウムイオンを吸蔵し、充電時にリチウムイオンを放出する。
【0035】
負極集電体21Yは、互いに対向する第1面21a及び第2面21bを主面として有している。負極活物質層22Yは、負極集電体21Yの第1面21a及び第2面21bの少なくとも一方の面上に形成される。積層型電池1に含まれる複数の負極板20Yは、負極集電体21Yの両側に設けられた一対の負極活物質層22Yを有するものとして、互いに同一に構成され得る。
【0036】
負極集電体21Y及び負極活物質層22Yは、積層型電池1(リチウムイオン二次電池)に適用され得る種々の材料を用いて種々の製法により、作製され得る。一例として、負極集電体21Yは、例えば銅箔によって形成される。負極活物質層22Yは、例えば、炭素材料からなる負極活物質、及び、バインダーとして機能する結着剤を含んでいる。負極活物質層22Yは、例えば、炭素粉末や黒鉛粉末等からなる負極活物質とポリフッ化ビニリデンのような結着剤とを溶媒に分散させてなる負極用スラリーを、負極集電体21Yをなす材料上に塗工して固化することで、作製され得る。
【0037】
図2に示すように、負極集電体21Y(第2電極集電体21)は、第2接続領域a2及び第2接続領域a2に隣接する第2有効領域b2を有している。負極活物質層22Y(第2電極活物質層22)は、負極集電体21Yの第2有効領域b2に配置されている。第2接続領域a2及び第2有効領域b2は、負極板20Yの長手方向に配列されている。第2接続領域a2は、第2有効領域b2よりも負極板20Yの長手方向における外側(図2における左下側)に位置している。複数の負極集電体21Yは、第2接続領域a2において、抵抗溶接や超音波溶接、テープによる貼着、融着等によって接合され、電気的に接続している。一方、第2有効領域b2は、正極板10Xの正極活物質層12Xに対面する領域に広がっている。
【0038】
図4に示すように、正極板10X(第1電極板10)及び負極板20Y(第2電極板20)の少なくとも一方が、絶縁体(絶縁層)30を有していてもよい。絶縁体30は、正極板10X(第1電極板10)及び負極板20Y(第2電極板20)の短絡を防止する。
図示された例においては、負極板20Yが絶縁体30を有している。絶縁体30は、各負極板20Yに含まれる一対の負極活物質層22Yを覆うようにして、設けられている。そして、負極板20Yは、正極板10Xの正極活物質層12Xと積層方向dLに対面する面を、絶縁体30によって形成されている。ただし、図示された絶縁体30に代えて或いは図示された絶縁体30に加えて、各正極板10Xに含まれる一対の正極活物質層12Xを覆う絶縁体30を設置することも可能である。
【0039】
図示された例において、絶縁体30は、電解質層30Aとしても機能する。電解質層30A(絶縁体30)は、活物質層22Y,12X上に塗工した電解液を活物質層22Y,12X上で固化又はゲル化させてなる層である。電解液として、例えば、高分子マトリックス及び非水電解質液(すなわち、非水溶媒及び電解質塩)からなり、ゲル化されて表面に粘着性を生じるもの、或いは、高分子マトリックス及び非水溶媒からなり、固体電解質となるものを用いることができる。電解質層30A(絶縁体30)を作製するための具体的な材料は、特に制限はなく、これらを構成するために用いられている種々の材料(例えば、特開2012-190567号公報に開示された材料)を用いることができる。
【0040】
(タブ)
タブ16,26は、正極集電体11Xと電気的に接続した第1タブ16と、負極集電体21Yと電気的に接続した第2タブ26と、を有する。図5は、図3のV-V線に沿った断面を示す断面図である。図5に示した二点鎖線は、外装体3の第1部材4及び第2部材5の位置の一例を示している。図5に示すように、第1タブ16は、第1電極板10に電気的に接続されている。図示はしないが、第2タブ26は、第2電極板20に電気的に接続されている。図5に示す例において、第1タブ16は、第1接続領域a1において最も下側に位置する正極板10Xの第2面11b(下面)に接続されている。図示はしないが、第2タブ26も、第2接続領域a2において最も下側に位置する負極板20Yの第2面21b(下面)に接続されている。なお、正極集電体11Xと第1タブ16とが電気的に接続され得る限りにおいて、第1タブ16の取り付け方は任意である。同様に、負極集電体21Yと第2タブ26とが電気的に接続され得る限りにおいて、第2タブ26の取り付け方は任意である。
【0041】
図5に示すように、第1タブ16は、外装体3の第1部材4及び第2部材5の間を通って外装体3の内部から外部へと第1方向d1に延び出している。また、図示はしないが、第2タブ26は、外装体3の第1部材4及び第2部材5の間を通るように、外装体3の内部から外部へと第1方向d1に延び出している。第1タブ16は、積層型電池1における正極端子として機能し、第2タブ26は、積層型電池1における負極端子として機能する。
【0042】
第1タブ16及び第2タブ26は、例えばアルミニウム、ニッケル、銅合金又はニッケルメッキ銅等を用いて形成され得る。例えば、正極集電体11Xがアルミニウム箔によって形成され、負極集電体21Yが銅箔によって形成される場合には、アルミニウムを用いて第1タブ16を形成し、銅合金を用いて第2タブ26を形成することができる。第1タブ16及び第2タブ26の厚みは、例えば0.2mm以上であり、2.0mm以下であってもよい。
【0043】
(シーラント)
シーラント18,28は、外装体3と溶着可能な材料から構成された部材である。シーラント18,28の材料としては、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、低密度ポリプロピレン、アイオノマー、エチレン・酢酸ビニル等を挙げることができる。シーラント18,28の厚みは、例えば0.05mm以上であり、0.4mm以下であってもよい。
【0044】
シーラント18,28は、第1タブ16と外装体3との間に位置する第1シーラント18と、第2タブ26と外装体3との間に位置する第2シーラント28と、を有する。図5に示すように、封止領域7において、外装体3と第1タブ16との間には第1シーラント18が介在している。また、図示はしないが、外装体3と第2タブ26との間には第2シーラント28が介在している。これにより、タブ16,26の周囲において外装体3をより強固に封止することができる。また、外装体3に含まれているアルミニウム箔やステンレス箔などの金属箔とタブ16,26とが短絡してしまうことを抑制することができる。
【0045】
(外装体)
外装体3は、膜電極接合体2を外部から封止するための包装材である。外装体3は、図1に示すように、膜電極接合体2の上側に位置するシート状の第1部材4と、膜電極接合体2の下側に位置するシート状の第2部材5と、を有する。第1部材4及び第2部材5は、平面視において膜電極接合体2を囲むように外縁に沿って互いに接合されている。
【0046】
以下の説明において、外装体3のうち、第1部材4と第2部材5との間に膜電極接合体2を収容する収容空間6aを画成している領域のことを、収容領域6とも称する。また、外装体3のうち、収容領域6の外周に位置し、第1部材4と第2部材5とが接合されている領域のことを、封止領域7とも称する。図3においては、封止領域7がハッチングで表されている。第1部材4と第2部材5の接合は、第1部材4及び第2部材5を加熱しながら押圧することによって第1部材4及び第2部材5に含まれる熱可塑性樹脂を溶融させる、いわゆるヒートシールによって実現されている。
【0047】
図3に示すように、外装体3の第1部材4及び第2部材5は平面視において、第1辺3cと、第1辺3cに対向する第2辺3dと、第1辺3cが延びる方向とは異なる方向に延びる第3辺3e及び第4辺3fと、を含む矩形状の形状を有する。図3に示す例においては、第1辺3c及び第2辺3dは第2方向d2に沿って延びる。また、第3辺3e及び第4辺3fは第1方向d1に沿って延びる。また、タブ16,26は、第1辺3c又は第2辺3dにおいて第1部材4と第2部材5との間を通って、外装体3の外部へと延びる。図3に示す例においては、タブ16が第1辺3cにおいて第1部材4と第2部材5との間を通って外装体3の外部へと延びる。また、タブ26が第2辺3dにおいて第1部材4と第2部材5との間を通って外装体3の外部へと延びる。また、第3辺3e及び第4辺3fからは、タブ16,26は延び出していない。この場合、外装体3の封止領域7は、外装体3の第1辺3c、第2辺3d、第3辺3e及び第4辺3fのそれぞれに沿って延びる部分を含む。ここで、本実施の形態においては、封止領域7のうち、外装体3の第1辺3cに沿って延びる部分のことを、第1辺封止領域73と称する。また、封止領域7のうち、外装体3の第2辺3dに沿って延びる部分のことを、第2辺封止領域74と称する。第1辺封止領域73及び第2辺封止領域74は、それぞれ外装体3の第3辺3eから第4辺3fまで延びる。また、封止領域7のうち、外装体3の第3辺3eに沿って延びる部分であって、第1辺封止領域73から第2辺封止領域74まで延びる部分のことを、第3辺封止領域75と称する。また、封止領域7のうち、外装体3の第4辺3fに沿って延びる部分であって、第1辺封止領域73から第2辺封止領域74まで延びる部分のことを、第4辺封止領域76と称する。図3に示すように、第3辺封止領域75及び第4辺封止領域76は、それぞれ外装体3の第1辺封止領域73の内縁3hの位置から第2辺封止領域74の内縁3hの位置まで延びる。
【0048】
外装体3の構造について詳細に説明する。図6は、図3の外装体3の封止領域7のVI-VI線に沿った断面の一例を示す断面図である。図7は、図3の外装体3の封止領域7のVII-VII線に沿った断面の一例を示す断面図である。
【0049】
まず、外装体3の第1部材4及び第2部材5について説明する。図6に示すように、第1部材4は、基材4aと、基材4aよりも収容空間6a側に位置する熱可塑性樹脂層4bと、を含む。同様に、第2部材5は、基材5aと、基材5aよりも収容空間6a側に位置する熱可塑性樹脂層5bと、を含む。
【0050】
基材4a,5aは、ナイロン、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの、剛性を有するプラスチックフィルムを備える。基材4a,5aは、プラスチックフィルムよりも収容空間6a側に位置する金属箔を更に備えていてもよい。金属箔の例としては、アルミニウム箔、ステンレス箔等を挙げることができる。
【0051】
熱可塑性樹脂層4b,5bは、熱可塑性樹脂を含む層である。図6に示すように、第1封止領域71などの封止領域7に位置する熱可塑性樹脂層4b,5bは、加熱されることにより溶融して、符号8で示す接合層を形成している。熱可塑性樹脂の例としては、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、低密度ポリプロピレン、アイオノマー、エチレン・酢酸ビニル等を挙げることができる。以下の説明において、熱可塑性樹脂層4b,5bが溶融することによって形成される接合層のことを、外装体接合層8とも称する。
【0052】
図3及び図7に示すように、第4辺封止領域76は、第1辺3c側に位置する第1平坦部7bと、第1平坦部7bよりも第2辺3d側に位置する第2平坦部7cと、を有する。また、図3に示す例においては、第1辺封止領域73、第2辺封止領域74及び第3辺封止領域75も、平坦部を有する。以下、第1辺封止領域73、第2辺封止領域74及び第3辺封止領域75の平坦部を、外周平坦部7eと称する。なお、図7の左側に位置する外周平坦部7eは、第2辺封止領域74の外周平坦部7eである。本実施の形態においては、後述するように、まず第1平坦部7b及び外周平坦部7eが形成され、続いて、外装体3の内部に電解液が注入され、その後、第2平坦部7cが形成される。
【0053】
図7に示すように、第4辺封止領域76は、第1平坦部7bと第2平坦部7cとの間に位置し、第1平坦部7b及び第2平坦部7cよりも厚い肉厚部7aを有する。また、第4辺封止領域76は、第1平坦部7bと第2平坦部7cとの間以外の位置に、肉厚部7aを有していてもよい。図7に示す例においては、図中に示された2つの肉厚部7aのうち、右側の肉厚部7aは、第1平坦部7bと第2平坦部7cとの間に位置する。また、図7の左側の肉厚部7aは、第2平坦部7cよりも第2辺3d側に位置し、封止領域7のうち第2辺3dに延びる部分に接している。第1平坦部7bと第2平坦部7cとの間に位置する肉厚部7aを、第1肉厚部7a1とも称する。また、第1平坦部7bと第2平坦部7cとの間以外の位置に位置する肉厚部7aを、第2肉厚部7a2とも称する。
【0054】
図7に示すように、肉厚部7aは、第1平坦部7b及び第2平坦部7cよりも厚みの大きな外装体接合層8を有することによって、第1平坦部7bの厚みt1及び第2平坦部7cの厚みt2よりも大きな厚みt3,t4を有している。なお、図7に示す例において、肉厚部7aにおける基材4a,5aの厚みは、第1平坦部7b及び第2平坦部7cにおける基材4a,5aの厚みと同じである。図7に示す場合に、第1肉厚部7a1における外装体接合層8の厚みt7は、例えば第1平坦部7bにおける外装体接合層8の厚みt5及び第2平坦部7cにおける外装体接合層8の厚みt6の2.5倍以上4.5倍以下である。また、第1肉厚部7a1における外装体接合層8の厚みt7は、第1平坦部7bにおける外装体接合層8の厚みt5及び第2平坦部7cにおける外装体接合層8の厚みt6よりも0.3mm以上0.5mm以下だけ大きくてもよい。また、第2肉厚部7a2における外装体接合層8の厚みt8は、例えば第2平坦部7cにおける外装体接合層8の厚みt6の2.5倍以上4.5倍以下である。また、第2肉厚部7a2における外装体接合層8の厚みt8は、第2平坦部7cにおける外装体接合層8の厚みt6よりも0.3mm以上0.5mm以下だけ大きくてもよい。
【0055】
第1肉厚部7a1の厚みt3と第2肉厚部7a2の厚みt4とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1肉厚部7a1の厚みt3と第2肉厚部7a2の厚みt4とが異なる場合、第1肉厚部7a1の厚みt3は第2肉厚部7a2の厚みt4よりも大きくてもよい。
【0056】
図7に示す第1肉厚部7a1と第2肉厚部7a2との間の距離w1は、例えば図3に示す第1辺封止領域73と第2辺封止領域74との間の距離w2の、0.05倍以上0.3倍以下である。
【0057】
次に、リチウムイオン二次電池として構成された本実施の形態に係る積層型電池1の製造方法について説明する。以下に説明する積層型電池の製造方法は、膜電極接合体2を準備する膜電極接合体準備工程と、第1タブ16及び第2タブ26を正極集電体11Xの第1接続領域a1及び負極集電体21Yの第2接続領域a2に取り付けるタブ取付工程と、膜電極接合体2を外装体3の内部に収容する収容工程と、外装体3の開口領域を通して電解液を外装体3の収容空間に注入する電解液注入工程と、外装体3の開口領域において第1部材4と第2部材5とを接合する封止工程と、を備える。積層型電池1の製造方法は、電解液注入工程の後、封止工程の前に、膜電極接合体を初期充電する初期充電工程をさらに備えてもよい。以下、各工程について説明する。
【0058】
(膜電極接合体準備工程)
膜電極接合体準備工程においては、交互に積層された第1電極板10及び第2電極板20を有する膜電極接合体2を準備する。膜電極接合体準備工程は、正極板10X(第1電極板10)および負極板20Y(第2電極板20)をそれぞれ作製する工程と、正極板10X(第1電極板10)および負極板20Y(第2電極板20)を交互に積層する工程と、を含んでいる。
【0059】
まず、正極板10X(第1電極板10)および負極板20Y(第2電極板20)をそれぞれ作製する工程について説明する。正極板10Xおよび負極板20Yは、別々の工程により別々のタイミングで作製されてもよい。また、正極板10Xおよび負極板20Yは、並行して同時に作製され、作製された正極板10Xおよび負極板20Yが、順次、正極板10X及び負極板20Yを交互に積層する工程に供給されるようにしてもよい。
【0060】
正極板10Xは、例えば、正極集電体11Xを構成するようになる長尺のアルミニウム箔上に、正極活物質層12Xを構成するようになる組成物(スラリー)を塗工して固化し、次に、所望の大きさに断裁していくことで作製され得る。同様に、負極板20Yは、例えば、負極集電体21Yを構成するようになる長尺の銅箔上に、負極活物質層22Yを構成するようになる組成物(スラリー)を塗工して固化し、次に、所望の大きさに断裁していくことで作製され得る。なお、正極板10X及び負極板20Yの少なくとも一方に電解質層30Aとして機能する絶縁体30を付与する場合には、電極板10,20をなすようになる断裁前の長尺材上又は断裁後の枚葉材上に電解液を塗布して固化又はゲル化させることで絶縁体30を作製することができる。
【0061】
次に、正極板10X及び負極板20Yを交互に積層する工程を実施する。この工程では、正極板10Xの正極活物質層12Xと負極板20Yの負極活物質層22Yとが正対するようにして、正極板10X及び負極板20Yを積層していく。次に、複数の正極集電体11Xの第1接続領域a1を、抵抗溶接や超音波溶接などによって互いに接合する。複数の負極集電体21Yについても同様である。このようにして、複数の正極板10X及び複数の負極板20Yが交互に積層された膜電極接合体2を得ることができる。
【0062】
(タブ取付工程)
タブ取付工程においては、まず、第1シーラント18及び第2シーラント28が設けられた第1タブ16及び第2タブ26を準備する。続いて、第1シーラント18が第1方向d1において正極集電体11Xの第1接続領域a1と対向するよう、第1タブ16に対する膜電極接合体2の位置合わせを行う。位置合わせの後、抵抗溶接や超音波溶接などによって第1タブ16を正極集電体11Xの第1接続領域a1に取り付ける。これによって、第1タブ16を正極集電体11Xに電気的に接続させることができる。同様にして、第2タブ26を負極集電体21Yの第2接続領域a2に取り付けて、第2タブ26を負極集電体21Yに電気的に接続させる。
【0063】
(収容工程)
収容工程においては、以下の方法によって、膜電極接合体2を、第1辺3c、第2辺3d、第3辺3e及び第4辺3fを含む矩形状の第1部材4及び第2部材5を有する外装体3の内部に収容する。まず、膜電極接合体2を第1部材4と第2部材5との間に配置する配置工程を実施する。続いて、第1辺3c、第2辺3d及び第3辺3eの全域並びに第4辺3fの一部において、第1部材4と第2部材5とを熱溶着によって接合する接合工程を実施する。これによって、膜電極接合体2が収容された外装体3を得ることができる。
【0064】
収容工程の一例について説明する。図8は、収容工程を実施して、膜電極接合体2を外装体3の内部に収容した様子の一例を示す図である。なお、図8に破線及び実線にて示す直線L1は、本実施の形態によって製造される積層型電池1において第4辺3fが形成される予定の位置を示す線である。以下の説明においては、この直線L1を第4辺形成予定線L1と称する。この場合、第4辺形成予定線L1を、第4辺3fとみなすことができる。図8に示す例において、外装体3は、製造された積層型電池1の収容領域6及び封止領域7のほかに、積層型電池1の第4辺形成予定線L1からみて収容領域6が位置する側とは反対側に広がる、外部領域9を有する。また、外装体3は、第3辺3eと対向する外部領域辺3gを有する。この場合、まず、配置工程において、第1タブ16及び第2タブ26が取り付けられた膜電極接合体2を第1部材4及び第2部材5の収容領域6に相当する領域の間に配置する。続いて、接合工程において、収容領域6の外周において、第1部材4と第2部材5とを接合する。本実施の形態においては、図8に示すように、第1タブ16及び第2タブ26を外部に延び出させた状態で、第1辺3c、第2辺3d及び第3辺3eの全域において、第1部材4と第2部材5とを熱溶着によって接合する。また、第4辺形成予定線L1からみて膜電極接合体2が配置された側において、第4辺形成予定線L1の一部に沿って、第1部材4と第2部材5とを熱溶着によって接合する。また、外部領域9において、第1辺3c及び第2辺3dの延長線に沿って、第1部材4と第2部材5とを熱溶着によって接合する。これによって、図8に示すように、第1部材4の熱可塑性樹脂層4b及び第2部材5の熱可塑性樹脂層5bから、第1部材4と第2部材5とを接合する外装体接合層8を形成することができる。図8に示す例において、外装体接合層8は、収容領域6の外周において第1部材4と第2部材5とを接合する第1外装体接合層8aと、外部領域9において第1辺3c及び第2辺3dの延長線に沿って第1部材4と第2部材5とを接合する外部外装体接合層8cと、を有する。この結果、収容領域6の外周に位置し、第1部材4と第2部材5とが接合されている第1封止領域71を備え、第1封止領域71によって囲まれた収容領域6の収容空間6aに膜電極接合体2が収容された外装体3を得ることができる。図8に示す例において、第1封止領域71は、外装体3の第1辺3cに沿って延びる第1辺封止領域73と、外装体3の第2辺3dに沿って延びる第2辺封止領域74と、第1辺封止領域73から第2辺封止領域74まで外装体3の第3辺3eに沿って延びる第3辺封止領域75と、外装体3の第4辺形成予定線L1のうち第1辺封止領域73と第2辺封止領域74との間の一部に位置する第4辺部分封止領域76aと、を有する。なお、外装体3の第4辺形成予定線L1のうち第1辺封止領域73と第2辺封止領域74との間の一部においては第1部材4と第2部材5とが接合されておらず、開口領域3bとなっている。図8に示す例において、開口領域3bは、第2辺封止領域74と第4辺部分封止領域76aとの間に位置する。
【0065】
図8に示す第4辺3fが延びる方向における開口領域3bの寸法w3は、例えば、第1辺封止領域73と第2辺封止領域74との間の距離w2の、0.05倍以上0.3倍以下である。
【0066】
図9図11を参照して、収容工程の接合工程の一例について詳細に説明する。図9は、図8のIX-IX線に沿った部分、すなわち第4辺形成予定線L1に沿って第1封止領域71が形成される部分の第1封止領域71を、接合工程にて形成する方法を示す図である。
【0067】
まず、収容工程の接合工程を実施するために用いられる接合工程ヒートシーラー50について、図9を参照して説明する。図9に示す例において、接合工程ヒートシーラー50は、第1部材4を加熱しながら第1部材4を第2部材5に向けて押圧する接合工程第1ヒートバー51と、第2部材5を支持する接合工程第2ヒートバーと、を有する。接合工程第1ヒートバー51は、第1部材4の厚み方向に沿って移動して第1部材4を押圧する。なお、図示はしないが、接合工程第2ヒートバー56も、接合工程第1ヒートバー51と同様に、第2部材5を加熱しながら第2部材5を第1部材4に向けて押圧してもよい。
【0068】
図9に示すように、接合工程第1ヒートバー51及び接合工程第2ヒートバー56は、形成しようとする第1封止領域71の形状に対応した形状の押圧面を有している。図9に示す例において、接合工程第1ヒートバー51は、2つの第1押圧面51aを有し、2つの第1押圧面51aの間には間隔が開けられている。また、接合工程第2ヒートバー56は、接合工程第1ヒートバー51の2つの第1押圧面51aと対向する位置に、2つの第2押圧面56aを有し、2つの第2押圧面56aの間には、2つの第1押圧面51aと同様に間隔が開けられている。図9に示す例において、第1押圧面51aは第1部材4の外面と平行な面であり、第2押圧面56aは第2部材5の外面と平行な面である。
【0069】
次に、接合工程において接合工程ヒートシーラー50を用いて第1封止領域71を形成する方法について説明する。接合工程第1ヒートバー51を第1部材4側へ移動させ、図10に示すように、接合工程第1ヒートバー51の第1押圧面51aを用いて第1部材4を押圧する。これによって、第1部材4及び第2部材5の熱可塑性樹脂層4b,5bのうち厚み方向において第1押圧面51aと重なっている部分を溶融させて外装体接合層8を形成することによって、第1封止領域71を形成する。図10に示すように、第1封止領域71には、平坦な第1平坦部7b及び外周平坦部7eが形成される。
【0070】
ところで、接合工程において、熱可塑性樹脂層4b,5bのうち厚み方向において接合工程第1ヒートバー51の第1押圧面51aから押圧されていない部分にも、第1押圧面51aからの熱が伝わり、部分的に溶融することがある。例えば、熱可塑性樹脂層4b,5bのうち、第1押圧面51aから押圧される部分と押圧されない部分の境界の近傍に位置する部分は、溶融状態に成り得る。溶融状態の熱可塑性樹脂は、流動性を有する。この場合、溶融状態の熱可塑性樹脂が、第1押圧面51aから押圧される部分から押圧されない部分へ向けて押し出される。すなわち、溶融状態の熱可塑性樹脂が、第1封止領域71が形成される領域側から第1封止領域71が形成されない領域側へ押し出される。このようにして、図10に示すように、第1封止領域71が形成される領域と第1封止領域71が形成されない領域との境界から第1封止領域71が形成されない領域側に、肉厚部7aが形成される。なお、図示はしないが、肉厚部7aは、接合工程において形成されなくてもよい。この場合、肉厚部7aは、後述する封止工程において形成されてもよい。
【0071】
(電解液注入工程)
電解液注入工程においては、図8に示す外装体3の開口領域3bを介して電解液を外装体3の収容空間6aに注入する。
【0072】
(初期充電工程)
初期充電工程においては、外装体3の内部に収容された膜電極接合体2の充電を、第1タブ16及び第2タブ26を介して実施する。初期充電工程においては、まず、図11に示すように、外部領域辺3gにおいて、第1部材4と第2部材5とを熱溶着によって接合する。外部領域辺3gにおいて第1部材4と第2部材5とを接合する方法は、例えば収容工程の接合工程において第1部材4と第2部材5とを接合する方法と同様である。これによって、外装体3の内部の収容空間6aを含む空間を封止する。
【0073】
次に、充電用の電源を用意し、電源の正極を第1タブ16に、電源の負極を第2タブ26に、それぞれ電気的に接続する。次に、電源を用いて、積層型電池1に電流を流す。これによって、積層型電池1が初期充電される。膜電極接合体2を充電することによって、外装体3の内部の収容空間6aを含む空間内にガスが発生する。
【0074】
次に、発生したガスを、開口領域3bを通して収容空間6aから抜く、ガス抜き工程を実施する。ガス抜き工程においては、外装体3を第4辺形成予定線L1に沿って裁断する。これによって、図12に示すように、収容空間6aを、開口領域3bを通して外部に連通させ、初期充電によって発生したガスを収容空間6aから抜くことができる。なお、外装体3を第4辺形成予定線L1に沿って裁断することによって、外装体3に第4辺3fが形成される。
【0075】
(封止工程)
封止工程においては、図13に示すように、開口領域3bにおいて第1部材4と第2部材5とを熱溶着によって接合し、第2封止領域72を形成する。
【0076】
まず、封止工程を実施するために用いられる封止工程ヒートシーラー60について、図13を参照して説明する。図13に示すように、封止工程ヒートシーラー60は、封止工程第1ヒートバー61と、封止工程第2ヒートバー66と、を有する。封止工程ヒートシーラー60は、例えば、封止工程第1ヒートバー61の第1押圧面61a及び封止工程第2ヒートバー66の第2押圧面66aが開口領域3bの範囲を押圧可能な形状を有する以外は、接合工程ヒートシーラー50と同様である。図13に示す封止工程第1ヒートバー61の第1押圧面61a及び封止工程第2ヒートバー66の第2押圧面66aのd1方向における寸法w4は、例えば接合工程において形成された第1肉厚部7a1と第2肉厚部7a2との間の距離よりも小さい。これによって、第1肉厚部7a1と第2肉厚部7a2との間の位置において、第1肉厚部7a1又は第2肉厚部7a2に阻害されることなく、第1押圧面61aを第1部材4に接触させ、第2押圧面66aを第2部材5に接触させることができる。このため、第1肉厚部7a1と第2肉厚部7a2との間の位置において第1部材4を押圧して、第1部材4と第2部材5とを接合することができる。
【0077】
封止工程ヒートシーラー60を用いて開口領域3bの第1部材4と第2部材5とを接合する方法は、例えば、収容工程の接合工程において接合工程ヒートシーラー50を用いて第1部材4と第2部材5とを接合する方法と同様である。これによって、図3及び図7に示すように、開口領域3bにおいて、第1部材4の熱可塑性樹脂層4b及び第2部材5の熱可塑性樹脂層5bから、第1部材4と第2部材5とを接合する外装体接合層8を形成することによって、第2封止領域72を形成することができる。以下において、図3及び図7に示す、開口領域3bにおいて第1部材4と第2部材5とを接合する外装体接合層8を、第2外装体接合層8bとも称する。このようにして、開口領域3bを閉鎖し、外装体3の内部に封止された膜電極接合体2を備える積層型電池1を作製することができる。
【0078】
ところで、第1部材4が封止工程第1ヒートバー61の第1押圧面61aから加熱及び押圧されている間、第1部材4の熱可塑性樹脂層4b及び第2部材5の熱可塑性樹脂層5bは溶融している。溶融状態の熱可塑性樹脂は、流動性を有する。このため、溶融状態の熱可塑性樹脂は、第1押圧面61aから押圧される部分から押圧されない部分へ向かう力を受ける。これにより、溶融状態の熱可塑性樹脂が、第1押圧面61aから押圧される領域側から肉厚部7a側へ押し出される。このようにして、図7及び図13に示すように、接合工程において形成された肉厚部7aの、第4辺3fが延びる方向における寸法及び外装体3の厚み方向における寸法が、封止工程においてより大きくなってもよい。なお、図示はしないが、接合工程において肉厚部7aが形成されなかった場合に、封止工程において、溶融状態の熱可塑性樹脂が、第1押圧面61aから押圧される領域側から押し出されることによって、肉厚部7aが形成されてもよい。なお、図7及び図13に示すように、第2封止領域72のうち第1押圧面61aから押圧される領域には、平坦な第2平坦部7cが形成される。
【0079】
本実施の形態に係る積層型電池1によってもたらされる作用効果について、比較例と比較することによって具体的に説明する。
【0080】
〔比較例〕
比較例として、収容工程において、外装体3の第4辺形成予定線L1のうち第1辺封止領域73と第2辺封止領域74との間の部分の全域を開口領域3bとする外装体3に、膜電極接合体2を収容する場合について考える。図13は、収容工程の接合工程において、外装体3の第4辺形成予定線L1のうち第1辺封止領域73と第2辺封止領域74との間の部分の全域を開口領域3bとする外装体3に膜電極接合体2を収容した様子を示す図である。この場合、開口領域3bを通して電解液を注入する際に、第4辺形成予定線L1のうち第1辺封止領域73と第2辺封止領域74との間の部分の全域に電解液が付着する可能性があった。このため、第4辺3fのうち第1辺封止領域73と第2辺封止領域74との間の部分の全域における第1部材4と第2部材5との接合が、電解液によって阻害される可能性があった。
【0081】
これに対して、本実施の形態に係る外装体3の開口領域3bは、第4辺形成予定線L1又は第4辺3fのうち第1辺封止領域73と第2辺封止領域74との間の一部に位置する。そして、本実施の形態に係る積層型電池の製造方法においては、この開口領域3bを通して電解液を供給する。このため、第1部材4と第2部材5とを接合する領域のうち電解液が付着する可能性のある領域を、第4辺3fの一部に限定することができる。これにより、第1部材4と第2部材5との接合強度を強くし、積層型電池1の不良率を低減させることができる。
【0082】
以上において、具体例を参照しながら一実施の形態を説明してきたが、上述した具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0083】
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0084】
(開口領域の変形例)
上述の実施の形態においては、開口領域3bが、第1封止領域71の第2辺封止領域74と、第1封止領域71の第4辺部分封止領域76aとの間に位置する例を示した。しかしながら、開口領域3bの位置はこれに限られない。図15に示す例において、第1封止領域71の第1封止領域71の第4辺部分封止領域76aは、第1辺3c側に位置する第1部分711と、第2辺3d側に位置する第2部分712と、を有する。この場合に、開口領域3bは、図15に示すように、第1部分711と第2部分712との間に位置する。
【0085】
収容工程において、本変形例に係る開口領域3bを有する外装体3の内部に膜電極接合体2を収容し、電解液注入工程及び封止工程を実施した場合、図16に示す積層型電池1を得ることができる。図16に示す例において、封止領域7のうち第4辺3fに位置する部分は、第1平坦部7b、第2平坦部7cを含むとともに、第2平坦部7cよりも第2辺3d側に位置する第3平坦部7dをさらに有する。図17は、図16の外装体3の封止領域7のXVII-XVII線に沿った断面の一例を示す断面図である。図17に示す例において、第2肉厚部7a2は、第2平坦部7cと第3平坦部7dとの間に位置する。第2肉厚部7a2の厚みt4は、第3平坦部7dの厚みt9よりも大きい。この場合、第2肉厚部7a2における外装体接合層8の厚みt8は、例えば第3平坦部7dにおける外装体接合層8の厚みt10の2.5倍以上4.5倍以下である。また、第2肉厚部7a2における外装体接合層8の厚みt8は、第3平坦部7dにおける外装体接合層8の厚みt10よりも0.3mm以上0.5mm以下だけ大きくてもよい。
【0086】
(肉厚部の変形例)
上述の実施の形態及び変形例においては、封止領域7の第4辺封止領域76が、第1肉厚部7a1と第2肉厚部7a2とを有する例について説明した。しかしながら、肉厚部7aの形態は、これに限られない。例えば図18に示すように、封止領域7の第4辺封止領域76は、第2肉厚部7a2を有しなくてもよい。この場合、第1平坦部7bは、封止領域7の第1辺封止領域73まで広がり、第2平坦部7cは、封止領域7の第2辺封止領域74まで広がってもよい。本変形例における第2平坦部7cは、図18に示すように、封止領域7の第2辺封止領域74の外周平坦部7eと接するように広がっている。また、本変形例における第1平坦部7bは、図示はしないが、封止領域7の第1辺封止領域73の外周平坦部7eと接するように広がっている。
【0087】
この場合、図18に示す第1肉厚部7a1と封止領域7の第2辺封止領域74との間の距離w5は、封止領域7の第1辺封止領域73と封止領域7の第2辺封止領域74との間の距離の、0.05倍以上0.3倍以下である。
【0088】
(封止工程の第1の変形例)
上述の実施の形態及び各変形例においては、封止工程において第1部材4と第2部材5とを接合する方法が、収容工程の接合工程において第1部材4と第2部材5とを接合する方法と同様である例について説明した。しかしながら、封止工程の態様は、これに限られない。例えば、開口領域3bに形成される第2封止領域72における第1部材4と第2部材5との接合強度が、第1辺3c、第2辺3d及び第3辺3eの全域並びに第4辺3fの一部に形成される第1封止領域71における接合強度よりも小さくなるように、封止工程において第1部材4と第2部材5とを接合する方法を選択してもよい。例えば、封止工程における封止工程第1ヒートバー61及び封止工程第2ヒートバー66の温度を、収容工程の接合工程における接合工程第1ヒートバー51及び接合工程第2ヒートバー56の温度よりも低くすることによって、第2封止領域72における接合強度を第1封止領域71における接合強度よりも小さくすることができる。この場合、例えばガスの発生などに起因して外装体3の収容空間6a内の圧力が高まった場合には、第1封止領域71及び第2封止領域72において接合されている第1部材4と第2部材5とが、第1封止領域71よりも狭い領域に限定されている第2封止領域72において、優先的に分離される。これによって、第2封止領域72において開口を形成し、収容空間6a内の圧力を下げることができる。このため、第1封止領域71を含む広範囲において第1部材4と第2部材5とが分離されることを抑制することができる。
【0089】
封止工程において、第2封止領域72における接合強度が第1封止領域71における接合強度よりも小さくなるように第1部材4と第2部材5とを接合する場合、例えば図19に示すように、封止工程において、第2封止領域72の厚みt2が、第1封止領域71の厚みt1、t11よりも大きくなるように、第2封止領域72を形成する。なお、第1封止領域71の厚みとは、例えば第1封止領域71に位置する平坦部の厚みのうち最大の厚みを意味する。また、第2封止領域72の厚みとは、例えば第2封止領域72に位置する平坦部の厚みのうち最大の厚みを意味する。この場合、封止工程においては、例えば第2外装体接合層8bの厚みt6が、封止工程前の開口領域3bにおける第1部材4の熱可塑性樹脂層4bの厚みと第2部材5の熱可塑性樹脂層5bの厚みとを合計した厚みの、90%以上となるように、第2封止領域72を形成する。また、収容工程の接合工程においては、例えば第1外装体接合層8aの厚みt5,t12が、接合工程前の収容領域6の外周における第1部材4の熱可塑性樹脂層4bの厚みと第2部材5の熱可塑性樹脂層5bの厚みとを合計した厚みの、90%未満となるように、第1封止領域71を形成する。なお、第1外装体接合層8aの厚みとは、例えば第1封止領域71に位置する平坦部における外装体接合層8の厚みのうち最大の厚みを意味する。また、第2外装体接合層8bの厚みとは、例えば第2封止領域72に位置する平坦部における外装体接合層8の厚みのうち最大の厚みを意味する。この場合、第2外装体接合層8bの厚みt6は、収容領域6、すなわち外装体接合層8が形成されていない領域における第1部材4の熱可塑性樹脂層4bの厚みと第2部材5の熱可塑性樹脂層5bの厚みとを合計した厚みの、90%以上である。また、第1外装体接合層8aの厚みt5,t12は、収容領域6における第1部材4の熱可塑性樹脂層4bの厚みと第2部材5の熱可塑性樹脂層5bの厚みとを合計した厚みの、90%未満である。以下、収容領域6における第1部材4の熱可塑性樹脂層4bの厚みと第2部材5の熱可塑性樹脂層5bの厚みとを合計した厚みを、基準厚みとも称する。
【0090】
上述の場合、図19に示すように、封止領域7の第4辺封止領域76のうち、封止工程において形成される第2平坦部7cの厚みt2は、収容工程の接合工程において形成される第1平坦部7bの厚みt1よりも大きくなる。また、図19に示すように、第2平坦部7cの厚みt2は、収容工程の接合工程において形成される封止領域7のうち第1辺封止領域73、第2辺封止領域74及び第3辺封止領域75の厚みよりも大きくなる。なお、第1辺封止領域73、第2辺封止領域74及び第3辺封止領域75の厚みとは、例えば第1辺封止領域73、第2辺封止領域74又は第3辺封止領域75に位置する平坦部の厚みのうち最大の厚みを意味する。この場合、図19に示す第2平坦部7cにおける外装体接合層8の厚みt6は、例えば基準厚みの90%以上である。また、図19に示す第1平坦部7bにおける外装体接合層8の厚みt5は、例えば基準厚みの90%未満である。また、第1辺封止領域73、第2辺封止領域74及び第3辺封止領域75における外装体接合層8の厚みは、例えば基準厚みの90%未満である。なお、封止領域7のうち第1辺封止領域73、第2辺封止領域74及び第3辺封止領域75における外装体接合層8の厚みとは、例えば第1辺封止領域73、第2辺封止領域74又は第3辺封止領域75に位置する平坦部における外装体接合層8の厚みのうち最大の厚みを意味する。図19に示す封止領域7のうち第1辺封止領域73、第2辺封止領域74及び第3辺封止領域75の外周平坦部7eにおける外装体接合層8の厚みt12は、例えば基準厚みの90%未満である。図19に示す厚みt6は、例えば基準厚みの100%以下である。また、図19に示す厚みt5,t12は、例えば基準厚みの30%以上である。
【0091】
(封止工程の第2の変形例)
上述の電解液注入工程においては、電解液が開口領域3bの第1部材4の内面又は第2部材5の内面に付着することがある。電解液が付着した状態で第1部材4及び第2部材5を加熱及び押圧した場合、第2封止領域72に外装体接合層8が形成されない部分が生じたり、第2封止領域72の外装体接合層8の接合強度が低くなったりすることが考えられる。
【0092】
このような課題を考慮し、封止工程は、第1部材4の内面又は第2部材5の内面に付着した電解液を取り除くように実施してもよい。以下、第1部材4の内面又は第2部材5の内面に付着した電解液を取り除くように実施する、封止工程の第2の変形例について詳細に説明する。まず、封止工程を実施するために用いられる封止工程ヒートシーラー60について、図20を参照して説明する。
【0093】
封止工程ヒートシーラー60は、図20に示すように、第1部材4を加熱しながら第1部材4を第2部材5に向けて押圧する封止工程第1ヒートバー61と、第2部材5を支持する封止工程第2ヒートバー66と、を有する。封止工程第1ヒートバー61は、第1部材4の厚み方向に沿って移動して第1部材4を押圧する。封止工程第2ヒートバー66も、封止工程第1ヒートバー61と同様に、第2部材5を加熱しながら第2部材5を第1部材4に向けて押圧してもよい。
【0094】
図20に示すように、封止工程第1ヒートバー61は、第1部材4に対向する傾斜した第1押圧面61aを含む弾性体63と、弾性体63を支持する基部62と、を有する。以下、弾性体63の傾斜した第1押圧面61aを、傾斜面61bとも称する。弾性体63は、基部62よりも低い弾性係数を有する部材である。図示はしないが、封止工程第2ヒートバー66も、封止工程第1ヒートバー61と同様に、第2部材5に対向する弾性体と、弾性体を支持する基部と、を有していてもよい。
【0095】
弾性体63の傾斜面61bは、傾斜面61bと第1部材4との間の間隔が収容領域6側に向かうにつれて増加するよう、第1部材4の面方向に対して傾斜している。第1部材4の面方向に対する弾性体63の傾斜面61bの傾斜角度は、例えば0.2°以上2°以下である。
【0096】
図20において、符号63aは、第1部材4に対向する弾性体63の面の、収容領域6側の端部を表し、符号63bは、第1部材4に対向する弾性体63の面の、収容領域6から遠い側の、すなわち外側の端部を表す。図20に示す例において、傾斜面61bは、弾性体63の面の収容空間6a側の端部63aから外側の端部63bにまで広がっている。すなわち、傾斜面61bは、第1部材4に対向し第1部材4に接触する弾性体63の面の全域を構成している。なお、傾斜面61bは、第1部材4に対向し第1部材4に接触する弾性体63の面の一部であってもよい。
【0097】
図20において、符号62aは、第1部材4に対向する弾性体63に接触する基部62の面の、収容領域6側の端部を表し、符号62bは、第1部材4に対向する弾性体63に接触して弾性体63を支持する基部62の面の、収容領域6から遠い側の、すなわち外側の端部を表す。図20に示す例においては、基部62の面のうち、基部62の外側の端部62bが、封止工程第1ヒートバー61の移動方向において最も第1部材4側に位置している。また、弾性体63の面のうち、弾性体63の収容領域6側の端部63aが、封止工程第1ヒートバー61の移動方向において最も第1部材4から遠位に位置している。この場合、弾性体63の収容領域6側の端部63aは、第1部材4に対向する弾性体63の面の中で最後に第1部材4に接触する。好ましくは、端部63aのような最後に第1部材4に接触する部分は、封止工程第1ヒートバー61の移動方向において、基部62の面のうち最も第1部材4側に位置する部分(ここでは端部62b)よりも第1部材4側に位置する。これにより、基部62の面のうち最も弾性体63側に位置する部分によって第1部材4が過剰に押圧されることを抑制することができる。
【0098】
次に、封止工程ヒートシーラー60を用いて開口領域3bにおいて外装体3を接合する方法について説明する。封止工程第1ヒートバー61を第1部材4側へ移動させると、図21に示すように、第1部材4のうち外側に位置する部分が、第1部材4のうち収容領域6側に位置する部分よりも先に封止工程第1ヒートバー61の弾性体63に接触し、加熱及び押圧される。このため、第1部材4のうち外側に位置する部分に外装体接合層8が形成される。この際、弾性体63のうち第1部材4に接触した部分は、図21に示すように、封止工程第1ヒートバー61の移動方向において圧縮変形する。封止工程第1ヒートバー61が第1部材4に加える力は、弾性体63の圧縮変形量が増加するほど大きくなる。
【0099】
図22は、第1部材4のうち収容領域6側に位置する部分にも封止工程第1ヒートバー61の弾性体63に接触するようになるまで封止工程第1ヒートバー61を第1部材4側へ移動させた状態を示している。図22に示す状態においては、封止領域7となるべき第1部材4の全域に弾性体63が接触し、弾性体63が圧縮変形している。弾性体63の圧縮変形の程度は、外側ほど大きい。このため、封止工程第1ヒートバー61が第1部材4に加える力は、外側ほど大きい。
【0100】
第1部材4が封止工程第1ヒートバー61から加熱及び押圧されている間、第1部材4の熱可塑性樹脂層4b及び第2部材5の熱可塑性樹脂層5bは溶融している。溶融状態の熱可塑性樹脂は、流動性を有する。また、封止工程第1ヒートバー61が第1部材4に加える力は、外側ほど大きい。このため、溶融状態の熱可塑性樹脂は、外側から収容空間6a側へ向かう力を受ける。従って、仮に第1部材4の内面や第2部材5の内面に電解液8sが付着していた場合であっても、図21及び図22に示すように、電解液8sを収容空間6a側へ移動させることができる。従って、図22に示すように、外装体接合層8のうち少なくとも外側の部分に電解液8sが残ることを抑制することができる。これにより、外装体接合層8の少なくとも一部に、電解液8sが残留しておらず、十分な接合強度を有する部分を設けることができる。このことにより、外装体3の収容空間6aが外部に連通してしまうことを抑制することができる。
【0101】
また、封止工程を実施する際に、収容工程の接合工程などにおいて、既に開口領域3bの近傍に肉厚部7aが形成されている場合について考える。この場合、封止工程第1ヒートバー61の第1押圧面61aが弾性体63で構成されていることによって、封止工程第1ヒートバー61を用いて第1部材4を押圧する際に、第1押圧面61aの形状を、肉厚部7aの形状に合わせて弾性変形させることができる。このため、肉厚部7aに阻害されることなく、第1押圧面61aを開口領域3bの第1部材4に接触させることができる。以上より、第1押圧面61aを開口領域3bに接触させつつ第1部材4を押圧して、第1部材4と第2部材5とを接合することができる。
【0102】
以上において、具体例を参照しながら一実施の形態を説明してきたが、上述した具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0103】
1 積層型電池
2 膜電極接合体
3 外装体
3b 開口領域
3c 第1辺
3d 第2辺
3e 第3辺
3f 第4辺
3g 外部領域辺
4 第1部材
4a 基材
5 第2部材
5a 基材
6 収容領域
6a 収容空間
7 封止領域
71 第1封止領域
711 第1部分
712 第2部分
72 第2封止領域
73 第1辺封止領域
74 第2辺封止領域
75 第3辺封止領域
76 第4辺封止領域
76a 第4辺部分封止領域
7a 肉厚部
7a1 第1肉厚部
7a2 第2肉厚部
7b 第1平坦部
7c 第2平坦部
7d 第3平坦部
7e 外周平坦部
8 外装体接合層
8s 電解液
9 外部領域
10 第1電極板
10X 正極板
11 第1電極集電体
11X 正極集電体
11a 第1面
11b 第2面
12 第1電極活物質層
12X 正極活物質層
16 第1タブ
18 第1シーラント
20 第2電極板
20Y 負極板
21 第2電極集電体
21Y 負極集電体
21a 第1面
21b 第2面
22 第2電極活物質層
22Y 負極活物質層
26 第2タブ
28 第2シーラント
30 絶縁体
50 接合工程ヒートシーラー
51 接合工程第1ヒートバー
51a 第1押圧面
56 接合工程第2ヒートバー
56a 第2押圧面
60 封止工程ヒートシーラー
61 封止工程第1ヒートバー
61a 第1押圧面
61b 傾斜面
62 基部
63 弾性体
66 封止工程第2ヒートバー
66a 第2押圧面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
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