(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
E02F9/20 Q
(21)【出願番号】P 2019113158
(22)【出願日】2019-06-18
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】楢▲崎▼ 昭広
(72)【発明者】
【氏名】小林 敬弘
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 輝樹
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-003515(JP,A)
【文献】特開平09-068169(JP,A)
【文献】国際公開第2016/016978(WO,A1)
【文献】特開2017-071982(JP,A)
【文献】特開2018-080510(JP,A)
【文献】特開2016-003442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/26
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、前記車体に取り付けた作業装置と、前記作業装置を駆動する複数の油圧アクチュエータと、前記作業装置の姿勢を検出する複数の姿勢センサと、前記複数の油圧アクチュエータを駆動する圧油を吐出する油圧ポンプと、パイロットポンプと、前記油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する制御弁ユニットと、前記パイロットポンプの吐出圧を元圧として前記制御弁ユニットを駆動するパイロット圧を出力する複数の操作レバー装置と、前記複数の操作レバー装置及び前記制御弁ユニットの間に設けたマシンコントロール電磁弁ユニットと、オートアイドル機能の有効又は無効の設定を切り換えるオートアイドルスイッチと、マシンコントロール機能の有効又は無効の設定を切り換えるマシンコントロールスイッチと、前記車体の情報を表示するモニタと、前記複数の姿勢センサの信号を基に前記マシンコントロール電磁弁ユニットを制御して目標面を超えて地面が掘削されないように前記作業装置の動作を制限するコントローラとを備えた建設機械において、
前記コントローラは、前記マシンコントロールスイッチ及び前記オートアイドルスイッチからの信号に基づき前記マシンコントロール機能及び前記オートアイドル機能の双方の設定が有効であると判定した場合、バケットの爪先と目標面との距離Lが設定距離L1以下であれば前記オートアイドル機能を自動的に無効化し、前記バケットの爪先と目標面との距離Lが設定距離L1よりも大きいときに前記オートアイドル機能を有効化し、
前記コントローラは、前記マシンコントロール機能及び前記オートアイドル機能の双方の設定が有効であると判定した場合、前記距離Lが前記設定距離L1より大きい領域において前記距離Lが小さくなるほどオートアイドル時の設定回転数であるアイドル回転数を大きく設定することを特徴とする建設機械。
【請求項2】
車体と、前記車体に取り付けた作業装置と、前記作業装置を駆動する複数の油圧アクチュエータと、前記作業装置の姿勢を検出する複数の姿勢センサと、前記複数の油圧アクチュエータを駆動する圧油を吐出する油圧ポンプと、パイロットポンプと、前記油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する制御弁ユニットと、前記パイロットポンプの吐出圧を元圧として前記制御弁ユニットを駆動するパイロット圧を出力する複数の操作レバー装置と、前記複数の操作レバー装置及び前記制御弁ユニットの間に設けたマシンコントロール電磁弁ユニットと、オートアイドル機能の有効又は無効の設定を切り換えるオートアイドルスイッチと、マシンコントロール機能の有効又は無効の設定を切り換えるマシンコントロールスイッチと、前記車体の情報を表示するモニタと、前記複数の姿勢センサの信号を基に前記マシンコントロール電磁弁ユニットを制御して目標面を超えて地面が掘削されないように前記作業装置の動作を制限するコントローラと、作動油の温度を測定するセンサ及びエンジン冷却水の温度を測定するセンサのうち少なくとも一方の温度センサ
とを備え
た建設機械において、
前記コントローラは、前記マシンコントロールスイッチ及び前記オートアイドルスイッチからの信号に基づき前記マシンコントロール機能及び前記オートアイドル機能の双方の設定が有効であると判定した場合、バケットの爪先と目標面との距離Lが設定距離L1以下であれば前記オートアイドル機能を自動的に無効化し、前記バケットの爪先と目標面との距離Lが設定距離L1よりも大きいときに前記オートアイドル機能を有効化し、
前記コントローラは、前記マシンコントロール機能及び前記オートアイドル機能の双方の設定が有効であると判定した場合、前記温度センサで測定された温度が低くなるほど前記設定距離L1を大きく設定することを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の建設機械において、前記コントローラは、前記オートアイドル機能が有効であるか無効であるかの情報の表示出力を前記モニタに指令することを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標面を超えて地面を掘削しないように作業装置を制御するマシンコントロール機能を備えた油圧ショベル等の建設機械に関し、特にいわゆるオートアイドル機能を備えた建設機械に係る。
【背景技術】
【0002】
例えば無操作時にエンジン回転数をアイドル回転数まで低下させるオートアイドル機能を備えた建設機械が知られている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、目標面を超えて地面を掘削しないように作業装置を制御するマシンコントロール機能を備えた建設機械の需要が高まってきている。マシンコントロールは、メータリング学習により設定エンジン回転数の下で得られた応答特性のデータに基づいて実行される。メータリング学習では、実際に操作レバーを操作して作業装置を駆動し、その際のアクチュエータの動作速度を測定する。これを操作対象やレバー操作量を変えて繰り返し、応答特性(例えば各アクチュエータにおける動作速度とレバー操作量との関係)を建設機械のコントローラに記憶させる。同一機種であっても、アクチュエータやコントロールバルブ、油圧ポンプ等の部品の個体差により建設機械の応答特性は異なるため、マシンコントロール機能を備えた建設機械については機体毎にメータリング学習が行われる。
【0005】
マシンコントロール機能を備えた建設機械においては、一般的に同機能の有効時(同機能のオンオフスイッチがオンになっている場合)にはオートアイドル機能は無効化される。マシンコントロール機能はメータリング学習時のエンジン回転数を前提としており、メータリング学習時のエンジン回転数より低いエンジン回転数で実行されると、作業装置の制御に誤差が生じ目標面を超えて掘削してしまう可能性があるためである。しかし、省エネの観点からマシンコントロール機能が有効な状態においてもオートアイドル機能が活用されることが望まれる。
【0006】
本発明の目的は、マシンコントロール機能とオートアイドル機能を両立させることができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、車体と、前記車体に取り付けた作業装置と、前記作業装置を駆動する複数の油圧アクチュエータと、前記作業装置の姿勢を検出する複数の姿勢センサと、前記複数の油圧アクチュエータを駆動する圧油を吐出する油圧ポンプと、パイロットポンプと、前記油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する制御弁ユニットと、前記パイロットポンプの吐出圧を元圧として前記制御弁ユニットを駆動するパイロット圧を出力する複数の操作レバー装置と、前記複数の操作レバー装置及び前記制御弁ユニットの間に設けたマシンコントロール電磁弁ユニットと、オートアイドル機能の有効又は無効の設定を切り換えるオートアイドルスイッチと、マシンコントロール機能の有効又は無効の設定を切り換えるマシンコントロールスイッチと、前記車体の情報を表示するモニタと、前記複数の姿勢センサの信号を基に前記マシンコントロール電磁弁ユニットを制御して目標面を超えて地面が掘削されないように前記作業装置の動作を制限するコントローラとを備えた建設機械において、前記コントローラは、前記マシンコントロールスイッチ及び前記オートアイドルスイッチからの信号に基づき前記マシンコントロール機能及び前記オートアイドル機能の双方の設定が有効であると判定した場合、バケットの爪先と目標面との距離Lが設定距離L1以下であれば前記オートアイドル機能を自動的に無効化し、前記バケットの爪先と目標面との距離Lが設定距離L1よりも大きいときに前記オートアイドル機能を有効化し、前記コントローラは、前記マシンコントロール機能及び前記オートアイドル機能の双方の設定が有効であると判定した場合、前記距離Lが前記設定距離L1より大きい領域において前記距離Lが小さくなるほどオートアイドル時の設定回転数であるアイドル回転数を大きく設定することを特徴とする。
また、本発明は、車体と、前記車体に取り付けた作業装置と、前記作業装置を駆動する複数の油圧アクチュエータと、前記作業装置の姿勢を検出する複数の姿勢センサと、前記複数の油圧アクチュエータを駆動する圧油を吐出する油圧ポンプと、パイロットポンプと、前記油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する制御弁ユニットと、前記パイロットポンプの吐出圧を元圧として前記制御弁ユニットを駆動するパイロット圧を出力する複数の操作レバー装置と、前記複数の操作レバー装置及び前記制御弁ユニットの間に設けたマシンコントロール電磁弁ユニットと、オートアイドル機能の有効又は無効の設定を切り換えるオートアイドルスイッチと、マシンコントロール機能の有効又は無効の設定を切り換えるマシンコントロールスイッチと、前記車体の情報を表示するモニタと、前記複数の姿勢センサの信号を基に前記マシンコントロール電磁弁ユニットを制御して目標面を超えて地面が掘削されないように前記作業装置の動作を制限するコントローラと、作動油の温度を測定するセンサ及びエンジン冷却水の温度を測定するセンサのうち少なくとも一方の温度センサとを備えた建設機械において、前記コントローラは、前記マシンコントロールスイッチ及び前記オートアイドルスイッチからの信号に基づき前記マシンコントロール機能及び前記オートアイドル機能の双方の設定が有効であると判定した場合、バケットの爪先と目標面との距離Lが設定距離L1以下であれば前記オートアイドル機能を自動的に無効化し、前記バケットの爪先と目標面との距離Lが設定距離L1よりも大きいときに前記オートアイドル機能を有効化し、前記コントローラは、前記マシンコントロール機能及び前記オートアイドル機能の双方の設定が有効であると判定した場合、前記温度センサで測定された温度が低くなるほど前記設定距離L1を大きく設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、マシンコントロール機能とオートアイドル機能を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る建設機械の外観を表す斜視図
【
図2】
図1に示した建設機械に備えられた油圧システムをコントローラ等とともに示す図
【
図3】
図1に示した建設機械に備えられたコントローラのブロック図
【
図4】
図1に示した建設機械に備えられたコントローラの機能の説明に用いる模式図
【
図5】
図1に示した建設機械に備えられたコントローラの機能の説明に用いる模式図
【
図6】
図1に示した建設機械に備えられたコントローラによるオートアイドル機能の自動オンオフ制御の手順を表すフローチャート
【
図7】本発明の第2実施形態に係る建設機械に備えられたコントローラによるオートアイドル機能の自動オンオフ制御の手順を表すフローチャート
【
図8】目標面からバケット爪先までの距離Lとエンジンの目標回転数との関係を規定したリファレンスデータの一例を模式的に示した図
【
図9】目標面からバケット爪先までの距離Lとエンジンの目標回転数との関係を規定したリファレンスデータの他の例を模式的に示した図
【
図10】本発明の第3実施形態に係る建設機械に備えられたコントローラによるオートアイドル機能の自動オンオフ制御の手順を表すフローチャート
【
図11】作動油温度と設定距離L1との関係を規定したリファレンスデータの一例を模式的に示した図
【
図12】エンジン冷却水温度と設定距離L1との関係を規定したリファレンスデータの一例を模式的に示した図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
(第1実施形態)
-建設機械-
図1は本発明の第1実施形態に係る建設機械の外観を表す斜視図である。本実施形態では作業装置の先端のアタッチメントとしてバケット23を装着した油圧ショベルを建設機械の例として説明する。但し、バケット以外のアタッチメントを装着した油圧ショベルやブルドーザ等の他種の建設機械にも本発明は適用され得る。本願明細書においては、運転室14の前方(
図1中の左上側)を建設機械の旋回体の前方とする。
【0012】
同図に示した建設機械は、車体10及び作業装置20を備えている。車体10は、走行体11及び旋回体12を備えている。
【0013】
走行体11は、本実施形態では無限軌道履帯を有する左右のクローラ(走行装置)13を備えており、左右の走行モータ(不図示)により左右のクローラ13をそれぞれ駆動することで走行する。走行モータには例えば油圧モータが用いられる。
【0014】
旋回体12は、走行体11の上部に旋回装置(不図示)を介して旋回可能に設けられている。旋回体12の前部(本実施形態では前部左側)には、操作者が搭乗する運転室14が設けられている。旋回体12における運転室14の後側にはエンジンや油圧システム等を収容した動力室15が、後端には作業装置20との重量のバランスをとるカウンタウェイト16が搭載されている。旋回体12を走行体11に対して連結する旋回装置には旋回モータ34(
図2)が含まれており、旋回モータ34によって走行体11に対して旋回体12が旋回駆動される。旋回モータ34には油圧モータが用いられる。
【0015】
作業装置20は土砂の掘削等の作業を行うための多関節型の作業腕であり、旋回体12の前部(本実施形態では運転室14の右側)に取り付けられている。この作業装置20は、ブーム21、アーム22及びバケット23を含んで構成されている。ブーム21は、左右に延びるピン(不図示)によって旋回フレームと呼ばれる旋回体12のベースフレームに連結され、ブームシリンダ31の伸縮に伴って旋回体12に対して上下に回動する。ブームシリンダ31の両端は、左右に延びるピン(不図示)を介してブーム21及び旋回体12に回動自在に連結されている。アーム22は、左右に延びるピン(不図示)によってブーム21の先端に連結され、アームシリンダ32の伸縮に伴ってブーム21に対して前後に回動する。アームシリンダ32の両端は、左右に延びるピン(不図示)を介してアーム22及びブーム21に回動自在に連結されている。バケット23は、水平左右に延びるピン(不図示)によってアーム22の先端に連結され、バケットシリンダ33の伸縮に伴ってアーム22に対して回動する。バケットシリンダ33の基端はアーム22に、先端はリンクを介してバケットに連結されている。ブームシリンダ31、アームシリンダ32及びバケットシリンダ33は作業装置20を駆動する複数の油圧アクチュエータである。
【0016】
また、建設機械には、位置や姿勢に関する情報を検出するセンサが適所に設けられている。例えば、ブーム21、アーム22及びバケット23の各回動支点にはそれぞれ角度センサA1(
図2),A2,A3が設けられている。角度センサA1~A3は作業装置20の姿勢に関する情報を検出する姿勢センサとして用いられ、旋回体12に対するブーム21の角度、ブーム21に対するアーム22の角度、アーム22に対するバケット23の回動角をそれぞれ検出する。その他、旋回体12には、傾斜センサ(不図示)、測位装置(不図示)が備わっている。傾斜センサは、旋回体12の前後方向及び左右方向の少なくとも一方の傾斜を検出する旋回体12の姿勢センサとして用いられる。測位装置には例えばRTK-GNSS(Real Time Kinematic - Global Navigation Satellite System)が用いられる。この測位装置によって車体10の位置や方位に関する情報が取得される。
【0017】
-油圧システム-
図2は
図1に示した建設機械に備えられた油圧システムをコントローラ等とともに示す図である。説明済みの要素については、同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0018】
油圧システム30は、建設機械の被駆動部材を駆動する装置であって主として動力室15に収容されている。被駆動部材には、作業装置20(ブーム21、アーム22及びバケット23)及び車体10(クローラ13及び旋回体12)が含まれる。この油圧システム30は、油圧アクチュエータ31~34、エンジン35、油圧ポンプ36、制御弁ユニット38、パイロットポンプ37、操作レバー装置51,52、マシンコントロール電磁弁ユニット60等を含んで構成されている。なお、これ以降、マシンコントロール電磁弁ユニット60については「電磁弁ユニット60」と略称する。
【0019】
-油圧アクチュエータ-
油圧アクチュエータ31~34は、ブームシリンダ31、アームシリンダ32、バケットシリンダ33及び旋回モータ34のことである。ブームシリンダ31、アームシリンダ32、バケットシリンダ33及び旋回モータ34のうち複数を挙げる場合に、「油圧アクチュエータ31~34」、「油圧アクチュエータ31,32」等と便宜的に呼び換える。走行モータ(不図示)も油圧アクチュエータであるが、
図2では図示省略してある。油圧アクチュエータ31~34は、油圧ポンプ36から吐出される作動油により駆動される。
【0020】
-油圧ポンプ-
油圧ポンプ36は、タンク39から吸い込んだ作動油を加圧し、油圧アクチュエータ31~34等を駆動する圧油として吐出する可変容量型の油圧ポンプである。この油圧ポンプ36はエンジン35により駆動される。本実施形態におけるエンジン35は内燃機関であり、燃焼エネルギーを動力に変換する原動機である。
図2では油圧ポンプ36を1個のみ図示しているが、複数個設けられる場合もある。油圧ポンプ36から吐出された作動油は制御弁ユニット38を経由してそれぞれ油圧アクチュエータ31~34に供給される。油圧アクチュエータ31~34からの戻り油は制御弁ユニット38を介してタンク39に戻される。油圧ポンプ36の吐出配管36aには、吐出配管36aの最高圧力を規制するリリーフ弁RVが設けられている。
【0021】
-制御弁ユニット-
制御弁ユニット38は油圧ポンプ36から複数の油圧アクチュエータ31~33に供給される圧油の流れを制御する装置であり、複数の制御弁を含んで構成されている。制御弁ユニット38を構成する制御弁には、少なくとも、ブームシリンダ31用、アームシリンダ32用、バケットシリンダ33用、旋回モータ34用、走行モータ用が含まれる。各制御弁は油圧ポンプ36から対応する油圧アクチュエータに供給される作動油の流れ(方向及び流量)を制御する油圧駆動式の方向切換弁であり、オペレータの操作に応じて受圧室に作用するパイロット圧によりスプールが駆動される。制御弁が作動すると対応する油圧アクチュエータに操作に応じた方向から操作量に応じた流量の圧油が供給される。これにより、例えばブーム21が操作に応じた速度で上昇したりする。
【0022】
-パイロットポンプ-
パイロットポンプ37は制御弁ユニット38を構成する制御弁を駆動するパイロット圧となる固定容量型の油圧ポンプであり、油圧ポンプ36と同じくエンジン35により駆動される。このパイロットポンプ37の吐出配管37aは操作レバー装置51,52及び電磁弁ユニット60の各弁に接続している。吐出配管37aには、吐出配管37aの最高圧力を規制するパイロットリリーフ弁PRが設けられている。
【0023】
-操作レバー装置-
操作レバー装置51,52はパイロットポンプ37の吐出圧を元圧として制御弁ユニット38を駆動するパイロット圧を生成し出力するレバー操作式の減圧弁装置である。操作レバー装置51は運転席の左側に配置されており、例えばアームシリンダ32用の制御弁を駆動するパイロット圧を生成する2つの減圧弁、旋回モータ34用の制御弁を駆動するパイロット圧を生成する2つの減圧弁の計4つの減圧弁を備えている。例えば操作レバー装置51を左に倒すとアームダンプ、右に倒すとアームクラウド、前に倒すと右旋回、後に倒すと左旋回の動作が指令される。操作レバー装置52は運転席の右側に配置されており、例えばバケットシリンダ33用の制御弁を駆動するパイロット圧を生成する2つの減圧弁、ブームシリンダ31用の制御弁を駆動するパイロット圧を生成する2つの減圧弁の計4つの減圧弁を備えている。例えば操作レバー装置52を左に倒すとバケットクラウド、右に倒すとバケットダンプ、前に倒すとブーム下げ、後に倒すとブーム上げの動作が指令される。
【0024】
-マシンコントロール電磁弁ユニット-
電磁弁ユニット60は操作レバー装置51,52から制御弁ユニット38に入力されるパイロット圧を増減圧する装置であり、操作レバー装置51,52及び制御弁ユニット38の間に介在している。電磁弁ユニット60には、操作レバー装置51,52が出力するパイロット圧を減圧する電磁駆動式の減圧弁の他、電磁駆動式の増圧弁が含まれている。増圧弁も物としては電磁駆動式の減圧弁であるが、操作レバー装置51,52をバイパスしてパイロットポンプ37の吐出圧を直接減圧し、操作に応じて操作レバー装置51,52で生成されるパイロット圧よりも大きなパイロット圧を生成する。角度センサA1~A3等の信号に基づいてコントローラ100から出力される電気信号により電磁弁ユニット60を構成する各電磁弁が駆動され、目標面を超えて地面が掘削されないように作業装置20の動作が制限される。
【0025】
-コントローラ-
コントローラ100は、角度センサA1~A3の信号を基に電磁弁ユニット60を制御し、目標面を超えて掘削しないように作業装置20の動作を制限する車載コンピュータであり、旋回体12に備わっている。コントローラ100には、電磁弁ユニット60、角度センサA1~A3の他、圧力センサP1~P8、エンコンダイヤルED、エンジン35、モニタMN、オートアイドルスイッチSW1、マシンコントロールスイッチSW2が電気的に接続している。エンジン35については、厳密にはエンジン35に備わったいわゆるエンジンコントロールユニットがコントローラ100に接続している。
【0026】
圧力センサP1~P8は操作レバー装置51,52の操作を検出するセンサであり、操作レバー装置51,52の各減圧弁から出力されたパイロット圧を圧力センサP1~P8で検出することで操作レバー装置51,52の操作が検出される。例えば、圧力センサP1によりブーム上げ操作が、圧力センサP2によりブーム下げ操作が、圧力センサP3によるアームダンプ操作が、圧力センサP4によりアームクラウド操作が検出される。また例えば、圧力センサP5によりバケットダンプ操作が、圧力センサP6によりバケットクラウド操作が、圧力センサP7により右旋回操作が、圧力センサP8により左旋回操作が検出される。
【0027】
エンコンダイヤルED、モニタMN、オートアイドルスイッチSW1、マシンコントロールスイッチSW2は、運転操作中にオペレータが操作できるように運転室14の内部に配置されている。エンコンダイヤル(エンジンコントロールダイヤル)EDは、目標回転数を指定するためのダイヤルである。モニタMNは、車体10の情報(例えば車体位置情報、方位情報、作業装置20の姿勢情報、バケットと目標面との距離等)を表示する表示装置である。オートアイドルスイッチSW1は、オートアイドル機能の有効又は無効の設定を切り換えるスイッチである。マシンコントロールスイッチSW2は、マシンコントロール機能の有効又は無効の設定を切り換えるスイッチである。
【0028】
なお、本実施形態では省略可能であるが、建設機械には、油圧アクチュエータ31~34を駆動する作動油の温度を測定する温度センサT1、エンジン冷却水の温度を測定する温度センサT2が備わっている。これら温度センサT1,T2の信号もコントローラ100に入力される。
【0029】
図3はコントローラ100のブロック図である。コントローラ100は車載コンピュータであり、入力インターフェース101、ROM(例えばEPROM)102、RAM103、CPU104、タイマ105、及び出力インターフェース106が備わっている。
【0030】
入力インターフェース101には、角度センサA1~A3、圧力センサP1~P8、温度センサT1,T2、オートアイドルスイッチSW1、マシンコントロールスイッチSW2、エンコンダイヤルED等からの信号が入力される。
【0031】
ROM102は、エンジン35や電磁弁ユニット60の制御に必要な演算式やプログラム、データを格納している。例えばこのROM102には、マシンコントロール機能の有効時における作業装置20の動作制限領域(目標面からバケット爪先までの設定距離L0[mm])が格納されている。オートアイドルの自動オンオフ機能(後述)におけるオートアイドル機能の無効領域(目標面からバケット爪先までの設定距離L1[mm])もROM102に格納されている。その他、予め設定されたエンジン35のオートアイドル時の設定回転数であるアイドル回転数N0(例えば1400rpm)、マシンコントロールのメータリング学習時のエンジン35の規定回転数Ns(例えば1800rpm)もROM102に格納されている。設定距離L1は、マシンコントロールが機能し始める前にエンジン回転数を規定回転数Nsに復帰させる観点で設定距離L0より大きいことが望ましく(L1>L0)、少なくとも設定距離L0以上に設定されている(L1≧L0)。
【0032】
CPU104は、ROM102からロードしたプログラムに従って、入力インターフェース101を介して入力された各信号に基づいて所定の処理を実行する。
【0033】
RAM103は、演算途中の数値等を一時的に記憶する。このRAM103には、例えば、オートアイドルスイッチSW1で指定されたオートアイドル機能の有効/無効の現在の設定情報、マシンコントロールスイッチSW2で指定されたマシンコントロール機能の有効/無効の現在の設定情報が格納されている。エンコンダイヤルEDで指定されたエンジン35の現在の指定回転数[rpm]もRAM103に格納されている。
【0034】
出力インターフェース106は、CPU104の指令に応じてエンジン35(エンジンコントロールユニット)や電磁弁ユニット60への指令信号を出力する。
【0035】
次にROM102に格納されたプログラムに従ってCPU104により実行される機能を順次例示する。
【0036】
-マシンコントロール機能-
図4及び
図5はコントローラ100の機能の説明に用いる模式図である。これらの図を参照してコントローラ100の機能の概要を説明する。
【0037】
まず、コントローラ100には、複数の角度センサA1~A3の信号に基づいて電磁弁ユニット60を制御し、目標面(破線)を超えて地面が掘削されないように作業装置20の動作を制限するいわゆるマシンコントロール機能が備わっている。同機能の有効時には、コントローラ100は、角度センサA1~A3の信号を基に目標面とバケット23の爪先との距離L[mm]を演算し、演算した距離Lに応じて電磁弁ユニット60を制御してオペレータの操作に介入し作業装置20の動作領域を制限する。マシンコントロール機能の詳細については説明を省略するが、例えば特開平8-333768号公報、特開2016-003442号公報、特開2019-052515号公報等に詳しく記載されている。
【0038】
-オートアイドル機能-
また、コントローラ100には、例えば無操作状態が一定時間継続した場合にエンジン回転数を予め設定したアイドル回転数N0まで自動的に降下させるオートアイドル機能が備わっている。オートアイドル機能の詳細については説明を省略するが、例えば特開平09-068169号公報、特開2018-048571号公報等に詳しく記載されている。
【0039】
-オートアイドルの自動オンオフ機能-
コントローラ100の特徴的機能が、マシンコントロール機能と連動したオートアイドルの自動オンオフ機能である。オートアイドルスイッチSW1でオートアイドル機能が有効に設定されていても、マシンコントロール機能の有効時にはバケット23の爪先と目標面との距離Lに応じてオートアイドル機能の有効及び無効が自動的に切り換わる。具体的には、コントローラ100は、まずオートアイドルスイッチSW1及びマシンコントロールスイッチSW2からの信号に基づきマシンコントロール機能及びオートアイドル機能が有効に設定されているか無効に設定されているかを判定する。マシンコントロール機能及びオートアイドル機能の双方の設定が有効であると判定した場合、コントローラ100は、
図4のようにバケット23の爪先と目標面との距離Lが設定距離L1以下であればオートアイドル機能を自動的に一時無効化する。このように一時的にオートアイドル機能が無効化されても、コントローラ100は、
図5のように距離Lが設定距離L1を超えれば、オートアイドル機能の一時無効化を解除してオートアイドル機能を有効状態に復帰させる。つまり、マシンコントロール機能及びオートアイドル機能の双方の設定が有効である場合、
図5に示した状態のようにバケット23の爪先と目標面との距離Lが設定距離L1よりも大きいときにのみオートアイドル機能が有効化される。オートアイドル機能が有効であるか無効であるかの情報は、コントローラ100からの指令信号によりモニタMNに表示出力される。
【0040】
なお、距離Lは、バケット23の爪先が目標面よりも高位置にある場合が正の値、バケット23の爪先が目標面よりも低位置にある場合が負の値であり、設定距離L1は正の値の範囲で設定されている。設定距離L1は予め設定され、上記の通り例えばROM102(
図3)に格納されている。
【0041】
-動作-
図6はコントローラによるオートアイドル機能の自動オンオフ制御の手順を表すフローチャートである。コントローラ100は、運転中(電源が供給されている間)、
図6の手順を所定の処理サイクル(例えば0.1s)で繰り返し実行する。
【0042】
<ステップS11>
例えばキースイッチによりエンジン35が始動して電源が供給されると、コントローラ100は同図の手順を開始し、まず入力インターフェース101を介して各種の基礎情報を入力しRAM103に記録する(ステップS11)。具体的には、角度センサA1~A3、圧力センサP1~P8、オートアイドルスイッチSW1、マシンコントロールスイッチSW2、エンコンダイヤルEDからの信号が入力インターフェース101を介して入力される。また、設定距離L1、アイドル回転数N0[rpm]、規定回転数Ns[rpm]がROM102から読み込まれる。
【0043】
<ステップS12>
次に、コントローラ100は、オートアイドルスイッチSW1の信号を基にオートアイドル機能が有効に設定(手動設定)されているかを判定する(ステップS12)。コントローラ100は、オートアイドル機能が無効に設定(手動設定)されていると判定した場合はステップS18(後述)に、オートアイドル機能が有効に設定(手動設定)されていると判定した場合はステップS13に手順を移す。
【0044】
<ステップS13>
オートアイドル機能が有効である場合、コントローラ100は、ブームシリンダ31、アームシリンダ32、バケットシリンダ33、旋回モータ34、走行モータ等の油圧アクチュエータの操作が設定時間以上されていないかを判定する(ステップS13)。この判定は、例えばRAM103に記録された圧力センサP1~P8を含む操作信号の履歴に基づいて判定され、いずれの操作信号もオフ(所定値以下で不感帯を超えない値)である状態が設定時間以上継続している場合に満たされる。設定時間以上無操作状態が継続しているとの判定結果である。反対に、現在時刻から遡って設定時間以内にいずれかの操作信号がオン(所定値より大きく不感帯を超える値)になっていれば、ステップS13の判定は満たされない。無操作状態の継続時間が設定時間に満たないとの判定結果である。コントローラ100は、無操作状態の継続時間が設定時間に満たないと判定した場合にはステップS18(後述)に、無操作状態が設定時間以上継続していると判定した場合にはステップS14に手順を移す。
【0045】
<ステップS14>
無操作状態が設定時間以上継続している場合、コントローラ100は、マシンコントロールスイッチSW2の信号を基にマシンコントロール機能が有効に設定(手動設定)されているかを判定する(ステップS14)。マシンコントロール機能が無効に設定(手動設定)されていると判定した場合、コントローラ100はステップS17(後述)に手順を移す。マシンコントロール機能が有効に設定(手動設定)されていると判定した場合、つまりオートアイドル機能とマシンコントロール機能の双方が有効である場合、コントローラ100はステップS15に手順を移す。
【0046】
<ステップS15,S16>
オートアイドル機能とマシンコントロール機能の双方が有効である場合、コントローラ100は、角度センサA1~A3の信号を基にバケット爪先と目標面との距離Lを算出し(ステップS15)、距離Lが設定距離L1より大きいかを判定する(ステップS16)。コントローラ100は、距離Lが設定距離L1以下(L≦L1)であればステップS18(後述)に、距離Lが設定距離L1より大きければ(L>L1)ステップS17に手順を移す。
【0047】
<ステップS17>
ステップS17に手順を移したら、コントローラ100は、目標回転数Ntをアイドル回転数N0に設定し、エンジンコントローラに指令信号を出力してエンジン35をアイドル回転数N0で駆動する。オートアイドル機能が有効である場合、マシンコントロール機能が無効であれば、無操作状態が設定時間以上継続すると当然に、目標回転数Ntは自動的にアイドル回転数N0に設定される(ステップS14→S17)。マシンコントロール機能が有効であっても、目標面からバケット爪先が離れている場合には(L>L1)、オートアイドル機能が有効で無操作状態が設定時間以上継続すれば目標回転数Ntはアイドル回転数N0に設定される(ステップS16→S17)。
【0048】
<ステップS18>
他方、ステップS18に手順を移したら、コントローラ100は、目標回転数Ntを規定回転数Nsに設定し、エンジンコントローラに指令信号を出力してエンジン35を規定回転数Nsで駆動する。規定回転数Nsはマシンコントロールのメータリング学習時の設定回転数(例えば1800rpm)である。オートアイドル機能が無効である場合、又はオートアイドル機能が有効であっても無操作状態が設定時間に満たない場合は、目標回転数Ntは規定回転数Nsに設定される(ステップS12→S18、ステップS13→S18)。オートアイドル機能が有効な状態で無操作状態が続いていても、マシンコントロール機能が有効な状態でバケット爪先が目標面に接近していれば(L≦L1)、目標回転数Ntは規定回転数Nsに設定される(ステップS16→S18)。つまり、オートアイドルスイッチSW1によりオートアイドル機能が手動で有効化されていても、マシンコントロール機能の有効時には、バケット爪先が目標面に接近すると(L≦L1になると)オートアイドル機能が自動的に一時無効化される。
【0049】
なお、ステップS12又はS13を経由してステップS18に手順が移った場合、特に図示していないが、マシンコントロール機能が無効なら、エンコンダイヤルEDで指定された指定回転数を目標回転数Ntに設定する構成とすることができる。
【0050】
<ステップS19,S20>
ステップS17又はS18で目標回転数Ntを設定したら、コントローラ100はオートアイドル機能が有効であるか無効であるかの情報の表示出力をモニタMNに指令する(ステップS19)。これによりモニタMNにオートアイドル機能のオンオフ状態が表示され、例えばオートアイドルスイッチSW1により有効に設定したオートアイドル機能がマシンコントロール機能との関係で自動的に一時無効化されたこともオペレータに通知される。そして、コントローラ100は、例えばキースイッチにより電源がオフにされているかを判定し(ステップS20)、電源が入っていれば手順をステップS11に戻して以上の処理を繰り返し、電源が切れていれば
図6の処理を終了する。
【0051】
-効果-
(1)本実施形態においては、マシンコントロール機能及びオートアイドル機能の双方の設定が有効である場合、バケット爪先と目標面との距離Lが設定距離L1以下であればオートアイドル機能が強制的に一時無効化される。マシンコントロール機能が有効であっても、オートアイドル機能が有効に手動設定されている場合、バケット爪先と目標面との距離Lが設定距離L1よりも大きければ無操作時にオートアイドル機能が働く。このように、本実施形態によればマシンコントロール機能とオートアイドル機能を両立させることができ、マシンコントロール機能の使用中においても、一定条件下で無操作時にエンジン回転がアイドル回転数N0まで降下し省エネ効果が向上する。
【0052】
(2)オートアイドルスイッチSW1によりオートアイドル機能を手動で有効に設定しても、上記の通りマシンコントロール機能が有効である場合には所定の条件下でオートアイドル機能が強制的に無効化される。本実施形態においては、オートアイドル機能が有効であるか無効であるかの情報をモニタMNに表示出力することで、オートアイドル機能が強制的に無効化されたこと等、オペレータは随時状況を確認することができる。
【0053】
(第2実施形態)
図7は本発明の第2実施形態に係る建設機械に備えられたコントローラによるオートアイドル機能の自動オンオフ制御の手順を表すフローチャートである。本実施形態が第1実施形態と異なる点は、所定の条件下でバケット爪先と目標面との距離Lに応じてオートアイドル時の設定回転数であるアイドル回転数N0が変化する点である。具体的には、マシンコントロール機能及びオートアイドル機能の双方の設定が有効であると判定した場合、コントローラ100は、距離Lが設定距離L1より大きい領域において距離Lが小さくなるほどアイドル回転数N0を大きく設定する。
図7におけるステップS22,S23,S27~S30の手順は、
図6で説明した第1実施形態におけるステップS12,S13,S17~S20の手順と同様である。
【0054】
<ステップS21>
例えばキースイッチによりエンジン35が始動して電源が供給されると、コントローラ100は同図の手順を開始し、まず入力インターフェース101を介して各種の基礎情報を入力しRAM103に記録する(ステップS21)。具体的には、角度センサA1~A3、圧力センサP1~P8、オートアイドルスイッチSW1、マシンコントロールスイッチSW2、エンコンダイヤルEDからの信号が入力インターフェース101を介して入力される。また、設定距離L1、アイドル回転数N0、規定回転数Ns、リファレンスデータ(後述)がROM102から読み込まれる。
【0055】
上記リファレンスデータは、目標面からバケット爪先までの距離Lと目標回転数Ntとの関係を規定したグラフ又はデータテーブルであり、例えば
図8や
図9に示したような特性を規定する。このリファレンスデータは、規定回転数Ns、及び設定距離L1,L2に基づいて予め作成されてROM102に格納されている。設定距離L2は設定距離L1よりも大きく設定した値である。
【0056】
リファレンスデータにおいて、エンジン35の目標回転数Ntは、距離Lが設定距離L1未満の領域(L<L1)では規定回転数Ns(一定値)に規定され、設定距離L1以上の領域(L≧L1)ではアイドル回転数N0[rpm]に規定される。本実施形態におけるアイドル回転数N0は距離Lに応じて変化し、設定距離L1以上で設定距離L2未満の領域(L1≦L<L2)で規定回転数Nsから予め設定された最小アイドル回転数Nm[rpm]まで距離Lの増加に伴って単調に減少する。設定距離L2以上の領域(L≧L2)では、アイドル回転数N0は最小アイドル回転数Nm(一定値)に規定される。最小アイドル回転数Nmには、例えば第1実施形態における一定のアイドル回転数N0と同値を採用することができる。本実施形態における可変のアイドル回転数N0の変化形態としては、
図8に示したように設定距離L1,L2の間の領域において距離Lに比例して(連続的に)小さくなる形態を例示することができる。
図9に示したように設定距離L1,L2の間の領域において距離Lが増加するにつれてステップ状にアイドル回転数N0が低下する形態でも良い。このリファレンスデータに従えば、距離Lを基に目標回転数Ntが一義的に定まる。
【0057】
なお、L1≦L<L2の領域において、規定回転数Nsと最小アイドル回転数Nmの中間値(例えばNs=1800rpm、Nm=1400rpmなら、1700rpm等)で目標回転数Ntを一定とする形態も考えられる。
【0058】
<ステップS22~S24>
次に、コントローラ100は、オートアイドル機能が手動で有効に設定されているかを
図6のステップS12と同様に判定し(ステップS22)、オートアイドル機能が無効であればステップS28(後述)に、有効であればステップS23に手順を移す。オートアイドル機能が手動で有効に設定されていれば、コントローラ100は、無操作状態が設定時間以上継続しているかを
図6のステップS13と同様に判定する(ステップS23)。無操作状態の継続時間が設定時間に満たない場合にはステップS28(後述)に、設定時間以上であればステップS24に手順が移る。
【0059】
無操作状態が設定時間以上継続している場合、コントローラ100は、マシンコントロール機能が手動で有効に設定されているかを
図6のステップS14と同様に判定する(ステップS24)。マシンコントロール機能が無効に設定されている場合、コントローラ100はステップS27(後述)に手順を移す。マシンコントロール機能が有効に設定されている場合、つまりオートアイドル機能とマシンコントロール機能の双方が有効である場合、コントローラ100はステップS25に手順を移す。
【0060】
<ステップS25,S25a>
オートアイドル機能とマシンコントロール機能の双方が有効である場合、コントローラ100は、
図6のステップS25と同様にバケット爪先と目標面との距離Lを算出する(ステップS25)。そして、距離Lに応じた目標回転数Nt(=Ns又はN0)をリファレンスデータに従って算出する(ステップS25a)。
【0061】
<ステップS26~S30>
オートアイドル機能とマシンコントロール機能の双方が有効である場合、コントローラ100は、エンジンコントローラに指令信号を出力してステップS25aで算出した目標回転数Ntでエンジン35を駆動する(ステップS16)。ステップS25aではリファレンスデータに従って距離Lに応じた目標回転数Ntが算出され、両機能が有効で無操作状態が設定時間以上継続していても、距離Lが設定距離L1未満の領域では目標回転数Ntは規定回転数Nsに設定される。第1実施形態で設定距離L1未満の領域においてオートアイドル機能が自動的に一時無効化されるのと同義である。それに対し、設定距離L1以上の領域ではオートアイドル機能が有効に働き、規定回転数Nsよりも低いアイドル回転数N0に目標回転数Ntが設定される。
【0062】
<ステップS27>
オートアイドル機能が有効で設定時間以上操作がない場合、マシンコントロール機能が無効であれば、コントローラ100は、距離Lに関係なく目標回転数Ntをアイドル回転数N0に設定しエンジンコントローラに指令信号を出力する(ステップS27)。これによりエンジン35の回転数がアイドル回転数N0(最小のアイドル回転数N0)に降下する。
【0063】
<ステップS28>
オートアイドル機能が無効であるか有効であっても無操作状態が設定時間に満たない場合、コントローラ100は、無条件で目標回転数Ntを規定回転数Nsに設定しエンジンコントローラに指令信号を出力する(ステップS28)。これによりエンジン35が規定回転数Nsで駆動される。第1実施形態で説明したように、マシンコントロールが無効ならエンコンダイヤルEDで指定された指定回転数を目標回転数Ntに設定しても良い。
【0064】
<ステップS29,S30>
ステップS26,S27又はS28で目標回転数Ntを設定したら、コントローラ100は、
図6のステップS19と同様にオートアイドル機能が有効か無効かの情報をモニタMNに表示出力する(ステップS29)。更に、コントローラ100は、例えばキースイッチにより電源がオフにされているかを判定し(ステップS30)、電源が入っていれば手順をステップS21に戻して以上の処理を繰り返し、電源が切れていれば
図6の処理を終了する。
【0065】
その他の点について、本実施形態は第1実施形態と同様である。
【0066】
本実施形態においてもマシンコントロール機能とオートアイドル機能を両立させることができ、マシンコントロール機能の使用中においても、一定条件下で無操作時にエンジン回転が降下して省エネ効果が向上する。加えて、予め設定されたアイドル回転数N0を最小値として、オートアイドル自動無効化領域にバケット23が近付くにつれてアイドル回転数が上昇する。これにより、マシンコントロール機能が働くまでにエンジン回転数をマシンコントロール用の規定回転数Nsまで確実に上昇させることができる。
【0067】
(第3実施形態)
図10は本発明の第3実施形態に係る建設機械に備えられたコントローラによるオートアイドル機能の自動オンオフ制御の手順を表すフローチャートである。本実施形態が第1実施形態と異なる点は、バケット爪先と目標面との距離Lについての設定距離L1(ステップS16の判定で用いる閾値)が作動油温度及びエンジン冷却水温度の少なくとも一方に応じて変化する点である。具体的には、コントローラ100は、マシンコントロール機能及びオートアイドル機能の双方の設定が有効であると判定した場合、温度センサT1,T2で測定された温度が低くなるほど設定距離L1を大きく設定する処理を実行する(ステップS14a)。本実施形態では、第1実施形態の手順(
図6)に対して、ステップS14,S15の間にこのステップS14aの手順が追加されている。また、本実施形態では、ステップS11でコントローラ100に入力される基礎情報に、温度センサT1,T2の信号の他、設定距離L1についてのリファレンスデータ(
図11、
図12)が加わる。その他の点については、
図10に示した本実施形態の手順と
図6で説明した第1実施形態の手順は同様である。以下、第1実施形態との相違点を説明する。
【0068】
-リファレンスデータ-
図11は作動油温度[℃]と設定距離L1との関係を規定したリファレンスデータを模式的に示した図である。同図に示したリファレンスデータは、作動油温度To[℃]と設定距離L1との関係を規定したグラフ又はデータテーブルであり、予め作成してROM102に格納してある。同図では、作動油温度Toについて設定温度To1[℃],To2[℃](To1<To2)が設定してあり、To1≦To<To2の範囲で作動油温度Toが高くなるにつれて設定距離L1が最大値LmaxからLminまで単調に短くなるようにしてある。To<To1の範囲で設定距離L1は最大値Lmaxで一定であり、To≧To2の範囲で設定距離L1は最小値Lminで一定である。設定距離L1の変化形態は、
図11に示したようにTo1≦To<To2の範囲で作動油温度Toに比例して(連続的に)短くなる形態に限らず、例えば目標回転数Ntについて
図9に示したようなステップ状の形態としても良い。このリファレンスデータに従えば作動油温度Toに応じた設定距離L1が一義的に定まる。
【0069】
図12はエンジン冷却水温度[℃]と設定距離L1との関係を規定したリファレンスデータを模式的に示した図である。同図に示したリファレンスデータは、エンジン冷却水温度Tw[℃]と設定距離L1との関係を規定したグラフ又はデータテーブルであり、予め作成してROM102に格納してある。同図では、エンジン冷却水温度Twについて設定温度Tw1[℃],Tw2[℃](Tw1<Tw2)が設定してある。Tw1≦Tw<Tw2の範囲でエンジン冷却水温度Twが高くなるにつれて、設定距離L1が最大値LmaxからLminまで単調に短くなるようにしてある。Tw<Tw1の範囲で設定距離L1は最大値Lmaxで一定であり、Tw≧Tw2の範囲で設定距離L1は最小値Lminで一定である。設定距離L1の変化形態は、
図12に示したようにTw1≦Tw<Tw2の範囲でエンジン冷却水温度Twに比例して(連続的に)短くなる形態に限らず、例えば目標回転数Ntについて
図9に示したようなステップ状の形態としても良い。このリファレンスデータに従えばエンジン冷却水温度Twに応じた設定距離L1が一義的に定まる。
【0070】
-自動オンオフ制御-
図11に示したように、本実施形態ではオートアイドル機能とマシンコントロール機能の双方が有効である場合、コントローラ100はステップS14からステップS14aに手順を移す。ステップS14aに手順を移すと、コントローラ100は、温度に応じた設定距離L1をリファレンスデータに従って算出する。設定距離L1は、温度センサT1で測定された作動油温度のみに基づいて決定しても良いし、温度センサT2で測定されたエンジン冷却水温度のみに基づいて決定しても良い。温度センサT1,T2の双方の測定温度を設定距離L1の演算の基礎とし、作動油温度Toに応じた設定距離L1とエンジン冷却水温度Twに応じた設定距離L1の最大値をステップS16で用いる設定距離L1として選択する構成を採用することもできる。作動油温度Toに応じた設定距離L1とエンジン冷却水温度Twに応じた設定距離L1の平均値又は最小値をステップS16で用いる設定距離L1とする例も考えられる。そして、ステップS14aの処理を実行した後、コントローラ100はステップS15に手順を移し、バケット爪先と目標面との距離Lを算出する。ステップS14a,S15の実行順序は逆でも良いし、並列演算でも良い。
【0071】
その他の点について、本実施形態は第1実施形態と同様である。
【0072】
本実施形態においても、マシンコントロール機能とオートアイドル機能の双方が有効である場合、バケットが目標面に近付いた状態ではオートアイドル機能が自動的に一時無効化され、マシンコントロール機能とオートアイドル機能とを両立させることができる。
【0073】
加えて、本実施形態においては作動油温度To、エンジン冷却水温度Twに応じて設定距離L1が変化する。例えば作動油温度Toはポンプトルクの立ち上がりに影響し、作動油温度Toが低いとポンプトルクの立ち上がりが遅くなる。そのため、本実施形態のように作動油温度Toが低い場合に設定距離L1を長く設定することで、エンジン回転数がアイドル回転数N0から規定回転数Nsまで上昇しきる前にマシンコントロール機能が作用することを抑制できる。メータリング学習時と同じ条件(規定回転数Ns)でマシンコントロール機能が働くことで、作業精度が確保できる。反対に作動油温度Toが高い場合には設定距離L1を短くしてもエンジン回転数が規定回転数Nsまで応答良く上昇するため、オートアイドル機能の有効領域が広がって省エネ効果の向上が期待できる。
【0074】
一方のエンジン冷却水温度Twについては、エンジン回転数の立ち上がりに影響する。エンジン冷却水温度Twが低いとエンジン回転数の立ち上がりが遅くなるので、エンジン冷却水温度Twが低い場合に設定距離L1を長く設定することで、エンジン回転数が規定回転数Nsに復帰する前にマシンコントロール機能が作用することを抑制できる。反対にエンジン冷却水温度Twが高い場合には設定距離L1を短くしてもエンジン回転数が規定回転数Nsまで応答良く上昇するため、上記と同様、オートアイドル機能の有効領域が広がって省エネ効果の向上が期待できる。
【符号の説明】
【0075】
10…車体、20…作業装置、31…ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)、32…アームシリンダ(油圧アクチュエータ)、33…バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)、34…旋回モータ(油圧アクチュエータ)、36…油圧ポンプ、37…パイロットポンプ、38…制御弁ユニット、51,52…操作レバー装置、60…マシンコントロール電磁弁ユニット、100…コントローラ、A1~A3…角度センサ(姿勢センサ)、L…バケットの爪先と目標面との距離、L1…設定距離、MN…モニタ、N0…アイドル回転数、SW1…オートアイドルスイッチ、SW2…マシンコントロールスイッチ、T1,T2…温度センサ