(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 3/968 20060101AFI20221213BHJP
E06B 1/18 20060101ALI20221213BHJP
E06B 1/12 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
E06B3/968 A
E06B1/18 M
E06B1/12 A
(21)【出願番号】P 2019116640
(22)【出願日】2019-06-24
【審査請求日】2021-11-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)電気通信回線を通じた公開 掲載日 2019年5月17日 掲載アドレス https://www.ykkap.co.jp/company/japanese/news/detail.html?s=20190517 (2)記者会見による公開 会見日 2019年5月17日 会見場所 YKK60ビル AZ-1(東京都墨田区三丁目22番1号)
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】西塔 都志雄
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-097266(JP,U)
【文献】実開昭60-083185(JP,U)
【文献】特開2008-261107(JP,A)
【文献】特開2002-174081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/96-3/99
E06B 1/12、1/18、1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠、下枠、戸先側縦枠および戸尻側縦枠を備える枠体と、前記枠体内にスライド可能に配置される障子とを備える建具であって、
前記枠体は、前記戸先側縦枠および前記戸尻側縦枠間において前記上枠および前記下枠に取り付けられる縦骨を備え、
前記上枠、前記下枠、前記戸先側縦枠および前記縦骨には、それぞれの長手方向に沿った気密材が装着され、
前記上枠および前記下枠の少なくとも一方には、戸先側の第一溝側面と、前記第一溝側面とは反対側に位置する第二溝側面と、前記第一溝側面および前記第二溝側面間に位置する溝底面とによって溝部が形成され、
前記溝部には前記縦骨の端部が配置され、
前記縦骨は、前記縦骨を戸先側に位置調整する調整部材を備え、
前記調整部材は、前記第二溝側面に当接する位置に向けて前記溝部に差込移動可能に前記縦骨の端部に取り付けられる
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具において、
前記調整部材は前記縦骨に沿って上下方向に移動可能であると共に、上下方向の移動において前記第二溝側面に当接する当接縦部を有する
ことを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の建具において、
縦骨の端部の戸先側における見込み面にはシーラーが設けられ、
前記第一溝側面には、前記第二溝側面に対して前記調整部材が当接した状態で前記シーラーが当接する
ことを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項
2に記載の建具において、
前記調整部材は、板状本体と、前記板状本体の裏面に形成された前記当接縦部と、前記当接縦部から左右方向に延びて前記板状本体の裏面に形成された当接横部とを有し、
前記上枠および前記下枠の少なくとも一方には、内周側に延出して前記第二溝側面を形成する延出見付け片部が形成され、
前記調整部材は、その前記当接縦部が前記第二溝側面に当接し且つ前記当接横部が前記延出見付け片部の左右方向に沿った横縁に当接すると共に、前記板状本体が前記延出見付け片部の端部を覆って配置される
ことを特徴とする建具。
【請求項5】
請求項4に記載の建具において、
前記上枠および前記下枠の双方に前記溝部が形成され、
前記調整部材は、前記縦骨の上端部および下端部の双方に取り付けられ、
前記当接横部は、前記当接縦部に対して左右両側に延びて形成される
ことを特徴とする建具。
【請求項6】
上枠、下枠および左右の縦枠を備える枠体と、前記枠体内にスライド可能に配置される障子とを備える建具であって、
前記枠体は、前記上枠および前記下枠間において前記左右の縦枠に取り付けられる中骨を備え、
前記上枠または前記下枠と前記左右の縦枠および前記中骨には、それぞれの長手方向に沿った気密材が装着され、
前記左右の縦枠の少なくとも一方には、上下一方側の第一溝側面と、前記第一溝側面とは反対側に位置する第二溝側面と、前記第一溝側面および前記第二溝側面間に位置する溝底面とによって溝部が形成され、
前記溝部には前記中骨の端部が配置され、
前記中骨は、前記中骨を上下一方側に位置調整する調整部材を備え、
前記調整部材は、前記第二溝側面に当接する位置に向けて前記溝部に差込移動可能に前記中骨の端部に取り付けられる
ことを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物躯体の開口に設置される建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建具として、窓枠と、窓枠の左右方向における略半分の領域に構成される固定窓と、窓枠内に左右方向にスライド可能に配置された障子とを備える片引き窓が知られている(特許文献1参照)。窓枠は、上枠、下枠および左右の縦枠を枠組みし、左右の縦枠間において上枠および下枠に中骨(縦骨)を取り付けて構成されており、上枠、下枠、左右一方の縦枠および中骨によって形成される開口に面材が設置されることで前記固定窓が構成されている。障子は、上框、下框、左右の縦框および面材を框組みして構成されている。上枠、下枠、左右一方の縦枠および中骨には、それぞれの長手方向に沿った気密材が装着されており、当該気密材は、片引き窓の閉鎖状態で障子の上框、下框および左右の縦框に当接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の片引き窓では、気密材が上枠、下枠、左右一方の縦枠および中骨に沿って装着されている。工場で窓枠を枠組みする場合には、当該気密材として四周連続したものを採用可能だが、現場で窓枠を枠組みする場合には、気密材は上枠、下枠、左右の一方の縦枠および中骨にそれぞれ装着されるものが採用され、窓枠を枠組みする際に各気密材の端部が突き合わされることとなる。
ところで、中骨が上枠および下枠に形成された溝部に差し込まれて固定される場合、中骨を差し込み可能とするために、溝部は中骨の見付け寸法よりも若干大きい寸法を有して形成される。このため、中骨および溝部の間には左右方向の隙間が生じ、中骨に装着された気密材と上枠および下枠に装着された気密材との間にも隙間が形成されて気密性が低下するおそれがある。
また、上げ下げ窓において上枠および下枠の間に配置される中骨(横材)を左右の縦枠の溝部に差し込んで取り付ける場合も同様である。
【0005】
本発明の目的は、気密性を向上できる建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建具は、上枠、下枠、戸先側縦枠および戸尻側縦枠を備える枠体と、前記枠体内にスライド可能に配置される障子とを備える建具であって、前記枠体は、前記戸先側縦枠および前記戸尻側縦枠間において前記上枠および前記下枠に取り付けられる縦骨を備え、前記上枠、前記下枠、前記戸先側縦枠および前記縦骨には、それぞれの長手方向に沿った気密材が装着され、前記上枠および前記下枠の少なくとも一方には、戸先側の第一溝側面と、前記第一溝側面とは反対側に位置する第二溝側面と、前記第一溝側面および前記第二溝側面間に位置する溝底面とによって溝部が形成され、前記溝部には前記縦骨の端部が配置され、前記縦骨は、前記縦骨を戸先側に位置調整する調整部材を備え、前記調整部材は、前記第二溝側面に当接する位置に向けて前記溝部に差込移動可能に前記縦骨の端部に取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、気密性を向上できる建具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る建具を示す外観姿図。
【
図3】前記実施形態に係る建具の閉鎖状態を示す横断面図。
【
図4】前記実施形態に係る建具の開放状態を示す横断面図。
【
図5】前記実施形態に係る建具の下ガイド機構を示す説明図。
【
図6】前記実施形態に係る建具の上ガイド機構を示す説明図。
【
図7】前記実施形態に係る建具の上部を示す縦断面図。
【
図8】前記実施形態に係る建具の下部を示す縦断面図。
【
図9】前記実施形態に係る建具の下部を示す縦断面図。
【
図10】前記実施形態に係る建具の樹脂押縁を示す縦断面図。
【
図11】前記実施形態に係る建具の気密材を示す説明図。
【
図12】前記実施形態に係る建具における縦骨取付けを示す説明図。
【
図13】前記実施形態に係る建具の調整部材を示す斜視図。
【
図14】前記実施形態に係る建具の調整部材による位置調整を示す説明図。
【
図15】前記実施形態に係る建具のブレーキダンパおよびブレーキガイドを示す説明図。
【
図16】前記実施形態に係る建具のブレーキダンパおよび上部摺動片を示す斜視図。
【
図17】前記実施形態に係る建具の指挟み防止具を示す横断面図。
【
図18】前記実施形態に係る建具のブレーキダンパおよび指挟み防止具を示す説明図。
【
図19】前記実施形態に係る建具の引寄せ部材およびその取付部を示す説明図。
【
図20】本発明の変形例に係る建具を示す縦断面図。
【
図22】前記変形例に係る建具の要部を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1~
図9において、本実施形態に係る建具である片引き窓1は、建物躯体の開口部に設置されて室内外を仕切るものであり、窓枠2(枠体)と、
図1において左側に構成される固定窓3と、窓枠2内に左右方向にスライド可能に配置された障子4と、障子4のスライド移動において当該障子4を見込み方向に移動させるガイド機構5(
図5,6等参照)とを備えている。窓枠2内のうち固定窓3よりも室外側の部分には、
図2,3に示すように網戸6が左右方向にスライド可能に配置される。
以下の説明において、片引き窓1の左右方向をX軸方向とし、片引き窓1の上下方向をY軸方向とし、片引き窓1の見込み方向(面外方向)をZ軸方向とする。X,Y,Z軸方向はそれぞれ互いに直交する。
【0010】
窓枠2は、上枠21(横枠)、下枠22(横枠)および左右の縦枠23,24を枠組みし、縦枠23,24間に縦骨25(中骨(縦枠))を設けて構成されている。縦枠23は、後述する戸先側の縦框43が当接する戸先側縦枠であり、縦枠24は、障子4に対して戸尻側に位置する戸尻側縦枠である。本実施形態では左右の縦枠23,24および縦骨25の長さ寸法は上枠21および下枠22の長さ寸法よりも大きい寸法とされ、これにより、縦長の窓枠2が構成されている。上枠21には、障子4をX軸方向にスライド案内する上レール211(レール)が形成されており、下枠22には、障子4をX軸方向にスライド案内する下レール221(レール)が形成されており、縦枠23には錠受け72が取り付けられている。縦骨25は、概ね中空矩形状に形成されており、上枠21および下枠22の長手方向(X軸方向)における略中間位置(
図1参照)に配置されている。縦骨25の室内見付け片部251(障子4に対向する対向片部)には、室内側に延出し且つ戸尻側に折曲された断面略L字形状の煙返し片部252が形成されている。
【0011】
固定窓3は、複層ガラス等からなる面材31の周縁が上枠21、下枠22、縦枠24および縦骨25に形成される開口に嵌め殺しされて構成されている。この固定窓3によって窓枠2内のうち略左側半分(
図1参照)が閉鎖された閉鎖部30が構成されている。また、窓枠2内のうち略右側半分は、上枠21、下枠22、縦枠23および縦骨25によって室内外につながった建具開口20が構成されている。
上枠21、下枠22、縦枠24および縦骨25は、枠本体32A~32Dと、枠本体32A~32Dに取り付けられた室外受け部としての金属押縁33A~33Dおよび室内受け部としての樹脂押縁34A~34D(押縁)とをそれぞれ備えている。閉鎖部30において、金属押縁33A~33Dは面材31の室外面を受けており、樹脂押縁34A~34Dは面材31の室内面を受けている。
【0012】
上枠21および下枠22の枠本体32A,32Bは、アルミ押出形材によって形成された室外形材321A,321Bおよび室内形材322A,322Bと、室外形材321A,321Bおよび室内形材322A,322Bをそれぞれ連結した断熱材323とによってそれぞれ構成された断熱枠材である。下枠22は、室外形材321Bの上面、室内形材322Bの上面および断熱材323の上面によって下枠見込み部222を形成している。室外形材321A,321Bには金属押縁33A,33Bが係合され且つ樹脂押縁34A,34Bがネジ止めされている。また、室外形材321Aのうち金属押縁33Aよりも室外側部分には網戸レール212が形成されており、室外形材321Bのうち金属押縁33Bよりも室外側部分には網戸用のアタッチメント16が係合している。網戸用のアタッチメント16の上面には網戸取付用の溝部161が形成されている。網戸6は網戸レール212およびアタッチメント16の溝部161にX軸方向にスライド可能に嵌合している。室外形材321A,321Bのうち建具開口20側の部分には、他の樹脂押縁35A,35B(
図7、
図8参照)がカバー係合部材としてネジ止めされており、これらにアタッチメント16との間を覆う枠カバー17が係合している。
室内形材322Aには下方に延出したレール形成片213が形成されており、レール形成片213は、室内形材322Aに取り付けられた樹脂枠材181に形成されたレール形成片182と組み合わされることで、前述した上レール211を中空形状に形成している。
室内形材322Bには、X軸方向に沿った一枚板状の下レール221と、下レール221よりも室内側において上方に立ち上げられた室内見付け片部223とが形成されている。下レール221はZ軸方向において樹脂押縁34B,35Bおよび室内見付け片部223の間に配置されている。
【0013】
樹脂押縁34B,35Bおよび下レール221の間には、
図8,
図9に示すように樹脂製の第一枠カバー36が設置されており、下レール221および室内見付け片部223の間にはアルミ樹脂複合の第一枠カバー37が設置されている。第一枠カバー36および第一枠カバー37はX軸方向に沿っている。
第一枠カバー36は、カバー本体片部361と、カバー本体片部361の室内縁部に形成された鉤状の係合部362と、カバー本体片部361の室外縁部に下方に突出して形成された当接部363とを有している。ここで、室内形材322Bには係合部362が係合する鉤状の被係合部224が形成されており、第一枠カバー36は、係合部362が被係合部224に係合した状態で当接部363が室外形材321Bに当接している。このように設置される第一枠カバー36は、室外形材321Bおよび室内形材322B間の断熱材323を上方から覆っている。
このように構成された第一枠カバー36によれば、例えば下枠22との係合箇所が室外縁部および室内縁部の双方に形成されるカバーと比べて、係合箇所を一箇所(係合部362だけ)とすることで、係合箇所の加工を少なくできてコスト削減できる。また、下枠22には図示しない室外側への排水経路が形成されているが、例えば樹脂押縁34B,35Bおよび下レール221の間の空間に水が浸入して水嵩が増した場合には、下枠22と係合されていない当接部363が浮力によって上方に浮き上がることで、室外側への排水を促進できる。
【0014】
金属押縁33A~33Dは、
図2、
図3に示すように、見付け方向に沿った二つの係合片部をそれぞれ有しており、各二つの係合片部は枠本体32A~32Dに係合している。金属押縁33A~33Dにはビード38が装着されており、各ビード38によって面材31の室外面を押えている。
樹脂押縁34A,34Bは、
図2に示すように、枠本体32A,32Bにネジ止めされた取付片部341を有しており、樹脂押縁34Aは取付片部341よりも室内側において枠本体32Aに形成された鉤状の枠係合部325に係合した係合見込み部342を更に有し、樹脂押縁34Bは取付片部341よりも室内側において枠本体32Bに当接した室内見付け片部349(枠見付け片部)を更に有している。樹脂押縁34A,34Bにはビード38が装着されており、各ビード38によって面材31の室内面を押えている。
樹脂押縁34Cは、
図3に示すように、枠本体32Cに形成された鉤状の枠係合部324に係合した係合見込み部344を有しており、係合見込み部344よりも室内側部分で枠本体32Cにネジ止めされている。樹脂押縁34Cにはビード38が装着されており、このビード38によって面材31の室内面を押えている。
樹脂押縁34Dは、
図10に示すように、中空部を有した押縁本体部345と、押縁本体部345からX軸方向に延出した押縁取付片部346および押縁係合片部347とを有しており、押縁本体部345にはビード38が装着されており、このビード38によって面材31の室内面を押えている。押縁係合片部347は、押縁取付片部346に対してZ軸方向において室外側に間隔を隔てて配置されており、その先端にはZ軸方向に折曲された係合見込み部348が形成されている。ここで、枠本体32Dには、その見込み面329から戸尻側に向かってX軸方向に延出した枠取付片部326と、枠取付片部326に対してZ軸方向において室外側に間隔を隔てて配置された鉤状の枠係合部327とを有しており、枠係合部327にはZ軸方向に沿った係合見込み部328が形成されている。
この樹脂押縁34Dは、係合見込み部348が係合見込み部328に対してZ軸方向の係合代L1をもって係合されると共に、押縁取付片部346が枠取付片部326の室内側に重ね合わされた状態で連結具としてのZ軸方向に沿ったネジ13によって当該枠取付片部326にネジ止めされる。ネジ13は、Y軸方向に沿った複数箇所において押縁取付片部346を枠取付片部326に対してネジ止めしている。このように樹脂押縁34Dが取り付けられた状態では、ネジ13の先端131は押縁係合片部347の室内面347Aに対向して配置され、ネジ13の先端131および押縁係合片部347の室内面347Aの間の隙間寸法L2は、係合代L1よりも小さい寸法とされている。
このように樹脂押縁34Dは、前述した隙間寸法L2が係合代L1よりも小さい寸法とされているので、面材31に風圧が加わることで樹脂押縁34Dが見込み方向に押圧されて撓んだりしても、ネジ13の先端131が押縁係合片部347に当接することで、押縁係合片部347が枠係合部327から外れないように係合見込み部348,328同士の係合代L1を残すことができ、これにより、樹脂押縁34Dの取付強度を向上できる。本実施形態では、上枠21、下枠22および左右の縦枠23,24よりも見込み寸法が小さく、且つ、窓枠2のうち最も縦長に形成される縦骨25が、風圧等の影響を大きく受けやすいが、この縦骨25に対して前述したように樹脂押縁34Dを取り付けることで、樹脂押縁34Dが外れることなく面材31を押さえることができる。
また、例えば樹脂押縁34Dが劣化、破損した場合には、ネジ13を外して押縁取付片部346を枠取付片部326から取り外し、押縁係合片部347を枠係合部327から外すことで、樹脂押縁34Dを枠本体32Dから取り外すことができ、新たな樹脂押縁34Dに容易に交換できる。
更に、樹脂押縁24Dの押縁係合片部347が、枠本体32Dの長手方向(Y軸方向)に沿った複数箇所で枠取付片部326に取り付けられているので、温度変化等による枠本体32Dに対する樹脂押縁24Dの熱伸縮差を低減できる。
なお、本実施形態では、縦骨25に樹脂押縁34Dを取り付けているが、上枠21、下枠22および左右の縦枠23,24に対しても、樹脂押縁34A~34Cに代えて、前述したように隙間寸法L2が係合代L1よりも小さい寸法とされて枠本体32A~32Cに取り付けられる樹脂押縁を取り付けてもよい。この場合、枠本体32A~32Cには、前記樹脂押縁に応じて枠係合部や取付片部が適宜形成される。
また、枠本体32A~32Dを金属製(断熱材323を備えるものも含む)として十分な強度を確保しつつ大きな建具開口20を形成する大型の片引き窓1を構成する場合でも、固定窓3の面材31の室内面を押える押縁として樹脂押縁34A~34Dを採用することで断熱性を向上できる。
【0015】
窓枠2のうち建具開口20の周囲を囲む部分における室内面には、
図3、
図7および
図8に示すように気密材10(10A~10D)が装着されている。
上枠21の樹脂押縁35Aには、
図7に示すように気密材10Aが障子4に対向して装着されており、下枠22の樹脂押縁35Bには、
図8に示すように気密材10Bが障子4に対向して装着されている。気密材10A,10BはX軸方向に沿っている。
縦枠23には、
図3に示すようにX軸方向に沿った装着片部201が形成されており、装着片部201には気密材10Cが障子4に対向して装着されており、縦骨25の室内見付け片部251のうち煙返し片部252よりも戸先側(建具開口20側)の部分には気密材10Dが障子4に対向して装着されている。気密材10C,10DはY軸方向に沿っている。ここで、気密材10Dは気密材10Cよりも長く形成されており、気密材10A,10Bの戸尻側における端面が密接している。また、気密材10Cの上下の端面は気密材10A,10Bに密接している。このように気密材10A~10Dが突き合わされた状態で障子4に圧接することで気密性を発揮する。
【0016】
図11(A)および
図11(B)は縦骨25に装着された気密材10Dを示している。気密材10Dは樹脂製であり、気密材基部11と、気密材基部11よりも軟質な樹脂材料によって形成された弾性変形可能な環状の気密材当接部12とを有している。
図11(A)は障子4に押し潰されていない状態の気密材10Dを示しており、
図11(B)は障子4に押し潰された状態の気密材10Dを示している。気密材基部11は、表面に気密材当接部12が取り付けられた平板状の本体基部111と、本体基部111の裏面から延出した係合爪部112と、本体基部111の表面における一方側縁側から突出した突部113とを有している。突部113と気密材当接部12との間には、気密材当接部12の所定範囲の潰れ変形を許容するための間隙114が設けられている。突部113は、気密材当接部12の側部に対向する受け面113Aを有している。受け面113Aは、その先端が基端よりも気密材当接部12から離れた位置となるように突部113の突出したA方向に対して傾斜しており、このように傾斜することで、もし砂や水が気密材当接部12を乗り越えて浸入した場合にこれらを排水経路へ誘導できる。突部113のA方向における突出寸法115は気密材当接部12のA方向における寸法116よりも小さい寸法であって、気密材当接部12が
図11(B)に示すように障子4に押されて所定量潰れた際(本実施形態では4mmほど潰れた際)に障子4に干渉しない範囲で大きい寸法とされている。なお、例えば施工誤差や気密材10Dの取付相手部材に反りなどが発生した場合には、突部113が障子4に当接することがあるが、この当接によって気密材当接部12が過度に潰されて永久圧縮ひずみが発生することを抑制できる。
このように形成された気密材10Dは、係合爪部112が縦骨25の室内見付け片部251に形成された係合凹溝254に係合される。このとき、突部113は気密材当接部12に対して煙返し片部252側に配置される。
気密材10A~10Cも気密材10Dと同様に形成されている。気密材10A~10Dは、建具開口20の周囲において突部113が気密材当接部12よりも外周側に位置するようにそれぞれ配置されている。本実施形態では気密材10A~10Dは戸尻側で縦勝ちとされ且つ戸先側で横勝ちとされている。このため、気密材当接部12が外周側に弾性変形して、各気密材10の端部間にピンホールなどの隙間が形成されることが抑制される。また、X軸方向に沿った気密材10A,10Bは、障子4のX軸方向におけるスライド移動によってX軸方向に引きずられるおそれがあるが、前述したように気密材10Dに気密材10A,10Bの戸尻側の端面が突き当てられるように当該気密材10を長く形成して縦勝ちとしているので、気密材10A~10D間にピンホールなどの隙間が形成されることを抑制でき、安定した水密性、気密性を得ることができる。なお、本実施形態では、四周連続した高価な気密材を採用せずに、気密材10A~10Dを突き合せてタイトラインを形成することで、コストを抑えることができる。
【0017】
下枠22には、
図12に示すように、戸先側の第一溝側面225と、X軸方向において第一溝側面225とは反対側に位置する第二溝側面226と、第一溝側面225および第二溝側面226間に位置する溝底面227とによって溝部228が形成されており、この溝部228には縦骨25の下端部256が配置される。第一溝側面225は樹脂押縁35Bおよび枠カバー17の戸尻側の端面によって形成されている。第二溝側面226は、下枠見込み部222よりも内周側に位置した樹脂押縁34Bの戸先側の端面によって形成されている。ここで、樹脂押縁34Bの室内見付け片部349における横縁349Aは樹脂押縁34Bの内周見込み面よりも上方に突出している。溝底面227は下枠見込み部222の内周見込み面にシーラーが設けられて構成されている。
縦骨25の下端部256には、縦骨25を戸先側に向かってX軸方向に位置調整する調整部材7が取り付けられている。調整部材7は、
図13(A)および
図13(B)に示すように、板状本体73と、板状本体73の裏面73Bに形成された当接縦部74と、当接縦部74からX軸方向に延びて板状本体73の裏面73Bに形成された当接横部75とを有している。板状本体73には、Y軸方向に沿った長孔76が形成されている。調整部材7は、長孔76に挿通される軸ネジ77(
図12参照)が挿通されて縦骨25の室内見付け片部251に螺合することによって、当該縦骨25にY軸方向に移動可能に取り付けられている。板状本体73のうち
図12における左側部分(点線で示す部分)は室内見付け片部251および煙返し片部252の間に配置されてY軸方向に移動案内される配置となっている。本実施形態では、当接縦部74および当接横部75は、
図13(B)に示すように左右一対設けられている。一対の当接縦部74は、板状本体73の左右略中央位置においてY軸方向に沿ってリブ形状に形成されており、板状本体73の下端縁から下方に突出している。一対の当接横部75は当接縦部74からX軸方向に沿って溝形状に形成されている。一対の当接縦部74のうち
図12において右側に位置する当接縦部74の第二溝側面226に対する当接面741は、樹脂押縁34D側における縦骨25の見込み面329よりも縦枠24側(戸先からX軸方向に離れる側)に配置されている。
このように下端部256に調整部材7が取り付けられた縦骨25は、
図14(A)から
図14(B)に示す手順で位置調整されて下枠22に取り付けられる。
まず、
図14(A)に示すように、縦骨25の下端部256を溝部228の上方に配置する。縦骨25の戸先側の見込み面330にはシーラー331が設けられている。
次に、
図14(B)に示すように、縦骨25の下端部256を溝部228に差し込む。このとき、シーラー331が樹脂押縁35Bなどに引っ掛かって外れないように、第一溝側面225と縦骨25の見込み面330との間に隙間が形成され、調整部材7は樹脂押縁34Bよりも上方に位置する。縦骨25自体のX軸方向における幅寸法は幅寸法W2よりも小さい寸法とされている。このため、縦骨25の下端部256を溝部228に容易に差し込むことができ、シーラー331が外れないように第一溝側面225と縦骨25の見込み面330との間に隙間を形成できる。
次に、
図14(C)に示すように、縦骨25を第一溝側面225側に押し当て、調整部材7を下降させて、当接縦部74の当接面741を第二溝側面226に当接させることで、縦骨25を戸先側に位置調整する。これにより、縦骨25が第一溝側面225に押し当てられた状態が維持され、シーラー331が樹脂押縁35Bや枠カバー17の端面に対して密着され、
図12に示す気密材10Dも気密材10Bの端面に密着される。また、当接横部75は室内見付け片部349の横縁349Aに当接して水密性を高めており、板状本体73は、樹脂押縁34Bの端部を室内側から覆い隠して外観意匠を向上させている。なお、
図14(C)に示すように調整部材7を下降させた状態では、当接縦部74のうち下方に突出した部分は溝底面227に設置したシーラーに形成された穴に配置される。
最後に縦骨25の下端部256を下枠22にネジ止めする。このようにして縦骨25を下枠22に取り付ける。
【0018】
前述したように縦骨25の下端部256を下枠22の溝部228に差しこみ、続いて、調整部材7をY軸方向に移動して当接縦部74を第二溝側面226に押し当てることで、縦骨25を戸先側に位置調整でき、調整部材7が第二溝側面226に当接し且つシーラー331が第一溝側面225に当接した状態を形成して、下枠22と縦骨25との間に隙間が生じることをなくし得る。これにより、気密材10Dと気密材10Bとを密に突き合わせることができて、これらの間にピンホールなどの隙間が形成されることを抑制できる。また、縦骨25の下端部256に設けられたシーラー331を戸先側の第一溝側面225に密接でき、シーラー331による水密性を向上できる。更に、本実施形態では、調整部材7が所定位置まで溝部228に差し込みきっていない状態では、後述する縦框44の係合部材442と干渉する配置となる。このため、調整部材7を所定位置に配置できていない状態を確認することができ、確実な施工を行える。
【0019】
また図示しないが、上枠21には、下枠22と概略同様に、樹脂押縁34Aと樹脂押縁35Aおよび枠カバー17との間に溝部が形成されており、縦骨25の上端部257(
図1参照)は前記溝部に配置されて上枠21にネジ止めされる。縦骨25の上端部257にも調整部材7が上下逆向きに設置されており、縦骨25を溝部に配置した状態で、縦骨25を樹脂押縁35Aおよび枠カバー17の端面(第一溝側面)に押し当てながら調整部材7を上昇させ、当接縦部74を樹脂押縁34Aの戸尻側の端面(第二溝側面)に当接させることで、縦骨25を戸先側に位置調整する。これにより、縦骨25(見込み面330にシーラー331が設けられている場合にはシーラー331)が樹脂押縁34Aおよび枠カバー17の戸尻側の端面に密着され、また、気密材10Dが気密材10Aの端面に密着される。更に、樹脂押縁34Aにも樹脂押縁34Bと同様に突出した横縁を有する室内見付け片部(枠見付け片部)を有しており、調整部材7の当接横部75はこの横縁に当接し、且つ、板状本体73は樹脂押縁34Bの端部を室内側から覆い隠す。
このようにして縦骨25の上端部257を調整部材7によって位置調整して上枠21に取り付けることで、縦骨25の下端部256を下枠22に取り付ける場合と同様の作用効果を発揮できる。
また、調整部材7は、左右一対の当接縦部74や左右一対の当接横部75を有しているので、調整部材7を上下反転させても同様に縦骨25の位置調整に用いることができる。このため、縦骨25の上端部257および下端部256にそれぞれ取り付けられる調整部材7を共通化できる。
【0020】
障子4は、上框41、下框42、左右の縦框43,44および複層ガラス等からなる面材45を框組みして構成されている。縦框43が戸先縦框であり、縦框44が戸尻縦框である。
縦框43は、
図3に示すように、室外見付け片部431、見込み片部432,433および室内見付け片部434を有しており、室外見付け片部431、見込み片部432および室内見付け片部434によって縦溝部435が形成されている。室外見付け片部431には引手8が設けられており、室内見付け片部434には操作ハンドル9が設けられており、縦溝部435には、縦枠23の錠受け72と係合可能な錠部材71(本実施形態ではグレモン錠)が設けられており、錠部材71および錠受け72によって錠装置が構成されている。錠部材71は、図示しない連動機構によって操作ハンドル9と連結されており、操作ハンドル9の操作によって錠受け72と係合し、また、係合解除する構成とされている。縦框43の室外見付け片部431は、建具開口20の全閉状態では、
図3に示すように縦枠23の装着片部201に対してZ軸方向に対向して配置され、且つ、装着片部201に装着された気密材10Cに当接する。
縦框44は、概ね中空矩形状に形成されており、その室外面441には縦骨25の煙返し片部252に係合する断面略コ字状の係合部材442が形成されている。係合部材442は、障子4の開放移動によって煙返し片部252から外れ、障子4の閉鎖移動によって煙返し片部252に係合する。
上框41は、
図7に示すように、室外見付け片部411、上下の見込み片部412,413および室内見付け片部414を有しており、室外見付け片部411、見込み片部412および室内見付け片部414によって上方に開口した上溝部415が形成されている。上溝部415には上枠21の上レール211が配置されている。
下框42は、
図8に示すように、室外見付け片部421(障子見付け片部)、上下の見込み片部422,423および室内見付け片部424を有しており、下方側の見込み片部423には可傾戸車46が配置された戸車用の孔(図示省略)が形成されている。可傾戸車46は、下レール221に載せられている。ここで、可傾戸車46は、X軸方向に沿った仮想軸を中心としてY軸方向に沿った直立状態から室外側に傾いた傾斜状態まで傾動可能に配置されている。また、可傾戸車46には、障子4の面材45等の自重に基づいて傾斜状態から直立状態へ復帰する方向の力が与えられている。このため、障子4が開放移動されてガイド機構5による室外側への引き寄せが解除されることで、傾斜状態から直立状態へ自動復帰する。これにより、障子4はその開放移動に伴って閉鎖状態における見込み位置から室内側へ移動するようになっている。
【0021】
前述した下框42における下方側の見込み片部423は、
図8に示すように、そのZ軸方向における略中央位置よりも室外部分423Aは室内部分423Bよりも厚さ寸法が小さく形成されており、これにより、見込み片部423の上面における前記略中央位置には段部423Cが形成されている。このように構成された下框42では、雨水等の水が下框42の内部(中空部)に浸入しても見込み片部423に段部423Cが形成されているので、室外部分423A側から室内部分423B側に水が流れ込むことを抑制でき、当該水を室外側へ排水案内できる。
なお、本実施形態では、見込み片部423に段部423Cを形成して室内側への水の流れ込みを抑制しているが、これに限らない。例えば見込み片部423の上面を室外側が室内側よりも低くなるようにZ軸方向に対して傾斜させることで、室内側への水の流れ込みを抑制してもよく、この場合、段部423Cは省略してもよい。
【0022】
前述した縦框43の室外下端部436は、
図9に示すように、室外下端部436に対して室内側の下端部分よりも下方に突出して形成されており、室外下端部436の下端縁は、樹脂押縁35Bおよび下レール221よりも下方に位置している。このように室外下端部436を形成することで、縦框43に引手8などの取付加工箇所などから浸入する水が室外下端部436よりも室内側に流れ込むことを抑制でき、室内側に排水案内できる。なお、縦框43の下端部には下部摺動片47が取り付けられている。
【0023】
縦框43,44の上端部には、
図15に示すようにブレーキダンパ48A,48Bおよび上部摺動片49A,49Bが取り付けられている。ブレーキダンパ48A,48Bは、
図16(A)および
図16(B)に示すように、ダンパケース481と、ダンパケース481の上端に配置された当接ローラ482を有した当接体483とを備えており、当接体483はダンパケース481内に設置された弾性バネ等の付勢部材(図示省略)によって上方に弾性付勢されている。このブレーキダンパ48A,48Aの上部には上部摺動片49A,49Bが配置される。当接ローラ482のZ軸方向における見込み位置は、障子4の見込み中央位置に配置されており、
図4に示すように障子4が室内側に後退した状態では上レール211の見込み中央に配置される。上部摺動片49A,49Bには、底片部491および底片部491の室内外両縁から上方に延出した一対の側片部492,493によって保護溝部495が形成されている。底片部491には、当接体483が通される孔494(
図17参照)が形成されており、孔494に通された当接体483は、保護溝部495に配置されることで、運搬、施工時に当接体483が他部品などに引っ掛かったりしないように保護されている。
上枠21の上レール211の下面には、前述した当接ローラ482が当接するブレーキガイド215A,215Bが取り付けられている。ブレーキガイド215Aは上レール211の戸先側縦枠23側の位置にあり、ブレーキガイド215Bは上レール211の戸尻側縦枠24側の位置にある。
ブレーキガイド215Aは、X軸方向に対して戸尻側から戸先側に向かうに連れて下方に傾斜した傾斜ガイド面216Aを有した傾斜ガイド部材216と、X軸方向に沿ったフラットなガイド面217A,218Aを有したガイド部材217,218とを備えており、
図15において右側から傾斜ガイド部材216、ガイド部材217、ガイド部材218の順で組み合わされている。
このブレーキガイド215Aでは、障子4が戸先側に向かってX軸方向にスライド移動することで、傾斜ガイド部材216の傾斜ガイド面216Aにブレーキダンパ48Aの当接ローラ482が当接し、傾斜ガイド面216Aに沿って当接ローラ482が戸先側に移動することで、当接ローラ482を下方に押し下げる。これにより、上方に弾性付勢される当接体483の当接ローラ482と傾斜ガイド面216Aとの当接圧が漸次増大し、障子4の戸先側に向かうスライド移動に対する制動力が生じることで、障子4の縦枠23に対する衝突を防止できる。当接ローラ482がガイド部材217,218のガイド面217A,218Aに当接した状態となると、当接ローラ482とガイド面217A,218Aとの当接圧は一定となる。なお、傾斜ガイド部材216のX軸方向における位置は、例えばガイド部材217を取り外し、ガイド部材218の隣に傾斜ガイド部材216を配置することで戸先側の位置に変更でき、また、ガイド部材217と同様に形成されたガイド部材を追加することで、傾斜ガイド部材216を戸尻側の位置に変更できる。
ここで、ブレーキガイド215Aおよび当接ローラ482は、ガイド機構5によって障子4がZ軸方向に進退移動しても互いに外れない見込み幅をもってそれぞれ形成されている。
なお、ブレーキガイド215Bは、ブレーキガイド215Aと同様に構成されて左右逆向きに設置されており、障子4が戸尻側縦枠24に向かってスライド移動し、建具開口20を全開にする手前で当該障子4のスライド移動に対する制動力を生じる。
【0024】
縦枠23には、
図15および
図17に示すように、指挟み防止具231が取り付けられている。指挟み防止具231の取付位置は、片引き窓1のY軸方向における中央位置よりも上方側の位置である。指挟み防止具231は、自重によって直立位置から戸尻側への倒れ位置まで回動可能な突張り軸体232と、突張り軸体232を回動可能に支持する基体233と、突張り軸体232を直立位置で解除可能に保持するスイッチ片234とを備えている。スイッチ片234の作動のオンオフは手動によって切り替え可能であり、オン状態ではスイッチ片234が押されることで突張り軸体232が直立位置から倒れ位置まで回動可能な状態となり、オフ状態ではスイッチ片234が押されても突張り軸体232が直立状態のまま回動可能とならない状態を維持する。基体233は、
図17に示す建物躯体14ではなく縦枠23の見込み片部235にネジ止めされている。また、見込み片部235のうち、指挟み防止具231がネジ止めされた部分にはX軸方向において外周側に突出した二つのリブ236が形成されており、これらリブ236は、障子4の閉鎖移動によって後述する受け部材238が突張り軸体232に当たった場合に縦枠23に加わるX軸方向の力を建物躯体14に逃がすことができ、これにより、縦枠23が枠変形するおそれを低減できる。
一方、縦框43には、
図15に示すように突部材237および受け部材238が取り付けられており、突部材237はスイッチ片234に当接可能な高さ位置に配置され、受け部材238は突張り軸体232の先端に当接可能な位置に配置されている。
この指挟み防止具231は、障子4が戸尻側に向かってスライド移動し、突部材237がスイッチ片234を押すことで、突張り軸体232が直立状態から回動可能な状態となる。そして、障子4が戸尻側にスライド移動すると、突張り軸体232が倒れ位置まで回動して
図15に点線で示す倒れ状態(
図17に示す倒れ状態)となる。この状態では、障子4が戸尻側にスライド移動すると、突張り軸体232の先端に受け部材238が当たるので、障子4が建具開口20を全閉する直前で停止する。これにより、縦枠24および縦框43間における指挟みを防止できる。
ここで、受け部材238が突張り軸体232の先端に当たる
図18に示す位置では、ブレーキダンパ48Aの当接ローラ482は、ガイド部材218のガイド面218Aに圧接しているので、突張り軸体232に受け部材238が当たることによる障子4の持ち上がりを抑制できる。
【0025】
ガイド機構5は、
図5に示す下ガイド機構60と、
図6に示す上ガイド機構50と、
図3に示す戸先側引寄せ機構90および戸尻側引寄せ機構95とを備えており、本実施形態では下ガイド機構60、戸先側引寄せ機構90および戸尻側引寄せ機構95によって障子4を室外側へ引き寄せる引寄せ機構が構成されている。
戸先側引寄せ機構90は、錠部材71の先端部に形成された引寄せ面91によって構成されている。引寄せ面91は、その戸先側縁部が戸尻側縁部よりも室外側に位置するようにX軸方向に対して傾斜しており、障子4の閉鎖移動において引寄せ面91が錠受け72の先端部に摺接しながら縦框43を室外側に移動させて気密材10Cに密着させる。
戸尻側引寄せ機構95は、縦框44の係合部材442の先端部に形成された引寄せ面96によって構成されている。引寄せ面96は、その戸先側縁部が戸尻側縁部よりも室外側に位置するようにX軸方向に対して傾斜しており、障子4の閉鎖移動において引寄せ面96が煙返し片部252の先端部に摺接しながら縦框44を室外側に移動させて気密材10Dに密着させる。
【0026】
下ガイド機構60は、
図5および
図8に示すように、下框42の室外見付け片部421(障子見付け片部)に取り付けられた樹脂製の摺動部材61と、下レール221に取り付けられた樹脂製の引寄せ部材64とを備えている。摺動部材61および引寄せ部材64は樹脂製材料によってそれぞれ形成されている。
摺動部材61は、下框42の室外見付け片部421の長手方向における中央部分に形成された切欠き部分に嵌め込まれている。摺動部材61は室外見付け片部421から室内側へ突出した突出部611を有している。
引寄せ部材64は、
図19(A)に示すように、取付基部641と、取付基部641から見込み方向に突出した突出部642と、突出部642の下部から室外見付け片部421に向かってZ軸方向に延出した引寄せ見込み片部643と、
図8に示すように下枠22の室外形材321Bに係合可能に引寄せ見込み片部643の先端縁部に形成された先端係合部644とを有している。
図19(B)は
図19(A)のC-C線に沿った断面を示しており、引寄せ部材64の下レール221への取付けに関する。取付基部641は、Y軸方向に沿って下方に延びた取付突部645と、取付突部645に対して左右両側に配置されたレール当接部646,647とを有している。
このように構成された引寄せ部材64は、下レール221に形成された取付部19に取り付けられる。
図5および
図19(B)に示すように、下レール221は、X軸方向に沿ったレール本体221Aと、レール本体221Aから室外見付け片部421側に突出してレール本体221Aとの間に上方で開口した取付溝18を形成した取付部19とを有している。取付部19は、レール本体221AからZ軸方向に延出した左右の延出片部191と、左右の延出片部191に連続した先端連続部192とを有している。左右の延出片部191はレール本体221Aから先端連続部192に向かうに連れてX軸方向に対して傾斜している。
この引寄せ部材64は、取付突部645が取付溝18に上方から挿入されることによって下レール221に取り付けられる。このとき、レール当接部646,647はレール本体221Aの室外面に当接し、先端係合部644は下枠22の室外形材321Bに係合する。
この下ガイド機構60では、障子4のスライド移動によって摺動部材61が引寄せ部材64に対してX軸方向に移動する。障子4が全閉位置から戸尻側に所定距離離れた位置で移動する場合には、摺動部材61の突出部611は引寄せ部材64と非当接状態となっており、このため、下ガイド機構60は障子4を室外側に引き寄せ案内しない。また、障子4が前記離れた位置よりも戸先側の位置で移動する場合には、摺動部材61の突出部611は引寄せ部材64と当接状態となり、突出部611が突出部642に当接していくにつれ、障子4を室外側に引き寄せ案内する。
以上の下ガイド機構60では、引寄せ部材64の取付突部645を下レール221の取付溝18に上方から挿入することで、当該引寄せ部材64を下レール221に簡単に取り付けることができ、例えば下レール221に形成された貫通孔に対してビスを見込み方向に通して引寄せ部材をビス止めするような手間を要しない。このように引き寄せ部材64を取り付けることで、障子4のスライド移動において摺動部材61が引寄せ部材64に当接しながら移動することで障子4をX軸方向(面外方向)に引き寄せることができる。また、引寄せ部材64を上方に引き抜くことで簡単に取り外すことができ、清掃作業性を向上できる。
取付溝18に挿入された取付突部645に対して左右両側に配置された左右のレール当接部646,647がレール本体221Aに当接することで、引寄せ部材64が下レール221に対して、より強固に取り付けられる。また、引寄せ部材64が取り付けられる取付部19をZ軸方向に突出して形成することで、引寄せ部材64が取付部19によって補強されることとなり、引寄せ部材64の強度を向上できる。
取付部19の左右の延出片部191が前述したように傾斜しているので、例えば左右の延出片部がZ軸方向に真っ直ぐ延びて形成されるものと比べて、引寄せ部材64が摺動部材61と圧接してZ軸方向の力が加えられても引寄せ部材64を強固に保持できる。
取付突部645を取付溝18に挿入し且つ先端係合部644を下枠22に係合することで、引寄せ部材64の取付強度を更に向上できる。また、引寄せ見込み片部643によって第一枠カバー36を上方から押さえることができる。
引寄せ部材64は下枠見込み部222ではなく下レール221に取り付けられるので、下枠22の断熱材323に対して上方に配置することができる。
【0027】
上ガイド機構50は、
図6に示すように、前述した上部摺動片49A,49B(
図16(A)、
図16(B)参照)と、上レール211に取り付けられた左右の窪み部材55とを備えている。各窪み部材55は、上レール211の切欠き部分にそれぞれ装着されている。上部摺動片49A,49Bおよび各窪み部材55は、樹脂製材料によってそれぞれ形成されている。左右の上部摺動片49A,49Bの側片部492には室外側に突出した突出部496が形成されている。左右の窪み部材55には室外側に窪んだ窪み部551が形成されており、窪み部551は建具開口20の全閉状態で上部摺動片49A,49Bの突出部496に対向する位置に配置されている。
この上ガイド機構50では、障子4のスライド移動によって上部摺動片49A,49B左右の窪み部材55に対してX軸方向に移動する。障子4が全閉位置から戸尻側に所定距離離れた位置で移動する場合には、上部摺動片49A,49Bの突出部496は上レール211に摺接して障子4をX軸方向に案内する。また、障子4が前記離れた位置よりも戸先側の位置で移動する場合には、上部摺動片49A,49Bの突出部496は左右の窪み部材55の窪み部551に入り込む。これにより、前述した引寄せ機構による障子4の室外側への引き寄せが可能な状態となる。
【0028】
以上の片引き窓1において、建具開口20の
図3に示す全閉状態では縦骨25に対して戸尻側の縦框44がZ軸方向に対向して配置される。このとき、障子4はガイド機構5によって室外側に引き寄せられており、気密材10A~10Dは上框41、下框42および左右の縦框43,44に密着する。
建具開口20の
図4に示す全開状態では縦骨25に対して戸先側の縦框43がZ軸方向に対向して配置される。このとき、障子4はガイド機構5によって室内側に引き離されており、気密材10A~10Dは障子4と非当接状態である。
【0029】
本実施形態に係る片引き窓1の開放動作は次の通りである。
まず、障子4を戸尻側に開放移動することにより、下ガイド機構60の摺動部材61は引寄せ部材64からX軸方向に外れて下レール221に摺動可能に当接し、上ガイド機構50の上部摺動片49A,49Bの突出部496は窪み部材55の窪み部551からX軸方向に外れて上レール211に摺動可能に当接し、係合部材442は煙返し片部252から外れる。このとき、可傾戸車46は、障子4の自重によって傾斜状態から直立状態へ復帰する。このように開放移動することで引き寄せ機構による室外側への引寄せは解除されて障子4は室内側へ移動し、気密材10A~10Dから離れる。続けて障子4を開放移動すると、障子4は
図4に示す全開位置に配置され、戸先側の縦框43が縦骨25とZ軸方向に対向して配置される。なお、全開直前の位置ではブレーキダンパ48Bが作動して障子4の閉鎖移動に対する制動力を生じ、障子4が窓枠2に勢いよく衝突することを防いでいる。
【0030】
本実施形態に係る片引き窓1の閉鎖動作は次の通りである。
まず、障子4を戸先側へ閉鎖移動することにより、ガイド機構5によって障子4が室外側へ引き寄せられる。具体的には、上ガイド機構50の上部摺動片49A,49Bの突出部496が窪み部材55の窪み部551に入り込むことで、障子4が室外側へ移動可能な状態となる一方、下ガイド機構60の摺動部材61が引寄せ部材64に当接し、錠部材71の先端部に形成された戸先側引寄せ機構90の引寄せ面91が錠受け72の先端部に当接し、且つ、係合部材442の先端部に形成された戸尻側引寄せ機構95の引寄せ面96が煙返し片部252の先端部に当接する。この状態で障子4が閉鎖移動することで、障子4は、下ガイド機構60、戸先側引寄せ機構90および戸尻側引寄せ機構95によって室外側へ移動される。このとき、可傾戸車46は直立状態から傾斜状態となり、上框41、下框42および左右の縦框43,44は気密材10A~10Dに押し当てられて密着する。このようにして、障子4は
図3に示す全閉位置に配置され、建具開口20は閉鎖される。
【0031】
[変形例]
前記実施形態では、引寄せ部材64は、引寄せ見込み片部643および先端係合部644を有しているが、これらの構成を省略してもよい。また、引寄せ部材64は、取付突部645が取付溝18に挿入された状態でレール当接部646,647がレール本体221Aに当接しているが、若干隙間をもって配置されていてもよい。
前記実施形態では、取付部19を構成する左右の延出片部191はX軸方向に傾斜しているが、これに限らず、Z軸方向と平行に延出していてもよい。
前記実施形態では、下レール221に対して引寄せ部材64が取り付けられる箇所に取付部19を形成したが、このほか、クレセントストッパ、障子ストッパ、はずれ止め、風止板、気密材、止水材、枠カバーなどの各種部材が取り付けられる箇所に取付部19を形成し、これら各種部材が取り付けられてもよい。また、取付部19は上レール211に形成してもよく、この場合、取付溝18は下方で開口する。更に、上記各取付部19に取り付けられる各種部材には、取付部19に係合する爪部が先端に形成された取付突部645が形成されていてもよい。
前記実施形態では、上枠21および下枠22は、断熱材323を備えた断熱形材として構成されているが、これに限らず、断熱材323を有していなくてもよい。
前記実施形態では、調整部材7は左右一対の当接縦部74および左右一対の当接横部75を有しているが、左右一方だけに当接縦部74および当接横部75を有していてもよく、更に、当接横部75がなくても水密性を保てる場合にはその構成を省略してもよい。
前記実施形態では、調整部材7には、Y軸方向に沿った真っ直ぐな長孔76が形成されているが、例えばY軸方向に対して湾曲して形成されていてもよく、また、Y軸方向に対して傾斜して形成されていてもよい。
前記実施形態では、調整部材7の板状本体73は、樹脂押縁34Bの端部を覆い隠す部分を有しているが、この部分がなくてもよい。
前記実施形態では、樹脂押縁34Dは、固定窓3の面材31の室内面を押えるものとして用いられているが、これに限らず、各種建具の面材31の室内面や室外面を押えるものとして用いられてもよい。
前記実施形態では、樹脂押縁34A~34Dを枠本体32A~32Dに取り付けているが、これに代えて、金属製等の押縁を取り付けてもよい。
【0032】
前記実施形態では、建具として片引き窓1を説明したが、前述した窓枠2を用いて
図20から
図22に示すように面材31Bが窓枠2に嵌め殺しされた固定窓1B(FIX窓、嵌め殺し窓)を建具として構成できる。具体的には次の通りである。
図20および
図21において、固定窓1Bは、上枠21、下枠22および左右の縦枠23,24を備える窓枠2(枠体)と、上21枠、下枠22および左右の縦枠23,24に固定された面材31Bとを備え、縦骨25、樹脂押縁35A,35Bおよび枠カバー17の構成は省略され、金属押縁33Aおよび樹脂押縁34A,34Bが左右の縦枠23,24にわたって延びている。縦枠23には、縦枠24と同様に金属押縁33C、樹脂押縁34Cが取り付けられている。下枠22の樹脂押縁34B、下枠見込み部222および室内見付け片部223によって下枠溝部229が形成されており、この下枠溝部229は、アルミ押出形材によって形成された下枠室内カバー100によって覆われている。また、下枠22には、網戸用のアタッチメント16の代わりに、固定窓1Bの専用カバーである下枠室外カバー120が取り付けられている。
下枠室内カバー100は、X軸方向に沿ったカバー本体片部101と、カバー本体片部101の室内縁部から下方に延出した係合片部102と、カバー本体片部101の室外縁部から下方に延出した当接片部103と、Z軸方向における係合片部102および当接片部103間の中間位置で下方に延出したレール係合片部104とを有している。この下枠室内カバー100は、係合片部102が下枠22の室内見付け片部223に係合し、レール係合片部104が下レール221の先端に形成された先端膨大部221Bに係合し、且つ、当接片部103が樹脂押縁34Bの室内見付け片部349に当接することで、下枠22に装着される。下枠溝部229には、下枠室内カバー100の装着によって室内外二つの空間105,106が形成される。下枠室内カバー100の左右両端は左右の樹脂押縁34Cの室内側見込み面に当接している。
下枠室外カバー120は、アルミ押出形材によって形成されており、網戸用のアタッチメント16のように網戸取付用の溝部161が形成されていないフラットな上片部121を有している。下枠室外カバー120は、左右の縦枠23,24の間に配置されている。
また、下枠室外カバー120および縦枠23,24の間には、
図21および
図22に示すように、X軸方向に沿った溝部126が上面127に形成された小口部材125が配置されている。なお、
図22では、説明の便宜上、面材31Bの図示を省略している。
以上の固定窓1Bでは、片引き窓1の窓枠2を採用できるので、例えば固定窓1Bを片引き窓1と並べて設置した場合、窓枠2同士を共通形状に統一できて外観を向上できるうえ、窓枠2を共通化することで、固定窓3専用の窓枠を準備する必要がなくコスト削減を図ることができる。
また、片引き窓1の下枠22には障子4をスライド案内する下レール221が形成されており、この下枠22を固定窓1Bにそのまま採用した場合には、固定窓1Bには不要な下レール221が露出したままとなって外観を損なうおそれがある。固定窓1Bでは、前述した下枠溝部229を下枠室内カバー100で覆うことで下レール221を隠すことができて外観を向上できる。
更に、下枠室内カバー100が、下レール221の先端膨大部221Bに係合するレール係合片部104を有するので、下枠22に係合部を別途形成しなくても、下枠室内カバー100を下レール221に係合させることで下枠22に容易に取り付けることができる。
加えて、前述した溝部161のない専用の下枠室外カバー120を装着できるので、片引き窓1と下枠22の外観形状を概ね統一しつつ、前述したような溝部161に塵埃が溜まることのない固定窓1Bを構成できる。
更にまた、下枠室外カバー120および左右の縦枠23,24の間に配置される小口部材125に前述した溝部126が形成されるので、溝部126から下枠室外カバー120の上片部121の下側に六角レンチ等の工具128を差し込むことで下枠室外カバー120を上方に引き上げて簡単に取り外すことができ、メンテナンス性を向上できる。
【0033】
また、前記実施形態では、建具として片引き窓1を説明したが、上げ下げ窓を構成してもよい。具体的には、上げ下げ窓は、上枠、下枠および左右の縦枠を備える窓枠と、窓枠内に上下にスライド可能に配置される障子とを備え、窓枠は、上枠および下枠間において左右の縦枠に取り付けられる中骨を備え、上枠、中骨および左右の縦枠に面材が嵌め殺しされることで窓枠の上半分の領域に固定窓が構成され、下枠、中骨および左右の縦枠によって窓枠の下半分の領域に建具開口が構成される。上枠、左右の縦枠および中骨には、それぞれの長手方向に沿った気密材が装着される。左右の縦枠には、上記溝部228と同様に、下方側の第一溝側面と、第一溝側面とは反対側(上方側)に位置する第二溝側面と、第一溝側面および第二溝側面間に位置する溝底面とによって溝部が形成される。この溝部には中骨の端部が配置され、中骨は、左右方向に沿って配置されて左右の縦枠にネジ止めされる。この中骨は、当該中骨を下方側に位置調整する調整部材を備える。調整部材は、前述した調整部材7と同様に形成されて左右方向に移動可能であり、第二溝側面に当接する位置に向けて溝部に差込移動可能に中骨の端部に取り付けられる。
なお、前述した上げ下げ窓は、窓枠の上半分の領域が固定窓とされ且つ下半分の領域が建具開口とされているが、これとは逆に窓枠の上半分の領域が建具開口とされ且つ下半分の領域が固定窓とされていてもよい。この場合、気密材は、上枠、中骨および左右の縦枠の長手方向に沿ってそれぞれ装着され、左右の縦枠には、上方側の第一溝側面と、第一溝側面とは反対側(下方側)に位置する第二溝側面と、第一溝側面および第二溝側面間に位置する溝底面とによって溝部が形成される。調整部材は前述と概略同様に中骨を上方側に位置調整する。
【0034】
[本発明のまとめ]
本発明の建具は、上枠、下枠、戸先側縦枠および戸尻側縦枠を備える枠体と、前記枠体内にスライド可能に配置される障子とを備える建具であって、前記枠体は、前記戸先側縦枠および前記戸尻側縦枠間において前記上枠および前記下枠に取り付けられる縦骨を備え、前記上枠、前記下枠、前記戸先側縦枠および前記縦骨には、それぞれの長手方向に沿った気密材が装着され、前記上枠および前記下枠の少なくとも一方には、戸先側の第一溝側面と、前記第一溝側面とは反対側に位置する第二溝側面と、前記第一溝側面および前記第二溝側面間に位置する溝底面とによって溝部が形成され、前記溝部には前記縦骨の端部が配置され、前記縦骨は、前記縦骨を戸先側に位置調整する調整部材を備え、前記調整部材は、前記第二溝側面に当接する位置に向けて前記溝部に差込移動可能に前記縦骨の端部に取り付けられることを特徴とする。
本発明の建具によれば、上枠および下枠の少なくとも一方に形成された溝部に縦骨の端部を差し込み、続いて、調整部材を溝部に差し込んで第二溝側面に押し当てることで、縦骨を戸先側に位置調整でき、上枠および下枠の少なくとも一方と縦骨との間に隙間が生じることをなくし得る。これにより、上枠および下枠の少なくとも一方に装着された気密材と、縦骨に装着された気密材とを突き合せることができて、これらの間に隙間が形成されることを抑制できる。また、縦骨の端部にシーラーが設けられている場合には、調整部材による位置調整によって前記シーラーを戸先側の第一溝側面に密接でき、シーラーによる水密性を向上できる。
【0035】
本発明の建具では、前記調整部材は前記縦骨に沿って上下方向に移動可能であると共に、上下方向の移動において前記第二溝側面に当接する当接縦部を有していてよい。
このような構成によれば、調整部材を上下方向に移動させることで縦骨を戸先側に容易に位置調整できる。
【0036】
本発明の建具では、縦骨の端部の戸先側における見込み面にはシーラーが設けられ、前記第一溝側面には、前記第二溝側面に対して前記調整部材が当接した状態で前記シーラーが当接してもよい。
このような構成によれば、縦骨を戸先側に位置調整してシーラーを上枠および下枠の少なくとも一方に対して隙間なく密に配置できる。
【0037】
本発明の建具では、前記調整部材は、板状本体と、前記板状本体の裏面に形成された前記当接縦部と、前記当接縦部から左右方向に延びて前記板状本体の裏面に形成された当接横部とを有し、前記上枠および前記下枠の少なくとも一方には、内周側に延出して前記第二溝側面を形成する延出見付け片部が形成され、前記調整部材は、その前記当接縦部が前記第二溝側面に当接し且つ前記当接横部が前記延出見付け片部の左右方向に沿った横縁に当接すると共に、前記板状本体が前記延出見付け片部の端部を覆って配置されてもよい。
このような構成によれば、調整部材の当接縦部および当接横部を前記延出見付け片部の第二溝側面および左右方向に沿った横縁にそれぞれ当接させることで水密性を向上できると共に、板状本体によって延出見付け片部の端部を覆い隠すことができて外観意匠を向上できる。
【0038】
本発明の建具では、前記上枠および前記下枠の双方に前記溝部が形成され、前記調整部材は、前記縦骨の上端部および下端部の双方に取り付けられ、前記当接横部は、前記当接縦部に対して左右両側に延びて形成されていてもよい。
このような構成によれば、調整部材を上下反転させても同様に縦骨を戸先側に位置調整して当接縦部および当接横部を延出見付け片部の第二溝側面および左右方向に沿った横縁に当接させることができる。このため、縦骨の上端部および下端部にそれぞれ取り付けられる調整部材を共通化できる。
【0039】
本発明の建具は、上枠、下枠および左右の縦枠を備える枠体と、前記枠体内にスライド可能に配置される障子とを備える建具であって、前記枠体は、前記上枠および前記下枠間において前記左右の縦枠に取り付けられる中骨を備え、前記上枠または前記下枠と前記左右の縦枠および前記中骨には、それぞれの長手方向に沿った気密材が装着され、前記左右の縦枠の少なくとも一方には、上下一方側の第一溝側面と、前記第一溝側面とは反対側に位置する第二溝側面と、前記第一溝側面および前記第二溝側面間に位置する溝底面とによって溝部が形成され、前記溝部には前記中骨の端部が配置され、前記中骨は、前記中骨を上下一方側に位置調整する調整部材を備え、前記調整部材は、前記第二溝側面に当接する位置に向けて前記溝部に差込移動可能に前記中骨の端部に取り付けられることを特徴とする。
本発明の建具によれば、枠体内において障子が上下方向にスライド移動する上げ下げ窓を構成でき、この場合にも前述同様に気密性を向上できる。
【符号の説明】
【0040】
1…片引き窓(建具)、1B,3…固定窓、2…窓枠(枠体)、21…上枠、22…下枠、225…第一溝側面、226…第二溝側面、227…溝底面、228…溝部、23,24…縦枠、25…縦骨、4…障子、10(10A~10D)…気密材、7…調整部材、73…板状本体、74…当接縦部、75…当接横部、76…長孔、77…軸ネジ。