(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】列車運行管理システム
(51)【国際特許分類】
B61L 25/02 20060101AFI20221213BHJP
B61L 1/18 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B61L25/02 N
B61L1/18 H
(21)【出願番号】P 2019152691
(22)【出願日】2019-08-23
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 雄太
(72)【発明者】
【氏名】静谷 貴雄
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-315307(JP,A)
【文献】特開2004-136727(JP,A)
【文献】特開2016-060420(JP,A)
【文献】特開平10-147242(JP,A)
【文献】特開2010-228576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の軌道回路と、前記複数の軌道回路のうち第一の軌道回路と該第一の軌道回路の列車進行方向に隣接する第二の軌道回路との境目に列車が位置したことによって前記第二の軌道回路の短絡が検知されると表示が進行許可から進行禁止に変わる信号機と、を有して、進路を走行する列車の運行を管理する列車運行管理システムにおいて、
前記複数の軌道回路のうち不短絡となる可能性が高い軌道回路を表す不短絡予測進路情報と、
所定の不短絡判定条件が成立した軌道回路に不短絡が発生したと判定する不短絡判定部と、
を備え、
前記不短絡予測進路情報に前記第二の軌道回路が登録されている場合、前記不短絡判定部が用いる前記不短絡判定条件は、前記第一の軌道回路が扛上したにも関わらず、前記第二の軌道回路が短絡しないことである、
列車運行管理システム。
【請求項2】
前記列車1が在線する複数前記軌道回路それぞれの境界を超えて移動したことを模式表示する列番シフトが可能な指令制御卓と、
前記不短絡判定部が前記不短絡の発生を判定したとき、前記列番シフトを実行してもよいか否かについて許可主体に許可を求める信号を出力する問いかけ出力部と、
をさらに備え、
前記許可主体から前記列番シフトを許可する信号が入力されたことに応じて前記列番シフトを前記指令制御卓に表示させるように実行する、
請求項1に記載の列車運行管理システム。
【請求項3】
前記許可主体として、運転指令員の判断基準に相当する判断部をさらに備えた、
請求項2に記載の列車運行管理システム。
【請求項4】
前記許可主体は、禁止するように設定されていないかぎり許可する、
請求項2または3に記載の列車運行管理システム。
【請求項5】
前記不短絡判定部は、前記不短絡の発生を判定したとき、前記第一の軌道回路と第二の軌道回路との境目にある信号機が進行可否を制御する対象進路の軌道回路に相当する前記指令制御卓の該当箇所の色を変更する、
請求項2に記載の列車運行管理システム。
【請求項6】
前記第二の軌道回路と進行方向にある信号機との間の軌道回路において短絡が発生した場合は、
前記短絡が発生した軌道回路から前記信号機までの間に相当する前記指令制御卓の該当箇所の色を変更する、
請求項2または3に記載の列車運行管理システム。
【請求項7】
前記許可主体の許可が得られた列番シフト情報に基づいて、地上設備を制御する、
請求項2に記載の列車運行管理システム。
【請求項8】
複数の軌道回路と、前記複数の軌道回路のうち第一の軌道回路と該第一の軌道回路の列車進行方向に隣接する第二の軌道回路との境目に列車が位置したことによって前記第二の軌道回路の短絡が検知されると表示が進行許可から進行禁止に変わる信号機と、を有する線路を走行する列車の運行を管理する列車運行管理方法であって、
前記複数の軌道回路のうち不短絡となる可能性が高い軌道回路を表す不短絡予測進路情報を参照するステップと、
所定の不短絡判定条件が成立した軌道回路に不短絡が発生したと判定するステップと、
を有し、
前記不短絡予測進路情報に前記第二の軌道回路を表す情報が登録されている場合、前記不短絡判定条件は、前記第一の軌道回路が扛上したにも関わらず、前記第二の軌道回路が短絡しないことである、
列車運行管理方法。
【請求項9】
前記列車が在線する複数前記軌道回路それぞれの境界を超えて移動したことを列番シフトとして指令制御卓に模式表示可能であり、
前記不短絡が発生したと判定されたとき、前記列番シフトを実行してもよいか否かについて許可主体に許可を求める信号を出力する問いかけるステップと、
前記許可主体から前記列番シフトを許可する信号が入力されたことに応じて前記列番シフトを前記指令制御卓に表示させるステップと、
をさらに有する、
請求項8に記載の列車運行管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車の走行位置の追跡を補助する列車運行管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
まず、列車運行管理に関連する鉄道用語を定義しながら説明する。指令制御卓の運行表示盤(以下、単に「指令制御卓」ともいう)に設けられている列番表示窓には追跡情報に基づいて、列車番号(「列番」と慣用)が表示される。追跡情報とは列車の走行位置とその列番とを表す情報である。列車の走行位置は地上設備から入力される「地上設備の状態情報」に含まれ、それに対応する列番はPRC装置内でダイヤと運行情報に基づいて紐付けられる。
【0003】
この列番表示は、追跡情報が何らかの判定手段で真正と判定されたことを意味する。すなわち、列番表示には地上設備から「地上設備の状態情報」が入力され、真正判定されることが必須である。列車運行管理システムでは地上設備から「地上設備の状態情報」が入力され、真正判定された場合、列番シフトするように構成されている。列番シフトとは、指令制御卓の模式画面において追跡対象の列番表示箇所を移動させることにより、運転指令員が状況を視認容易にする工程をいう。
【0004】
また、上述の「地上設備の状態情報」とは、管理対象の列車が閉塞区間、すなわち軌道回路の境界を超えて移動した現象について、地上設備から指令制御卓へ届けられる情報をいう。
【0005】
特許文献1には、軌道回路の短絡不良の発生が同定された場合に、地上設備の信号機に、短絡不良発生の同定に応じた信号を現示させる技術が記載されている。この特許文献1では、短絡不良が発生したか否かを閾値判定(段落[0062])している。また、軌道回路に関連する鉄道用語も定義しておく。
【0006】
外方軌道回路は、信号機に対して進行方向手前の軌道回路をいう。逆に、内方軌道回路は、信号機に対して進行方向前方の軌道回路をいう。また、第一内方軌道回路は、信号機の進行方向前方における直近の軌道回路をいう。その第一内方軌道回路は、第一から第二、第三と昇順に進行方向前方から遠ざかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
列車を運行するために列車運行管理システムが採用されている。この列車運行管理システムでは、列車の追跡情報を用いて進路の制御やダイヤ管理を行っている。追跡情報は、列車の走行位置と、その列番とを表す情報を含む。
【0009】
列車運行管理システムは、軌道回路の短絡によって列車の走行位置を確認し、列番シフトの条件が満たされた場合に列番シフトをすることで列車を追跡している。列番シフト条件は、例えば、PRC装置に、地上設備から「地上設備の状態情報」が入力され、真正判定された場合であって、「地上設備の状態情報」の具体例として、「進路の第一内方軌道回路の短絡」かつ「信号機がG(進行許可)からR(進行禁止)に変更」が挙げられる。
【0010】
何れの場合であれ、追跡情報は、運転指令員の操作端末である指令制御卓に表示される。運転指令員は、指令制御卓を見ることで、列車の走行位置と列番を確認できる。すなわち、軌道回路の短絡によって列車の走行位置を確認し、列番がシフトすることで列車を追跡している。
【0011】
しかし、列車が一定時間以上走行しなかった場合、線路が錆付いてしまうといった理由で、軌道回路の感度不良が生じ、結果として、列車が軌道回路上に位置しても軌道回路が不短絡となる場合がある。
【0012】
そこで、列車運行管理システムは、進路ごとにシフト完了時刻(列番シフトを正常に完了した時刻)を記憶する。そして、列車運行管理システムは、シフト完了時刻と現時刻との差が一定時間以上になった進路を、軌道回路が不短絡となる可能性が高い進路と推定する不短絡推定機能を備える。
【0013】
不短絡推定機能が作動すれば、不短絡となる可能性の高い進路の対象信号機の表示色を変更できる。逆に、不短絡推定機能が不備であれば、実際に不短絡が発生し、列番シフト条件が不成立の場合、それに伴う対象信号機の表示色を変更できない。その結果、列車運行管理システム上で列車の走行位置を追跡できなくなる。
【0014】
これに対し、特許文献1では、記憶されている列車位置情報に基づいて列番シフト情報を生成して出力するバックアップ手段といったソフトウェアが必要な点で簡便でない。また、特許文献1では、地上設備としての信号機の現示を切り替える技術を主とするが、指令制御卓の信号表示にまでは言及されていない。
【0015】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、軌道回路の不短絡が発生した場合にも、列車の走行位置を追跡可能な列車運行管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決する本発明は、複数の軌道回路と、複数の軌道回路のうち第一の軌道回路と第一の軌道回路の列車進行方向に隣接する第二の軌道回路との境目に列車が位置したことにより第二の軌道回路の短絡が検知されると表示が進行許可から進行禁止に変わる信号機と、を有して、進路を走行する列車の運行を管理する列車運行管理システムであって、複数の軌道回路のうち不短絡となる可能性が高い軌道回路を表す不短絡予測進路情報と、所定の不短絡判定条件が成立した軌道回路に不短絡が発生したと判定する不短絡判定部と、を備え、不短絡予測進路情報に第二の軌道回路が登録されている場合、不短絡判定部が用いる不短絡判定条件は、第一の軌道回路が扛上したにも関わらず、第二の軌道回路が短絡しない、ということに設定したものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、軌道回路の不短絡が発生した場合にも、列車の走行位置を追跡可能な列車運行管理システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】追跡制御が成功した場合を示す指令制御卓の画面遷移図である。
【
図2】比較例として不短絡が生じ、列番シフトしなかった場合を示す指令制御卓の画面遷移図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る列車運行管理システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図4】
図3の列車運行管理システムの処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図3の列車運行管理システムにより、不短絡が生じた際にも列番シフトした場合を示す指令制御卓の画面遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1~
図5を用いて本発明の一実施形態を説明する。まず、概略から説明する。
【0020】
図3を用いて後述するように、列車を運行するために列車運行管理システム10が採用されている。その列車運行管理システム10では、列車の追跡情報を用いて進路の制御やダイヤ管理をおこなっている。追跡情報とは、列車の走行位置と、その列車の列番情報である。
【0021】
運行管理システム10では、軌道回路の短絡によって列車の走行位置を確認し、列番シフトすることで列車を追跡している。列番シフト条件は「進路の第一内方軌道回路の短絡」かつ「信号機がG(進行許可)からR(進行禁止)に変更」である。
【0022】
また、追跡情報は運転指令員の操作端末である指令制御卓7に表示される。運転指令員は指令制御卓7を見ることで列車の走行位置と列番を確認できる。
【0023】
図1は、追跡制御が成功した場合を示す指令制御卓7の画面遷移図である。
図1に示すように、軌道回路100Tに在線する列車1が、第一内方軌道回路101T、および第二内方軌道回路102Tへと延伸された進路を走行中である。信号2は、軌道回路100Tと、第一内方軌道回路101Tと、の境界に配設されている。信号3は、第二内方軌道回路102Tと、その先に延伸された次の軌道回路と、の境界に配設されている。
【0024】
図1(a)に示すように、列番表示窓4は、列車1が軌道回路100Tに在線しているときに、その列番AAAを表示する。列番表示窓5は、列車1が軌道回路101T,102Tのどこかに在線しているときに、列番AAAと表示する。なお、列車1で示す模式図は、実際の指令制御卓7には表示されないが、説明のために描画した。
【0025】
図1(b)に示すように、列車AAAが軌道回路100Tと、それに続く101Tと、の間にまたがると、101Tの軌道回路が短絡し、信号機2がG(進行許可)からR(進行禁止)表示(図中の白色)に変更される。この一連の作用は、列番シフトするためにあらかじめ定められた条件を満足しため、列番シフトが成立したことを意味する。
【0026】
なお、
図1(b)から
図1(c)の状態へと遷移することを軌道回路100Tが扛上したという。すなわち、
図1(c)に示すように、列車1が軌道回路100Tを完全に通過して、そこから非在線状態になったとき、その軌道回路100Tは、短絡から不短絡の状態へと遷移し、扛上したという。
【0027】
図1を用いて上述したように、列車AAAの進行に伴って、列番表示窓4から列番表示窓5へとAAAの表示が移動(シフト)する。これによって運転指令員は、列車AAAが軌道回路100Tから軌道回路101Tへと移動したことを確認できる。このように、指令制御卓7が地上設備から「地上設備の状態情報」を得たことによって、列番シフト表示する一連の作用は、列車の走行位置を追跡する運転指令員の監視を補助するためにある。
【0028】
本発明の実施形態に係る列車運行管理システム10は、不短絡発生時の列番シフト補助機能を有する。すなわち、列車運行管理システム10は、不短絡が発生した場合にも、システムからの問いかけに対する承認のみで列番シフトを行える技術を提供するものである。そのためには、不短絡が発生した場合に、その不短絡情報が真正であると判定するための、不短絡判定条件を設定する。不短絡が予測された進路において、不短絡判定条件が成立した際は、運転指令員による簡素な承認手続きによって、列番シフトを行う。以下、列車運行管理システム10について、より詳細に説明する。
【0029】
指令制御卓7の表示は、
図3および
図4を用いて後述するように、本発明の実施形態に係る列車運行管理システム10との密接に関連するシステム構成のなかで、列車1の走行位置の追跡を補助する。この機能は、運転指令員の監視を補助することに加えて、地上設備を制御するための制御信号を直接または間接的に提供することもできる。
【0030】
図1を用いて上述したように、軌道回路の短絡によって列車1の走行位置を確認し、列番がシフトすることで列車1を追跡している。しかし、
図2(b)および
図2(c)を用いて後述するように、列車1が一定時間以上走行しなかった場合、線路が錆付いてしまい、軌道回路に備わる検出機能の感度不良によって不短絡と誤検出する場合がある。つまり、「地上設備の状態情報」が真正でない場合に、指令制御卓7の列番シフト表示に不具合が生じる。
【0031】
そのため、列車運行管理システム10では、進路に沿った軌道回路ごとに列番シフトを正常に完了した時刻を記憶している。そして、現時刻との差が一定時間以上になった軌道回路は、その軌道回路が不短絡となった結果である可能性が高いと推定される。その推定に従うように、指令制御卓7において、画面上の軌道回路に係る信号機の表示色を変更している。これを不短絡推定機能と呼んで、以下(1)~(6)の点を考慮した。
【0032】
(1)現行の不短絡推定機能では、不短絡となる可能性の高い進路について、指令制御卓7で該当する信号機表示色に対し、不確実を意味する表示色への変更に止めている。そのため実際に不短絡が発生すると、列番シフト条件が不成立となり、列車運行管理システム10上で列車1を追跡できなくなる。
【0033】
図2は、比較例として不短絡が生じ、列番シフトしなかった場合を示す指令制御卓7の画面遷移図である。以下、正常に列番シフトした
図1の状態との相違点を主に説明する。
図2(a)は、
図1(a)と同一の状態である。
図2(b)および
図2(c)は、軌道回路101Tで不短絡が生じたことを示している。
図2(b)に示すように、列車1が軌道回路100Tから第一内方軌道回路101Tに進入時、軌道回路が不短絡の場合、列番シフト条件が不成立となり、指令制御卓7では列番シフトしない。
【0034】
そこで、
図3および
図4を用いて後述するように、本発明の実施形態に係る列車運行管理システム10では、不短絡が発生した場合であっても、列車運行管理システム10から運転指令員へ、「不短絡が生じたが、列番シフトしてもよいか否か」との問いかけ信号を出力し、その旨を指令制御卓7に表示する。運転指令員から、それに対する承認を意味する返答情報の入力があれば、列車運行管理システム10は、指令制御卓7において、列番シフトしたものと表示させる。
【0035】
(2)不短絡が発生すると、
図2(c)に示すように指令制御卓7画面上における軌道回路の短絡表示がなくなるため、運転指令員は列車1の走行位置を確認できなくなる。その場合でも、列車運行管理システム10では、不短絡が発生した場合に、列車1の大まかな走行位置を指令制御卓7の画面上に表示できるようにする。
【0036】
(3)不短絡が実際に発生したと判定するための、不短絡判定条件を設定する。不短絡が予測された進路において、不短絡判定条件が成立した場合は、運転指令員からの承認によって、列番シフトを行う。
(4)不短絡判定条件が成立した場合、不短絡が発生した進路の軌道回路を色替えして指令制御卓7の画面上に表示する。
【0037】
(5)軌道回路が不短絡となった場合、問いかけへの承認によって列番シフトする。これによって、列車運行管理システム10におる指令制御卓7の画面上で列車1を追跡できる。
(6)列車1が不短絡となった軌道回路上を走行時も、運転指令員は列車1の大まかな走行位置を確認することが可能となる。
【0038】
図3は、本発明の実施形態に係る列車運行管理システム10の概略構成を示すブロック図である。
図3に示すように、列車運行管理システム10は、列車運行管理システム中央部6と、指令制御卓7と、許可主体8と、地上設備23と、を備える。
【0039】
<列車運行システム中央部>
列車運行システム中央部6は、インタフェース装置、記憶装置およびそれらに接続されたプロセッサを有する一つ以上の計算機を含んだシステムでもよいし、そのシステム上に実現されたシステムでもよい。
【0040】
「インタフェース装置」は、一つ以上のインタフェースデバイスでよい。「記憶装置」は、メモリと永続記憶装置の少なくともメモリでよい。「メモリ」は、一つ以上のメモリデバイスであり、典型的には主記憶デバイスでよい(メモリにおける少なくとも一つのメモリデバイスは、揮発性メモリデバイスであってもよいし不揮発性メモリデバイスであってもよい)。
【0041】
「永続記憶装置」は、一つ以上の永続記憶デバイスでよい。永続記憶デバイスは、典型的には、不揮発性の記憶デバイス(例えば補助記憶デバイス)でよく、具体的には、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)でよい。
【0042】
「プロセッサ」は、一つ以上のプロセッサデバイスでよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサデバイスでよいが、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサデバイスでもよい。
【0043】
少なくとも一つのプロセッサデバイスは、処理の一部または全部を行うハードウェア回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)、またはASIC(Application
Specific Integrated Circuit))といった広義のプロセッサデバイスでもよい。
【0044】
列車運行システム中央部6は、進路制御部11と、不短絡判定部12と、問いかけ出力部13と、仮短絡処理部14と、強制列番シフト実施部15と、列番シフト判定部16と、不短絡予測進路テーブル17と、列番テーブル18と、を有する。不短絡予測進路テーブル17と、列番テーブル18は、記憶装置である。
【0045】
なお、本実施形態では、「xxxテーブル」といった表現にて、入力に対して出力が得られる情報を説明することがあるが、その情報は、どのような構造のデータでも良いし(例えば、構造化データでも良いし非構造化データでも良いし)、入力に対する出力を発生するニューラルネットワークのような学習モデルでもよい。
【0046】
したがって、「xxxテーブル」を「xxx情報」と言うことができる。また、以下の説明において、各テーブルの構成は一例であり、一つのテーブルは、二つ以上のテーブルに分割されてもよいし、二つ以上のテーブルの全部または一部が一つのテーブルであってもよい。
【0047】
また、以下の説明では、進路制御部11と、不短絡判定部12と、問いかけ出力部13と、仮短絡処理部14と、強制列番シフト実施部15と、列番シフト判定部16といった機能は、次の2種類の少なくとも何れか、またはそれらの組合せによって実現されてもよい。
【0048】
2種類のうち1つ目は、一つ以上のコンピュータプログラムがプロセッサによって実行されることで実現されてもよい。2種類のうち2つ目は、一つ以上のハードウェア回路(例えばFPGAまたはASIC)によって実現されてもよい。
【0049】
プログラムがプロセッサによって実行されることで機能が実現される場合、定められた処理が、適宜に記憶装置および/またはインタフェース装置などを用いながら行われるため、機能はプロセッサの少なくとも一部とされてもよい。
【0050】
機能を主語として説明された処理は、プロセッサあるいはそのプロセッサを有する装置が行う処理としてもよい。プログラムは、プログラムソースからインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布計算機または計算機が読み取り可能な記録媒体(例えば、非一時的な記録媒体)であってもよい。各機能の説明は一例であり、複数の機能が一つの機能にまとめられたり、一つの機能が複数の機能に分割されたりしてもよい。
【0051】
進路制御部11は、ダイヤに基づき、地上設備23に含まれる不図示の信号機を制御し、列車1の進路を制御する機能を有する。不短絡判定部12は、不短絡判定条件が成立するかどうかを判定する機能を有する。問いかけ出力部13は、指令制御卓7の問いかけ表示部21へ問いかけを出力する機能を有する。
【0052】
仮短絡処理部14は、指令制御卓7の地上設備情報表示部9へ仮短絡表示を指示する機能を有する。強制列番シフト実施部15は、列番シフトを強制的に実施する機能を有する。列番シフト判定部16は、列番シフト条件が成立するかどうかを判定する機能を有する。
【0053】
不短絡予測進路テーブル17は、不短絡する可能性の高い軌道回路が既知なので、それをあらかじめ登録しておくテーブルである。より具体的には、列車1の運行頻度が所定値以下である路線を網羅した情報テーブルである。その内容は、例えば、軌道回路101T~104Tは、約60%の確率で不短絡を生じるといった情報である。
【0054】
この情報は、運行頻度および運行情報に基づいて既知である上、天候やダイヤ変更以外の変動要因は少ない。したがって、不短絡予測進路テーブル17は、該当路線を列車1が走行する都度に予測する機能ではなく、不短絡の発生確率を路線別に、例えば、上位から順にリストアップするか、または検索容易な表形式に網羅したテーブルである。
【0055】
ここで、本実施形態において、「進路」とは、信号機から次の信号機までの一つ以上(典型的には複数)の軌道回路を意味する。列番テーブル18は、運行情報に基づき、走行中の列番を登録するためのテーブルである。
【0056】
<指令制御卓>
指令制御卓7は、インタフェース装置、記憶装置、入力装置、表示画面およびそれらに接続されたプロセッサを有する装置でよい。指令制御卓7は、地上設備情報表示部19と、列番表示部20と、問いかけ表示部21と、問いかけ応答部22と、を備える。
【0057】
列番表示部20、問いかけ表示部21、および、問いかけ応答部22も、次の2種類の少なくとも何れか、またはそれらの組合せによって実現されてもよい。2種類のうち1つ目は、一つ以上のコンピュータプログラムがプロセッサによって実行されることで実現されてもよい。2種類のうち2つ目は、一つ以上のハードウェア回路(例えばFPGAまたはASIC)によって実現されてもよい。
【0058】
地上設備情報表示部19は、地上設備23の状態情報を受信し、指令制御卓7の画面上に表示する機能を有する。列番表示部20は、列番テーブル18より列番情報を受信し、指令制御卓7の画面上に表示する機能を有する。
【0059】
問いかけ表示部21は、問いかけ出力部13より出力される問いかけを、指令制御卓7の画面上に表示する機能を有する。問いかけ応答部22は、問いかけの応答を列車運行管理システム中央部6へ出力する機能を有する。地上設備23は、信号機や軌道回路などをいう。
【0060】
<許可主体>
許可主体8は、一般的には運転指令員である。そうでなく、運転指令員の代用として、その判断基準に相当するコンピュータプログラムで成る判断部9を備えてもよい。不短絡現象へ対応する運転指令員の判断基準がきわめて容易なことであるならば、コンピュータプログラムで成る判断部9を始めとする機械化によって、運転指令員の人数を削減できる。
【0061】
さらに、許可主体8は、禁止するように設定されていないかぎり許可する機能でもよい。禁止しないかぎり、許可を求める問い合わせ情報に対し、すべて許可の情報出力する許可主体8は、コンピュータプログラムである必要もない。
【0062】
このような許可主体8は、例えば、人の操作意思を実現する開閉スイッチやリレーなどの組み合わせを始めとする簡素な電子回路だけでも構成できる。たとえ、許可主体がプログラムで構成されたとしても、システム内に既存する関連用途のプログラムに対してきわめて簡単な修正を施すだけで足りる。
【0063】
図4は、
図3の列車運行管理システム10の処理手順を示すフローチャートである。
図4に示すように、処理手順は以下のステップS1~S10で説明するとおりである。
【0064】
ステップS1では、
図3の1進路制御部11が
図3の地上設備23である信号機を制御する際に、制御対象進路が
図3の不短絡予測進路テーブル17に登録されていた場合、ステップS2へ移行する。なお、不短絡予測進路テーブル17に登録された進路を不短絡予測進路とする。
【0065】
図5は、
図3の列車運行管理システム10によって、不短絡が生じた際にも列番シフトした場合を示す指令制御卓7の画面遷移図である。
図5の軌道回路101T,102T,103T,104Tが不短絡予測進路テーブルに登録された進路だとする。不短絡予測進路の対象信号機である
図5の信号機2を制御する場合、ステップS2へ移行する。
【0066】
ステップS2では、不短絡判定条件は、「不短絡予測進路の対象信号機2の第一外方軌道回路100Tが扛上した際に、第一内方軌道回路101Tが短絡しない」である。不短絡予測進路の対象信号機2の第一外方軌道回路100Tが扛上した際に、第一内方軌道回路101Tが短絡した場合(S2でYES)は、不短絡判定条件未成立で、処理を終了する。
【0067】
図5(b)は、
図2(a)、および
図1(a)と同じであり、
図1(a)に示すように、列番表示窓4は、軌道回路100Tに在線する列車1が正常に短絡している状態である。
【0068】
図5(c)は、
図2(b)と同じであり、
図2(b)に示すように、列車1が軌道回路100Tから第一内方軌道回路101Tに進入時、軌道回路が不短絡を生じて、列番シフト条件が不成立となり、指令制御卓7では列番シフトしない。
【0069】
不短絡判定条件は次の2点である。第一に、
図5(d)の100Tに示すように、不短絡予測進路の対象信号機2の第一外方軌道回路100Tが扛上した場合。第二に、
図5(d)に示すように、第一内方軌道回路101Tが短絡しなかった場合(S2でNO)。これら、第一の場合、かつ第二の場合に、不短絡判定条件が成立し、ステップS3へ移行する。
【0070】
不短絡判定は、
図3の不短絡判定部12が
図3の地上設備23より情報を受けて行う。なお、軌道回路101T,102T,103T,104Tは、不短絡予測進路であった。これらについては、不短絡が実際に発生したため、以降は不短絡進路と呼ぶ。ステップS3では、
図3の仮短絡処理部14より、
図3の地上設備情報表示部19へ仮短絡表示の指示が送信される。
【0071】
図5(e)の軌道回路101T,102T,103T,104Tに示すように、指令制御卓7上の対象進路部分の色を変更し、仮短絡表示をする。仮短絡表示をすることによって、運転指令員は列車1の走行位置を大まかに確認することが可能になる。
【0072】
ステップS4では、
図3の問いかけ出力部13より、
図3の問いかけ表示部21へ問いかけ情報を送信する。
図3の問いかけ表示部21は「列番シフトを行うか」の問いかけを指令制御卓7の画面上へ出力する。
【0073】
ステップS5では、指令制御卓7の画面上に表示された「列番シフトを行うか」という問いかけに対し、NOの場合は処理を終了する。YESの場合は
図3の問いかけ応答部22より、列番シフト承認の情報が
図3の強制列番シフト実施部15へ送信され、ステップS6へ移行する。
【0074】
ステップS6では、強制列番シフト部15から第一内方軌道回路101Tの短絡情報が列番シフト判定部16へ送信される。強制列番シフト部15より、地上設備23の対象信号機2へ制御指示が送信され、対象信号機をG(進行許可色)からR(進行禁止色)へ変更する(
図5(d)の信号機2から
図5(e)の信号機2)。
【0075】
ステップS7では、
図3の列番シフト判定部16にて列番シフト条件が成立したと判定され、列番シフトを実施する。
図3の列番テーブル18の情報を更新し、更新情報を
図3の列番表示部20へ送信する。
図5(d)に示す列番窓4の列番AAA表示を、
図5(e)に示す列番窓5へ移動するように表示列番を更新し、ステップS8へ移行する。
【0076】
ステップS8では、
図5(f)に示す軌道回路102Tのように、不短絡進路内で短絡が発生した場合(S8でYES)、ステップS9へ移行する。そして、短絡が発生するまで待機する。
【0077】
ステップS9では、
図3の仮短絡処理部4から、
図3の地上設備情報処理部19へ、短絡した軌道回路と進路の第一内方軌道回路の間の仮短絡表示を非表示にする情報を送信する。
図3の地上設備情報表示部19では表示を更新する。
【0078】
図5(f)に示すように、軌道回路102Tが短絡した旨を表示する一方、そのすぐ後方から第一内方軌道回路101Tまでの仮短絡表示を非表示にし、ステップS10へ移行する。ステップS10では、短絡した軌道回路が最終内方軌道回路であれば(YES)、処理を終了する。そうでない場合は(NO)、ステップS8へ移行する。
【0079】
上記の実施例では運転指令員の承認によって列番シフトを実施しているが、それに限定するものではない。例えば、不図示の車上端末からの応答と併せて、列番シフトを実施する方法でもよい。あるいは、不短絡判定条件が成立した場合は、運転指令員からの承認なしに、列番シフトを行うようにしてもよい。
【0080】
また、強制列番シフト実施部15は、システム上で第一内方軌道回路の短絡と、信号機の表示をG(進行許可)からR(進行禁止)へ表示変更と、を実施することによって、列番シフト条件を成立させることによって、強制的に列番シフトを行う。しかし、それに限定するものではない。
【0081】
例えば、上述のように、不短絡判定条件が成立した場合は、運転指令員からの承認なしに、列番シフトし、それを指令制御卓7に表示するだけに止めずに、不図示の連動装置を介して地上設備まで波及させてもよい。これによって、許可主体8の許可が得られた信頼度が高い列番シフト情報に基づいて、不図示の連動装置を介した地上設備を制御できる。これによって、相応の制御労力も削減できる。
【0082】
あるいは、列番テーブル18の内容のみを更新する方法でもよい。列番テーブル18の内容を実際の運行情報に基づいて更新すれば、列番シフトに類似した作用効果が得られる。
【0083】
さらに、以上の説明では、進路ごとに不短絡推定を行うことを前提として説明したが、軌道回路ごとに不短絡推定を行う場合にも応用することができる。例えば、第一の軌道回路と、それに対して進行方向に隣接する第二の軌道回路があるとする。そして、第二の軌道回路が不短絡推定されていたとする。
【0084】
このような場合、「第一の軌道回路100Tが扛上した際に、第二の軌道回路101Tが短絡しない場合」が不短絡判定条件となる。このような不短絡判定条件は、一義的な論理であるため、簡素なプログラムによって、判定手段を構成できる。すなわち、列車運行管理システム10は、地上設備から追跡情報が入力され、真正判定された場合に、列番シフトするように構成されている。
【0085】
列車運行管理システム10は、第一の軌道回路100Tと第二の軌道回路101Tの間に信号機2が設置されている環境において、不短絡が発生した場合でも、「列番シフトを行うか」の問いかけを出力し、それに対する承認の返答信号が入力されたならば、列番シフトすることができる。このような環境であっても、列車運行管理システム10は、軌道回路ごとに不短絡推定を行うことができる。
【0086】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、さまざまな変形例が含まれる。上記した実施例は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0087】
本発明の実施形態に係る列車運行管理システム10は、以下のように総括できる。
[1]列車運行管理システム10は、複数の軌道回路100T~104Tと、それらが連続して形成される進路と、その進路上に適宜立設された信号機2,3と、を有し、進路を走行する列車1の運行を管理するものである。
【0088】
信号機2,3は、次の条件によって、その表示が進行許可Gから進行禁止Rに変わる。その条件は、複数の軌道回路100T~104Tのうち、第一の軌道回路100Tと、第一の軌道回路100Tの列車進行方向に隣接する第二の軌道回路101Tと、の境目に列車1が位置したことによって、第二の軌道回路101Tの短絡が検知された、という条件である。
【0089】
列車運行管理システム10は、不短絡予測進路情報17と、不短絡判定部12と、をさらに備えている。不短絡予測進路情報17は、複数の軌道回路100T~104Tのうち、不短絡となる可能性が高い軌道回路を表す。不短絡判定部12は、所定の不短絡判定条件が成立した軌道回路101Tに不短絡が発生したと判定する。
【0090】
不短絡判定部12が用いる不短絡判定条件は、不短絡予測進路情報17に第二の軌道回路101Tが登録されている場合、第一の軌道回路100Tが扛上したにも関わらず、第二の軌道回路101Tが短絡しない、という条件に設定されている。
【0091】
これによって、列車運行管理システム10は、第二の軌道回路101Tが短絡しない現象に対し、列車1が実際に在線する位置を高精度に推定できる。すなわち、軌道回路の不短絡が発生した場合、軌道回路101Tに列車1が実在するにも関わらず、不短絡判定部12は、所定の不短絡判定条件が成立した軌道回路101Tに不短絡が発生したと判定する。その結果、列車運行管理システム10は、軌道回路の不短絡が発生した場合にも、列車の走行位置を追跡できる。
【0092】
[2]また、列車運行管理システム10は、指令制御卓7と、問いかけ出力部13と、をさらに備えることが好ましい。指令制御卓7は、列車1が在線する複数軌道回路100T~104Tの境界を超えて移動したことを列番シフト可能に模式表示する。
【0093】
問いかけ出力部13は、不短絡判定部12が不短絡の発生を判定したとき、列番シフトを実行してもよいか否かについて許可主体8に許可を求める信号を出力する。列車運行管理システム10は、許可主体8から列番シフトを許可する信号が入力されたことに応じて列番シフトを指令制御卓7に表示させる。
【0094】
これによって、例えば、許可主体8が運転指令員であれば、その知識経験や所定の判断基準に基づいて許可された場合、高い信頼度で指令制御卓7に列番シフトを表示させられる。その結果、不短絡となる可能性が高い軌道回路101Tについて、列番シフトを許可した運転指令員以外に対しても、列車1の走行位置をより簡便かつ継続的に追跡容易にする。
【0095】
なお、このような条件下において、列番シフトの許可について判断することは、熟練した運転指令員であればきわめて容易なことである。したがって、簡便に追跡容易な列車運行管理システム10が実現する。
【0096】
[3]また、列車運行管理システム10は、許可主体8として、運転指令員の判断基準に相当する判断部9をさらに備えるとよい。これによって、きわめて容易なことであるならば、コンピュータプログラムで成る判断部9を始めとする機械化によって、運転指令員の人数を削減できる。
【0097】
[4]また、列車運行管理システム10において、許可主体8は、禁止するように設定されていないかぎり許可するようにしてもよい。このように、禁止しないかぎりすべて許可する許可主体8は、コンピュータプログラムである必要もなく、例えば、人の意思を実現する開閉スイッチやリレーなどの組み合わせを始めとする簡素な電子回路だけでも構成できる。たとえ、許可主体8がプログラムで構成されたとしても、システム内に既存する関連用途のプログラムに対してきわめて簡単な修正を施すだけで足りる。
【0098】
[5]また、列車運行管理システム10において、
図5(e)に示すように、不短絡判定部12は、不短絡の発生を判定したとき、指令制御卓7において、第一の軌道回路100Tと第二の軌道回路101Tとの境目にある信号機2が進行可否を制御する対象進路の軌道回路101T~104Tに該当する箇所の色を変更するとよい。
【0099】
これによって、列車1が捕捉できなくなったものの、在線している可能性のある個所を明示させることによって、在線範囲を絞って確認作業するように、運転指令員の追跡作業を支援できる。
【0100】
[6]また、列車運行管理システム10は、第二の軌道回路101Tと進行方向にある信号機3との間の軌道回路101T~104Tにおいて、短絡が発生した場合は、短絡が発生した軌道回路103Tから信号機3までの間に相当する指令制御卓7の該当箇所の色を変更することが好ましい(
図5(g))。これによって、上記[5]に対して、在線範囲をさらに絞り込む作用効果がある。
【0101】
[7]また、列車運行管理システム10において、許可主体8の許可が得られた列番シフト情報に基づいて、地上設備を制御するようにしてもよい。これによって、許可主体8の許可が得られた信頼度が高い列番シフト情報に基づいて、不図示の連動装置を介した地上設備を制御できる。これによって、相応の制御労力も削減できる。
【0102】
本発明の実施形態に係る列車運行管理方法は、次のように総括できる。
[8]この列車運行管理方法は、上記[1]の列車運行管理システム10と、同等の管理対象を管理するものであり、上記[1]と同等の作用効果が得られる。この方法は、次のステップ(S1)と、ステップ(S2)と、を有する。
【0103】
ステップ(S1)では、複数の軌道回路100T~104Tのうち不短絡となる可能性が高い軌道回路を表す不短絡予測進路情報17を参照する。ステップ(S2)では、所定の不短絡判定条件が成立した軌道回路101Tに不短絡が発生したと判定する。
【0104】
また、この列車運行管理方法でも、上記[1]の列車運行管理システム10と同等の不短絡判定条件を採用する。この不短絡判定条件は、不短絡予測進路情報17に第二の軌道回路を表す情報が登録されている場合、第一の軌道回路100Tが扛上したにも関わらず、第二の軌道回路101Tが短絡しない、という条件である。
【0105】
[9]この列車運行管理方法でも、上記[1]の列車運行管理システム10と同等に、列番シフトしたことを指令制御卓7に模式表示するものであり、上記[2]と同等の作用効果が得られる。その指令制御卓7を用いる方法は、次のステップ(S4)と、ステップ(S7)と、を有する。
【0106】
ステップ(S4)では、不短絡が発生したと判定されたとき、列番シフトを実行してもよいか否かについて許可主体8に許可を求める信号を出力して問いかける。これに対し、ステップ(S7)では、許可主体8から列番シフトを許可する信号が入力されたならば、それに応じて、指令制御卓7に列番シフトしたことを表示させる。
【符号の説明】
【0107】
1 列車、2,3 信号機、 10 列車運行管理システム、100T~104T 軌道回路、100T 第一の軌道回路、101T 第二の軌道回路、12 不短絡判定部、17 不短絡予測進路テーブル(情報)、G 進行許可、R 進行禁止