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  • 特許-アルミニウム製フィン材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】アルミニウム製フィン材
(51)【国際特許分類】
   F28F 13/18 20060101AFI20221213BHJP
   F28F 19/04 20060101ALI20221213BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20221213BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20221213BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20221213BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20221213BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20221213BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
F28F13/18 B
F28F13/18 Z
F28F19/04 Z
F28F21/08 A
C23C26/00 A
C23C28/00 Z
B32B15/08 E
B32B15/20
B32B27/26
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019227640
(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公開番号】P2021096037
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】角田 亮介
(72)【発明者】
【氏名】館山 慶太
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-014889(JP,A)
【文献】特開平11-131254(JP,A)
【文献】国際公開第2018/186497(WO,A1)
【文献】特開2000-191419(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02918960(EP,A1)
【文献】特許第2520308(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 13/18
F28F 19/04
F28F 21/08
C23C 26/00
C23C 28/00
B32B 15/08
B32B 15/20
B32B 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム板と、前記アルミニウム板上に形成された親水性皮膜層と、をこの順に備え、
前記親水性皮膜層は、重合体又は共重合体である樹脂Aと、Zr系架橋剤と、重合体又は共重合体である樹脂Bと、を含む樹脂組成物からなり、
前記樹脂Aの重合体又は共重合体は、少なくとも、スルホン酸基、スルホン酸のアルカリ金属塩基、及びスルホン酸のアンモニウム塩基からなる群より選ばれる少なくとも一種の基を有する単量体から構成され
前記樹脂Bの重合体又は共重合体は、少なくとも、カルボキシル基を有する単量体から構成され、
前記親水性皮膜層における前記Zr系架橋剤の含有量が0.05~6.0質量%である、アルミニウム製フィン材。
【請求項2】
前記樹脂組成物における前記樹脂A:前記樹脂Bで表される含有量の割合が、質量比で20:80~80:20である、請求項に記載のアルミニウム製フィン材。
【請求項3】
前記アルミニウム板と前記親水性皮膜層との間に耐食性皮膜層をさらに備え、前記耐食性皮膜層の表面上に前記親水性皮膜層が形成された、請求項1又は2に記載のアルミニウム製フィン材。
【請求項4】
熱交換器に用いられる、請求項1~のいずれか1項に記載のアルミニウム製フィン材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム製フィン材に関し、特に、空調機等の熱交換器に好適に用いられるアルミニウム製フィン材に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器は、ルームエアコン、パッケージエアコン、冷凍ショーケース、冷蔵庫、オイルクーラ、ラジエータなどの様々な分野の製品に用いられている。熱交換器のフィンの材料としては、熱伝導性、加工性、耐食性などに優れるアルミニウムやアルミニウム合金が一般的である。プレートフィン式やプレートアンドチューブ式の熱交換器は、フィンが狭い間隔で並列した構造を有している。
【0003】
熱交換器のフィンは、表面温度が露点以下になると結露水が付着した状態になる。フィンの表面の親水性が低い場合には、付着した結露水の接触角が大きくなるため、水飛びと呼ばれる生活環境中に飛散が生ずる。また、かかる結露水が合わさって大きくなると、隣接するフィン間にブリッジを形成し、フィン間の通風路を閉塞し、通風抵抗が増大する。
【0004】
このような水飛びの防止や通風抵抗の低減を目的として、フィンの表面に親水性皮膜を塗布、形成する技術が提案されている。このような親水性皮膜の例として、例えば特許文献1には、特定組成のカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩及び/又はカリウム塩と、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩と、N-メチロールアクリルアミドとからなる成分に対して、ポリアクリル酸と、ジルコニウム化合物とを特定量含有することを特徴とする親水性表面処理剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2520308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、長年熱交換器を作動させると、親水性皮膜表面への水分の接触により、親水性皮膜を構成する成分が少なからず水分中に溶出してしまう。そのため、フィン表面の親水性を長時間維持することが難しい。この一因として、大気中に浮遊している揮発性有機化合物(VOC)の親水性皮膜表面への付着が挙げられる。
親水性皮膜の親水性が低下すると、フィン間にブリッジした水による通風抵抗の増大や、フィン表面に付着した結露水の水飛びが生じ得る。
【0007】
本発明は、上記状況を鑑みてなされたものであり、親水性が長期間維持されつつ、フィン表面への揮発性有機化合物の付着に伴う親水性の低下が抑制された親水性皮膜を備えるアルミニウム製フィン材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の[1]~[5]に係るものである。
[1] アルミニウム板と、前記アルミニウム板上に形成された親水性皮膜層と、をこの順に備え、前記親水性皮膜層は、重合体又は共重合体である樹脂Aと、Zr系架橋剤と、を含む樹脂組成物からなり、前記樹脂Aの重合体又は共重合体は、少なくとも、スルホン酸基、スルホン酸のアルカリ金属塩基、及びスルホン酸のアンモニウム塩基からなる群より選ばれる少なくとも一種の基を有する単量体から構成される、アルミニウム製フィン材。
[2] 前記樹脂組成物が、さらに重合体又は共重合体である樹脂Bを含み、前記樹脂Bの重合体又は共重合体は、少なくとも、カルボキシル基を有する単量体から構成される、前記[1]に記載のアルミニウム製フィン材。
[3] 前記樹脂組成物における前記樹脂A:前記樹脂Bで表される含有量の割合が、質量比で20:80~80:20である、前記[2]に記載のアルミニウム製フィン材。
[4] 前記親水性皮膜層における前記Zr系架橋剤の含有量が0.05~6.0質量%である、前記[1]~[3]のいずれか1に記載のアルミニウム製フィン材。
[5] 前記アルミニウム板と前記親水性皮膜層との間に耐食性皮膜層をさらに備え、前記耐食性皮膜層の表面上に前記親水性皮膜層が形成された、前記[1]~[4]のいずれか1に記載のアルミニウム製フィン材。
[6] 熱交換器に用いられる、前記[1]~[5]のいずれか1に記載のアルミニウム製フィン材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、親水性が長期間維持された親水持続性(耐久性)を有しつつ、親水性皮膜層表面への揮発性有機化合物の付着に伴う親水性の低下が抑制される。これにより、アルミニウム製フィン材の通風抵抗の小ささと、水飛び抑制という効果を長期間維持することができる。そのため、かかるアルミニウム製フィン材が熱交換器等に用いられた場合には、熱交換器そのものの長寿命化も期待される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、アルミニウム製フィン材の構成の一態様を示す模式断面図である。
図2図2は、アルミニウム製フィン材の構成の一態様を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るアルミニウム製フィン材を実施するための形態について、詳細に説明する。なお数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0012】
<アルミニウム製フィン材>
本実施形態に係るアルミニウム製フィン材10は、図1に示すように、アルミニウム板1と、アルミニウム板1上に親水性皮膜層4と、をこの順に備えるものである。また、アルミニウム板1と親水性皮膜層4との間に耐食性皮膜層3を備え、耐食性皮膜層3の表面上に前記親水性皮膜層4が形成されることが好ましい。
前記親水性皮膜層4は、重合体又は共重合体である樹脂Aと、Zr系架橋剤と、を含む樹脂組成物からなる。ここで、前記樹脂Aの重合体又は共重合体は、少なくとも、スルホン酸基、スルホン酸のアルカリ金属塩基、及びスルホン酸のアンモニウム塩基からなる群より選ばれる少なくとも一種の基を有する単量体から構成される。
また、アルミニウム製フィン材は、アルミニウム板と耐食性皮膜層との間に、必要に応じて下地処理層2を備えていてもよい。また、親水性皮膜層4の表面に、潤滑性皮膜層5をさらに備えていてもよい。
【0013】
(親水性皮膜層)
親水性皮膜層4を構成する樹脂組成物は、樹脂A及びZr系架橋剤を含む。親水性皮膜層は、親水性皮膜層の親水性を長期にわたりより良好に維持できることから、さらに、樹脂Bを含むことが好ましい。
ここで、樹脂Aは、少なくとも、スルホン酸基、スルホン酸のアルカリ金属塩基、及びスルホン酸のアンモニウム塩基からなる群より選ばれる少なくとも一種の基(以下、単に「スルホン酸基など」と称することがある。)を有する単量体から構成される、重合体又は共重合体である。樹脂Bは、少なくとも、カルボキシル基を有する単量体から構成される、重合体又は共重合体である。
【0014】
樹脂組成物に樹脂Aを含むことにより、樹脂組成物に親水性の機能を付与することができる。
樹脂Aは、1種の単量体のみからなる重合体(ホモポリマー)であっても、2種以上の単量体からなる共重合体であってもよい。共重合体である場合には、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体等、単量体の配列方法には特に限定されない。
【0015】
樹脂Aが重合体である場合には、スルホン酸基、スルホン酸のアルカリ金属塩基、及びスルホン酸のアンモニウム塩基からなる群より選ばれる少なくとも一種の基を有する1種の単量体からなる重合体である。また、樹脂Aが共重合体である場合には、かかる共重合体を構成する単量体のうち1つ以上が、スルホン酸基、スルホン酸のアルカリ金属塩基、及びスルホン酸のアンモニウム塩基からなる群より選ばれる少なくとも一種の基を有する単量体であればよい。
【0016】
樹脂組成物には、樹脂Aとして、これら重合体及び共重合体からなる群より選ばれる1種のみが含まれていても、2種以上が含まれていてもよい。2種以上が含まれる場合には、親水性皮膜層又は樹脂組成物における樹脂Aの含有量とは、それら重合体及び共重合体の合計の含有量を意味する。
【0017】
樹脂Aとして、具体的には、スルホン酸基を有する単量体のみからなる重合体、スルホン酸のアルカリ金属塩基を有する単量体のみからなる重合体、スルホン酸のアンモニウム塩基を有する単量体のみからなる重合体、スルホン酸基を有する単量体を含む共重合体、スルホン酸のアルカリ金属塩基を有する単量体を含む共重合体、スルホン酸のアンモニウム塩基を有する単量体を含む共重合体が挙げられる。
【0018】
樹脂Aを構成する単量体は、スルホン酸基、スルホン酸のアルカリ金属塩基又はスルホン酸のアンモニウム塩基を有していれば、主鎖の構造については特に限定されない。スルホン酸のアルカリ金属塩基としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などを形成している基が挙げられる。
【0019】
樹脂Aを構成する単量体は、主鎖を構成する部分の構造がエチレン性の不飽和結合を有することが好ましい。このような単量体の具体例としては、スルホン酸基などを有する、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、アクリルアミド誘導体、メタアクリルアミド誘導体、ビニル誘導体、スチレン誘導体などが挙げられる。
【0020】
より具体的には、樹脂Aは、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルスルホン酸塩、アクリル酸-ビニルスルホン酸共重合体が好ましい。このような樹脂であると、親水性が高く、また、樹脂組成物が樹脂Bを含む場合に、樹脂Bとの相溶性も良好なものとなる。
樹脂Aとしては、具体的には、日本触媒製「アクアリック(登録商標)GL」、東亜合成製「ATBS(登録商標)」、旭化成ファインケム製「VSA-H(商品名)」等を用いることができる。
【0021】
樹脂組成物は、上記樹脂Aの他、少なくとも、カルボキシル基を有する単量体から構成される、重合体又は共重合体である樹脂Bを含むことが、親水性皮膜層の親水性をより長期間にわたり発現でき、耐久性に優れることから好ましい。
樹脂Bは、1種の単量体のみからなる重合体(ホモポリマー)であっても、2種以上の単量体からなる共重合体であってもよい。共重合体である場合には、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体等、単量体の配列方法には特に限定されない。
【0022】
樹脂Bが重合体である場合には、カルボキシル基を有する1種の単量体からなる重合体である。また、樹脂Bが共重合体である場合には、かかる共重合体を構成する単量体のうち1つ以上が、カルボキシル基を有する単量体であればよい。
【0023】
樹脂組成物には、樹脂Bとして、これら重合体及び共重合体からなる群より選ばれる1種のみが含まれていても、2種以上が含まれていてもよい。2種以上が含まれる場合には、親水性皮膜層又は樹脂組成物における樹脂Bの含有量とは、それら重合体及び共重合体の合計の含有量を意味する。
【0024】
樹脂Bとして、具体的には、カルボキシル基を有する単量体のみからなる重合体、カルボキシル基を有する単量体を含む共重合体が挙げられる。
樹脂Bを構成する単量体は、カルボキシル基を有していれば、主鎖の構造については特に限定されない。
【0025】
樹脂Bを構成する単量体は、主鎖を構成する部分の構造がエチレン性の不飽和結合を有することが好ましい。このような単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシル基を有する、アクリルアミド誘導体、ビニル誘導体、スチレン誘導体などが挙げられる。
【0026】
より具体的には、樹脂Bは、耐食性皮膜層における樹脂と同様の樹脂を用いると、親水性皮膜層の皮膜強度や、耐食性皮膜層と親水性皮膜層との密着性をより高くすることができるため好ましく、そのような樹脂として、例えばアクリル酸系樹脂が挙げられる。
【0027】
樹脂組成物における樹脂Aと樹脂Bとの割合は、塗装性、作業性、皮膜の物性などを勘案して、適宜の比で混合することができる。但し、親水性皮膜層の親水性を十分に確保する観点からは、固形分換算の質量比で、樹脂A:樹脂B=20:80~80:20とすることが好ましく、30:70~80:20とすることがより好ましい。なお、樹脂組成物における樹脂Aと樹脂Bとの割合とは、親水性皮膜層における樹脂Aと樹脂Bとの割合と同じである。
【0028】
樹脂組成物には、さらにZr系架橋剤を含む。Zr系架橋剤を含むことにより、樹脂Aによる親水性を長期間維持でき、親水持続性が良好となる。さらには、親水性皮膜層表面への揮発性有機化合物の付着に伴う親水性の低下をも抑制することができ、良好な耐汚染性を実現することができる。
【0029】
Zr系架橋剤は、Zrを含み、架橋剤として作用する化合物であればよく、例えば、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、ジルコニウムフッ化水素酸又はその塩等が挙げられる。
Zr系架橋剤を用いることにより、従来のオキサゾリン系架橋剤等とは異なり、樹脂Aによる親水性や、樹脂Bによる親水性の効果を長期間持続でき、さらには、親水性皮膜層表面への揮発性有機化合物の付着を良好に防止することができる。
【0030】
親水性皮膜層におけるZr系架橋剤の含有量は、親水性皮膜層表面への揮発性有機化合物の付着を良好に防止する観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。一方、架橋量を増やし過ぎて樹脂Aや樹脂Bの官能基が減り、親水性皮膜層の親水性が低下するのを防ぐ点から、含有量は8.0質量%以下が好ましく、6.0質量%以下がより好ましい。
【0031】
樹脂組成物には、本実施形態の効果を損なわない範囲において、上記の他に、塗装性、作業性、皮膜の物性などを改善するための各種の水系溶媒や塗料添加物をさらに含んでいてもよい。塗料添加物としては、例えば、水溶性有機溶剤、界面活性剤、表面調整剤、湿潤分散剤、沈降防止剤、酸化防止剤、消泡剤、防錆剤、抗菌剤などが挙げられる。これらの塗料添加物は、1種が含まれていても、2種以上が含まれていてもよい。
【0032】
親水性皮膜層の厚さは、良好な親水性を得る点から皮膜の付着量を0.1mg/dm以上とすることが好ましく、0.5mg/dm以上がより好ましく、1mg/dm以上がさらに好ましい。また、割れ等の欠陥が抑制された良好な成膜性や、伝熱抵抗を低く抑えた高い熱交換効率を得る点から、付着量は15mg/dm以下が好ましく、10mg/dm以下がより好ましく、8mg/dm以下がさらに好ましい。
【0033】
親水性皮膜層の皮膜付着量は、親水性皮膜層の成膜に用いる塗料組成物の濃度や、成膜に用いるバーコーターNo.の選択などによって調整することができる。また、親水性皮膜層の皮膜付着量は、蛍光X線、赤外膜厚計、皮膜剥離による重量測定などで測定することが可能である。
【0034】
(アルミニウム板)
アルミニウム板1は、アルミニウムからなる板と、アルミニウム合金からなる板とを含む概念であり、アルミニウム製フィン材に従来用いられているアルミニウム板を用いることができる。
アルミニウム板としては、熱伝導性及び加工性に優れることから、JIS H 4000:2014に規定されている1000系のアルミニウムを用いることが好ましい。より具体的には、アルミニウム板として合金番号1050、1070、1200のアルミニウムが好ましく用いられる。但し上記記載は、アルミニウム板として、2000系ないし9000系のアルミニウム合金や、その他のアルミニウム板を用いることを何ら排除するものではない。
【0035】
アルミニウム板は、フィン材の用途や仕様などに応じて適宜の厚さとすることができる。熱交換器用のフィン材については、フィンの強度等の点から、その厚みは0.08mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましい。一方、フィンへの加工性や、熱交換効率等の点から、0.3mm以下が好ましく、0.2mm以下がより好ましい。
【0036】
(下地処理層)
下地処理層2は、所望により、アルミニウム板1と耐食性皮膜層3との間に備えることができる層である。下地処理層2を備えることにより、アルミニウム板1の耐食性を高めることができ、また、アルミニウム板1と耐食性皮膜層3との密着性を高めることができる。
【0037】
下地処理層は、従来公知のものを用いることができるが、例えば、無機酸化物又は無機-有機複合化合物からなる層を用いることができる。
無機酸化物としては、主成分としてクロム(Cr)又はジルコニウム(Zr)を含む酸化物が好ましい。このような無機酸化物の具体例としては、リン酸クロメート処理、リン酸ジルコニウム処理、クロム酸クロメート処理、リン酸亜鉛処理、リン酸チタン酸処理などによって形成された酸化物が挙げられる。但し、無機酸化物の種類は、これらの処理で形成されるものに限定されない。
【0038】
無機-有機複合化合物としては、例えば、塗布型クロメート処理や、塗布型ジルコニウム処理などによって形成される化合物が挙げられる。このような無機-有機複合化合物の具体例としては、例えば、アクリル-ジルコニウム複合体などが挙げられる。
【0039】
下地処理層は、CrやZrなどの金属元素の質量に換算した付着量が0.01~1mg/dmとなるように形成されることが好ましい。付着量を上記範囲とすることにより、良好な耐食性を得ることができる。
下地処理層の厚さは、フィン材の用途などに応じて適宜の厚さにしてよいが、例えば、1~100nmとすることが好ましい。
【0040】
下地処理層の付着量は、下地処理層の成膜に用いる化成処理液の濃度や、成膜処理時間を調節することによって調整することができる。また、下地処理層の付着量は、蛍光X線、赤外膜厚計、溶出による重量測定などで測定することが可能である。
【0041】
(耐食性皮膜層)
耐食性皮膜層3は、主として、アルミニウム板1の耐食性を高めるために備えていてもよい層である。耐食性皮膜層3によって、結露水などの水分、酸素、塩化物イオンをはじめとするイオン種などがアルミニウム板1に浸入し難くなり、アルミニウム板1の腐食や臭気を発生するアルミ酸化物の生成などが抑制される。
【0042】
耐食性皮膜層は、従来公知の物を用いることができるが、例えば、アクリル酸系樹脂を含む樹脂組成物が挙げられる。アクリル酸系樹脂が用いられることにより、耐食性皮膜層を、水系塗料を用いて塗工性良く形成することができる。
アクリル酸系樹脂は水素結合を形成し、また、成膜時に焼き付けられることによって脱水縮合により架橋する。そのため、耐食性皮膜層の皮膜強度や他の皮膜層との密着性を高めることができる。
【0043】
アクリル酸系樹脂は、具体的には、アクリル酸及びアクリル酸塩の少なくともいずれか一方が重合してなる重合体又は共重合体からなる。すなわち、1種の単量体のみからなる重合体(ホモポリマー)であっても、2種以上の単量体からなる共重合体であってもよい。共重合体である場合には、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体等、単量体の配列方法には特に限定されない。
【0044】
アクリル酸系樹脂が重合体である場合には、アクリル酸又はアクリル酸塩を単量体とする重合体である。また、アクリル酸系樹脂が共重合体である場合には、かかる共重合体を構成する単量体のうち1つ以上が、アクリル酸又はアクリル酸塩であればよい。
【0045】
アクリル酸系樹脂には、これら重合体及び共重合体からなる群より選ばれる1種のみが含まれていても、2種以上が含まれていてもよい。
【0046】
アクリル酸系樹脂として、具体的には、アクリル酸である単量体のみからなる重合体、アクリル酸塩である単量体のみからなる重合体、アクリル酸を少なくとも一つの単量体とする共重合体、アクリル酸塩を少なくとも一つの単量体とする共重合体が挙げられる。
共重合体である場合には、他の単量体は、アクリル酸やアクリル酸塩であっても、その他の化合物であってもよい。その他の化合物としては、アクリル酸類と重合可能な反応基を有する単量体であれば特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、マレイン酸などが挙げられる。
【0047】
アクリル酸系樹脂は、鎖状であってもよいし、架橋剤を介して架橋されていてもよい。
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アジリジン系架橋剤などが挙げられる。また、アクリル酸系樹脂は、成膜時の焼付けなどで起こる脱水縮合により架橋されていてもよい。なお、脱水縮合による架橋は、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイドなどのポリオール類を介して形成されていてもよい。
【0048】
アクリル酸系樹脂は、より具体的には、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩及びポリアクリル酸アンモニウムからなる群より選択される1種以上がより好ましい。ポリアクリル酸のアルカリ金属塩としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウムなどが挙げられる。これらの樹脂とすることにより、高い皮膜強度や密着性を得ることができる。
【0049】
アクリル酸系樹脂の具体例としては、例えば、日本触媒製「アクアリック(登録商標)HL」、楠本化成製「ネオクリル(登録商標)A-614」、日本パーカライジング製「バルトップ(登録商標)」、東亜合成製「ジュリマー(登録商標)」、東亜合成製「アロン(登録商標)」、大成ファインケミカル製「アクリット(登録商標)AKW」などが挙げられる。
【0050】
耐食性皮膜層は、樹脂組成物を構成する樹脂の他に、塗装性、作業性、皮膜の物性などを改善するための各種の水系溶媒や塗料添加物が添加されていてもよい。塗料添加物としては、例えば、水溶性有機溶剤、架橋剤、界面活性剤、表面調整剤、湿潤分散剤、沈降防止剤、酸化防止剤、消泡剤、防錆剤、抗菌剤などが挙げられる。これらの塗料添加物は、1種が単独で添加されていてもよいし、複数種が添加されていてもよい。
【0051】
耐食性皮膜層の厚さは、耐食性皮膜層の付着量が0.3~50mg/dmとなる厚さであることが好ましい。付着量は、良好な耐食性や層同士の密着性を得る観点から、0.3mg/dm以上が好ましく、4mg/dm以上がより好ましく、5mg/dm以上がさらに好ましく、10mg/dm以上がよりさらに好ましい。一方、成膜性が良く、割れなどの欠陥が低減されると共に、耐食性皮膜層の伝熱抵抗が低く抑えられ、良好なフィンの熱交換効率が得られるという観点から、付着量は50mg/dm以下が好ましく、30mg/dm以下がより好ましく、20mg/dm以下がさらに好ましい。
【0052】
耐食性皮膜層の付着量は、耐食性皮膜層の成膜に用いる塗料組成物の濃度や、成膜に用いるバーコーターNo.の選択などによって調整することができる。また、耐食性皮膜層の付着量は、蛍光X線、赤外膜厚計、皮膜剥離による重量測定などで測定することが可能である。
【0053】
(潤滑性皮膜層)
潤滑性皮膜層5は、主として、フィン材の表面の潤滑性を高めるため、アルミニウム製フィン材1の最表面に設けてもよい。すなわち、親水性皮膜層4の表面に設けることができる。
潤滑性皮膜層により、フィン材の表面の摩擦係数が低減され、フィン材をフィンに加工するときのプレス成形性などが向上する。
【0054】
潤滑性皮膜層は、従来公知のものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩からなる群より選択される1種以上の樹脂を含む樹脂組成物からなる。カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などが挙げられる。
これらの樹脂は、他の単量体との共重合などにより、ウレタン変性、アルキル変性などの公知の改質が施されていてもよい。
中でも、ポリエチレングリコールとカルボキシメチルセルロースナトリウムとの混成の樹脂が好ましい。ポリエチレングリコール:カルボキシメチルセルロースナトリウムで表される質量比は、50:50~90:10の範囲とすることがより好ましい。このような組成とすることにより、成膜性や潤滑性が一層良好となる。
【0055】
潤滑性皮膜層の厚さは、潤滑性皮膜層の付着量が0.1~8.0mg/dmとなる厚さであることが好ましい。付着量は、良好な潤滑性を得る観点から、0.1mg/dm以上が好ましく、0.2mg/dm以上がより好ましい。一方、十分な潤滑性が得られ、伝熱抵抗も低く抑えられる観点から、付着量は、8.0mg/dm以下が好ましく、付着量を可及的に低減する観点からは、4.0mg/dm以下がより好ましい。
【0056】
潤滑性皮膜層の付着量は、潤滑性皮膜層の成膜に用いる塗料組成物の濃度や、成膜に用いるバーコーターNo.の選択などによって調整することができる。また、潤滑性皮膜層の付着量は、蛍光X線、赤外膜厚計、皮膜剥離による重量測定などで測定することが可能である。
【0057】
(アルミニウム製フィン材の構成)
本実施形態に係るアルミニウム製フィン材10は、図1に示すように、アルミニウム板1の一方の主面上に、上述した各皮膜層、すなわち、必要に応じて下地処理層2、必要に応じて耐食性皮膜層3、親水性皮膜層4、及び必要に応じて潤滑性皮膜層5が順次形成されたものである。かかる各皮膜層は、図2に示すように、アルミニウム板1の他方の主面上にも形成されていてもよく、アルミニウム板1の両主面上に各皮膜層が形成されている場合には、両主面における各皮膜層の構成は、同一であっても異なっていてもよい。
【0058】
アルミニウム製フィン材の好ましい厚みは、用途等により異なるが、例えば熱交換器に用いられる場合には、加工時に耐えうる強度の点から0.08mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましい。また、加工性、熱交換効率の点から、0.3mm以下が好ましく、0.2mm以下がより好ましい。
【0059】
アルミニウム製フィン材は、フィンピッチ(フィン材とフィン材との間の間隔)が狭いものに用いられることが好ましい。これは、フィンピッチが狭いほど、フィン間にブリッジした水による通風抵抗の増大や、フィン表面に付着した結露水の水飛びが生じやすく、本実施形態の効果が、特に有効に奏されるためである。
【0060】
かかるフィンピッチとなる用途として、空調機等の熱交換器、自動車用の熱交換器等が挙げられる。中でも、アルミニウム製フィン材は空調機等の熱交換器に用いられることが好ましい。
【0061】
<アルミニウム製フィン材の製造方法>
次に、アルミニウム製フィン材10の製造方法の一例について説明するが、かかる態様に限定されず、本実施形態の効果を妨げない範囲において、他の製造方法により製造することもできる。
本実施形態に係るアルミニウム製フィン材10は、例えば、基板製造工程と、皮膜層形成工程と、を経て製造することができる。
【0062】
(基板製造工程)
基板製造工程では、アルミニウム板1を製造する。
例えば、地金を溶解し、溶湯を任意形状に凝固させて、Alなどの化学成分を所定量含有する鋳塊を得る。そして、鋳塊を必要に応じて面削し、熱間圧延や冷間圧延を施すことによってアルミニウム板を得る。なお、アルミニウム板を製造するにあたっては、鋳塊に均質化熱処理を施してもよいし、圧延時に中間焼鈍を行ってもよい。また、圧延された板材に、溶体化熱処理、調質などを施してもよい。
【0063】
(皮膜層形成工程)
皮膜層形成工程では、アルミニウム板1の表面に皮膜層を形成する。詳細には、必要に応じて表面に対して洗浄や脱脂を施して清浄状態としたアルミニウム板1上に親水性皮膜層4を成膜する。また所望により、アルミニウム板1の表面に耐食性皮膜層3を成膜し、次いで親水性皮膜層4を順に成膜してもよい。アルミニウム板1と耐食性皮膜層3との間には、さらに必要に応じて下地処理層2を成膜することが好ましい。また、親水性皮膜層4の表面、すなわちアルミニウム製フィン材10の最表面には、必要に応じて潤滑性皮膜層5を成膜することが好ましい。
【0064】
下地処理層2は、アルミニウム板1に化成処理液をスプレーなどで塗布したり、化成処理液にアルミニウム板1を浸漬させたりした後、加熱乾燥させることによって形成することができる。
【0065】
耐食性皮膜層3や潤滑性皮膜層5は、かかる皮膜層を構成する樹脂を溶媒に分散させて塗料組成物を得た後、その塗料組成物を、バーコーター、ロールコーターなどの塗布装置を適宜用いて塗布した後、焼付けを行うことにより成膜することができる。塗装の焼付け温度は特に限定されないが、通常、100~300℃程度の範囲で行われる。また、耐食性皮膜層に塗料添加物がさらに含有されている場合は、かかる塗料添加物を塗料組成物に配合して塗布し、塗料添加物が分解しない温度以下で、塗装焼付けを行えばよい。
【0066】
親水性皮膜層4は、樹脂AとZr系架橋剤と、所望により樹脂Bと、を任意の割合で水系溶媒に分散させて塗料組成物を得た後、バーコーター、ロールコーターなどの塗布装置を用いて、耐食性皮膜層表面に塗布した後、焼付けを行うことにより樹脂組成物からなる親水性皮膜層を成膜する。
【0067】
親水性皮膜層の塗装焼付け温度は、樹脂Aの種類や、樹脂Bの種類、Zr系架橋剤の種類、それらの混合比などに応じて適宜設定することができるが、通常、150~300℃の範囲で行えばよい。親水性皮膜層の皮膜強度や密着性を高める観点からは、塗装焼付け温度は190℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。一方、樹脂の熱分解を避ける観点からは、塗装焼付け温度は260℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。
【0068】
以上の工程を経ることにより、本実施形態に係るアルミニウム製フィン材を製造することができる。
【実施例
【0069】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、その趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0070】
(実施例1~13及び比較例1~5)
アルミニウム板として、厚さが0.1mmのJIS H 4000:2014に規定されている合金番号1200の規格を用いた。アルミニウム板の一方の表面上にリン酸クロメート処理により下地処理層を形成した。次いで、耐食性皮膜層用樹脂(アクリル系樹脂、東亜合成社製)を含む塗料組成物をバーコーターで塗布し、焼付けることによって、付着量が4mg/dmである耐食性皮膜層を形成した。
次に、表1に示す組成を水に分散させて得た塗料組成物を、親水性皮膜層の皮膜量が表1に記載の値となるように、バーコーターを用いて耐食性皮膜層の表面に塗布した。続いて200℃で焼付けを行うことにより、樹脂組成物からなる親水性皮膜層を形成した。
最後に、得られた親水性皮膜層の表面に、潤滑性皮膜層用樹脂(パスコール、明成化学社製)を含む塗料組成物を、付着量が1.0mg/dmとなるようにバーコーターで塗布し、焼付けることによって、潤滑性皮膜層を形成し、アルミニウム製フィン材を得た。
なお、表1における樹脂Aとはスルホン酸基を有する単量体からなる重合体、樹脂Bとはカルボキシル基を有する単量体からなる重合体、架橋剤はZr系架橋剤である。ただし、比較例5の架橋剤には、オキサゾリン系架橋剤であるエポクロス(登録商標)((株)日本触媒製)を用いた。
【0071】
得られたアルミニウム製フィン材に対し、耐汚染性と、耐久性を示す親水持続性の評価をそれぞれ下記に示す方法により行った。
【0072】
(耐汚染性)
流量が1L/分の水道水に、アルミニウム製フィン材を16時間浸漬した。次に、揮発性有機化合物(VOP)として、パラフィン、パルミチン酸、ステアリン酸、ジオクチルフタレート(DOP)、及びステアリルアルコールの5種を各0.5g入れた5Lのガラス製デシケータに、アルミニウム製フィン材を封入した。次いで、ガラス製デシケータごと100℃で8時間加熱する工程を1サイクルとして、かかる工程を計5サイクル行うことで、VOPを表面に付着させた。その後、アルミニウム製フィン材を室温に戻して、その表面に約0.5μLの純水を滴下し、その接触角を接触角測定器(協和界面科学社製:CA-05型)を用いて測定した。
評価基準は、下記のとおりとした。これにより、VOPの親水性皮膜層表面への付着に伴う、アルミニウム製フィン材表面の親水性の低下具合(耐汚染性)が評価される。結果を表1に併せて示した。
<評価基準>
○ 非常に良好:接触角が26°以下
△ 良好(合格):接触角が26°超30°以下
× 不良(不合格):接触角が30°超
【0073】
(親水持続性)
流量が0.1mL/分のイオン交換水にアルミニウム製フィン材を8時間晒した後、80℃で16時間乾燥させる工程を1サイクルとし、かかる工程を計14サイクル行った。その後、アルミニウム製フィン材を室温に戻して、その表面に約0.5μLの純水を滴下し、その接触角を接触角測定器(協和界面科学社製:CA-05型)を用いて測定した。
評価基準は、下記のとおりとした。これにより、アルミニウム製フィン材表面の親水性の耐久性(親水持続性)が評価される。結果を表1に併せて示した。
<評価基準>
○ 非常に良好:接触角が40°未満
△ 良好(合格):接触角が40°~60°
× 不良(不合格):接触角が60°超
【0074】
【表1】
【0075】
実施例1及び比較例1の結果から、親水性皮膜層に樹脂A及びZr架橋剤を用いることにより、耐汚染性が良好となる。この効果は、樹脂B及びZr架橋剤の組み合わせ(比較例4)では見られず、また、アルミニウム製フィン材において従来用いられているオキサゾリン系架橋剤を用いた場合(比較例5)でも見られないことから、樹脂AとZr架橋剤を組み合わせることによって初めて奏される効果であると言える。
また、樹脂A及びZr系架橋剤に加えて、さらに樹脂Bが所定量存在することにより、かかる耐汚染性は非常に良好になると共に、親水持続性も非常に良好となる(実施例1~実施例5)。
Zr系架橋剤の含有量は、0.2質量%(0.2質量部)と僅かな添加であっても、かかる耐汚染性及び親水持続性についての効果は顕著であった(実施例4及び比較例3)。
親水性皮膜層の厚さは、皮膜の付着量が1mg/dmと少量であっても、十分に効果を奏することが確認された(実施例10)。
【符号の説明】
【0076】
1 アルミニウム板
2 下地処理層
3 耐食性皮膜層
4 親水性皮膜層
5 潤滑性皮膜層
10 アルミニウム製フィン材
図1
図2