(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
F01N 3/20 20060101AFI20221213BHJP
F01N 3/00 20060101ALI20221213BHJP
F01N 11/00 20060101ALI20221213BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20221213BHJP
B66C 23/40 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
F01N3/20 B ZAB
F01N3/00 F
F01N3/20 C
F01N11/00
E02F9/00 D
B66C23/40
(21)【出願番号】P 2019176116
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】滝川 善之
(72)【発明者】
【氏名】糸賀 健太郎
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/043348(WO,A1)
【文献】特開2017-150228(JP,A)
【文献】国際公開第2012/029606(WO,A1)
【文献】特開2016-008535(JP,A)
【文献】特開2010-203297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/20
F01N 3/00
F01N 11/00
E02F 9/00
B66C 23/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの排ガス経路に配置され、前記エンジンの排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集する捕集フィルタと、
前記エンジンによって駆動される負荷装置と、
前記エンジンを目標エンジン回転数に基づき制御するエンジン制御部と、
操作装置の操作に応じて機体の動作を制御すると共に、前記エンジン制御部に対して前記目標エンジン回転数を出力するコントローラとを備え
、
前記コントローラは、所定の条件を満たしたときに、前記捕集フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼して除去する前記捕集フィルタの再生処理を行う作業機械において、
前記エンジンの排ガス経路に配置され、前記エンジンの排ガス中に含まれる成分の酸化を促進する酸化触媒を備え、
前記コントローラは、
前記捕集フィルタの再生処理のための前記所定の条件とは別に、前記操作装置による前記機体の非操作状態が継続している時間が予め設定された第1の時間に到達した
場合、前記負荷装置の負荷もしくは前記目標エンジン回転数
を上昇させる負荷上昇制御を行う
ことにより、前記酸化触媒に付着した粒子状物質を除去する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記負荷装置は、前記機体を駆動させる油圧システムの一部を構成する油圧ポンプであり、
前記コントローラは、前記油圧ポンプの吐出圧力及び押しのけ容積の少なくとも一方
を増加させることで、前記負荷上昇制御を行う
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記負荷装置は、
前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、
前記エンジンによって駆動される発電機と前記エンジンをアシストする電動機との両動作が可能な発電電動機とで構成され、
前記コントローラは、前記発電電動機を発電機として動作させて前記発電電動機の負荷
を増加させることで、前記負荷上昇制御を行う
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において、
前記排ガス経路における前記酸化触媒よりも上流側に設置され、前記エンジンから排出された排ガスの温度を検出する温度検出装置を更に備えと、
前記コントローラは、前記負荷上昇制御において、前記温度検出装置の検出温度が所定の閾値以上で継続している時間が予め設定された第2の時間に到達したか否かを判定し、前記所定の閾値以上で継続している時間が前記第2の時間に到達したと判定された場合に前記負荷上昇制御を終了させる
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項4に記載の作業機械において、
前記コントローラからの報知指令に基づき、オペレータに対して報知する報知装置を更に備え、
前記コントローラは、前記負荷上昇制御において、前記温度検出装置の検出温度が前記所定の閾値未満で継続している時間が予め設定された第3の時間に到達したか否かを判定し、前記所定の閾値未満で継続している時間が前記第3の時間に到達したと判定された場合に、前記負荷上昇制御を終了させると共に、前記所定の閾値以上で継続している時間が前記第2の時間に到達できずに前記負荷上昇制御が終了することをオペレータに対して報知する報知指令を前記報知装置へ出力する
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に係り、更に詳しくは、エンジンの排ガスを浄化する後処理装置を備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンを搭載した油圧ショベルやクレーン、ホイールローダ等の作業機械は、エンジンの排ガス規制に対応するために、排ガスを浄化する後処理装置を搭載している。後処理装置は、少なくとも酸化触媒を有し、必要に応じて、DPF(Diesel Particulate Filter)等の捕集フィルタやNOx浄化装置を備えている。捕集フィルタは、粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集するものであり、フィルタに堆積したPMを燃焼させて除去する再生処理が必要である。捕集フィルタの再生処理は、一般的に、排ガス中に供給した燃料由来のHCを酸化触媒で燃焼させることにより排ガスをフィルタ再生温度まで上昇させ、捕集フィルタに堆積したPMを燃焼させることによって行われる。
【0003】
ところで、作業機械では、低負荷低回転域の運転が継続されることがある。低負荷低回転域の運転では、高負荷高回転域の運転と比較して、PMの発生量が少なくなり、捕集フィルタに堆積するPM(主にすす)の量も少なくなる。しかし、低負荷低回転域の運転では、排ガスの温度が低くなるので、PMのうち可溶性有機成分(SOF:Soluble Organic Fraction)が酸化触媒に付着してしまうことがある。したがって、低負荷低回転域の運転が継続すると、SOFが酸化触媒に過剰に付着する懸念がある。
【0004】
PMの付着による酸化触媒の目詰まりを防ぐ方策として、例えば、特許文献1に記載の技術が提案されている。特許文献1に記載の技術は、捕集フィルタ(DPF)の再生時に排ガス温度を酸化触媒の触媒活性温度まで上昇させた後に排気系にHCを供給してDPFに堆積したPMを燃焼除去するに際して、内燃機関が常時低負荷低回転で運転されるとき、前記DPF再生の数回に1回の割で、酸化触媒の入口の排ガス温度がPM燃焼温度(触媒活性温度よりも高い温度)になるように排ガス温度を上昇させて酸化触媒に付着したPM(主にSOF)を除去する酸化触媒PM除去運転を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、内燃機関の運転時間が予め設定された時間になる度にDPFの再生が行われる。しかし、前述したように、低負荷低回転域の運転では、高負荷高回転域の運転と比較して、PMの発生量が少なくなるので、その分、捕集フィルタに堆積するPM(主にすす)の量も少なくなる。したがって、低負荷低回転域の運転が継続される場合、特許文献1に記載の技術のように設定期間ごとにDPF再生を行うと、捕集フィルタのPM堆積量が少ないもかかわらず、DPFの再生回数が増加することなる。
【0007】
そこで、DPFの再生回数を低減する方法として、捕集フィルタのPM堆積量に応じてDPFの再生時期を設定することが考えられる。このようにDPFの再生時期を設定した場合、低負荷低回転域の運転が継続されると、DPFの再生間隔が非常に長くなることが想定される。しかし一方で、低負荷低回転域の運転では、SOFが酸化触媒に付着してしまう。したがって、特許文献1に記載の技術のようにDPF再生の数回に1回の割で酸化触媒に付着したPM(主にSOF)を除去する運転を行う場合、低負荷低回転域の運転が継続されると、DPFの再生間隔が長くなる分、酸化触媒にSOFが過度に付着する懸念がある。SOFの過度な付着後に、排ガス温度を上昇させるDPFの再生を行うと、過度に付着したSOFの影響によりDPFが損傷することも考えられる。
【0008】
本発明は、上記の事柄に基づいてなされたもので、その目的は、酸化触媒にPM(主にSOF)が過度に付着する前にPMを除去する作業機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、エンジンと、前記エンジンの排ガス経路に配置され、前記エンジンの排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集する捕集フィルタと、前記エンジンによって駆動される負荷装置と、前記エンジンを目標エンジン回転数に基づき制御するエンジン制御部と、操作装置の操作に応じて機体の動作を制御すると共に、前記エンジン制御部に対して前記目標エンジン回転数を出力するコントローラとを備え、前記コントローラは、所定の条件を満たしたときに、前記捕集フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼して除去する前記捕集フィルタの再生処理を行う作業機械において、前記エンジンの排ガス経路に配置され、前記エンジンの排ガス中に含まれる成分の酸化を促進する酸化触媒を備え、前記コントローラは、前記捕集フィルタの再生処理のための前記所定の条件とは別に、前記操作装置による前記機体の非操作状態が継続している時間が予め設定された第1の時間に到達した場合、前記負荷装置の負荷もしくは前記目標エンジン回転数を上昇させる負荷上昇制御を行うことにより、前記酸化触媒に付着した粒子状物質を除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、機体の非操作状態が第1の時間継続するという酸化触媒にPM(主にSOF)が付着すると想定される状況を見極めてから、負荷装置の負荷もしくは目標エンジン回転数を上昇させる制御によってエンジン排ガスの温度を上昇させるので、PMが酸化触媒に過度に付着する前に酸化触媒からPMを除去することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の作業機械の第1の実施の形態を適用した油圧ショベルを示す側面図である。
【
図2】本発明の作業機械の第1の実施の形態における排ガス処理システム及び油圧システムを示す構成図である。
【
図3】
図2に示す本発明の作業機械の第1の実施の形態の一部を構成するコントローラによる負荷上昇制御の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の作業機械の第2の実施の形態における排ガス処理システム及び油圧システムを示す構成図である。
【
図5】
図4に示す本発明の作業機械の第2の実施の形態の一部を構成するコントローラによる負荷上昇制御の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の作業機械の実施の形態について図面を用いて説明する。本実施の形態においては、作業機械の一例として油圧ショベルを例に挙げて説明する。
【0013】
まず、本発明の作業機械の第1の実施の形態としての油圧ショベルの構成について
図1を用いて説明する。
図1は本発明の作業機械の第1の実施の形態を適用した油圧ショベルを示す側面図である。ここでは、運転席に着座したオペレータから見た方向を用いて説明する。
【0014】
図1において、作業機械としての油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前部に俯仰動可能に設けられたフロント作業機4とを備えている。
【0015】
下部走行体2は、左右にクローラ式の走行装置11を備えている。左右の走行装置11はそれぞれ、油圧アクチュエータとしての走行油圧モータ12により駆動する。
【0016】
上部旋回体3は、例えば、油圧アクチュエータとしての旋回油圧モータ(図示せず)によって、下部走行体2に対して旋回駆動される。上部旋回体3は、支持構造体である旋回フレーム21と、旋回フレーム21上の前部左側に設置された運転室22と、旋回フレーム21上の後部側に配置された機械室23と、旋回フレーム21の後端部に取り付けられたカウンタウェイト24とを含んで構成されている。運転室22内には、後述の操作装置としての操作レバー装置64やゲートロックレバー65(共に後述の
図2参照)、エンジンコントロールダイヤル(図示せず)等のオペレータが油圧ショベル1を操作するための各種装置が配置されている。機械室23には、後述のエンジン41や後処理装置43(共に後述の
図2参照)、および、油圧システム50の油圧ポンプ51や各種装置(後述の
図2参照)等が収容されている。カウンタウェイト24は、フロント作業機4との重量バランスをとるためのものである。
【0017】
フロント作業機4は、掘削作業等を行うための多関節型の作業装置であり、例えば、ブーム31、アーム32、アタッチメントとしてのバケット33を備えている。ブーム31は、その基端部が上部旋回体3の旋回フレーム21の前端部に回動可能に連結されている。ブーム31の先端部には、アーム32の基端部が回動可能に連結されている。アーム32の先端部には、バケット33の基端部が回動可能に連結されている。ブーム31、アーム32、バケット33はそれぞれ、ブームシリンダ35、アームシリンダ36、バケットシリンダ37によって駆動される。ブームシリンダ35、アームシリンダ36、バケットシリンダ37は、圧油の供給によって伸縮可能な油圧アクチュエータである。
【0018】
次に、本発明の作業機械の第1の実施の形態における排ガス処理システム及び油圧システムの構成について
図2を用いて説明する。
図2は本発明の作業機械の第1の実施の形態における排ガス処理システム及び油圧システムを示す構成図である。なお、
図2において、
図1に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0019】
図2において、油圧ショベル1は、排ガスを排出するディーゼルエンジン等のエンジン41と、エンジン41の回転数及び出力トルクを制御するエンジン制御部42と、エンジン41から排出される排ガスを浄化する後処理装置43とを備えている。油圧ショベル1は、また、エンジン41を原動機として、油圧ショベル1の機体である下部走行体2、上部旋回体3、フロント作業機4(共に
図1参照)を駆動させる油圧システム50と、オペレータの操作に応じて油圧システム50を介して機体の動作を制御するコントローラ80とを備えている。
【0020】
エンジン41には、エンジン41の排ガスを外気へ導く排ガス経路としての排気管46が接続されている。また、エンジン41には、エンジン41の実回転数を検出するエンジン回転数検出装置47が設けられている。エンジン回転数検出装置47は、例えば、角速度センサにより構成されており、エンジン41の実回転数の検出信号をエンジン制御部42へ出力する。
【0021】
エンジン制御部42は、目標エンジン回転数に基づいてエンジン41を制御するものである。具体的には、エンジン制御部42は、コントローラ80からの目標エンジン回転数の指令信号及びエンジン回転数検出装置47からのエンジン41の実回転数の検出信号に基づき所定の演算処理を行い、演算結果に基づき生成した制御指令を出力することで、エンジン41の各気筒に噴射される燃料噴射量を制御する。これにより、エンジン41は、実回転数が目標エンジン回転数に一致するように制御される。
【0022】
後処理装置43は、排気管46の中途部分に配置されている。後処理装置43は、例えば、排ガス経路の上流側(前段)に配置された酸化触媒44と、酸化触媒44よりも排ガス経路の下流側(後段)に配置された捕集フィルタ45とで構成されている。
【0023】
酸化触媒44は、エンジン41の排ガス中に含まれる成分の酸化を促進させるものであり、例えば、無機化合物の多孔質担体に触媒活性成分が担持されている。排ガス中の酸化される成分としては、主に、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)である。酸化触媒44の触媒作用によって、HCはH2OとCO2に酸化されると共に、COがCO2に酸化される。NOxのうち、NOはNO2に酸化される。
【0024】
捕集フィルタ45は、エンジン41の排ガス中に含まれるPMを捕集するものである。捕集フィルタ45では、捕集フィルタ45に堆積したPM(主にすす)を定期的に燃焼して除去する再生処理が必要である。捕集フィルタ45の再生処理は、所定の条件を満たしたとき、例えば、PMの推定堆積量が所定量を超えたときに、排ガス温度を捕集フィルタ45の再生可能な温度まで強制的に上昇させることで行われる。この再生処理は、エンジン制御部42がエンジン41を制御することで実行される。
【0025】
後処理装置43には、後処理装置43を流れる排ガスの温度を検出する排ガス温度検出装置48が設けられている。排ガス温度検出装置48は、例えば、酸化触媒44の入り口側に配置されており、酸化触媒44に導入される直前の排ガス温度を検出する。排ガス温度検出装置48は、排ガス温度の検出信号をエンジン制御部42へ出力する。
【0026】
油圧システム50は、エンジン41によって駆動される負荷装置としての油圧ポンプ51及びパイロットポンプ52と、油圧ポンプ51から吐出された圧油により駆動する油圧アクチュエータ群53と、油圧ポンプ51から油圧アクチュエータ群53に供給される圧油の流れ(方向及び流量)を制御するコントロールバルブ装置54とを備えている。
【0027】
油圧ポンプ51は、例えば、可変容量型のポンプであり、押しのけ容積(1回転数当たりの吐出流量)の可変機構(例えば、斜板または斜軸)と、可変機構の傾転(例えば、傾転角)を調整して油圧ポンプ51の押しのけ容積を制御するレギュレータ51aとを備えている。レギュレータ51aは、パイロットポンプ52からパイロット圧が導入されることで可変機構の傾転を調整する。レギュレータ51aには、例えば、パイロットポンプ52からのパイロット圧が第1電磁弁55を介して導入されている。第1電磁弁55はコントローラ80と電気的に接続されており、第1電磁弁55の絞り量はコントローラ80からの制御指令によって制御されている。
【0028】
油圧ポンプ51に接続された吐出管路には、油圧ポンプ51の吐出圧力を検出する第1圧力検出装置61が設けられている。第1圧力検出装置61は、油圧ポンプ51の吐出圧力の検出信号をコントローラ80へ出力する。
【0029】
油圧アクチュエータ群53は、
図1に示す左右の走行油圧モータ12、ブームシリンダ35、アームシリンダ36、バケットシリンダ37、旋回油圧モータ(図示せず)等の複数の油圧アクチュエータで構成されている。油圧アクチュエータ群53の少なくとも1つが駆動することで、機体の動作が行われる。
【0030】
コントロールバルブ装置54は、油圧アクチュエータ群53を構成する複数の油圧アクチュエータ12、35、36、37の各々に対応する複数の制御弁の集まりである。複数の制御弁は、例えば、それぞれオープンセンタ型で油圧パイロット操作式の弁である。
【0031】
センタバイパスライン57は、上流側が油圧ポンプ51の吐出側に接続されると共に、下流側が作動油タンク58に接続されている。センタバイパスライン57におけるコントロールバルブ装置54よりも下流側には、可変絞り弁59が設けられている。可変絞り弁59は、全開位置Xと全閉位置Yとの間で開口面積が可変となるよう構成されている。可変絞り弁59は、例えば、パイロット油圧操作式の弁であり、パイロットポンプ52からのパイロット圧が第2電磁弁56を介して導入されている。第2電磁弁56はコントローラ80と電気的に接続されており、第2電磁弁56の絞り量はコントローラ80からの制御指令に応じて調整されている。
【0032】
コントロールバルブ装置54は、操作レバー装置64からの操作パイロット圧によって切換操作される。操作レバー装置64は、オペレータの操作に応じて機体の動作を指示する操作装置として機能するものである(代表して1つのみ図示)。操作装置は、操作レバー装置64の他に、例えば、操作ペダル装置を含んで構成することが可能である。操作レバー装置64は、パイロットポンプ52からのパイロット圧を1次圧としてオペレータの操作(操作方向や操作量)に応じて操作パイロット圧を生成する。オペレータが操作レバー装置64を操作していない場合(例えば、操作レバー装置64が中立位置にある場合)には、操作レバー装置64が生成する操作パイロット圧は所定値未満となる。
【0033】
操作レバー装置64からコントロールバルブ装置54へのパイロットラインには、操作レバー装置64が生成した操作パイロット圧を検出する第2圧力検出装置62が設けられている。第2圧力検出装置62は、操作レバー装置64の操作パイロット圧の検出信号をコントローラ80へ出力する。本実施の形態において、第2圧力検出装置62は、操作装置としての操作レバー装置64の操作状態を検出する操作状態検出装置として機能する。第2圧力検出装置62の検出した圧力値が所定の圧力閾値Pt未満の場合には、操作レバー装置64が中立位置にあり、オペレータが操作レバー装置64を介した機体の操作を行っていない非操作状態であるとみなすことが可能である。
【0034】
油圧システム50は、操作レバー装置64によるコントロールバルブ装置54の操作、すなわち、操作レバー装置64による機体に対するオペレータの操作を不能とするゲートロックレバー65を備えている。ゲートロックレバー65は、運転席の入り口を開放するロック位置Lと、運転席の入り口を制限するロック解除位置Uとに選択的に操作可能である。ゲートロックレバー65がロック位置Lに操作されると、操作レバー装置64に供給されるパイロットポンプ52からの1次圧が遮断され、操作レバー装置64を介した油圧アクチュエータ群53(機体)の操作が不能となる。一方、ゲートロックレバー65がロック解除位置Uに操作されると、操作レバー装置64に供給される1次圧の遮断が解除され、操作レバー装置64を介した油圧アクチュエータ群53(機体)の操作が可能となる。すなわち、ゲートロックレバー65は、オペレータのロック位置L又はロック解除位置Uへの操作に応じて操作レバー装置64を介して間接的に機体の動作を指示する操作装置として機能する。ゲートロックレバー65は、操作位置(ロック位置Lまたはロック解除位置U)を検出する位置検出装置66を有している。位置検出装置66は、ゲートロックレバー65の操作位置の検出信号をコントローラ80へ出力する。
【0035】
コントローラ80には、報知装置100が接続されている。報知装置100は、コントローラ80からの報知指令により、オペレータに対して後述する所定の情報及び注意喚起を報知するものである。報知装置100は、運転室22(
図1参照)内に配置されており、報知音を発するブザー、音声を発するスピーカ、報知内容を表示するモニタ等により構成することができる。
【0036】
コントローラ80には、オペレータの操作に応じてエンジン41の設定回転数を指示するECダイヤル(図示せず)が接続されている。コントローラ80は、ECダイヤルからの設定回転数の指示信号や機体の操作状態に応じて目標エンジン回転数を演算する。コントローラ80は、CAN等の通信手段を介して、演算結果としての目標エンジン回転数をエンジン制御部42へ送信する(出力する)と共に、エンジン制御部42から排ガス温度検出装置48の検出値である排ガス温度を受信する。
【0037】
また、コントローラ80は、第1電磁弁55及び第2電磁弁56に電気的に接続されており、第1電磁弁55を介して油圧ポンプ51の押しのけ容積を制御すると共に、第2電磁弁56を介して可変絞り弁59の絞り量を制御する。本実施の形態のコントローラ80は、第2圧力検出装置62からの検出結果に基づき所定の比較判定や演算処理を行い、可変絞り弁59の絞り量や油圧ポンプ51の押しのけ容積を制御することで、油圧ポンプ51の負荷(動力)を上昇させる負荷上昇制御を行う。油圧ショベル1では、エンジン41の低負荷低回転域の運転時(すなわち、機体が操作されていない非操作状態のとき)に排ガス温度が低くなるので、PMのうちのSOFが酸化触媒44に付着する傾向にある。エンジン41の低負荷低回転域の運転が継続されると、SOFが酸化触媒44に過剰に付着する懸念がある。したがって、SOFが酸化触媒44に過剰に付着する前にSOFを除去する必要がある。そこで、コントローラ80は、上記負荷上昇制御によりエンジン41に掛かる負荷(油圧ポンプ51の動力)を上昇させることで、エンジン41の排ガス温度を上昇させてSOFを酸化触媒44から除去する処理を行う。
【0038】
コントローラ80は、ハード構成として、例えば、RAMやROM等からなる記憶装置81と、時間の計測が可能なタイマを含むCPU等からなる演算処理装置82とを備えている。記憶装置81には、上記負荷上昇制御や他の制御に必要なプラグラムや各種情報が予め記憶されている。演算処理装置82は、記憶装置81からプログラムや各種情報を適宜読み込み、当該プログラムに従って処理を実行することで以下の機能を含む各種の機能を実現する。
【0039】
コントローラ80は、負荷上昇制御を実行する機能として、例えば、記憶装置81の機能としての記憶部91と、演算処理装置82により実行される機能としての非操作状態判定部92、負荷制御部93、および制御終了判定部94を備えている。
【0040】
記憶部91には、所定の圧力閾値Ptおよび予め設定された第1の時間S1が記憶されている。圧力閾値Ptおよび第1の時間S1は、非操作状態判定部92による後述の機体の非操作状態の継続の判定のために用いられるものである。圧力閾値Ptは、操作装置としての操作レバー装置64を介した機体の操作が行われたときの操作レバー装置64の操作パイロット圧と、操作レバー装置64を介した機体の操作が行われていないときの操作パイロット圧との判別が可能な値である。第1の時間S1は、エンジン41の低負荷低回転域の運転が継続されたときにPMが酸化触媒44に付着してしまうことを鑑み、酸化触媒44にPM(主にSOF)が付着する状況になると想定される機体の非操作状態(エンジン41の低負荷低回転域の運転)の継続時間である。
【0041】
また、記憶部91には、所定の温度閾値Tt、予め設定された第2の時間S2、および、予め設定された第3の時間S3が記憶されている。温度閾値Ttおよび第2の時間S2は、負荷制御部93による後述のPM除去処理の完了の判定のために用いられるものである。温度閾値Ttおよび第3の時間S3は、負荷制御部93による後述のPM除去処理の不能の判定のために用いられるものである。温度閾値Ttは、酸化触媒44に付着したPM(主にSOF)を除去することが可能な温度である。第2の時間S2は、酸化触媒44に付着したPM(主にSOF)を確実に除去するために必要な処理時間である。
【0042】
非操作状態判定部92は、酸化触媒44にPM(主にSOF)が付着すると想定される状況にあるか否かを判定するものである。具体的には、非操作状態判定部92は、操作状態検出装置としての第2圧力検出装置62の検出結果Pに基づき機体の非操作状態が継続している第1継続時間t1を計測し、計測している第1継続時間t1が記憶部に予め記憶されている第1の時間S1に到達したか否かを判定するものである。より詳細には、非操作状態判定部92は、第2圧力検出装置62からの検出値Pを記憶部91に予め記憶されている圧力閾値Ptと比較することで、操作装置としての操作レバー装置64を介した機体の操作状態が非操作状態であるか否かを判定する。第2圧力検出装置62の検出値Pが圧力閾値Ptよりも小さい場合には、操作レバー装置64を介した機体の操作が行われていないので、機体の非操作状態と判定する。一方、第2圧力検出装置62の検出値Pが圧力閾値Ptよりも大きい場合には、操作レバー装置64を介した機体の操作が行われているので、機体の非操作状態ではないと判定する。さらに、非操作状態判定部92は、検出値Pが圧力閾値Ptよりも大きい状態が継続している第1継続時間t1を計測し、計測している第1継続時間t1が第1の時間S1に到達したか否かを判定する。
【0043】
負荷制御部93は、非操作状態判定部92によって機体が非操作継続状態であると判定された場合に、油圧システム50の構成を制御することで、油圧ポンプ51の負荷(動力)を当該判定時よりも上昇させる負荷上昇制御を行う。具体的には、負荷制御部93は、第2電磁弁56に対して制御指令を出力することで、可変絞り弁59の開口面積を当該判定時よりも絞るように制御する。また、負荷制御部93は、第1電磁弁55に対して制御指令を出力することで、油圧ポンプ51の押しのけ容積が当該判定時よりも大きくなるように制御することも可能である。また、可変絞り弁59の開口面積および油圧ポンプ51の押しのけ容積を同時に制御することも可能である。
【0044】
制御終了判定部94は、負荷制御部93により負荷上昇制御が開始された場合、酸化触媒44に付着したPMの除去処理の完了を判定する。具体的には、排ガス温度検出装置48からの検出値T(すなわち、排ガス温度)を記憶部91に予め記憶されている温度閾値Ttと比較することで、酸化触媒44に付着したPMを除去可能な状態であるか否かを判定する。排ガス温度検出装置48の検出値Tが温度閾値Tt以上である場合には、排ガスの温度が酸化触媒44に付着したPMの除去可能な温度に到達していると判定する。一方、検出値Tが温度閾値Tt未満である場合には、排ガスの温度がPMの除去可能な温度に到達していないと判定する。
【0045】
検出値Tが温度閾値Tt以上である場合、制御終了判定部94は、検出値Tが温度閾値Tt以上で継続している第2継続時間t2を計測し、計測している第2継続時間t2が記憶部91に予め記憶されている第2の時間S2に到達したか否かを判定する。第2継続時間t2が第2の時間S2に到達した場合、制御終了部94は、酸化触媒44に付着したPMの除去処理が完了したと見なし、上記負荷上昇制御を終了させると判定する。
【0046】
一方、排ガス温度検出装置48の検出値Tが温度閾値Tt未満である場合、制御終了判定部94は、上記負荷上昇制御を強制終了させるか否かを判定する。具体的には、検出値Tが温度閾値Tt未満で継続している第3継続時間t3を計測し、計測している第3継続時間t3が記憶部91に予め記憶されている第3の時間S3に到達したか否かを判定する。第3継続時間t3が第3の時間S3に到達した場合、負荷制御部93は、上記負荷上昇制御を実行しても、排ガス温度の適切な上昇が得られずPM除去が不能な状態であると見なし、上記負荷上昇制御を強制終了させると判定する。
【0047】
また、制御終了判定部94は、第3継続時間t3が第3の時間S3に到達した場合、上記負荷上昇制御を行っても第2継続時間t2が第2の時間S2に到達できず負荷上昇制御を終了させることをオペレータに対して報知する報知指令を報知装置100へ出力する。
【0048】
次に、本発明の作業機械の第1の実施の形態を構成するコントローラが実行する制御手順の一例について
図2及び
図3を用いて説明する。
図3は
図2に示す本発明の作業機械の第1の実施の形態の一部を構成するコントローラによる負荷上昇制御の手順の一例を示すフローチャートである。
【0049】
図2に示すコントローラ80は、まず、操作状態検出装置としての第2圧力検出装置62からの検出結果P(操作パイロット圧)に基づき、機体の非操作状態が第1の時間S1継続しているか否かを判定する(
図3に示すステップS10)。具体的には、コントローラ80の非操作状態判定部92が、第2圧力検出装置62からの検出値Pが記憶部91に記憶されている圧力閾値Pt以下(すなわち、機体の非操作状態)で継続している第1継続時間t1を計測し、計測している第1継続時間t1が記憶部91に記憶されている第1の時間S1に到達したか否かにより判定する。検出値Pが圧力閾値Ptよりも大きく機体が操作状態である場合、または、第1継続時間t1が第1の時間S1未満である場合、すなわち、NOの場合、再びステップS10を繰り返す。
【0050】
一方、ステップS10においてYESの場合(すなわち、P≦Ptかつt1≧S1の場合)、PM(主にSOF)が酸化触媒44に付着している状況にあると想定される。そこで、コントローラ80は、酸化触媒44に付着したPMを除去するために、油圧システム50に対して負荷上昇制御を行う(
図3に示すステップS20)。具体的には、コントローラ80の負荷制御部93は、機体の非操作状態が継続していると判定したときよりも油圧ポンプ51の負荷(動力)を上昇させる負荷上昇制御を行うものである。例えば、負荷制御部93は、第2電磁弁56を介して可変絞り弁59を当該判定時よりも絞るように制御する。これにより、可変絞り弁59での圧油の流れの抵抗が大きくなり、油圧ポンプ51の吐出圧力を増加させることができる。したがって、エンジン41に掛かる油圧ポンプ51の負荷が増加するので、エンジン41の排ガスの温度が上昇する。
【0051】
また、負荷制御部93は、第1電磁弁55を介して油圧ポンプ51の押しのけ容積が当該判定時よりも大きくなるように制御することも可能である。これにより、油圧ポンプ51の吸収トルクが増加するので、エンジン41に掛かる油圧ポンプ51の負荷が増加し、エンジン41の排ガスの温度が上昇する。
【0052】
また、負荷制御部93は、可変絞り弁59の開口面積および油圧ポンプ51の押しのけ容積を同時に制御することも可能である。これにより、油圧ポンプ51の吐出圧力および吸収トルクの両方が増加するので、エンジン41に掛かる油圧ポンプ51の負荷がさらに増加し、エンジン41の排ガスの温度がさらに上昇する。
【0053】
次に、コントローラ80は、負荷上昇制御によって酸化触媒44に付着したPMを除去可能な状態に移行したか否かを判定する(
図3に示すステップS30)。具体的には、制御終了判定部94が排ガス温度検出装置48からの検出値T(排ガス温度)を記憶部91に予め記憶されている温度閾値Ttと比較して判定する。検出値Tが温度閾値Tt以上である場合(YESの場合)、酸化触媒44に付着したPMを除去することが可能な状態であると判定し、
図3に示すステップS40に進む。一方、検出値Tが温度閾値Tt未満である場合(NOの場合)、酸化触媒44に付着したPMを除去可能な状態でないと判定し、
図3に示すステップS60に進む。
【0054】
ステップS30においてYESの場合、制御終了判定部94は、排ガス温度検出装置48の検出値Tが温度閾値Tt以上で継続している第2継続時間t2を計測し、計測している第2継続時間t2が記憶部91に記憶されている第2の時間S2に到達したか否かを判定する(
図3に示すステップステップS40)。第2計測時間t2が第2の時間S2未満である場合(NOの場合)には、再び、ステップS30およびS40を繰り返す。場合によっては、ステップS60に進む。
【0055】
一方、ステップS40において、第2計測時間t2が第2の時間S2に到達した場合(YESの場合)、コントローラ80は、酸化触媒44に付着したPM(主にSOF)を確実に除去するために必要な時間が経過したと判定し、上記負荷上昇制御を終了する(
図3に示すステップS50)。具体的には、負荷制御部93は、第2電磁弁56を介して可変絞り弁59の開口面積を負荷上昇制御前に戻すように制御する。これにより、油圧ポンプ51の吐出圧力が低下するので、エンジン41に掛かる油圧ポンプ51の負荷が低下し、エンジン41の排ガスの温度が下降する。なお、油圧ポンプ51の押しのけ容積を制御する場合も負荷上昇制御前の状態に戻すように制御すればよい。
【0056】
また、ステップS30においてNOの場合、コントローラ80は、酸化触媒44に付着したPMの除去不能な状態が継続しているか否かを判定する(
図3に示すステップS60)。具体的には、制御終了判定部94は、排ガス温度検出装置48の検出値Tが温度閾値Tt未満で継続している第3継続時間t3を計測し、計測している第3継続時間t3が記憶部91に記憶されている第3の時間S3に到達したか否かを判定する。第3計測時間t3が第3の時間S3未満である場合(NOの場合)には、再び、ステップS30およびS60を繰り返す。場合によっては、検出値Tが温度閾値Tt以上となり、ステップS40に進む。たとえば、負荷上昇制御の初期状態において低い排ガス温度が時間の経過とともに上昇する場合が考えれれる。
【0057】
ステップS60において第3継続時間t3が第3の時間S3に到達した場合(YESの場合)には、コントローラ80は、排ガス温度の適切な上昇が得られずPMの除去が不能な状態であると判定し、報知指令を報知装置100に対して出力する(
図3に示すステップS70)。これにより、報知装置100は、オペレータに対して、酸化触媒44に付着したPMの除去が不能な状態である旨を報知すると共に、機体の操作やエンジン41の停止を行う旨の注意喚起を報知する。コントローラ80は、報知指令の出力後に、第2継続時間t2が第2の時間S2に到達しないまま上記負荷上昇制御を強制終了する(
図3に示すステップS50)。
【0058】
上述したように、本発明の作業機械の第1の実施の形態においては、エンジン41と、エンジン41の排ガス経路に配置されエンジン41の排ガス中に含まれる成分の酸化を促進する酸化触媒44と、エンジン41によって駆動される負荷装置としての油圧ポンプ51と、エンジン41を目標エンジン回転数に基づき制御するエンジン制御部42と、操作装置としての操作レバー装置64の操作に応じて機体2、3、4の動作を制御すると共にエンジン制御部42に対して目標エンジン回転数を出力するコントローラ80とを備えた作業機械としての油圧ショベル1が、操作装置としての操作レバー装置64の操作状態を検出する操作状態検出装置としての第2圧力検出装置62を更に備え、コントローラ80は、第2圧力検出装置62からの検出結果Pに基づき機体2、3、4の非操作状態が継続している時間(第1継続時間)t1が予め設定された第1の時間S1に到達したか否かを判定し、第1の時間S1に到達したと判定された場合に油圧ポンプ51の負荷を当該判定時よりも上昇させる負荷上昇制御を行うものである。
【0059】
この構成よれば、機体2、3、4の非操作状態が第1の時間S1継続するという酸化触媒44にPM(主にSOF)が付着すると想定される状況を見極めてから、負荷装置としての油圧ポンプ51の負荷を上昇させる制御によってエンジン41の排ガスの温度を上昇させるので、PMが酸化触媒44に過度に付着する前に酸化触媒44からPMを除去することができる。
【0060】
また、本実施の形態において、コントローラ80は、油圧ポンプ51の吐出圧力及び押しのけ容積の少なくとも一方を当該判定時(機体2、3、4の非操作状態が継続していると判定したとき)よりも増加させることで、上記負荷上昇制御を行うように構成されている。この構成によれば、コントローラ80の負荷上昇制御における制御対象が油圧システム50の構成であるので、エンジン41に掛かる負荷を上昇させることが容易である。
【0061】
さらに、本実施の形態においては、油圧ショベル1が排ガス経路における酸化触媒44よりも上流側に設置されエンジン41から排出された排ガスの温度を検出する排ガス温度検出装置48を更に備え、コントローラは、上記負荷上昇制御において、排ガス温度検出装置48の検出温度Tが所定の温度閾値Tt以上で継続している時間(第2継続時間)t2が予め設定された第2の時間S2に到達したか否かを判定し、所定の温度閾値Tt以上で継続している時間(第2継続時間)t2が第2の時間S2に到達したと判定された場合に負荷上昇制御を終了させる。この構成によれば、酸化触媒44に付着したPMを除去可能な温度が所定期間継続したことを確認してから負荷上昇制御を終了させるので、酸化触媒44に付着したPMを確実に除去することができる。
【0062】
また、本実施の形態においては、油圧ショベル1がコントローラ80らの報知指令に基づきオペレータに対して報知する報知装置100を更に備え、コントローラ80は、上記負荷上昇制御において、排ガス温度検出装置48の検出温度が所定の温度閾値Tt未満で継続している時間(第3継続時間)t3が予め設定された第3の時間S3に到達したか否かを判定し、所定の温度閾値Tt未満で継続している時間(第3継続時間)t3が第3の時間S3に到達したと判定された場合に、負荷上昇制御を終了させると共に、所定の温度閾値Tt以上で継続している時間(第2継続時間)t2が第2の時間S2に到達できずに負荷上昇制御が終了することをオペレータに対して報知する報知指令を報知装置100へ出力するように構成されている。この構成によれば、負荷上昇制御を実行しても酸化触媒44に付着したPMを除去できない状況をオペレータに対して注意喚起することができる。
【0063】
次に、本発明の作業機械の第2の実施の形態を
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は本発明の作業機械の第2の実施の形態における排ガス処理システム及び油圧システムを示す構成図である。
図5は
図4に示す本発明の作業機械の第2の実施の形態の一部を構成するコントローラによる負荷上昇制御の手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図4および
図5において、
図1~
図3に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0064】
本発明の作業機械の第2の実施の形態が第1の実施の形態に対して相違する点は、油圧ショベル1がハイブリット式であり発電電動系を有していること、およびコントローラ80Aが油圧システム50ではなく発電電動系を対象にして負荷上昇制御を行うことである。
【0065】
具体的には、
図4において、油圧ショベル1は、発電電動系として、エンジン41に接続された発電電動機71と、発電電動機71との間で電力の授受を行う蓄電装置72と、蓄電装置72の充放電を制御することで、発電電動機71の動作を制御する動力制御装置(以下、PCU(パワーコントロールユニット)という)73とを備えている。
【0066】
発電電動機71は、発電機動作及び電動機動作の両動作が可能なものである。すなわち、エンジン41によって駆動される負荷装置として機能して発電する発電機動作と、エンジン41及び油圧ポンプ51の駆動を補助(アシスト)する電動機動作とを行うことが可能である。発電電動機71が発生した発電電力は、PCU73を介して蓄電装置72に蓄電される。一方、エンジン41及び油圧ポンプ51の駆動を補助するときには、PCU73を介して蓄電装置72の電力の供給を受けて駆動する。発電電動機71には、発電電動機71の実回転数を検出する発電電動機回転数検出装置74が設けられている。発電電動機回転数検出装置74は、例えば、角速度センサにより構成されており、実発電電動機回転数の検出信号をPCU73へ出力する。
【0067】
蓄電装置72は、例えば、キャパシタやバッテリ等により構成され、PCU73を介して発電電動機71に電気的に接続されている。蓄電装置72は、発電電動機71の発電電力を充電し、又、充電された電力を発電電動機71に放電する。
【0068】
PCU73は、蓄電装置72と発電電動機71との間で直流と交流の変換、直流電力の降圧や昇圧等を行うものである。具体的には、発電電動機71の発電時には、発電電動機71からの交流の発電電力を直流電力に変換した後、直流電力を降圧して蓄電装置72に供給する。一方、発電電動機71を電動機として駆動させる場合には、蓄電装置72からの直流電力を昇圧した後、直流電力を交流の駆動電力に変換して発電電動機71に供給する。
【0069】
また、PCU73は、発電電動機71のトルクがコントローラ80Aからの目標トルクになるよう制御する。この場合、トルク制御は、発電電動機71を駆動するインバータ(図示せず)への指令電流を制御することにより行う。また、PCU73は、発電電動機71の実回転数がコントローラ80Aからの目標発電電動機回転数に一致するように、発電電動機71のトルクを発生させる回転数制御を行うことも可能である。
【0070】
コントローラ80Aは、油圧システム50の制御に加えて、PCU73を介して発電電動機71のトルク(吸収トルク又はアシストトルク)及び回転数を制御する。本実施の形態においては、目標エンジン回転数のエンジン制御部42への出力に加えて、目標トルクまたは目標発電電動機回転数をPCU73へ出力する。
【0071】
コントローラ80Aの記憶部91、非操作状態判定部92、および制御終了判定部94は、第1の実施の形態と同様な機能を有している。一方、コントローラ80Aの負荷制御部93Aは、非操作状態判定部92により機体の非操作状態が第1の時間S1継続していると判定された場合、油圧システム50の構成を制御せずに、PCU73を介して優先的に発電電動機71を制御することで、発電電動機71の負荷(動力)を当該判定時よりも上昇させる負荷上昇制御を行うものである。
【0072】
具体的には、負荷制御部93Aは、目標トルクをPCU73に対して出力することで、発電電動機71を発電機として動作させる。また、負荷制御部93Aは、当該判定時の目標エンジン回転数よりも小さい目標発電電動機回転数を設定してPCU73に対して出力することで、発電電動機71を発電機として動作させることも可能である。目標エンジン回転数と目標発電電動機回転数との偏差が大きいほど発電電動機71の負荷が大きくなる。
【0073】
ただし、蓄電装置72の充電残量が十分にある場合には、発電電動機71を発電機として動作させることができない場合がある。この場合、コントローラ80Aは、第1の実施の形態と同様に、油圧システム50を対象として負荷上昇制御を行うことが可能である。また、コントローラ80Aは、高い目標エンジン回転数を設定してエンジン制御部42を介してエンジン41の回転数を制御してエンジンの負荷を上昇させることも考えられる。
【0074】
次に、本発明の作業機械の第2の実施の形態を構成するコントローラによる負荷上昇制御の手順の一例について
図4及び
図5を用いて説明する。
【0075】
図4に示すコントローラ80Aは、まず、第2圧力検出装置62からの検出結果Pに基づき、機体の非操作状態(P≦Pt)が第1の時間S1継続しているか否かを判定する(
図5に示すステップS10)。この判定は、酸化触媒44にPM(主にSOF)が付着する状況にあるかを判定するものであり、第1の実施の形態の場合と同様なので、その説明を省略する。
【0076】
ステップS10においてYESの場合、コントローラ80Aは、酸化触媒44に付着していると想定されるPMを除去するために、PCU73を介して発電電動機71を発電機として動作させる負荷上昇制御を行う(
図5に示すステップS20A)。
【0077】
具体的には、コントローラ80Aの負荷制御部93Aが、目標トルクをPCU73に対して出力する。これにより、PCU73が、発電電動機71の吸収トルクがコントローラ80Aからの目標トルクになるように、発電電動機71を駆動するインバータ(図示せず)を制御する。これにより、エンジン41には、発電電動機71の吸収トルク分の負荷がさらに掛かり、エンジン41の排ガスの温度が上昇する。したがって、酸化触媒44にPMが過度に付着する前にPMを除去することができる。
【0078】
また、負荷制御部93Aは、機体の非操作状態が継続していると判定したときの目標エンジン回転数よりも低い目標発電電動機回転数をPCU73に対して出力することも可能である。これにより、PCU73は、発電電動機71の実回転数が負荷制御部93Aからの目標発電発電機回転数に一致するように発電電動機71を制御する。この場合、発電電動機71が目標エンジン回転数よりも低い目標発電電動機回転数の近傍にて回転するので、エンジン41も発電電動機71と共に目標発電電動機回転数の近傍にて回転する。一方で、エンジン41は、エンジン制御部42によって、エンジン41の実回転数が目標エンジン回転数に一致するように制御されている。このため、目標エンジン回転数と目標発電電動機回転数の偏差の分、エンジン41の実回転数を上昇させようとする制御を実行するので、エンジン出力を増加させる必要がある。換言すると、エンジン41に掛かる負荷が増加している。この場合も、排ガスの温度が上昇するので、PMが酸化触媒44に過度に付着する前にPMを除去することができる。
【0079】
発電電動機71を対象とする負荷上昇制御を開始した後、コントローラ80Aは、第1の実施の形態の場合と同様に、ステップS30~S40の上記負荷上昇制御の終了の判定を行う。場合によっては、第1の実施の形態の場合と同様に、ステップS30及びS60のPM除去が不能な状態の判定を行う。PM除去が不能な状態が継続してしまった場合、第1の実施の形態の場合と同様に、ステップS70の報知を行う。上記負荷上昇制御の終了(
図5に示すステップS50A)の際、コントローラ80Aの負荷制御部93Aは、上記負荷上昇制御の前の状態に戻すように発電電動機71を制御する。
【0080】
上述した本発明の作業機械の第2の実施の形態によれば、前述した第1の実施の形態と同様に、PMが酸化触媒44に過度に付着する前に酸化触媒44からPMを除去することができる。
【0081】
また、本実施の形態においては、負荷装置がエンジン41によって駆動される油圧ポンプ51と、エンジン41によって駆動される発電機とエンジン41をアシストする電動機との両動作が可能な発電電動機71とで構成され、コントローラ80は、発電電動機71を発電機として動作させて発電電動機71の負荷を当該判定時(機体2、3、4の非操作状態が継続していると判定したとき)よりも増加させることで、上記負荷上昇制御を行うように構成されている。この構成によれば、酸化触媒44に付着したPMを除去する際に、発電電動機71が発電機として動作して蓄電装置72に充電するので、油圧システムを制御対象とする第1の実施の形態と比較して、エネルギの損失を低減することができる。
【0082】
なお、本発明は本実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0083】
例えば、上述した第1および第2の実施の形態においては、後処理装置43を酸化触媒44と捕集フィルタ45とで構成した例を示した。しかし、後処理装置は、酸化触媒44および捕集フィルタ45に加えて、NOx浄化装置を備える構成が可能である。また、後処理装置を酸化触媒44とNOx浄化装置とで構成し、捕集フィルタ45を省略した構成も可能である。後処理装置は、少なくとも酸化触媒44を含むように構成すればよい。
【0084】
また、上述した実施の形態においては、操作レバー装置64の操作状態(操作量や操作方向)を操作レバー装置64が生成する操作パイロット圧によって検出する例を示した。しかし、操作装置としての操作レバー装置が電気式の場合には、操作レバー装置の操作状態を操作レバー装置から出力される電気信号(電圧)によって検出する。この場合、操作装置の操作状態を検出する操作状態検出装置として、第2圧力検出装置62に代わって、電気式の操作レバー装置(操作装置)が機能する。
【0085】
この構成では、コントローラ80、80Aは、
図3及び
図5に示すステップS10において、電気式の操作装置からの検出結果(電圧)に基づき、機体の非操作状態が第1の時間S1継続しているか否かを判定する。具体的には、非操作状態判定部92は、電気式の操作装置からの電圧値が記憶部91に記憶されている所定の電圧範囲内(すなわち、機体の非操作状態)で継続している第1継続時間t1を計測し、計測している第1継続時間t1が記憶部91に記憶されている第1の時間S1に到達したか否かにより判定する。電圧値が所定の電圧範囲外の機体が操作状態である場合、または、第1継続時間t1が第1の時間S1未満である場合、すなわち、NOの場合、再びステップS10を繰り返す。
【0086】
また、上述した実施の形態においては、操作装置の操作状態を検出する操作状態検出装置として、操作装置としての操作レバー装置64の生成する操作パイロット圧を検出する第2圧力検出装置62を用いた構成を例に挙げて説明した。しかし、操作状態検出装置として、操作装置としてのゲートロックレバー65の操作位置(ロック位置Lまたはロック解除位置U)を検出する位置検出装置66を用いる構成も可能である。位置検出装置66の検出した操作位置がロック位置Lにある場合には、操作レバー装置64を介した機体の操作が不能な状態となるので、機体の操作が行われていない非操作状態であるとみなすことが可能である。
【0087】
この構成では、コントローラ80、80Aは、
図3及び
図5に示すステップS10において、位置検出装置66からの検出結果(ロック位置Lまたはロック解除位置U)に基づき、機体の非操作状態が第1の時間S1継続しているか否かを判定する。具体的には、非操作状態判定部92は、位置検出装置66からの検出位置がロック位置L(すなわち、機体の非操作状態)で継続している第1継続時間t1を計測し、計測している第1継続時間t1が記憶部91に記憶されている第1の時間S1に到達したか否かにより判定する。検出位置がロック解除位置Uである場合、または、第1継続時間t1が第1の時間S1未満である場合、すなわち、NOの場合、再びステップS10を繰り返す。
【0088】
また、上述した第1の実施の形態においては、コントローラ80が油圧ポンプ51の負荷(動力)を上昇させる負荷上昇制御を行うことで、エンジン41の排ガス温度を上昇させてSOFを酸化触媒44から除去する例を説明した。また、上述した第2の実施の形態においては、コントローラ80Aが発電電動機71の負荷(動力)を上昇させる負荷上昇制御を行うことで、エンジン41の排ガス温度を上昇させてSOFを酸化触媒44から除去する例を説明した。それに対して、コントローラが、油圧ポンプ51や発電電動機71等の負荷装置の負荷(動力)を上昇させずに、エンジン制御部42へ出力する目標エンジン回転数のみを上昇させる負荷上昇制御を行うことで、エンジン41の排ガス温度を上昇させてSOFを酸化触媒44から除去する処理を行うことも可能である。
【0089】
この場合、コントローラは、
図3及び
図5に示すステップS10において操作状態検出装置としての第2圧力検出装置62からの検出結果P(操作パイロット圧)に基づき機体の非操作状態が第1の時間S1継続している(YES)と判定された場合に、油圧システム50や発電電動機71の制御を行うことなく、当該判定時の目標エンジン回転数よりも高い目標エンジン回転数を設定してエンジン制御部42へ出力する負荷上昇制御を行う。これにより、エンジン制御部42は、エンジン回転数検出装置47からのエンジン41の実回転数がコントローラからの当該判定時よりも高い目標エンジン回転数に一致するように、エンジン41の気筒に噴射される燃料噴射量を制御する。このため、燃料噴射量が増加してエンジン41の排ガス温度が上昇するので、SOFを酸化触媒44から除去することが可能となる。
【符号の説明】
【0090】
1…油圧ショベル(作業機械)、 2…下部走行体(機体)、 4…上部旋回体(機体)、 3…フロント作業機(機体)、 41…エンジン、 42…エンジン制御部、 44…酸化触媒、 46…排気管(排ガス経路)、 48…排ガス温度検出装置(温度検出装置)、 50…油圧システム、 51…油圧ポンプ(負荷装置)、 62…第2圧力検出装置(操作状態検出装置)、 64…操作レバー装置(操作装置)、 65…ゲートロックレバー(操作装置)、 66…位置検出装置(操作状態検出装置)、 71…発電電動機(負荷装置)、 80、80A…コントローラ、 100…報知装置