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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】柱調整体、柱および外構建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 11/02 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
E06B11/02 Q
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019107776
(22)【出願日】2019-06-10
(65)【公開番号】P2020200647
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 聖太
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-156258(JP,A)
【文献】特開2016-89570(JP,A)
【文献】特開2005-189759(JP,A)
【文献】特開2004-169546(JP,A)
【文献】特開2005-127064(JP,A)
【文献】特開2005-9192(JP,A)
【文献】特開平11-226071(JP,A)
【文献】特許第4427603(JP,B1)
【文献】実開平6-72767(JP,U)
【文献】実開平6-58096(JP,U)
【文献】実開昭61-168299(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00-27/52
E04B 1/00- 1/61
E04H 17/00-17/26
E06B 11/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱本体が取り付けられる柱調整体であって、
前記柱本体の上下方向に直交する上面を有した柱基体と、
前記柱本体を取付可能な取付部を有した柱取付部材と、
前記柱取付部材を前記柱基体の上面に対して傾動調整可能な傾動調整機構、および、前記柱取付部材を前記柱基体の上面に沿って移動調整可能な移動調整機構によって構成される調整ユニットとを備え、
前記柱取付部材は、前記調整ユニットの上下方向に沿った軸心周りにおける前記取付部の位置を回転調整可能に前記調整ユニットに支持されている
ことを特徴とする柱調整体。
【請求項2】
請求項1に記載の柱調整体において、
前記調整ユニットは、前記柱基体に対してその奥行方向に移動可能に連結された第一移動部材と、前記第一移動部材に対してその奥行方向に傾動可能に連結された第一傾動部材と、前記第一傾動部材に対してその左右方向に移動可能に連結された第二移動部材と、前記第二移動部材に対してその左右方向に傾動可能に連結された第二傾動部材とを備え、
前記第一移動部材および前記第二移動部材に対して傾動可能に連結された前記第一傾動部材および前記第二傾動部材によって前記傾動調整機構が構成され、
前記柱基体および前記第一傾動部材に対して移動可能に連結された前記第一移動部材および前記第二移動部材によって前記移動調整機構が構成されている
ことを特徴とする柱調整体。
【請求項3】
請求項2に記載の柱調整体において、
前記第一移動部材および前記第二移動部材は、下板部および前記下板部から上方に延出した一対の側板部をそれぞれ有し、
前記第一傾動部材および前記第二傾動部材は、上板部および前記上板部から下方に延出した一対の側板部をそれぞれ有し、
前記第一傾動部材および前記第二傾動部材の各側板部は、前記第一移動部材および前記第二移動部材の各側板部に対して連結軸によって傾動可能に連結され、
前記第一傾動部材および前記第二傾動部材には、前記第一移動部材および前記第二移動部材の各側板部に固定される固定具が挿通可能な固定孔が形成されている
ことを特徴とする柱調整体。
【請求項4】
請求項3に記載の柱調整体において、
前記第二移動部材および前記第二傾動部材のうちの一方の各側板部には、前記連結軸が挿通される上下方向に沿った軸長孔が形成され、当該他方の各側板部には、前記連結軸が固定されている
ことを特徴とする柱調整体。
【請求項5】
請求項4に記載の柱調整体において、
前記第一移動部材の下板部には、奥行方向に沿っていると共に前記柱基体に固定される連結軸が挿通されるガイド孔が形成され、
前記第二移動部材の下板部には、左右方向に沿っていると共に前記第一傾動部材の上板部に固定される連結軸が挿通されるガイド孔が形成されている
ことを特徴とする柱調整体。
【請求項6】
請求項1または請求項5のいずれか一項に記載の柱調整体において、
前記調整ユニットには、上方に突出した軸部が形成され、
前記柱取付部材には、前記軸部が挿通される軸孔が形成され、
前記柱取付部材は、前記軸部の周りで回転可能に前記調整ユニットに支持されている
ことを特徴とする柱調整体。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の柱調整体と、
前記柱調整体に取り付けられた柱本体とを備えている
ことを特徴とする柱。
【請求項8】
請求項7に記載の柱と、前記柱に支持される扉体とを備える
ことを特徴とする外構建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、跳ね上げ式門扉等の柱の建付けを調整する柱調整体、柱および外構建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地面に左右の門柱(柱)を立設し、左右の門柱に門扉をそれぞれ取り付けて構成される門扉が知られている(特許文献1参照)。門柱は、その下部を地面に設けた孔に挿入し、この孔に生コンクリートを打設し、打設した生コンクリートが硬化することによって、地面に立設される。門扉は、門柱間に設置された冶具に支持された状態で門柱に吊られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-5387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の門扉では、地面に設けた孔に投入した生コンクリートの打設時や養生期間中に、門柱が風や門柱の重量などの影響を受けて当該門柱の建付けがズレるおそれがあり、建付けズレが生じた状態のまま生コンクリートが硬化してしまうと、門柱の建付けを調整することが困難である。
【0005】
本発明の目的は、生コンクリートの硬化後に柱の建付けを調整可能な柱調整体、柱および外構建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の柱調整体は、柱本体が取り付けられる柱調整体であって、前記柱本体の上下方向に直交する上面を有した柱基体と、前記柱本体を取付可能な取付部を有した柱取付部材と、前記柱取付部材を前記柱基体の上面に対して傾動調整可能な傾動調整機構、および、前記柱取付部材を前記柱基体の上面に沿って移動調整可能な移動調整機構によって構成される調整ユニットとを備え、前記柱取付部材は、前記調整ユニットの上下方向に沿った軸心周りにおける前記取付部の位置を回転調整可能に前記調整ユニットに支持されていることを特徴とする。
本発明の柱は、前述した本発明の柱調整体と、前記柱調整体に取り付けられた柱本体とを備えていることを特徴とする。
本発明の外構建具は、前述した本発明の柱と、前記柱に支持される扉体とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、生コンクリートの硬化後に柱の建付けを調整可能な柱調整体、柱および外構建具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る柱調整体の設置状態を示す斜視図。
図2】前記実施形態に係る柱調整体を示す斜視図。
図3】前記実施形態に係る柱調整体を展開して示す斜視図。
図4】前記実施形態に係る柱調整体の設置を示す斜視図。
図5】前記実施形態に係る柱調整体を備えた柱の建付けを示す説明図。
図6】前記実施形態に係る柱調整体による奥行方向の倒れ調整を示す説明図。
図7】前記実施形態に係る柱調整体による間口方向の倒れ調整を示す説明図。
図8】前記実施形態に係る柱調整体による高さ位置調整を示す説明図。
図9】前記実施形態に係る柱調整体による奥行方向および間口方向の位置調整を示す説明図。
図10】前記実施形態に係る柱調整体による柱向き調整を示す説明図。
図11】前記実施形態に係る柱調整体を備えた柱の設置を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2において、本実施形態に係る柱調整体10は、外構建具としての跳ね上げ式門扉1(図5(A)参照)の左右の柱5にそれぞれ組み込まれるものである。跳ね上げ式門扉1は、地面2に立設された左右の柱5と、左右の柱5に回動可能に取り付けられた回動アーム3と、回動アーム3に取り付けられた扉体4とによって構成されている。左右の柱5は、地面2に設置される柱調整体10と、柱調整体10に取り付けられる断面略中空矩形状の柱本体6とを備えている。
以下の説明において、跳ね上げ式門扉1の間口方向(柱5の左右方向)をX軸方向とし、跳ね上げ式門扉1の上下方向(柱5の上下方向)をY軸方向とし、跳ね上げ式門扉1の奥行方向(柱5の奥行方向)をZ軸方向とする。X,Y,Z軸方向は互いに直交する。
【0010】
柱調整体10は、図2および図3に示すように、地面2に形成された穴21(図4参照)に埋め込まれる断面矩形状の柱基体7と、柱基体7に取り付けられる調整ユニット11と、調整ユニット11に支持された柱取付部材70とを備えている。
柱基体7は、地面2に形成された穴21に埋め込まれる中空矩形状の埋込部材7Aと、埋込部材7Aに固定される断面コ字形状の固定部材20とによって構成されている。固定部材20は、Y軸方向に直交する上面222を有した上板部22と、上板部22のX軸方向に沿った両縁から下方に延出した一対の側板部23,24とを有して断面コ字形状に形成されている。上板部22には、後述する連結ネジ322(タップネジ)が螺合する二つの螺合孔221が形成されている。側板部23,24には二つの固定孔25が形成されている。固定部材20は、埋込部材7Aに挿通された固定具としての固定ネジ26(タップネジ)が固定孔25に螺合することで埋込部材7Aにネジ止めされる。
調整ユニット11は、柱基体7に対してその奥行方向に移動可能に連結された第一移動部材31と、第一移動部材31に対してその上下方向および奥行方向に直交する軸心周りに傾動可能に連結された第一傾動部材41と、第一傾動部材41に対してその左右方向に移動可能に連結された第二移動部材51と、第二移動部材51に対してその上下方向および左右方向に直交する軸心周りに傾動可能に連結された第二傾動部材61とを備えており、第一移動部材31および第二移動部材51に対して傾動可能に連結された第一傾動部材41および第二傾動部材61によって傾動調整機構30が構成されており、柱基体7および第一傾動部材41に対して移動可能に連結された第一移動部材31および第二移動部材51によって移動調整機構50が構成されている。第二傾動部材61は柱取付部材70を支持している。
柱取付部材70、固定部材20、第一移動部材31、第一傾動部材41、第二移動部材51および第二傾動部材61は、ステンレス(SUS)やスチールなどの金属材料によって形成されている。
【0011】
第一移動部材31は、Z軸方向に沿った二つのガイド孔321が形成された下板部32と、下板部32のZ軸方向に沿った両縁から上方に延出した一対の側板部33,34とを有して断面コ字形状に形成されている。各ガイド孔321には、連結軸としての連結ネジ322が挿通され、連結ネジ322は固定部材20の上板部22における螺合孔221に螺合している。このため、第一移動部材31は、連結ネジ322を締め込むことで固定部材20に対して不動に固定される一方、連結ネジ322を緩めることで固定部材20に対してガイド孔321に案内されながらZ軸方向に移動可能な状態となる。また、一対の側板部33,34には、後述する連結軸としての軸ネジ45が螺合する螺合孔36が形成されている。
【0012】
第一傾動部材41は、上板部42と、上板部42のZ軸方向に沿った両縁から下方に延出した一対の側板部43,44とによって断面コ字形状に形成されている。上板部42には後述する連結軸としての連結ネジ522(タップネジ)が螺合する二つの螺合孔421が形成されている。側板部43,44には、軸ネジ45(タップネジ)が挿通される軸孔46と、固定孔47と、予備固定孔48とが形成されている。第一傾動部材41は、軸ネジ45が各軸孔46に挿通されて第一移動部材31の側板部33,34における螺合孔36に螺合することで、第一移動部材31に対して軸ネジ45を軸心としてXR方向に傾動可能な状態となる。また、第一傾動部材41は、固定孔47に固定具としての固定ネジ471(ドリルネジ)が挿通されて第一移動部材31の側板部33,34にネジ込まれることで、第一移動部材31に対して傾動不能にネジ止めされる。
【0013】
第二移動部材51は、X軸方向に沿った二つのガイド孔521が形成された下板部52と、下板部52のX軸方向に沿った両縁から上方に延出した一対の側板部53,54とを有して断面コ字形状に形成されている。各ガイド孔521には、連結ネジ522が挿通され、連結ネジ522は第一傾動部材41の上板部42における螺合孔421に螺合している。このため、第二移動部材51は、連結ネジ522を締め込むことで第一傾動部材41に対して不動に固定される一方、連結ネジ522を緩めることで第一傾動部材41に対してガイド孔521に案内されながらX軸方向に移動可能な状態となる。また、一対の側板部53,54には、後述する連結軸としての軸ネジ65(タップネジ)が螺合する螺合孔56が形成されている。
【0014】
第二傾動部材61は、上方に突出した軸部621が形成された上板部62と、上板部62のX軸方向に沿った両縁から下方に延出した一対の側板部63,64とによって断面コ字形状に形成されている。軸部621は上板部62の中央位置に配置されている。軸部621にはナット622が螺合する。側板部63,64には、軸ネジ65が挿通されるY軸方向に沿った軸長孔66と、固定孔67と、予備固定孔68とが形成されている。第二傾動部材61は、軸ネジ65が各軸長孔66に挿通されて第二移動部材51の側板部53,54における螺合孔56に螺合することで、第二移動部材51に対して軸ネジ65を軸心としてZR方向に傾動可能であると共に、軸長孔66に沿ってY軸方向に移動可能な状態となる。また、第二傾動部材61は、固定孔67に固定具としての固定ネジ671(ドリルネジ)が挿通されて第二移動部材51の側板部53,54にネジ込まれることで、第二移動部材51に対して傾動不能に且つ上下動不能にネジ止めされる。
【0015】
柱取付部材70は、上板部72と、上板部72のX軸方向に沿った両縁から下方に延出した一対の側板部73,74(取付部)とを有して断面コ字形状に形成されている。上板部72には、第二傾動部材61の軸部621が挿通される軸孔721と、固定孔77と、予備固定孔78とが形成されている。軸孔721は、上板部72の中央位置に配置されている。側板部73,74には二つの固定孔79が形成されている。柱取付部材70は、Y軸方向に沿った軸部621を軸心としてYR方向に回転可能であり、固定具としての固定ネジ76(ドリルネジ)が固定孔77に挿通されて第二傾動部材61の上板部62にネジ込まれることによって第二傾動部材61に回転不能にネジ止めされる。側板部73,74は、第二傾動部材61の周囲でXR方向に少なくとも90°(本実施形態では360°)回転可能となる程度に広い間隔D(図6(A)参照)を隔てて配置されている。側板部73,74には、固定具としての固定ネジ75が柱本体6に挿通されて固定孔79に螺合することで、当該柱本体6が取り付けられる。
【0016】
以下、本実施形態に係る柱調整体10による柱5の建付け調整について説明する。
先ず、図4に示すように地面2に形成された左右の穴21に柱調整体10の埋込部材7Aを上方からそれぞれ差し込む。本実施形態では、左右の柱調整体10の柱取付部材70同士をX軸方向に沿った連結材100を用いて連結することで、柱基体7の建付けズレをなるべく抑えるように配置する。次に、生コンクリート101(図1参照)を各穴21に打設して養生する。ここで、風などの外的要因の影響を受けて柱基体7の建付けズレが生じ、その状態のまま生コンクリート101が硬化する場合があり、このまま柱本体6を設置すると柱5に建付けズレが残ったままとなる。柱5の建付けズレとしては、図5(A)に示すZ軸方向(奥行方向)の倒れ、図5(B)に示すX軸方向(間口方向(左右方向))の倒れ、図5(C)に示すY軸方向(上下方向)の位置ズレ、図5(D)に示す柱向きのズレや、図5(E)に示す柱5のX軸方向およびZ軸方向への位置ズレがある。このように建付けズレがある場合には建付け調整を行う。本実施形態では次の手順に沿って建付け調整を行う。なお、連結材100は生コンクリート101の硬化後に取り外す。
【0017】
本実施形態では、後述する第一調整手順から第七調整手順を経て柱調整体10による建付け調整を行う。
第一調整手順では、柱基体7のZ軸方向の倒れを調整する。具体的には、図6(A)に示すように、ドライバーやスパナなどの工具によって軸ネジ45を緩めた状態で第一傾動部材41を第一移動部材31に対してXR方向に傾動し、図6(B)に示すように柱取付部材70の側板部73,74をY軸方向に沿った状態とし、軸ネジ45を締める。これにより、柱取付部材70に柱本体6を取り付けた状態における図5(A)に示す奥行方向の傾きT1は調整されてなくなる。
第二調整手順では、柱基体7のX軸方向の倒れを調整する。具体的には、図7(A)に示すように柱取付部材70をYR方向に約90°回転して軸ネジ65を回転操作可能な状態とし、続いて、工具によって軸ネジ65を緩めて第二傾動部材61を第二移動部材51に対してZR方向に傾動し、図7(B)に示すように柱取付部材70の側板部73,74をY軸方向に沿った状態とする。これにより、柱取付部材70に柱本体6を取り付けた状態における図5(B)に示す間口方向の傾きT2は調整されてなくなる。
第三調整手順では、柱基体7のY軸方向の位置ズレを調整する。具体的には、図8(A)および図8(B)に示すように、第二調整手順に続いて第二傾動部材61を第二移動部材51に対して軸長孔66に沿ってY軸方向に移動して柱取付部材70の高さ位置を調整し、軸ネジ65を締める。これにより、柱取付部材70に柱本体6を取り付けた状態における図5(C)に示す高さ位置ズレHは調整されてなくなる。
第四調整手順では、柱基体7のX軸方向の位置ズレを調整する。具体的には、図9(A)に示すように工具によって連結ネジ522を緩めて第二移動部材51を第一傾動部材41に対してガイド孔521に沿ってX軸方向に移動し、連結ネジ522を締める。これにより、柱取付部材70に柱本体6を取り付けた状態における間口方向の位置ズレは調整されてなくなり、図5(D)および図5(E)に示すように左右の柱5の間隔W1を所定間隔にできる。なお、図9(A)では、説明の便宜上、調整ユニット11の一部や柱取付部材70などの図示を省略している。
第五調整手順では、柱基体7のZ方向の位置ズレを調整する。具体的には、図9(B)に示すように、工具によって連結ネジ322を緩めて第一移動部材31をガイド孔321に沿ってZ軸方向に移動し、連結ネジ322を締める。これにより、柱取付部材70に柱本体6を取り付けた状態における奥行方向の位置ズレは調整されてなくなる。なお、図9(B)では、説明の便宜上、調整ユニット11の一部や柱取付部材70などの図示を省略している。
第六調整手順では、柱基体7のY軸方向に沿った軸心周り向きのズレに対して、柱取付部材70をYR方向に回転させる。具体的には、工具によってナット622を緩めた状態で、図10(A)に示すように軸部621を中心として柱取付部材70をYR方向に回転し、図10(B)に示す所定の向きに配置してナット622を締める。これにより、柱取付部材70に柱本体6を取り付けた状態における柱向きは、図5(D)に示す状態から図5(E)に示す平行状態に調整され、図5(D)に示す柱5間の間隔W1,W2は同じ間隔となる。
第七調整手順では、上記各箇所の最終建付け調整をして各箇所を増し締め、固定する。具体的には、軸ネジ45,65、連結ネジ322,522およびナット622を増し締めし、固定ネジ76を固定孔77に差し込んで第二傾動部材61の上板部62にねじ込むことで固定し、固定ネジ471を固定孔47に差し込んで第一移動部材31の側板部33,34にねじ込むことで固定し、固定ネジ671を固定孔67に差し込んで第二移動部材51の側板部53,54にねじ込むことで固定する。なお、予備固定孔48,68,78は、柱調整体10による建付け調整を再度行う際に各種の固定ネジが挿通される。
このようにして、柱調整体10による建付け調整を行う。なお、本実施形態では第一調整手順から第七調整手順を経て建付け調整したが、柱基体7の倒れ、位置や向きのズレの発生状況に応じて、第一調整手順から第六調整手順の順番を変えてもよく、また、第一調整手順から第六調整手順における調整が不要な場合には不要な調整手順を省略してもよい。
【0018】
柱調整体10による建付け調整後は、図11に示すように、柱本体6を柱取付部材70の側板部73,74に固定ネジ75でネジ止めし、柱本体6に柱カバー8を装着する。そして、キャップ9に柱本体6を通させ、このキャップ9によって柱本体6と地面2との間の隙間を覆い、キャップ9を固定する。このようにして、柱5が構成され、柱調整体10はキャップ9によって外部に露出しない配置とされる。
【0019】
[変形例]
前記実施形態では、調整ユニット11は、第一移動部材31および第二移動部材51と第一傾動部材41および第二傾動部材61とを備えているが、例えば、柱5に別個の建付け調整機構が構成されている場合には、この建付け調整機構によって調整可能な移動や傾きに応じて、第一移動部材31、第二移動部材51、第一傾動部材41、第二傾動部材61のいずれかの部材を省略したり、いずれかの部材を移動や傾動しない固定的な部材に代えたりしてもよい。また、前記実施形態では、第一移動部材31に第一傾動部材41が連結され、第一傾動部材41に第二移動部材51が連結され、第二移動部材51に第二傾動部材61が連結されているが、連結順はこれに限らず、例えば、第一移動部材31に第二移動部材51が連結され、第二移動部材51に第二傾動部材61が連結され、第二傾動部材61に第一傾動部材41が連結されていてもよい。この場合、各部材の形状は例えばL字形状や箱型形状などの形状に適宜変更してもよい。
前記実施形態では、第二傾動部材61に軸長孔66が形成され且つ第二移動部材51に螺合孔56が形成されているが、これとは逆に、第二傾動部材61に螺合孔が形成され且つ第二移動部材51に軸長孔が形成されていてもよい。この場合、軸ネジ65は第二移動部材51の一対の側板部54の対向面側から軸長孔に挿通されて螺合孔に螺合する。また、前述した構成に代えてまたは加えて、第一移動部材31および第二傾動部材61のうちのいずれか一方に上下方向に沿った軸長孔が形成され且つ他方に螺合孔が形成され、軸ネジ45が前記軸長孔に挿通されて前記螺合孔に螺合していてもよい。なお、調整ユニット11によって柱本体6の高さ位置を調整可能に構成する必要がない場合には、軸長孔66を真円形状の軸孔に変更してもよい。
前記実施形態では、第一傾動部材41および第二傾動部材61が第一移動部材31および第二移動部材51をそれぞれ覆うアウトセット構成としているが、これに限らず、第一傾動部材41および第二傾動部材61が第一移動部材31および第二移動部材51の内側に入り込むインセット構成としてもよい。
前記実施形態では、調整ユニット11は、第一傾動部材41および第二傾動部材61を備えることでXR方向およびZR方向に傾動調整可能に構成されているが、これに限らず、例えばボールジョイントによって傾動可能に構成されていてもよい。
前記実施形態では、第一傾動部材41、第二傾動部材61および柱取付部材70には、建付け再調整用の予備固定孔48,68,78が形成されているが、建付け再調整に備える必要がない場合には予備固定孔48,68,78の構成を省略してもよい。
前記実施形態では、第一移動部材31および第二移動部材51にガイド孔321,521が各二つ形成されているが、各三つ以上形成されていてもよい。また、ガイド孔321,521は各一つだけ形成されていてもよいが、この場合、ガイド孔321,521には、所定間隔を隔てた二つ以上の連結ネジ322,522が挿通されるのが望ましいが、一つの連結ネジ322,522が挿通されてもよい。
前記実施形態では、第二傾動部材61に軸部621が形成され且つ柱取付部材70に軸孔721が形成されているが、これに限らず、軸孔が第二傾動部材61に形成され且つ柱取付部材70に下方に延出した軸部が形成され、この軸部が前記軸孔に挿通されていてもよい。
前記実施形態では、柱取付部材70の側板部73,74は、上板部72から下方に延出して形成されているが、これに限らず、上板部72から上方に延出して形成されていてもよい。
前記実施形態では、跳ね上げ式門扉1を外構建具として説明したが、このほか、各種の門扉やフェンス等であってもよい。
【0020】
[本発明のまとめ]
本発明の柱調整体は、柱本体が取り付けられる柱調整体であって、前記柱本体の上下方向に直交する上面を有した柱基体と、前記柱本体を取付可能な取付部を有した柱取付部材と、前記柱取付部材を前記柱基体の上面に対して傾動調整可能な傾動調整機構、および、前記柱取付部材を前記柱基体の上面に沿って移動調整可能な移動調整機構によって構成される調整ユニットとを備え、前記柱取付部材は、前記調整ユニットの上下方向に沿った軸心周りにおける前記取付部の位置を回転調整可能に前記調整ユニットに支持されていることを特徴とする。
本発明の柱調整体によれば、例えば基礎に形成された穴に柱基体を設置し、当該穴に生コンクリートを打設して硬化させた場合養生中に風等の外的要因の影響を受けて、柱基体の上面が水平面に対して傾いたり、柱基体が左右方向や奥行方向に位置ズレしたりするなどの建付けズレが発生していても、傾動調整機構によって柱取付部材を柱基体の上面に対して傾動させることで当該柱取付部材の傾きを所定傾きに調整でき、移動調整機構によって柱取付部材を柱基体の上面に沿って移動させることで当該柱取付部材の左右方向や奥行方向の位置を所定位置に調整でき、且つ、柱取付部材を調整ユニットの上下方向に沿った軸心周りで回転させることで当該柱取付部材の取付部の回転位置を所定回転位置に調整できる。このため、柱取付部材の取付部に取り付けられる柱本体の傾き、左右方向および奥行方向の位置、および上下方向に沿った軸心周りの向きの建付け調整を行うことができる。
【0021】
本発明の柱調整体では、前記調整ユニットは、前記柱基体に対してその奥行方向に移動可能に連結された第一移動部材と、前記第一移動部材に対してその奥行方向に傾動可能に連結された第一傾動部材と、前記第一傾動部材に対してその左右方向に移動可能に連結された第二移動部材と、前記第二移動部材に対してその左右方向に傾動可能に連結された第二傾動部材とを備え、前記第一移動部材および前記第二移動部材に対して傾動可能に連結された前記第一傾動部材および前記第二傾動部材によって前記傾動調整機構が構成され、前記柱基体および前記第一傾動部材に対して移動可能に連結された前記第一移動部材および前記第二移動部材によって前記移動調整機構が構成されていてもよい。
このような構成によれば、第一移動部材および第二移動部材の移動によって柱取付部材の奥行方向および左右方向における位置を調整でき、第一傾動部材および第二傾動部材の傾動によって柱取付部材の奥行方向および左右方向における傾きを調整でき、且つ、柱取付部材の回転によって上下方向に沿った軸心周りにおける取付部の回転位置を調整できる。
また、調整ユニットは、第一移動部材、第一傾動部材、第二移動部材および第二傾動部材を連結して構成されているので、第一移動部材の奥行方向の移動、第二傾動部材の奥行方向の傾動、第二移動部材の左右方向の移動、および第二傾動部材の左右方向の傾動をそれぞれ独立して行うことができ、建付け調整の作業性を向上できる。
【0022】
本発明の柱調整体では、前記第一移動部材および前記第二移動部材は、下板部および前記下板部から上方に延出した一対の側板部をそれぞれ有し、前記第一傾動部材および前記第二傾動部材は、上板部および前記上板部から下方に延出した一対の側板部をそれぞれ有し、前記第一傾動部材および前記第二傾動部材の各側板部は、前記第一移動部材および前記第二移動部材の各側板部に対して連結軸によって傾動可能に連結され、前記第一傾動部材および前記第二傾動部材には、前記第一移動部材および前記第二移動部材の各側板部に固定される固定具が挿通可能な固定孔が形成されていてもよい。
このような構成によれば、第一傾動部材を第一移動部材に対して連結軸の周りで傾動させ、且つ、第二傾動部材を第一移動部材に対して連結軸の周りで傾動させることで、柱取付部材の傾きを調整できる。また、傾き調整後、第一傾動部材の固定孔に固定具を挿通して第一移動部材の各側板部に固定することで当該第一傾動部材を第一移動部材に容易に固定でき、第二傾動部材の固定孔に固定具を挿通して第二移動部材の各側板部に固定することで当該第二傾動部材を第二移動部材に容易に固定できる。このように第一傾動部材および第二傾動部材をそれぞれ独立して固定できるので、柱取付部材の奥行方向の傾き調整と左右方向の傾き調整とを分けて行うことができ、建付け調整の作業性を向上できる。
【0023】
本発明の柱調整体では、前記第二移動部材および前記第二傾動部材のうちの一方の各側板部には、前記連結軸が挿通される上下方向に沿った軸長孔が形成され、当該他方の各側板部には、前記連結軸が固定されていてもよい。
このような構成によれば、上下方向に沿った軸長孔に連結軸が挿通されているので、第二傾動部材を第二移動部材に対して上下動でき、これにより、柱取付部材の高さ位置を調整できる。
また、例えば第一移動部材および第一傾動部材のうちの一方の各側板部に上下方向に沿った軸長孔が形成され、連結軸が該軸長孔に挿通され且つ他方の各側板部に固定されて、第一傾動部材が第一移動部材に対して上下動可能に構成される場合には、第二移動部材や第二傾動部材の鉛直荷重が第一傾動部材にかかる分、柱取付部材の高さ位置を調整するのに力を要するので作業性を向上させ難いのに比べて、本発明では、第二傾動部材を第二移動部材に対して上下動させるので、第二傾動部材を上下動するのに前述したほどの大きな力を必要とすることなく柱取付部材の高さ位置を調整する作業性を向上できる。
【0024】
本発明の柱調整体では、前記第一移動部材の下板部には、奥行方向に沿っていると共に前記柱基体に固定される連結軸が挿通されるガイド孔が形成され、前記第二移動部材の下板部には、左右方向に沿っていると共に前記第一傾動部材の上板部に固定される連結軸が挿通されるガイド孔が形成されていてもよい。
このような構成によれば、第一移動部材を柱基体に対してガイド孔に沿って奥行方向に移動でき、且つ、第二移動部材を第一傾動部材に対してガイド孔に沿って左右方向に移動でき、これにより、柱取付部材の奥行方向および左右方向の位置を調整できる。
【0025】
本発明の柱調整体では、前記調整ユニットには、上方に突出した軸部が形成され、前記柱取付部材には、前記軸部が挿通される軸孔が形成され、前記柱取付部材は、前記軸部の周りで回転可能に前記調整ユニットに支持されていてもよい。
このような構成によれば、柱取付部材を回転させることで取付部の回転位置を調整でき、これにより、取付部に取り付けられる柱本体の上下方向に沿った軸心周りの向きを調整できる。
【0026】
本発明の柱は、前記柱調整体に取り付けられた柱本体とを備えていることを特徴とする。
本発明の柱によれば、前述した本発明の柱調整体の作用効果と同様の作用効果を発揮可能な柱を構成できる。
【0027】
本発明の外構建具は、前述した本発明の柱と、前記柱に支持される扉体とを備えることを特徴とする。
本発明の外構建具によれば、前述した本発明の柱の作用効果と同様の作用効果を発揮可能な外構建具を構成できる。
【符号の説明】
【0028】
1…跳ね上げ式門扉(外構建具)、10…柱調整体、101…生コンクリート、11…調整ユニット、20…固定部材、22,42,62,72…上板部、221,36,421,56…螺合孔、23,24,33,34,43,44,53,54,63,64,73,74…側板部、25,47,67,77,79…固定孔、26,471,671,75,76…固定ネジ(固定具)、30…傾動調整機構、31…第一移動部材、32,52…下板部、321,521…ガイド孔、322,522…連結ネジ(連結軸)、45,65…軸ネジ(連結軸)、46,721…軸孔、48,68,78…予備固定孔、5…柱、50…移動調整機構、51…第二移動部材、6…柱本体、61…第二傾動部材、621…軸部、622…ナット、66…軸長孔、7…柱基体、70…柱取付部材、7A…埋込部材、9…キャップ、D…間隔、H…高さ位置ズレ、T1,T2…傾き、W1,W2…間隔。
図1
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