(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ナノ粒子
(51)【国際特許分類】
A61K 47/54 20170101AFI20221213BHJP
A61K 47/52 20170101ALI20221213BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20221213BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20221213BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20221213BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20221213BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20221213BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20221213BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221213BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20221213BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20221213BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20221213BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20221213BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20221213BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20221213BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221213BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20221213BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20221213BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20221213BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221213BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20221213BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20221213BHJP
A61K 49/08 20060101ALI20221213BHJP
B82Y 5/00 20110101ALI20221213BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20221213BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20221213BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20221213BHJP
A61K 47/58 20170101ALI20221213BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20221213BHJP
【FI】
A61K47/54
A61K47/52
A61P9/10 103
A61P9/10 101
A61P37/08
A61P25/28
A61P11/06
A61P31/18
A61P37/06
A61P35/00
A61P31/04
A61P25/24
A61P3/10
A61P3/06
A61P9/12
A61P3/00
A61P25/00
A61P3/04
A61P25/16
A61P25/04
A61P29/00 101
A61P19/02
A61K49/00
A61K49/08
B82Y5/00
B82Y40/00
A61K9/14
A61K47/32
A61K47/58
A61K47/69
(21)【出願番号】P 2019534811
(86)(22)【出願日】2017-12-21
(86)【国際出願番号】 AU2017051437
(87)【国際公開番号】W WO2018112543
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-16
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】519223745
【氏名又は名称】ザ ハート リサーチ インスティテュート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コレイア ドス サントス,ミゲル アンジェロ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ,エリゼ
(72)【発明者】
【氏名】ロルワッタナポンサ,プラヴィースダー
(72)【発明者】
【氏名】ビレク,マルセラ
(72)【発明者】
【氏名】ワイズ,スティーブン ギャリー
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0222143(US,A1)
【文献】Thin Solid Films,2013年,Vol.548,pp.1-17
【文献】Journal of Materials Chemistry,2012年,Vol.22,pp.21305-21312
【文献】Journal of Applied Physics,2012年,Vol.112,Article No.013303
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
A61K 49/00-49/22
B82Y 5/00-99/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第2の種と、
約1nm~約50nmの平均直径を有
するナノ粒子ポリマー、
ここで前記ナノ粒子ポリマーは、
架橋されており、
アルケン、アルキン、シクロアルケン、シクロアルキン、
および、それらの混合物から
なる群から選択される少なくとも1つのモノマー
の断片を含
み、
前記ナノ粒子ポリマーは、
(i) 前記少なくとも1つの第2の種と共有結合することができる不対電子を含む結合部位を含む、及び、
(ii) 前記少なくとも1つの第2の種と化学的または物理的に結合することができる少なくとも1つの官能性部分を含む、
の少なくとも1つを含み、
前記ナノ粒子ポリマーは、以下の1以上の特徴、すなわち、
約3470G~約3520Gの範囲内に中心があり、及び/または約2.001~約2.005の範囲内のg因子に対応する広い電子常磁性共鳴ピーク、
合成後約0時間~約2時間以内に、電子常磁性共鳴により測定された、約10
19
~約10
15
スピン/cm
3
の範囲のスピン密度、
合成後約0時間~約240時間以内に電子常磁性共鳴により測定された、約10
17
~約10
15
スピン/cm
3
の範囲であるスピン密度、
約3680~約2700cm
-1
の範囲内;
約1800~約1200cm
-1
の範囲内;
約2330~約2020cm
-1
の範囲内;
約1200~約1010cm
-1
の範囲内;及び/または
約1010~約700cm
-1
の範囲内;
に中心がある赤外スペクトルの1つ以上の吸収帯、
約3600~3100cm
-1
の範囲内;及び/または
約3100~2700cm
-1
の範囲内;
に中心がある赤外スペクトルの1つ以上の吸収帯、
約-100mV~約+100mVの範囲内のゼータ電位;
約2~約10のpH範囲内の溶液中で測定された約-80mV~約+80mVの範囲内のゼータ電位;または
窒素:炭素の元素比が約0.01:1~約2:3であること、
を有する、
或いは、
2以上の前記ナノ粒子ポリマーを含
む凝集体であって、約5nm~約500nmの平均直径を有する
前記凝集
体、
とを含む
、コンジュゲート。
【請求項2】
前記ナノ粒子ポリマーが、球形、またはほぼ球形である、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
前記凝集体が、球形、またはほぼ球形である、請求項1または請求項2に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
前記
少なくとも1つのモノマーがアルキンを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
前記
少なくとも1つのモノマーがアセチレンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
前記
ナノ粒子ポリマーが、周期表の15、16もしくは17族から選択される
少なくとも1つの元素
をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
前記
少なくとも1つのモノマーの断片の少なくとも1つが、1以上の窒素原子に結合している、請求項1~6のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
前記ナノ粒
子ポリマーが、アミン基、イミン基、一酸化窒素基
、ニトリル基、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの
官能基部分を含む、請求項
1~7のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
前記第2の種が、ターゲティングリガンド、医薬品、造影剤、アミノ酸、ペプチド
、タンパク質、受容体ターゲティングリガンド、遺伝子標的化剤、ポリヌクレオチド、RNA、感光性色素、切断可能な連結分子、炭化水素、全細胞、細胞フラグメント、ミセル、リポソーム、ハイドロゲル、ポリマー粒子、半導体粒子、セラミック粒子、金属粒子、
および、それらの混合物から
なる群より選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
2つ以上の第2の種が前記ナノ粒子ポリマーまたは凝集体に結合している、請求項1~9のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
前記ナノ粒子ポリマーが、前記少なくとも1つの第2の種と共有結合することができる不対電子を含む結合部位を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項12】
前記ナノ粒子ポリマーが、カルボン酸、一級アミン、二級アミン、一酸化窒素、マレイミド、チオール、スルホン酸、カーボネート、カルバメート、ヒドロキシ、アルデヒド、ヒドラジン、イソシアネート、イソチオシアネート、リン酸、ホスホン酸、ハロアセチル、ハロゲン化アルキル、アクリロイル、フッ化アリール、ヒドロキシルアミン、ジスルフィド、ビニルスルホン、ビニルケトン、ジアゾアルカン、オキシラン、及びアジリジン、並びにそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの官能性部分を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか一項に記載のコンジュゲート、及び薬学的に許容可能な担体、賦形剤、または結合剤を含む医薬組成物。
【請求項14】
請求項1~
12のいずれか一項に記載のコンジュゲートを含む基質。
【請求項15】
前記コンジュゲートが、前記基質の少なくとも1つの表面上に存在する、請求項
14に記載の基質。
【請求項16】
前記コンジュゲートが、前記基質内に組み込まれる、請求項
14に記載の基質。
【請求項17】
前記コンジュゲートが、前記基質に共有結合している、請求項
14~
16のいずれか一項に記載の基質。
【請求項18】
約1nm~約50nmの平均直径を有
するナノ粒子ポリマーであって、
アルケン、アルキン、シクロアルケン、シクロアルキン、
およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つのモノマーを含
み、周期表の15、16もしくは17族から選択される元素を含む少なくとも1つのガス又は不活性ガスをさらに含む又は含まない、プラズマから形成される
前記ナノ粒子ポリマー;または
2つ以上の前記ナノ粒子ポリマーを含み、約5nm~約500nmの平均直径を有する凝集体の、
第2の種とのコンジュゲートの形成での使用。
【請求項19】
前記第2の種が、ターゲティングリガンド、医薬品、造影剤、アミノ酸、ペプチド
、タンパク質、受容体ターゲティングリガンド、遺伝子標的化剤、ポリヌクレオチド、RNA、感光性色素、切断可能な連結分子、炭化水素、全細胞、細胞フラグメント、ミセル、リポソーム、ハイドロゲル、ポリマー粒子、半導体粒子、セラミック粒子、金属粒子、
および、それらの混合物から
なる群から選択される、請求項
18に記載の使用。
【請求項20】
i)約1nm~約50nmの平均直径を有
するナノ粒子ポリマーであって、
アルケン、アルキン、シクロアルケン、シクロアルキン、もしくはそれらの混合物から選択される少なくとも1つのモノマー
を含み、周期表の15、16もしくは17族から選択される元素を含む少なくとも1つのガス又は不活性ガスをさらに含む又は含まない、プラズマから形成される
前記ナノ粒子ポリマー;または
2つ以上の前記ナノ粒子ポリマーを含み、約5nm~約500nmの平均直径を有する凝集体;及び
i
i)少なくとも1つの第2の種、
を提供することと、
前記ナノ粒子ポリマーまたは凝集体と前記少なくとも1つの第2の種とが物理的または化学的に互いに結び付くように、前記ナノ粒子ポリマーまたは凝集体と少なくとも1つの第2の種とを接触させることと、
を含む、コンジュゲートの形成方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの第2の種が、前記ナノ粒子ポリマーまたは凝集体に共有結合する、請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つのモノマーがアルキンであるか、又は、アセチレンである、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記ナノ粒子ポリマーが、アミン基、イミン基、一酸化窒素基、ニトリル基、及びその組み合わせからなる群より選択される、少なくとも1つの官能性部分を含む、請求項20~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
急性冠症候群、加齢性疾患もしくは障害、アレルギー性疾患もしくは関連状態、アルツハイマー病、喘息、HIV、抗生物質耐性、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、細菌感染、がん、認知症、うつ病もしくは関連状態、糖尿病、脂質異常症、高脂血症、高血圧、魚鱗癬、免疫疾患、代謝性疾患もしくは障害、神経学的疾患もしくは障害、肥満症、パーキンソン病、疼痛、関節リウマチ、または増殖性疾患から選択される、
前記疾患、障害、または状態を罹患している、罹患しやすい、またはその1以上の症状を示している対象を処置するための、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記対象における疾患、障害、または状態を治療するための医薬の形成における、請求項1~
12のいずれか一項に記載のコンジュゲートの使用。
【請求項26】
前記疾患、障害、または状態が、急性冠症候群、加齢性疾患もしくは障害、アレルギー性疾患もしくは関連状態、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、細菌感染、がん、認知症、うつ病もしくは関連状態、糖尿病、脂質異常症、高脂血症、高血圧、魚鱗癬、免疫疾患、代謝性疾患もしくは障害、神経学的疾患もしくは障害、肥満症、パーキンソン病、疼痛、関節リウマチ、または増殖性疾患から選択される、請求項
25に記載の使用。
【請求項27】
請求項1~
12のいずれか一項に記載のコンジュゲート
及び造影剤
を含む、対象内の領域の撮像方法
に用いるための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年12月21日に出願されたオーストラリア特許仮出願第2016905306号の優先権を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、プラズマから誘導されたナノ粒子を含むナノ粒子、及びコンジュゲートの形成におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
同じ構造内に複数の分子カーゴ(molecular cargo)を送達することができる多官能性ナノキャリアは、多数の疾患において治療的及び診断的結果の両方を大きく改善すると期待される。しかしながら、現在のナノ粒子ベースの治療法及び診断法は、本質的に生物活性ではなく、まず間違いなく医薬品との直接的かつ単純なコンジュゲーションを可能にしない材料を依然として利用している。ナノ粒子(例えば、金、酸化鉄、ポリマー、量子ドットなど)の官能化は通常複雑であり、一般に、ナノキャリア表面及び関連するカーゴとの間の強固なコンジュゲーションを達成するために時間のかかる多段階プロトコルに依存する。
【0004】
最近のナノメディシン研究の急成長にも関わらず、改善された性能、機能性、及び患者に対する安全性を備えた新規な生成物を提供することができる新しいナノ加工戦略が必要とされている。例えば、ヒトにおけるドラッグデリバリーの分野では、現在商業的に承認されている医薬ナノキャリアは、パッシブターゲティングの概念に基づいている。パッシブターゲティングでは、キャリアは、腫瘍または炎症領域などの病理学的部位の異常な漏出性血管系を貫通するためにそれらの小さいサイズに頼っている。これらのナノ粒子-薬物系は治療の有効性を高めることもあるが、他の代替治療と比較して、薬物の体内分布及び部位の蓄積に不備が残る。薬物副作用の減少及び用量忍容性の増加という期待は達成されていない。これに関して、用量忍容性が増加したアクティブターゲティング的かつ選択的送達を潜在的に提供することができるナノキャリアプラットフォームを開発するためのかなりの努力がなされてきた。
【0005】
様々な治療用途において特異的かつ標的化された送達を達成するために、ナノ粒子は、標的細胞上に発現される特定の表面の特徴を認識し、それに結合する異なるターゲットリガンドによって官能化することができる。がんのような多因子性疾患における異なるシグナル伝達経路が複雑であることから、治療抵抗性を回避することができる多剤阻害剤ベースの治療法の開発への道が開かれてきた。重要なことに、多剤アプローチの有効性は、異なる薬剤が同じナノキャリア内または上に組み合わされると向上する。さらに、医用イメージングによる治療の間にナノ粒子系に対して優れた制御及び監視を達成することもまた望ましく、このことは、ナノ粒子が適切な造影剤も組み込むことが有利であろうことを意味する。したがって、同じナノ構造内に標的治療・診断及びイメージングの両方を統合する、調整された様々な官能性の混在を実現する能力を有する多官能性ナノ粒子の開発が強く求められている。しかしながら、同じナノキャリア上での複数の分子カーゴを結合する能力は、この分野では特に達成が難しいものである。
【0006】
加えて、疾患における異常なタンパク質発現を調節するためのDNA、mRNA、及びsiRNAを含む核酸の治療的送達にはかなりの余地がある。このアプローチはin vitroで非常に有望であることを示しているが、臨床的に、すなわちin vivo手順の場合は、うまく変換されなかった。いくつかの欠点があるが、全身投与すると、これらの分子は、血中で非常に不安定であり、腎臓及び肝臓により濾過され、そしてそれらの高荷電状態は細胞膜を越える素早い輸送を妨げる。さらに、一度細胞膜を越えると、mRNA及びsiRNAは活性のために細胞質に到達するためにエンドソームを回避する必要がある一方、DNAは核に入る必要がある。リポソームナノ粒子を含むナノ粒子プラットフォームは、中程度成功した送達を促進するために使用されてきたが、それでもなお、細胞内の毒性及び長期持続性に関する問題によって阻まれている。優先的に細胞質または核に標的を定める方法で、細胞膜を越えて、この種のカーゴを運ぶ能力を有するナノ粒子プラットフォームは、当該分野にとって著しい進歩を示すであろう。
【0007】
強固な化学的コンジュゲーション部位を提供することができる表面を有するナノ粒子は、当該分野における重要な打開策となり得る。現在のプラットフォームにおいて、単一の構築物でナノ粒子上の複数の機能を組み合わせることに対する制限の1つは、ナノ粒子の実際の表面の化学的性質である。ナノキャリアの様々な官能性に対して優れた制御を達成するには、化学結合による付着は、弱い非共有結合戦略よりも好ましい。この課題を克服するために、多くの商業的プラットフォームによって採用されている一般的な戦略は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)などのポリマーによってナノ粒子をグラフトすることである。しかしながら、これらのコーティング及び機能化戦略は、安全性または廃棄上の問題をもたらす溶媒を含むことが多い、多段階で時間がかかり複雑なプロトコルを含む。さらに、PEGの表面濃度及び厚さに対する最適化、再現性、及び制御は、これらのコンジュゲーションプロセスを用いて達成することは通常困難である。典型的には、コーティングリガンドの末端基もまた、固定化することができる生体分子の範囲を制限する。他のコンジュゲーション戦略は、自己集合プロセスにおける分子とナノ粒子材料とのプレコンジュゲーションを含む。しかしながら、これら後者のアプローチはまた、有機溶媒の使用、ならびに分子カーゴの本来の立体構造及び官能性を損なう複数の精製工程にも依存している。複数の合成工程の使用により、官能化ナノ粒子の最終収率もまた低下し得る。
【0008】
したがって、治療用及び/またはイメージング部分とのコンジュゲーションのために活性化されたナノ粒子を生成するための改良されたプロセスが必要とされている。理想的には、活性化ナノ粒子は、生体分子を含む溶液との直接インキュベーションなどの単純な手法を用いて複数の官能性分子によって官能化することができなければならない。
【0009】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、装置、物品などのいかなる記述も、これらの事項のいずれかもしくは全てが先行技術の基礎の一部を形成すること、または本出願の各請求項の優先日より前に存在していた本開示に関連する分野における共通の一般常識であることを承認するものとして解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0010】
第1の態様では、以下の特徴:
約3470G~約3520Gの範囲内に中心があり、及び/または約2.001~約2.005の範囲内のg因子に対応する広い電子常磁性共鳴ピーク、
約1019~約1015スピン/cm3の範囲の合成後約0時間~約2時間以内に電子常磁性共鳴により測定されたスピン密度、
合成後約0時間~約240時間以内に電子常磁性共鳴により測定された約1017~約1015スピン/cm3の範囲であるスピン密度、
-約3680~約2700cm-1の範囲内;
-約1800~約1200cm-1の範囲内;
-約2330~約2020cm-1の範囲内;
-約1200~約1010cm-1の範囲内;及び/または
-約1010~約700cm-1の範囲内;
に中心がある赤外スペクトルの1つ以上の吸収帯、
-約3600~3100cm-1の範囲内;及び/または
-約3100~2700cm-1の範囲内;
に中心がある赤外スペクトルの1つ以上の吸収帯、
約-100mV~約+100mVの範囲内のゼータ電位;
約2~約10のpH範囲内の溶液中で測定された約-80mV~約+80mVの範囲内のゼータ電位;または、
窒素:炭素の元素比が約0.01:1~約2:3であること
のうちの1つ以上を特徴とするナノ粒子ポリマーが、本明細書にて開示される。
【0011】
第2の態様では、第1の態様の2つ以上のナノ粒子ポリマーを含む凝集体が、本明細書にて開示される。
【0012】
第3の態様では、
第1の態様のナノ粒子ポリマー、または第2の態様の凝集体、及び
少なくとも1つの第2の種
を含むコンジュゲートが、本明細書にて開示される。
【0013】
第4の態様では、第1の態様のナノ粒子ポリマー、第2の態様の凝集体、または第3の態様のコンジュゲート、及び薬学的に許容可能なキャリア、賦形剤、もしくは結合剤を含む医薬組成物が、本明細書にて開示される。
【0014】
第5の態様では、第1の態様のナノ粒子ポリマー、第2の態様の凝集体、または第3の態様のコンジュゲートを含む基質が、本明細書にて開示される。
【0015】
第6の態様では、
第1の態様のナノ粒子ポリマー、
第2の態様の凝集体、または
それらの混合物の、
コンジュゲートの形成における使用が、本明細書にて開示される。
【0016】
第7の態様では、
i)反応チャンバ内に少なくとも1種のガスを提供することと、
ii)前記反応チャンバ内にプラズマを発生させるように第1電極に電力を供給することと、
iii)前記反応チャンバ内の第2電極に電圧を印加することと、
iv)得られたナノ粒子ポリマーまたは凝集体を収集することと、を含み、
前記少なくとも1種のガスが有機ガスを含む、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体の調製方法が、本明細書にて開示される。
【0017】
第8の態様では、
i)反応チャンバ内に少なくとも1種のガスを提供することと、
ii)前記反応チャンバ内に容量結合プラズマを発生させるように前記反応チャンバ内の第1電極に高周波(RF)電力を供給することと、
iii)前記反応チャンバ内の第2電極に電圧を印加することと、
iv)得られたナノ粒子ポリマーまたは凝集体を収集することと、を含み、
前記少なくとも1種のガスが有機ガスを含む、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体の調製方法が、本明細書にて開示される。
【0018】
第9の態様では、
i)反応チャンバ内に少なくとも1種のガスを提供することと、
ii)前記反応チャンバ内に誘導結合プラズマを発生させるように高周波(RF)電力を供給することと、
iii)前記反応チャンバ内の第2電極に電圧を印加することと、
iv)得られたナノP3材料を収集することと、を含み、
前記少なくとも1種のガスが有機ガスを含む、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体の調製方法が、本明細書にて開示される。
【0019】
第10の態様では、第8または第9の態様に記載の方法によって作製されたナノ粒子ポリマーまたは凝集体が、本明細書にて開示される。
【0020】
第11の態様では、
i)第1の態様のナノ粒子ポリマー、第2の態様の凝集体、または第10の態様のナノ粒子ポリマーもしくは凝集体、及び
ii)少なくとも1つの第2の種
を提供することと、
ナノ粒子ポリマーまたは凝集体と少なくとも1つの第2の種とが物理的または化学的に互いに結び付くように、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体と少なくとも1つの第2の種とを接触させることと、
を含むコンジュゲートの形成方法が、本明細書にて開示される。
【0021】
第12の態様では、第11の態様に記載の方法により作製されたコンジュゲートが、本明細書にて開示される。
【0022】
第13の態様では、第1の態様のナノ粒子ポリマー、第2の態様の凝集体、第3の態様もしくは第12の態様のコンジュゲート、第4の態様の医薬組成物、または第10の態様のナノ粒子ポリマーもしくは凝集体を、対象に投与する工程を含む、疾患、障害、または状態に、罹患している、罹患しやすい、または、その1つ以上の症状を示す対象を治療する方法が、本明細書にて開示される。
【0023】
第14の態様では、対象における疾患、障害、または状態を治療するための医薬の形成における、第1の態様のナノ粒子ポリマー、第2の態様の凝集体、第3の態様もしくは第12の態様のコンジュゲート、または第10の態様のナノ粒子ポリマーもしくは凝集体の使用が、本明細書にて開示される。
【0024】
第15の態様では、少なくとも1つの第2の種が造影剤である、第3の態様もしくは第12の態様のコンジュゲート、または第4の態様の医薬組成物を対象に投与する工程を含む、対象内の領域のイメージング方法が、本明細書にて開示される。
【0025】
第16の態様では、対象における疾患、障害、または状態を治療における使用のための、第1の態様のナノ粒子ポリマー、第2の態様の凝集体、第3の態様もしくは第12の態様のコンジュゲート、第4の態様の医薬組成物、または第10の態様のナノ粒子ポリマーもしくは凝集体が、本明細書にて開示される。
【0026】
第17の態様では、薬剤を安定化させる方法であって、第1の態様のナノ粒子ポリマー、第2の態様の凝集体、第3の態様もしくは第12の態様のコンジュゲート、または第10の態様のナノ粒子ポリマーもしくは凝集体に該薬剤をコンジュゲートすることを含む方法が、本明細書にて開示される。薬剤は、本明細書に記載の第2の種と同じであってもよい。
【0027】
本開示の各態様の実施形態は、必要な変更を加えて、他の各態様にも同様に適用され得ることが理解されよう。
【0028】
本発明の様々な実施形態が利用され得ることが理解され得るが、以下、次の図面に基づいて本発明のいくつかの実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】ナノP
3粒子のスケール化生産及び臨床用途の治療薬及び診断薬としてのその使用である。
【
図2】プラズマ放電におけるナノP
3粒子の形成、成長、及び収集を示す概略図である。
【
図3】ナノP
3材料を生成するために使用され得る装置の概略図である。
【
図4】異なる収集容器を使用してナノP
3材料を得るために使用され得る装置の概略図である。
【
図5】コレクタウェルの外側及び内側のナノP
3に作用する力を示す概略図である。
【
図6】異なる寸法のコレクタウェルにおけるナノP
3の形成を示す概略図である。
【
図7】プラズマの発光スペクトル(A);分子発光帯の時間的プロファイル(B);及び分子イオンと他の非荷電種に関連する発光強度間の比の時間的プロファイル(C)を示すスペクトルである。
【
図8】コレクタの単位面積あたりのナノ粒子の数及びナノ粒子形成中の異なる時点で380nmで測定された発光強度(A);ならびに動的光散乱法によって測定された放電中の異なる時点で収集されたナノ粒子のサイズ分布(B)を示すグラフである。
【
図9】ナノ粒子コレクタに印加されたバイアスの関数としてのクラスタ凝集(段階2)及び粒子除去(段階3)の期間を示すグラフである(B)。
【
図10】ナノ粒子及び凝集生成物のサイズ分析、ならびに得られた粒子材料の形態である。
【
図11】2sccmのアセチレン流速を使用してXPSによって測定した場合に作製されたナノ粒子の典型的なC1s(A)ピーク及びN1s(B)ピーク;ならびにナノ粒子のFTIRスペクトル(C)を示すグラフである。
【
図12】ナノ粒子ポリマー及び凝集体のEPRスペクトル(A)、ならびに異なる媒体中のラジカルのキネティクス(B)である。
【
図13】プラズマに結合された様々な動作圧力及び電力に対応する、生成物の形成中のCNラジカル分子及びN
2
+分子イオンに関連する発光強度の時間的プロファイルを監視したものである。
【
図14】
図13と同様にして時間的プロファイルを監視するが、放電に結合した固定50Wでのアセチレン流速の種々の値についてのものである。
【
図15】
図14と同様であるが放電に結合した固定75Wでの時間的プロファイルを監視したものである。
【
図16】
図14と同様であるが放電に結合した固定100Wでの時間的プロファイルを監視したものである。
【
図17】アセチレン流速の関数としての、50、75及び100Wに対する振動の周期(A及びB)ならびにナノ粒子の収率(C)である。
【
図18】50、75及び100Wで1~8sccmのモノマー流速範囲内でのナノ粒子ポリマー及び凝集体生成中のCNラジカル分子及びN
2
+分子イオンの最大発光強度及び最小発光強度である。
【
図19】様々な値の窒素流速に対するナノ粒子ポリマー及び凝集体形成中のCNラジカル分子及びN
2
+分子イオンに関連する発光強度の時間的プロファイルである。
【
図20】ナノ粒子ポリマー及び凝集体作製中の振動周期、サイズ、及びゼータ電位におけるN
2の影響である。
【
図21】ナノP
3粒子を含有する溶液のpHの関数としてのナノP
3粒子のゼータ電位である。
【
図22】ナノ粒子サイズ(A)及び収率(B)における放電への結合電力の効果である。
【
図23】異なる結合電力及びモノマー流速で調製されたナノ粒子上の炭素、窒素、及び酸素分率である。
【
図24】異なる保管期間でのナノ粒子のFTIR測定値である。
【
図25】アセチレン及びアルゴンのみの放電で作製されたナノ粒子のFTIR測定値である。
【
図26】UV-VIS-NIRの範囲内のナノP
3自己蛍光である。
【
図28】様々なカーゴ分子量に対するナノP
3の単位表面積あたりのカーゴ分子数である。
【
図29】ナノP
3に結合した総カーゴ質量は、インキュベーションプロセス中に溶液に加えられた質量と共に増加する。
【
図30】インドシアニングリーン(ICG)を用いた結合キネティクス実験である。
【
図31】ICGによって例示されたナノP
3の保管寿命である。
【
図32】遊離インドシアニングリーン(ICG)及びICG結合ナノP
3のキネティクスである。
【
図33】ナノP
3の結合能はpHを変えることによって調節され得る。
【
図34】異なる媒体中の凝集したナノ粒子ポリマーの凝集挙動である。
【
図35】段階希釈したナノ粒子ポリマー及び凝集体の存在下での細胞傷害性である。
【
図36】抗体によるナノP
3の単一官能化の概略図である。
【
図37】薬物によるナノP
3の単一官能化の概略図である。
【
図38】抗体及び薬物によるナノP
3の二重官能化を示す概略図である。
【
図39】二次電子(A)及び後方散乱モード(B)で金標識IgG抗体と共にインキュベートしたナノ粒子ポリマーの走査型電子顕微鏡画像である。
【
図40】走査型電子顕微鏡での二次電子の検出を使用して撮像されたナノP
3及び異なるサイズの2つの金抗体(実線の矢印20nm、縞矢印6nm)である。
【
図41】蛍光イメージングの前に、ヒト冠動脈内皮細胞(hCAEC,上段)及び乳癌細胞株MCF7(下段)と共にインキュベートした抗体官能化ナノP
3である。
【
図42】ナノ粒子にコンジュゲートした場合のドキソルビシン(Dox)の蛍光損失(A);及び細胞生存率アッセイ(B)である。
【
図43】IgG-488及びIgG-594とのナノP
3コンジュゲーションである。
【
図44】抗体及び薬物によるナノP
3の二重官能化を示す概略図である。
【
図45】パクリタキセル-488及びIgG-594とのナノP
3コンジュゲーションに関する細胞研究である。
【
図46】ナノP
3とのIgG-488、IgG-Cy5、及びIgG-Cy7のコンジュゲーション、ならびにMCF7細胞を用いた細胞研究である。
【
図47】ナノP
3を用いたヒト冠動脈細胞におけるプラスミドの輸送の研究である。
【
図48】異なるサイズのナノP
3に結合したヒト胎児腎細胞におけるプラスミドの輸送の研究である。
【
図49】ナノP
3材料及びそのコンジュゲートを送達したマウスのin vivoイメージングシステム(IVISイメージング)である。
【
図50】ナノP
3材料にコンジュゲートしたインドシアニングリーン(ICG)を送達したマウスのin vivoイメージングシステム(IVISイメージング)である。
【
図51】ナノP
3材料及びそのコンジュゲートを送達したマウスのin vivoイメージングシステム(IVISイメージング)である。
【
図52】ヒト冠動脈内皮細胞内のナノP
3のSEM画像(A);及び切片の3D再構築は、細胞質内のナノP
3の均一な分布を示す(B)。
【
図53】HCAEC(1);MCF-10A(2);及びMCF-7(3)についてのナノP
3の存在下での細胞生存率(C);ならびにアクチン-ファロイジンによって染色された細胞の代表的な画像(D)である。
【
図54】キャリアなし;金ナノ粒子キャリア;ポリスチレンビーズ;及びナノP
3とのルシフェラーゼ結合の測定である。
【
図55】ナノP
3材料が複数の第2の種に結合する能力(A)、及びナノP
3抗体とIgG488抗体との間の結合能の計算(B)を示す概略図である。
【
図56】高分解能SEM画像は、サイズが40nmの1つのIgG-金二次抗体(破線の円形の囲いにて示される);サイズが40nm及び20nmの2つのIgG-金二次抗体(それぞれ破線の円形及び三角形の囲いにて示される);ならびにサイズが40nm、20nm、及び6nmの3つのIgG-金二次抗体(それぞれ破線の円形、三角形、及び長方形の囲いにて示される)を用いたナノP
3の官能化を示す(C);ならびにナノP
3単独及び以下のパクリタキセル、IgG-Cy5、及びIgG-Cy7による官能化のゼータ電位測定値(D)である。
【
図57】MCF10A細胞及び一重、二重及び三重官能化ナノP
3材料を用いた細胞研究である。
【
図58】ナノP
3粒子及び核局在化配列を含むコンジュゲートによって処理した後の染色したヒト臍帯静脈内皮細胞である。
【
図59】VEGFに対するsiRNAとコンジュゲートしたナノP
3である。
【
図60】ナノP
3粒子及びVEGFに対するsiRNAを含むコンジュゲートによって処理した後の染色したヒト臍帯静脈内皮細胞である。
【
図61】ナノP
3及び金ナノ粒子への西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)のコンジュゲーションである。
【
図62】初代マウス線維芽細胞におけるナノP
3にコンジュゲートしたルシフェラーゼ(siLuci)に対する低分子干渉RNAの送達である。
【
図63】IPSC由来ヒト内皮細胞におけるルシフェラーゼ(siLuci)ナノP
3に対する低分子干渉RNAの送達である。
【
図64】倍率を拡大した、電界紡糸ポリウレタン(画像a、b及びc)及びナノP
3が付着した電界紡糸ポリウレタン(画像d、e及びf)のSEM画像である。
【
図65】ナノP
3を含む様々な材料の存在下で免疫蛍光CD31で処理し、14日目に染色した内皮細胞(a);及び該材料への曝露後のカプセル内の平均新生血管数(b)である。
【
図66】シルク電界紡糸足場上のナノP
3のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明者らは、「ナノP3(nanoP3)」、「ナノP3(NanoP3)」、「ナノP3(nanoP3)材料」、または「ナノP3(NanoP3)材料」と本明細書に記載されるナノ粒子材料の作製を示した。これらのナノP3材料は、容易に官能化し得る多機能かつ多官能性ナノキャリアの一種として機能することができる。ナノP3材料は、ナノP3材料の表面に拡散するナノP3材料内に埋め込まれたラジカルとの反応を通じて、及び/またはナノP3材料、またはそれらのコンジュゲートの表面に形成された部分/官能基との反応によって、広範囲の生体分子及び薬物に結合することができる。
【0031】
本明細書に記載のナノP3材料の1つの重要な利点は、該ナノP3材料が長期間それらの中に埋め込まれたラジカルを保持できることである。時間の経過とともに、これらのラジカルは表面に拡散し、近接する種と反応する。該材料が適切な条件で保管される場合(例えば、不活性雰囲気下;収集直後に真空条件下でプラズマチャンバ内に該材料を含むバイアルを密封することにより;及び/または、より低温で)、ラジカルは、数週間、数ヶ月、または場合によっては数年間保持される可能性がある。ラジカルの寿命の延長とは、コンジュゲートが特定の診断試験または治療方法に必要とされるような時間までナノP3材料を保管することができることを意味する。このことは、ナノP3材料の作製が、特定の用途または治療レジメンにコンジュゲートが必要とされるのと同時に起こる必要がないことを意味する。
【0032】
有利には、ナノP3と1つ以上の第2の種、例えば医薬品、造影剤、及び/またはペプチドとの間のコンジュゲートは、ワンポット反応で作製することができる。活性プラズマ-気相中に生成されたより小さな炭素系クラスタ(ナノ粒子ポリマー)が組み合わさって凝集体を形成する急速成長段階中に、ラジカルがナノ構造中に形成され保存されると考えられる。ナノP3は、その表面上に固定化された生体分子の生物活性を維持することができ、細胞傷害性を誘導することなく異なる細胞型によって容易に内在化され得る。逆に、ナノP3とコンジュゲートした場合、ドキソルビシンのような細胞傷害性薬剤は、がん細胞を殺すことができる。加えて、ナノP3は細胞内にサイレンシングRNAを送達することができ、細胞取り込みの48時間後、タンパク質発現において著しいノックダウンをもたらす。さらに、ナノP3の共有結合能及び固定化生体分子の生物活性は、凍結乾燥保存後少なくとも数ヶ月間維持される。
【0033】
本明細書に開示されたプロセス、例えば記載されたプラズマベースのプロセスは、様々なナノメディシン用途のための複数の機能を統合することができる有利かつ調整可能な物理的、化学的、及び形態的特性を有するナノ粒子を効果的に製造及び収集するために使用できる。
【0034】
定義
本明細書全体を通じて、「含む(comprise)」という単語、または「含む(comprises)」もしくは「含むこと」などの変形形態は、記載された要素、整数、もしくは工程、または要素、整数、もしくは工程のグループを包含することを意味するが、他の要素、整数、もしくは工程、または要素、整数、もしくは工程のグループを除外することを意味するものではないことが理解されよう。
【0035】
本明細書全体を通じて、用語「から本質的になる」は、特許請求された組成物の特性に実質的に影響を与えるであろう要素を除外することを意図しているが、特性に実質的に影響を及ぼさない要素は含み得る。
【0036】
本明細書の定義に関して、記載のない限り、または文脈から暗示されない限り、定義された用語及び語句は提供された意味を含む。特に記載のない限り、または文脈から明らかでない限り、以下の用語及び語句は、その用語または語句が当業者によって獲得されたという意味を排除するものではない。定義は、特定の実施形態を説明するのを助けるために提供され、特許請求された発明を限定することを意図したものではない。なぜなら、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ制限されるからである。さらに、文脈により特に要求されない限り、単数の用語は、複数を含み、複数の用語は、単数を含むものとする。
【0037】
本明細書全体を通じて、本発明の様々な態様及び構成要素は範囲形式で提示することができる。範囲形式は便宜上含まれており、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではない。したがって、範囲の記載は、具体的に示されていない限り、全ての可能な部分的範囲及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1~5のような範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~5、3~5などのような具体的に開示された部分的範囲、ならびに整数が要求される場合または文脈から暗示される場合を除いて、列挙された範囲内の個々の数及び部分的な数、例えば1、2、3、4、5、5.5、及び6を有すると考えられるべきである。これは開示された範囲の広さを問わず適用される。特定の値が必要な場合、これらは当該明細書中に示される。
【0038】
「約」
本明細書では、用語「約」は、その用語に関連する任意の値(複数可)における10%の許容範囲を包含する。
【0039】
「炭化水素」
本明細書に開示される炭化水素モノマーは、水素原子と炭素原子のみからなるモノマーであると理解される。炭化水素の例には、アルケン、アルキン、シクロアルケン、芳香族化合物、またはそれらの混合物が含まれる。
【0040】
「凝集体」
本明細書で使用される場合、用語「凝集体」は、特に明記しない限り、またはそれが使用されている文脈から明らかでない限り、複数のナノ粒子ポリマーを含み、5nm~100μmの範囲内のサイズ、例えば約5nm~約500nmの範囲内のサイズを有する粒子を意味するものとする。
【0041】
「コンジュゲート」
本明細書では、用語「コンジュゲート」は、ナノ粒子ポリマー、またはナノ粒子ポリマーを含む凝集体への1つ以上の化合物の付着によって形成された分子を指す。「1つ以上の化合物」は、本明細書で定義されるような第2の種であり得る。付着は、共有結合または静電的相互作用を介したものであり得る。
【0042】
「モノマー」
用語「モノマー」は、特に明記しない限り、プラズマ中でのフラグメンテーション及び反応プロセスによって生成され得る1つ以上の反応性官能基によって反応してポリマーを形成することができるモノマー化合物を意味すると理解されよう。
【0043】
「ナノP3」
用語「ナノP3」は、特に明記しない限り、またはそれが使用されている文脈から明らかでない限り、100ミクロン未満のサイズを有するナノ粒子材料を指し、例えば、ナノP3は約5~500nmのサイズを有し得る。記載のない限り、または文脈から暗示されない限り、用語「ナノP3」は、特に明記しない限り、またはそれが使用されている文脈から明らかでない限り、本明細書で定義されるような「ナノ粒子ポリマー」及び「凝集体」の両方を包含する。用語「ナノP3」は、「ナノ粒子材料」と互換的に使用され得る。好ましい一実施形態では、ナノ粒子材料はプラズマポリマーを含む。プラズマポリマーは、プラズマ中でのフラグメントの凝縮によって形成され得、該材料は、1つ以上の化合物、例えば有機種または有機金属種を含む1つ以上の「第2の種」を共有結合することができる。
【0044】
「ナノ粒子ポリマー」
本明細書では、用語「ナノ粒子ポリマー」は、本明細書で定義されるモノマーによって形成されたポリマーを指し、該ナノ粒子ポリマーは、約1nm~約50nmの範囲の粒径を有する。好ましい一実施形態では、ナノ粒子ポリマーは、プラズマ中でのフラグメントの凝縮によって形成され、該材料は、有機種または有機金属種を含む1つ以上の化合物を共有結合することができる。
【0045】
「ポリマー」
用語「ポリマー」は、重合の過程を通じて生成される、不均一であり得る、及び/または無秩序構造に配置され得る繰り返し構造単位からなる化合物または化合物の混合物を指す。本発明において有用な好適なポリマーは全体を通して記載されている。一実施形態では、ポリマーは、繰り返し単位が比較的無秩序な構造に集合したプラズマポリマーである。
【0046】
「プラズマ」
用語「プラズマ」は、一般に、イオン、電子、中性種、及び放射線の混合物を含む(部分的に)イオン化されたガス様集合体を指す。本明細書で言及するプラズマは少なくとも1つのモノマーを含む。
【0047】
「プラズマポリマー」
本明細書において「プラズマポリマー」は、1つ以上のモノマーを含むプラズマから誘導されたポリマーである。
【0048】
モノマー
本明細書に記載のナノP3材料は、1つ以上のモノマーから誘導される。
【0049】
一実施形態では、1つ以上のモノマーは、ナノP3材料を形成するために気体形態で使用される。
【0050】
モノマーは炭化水素であり得る。炭化水素の例には、アルケン、アルキン、シクロアルケン、及びシクロアルキンが挙げられる。
【0051】
適切なアルケンモノマーの例としては、エチレン、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、これらの異性体、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
適切なアルキンモノマーの例としては、エチン(アセチレン)、プロピン、1-ブチン、1-ペンチン、1-ヘキシン、1-ヘプチン、1-オクチン、1-ノニン 1-デシン、これらの異性体、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
適切なシクロアルケンモノマーの例としては、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、1,3-シクロヘキサジエン、1,4-シクロヘキサジエン、1,5-シクロオクタジエン、これらの異性体、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
適切なシクロアルキンモノマーの例としては、シクロヘプチン、シクロオクチン、シクロノニン、これらの異性体、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
一実施形態では、アルケンはモノマーとして使用される。アルケンは、ナノ粒子ポリマーの形成に利用される唯一のモノマーであり得るか、またはアルケンは、コポリマー、例えば別のアルケン及び/またはアルキン、シクロアルケンもしくはシクロアルキンを形成するために少なくとも1種の他のモノマーの存在下で使用され得る。
【0056】
一実施形態では、アルキンはモノマーとして使用される。アルキンは、ナノ粒子ポリマーの形成に利用される唯一のモノマーであり得るか、またはアルキンは、コポリマー、例えば別のアルキン及び/またはアルケン、シクロアルケンもしくはシクロアルキンを形成するために少なくとも1種の他のモノマーの存在下で使用され得る。さらなる実施形態では、アセチレンは、それ自体で、または少なくとも1種の他のモノマーの存在下で、モノマーとして使用される。
【0057】
別の実施形態では、アセチレンは、少なくとも1種の他のモノマー、例えばアルケン、アルキン、シクロアルケンまたはシクロアルキンである少なくとも1種の他のモノマーと組み合わせてモノマーとして使用される。
【0058】
一実施形態では、シクロアルケンはモノマーとして使用される。シクロアルケンは、ナノ粒子ポリマーの形成に利用される唯一のモノマーであり得るか、またはコポリマー、例えば別のシクロアルケン及び/またはアルケン、アルキンもしくはシクロアルキンを形成するために少なくとも1種の他のモノマーの存在下で使用され得る。
【0059】
一実施形態では、シクロアルキンはモノマーとして使用される。シクロアルキンは、ナノ粒子ポリマーの形成に利用される唯一のモノマーであり得るか、またはコポリマー、例えば別のシクロアルキン及び/またはアルケン、アルキンもしくはシクロアルケンを形成するために少なくとも1種の他のモノマーの存在下で使用され得る。
【0060】
ナノP3を形成するために使用され得る他のモノマーとしては、ペルフルオロカーボン、エーテル、エステル、アミン、アルコールまたはカルボン酸が挙げられる。
【0061】
適切なペルフルオロカーボンの例としては、ペルフルオロアリルベンゼンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
適切なエーテルの例としては、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
適切なアミンの例としては、アリルアミン、シクロプロピルアミン、ポリ(ビニルアミン)、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
適切なアルコールの例としては、ポリ(ビニルアルコール)、アリルアルコール、エタノール、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
適切なカルボン酸の例としては、アクリル酸が挙げられるが、これに限定されない。
【0066】
ナノP3
ナノP3材料は、ホモポリマーまたはコポリマーであり得る。一実施形態では、ナノP3材料は、ホモポリマーである。別の実施形態では、ナノP3材料は、コポリマーである。
【0067】
一実施形態では、ナノP3は、本明細書に記載の1つ以上のモノマーを含むプラズマから誘導され、最初は気体形態で存在している。1種以上の不活性ガス、例えばヘリウム、ネオンまたはアルゴンが、1つ以上のモノマーと共に任意に存在し得る。
【0068】
ナノ粒子ポリマーは、窒素のような周期表の15、16または17族のガスの存在下で形成され得る。このガスのフラグメントは、ナノ粒子ポリマーに導入されてもよい。例えば、窒素の存在は、ナノ粒子ポリマーまたはナノP3材料中でアミン、イミンもしくはニトリル基、またはこれらの混合物の存在下で生じ得る。したがって、本明細書に開示されるナノ粒子ポリマーは窒素を含み得る。
【0069】
窒素は、キャリアとしてだけでなく、反応性の非重合性ガスとしても適していることが判明した。このことは、窒素もまたナノ粒子材料に取り込まれ得、得られた官能化ナノ粒子材料に特定の物理化学的特性を付与することを意味する。さらに、窒素は、窒素が使用されない場合には不可能であろう異なる様式のナノ粒子形成を可能にするとも考えられている。窒素と同じ族に含まれるもののような他のガスを含むこともまた、ナノ粒子形成メカニズム及び物理化学的特性を調整する上でさらなる自由度を提供することが予期される。
【0070】
一実施形態では、ナノP3材料は、本明細書に記載の少なくとも1つのモノマーを含むプラズマから誘導される。必要に応じて、ナノP3材料は、ガス、例えば窒素の存在下で形成され、ガスのフラグメントはナノ粒子ポリマーに組み込まれる。
【0071】
ナノP3材料は、約0.01:1~約2:3の窒素:炭素の元素比を有し得る。例えば、ナノ粒子ポリマーは、約0.05~約1、または約0.1~約1、または約0.15~約1、または約0.2~約1、または約0.25~約1、または約0.3~約1、または約0.35~約1、または約0.4~約1、または約0.45~約1、または約0.5~約1、または約0.55~約1、または約0.6~約1、または約0.65~約1の窒素:炭素の元素比を有し得る。あるいは、ナノ粒子ポリマーは、約0.1~約1:2の窒素:炭素の元素比を有し得る。
【0072】
本明細書に記載のナノP3材料は、好ましくは、1つ以上の化合物、例えば有機化合物もしくは有機金属化合物、または本明細書で定義されるような第2の種を結合することができる少なくとも1つの結合部位を含む。
【0073】
一実施形態では、本明細書に記載のナノP3材料は、少なくとも、1つ以上の化合物を結合することができる結合部位を含み、該結合部位は、有機化合物もしくは有機金属化合物、または本明細書で定義されるような第2の種を結合することができる不対電子を含む。
【0074】
ナノP3材料は、ポリマー中に不対電子を含み得る。これらの不対電子は、ナノ粒子の表面上または表面近くにあり得る。不対電子は、ナノ粒子材料の粒子内で40nm以下、または表面の約30、20もしくは10nm以内、または表面から約10~約40nmの間、または表面から約10~30、20~40、もしくは20~30nmの間、または表面から約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、もしくは40nmの深さにあり得る。不対電子は、約0~約40nmの様々な深さにあり得る。場合によっては、不対電子は、40nmを超える深さにあり得る。不対電子は、ナノ粒子材料の体積中にあり得る。これにより、該材料を有機種または有機金属種などの第2の種と反応させて、該種をナノ粒子ポリマーに共有結合させてコンジュゲートを形成させることができる。
【0075】
一実施形態では、ナノP3材料、平均直径が約5nm~約500nmであるナノP3材料の粒子、有機プラズマポリマーを含む該ナノP3材料、及びこれにより有機種または有機金属種と共有結合することができる不対電子を含む該ナノP3(ナノ粒子ポリマーまたはその凝集体)が提供される。
【0076】
別の実施形態では、ナノ粒子材料またはナノP3材料は、第2の種を化学的または物理的に結合することができる少なくとも1つの官能性部分を含む。
【0077】
ナノP3材料は、約1nm~約1000nm未満の平均直径を有し得る。例えば、ナノP3材料は、約5nm~約500nm、もしくは約5~500、50~500、100~500、200~500、5~200、5~100、5~50、5~20、20~100、100~300もしくは200~400nm、例えば、約5、10、20、30、40、50、100、150、200、250、300、350、400、450もしくは500nm、または約5~約400nm、もしくは約5~約300nm、もしくは約5~約200nm、もしくは約5~約100nm、もしくは約100~約500nm、もしくは約100~約400nm、もしくは約100~約300nm、もしくは約100~約200nm、もしくは約200~約400nm、もしくは約200nm~約300nmの範囲内、またはこれらの混合物の平均直径を有し得る。
【0078】
ナノP3材料のサイズは、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、低角度レーザー光散乱、光子相関分光法、微分型移動度分析、または他の適切な技術によって測定され得る。ナノP3材料の粒子は、狭い粒度分布または広い粒度分布を有し得る。粒度分布の標準偏差は、平均粒径の約1%~約500%の間、または約1~200、1~100、1~50、1~20、1~10、1~5、1~2、10~500、20~500、50~500、100~500、200~500、10~100、10~50または50~100%の間、例えば、約1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450または500%であり得る。場合によっては、ナノP3材料の粒子は、ほぼ単分散性であり得る、すなわち、全ての粒子はほぼ同じサイズ(例えば、約10%、または約5%、または約2%以内の同様の直径)であり得る。
【0079】
ナノP3材料は有機プラズマポリマーを含み得る。プラズマポリマーは、不均一で、高密度な、高度に架橋されたネットワークを特徴とする。プラズマポリマーは非晶質であり得る。このプラズマポリマーは、ガス混合物中の有機ガス及び他の反応性ガスからプラズマ中に生成された活性種の反応(例えば、イオン化及びフラグメンテーション)によって、またはガス混合物中のイオン化及びフラグメンテーションから生じるプラズマ/ガス混合物中の反応種によって生成され得る。
【0080】
ナノP3材料は、これらに限定されないが、電子常磁性共鳴(EPR)分光法、赤外分光法(例えばフーリエ変換赤外分光法)、ラマン分光法、UV-VIS分光法、元素分析(例えばX線光電子分光法)、軟X線分光法、ゼータ電位の決定、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法、ゲル浸透クロマトグラフィー、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、低角度レーザー光散乱、光子相関分光法、微分型移動度分析、弾性反跳検出分析(ERDA)、または中性子散乱を含む多くの方法によって特徴付けることができる。
【0081】
ナノP3材料(例えば、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体)は、以下の特徴:
約3470G~約3520Gの範囲内に中心があり、及び/または約2.001~約2.005の範囲内のg因子に対応する広い電子常磁性共鳴ピーク、
約1019~約1015スピン/cm3の範囲の合成後約0時間~約2時間以内に電子常磁性共鳴により測定されたスピン密度、
合成後約0時間~約240時間以内に電子常磁性共鳴により測定された約1017~約1015スピン/cm3の範囲であるスピン密度、
-約3680~約2700cm-1の範囲内;
-約1800~約1200cm-1の範囲内;
-約2330~約2020cm-1の範囲内;
-約1200~約1010cm-1の範囲内;及び/または
-約1010~約700cm-1の範囲内;
に中心がある赤外スペクトルの1つ以上の吸収帯、
-約3600~3100cm-1の範囲内;及び/または
-約3100~2700cm-1の範囲内;
に中心がある赤外スペクトルの1つ以上の吸収帯、
約-100mV~約+100mVの範囲内のゼータ電位;
約2~約10のpH範囲内の溶液中で測定された約-80mV~約+80mVの範囲内のゼータ電位;または
窒素:炭素の元素比が約0.01:1~約2:3であること、
のうちの1つ以上を特徴とし得る。
【0082】
一実施形態では、ナノP3材料、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体は、EPR分光法を用いて特徴付けられる。ナノ粒子ポリマーまたは凝集体は、約3470G~約3520Gの範囲内に中心があり、及び/または約2.001~約2.005の範囲内のg因子に対応する広い電子常磁性共鳴ピークを示し得る。
【0083】
一実施形態では、ナノP3材料、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体は、合成後約0時間~約2時間以内にEPR分光法により測定されたスピン密度が約1019~約1015スピン/cm3の範囲を有する。測定は、合成後約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、約105、約110、約115、または約120分に実施され得る。
【0084】
一実施形態では、ナノP3材料、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体は、合成後約0時間~約240時間以内に電子常磁性共鳴により測定された約1017~約1015スピン/cm3の範囲のスピン密度を有する。測定は、合成後約0.5、約1、約2、約4、約5、約6、約8、約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約110、約120、約130、約140、約150時間、約160、約170、約180、約190、約200、約210、約220、約230、または約240時間に実施され得る。
【0085】
別の実施形態では、ナノP3材料、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体は、赤外分光法(例えばフーリエ変換赤外分光法)を用いて特徴付けられる。例えば、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体は、
-約3680~約2700cm-1の範囲内;
-約1800~約1200cm-1の範囲内;
-約2330~約2020cm-1の範囲内;
-約1200~約1010cm-1の範囲内;
-約1010~約700cm-1の範囲内;
-約3600~3100cm-1の範囲内;
-約3100~2700cm-1の範囲内;及び/または
これらの混合物
に中心がある赤外スペクトルの1つ以上の吸収帯を示し得る。
【0086】
別の実施形態では、ナノP3材料、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体は、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体のゼータ電位を用いて特徴付けられる。例えば、ナノP3材料、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体は、約-100mV~約+100mVの範囲内のゼータ電位を持ち得る。例えば、ゼータ電位は、約-50mV~約60mVの範囲内であり得る。
【0087】
さらなる実施形態において、ナノP3材料、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体は、約2~約10のpH範囲内の溶液中で測定された約-80mV~約+80mVの範囲内のゼータ電位を有する。
【0088】
ナノP3材料は、粗いカリフラワーのような表面形態を持ち得る。このことは、ナノ粒子ポリマーの凝集によるそれらの形成に起因し得る。したがって、ナノP3材料は、ナノ粒子ポリマーの凝集体であり得る。ナノP3材料及び凝集体は、球形、またはほぼ球形であり得る。ナノ粒子ポリマーは、約1~約50nm、または約5~10、5~10、10~50、20~50もしくは10~30nm、例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45もしくは50nmの直径を有し得る。凝集体(及び関連するナノ粒子ポリマー)は、経時的に量が減少する高反応性ラジカルを埋め込み得る。ナノP3材料はまた、炭素クラスタの非局在化軌道に長寿命かつ安定なラジカルを埋め込み得る。安定なラジカル(二次ラジカル)は、反応性の高いラジカル(一次ラジカル)が関与する反応に起因し得る。ナノP3材料は、親水性の表面を有してもよい。したがって、その表面により水中でナノP3材料が素早く分散することを可能とし得る。それは、表面固定化生物活性分子の生物活性の保持を可能にし得る。親水性表面は、形成中または表面の空気への曝露による形成後のラジカルの酸化の結果であり得る。1つ以上の第2の種とのコンジュゲーション後、ナノP3材料コンジュゲートは、親水性または疎水性であり得る。あるいは、ナノP3材料コンジュゲートは、両親媒性を示し得る。
【0089】
使用されるモノマーまたは重合中に適用される条件に応じて、ナノP3材料は架橋されていてもよい。本明細書では、用語「架橋」は、分子内及び/または分子間結合を含むポリマー組成物を指す。これらの架橋結合は、本質的に共有結合でも非共有結合でもよい。非共有結合には、水素結合、静電結合、及びイオン結合が含まれる。
【0090】
架橋から得られる1つの潜在的な利点は、得られたナノP3材料及び場合によりそのような材料から形成されたコンジュゲートの安定性である。例えば、架橋は、架橋されていない同様の組成物と比較して、ナノP3材料(または得られるコンジュゲート)の溶解度を低下させる可能性がある。加えて、架橋されたナノP3材料(またはその形成されたコンジュゲート)の性質は、ナノ粒子材料または得られたコンジュゲートの耐薬品性を高める可能性がある。
【0091】
ナノP3は、医用イメージング技術において画像造影増強剤として作用する追加の無機元素もしくは化合物、または有機金属化合物でドープされていてもよい。ナノP3は、酸化鉄またはガドリニウム化合物などの磁気共鳴画像(MRI)造影剤でドープされてもよい。画像造影増強剤の例には以下が挙げられる:蛍光色素(例えば、Alexa 680、インドシアニングリーン、及びCy5.5);11C、13N、15O、18F、32P、51Mn、52mMn、52Fe、55Co、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、72As、73Se、75Br、76Br、82mRb、83Sr、86Y、90Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、110In、111In、120I、123I、124I、125I、131I、154Gd、155Gd、156Gd、157Gd、158Gd、177Lu、186Re、188Re、及び223Raなどの同位体及び放射性核種;クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、またはエルビウム(III)などの常磁性イオン;ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、及びビスマス(III)などの金属;クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、またはエルビウム(III)の酸化物;酸化鉄及び酸化ガドリニウムを含む、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、及びビスマス(III)などの金属;リポソームなどの超音波造影増強剤;ならびに、バリウム、ガリウム、及びタリウム化合物などの放射線不透過剤。画像造影増強剤は、ナノP3材料上に直接組み込まれてもよく、またはキレート剤などの中間官能基を使用することによって間接的に組み込まれてもよい。
【0092】
凝集体
ナノP3材料の作製中に、本明細書に記載のナノ粒子ポリマーから凝集体が形成され得る。
【0093】
一実施形態では、凝集体は、約5nm~約100μm、例えば約5nm~約500nmの範囲のサイズを有する。
【0094】
コンジュゲート
本明細書に記載のナノ粒子ポリマー、凝集体、またはナノP3材料は、コンジュゲートを形成するために、1つ以上の化合物、例えば有機化合物、有機金属化合物、または本明細書に定義された第2の種に結合し得る。第2の種が表面電荷を帯びていると、ナノP3への荷電した第2の種の結合は、コンジュゲーションプロセス中において反応条件のpHを変えることによって調節され得る。溶液のpHは、アミン及びカルボン酸基などの表面官能基のプロトン化または脱プロトン化を通じてナノP3の電荷を調節する。例えば、ナノP3材料及び第2の種を含有する溶液のpHを上昇させることによって、ナノP3材料への正電荷を帯びたコンジュゲートの結合が改善され得る。アルカリ性の高い媒体では、ナノP3は、脱プロトン化カルボキシル表面基を介して負電荷を帯びるようになり、これはまた、負電荷を帯びた粒子間の反発力のためにナノ粒子を安定化させる。あるいは、ナノP3材料及び第2の種を含有する溶液のpHを低下させることによって、ナノP3材料への負電荷を帯びたコンジュゲートの結合が改善され得る。本明細書に示されるように、第2の種の表面電荷に関係なく、反応条件のpHを変えることなく、多くの第2の種が、本明細書に記載のナノP3材料にコンジュゲートすることができる。
【0095】
コンジュゲートの形成におけるナノP3材料(例えば、ナノ粒子ポリマー、凝集体、またはこれらの混合物)の使用が本明細書にて開示される。
【0096】
コンジュゲートは、単一の第2の種のみを含んでもよい。あるいは、コンジュゲートは、2つ以上の異なる第2の種、例えば2つ、3つまたは4つの第2の種を含んでもよい。
【0097】
ナノP3材料は一般に、例えば共有結合またはイオン結合によって、有機種または有機金属種などの第2の種に直接結合することができる。ナノ粒子ポリマーまたは凝集体がプラズマポリマーである場合、結合プロセスは一般に迅速であり、穏やかな条件下で進行することができる。結合は、ポリマー構造中の不対電子(すなわち、ラジカル部位)によるものであり得るか、またはナノP3材料上に生成された、もしくは適切な第2の種の添加を介して、もしくは空気(または他の気体)もしくはナノP3材料が曝露される他の流体との反応によって得られるコンジュゲートに組み込まれる官能基によるものであり得る。ナノP3材料は、第2の種を化学的に結合することができる官能性部分を含むモノマー単位を含み得る。1つ以上の第2の種とナノP3材料のコンジュゲーションは、得られるコンジュゲート上またはコンジュゲート中に官能基を導入し得、これは、さらなる化学反応のために使用され得るか、またはin vitroもしくはin vivo条件で行われる生化学的/生物学的プロセスなどのプロセスのための結合部位として使用することができる。
【0098】
本明細書では、官能性部分(または「官能基」)は、モノマー、ナノP3材料、またはナノP3材料を含むコンジュゲート上に存在する原子の群を指し、これは他の相補的官能基、例えば第2の種に存在する他の官能基と反応することができる。官能基としては、以下の部分:カルボン酸(-(C=O)OH)、カルボニル、一級もしくは二級アミン(-NH2、-NH-)、一酸化窒素、マレイミド、チオール(-SH)、スルホン酸(-(O=S=O)OH)、カーボネート、カルバメート(-O(C=O)N<)、ヒドロキシ(-OH)、アルデヒド(-(C=O)H)、ケトン(-(C=O)-)、ヒドラジン(>N-N<)、イソシアネート、イソチオシアネート、リン酸(-O(P=O)OHOH)、ホスホン酸(-O(P=O)OHH)、ハロアセチル、ハロゲン化アルキル、アクリロイル、フッ化アリール、ヒドロキシルアミン、ジスルフィド、ビニルスルホン、ビニルケトン、ジアゾアルカン、オキシラン、及びアジリジン、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
本明細書において、「第2の種」は、ナノP3材料(すなわち、ナノ粒子ポリマーまたはその凝集体)に物理的に吸着するかまたは化学的に結合してコンジュゲートを形成することができる化合物である。
【0100】
第2の種は、イメージング試薬、生体分子、薬物、酵素、抗体、ターゲティングリガンド、ポリヌクレオチド、siRNA、RNA、RNA構築物、DNA、DNA構築物、ベクター、プラスミド、炭水化物、触媒、及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。加えて、全細胞、細胞フラグメント、ミセル、リポソーム、ハイドロゲル、タンパク質(シルクのような電界紡糸タンパク質)及びポリマー、半導体、セラミックまたは金属粒子のような種は、このようにナノP3材料に共有結合的に付着し得る。一例において、第2の種は、蛍光色素である。例えば、蛍光色素はインドシアニングリーン(ナトリウム4-[2-[(1E,3E,5E,7Z)-7-[1,1-ジメチル-3-(4-スルホナトブチル)ベンゾ[e]インドール-2イリデン]ヘプタ-1,3,5-トリエニル]-1,1-ジメチルベンゾ[e]インドール-3-イウム-3-イル]ブタン-1-スルホネート;CAS番号3599-32-4)であり得る。
【0101】
本明細書で使用される「抗体(antibody)」または「抗体(antibodies)」という用語は、1つ以上の免疫グロブリン鎖から構成される可変領域を含むタンパク質、例えばVLを含むポリペプチド及びVHを含むポリペプチドを包含すると解釈される。抗体はまた定常ドメインを含んでもよく、そのうちのいくつかは定常領域または定常フラグメントまたは結晶化可能フラグメント(Fc)に配置され得る。VH及びVLは相互作用して、1つまたは少数の密接に関連した抗原に特異的に結合することができる抗原結合領域を含むFvを形成する。一般に、哺乳動物由来の軽鎖はκ軽鎖またはλ軽鎖のいずれかであり、哺乳動物由来の重鎖はα、δ、ε、γ、またはμである。抗体は、任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)またはサブクラスであり得る。用語「抗体」は、ヒト化抗体、脱免疫化抗体、非除去(non-depleting)抗体、非活性化抗体、霊長類化抗体、ヒト抗体、及びキメラ抗体もまた包含する。本明細書で使用される場合、用語「抗体」はまた、エピトープ決定基に結合することができるFab、F(ab’)2、及びFvのような、完全長抗体分子、インタクトな抗体分子、または全抗体分子以外の形式を含むことが意図される。これらの形式は、抗体「フラグメント」と呼ばれることがある。これらの抗体形式は、標的タンパク質に選択的に結合するいくつかの能力を保持しており、その例としては、限定されないが、以下が挙げられる:
(1)Fab、抗体分子の一価の結合フラグメントを含み、酵素パパインにより抗体全体を消化し、インタクトな軽鎖及び1つの重鎖の一部が生じることによって生成することができるフラグメント;
(2)Fab’、抗体全体をペプシンで処理し、続いて還元してインタクトな軽鎖及び重鎖の一部が生じることによって得ることができる抗体分子のフラグメント;抗体分子あたり2つのFab’フラグメントが得られる;
(3)(Fab’)2、抗体全体を酵素ペプシンにより処理し、その後還元せずに得ることができる抗体のフラグメント;F(ab)2は2つのジスルフィド結合によって一緒に保持された2つのFab’フラグメントの二量体である;
(4)Fv、2本の鎖として発現される軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域を含む遺伝子組換えされたフラグメントとして定義される;
(5)一本鎖抗体(「SCA」)、遺伝的に融合した一本鎖分子として適切なポリペプチドリンカーによって連結された、軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域を含む遺伝子組換え分子として定義される;このような一本鎖抗体は、多特異性であってもなくてもよいダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディなどの多量体の形態であり得る;ならびに
(6)単一ドメイン抗体、典型的には軽鎖を含まない可変重鎖ドメイン。
【0102】
したがって、本明細書に記載の抗体は、別々の重鎖、軽鎖、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fc、いかなる重鎖も含まない可変軽鎖ドメイン、軽鎖及びFvを含まない可変重鎖ドメインを含み得る。そのようなフラグメントは、組換えDNA技術によって、またはインタクトな免疫グロブリンの酵素的もしくは化学的分離によって生成され得る。本明細書に記載され、そうでなければ当技術分野において公知の任意の抗体またはそのフラグメントは、本明細書に開示されるナノP3粒子にコンジュゲートされ得る。
【0103】
第2の種はポリヌクレオチドであり得る。本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、DNA、RNA、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、干渉RNA、siRNA、マイクロRNA、及び当技術分野において公知の他の任意のポリヌクレオチドを包含すると解釈するものとする。ポリヌクレオチドは、タンパク質または機能性RNA(例えば干渉RNA)をコードし得る。したがって、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドベクターまたはプラスミドであり得る。したがって、本明細書に開示されるナノP3材料は、対象における目的の標的部位にポリヌクレオチドを輸送するために使用され得、このポリヌクレオチドは、それ自体が機能的効果を発揮するか、または対象の細胞において次いで機能的効果を有するタンパク質または機能性RNAの発現をもたらす。
【0104】
第2の種の例には、ターゲティングリガンド、医薬品、造影剤、アミノ酸、ペプチド、天然生物活性分子の合成類似体、合成ペプチド模倣物、タンパク質(酵素または抗体など)、受容体ターゲティングリガンド、遺伝子標的化剤、ポリヌクレオチド、RNA、感光性色素、pH感受性リンカーなどの切断可能な連結分子、炭化水素、全細胞、細胞フラグメント、ミセル、リポソーム、ハイドロゲル、ポリマー粒子、半導体粒子、セラミック粒子、金属粒子、成長因子、サイトカイン、抗血栓剤及び/または線維素溶解剤、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0105】
例えば、抗体は、ナノ粒子を特定の細胞型に標的化するためにナノP3材料に付着され得、治療用分子は、それらの細胞に治療効果をもたらすために同じナノ粒子ポリマーに付着し得る。イメージング分子は、細胞型のイメージングを可能にするために、これに加えてまたはこれに代えてナノP3材料に付着し得る。
【0106】
本発明のナノP3は様々な分子の固定化を可能にするだけでなく、付着種は固定化後にそれらの官能性及び活性を維持する。本発明者らは、ナノP3材料に同時に付着した2つ以上の種類の生体分子を用いてこの特徴を明らかにした。
【0107】
ナノP3材料(ナノ粒子ポリマー及び/またはその凝集体)は、2つ以上の種類の第2の種と反応することが可能であり得る。異なる種類の分子及びそれらの異なる分子内の置換は、ナノP3材料中またはナノP3材料上で、同時にまたは順次に反応及び固定化され得る。結合種は、ナノP3材料及び得られたコンジュゲート上に固定化後、それらの未結合の活性、例えば生物活性及び官能性が維持され得る。
【0108】
ナノP3材料に結合し得る第2の種の例は、その内容が参照により本明細書に組み込まれるRemington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition;Lippincott Williams&Wilkins:Philadelphia,PA,2005の1262~1739頁に示されている。
【0109】
第2の種の例としては、診断薬及び試薬;局所薬;消化管及び肝臓薬;血液、体液、電解質、及び血液作用薬;心血管薬;呼吸器薬;交感神経作動薬;コリン様作用薬;アドレナリン拮抗薬及びアドレナリン作動薬;ニューロン遮断薬;抗ムスカリン薬及び鎮痙薬;骨格筋弛緩薬;利尿薬;子宮及び抗片頭痛薬;ホルモン及びホルモン拮抗薬;全身麻酔薬;局所麻酔薬;抗不安薬及び睡眠薬;抗てんかん薬;精神薬理学的薬;鎮痛薬、解熱薬、及び抗炎症薬;ヒスタミン薬及び抗ヒスタミン薬;中枢神経刺激薬;抗腫瘍薬;免疫活性薬;寄生虫駆除薬;免疫剤及びアレルゲン抽出物;抗感染薬;酵素;栄養素及び関連物質、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
本明細書では、用語「ターゲティングリガンド」は、標的分子に結合するか、またはそれと相互作用する分子を指す。通常、相互作用または結合の性質は、例えば、水素、静電、またはファンデルワールス相互作用によるものなどの非共有結合であるが、結合は共有結合であってもよい。
【0111】
本明細書で使用される「リガンド」という用語は、生物学的マーカーを標的とする化合物を指す。リガンドの例としては、タンパク質、ペプチド、抗体、抗体フラグメント、糖類、炭水化物、グリカン、サイトカイン、ケモカイン、ヌクレオチド、レクチン、脂質、受容体、ステロイド、神経伝達物質、クラスタ指定/分化(CD)マーカー、インプリントポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
ターゲティングリガンドの例としては、核局在化シグナル(例えばKR[PAATKKAGQA]KKKK)、RGD、NGR、葉酸塩、トランスフェリン、GM-CSF、ガラクトサミン、抗VEGFR、抗ERBB2、抗CD20、抗CD22、抗CD19、抗CD33、抗CD25、抗テネイシン、抗CEA、抗MUC1、抗TAG72、抗HLA-DR10、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
医薬品の例としては、抗がん剤(例:ドキソルビシン、パクリタキセル、ビンクリスチン、シクロホスファミド及びトポテカン);喘息薬(例えば、フルチカゾン及びサルメテロール-ステロイド及び気管支拡張薬を含む);抗HIVレトロウイルス(例えば、アバカビル(Ziagen)、エファビレンツ/エムトリアシタビン/テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(Atripla)、ラミブジン/ジドブジン(Combivir)、エムトリアシタビン/リルピビリン/テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(Complera)、エムトリシタビン(Emtriva)、ラミブジン(Epivir)、アバカビル/ラミブジン(Epzicom)、ジドブジン(Retrovir));細胞複製/増殖を調節する薬剤:ラパマイシン(TOR)阻害剤(シロリムス、エベロリムス及びABT-578を含む)の標的;パクリタキセル及び抗腫瘍薬(アルキル化剤、例えばシクロホスファミド、メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン、ロムスチン、イホスファミド、プロカルバジン、ダカルバジン、テモゾロミド、アルトレタミン、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチンを含む);抗腫瘍抗生物質(ブレオマイシン、アクチノマイシンD、ミトラマイシン、マイトマイシンC、エトポシド、テニポシド、アムサクリン、トポテカン、イリノテカン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、及びミトキサントロン);代謝拮抗剤(デオキシコホルマイシン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、アザチオプリン、2-クロロデオキシアデノシン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、カペシタビン、シトシンアラビノシド、アザシチジン、ゲムシタビン、フルダラビンホスフェート、及びアスパラギナーゼを含む);抗有糸分裂剤(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ドセタキセル、エストラムスチンを含む);分子標的薬(イマチニブ、トレチノイン、ベキサロテン、ベバシズマブ、ゲムツズマブオゴマイシン、及びデニロイキンジフチトックスを含む);抗炎症薬;コルチコステロイド;エストロゲン;アンドロゲン;プロゲストゲン、及び副腎アンドロゲン;抗生物質、鎮痛剤;オポイド、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
造影剤の例としては、ルシフェラーゼ;蛍光標識された色素及び抗体、造影剤(イオパミドール、イオヘキソール、及びイオキシランを含む);硫酸バリウム;MRI造影剤(例えば、ガドリニウム、酸化鉄、及びマンガンベースの造影剤);インドシアニングリーン(ICG)、ならびにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
本明細書で使用される場合、用語「ペプチド」は、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸を含む任意のポリマーを意味することを意図している。用語「ペプチド」は、リボソームを用いて集合したポリマー、及び酵素によって集合したポリマー(すなわち、非リボソームペプチド)、及び合成的に集合したポリマーを含むことを意図している。各種実施形態では、用語「ペプチド」は、「タンパク質」または「ポリペプチド」と同義と見なされ得る。各種実施形態では、用語「ペプチド」は、50個を超えるアミノ酸、あるいは50個以下のアミノ酸のポリマーに限定され得る。各種実施形態では、用語「ペプチド」は、ポリマーのモノマー単位としてアミノ酸のみを含むことを意図しているが、各種実施形態では、用語「ペプチド」は、アミノ酸骨格へのさらなる成分及び/または修飾を含む。例えば、各種実施形態では、用語「ペプチド」は、ペンダント型ポリエチレングリコール基を有するコアポリマーまたはアミノ酸鎖のアミノ末端もしくはカルボキシ末端にアミド基を有するコアポリマーなどの、アミノ酸のコアポリマー及び該コアポリマーの誘導体に適用され得る。
【0116】
アミノ酸の例としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
ペプチドの例としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンから選択される2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40アミノ酸を含むポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
「ペプチド模倣物」は、ペプチド、修飾ペプチド、またはホルモンの活性リガンド、サイトカイン、酵素基質、ウイルスもしくは他の生体分子を生物学的に模倣する任意の他の分子などの分子であり得る。このペプチド模倣物は、天然リガンドの生理学的活性に拮抗するか、刺激するか、またはそうでなければ調節し得る。14~20アミノ酸長を有するペプチドは、治療上有効な薬剤を開発するためのリード化合物として機能することができる。該ペプチドは通常、親分子よりかなり小さいため、それらが、より低い副作用を示し得、標的への送達がより簡単であるという可能性が高い。ペプチド模倣物を合成するための主な重点は、ペプチドまたは受容体のタンパク質リガンドを模倣することである。しかしながら、この技術は酵素阻害にも有用である。「ペプチド模倣体」という用語は比較的幅広いため、天然オピエートアルカロイドなどの天然化合物もペプチド模倣薬の例である。実際、小さなペプチドは、オピオイドと同様に、場合によっては同じ受容体を標的とすることができる。
【0119】
本明細書では、「タンパク質」という用語は、鎖長が、より高レベルな三次構造及び/または四次構造を生成するのに十分であるアミノ酸の配列を指す。タンパク質は、約300Da~約150kDaの範囲内の分子量を有し得る。タンパク質は、150kDaより大きい分子量、または300Daより小さい分子量を有し得る。
【0120】
本明細書の定義内に包含されるタンパク質の例には、例えばヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;サポリンのようなリボソーム不活性化タンパク質;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α-1-アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;第VIIIC因子、因子、組織因子、及びフォン・ヴィレブランド因子のような凝固因子;プロテインCのような抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺サーファクタント;ウロキナーゼ型または組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)のようなプラスミノーゲン活性化因子;ボンバジン;トロンビン;腫瘍壊死因子-α及び-β;エンケファリナーゼ;RANTES(活性化時に制御され、正常T細胞で発現及び分泌);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-α);ヒト血清アルブミンのような血清アルブミン;ミュラー管抑制物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロレラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;DNアーゼ;インヒビン;アクチビン;血管内皮細胞増殖因子(VEGF);ホルモンまたは成長因子の受容体;インテグリン;プロテインAまたはD;リウマチ因子;骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5もしくは-6(NT-3、NT-4、NT-5、もしくはNT-6)のような神経栄養因子、またはNGF-βのような神経成長因子;血小板由来増殖因子(PDGF);aFGF及びbFGFのような線維芽細胞増殖因子;上皮増殖因子(EGF);TGF-α、及びTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4もしくはTGF-β5を含むTGF-βのようなトランスフォーミング増殖因子(TGF);インスリン様成長因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I);インスリン様成長因子結合タンパク質;CD3、CD4、CD8、CD19及びCD20のようなCDタンパク質;エリスロポエチン(EPO);トロンボポエチン(TPO);骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン-α、-β、及び-γのようなインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、例えばM-CSF、GM-CSF、及びG-CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL-1~IL-10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子(DAF);例えばAIDSエンベロープの一部などのウイルス性抗原;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;イムノアドヘシン;抗体;及び上記のポリペプチドのいずれかの生物学的に活性なフラグメントまたは変異体などの哺乳動物タンパク質が含まれる。
【0121】
遺伝子標的化剤の例としては、DNA(gDNA、cDNA)、RNA(センスRNA、アンチセンスRNA、mRNA、tRNA、rRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、短ヘアピンRNA(ShRNA)、マイクロRNA(miRNA)、核小体低分子RNA(SnoRNA、核内低分子(snRNA))リボザイム、アプタマー、DNAザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ベクター、プラスミド、他のリボヌクレアーゼ型複合体、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
感光性色素の例としては、インドシアニングリーン(ICG)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
pH感受性リンカーのような切断可能な連結分子の例は、Leriche et al.,“Cleavable linkers in chemical biology”Bioorganic&Medicinal Chemistry,20,571-582,2012に見出すことができ、その内容は参照により含まれる。リンカー及び化合物の例示的な群としては、pH切断可能な、光切断可能な(例えば、レーザーまたは赤外光を介して切断可能)、レーザー切断可能な、熱切断可能な、及びプロテアーゼ切断可能な(カレクレイン及びトロンビンのような血液プロテアーゼの作用を介するものを含む)リンカー及び化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
細胞の例としては、前駆細胞(血管内皮前駆細胞、CD34+、CD133+、KDR+、またはVCAM-1+単球、造血幹細胞、間葉系幹細胞、胚性幹細胞を含む)、分化細胞(内皮細胞、線維芽細胞、及び平滑筋細胞を含む)、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
ハイドロゲルの例としては、アルギネートの多価金属塩、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、ヘパリン、ヒアルロン酸塩、ならびにキチン、キトサン、プルラン、ジェラン、キサンタン及びヒドロキシプロピルメチルセルロースのような共有結合性または音波架橋性多糖系ハイドロゲルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
ポリマー粒子、半導体粒子、セラミック粒子、金属粒子の例としては、半導体量子ドット、蛍光ナノ粒子、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、酸化鉄、他の磁性粒子、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
成長因子の例としては、血管内皮細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、結合組織増殖因子、胎盤由来増殖因子、アンジオポエチン-1、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
サイトカインの例としては、インターロイキン-1、インターロイキン-4、インターロイキン-10のようなインターロイキン;GM-CSF;TNF-α;インターフェロン-ガンマ;TGF-β;またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
抗血栓剤及び線維素溶解剤の例としては、糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤、直接トロンビン阻害剤、ヘパリン、低分子量ヘパリン、血小板アデノシン二リン酸(ADP)受容体阻害剤、線維素溶解剤(ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、組換え組織プラスミノーゲン活性化因子、レテプラーゼ、及びテネクテプラーゼを含む)、酵素(ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、及びプラスミンを含む)、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
一実施形態では、コンジュゲートは、1つのみの第2の種を含む。
【0131】
別の実施形態では、コンジュゲートは、2つの第2の種を含む。
【0132】
別の実施形態では、コンジュゲートは、3つの第2の種を含む。
【0133】
別の実施形態では、コンジュゲートは、3つ以上の第2の種を含む。
【0134】
第2の種は、ナノP3材料に物理的または化学的に直接結合していてもよく、または第2の種は連結部分を介して付着していてもよい。第2の種は、この連結部分を含むように修飾され得る。連結分子は、第2の種を放出するためのpH、熱または光などの環境変数の変化により、in vitroまたはin vivoで分解してもよい。あるいは、リンカーは、細胞内で天然に生じる酵素によって切断可能であり得る。例えば、pH分解性リンカーのような切断可能な連結分子は、in vivoで薬物分子である第2の種を放出し得る。
【0135】
コンジュゲートのサイズは、透過性及び滞留性の向上(EPR)効果を介した腫瘍細胞または腫瘍組織のパッシブターゲティングを可能にし得る。このEPR効果を通じて、不連続な内皮を有する血管形成性腫瘍血管系の無秩序な病状の結果としてコンジュゲートが固形腫瘍に受動的に蓄積し得、このことは大きな巨大分子への透過性亢進、及び有効な腫瘍リンパ排液の欠如をもたらす。
【0136】
薬学的組成物
本明細書で定義されるようなナノ粒子ポリマー、凝集体、またはコンジュゲート、及び薬学的に許容可能なキャリア、賦形剤、または結合剤を含む医薬組成物が本明細書に開示される。一実施形態では、ナノ粒子ポリマー、凝集体、またはコンジュゲートは、薬学的に許容可能である。本明細書に開示の医薬組成物において、第2の種は治療薬または診断薬であり得る。
【0137】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能なキャリア、賦形剤、または結合剤」は、生理学的に適合性があり、本明細書に記載される化合物に対して有害ではない溶媒、希釈剤、分散媒体、コーティング剤、抗菌及び抗真菌剤、等張剤、ならびに吸収遅延剤などの賦形剤もしくは薬剤、またはそれらの使用を含む。薬学的活性物質の組成物を調製するためのそのようなキャリア及び薬剤の使用は、当技術分野において周知である(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21stEdition;Lippincott Williams&Wilkins:Philadelphia,PA,2005を参照のこと)。
【0138】
薬学的に許容可能な組成物は、使用前に希釈してもよい。適切な希釈剤は、例えば、リンゲル液、ハルトマン液、デキストロース溶液、食塩水、及び注射用滅菌水から選択され得る。
【0139】
本明細書で使用される「組成物」という用語は、特定量の特定成分を含む生成物、ならびに特定量の特定成分の組み合わせから直接的または間接的に生じる任意の生成物を包含することを意図している。
【0140】
本明細書において、「薬学的に許容可能な」とは、キャリア、希釈剤、または賦形剤と共にナノP3材料(すなわち、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体)またはそのコンジュゲートが、医薬組成物の他の成分に適合性がなければならず、そのレシピエントに対して有害であってはならないことを意味する。ナノP3材料(すなわち、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体)、またはそのコンジュゲートは、熟練した医療専門家または獣医師によって特定された合理的な利益/リスク比に見合った、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の潜在的な合併症なしにレシピエントの組織と接触することができなければならない。加えて、ナノ粒子ポリマー、凝集体、またはコンジュゲートは、個体、例えば動物またはヒトへの医薬として送達されるべき任意の組成物中のキャリア及び/または賦形剤と適合性がなければならない。
【0141】
場合によっては、ナノ粒子ポリマー、凝集体、またはコンジュゲートは、薬学的に許容可能ではないが、これらは本発明の範囲内にあることが理解されよう。しかしながら、いくつかの実施形態では、医薬製剤に使用するために、ナノP3材料(すなわち、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体)またはそのコンジュゲートは、薬学的に許容可能な化合物である。薬学的に許容可能でないナノP3材料(すなわち、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体)またはそのコンジュゲートは、薬学的に許容可能なナノP3材料(すなわち、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体)またはそのコンジュゲートの調製において有用であり得る。
【0142】
本発明の組成物は、下記の他の治療薬を含有してもよく、例えば、従来の固体もしくは液体ビヒクルまたは希釈剤、及び所望の投与方法に適した種類の医薬添加剤を使用することによって(例えば賦形剤、結合剤、防腐剤、安定剤、香味剤など)、医薬製剤の分野で周知の技術にしたがって製剤化され得る。
【0143】
本明細書で定義されるナノP3材料(すなわち、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体)またはそのコンジュゲートは、任意の適切な手段、例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、または槽内注射もしくは注入技術によるものなどの非経口投与によって投与され得る(例えば、無菌注射用水溶液もしくは非水溶液または懸濁液として)。
【0144】
医薬製剤は、経口、直腸、経鼻、局所(バッカル及び舌下を含む)、非経口投与(筋肉内、腹腔内、皮下、及び静脈内を含む)、または吸入もしくは吹送による投与に適した形態のものを含む。したがって、ナノP3材料(すなわち、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体)またはそのコンジュゲートは、従来のアジュバント、キャリアまたは希釈剤と共に、医薬組成物及びその単位投与の形態へと入れることができ、そのような形態では、全て経口使用のための、錠剤もしくは充填カプセルなどの固体、または溶液、懸濁液、エマルジョン、エリキシル剤もしくは同じもので充填されたカプセル剤としての液体として使用され得るか、または非経口(皮下を含む)使用のための無菌注射液の形態で使用され得る。
【0145】
一実施形態では、コンジュゲートは徐放用途のために設計されてもよい。例えば、コンジュゲートは、第2の種(医薬品または診断薬など)を含んでもよく、これは、分解性リンカーを介してナノ粒子ポリマーまたは凝集体に付着している。連結分子は、第2の種を放出するためのpHまたは熱などの環境変数の変化により、in vitroまたはin vivoで分解されることがある。例えば、分解性リンカーは、感光性であり得、適切な波長の光で、例えば、赤外線またはレーザー照射を介して、第2の種(薬物、siRNA、またはRNAなど)の放出を可能にし得る。あるいは、リンカーは、細胞内で天然に生じる酵素によって切断可能であり得る。リンカーの分解は、医薬品の安定した放出または定常的な放出をもたらし得、状態の長期的及び/または比較的定常的な治療;または対象内でin vitroもしくはin vivoでトラッキングされる診断薬を可能にする。
【0146】
あるいは、コンジュゲートに組み込まれる第2の種は、ナノ粒子ポリマーもしくは凝集体に直接結合するか;または分解性リンカーによってナノ粒子ポリマーもしくは凝集体に付着する、プロドラッグであってもよい。本明細書では、プロドラッグは、コンジュゲート中で、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体に結合した化合物の不活性形態である(リンカーの使用の有無に関わらず)。対象に投与されると、プロドラッグが依然としてナノ粒子ポリマーもしくは凝集体に付着している間、または一度プロドラッグがナノ粒子ポリマーもしくは凝集体から放出されるいずれかにおいて、該不活性形態は薬学的に活性な形態に代謝され得る。
【0147】
あるいは、ナノ粒子ポリマー、凝集体またはそのコンジュゲートは、局所的に使用される材料に組み込まれてもよい。例えば、ナノ粒子ポリマー、凝集体、またはコンジュゲートは包帯に組み込まれてもよい。
【0148】
ナノ粒子ポリマー、凝集体、またはそのコンジュゲートは、切り傷/創傷またはpsioraseもしくは湿疹などの状態の皮膚治療ための適切な足場に組み込むことができる。
【0149】
ナノ粒子ポリマー、そのコンジュゲートの凝集体は、心臓パッチ、血管移植片、骨及び他の組織欠損の治癒を促進するための埋没物のような埋没物上または埋没物内で使用され得る。
【0150】
本発明の化合物を投与するための医薬組成物は、投与単位形態で都合よく提供されてもよく、薬学の分野で周知の任意の方法によって調製されてもよい。全ての方法は、活性成分、例えば本明細書で定義されるようなコンジュゲートを、1つ以上の副成分を構成するキャリアと結び付ける工程を含む。概して、医薬組成物は、活性成分、例えばコンジュゲートを、液体キャリアまたは微細固体キャリアまたはその両方と均一かつ密接に結び付け、次いで必要に応じて、生成物を所望の製剤に成形することにより調製される。医薬組成物において、活性目的化合物は、疾患の進行または状態に対して所望の効果を生じるのに十分な量で含まれる。
【0151】
医薬組成物は、無菌注射用水溶液または油性懸濁液の形態であり得る。この懸濁液は、上記の適切な分散剤または湿潤剤及び懸濁剤を使用して、既知の技術にしたがって製剤化され得る。無菌注射用製剤は、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌注射液または懸濁液であってもよい。使用され得る許容可能なビヒクル及び溶媒は、水、リンゲル液、及び等張食塩水である。加えて、無菌の不揮発性油が、溶媒または懸濁媒体として従来から使用されている。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激な不揮発性油を使用してもよい。加えて、オレイン酸などの脂肪酸は、注射用製剤の調製に用いられている。
【0152】
本明細書に開示されている医薬組成物及び方法は、開示されている障害または状態の治療に通常適用される他の治療活性化合物をさらに含んでもよい。併用療法における使用のための適切な薬剤の選択は、従来の薬学的原則に応じて、当業者によってなされ得る。治療薬の組み合わせは相乗的に作用して、本明細書に開示される様々な障害または状態の治療または予防をもたらし得る。このアプローチを使用すると、より少ない用量の各薬剤で治療効果を達成することができ、それにより有害な副作用の可能性を減らすことができる。
【0153】
他の治療薬をナノ粒子ポリマー、凝集体、またはそのコンジュゲートと組み合わせて使用する場合、それらは、例えば米医薬品便覧(PDR)に記載されているような量、またはそうでなければ当業者によって決定される量で使用され得る。
【0154】
しかしながら、任意の特定の患者に対する特定の用量レベル及び用量の頻度は変動し得、使用される特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性及び作用の長さ、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与方法及び投与時間、排泄速度、薬物の組み合わせ、特定の状態の重症度、ならびに治療を受けている宿主を含む様々な要因に依存するであろうことが理解されよう。
【0155】
治療方法
疾患、障害、または状態の1つ以上の症状に罹患している、罹患しやすい、またはそれを示す対象を治療する方法が本明細書に開示され、該方法は、本明細書で定義されるようなナノ粒子ポリマー、凝集体もしくはそのコンジュゲート、または本明細書で定義されるような医薬組成物を対象に投与する工程を含む。用語「処置すること」は、本明細書において、治療的処置及び予防的処置の両方を包含するために使用される。したがって、本明細書に開示される処置方法は、疾患、障害、または状態の1つ以上の症状を予防する方法を包含し得る。「処置すること」は、疾患、障害、または状態の任意の1つ以上の症状の軽減をもたらすと解釈され得ることが理解されよう。また、対象の状態を治療または予防するための医薬の製造における、本明細書で定義されるようなナノ粒子ポリマー、凝集体またはコンジュゲートの使用が本明細書に開示される。
【0156】
さらに、少なくとも1つの第2の種が造影剤である、本明細書で定義されるようなナノ粒子ポリマー、凝集体、コンジュゲート、または医薬組成物を対象に投与する工程を含む、対象内の領域のイメージング方法もまた本明細書に開示される。例えば、コンジュゲートまたは医薬組成物は、限定されるものではないが、磁気共鳴画像法(MRI)、X線、超音波、陽電子放出断層撮影法(PET)または光音響イメージングのような診断技術によって検出され得る造影剤を含み得る。
【0157】
一実施形態では、本明細書で定義されるナノ粒子ポリマー、凝集体、またはコンジュゲートは、医薬品として使用されるか、または医薬品の形態で利用される。
【0158】
ナノ粒子ポリマー、凝集体、またはコンジュゲートは、例えば適切な化合物が医薬組成物に添加される場合、「有効量」にて提供され得る。「有効量」という語句は、化合物を含む組成物の化合物を投与する研究者、獣医、医師、または他の臨床医によって探求されている組織、系、動物またはヒトの所望の生物学的または医学的応答を誘発するナノ粒子ポリマー、凝集体、またはコンジュゲートの量を意味すると解釈される。
【0159】
「有効量」は、特定のナノ粒子ポリマー、凝集体、またはコンジュゲートの有効性を含む、いくつかの要因に依存するものである。対象が与えられる化合物の濃度を決定する際には、対象の体重及び年齢もまた当業者にとっての因子であり得る。
【0160】
化合物「の投与」及び/または化合物「を投与すること」という語句は、治療を必要とする対象に、本明細書で定義されるナノ粒子、凝集体もしくはコンジュゲートを含むナノ粒子、凝集体もしくはコンジュゲート、または医薬組成物を提供することを意味すると理解されるべきである。
【0161】
ナノ粒子、凝集体もしくはコンジュゲート、またはナノ粒子、凝集体もしくはコンジュゲートを含む医薬組成物のレシピエントは、ヒト、男性または女性であり得る。
【0162】
あるいは、ナノ粒子、凝集体もしくはコンジュゲート、またはナノ粒子、凝集体もしくはコンジュゲートを含む医薬組成物のレシピエントはまた、非ヒト動物であり得る。「非ヒト動物」は、動物界を対象とし、ヒトを除き、雄または雌の脊椎動物及び無脊椎動物の両方が含まれ、そして以下のものが含まれる:哺乳類(霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラット、モルモット、ウマ、または他のウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、げっ歯類またはネズミ種を含むがこれらに限定されない)を含む温血動物、鳥類、昆虫類、爬虫類、魚類、及び両生類。
【0163】
化合物及び薬学的に許容可能な組成物のレシピエントは、本明細書では互換的な用語「患者」、「レシピエント」、「個体」、及び「対象」と呼ばれる。これらの4つの用語は互換的に使用され、本明細書で定義されるような任意のヒトまたは動物(他に示されない限り)を指す。
【0164】
ナノP3またはそのコンジュゲートを使用して治療することができる疾患、障害または症状には、急性冠症候群、加齢性疾患もしくは障害;アレルギー性疾患もしくは関連状態;アルツハイマー病、siRNA送達、喘息、HIV、抗生物質耐性、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患;細菌感染症、がん;認知症、うつ病もしくは関連状態;糖尿病;脂質異常症、高脂血症、高血圧、魚鱗癬、免疫疾患;代謝性疾患もしくは障害;神経学的疾患もしくは障害;肥満症;パーキンソン病;疼痛、関節リウマチ、またはがんを含む増殖性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。がんの種類には、肛門癌、アスベスト及び肺疾患(中皮腫)、胆管癌、膀胱癌、骨癌(肉腫)、腸癌(大腸)、脳及び脊髄腫瘍、乳癌、カルチノイド腫瘍(神経内分泌)、子宮頸癌、内分泌癌(甲状腺)、眼癌、胆嚢癌、頭頸部癌(口、鼻及び喉)、カポジ肉腫、腎臓癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫(非ホジキン及びホジキン)、黒色腫、多発性骨髄腫、食道癌、卵巣癌、膵臓癌、ペニス癌、腹膜癌、腹膜中皮腫、胸膜中皮腫、前立腺癌、皮膚癌(非黒色腫)、軟部組織癌、脊髄腫瘍、胃及び食道癌、精巣癌、甲状腺癌、胸腺癌、子宮癌(子宮内膜癌)、ならびに外陰及び膣癌が挙げられる。
【0165】
本明細書に記載のナノ粒子ポリマー、凝集体、またはコンジュゲートは、診断試験に使用され得る。例えば、コンジュゲートは、ssDNAのプローブ配列または他のハイブリダイズ可能な分子、抗体、蛍光剤、磁性粒子、酵素、または特定の診断試験の検出工程に関与し、それによりハイブリダイゼーションパートナーの存在を同定し得る他の検出可能なマーカーを含み得る。
【0166】
本明細書に記載のプラズマ技術は、治療/診断薬もしくは官能化剤としてのその後の臨床使用、または非臨床使用のために、十分に制御可能な方法でナノP
3を作製及び収集することを可能にする(例えば:遺伝材料の送達のための研究ツールとして;酵素では官能化されたナノP
3はまた、食物または化学処理のための反応器を通る流動床式の流れにおいても使用され得る;他のアプリケーションの中では、細胞コンパートメントのイメージング、組織学的スループットを高めるための一次抗体及び二次抗体の組み合わせ、動物モデルにおける細胞/薬物のトラッキング)。確立されたプロセスパラメータウィンドウは、ナノ粒子の収率、サイズ、表面形態、及び化学的性質を定義する。ナノ粒子は活性プラズマ-気相で作製され、無菌の臨床バイアルへの直接収集を可能にする(
図1)。プラズマ処理は、滅菌のために広く使われている方法であり、したがって、プラズマ放電は、ナノ粒子ポリマー及び凝集体の形成ならびに粒子含有バイアルの滅菌という二重の役割を果たすことができる。得られたナノP
3含有バイアルは、その後、容易に入手可能な方法で臨床で入手可能となり得る。各バイアル中のナノP
3の濃度は、プラズマ堆積パラメータによって安定して容易に制御することができる。単純な1段階プロセスでは、臨床医は、患者の状態に応じて、オーダーメイドの治療法及び/または診断法を容易に準備することができる。各バイアル中のナノP
3の濃度はまた、適切な第2の種への結合及び送達を最適化するように選択され得る。
【0167】
基質
本明細書で定義されるようなナノ粒子ポリマー、凝集体、またはコンジュゲートを含む基質が本明細書にて開示される。
【0168】
基質は、ガラス、ポリマー、金属、及び複合材料から選択されるがこれらに限定されない材料から形成され得る。基質は、天然材料または合成材料に由来し得る。
【0169】
基質は、生分解性材料を含み得る。
【0170】
ナノ粒子ポリマー、凝集体、またはコンジュゲートは、基質の形成中に基質に組み込まれてもよい。例えば、ポリマー形成物(例えばポリウレタン)またはタンパク質(例えばシルク)及びコンジュゲートを含む組成物は、電界紡糸により、足場の形態での基質の形成に利用され得る。
【0171】
ナノ粒子ポリマー、凝集体、またはコンジュゲートは、基質の形成中に、または基質が形成された後の修飾後プロセスにおいて、基質中または基質上に組み込まれ得る。
【0172】
本明細書で定義されるようなコンジュゲートは、基質またはハイドロゲルに組み込まれてもよい(例えば、創傷部位、または組織/骨欠損)。コンジュゲートは、基質と共有結合を形成してもよく、これにより基質の修飾の必要性が無くなる。
【0173】
基質は、非分解性または生分解性であり得る。足場が基質である場合、コンジュゲートに付着した第2の種は徐放されて、1つ以上の第2の種の制御送達を可能にし得る。
【0174】
ナノ粒子ポリマー、凝集体、またはコンジュゲートは、基質内に物理的に閉じ込められていてもよく、または基質に化学的に結合されていてもよい。例えば、ナノ粒子ポリマー、凝集体またはコンジュゲートの表面上の化学的部分は、基質上に存在する相補的部分(例えば、アルコール、アミン、カルボン酸及び/またはアルデヒド基)と組み合わされ得るか、または、該結合は、基質の表面上の基とのナノ粒子ポリマー、凝集体、もしくはコンジュゲート中もしくは上でのラジカルの反応を通じて、直接的にもしくは中間反応を介してのいずれかによって、共有結合によって起こり得る。
【0175】
あるいは、ナノ粒子ポリマー、凝集体、またはコンジュゲートは、少なくとも1種の基質表面上に存在し得る。例えば、ナノ粒子ポリマー、凝集体、またはコンジュゲートを含むコーティングを基質に適用され得る。
【0176】
ナノP3材料の作製
i)反応チャンバ内に少なくとも1種のガスを提供することと、
ii)前記反応チャンバ内にプラズマを発生させるように第1電極に電力を供給することと、
iii)前記反応チャンバ内の第2電極に電圧を印加することと、
iv)得られたナノP3材料を収集することと、を含み、
前記少なくとも1種のガスが有機ガスを含む、ナノP3材料(ナノ粒子ポリマー及びそれらの凝集体を含む)の調製方法が、本明細書にて開示される。存在するガスの少なくとも1種はモノマーとして作用する。
【0177】
i)反応チャンバ内に少なくとも1種のガスを提供することと、
ii)前記反応チャンバ内に容量結合プラズマを発生させるように前記反応チャンバ内の第1電極に高周波(RF)電力を供給することと、
iii)前記反応チャンバ内の第2電極に電圧を印加することと、
iv)得られたナノP3材料を収集することと、を含み、
前記少なくとも1種のガスが有機ガスを含む、ナノP3材料(ナノ粒子ポリマー及びそれらの凝集体を含む)の調製方法もまた、本明細書にて開示される。存在するガスの少なくとも1種はモノマーとして作用する。
【0178】
i)反応チャンバ内に少なくとも1種のガスを提供することと、
ii)前記反応チャンバ内に誘導結合プラズマを発生させるように高周波(RF)電力を供給することと、
iii)前記反応チャンバ内の第2電極に電圧を印加することと、
iv)得られたナノP3材料を収集することと、を含み、
前記少なくとも1種のガスが有機ガスを含む、ナノP3材料(ナノ粒子ポリマー及びそれらの凝集体を含む)の調製方法もまた、本明細書にて開示される。存在するガスの少なくとも1種はモノマーとして作用する。
【0179】
本明細書に記載の方法によって作製されたナノ粒子ポリマーまたは凝集体もまた本明細書に開示される。
【0180】
図1は、本明細書で定義されるようなナノ粒子ポリマーまたは凝集体のスケールアップ生産、ならびに臨床使用のための治療薬及び診断薬の製造におけるそれらの使用の例を示す。パート1では、このプロセスは、ナノ粒子ポリマー及び凝集体の数及びサイズを制御して、明確に定義された、かつ調整可能な表面の化学的性質及び活性を可能にすることができる。ナノ粒子ポリマー及び凝集体は、それらの作製中に無菌環境が存在するために臨床バイアルへと直接収集することができる。工程2及び3では、1段階の直接的かつ迅速な官能化が起こり得るため、洗浄または精製段階に加えて複雑な湿式化学工程の必要性が無くなる。有利には、第2の種の選択は、生成物が多くの治療法及び/または診断法に合わせて調整できることを意味する。さらなる利点は、プロセス(第2の種(複数可)とのナノ粒子ポリマー、凝集体、及び/またはコンジュゲートの作製)をスケールアップする能力である。
【0181】
本明細書で定義された方法によって作製されたナノP3材料もまた本明細書で開示される。
【0182】
有機ガスは、炭化水素を含み得る。炭化水素は、不飽和炭化水素であり得るか、またはそれを含み得る。
【0183】
ナノP3は、不活性ガスの存在下で作製してもよい。本明細書において「不活性ガス」とは、本明細書に記載のナノ粒子ポリマーまたはその凝集体を調製するために使用されるものなどの一連の所与の条件下で化学反応を受けないガスを指す。不活性ガスには、ヘリウム、ネオン、及びアルゴンが含まれる。
【0184】
一実施形態では、工程i)における少なくとも1種のガスは2種以上のガスの混合物である。一方のガスは、ナノ粒子ポリマーまたはその凝集体に組み込まれていない不活性ガスであり得る。
【0185】
工程i)における少なくとも1種のガスは、周期表の15、16または17族の元素、例えば窒素を含み得る。このガスのフラグメントは、ナノP3材料に組み込まれてもよい。例えば、窒素の存在は、ナノP3材料中でアミン、イミン、もしくはニトリル基、またはこれらの混合物の存在下で生じ得る。
【0186】
ガスは、絶対圧約1~約1500Pa、例えば約6Pa~約67Paの範囲内の圧力であり得る。
【0187】
反応チャンバは接地されていてもよい。RF周波数は、約1~約50MHzであり得る。RF電力は、約5W~約500Wであり得る。RF電力は、第1の電極、第2の電極、または両方の電極に印加され得る。第1の電極に印加されるRF電力は、パルス方式または連続方式であり得る。第2の電極に印加されるパルス状バイアス電圧は、約-1000V~約1000Vであり得る。これは反応チャンバに対するものであり得る。第2の電極に印加されるパルス状バイアス電圧は、約1Hz~約50kHzの周波数を有し得る。それはパルス状RFバイアス電圧であり得る。パルス状バイアス電圧は、約1~約150マイクロ秒のパルス幅を有し得る。それはACでもDCでもよい。第2の電極は接地されていてもよく、または電気的に絶縁されていてもよく、放電中に電極の帯電によって定まる浮遊電位を獲得することを可能にし得る。
【0188】
第1電極と第2電極との間の距離は、約5~約60cmであり得る。
【0189】
工程i)は、反応チャンバを排気することを含み得る。それは、反応チャンバを通じてガスまたはその個々のガスを流すことを含み得る。排気工程は、工程ii)及びiii)が行われる圧力より低い圧力であり得る。
【0190】
このプロセスは、ナノ粒子ポリマー及び/または凝集体をコレクタに収集することを含み得る。コレクタは、第1電極と第2電極との間に配置され得る。このコレクタは、第2の電極に極めて近接していてもよい。コレクタは、密封可能なバイアルであり得る。導電性物質でも非導電性物質でできていてもよい。
【0191】
このプロセスは、ナノ粒子ポリマー及び/または凝集体をガスに曝露することを含み得る。ガスは、窒素、酸素、及び水蒸気のうちの1種以上を含み得るか、またはそれらから本質的に構成され得る。ガスは、空気であり得る。ガスは、窒素であり得る。ガスは、ナノ粒子材料に反応性のあるガスであり得る。
【0192】
一実施形態では、
i)絶対圧力約1~約1500Paの圧力で反応チャンバ内にガスを提供することと、
ii)反応チャンバ内にプラズマを発生させるために、前記反応チャンバ内の第1電極に約1~約50MHzかつ5~500Wで高周波(RF)電力を供給することと、
iii)約1Hz~約50kHzの周波数及び約1~約150マイクロ秒のパルス幅で、パルス状の負のバイアス電圧を前記反応チャンバ内の第2の電極に印加すること(前記第2電極は前記第1電極から約5~約20cm離れている)と、
iv)得られたナノ粒子材料を収集することとを含み、
前記ガスが炭化水素ガス、窒素及び希ガスを含む、ナノP3材料を調製するためのプロセスが提供される。
【0193】
一実施形態では、工程iii)における電圧は、前記電極がプラズマからの電荷の蓄積によって浮遊電位を獲得する自己バイアスである。
【0194】
一実施形態では、工程iii)における電圧は、パルス状バイアス電圧である。
【0195】
別の実施形態では、
i)絶対圧力約6Pa~約67Paの圧力で反応チャンバ内にガスを提供することと、
ii)反応チャンバ内にプラズマを発生させるために、前記反応チャンバ内の第1電極に約60~約20MHzかつ5~200Wで高周波(RF)電力を供給することと、
iii)約1~約5kHzの周波数及び約10~約30マイクロ秒のパルス幅でパルス状の負のバイアス電圧を前記反応チャンバ内の第2の電極に印加すること(前記第2電極は前記第1の電極から約5~約20cm離れている)と、
iv)第1電極と第2電極との間であるかつ第2電極に極めて近接して配置された密封可能なバイアル内にナノ粒子材料を収集することと、
v)有機種をナノ粒子材料に共有結合させ、それにより官能化ナノ粒子材料を作製するために、密封可能なバイアル内のナノ粒子材料を有機種に曝露することとを含み、
前記ガスが炭化水素ガス、窒素及び希ガスを含む、ナノP3材料を調製するためのプロセスが提供される。
【0196】
別の実施形態では、
i)絶対圧力約6Pa~約67Paの圧力で反応チャンバ内にガスを提供することと、
ii)反応チャンバ内にプラズマを発生させるために、前記反応チャンバ内の第1電極に約10~約15MHzかつ5~200Wで高周波(RF)及び電力を供給することと、
iii)第2の電気的に絶縁された電極が、前記反応チャンバ内で放電中に電極の帯電によって定まる浮遊電位を獲得することを可能にすること(前記第2電極は前記第1電極から約5~約20cm離れている)と、
iv)第1電極と第2電極との間であるかつ第2電極に極めて近接して配置された密封可能なバイアル内にナノ粒子材料を収集することと、
v)有機種をナノ粒子材料に共有結合させ、それにより官能化ナノ粒子材料を作製するために、密封可能なバイアル内のナノ粒子材料を有機種に曝露することとを含み、
前記ガスが炭化水素ガス、窒素及び希ガスを含むナノP3材料を調製するためのプロセスが提供される。
【0197】
排気可能な反応チャンバ、前記反応チャンバ内に配置されており、RF電源に接続されている第1電極、前記反応チャンバ内に配置されており、パルス発生器に結合するか、またはチャンバから電気的に絶縁した第2電極、前記チャンバを少なくとも部分的に排気するように前記反応チャンバに結合した真空ポンプ、及び1種以上のガスまたはそれらの混合物を反応チャンバに供給するための少なくとも1つのガス導入口を含む、ナノP3材料を作製するための装置も本明細書に開示されている。パルス発生器は、DCでもACでもよい。
【0198】
装置は、ナノP3材料を収集するためのコレクタをさらに含んでもよい。コレクタは、第1電極と第2電極との間に配置されてもよい。第1電極及び第2電極は、約5~約60cm離れていてもよい。
【0199】
図4は、ナノP
3材料を収集するために使用され得る装置の概略図を概説する。この概略図は、C
2H
2、N
2及びArの気体混合物中で維持される容量結合高周波プラズマにおけるナノ粒子の収集メカニズムを例示している。左側では、負に帯電したナノ粒子が正のプラズマ電位に留まり、イオン抗力、及びプラズマシースに沿った電位降下によって基板からはじかれる。本実施形態では、薄膜プラズマコーティングが、ナノ粒子の形跡なしに下部電極によって支持された平坦な基板上に堆積される(下の挿入図を参照)。右側では、下部電極に結合したウェル型ナノ粒子コレクタがプラズマ電位を修正する。正のプラズマ電位がコレクタに浸透し、ナノ粒子をウェル内に閉じ込めることができる(下の挿入図を参照)。一実施形態では、ナノP
3材料は、本明細書に記載されるような装置内に、例えば
図4に示されるようなコレクタを利用して収集される。
【0200】
本明細書で定義されるようなナノP3材料を作製するための本明細書で定義された装置の使用もまた本明細書に開示される。
【0201】
ナノP3材料を調製するプロセスの一実施形態では、反応チャンバ内でプラズマを発生させるために第1電極にRF(高周波)電力が供給され、第2電極が、前記反応チャンバ内で放電中に自発的な帯電によって定まる浮遊電位に浮遊して達することが可能となる。第1電極に印加されるRF電力は、プラズマ放電を発生させ維持するのに十分であるべきである。それは、ガス、例えば炭化水素ガス、反応性の非重合性ガス、及び窒素のような追加のガスの混合物をフラグメント化、解離またはイオン化するのに十分でなければならず、それらのフラグメントは、得られるポリマー材料に組み込まれ得る。それは、ガスの解離及びフラグメント化から生じるプラズマ放電中のラジカル種を生成するのに十分であるべきである。それは、反応チャンバ内でナノ粒子材料を形成する間、反応チャンバ内でプラズマ放電を持続させるのに十分であるべきである。
【0202】
図3は、ナノP
3材料の形成に利用することができる装置を概説する。この図は、下部電極(1)、電極支持体(2)、下部電極用高圧電源接続部(3)、ウェル型ナノ粒子コレクタ(4)、上部電極(5)、及び上部電極用高圧電源接続部(6)を示す。本明細書では、(3)及び(6)の組み合わせを使用してもよい。一実施形態では、(3)は、パルス状の高圧電源に接続されるか、または浮遊電位にあり得(すなわち電源に接続されていない)、そして(6)は高周波電源に接続され得る。
【0203】
RF周波数は、約1~約200MHz、または約1~25、1~50、1~75、1~100、1~125、1~150、または1~175MHz、例えば、約1、約2、約3、約4、約5、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約110、約120、約130、約140、約150、約160、約170、約180、約190、または約200MHzであり得る。
【0204】
それは約5~約500W、または約5~100、5~200、5~300、または5~400W、例えば、約5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、250、300、350、400、450または500Wの電力を有し得る。
【0205】
パルス状バイアス電圧は、約1Hz~約50kHz、または約1Hz~20kHz、1Hz~10kHz、1Hz~5kHz、5Hz~50kHz、10Hz~50kHz、20Hz~50kHz、10Hz~20kHz、または20Hz~30kHzの周波数を有し得る。
【0206】
バイアス電圧は、約-1000V~約1000V、または-500~500、-200~200、-100~100、-50~50、-1000~0、-500~0、-200~0、-100~0、-50~0、0~50、0~100、0~200、0~500、または0~1000V、例えば、約-1000、-900、-800、-700、-600、-500、-400、-300、-200、-100、-50、0、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000Vであり得る。
【0207】
いくつかの実施形態では、バイアス電圧はゼロ以外である。したがって、バイアス電圧は、正または負のいずれかであり得、それぞれの場合において、10~1000、または20~100、50~1000、100~1000、200~1000、500~1000、または100~500Vの絶対値を有し得る。パルス電圧はチャンバに対するものであり得る。
【0208】
チャンバは接地されていてもよい。第2電極は接地されていてもよい。あるいは、電圧は、プラズマシース全体にわたる電位の降下によって定められる浮遊電極の帯電の結果として生じる自己バイアスであり得る。パルス持続時間は、約1~約150マイクロ秒、または約1~100、1~50、1~20、1~10、10~150、20~150、50~150、100~150、10~100、10~50、または50~100マイクロ秒、例えば、約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、または150マイクロ秒であり得る。
【0209】
パルスのオフ時間とオン時間との間の比は、約10(すなわち10:1)~約20、または約10~15、15~20、または13~17、例えば、約10、13、15、17、または20であり得る。場合によっては、それは10より大きくてもよく、必要に応じて、最大100、または最大90、80、70、60、50、40、または30であってもよい。
【0210】
第1電極及び第2電極は、例えば約5~約60cm、または約5~50、5~40、5~30、5~20、5~10、10~60、20~60、30~60、40~60、10~30、または20~40cm、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60cmの距離で適切に隔地される。一般に、第1電極は、第2電極の上に配置される。
【0211】
プラズマ発生中、反応容器内の圧力は、通常、絶対圧力約1~約1500Pa(約7.5mTorr~約115Torr)、または約10~1500、100~1500、200~1500、500~1500、600~1500、700~1500、800~1500、900~1500、1000~1500、1100~1500、1200~1500、1300~1500、1400~1500Pa、例えば約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、または1500Paの間である。通常、この圧力を達成するために、反応容器を最初にこの圧力未満、例えば約10mPa未満、または約5、2、1、0.5、0.2または0.1mPa未満に排気する。次に、ガスまたはその個々の成分ガスを十分な速度でチャンバ内に逃がすことによって所望の圧力が達成され、これは排気速度と一緒に調節され、チャンバ内で所望の圧力及び所望のモノマー滞留時間を達成する。チャンバ内のガス分子の滞留時間は、プラズマ中のモノマー及び他のガス分子のフラグメント化の程度を決定する。必要な流速は、反応チャンバのサイズに依存することが理解されよう。しかしながら、反応チャンバ内の圧力を監視することによって(例えば、チャンバの内部空間と連結した圧力計によって)、流速(複数可)及び排気速度を調節し、所望の圧力及びガス滞留時間を達成することは簡単なことである。ガスは、チャンバに導入される前に個々の成分ガスから調製されてもよく、またはガスの個々の成分ガスがチャンバに別々に導入されてもよい。後者の場合、ガス中の成分ガスの比率は、異なる成分の異なる流速を制御することによって制御され得る。ガスが3種以上の個々の成分を含む場合には、チャンバ内に導入されるガスのうちの少なくとも1種は、それ自体が混合物であり得るか、または別々の各成分ガスが個別に導入され得る。成分ガスは有機ガスを含み、1種以上のキャリアガス、1種以上の非重合性ガス、及び任意に他の成分ガスをさらに含んでもよい。
【0212】
ガスは有機、すなわち炭素を含み二酸化炭素ではない少なくとも1種のガスを含む。少なくとも1種のガスは、本明細書で定義されたようなモノマーである。それは、炭素-炭素二重結合及び/または炭素-炭素三重結合を含み得る。それは、アルケンまたはアルキンであり得る。それは、そのようなガスの混合物であり得る。有機ガスは、本プロセスの条件下で重合可能であり得る。ガスは、2種以上の有機ガスを含み得る。この文脈では、ガスは、反応チャンバ内のその時点で優勢である温度及び圧力でガス状態にある物質であると見なされる。したがって、例えば、標準温度及び圧力のペンタンは液体であるが、本プロセスの減圧下ではそれは気体と見なされる。場合によっては、ガスはまた、標準温度及び圧力のガス、例えばアセチレン(エチン)でもよい。
【0213】
有機ガスの流速(または全ての有機ガスの流速の合計)は、約0.1~約4000sccm(標準立方センチメートル/分)、または約1~4000、10~4000、50~4000、100~4000、500~4000、1000~4000、2000~4000、0.1~2000、0.1~1000、0.1~500、0.1~200、0.1~100、0.1~50、0.1~10、0.1~1000、0.1~100、0.1~10、または0.1~1sccm、例えば約0.1、0.2、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、または4000sccmであり得る。次いで、キャリア及び反応性非重合性ガス(複数可)の流速を調節し、反応チャンバ内で所望の圧力及び滞留時間を達成することができる。収集時間は、1分未満~約30分、もしくは1~20、1~10、1~50、5~30、10~30、20~30、5~20、5~10、もしくは10~20分、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25もしくは30分、または30分よりも長くてもよい。収集時間は、約30秒~約1分の範囲であり得る。
【0214】
作製されるナノP3材料の特に望ましい特性に応じて、流速、圧力及び電力のいずれも変えることができることが理解されよう。したがって、流速、圧力及び電力のそれぞれについて本明細書に例示されている数値または範囲のいずれも、任意の組み合わせで一緒に使用され得る。例えば、一実施形態では、約0.5~約10sccmの流速、約20Paの圧力、及び約50W~約100Wの電力が使用され得る。本明細書では、他の全ての可能な組み合わせが想定される。
【0215】
一実施形態では、方法は、工程i)における有機金属化合物への導入をさらに含む。有機金属化合物の例には、酸化鉄及びガドリニウム化合物が含まれる。
【0216】
一実施形態では、上述のようにプラズマから作製されたナノP
3材料は、1つ以上のコレクタ、例えば
図4に記載されるようなコレクタに収集され得る。コレクタ(複数可)は、第2電極に近接して配置されてもよい。それ(それら)は、第1電極の下に配置されてもよい。それ(それら)は、第1電極と第2電極との間の第1電極の垂直下に配置されてもよい。それ(それら)は、活性プラズマ領域におけるナノ粒子材料の捕捉を可能にし得る。これは、粒子のアグロメレーションを制御するため重要である。コレクタ(複数可)は、活性グロープラズマ領域内のナノ粒子材料の収集を可能にし得る。一実施形態では、コレクタ(複数可)は、バイアルまたは複数のバイアルであるか、またはそれらを含む。あるいは、または加えて、コレクタ(複数可)は1つ以上のウェルであるか、またはそれを含む。複数のバイアルは、プレート内のウェルの形態であり得る。別の実施形態では、バイアルまたはウェルは、約2~約20mm、または約2~10、2~5、5~20、10~20、または5~10、例えば、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20mmの深さを有し得る。場合によっては、バイアル(複数可)は、20mmより深い場合がある。
【0217】
コレクタの基部は完全に平面でも実質的に平面でもよい(例えば、基部の縁部はコレクタの側壁との接触点で丸みを帯びていてもよいし、またはコレクタの側壁を形成するために丸められていてもよい)。コレクタの基部の表面積は、好ましい幾何学的形状のナノP3材料を収集するために所望に応じて調整してもよい。同様に、コレクタの側壁の高さ(すなわち、コレクタの基部からのそれらの距離)は、好ましい幾何学的形状のナノP3材料を収集するために所望に応じて調整してもよい。
【0218】
一例において、コレクタの側壁の高さは、1mm~50mm、例えば1mm~40mm、例えば1mm~30mm、例えば1mm~20mmであり得る。したがって、コレクタの側壁の高さは、3mm~17mmであり得る。あるいは、コレクタの側壁の高さは、2mm~20mm、または5mm~15mm、または7mm~12mm、または任意の他の適切な範囲であり得る。別の例では、コレクタの壁の高さは、約3mm、約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、約10mm、約11mm、約12mm、約13mm、約14mm、約15mm、約16mm、約17mm、約18mm、約19mmまたは約20mmであり得る。一つの好ましい実施形態では、コレクタの側壁の高さは約17mmである。他の高さは、ナノP3材料の所望の幾何学的特性に応じて選択することができる。側壁の高さは、ナノP3材料を合成するのに使用されるモノマー(複数可)に応じて選択することができる。
【0219】
ナノP3材料の所望の幾何学的特性に応じて、ウェル型コレクタの周囲の形状もまた調整してもよい。ナノP3材料を合成するのに使用されるモノマー(複数可)に応じて、ウェル型コレクタの周囲の形状を調整してもよい。例示のみのために、ウェル型コレクタの周囲の形状は、円形、正方形、楕円形、長方形、三角形、五角形、六角形など、またはほぼ円形、ほぼ正方形、ほぼ楕円形、ほぼ長方形、ほぼ三角形、ほぼ五角形、ほぼ六角形などであってよい。
【0220】
コレクタの基部が一般に円形の場合、半径は、目的のナノP3の所望のサイズ及び収率に基づいて選択されてもよい。一例では、半径は、1mm~50mm、例えば1mm~40mm、または1mm~30mm、または1mm~20mm、または1mm~10mm、または2mm~8mm、または3mm~7mm、または4mm~6mmであり得る。あるいは、半径は、約3mm、約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、約10mm、約11mm、約12mm、約13mm、約14mm、約15mm、約16mm、約17mm、約18mm、約19mm、約20mmであり得る。
【0221】
コレクタの側壁の高さ対コレクタの半径の比は、ナノ粒子材料の所望のサイズ及び収率に応じて調整してもよい。一例では、コレクタの側壁の高さ対コレクタの半径の比は、約5:1~0.1:1である。例えば、コレクタの側壁対コレクタの半径の比は、約3:1~1:1、または約1.8:1~1:1、または約1.6:1~1:1であり得る。コレクタの側壁対コレクタの半径の比は、約5:1、または約4:1、または約3:1、または約2:1、または約1:1、または約0.8:1、または約0.6:1、または約0.4:1、または約0.2:1であり得る。
【0222】
コレクタは密封可能であり得る。したがって、バイアル(複数可)またはウェル(複数可)は密封可能であり得る。バイアルまたはウェルをプラズマに曝すと効果的に滅菌されるため、バイアルまたはウェル内に直接ナノ粒子材料を収集することは、単一工程でバイアルまたはウェルを収集する、かつ滅菌するための便利な方法を提供する。本明細書の他の場所で説明されるように、ナノ粒子材料は治療目的のために、または治療用途のためのコンジュゲート及び医薬組成物の形成において使用され得るため、滅菌はそれらの最終用途において重要であり得る。コレクタは、非導電性材料でできていてもよく、または導電性材料でできていてもよい。それはプラズマに耐えることができる材料でできていてもよい。それは例えばガラス製であり得る。
【0223】
ナノP3材料が生成及び収集されると、反応チャンバは窒素で通気され得る(すなわち、ほぼ周囲圧力にする)。次いで、ナノP3材料を反応性ガスに曝すことができる。これは、それらをプラズマチャンバから取り除くことによるか、または反応性ガスをチャンバに入れることを可能にすることによりなされ得る。ナノP3材料、一般にナノ粒子材料中のラジカル部位は、次いで反応性ガスと反応し得る。これにより、ナノP3材料を本明細書で定義されるような第2の種などの有機種と反応させて、それらの有機種をナノP3材料に付着させるために使用することができる官能基が形成され得る。通常、ガスは空気または窒素であるが、他のガスを使用してもよい。ガスは、酸素含有ガスであり得る。それは、ガスを含有する水蒸気でもよい。それは、水蒸気と酸素の両方を含有してもよい。あるいは、または加えて、ナノP3材料は、有機種または有機金属種などの第2の種、例えばイメージング試薬、タンパク質、siRNA、RNA、生体分子、触媒、薬物、全細胞、細胞フラグメント、ミセル、リポソーム、ハイドロゲル、ポリマー粒子、半導体粒子、セラミック粒子、金属粒子、またはそれらの任意の2つの混合物と反応し得、第2の種をナノP3材料に付着させる(例えば共有結合的に付着させる)ようにする。
【0224】
本開示は、様々な官能化ナノ粒子を利用するための便利な手段を提供する。ナノ粒子のサイズ、及び官能基密度は、それらが生成される条件を調節することによって調整してもよい。例えば、プラズマチャンバ内でナノP3材料を生成し収集することによって、粒子を滅菌容器内に密封することができる。それらは、次いで、必要に応じて使用直前に、有機種を含有する適切な試薬を密封バイアルに注入することによって、有機種などの適切な第2の種によって自由に官能化することができる。
【0225】
ナノP3材料の粒子が真空チャンバ内で合成される場合、少なくとも1つの炭化水素前駆体及び少なくとも1つのバッファ(またはキャリア)ガスを含有するガスの反応性混合物が低圧及び低温プラズマ放電を発生させるために使用される。プラズマ放電は、高周波(RF)発生器、DC電源、またはパルスDC電源などの電源または電源の組み合わせによって生成されてシステムに送達される電力を誘導的または容量的のいずれかで結合することによって生成される。バッファガスの高エネルギー励起閾値と相まってプラズマガス放電内の並外れた電力伝達は、プラズマ中に存在する後の種と他の種(電子及びイオンなどの荷電種、またはバッファガスから得られる原子及び分子を含む中性種のいずれか)との間の衝突を介して炭化水素前駆体分子をイオン化及び解離する非常に効率的なメカニズムを提供する。前駆体分子と他の種との間の相互作用により、一連の化学反応が開始され、ラジカル及び高次炭化水素の形成、及び最終的には核生成及び凝集プロセスによるナノ粒子の形成がもたらされる。炭化水素含有プラズマ放電を使用した炭素系ナノ粒子の作製は、ナノ粒子のサイズ、作製速度、表面の化学的性質、形態、及びラジカル濃度が、様々なプロセスパラメータ(印加電力、プラズマ励起周波数、ガス混合物、前駆体滞留時間、システム圧力、及び放電時間)を調整することによって定義される明確に制御可能であるかつスケーラブルなプロセスウィンドウを可能にする。加えて、窒素などのガスを含むことは、ナノ粒子表面の化学的性質の調整を可能にするだけでなく、水溶液中での粒子の分散及び凝集も調節する。
【0226】
本発明者らは、ナノP3材料が、プラズマ放電中のモノマー(例えば炭化水素)及び他のガス(窒素など)の解離及びフラグメント化から生じると考えている。そのような解離メカニズムから生じるラジカル種は、プラズマ体積内で再結合し、不対電子を含有するナノP3材料を形成する。次いで、ナノ粒子構造中に捕捉された不対電子を用いて、生体分子を共有結合的に固定化することができる。
【0227】
本開示は、ナノ粒子の成長段階及び除去段階、収集収率、ならびにサイズ単分散性を厳密に制御することができる、パルスバイアスナノ粒子コレクタを利用する収集プロセスを含む。ナノ粒子コレクタに提供される電気パルスは、様々な時間的プロファイルならびに様々な負及び正の印加電圧によって調節することができる。パルス時間プロファイルは矩形波を含む。これらは少なくとも1%のデューティーサイクルを有し得る。それらは1Hz~3kHzの範囲の周波数、及び-1000V~1000Vの範囲の印加電圧を有し得る。加えて、コレクタは、活性グロープラズマ領域において効率的かつ高収率のナノ粒子の回収を容易に可能にするウェル型形状を特徴とする。異なるウェル間の形状、深さ、及び間隔は、ナノ粒子の収集収率及び凝集を決定する。特に、14.4g/hr m2のナノ粒子収率は、0.8cmのウェル半径を有する24個の円形ウェルを特徴とするコレクタを使用するか、または0.635cmのウェル半径を有する96個の円形ウェルを特徴とするコレクタを使用して達成され得る。他の適切なウェルプレートを必要に応じて選択してもよい。
【0228】
図2は、ナノ粒子の形成及び成長に関与する提案されたメカニズムを簡単に示す。製造プロセス中、異なる成長段階で、異なるサイズ範囲を有する2つの群の粒子が形成される:最大約10nmまでのサイズを有する粒子の第1群と、約100nm~最大約500nmまでの範囲の直径を有する粒子を含む第2群。走査型電子顕微鏡(SEM)イメージングによる粒子の形態の分析(
図2の挿入図を参照)は、第2群の粒子(より大きな球状粒子)が第1群のナノ粒子ポリマーの凝集体であることを示唆する。ナノ粒子ポリマーは初期段階で形成され、それらの成長はプラズマ化学によって左右される(段階1)。後者は、放電を生成するのに使用されるモノマー及び存在する他のガスの種類、ならびに種の滞留時間及びプラズマ放電へのエネルギー入力によって規定されるそれらのフラグメント化の程度に本質的に依存する。これらの初期のナノ粒子ポリマーの形成メカニズムは、異なる経路を辿ることができ、中性ラジカルまたは陰イオンもしくは陽イオンのいずれかを含む成長反応が支配的となり得る。プラズマ中のこれらの初期ナノ粒子ポリマーの数密度は、通常、電子密度及びイオン密度を超える。準中性の原理によれば、これは、ナノ粒子ポリマーの平均電荷がゼロに近いことを示している可能性がある。
【0229】
ナノ粒子ポリマーがプラズマ中で臨界サイズ(約5nm~最大約10nmまで)に達すると、負電荷と正電荷を帯びたクラスタが集まり始め、第2群のより大きな粒子群である凝集体が形成される(段階2)。この段階では、全ての成長粒子はプラズマ中に存在する電子及びイオンのシンクとして振る舞い、該成長粒子への荷電種の拡散はプラズマシースダイナミクスによって支配される。この現象は
図5(画像B及びC)で確認され、そこでは分子イオン及び他の非荷電種に関連する発光帯の間の比率の時間発展は全体のプラズマスペクトルと逆位相にあることが示される。特に、凝集及び成長段階中のイオン集団の急速な減少が観察され、このことはイオン種が第2段階中でさらに消費され得ることを示している。凝集及び急速な成長段階中に、球状のシースが、成長粒子の周りに形成される。この球状のシースの発達は、
図2に示すような球状の凝集体の形成をもたらす可能性が最も高い要因である。それらのより高い移動度のために、陽イオンと比較して電子は粒子に向かってより急速に拡散する。その結果として、成長粒子は負に帯電し、該成長粒子の成長は、より正の電荷を帯びたクラスタ及び正イオンを引き付けることによって強化される。臨界サイズ(これはプラズマパラメータに依存する)及び臨界密度に達した後、粒子表面上に集合した負電荷はさらなるナノ粒子ポリマーの凝集を抑制する。
【0230】
粒子は負に帯電しているため、粒子は静電力により正のプラズマ電位領域に閉じ込められている。粒子が臨界サイズ及び質量に達すると、粒子に作用する他の力がより支配的になり(例えば、イオン抗力、熱泳動力、ガス粘性力、及び重力)、そして静電力に勝り、粒子がそれらの生成及び成長領域から遠ざけられる。粒子の除去は、粒子を含まない領域の形成をもたらし、新たな形成及び成長サイクルならびに新たに形成された粒子のその後の除去及び収集のための空間をもたらす(段階3)。この段階では、放電の全体的な放射強度は減少する。加えて、プラズマ中の相対イオン分率は再び増加し、イオンが粒子に向かって拡散するためにもはや消費されないことを示している。
【0231】
ナノP3コレクタに印加された電圧は、粒子形成及び除去段階のダイナミクスを調節し得る。バイアスが印加されていない場合、凝集段階及び除去段階は同じ期間であるが、-500Vまでの負電圧の増加は、より長いナノ粒子除去段階を促進する。バイアスを大きくすると、成長ナノ粒子に印加される電気力が強まる。したがって、ナノ粒子の質量をさらに増加させることは、持続する電気力に重力が勝り、粒子を放電から遠ざけるために必要である。その結果として、より長い凝集段階は、ナノ粒子ポリマーのさらなる凝集、その結果として、それらの消費をもたらし、より大きなナノP3材料を形成する。ナノ粒子コレクタの制御されたバイアスは、コレクタから離れたより小さなナノ粒子ポリマーを濾過する方法を提供し、その結果収集されたナノP3材料のサイズ単分散性が高まる。印加バイアスをさらに増加させると、凝集段階及び除去段階の急激な減少によって、ならびにナノ粒子収率の減少によって示されるように、ナノ粒子ポリマーの凝集及びそれに続く粒子形成が妨げられる。
【0232】
ナノP
3の形成は、同じ特性を有する連続した粒子が生成されることができ、単独運転中に連続的に収集されることができる周期的プロセスであることが示され得る。粒子形成のこの周期的な振る舞いは、例えば、
図5に示すように、プラズマによって放出された放射線を収集し、それを発光分光法(OES)によって分析することによって直接観察することができる。
【0233】
本明細書に開示される方法は、0.8cmのウェル半径を有する24個の円形ウェルを特徴とするコレクタを使用して、14.4g/hr m2のナノ粒子収率を戻すことができる。
【0234】
コンジュゲートの作製
i)ナノ粒子ポリマー、凝集体、またはそれらの混合物、及び
ii)少なくとも1つの第2の種
を提供することと、
該ナノ粒子ポリマーまたは凝集体と該少なくとも1つの第2の種とが物理的または化学的に互いに結び付くように、該ナノ粒子ポリマーまたは凝集体と該少なくとも1つの第2の種とを接触させることと、
を含むコンジュゲートの形成方法が、本明細書にて開示される。
【0235】
ナノ粒子及び/または凝集体は、本明細書に記載の方法によって作製してもよい。
【0236】
コンジュゲート形成中、少なくとも1つの第2の種は、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体に共有結合的または静電的に結合し得る。
【0237】
コンジュゲートを形成するプロセスは、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体を有機種または有機金属種などの少なくとも1つの第2の種と反応させ、前記第2の種を前記ナノ粒子ポリマーまたは凝集体に結合、例えば共有結合させることを含み得、これにより官能化ナノP3材料の形態でのコンジュゲートが作製される。ナノ粒子ポリマーまたは凝集体を反応させる工程は、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体を0~約30℃の温度で前記第2の種に曝すことを含み得る。該プロセスは、約1分~約24時間の範囲の時間にわたってナノ粒子材料を前記第2の種に曝すことを含み得る。ナノ粒子材料はコレクタに収集されてもよく、その場合、反応工程は第2の種をコレクタに導入することを含み得る。第2の種は、溶液中または分散液中または懸濁液中であり得る。
【0238】
一実施形態では、ナノP3材料及び少なくとも1つの第2の種を含むコンジュゲートが、ワンポット反応で形成される。
【0239】
2つ以上の第2の種をナノP3材料と組み合わせてコンジュゲートを形成することができる。ナノP3材料への2つ以上の第2の種の添加は、単一のワンポット反応または連続した別々の反応で起こり得る。一実施形態では、ワンポット反応においてナノP3材料と少なくとも2つの第2の種との間にコンジュゲートが形成される。別の実施形態では、連続していてもよい2つの別々の反応において、ナノP3材料と少なくとも2つの第2の種との間でコンジュゲートが形成される。
【0240】
コンジュゲートの形成に続いて、1つ以上のさらなる第2の種に結合することができる追加の部位は、例えば、第2の種の付着を介してコンジュゲート上に導入されていてもよい未結合電子または官能性部分の形態でコンジュゲート上に残ってもよい。これは、異なる溶解度プロファイルなどの異なる化学的性質のために2つの第2の種が単一工程で導入できない場合、または保護基の化学的性質が特定の部分を保持するのに必要とされる場合に有利である。
【0241】
コンジュゲートが形成されると、ナノ粒子のモノマーに組み込まれた官能基、またはコンジュゲートの形成後に導入された第2の種に存在する官能基は、さらなる第2の種を付着するためのその後の工程で使用することができる。
【0242】
第2の種へのナノ粒子ポリマーまたは凝集体の結合は、迅速であり得、温和な条件下で行われ得る。結合条件は、荷電種の結合を容易にするために一時的に変えてもよい。したがって、反応は、30分以内、または20、25、10、5分、1分以下以内に実質的に完了(例えば、90、95または99%完了)し得る。反応は周囲条件で、または約0~約50℃、または約0~30、0~20、10~50、20~50、30~50、10~30、または20~30℃、例えば、約0、5、10、15、20、25、30、35、40、45もしくは50℃の温度で実施することができる。より高い温度ではより迅速な反応が促進され得ることが理解されよう;しかしながら、反応は、生体分子のような有機種については第2の種が安定である温度で行われるべきである。この温度は、第2の種、またはコンジュゲーションプロセスにおいて利用される第2の種の混合物の性質によって異なる。
【0243】
したがって、特定の用途の機能要件に合わせて調整された、様々な異なる分子カーゴの化学的コンジュゲーションを可能にするナノ粒子ベースの技術が本明細書に記載されている。ナノP3材料の官能化は、分子カーゴを粒子内に埋め込まれたラジカル及び/または官能性部分に直接結合することによって容易に達成され得る。ナノP3材料上への生体分子の固定化は、有機分子または他の化学的中間体による中間コーティング、予備官能化(pre-functionalisation)及びパッシベーション工程を必要とせずに、単純なインキュベーションによって達成される1段階プロセスであり得る。したがって、本明細書に開示されるナノP3材料の作製方法は、いかなるコーティング、予備官能化、パッシベーション工程、またはこれらの工程のいかなる組み合わせを含まなくてもよい。ナノP3材料の好ましい表面の化学的性質は、放電体積中での形成及び成長段階中の成長粒子上へのモノマーラジカル及び官能基の拡散及び凝集を含む、プラズマ放電による製造プロセスの結果である。さらに、提案された製造及び収集プロセスは、ナノP3材料特性の制御を可能にし、特にそれらのサイズ、ラジカル含有量、形態、表面の化学的性質、凝集、及び作製収率は、プラズマパラメータを調節することによって制御され得る。
【0244】
本明細書に開示されるプロセス及び方法は、ナノP3材料の所望の特性または特性の組み合わせが得られるようにプラズマパラメータ(ガス圧力、電力、周波数、パルス長、電圧など)を設定する工程を含み得る。
【0245】
固定化生体分子は、ナノP3材料の表面上に固定化された後にそれらの生物活性を維持することができる。裸の(bare)ナノ粒子及び生体分子コンジュゲート型ナノ粒子の両方は、様々な細胞型によって容易に内在化させることができ、試験する全ての濃度において細胞に細胞毒性が誘発されることはない。加えて、薬物コンジュゲート型ナノ粒子は、がん細胞による内在化後に細胞毒性能力を維持し得る。重要なことに、ナノ粒子の共有結合固定化能力及び生体分子コンジュゲート型ナノP3材料の生物活性は、例えば少なくとも約1ヶ月間、または少なくとも約2、3または6ヶ月間、もしくは少なくとも約1、2、5、もしくは10年間の長期間の凍結乾燥貯蔵後に維持されることが示されている。本明細書に開示されるプロセス及び方法は、ナノメディシン用途のための新たな種類の多官能性かつ多機能性ナノキャリアとして、プラズマナノ粒子を作製及び使用する便利な方法である。
【0246】
現在のナノ粒子官能化戦略は、主に非イオン性ポリマー及び標的薬物送達用の特異的ターゲティングリガンドからなる、活性な表面の化学的性質を付加するための表面修飾のいくつかの方法に依存している。しかしながら、これは製造プロセスにおける追加の中間的で、複雑で、時間がかかり、かつコスト高な工程を表す。さらに、現在ナノキャリアに使用されているコーティングは、非常に低い薬物担持容量しか提供しない。本明細書に記載のナノP3材料の独特な表面の化学的性質は、中間官能化戦略を必要とせずにカーゴとの強力な共有結合を可能にする。これは、定義されたナノP3材料が、現在利用可能なプラットフォームの主要な限界の1つを克服する大きな可能性を秘めていることを意味する。本明細書に列挙された方法によって作製された粒子は、製造直後に単純な1段階プロセスで官能化され得、治療、イメージング、及び診断における特定の用途に適する調整された機能と共に販売され得る。
【0247】
ナノP3は、分子の生物活性を維持しながら、ラジカル付着及び/または官能性部分を介して異なる分子カーゴを共有結合的に固定化できることが示されている。様々な種類の細胞による取り込みを評価するために、さらなるin vitroアッセイが行われてきた。結果は、任意の特定の細胞透過剤を必要とせずに、ナノP3が細胞によって容易に取り込まれ得ることを示す。ナノP3材料は生体適合性があり、忍容性が良好であり、取り込み後最大4日後までは細胞毒性の徴候が見られないが、薬物コンジュゲート型ナノP3は、がん細胞において細胞毒性を誘導するのに有効である。加えて、ナノP3は細胞内にsiRNAを送達することができ、細胞取り込みの48時間後にタンパク質発現を著しく減少させる。
【0248】
分子混合物を含むコンジュゲートは、疾患組織を標的とするための抗体もしくはタンパク質などのターゲティングリガンド;標的組織への粒子のリアルタイムトラッキングを可能にする造影剤、及び/または多官能性ナノキャリアの形成を可能にする薬物などの治療用タンパク質もしくは小分子を含み得る。本明細書に開示されるナノP3材料のラジカル媒介性結合容量は、全てのリガンドがナノ粒子に結合し、遊離のタンパク質または薬物が残らないように、ナノP3材料のバイアルに注入するタンパク質及び薬物の濃度を決定する。5分間の急速なインキュベーションの後、得られた薬物担持コンジュゲートの溶液は、時間のかかる湿式化学、予備コンジュゲーション、洗浄、または精製工程なしに患者に注射してもよい。これは病院での臨床使用のための技術のアップスケーリング及び変換を容易にする。
【0249】
本発明者らは、ナノ粒子製造後少なくとも2ヶ月間、空気中に(室温で)保存されたナノ粒子に生体分子をうまくコンジュゲートさせることが可能であること、及びナノP3がカーゴを固定化する能力は、室温で空気中で保管してからの最初の6ヶ月間は実質的に一定のままであることを示した。16ヶ月まで保存されたナノP3試料もまた、かなりの量のカーゴを結合する能力を保持しており、その保管期間後に観察された結合効率のわずかな減少は、単に溶液中のカーゴの濃度を増やすことによって克服できた。水中保存(室温)の場合、ナノ粒子中のラジカル密度は製造後1~2週間で70%減少する。ナノP3材料を製造後1~2週間室温で空気中に保管すると、ナノ粒子中のラジカル密度は44%しか減少しない。収集直後の真空条件下でプラズマチャンバ内のバイアルを密封することによって、そしてより低い温度でナノ粒子を保存することによって、コンジュゲーション前保管寿命を数ヶ月または数年まで著しく改善することができた。
【実施例】
【0250】
本開示は、以下の非限定的な実施例においてさらに説明される。
【0251】
材料及び方法:
ナノP
3の合成
図2に概説した手順を用いてナノ粒子を合成した。
【0252】
ナノP3粒子は、円筒形ステンレス鋼容量結合型高周波(RF)反応器中で合成した。Ebara PDV250及びターボ分子ポンプ(Edwards NEXT400)からなる二重ドライ真空ポンプシステムを使用して、該反応器を約10-6Torrのベース圧力まで排気した。アルゴン、窒素、及びアセチレンの反応性ガス混合物がプラズマ放電を持続させるために使用され、チャンバの上部に位置するシャワーヘッド様装置を通して導入された。各ガスの流速は、Allicat Scientificマスフローコントローラーによって個別に制御され、プラズマ生成前のフルレンジゲージ(PFEIFFER PKR251)によって測定された作動圧力は、特に明記しない限り、150mTorrで一定に維持された。チャンバとポンプシステムとの間にバタフライ型バルブを配置し、排気効率、したがって活性プラズマ中の種の滞留時間を制御するように調節した。13.56MHz(Eni OEM-6)周波数発生器によって供給されるRF電力を専用の整合回路を用いて上部電極に結合することによってプラズマ放電を発生させ維持した。ナノ粒子コレクタを、DC高電圧パルス発生器(RUP 6-25)に電気的に接続された第2の電極(RF電極から10cm離れている)に配置して、-1000V~0Vの範囲の特定のバイアス電圧を提供した。パルス周波数及び時間幅は、それぞれ3kHz及び20μsになるように選択した。
【0253】
発光分光法
プラズマによって放出された放射線は、ナノ粒子コレクタの真上のプラズマ領域と見通し線内に配置された光ファイバによって得られた。放電スペクトルは、UV-VIS-NIR分光計(約0.2nmのスペクトル分解能を有するOcean Optics HR 4000)によってモニターされ、200~1000nmの波長範囲をカバーするパーソナルコンピュータによって記録された。シグナルノイズ比の改善のため、積分時間を10スキャンで300msに設定し、各取得について平均化した。高分解能スペクトルが、1200溝mm
-1回折格子を備えたActon SpectraPro 2750分光計(Princeton Instruments,USA)を使用して得られ、50μmで開いた入口スリットに対して0.014nmの公称解像度をもたらす。放電発光スペクトルは、分光計の出射面と光学的に結合された1024×1024ピクセルアレイを有するPI-MAX(Princeton Instruments,USA)強化型電荷結合素子(ICCD)によって得た。ICCD露光時間は300μsであり、平均取得数は25~150の間で変動した。実験を通して全光学的設定を変えないようにした。プラズマ中のいくつかの種が関与する特定の放射遷移に関連した強度の時間的プロファイルを得るために、特定の測定を実施した(
図2)。
【0254】
X線光電子分光法
ナノ粒子の化学的特性評価は、半球形分析器及びAl Kα単色X線源を備えたSPECS-XPS(Germany)を使用してX線光電子分光法(XPS)により研究した。システムを、200Wの電力で90°の取り出し角で、約10-9Torrの一定圧力で運転した。試料の調査スペクトルを、1eVのエネルギーステップ及び30eVのエネルギーパスを使用して、50eV~1400eVのエネルギー範囲でスキャンした。C1s、N1s、及びO1sに関する高解像度スキャンを、0.03eVのエネルギーステップ及び23eVのエネルギーパスで記録した。CasaXPSソフトウェアを用いてピーク分析を行った。粒子中のこれらの元素の原子分率は、C1s、N1s、及びO1sピークの積分面積を計算し、それらが合計100%になる(すなわち、水素及び微量の他の元素を無視して)と仮定することにより決定された。ピークフィッティングは、各成分についてシャーリーバックグラウンド、及び同一の半値全幅を有する混合(convoluted)ローレンツ(30%)-ガウス(70%)線形状を採用することによって実施した。電荷補償は、約285eVの結合エネルギーでC1sピークにおいてC-C/C-H成分を割り当てることによって全てのスペクトルに適用した。
【0255】
フーリエ変換分光法
Vertex v70システムに統合され、ゲルマニウム結晶による20xATR対物レンズを備えたBruker Hyperion FTIR顕微鏡を用いて、減衰全反射モード(FTIR-ATR)でフーリエ変換分光法によって赤外スペクトルを記録した。各スペクトルは、4000cm-1~750cm-1の範囲の波数で4cm-1のスペクトル分解能で合計500スキャンを平均することによって得られた。下にある基板からのバックグラウンドシグナルを排除するために、スペクトルサブトラクション及びベースラインを適用した。
【0256】
走査型電子顕微鏡及びエネルギー分散型X線分光法
ナノ粒子を3kV~10kVの範囲の加速電圧で4~8.5mmの作動距離でZeiss ULTRA PLUS走査型電子顕微鏡を用いて画像化した。
【0257】
電子スピン共鳴分光法
ナノ粒子中の不対電子の検出は、Bruker EMXplus Xバンドスペクトロメーターを用いたESR分光法によって実施した。スペクトルは、3490Gの中心磁場、90msのサンプリング時間、3Gの変調振幅、105Hzの変調周波数、ならびにそれぞれ9.8GHz及び25mWのマイクロ波周波数及び電力で収集した。ナノP3材料を超純水に懸濁し、150μLの試料容積の石英ガラス製Suprasilフラットセル内に移した。定量的EPR分析は、ナノ粒子の二重積分スペクトルを既知のスピン線密度(約1013スピン/cm)の標準試料と比較することによって実施した。
【0258】
ゼータ電位
ナノP3及びコンジュゲート型ナノP3材料の表面電荷は、Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments,Germany)を使用して、使い捨て折り畳みキャピラリーセル(Malvern,DTS1070)中のゼータ電位を測定することによって決定した。平均値及び対応する標準偏差が計算された;n=3。
【0259】
In vivoイメージング
ナノP3を、ヌクレアーゼ不含水中で2.5μg/mlのPhotinus pyralis由来のルシフェラーゼ(abcam,L9506)に4℃で1時間コンジュゲートし、Bio RS-24ミニローテーターを用いて穏やかに撹拌した。200nmの金ナノ粒子(Cytodiagnostics;G-200)へのルシフェラーゼのコンジュゲーションも同様に実施した。インキュベーション後、ナノP3試料を、ヌクレアーゼ不含水中で1回の洗浄あたり5分間、16,100gでの遠心分離によって3回洗浄したが、金ナノ粒子は製造元の指示にしたがって3回均等に洗浄した。次に各試料を100μlの生理食塩水に再懸濁し、1mLのシリンジに移した。
【0260】
動物を4つの異なるグループに分けた:
(1)介入なし;
(2)ナノP3のみ;
(3)金ナノ粒子とルシフェラーゼ、及び
(4)ナノP3とルシフェラーゼ。
【0261】
次いで尾静脈注射の前にマウスの背部に創傷を作った。ルシフェラーゼの検出のために、それぞれの決められた時点で、D-ルシフェリン(Sigma-Aldrich;A1888)を各動物に皮下注射した。次いで、IVISシステムを介して創傷側で生物発光を検出した(露光時間:3分)。
【0262】
コンジュゲートを合成するための一般的な方法
ナノP3は、RT-PCRグレードの水(Life technologies,4387936)を含む組織培養フード内で無菌条件下でナノ粒子コレクタから収集した。ナノP3の濃度はNanoSight NS300によって測定した。ナノP3を所望の第2の種とインキュベートして4℃で1時間コンジュゲートを形成させ、Bio RS-24ミニローテーターを用いて穏やかに撹拌した。インキュベーション後、試料を16,100gで5分間の遠心分離により洗浄した。
【0263】
実施例1-ナノP3の合成
ナノ粒子ポリマー及び凝集体は、上記の「ナノP3の合成」のセクションで概説した方法を用いて調製した。アセチレン以外の他のモノマーから他のナノ粒子ポリマー及び凝集体を形成することができることが理解されよう。
【0264】
例えばアルキンの放出を用いてプラズマ体積中の炭化水素モノマーの重合を制御することによって、本発明者らは、官能性ナノ粒子ポリマー及び凝集体を設計及び収集し、それらの固定化能力を実証することができ、多官能性ナノキャリアが促進された。ナノ粒子ポリマー及び凝集体は、一例では、プラズマポリマー薄膜を堆積させるために以前に開発されたプラズマ重合反応器内で合成することができる(M.Santos,et al.,ACS Appl.Mater.Interfaces,8,9635-9650,2016;G.Yeo,et al.,ACS Biomater.Sci.Eng.,2(4),662-676,2016;その内容は参考として本明細書に組み込まれる)。ナノ粒子ポリマー及び凝集体の形成は、非侵襲性のin-situ発光分光法を用いてリアルタイムでモニターすることができる(
図2)。小さなナノ粒子ポリマー(約10nm)の形成は、最初に全体のプラズマ発光強度が32%増加することによって明らかになった(
図2「クラスタ凝集前」)。放電中に静電的に浮遊している間、ナノ粒子ポリマーは、次いで急速に凝縮して高度に球形の凝集体(約100nm)を形成した。凝集段階は、放電放出の急激な増加及び収集された凝集体の密度の5倍の増加と同時に起こる(
図2「クラスタ凝集中」)。粒子に作用する正味の力が該粒子をプラズマから押し出すと、放電放出が成長サイクルの始めに記録されたベースライン値に戻る。この除去段階の間に、落下する粒子は、ウェル型のパルスバイアスコレクタへと引きつけられる。これにより明確に定義された単分散サイズのナノP
3の制御された収集が可能になる。これまでに報告されているアルキンの放出の振動は、時間とともに減衰することを特徴とするが(J.Winter,et al.,Plasma Sources Sci.Technol.,18 034010(8pp),2009)、本発明者らは、反応器にN
2を添加することによりナノ粒子形成を安定化し(方法参照)、ナノ粒子の中断のない形成及び収集を可能にした。
【0265】
図2は、プラズマ/気相におけるナノ粒子ポリマー及び凝集体の形成、成長、及び収集を示す概略図を表す。挿入図は、ナノクラスタ凝集の前及び間のプラズマの画像、ならびに収集された凝集体のSEM顕微鏡写真を示す。
【0266】
ナノ粒子ポリマー及び凝集体の特性を調節し、収集収率を最適化するために、プラズマを一連の異なるガスフロー、RF電力、及び圧力の条件で維持した。本発明者らは、以下を調節することによって、ナノ粒子ポリマー及び凝集体の収率を最大化した:
(i)放電に結合した電力;
(ii)放電圧力;
(iii)モノマー流速;及び/または
(iv)コレクタ寸法。
【0267】
ナノ粒子ポリマー及び凝集体の表面積/体積比は、凝縮して球状、固体状、及び非晶質の凝集体を形成する最初に形成されたナノ粒子ポリマーのサイズの減少により、より速いモノマー流速で最大となった。RF電力の増加により、低い多分散指数を維持しながら、より高い収率のナノ粒子及びより小さな凝集体の作製もまた可能となった。ナノP
3合成中にコレクタウェルの外側及び内側でナノP
3に作用すると理解されている力を
図5に示す。左側の粒子の概略図は、基板ホルダーの上に形成されたプラズマシースの近くの垂直な平衡位置を想定している。この位置は、静電力、及び重力、中性抗力(neutral drag)、及びイオン抗力の垂直成分との間のバランスによって定義される。反応器の側壁へのイオンの流束によるイオン抗力の水平成分は、最終的にはナノ粒子が基板表面に到達し得る前にナノ粒子を活性プラズマから引っ張り出す。反対に、正のプラズマ電位がウェルにかかると、右側の粒子が捕捉される。粒子のサイズが大きくなるにつれて、重力及び抗力が静電気力に勝り、該粒子がウェルの下部に向かって引っ張られる。イオン抗力の水平成分は、ウェル内部で互いに打ち消し合う。
【0268】
粒子凝集は、ウェルの高さ(h)及び半径(r)によって調節され得る。
図6パートAは、プラズマ陽性電位がウェル全体に向かって完全に浸透することができないことを示す。粒子はクーロン反発力を介して活性プラズマ内で互いに反発するが、ウェル内のアフターグロー領域の進行は、それらが下部に達する前に粒子凝集を引き起こす。挿入図は、h
1=17mm及びr
1=7.8mmのウェルに収集されたナノP
3凝集体のSEM画像を示す。
図6のパートBは、アフターグロー領域の広がりがh
1=11mm及びr
1=3.4mmのウェル内では減少し、最小限の凝集でナノP
3の収集を可能にすることを示す。したがって、コレクタの寸法は、好ましいサイズのナノ粒子及び凝集体を生成するために変えることができる。
【0269】
図7の画像Aは、ナノP
3の製造中に取得したプラズマの全体的な発光スペクトルを示す。本明細書では、粒子を、容量結合型高周波反応器内で、励起周波数13.56MHz、印加電力50W、及び全ガス圧力80mTorrのアセチレン(炭素前駆体)、窒素、及びアルゴンの反応性混合物を用いて作製した。粒子コレクタは、-500Vの電圧及び3kHzの周波数で20μsのパルスを用いてバイアスをかけた。
【0270】
放電中のいくつかの放射遷移に関連する分子発光帯及び原子線の時間プロファイルは、
図7の画像Bに示される。プラズマスペクトルの時間発展は、定常状態の振る舞いに従わないが、明確に定義された長い時間スケールでの変動を示す。観察された振動は、ナノ粒子の形成及び成長のサイクル、ならびにそれらのその後のプラズマ体積からの除去に関連している(数字は、
図2に示された異なる段階に対応する)。分子イオン及び他の非荷電種に関連した発光強度の比の時間的プロファイルは、プラズマスペクトルの時間的プロファイルと逆位相にあることが示される(
図7,画像C)。このことは、イオンがクラスタ凝集及び急速成長段階の間にさらに消費され得ることを示している。
【0271】
図8の画像Aは、コレクタの単位面積あたりのナノ粒子の数、ならびに放電体積中でのナノ粒子形成及び成長中の異なる時点で380nmで測定された発光強度を示す。ナノ粒子密度及び発光強度の両方における76秒~85秒の間の急激な増加(
図2の段階2)は、小さなクラスタが核を形成し、より大きな球形のナノ粒子を形成する急速な凝集段階を示す。放出強度は、除去段階(3)の間に減少し、そこでは収集されたナノ粒子の数が変化しないことによって示唆されるように、さらなる粒子が生成されない。
図8の画像Bは、動的光散乱法によって測定された放電中の異なる時点で収集されたナノ粒子の粒度分布を示す。急速凝集段階(≧76秒)の間及び後に収集されたナノ粒子は、より小さいクラスタの完全な核生成のために、より狭い粒度分布を特徴とする。
【0272】
図9はまた、ナノ粒子コレクタに印加されたバイアスの関数としてクラスタ凝集(段階2;成長段階)及び粒子除去(段階3;除去段階)の期間を示す。
【0273】
本明細書に記載の方法を使用したナノ粒子の作製は、1つ以上のプロセスパラメータ及びプラズマが点火された後に粒子が収集される時間に応じて、粒子成長速度の微調整を可能にする。
図10の画像Aは、モノマー流速の関数としてSEMによって測定された粒径を示す。したがって、本明細書に開示されるナノ粒子ポリマー及び凝集体のサイズは、それらが作製されるプロセスの1つ以上のパラメータを変えることによって調節することができる。例えば、本明細書に開示されるナノ粒子ポリマー及び凝集体のサイズは、流速を低下させることによって増大させることができる。逆に、本明細書に開示されるナノ粒子ポリマー及び凝集体のサイズは、流速を増加させることによって減少させることができる。本明細書に開示されるナノ粒子ポリマー及び凝集体のサイズは、それらが作製されるプロセスの1つ以上の他のパラメータを変えることによって調節することができることが理解されよう。例えば、本明細書に開示されるナノ粒子ポリマー及び凝集体のサイズは、高周波電力を減少させることによって増大させることができる。逆に、本明細書に開示されるナノ粒子ポリマー及び凝集体のサイズは、高周波電力を増加させることによって減少させることができる。
【0274】
ナノ粒子サイズを制御することは、異なるナノメディシン用途における特定の調整に重要である。例えば、粒子注入後の生体内分布及び薬物動態は、ナノ粒子のサイズに依存することが知られている。収集したナノ粒子の粒度分布においてパルスバイアス粒子コレクタを使用することの重要性は、
図10の画像Bにさらに例示されている。コレクタにバイアスをかけること(
図10,画像B)は、バイアスをかけられていないコレクタ(
図10,画像C)で回収されたより多分散したサイズのナノ粒子と比較して、収集されたナノ粒子のサイズ選択性を改善することが判明した。本明細書で定義される生成物の別の有益な特徴は、ナノ粒子材料の粒度分布を厳密に調整する能力である。SEM画像は、ナノ粒子が非常に狭い粒度分布を有し、全てがほぼ同じ直径を有することを示している(
図10,画像D)。粒子の単分散性粒度分布は、本明細書中に記載する方法によって作製されたナノ粒子の固有の特徴である。
【0275】
加えて、ナノ粒子は、現在入手可能な球状のナノ粒子プラットフォーム(例えば、球状の金ナノ粒子及び他の球状の金属またはポリマーのプラットフォーム)と比較して、大きな表面積対体積の比を特徴とする。表面積の増加は、滑らかな球形表面と比較して、小さなクラスタが凝集し、より大きな球形のカリフラワー様粒子が形成されることを伴う製造プロセスに直接起因する。プラズマパラメータを調節することによって、ナノ粒子の表面積を調整することが可能である。
図10の画像Dは、異なる炭素前駆体の流速を使用した異なるプラズマの運転で合成されたナノ粒子を示す。この実験では、他の全てのプラズマパラメータ(例えば、圧力、電力、及びバッファガスの流速)は一定のままであった。モノマー流速を増加させると(左から右へ)、より粗い表面を有するナノ粒子、すなわちより大きな表面積を有する粒子が生成された。したがって、本明細書に開示されるナノ粒子ポリマー及び凝集体の表面粗さは、それらが作製されるプロセスの1つ以上のパラメータを変えることによって調節することができる。例えば、本明細書に開示されるナノ粒子ポリマー及び凝集体の表面粗さは、モノマー流速を増加させることによって増加させることができる。逆に、本明細書に開示されるナノ粒子ポリマー及び凝集体の表面粗さは、モノマー流速を減少させることによって減少させることができる。
【0276】
炭素源分子の流速を増加させると、それらの密度が増加し、その結果クラスタをプラズマから引き離す、より大きな中性抗力が生じる。加えて、これらの炭素種の解離及びイオン化の減少もまた、プラズマ中でのそれらの滞留時間の減少により予期される。その結果として、初期クラスタの成長は、それらが凝集してより大きな粒子を形成することが可能になる前の早い段階で抑制される。したがって、より速い流速領域は、クラスタのさらに急速な凝集を引き起こし、より小さいサイズであるがより量の多いクラスタを特徴とするナノ粒子を形成する。本明細書に開示されるようなより小さいナノ粒子もしくは凝集体、及び/またはより粗い表面を有するナノ粒子もしくは凝集体は、ナノ粒子及び/または凝集体の表面積/体積比を増大させることができることが理解されよう。したがって、本明細書に開示されるナノ粒子及び/または凝集体の表面積/体積比は、それらが作製されるプロセスの1つ以上のパラメータを変えることによって調節することができる。例えば、本明細書に開示されるナノ粒子及び/または凝集体の表面積/体積比は、モノマー流速を変えることによって調節することができる。
【0277】
大きな表面対体積比は、特に治療用途におけるナノ粒子にとって望ましい特徴であり、ナノ粒子あたりのより高い薬物担持容量を可能にし、薬物効率を高め、これにより毒性を減らす。ナノ粒子の有効表面の改善はまた、標的細胞の認識のためのターゲティングリガンド、制御送達のための刺激感受性剤(stimulus-sensitive agents)、造影剤及び治療剤、またはさらには単一の安定な構築物中の複数の薬物によるさらなる表面官能化(薬物担持を損なうことなく)のための余地を残す。例えば医用イメージングの分野では、マルチモダリティイメージングに対する需要が高まっている。マルチモーダルイメージング技術は、解剖学的イメージング技術(構造の詳細用)と機能的イメージング技術(機能及び形態の詳細用)を、時間及び空間における同期画像取得のための独特なプラットフォームへとまとめることを目的とする。したがって、単一のプラットフォームに全ての必要な画像造影剤を組み込む必要がある。ナノ粒子ポリマーまたは凝集体の表面は、いくつかの造影剤で官能化することができ、そのより大きな表面積に起因して、シグナル及び解像度の増強を実現することができる。最後に、除去及び収集段階中のナノ粒子のアグロメレーションは、適切なコレクタ形状を選択することによって制御することができる。ウェル深さが17mmのコレクタを使用するとミクロンサイズの凝集体が形成されることが判明し(
図10,画像E,右側)、ウェル深さがわずか3mmのものを使用すると凝集体のない試料が収集される(
図10,画像E,左側)。
【0278】
表面の化学的性質及び化学的コンジュゲーション能力の分析
アセチレン/窒素/アルゴンプラズマ放電で作製されたナノ粒子の場合、窒素の存在下でアセチレンを使用して作製されたナノ粒子及び凝集体は、主に炭素及び窒素で構成されている(
図11)。水素も存在すると予想されるが、この方法では検出できない。ナノ粒子の表面元素組成及び結合配置は、X線光電子分光法を用いてより詳細に分析した。結果は、それぞれ65.6%、27.6%、及び6.8%の相対濃度での炭素、窒素、及び酸素の存在を明らかにする。したがって、本明細書に開示されるナノ粒子及び/または凝集体は、それぞれ60~70%、20~30%、及び5~10%の相対濃度で炭素、窒素、及び酸素を含み得る(例えば、X線光電子分光法によって決定されるように)。
【0279】
図11の画像A及びBは、それぞれ高解像度XPSのC1s及びN1sのコアレベルとそれに対応するデコンボリューションの詳細を示す。284.9eV、286.3eV、287.8eV、及び289.4eVに位置するC1sピークに4つの成分を割り当てることができる。最も低いエネルギーの電子結合エネルギーに対応する第1のピークは、C-H結合と同様に非晶質ネットワークにおける純粋な炭素配置に対応し、第2及び第3のピークは、種々の環境におけるC-O、C=O、C-N、C=N、ならびにニトリル基などの窒素及び酸素原子との異なる炭素混成に対応し、第4のピークは種々のCOO化合物に対応する。XPS N1sのピーク(
図11B)もまた4つの異なる成分にデコンボリューションすることができる。第1のピークは398eVに位置し、ピリジン-N型化合物に見られるような2個の炭素原子に結合した窒素;またはsp
3混成炭素原子に結合したsp
3窒素原子が割り当てられる。399.2eVを中心とするピークを有する第2の成分はニトリル基及びアミン基の両方が割り当てられる。400.4eVを中心とする第3のピークは、グラファイト-N構造の場合のように3個のsp
2炭素原子に三角形結合した窒素、または非晶質CNネットワークの2個のsp
2及び1個のsp
3炭素原子に結合した窒素原子に起因する。402.0eVの第4のピークは一酸化窒素化合物に起因する。
【0280】
減衰全反射モード(FTIR-ATR)で測定されたフーリエ変換赤外分光法は、XPSによって得られた結果を裏付ける。
図11の画像Cは、3750cm
-1~750cm
-1の波数範囲で得られた典型的な赤外スペクトルを示す。スペクトルは、3600cm
-1~2800cm
-1ならびに1750cm
-1~1050cm
-1との間に位置する2つの広い吸収帯を特徴とする。最初の帯は、O-H(約3500cm
-1)、NH(約3300cm
-1及び約3200cm
-1)、及びC-H(約2880cm
-1、約2935cm
-1~約2970cm
-1)の伸縮振動に起因する一方、第2のより広いバンドは、C=O(約1715cm
-1)、C=C(1640cm
-1~1680cm
-1)、C=N(1640cm
-1~1690cm
-1)の伸縮振動、及びNH(約1500cm
-1)及びC-H(約1450cm
-1~約1380cm
-1)の曲げ振動、芳香環中のC-C伸縮振動(約1450cm
-1)、及びN-O(約1340cm
-1)、C-N(約1250cm
-1)、及びC-O(1200cm
-1~1000cm
-1)の伸縮振動に起因する。約2170cm
-1に位置するピークは、ニトリル基の伸縮振動に起因し、約900cm
-1のピークは、不飽和炭素集合体の面外振動に起因する。
【0281】
ナノ粒子について測定されたXPS及びFTIRスペクトルは、金属基板上に堆積及び成長した、同様のプロセス条件で調製された炭素系薄膜において測定されたスペクトルに似ている。これらの薄膜は、様々な埋め込み型の生物医学的装置上に堆積され、異物を覆い隠すために使用され、このようにして被覆された埋没物の生体適合性を高める。さらに、これらの膜は、埋め込まれたラジカルによって生物活性タンパク質及び他の生体分子の共有結合的固定化が可能であることもまた示された。
【0282】
粒子成長は、プラズマ中に形成されたイオン、モノマーラジカル、及び官能基の流入によって促進される。さらに、CO、NO及びOH基の存在は、ナノ粒子が真空から除去され、実験室の雰囲気に曝されるとすぐに、大気中の酸素が活性ラジカルと反応していることを示す。したがって、本発明者らは、ナノ粒子のCN:H非晶質構造中に不対電子が存在すると仮定している。
図12の画像Aは、2sccmのアセチレン流速を使用した場合に製造されたナノ粒子の典型的なEPRスペクトルを示す。約3495G(2.004のg因子)を中心とする広い共鳴ピークは、ナノ粒子内の不対電子(ラジカル)の存在を裏付ける。
図12の画像Bは、異なる周囲条件で保存されたナノ粒子のラジカルキネティクスを示す。24℃の水中に保存されたナノ粒子は、プラズマから収集された後、最初の24時間以内に50%のラジカル減衰を示した。水中に4℃で保存した場合は、同じ50%のラジカル減衰は150時間後に初めて観察された。結果は、初期ラジカル密度がプラズマから収集されてから240時間後に半分にしかならなかった周囲温度においてさえも、ナノ粒子が空気中に保存された際にラジカル安定性がより高いことを示唆する。したがって、本明細書に開示されたナノ粒子及び凝集体は、液体中での保管に特に適している。
【0283】
結果は、凝集体の表面の化学的性質がラジカル及び/または部分媒介反応によって変換され得ることを示唆する。ラジカル拡散は温度活性的であり、酸素との反応で最高潮に達する。表面酸化は、プラズマチャンバ内でより高いベース圧力でナノ粒子を生成することによって、または空気中でナノ粒子を曝露してその後保存することによって引き起こされる。凝集体表面は、C2H2/Arプラズマ中のN2を単純に添加することによってさらに官能化することができる。窒素は、CN混成の形態、プラズマ/気相に見られるラジカル分子、及び表面アミン官能基の形態でナノ粒子に組み込まれる。
【0284】
不対電子の存在は、コンジュゲーションを得るために化学リンカー分子及び多段階湿式化学を使用する必要なく、活性形態の様々な生体分子との強固な共有結合的コンジュゲーションを可能にすることによって、ナノP3材料を多機能かつ生体適合性のナノキャリアとして使用するための道を開く。これは、商業的な文脈において、重要なプロセスの簡略化、環境への影響の低減、及び大幅なコスト削減を意味する。興味深いことに、ナノ粒子ポリマー及び凝集体中の不対電子は、超偏極技術による磁気共鳴画像法(MRI)の観点から調査することができる固有の角運動量源である。超偏極は、それらの角運動量を特定の核に移動させることによって高度にスピン偏極された不対電子を活用し、化合物をMRI造影剤として使用するのに適したものにする。したがって、本明細書に開示されるナノP3材料は、任意の追加の造影剤をそれにさらにコンジュゲートすることなく造影剤として使用され得る。加えて、プラズマ放電による本発明の作製方法の多様性は、種々の炭化水素前駆体の容易な導入を可能にし、これは、特定用途に応じて、ナノ粒子にさらなる磁性元素または他の戦略上重要な元素を導入するために使用することができる。
【0285】
ナノ粒子ポリマー及び凝集体の特性を調整するために、多くの変数を変更することができ、結果として得られる材料への影響が調査される。
【0286】
図13では、プラズマに結合した様々な動作圧力及び電力に対応する、ナノ粒子形成中のCNラジカル分子及びN
2
+分子イオンに関連する発光強度の時間的プロファイルが示されている。他の全てのパラメータは、この一連の実験内で固定された。凝集は、N
2
+分子イオンの最大発光強度及びCN集団の最小発光強度に対して生じた。結果は、CNラジカル分子がナノ粒子形成中にさらに消費されることを示唆する。概して、振動の周波数は、電力及び圧力の増加と共に増加し、これはナノ粒子がより速い速度で作製されることを示している。さらなる試験において類似の条件を利用したが、以下:使用される様々な値のアセチレン流速(1~8sccm)、150mTorr、ならびにAr及びN
2ガスの固定流速3~10sccm、ならびに各sccmで放電に結合した固定された50W、75W、または100W(それぞれ
図14、15及び16)も利用した。
【0287】
図17は、50、75、及び100Wの結合型高周波電力について、アセチレン流速(画像A)及び圧力(画像B)の関数としての振動の周期を示す。他の全てのプラズマパラメータは一定に保たれた。各合成運転の期間は、窒素分子イオンの発光強度の3つの連続する最大値間の時間差を平均することによって計算した。より低いアセチレン流速では、振動の周期は結合型電力によって高度に調節される。ナノ粒子作製速度の差は、モノマー流速の増加にとってさほど重要ではなく、モノマーがさらに過剰になることはナノ粒子作製に寄与しないことを示している。
【0288】
概して、結果は、ナノ粒子作製について記述する関連する巨視的パラメータが、∝W/F(式中、Wは放電に結合した電力であり、Fはモノマー流速である)であることを示している。加えて、より速いモノマー流速では、プラズマ中の前駆体分子の滞留時間が減少し、その結果、より低い割合のフラグメント化モノマー分子も生じる。粒子がプラズマからより急速に押し出されるので、流速の増加に伴うガス抵抗力の増加も急速な成長サイクルの原因となるであろう。振動の周期は、ナノ粒子合成中に放電が維持される圧力を変えることによってさらに調節することができる。ナノ粒子収率は、モノマー流速及びプラズマに結合したRF電力の関数として
図17(画像C)に示される。概して、結果は、収率が、印加されたRF電力と共に増加し、100W及び6sccmに対して14.4g/hr m
2で最大になることを示す。研究された全てのRF電力に対して、より速いモノマー流速においてより低い値に減少する前に、収率プロファイルは最大値をとることを特徴とする。より速いモノマー流速において収集されたナノ粒子の数の減少は、体積重合が表面重合に抑制される放電中の遷移に関連している。この遷移に影響を与える重要なパラメータは、放電体積中のモノマーの滞留時間である。最大収率点を下回る流速において、供給される全てのモノマーを効果的にフラグメント化するのに十分なモノマーあたりのエネルギーがあり、増加するガス流は放電体積内で利用可能な反応性フラグメントの数を増加させる。しかしながら、最大収率点を超える流速では、電力は、もはや効果的なフラグメント化には十分ではないため、放電体積中にナノ粒子を形成するのに十分反応性であるフラグメント集団の割合が減少し、増加する非反応性フラグメント集団の存在が、体積中の粒子形成速度を減少させる。
【0289】
図18は、50、75、及び100Wで1~8sccmのモノマー流速範囲内でのナノ粒子作製中のCNラジカル分子及びN
2
+分子イオンの最大及び最小発光強度を示す。全体として振動の振幅は流速の増加と共に減少する。
【0290】
図19は、様々な値の窒素流速についてのナノ粒子形成中のCNラジカル分子及びN
2
+分子イオンに関連する発光強度の時間的プロファイルを示す。他の全てのパラメータは、この一連の実験内で固定された。
【0291】
図20の画像Aは、ナノ粒子ポリマー及び凝集体作製中の振動周期におけるN
2の影響を示す。振動周期は、N
2含有量と共に著しく減少し、CNラジカルがナノ粒子成長において重要な役割を果たすことを示唆している。画像Bは、プラズマ反応器内のナノ粒子に作用する、より高いガス抵抗力の結果として、窒素流速の増加と共にナノ粒子サイズが減少することを示す。したがって、本明細書に開示されるナノ粒子及び凝集体のサイズは、窒素などのキャリアガスの流速を変えることによって調節することができる。また、画像Cは、ナノ粒子ゼータ電位がプラズマ反応器内のより高い窒素分率と共に増加することを示す。窒素分率が高いと、ナノ粒子構造内に(CN結合またはアミン官能基のいずれかの形態で)組み込まれた全体的な窒素が増加する。正電荷を帯びたアミン表面官能基(例えば、
図24に示されるように)は、より高い窒素分率で観察される増加したゼータ電位の原因とすべきである。ナノ粒子サイズ(上部)及び収率(下部)における放電への結合電力の影響も
図22に示されている。
【0292】
図21は、粒子を含む溶液のpHの関数としてのナノP
3粒子のゼータ電位を示す。結果は、溶液中の陽イオン及び陰イオンの濃度を調整することによって、ナノP
3材料を囲む電荷を容易に調節することができることを示している。この特徴は、ナノP
3材料と高電荷の第2の種との間で、または強い双極子モーメントによってコンジュゲートを作製するときに特に有用である。等電点は、異なるプラズマパラメータの下でナノP
3材料を作製することによっても調整することができる。したがって、本明細書で開示される方法は、本明細書に開示されるように第2の種をナノ粒子または凝集体にコンジュゲートするときにpHを調節することを含み得る。pHは、コンジュゲートされる第2の種の電荷に応じて増減させることができる。
【0293】
図23は、異なる結合電力及びモノマー流速によって調製されたナノ粒子上の炭素、窒素、及び酸素の割合を示す。画像Aは、固定アセチレン流速(例えば2sccm)で100W及び75Wで調製されたナノ粒子が実質的に同じ元素分率を有することを示す。結果は、同じ化学構造を持つナノ粒子が、12.5%のサイズ変動範囲で、異なる収率で製造できることを示唆している(
図20)。結果は、ナノ粒子内の炭素/窒素比がより速いモノマー流速において増加することも示している。画像B~Gは、それらの合成後の異なる期間におけるナノ粒子元素分率を示す。概して、結果は、保管期間と共に窒素含有量が減少すること(例えば、
図23画像Cでは1日目に最大38.2%~9日目に34.2%)及び炭素酸素分率の増加を示し、後者は表面酸化によるものである(
図25)。
【0294】
図24は、異なる保管期間でのナノ粒子ポリマー及び凝集体に関するFTIR測定値を示し、XPSで観察された窒素の減少がニトリル(C≡N)結合での減少によって主に引き起こされることを明らかにしている。約3250cm
-1の広いピークは、表面アミン官能基の存在を示す。
【0295】
アセチレン及びアルゴンのみの放電(窒素なし)で作製されたナノ粒子のさらなるFTIR測定値を
図25に示す。測定により保管期間と共にCO結合が著しく増加したことが確認され、ナノ粒子ラジカル密度の減衰とも一致する。
【0296】
実施例2-ナノP
3の蛍光特性
定常状態発光分光法を使用して、本発明者らは、水溶液(または細胞培地)中に分散したナノP
3がUV-VIS-NIR範囲内で自己蛍光性であることを見出した。マイクロプレートリーダーを使用して、乾燥(合成されたまま(as synthesized))及び再懸濁した(PCRグレードの水または細胞培地)ナノP
3の両方の蛍光発光/励起スペクトルを測定した。
図26の画像Aは発光プロファイルが励起エネルギーに依存することを示し、
図26の画像Bは強度が溶液中のナノP
3濃度と共に著しく増加することを示す。
図26の画像Cは、ウェルコレクタにおける合成されたままの乾燥ナノP
3の蛍光分布を示す。マッピングモードで各ウェルをスキャンすることによって、ウェル内のナノP
3の分布を測定した。30×30マトリックスを使用し、900ポイント/ウェル分解能を得た。励起モノクロメーター及び発光モノクロメーターをそれぞれ360nm及び430nmに設定し、ゲインを2200に、焦点重量を9mmに設定した。
図26の画像Dは、ナノP
3の蛍光特性が、青色、緑色、黄色、及び赤色のチャネルで測定された共焦点蛍光顕微鏡によって確認されたことを示す。この実験では、合成パラメータは、アセチレン、窒素、及びアルゴンに対してQ=3、10、及び3sccm、作動圧力150mTorr、ならびに高周波電力50Wに設定した。
【0297】
実施例3-ナノP
3の蛍光特性パート2
マイクロプレートリーダーを使用して、乾燥(合成されたまま)及び再懸濁した(PCRグレードの水または細胞培地)ナノP
3の両方の蛍光発光/励起スペクトルを測定した。
図27の画像Aは、最大ストークスシフトが360nmの励起波長で80nm、600nmの励起で25nmに減少したことを示す。ストークスシフトは、励起波長を対応する発光波長から差し引くことによって計算された。
図27の画像Bは、ナノP
3蛍光の強度が溶液中で経時的に増加することを示し、これは、粒子表面へのラジカル拡散によって引き起こされる連続的な表面酸化と相関していた。この実験では、合成パラメータは、アセチレン、窒素、及びアルゴンに対してQ=3、10、及び3sccm、作動圧力150mTorr、ならびに高周波電力50Wに設定した。
【0298】
実施例4-ナノP
3に結合した分子カーゴの定量化
本発明のナノP
3は多くの利点を提供する。ナノP
3によって与えられる利点の一例は、有効担持量を保持するために使用される凝集体の数によって有効担持量を適合または最適化することができることである。本発明者らは、ナノP
3表面に結合した分子の総数が最終的にはナノP
3表面積及びカーゴの分子量との比率に依存することを見出した(
図28)。インキュベーション後にナノP
3に結合した分子カーゴの量を、ナノP
3の吸光度及び/または蛍光測定を用いて計算した-カーゴ試料及びそれらの対応する洗浄液(カーゴ=2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル(DPPH)、インドシアニングリーン(ICG)、パクリタキセル-Oregon Green 488(パクリタキセル)、CY5-CPKKKRKV-NH2(siRNA)、及びヤギ抗ラットIgG-Alexa647(IgG))。全体的に見て、分子量の増加とともに、ナノP
3に結合した分子の数は著しく減少した。この実験では、プラズマパラメータは、アセチレン、窒素、及びアルゴンについてQ=3、10、及び3sccm、150mTorr、ならびに50Wに設定した。ナノP
3(10
9ナノP
3/mL)とカーゴとのインキュベーションは、室温でRT-PCRグレード水(pH=7)中で1時間実施した。
【0299】
実施例5-ナノP
3に結合した分子カーゴの定量化
図29は、結合カーゴの量が溶液中のそれらの濃度と共に増加することを示す。薬物(パクリタキセル)、造影剤(インドシアニングリーン;「ICG」)、及びターゲティングリガンド(IgG)による例示は、それぞれ2.3μg、2.9μg、及び0.8μgで表面飽和を示した。この実験では、プラズマパラメータは、アセチレン、窒素、及びアルゴンについてQ=3、10、及び3sccm、150mTorr、ならびに50Wに設定した。ナノP
3(10
9ナノP
3/mL)とカーゴとのインキュベーションは、室温でRT-PCRグレード水(pH=7)中で1時間実施した。
【0300】
実施例6-ナノP
3の結合キネティクス
単純なナノP
3コンジュゲーションプロセスに関連する結合キネティクスは、異なるインキュベーション時点及び温度で結合カーゴの量を測定することによって評価することができる。ナノP
3材料を、実施例5で計算された正確な量のインドシアニングリーン(ICG)とコンジュゲートさせて、単層、すなわち単一のナノP
3粒子(半径99nm)上の1.9×10
6のICG分子においてナノ粒子表面を飽和させた。
図30は、総カーゴの90%が24℃でのインキュベーション後の最初の30秒以内にナノP
3の表面に固定化された一方、より低い温度(4℃)でのインキュベーションは同じ時点で60%の結合をもたらしたことを示す。両方の条件に対して、インキュベーション後5分以内に表面飽和が達成された。この実験では、プラズマパラメータは、アセチレン、窒素、及びアルゴンについてQ=3、10、及び3sccm、150mTorr、ならびに50Wに設定した。ナノP
3(10
9ナノP
3/mL)とICGとのインキュベーションは、室温でRT-PCRグレード水(pH=7)中で1時間実施した。
【0301】
実施例7-ナノP
3の保管寿命
ナノ粒子プラットフォームが臨床用途に適用可能であるためには、長い保管寿命及び官能化への容易な経路が必要条件である。ナノP
3は、リンカー化学または長いインキュベーション期間を必要としない、費用及び時間効果の高いナノ粒子プラットフォームをもたらす。テンプレート分子としてインドシアニングリーン(ICG)を用いて、長期間保管したナノP
3の結合効率を測定した。
図31は、ナノP
3がカーゴを固定化する能力が、室温で空気中に保存されてから最初の6ヶ月間は実質的に一定のままであることを示す(
図31)。最大16ヶ月まで保存された試料については、結合効率において28%の減少(有意ではない)が観察された。しかしながら、溶液中のICGの濃度を増加させることによって、ナノP
3の表面を完全に飽和させることは依然として可能であった。低温、真空、または他の非反応性環境を含む、代替的な保管方法を採用することによって、場合により長期の保管寿命が実現する。プラズマパラメータは、アセチレン、窒素、及びアルゴンについてQ=3、10、及び3sccm、150mTorr、ならびに50Wに設定した。ナノP
3(10
9ナノP
3/mL)とICGとのインキュベーションは、室温でRT-PCRグレード水(pH=7)中で1時間実施した。
【0302】
実施例8-ナノP3に結合したカーゴはその活性を保持
インドシアニングリーン(ICG)は、それぞれ805nm及び830nmでの発光波長及び励起波長を有する蛍光色素である。このスペクトルウィンドウにおける組織の吸光度特性が低いために、ICGは医療診断のために臨床で広く使われている。しかしながら、ICGは、in vivoでの短い半減期循環を特徴とする。
【0303】
図32は、ICGが、ナノP
3に結合した場合、水溶液中で著しく長期間にわたってその活性を保持することを示す。ナノP
3表面へのICGの結合は、溶液中の遊離ICGと比較して、780nm~840nmの吸光度ピークの60nmのレッドシフトによって確認された。遊離ICG及びICGコンジュゲート型ナノP
3のVIS/NIRプロファイルは、小型カーゴ(<1000Da)の分解がナノP
3に固定化されると著しく遅延することを確認した。プラズマパラメータは、アセチレン、窒素、及びアルゴンについてQ=3、10、及び3sccm、150mTorr、ならびに50Wに設定した。ナノP
3(10
9ナノP
3/mL)とICGとのインキュベーションは、室温でRT-PCRグレード水(pH=7)中で1時間実施した。
【0304】
実施例9-ナノP3へのカーゴの結合はpHを変えることによって調節することができる
検出のためにCy-5蛍光標識に結合した正荷電を帯びたペプチド配列(Cy-5-CPKKKRKV-NH2)を用いて、高荷電カーゴへのナノP3の結合も調べた。
【0305】
このペプチド配列は、細胞核を標的とすることができる核局在化配列として使用されることが多い。この核標的化能力は、リジン(K)及びアルギニン(R)を含む複数の極性(カチオン性)アミノ酸の存在によって主に推進される。
図33は、中性pHでのナノP
3とペプチドの最初のインキュベーションが、より中性のカーゴについて観察された予期された強固なコンジュゲーションをもたらさなかったことを示す。高度に正荷電を帯びたペプチドへの結合には、溶液のpHを10に上げることが必要であった。pHが上がると、ナノ粒子の表面基は、pH>8で徐々に脱プロトン化され、溶液が高アルカリ性媒体へと移ると、粒子はそれらの等電点に到達し、徐々に負に帯電するようになる。そのような状況では、ペプチドはナノP
3の表面に引き寄せられ、続いて物理的接触により固定化される。結合ペプチドを含む溶液のpHが中性に戻ったとき、ペプチドは結合したままであった。これらの結果は、一般に溶液pHの操作を用いて荷電リガンドの結合を高め、該荷電リガンドが双極子モーメントを有する場合には、場合によりそれらを表面上に配向させることができることを実証する。
【0306】
実施例10-ナノ粒子ポリマーの凝集及び溶解度
ナノ粒子ポリマー凝集体は、以下のように異なるpHでリン酸緩衝液(PB)中で試験された。
【0307】
ナノ粒子材料を、pH2.5~pH12の範囲の異なるpHで濾過したPB(0.2μMシリンジフィルター)を用いて、組織培養フード内の無菌条件下で粒子コレクタから収集した。濾過水を用いて対照ナノ粒子材料を収集した。フローサイトメトリー(Beckman-Coulter FACSVerse)を使用して、試料を3分間、または合計イベント数が10,000に達するまで分析した。ナノ粒子ポリマーの凝集は、前方及び側方光散乱の観察を介して、別々に検証された非凝集ナノ粒子ポリマーの試料に対して適切なフィールドをゲートすることによって定量した。各測定値は、ナノ粒子の全集団100%に正規化した。
【0308】
ナノ粒子の溶解度及び溶出性は、pH2.5~pH12の範囲の異なるpH値で水及び様々な緩衝液中で試験した。個別に確認した単分散のナノ粒子の集団を水中の10%SDSに再懸濁したものに基づいて、「凝集なし」から「主要な凝集」までの集団をゲートするフローサイトメトリーによって分析を行った。異なるナノ粒子懸濁液の分析は、水がナノ粒子の単分散性にとって最適な溶液であることを明らかにした(
図34,画像A)。試験した全ての塩含有溶液は、pH2.5で良好な単分散性が観察される著しく高い凝集を示した(
図34,画像A)。理論に拘束されることを望むものではないが、この挙動を推進する特定のメカニズムは、ナノ粒子の電荷及びそれらが緩衝溶液中のイオン性塩と相互作用することによる可能性が高い。一度溶液中のナノ粒子の安定性についての分析も実施した。
【0309】
水中のナノ粒子材料の結果は、溶液に入れて26日後であっても単分散性のナノ粒子集団を示す(
図34,画像B)。
【0310】
実施例11-細胞毒性試験
最初の研究では、3つの異なる細胞型について細胞毒性を評価した:
1)ヒト冠動脈内皮細胞(hCAEC,4継代,Cell Applications,300-05a);
2)ヒト冠動脈平滑筋細胞(hCASMC,5継代,Cell Applications,350-05a)及び;
3)乳癌細胞(MCF7,15継代,Sigma-Aldrich,86012803)。
【0311】
約5,000細胞/cm2を数え、平底96ウェル培養プレートに播種し、5%CO2インキュベーター中37℃で24時間インキュベートした。24時間後、次いで、500万個の粒子/ウェル~9,766個の粒子/ウェルのナノ粒子ポリマーの段階希釈液を、各濃度のナノ粒子ポリマーに対してn=5の反復で培地に添加した。72時間のインキュベーション後、細胞傷害性評価は、MTS細胞増殖及び細胞傷害性アッセイキット(Promega,G3580)を用いて実施した。MTS試薬を製造元の指示にしたがって各ウェルに添加し、さらに2時間インキュベートした。生細胞によって生成されたホルマザン色素は、490nmでの吸光度を測定することによって定量した。未処理細胞(ナノP3なし)及びラパマイシン(100nM,Sigma-Aldrich,R8781)で処理した細胞を対照として使用した。
【0312】
図35は、ヒト冠動脈内皮細胞(画像A)、ヒト冠動脈平滑筋細胞(画像B)、及び乳癌細胞株MCF-7(画像C)の存在下で段階希釈したナノ粒子ポリマー及び凝集体の存在下での細胞毒性試験の結果を示す。
【0313】
粒子を含まない細胞対照と比較して、500万ナノ粒子/ウェルの存在下であっても、ヒト冠動脈内皮細胞は、生存率の有意な減少を示さなかった。これはヒト冠動脈平滑筋細胞についての結果に反映された。乳癌細胞株MCF-7の場合、全ての濃度のナノP3は、全体的な細胞生存率を中程度に低下させたが、ラパマイシン陽性対照の範囲までではなかった。
【0314】
実施例12-コンジュゲーション研究パート1
図36は、抗体によるナノP
3の単一官能化の概略図を示す。
図37は、薬物によるナノP
3の単一官能化の概略図を示す。
図38は、抗体及び薬物によるナノP
3の官能化の概略図を概説する。
【0315】
とりわけ、本発明者らは、蛍光標識(例えば、Alexa488、Alexa 594、Cy5、Cy7)及び金属標識抗体(例えば、金及び銀)を本明細書に開示されたナノP3にうまく共有結合させた。
【0316】
二次抗体、薬物、及び/またはタンパク質へのナノP3のコンジュゲーションは、以下の手順を用いて評価した:
ナノP3を、RT-PCRグレードの水を用いて組織培養フード内で無菌条件下でナノ粒子コレクタから収集した。ナノ粒子の濃度は、NanoSight LM10によって測定した。次いで、ナノ粒子を、光から保護して4℃で最大16時間まで、所望の抗体(ヤギ抗ラットIgG-Cy5;abcam ab6565;及びヤギ抗ウサギIgG;1:100希釈でのabcam ab150089)、薬物(ドキソルビシン:100μg/mlでのSigma-Aldrich,D1515、及び5μg/mLでのパクリタキセル-Oregon Green 488,Invitrogen P22310)またはタンパク質(0.5μg/mLでの西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ;Sigma-Aldrich HRP;P6782)にコンジュゲートさせた。150nmの金ナノ粒子へのHRPのコンジュゲーションを同じ方法で実施した(Cytodiagnostics;G-150)。試料をBio RS-24ミニローテーターを用いて穏やかに撹拌した。インキュベーション後、試験試料及び適切な対照を、最初の4回の洗浄については5分間16,000gで遠心分離し、5回目の洗浄については15分間洗浄することによって5回均等に洗浄した。プレートリーダーを用いて蛍光強度を測定し、Ex/Emは各抗体または薬物上の蛍光色素標識にしたがって設定した。例えば、Alexa 488及びOregon Green488のEx/Emが494/517であるのに対し、Cy5のEx/Emは650/667nmである。ドキソルビシンのEx/Emは、470/585である。HRPの検出では、コンジュゲート型ナノ粒子及び各対照を、色が視認されるまでABTS(Sigma-Aldrich;A1888)及び過酸化水素(Merck;386790)と共にインキュベートし、405nmで測定した。
【0317】
予備試験を実施し、ナノ粒子と接触したときの細胞の挙動を評価した。二次FITCコンジュゲート抗体をナノ粒子と共に2時間インキュベートし、コンジュゲーションを可能にした。抗体コンジュゲート型ナノ粒子を水中で徹底的に洗浄した後、この材料を単層の内皮細胞(hCAEC)、平滑筋細胞、単球(J774A)、及び肺癌細胞(LLC)に加え、24時間インキュベートした。細胞形態を得るために明視野で、ナノ粒子の検出のために緑色蛍光フィルターで、生細胞イメージング装置上で5分間隔で画像を撮影した。結果は、実験の最初の2時間以内に全ての細胞型によるナノ粒子の明らかな取り込みを示した。本発明者らの細胞毒性研究で以前に確認されたように、ストレスまたは毒性の明らかな徴候を示すことなく、蛍光標識ナノ粒子の取り込み後、細胞は実験の24時間全体にわたって活性を維持した。さらに、細胞核の周囲及び細胞質内に大量のナノ粒子が含まれているにも関わらず、細胞は容易に分裂した。染色体の凝縮及び分離、細胞質分裂、ならびにその後の細胞の組織培養プレートへの再付着は全て妨げられず、試験した細胞型を有するナノ粒子の良性の性質を示していた。
【0318】
図39は、金標識IgG抗体とインキュベートし、走査型電子顕微鏡を用いて撮像したナノ粒子ポリマーの走査型電子顕微鏡画像を示す。画像では、それぞれ最大の円はナノ粒子材料である一方、抗体は二次電子(画像A)及び後方散乱電子(画像B)モードで示されているようにずっと小さい(矢印)。
【0319】
実施例13-コンジュゲーション研究パート2
方法及び材料
アクチン染色
固定後、実施例11に列挙した細胞型をPBS中0.1%のx-triton 100で5分間透過処理した。次に試料をPBS中で3回洗浄した。次いで、細胞をActin Red 555 ReadyProbes試薬(Life technologies,R37112)中で30分間、500μlのPBSに対して20μlの試薬を希釈してインキュベートした。
【0320】
DAPI染色
固定後、細胞をDAPI溶液(PBS中1:1000希釈,SAPBIO,NBP2-34422R)と共に室温で5分間インキュベートした。試料をPBS中で3回洗浄した後、水性蛍光シールド封入剤で封入した。カバースリップをかけた後、画像を蛍光顕微鏡下で24時間以内に撮影した。
【0321】
蛍光クエンチングを計算するためのドキソルビシンへのナノ粒子のコンジュゲーション
RT-PCRグレードの水を用いて組織培養フード内の無菌条件下で粒子コレクタからナノ粒子を収集した。ドキソルビシンを含まないナノ粒子対照の場合、ドキソルビシンの代わりに等量の水をウェルに加えた。同様に、ドキソルビシン対照ウェルでは、ナノ粒子の代わりとして水を加えた。50μg/mLのドキソルビシン(Sigma-Aldrich,D1515)を含むウェルにナノ粒子を添加した場合、時間経過測定は、0分から開始して5分まで30秒毎に、プレートリーダー(Ex/Em:470/585)を介して直ちに開始された。ドキソルビシンの蛍光損失を時間0に対して計算した。
【0322】
実験の前日に、MCF7細胞を96ウェルプレートに8,000細胞/cm2で播種した。播種の24時間後、ドキソルビシンコンジュゲート型ナノ粒子(前述のように調製した)をウェルに添加し、さらに24時間インキュベートした。細胞の生存率は、MTS細胞増殖アッセイキット(Promega;G3580)を用いて測定した。MTS試薬を製造元の指示にしたがって各ウェルに添加し、さらに2時間インキュベートした。生細胞によって生成されたホルマザン色素は、490nmでの吸光度を測定することによって定量した。未処理細胞及びドキソルビシンで処理した未洗浄細胞を対照として使用した。
【0323】
結果
実験では、細胞透過剤を必要とせずに、試験した全ての細胞型においてナノ粒子が細胞壁を透過することが確かめられた。さらに、最大1500万ナノ粒子/mLまでの濃度の非コンジュゲート型ナノ粒子は、内皮細胞及び平滑筋細胞に対して無毒であることが示されたが、乳癌細胞の増殖に対しては穏やかに阻害性であった。
【0324】
ナノ粒子の薬物コンジュゲーション能を評価するために、2つの一般的に使用されている化学療法薬、パクリタキセル及びドキソルビシンとのインキュベーションを行った。ナノ粒子が抗体にコンジュゲートする能力も試験した。抗体へのコンジュゲーションは、治療用途ならびに粒子トラッキング及びイメージングの両方にとって重要な面を意味する。
【0325】
パクリタキセルとのコンジュゲーションの場合、ナノ粒子を蛍光標識パクリタキセルと共に4℃で一晩インキュベートした。全ての遊離パクリタキセルを確実に除去するためにナノ粒子を洗浄した後、粒子を乳癌細胞の上清に添加した。24時間のインキュベーション後、細胞を固定し、細胞骨格を可視化するためにファロイジンで対比染色した。興味深いことに、この実験は、いかなるコンジュゲートも存在しない状態で、粒子が緑色チャネル内で自己蛍光性であることを強調している。
【0326】
別の実験では、Cy5二次抗体をナノ粒子にコンジュゲートし、単層の乳癌細胞(MCF-7)に24時間添加した。
【0327】
画像を得るための細胞培養に適したLab-Tekガラスチャンバスライド(Lab-Tek,154534,及び155380)上にMCF7細胞を5,000~8,000細胞/cm2の密度で播種した。細胞播種の24時間後、試験ナノ粒子試料及び対照をMCF7と共にインキュベートし、さらに24時間インキュベートした。次いで、細胞を3.7%パラホルムアルデヒドによって室温で10分間固定した。次いで、細胞染色の前に試料をPBSで3回洗浄した。
【0328】
続いて細胞を固定し、細胞核を視覚化するためにDAPIで対比染色して、細胞内のナノ粒子の分布を観察した。分布は細胞質内で均一であるように見えるが、わずかに細胞核の周囲に集中している。核内に視認できるナノ粒子はない。Cy5抗体対照は、細胞内のいずれの場所でも蛍光を示さず、その細胞透過を可能にするためのナノ粒子コンジュゲーションの必要性が確認された。凍結乾燥したナノP3及びCy5抗体を用いてこの実験を繰り返したが、結果は同様にCy5コンジュゲート型ナノ粒子の素早い取り込みを示す。この実験は、凍結乾燥を用いて、ナノ粒子を単独で、または生物活性分子とのコンジュゲーション後に長期間保存する可能性を示している。
【0329】
図41は、蛍光イメージングの前に、ヒト冠動脈内皮細胞(hCAEC,上段)及び乳癌細胞株MCF7(下段)とインキュベートした抗体官能化ナノP
3を示す。細胞核はDAPIによって青く染色し(明確にするため、特定の細胞核は円形の枠で囲まれている)、抗体はAlexa488によって緑色で標識した(明確にするため、これらの抗体のいくつかは三角形の枠で囲まれている)。アクチン繊維は赤く染色した(明確にするため、これらの繊維のいくつかは長方形の枠で囲まれている)。ナノP
3及びAlexa488抗体コンジュゲートからの蛍光は、両方の細胞型において核の周囲に集中した細胞質において観察された。
【0330】
図40は、SEMでの二次電子の検出を使用して撮像されたナノP
3及び2つの異なるサイズの金抗体(実線の矢印が20nmIgG-金二次抗体、縞矢印が6nmの1つのIgG-金二次抗体)のSEM画像を提供する。
【0331】
ナノ粒子に対するコンジュゲート分子の生物活性を確認するために、本発明者らは、固定化された際に構造変化に特に敏感であることが知られているヘム含有酵素である西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)をコンジュゲートした。この場合、ナノ粒子を0.5μg/mLのHRP溶液と共にインキュベートし、4時間ホモジナイズした。等濃度のナノ粒子単独及びHRP単独の対照も実施し、後者はバックグラウンドレベル未満の活性を示す。ナノ粒子の現在の至適基準と比較するために、市販の金ナノ粒子もまたHRPとインキュベートし、ナノ粒子試験群として処理した。ナノ粒子(及び対照)を徹底的に洗浄して全ての遊離HRPを除去した後、試料を、触媒作用を受けて緑色の生成物を生成する、よく記述されたHRPの基質であるABTSと共にインキュベートした。405nmでの吸光度の測定は、HRP生成物形成の明確なシグナルを示し、ナノ粒子コンジュゲート型HRPの維持された生物活性を証明する。市販の金ナノ粒子はまた、かなり低いレベルではあるが、ある程度のHRP活性を示した。これは、金ナノ粒子へのコンジュゲーション後のHRP活性の損失が十分に証明されているため、金ナノ粒子と比較してナノ粒子へのHRP担持量がより高いことに起因し得るか、あるいはナノ粒子コンジュゲート型HRPの活性がより高いことに起因し得る。
【0332】
ドキソルビシンの可視化のために、本発明者らは、別のフルオロフォアコンジュゲートを必要とせずに、薬物の固有の自己蛍光を観察することを予期していた。
【0333】
しかしながら、ドキソルビシンの自己蛍光は、ナノ粒子と共にインキュベートされた場合に消光することが判明した(この薬物が他の粒子に、またはそれ自体にさえもコンジュゲートされる場合にこの現象はよくある)。したがって、ナノ粒子とのドキソルビシンコンジュゲーションの検出は、薬物がナノ粒子とインキュベートされた際の自己蛍光の損失を測定することによって達成された(
図42,画像A)。ドキソルビシンをナノ粒子とインキュベートした場合、結果は蛍光の漸進的な損失を示し、これは約3分で徐々に増加してプラトーに達し、信じられないほど急速なコンジュゲーションを示した。ドキソルビシン対照は、蛍光を減少させなかった。これは、この損失が薬物の凝集及びその結果としての消光によるものではないことを裏付けている。興味深いことに、ドキソルビシン自己蛍光の増加が観察された。これは、元の原液中のドキソルビシンの初期凝集(及びその結果としての消光)によるものと考えられる。水中で50μg/mLに希釈した後、凝集したドキソルビシンは脱凝集し始め、したがって蛍光が一時的に増加した。薬物なしのナノ粒子対照もまた蛍光の減少を示さなかった。別の実験では、ドキソルビシンコンジュゲート型ナノ粒子を水中で徹底的に洗浄して全ての遊離ドキソルビシンを除去し、続いて単層の乳癌細胞に添加し、24時間インキュベートした。MTSアッセイの結果は、ドキソルビシンコンジュゲート型ナノ粒子との24時間のインキュベーション後に細胞生存率の著しい減少を示し、薬物コンジュゲーション、及びその後の細胞死を誘導するための薬物のバイオアベイラビリティーが確認された(
図42,画像B)。ナノP
3材料及びドキソルビシン(Dox)は、培地に添加された遊離ドキソルビシン(25μg/ml)と同程度にMCF-7細胞を死滅させることが示されたが、ナノ粒子は細胞生存率に影響を及ぼさなかった。この実験は、細胞傷害性薬物であるドキソルビシンが単純なインキュベーション後にナノ粒子に結合され得、MCF-7乳癌細胞を効果的に死滅させ得ることを示す。
【0334】
コンジュゲートの担持能力は、ナノP
3材料上に複数の生物活性基を導入することによって実証された。
図43は、hCAEC細胞を用いた研究におけるIgC-488とIgG-594の両方のコンジュゲーションを示す。細胞核はDAPIで示されている(明確にするため、
図43の核は円形の枠でマークされている)。両方のコンジュゲートは、ナノP
3及びAlexa 488抗体;ならびにナノP
3及びAlexa 594抗体から検出された。ナノP
3、Alexa 488、及びAlexa 594は、ヒト冠動脈内皮細胞(hCAEC)の細胞質内、主に核周辺に共局在しているように見える。
【0335】
異なる種類の第2の種がコンジュゲート上に配置されてもよく、例えば薬物及び抗体が利用され得る(
図44)。
図45では、パクリタキセル-488及びIgG-594のコンジュゲーションがMCF7細胞による細胞研究において示され;細胞核がDAPIにより示されている(明確にするため、
図45の核のいくつかは円形の枠でマークされている)。両コンジュゲートは、ナノP
3及びパクリタキセル-488;ならびにナノP
3及びAlexa 594抗体から検出された。ナノP
3、パクリタキセル-488、及びAlexa 594は、MCF7乳癌細胞の細胞質に共局在しているように見える。
【0336】
図46では、IgG-488、IgG-Cy5、及びIgG-Cy7とナノP
3とのコンジュゲーションがMCF7細胞を用いた細胞研究において示され;細胞核がDAPIにより示されている(明確にするため、
図46の核は円形枠でマークされている)。3つ全てのコンジュゲートは、ナノP
3及びAlexa 488;ならびにナノP
3、Alexa Cy 5、及びAlexa Cy 7抗体から検出された。ナノP
3及び3つ全てのコンジュゲートは、MCF7乳癌細胞の細胞質に共局在しているように見える。
【0337】
従来の方法を用いてプラスミドを含む二本鎖DNAを細胞内に運搬するには、細胞透過法(例えばエレクトロポレーション)または試薬(例えばリポフェクタミン)が必要である。一実験において、本発明者らは、緑色蛍光タンパク質を生成するためにプラスミドを使用し、うまくトランスフェクトした細胞が蛍光緑色を発するようにした。ヒト冠動脈細胞(hCAEC)を使用して、本発明者らは、追加の細胞透過工程なしに、プラスミド、ナノP
3のみ、またはプラスミドを有するナノP
3を添加した(
図47)。プラスミドのみ、またはナノP
3のみとのインキュベーションは効果がなかった。著しく対照的に、ナノP
3及びプラスミド条件は、24時間にわたって多くのトランスフェクションに成功した細胞を示した。
【0338】
別の実験では、本発明者らは、40、100または200nmのナノP
3に結合した緑色蛍光タンパク質を生成するためのプラスミドをヒト胎児腎細胞(HEK293)にうまく送達した。トランスフェクションの72時間後、トランスフェクト細胞は蛍光顕微鏡下で観察され(緑色)(
図48)、本明細書に開示されるナノP
3材料によって実現した、細胞の成功したトランスフェクション及びカーゴ(例えばDNAプラスミド)の保持機能を示す。これらの結果は、ナノP
3が細胞膜を越えてDNAを運び、その活性を保持することができることを実証している。
【0339】
予備的な動物実験では、マウスの背中に小さな切開(すなわち創傷)を施した。次いで、4つの群を割り当てた:
1)介入なし;
2)ナノP3のみ;
3)市販の金ナノ粒子及びルシフェラーゼ;または
4)尾静脈注射によるナノP3及びルシフェラーゼ。
【0340】
群4(ナノP
3及びルシフェラーゼ)のみが、IVISイメージングにより創傷領域での陽性シグナルを示した(
図49)。これは、ナノP
3のみがルシフェラーゼを生物活性的方法で共有結合的に保持すること、及びナノP
3が損傷部位にホーミングしている可能性があることを示唆した(このことはin vivoイメージング及び治療にとって重要な意味を持つ)。
【0341】
ナノ治療薬に使用される典型的な材料は生物活性的に不活性であり、通常、医薬品とナノ粒子表面との間の安定したコンジュゲーションを得るために、PEGなどのオリゴマーによるさらなる官能化戦略を必要とする。この研究において、本発明者らは、固定化生体分子の生物活性を損なうことなく、様々な生体分子の直接的なラジカル媒介コンジュゲーションを提供する新規なプラズマ活性化ナノキャリアを報告する。ナノ粒子の合成及び収集は、ナノサイズの炭素系クラスタの急速な凝集を含む、活性プラズマ-気相で行われる。ナノ粒子作製収率及び物理化学的特性は、用途の要件に応じて、プロセスパラメータの適切なウィンドウを選択することによって容易に調整される。ナノ粒子の非毒性の性質は、様々な細胞型及び粒子濃度で実証されている。本明細書で作製されたナノ粒子はさらに受動的に細胞に入ることが示され、薬物、抗体、及びポリヌクレオチドなどの分子カーゴの移動を促進した。プラズマ放電は、ナノ粒子ベースの治療法及び診断法における現在の成果を潜在的に推進することができる新たな種類の真に多官能性のナノキャリアの合成及び設計のための強固なプラットフォームを提供することが実証されている。
【0342】
実施例14-コンジュゲーション研究パート3
別の動物実験では、マウスを無作為に3つの群に分けた:
1)ナノP3のみ;
2)ナノP3及びICG;または
3)ICGのみ。
【0343】
各群について、
図50に示すように、マウスの背中に小さな切開(5mm)を施した。シルク縫合糸で切開部を閉じると、各マウスに尾静脈注射を介して100μLの対応する試料群を投与した:ナノP
3対照(9×10
9ナノP
3)、ナノP
3-ICG(9×10
9ナノP
3と2.5μgのICG/10
9ナノP
3)またはICG対照(22.5μg)。Ex/Em=780nm/820nmでの蛍光の検出のためにIVISを用いた非侵襲的イメージングを実施した。調べた全ての時点で、ナノP
3のみ、及びICGのみの対照群の両方において蛍光が存在せず、ICGがin vivoでの循環時に活性を著しく損失することが示された。逆に、ナノP
3-ICG群においては全ての時点でシグナルが検出され、in vivoでのICG活性は一度ナノP
3に結合すると著しく延長される(300倍の半減期の延長)ことが実証された。
【0344】
実施例15-コンジュゲーション研究パート4
別の動物実験では、
図51の画像Aに示すように、様々な試料群:生理食塩水対照(切開1)、ナノP
3のみ(切開2)、ナノP
3-VEGF-ICG(切開3)、及びナノP
3-VEGF(切開4)の局所送達のために各マウスの背中に合計4つの切開(5mm)を施した。創傷あたりの総投与試料容量は5μLであった。ナノP
3を含有する群では、投与量は以下の通りであった。切開2:5×10
9ナノP
3;切開3:5×10
9ナノP
3と0.058μgのVEGF/10
9ナノP
3及び1.25μgのICG/10
9ナノP
3;切開4:5×10
9ナノP
3と0.115μgのVEGF/10
9ナノP
3。
図51の画像Bは、ICGで官能化されたナノP
3を含有する試料群のみが陽性蛍光シグナルを生じたことを示す。蛍光強度は経時的に減少し(切開後14日目まで定量化)、創傷部位に限定されたままであった。
図51の画像Cに示すように、免疫組織化学による創傷組織のさらなる分析により、生理食塩水及びナノP
3のみの対照と比較して、ナノP
3-VEGF-ICG及びナノP
3-VEGF群における内皮化の促進(後者は有意)が明らかになった。これらの結果は、宿主組織におけるナノP
3の分布の同時イメージングを可能にしながら、ナノP
3に固定化された官能性カーゴをin vivoで送達することができることを実証している。
【0345】
実施例16-コンジュゲーション研究パート5
方法及び材料
細胞生存率アッセイ
3つの異なる細胞型について細胞毒性を評価した:
1)ヒト冠動脈内皮細胞(hCAEC,4継代,Cell Applications,300-05a);
2)ヒト乳細胞株(MCF10A,20継代);及び
3)乳癌細胞(MCF7,15継代,Sigma-Aldrich,86012803)。
【0346】
約5,000細胞/cm2を数え、平底24ウェル培養プレートに播種し、5%CO2インキュベーター中37℃で4時間インキュベートした。細胞播種の4時間後、次いで、1000万個の粒子/ウェル~100個の粒子/ウェルのナノP3の10倍希釈液を、各濃度のナノP3に対してn=3の反復で培地に添加した。3~5日のインキュベーション後細胞毒性評価は、alamarBlue細胞生存率及び細胞毒性アッセイキット(Life technologies,DAL1100)を用いて実施した。製造元の指示にしたがって、alamarBlue試薬を各ウェルに添加し、さらに2時間(hCAEC及びMCF10Aの場合)及び3時間(MCF7の場合)インキュベートした。生細胞によって生成されたレゾアズリン色素を、Ex/Em530~560/590nmで蛍光を測定することによって定量した。未処理細胞(ナノP3なし)、及びドキソルビシン(500nM,Sigma-Aldrich,44583)で処理した細胞を対照として使用した。
【0347】
金ナノ粒子コンジュゲート二次抗体へのナノP3のコンジュゲーション
ナノP3を所望の抗体(ヤギ抗ウサギIgG-40nm金;abcam,ab119180、ヤギ抗マウスIgG-20nm金;abcam,ab27242、及び/またはヤギ抗ラットIgG-10nm金;abcam,ab41512)と共に4℃で1時間インキュベートし、Bio RS-24ミニローテーターを用いて穏やかに撹拌した。インキュベーション後、試料を16,100gで5分間の遠心分離により洗浄した。次に試料を収集し、300メッシュ銅(Proscitech,GSCu300C)上の組織培養フード内で風乾させ、Zeiss Sigma HD FEG SEM(SMM Facilities,Sydney)を使用して可視化した。
【0348】
二次抗体及び/または薬物へのナノP3のコンジュゲーション
ナノP3を二次抗体(ロバ抗ヤギIgG-Alexa488;abcam,ab6881;ヤギ抗ラットIgG-Alexa647;abcam,ab150159、ヤギ抗ウサギIgG-750;abcam,ab175733)及び/または薬物(パクリタキセル-Oregon Green 488,Invitrogen P22310)に4℃で1時間コンジュゲートし、光から保護してBio RS-24ミニローテーターを用いて穏やかに撹拌した。インキュベーション後、試験試料及び適切な対照を、1回の洗浄につき5分間、16,100gでの遠心分離を介して3回均等に洗浄した。プレートリーダーを用いて蛍光強度を測定し、Ex/Emを各抗体または薬物上の蛍光色素標識にしたがって設定した。
【0349】
細胞内の抗体コンジュゲート型ナノP3
hCAEC、MCF10A、及びMCF7細胞を、画像を得るための細胞培養に適したLab-Tekガラスチャンバスライド(Lab-Tek,154534、及び155380)上に10,000~15,000細胞/cm2の密度で播種した。細胞播種から4時間後、試験ナノP3試料及び対照を24時間全細胞型と共にインキュベートした。次に、細胞を室温で10分間3.7%パラホルムアルデヒドで固定した。次いで、細胞染色の前に試料をPBSで3回洗浄した。
【0350】
アクチン及びDAPI染色
固定後、細胞をPBS中0.1%のx-トリトン100で5分間透過処理した。次に試料をPBS中で3回洗浄した。次いで、細胞をActin Red 555 ReadyProbes試薬(Life technologies,R37112)中で15分間、1000μlのPBSに対して20μlの試薬を希釈してインキュベートした。次に試料をPBS中で3回洗浄した。細胞をDAPI溶液(PBS中1:1000希釈,SAPBIO,NBP2-34422R)と共に室温で5分間インキュベートした。試料をPBS中で3回洗浄した後、水性蛍光シールド封入剤(Cat.)で封入した。カバースリップをかけた後、画像は蛍光顕微鏡(Zeiss Microscope)下で24時間以内に撮影された。
【0351】
官能化アッセイ:ルシフェラーゼへのナノP3のコンジュゲーション
ナノP3を、Photinus pyralis由来のルシフェラーゼに2.5μg/ml(abcam,L9506)で4℃で1時間コンジュゲートし、Bio RS-24ミニローテーターを用いて穏やかに撹拌した。200nmポリスチレン(ThermoFisher Scientific;R200)及び200nm金ナノ粒子(Cytodiagnotics;G-150)へのルシフェラーゼのコンジュゲーションを同一の様式で実施した。インキュベーション後、ナノP3試料は、1回の洗浄につき5分間、16,100gでの遠心分離を介して3回洗浄した一方、適切な対照は、製造元の指示にしたがって3回均等に洗浄した。全ての洗浄液を収集した。ルシフェラーゼの検出の場合、コンジュゲート型ナノ粒子及び各対照、ならびにそれらの全ての洗浄液を、70mM ATP-Mg2+を含有するD-ルシフェリン(Sigma-Aldrich;A1888)と共にインキュベートした。次いで、IVISシステムを介して生物発光を検出した(露光時間:30秒)。
【0352】
結果
ナノP
3中の遊離ラジカルの存在は、単純なインキュベーションによる生体分子の直接的な共有結合的固定化の可能性を示唆しており、競合するプラットフォームを超える本質的な利点をもたらす。非官能化ナノP
3は、ヒト冠動脈内皮細胞(HCAEC)の膜を透過し、細胞質内に蓄積し、3View断面SEMを用いて観察した(
図52,画像A)。これらの画像の3Dレンダリングは、核の外側(長円形の枠で囲まれている)の細胞膜内(長方形の枠で囲まれている)に分布したナノP
3(これらの一部は三角形の枠で囲まれている)を示す(
図52,画像B)。HCAEC、線維芽細胞(MCF10A)、またはヒト乳腺癌細胞(MC7)とのナノP
3インキュベーションは、細胞生存率に有意な影響を及ぼさず、1ウェルあたり最大1×10
8粒子であった(
図53,画像C)。細胞形態はまた、培養液中で3日または5日後にも影響を受けなかった(
図53,画像D)。追加の化学的リンカーの非存在下でのルシフェラーゼとのインキュベーション、その後の3回の遠心洗浄工程(W1~W3)は、ナノP
3の生体分子固定化能力を示した。生物発光酵素ルシフェラーゼは、アンフォールドすると立体構造的に影響を受けやすく、かつ不活性であるので官能的活性の同時研究を可能にするように選択された。アッセイは、粒子なしで、または市販の金(GNP)もしくはポリスチレンナノ粒子を用いても行い、ナノP
3と比較した(
図54)。全ての洗浄工程を通じて、不可逆的な固定化及びルシフェラーゼ活性の保存をもたらしたのはナノP
3のみであった。実験は、金及びポリスチレンナノ粒子について本明細書に示される他の全ての市販のプラットフォームが、官能性分子の強固な結合のために化学結合中間体を必要とすることを強調している。
【0353】
ターゲティングリガンド、造影剤、及び化学中間体のない薬物(
図55,画像A)を含む、複数の共有結合カーゴを保持する可能性は、ナノP
3の重要な側面である。蛍光標識抗体(IgG488)を用いた例示は、高密度表面単層と一致する結合濃度が達成され得ることを示した(
図55,画像B)。SEMによって可視化されたナノP
3に結合する金標識抗体は、抗体濃度及びインキュベーション時間及び順序を含む溶液パラメータによって制御される表面密度を有する、1、2または3個のリガンドによる官能化を示す(
図56,画像C)。
図56の画像Cにおいて、3つのIgG-金二次抗体は、サイズが40nm、20nm、及び6nmである(それぞれ破線の円形、三角形及び長方形の囲いにて示される)。MCF10A中の単一、二重または三重官能化ナノP
3として、パクリタキセル-488、IgG-Cy5、及びIgG-Cy7を用いて、細胞内への複数のカーゴの機能的移動が示された(
図57)。3つの比較的大きな官能性について例示したが、ナノP
3の結合容量は、カーゴのサイズに関係するため、表面積によってのみ制限される。
【0354】
実施例17-コンジュゲーション研究パート6
ナノP
3を核局在化配列(NLS)とコンジュゲートし、特にH-CPKKKRKV-OHのNLSを使用した。得られたコンジュゲートは、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)の核膜を透過した(
図58)。ナノP
3-NLSコンジュゲートの大部分は、ナノ粒子を細胞とインキュベートしたときに一般的に観察されるように、インキュベーションの24時間後に核の周囲に蓄積する。しかしながら、48時間後、陽性の蛍光シグナルが細胞の核領域に存在し、この細胞小器官へのナノ粒子-NLSトラッキングを示す。この実験は、異なる細胞小器官が適切なコンジュゲートを形成することによって標的化され得ることを示す。
【0355】
実施例18-コンジュゲーション研究パート7
VEGFに対するsiRNAとコンジュゲートしたナノ粒子(上記の実施例12に概して記載したようにコンジュゲートした)は、ウエスタンブロット分析によって確認されるように、48時間後にHUVECSにおけるVEGF発現を最大40%まで有意に減少させることに成功した(
図59)。HUVEC細胞におけるナノ粒子-siRNAコンジュゲートの送達は、Cy-5によって標識したsiRNA-VEGFを使用する蛍光顕微鏡法によって確認した(
図60)。この実験は、本明細書に開示されるナノP
3材料が、siRNAの生物学的活性を維持しながらsiRNA分子を細胞内にうまく運搬することができることを示す。
【0356】
実施例19-コンジュゲーション研究パート8
ナノP
3及び金(GNP)のナノ粒子を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートした。これらは、2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS)とのインキュベーションによって検出された。生成物の検出は405nmで実施され(
図61)、ナノP
3材料にコンジュゲートした相当量のHRPが示された。この実験は、本明細書に開示されているナノP
3材料への生物活性タンパク質の成功したコンジュゲーションの別の例を提供する。
【0357】
実施例20-ナノP
3を用いたsiRNAノックダウン
初代マウス線維芽細胞における(a)100nm及び(b)200nm(直径)ナノP
3に結合したルシフェラーゼ(siLuci)に対する低分子干渉RNAの送達の効果を調べた。
図62では、ウェルあたり10
10粒子の濃度で100nmのナノP
3と共にsiLuciを送達することによって、未処理細胞対照と比較して、ルシフェラーゼの発現は、72時間で39.74±6.42%へと有意に減少した。スクランブルsiRNA及び非官能化ナノP
3の送達は有意な効果を及ぼさなかった。全てのナノP
3試験群において細胞生存率の有意な減少は観察されなかった。IPSC由来ヒト内皮細胞における(a)100nm及び(b)200nm(直径)ナノP
3に結合したルシフェラーゼ(siLuci)に対する低分子干渉RNAの送達の効果を調べた。
図63では、ウェルあたり10
7粒子の濃度で200nmのナノP
3と共にsiLuciを送達することによって、未処理細胞対照と比較して、ルシフェラーゼの発現は、72時間で48.96±1.24%へと有意に減少した。スクランブルsiRNA及び非官能化ナノP
3の送達は有意な効果を及ぼさなかった。全てのナノP
3試験群において細胞生存率の有意な減少は観察されなかった(
図63)。
【0358】
実施例21-ナノ粒子を保持するための足場の合成
本発明者らは、本明細書で定義したようなナノP3材料を保持するために電界紡糸ポリウレタン足場を利用した。
【0359】
ポリウレタン(Elast-Eon E2A;ヘキサフルオロイソプロパノール中9%(v/w))を15kVを用いて1mL/時で総体積2.5mLまで電界紡糸し、回転コレクタ(500rpm)を使用して収集した。
【0360】
次いで、6×4cmのシートを100個の3mmディスクへと切断し、続いて紫外線光を用いて滅菌した(各側15分)。ディスクを4つの処理群(各25ディスク)に分け、撹拌しながら37℃で一晩溶液中でインキュベートした:
群1-ポリウレタン(未処理)
群2-ポリウレタン及びナノ粒子(1×109mL-1)
群3:ポリウレタン、及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を有するナノ粒子(1.5μg/mL、4℃で4時間担持)
群4-ポリウレタン、及びデキサメタゾン(DEX)を有するナノ粒子(10μg/mL、4℃で4時間担持)。
【0361】
インキュベーション後、ディスクを3回十分に洗浄した。
【0362】
図64は、電界紡糸ポリウレタン繊維のSEM画像(画像a、b及びc)を提供する。画像d、e及びfは、ナノP
3及びVEGFのコンジュゲートの組み込みを示す。
【0363】
in vitro研究の結果は
図65に示されており、それは画像a)における内皮細胞の新血管の生成を示す。結果の定量化は、画像b)に示される。有意性は、一元配置分散分析を用いて計算した(
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
****p<0.0001)。
図65では、PU=ポリウレタンプラットフォーム単独(群1);NP=ナノ粒子が付着したポリウレタン足場(群2);VEGF=ポリウレタン足場+VEGFで官能化したナノ粒子(群3);及びDEX=ポリウレタン足場+DEXで官能化したナノ粒子(群4)。
【0364】
ナノP
3材料は様々な異なる基質に適用することができる。例えば、本発明者らはシルク足場を利用し、ナノP
3の均一な分布が得られ得ることを示すことができた(
図66)。
【0365】
当業者は、広く記載された本発明の範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示されるように、本発明に対して多数の変形及び/または修正がなされ得ることが理解されよう。したがって、本実施形態は、あらゆる点で例示的であり限定的ではないと見なされるべきである。本開示は以下の実施形態を包含する。
[1] 以下の特徴:
約3470G~約3520Gの範囲内に中心があり、及び/または約2.001~約2.005の範囲内のg因子に対応する広い電子常磁性共鳴ピーク、
約10
19
~約10
15
スピン/cm3の範囲の合成後約0時間~約2時間以内に電子常磁性共鳴により測定されたスピン密度、
合成後約0時間~約240時間以内に電子常磁性共鳴により測定された約10
17
~約10
15
スピン/cm3の範囲であるスピン密度、
-約3680~約2700cm
-1
の範囲内;
-約1800~約1200cm
-1
の範囲内;
-約2330~約2020cm
-1
の範囲内;
-約1200~約1010cm
-1
の範囲内;及び/または
-約1010~約700cm
-1
の範囲内;
に中心がある赤外スペクトルの1つ以上の吸収帯、
-約3600~3100cm
-1
の範囲内;及び/または
-約3100~2700cm
-1
の範囲内;
に中心がある赤外スペクトルの1つ以上の吸収帯、
約-100mV~約+100mVの範囲内のゼータ電位;
約2~約10のpH範囲内の溶液中で測定された約-80mV~約+80mVの範囲内のゼータ電位;または
窒素:炭素の元素比が約0.01:1~約2:3
のうちの1つ以上を特徴とするナノ粒子ポリマー。
[2] 前記ポリマーが架橋している、実施形態1に記載のナノ粒子ポリマー。
[3] 前記ポリマーが、炭化水素、ペルフルオロカーボン、エーテル、エステル、アミン、アルコール、またはカルボン酸モノマー類、またはそれらの混合物から誘導されたモノマー単位を含む、実施形態1または実施形態2に記載のナノ粒子ポリマー。
[4] 前記炭化水素が、アルケン、アルキン、シクロアルケン、シクロアルキン、またはそれらの混合物から選択される、実施形態3に記載のナノ粒子ポリマー。
[5] 前記炭化水素がアルキンである、実施形態3または実施形態4に記載のナノ粒子ポリマー。
[6] 前記ポリマーが、第2の種に結合することができる少なくとも1つの結合部位を含む、実施形態1~5のいずれかに記載のナノ粒子ポリマー。
[7] 前記ポリマーが、
第2の種に共有結合することができる不対電子を含む結合部位、及び
化学的または物理的に第2の種に結合することができる少なくとも1つの官能基
のうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~6のいずれかに記載のナノ粒子ポリマー。
[8] 前記ポリマーが、不対電子を含む前記結合部位を含む、実施形態6または実施形態7に記載のナノ粒子ポリマー。
[9] 前記第2の種が、ターゲティングリガンド、医薬品、造影剤、アミノ酸、ペプチド、天然生物活性分子の合成類似体、合成ペプチド模倣物、タンパク質、受容体ターゲティングリガンド、遺伝子標的化剤、ポリヌクレオチド、RNA、感光性色素、切断可能な連結分子、炭化水素、全細胞、細胞フラグメント、ミセル、リポソーム、ハイドロゲル、ポリマー粒子、半導体粒子、セラミック粒子、金属粒子、またはそれらの混合物から選択される、実施形態6~8のいずれかに記載のナノ粒子ポリマー。
[10] 前記ポリマーが、少なくとも1つのアミン基、イミン基、一酸化窒素基、またはニトリル基、またはそれらの混合物を含む、実施形態1~9のいずれかに記載のナノ粒子ポリマー。
[11] 前記ポリマーの粒子が、約1nm~約1000nmの平均直径を有する、実施形態1~8のいずれかに記載のナノ粒子ポリマー。
[12] 前記ナノ粒子ポリマーが、少なくとも1つのモノマーを含むプラズマから形成される、実施形態1~11のいずれかに記載のナノ粒子ポリマー。
[13] 実施形態1~12のいずれかに記載の2つ以上のナノ粒子ポリマーを含む凝集体。
[14] 実施形態1~12のいずれかに記載のナノ粒子ポリマーまたは実施形態13に記載の凝集体、及び
少なくとも1つの第2の種
を含むコンジュゲート。
[15] 2つ以上の第2の種が前記ナノ粒子ポリマーまたは凝集体に結合している、実施形態14に記載のコンジュゲート。
[16] 実施形態1~12のいずれかに記載のナノ粒子ポリマー、実施形態13に記載の凝集体、または実施形態14もしくは実施形態15に記載のコンジュゲート、及び薬学的に許容可能なキャリア、賦形剤、もしくは結合剤を含む医薬組成物。
[17] 実施形態1~12のいずれかに記載のナノ粒子ポリマー、実施形態13に記載の凝集体、または実施形態14もしくは実施形態15に記載のコンジュゲートを含む基質。
[18] 前記ナノ粒子ポリマー、凝集体、またはコンジュゲートが、前記基質の少なくとも1つの表面上に存在する、実施形態17に記載の基質。
[19] 前記ナノ粒子ポリマー、凝集体、またはコンジュゲートが、前記基質内に組み込まれる、実施形態17に記載の基質。
[20] 前記ナノ粒子ポリマー、凝集体、またはコンジュゲートが、前記基質に共有結合している、実施形態17~19のいずれかに記載の基質。
[21] 実施形態1~12のいずれかに記載のナノ粒子ポリマー、
実施形態13に記載の凝集体、または
それらの混合物の、
コンジュゲートの形成における使用。
[22] i)反応チャンバ内に少なくとも1種のガスを提供することと、
ii)前記反応チャンバ内に容量結合プラズマを発生させるように第1の電極に電力を供給することと、
iii)前記反応チャンバ内の第2の電極に電圧を印加することと、
iv)得られたナノ粒子ポリマーまたは凝集体を収集することと、を含み、
前記少なくとも1種のガスが有機ガスを含む、ナノ粒子ポリマーまたは凝集体の調製方法。
[23] 工程iii)における前記電圧がパルス状バイアス電圧である、実施形態22に記載の方法。
[24] 工程iii)における前記電圧が、前記電極が前記プラズマからの電荷の蓄積によって浮遊電位を獲得する自己バイアスである、実施形態22に記載の方法。
[25] 工程i)における前記ガスが、2種以上のガスの混合物である、実施形態22~24のいずれかに記載の方法。
[26] 前記2種以上のガスの混合物が、不活性ガスを含む、実施形態25に記載の方法。
[27] 前記2種以上のガスの混合物が、周期表の15、16または17族から選択される元素を含むガスを含む、実施形態25または実施形態26に記載の方法。
[28] 前記2種以上のガスの混合物が、窒素を含む、実施形態25~27のいずれかに記載の方法。
[29] 工程i)において有機金属化合物を導入することをさらに含む、実施形態22~28のいずれかに記載の方法。
[30] 実施形態22~29のいずれかに記載の方法によって作製されたナノ粒子ポリマー。
[31] i)実施形態1~11、もしくは30のいずれかに記載のナノ粒子ポリマー;または実施形態12に記載の凝集体、及び
ii)少なくとも1つの第2の種
を提供することと、
前記ナノ粒子ポリマーまたは凝集体と前記少なくとも1つの第2の種とが物理的または化学的に互いに結び付くように、前記ナノ粒子ポリマーまたは凝集体と前記少なくとも1つの第2の種とを接触させることと、
を含む、コンジュゲートの形成方法。
[32] 前記少なくとも1つの第2の種が、前記ナノ粒子ポリマーまたは凝集体に共有結合する、実施形態31に記載の方法。
[33] 実施形態31または実施形態32に記載の方法によって作製されたコンジュゲート。
[34] 疾患、障害、または状態の1つ以上の症状に罹患している、罹患しやすい、またはそれを示す対象を治療する方法であって、前記方法が、実施形態1~12もしくは30のいずれかに記載のナノ粒子ポリマー、実施形態13に記載の凝集体、実施形態14、15もしくは33のいずれかに記載のコンジュゲート、または実施形態16に記載の医薬組成物を前記対象に投与する工程を含む、前記方法。
[35] 前記疾患、障害、または状態が、急性冠症候群、加齢性疾患もしくは障害、アレルギー性疾患もしくは関連状態、アルツハイマー病、喘息、HIV、抗生物質耐性、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、細菌感染、がん、認知症、うつ病もしくは関連状態、糖尿病、脂質異常症、高脂血症、高血圧、魚鱗癬、免疫疾患、代謝性疾患もしくは障害、神経学的疾患もしくは障害、肥満症、パーキンソン病、疼痛、関節リウマチ、または増殖性疾患から選択される、実施形態34に記載の方法。
[36] 対象における疾患、障害、または状態を治療するための医薬の形成における、実施形態1~12もしくは30のいずれかに記載のナノ粒子ポリマー、実施形態13に記載の凝集体、または実施形態14、15もしくは33のいずれかに記載のコンジュゲートの使用。
[37] 前記疾患、障害、または状態が、急性冠症候群、加齢性疾患もしくは障害、アレルギー性疾患もしくは関連状態、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、細菌感染、がん、認知症、うつ病もしくは関連状態、糖尿病、脂質異常症、高脂血症、高血圧、魚鱗癬、免疫疾患、代謝性疾患もしくは障害、神経学的疾患もしくは障害、肥満症、パーキンソン病、疼痛、関節リウマチ、または増殖性疾患から選択される、実施形態36に記載の使用。
[38] 少なくとも1つの第2の種が造影剤である、実施形態14、15もしくは33のいずれかに記載のコンジュゲートまたは実施形態16に記載の医薬組成物を対象に投与する工程を含む、前記対象内の領域のイメージング方法。