(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】熱延平鋼生産物およびその生産方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20221213BHJP
C22C 38/58 20060101ALI20221213BHJP
C21D 8/02 20060101ALI20221213BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C22C38/00 301W
C22C38/58
C21D8/02 A
C21D9/46 T
(21)【出願番号】P 2019527819
(86)(22)【出願日】2017-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2017081620
(87)【国際公開番号】W WO2018108653
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-11-20
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2016/080935
(32)【優先日】2016-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510041496
【氏名又は名称】ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Steel Europe AG
【住所又は居所原語表記】Kaiser-Wilhelm-Strasse 100,47166 Duisburg Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】501186597
【氏名又は名称】ティッセンクルップ アクチェンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】ThyssenKrupp Allee 1 45143 Essen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】マヌエラ アーノルド
(72)【発明者】
【氏名】レイナー フィヒテ-ハイネン
(72)【発明者】
【氏名】ジェンズ ホルストマン
(72)【発明者】
【氏名】リヒャルト ゲオルク シッセン
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-196891(JP,A)
【文献】特開2016-194158(JP,A)
【文献】国際公開第2016/177420(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0147329(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0121810(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 8/02
C21D 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の組成(重量%にて):
C:0.1-0.3%
Mn:1.5-3.0%
Si:0.5-1.8%
Al:1.5%まで
P:0.1%まで
S:0.03%まで
N:0.008%まで、を有し、
残余は、鉄および生産関連の不可避不純物であり、
但し、前記組成が少なくとも1.0重量%のSiを含む場合、Alの含量は最大0.03重量%である、あるいは前記組成が0.5重量%以上1.0重量%以下のSiを含む場合、Alの含量が少なくとも0.5重量%である、鋼からなる熱延平鋼生産物であって、
-その平鋼生産物は、800-1500MPaの引張強度Rm、700MPaを超える降伏強度Rp、7-25%の破断点伸びA、および20%を超える穴拡がりλを備え、
-その平鋼生産物の構造は、少なくとも85面積%の範囲のマルテンサイトからなり、
当該マルテンサイトの少なくとも半分が焼戻しマルテンサイトであり、前記平鋼生産物の構造の残部は、最大15容量%の残留オーステナイト、最大15面積%のベイナイト、最大15面積%のポリゴナルフェライト、最大5面積%のセメンタイト、および/または最大5面積%のノンポリゴナルフェライトからなり、ならびに
-その平鋼生産物の構造は、少なくとも75μmx75μmの測定範囲において、少なくとも1.50°の平均カーネルアベレージミスオリエンテーションKAMを有する、熱延平鋼生産物。
【請求項2】
前記鋼は、以下の特定されたレベル(重量%にて)において1種以上の元素をさらに有することを特徴とする、請求項1に記載の熱延平鋼生産物。
Cr:0.1-0.3%
Mo:0.05-0.25%
Ni:0.05-2.0%
Nb:0.01-0.06%
Ti:0.02-0.07%
V:0.1-0.3%
B:0.0008-0.0020%
【請求項3】
少なくとも1.0mmの厚さであることを特徴とする、請求項1又は2のいずれか1項に記載の熱延平鋼生産物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の平鋼生産物を生産するにあたり、以下の操作:
a)以下の組成(重量%にて):
C:0.1-0.3%
Mn:1.5-3.0%
Si:0.5-1.8%
Al:1.5%まで
P:0.1%まで
S:0.03%まで
N:0.008%まで、を有し、
残余は、鉄および生産関連の不可避不純物である、
但し、前記組成が少なくとも1.0重量%のSiを含む場合、Alの含量は最大0.03重量%である、あるいは前記組成が0.5重量%以上1.0重量%以下のSiを含む場合、Alの含量が少なくとも0.5%である、合金鋼の溶融;
b)半仕上げの生産物を与えるための溶融物のキャスティング;
c)半仕上げの生産物の1000-1300℃の加熱温度TWEに通した加熱;
d)1.0-20mmの厚さをもつホットストリップを与えるための、熱を通した半仕上げの生産物の熱延であり、熱延は熱延終了温度TETにて終了し、それに対しTET≧(A3-100℃)であり、そこで、「A3」は鋼の個別のA3温度を示し;
e)ホットストリップの最初のクエンチングであり、熱延終了温度TETから開始し、30K/sを超える冷却速度θQにて、クエンチ温度TQまでで、それに対しRT≦TQ≦(TMS+100℃)であり、そこで、「RT」は室温を示し、および「TMS」は鋼のマルテンサイト開始温度を示し、およびそこでマルテンサイト開始温度TMSは以下:
(数5)
TMS[℃]=462-273%C-26%Mn-13%Cr-16%Ni-30%Mo
のように定められ、
上記式中、%C=鋼のC含量、%Mn=鋼のMn含量、%Cr=鋼のCr含量、%Ni=鋼のNi含量、%Mo=鋼のMo含量で、各場合に重量%であり;
f)コイルを与えるための平鋼生産物の随意の巻取りであり、クエンチ温度TQまでクエンチされ;
g)平鋼生産物の保持であり、クエンチ温度TQに、0.1-48時間の時間にわたりTQ-80℃からTQ+80℃までの温度範囲内で冷却され;
h)平鋼生産物のパーティショニング温度TPへの加熱、またはパーティショニング温度TPでの平鋼生産物の保持であり、それは操作g)の後に存在する平鋼生産物の温度がTQ-80℃からTQ+80℃までの範囲内の温度に少なくとも等しく、および0.5-30時間のパーティショニング時間tPTにわたって、最高500℃であり;加熱が行われる場合、加熱速度θP1は最大1K/sであり;
i)平鋼生産物の室温への冷却;
j)平鋼生産物の随意のスケール除去;
k)平鋼生産物の随意のコーティング
を含む、プロセス。
【請求項5】
前記操作a)における前記合金鋼の溶融は、以下の特定されたレベル(重量%にて)において1種以上の元素をさらに有することを特徴とする、請求項4に記載のプロセス。
Cr:0.1-0.3%
Mo:0.05-0.25%
Ni:0.05-2.0%
Nb:0.01-0.06%
Ti:0.02-0.07%
V:0.1-0.3%
B:0.0008-0.0020%
【請求項6】
操作h)はバッチアニーリング炉において行われることを特徴とする、請求項4又は5に記載のプロセス。
【請求項7】
操作h)の間の加熱速度θP1は、最大0.075K/sであることを特徴とする、請求項4~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
加熱速度θP1は、0.03K/sを超えないことを特徴とする、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
操作c)における加熱温度TWEは、1150-1250℃であることを特徴とする、請求項4~8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記操作e)におけるクエンチ温度TQの最高値は、マルテンサイト開始温度TMSと等しく、およびクエンチ温度TQの最低値は、マルテンサイト開始温度TMSよりも最高で250℃だけ低い温度と等しく、以下の式:
(TMS-250°C)≦TQ≦TMS
を満たすことを特徴とする、請求
項4~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記クエンチ温度TQが前記マルテンサイト開始温度TMSと前記マルテンサイト開始温度TMS-150℃との間に存在する以下の式:
(TMS-150°C)≦TQ≦TMS
を満たすことを特徴とする、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
操作g)における保持時間は、2.5時間を超えないことを特徴とする、請求項4~11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
操作h)におけるパーティショニング温度TPは、クエンチ温度TQよりも少なくとも50℃高いことを特徴とする、請求項4~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的特性で、理想的には互いに調和した特性、例えば、高い引張強度Rm、高い降伏強度Rpおよび高い破断点伸びAなどのようなものを、良好な成形性で、高い穴拡がり値、それに対して、「λ」(「ラムダ」)が省略形として導入される値によって特徴付けられるようなものと組み合わせて有する熱延平鋼生産物に関する。さらに、本発明の熱延平鋼生産物は良好な長期強度および耐摩耗性に注目されるべきである。
【0002】
本発明はまた、この種の平鋼生産物の生産のためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書において平鋼生産物に言及するとき、これらが意味するものは、圧延の生産物、例えば、ストリップまたはシート、あるいはそれらから分けられたプレートおよびブランク(未完成品、半加工品などとも言われる)などのようなものであり、それぞれはそれらの厚さより実質大きい幅および長さを有する。
【0004】
本明細書において合金含量に関して数値が与えられるとき、それらは、別なふうに明確に示されていない限り、重量または質量に基づく。構造成分のレベルについての数値-残留オーステナイトのレベルについての数値で、それは容量%で報告されるものである場合を除き-それは、別なふうに指示がなければ、大抵は研磨片(polished section)で見るときの面積に基づく。逆に、雰囲気の組成についての数値は、別なふうに明記しない限り、検討中の特定の容量に基づく。
【0005】
「Quench & Partitioning(クエンチ・アンド・パーティショニング)」生産物と称される平鋼生産物は、高い伸びおよび最適化された変形能と共に、高い強度が注目すべき点である。実際、この種の平鋼生産物は薄いシート厚を有する冷間圧延生産物としてこれまで使用された。
【0006】
しかしながら、特許文献1から知られるのは、高強度建築用鋼の生産方法およびそれからなる生産物であり、そこでは、まず最初に、適切に選定された合金鋼のスラブは950-1300℃に加熱され、およびスラブ内の温度分布が均一になるまで保たれる。スラブが作成される鋼は、典型的には(重量%にて)、0.17-0.23%のC、1.4-2.0%のSi、またはAlが存在する場合、要するに合計で1.2-2.0%のAlおよびSi、1.4-2.3%のMnおよび0.4-2.0%のCr、随意に最大で0.7%までのMoからなるように意図され、残余は鉄および不可避的不純物である。アニーリング処理の後、スラブは熱間圧延を通り、そこでそれらは再結晶温度より低いがA3温度より高くにある温度範囲内で圧延される。熱間圧延の終了後、得られたホットストリップはマルテンサイト形成が始まる温度Msおよびマルテンサイト形成が終了した温度Mf間の温度範囲にあるクエンチング停止温度(quenching stop temperature)まで少なくとも20℃/sのクエンチング速度によりクエンチされる。ここでクエンチング停止温度は典型的には200℃を超えおよび400℃未満の領域にある。このようにしてクエンチされたホットストリップは、マルテンサイトからオーステナイト構造の構成成分までに炭素を移動させるために「パーティショニング処理」を受ける。最後に、こうして処理されたホットストリップは室温にまで冷却される。この刊行物では、クエンチングおよびパーティショニング処理の重要なパラメータは未解決のままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2013/004910号(欧州特許第2726637号明細書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記で明らかにされた先行技術の背景に対して、本発明の目的は、より一層大きなシート厚および最適化された特性の組合せを有する平鋼生産物を提供することであった。
【0009】
その意図はまた、そのような生産物の安価で、および操作上信頼できる生産のためのプロセスを特定することでもあった。
【0010】
生産物に関して、本発明は出願時請求項1に特定する熱延平鋼生産物によってこの目的を達成した。
【0011】
本プロセスに関して、上記で識別された目的に対する本発明の解決策には、本発明の平鋼生産物を生産するとき出願時請求項7に特定された操作を完了することが包含される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明によるホットストリップの工業的生産を
図1に概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の有益な実施形態は、それらの従属請求項に明記され、および本発明の一般的概念と同様、以下に詳細に説明される。
【0014】
本発明は熱延平鋼生産物およびその生産に適したプロセスを提供する。
【0015】
したがって、本発明に従って構成される熱延平鋼生産物および本発明に従って生産される熱延平鋼生産物は、以下の組成(重量%にて)を有する鋼からなる:
C:0.1-0.3%
Mn:1.5-3.0%
Si:0.5-1.8%
Al:1.5%まで
P:0.1%まで
S:0.03%まで
N:0.008%まで
随意に、「Cr、Mo、Ni、Nb、Ti、V、B」の群の一種以上の元素で、以下:
Cr:0.1-0.3%
Mo:0.05-0.25%
Ni:0.05-2.0%
Nb:0.01-0.06%
Ti:0.02-0.07%
V:0.1-0.3%
B:0.0008-0.0020%
のようなレベルを有するもの、
残余で、鉄および生産関連の不可避不純物であるもの。
【0016】
ここで、本発明の熱延平鋼生産物は、次の点で注目すべきであり、
‐平鋼生産物は、800-1500MPaの引張強度Rm、700MPaを超える降伏強度Rp、7-25%の破断点伸びA、および20%を超える穴拡がりλを有し、
‐平鋼生産物の構造は、少なくとも85面積%の範囲のマルテンサイトからなり(consists to an extent of)、その少なくとも半分は焼戻しマルテンサイトであり、前記構造の個別の残り(respective remainder)は、15容量%までの残留オーステナイトから、15面積%までのベイナイトから、15面積%までのポリゴナル(多角形とも言う)フェライトから、5面積%までのセメンタイト(一炭化三鉄と言うこともある)、および/または5面積%までのノンポリゴナルフェライトからなり、および
‐平鋼生産物の構造は少なくとも1.50°のカーネルアベレージミスオリエンテーションKAMを有する。
【0017】
炭素「C」は、本発明に従って溶融加工された鋼において0.1-0.3重量%のレベルで存在する。主に、Cはオーステナイトの形成において主要な役割を果たす。十分な濃度のCは、930℃までの温度で十分なオーステナイト化(austenitization)を可能にし、その温度はここで問題の種類の鋼の熱間圧延において典型的に選定される圧延終了温度より低い。早ければクエンチングの間にも、残留オーステナイトの一部分は本発明に従って提供される炭素によって安定化される。さらに、後のパーティショニングステップ間に追加の安定化が存在する。最初の冷却ステップの間(θQ)または最後の冷却ステップの間(θP2)に形成されるマルテンサイトの強度は、同様に、本発明に従って加工された鋼組成物のC含量に大きく依存する。しかしながら、同時に、C含量が上昇するにつれて、マルテンサイト開始温度はさらに低い温度にシフトする。したがって、C含量が高過ぎると、達成可能なクエンチ温度が非常に低い温度にシフトするため、製造時に障害が生じる。さらに、本発明に従って加工された鋼のC含量は、他の合金元素と比較して、より一層高いCEに最大の貢献をし、結果として溶接性に負の効果(negative effect)を及ぼす。CEは、どの合金元素が鋼の溶接性に悪影響を及ぼす(adversely affect)かを示す。CEは次のように算出することができる:
[数1]
CE=%C+[(%Si+%Mn)/6]+[(%Cr+%Mo+%V)/5]+[(%Cu+%Ni)/15]
上記式中(それぞれの場合において、重量%にて)、%C=鋼のC含量、%Si=鋼のSi含量、%Mn=鋼のMn含量、%Cr=鋼のCr含量、%Mo=鋼のMo含量、%V=鋼のV含量、%Cu=鋼のCu含量、%Ni=鋼のNi含量。
【0018】
本発明に従って要求されるC含量を用いると、最終生産物の強度レベルに対して目標とする影響を与えることが可能である。
【0019】
マンガン「Mn」は鋼の焼入性(hardenability、硬化性とも言う)にとって重要な元素である。同時に、マンガンは冷却の間のパーライトの不要な形成の傾向を減少させる。これらの特性は、本発明のプロセスに従って<100K/sの冷却速度による最初のクエンチング後にマルテンサイトおよび残留オーステナイトの適切な出発構造の確立を可能にする。高過ぎるMnの濃度は、伸びおよびCE、言い換えれば溶接性に有害である。したがって、Mn含量は1.5-3.0重量%に制限される。強度特性の最適化された調和は、1.9-2.7重量%のMn含量によって達成することができる。
【0020】
ケイ素「Si」は、パーライトの形成を抑えること、および炭化物の形成をコントロールすることにおいて重要な部分を有する。セメンタイトの形成は炭素を結合し、従ってそれはもはや残留オーステナイトのさらなる安定化にとって利用可能ではないであろう。他方、高過ぎるSi含量は、レッドスケールの形成促進のため、破断点伸びおよび表面品質も損なわれる。同等効果をAlの合金化によって引き起こすことができる。本発明に従って想定される生産物特性を設定することは、最小値の0.7重量%のSiを必要とする。望ましい構造は、本発明の平鋼生産物において少なくとも1.0重量%のSiのレベルが存在する場合、特別な信頼性と共に設定することができる。1.8重量%のSiは、目標破断点伸びを考慮して、Si含量の上限として規定され、および最大値の1.6重量%のSiへの制限は、平鋼生産物に最適化された表面品質を与える。本発明の平鋼生産物の個別のAl含量に応じて、Si含量はまた、次の段落での説明に従って、0.5-1.1重量%、より一層特に0.7-1.0重量%に設定することができる。
【0021】
アルミニウム「Al」は、脱酸(素)のため、および存在する任意の窒素の結合のために使用される。さらに、すでに述べたように、Alもセメンタイトを抑制するために使用することができるが、Siほど効果的ではない。しかしながら、Alの添加量を増やすと、オーステナイト化温度が著しく上昇し、それゆえにセメンタイトの抑制は、Siによってだけで実現されるのが好ましい。この場合、0-0.03重量%のAl含量が想定され、それは、同時にSiが少なくとも1.0重量%のレベルで存在する場合、オーステナイト化温度に関して有利である。他方、例えば、最適化された表面品質を設定する、すなわち0.5-1.1重量%、好ましくは0.7-1.0重量%の間のレベルに設定するために、Si含量が制限される場合、そのときセメンタイトを抑制するために、0.5重量%の最小レベルにおいてAlを合金化しなければならない。一つの好ましい履行では、Al含量は、特に信頼できる脱酸溶融物(deoxidized melts)の生成のために少なくとも0.01重量%のレベルに設定することができる。鋼のキャスティング(鋳造とも言う)中の問題を回避するために、Al含量を最大1.5重量%、好ましくは最大1.3重量%に制限することが試みられる。
【0022】
リン「P」は溶接性に悪影響を及ぼす。したがって、本発明のホットストリップにおいて、または本発明に従って加工される溶融物において、その量は、最大(at most、多くてとも言う)0.1重量%であり、および0.02重量%まで、より一層特に0.02重量%未満のP含量が有益であり得る。
【0023】
硫黄「S」は、比較的高濃度で、MnSまたは(Mn,Fe)Sの形成をもたらし、それは伸びに有害な成り行きを及ぼす。この影響を避けるため、S含量は最大0.03重量%に制限され、およびS含量を最大0.003重量%、より一層具体的には0.003重量%未満に制限することに利益があり得る。
【0024】
窒素「N」は窒化物の形成をもたらし、それは成形性にマイナスの影響力を及ぼす。したがって、N含量は0.008重量%未満であるべきである。高レベルの技術的努力を用いて、例えば、0.0010重量%未満の非常に低いN含量を実現することが可能である。技術的な複雑さを軽減するために、N含量は、好ましくは少なくとも0.0010重量%、およびより一層好ましくは少なくとも0.0015重量%に設定されてもよい。
【0025】
「Cr、Mo、Ni、Nb、Ti、V、B」の群において収集される合金元素は、本発明の平鋼生産物の特定の特性を設定するために、以下に説明される指針に従って、個々に、一緒に、または様々な組合せで随意に添加され得る。
【0026】
クロム(「Cr」)はパーライトの有効なインヒビター(抑制物質とも言う)であり、およびそれ故に必要とされる最低冷却速度を低下させ得る。このことを達成するために、本発明に従って加工された鋼または本発明の熱延平鋼生産物の鋼にCrが添加される。この効果の有効な確立のために、0.10重量%のCr、好ましくは0.15重量%のCrの最小割合が必要である。同時に、強度は、Crの添加によって大幅に増大し、およびさらに、著しい粒界酸化の危険性がある。また、鋼の表面近傍領域における酸化クロムの形成は、見込まれる被覆性をより一層困難にし、および望まれない表面欠陥を起こし得る。物質の繰り返し負荷の事象において、これらの表面欠陥は長期強度における低下をもたらし、およびそれ故材料の早過ぎる不具合を招き得る。さらに、高過ぎる割合のCrは鋼の変形能(deformability)を損ない;特に、20%より高い良好な穴拡がり(hole expansion)λを確実にすることは不可能である。したがって、Cr含量は0.30重量%を超えず、なるべくなら最大0.25重量%に制限される。
【0027】
モリブデン「Mo」も同様に、パーライトの形成を抑えるのに非常に有効な元素である。この効果を達成するために、鋼は随意に少なくとも0,05重量%、より一層具体的には少なくとも0.1重量%と混ぜ合わされてもよい。0.25重量%を超える添加は有効性の観点から意味を成さない。
【0028】
Crと同様にニッケル「Ni」はパーライトのインヒビターであり、および小量でも有効である。少なくとも0.05重量%、より一層特に少なくとも0.1重量%、少なくとも0.2重量%または少なくとも0.3重量%のNiとの随意の合金化により、この支保効果(supporting effect)を達成することができる。機械的特性の望ましい設定に照らして、同時に、2.0重量%を超えないNi含量に制限することが有用であり;最大1.0重量%、より一層特に0.5重量%のNi含量は、特に実用的であるとして明らかになった。
【0029】
本発明の平鋼生産物の鋼は、随意に、マイクロ合金元素、例えば、バナジウム「V」、チタン「Ti」またはニオブ「Nb」などのようなものも含むことができ、それは、非常に微細な分裂炭化物(very finely divided carbides)(または窒素「N」の同時存在下での炭窒化物)を形成することによってより一層高い強度に寄与する。さらに、Ti、VまたはNbの存在は、パーティショニングステップの間の熱延操作後に粒界および界面(phase boundaries)のフリージングをもたらし、それは結晶粒をより一層微細にし、およびそれ故に強度および成形性の特性の望ましい組合せを促す。著しい効果が見られる最小レベルは、Tiについては0.02重量%、Nbについては0.01重量%およびVについては0.1重量%である。しかしながら、あまりに高濃度のマイクロ合金元素は、過剰な、および粗雑な炭化物の形成、および従って炭素の結合をもたらし、それは次いで本発明に従う残留オーステナイトの安定化にはもはや利用できない。さらに、過度に粗い炭化物の形成は望ましい高い長期強度に悪影響を及ぼす。したがって、個々の元素の作用様式に応じて、上限はTiにつて0.07重量%、Nbについて0.06重量%およびVについて0.3重量%と特定される。
【0030】
同様に、ホウ素「B」の随意の添加物は、界面に対し分離し、およびそれらの可動性を妨げる。これは微粒子の構造を導き、それは機械的特性のために有益であり得る。したがって、この合金元素が使用されるとき、0.0008重量%の最小B含量が観察されるべきである。しかし、Bが合金化される場合、Nの結合にとって十分なTiが存在しなければならない。Bの効果は0.0020重量%の前後のレベルで飽和されることになり、それはまた上限としても与えられる。
【0031】
本発明に従って熱延される平鋼生産物は、800-1500MPaの引張強度Rm、700MPaを超える降伏強度Rp、および7-25%の破断点伸びAを有し;ここで、引張強度Rm、降伏強度Rpおよび破断点伸びAは、DIN EN ISO 6892-1-2009-12に従って定められる。
【0032】
同時に、本発明のホットストリップは、DIN ISO 16630に従って定められ、穴拡がりλにおいて反映されるように、20%を超え、非常に良好な成形性について注目に値する。
【0033】
本発明に従って構成され、およびより一層詳細には本発明の方法によって生産されるホットストリップは、焼戻し、および非焼戻し(non-tempered)のマルテンサイトの構造をもち、残留オーステナイトのフラクション(分率とも言う)を有し;同様に、ベイナイト、ポリゴナルフェライト、ノンポリゴナルフェライトおよびセメンタイトが構造中にほんのわずかに存在していてもよい。構造のマルテンサイトフラクションは少なくとも85面積%、なるべくなら少なくとも90面積%であり、その少なくとも半分は焼戻しマルテンサイトである。よって、本発明の熱延平鋼生産物における残留オーステナイトのフラクションは、せいぜい最大で15容量%である。同様に、それぞれの場合において、残留オーステナイトという犠牲を払って、その構造において、最大で15面積%までのベイナイト、最大で15面積%までのポリゴナルフェライト、最大で5面積%までのセメンタイトおよび/または最大で5面積%までのノンポリゴナルフェライトが、それぞれ存在し得る。一つの好ましい履行において、ポリゴナルフェライトのフラクションおよびまたノンポリゴナルフェライトのフラクションも、0面積%に達し、なぜなら、このケースにおいて、遅延クラッキング(retarded cracking)のために、均一な硬度を有する大部分のマルテンサイト構造において、穴拡がりについての値が特に高いからである。
【0034】
本発明のホットストリップの構造は非常に微細であり、また同様にそれを、光を利用する慣習的な光学顕微鏡法によって評価することはほとんど不可能である。したがって、少なくとも5000倍の倍率を有する走査型電子顕微鏡(SEM)を使った評価が推奨される。しかしながら、高倍率の後でも、最大許容残留オーステナイトフラクションを決定することは困難である。したがって、ASTM E975に従うX線回折(XRD)による残留オーステナイトの定量的測定が推奨される。
【0035】
本発明の熱延平鋼生産物の構造は、結晶格子における明確な、局所的なミスオリエンテーション(方位差とも言うこともある)によって特徴付けられる。これは、構造において一次マルテンサイトの標的フラクション、すなわち最初の冷却中に形成されるマルテンサイトフラクションについて特にそうである。前記局所的なミスオリエンテーションは、いわゆる「カーネルアベレージミスオリエンテーション」、略してKAMによって定量化され、それは1.50°よりも大きいか、またはそれに等しく、なるべくなら1.55°よりも大きい。KAMはきっと少なくとも1.50°のはずであり、なぜならそのケースでは、粒状物において変形に対して同質の抵抗性が均一な格子歪みを通して存在するからである。このようにして、変形の始まりに際して多相構造に対する局所的に制限された予備的損傷を防ぐことが可能である。KAMが1.50°未満である場合、存在する構造が大きく焼き戻され過ぎ、強度特性が本発明についての標的スペクトルの外側にもたらされる。
【0036】
結果として、純粋なフェーズ・フラクション(相分率とも言う)の他に、本発明に従って生産され、および構成される鋼生産物の機械的性質にとって絶対的な因子は、特に結晶格子の歪みである。この格子歪みは、塑性変形に対する初期抵抗の尺度を表し、および標的強度範囲を考慮して特性決定される。格子歪みを測定し、そして従って定量するための適切な方法は、電子後方散乱回折(EBSD)のものである。EBSDにより、構造においてわずかな違い、およびプロファイル、およびさらには局所的なミスオリエンテーションを確かめるために、非常に多くの局所回折計測値が生成され、および組み合わされる。普通の一つのEBSD評価方法は、実際に前述のカーネルアベレージミスオリエンテーション(KAM)であり、そこで一つの測定点のオリエンテーションが隣接する点のものと比較される。閾値より下、典型的に5°では、隣接する点は同じ(歪んだ)粒状物に割り当てられる。この閾値を超えると、隣接する点は異なる(サブ)粒状物に割り当てられる。非常に微細な構造のため、100 nmの最大ステップ幅はEBSDの評価方法のために勧められる。この発明の通知(this invention notification)に描かれる鋼を評価するために、KAMはそれぞれのケースにおいて目下の測定点およびその三番目に近い(third-nearest)隣接点間の関係において評価される。次いで、本発明に従う生産物は、≧1.50°、好ましくは>1.55°の少なくとも75μm×75μmの測定領域からの平均KAM値をもたなければならない。KAMの決定に関するより一層詳細な描写は、Wright(ライト), S.I.、Nowell(ナウエル), M.M.、Fielda(フィールダ), D.A.、Review of Strain Analysis Using Electron Backscatter Diffraction(電子後方散乱回折を用いる歪分析の概説)、Microsc. Microanal.(マイクロスコピー・アンド・マイクロアナリシス)17、2011:316-329に見出される。
【0037】
本発明に従って構成される熱延平鋼生産物を生産するための本発明のプロセスは、少なくとも以下の操作を含む:
a)合金鋼で、本発明の熱延平鋼生産物に関連してその組成および変形が既に上記で明らかにされており、そしてそれは従って次の組成(重量%にて):0.1-0.3%のC、1.5-3.0%のMn、0.5-1.8%のSi、1.5%までのAl、0.1%までのP、0.03%までのS、0.008%までのN、随意に、「Cr、Mo、Ni、Nb、Ti、V、B」群の一以上の元素で、次のレベル:0.1-0.3%のCr、0.05-0.25%のMo、0.05-2.0%のNi、0.01-0.06%のNb、0.02-0.07%のTi、0.1-0.3%のV、0.0008-0.0020%のBでのもの、残余で、鉄および生産関連の不可避不純物であるものをもつ、合金鋼の溶融;
b)半仕上げの生産物(semi-finished product)、例えば、スラブまたは薄いスラブなどのようなものを与えるための溶融物のキャスティング;
c)半仕上げの生産物の1000-1300℃の加熱温度TWEに通した加熱;
d)1.0-20mmの厚さをもつホットストリップを与えるための、熱を通した半仕上げの生産物(heated-through semi-finished product)の熱延であり。熱延は熱延終了温度TETにて終了し、それに対しTET≧(A3-100℃)であり、そこで、「A3」は鋼の個別の(respective)A3温度を示し;
e)ホットストリップの最初のクエンチであり、熱延終了温度TETから開始し、30K/sを超える冷却速度θQにて、クエンチ温度TQまでで、それに対しRT≦TQ≦(TMS+100℃)であり、そこで、「RT」は室温を示し、および「TMS」は鋼のマルテンサイト開始温度を示し、およびそこでマルテンサイト開始温度TMSは以下:
[数2]
TMS[°C]=462-273%C-26%Mn-13%Cr-16%Ni-30%Mo
のように定められ、
上記式中(各ケースにおいて重量%にて)、%C=鋼のC含量、%Mn=鋼のMn含量、%Cr=鋼のCr含量、%Ni=鋼のNi含量、%Mo=鋼のMo含量であり;
f)コイルを与えるための、平鋼生産物の随意の巻取りであり、クエンチ温度TQまでクエンチされ;
g)平鋼生産物の保持であり、クエンチ温度TQに、0.1-48時間の時間にわたりTQ-80℃からTQ+80℃までの温度範囲内で冷却され;
h)平鋼生産物のパーティショニング温度TPへの加熱、またはパーティショニング温度TPでの平鋼生産物の保持であり、それは操作(g)の後に存在する平鋼生産物の温度TQ+/-80℃に少なくとも等しく、および0.5-30時間のパーティショニング時間tPTにわたって、最高500℃であり;加熱が行われる場合、加熱速度θP1は最大1K/sであり;
i)平鋼生産物の室温への冷却;
j)平鋼生産物の随意のスケール除去;
k)平鋼生産物の随意のコーティング。
【0038】
本発明によるホットストリップの工業的生産を
図1に概略的に示し、および以下に詳細に説明する。
【0039】
操作a):
本発明に従って溶融した鋼溶融物の合金化、およびその変動の可能性は、もちろん、本発明による生成物の組成に関連して既に上記に与えたのと同じ点に従う。
【0040】
操作b):
半仕上げの生産物は本発明に従って合金化された溶融物からキャスティングされ、この生産物は典型的にスラブまたは薄いスラブである。
【0041】
操作c):
半仕上げの生産物は、本発明の鋼においてオーステナイトが形成される温度範囲内の加熱温度TWEに加熱される。よって、本発明のプロセスのケースにおいて、本発明の鋼の加熱温度TWEはきっと少なくとも1000℃のはずであろう、それは加熱温度がより一層低い場合、その後の熱延手順中に生じる強度が高過ぎるからである。同時に、スラブ表面の部分的な溶融を避けるために、加熱温度はきっと最高1300℃であるだろう。
【0042】
加熱温度TWEは好ましくは少なくとも1150℃であり、なぜならば、このようにして、例えば、マンガン偏析(manganese segregations)の結果として生じ得る、構造的異質性(structural inhomogeneities)を確実に回避することが可能だからである。
【0043】
加熱温度TWEを最大値の1250℃に制限することによって、加熱それ自体およびこの温度範囲から始まるさらなる加工ステップの経済的な操作を提供することが可能である。
【0044】
さらに、加熱温度TWEを1150-1250℃にて設定することによって、明確な構造状態が設定され、および沈殿物の標的とする溶解が達成される。
【0045】
温度TWEへの加熱は、慣習的なプッシャー炉またはウォーキングビーム炉において行ってよい。本発明のプロセスが慣習的な薄いスラブキャスティングラインにて使用され、そこで本発明に従う組成を有する鋼が典型的には40-120mmの厚さを有する薄いスラブにキャスティングされる場合(DE4104001A1参照)、加熱はまた、キャスティング操作後にトラバースし、およびキャスティングラインに直接接続される炉において起こしてもよい。
【0046】
操作d):
それを加熱した後、最終厚さが1.0および20mm間、好ましくは1.5および10mm間のホットストリップを与えるために、半仕上げの生産物を熱延する。利用可能な工場技術に応じて、熱延には、粗圧延で、粗圧延スタンドにおいて、随意に反転させて行うもの、およびそれに続く仕上げ圧延で、そこでは、いわゆる仕上げ圧延ラインと呼ばれ、複数の、-典型的に五つかまたは七つの-連続した順序でトラバースする圧延スタンドからなるものが含まれ得る。熱延において終了圧延温度(end rolling temperatures)TETは条件TET≧(A3-100°C)に従って設定される。終了圧延温度TETが加工される特定の鋼組成のA3温度に少なくとも等しいか、またはA3温度を超えるように設定される場合、実用的な目的のために有利であることがここで証明される。ゆえに、終了圧延温度TETを850-950℃の領域に設定することが有益であり得る。しかしながら、本発明のプロセスが構造において一定のフラクションのポリゴナルフェライトの形成を確実にするような方法で行われる場合、これは鋼の個別のA3温度より低い100℃までの終了圧延温度TETを選定することによって達成することができる。加工される特定の鋼組成のA3温度は、Andrews(アンドルーズ), J.によってIron and Steel Institute(203)、pp. 721-727、1965において発表された式(1)に従って推定することができる:
[数3]
A3[°C]=910-203√(%C)-15.2%Ni+44.7%Si+31.5%Mo-30%Mn+11%Cr
上記式(1)中(各ケースにおいて重量%にて)、%C=鋼のC含量、%Ni=鋼のNi含量、%Si=鋼のSi含量、%Mo=鋼のMo含量、%Mn=鋼のMn含量、%Cr=鋼のCr含量。
【0047】
操作e):
熱延の後、鋼は、熱延終了温度TETから出発して、および高い冷却速度にて、クエンチ温度TQまで、第一のクエンチングステップにおいてクエンチされる。
【0048】
ここでの冷却速度θQは30K/sよりも高い。
【0049】
冷却中に目標とされるクエンチ(焼入れと言うこともある)温度TQは、一方では室温を下回らない。他方では、それは、マルテンサイト開始温度TMSよりも最大で100℃高く、そこでマルテンサイト変態(martensitic transformation)が始まる。
【0050】
マルテンサイト開始温度TMSは、van Bohemen(バン・ボヘメン)によって開発された以下の式(2)を使用して推定することができる:
[数4]
TMS[℃]=462-273%C-26%Mn-13%Cr-16%Ni-30%Mo
上記式(2)中、各ケースにおいて重量%にて、%C=鋼のC含量、%Mn=鋼のMn含量、%Cr=鋼のCr含量、%Ni=鋼のNi含量、%Mo=鋼のMo含量。
【0051】
マルテンサイト開始温度TMSを超えるクエンチ温度TQの場合、一次マルテンサイトの望ましいフラクションは形成されないであろう。その代わりに、それぞれの場合に本発明の平鋼生産物のために本発明に従って指定される(mandated)フラクションを超え、過剰のフェライト、パーライトまたはベイナイトのフラクションが生産されるであろう。これらの構造的成分のフラクションが高過ぎる場合、そのとき冷却に続くパーティショニング(分配とも言う)処理中の残留オーステナイトの安定化が妨げられる。さらに、先に進める冷却中、形成される一次マルテンサイトは、自己焼戻しによって、本発明に従って目的とされるKAM値が達成されないそのような程度に緩和するであろう。さらに、本発明によって指定されるようなTMS+100℃の制限を超えるクエンチ温度TQでは、異質性およびそれ故に個々の元素の偏析についての可能性がますます高まり、それは次に要求されないバンディングを有する構造の形成に導く可能性がある。
【0052】
したがって、最終生産物の望ましい成形性に関して理想的な構造は、特に、クエンチング中に形成される一次マルテンサイトに関して、マルテンサイト開始温度TMSよりも最大で100℃高く、およびマルテンサイト開始温度TMS-250℃に少なくとも等しいクエンチ温度TQによって達成することができ、言い換えると以下のようであり、すなわち:
(TMS-250℃)≦TQ≦(TMS+100℃)。
【0053】
ここで特に好ましいことが証明されているのは、マルテンサイト開始温度TMSおよびマルテンサイト開始温度TMS-150℃の間のクエンチ温度TQである((TMS-150℃)≦TQ≦TMS)。
【0054】
しかしながら、本発明の平鋼生産物の構造において最大マルテンサイト含量を達成することが意図である場合、低いクエンチ温度TQ、例えば、室温の領域内にある温度を選定することも有用であり得る。
【0055】
操作f):
クエンチ温度TQまでクエンチされる平鋼生産物は、全体材料内の温度の一貫性(consistency)および同質性(homogeneity)を確実にするために、操作e)の後にコイルを与えるように随意にコイル状にし得る。
【0056】
しかしながら、このケースでは、平鋼生産物の温度がクエンチ温度TQより80℃を超えて低下してはならないことに留意すべきである。
【0057】
操作g):
冷却後、クエンチ温度TQに冷却される熱延平鋼生産物は、TQ-80℃からTQ+80℃までの温度範囲において、標的変態(target transformations)を確実にし、そしてまた、マイクロ合金元素を使用するとき、微細に分布した炭化物の形成を確実にするために0.1-48時間の時間保持される。
【0058】
この操作の目的は、15容量%までの残留オーステナイトを含み得るマルテンサイト構造の形成である。ここでの実際的な試験は、この結果が概して本発明により鋼から構成されるホットストリップの場合において大抵は2.5時間までだけの保持時間で得られることを示した。したがって、エネルギーの利用の観点から、保持時間を最大2.5時間に制限することは有用かもしれず-より一層長い保持時間は害を及ぼさず、そしてそれ故に利用可能な工場技術またはその占有(occupation)の観点からそう理解される場合、選定される。さらに、材料において温度の十分な同質性を達成するために、およびこれと一緒になって、15容量%までの残留オーステナイトフラクションの形成をマルテンサイト構造内で達成するために、少なくとも一時間の保持時間も有用であることが証明される。
【0059】
TQ-80℃からTQ+80℃までの温度範囲内での保持は、等温的に、言い換えれば一定の温度で、あるいは非等温的に、言い換えれば下降または上昇または振動温度(oscillating temperature)を伴ってのいずれかでも起こり得る。
【0060】
保持の経過中に工場関連の冷却がある場合、最大許容冷却速度は0.05K/sである。
【0061】
しかしながら、保持中に起こる再分布および変態事象は、発熱的にも進行し得、そうして、変態の熱を解放し、それにより、平鋼生産物の温度が上昇する。その場合の変態の熱は、起こり得る任意の冷却を妨げる。構造のこの非等温発達(nonisothermal development)のための自己発熱速度は最大で0.01K/sである。
【0062】
したがって、個別のクエンチ温度TQから開始して、保持中に温度変化が生じる速度は、典型的には-0.05K/sから+0.01K/sまでの範囲にある。
【0063】
保持条件は、発生する温度変化にもかかわらず、TQ+/-80℃の指定温度範囲(mandated temperature window)が維持されるように選定しなければならない。
【0064】
操作h):
この操作、パーティショニングとも呼ばれるものの目的は、マルテンサイト、焼戻しマルテンサイト、および随意に残留オーステナイトの構造を確立することである。
【0065】
操作h)において、平鋼生産物は、操作g)の後に確立されたその温度から出発して、パーティショニング温度TPにされるか、またはパーティショニング温度TPがクエンチ温度TQの前後で+/80℃だけ変動する範囲内にある場合、過飽和マルテンサイトからの炭素で残留オーステナイトを豊富化するために、その温度に維持される。
【0066】
パーティショニング温度TPは、有利には少なくともクエンチ温度TQと同じくらい高いべきであるが、好ましくは少なくとも50℃高く、より一層特に少なくとも100℃高い。
【0067】
パーティショニング温度TPが操作g)の後に存在する温度よりも低い場合(クエンチ温度TQ+/-80℃)、そのとき炭素移動度が残留オーステナイトの安定化をもたらすには低すぎる。さらに、一次マルテンサイトの焼戻し効果は望ましい程度には起こらない。
【0068】
本発明の鋼についてパーティショニング温度TPは、最適焼戻し状態を達成するために、最高500℃、より一層特に最高470℃である。
【0069】
構造において存在する残留オーステナイトを崩壊させることなく(without disintegration)炭素の十分な再分布を可能にするために、パーティショニング時間tPTは30分および30時間の間である。
【0070】
ここでパーティショニング時間tPTは、加熱手順に必要な時間tPR(加熱ランプ)、および等温保持を目的とした時間tPIとから作成され;ここでのtPIもゼロであってよい。
【0071】
本発明に従って指定された全体のパーティショニング時間tPTが観察されさえすれば、パーティショニング時間tPT内の時間tPRおよびtPIの割合は可変である。
【0072】
操作h)において加熱される平鋼生産物がコイル状に巻かれた生産物である場合、ホットストリップは理想的には1K/sまでの加熱速度θP1で加熱される。0.005K/s未満の加熱速度θP1は実用的ではないと考えられる。加熱速度θP1>1K/sでは、コイル状ホットストリップの外側、中間、および内側の巻き(turns)の間に許容できない温度差が生じる可能性がある。本発明に従って生産される熱延平鋼生産物の全長にわたって均一な物理的性質を確実にするために、これらの差は最高でも85℃になるべきである。
【0073】
パーライトの形成および残留オーステナイトの崩壊は、規定された温度での修飾された保持時間を使って標的とされる方法において抑えられる。
【0074】
時間tPIがゼロである場合、プロセスの点で(in process terms)有利であると明らかにされた。この場合、望ましい構造は、加熱手順の間、すなわち時間tPR内にだけ確立される。
【0075】
既に述べたように、パーティショニング温度は、操作g)の後に平鋼生産物がもつ温度(クエンチ温度TQ+/-80℃)と同じであってもよく、それは、平鋼生産物の加熱のための時間tPRがないことを意味する。
【0076】
パーティショニング(操作h))は、バッチアニーリング炉においてバッチ式で成し遂げられるのが好ましく、ホットストリップの緩徐な加熱を可能にし、それはこの場合必然的にコイルに巻かれる。
【0077】
バッチアニーリング炉でのアニーリングは以下の利益をもたらす:
【0078】
加熱のうちに、比較的小さな温度勾配が生じ、それゆえに材料を通した加熱(heating-through)はより一層均一である。最大加熱速度は、一方では標的温度によって、および他方ではバッチアニーリング炉において個別の投入重量によって導かれる。加熱が速すぎる場合、ストリップは十分に均一に加熱されない。それは不均一な構造、より一層特に異なるマルテンサイト形態をもたらし、それはさらなるパーティショニング挙動、そしてそれ故に最終的な構造に影響を及ぼす。これは、ホットストリップラインに直接一体化される加熱アセンブリ(例えば、米国特許出願公開第2,014/0299237号の場合のように、連続アニーリングまたはインライン誘導アニーリング)に特に当てはまる。不均一な構造は、劣った変形能、およびとりわけ乏しい穴拡がりをもたらす。
【0079】
反対に、緩徐な加熱はマルテンサイトからオーステナイトへの炭素の均一な再分布をもたらし、従って一方では粗大な炭化物の望まれていない形成を防止し、および他方では最終的な構造において炭素富化オーステナイトフラクションに対する調節を可能にする。速すぎる加熱は、結晶学的な欠陥、例えば、界面および転位などのようなものでの炭素の蓄積を起こし、それゆえに遷移炭化物および/またはセメンタイトの析出が促進される。これは、パーティショニングステップ中にオーステナイトを安定化させるために利用可能な炭素の割合の減少、そしてこれ故に不均一な構造をもたらす。したがって、パーティショニングステップ中の炭素再分布の動力学に適合した加熱条件を調整することにより、改善された成形特性を有し、特に改善された穴拡がりを有する均一な構造を確立することが可能になる。
【0080】
平鋼生産物の長さおよび幅の双方にわたって均一な特性を確立するために、パーティショニングステップ中の最大加熱速度θP1は、1K/s、好ましくは0.075K/sであり、それは、そうでなければ低下した成形特性、より一層特に損なわれた穴拡がりに関連する局所的な不均一性が存在するためである。最終的な構造の最適な同質性、そしてこれ故に理想的な穴拡がりおよび長期強度特性を確実にするために、加熱は最大0.03K/sの加熱速度θP1で行われる場合が特に好ましい。
【0081】
経済性の理由から、最小加熱速度θP1は、0.005K/s、なるべくなら0.01K/sである。
【0082】
バッチアニーリング炉の使用のさらなる利益は、特定の標的アニーリング温度を連続アニーリング炉におけるよりも正確に設定することができることである。さらに、アニーリングは不活性ガス混合物において行われ、ホットストリップ表面への有害な影響-例えば、酸化を回避することができる。使用される不活性ガスには、水素、窒素、およびさらには水素および窒素の混合物が含まれる。さらに、別個のバッチアニーリング炉においてパーティショニングすることにより、熱延ラインに対してサイクル時間においてデカップリングする(切り離すとも言う)ことが可能になる。これにより、熱延能力のより一層良好な利用が可能になる。
【0083】
操作h)においてバッチアニーリング炉が使用される場合、操作g)内での平鋼生産物のバッチアニーリング炉への輸送は、温度TQに従いそれに関連して上述した条件を考慮に入れた方法で行われるべきである。
【0084】
操作h)の後、熱延平鋼生産物は室温まで冷却される。操作i)での冷却は、平鋼生産物において応力を制御できるようにするために、最大1K/sの冷却速度θP2で行われるべきである。経済的な理由から、0.01K/sの最小冷却速度を適用することができる。
【0085】
平鋼生産物がストリップ形態にあり、および随意の操作f)においてコイルに巻かれた場合、次にそれをデコイルし、および物流上の理由から(for logistical reasons)ストリップシートと呼ばれるものに分けることができることは自明である。
【0086】
意図する特定の最終用途に応じて、本発明の平鋼生産物にとって、表面処理、例えば、スケール除去、酸洗いまたはその種の他のものなどのようなものに供するように得られるか、または構成されたものは有用であり得る。
【0087】
平鋼生産物に、腐食からの保護を、金属コーティングを用い、慣習的な方法において提供することも有用であり得る。これは、例えば、電気亜鉛めっきを使って行ってよい。
【0088】
本発明のまたは本発明に従って生産される平鋼生産物は、熱延状態において加工される。これにより、平鋼生産物の厚さを1mmまたはそれよりも厚くすることができ、典型的には1.5-10mmの範囲内にある厚さである。
【0089】
本発明の熱延平鋼生産物は、構造的に軽量な構築物に特に適し、その理由はより一層高い強度が材料の厚さの減少を可能にするからである。慣習的な高強度および超高強度等級は、より一層多くの実質的に成形された部品には適しておらず、それはそれらが必要な成形性を欠くからである。
【0090】
さらに、本発明に従って構成される平鋼生産物は、成分の統合を可能にし、それは高強度にもかかわらず良好な成形性によってアセンブリの複数の成分が本発明の熱延平鋼生産物から作成される一つの成分によって置き換えられることを可能にするからである。
【0091】
さらに、特に自動車両のシャシ部品については、穴拡がりの増大は有益であり、および貫通点(through-points)の成形によって実質促進される。今まで利用可能な等級での不適切な穴拡がりは、800MPaを超える強度範囲において、シャシ部品用の排除のための基準と考えられた。シャシ部品が典型的に受ける周期的な荷重は、材料、さらに理想的には良好な長期強度を有することを必要とする。
【0092】
さらに、軽量構築物のために材料の厚さを薄くすることに関連して改善された成形性は、新しい構成要素の幾何学的形状を可能にする。
【0093】
自動車両内での本発明の平鋼生産物の利益は、駆動チェーンの領域においても、およびまた内装部品および変速装置部品に関しても利用することができる。
【0094】
金属加工産業では、本発明の平鋼生産物の機械的特性を打ち込み部品(stamped parts)の軽量構築物のために利用することができる。構成要素の統合もまた、接合作業を削減し、そしてこれ故に同時に製造の信頼性を高め、およびコスト上の利益を生み出す可能性が含まれる。
【0095】
本発明の平鋼生産物を建設業で使用することは、それらが高強度と共に改善された成形性を見せるので同様に有益である。さらに、それらは同等の強度レベルで他の平鋼生産物と比較して増加した降伏強度比を有する。これらの特性により、予見できなかった荷重摘要、例えば、地震、衝撃荷重または構造的に想定された最大荷重の超過などのようなものが発生した場合に、構築物の優れた安定性が確実にされる。
【実施例】
【0096】
本発明を、実施例により以下にさらに一層詳細に説明する。
【0097】
下記の表において、本発明によらない例には「*」が付され、および本発明の指定外にある各例における値には下線を引く。
【0098】
本発明を試験するために、表1に特定された組成を有する実験用溶融物A-Oを溶融した。
【0099】
表2は、鋼A-Oについて、式(1)に従って決定されたA3温度および式(2)に従って決定されたマルテンサイト開始温度TMSを報告する。
【0100】
47の実験について、溶融物A-Oをスラブにキャスティングし、続いてそれらをそれぞれ再加熱温度TWEに加熱した。次いで、このようにして加熱したスラブを、2-3mmの厚さを有するホットストリップに通常の方法で圧延し、熱延はそれぞれの場合において、同様に通常の方法で、粗圧延および最終圧延を含み、それぞれの場合において熱延終了温度TETで終了する。
【0101】
熱延の終了後最大で5秒以内に、すなわち技術的には熱延の直後に、得られた熱延鋼ストリップをそれぞれの場合において冷却速度θQないし個別のクエンチ温度TQにてクエンチし、そこではそれらが持続時間tQの間続いて保持された。後にバッチアニーリングを受けたホットストリップは、クエンチングおよび保持の間にコイルに巻いた。
【0102】
保持後、ホットストリップを加熱速度θP1により持続時間tPRについて個別のパーティショニング温度TPまで加熱し、そこでそれらを持続時間tPIの間保持した。
【0103】
最後に、実験1-47において得られるホットストリップを室温に冷却した。
【0104】
再加熱温度「TWE」、熱延終了温度「TET」、冷却速度「θQ」、クエンチ温度「TQ」、保持時間「tQ」、加熱速度「θP1」、保持時間「tPI」、パーティショニング温度「TP」、および加熱時間「tPR」のパラメータを表3において、実験1-47のそれぞれについて報告する。
【0105】
さらに、表3において、各々の実験について、パーティショニング処理(操作h))のために使用されるアセンブリおよびクエンチング温度TQとパーティショニング温度TPとの間の個別の差が識別される。バッチアニーリング炉を用いるとき、それぞれの場合において、それが温度を上昇させるため(「加熱」)または温度を一定に保つため(「保持」)に使用されたかどうかの表示もある。
【0106】
実験1-47で得られる熱延鋼ストリップにおいて示す「降伏強度RP0.2」、「引張強度Rm」、「RP0.2/Rm比」、「伸びA」、および「穴拡がり値λ」の機械技術的特性を、製造後に見られるように、表4に特定する。
【0107】
表5には、その構造において、ポリゴナルフェライト「pF」、ノンポリゴナルフェライト「npF」、焼戻しマルテンサイト「AM」、セメンタイト「Z」、残留オーステナイト「RA」、非焼戻しマルテンサイト「M」、およびベイナイト「B」の割合を、およびまた実験1-47で得られるホットストリップのKAMを与える。
【0108】
本発明によらない実験7の場合、クエンチングは過度温度で終結したので、孔拡がりについて本発明に従って要求される値は達成されなかった。
【0109】
逆に、実験3-6では、本発明ではない比較実験7と比べて、7%ないし38%だけ孔拡がりの増加を生じさせ、同時に高すぎる割合のベイナイトを回避した。したがって、実験3-5では、微量のベイナイトしか存在せず、および実験6では10面積%のベイナイトが存在し、それに対し、実験7のケースでは、その構造において20面積%のベイナイトが存在した。
【0110】
実験11-13は、A3温度を超えて圧延を行い、および十分に長い保持時間tQを観察する必要性を示す。
【0111】
溶融物DおよびEを用いて、1028-1500MPaの強度および22-87%の穴拡がりをもつ物質を生産することに成功した。
【0112】
しかしながら、本発明ではない実験24の場合、製造パラメータは高過ぎる割合のベイナイトの形成をもたらす。
【0113】
本発明ではない溶融物Fでは、十分に長い保持時間にもかかわらずセメンタイトの形成を防ぐことは不可能であった(実験29参照)。
【0114】
溶融物Mは、最適化された表面品質を有する変形の一例として、減少したSi含量と増加したAl含量とを組み合わせる。同時に低いTETの場合(実験45を参照)、5面積%の割合のポリゴナルフェライトがその構造において形成され、それによって良好な穴拡がりと共に低い降伏強度が可能にされる。
【0115】
溶融物A-MおよびOは慣習的な操作条件下で生産したのに対し、溶融物Nは真空炉において実験室の溶融物として生産した。高純度の溶融物Nにより、非常に良好な孔拡がりを有する物質を生成することに成功した(実験46参照)。
【0116】
溶融分析Oを用いた実験47は、すべての製造パラメータが観察されたとき、破断点伸びおよび穴広がりに関してまだまさに十分である値を有する物質が製造可能であることを示す。
【表1】
【表2】
【表3-1】
【表3-2】
【表4-1】
【表4-2】
【表5-1】
【表5-2】