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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】建設機械用吊ブラケット
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
E02F9/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019196711
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021070938
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】奥田 一晶
(72)【発明者】
【氏名】西尾 一馬
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-147463(JP,A)
【文献】特開2006-112121(JP,A)
【文献】実開平06-040061(JP,U)
【文献】特開2009-203682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00- 9/16
B62D 41/00-67/00
B66C 1/00- 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体、前記走行体の上部に設けた旋回体、及び前記旋回体に取り付けられた作業機を備えた建設機械の吊り作業に用いるアタッチメントであって前記走行体のトラックフレームに装着する建設機械用吊ブラケットにおいて、
ブラケット本体と、回転軸部を介して前記ブラケット本体に回動可能に連結された把手とを含んで構成されており、
前記ブラケット本体が、前記トラックフレームとの連結ピンを通す上ピン穴及び下ピン穴と、シャックルを装着する吊ピン穴とを有し、前記トラックフレームに装着した状態で、上面が前記上ピン穴から前記吊ピン穴に向かって下る斜面となる形状をしており、
前記把手の回転軸部が、前記ブラケット本体の重心と前記上面との間に位置していることを特徴とする建設機械用吊ブラケット。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械用吊ブラケットにおいて、前記把手が、環状に形成されており、前記吊ピン穴に装着したシャックルに被せて前記シャックルの倒れを制限するストッパを兼ねることを特徴とする建設機械用吊ブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械をクレーン等の重機で吊る際に建設機械に装着する建設機械用吊ブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
クローラ式の走行体と、走行体の上部に旋回自在に設置された旋回体と、旋回体の前部に設置された作業機を含んで構成されてた油圧ショベル等の建設機械がある。この種の建設機械には、走行体のフレームであるトラックフレームの左右に複数の吊ブラケットを備えたものがある(特許文献1)。この構成によれば、吊ブラケットにシャックルを介してワイヤを掛け、例えば現場への搬入のためにクレーンで建設機械を丸吊りすることができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-203682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、吊ブラケットをトラックフレームと一体に構成する場合、トラックフレームを車幅内に収める必要があることから、建設機械の吊り上げ時に吊ブラケットに掛けたワイヤやシャックルが例えば履帯に接触し易い。そこで、吊ブラケットをトラックフレームとは別部材とし、建設機械を吊り上げる際に吊作業用のアタッチメントとしてトラックフレームに装着する構成とすることができる。この場合、吊ブラケットを車幅から突き出させ、ワイヤやシャックルと履帯とを接触し難くする、或いはワイヤ等と履帯との接触圧力を弱めることができる。しかし、吊ブラケットは建設機械の吊り荷重を十分に支持する強度を要し必然的に相応の重量物となるため、トラックフレームへの装着作業の際の作業者の負担を考慮する必要がある。
【0005】
本発明の目的は、トラックフレームへの装着作業の負担を抑えることができる建設機械用吊ブラケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、走行体、前記走行体の上部に設けた旋回体、及び前記旋回体に取り付けられた作業機を備えた建設機械の吊り作業に用いるアタッチメントであって前記走行体のトラックフレームに装着する建設機械用吊ブラケットにおいて、ブラケット本体と、回転軸部を介して前記ブラケット本体に回動可能に連結された把手とを含んで構成されており、前記ブラケット本体が、前記トラックフレームとの連結ピンを通す上ピン穴及び下ピン穴と、シャックルを装着する吊ピン穴とを有し、前記トラックフレームに装着した状態で、上面が前記上ピン穴から前記吊ピン穴に向かって下る斜面となる形状をしており、前記把手の回転軸部が、前記ブラケット本体の重心と前記上面との間に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、トラックフレームへの建設機械用吊ブラケットの装着作業の負担を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る建設機械用吊ブラケットを適用する建設機械の一例の側面図
図2】本発明の一実施形態に係る建設機械用吊ブラケットの側面図
図3】本発明の一実施形態に係る建設機械用吊ブラケットの側面図
図4図3中の矢印IV方向から見た建設機械用吊ブラケットの正面図
図5図3中の矢印V方向から見た建設機械用吊ブラケットの端部の上面図
図6】本発明の一実施形態に係る建設機械用吊ブラケットを作業者が持ち運んで油圧ショベルに装着する作業の説明図
図7】本発明の一実施形態に係る建設機械用吊ブラケットを油圧ショベルに装着した状態を表す図
図8】比較例に係る建設機械用吊ブラケットを作業者が持ち運んで油圧ショベルに装着する作業の説明図
図9】比較例に係る建設機械用吊ブラケットを油圧ショベルに装着した状態を表す図
図10】比較例に係る建設機械用吊ブラケットを用いて油圧ショベルを吊り上げる際に必要な作業の説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
-建設機械-
図1は本発明の一実施形態に係る建設機械用吊ブラケットを適用する建設機械の一例の側面図である。以降、運転席に着いた作業者の前側(図1中の左側)を旋回体の前側とする。なお、同図においては作業機が図示省略してある。油圧ショベル以外の他の建設機械にも本実施形態に係る建設機械用吊ブラケット(以下、吊ブラケットと略称する)は適用可能であるが、図1では代表例として油圧ショベルを図示している。これらの図に示した油圧ショベルは、走行体1、旋回体2及び作業機(不図示)を備えている。
【0011】
走行体1は油圧ショベルの自力走行を可能とする基礎構造体でクローラ式であり、トラックフレーム4、アイドラ5、走行モータ(不図示)、スプロケット7及び履帯(クローラ)8等を含んで構成されている。トラックフレーム4はセンタフレーム4a及びその左右両側に連結した平行な一対のサイドフレーム4bにより上方から見てH型に形成されている。左右のサイドフレーム4bの一端側にはアイドラ5が、他端側にはスプロケット7がそれぞれ回転自在に支持されている。スプロケット7の回転軸には、走行モータ(不図示)の出力軸が減速機6を介して連結されている。走行モータは油圧モータである。アイドラ5とスプロケット7の間には無限軌道の履帯8が掛け回されていて、履帯8をスプロケット7で駆動することによって走行体1が自走する。サイドフレーム4bの上下には履帯8を内周側から支持する複数の転輪9が回転自在に支持されている。
【0012】
旋回体2は、旋回フレーム10、運転室11、カウンタウェイト12、機械室(エンジン室)13等を含んで構成されている。旋回フレーム10は旋回体2のベースフレームであり、旋回輪14を介してトラックフレーム4のセンタフレーム4aの上部に設けられている。旋回フレーム10には旋回輪14の付近に旋回モータ(不図示)が搭載されており、旋回モータの出力軸が旋回輪14に設けた歯車と噛み合うことで、走行体1に対して旋回体2が旋回する。旋回モータには油圧モータ及び電動モータの少なくとも一方を用いることもできる。
【0013】
旋回フレーム10の前部には、作業機(不図示)の左右方向の一方側(本例では左側)に位置するように運転室11が設置されている。旋回フレーム10における運転室11の後側には、ボンネットカバー13aに覆われた機械室13が設置されている。旋回フレーム10の後端にはカウンタウェイト12が取り付けられている。機械室13には、原動機、原動機で駆動される油圧ポンプ、油圧ポンプから油圧アクチュエータ(ブームシリンダ等)への圧油を制御するコントロールバルブ等の油圧制御装置、熱交換器類、タンク類、各種配管や配線等が収容されている。原動機には電動機を用いることもあるが、エンジン(内燃機関)を用いる場合が多い。また、本実施形態の油圧ショベルは、分解せずに輸送できる(一般道路の輸送制限寸法に納められる)中型機又はそれよりも車格の小さな小型機である。
【0014】
作業機(不図示)は図示省略してあるが、作業腕及びアタッチメント(バケット等の作業具)を含む一般的な多関節型のフロント作業装置である。作業腕は、ブーム、アーム、ブームシリンダ、アームシリンダ及びアタッチメントシリンダを含んで構成されている。ブームは旋回体2の前部に上下方向に回動可能に連結され、アームはブームの先端に、アタッチメントはアームの先端に、それぞれ回動可能に連結されている。ブームシリンダによりブームが、アームシリンダによりアームが、アタッチメントシリンダにより作業具が、それぞれ同一鉛直面内で回動する。ブームシリンダ、アームシリンダ及びアタッチメントシリンダはいずれも油圧シリンダである。
【0015】
-吊ブラケット-
ここで、トラックフレーム4の左右のサイドフレーム4bの車幅方向の外側を向いた側面には、前後の2カ所にブラケット4cが設けられている。ブラケット4cは車幅内(履帯8の車幅方向外側の端部よりもセンタフレーム4a側)に収まっている(図6)。ブラケット4cには上下に並んだ2つのピン穴が設けられている。本実施形態に係る吊ブラケット20はアタッチメントであり、必要時(例えば油圧ショベルの丸吊り作業時)にブラケット4cに対して上下2本の連結ピンP1,P2により連結されて油圧ショベルのトラックフレーム4に装着される。なお、本実施形態でいう「丸吊り」とは、例えば作業機を取り外す等といった分解作業をすることなく、そのまま運用できる状態の油圧ショベルをクレーン等の重機で吊り上げて運搬することを意味する。
【0016】
図2及び図3は吊ブラケットの側面図である。図2は作業者による持ち運び時の姿勢、図3は油圧ショベルに装着された状態時の姿勢を表している。図4図3中の矢印IV方向から見た吊ブラケットの正面図、図5図3中の矢印V方向から見た吊ブラケットの端部の上面図である。図6は作業者が吊ブラケットを持ち運んで油圧ショベルに装着する作業の説明図、図7は吊ブラケットを油圧ショベルに装着した状態を表す図である。
【0017】
図1図7に示したように、吊ブラケット20は、ブラケット本体21及び把手22を含んで構成されている。ブラケット本体21は三角形状の厚手の鋼板で形成されており、このブラケット本体21には、上ピン穴21a、下ピン穴21b、吊ピン穴21cが貫通して設けられている。本実施形態においては、3つのボス23がブラケット本体21に貫通して固定されており、これらボス23の貫通穴が上ピン穴21a、下ピン穴21b、吊ピン穴21cを形成する構成としてある。吊ピン穴21cはシャックルS(図3)のシャックルピンS2を挿し込むピン穴である。上ピン穴21aは油圧ショベルのトラックフレーム4のブラケット4cの上側のピン穴に対応し、下ピン穴21bはそのブラケット4cの下側のピン穴に対応する。上ピン穴21aと下ピン穴21bの位置をブラケット4cの上下のピン穴に合わせ、上ピン穴21a及び下ピン穴21bに連結ピンP1,P2(図6)を通し抜け止めすることで、油圧ショベルに吊ブラケット20が装着され強固に固定される。トラックフレーム4に吊ブラケット20を装着した状態においては、車幅外(履帯8よりも左右方向の外側)に吊ピン穴21cが位置する。
【0018】
ここで、ブラケット本体21は、トラックフレーム4に装着した状態(図3に示した状態)で上面21sが上ピン穴21aから吊ピン穴21cに向かって下る斜面となる形状をしている。本実施形態では、上ピン穴21a、下ピン穴21b及び吊ピン穴21cの各中心を相互に結んで得られる三角形が概ね直角二等辺三角形を形成するように、上ピン穴21a、下ピン穴21b及び吊ピン穴21cの位置関係を設定した場合を例示している(図3)。従って、吊ブラケット20を油圧ショベルに装着した状態において、下ピン穴21bに対して上ピン穴21aが同一鉛直面上に、吊ピン穴21cが同一水平面上に位置し、ブラケット本体21の上面21sが45度程度傾斜する。図3に示したように、上ピン穴21a及び吊ピン穴21cの中心間距離L1は、上ピン穴21a及び下ピン穴21bの中心間距離L2、並びに下ピン穴21b及び吊ピン穴21cの中心間距離L3よりも長い。
【0019】
把手22は、取付金具26及びボルト24を介してブラケット本体21に回動可能に連結されている。本実施形態では、把手22は取付金具26に溶接・支持されており、取付金具26がボルト24及びナット25でブラケット本体21に固定されることで、把手22がブラケット本体21に連結された構成を例示している。把手22の回転軸部となるボルト24は、ブラケット本体21の重心G(質量中心)とブラケット本体21の上面21sとの間に位置している(図2)。本実施形態では、ボルト24の中心と重心Gとを通る直線Lgがブラケット本体21の上面21sに直交する構成を例示している。
【0020】
また、把手22は環状に形成されており、以下に説明する通り、吊ピン穴21cに装着したシャックルSに被せてシャックルSの倒れを制限するストッパを兼ねている(図3)。環状の把手22のグリップ部22bは、本実施形態ではボルト24と平行にしてある。把手22の取付金具26に対する溶接部22aとグリップ部22bとを繋ぐ両側のアーム部22cの内法W1(図5)は、使用するシャックルSのU字金具S1の外法W2(図5)よりも広く設定されている。また、回転軸部であるボルト24の中心から把手22のグリップ部22bまでの最短の距離La(図3)は、同図に示した距離Lbよりも短く設定してあり(La<Lb)、把手22が上面21sに掛かって回動範囲が制限されるように構成されている。距離Lbは、ブラケット本体21における吊ピン穴21cのあるコーナーの外周面からボルト24の中心までの最大距離である。加えて、距離Laは、シャックルピンS2の中心とブラケット本体21の上面21sとの最短距離Lc(図3)にシャックルSの先端部の直径Ld(図3)を加えた値よりも長く設定してある。これにより、ブラケット本体21の上面21sと把手22のグリップ部22bとの間にシャックルSを通すことができる。把手22に通してシャックルSをブラケット本体21に連結すると、La>Lbであるためグリップ部22bがブラケット本体21の上面21sに掛かって止まる。これにより把手22がストッパとして機能し、シャックルSが把手22に抱え込まれて上方に向かって起立した姿勢で保持される(図3)。
【0021】
-玉掛け方法-
吊ブラケット20を用いた玉掛け作業の手順を説明する。まず、作業者は把手22のグリップ部22bを握って吊ブラケット20を持ち上げ、油圧ショベルの傍らに持ち運ぶ(図6)。前述した通り把手22の回転軸部であるボルト24がブラケット本体21の重心Gと上面21sの間に位置しているため、把手22を持って持ち上げた状態ではブラケット本体21は上面21sが概ね水平な姿勢となる(図6)。図6のように上ピン穴21aを前にして吊ブラケット20を運ぶと、上面21sが概ね水平な姿勢では下ピン穴21bに先行して上ピン穴21aが前進する。
【0022】
その後、作業者はブラケット本体21の上ピン穴21aがトラックフレーム4のブラケット4cの上側のピン穴と同軸上に重なるように吊ブラケット20の位置を調整し、ブラケット4cを介して上ピン穴21aに連結ピンP1を挿し込む。続いて、上ピン穴21aを支点にトラックフレーム4に対して吊ブラケット20を吊りピン穴21cが下降する方向に傾斜させ、下ピン穴21bの位置をブラケット4cの下側のピン穴に合わせてブラケット4cを介して下ピン穴21bに連結ピンP2を挿し込む。上下の連結ピンP1,P2を挿し込んだら、これら連結ピンP1,P2にナットを装着して吊ブラケット20をトラックフレーム4に強固に固定する。以上の手順を繰り返し、トラックフレーム4の左右両側の前後に計4つの吊ブラケット20を装着する。
【0023】
次に、クレーン(不図示)から吊り下ろされたワイヤWにシャックルSのU字金具S1を掛け、U字金具S1を履帯8側(上ピン穴21a側)から把手22に通す。把手22にU字金具S1を通した状態でU字金具S1のピン穴を吊ピン穴21cに合わせ、シャックルピンS2をU字金具S1と吊ピン穴21cに挿し込んで抜け止めし、吊ブラケット20にシャックルSを装着する。これによりシャックルSが把手22に抱えられて上向きに起立した姿勢で保持される(図7)。他の3つの吊ブラケット20に対しても同様にシャックルSを装着して玉掛け作業が完了したら、周囲の安全を確保した上でクレーンのオペレータに合図を送る。これにより油圧ショベルが吊り上げられる。クレーンのオペレータ自身が玉掛け作業を行う場合もある。
【0024】
-比較例-
図8は比較例に係る建設機械用吊ブラケットを作業者が持ち運んで油圧ショベルに装着する作業の説明図、図9は比較例に係る建設機械用吊ブラケットを油圧ショベルに装着した状態を表す図である。これらの図は図6及び図7に対応している。比較例に係る吊ブラケットXは本実施形態と同じようにトラックフレーム4に対して脱着するアタッチメントであり、上ピン穴H1、下ピン穴H2、吊ピン穴H3を有している。上ピン穴H1及び下ピン穴H2の中心間距離は本実施形態と同様にL2(図3)である。但し、上ピン穴H1及び吊ピン穴H3が吊ブラケットXの上面Xsに沿って設けられており、その上面Xsに固定式の把手Yが設けられている。把手Yを持つと上ピン穴H1と下ピン穴H2が上下に並んだ姿勢で持ち上がる。上面Xsの長さ(図8中の左右方向の長さ)は吊ブラケットXの重量を考えるとあまり長くはできず、上ピン穴H1と吊ピン穴H3の中心間距離は上ピン穴H1と下ピン穴H2の中心間距離L2と同程度であるとする。この場合、吊ブラケットXは本実施形態の吊ブラケット20とサイズ及び重量で同程度である。
【0025】
比較例の吊ブラケットXでは上面Xsの長さが制限されるため、把手Yに対して上ピン穴H1の位置が近い。そのため、トラックフレーム4のブラケット4cの上側のピン穴と吊ブラケットXの上ピン穴H1の位置合わせをする際、また連結ピンP1を挿し込む際に、作業者は履帯8を避けながら無理な姿勢で作業しなければならない。また、トラックフレーム4に取り付けた吊ブラケットXに連結したシャックルSは自立しないため、ワイヤWにより吊り上げられる前は下向きになってしまい(図9)、油圧ショベルの吊り上げ時にはシャックルSが上向き姿勢で安定するまで作業者がワイヤWを支えていなければならない(図10)。従って、クレーンのオペレータ以外にワイヤWを支持する作業者が複数人必要になる。
【0026】
-効果-
(1)本実施形態の吊ブラケット20の場合、トラックフレーム4に装着した状態で上面21sが上ピン穴21aから吊ピン穴21cに向かって下る斜面となるようにブラケット本体21が形成されている。加えて、把手22が回動式であり、把手22の回転軸部であるボルト24がブラケット本体21の重心Gと上面21sとの間に位置している。そのため、比較例の吊ブラケットXの上面Xsに対して本実施形態の吊ブラケット20の上面21sを長く確保することができる(具体的にはL1-L2だけ比較例に対して長くすることができる)。サイズや重量が比較例と同程度であれば、把手22を用いて吊ブラケット20を持ち上げた状態における把手22から上ピン穴21aまでの距離は比較例よりも長くなる。これにより、把手22と上ピン穴21aとの距離を稼ぐことができ、トラックフレーム4のブラケット4cに対して上ピン穴21aの位置を合わせる際、また連結ピンP1の挿入の際の作業者の負担を軽減することができる。よって、トラックフレーム4への吊ブラケット20の装着作業の負担を抑えることができる。
【0027】
なお、吊ブラケット20は油圧ショベルをトレーラの荷台に乗せて固定する際にワイヤやチェーン等を掛けるために利用することもできる。また、吊ブラケット20を装着した状態では車幅外に吊ピン穴21cが位置するので、吊り上げ時にワイヤWと履帯8との干渉が避けられる(又はワイヤWと履帯8との接触圧力が抑えられる)。
【0028】
(2)加えて、油圧ショベルに装着した吊ブラケット20に対し、回動式の把手22に通した状態でシャックルSを取り付けることで、ワイヤWが弛んだ状態でも把手22がストッパとして機能してシャックルSを上向きの姿勢で保持することができる。これにより図10で説明したようなワイヤWを支持する作業を省略できる。油圧ショベルの吊り上げ時にワイヤWを支持する作業者が不要になるため、油圧ショベルの吊り上げ作業に最低必要な人数を少なくすることができる。上記効果(1)と合わせ、トラックフレーム4への吊ブラケット20の装着、玉掛けといった一連の作業の負担をより軽減することができる。
【符号の説明】
【0029】
1…走行体、2…旋回体、4…トラックフレーム、20…建設機械用吊ブラケット、21…ブラケット本体、21a…上ピン穴、21b…下ピン穴、21c…吊ピン穴、21s…上面、22…把手、24…ボルト(回転軸部)、G…重心、P1,P2…連結ピン、S…シャックル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10