(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】エンジンを診断するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
F02D 29/06 20060101AFI20221213BHJP
B60W 20/50 20160101ALI20221213BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20221213BHJP
H02P 9/04 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
F02D29/06 Q
F02D29/06 D
B60W20/50
F02D45/00 345
H02P9/04 L ZHV
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019228571
(22)【出願日】2019-12-18
(62)【分割の表示】P 2014530691の分割
【原出願日】2012-08-31
【審査請求日】2020-01-09
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-12
(32)【優先日】2011-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2011-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519123825
【氏名又は名称】トランスポーテーション アイピー ホールディングス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(74)【復代理人】
【識別番号】100208292
【氏名又は名称】清原 直己
(72)【発明者】
【氏名】バネルジー,アリジット
(72)【発明者】
【氏名】クマール,アジス・クッタインネア
(72)【発明者】
【氏名】ティワリ,アーヴィンド・クマール
(72)【発明者】
【氏名】ムケルジー,ルパム
(72)【発明者】
【氏名】ラマチャンドラパニッカー,ソマクマール
(72)【発明者】
【氏名】フリン,ポール・ロイド
(72)【発明者】
【氏名】スリラサ,ボヤナパリー
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】水野 治彦
【審判官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】実開平2-85346(JP,U)
【文献】特開平8-47107(JP,A)
【文献】特開2010-110028(JP,A)
【文献】特開平4-19344(JP,A)
【文献】特開2001-98999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D29/06
F02D45/00
H02P9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機(120)に動作可能に接続されたエンジン
の劣化
または故障のタイプを特定するための方法
であって、前記エンジンの劣化または故障のタイプが、摩耗した点火プラグ、燃料不均衡、不良シリンダ、エンジンのノッキング、低燃料注入、低圧縮、及び弁機構の故障からなる群から選択される1種または2種以上である方法において、
発電機(120)のDCリンク電圧(171)を測定するステップと、
測定された
前記DCリンク電圧(171)から予測された発電機出力電圧
および発電機界磁電流から予測された発電機出力電流
を含むサンプリングされた発電機パラメータならびにエンジン速度に基づきトルク予測モデルを用いて発電機(120)のトルクプロファイルを決定するステップと、
前記発電機(120)のトルクプロファイルに基づき、フーリエ変換プロセスを用いて、複数の周波数成分(420)を生成するステップ
と、
前記複数の周波数成分(420)は、基本周波数成分(422)と
、周波数成分
の少なくとも2つ(421,423)とを含
み、前記周波数成分
の少なくとも2つ(421,423)の振幅と、
前記基本周波数成分(422)の振幅とを比較することにより、エンジンにおける劣化
または故障のタイプを特定するステップと、を備える方法。
【請求項2】
前記複数の周波数成分は、エンジンにおける
各々の部品が第1の状態で運転する
場合に第1の周波数成分
を示し、エンジンにおける
いずれか1つの部品が第2の状態で運転する
場合に第2の周波数成分
を示し、
エンジンにおける劣化
または故障のタイプは第2の状態に基づいて特定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
周波数成分
の少なくとも2つは、0.5次周波数成分および2次周波数成分を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
基本周波数成分の振幅に対する
、前記0.5次周波数成分の振幅の比が第1の閾値を超え、かつ
前記2次周波数成分の振幅に対する基本周波数成分の振幅の比が第2の閾値を超えたとき
、エンジンにおける劣化
または故障のタイプを特定する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
エンジ
ンは、4サイクルエンジンである、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される対象の実施形態は、エンジンを診断するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン部品は、運転中に様々な方法で劣化する可能性がある。例えば、エンジン内のエンジンシリンダは、摩耗した点火プラグによって失火し始めるかも知れない。エンジン劣化を検出する手法の1つは、エンジン速度を監視することである。診断ルーチンは、エンジン速度の成分が閾値レベルを超えているか否かを監視し、修理を要求する、エンジン出力を低下させる、又はエンジンを停止する、診断コード又はその他の表示を生成することができる。しかしながら、本発明者らは、エンジン速度の分析が、エンジンの問題を徹底的に診断するにはしばしば不十分であることを認識した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】オーストリア国実用新案第9466号
【文献】米国特許出願公開第2006/047408号明細書
【文献】特開2000-352332号公報
【文献】米国特許第5461289号明細書
【文献】独国特許出願公開第10-2006-012858号公報
【発明の概要】
【0004】
一実施形態において、発電機に動作可能に接続されたエンジンのための方法が提供される。方法は、運転中に発電機に関わる少なくとも1つのパラメータを測定するステップと、測定されたパラメータに基づいて発電機に関わるトルクプロファイルを判定するステップと、判定されたトルクプロファイルの周波数成分に基づいてエンジンの状態を診断するステップと、を含む。
【0005】
一実施形態において、発電機に動作可能に接続されたエンジンのための方法が提供される。方法は、運転中に発電機に関わる少なくとも1つのパラメータを測定するステップと、測定されたパラメータに基づいて発電機に関わるトルクプロファイルを判定するステップと、判定されたトルクプロファイルの周波数成分に基づいて、異なるタイプのエンジンの劣化を区別するステップと、を含む。
【0006】
一実施形態において、車両システムが提供される。車両システムは、エンジンと、エンジンに動作可能に接続された発電機と、運転中に発電機に関わる少なくとも1つのパラメータを測定するための少なくとも1つのセンサと、コントローラと、を含む。コントローラは、測定されたパラメータをサンプリングしてトルクプロファイルに変換し、トルクプロファイルの周波数成分を特定し、トルクプロファイルの周波数成分に基づいてエンジンの状態を診断するように構成された、指令を含む。
【0007】
一実施形態において、検査キットが提供される。検査キットは、エンジンに動作可能に接続された発電機のパラメータ測定値から得られるトルクプロファイルの周波数成分に基づいてエンジンの状態を判定するようになっている、コントローラを含む。
【0008】
一実施形態において、発電機に動作可能に接続されたエンジンのための方法が提供される。方法は、運転中に発電機に関わる電気パラメータを測定するステップと、測定された電気パラメータの周波数成分に基づいてエンジンの状態を診断するステップと、を含む。
【0009】
一実施形態において車両システムが提供される。車両システムは、エンジンと、エンジンに動作可能に接続された発電機と、運転中に発電機に関わる電気パラメータを測定するためのセンサと、コントローラと、を含む。コントローラは、測定された電気パラメータをサンプリングし、測定された電気パラメータの周波数成分を特定し、測定された電気パラメータの周波数成分に基づいてエンジンの状態を診断するように構成された、指令を含む。
【0010】
一実施形態において、検査キットが提供される。検査キットは、エンジンに動作可能に接続された発電機に関わる電気パラメータプロファイルの周波数成分に基づいてエンジンの状態を判定するようになっている、コントローラを含む。
【0011】
一実施形態において、発電機に動作可能に接続されたエンジンのための方法が提供される。方法は、運転中に発電機に関わる電気パラメータを経時的に測定するステップと、測
定された電気パラメータの周波数成分を特定するステップと、周波数成分の少なくとも一部からDC変調プロファイルを再構築するステップと、を含む。
【0012】
一実施形態において、発電機に動作可能に接続されたエンジンのための方法が提供される。方法は、エンジンに関わる少なくとも1つのパラメータを測定するステップと、発電機に関わる少なくとも1つのパラメータを測定するステップと、測定されたパラメータに基づいてエンジンの状態を診断するステップと、を含む。
【0013】
この簡単な説明は、本明細書に更に記載される様々な概念を簡易的に紹介するために提供される。この簡単な説明は、権利請求対象の主要な特徴又は不可欠な特徴を特定するように意図されるものではなく、権利請求対象の範囲を限定するために使用されるよう意図されるものでもない。更に、権利請求対象は、本開示のいずれかの箇所に記載されるいずれか又は全ての不都合を解決する実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は、以下の添付図面を参照して、非限定的実施形態の以下の記述を読むことで、理解されるだろう。
【
図1】図中では複数の車輪を介してレール上を走行するように構成された鉄道車両として描写されている、エンジン及び発電機(交流電源)を有する、車両システム(例えば、機関車システム)の、例示的実施形態の説明図である。
【
図2】様々な補助装置140及び牽引モータに動作可能に接続された、
図1のエンジン及び発電機の例示的実施形態の説明図である。
【
図3】時間サンプリングされた発電機パラメータから周波数成分を生成する方法の例示的実施形態の説明図である。
【
図4】「健全な」及び「不健全な」周波数成分の例示的実施形態を示す説明図である。
【
図5】コントローラ内の診断ロジックがどのようにして発電機パラメータの周波数成分の中の不健全な状態を検出できるかの例示的実施形態の説明図である。
【
図6】サンプリングされた発電機パラメータからトルクプロファイルを生成する方法の例示的実施形態の説明図である。
【
図7】時間領域トルクプロファイルから周波数成分を生成する方法の例示的実施形態の説明図である。
【
図8】発電機の測定された電気パラメータの周波数成分から
DC変調プロファイルを再構築する方法の例示的実施形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において開示される対象の実施形態は、エンジンを診断するシステム及び方法に関する。方法を実行するための検査キットも提供される。エンジンは、機関車システム等の車両に含まれてもよい。その他のタイプの適切な車両は、オンハイウェイ車両、オフハイウェイ車両、採鉱装置、航空機、及び船舶を含む。本発明のその他の実施形態は、風力タービン又は発電装置等の定置エンジンのために使用されてもよい。エンジンはディーゼルエンジンであってもよく、或いは別の燃料又は燃料の組み合わせを燃焼してもよい。このような代替燃料は、ガソリン、灯油、バイオディーゼル、天然ガス、及びエタノール-並びに上記の組み合わせを含んでもよい。適切なエンジンは、圧縮点火及び/又は火花点火を利用してもよい。これらの車両は、使用とともに劣化する部品を備えるエンジンを含む可能性がある。
【0016】
更に、本明細書において開示される対象の実施形態は、エンジン又は補助装置の状態を診断するため、並びに状態と関連するエンジン部品及び補助装置を区別するために、測定された発電機の電気パラメータ、或いは測定された発電機の電気パラメータ及び/又はエンジンパラメータ(例えば速度)から得られる発電機データ(例えば、取得済みトルクプ
ロファイル)等の、発電機データを使用する。
【0017】
エンジンは、特定のタイプのエンジン劣化を探しているとき、特定の動作状態又は動作モードに設定されてもよい。例えば、エンジンは、検査手順の一部としての自己負荷状態、動作制動(db)設定状態、又は定常状況走行状態の間に、診断されてもよい。本明細書において論じられる診断及び予測方法は、傾向予測、複数のシリンダ間のばらつきの比較、検査手順の実行、修理確認、及び修理の支援のために、使用されることが可能である。或いは、発電機及び/又はエンジンのデータは、エンジンが通常運転中に特定の運転状態又は状況に到達したときに、サンプリング及び分析されてもよい。
【0018】
図1は、図中では複数の車輪108を介してレール102上を走行するように構成された鉄道車両106として描写されている、車両システム100(例えば、機関車システム)の例示的実施形態の説明図である。図示されるように、鉄道車両106は、発電機(交流電源)120に動作可能に接続されたエンジン110を含む。車両106は、車輪108を駆動するために発電機120に動作可能に接続された牽引モータ130も含む。車両106は、様々な機能を実行するために発電機120又はエンジン110に動作可能に接続された様々な補助システム又は装置140(例えば回転エンジンシャフト111、
図2参照)を、更に含む。
【0019】
車両106は、車両システム100に関連する様々な部品を制御するためのコントローラ150を、更に含む。一例において、コントローラ150は、コンピュータ制御システムを含む。一実施形態において、コンピュータ制御システムは大部分はソフトウェアベースで、コンピュータ実行可能な指令を実行するように構成された、プロセッサ152等のプロセッサを含む。コントローラ150は複数のエンジン制御装置(ECU)を含んでもよく、制御システムは各ECUの間で分配されてもよい。コントローラ150は、車載監視及び鉄道車両運転の制御を可能にするための指令(例えば、コンピュータ実行可能な指令)を含む、メモリ154等のコンピュータ可読記憶媒体を、更に含む。メモリ154は、揮発性及び不揮発性記憶装置を含んでもよい。別の実施形態によれば、コントローラは、例えばデジタル信号プロセッサ(DSP)、又は本明細書に記載される様々な機能を実行するためのその他のハードウェア論理回路を使用する、ハードウェアに基づいてもよい。
【0020】
コントローラは、車両システム100の制御及び管理を監督してもよい。コントローラは、運転パラメータ及び運転状態を判断するためにエンジンの速度センサ160又は様々な発電機センサ170から信号を受信してもよく、従って鉄道車両106の運転を制御するために様々なエンジンアクチュエータ162を調整してもよい。一実施形態によれば、速度センサは、エンジンシャフト111に接続された多歯ピックアップホイールと、ピックアップホイールの歯が磁気抵抗センサをいつ通過するかを検知するための磁気抵抗センサと、を含む。例えば、様々なコントローラは発電機センサから、様々な発電機パラメータを表す信号を受信してもよい。発電機パラメータは、DCリンク電圧、DCリンク電流、発電機界磁電圧、発電機界磁電流、発電機出力電圧、及び発電機出力電流を含むことができる。様々な実施形態によれば、その他の発電機パラメータも可能である。相応に、コントローラは、牽引モータ、交流電源、シリンダ弁、スロットル等の様々な部品に命令を送ることによって車両システムを制御してもよい。発電機センサ170からの信号は、配線に割り当てられる車両システム100の空間を縮小するため、並びに摩耗及び振動から信号線を保護するために、1つ以上の配線ハーネスにまとめられてもよい。
【0021】
コントローラは、エンジンの動作特性を記録するための車載電子診断装置を含んでもよい。運転特性は、例えばセンサ160及び170からの測定値を含んでもよい。一実施形態において、運転特性は、メモリ154のデータベースに記憶されてもよい。一実施形態にお
いて、エンジン性能の傾向を判断するために、現在の運転特性が過去の運転特性と比較されてもよい。
【0022】
コントローラは、車両システム100の部品の潜在的劣化及び故障を特定及び記録するための、車載電子診断装置を含んでもよい。例えば、劣化した可能性のある部品が特定されると、メモリ154に診断コードが記憶されてもよい。一実施形態において、コントローラによって特定され得る各タイプの劣化に、固有の診断コードが対応している。例えば、第一診断コードはエンジンのシリンダ1の問題を示してもよく、第二診断コードはエンジンのシリンダ2の問題を示してもよく、第三診断コードは補助システムのうちの1つの問題を示してもよい、等である。
【0023】
コントローラは、機関車運転乗員及びメンテナンス乗員とのユーザインターフェースを提供する、診断インターフェースディスプレイ等のディスプレイ180に、更に連結されてもよい。コントローラは、ユーザ入力制御182を介しての運転者入力に応えて、様々なエンジンアクチュエータ162を相応に調整するための命令を送ることによって、エンジンを制御してもよい。ユーザ入力制御182の非限定例は、スロットル制御、制動制御、キーボード、及び動力スイッチを含んでもよい。更に、劣化部品に対応する診断コード等、エンジン及び補助装置の運転特性は、ディスプレイ180を通じて運転者及び/又はメンテナンス乗員に報告されてもよい。
【0024】
車両システムは、コントローラに連結された通信システム190を含んでもよい。一実施形態において、通信システム190は、音声及びデータメッセージを送受信するための、無線及びアンテナを含んでもよい。例えば、車両システムと、鉄道会社の管理センター、別の機関車、衛星、及び/又は転轍機等の線路脇の装置との間のデータ通信であってもよい。例えば、コントローラは、GPS受信器からの信号を用いて車両システムの地理的座標を推定してもよい。別の例として、コントローラは、通信システム190から送信されるメッセージを通じて、エンジン及び/又は補助装置の運転特性を管理センターに送信してもよい。一実施形態において、メッセージは、エンジン又は補助装置の劣化部品が検出されて車両システムのメンテナンス予定が組まれてもよいときに、通信システム190によって、指令センターに送信されてもよい。
【0025】
図2は、様々な補助装置140(141、142、143、144)及び牽引モータ130に動作可能に接続された、
図1のエンジン110及び発電機120の例示的実施形態の説明図である。様々な機械的補助装置144が、回転しているエンジンシャフト111に動作可能に結合され、これによって駆動されてもよい。その他の補助装置140は、レギュレータ230に電力供給するためのDCリンク電圧を発生する整流器210を通じて、発電機120によって駆動される。このような補助装置の例は、ブロワ141、圧縮機142、及び冷却ファン143を含む。牽引モータ130は、インバータ220への
DCリンク電圧を発生する整流器210を通じて、発電機120によって駆動される。このような補助装置140、牽引モータ130、及びこれらの実現は当該技術分野において周知である。特定の実施形態によれば、発電機120は実際には、例えば牽引モータ130を駆動するための主発電機、及び補助装置140の一部を駆動するための補助発電機等、1つ以上の発電機であってもよい。補助装置の更なる例は、ターボ過給機、ポンプ、及びエンジン冷却システムを含む。
【0026】
速度センサ160は、運転中にエンジンの回転シャフト111の速度を測定する。DCリンクセンサ171は発電機センサであり、様々な実施形態に応じて、DCリンク電圧、DCリンク電流、又は両方を測定することができる。電界センサ172は発電機センサであり、様々な実施形態に応じて、発電機の界磁電流、発電機の界磁電圧又は両方を測定することができる。特定の実施形態によれば、発電機の電機子出力電圧及び電機子電流をそれぞれ
測定するために、発電機センサ173及び174が設けられる。適切な市販のセンサは、特定用途向けパラメータに基づいて選択されてもよい。
【0027】
一実施形態によれば、エンジンの状態を診断するために、発電機パラメータの周波数成分が使用される。
図3は、時間サンプリングされた発電機パラメータから周波数成分を生成する方法の実施形態の説明図である。発電機パラメータ(例えば、
DCリンク電圧)は、
DCリンクセンサ171を用いて測定され、コントローラ150に送られる。
DCリンク電流、発電機界磁電圧、発電機界磁電流、発電機出力電圧、及び発電機出力電流を含む、その他の発電機パラメータが代わりに使用されてもよい。コントローラ150は、発電機パラメータを経時的にサンプリングし、発電機パラメータデータに対して周波数解析プロセスを実行する。一実施形態によれば、周波数解析プロセスはフーリエ変換プロセス310(例えば、高速フーリエ変換(FFT)プロセス)である。別の実施形態によれば、周波数解析プロセスはバンドパス・フィルタリング・プロセス320である。周波数解析プロセスは、サンプリングされた時間領域発電機パラメータを、周波数領域内の周波数成分に変換する。基本(一次)及び高調波(二次、0.5次、三次等)周波数成分を含むことができる。一実施形態によれば、フーリエ変換プロセス及びバンドパス・フィルタリング・プロセスは、プロセッサ152によって実行される、コンピュータ実行可能な指令を含む。周波数変換は、例えば、電流と電圧との積であるキロボルトアンペア(kVA)又はキロワット(kW)、或いは信号のkW/周波数であるトルク等の、処理済み/取得済み信号に対して行われることが可能である。
【0028】
例えば、エンジンは所定のシーケンスで点火する複数のシリンダを有してもよく、各シリンダは4ストローク又は2ストローク周期の間に1回点火する。例えば、4気筒、4ストロークエンジンは、1-3-4-2の点火シーケンスを有してもよく、各シリンダはエンジンが2回転するたびに1回点火する。このため、任意のシリンダの点火周波数はエンジンの回転周波数の半分であり、いずれかのシリンダの点火周波数もエンジンの回転周波数の2倍である。エンジンの回転周波数は、第一エンジン次数として記載されてもよい。このような一次周波数成分は、測定された発電機パラメータの周波数成分に現れることが可能である。4ストロークエンジンの任意のシリンダの点火周波数は0.5エンジン次数として記載されてもよく、0.5エンジン次数とはエンジンの回転周波数の半分である。このような0.5次周波数成分も、測定された発電機パラメータの周波数成分に現れることが可能である。
【0029】
4ストロークエンジンの別の例として、12気筒エンジンは1-7-5-11-3-9-6-12-2-8-4-10の点火シーケンスを有してもよく、各シリンダは、エンジンが2回転するたびに1回点火する。このため、任意のシリンダの点火周波数はエンジンの回転周波数の半分であり、いずれかのシリンダの点火周波数もエンジンの回転周波数の6倍である。2ストロークエンジンの一例として、12気筒エンジンは1-7-5-11-3-9-6-12-2-8-4-10の点火シーケンスを有してもよく、各シリンダは、エンジンが1回回転するたびに1回点火する。このため、任意のシリンダの点火周波数はエンジンの回転周波数であり、いずれかのシリンダの点火周波数もエンジンの回転周波数の12倍である。ここでも、これらの周波数成分は、測定された発電機パラメータの周波数成分に現れることが可能である。
【0030】
例えば、エンジンは1050RPMで運転する4ストロークエンジンであってもよい。このため、第一エンジン次数は17.5Hzであり、0.5エンジン次数は8.75Hzである。DCリンク電圧は、運転中にエンジンシャフト111が回転するに連れて、周期的な周波数とともに変動してもよい。例えば、DCリンク電圧の周波数成分は、第一エンジン次数の周波数での周波数成分を含んでもよい。言い換えると、周波数成分の最大振幅は、一次周波数成分で発生する可能性がある。DCリンク電圧は、2次周波数(エンジン周
波数の2倍)、三次周波数(エンジン周波数の3倍)等、一次周波数以外の高調波での周波数成分も、含んでよい。同様に、DCリンク電圧は、0.5次周波数(エンジン周波数の半分)等、一次周波数未満の周波数での周波数成分を含んでもよい。
【0031】
「健全」であって適切に運転しているエンジンでは、測定された発電機パラメータの周波数成分は、特定の健全なシグネチャを有する。このように健全なシグネチャからのずれは、エンジンの問題を示している可能性がある。例えば、一実施形態によれば、エンジンの状態は、周波数成分の0.5次振幅及び/又は位相を分析することによって、診断することができる。
【0032】
図4は、「健全な」及び「不健全な」周波数成分の例示的実施形態を示す説明図である。健全なエンジン(すなわち、適切に運転しているエンジン)の周波数成分410は、一実施形態によれば、
図4に示されるような絶対的及び相対的振幅の3つの周波数成分を有する。不健全なエンジン(すなわち、何らかの劣化又は故障のため適切に運転していないエンジン)の周波数成分420は、健全なエンジンの周波数成分410と同じ位置に3つの周波数成分を有する。しかしながら、一実施形態によれば、1つの周波数成分421(例えば、0.5次成分)の振幅は歪んで(例えば、振幅が増加して)おり、別の周波数成分423(例えば、二次成分)の振幅も歪んで(例えば振幅が減少して)いる。一実施形態において、歪んだ0.5次成分421は、不健全なエンジンを示しており、0.5次成分の振幅を閾値と比較することによって特定される。
【0033】
別の実施形態によれば、周波数成分420の歪んだ周波数成分421及び423はいずれも不健全なエンジンを示している。更に、不健全なエンジンの周波数成分420におけるその他の周波数成分に対する歪んだ周波数成分の特定の特性(例えば、振幅)はエンジン劣化又は故障の特定のタイプ(例えば、エンジンのシリンダ番号3が動作不能)を示すことができる。又、基準シリンダ(例えば、シリンダ番号1)に対する、0.5次成分の位相は、個々のシリンダに対する問題を特定するために使用されることが可能である。
【0034】
劣化部品により、例えばエンジンがより非効率的に、低出力で、及び/又はより多くの汚染を伴って、運転させられる可能性がある。更に、劣化部品の状態は、破滅的なエンジン故障及び道路不具合の可能性を増加させる部品の劣化を促進するかも知れない。劣化したエンジンシリンダは、劣化したエンジン部品の一例である。このため、4ストロークエンジンでは、歪んだ周波数成分は0.5次周波数で発生する可能性がある。2ストロークエンジンでは、歪んだ周波数成分は一次周波数で発生する可能性がある。このとき診断は、劣化の警告、並びに劣化したエンジン部品のタイプ及び/又は箇所の表示の、両方を含んでもよい。
【0035】
図5は、コントローラ150内の診断ロジックがどのようにして発電機パラメータの周波数成分の不健全な状態を検出できるかの実施形態の説明図である。例えば、0.5次成分421は、診断ロジック510によって閾値レベルTと比較されることが可能である。成分421の振幅が閾値レベルTを超えた場合には、診断ロジック510は、エンジンの劣化が発生したと判断する。更に、診断ロジック510が、一次成分422に対する0.5次成分421の比率が第二閾値レベルを超えており、二次成分423に対する一次成分422の比率が第三閾値レベルを超えていると判断した場合には、診断ロジック510は特定のエンジン部品(例えば、シリンダ番号3)に対する劣化を特定する。一実施形態によれば、診断ロジックは、プロセッサ152によって実行されるコンピュータ実行可能な指令を含む。一実施形態によれば、
DC又はゼロ次成分に対する0.5次成分の比率は、エンジン問題を表すことができる。更に、閾値レベルTは、例えば出力、速度、周囲条件、修理履歴等、エンジンの運転状態に依存してもよい。
【0036】
診断、区別、及び特定されることが可能なエンジン劣化又は故障のタイプは、例えば、摩耗した点火プラグ、燃料不均衡、不良シリンダ、エンジンのノッキング、低燃料注入、低圧縮、及び弁機構の故障を含んでもよい。劣化又は故障が診断されると、対策が取られる。このような対策は、例えば、運転者に警告信号を提供すること(例えば、ディスプレイ180を通じて)、エンジン運転パラメータを調整すること(例えば、エンジン出力を低下させる、エンジンの少なくとも1つのシリンダを停止する、エンジンを完全に停止する、エンジンのシリンダを釣り合わせる)、メンテナンス対応の記録を取る、及び診断された状態を中心センター(例えば、通信システム190を介して)に送信すること、を含んでもよい。
【0037】
一実施形態によれば、発電機に関わるトルクプロファイルの周波数成分が、エンジンの状態を診断するために使用される。
図6は、サンプリングされた発電機パラメータからトルクプロファイルを生成する方法の例示的実施形態の説明図である。コントローラ150は、ダイオード整流器210の後方モデル610と、発電機120のモデル620と、を含む。
DCリンクセンサ171によって測定された
DCリンク電圧は、発電機の電機子(又は固定子)電圧(すなわち、発電機出力電圧)の予測するために、後方モデル610に入力される。同様に、電界センサ172によって測定された発電機界磁電流は、発電機の電機子(又は固定子)電流(すなわち、発電機出力電流)を生成するために、発電機モデル620に入力される。コントローラ150は、トルク予測モデル630を更に含む、予測された発電機出力電圧及び電流は、エンジンの速度の表示とともに、トルク予測モデルに入力されて、発電機のトルクプロファイルが生成される(例えば、電磁トルクプロファイル)。エンジンの速度の表示は、対象とする高調波周波数が位置するトルク予測モデル630を通知するために使用される。速度センサ160からのエンジン速度は入力として使用されてもよく、或いは整流器210からの周波数成分(例えば、六次高調波)(例えば、
DCリンク電圧信号の周波数成分)が、エンジンの速度の表示として使用されることも可能である。
【0038】
その結果、発電機に関わるトルクプロファイルは、DCリンク電圧及び発電機界磁電流から取得されることが可能である。或いは、DCリンク電流から発電機出力電流を、及び発電機界磁電圧から発電機出力電圧を予測するために、DCリンク電流及び発電機界磁電圧が、対応するモデルとともに使用されることも可能であろう。発電機出力電圧及び電流がすでにコントローラ150に取って利用可能な場合には(このようなセンサが発電機に搭載されているため)、後方モデル610及び発電機モデル620は迂回されてもよい。更に、より正確ではないトルクプロファイルの予測が許容可能な場合には、トルクプロファイルを予測するために、パラメータ(DCリンク電圧、DCリンク電流、発電機界磁電流、発電機界磁電圧、出力発電機電流、出力発電機電圧)のうちの両方ではなく1つのみが、使用可能である。
【0039】
エンジンの状態は、トルクプロファイルの周波数成分に基づいて診断可能である。
図7は、時間領域トルクプロファイルから周波数成分を生成する方法の例示的実施形態の説明図である。ここでも、周波数成分を生成するために、コントローラ150のフーリエ変換プロセス310又はバンドパス・フィルタリング・プロセス320が使用可能である。同様に、上記で論じられたように、周波数成分は、エンジンの劣化を判定するために、コントローラ150の診断ロジックを用いて分析されることが可能である。エンジンの劣化を判定するために、周波数成分(例えば、0.5次、一次等)の様々な局面(例えば、振幅及び位相)が閾値と比較されることが可能である。
【0040】
一実施形態によれば、
DC変調プロファイルは、測定された発電機データ(例えば、
DCリンク電圧データ)の周波数成分の少なくとも一部から、再構築されることが可能である。
図8に示されるように、周波数成分から
DC変調プロファイルを再構築するために、
コントローラ150の逆フーリエ変換プロセス810(例えば、IFFTプロセス)が使用される。
DC変調プロファイルは、発電機の電磁トルクに比例する。再構成された
DC変調プロファイルは、エンジンの状態を診断するために分析されてもよい。
【0041】
一般的に、様々な実施形態によれば、エンジンの状態は、エンジン(例えば、速度又は圧力)及び発電機(例えば、DCリンク電圧等)からの測定されたパラメータの組み合わせに基づいて、診断されることが可能である。様々なパラメータの周波数成分は、特定のエンジン状態を診断するために、判定及び比較されることが可能である。更に、測定されたパラメータプロファイルからその他のパラメータプロファイル(例えば、トルク)が予測可能であり、引き続き、これらのプロファイルの周波数成分は特定のエンジン状態を診断するために分析されることが可能である。
【0042】
本明細書に記載されるシステム及び方法の用途の更なる例が、以下に提供される。例は、発電機に関わる発電機データ(例えば、DCリンク電圧等のほぼ生の発電機パラメータ、又は電磁トルク等のその他の取得された発電機パラメータ)の周波数成分、或いはエンジン運転中のエンジンの速度に基づいて、異なるタイプのエンジン劣化を診断及び区別するための、様々な手法を示す。多くの例は、わずかに調整するだけで、様々な補助装置に対して等しく適用可能である。
【0043】
一実施形態において、4ストロークエンジンの劣化シリンダは、0.5次閾値よりも大きい0.5次周波数成分の振幅等、周波数成分シグネチャに基づいて検出されてもよい。代替実施形態において、周波数成分の振幅は周波数範囲全体にわたって積分されてもよく、4ストロークエンジンの劣化シリンダは、積分閾値よりも大きい積分値に基づいて、検出されてもよい。
【0044】
エンジンの別のシリンダの方がより健全である(又は劣化していない)、劣化シリンダの検出は、エンジンの複数のシリンダが劣化したときよりも明確な周波数成分シグネチャを有してもよい。例えば、1つの劣化シリンダの周波数成分シグネチャは、0.5次周波数成分の振幅を0.5次振幅閾値と比較することによって、特定されてもよい。しかしながら、複数の劣化シリンダは、単一の劣化シリンダとは異なる周波数成分シグネチャを有するかも知れない。更に、複数の劣化シリンダの点火順における位置は、周波数成分シグネチャを変化させるかも知れない。例えば、180°位相ずれした2つの劣化シリンダは、連続する点火順の2つの劣化シリンダとは異なる周波数成分シグネチャを有してもよく、従って本明細書に開示される方法は、周波数成分シグネチャの様々な変化に基づいて、1つ以上の劣化シリンダを特定してもよい。更に、様々な周波数及び運転状態での周波数成分を記録することによって健全なエンジンの周波数成分シグネチャを生成することは、有益であろう。一実施形態において、エンジンの周波数成分は、健全なエンジンの周波数成分シグネチャと比較されてもよい。健全なエンジン又は別の劣化したエンジン部品の周波数成分シグネチャと一致しない異常は、例えばコントローラによって特定及び報告されてもよい。劣化したエンジン部品のその他の例は、劣化したクランクケース排出システム、劣化したターボ過給機、及び劣化したクランクケースを含む。
【0045】
一実施形態において、時間領域発電機データは、一次周波数よりもわずかに大きいカットオフ周波数を有するローパスフィルタによってフィルタリングされてもよい。例えば、カットオフ周波数は、一次周波数よりも10から20パーセント大きくてもよい。このため、一実施形態において、カットオフ周波数はエンジン速度によって決定されてもよい。発電機データは、ナイキスト速度以上の周波数で、時間内にサンプリングされてもよい。一実施形態において、時間領域信号は、第一エンジン次数周波数の2倍よりも大きい周波数でサンプリングされてもよい。一実施形態において、時間領域信号は、エンジン赤線周波数の2倍よりも大きい周波数でサンプリングされてもよい。このため、ナイキスト速度
以上の周波数でのローパスフィルタリング及びサンプリングによって、発電機データの周波数成分はエイリアスされなくてもよい。エンジンの速度データにも、同じことが適用されてよい。
【0046】
本明細書において論じられるように、サンプリングされた発電機データ(例えば、DCリンク電圧、トルク等)は、周波数領域周波数成分を生成するために変換されてもよい。一実施形態において、周波数領域周波数成分を生成するために、高速フーリエ変換が使用されてもよい。一実施形態において、発電機データの周波数成分をエンジンの状態のシグネチャと比較するために、相関アルゴリズムが適用されてもよい。例えば、健全なエンジンのシグネチャは、一次閾値未満の振幅を有する一次周波数での周波数成分と、0.5次閾値未満の振幅を有する0.5次周波数での周波数成分と、を含んでもよい。一次閾値は、エンジン速度、エンジン負荷、クランクケース、温度、及び履歴エンジンデータに対応してもよい。
【0047】
例えば、エンジン及び発電機の履歴データは、過去のエンジンの運転からの周波数成分のサンプルを含むデータベースに記憶されてもよい。こうして、周波数成分の傾向が検出されてもよく、傾向はエンジンの健全性を判定するために使用されてもよい。例えば、任意のエンジン速度及び負荷の0.5エンジン次成分の振幅が増加するとき、シリンダが劣化しつつあることを示す場合がある。別の例として、任意のエンジン速度及び負荷の0.5エンジン次数成分での増加する振幅を増加することなく結合された、増加する平均クランクケース圧力の増加は、ターボ過給機又はクランクケース排出システムが劣化しつつあることを示しているかも知れない。潜在的故障は、劣化シリンダ、劣化ターボ過給機、又は劣化クランクケース排出システムを含んでもよい。
【0048】
一実施形態において、発電機データの周波数成分は、エンジン及び発電機の履歴データを含むデータベースに記憶されてもよい。例えば、データベースは、コントローラ150のメモリ154に記憶されてもよい。別の例として、データベースは、鉄道車両106から離れた場所に記憶されてもよい。例えば、履歴データはメッセージとして格納され、通信システム190で送信されてもよい。このようにして、指令センターは、エンジンの健全性をリアルタイムで監視してもよい。例えば、指令センターは、通信システム190を用いて送信された発電機データを用いてエンジンの状態を診断するためのステップを、実行してもよい。例えば、指令センターは、鉄道車両106からDCリンク電圧データを含む発電機データを受信し、DCリンク電圧データを周波数変換し、変換されたデータに相関アルゴリズムを適用し、エンジンの潜在的劣化を診断してもよい。更に、指令センターは、メンテナンスの予定を組んで、設備投資を最適化するように健全な機関車及びメンテナンス乗員を配備してもよい。履歴発電機データは、エンジン点検、エンジン修繕、及びエンジン部品交換の前後にエンジンの健全性を評価するために、更に使用されてもよい。
【0049】
一実施形態において、潜在的故障は、ディスプレイ180を通じて機関車運転乗員に報告されてもよい。一旦通知されると、運転者は、エンジンの更なる劣化の可能性を低減するように、鉄道車両106の運転を調整してもよい。一実施形態において、潜在的故障を示すメッセージが、通信システム190を用いて指令センターに送信されてもよい。更に、潜在的故障の重症度が報告されてもよい。例えば、発電機データの周波数成分に基づいて故障を診断することで、平均的なエンジン情報のみ(例えば、速度情報のみ)を用いて故障が診断されるときよりも早く、故障が検出されるだろう。このため、潜在的故障が劣化の早期段階で診断されたときには、エンジンは運転し続けてもよい。反対に、潜在的故障が重症であると診断された場合には、エンジンを停止するか、又は早急なメンテナンスの予定を組むことが、望ましいだろう。一実施形態において、潜在的故障の重症度は、発電機データの周波数成分の1つ以上の成分の閾値と振幅との差に応じて、判定されてもよい。
【0050】
発電機データの周波数成分を分析することによって、運転中にエンジンを監視及び診断することが可能である。更に、劣化部品を備えるエンジンの運転は、エンジン部品の更なる劣化を潜在的に減少するように、並びに更なるエンジン故障及び使用流の故障の可能性を潜在的に減少するように、調整されてもよい。例えば、0.5次成分は0.5次閾値と比較されてもよい。一実施形態において、0.5次成分の振幅が0.5次閾値よりも大きい場合、潜在的故障は劣化シリンダであるかも知れない、しかしながら、0.5次成分の振幅が0.5次閾値よりも大きくない場合には、潜在的故障は、劣化ターボ過給機又は劣化クランクケースであるかも知れない。
【0051】
一実施形態において、潜在的故障はディスプレイ180を通じて機関車運転乗員に報告されてもよく、運転者は更なる劣化の可能性を低減するように、鉄道車両106の運転を調整してもよい。一実施形態において、潜在的故障を診断するメッセージが、通信システム190を用いて指令センターに送信されてもよい。
【0052】
一実施形態においてエンジン運転パラメータは、劣化シリンダを特定するように調整されてもよい。例えば、劣化シリンダは、エンジンの1つ以上のシリンダへの燃料注入の選択的な無効化に基づいて、特定されてもよい。一実施形態において、燃料注入は、発電機データ及び関連する周波数成分のうちの1つ以上が監視されている間に、一列になった複数のシリンダの各シリンダに対して、無効化されてもよい。例えば、1つのシリンダへの燃料注入は、別のシリンダが正常に運転している間に無効化されてもよい。列中の各シリンダを無効化することにより、劣化シリンダが特定されるだろう。別の例として、一群のシリンダへの燃料注入は、別のシリンダが正常に運転している間に無効化されてもよい。異なる群を順次サイクリングすることによって、劣化シリンダは消去法で特定されるだろう。
【0053】
一例において、発電機データの0.5次周波数成分は、4ストロークエンジンの各無効シリンダについて監視されてもよい。シリンダが無効化されている間に0.5次周波数成分が0.5次閾値未満に低下したとき、無効シリンダは劣化シリンダであろう。シリンダが無効化されている間に0.5次周波数成分が0.5次閾値より高いままであるとき、無効シリンダは健全なシリンダであろう。言い換えると、劣化シリンダは、その他のシリンダよりも0.5次周波数成分でのより多くの周波数成分に寄与するシリンダであろう。一実施形態において、選択的無効化診断は、エンジンがアイドリング運転しているか又はわずかな負荷がかかっているときに、実行されてもよい。
【0054】
一実施形態において、選択的無効化診断は更に、エンジン速度等のエンジン運転パラメータの周波数成分に、基づいてもよい。例えば、エンジン速度は、劣化シリンダが運転しているときの0.5次周波数成分の周波数成分を含んでもよい。このため、各シリンダを選択的に無効化している間に様々なエンジン運転パラメータの周波数成分を観察することで、劣化シリンダを特定してもよい。
【0055】
一実施形態において、劣化シリンダは、エンジンの1つ以上のシリンダへの燃料注入を選択的に変動させることに基づいて、特定されてもよい。例えば、燃料は、発電機データの0.5次周波数成分が監視されている間に、各シリンダに対して選択的に増加又は減少させられてもよい。更に、各シリンダの、例えば周波数成分等のシグネチャは、エンジンの履歴データ又は健全なエンジンと比較されてもよい。例えば、基準シグネチャを生成するために、健全なエンジンに対して診断検査が行われてもよい。基準シグネチャはその後、エンジンが診断されている間の周波数成分と比較されてもよい。一実施形態において、劣化シリンダは、エンジン燃料注入タイミングを変動させることによって、特定されてもよい。例えば、劣化シリンダを診断するために、進み角調整が用いられてもよい。例えば、
エンジン燃料注入タイミングは、0.5次周波数成分の周波数成分を潜在的に増加させるために、遅延させられてもよい。
【0056】
エンジンに対して更なる損傷を引き起こしそうに故障する劣化シリンダを有するよりも、エンジンを停止する方が、より望ましいだろう。一実施形態において、潜在的故障が重症であるためにエンジンの連続運転が望ましくなくなる閾値が、決定されてもよい。例えば、0.5次周波数成分の振幅が閾値を超えた場合に、潜在的故障は重症であると判断されてもよい。潜在的故障の重症度が閾値を超えた場合には、エンジンが停止されてもよい。
【0057】
修理の予定を組む要求は、例えば通信システム190を通じて送られたメッセージ等によって、送られてもよい。更に、潜在的故障状態及び潜在的故障の重症度を送ることによって、鉄道車両106のダウンタイムが短縮されるだろう。例えば、潜在的故障の重症度が低いとき、鉄道車両106に対する修理は延期されてもよい。ダウンタイムは、診断された状態に基づいてエンジン運転パラメータを調整することによって等、エンジンの出力を低下させることによって、更に短縮されるだろう。エンジンの出力低下が可能であるか否かが判断されてもよい。例えば、エンジンの出力を低下させることで、発電機データの周波数成分の1つ以上の成分の振幅を減少させてもよい。
【0058】
エンジン運転パラメータは、例えば劣化部品の更なる劣化を抑制する等のために、調整されてもよい。一実施形態において、エンジン速度又は出力が調節されてもよい。一実施形態において、その他のシリンダの運転を続けながら、潜在的に劣化しているシリンダへの燃料注入は、減少又は無効化されてもよい。このため、エンジンは運転し続けてもよく、劣化シリンダの更なる劣化は低減されるだろう。このようにして、エンジンは、エンジン部品の更なる劣化を潜在的に減少するように、並びに破滅的なエンジン故障及び道路不具合の可能性を減少するように、調整されてもよい。
【0059】
一実施形態において、発電機データの周波数成分を特定するため、及び発電機に関わる発電機データの周波数成分に基づいてエンジンの状態を診断するために、検査キットが使用されてもよい。例えば、検査キットは、1つ以上の発電機センサと通信可能であって、関連する発電機データをサンプリングすることが可能な、コントローラを含んでもよい。コントローラは更に、1つ以上の発電機センサからの信号を、エンジンの周波数情報を表す周波数成分に変換するようになっていてもよい。コントローラは更に、発電機センサからの発電機データの周波数成分に基づいて、エンジンの状態を診断することも、可能であってもよい。検査キットは、発電機パラメータ(例えば、発電機出力電圧)及び/又はエンジンパラメータ(例えば、エンジン速度)を検知するための、1つ以上のセンサを更に含んでもよい。
【0060】
明細書及び請求項において、多くの用語に言及されるが、これらは以下の意味を持つ。単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈で別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。明細書及び請求項を通じて使用されるような、近似的な言語は、それが関わる基本的機能の変化を生じることなく許容範囲内で変動する可能性のあるいずれかの定量的表現を修飾するために、適用されてもよい。相応に、「約(about)」等の用語によって修飾される値は、指定された正確な値に限定されるものではない。いくつかの例において、近似的言語は、値を測定するための計器の精度に対応してもよい。同様に、「フリー(free)」は、ある用語と組み合わせて使用されてもよく、やはり修飾された用語を含まないと見なされる一方、ごくわずかな数、又は微量を含んでもよい。又、別途具体的に指定されない限り、「第一(first)」、「第二(second)」等の用語のいずれの使用も、いずれかの順番又は重要性を表すものではなく、むしろ「第一」、「第二」等の用語は、ある要素を別の要素と区別するために使用される。
【0061】
本明細書において使用される際に、「may」及び「may be」(かも知れない、してもよい、等)は、一連の状況での発生可能性;特定の特性、特徴、又は機能を有すること;及び/又は被修飾動詞に関わる能力、機能性、又は可能性のうちの1つ以上を表すことによって別の動詞を修飾すること、を示す。相応に、「may」及び「may be」の用法は、いくつかの状況においては修飾された用語が適当、可能、又は適切ではない場合があるかも知れないことを考慮に入れつつ、修飾された用語が指定された能力、機能、又は仕様にとって明らかに適当、可能、又は適切であることを示す。例えば、いくつかの状況ではある事象又は能力が期待されるが、一方で別の状況ではその事象又は能力は発生し得ない-この違いは、「may」及び「may be」という用語によって、捉えられる。「発電機」及び「交流電源」という用語は、本明細書において交換可能に使用される(しかしながら、用途に応じて一方又は他方の用語の方がより適切であろう)。「周波数成分」及び「高調波内容」という用語は、本明細書において交換可能に使用され、基本成分より上及び下の基本周波数(及び/又は位相)成分及び関連する高調波周波数(及び/又は位相)成分を指すことができる。コントローラ又はプロセッサに関して本明細書において使用される「指令(instruction)」という用語は、コンピュータ実行可能な指令を指してもよい。本明細書において使用される際に、「速度」、「速度データ」、及び[速度信号」という用語は、エンジンの回転速度、測定されたエンジン速度の高調波内容、周期ごとのエンジンの測定速度の差、エンジンが定められた角度にわたって回転するのにかかる時間の差、及び複数の時間間隔を指すことができ、各時間間隔は、指定された角度にわたってエンジンが回転するのにかかる時間に相当する。
【0062】
本明細書に記載された実施形態は、請求項に記載される本発明の要素に対応する要素を有する物品、システム、及び方法の例である。本明細書は、同じく請求項に記載される本発明の要素に対応する代替要素を有する実施形態を、当業者が作成及び使用することを、可能にするだろう。このため本発明の範囲は、請求項の文言と相違のない物品、システム、及び方法を含み、請求項の文言とわずかな相違しかないその他の物品、システム、及び方法を更に含む。特定の特徴及び実施形態のみが本明細書に図解及び記載されてきたものの、多くの改良及び変更が、関連技術の当業者によって想起されてもよい。添付請求項は、このような改良及び変更の全てを包含する。