(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20221213BHJP
F16K 31/383 20060101ALI20221213BHJP
F15B 11/042 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
E02F9/22 K
F16K31/383
F15B11/042
(21)【出願番号】P 2019238879
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 賢人
(72)【発明者】
【氏名】井村 進也
(72)【発明者】
【氏名】杉山 玄六
(72)【発明者】
【氏名】小高 克明
(72)【発明者】
【氏名】釣賀 靖貴
(72)【発明者】
【氏名】千葉 孝昭
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-137968(JP,A)
【文献】特開2014-31827(JP,A)
【文献】特開2014-185665(JP,A)
【文献】特開2004-270900(JP,A)
【文献】特開平9-177711(JP,A)
【文献】特開平6-193604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
F16K 31/383
F15B 11/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に取り付けられた作業装置と、
前記車体または前記作業装置を駆動する複数のアクチュエータと、
油圧ポンプと、
前記油圧ポンプの吐出ラインにパラレルに接続されており、前記油圧ポンプから前記複数のアクチュエータに供給される圧油の流れを調整する複数の方向制御弁と、
前記複数のアクチュエータの動作を指示するための操作レバーと、
パイロットポンプと、
前記パイロットポンプから供給される圧油を減圧し前記複数の方向制御弁の操作圧として出力する電磁弁ユニットと、
前記操作レバーからの動作指示量に応じて前記電磁弁ユニットへ指令を出力するコントローラと、
前記複数の方向制御弁の各上流に配置され、前記油圧ポンプから前記複数の方向制御弁に供給される圧油の流量を制限する補助流量制御装置とを備えた作業機械において、
前記補助流量制御装置は、
シート型の主弁と、
前記主弁の弁体の移動量に応じて開口面積を変化させる制御可変絞りと、
前記主弁の下流側と前記制御可変絞りの下流側とを接続し、通過流量に応じて前記弁体の移動量を決定するパイロットラインと、
前記パイロットラインに配置され、前記コントローラからの指令に応じて開口面積を変化させるスプール型のパイロット可変絞りとを有し、
前記パイロット可変絞りの開口面積が所定の開口面積以上のときは、前記パイロット可変絞りの開口面積に応じて前記主弁の開口面積が最大開口量からゼロの間で変化し、
前記パイロット可変絞りの開口面積が前記所定の開口面積を下回ったときは、前記パイロット可変絞りの開口面積によらず前記主弁の開口面積がゼロとなるように構成された
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記補助流量制御装置は、
前記パイロット可変絞りの開口面積が前記所定の開口面積以上のときは、前記制御可変絞りの開口面積が前記パイロット可変絞りの開口面積の所定の係数倍となり、
前記パイロット可変絞りの開口面積が前記所定の開口面積を下回ったときは、前記制御可変絞りの開口面積が前記パイロット可変絞りの開口面積の前記所定の係数倍よりも大きくなるように構成された
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記パイロット可変絞りの前後差圧を検出する圧力センサを備え、
前記コントローラは、前記パイロット可変絞りの開口面積が前記所定の開口面積を下回ったときは、前記パイロット可変絞りの通過流量が前記補助流量制御装置の目標通過流量と一致するように、前記圧力センサで検出した前後差圧に基づいて前記パイロット可変絞りに対する指令を算出する
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機械は、旋回体を含む車体と、旋回体に取り付けられた作業装置(フロント装置)とを備え、作業装置が、旋回体に上下方向に回動可能に接続されたブーム(フロント部材)と、ブームの先端に前後または上下方向に回動可能に接続されたアーム(フロント部材)と、アームの先端に前後または上下方向に回動可能に接続されたバケット(フロント部材)と、ブームを駆動するブームシリンダ(アクチュエータ)と、アームを駆動するアームシリンダ(アクチュエータ)と、バケットを駆動するバケットシリンダ(アクチュエータ)とを含む。作業機械のフロント部材をそれぞれの手動操作レバーによって操作し、所定の領域を掘削することは容易では無く、オペレータには習熟した操作技術が必要とされる。
【0003】
そこで、このような作業を容易にするための技術が提案されている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載の建設機械の領域制限掘削制御装置は、フロント装置の位置を検出する検出手段と、この検出手段からの信号によりフロント装置の位置を演算する演算部と、フロント装置の進入を禁止する侵入不可領域の設定部と、侵入不可領域とフロント装置位置から操作レバー信号の制御ゲインを算出する演算部とを備えるコントローラと、算出された制御ゲインからアクチュエータの動きを制御するアクチュエータ制御手段とを備えている。このような構成によると、侵入不可領域の境界線までの距離に応じてレバー操作信号が制御されるため,オペレータが誤って侵入不可領域にバケット先端を移動しようとしても、自動的にバケット先端の軌跡が境界上を沿うように制御される。これによって、オペレータの操作技術の習熟度に左右されること無く、誰でも精度良く安定した作業を行うことができる。
【0005】
ここで、特許文献1に記載の建設機械において、オペレータによる手動操作と機体の自動制御機能とを作業内容に応じて切り替えることを想定した場合、次のような課題がある。コントローラからの指令によって機体の自動制御を行う場合は、フロント装置の先端が目標とする軌跡に沿って正確に移動することが重要であり、そのためにはアクチュエータに目標流量を正確に供給する必要がある。しかし、特許文献1の領域制限掘削制御装置では、レバー操作量に応じて制御されるのが方向制御弁の開口量であるため、アクチュエータの負荷変動に伴う方向制御弁の前後差圧の変化によって、アクチュエータへの流量供給が不安定になる場合がある。
【0006】
このような課題を解決する技術の一つとして特許文献2に示す技術が提案されている。
【0007】
特許文献2に記載の油圧制御弁装置では、各アクチュエータの方向制御弁のそれぞれの圧力補償をするポペット形の補助流量制御弁を各方向制御弁に直列に配置している。これにより、操作レバーの入力量に対して方向制御弁の開口量を制御するだけでなく、圧力補償弁によって方向制御弁の前後差圧も制御することで、アクチュエータの負荷に依存することなくアクチュエータへの正確な流量供給が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第3056254号公報
【文献】特許第3144915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に記載の油圧制御弁装置では、補助流量制御弁の主弁がポペット形を有するためスプール形のバルブに比べて流れ損失が少なく、シート時のリークがほぼ無いためチェック機能を有することができる。また、主弁はポンプ側、アクチュエータ側、背圧側の圧力に起因する力のバランスによって弁変位が決定されるため、応答性も高い。
【0010】
しかし、ポペット弁は一般的に流体力の影響を受けやすく、上述した圧力変化への応答性の高さゆえに脈動や圧力変動の影響も受けやすい。そのため、弁体の挙動が不安定化しやすく、特に小流量、高圧力差などの小開口での制御を必要とする条件での流量制御精度が低下しやすい。
【0011】
一方で、油圧ショベル等の作業機械の自動制御による作業において、特にアクチュエータの制御精度が必要となる作業では、掘削負荷がかかりつつ低速度でアクチュエータを動作させる必要がある。このとき、アクチュエータへの供給流量を制御するバルブを取り巻く流れ条件は、小流量、高圧力差の場合が多い。
【0012】
そのため、特許文献2に記載の油圧制御弁装置の構成を用いて油圧ショベル等の作業機械の自動制御を行う場合は、アクチュエータの制御精度が必要となる作業において、補助流量制御弁の流量制御精度が低下し、アクチュエータの制御精度の低下を招く恐れがある。
【0013】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、油圧ポンプとアクチュエータの圧力差が大きく、かつアクチュエータの要求流量が小さい場合に、アクチュエータの制御精度を向上することが可能な作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、車体と、前記車体に取り付けられた作業装置と、前記車体または前記作業装置を駆動する複数のアクチュエータと、油圧ポンプと、前記油圧ポンプの吐出ラインにパラレルに接続されており、前記油圧ポンプから前記複数のアクチュエータに供給される圧油の流れを調整する複数の方向制御弁と、前記複数のアクチュエータの動作を指示するための操作レバーと、パイロットポンプと、前記パイロットポンプから供給される圧油を減圧し前記複数の方向制御弁の操作圧として出力する電磁弁ユニットと、前記操作レバーからの動作指示量に応じて前記電磁弁ユニットへ指令を出力するコントローラと、前記複数の方向制御弁の各上流に配置され、前記油圧ポンプから前記複数の方向制御弁に供給される圧油の流量を制限する補助流量制御装置とを備えた作業機械において、前記補助流量制御装置は、シート型の主弁と、前記主弁の弁体の移動量に応じて開口面積を変化させる制御可変絞りと、前記主弁の下流側と前記制御可変絞りの下流側とを接続し、通過流量に応じて前記弁体の移動量を決定するパイロットラインと、前記パイロットラインに配置され、前記コントローラからの指令に応じて開口面積を変化させるスプール型のパイロット可変絞りとを有し、前記パイロット可変絞りの開口面積が所定の開口面積以上のときは、前記パイロット可変絞りの開口面積に応じて前記主弁の開口面積が最大開口面積からゼロの間で変化し、前記パイロット可変絞りの開口面積が前記所定の開口面積を下回ったときは、前記パイロット可変絞りの開口面積によらず前記主弁の開口面積がゼロとなるように構成されたものとする。
【0015】
以上のように構成した本発明によれば、アクチュエータの要求流量が大きい場合または油圧ポンプとアクチュエータの圧力差が小さい場合の動作、すなわち補助流量制御装置の開口量を大きくする必要がある動作においては、パイロット可変絞りと共に主弁を開口させることにより、パイロット可変絞りと主弁の合計開口面積で補助流量制御装置の開口量を調整することができる。
【0016】
一方、油圧ポンプとアクチュエータの圧力差が大きく、かつアクチュエータの要求流量が小さい場合の動作、すなわち補助流量制御装置の開口量を小さくする必要がある動作においては、シート型の主弁を閉じてスプール型のパイロット可変絞りのみを開口させることにより、パイロット可変絞りの開口面積のみで補助流量制御装置の開口量を調整することができる。これにより、アクチュエータへの供給流量を精度良く調整することができるため、アクチュエータの制御精度を向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る作業機械によれば、油圧ポンプとアクチュエータの圧力差が大きく、かつアクチュエータの要求流量が小さい場合に、アクチュエータの制御精度を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る油圧ショベルの側面図である。
【
図2A】本発明の第1の実施例における油圧駆動装置の回路図(1/2)である。
【
図2B】本発明の第1の実施例における油圧駆動装置の回路図(2/2)である。
【
図3】
図2Bに示すコントローラの機能ブロック図である。
【
図4A】
図2Bに示すコントローラの演算処理を示すフロー図(1/3)である。
【
図4B】
図2Bに示すコントローラの演算処理を示すフロー図(2/3)である。
【
図4C】
図2Bに示すコントローラの演算処理を示すフロー図(3/3)である。
【
図5】本発明の第1の実施例における補助流量制御装置の断面図である。
【
図6】本発明の第1の実施例における補助流量制御装置の開口面積線図である。
【
図7】本発明の第2の実施例における補助流量制御装置の開口面積線図である。
【
図8A】本発明の第2の実施例における油圧駆動装置の回路図(1/2)である。
【
図8B】本発明の第2の実施例における油圧駆動装置の回路図(2/2)である。
【
図9】本発明の第3の実施例におけるコントローラの演算処理のうち、制御有効化処理の詳細を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る作業機械として油圧ショベルを例に挙げ、図面を参照して説明する。なお、各図中、同等の部材には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係る油圧ショベルの側面図である。
【0021】
図1に示すように、油圧ショベル300は、走行体201と、走行体201上に旋回可能に配置され、車体を構成する旋回体202と、旋回体202に上下方向に回動可能に取り付けられ、土砂の掘削作業等を行う作業装置203とを備えている。旋回体202は、旋回モータ211によって駆動される。
【0022】
作業装置203は、旋回体202に上下方向に回動可能に取り付けられるブーム204と、ブーム204の先端に上下方向に回動可能に取り付けられるアーム205と、アーム205の先端に上下方向に回動可能に取り付けられるバケット206とを含んでいる。ブーム204はブームシリンダ204aによって駆動され、アーム205はアームシリンダ205aによって駆動され、バケット206はバケットシリンダ206aによって駆動される。
【0023】
旋回体202上の前側位置には運転室207を設けてあり、後側位置には重量バランスを確保するカウンタウエイト209を設けてある。運転室207とカウンタウエイト209の間にはエンジンおよび油圧ポンプ等が収容される機械室208を設けてあり、機械室208にはコントロールバルブ210が設置される。
【0024】
本実施の形態に係る油圧ショベル300には、以下の実施例で説明する油圧駆動装置が搭載される。
【実施例1】
【0025】
図2Aおよび
図2Bは、本発明の第1の実施例における油圧駆動装置の回路図である。
【0026】
(1)構成
第1の実施例における油圧駆動装置400は、図示しないエンジンによって駆動される3つの主油圧ポンプ、例えばそれぞれ可変容量形油圧ポンプからなる第1油圧ポンプ1、第2油圧ポンプ2、および第3油圧ポンプ3を備えている。また、図示しないエンジンによって駆動されるパイロットポンプ4を備えると共に、第1~第3油圧ポンプ1~3、およびパイロットポンプ4に油を供給する作動油タンク5を備えている。
【0027】
第1油圧ポンプ1の傾転角は、第1油圧ポンプ1に付設したレギュレータによって制御される。第1油圧ポンプ1のレギュレータは、流量制御指令圧ポート1a、第1油圧ポンプ自己圧ポート1b、および第2油圧ポンプ自己圧ポート1cを含んでいる。第2油圧ポンプ2の傾転角は、第2油圧ポンプ2に付設したレギュレータによって制御される。第2油圧ポンプ2のレギュレータは、流量制御指令圧ポート2a、第2油圧ポンプ自己圧ポート2b、および第1油圧ポンプ自己圧ポート2cを含んでいる。第3油圧ポンプ3の傾転角は、第3油圧ポンプ3に付設したレギュレータによって制御される。第3油圧ポンプ3のレギュレータは、流量制御指令圧ポート3aおよび第3油圧ポンプ自己圧ポート3bを含んでいる。
【0028】
第1油圧ポンプ1の吐出ライン40は、センターバイパスライン41を介して作動油タンク5へ接続される。センターバイパスライン41には、上流側から順に、走行体201を駆動する一対の走行モータのうちの図示しない右走行モータの駆動を制御する右走行用方向制御弁6、バケットシリンダ206aへ供給される圧油の流れを制御するバケット用方向制御弁7、アームシリンダ205aに供給される圧油の流れを制御する第2アーム用方向制御弁8、およびブームシリンダ204aに供給される圧油の流れを制御する第1ブーム用方向制御弁9が配置される。バケット用方向制御弁7、第2アーム用方向制御弁8、および第1ブーム用方向制御弁9の各供給ポートは、右走行用方向制御弁6とバケット用方向制御弁7とを接続するセンターバイパスライン41の一部に、それぞれ油路42,43、油路44,45、および油路46,47を介してパラレルに接続される。
【0029】
第2油圧ポンプ2の吐出ライン50は、センターバイパスライン51を介して作動油タンク5へ接続され、合流弁17を介して第1油圧ポンプ1の吐出ライン40へ接続される。センターバイパスライン51には、上流側から順に、ブームシリンダ204aに供給される圧油の流れを制御する第2ブーム用方向制御弁10、アームシリンダ205aに供給される圧油の流れを制御する第1アーム用方向制御弁11、例えばバケット206に代えて設けられる小割機等の第1特殊アタッチメントを駆動する図示しない第1アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する第1アタッチメント用方向制御弁12、および走行体201を駆動する一対の走行モータのうちの図示しない左走行モータの駆動を制御する左走行用方向制御弁13が配置される。第2ブーム用方向制御弁10、第1アーム用方向制御弁11、第1アタッチメント用方向制御弁12、および左走行用方向制御弁13の各供給ポートは、第2油圧ポンプ2の吐出ライン50に、それぞれ油路52,53、油路54,55、油路56,57、および油路58を介してパラレルに接続される。
【0030】
第3油圧ポンプ3の吐出ライン60は、センターバイパスライン61を介して作動油タンク5へ接続される。センターバイパスライン61には、上流側から順に、旋回体202を駆動する旋回モータ211に供給される圧油の流れを制御する旋回用方向制御弁14、ブームシリンダ204aに供給される圧油の流れを制御する第3ブーム用方向制御弁15、および第2アタッチメント用方向制御弁16が配置される。第2アタッチメント用方向制御弁16は、第1特殊アタッチメントに加えて第2アクチュエータを備えた第2特殊アタッチメントが装着された際、または、第1特殊アクチュエータに代えて第1アクチュエータと第2アクチュエータの2つのアクチュエータを備えた第2特殊アタッチメントが装着された際に、第2アクチュエータに供給される圧油の流れを制御するために使用される。旋回用方向制御弁14、第3ブーム用方向制御弁15、および第2アタッチメント用方向制御弁16の各供給ポートは、第3油圧ポンプ3の吐出ライン60に、それぞれ油路62,63、油路64,65、および油路66,67を介してパラレルに接続される。
【0031】
ブームシリンダ204a、アームシリンダ205a、およびバケットシリンダ206aには、油圧ショベル300の動作状態を取得することを目的として、ストローク量を検出するストロークセンサ94,95,96がそれぞれ設けられる。なお、油圧ショベル300の動作状態を取得する手段は傾斜センサ、回転角センサ、IMUなど多様であり、上述したストロークセンサに限られない。
【0032】
バケット用方向制御弁7の供給ポートへ接続される油路42,43、第2アーム用方向制御弁8の供給ポートへ接続される油路44,45、および第1ブーム用方向制御弁9の供給ポートへ接続される油路46,47には、複合操作時に第1油圧ポンプ1から各方向制御弁に供給される圧油の流量を制限する補助流量制御装置21,22,23がそれぞれ設けられる。
【0033】
第2ブーム用方向制御弁10の供給ポートへ接続される油路52,53、第1アーム用方向制御弁11の供給ポートへ接続される油路54,55、および第1アタッチメント用方向制御弁12の供給ポートへ接続される油路56,57には、複合操作時に第2油圧ポンプ2から各方向制御弁に供給される圧油の流量を制限する補助流量制御装置24,25,26がそれぞれ設けられる。
【0034】
旋回用方向制御弁14の供給ポートへ接続される油路62,63、第3ブーム用方向制御弁15の供給ポートへ接続される油路64,65、および第2アタッチメント用方向制御弁16の供給ポートへ接続される油路66,67には、複合操作時に第3油圧ポンプ3から各方向制御弁に供給される圧油の流量を制限する補助流量制御装置27,28,29がそれぞれ設けられる。
【0035】
パイロットポンプ4の吐出ポートは、パイロット1次圧生成用のパイロットリリーフ弁18を介して作動油タンク5へ接続されると共に、油路71を介して電磁弁ユニット83へ接続される。電磁弁ユニット83は、電磁比例減圧弁83a,83b,83c,83d,83eを内蔵している。電磁比例減圧弁83a~83eの一方の入力ポートは油路71へ接続され、他方の入力ポートは作動油タンク5へ接続される。電磁比例減圧弁83aの出力ポートは第2油圧ポンプ2のレギュレータの流量制御指令圧ポート2aへ接続され、電磁比例減圧弁83b,83cの出力ポートは第2ブーム用方向制御弁10のパイロットポートへ接続され、電磁比例減圧弁83d,83eの出力ポートは第1アーム用方向制御弁11のパイロットポートへ接続される。電磁比例減圧弁83a~83eは、それぞれ、コントローラ82からの指令電気信号に応じてパイロット1次圧を減圧し、方向制御弁のパイロット指令圧として出力する。
【0036】
なお、説明を簡略化するため、第1油圧ポンプ1および第3油圧ポンプ3のレギュレータの流量制御指令圧ポート1a,3a用の電磁比例減圧弁、右走行用方向制御弁6用の電磁比例減圧弁、バケット用方向制御弁7用の電磁比例減圧弁、第2アーム用方向制御弁8用の電磁比例減圧弁、第1ブーム用方向制御弁9用の電磁比例減圧弁、第1アタッチメント用方向制御弁12用の電磁比例減圧弁、左走行用方向制御弁13用の電磁比例減圧弁、旋回用方向制御弁14用の電磁比例減圧弁、第3ブーム用方向制御弁15用の電磁比例減圧弁、および第2アタッチメント用方向制御弁16用の電磁比例減圧弁については、図示を省略してある。
【0037】
第1の実施例では、補助流量制御装置24は、補助可変絞りを形成するシート形の主弁31と、主弁31の弁体31aに設けられ、弁体31aの移動量に応じて開口面積を変化させる制御可変絞り31bと、パイロット可変絞り32とで構成される。主弁31が内蔵されるハウジングは、主弁31と油路52の接続部に形成された第1圧力室31cと、主弁31と油路53の接続部に形成された第2圧力室31dと、第1圧力室31cと制御可変絞り31bを介して連通するように形成された第3圧力室31eとを有する。第3圧力室31eとパイロット可変絞り32とは油路68aで接続され、パイロット可変絞り32と油路53とは油路68bで接続され、これら油路68a,68bはパイロットライン68を形成する。
【0038】
パイロット可変絞り32のパイロットポート32aは、電磁比例減圧弁35の出力ポートへ接続される。電磁比例減圧弁35の供給ポートはパイロットポンプ4の吐出ポートへ接続され、タンクポートは作動油タンク5へ接続される。電磁比例減圧弁35は、コントローラ82からの指令電気信号に応じてパイロット1次圧を減圧し、パイロット可変絞り32のパイロット指令圧として出力する。
【0039】
第2油圧ポンプ2の吐出ライン50には圧力センサ91が設けられ、第2ブーム用方向制御弁10と補助流量制御装置24とを接続する油路53には圧力センサ92が設けられる。
【0040】
なお、説明を簡便にするため一部図示を省略しているが、補助流量制御装置21~29および周辺の機器、配管、配線は全て同じ構成である。
【0041】
第1の実施例における油圧駆動装置400は、第1ブーム用方向制御弁9および第2ブーム用方向制御弁10を切り換え操作可能な操作レバー81aと、第1アーム用方向制御弁11および第2アーム用方向制御弁8を切り換え操作可能な操作レバー81bとを備えている。なお、説明を簡略化するため、右走行用方向制御弁6を切り換え操作する右走行用操作レバー、バケット用方向制御弁7を切り換え操作するバケット用操作レバー、第1アタッチメント用方向制御弁12を切り換え操作する第1アタッチメント用操作レバー、左走行用方向制御弁13を切り換え操作する左走行用操作レバー、旋回用方向制御弁14を切り換え操作する旋回用操作レバー、第2アタッチメント用方向制御弁16を切り換え操作する第2アタッチメント用操作レバーについては、図示を省略してある。
【0042】
第1の実施例における油圧駆動装置400は、コントローラ82を備え、操作レバー81a,81bの出力値、圧力センサ91,92,93の出力値、ストロークセンサ94,95,96の出力値、および制御有効化スイッチ84の指令値はコントローラ82へ入力される。また、コントローラ82は、電磁弁ユニット83に備えられる各電磁比例減圧弁と、電磁比例減圧弁35,36(および図示しない電磁比例減圧弁)へと指令電気信号を出力する。
【0043】
図3は、コントローラ82の機能ブロック図である。
図3において、コントローラ82は、入力部82aと、制御有効化判断部82bと、車体姿勢演算部82cと、要求流量演算部82dと、目標流量演算部82eと、指令電気信号演算部82fと、出力部82gとを有する。
【0044】
入力部82aは、制御有効化スイッチ84の信号および各センサの出力値を取得する。制御有効化判断部82bは、制御有効化スイッチ84の信号を基に領域制限制御を有効にするか無効にするかを判断する。領域制限制御とは、作業装置203が予め設定された領域へ侵入することを防止するために、アクチュエータへの供給流量を制限する制御である。車体姿勢演算部82cは、センサ出力値を基に車体202および作業装置203の姿勢を演算する。要求流量演算部82dは、センサ出力値を基にアクチュエータの要求流量を演算する。目標流量演算部82eは、車体202および作業装置203の姿勢ならびにアクチュエータの要求流量を基にアクチュエータの目標流量を演算する。指令電気信号演算部82fは、制御有効化判断部82bからの判断結果と、目標流量演算部82eからの目標流量と、入力部82aからの圧力センサ出力値とを基に指令電気信号を演算する。出力部82gは、指令電気信号演算部82fからの結果を基に指令電気信号を生成し、電磁弁ユニット83の各電磁比例減圧弁、および電磁比例減圧弁35,36へ出力する。
【0045】
図4Aは、第1の実施例におけるコントローラ82の演算処理を示すフロー図である。コントローラ82は、制御有効化スイッチ84がONであるか否かを判定し(ステップS100)、制御有効化スイッチ84がOFFである(NO)と判定した場合は制御無効化処理(ステップS200)を実行し、制御有効化スイッチ84がONである(YES)と判定した場合は制御有効化処理(ステップS300)を実行する。
【0046】
図4Bは、ステップS200(制御無効化処理)の詳細を示すフロー図である。
図4Bに示す処理は、全ての補助流量制御装置に関して実行されるが、以下では補助流量制御装置24に関わる部分のみを説明する。
【0047】
コントローラ82は、まず、操作レバー81aの入力が無いか否かを判定する(ステップS201)。
【0048】
ステップS201で操作レバー81aの入力が無い(YES)と判定した場合は、制御無効化処理(ステップS200)を終了する。
【0049】
ステップS201で操作レバー81aの入力が有る(NO)と判定した場合は、電磁弁ユニット83の電磁比例減圧弁83b,83cで操作レバー入力量に応じたパイロット指令圧Pi_ms(PiBM2U,PiBM2D)を生成し(ステップS202)、パイロット指令圧Pi_msに応じて方向制御弁10を開口させる(ステップS203)。
【0050】
ステップS203に続き、複数のアクチュエータに対する分流が必要であるか否か(すなわち、同じ吐出ラインに接続された複数のアクチュエータの複合操作が入力されたか否か)を判定する(ステップS204)。
【0051】
ステップS204で分流が必要でない(NO)と判定した場合は、コントローラ82は電磁比例減圧弁35へ指令電気信号を出力せず(ステップS205)、電磁比例減圧弁35はパイロット指令圧Pi_fcvを生成せず(ステップS206)、パイロット可変絞り32を全開させ(ステップS207)、それに応じて補助流量制御装置24の主弁31を全開させ(ステップS208)、アクチュエータ204aへの供給流量を方向制御弁10で制御し(ステップS209)、制御無効化処理(ステップS200)を終了する。
【0052】
ステップS204で分流が必要である(YES)と判定した場合は、コントローラ82は電磁比例減圧弁35へ指令電気信号を出力し(ステップS210)、指令電気信号に応じて電磁比例減圧弁35にパイロット指令圧Pi_fcvを生成させ(ステップS211)、電磁比例減圧弁35からのパイロット指令圧Pi_fcvに応じてパイロット可変絞り32のパイロットスプール112を変位させる(ステップS212)。
【0053】
ステップS212に続き、パイロット指令圧Pi_fcvが後述の閾値Sよりも大きいか否かを判断する(ステップS213)。
【0054】
ステップS213でパイロット指令圧Pi_fcvが閾値S以下である(NO)と判定した場合は、パイロット可変絞り32の開口に応じて補助流量制御装置24の主弁31を開口させ(ステップS214)、主弁31とパイロット可変絞り32の合計開口面積でアクチュエータ204aへの供給流量を制御し(ステップS215)、制御無効化処理(ステップS200)を終了する。
【0055】
ステップS213でパイロット指令圧Pi_fcvが閾値Sより大きい(YES)と判定した場合は、補助流量制御装置24の主弁31が閉じ(ステップS216)、パイロット可変絞り32の開口面積のみでアクチュエータ204aへの供給流量を制御し(ステップS217)、制御無効化処理(ステップS200)を終了する。
【0056】
図4Cは、ステップS300(制御有効化処理)の詳細を示すフロー図である。
図4Bに示す処理は、全ての補助流量制御装置に関して実行されるが、以下では補助流量制御装置24に関わる部分のみを説明する。
【0057】
コントローラ82は、まず、操作レバー81aの入力が無いか否かを判定する(ステップS301)。
【0058】
ステップS301で操作レバー81aの入力が無い(YES)と判定した場合は、制御無効化処理(ステップS300)を終了する。
【0059】
ステップS301で操作レバー81aの入力が有る(NO)と判定した場合は、電磁弁ユニット83の電磁比例減圧弁83b,83cで操作レバー入力量に応じたパイロット指令圧Pi_ms(PiBm2U,PiBm2D)を生成し(ステップS302)、パイロット指令圧Pi_msに応じて方向制御弁10を開口させる(ステップS303)。
【0060】
ステップS303に続き、コントローラ82の目標流量演算部82eにてアクチュエータ204aの目標流量を算出し(ステップS304)、コントローラ82の指令電気信号演算部82fにて目標流量と補助流量制御装置24の前後差圧を基に指令電気信号を算出し(ステップS305)、コントローラ82の出力部82gにて電磁比例減圧弁35への指令電気信号を出力する(ステップS306)。
【0061】
ステップS306に続き、電磁比例減圧弁35はパイロット指令圧Pi_fcvを生成し(ステップS307)、電磁比例減圧弁35からの指令圧Pi_fcvに応じてパイロット可変絞り32のパイロットスプールを変位させる(ステップS308)。
【0062】
ステップS308に続き、コントローラ82は、パイロット指令圧Pi_fcvが閾値Sよりも大きいか否かを判定する(ステップS309)。
【0063】
ステップS309でパイロット指令圧Pi_fcvが閾値S以下である(NO)と判定した場合は、パイロット可変絞り32の開口に応じて補助流量制御装置24の主弁31を開口させ(ステップS310)、主弁31とパイロット可変絞り32の合計開口面積でアクチュエータ204aへの供給流量を制御し(ステップS310)、制御有効化処理(ステップS300)を終了する。
【0064】
ステップS309でパイロット指令圧Pi_fcvが閾値Sより大きい(YES)と判定した場合は、補助流量制御装置24の主弁31が閉じ(ステップS313)、パイロット可変絞り32の開口面積のみでアクチュエータ204aへの供給流量を制御し(ステップS314)、制御有効化処理(ステップS300)を終了する。
【0065】
図5は、第1の実施例における補助流量制御装置24の断面図である。なお、他の補助流量制御装置もこれと同様の構成である。
【0066】
シート形の主弁31の弁体31aは、ハウジング110に摺動自在に設置される。弁体31aの上流側に位置する第1圧力室31cと下流側に位置する第2圧力室31dは、ハウジング110と弁体31aとの間に形成される補助可変絞りを介して連通する。この補助可変絞りの開口特性は、弁体31aに形成されたノッチ102の形状により定まる。弁体31aは、第3圧力室31eに設置されたばね101によってハウジング110に着座する。第1圧力室31cと第3圧力室31eは、弁体31a内部に形成された油路103を介して連通する。油路103の第3圧力室31e側出口とハウジング111との間には、制御可変絞り31bが形成される。
【0067】
弁体31aが設置されるハウジング110の端部と面合わせに、パイロット可変絞り32が取り付けられる。パイロット可変絞り32は、ハウジング111、パイロットスプール112、ばね107、およびプラグ106によって構成される。パイロットスプール112の一方の端部側には、パイロットスプール112を押し付けるばね107が設置される。パイロットスプール112の他方の端部には、ハウジング111と接触することでパイロットスプール112の位置を保持するロッド109が設けられる。
【0068】
パイロットスプール112とハウジング111の間には、油室104と油室105が形成される。油室104と油室105は、パイロットスプール112とハウジング111の間に形成される絞りによって連通する。油室104と第3圧力室31eは、油路68aを介して連通する。油室105と第2圧力室31dは、油路68bを介して連通する。この絞り部の開口特性は、パイロットスプール112に形成されるノッチ108の形状により定まる。
【0069】
なお、ノッチ102、制御可変絞り31b、およびノッチ108には、設計者が所望する開口特性を得るために、図示した形状以外にも様々な形状およびそれらの組合せが用いられる。
【0070】
図6は、第1の実施例における補助流量制御装置24の開口面積線図であり、パイロット指令圧Pi_fcvに対するパイロット可変絞り32、制御可変絞り31b、および主弁31の各開口面積の変化を示している。なお、他の補助流量制御装置もこれと同様の構成である。
【0071】
パイロット可変絞り32の開口面積aPSおよび制御可変絞り31bの開口面積aFBは、パイロット指令圧Pi_fcvがPi_fcv1からPi_fcv4までの開口制御領域を有する。一方、主弁31の開口面積aMPは、パイロット指令圧Pi_fcvがPi_fcv2(>Pi_fcv1)からPi_fcv3(<Pi_fcv4)までの開口制御領域を有する。主弁31の最大開口面積aMP1は、パイロット可変絞り32の開口面積aPSおよび制御可変絞り31bの開口面積aFBに対して十分に大きく設定される。
【0072】
パイロット指令圧Pi_fcvがPi_fcv2からPi_fcv3の間にあるときは、補助流量制御装置24の開口量は、主弁31の開口面積aMPとパイロット可変絞り32の開口面積aFBの合計と等しくなる。一方、パイロット指令圧Pi_fcvがPi_fcv3からPi_fcv4の間にあるときは、主弁31の開口面積aMPがゼロとなるため、補助流量制御装置24の開口量はパイロット可変絞り32の開口面積aFBと等しくなる。このように、補助流量制御装置24は、パイロット指令圧Pi_fcvに対して、主弁31の開口面積aMPとパイロット可変絞り32の開口面積aPSの合計で開口量を制御する領域と、パイロット可変絞り32の開口面積aPSのみで開口量を制御する領域とを有し、これらは所定のパイロット指令圧Pi_fcv3(閾値S)を境に切り替わる。
【0073】
(2)動作
このように構成した第1の実施例における油圧駆動装置400においては、以下に述べるような操作および制御が可能である。なお、ここでは説明を簡便にするために、制御有効化スイッチ84から油圧ショベル300の領域制限制御を有効とする信号がコントローラ82に入力されることにより、油圧ショベル300の領域制限制御を有効となった状態、かつ第2油圧ポンプ2に対してパラレルに配置される第2ブーム用方向制御弁10と第1アーム用方向制御弁11で分流が必要となった場合の動作を説明する。
【0074】
制御有効化スイッチ84から油圧ショベル300の領域制限制御を有効とする信号がコントローラ82に送られると、コントローラ82は、操作レバー81a,81bから入力されるレバー操作量に応じて電磁弁ユニット83の電磁比例減圧弁83b~83eが方向制御弁10,11のパイロット指令圧Pi_msを生成し、方向制御弁10,11のパイロットポートへ作用させる。
【0075】
これにより、コントローラ82の制御によってアクチュエータ204a,205aを駆動させることが可能となり、油圧ショベル300の領域制限制御が行われる。
【0076】
コントローラ82は、各アクチュエータの操作量と各ストロークセンサから取得された油圧ショベル300の動作状態を基にアクチュエータの目標流量を演算し、その目標流量と圧力センサから取得された圧力に基づいて生成した指令電気信号を電磁比例減圧弁35,36へ出力する。電磁比例減圧弁35,36は、コントローラ82からの指令電気信号に応じてパイロット指令圧Pi_fcvを生成し、補助流量制御装置24,25のパイロット可変絞り32,34のパイロットポート32a,34aへ作用させる。
【0077】
パイロット可変絞り32,34は、パイロット指令圧Pi_fcvに応じてパイロットスプール112を変位させることにより、開口面積aPSを変化させる。ここで、パイロット指令圧Pi_fcv≧Pi_fcv1になると、パイロット可変絞り32,34の開口面積aPSの変化に応じて制御可変絞り31b,33bの開口面積aFBも変化する。このとき、制御可変絞り31b,33bの開口面積aFBとパイロット可変絞り32,34の開口面積aPSの関係は下記の通りとなる。
【0078】
【0079】
制御可変絞り31b,33bの開口面積aFBは弁体31a,33aの変位に応じて変化するため、パイロット可変絞り32,34の開口面積aPSが変化すると弁体31a,33aが変位し、制御可変絞り31b,33bの開口面積aFBとパイロット可変絞り32,34の開口面積aPSの比率が一定に保たれる。このとき、主弁31,33の開口面積aMPも弁体31a,33aの変位に応じて変化するため、主弁31,33の開口面積aMPは、パイロット指令圧Pi_fcv≧Pi_fcv2になると、パイロット指令圧Pi_fcv応じて変化する。
【0080】
ここで、パイロット指令圧Pi_fcvがPi_fcv2≦Pi_fcv<Pi_fcv3の場合は、補助流量制御装置24,25の開口量は主弁31,33の開口面積aMPとパイロット可変絞り32,34の開口面積aPSの合計と一致する。すなわち、補助流量制御装置24,25の開口量は、パイロット可変絞り32,34と主弁31,33の合計開口面積によって制御される。
【0081】
パイロット指令圧Pi_fcvがPi_fcv3≦Pi_fcv<Pi_fcv4の場合は、主弁31,33の開口面積aMPがゼロとなるため、補助流量制御装置24,25の開口量はパイロット可変絞り32,34の開口面積aPSと一致する。すなわち、補助流量制御装置24,25の開口量は、パイロット可変絞り32,34の開口面積aPSのみによって制御される。
【0082】
以上、補助流量制御装置24,25の動作を説明したが、他の補助流量制御装置の動作も同様である。
【0083】
(3)効果
第1の実施例では、車体202と、車体202に取り付けられた作業装置203と、車体202または前記作業装置203を駆動する複数のアクチュエータ204a,205a,206a,211と、油圧ポンプ1~3と、油圧ポンプ1~3の吐出ライン40,50,60にパラレルに接続されており、油圧ポンプ1~3から複数のアクチュエータ204a,205a,206a,211に供給される圧油の流れを調整する複数の方向制御弁6~16と、複数のアクチュエータ204a,205a,206a,211の動作を指示するための操作レバー81a,81bと、パイロットポンプ4と、パイロットポンプ4から供給される圧油を減圧し複数の方向制御弁6~16の操作圧として出力する電磁弁ユニット83と、操作レバー81a,81bからの動作指示量に応じて電磁弁ユニット83へ指令を出力するコントローラ82と、複数の方向制御弁6~16の各上流に配置され、油圧ポンプ1~3から複数の方向制御弁6~16に供給される圧油の流量を制限する補助流量制御装置21~29とを備えた作業機械300において、補助流量制御装置21~29は、シート型の主弁31,33と、主弁31,33の弁体31a,33aの移動量に応じて開口面積を変化させる制御可変絞り31b,33bと、主弁31,33の下流側と制御可変絞り31b,33bの下流側とを接続し、通過流量に応じて弁体31a,33aの移動量を決定するパイロットライン68,69と、パイロットライン68,69に配置され、コントローラ82からの指令に応じて開口面積を変化させるスプール型のパイロット可変絞り32,34とを有し、パイロット可変絞り32,34の開口面積aPSが所定の開口面積aPS1以上のときは、パイロット可変絞り32,34の開口面積aPSに応じて主弁31,33の開口面積aMPが最大開口面積aMP1からゼロの間で変化し、パイロット可変絞り32,34の開口面積aPSが所定の開口面積aPS1を下回ったときは、パイロット可変絞り32,34の開口面積aPSによらず主弁31,33の開口面積aMPがゼロとなるように構成される。
【0084】
以上のように構成した第1の実施例によれば、領域制限制御機能が有効な場合に、補助流量制御装置21~29はアクチュータの負荷変動に依存することなくコントローラ82が指令する目標流量をアクチュエータへ供給することができる。
【0085】
また、アクチュエータの要求流量が大きい場合または油圧ポンプとアクチュエータの圧力差が小さい場合の動作、すなわち補助流量制御装置21~29の開口量を大きくする必要がある動作においては、パイロット可変絞り32,34と共に主弁31,33を開口させることにより、パイロット可変絞り32,34と主弁31,33の合計開口面積で補助流量制御装置21~29の開口量を調整することができる。
【0086】
一方、油圧ポンプとアクチュエータの圧力差が大きく、かつアクチュエータの要求流量が小さい場合の動作、すなわち補助流量制御装置21~29の開口量を小さくする必要がある動作においては、シート型の主弁31,33を閉じてスプール型のパイロット可変絞り32,34のみを開口させることにより、パイロット可変絞り32,34の開口面積aPSのみで補助流量制御装置21~29の開口量を調整することができる。これにより、アクチュエータへの供給流量を精度良く調整することができるため、アクチュエータの制御精度を向上することが可能となる。
【実施例2】
【0087】
図7は、本発明の第2の実施例における補助流量制御装置21~29の開口面積線図である。
【0088】
(1)構成
第2の実施例における油圧駆動装置の構成は、第1の実施例における油圧駆動装置400(
図2Aおよび
図2Bに示す)とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0089】
パイロット指令圧Pi_fcv3からPi_fcv4までのパイロット可変絞り32,34の開口面積aPSのみで開口量を制御する領域において、制御可変絞り31bの開口面積aFBは一定となる。このとき、制御可変絞り31b,33bの開口面積aFBとパイロット可変絞り32,34の開口面積aPSの関係は下記の通りとなる。
【0090】
【0091】
【0092】
(2)動作
第2の実施例における油圧駆動装置の動作は、第1の実施例における油圧駆動装置400の動作とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0093】
パイロット指令圧Pi_fcvがPi_fcv3≦Pi_fcv<Pi_fcv4の場合は、補助流量制御装置24,25の開口量はパイロット可変絞り32,34の開口面積aPSのみで制御される。このとき、制御可変絞り31b,33bの開口面積aFBはパイロット指令圧Pi_fcvに対して一定値をとり、パイロット可変絞り32,34の開口面積aPSのK倍よりも大きく開口する。
【0094】
(3)効果
第2の実施例における補助流量制御装置24,25は、パイロット可変絞り32,34の開口面積aPSが所定の開口面積aPS1以上のとき(パイロット指令圧Pi_fcvが閾値S以下のとき)は、制御可変絞り31b,33bの開口面積aFBがパイロット可変絞り32,34の開口面積aPSの所定の係数(K)倍となり、パイロット可変絞り32,34の開口面積aPSが所定の開口面積aPS1を下回ったときは、制御可変絞り31b,33bの開口面積aFBがパイロット可変絞り32,34の開口面積aPSの所定の係数(K)倍よりも大きくなるように構成される。
【0095】
以上のように構成した第2の実施例によれば、第1の実施例と同様の効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0096】
パイロット可変絞り32,34のみで補助流量制御装置24,25の開口量を制御する場合において、パイロット可変絞り32,34よりも上流に位置する制御可変絞り31b,33bの開口面積aFBがパイロット可変絞り32,34の開口面積aPSのK倍よりも大きくなるため、不要な圧力損失を低減すると共に、パイロット可変絞り32,34の上流側(第3圧力室31e,33e)の圧力応答性を高めることができ、アクチュエータ負荷圧やポンプ圧などの圧力変動に対して高い応答性で流量制御することが可能となる。
【実施例3】
【0097】
図8Aおよび
図8Bは、本発明の第3の実施例における油圧駆動装置の回路図である。
【0098】
(1)構成
図8Aおよび
図8Bに示すように、第3の実施例における油圧駆動装置400Aの構成は、第1の実施例における油圧駆動装置400(
図2Aおよび
図2Bに示す)とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0099】
補助流量制御装置24の第3圧力室31eとパイロット可変絞り32を連通する油路68aに圧力センサ116が設けられ、補助流量制御装置25の第3圧力室33eとパイロット可変絞り34を連通する油路69aに圧力センサ117が設けられる。圧力センサ116,117の出力信号はコントローラ82へ入力される。なお、説明を簡便にするため一部図示を省略しているが、補助流量制御装置21~29および周辺の機器、配管、配線は全て同じ構成である。
【0100】
図9は、第3の実施例におけるコントローラ82の演算処理のうち、ステップS300(制御有効化処理)の詳細を示すフロー図である。
図9において、第1の実施例(
図4Cに示す)との相違点は、ステップS313とステップS314の間にステップS313a~S313dを追加した点である。以下、ステップS313a~S313dについて説明する。
【0101】
ステップS313に続き、コントローラ82の指令電気信号演算部82fにてアクチュエータ204aの目標流量とパイロット可変絞り32,34の前後差圧を基に指令電気信号を算出し(S313a)、コントローラ82の出力部82gにて電磁比例減圧弁35,36へ指令電気信号を出力する(S313b)。
【0102】
ステップS313bに続き、電磁比例減圧弁35,36は指令電気信号に応じたパイロット指令圧Pi_fcvを生成し(S315A)、パイロット指令圧Pi_fcvに応じてパイロット可変絞り32,34のパイロットスプール112を変位させ(S313d)、ステップS318へ移行する。
【0103】
なお、上記では、補助流量制御装置24,25に関わる処理のみを説明したが、他の補助流量制御装置に関しても同様の処理が実行される。
【0104】
(2)動作
第3の実施例における油圧駆動装置400Aの動作は、第1の実施例における油圧駆動装置400の動作とほぼ同様であるが、以下の点で異なる。
【0105】
パイロット指令圧Pi_fcvがPi_fcv3≦Pi_fcv<Pi_fcv4の場合は、補助流量制御装置24,25の開口量はパイロット可変絞り32,34の開口面積aPSのみで制御される。このとき、コントローラ82は目標流量と圧力センサ92,93,116,117からの出力値とを基に指令電気信号を算出し、電磁比例減圧弁35,36へ出力する。
【0106】
(3)効果
第3の実施例における作業機械300は、パイロット可変絞り32,34の前後差圧を検出する圧力センサ92,93,116,117を備え、コントローラ82は、パイロット可変絞り32,34の開口面積aPSが所定の開口面積aPS1を下回ったとき(パイロット指令圧Pi_fcvが閾値Sを超えたとき)は、パイロット可変絞り32,34の通過流量が補助流量制御装置24,25の目標流量(アクチュエータの目標流量)と一致するように、圧力センサ92,93,116,117で検出した前後圧力に基づいてパイロット可変絞り32,34に対する指令(パイロット指令圧Pi_fcv)を算出する。
【0107】
以上のように構成した第3の実施例によれば、第1の実施例と同様の効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0108】
パイロット可変絞り32,34のみで補助流量制御装置24,25の開口量を制御する場合において、パイロット可変絞り32,34の前後差圧を基に指令電気信号を算出して出力するため、補助流量制御装置24,25の前後差圧を用いた場合よりも正確に補助流量制御装置24,25の通過流量を制御ことができる。これにより、アクチュエータの制御精度を更に向上することが可能となる。
【0109】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0110】
1…第1油圧ポンプ、1a…流量制御指令圧ポート(レギュレータ)、1b…第1油圧ポンプ自己圧ポート(レギュレータ)、1c…第2油圧ポンプ自己圧ポート(レギュレータ)、2…第2油圧ポンプ、2a…流量制御指令圧ポート(レギュレータ)、2b…第1油圧ポンプ自己圧ポート(レギュレータ)、2c…第2油圧ポンプ自己圧ポート(レギュレータ)、3…第3油圧ポンプ、3a…流量制御指令圧ポート(レギュレータ)、3b…第3油圧ポンプ自己圧ポート(レギュレータ)、4…パイロットポンプ、5…作動油タンク、6…右走行用方向制御弁、7…バケット用方向制御弁、8…第2アーム用方向制御弁、9…第1ブーム用方向制御弁、10…第2ブーム用方向制御弁、11…第1アーム用方向制御弁、12…第1アタッチメント用方向制御弁、13…左走行用方向制御弁、14…旋回用方向制御弁、15…第3ブーム用方向制御弁、16…第2アタッチメント用方向制御弁、17…合流弁、18…パイロットリリーフ弁、21~29…補助流量制御装置、31…主弁、31a…弁体、31b…制御可変絞り、31c…第1圧力室、31d…第2圧力室、31e…第3圧力室、32…パイロット可変絞り、32a…パイロットポート、33…主弁、33a…弁体、33b…制御可変絞り、33c…第1圧力室、33d…第2圧力室、33e…第3圧力室、34…パイロット可変絞り、34a…パイロットポート、35,36…電磁比例減圧弁、40…吐出ライン、41…センターバイパスライン、42~47…油路、50…吐出ライン、51…センターバイパスライン、52~58…油路、60…吐出ライン、61…センターバイパスライン、62~67…油路、68…パイロットライン、68a,68b…油路、69…パイロットライン、69a,69b…油路、71…油路、81a,81b…操作レバー、82…コントローラ、82a…入力部、82b…制御有効化判断部、82c…車体姿勢演算部、82d…要求流量演算部、82e…目標流量演算部、82f…指令電気信号演算部、82g…出力部、83…電磁弁ユニット、83a~83e…電磁比例減圧弁、84…制御有効化スイッチ、91~93…圧力センサ、94~96…ストロークセンサ、101…ばね、102…ノッチ、103…油路、104…油室、105…油室、106…プラグ、107…ばね、108…ノッチ、109…ロッド、110…ハウジング、111…ハウジング、112…パイロットスプール、116,117…圧力センサ、201…走行体、202…旋回体(車体)、203…作業装置、204…ブーム、204a…ブームシリンダ(アクチュエータ)、205…アーム、205a…アームシリンダ(アクチュエータ)、206…バケット、206a…バケットシリンダ(アクチュエータ)、207…運転室、208…機械室、209…カウンタウエイト、210…コントロールバルブ、211…旋回モータ(アクチュエータ)、300…油圧ショベル(作業機械)、400,400A…油圧駆動装置。