IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フタバ産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-排気管バルブ 図1
  • 特許-排気管バルブ 図2
  • 特許-排気管バルブ 図3
  • 特許-排気管バルブ 図4
  • 特許-排気管バルブ 図5
  • 特許-排気管バルブ 図6
  • 特許-排気管バルブ 図7
  • 特許-排気管バルブ 図8
  • 特許-排気管バルブ 図9
  • 特許-排気管バルブ 図10
  • 特許-排気管バルブ 図11
  • 特許-排気管バルブ 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】排気管バルブ
(51)【国際特許分類】
   F01N 1/08 20060101AFI20221213BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20221213BHJP
【FI】
F01N1/08 A
F01N1/08 F
F01N1/08 G
F01N13/08 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019231759
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021099078
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】都築 裕介
(72)【発明者】
【氏名】梶川 正博
(72)【発明者】
【氏名】太田 和真
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正也
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-058114(JP,U)
【文献】特開昭49-127064(JP,A)
【文献】特開平01-224539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/08
F01N 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気管に配置される排気管バルブであって、
長手方向に沿って内部を排気が通過するように構成された中空の筒部と、
初期位置にて前記筒部内の少なくとも一部を閉塞し、前記長手方向に移動可能に構成され、前記初期位置から移動すると前記筒部内を開放するように構成された移動弁と、
一端が前記移動弁に接続され、前記移動弁の移動に伴って伸縮する第1スプリングと、
一端が前記筒部に接続され、他端が前記第1スプリングに直列に接続され、前記移動弁の移動に伴って伸縮する第2スプリングと、
前記第2スプリングに初期荷重が付された状態で、前記第1スプリング及び前記第2スプリングの接続部位が、前記第2スプリングへの荷重が大きくなる方向に移動することを許容し、かつ前記第2スプリングへの荷重が小さくなる方向に移動することを抑制するように構成された抑制機構と、
を備え
前記抑制機構として、ストッパを有する支持棒と、抑制部材と、を備え、
前記抑制部材は、前記第1スプリング及び前記第2スプリングの接続部位に配置され、前記第2スプリングへの荷重が大きくなる方向に移動することを許容し、かつ前記ストッパに係止されることによって、前記第2スプリングへの荷重が小さくなる方向に移動することを抑制するように構成され、
前記支持棒は、前記抑制部材に挿通され、
前記ストッパは、前記抑制部材と係止されることで前記抑制部材の前記移動弁側への移動を抑制する、
ように構成された排気管バルブ。
【請求項2】
請求項1に記載の排気管バルブであって、
前記筒部には、前記長手方向において、前記移動弁の前記初期位置よりも前記第1スプリング側に、前記筒部の外部と連通する少なくとも1つの孔部、
をさらに備える排気管バルブ。
【請求項3】
請求項に記載の排気管バルブであって、
前記孔部は、前記長手方向に沿って延びる開口を備える
排気管バルブ。
【請求項4】
請求項1から請求項の何れか1項に記載の排気管バルブであって、
前記第1スプリングの伸縮についてのバネ定数は、前記第2スプリングの伸縮についてのバネ定数よりも大きく設定される
排気管バルブ。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の排気管バルブであって、
前記第1スプリングには、前記移動弁が前記初期位置に位置する際に、前記移動弁が移動しようとする力に抗するように抵抗荷重が付されている
排気管バルブ。
【請求項6】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の排気管バルブであって、
当該排気管バルブは、消音器の内部に配置される
排気管バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の排気管に配置される排気管バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、排気の流路を閉塞する移動弁が、コイルスプリングで保持された状態で排気管内に配置され、この移動弁がスライドすることで流路の開度が変更されるように構成された排気管バルブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-061040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、排気管バルブにおいては、排気の圧力に応じて適切な開度になることが求められる。しかしながら、上記特許文献1の排気管バルブでは、バルブの開度はコイルスプリングの線形的な特性に依存するため、適切な開度が得られない場合があることが分かった。
【0005】
具体的には、上記特許文献1の排気管バルブにおいて、例えば、排気管が低圧のときにバルブが開きにくく、かつ排気管が高圧のときにバルブが開きやすくしたいとする。この場合、排気管が低圧のときにバルブが開きにくく設定すると、排気管が高圧のときにもバルブが開きにくくなってしまう。また、上記特許文献1の排気管バルブでは、排気管が高圧のときにバルブが開きやすく設定すると、排気管が低圧のときにもバルブが開きやすくなってしまう。
【0006】
本開示の1つの局面は、内燃機関の排気管に配置される排気管バルブにおいて、バルブの開度をより適切に設定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、内燃機関の排気管に配置される排気管バルブであって、筒部と、移動弁と、第1スプリングと、第2スプリングと、抑制機構と、を備える。
筒部は、長手方向に沿って内部を排気が通過するように構成され、中空に構成される。移動弁は、初期位置にて筒部内の少なくとも一部を閉塞し、長手方向に移動可能に構成され、初期位置から移動すると筒部内を開放するように構成される。第1スプリングは、一端が移動弁に接続され、移動弁の移動に伴って伸縮するように構成される。第2スプリングは、一端が筒部に接続され、他端が第1スプリングに直列に接続され、移動弁の移動に伴って伸縮するように構成される。
【0008】
抑制機構は、第2スプリングに初期荷重が付された状態で、第1スプリング及び第2スプリングの接続部位が、第2スプリングへの荷重が大きくなる方向に移動することを許容し、かつ第2スプリングへの荷重が小さくなる方向に移動することを抑制するように構成される。
【0009】
このような構成では、バルブが閉じた状態から開いた状態に遷移するとき、バルブを開こうとする力(換言すれば、バルブを開こうとする荷重)が第2スプリングの初期荷重と一致するまでは、第1スプリングのみがバルブを開こうとする力の抵抗となる。また、バルブを開こうとする力が第2スプリングの初期荷重を超えると、直列に接続された第1スプリング及び第2スプリングがバルブを開こうとする力の抵抗となるため、バルブを開こうとする力の抵抗は、第1スプリングのみが存在する場合よりも小さくなる。よって、このような構成によれば、バルブを開こうとする力とバルブの開度との関係が非線形になるようにすることができる。
【0010】
本開示の一態様は、抑制機構として、抑制部材をさらに備えてもよい。抑制部材は、第1スプリング及び第2スプリングの接続部位に配置され、第2スプリングへの荷重が大きくなる方向に移動することを許容し、かつ筒部に係止されることによって、第2スプリングへの荷重が小さくなる方向に移動することを抑制するように構成される。
【0011】
このような構成によれば、筒部に係止される抑制部材を用いて第2スプリングを保持することができるので、抑制機構の構成を簡素な構成とすることができる。
本開示の一態様では、筒部には、長手方向において、移動弁の初期位置よりも第1スプリング側に、筒部の外部と連通する少なくとも1つの孔部、をさらに備えてもよい。
【0012】
このような構成によれば、移動弁が移動すると筒部に設けられた孔部から排気が外部に逃げやすくすることができるよって、排気管の圧力を良好に低下させることができる。
本開示の一態様では、孔部は、長手方向に沿って延びる開口を備えてもよい。
【0013】
このような構成によれば、移動弁の変位が大きくなるにつれて孔の開口面積が大きくなるように構成することができる。
本開示の一態様では、第1スプリングの伸縮についてのバネ定数は、第2スプリングの伸縮についてのバネ定数よりも大きく設定されてもよい。
【0014】
このような構成によれば、移動弁の移動量が少ないときには、移動弁を移動させようとする力の増加に対して移動弁の移動量を小さくすることができ、初期荷重を超えてからは、移動弁を移動させようとする力の増加に対して移動弁の移動量を大きくすることができる。
【0015】
本開示の一態様では、第1スプリングには、移動弁が初期位置に位置する際に、移動弁が移動しようとする力に抗するように抵抗荷重が付されていてもよい。
このような構成によれば、第1スプリングに抵抗荷重が付されているので、バルブが開こうとする力が抵抗荷重を超えるまでは、バルブが開きにくいように構成することができる。
【0016】
本開示の一態様では、当該排気管バルブは、消音器の内部に配置されてもよい。
このような構成によれば、排気管バルブが消音器の内部に配置されるので、排気の圧力が低いときには、バルブを閉じて消音性能を高め、排気の圧力が高いときには、バルブを開いて排気の圧力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の排気管バルブの斜視図である。
図2】実施形態の排気管バルブのII-II断面図である。
図3】実施形態の排気管バルブが開いた状態を示す断面図である。
図4】バルブを開こうする力(荷重)と移動弁の移動量との関係の一例を示すグラフである。
図5】実施形態の排気管バルブの配置例を示す説明図である。
図6】変形例の排気管バルブの配置例を示す説明図である。
図7】変形例の排気管バルブの斜視図である。
図8】変形例の排気管バルブのVIII-VIII断面図である。
図9】変形例の排気管バルブが開いた状態を示す断面図である。
図10】別の変形例の排気管バルブの斜視図である。
図11】別の変形例の排気管バルブのXI-XI断面図である。
図12】別の変形例の排気管バルブが開いた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.実施形態]
[1-1.構成]
図1及び図2に示す排気管バルブ1Aは、内燃機関の排気管の任意の部位に配置されるスライドバルブである。排気管バルブ1Aは、筒部11と、移動弁15と、第1スプリング20Aと、第2スプリング30Aと、抑制機構40Aと、を備える。
【0019】
筒部11は、排気管の一部を構成し、長手方向に沿って内部を排気が通過するように、中空に構成される。長手方向とは、筒部11の中心軸に沿う方向である。筒部11は、先端部11Aと、底部11Bと、複数の孔部11Cとを備える。先端部11Aは、筒部11における排気の流れの最も上流側に位置する部位である。底部11Bは、筒部11における先端部11Aとは反対側の端、すなわち排気の流れの下流側に位置し、長手方向に直交する板状の部材にて筒部11の底面を構成する部位である。
【0020】
複数の孔部11Cは、それぞれ、筒部11の側面において長手方向に沿って延びる開口として構成される。複数の孔部11Cは、筒部11の周方向の長さよりも長手方向の長さが大きくなるように構成される。複数の孔部11Cは、移動弁15の初期位置よりも底部11B側にて配置され、筒部11の内部と外部とを連通させる機能を有する。
【0021】
複数の孔部11Cは、移動弁15が初期位置から底部11B側に移動するにつれて、筒部11における流路の開口面積が大きくなるように、換言すれば、バルブの開度が大きくなるように設定される。
【0022】
なお、複数の孔部11Cは、周方向に等間隔に設けられてもよい。さらに、複数の孔部11Cを、下流側に向かって開口の総面積が大きくなるように形成してもよい。例えば、複数の孔部11Cの形状は、三角形状としたり、その他の多角形状としたり、円形状や円弧形状としたり、多数の小孔の集まりとしたりしてもよい。
【0023】
また、例えば、複数の孔部11Cが三角形状の場合には、頂点の1つを上流側に位置させ、他の2つの頂点を下流側に位置させてもよい。また、複数の孔部11Cが多数の小孔である場合には、下流側の孔の数を多くしたり、下流側の孔の大きさを上流側の孔の大きさよりも大きくしたりしてもよい。ただし、これらは一例であり、これらに限定されない。
【0024】
移動弁15は、初期位置にて筒部11の少なくとも一部を閉塞した状態、すなわちバルブが閉じた状態となる。そして、移動弁15は、排気の圧力等の外力、換言すれば、移動弁15を底部11B側に移動させようとする力、さらに換言すれば、バルブを開こうとする力によって、筒部11の長手方向に移動可能に構成される。移動弁15が初期位置から下流側に移動すると、移動弁15に隔てられていた筒部11の上流側の空間と、孔部11Cとが連通し、筒部11内を開放した状態、すなわちバルブが開いた状態となる。ただし、バルブが閉じた状態において、排気の一部が排気管バルブ1Aを通過することを許容してもよい。図1及び図2では、バルブが閉じた状態を図示している。
【0025】
ここで、移動弁15の初期位置は、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aが最も伸びた状態での移動弁15の位置を表す。排気の圧力等によって、バルブを開こうとする力が移動弁15に加わり、移動弁15が初期位置から下流側に移動すると、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aは圧縮される。この際、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aは、移動弁15を初期位置に戻そうとする力、換言すれば、移動弁15の移動量に応じた大きさの、バルブを閉じようとする力を発生させる。
【0026】
移動弁15は、内部が空洞となった半球状に形成されており、この半球状の部位から複数の孔部11C側に突出する複数の羽部15Aを備える。複数の羽部15Aは、複数の孔部11C毎に配置される。移動弁15の初期位置では、複数の羽部15Aが複数の孔部11Cにおける排気の上流側の部位に接触した状態となる。
【0027】
第1スプリング20Aは、図2に示すように、本体部21と、上流側接続部22と、下流側接続部23と、を備える。また、第2スプリング30Aは、同様に、本体部31と、上流側接続部32と、下流側接続部33と、を備える。なお、図2等の断面図においては、理解を容易にするために、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aを端面図として表記する。
【0028】
第1スプリング20Aの本体部21、上流側接続部22、及び下流側接続部23は、一部材にて構成され、また、第2スプリング30Aの本体部31、上流側接続部32、及び下流側接続部33は、一部材にて構成される。
【0029】
本体部21,31は、線状に形成された金属部材が周方向に巻回され、巻回されて隣接する金属部材との間隔が所定のピッチとなるように構成されるコイルスプリングである。本体部21,31は、圧縮されると反発力を生じる圧縮コイルバネとして機能する。本体部21,31の任意の位置において、本体部21,31を構成する金属部材が描く円弧の中心は、筒部11の中心軸上に位置する。
【0030】
換言すれば、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aの中心軸は、筒部11の中心軸と同軸上になるように配置される。ただし、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aの中心軸とは、金属部材が描く円弧の中心の全てが通過する直線を表す。
【0031】
上流側接続部22,32は、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aにおける長手方向上流側の部材と接続される部位である。詳細には、第1スプリング20Aの上流側接続部22は、長手方向上流側の部材である移動弁15に接続される。第2スプリング30Aの上流側接続部32は、長手方向上流側の部材である後述する抑制部材41Aに接続される。
【0032】
下流側接続部23,33は、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aにおける長手方向下流側の部材と接続される部位である。第1スプリング20Aの下流側接続部23は、長手方向下流側の部材である抑制部材41Aに接続される。第2スプリング30Aの下流側接続部33は、長手方向下流側の部材である底部11Bに接続される。第2スプリング30Aは、底部11Bを介して筒部11に固定される。一方で、第1スプリング20Aは、上流側接続部22及び下流側接続部23が移動可能に構成される。
【0033】
この構成により、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aは、抑制部材41Aを介して直列に接続される。ここで、本開示及び本明細書において、「直列に接続される」とは、概ね、下記の関係式を満たすことを示す。ただし、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aの圧縮コイルバネとしての合成バネ定数K、第1スプリング20Aの圧縮コイルバネとしてのバネ定数K、及び第2スプリング30Aの圧縮コイルバネとしてのバネ定数Kとする。
【0034】
【数1】
【0035】
つまり、この関係式を概ね満たせば、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aが同軸上に配置される必要はない。また、後述するように、抑制部材41Aが自由に移動できる状況において、この関係式が満たされればよく、抑制部材41Aが固定される状況においては、この関係式を満たす必要はない。
【0036】
抑制機構40Aは、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aの接続部位が、第2スプリング30Aへの荷重が大きくなるように移動することを許容する機能を有する。かつ、抑制機構40Aは、接続部位が、第2スプリング30Aへの荷重が所定の初期荷重よりも小さくなるように移動することを抑制する機能を有する。本実施形態の抑制機構40Aとしては、抑制部材41Aと、支持棒42Aと、上流側ストッパ43と、下流側ストッパ44と、を備える。
【0037】
抑制部材41Aは、前述のように、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aの接続部位に配置される円盤状の部材である。抑制部材41Aは、中心に支持棒42Aが挿通されており、支持棒42Aの長手方向に沿ってスライドすることで移動可能に構成される。
【0038】
上流側ストッパ43及び下流側ストッパ44は、支持棒42Aよりも外径が大きく設定されている。上流側ストッパ43は、抑制部材41Aの移動弁15側への移動を抑制することで、抑制部材41Aが支持棒42Aから抜け落ちることを抑制する。下流側ストッパ44は、底部11Bから支持棒42Aが抜け落ちることを抑制する。
【0039】
つまり、抑制部材41Aは、第2スプリング30Aへの荷重が大きくなる方向に移動することを許容し、かつ上流側ストッパ43に係止されることによって第2スプリング30Aへの荷重が小さくなる方向に移動することを抑制するように構成される。「係止」とは、ある部材がある方向に移動することで他の部材と接触し、その移動が抑制されることを示す。
【0040】
ここで、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aは、それぞれ、移動弁15を上流側に押し付け、バルブを閉じようとする力が発生するように、予め圧縮された状態で配置される。バルブを閉じようとする力は、換言すれば、バルブを開こうとする力に抗する力である。
【0041】
なお、移動弁15が初期位置に位置する際に第1スプリング20Aにて発生する、バルブを閉じようとする力を抵抗荷重と称する。また、移動弁15が初期位置に位置する際に第2スプリング30Aにて発生する、バルブを閉じようとする力を初期荷重と称する。
【0042】
抵抗荷重は、第1スプリング20Aの変位量と第1スプリング20Aの圧縮コイルバネとしてバネ定数Kとの積にて表される。また、初期荷重は、第2スプリング30Aの変位量と第2スプリング30Aの圧縮コイルバネとしてバネ定数Kとの積にて表される。
【0043】
初期荷重は、抵抗荷重よりも大きく設定される。また、第1スプリング20Aのバネ定数Kは、第2スプリング30Aのバネ定数Kよりも大きく設定される。このような構成では、抑制部材41Aは、図2に示すように、移動弁15の羽部15Aが筒部11に対して接触した状態である際に、抑制部材41Aが上流側ストッパ43と接触した状態となる。
【0044】
ここで、排気管バルブ1Aが排気の圧力等の外力により開かれる場合の作動について図2図4を用いて説明する。図4に示すように、第1スプリング20Aには抵抗荷重が付されているため、移動弁15に加わるバルブを開こうとする力が、抵抗荷重と一致するまではバルブが開くことが抑制され、バルブが閉じた状態が維持されやすくなる。
【0045】
移動弁15に加わるバルブを開こうとする力が、抵抗荷重を超えると、図2の破線にて示すように、バルブが開き始める。このとき、バルブを開こうとする力が初期荷重と一致するまでは、第1スプリング20Aが縮み、抑制部材41Aは上流側ストッパ43と接触した状態が維持される。つまり、バルブを開こうとする力が初期荷重と一致するまでは、バルブを開こうとする力に対して、第1スプリング20Aのみが抵抗となる。
【0046】
バルブを開こうとする力が抵抗荷重を超え、初期荷重と一致するまでの間において、バルブを開こうとする力と移動弁15の移動量との関係は、図4に示すように、第1スプリング20Aのバネ定数Kを傾きとする一次関数で表記できる。この際、移動弁15の移動に伴って、孔部11Cの開口面積が徐々に大きくなり、バルブは徐々に開放される。
【0047】
移動弁15に加わるバルブを開こうとする力が、初期荷重を超えると、図3に示すように、さらにバルブが開いた状態となる。このとき、抑制部材41Aは、上流側ストッパ43から離れ、底部11B側に移動する。そして、バルブを開こうとする力に対しては、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aが抵抗となる。
【0048】
この状態では、図4に示すように、バルブを開こうとする力と移動弁15の移動量との関係は、1/(1/K+1/K)を傾きとする一次関数で表記できる。つまり、バルブを開こうとする力に対する抵抗は、第1スプリング20Aのみが存在する場合よりも小さくなる。そして、バルブを開こうとする力と移動弁15の移動量との関係を非線形にすることができる。この際、第1スプリング20Aのみが抵抗となる場合よりも、移動弁15が移動しやすくなるため、孔部11Cの開口面積は急激に大きくなり、孔部11Cは急激に開放される。
【0049】
この構成では、内燃機関が低回転であり、排気管における排気の圧力が低いときには、比較的、バルブが開きにくく設定でき、内燃機関で発生する低周波数ノイズを排気管の外部に漏れにくくすることができる。また、内燃機関が高回転であり、排気管における排気の圧力が高いときには、比較的、バルブを開きやすく設定でき、排気管の圧力を速やかに低減し、内燃機関の燃費向上に寄与することができる。
【0050】
[1-2.配置例]
排気管バルブ1Aは、図5に示すように、例えば、消音器50の内部に配置される。消音器50は排気が導入される排気管の一部を構成する。消音器50は、筐体51と、インレットパイプ52と、アウトレットパイプ53と、を備える。筐体51は、内部に、隔壁56にて仕切られた第1室54及び第2室55を備える。
【0051】
インレットパイプ52は、内燃機関に繋がる排気管に接続され、第1室54を貫通して第2室55に繋がるように配置される。アウトレットパイプ53は、第1室54から第2室55を貫通し、外気と連通する排気管に繋がるように配置される。
【0052】
インレットパイプ52における第1室54を貫通する部位には、複数の孔部52Aが形成されている。消音器50では、複数の孔部52Aによって、バルブが閉じた状態での排気の流路が確保される。
【0053】
消音器50内部の第2室55におけるインレットパイプ52の先端部には、前述の排気管バルブ1Aが配置される。第1室54は、拡張室として機能する。第2室55は、バルブが閉じた状態では共鳴室として機能し、バルブが開いた状態では拡張室として機能する。
【0054】
[1-3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1a)本開示の一態様は、内燃機関の排気管に配置される排気管バルブ1Aであって、筒部11と、移動弁15と、第1スプリング20Aと、第2スプリング30Aと、抑制機構40Aと、を備える。
【0055】
筒部11は、長手方向に沿って内部を排気が通過するように構成され、中空に構成される。移動弁15は、初期位置にて筒部11の少なくとも一部を閉塞し、長手方向に移動可能に構成され、初期位置から移動すると前記筒部内を開放するように構成される。第1スプリング20Aは、一端が移動弁15に接続され、移動弁15の移動に伴って伸縮するように構成される。第2スプリング30Aは、一端が筒部11に接続され、他端が第1スプリング20Aに直列に接続され、移動弁15の移動に伴って伸縮するように構成される。
【0056】
抑制機構40Aは、第2スプリング30Aに初期荷重が付された状態で、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aの接続部位が、第2スプリング30Aへの荷重が大きくなる方向に移動することを許容し、かつ第2スプリング30Aへの荷重が小さくなる方向に移動することを抑制するように構成される。
【0057】
このような構成では、バルブが閉じた状態から開いた状態に遷移するとき、バルブを開こうとする力が第2スプリング30Aの初期荷重と一致するまでは、第1スプリング20Aのみがバルブを開こうとする力の抵抗となる。また、バルブを開こうとする力が第2スプリング30Aの初期荷重を超えると、直列に接続された第1スプリング20A及び第2スプリング30Aがバルブを開こうとする力の抵抗となるため、バルブを開こうとする力の抵抗は、第1スプリング20Aのみが存在する場合よりも小さくなる。
【0058】
よって、このような構成によれば、バルブを開こうとする力とバルブの開度との関係が非線形になるようにすることができる。また、このような構成によれば、移動弁15が長手方向に沿って移動する構成であるため、バルブが閉じた状態、及びバルブが開いた状態の何れにおいても、排気が均一に移動弁15に当たるように構成することができる。
【0059】
(1b)本開示の一態様は、抑制機構40Aとして、抑制部材41A、をさらに備える。抑制部材41Aは、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aの接続部位に配置され、第2スプリング30Aへの荷重が大きくなる方向に移動することを許容するように構成される。かつ抑制部材41Aは、筒部11に係止されることによって、第2スプリング30Aへの荷重が小さくなる方向に移動することを抑制するように構成される。
【0060】
このような構成によれば、筒部11に係止される抑制部材41Aを用いて第2スプリング30Aを保持することができるので、抑制機構40Aの構成を簡素な構成とすることができる。
【0061】
(1c)本開示の一態様では、筒部11には、長手方向において、移動弁15の初期位置よりも第1スプリング20A側に、筒部11の外部と連通する少なくとも1つの孔部11C、をさらに備える。
【0062】
このような構成によれば、移動弁15が移動すると筒部11に設けられた孔部11Cから排気が外部に逃げやすくすることができる。よって、排気管の圧力を良好に低下させることができる。
【0063】
(1d)本開示の一態様では、孔部11Cは、長手方向に沿って延びる開口を備える。
このような構成によれば、移動弁15の変位が大きくなるにつれて孔の開口面積が大きくなるように構成することができる。
【0064】
(1e)本開示の一態様では、第1スプリング20Aの伸縮についてのバネ定数は、第2スプリング30Aの伸縮についてのバネ定数よりも大きく設定される。
このような構成によれば、移動弁15の移動量が少ないときには、移動弁15を移動させようとする力の増加に対してバルブの開度を小さくすることができ、初期荷重を超えてからは、移動弁15を移動させようとする力の増加に対してバルブの開度を大きくすることができる。
【0065】
(1f)本開示の一態様では、第1スプリング20Aには、移動弁15が初期位置に位置する際に、移動弁15が移動しようとする力に抗するように抵抗荷重が付されている。
このような構成によれば、第1スプリング20Aに抵抗荷重が付されているので、バルブが開こうとする力が抵抗荷重を超えるまでは、バルブが開きにくいように構成することができる。
【0066】
(1g)本開示の一態様では、当該排気管バルブ1Aは、消音器50の内部に配置される。
このような構成によれば、排気管バルブ1Aが消音器50の内部に配置されるので、排気の圧力が低いときには、バルブを閉じて消音性能を高め、排気の圧力が高いときには、バルブを開いて排気の圧力を低減することができる。
【0067】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は前述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。下記の構成であっても、上記実施形態と同様の効果を享受できる。
【0068】
(2a)上記実施形態では、消音器50内部に排気管バルブ1Aを配置したが、これに限定されるものではない。例えば、消音器50の内部に限らず、図6に示す排気管60のように、消音器50以外の排気管本体61の内部に排気管バルブ1Aを配置してもよい。
【0069】
図6に示す例では、排気管60は、中空筒状の排気管本体61と、排気管60における排気の上流側及び下流側を仕切る仕切壁62を備え、仕切壁62に排気管バルブ1Aが配置される。この構成では、排気管バルブ1Aを、排気や水等が逆流して排気管60の上流側に侵入することを抑制する逆止弁として機能させることができる。
【0070】
(2b)排気管バルブ1Aの構成は、排気管バルブ1Aに限らず、種々の構成を採用できる。詳細には、以下に示すような構成を採用してもよい。
(2b-1)例えば、図7に示す排気管バルブ1Bでは、抑制機構40Aに換えて、抑制機構40Bを備える。抑制機構40Bでは、図8に示すように、抑制部材41Aに加えて移動弁15を貫通する支持棒42Bが備えられる。また、抑制機構40Bでは、支持棒42Bの上流側に、弁ストッパ45が備えられる。弁ストッパ45は、支持棒42Bよりも外径が大きく設定されている。弁ストッパ45は、移動弁15の上流側への移動を抑制し、移動弁15が支持棒42Bから抜け落ちることを抑制する。
【0071】
この構成では、図8及び図9に示すように、移動弁15は、支持棒42Bに沿ってスライドするように構成できる。よって、移動弁15の軸がぶれにくくすることができ、移動弁15を安定して移動させることができる。
【0072】
(2b-2)また例えば、図10に示す排気管バルブ1Cでは、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aに換えて、第1スプリング20B及び第2スプリング30Bを備え、抑制機構40Aに換えて、抑制機構40Cを備える。第1スプリング20B及び第2スプリング30Bは、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aとは異なる位置で抑制部材41Cに接続されるため、長さ、バネ定数等が適宜調整される。また、第2スプリング30Bは、第1スプリング20Bよりも外径が小さく設定される。
【0073】
抑制機構40Cでは、抑制部材41Aに換えて、抑制部材41Cを備える。抑制部材41Cは、図11に示すように、大径部411及び小径部412をさらに備える。抑制部材41Cは、ハット型に構成され、大径部411は、ハットのブリムを構成し、小径部412は、ハットのトップクラウン及びサイドクラウンを構成する。
【0074】
また、大径部411は、筒部11の内径と略一致する外径を有する部位である。第1スプリング20Bは、大径部411の移動弁15側の部位に接続される。
小径部412は、大径部411及び第1スプリング20Bの内径よりも小さな外径を有する部位であり、第2スプリング30Bの外形よりも大きな内径を有する部位である。小径部412は、大径部411よりも移動弁15側に突出して配置される。第2スプリング30Bは、小径部412における底部11B側に接続される。なお、第2スプリング30Bは、第1スプリング20Bの接続部位よりも上流側にて小径部412に接続される。
【0075】
この構成では、図11及び図12に示すように、移動弁15は、移動する際に、スプリング20B及び30Bがオーバーラップして配置されるので、スプリング20B及び30Bが伸縮するためのスペースを有効利用することができる。換言すれば、排気管バルブ1Cを省スペース化することができる。
【0076】
(2c)上記実施形態では、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aは、筒部11の中心軸と同軸上に配置されたが、これに限定されるものではない。例えば、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aは、筒部11の中心軸とは異なる軸上に配置されてもよい。また、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aは、互いに異なる軸上に配置されてもよい。
【0077】
(2d)上記実施形態では、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aを別部材として構成したが、第2スプリング30Aは、第1スプリング20Aと一体に構成されていてもよい。この場合、抑制機構40A(例えば、抑制部材41A)は、一体となった第1スプリング20A及び第2スプリング30Aに貫通される構成を適用できる。
【0078】
(2e)上記実施形態では、第1スプリング20Aのバネ定数Kは、第2スプリング30Aのバネ定数Kよりも大きく設定したが、これに限定されるものではない。例えば、第1スプリング20Aのバネ定数Kは、第2スプリング30Aのバネ定数Kよりも小さくてもよいし、同じでもよい。なお、第1スプリング20A、第2スプリング30Aは、圧縮コイルバネに限定されず、圧縮されると反発力を生じるバネ、例えば板バネなどでもよい。
【0079】
(2f)上記実施形態では、抑制部材41Aを用いて抑制機構40Aの機能を実現したが、これに限定されるものではない。例えば、抑制部材41Aを用いることなく、第1スプリング20A及び第2スプリング30Aの接続部位を筒部11の一部で係止する構成を採用してもよい。
【0080】
(2g)上記実施形態では、第2スプリング30Aは、底部11Bを介して筒部11に接続されるように構成したが、筒部11に対して、間接的に接続される必要はなく、筒部11に直接的に接続されてもよい。
【0081】
(2h)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0082】
(2i)前述した排気管バルブ1Aの他、当該排気管バルブ1Aを構成要素とするシステムなど、種々の形態で本開示を実現することもできる。
また、本開示の排気管バルブは、下記のように構成してもよい。すなわち、
内燃機関の排気管に配置される排気管バルブであって、
長手方向に沿って内部を排気が通過するように構成された中空の筒部と、
初期位置にて前記筒部内の少なくとも一部を閉塞し、前記長手方向に移動可能に構成され、前記初期位置から移動すると前記筒部内を開放するように構成された移動弁と、
一端が前記移動弁に接続され、他端が抑制機構に接続され、前記移動弁の移動に伴って伸縮する第1スプリングと、
一端が前記筒部に接続され、他端が前記抑制機構を介して、前記第1スプリングにばねの直列接続の関係になるように接続され、前記移動弁の移動に伴って伸縮する第2スプリングと、
前記第2スプリングに初期荷重が付された状態で、前記第1スプリング及び前記第2スプリングの接続部位が、前記第2スプリングへの荷重が大きくなる方向に移動することを許容し、かつ前記筒部に係止されることによって前記第2スプリングへの荷重が小さくなる方向に移動することを抑制するように構成された前記抑制機構と、
を備える排気管バルブ、
としてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1A,1B,1C…排気管バルブ、11…筒部、11A…先端部、11B…底部、11C…孔部、15…移動弁、15A…羽部、20A,20B…第1スプリング、21,31…本体部、22,32…上流側接続部、23,33…下流側接続部、30A,30B…第2スプリング、40A,40B,40C…抑制機構、41…抑制部材、41A…抑制部材、41C…抑制部材、42A,42B…支持棒、43…上流側ストッパ、44…下流側ストッパ、45…弁ストッパ、50…消音器、51…筐体、52…インレットパイプ、52A…孔部、53…アウトレットパイプ、54…第1室、55…第2室、56…隔壁、60…排気管、62…仕切壁、411…大径部、412…小径部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12