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7193466複数温度光学分光計モジュール、システム、及びそれを使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】複数温度光学分光計モジュール、システム、及びそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/01 20060101AFI20221213BHJP
   G01N 21/59 20060101ALI20221213BHJP
   G01N 21/03 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G01N21/01 C
G01N21/59 Z
G01N21/03 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019538616
(86)(22)【出願日】2018-01-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 IB2018050244
(87)【国際公開番号】W WO2018134722
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2021-01-08
(31)【優先権主張番号】2017900158
(32)【優先日】2017-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399117121
【氏名又は名称】アジレント・テクノロジーズ・インク
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴンソン,ヒュー
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0092659(US,A1)
【文献】特開2004-102540(JP,A)
【文献】特開2011-232212(JP,A)
【文献】特開2005-351847(JP,A)
【文献】特開2013-126421(JP,A)
【文献】特開2002-156282(JP,A)
【文献】特表平07-500180(JP,A)
【文献】Zhicheng Tan,AN ADIABATIC LOW-TEMPERATURE CALORIMETER FOR HEAT CAPACITY MEASUREMENT OF SMALL SAMPLES,Journal of THERMAL ANALYSIS,VOL.45, No.1-2,米国,1995年,p.59-67
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/01-21/61
G01J 3/00-3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを分析する光学分光計モジュールであって、
2つ以上のサンプルホルダであって、該光学分光計モジュール内の固定ロケーションにおいて1以上のサンプルを受取り、再現性よく位置決めし、光ビームを受信し、該サンプルホルダ内に収容される前記サンプルが前記受信された光ビームに曝露され、該サンプルホルダを透過した光が該サンプルホルダを出ることを可能にするように適合される2つ以上のサンプルホルダと、
1つのサンプルホルダに隣接して位置して、当該サンプルホルダを透過した光を直接測定し、前記2つ以上のサンプルホルダからの同時測定を可能にし、各サンプルホルダに含まれる前記1つ以上のサンプルによる光吸収レベルが判定されることを可能にする、少なくとも1つの検出器と、
2つ以上の電熱コンポーネントであって、各電熱コンポーネントは、前記サンプルホルダに含まれる前記1以上のサンプルの温度を制御するためにそれぞれのサンプルホルダに熱的に結合される、2つ以上の電熱コンポーネントと、
2つ以上の温度コントローラであって、各温度コントローラは前記電熱コンポーネントの1つに結合され、前記2つ以上の温度コントローラは、前記電熱コンポーネントのそれぞれを個々に制御する、2つ以上の温度コントローラと
を備え、
前記サンプルホルダのうちの少なくとも1つは、前記1以上のサンプルの測定と比較されるものであるリファレンス測定を行うことを含むように適合され、該リファレンス測定はキャリア媒体に対して行われるものである、光学分光計モジュール。
【請求項2】
前記電熱コンポーネントは熱電デバイスを備える、請求項1に記載の光学分光計モジュール。
【請求項3】
前記サンプルホルダは、50W/mKより大きい熱伝導率を有する材料から形成される、請求項1又は2に記載の光学分光計モジュール。
【請求項4】
前記電熱コンポーネントと周囲空気との間の熱交換を支援するように適合される熱交換コンポーネントを更に備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学分光計モジュール。
【請求項5】
前記熱交換コンポーネントは、前記電熱コンポーネントと熱的に結合された複数のベーンと、前記複数のベーン上に空気を吹付けるように配置されたブロワとを備える、請求項4に記載の光学分光計モジュール。
【請求項6】
前記サンプルホルダはギャップによって熱的に分離される、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学分光計モジュール。
【請求項7】
前記ギャップは10W/mKより小さい熱伝導率を有する材料を含む、請求項6に記載の光学分光計モジュール。
【請求項8】
前記サンプルホルダはギャップによって熱的に分離され、該ギャップは前記サンプルホルダよりも低い熱伝導率を有する材料を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学分光計モジュール。
【請求項9】
各サンプルホルダは少なくとも1つの側壁を備え、該側壁は、
前記光ビームを受信するように適合される開口と、
前記サンプルホルダを透過した前記光が前記少なくとも1つの検出器によって測定されることを可能にするために前記開口に対向して位置決めされた出口と
を画定する、請求項1~8のいずれか1項に記載の光学分光計モジュール。
【請求項10】
各サンプルホルダは、1つ以上のサンプルセルを受取るために前記サンプルホルダの上方端に開口を画定する、請求項1~9のいずれか1項に記載の光学分光計モジュール。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の光学分光計モジュールにおいて光を受信することと、
前記サンプルホルダ内に含まれるサンプルを前記受信される光に曝露することと、
所定の温度における前記サンプルホルダのうちの少なくとも2つのサンプルホルダの温度を個々に制御することと
を含む、光学分析方法。
【請求項12】
前記温度を個々に制御することは、異なる所定の温度になるように各サンプルホルダの温度を制御することを含む、請求項11に記載の光学分析方法。
【請求項13】
前記温度を個々に制御することは、空気ブロワ又は流動性流体によって、熱交換コンポーネントと前記サンプルホルダとの間の熱を交換させることを含む、請求項11又は12に記載の光学分析方法。
【請求項14】
前記温度を個々に制御することは、熱電デバイス又は抵抗加熱器によって、前記サンプルホルダを制御可能に加熱することを含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の光学分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、包括的には、光学分光機器及びシステム及び光学分光方法に関する。より詳細には、本開示は、制御された温度を用いる光学分光のための機器、システム、及び方法に関する。
【0002】
以下、実施形態について、以下に簡単に記載する添付図面を参照して、例として更に詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】幾つかの実施形態による光学分光計モジュールの上面図である。
図2】幾つかの実施形態による光学分光計モジュールの上面図である。
図3】幾つかの実施形態による光学分光計モジュールのためのサンプルホルダのセットの斜視図である。
図4】幾つかの実施形態による光学分析方法についてのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0004】
分光計は、関心の材料又は物質(例えば、分子、元素、又は化合物)、すなわち、分析物の存在を特定する、又は、分析物の濃度を判定するために、サンプルの分析のために使用される器具である。分光光度計としても知られる光学分光計は、サンプルと相互作用するように方向付けられる、紫外(UV)、可視又は赤外(IR)範囲内の光の形態の電磁エネルギーを利用することができる。各サンプルによって吸収される又は放出される光の量を分析することによって、サンプル構成要素及び量についての判定を行うことができる。例えば、UV-可視分光は、UV-可視範囲内の波長を有する光にサンプルを曝露することができる。サンプルとの相互作用に続く、結果として得られる光の特徴(例えば、光強度及び/又はサンプルによって透過、吸収、又は放出される光の波長)を測定して、サンプル材料のタイプ又は関心の物質の量を評価することができる。例えば、サンプルに関連する光吸収量は、分光計の較正によって、種々の分析物濃度(複数の場合もある)に関連付けられ得る。
【0005】
リファレンス測定を、サンプルが存在せず、検出のために分光計を光が透過する場合に、行うこともできる。これは、サンプルによる光吸収レベルを計算するため、サンプルを透過した光と比較するためのベースライン光強度を確立するために使用することができる。例えば、使用される光の不安定性を反映するために、分光計は、光の一部が、器具の光学部品及び光源の変動を反映するためのリファレンスとして測定される別個のリファレンスビームになるよう方向転換される構成を使用することができる。これらは、デュアルビーム又はダブルビーム分光光度計として知られる。
【0006】
サンプルの物理的及びスペクトル的特性は、温度によって変化する又は影響を受ける場合がある。サンプルの分光光度分析において、単一サンプルについてのデータ採取中の又はサンプル同士の間の熱変動は、品質データを取得するときの不正確さ又は困難さをもたらし得る。したがって、精密な温度制御、及び、測定中のサンプル温度の一貫性の維持を提供することが重要である場合がある。サンプルのスペクトル特性に対する温度変動の効果は、リファレンスに関して行われる測定にも影響を及ぼす可能性があり、サンプルホルダ(例えば、キュベット)又はキャリア媒体のスペクトル特性の「ベースライン設定(baselining)」に同様に影響を及ぼす場合がある。
【0007】
さらに、幾つかの実験又は分析プロトコルにおいて、異なる温度又は温度範囲でスペクトル測定値を採取することが望ましい場合がある。既存の分光計は、単一温度コントローラを使用して、サンプル分析のために、選択された一定温度を維持しようと試みることができるが、これらの器具は、複数のサンプル又はリファレンスの分析のために同時で柔軟性のある独立した温度制御を提供できない。こうした温度制御は、温度がデータ採取同士の間で調整されなければならない順次又はシリアルサンプル分析を実施する必要があるのではなく、サンプルの並列測定が異なる温度で行われることを可能にすることになる。本教示に関連して述べる器具及び方法が、分光計の機能を拡張するように有利に適合され、分光計が、異なる温度でサンプルに対する測定をすぐにかつ容易に行い、一部には分析中のサンプル温度にわたるより精密なレベルの制御によって、より高い品質のデータを提供することを可能にすることができることが認識されるであろう。
【0008】
光学分光による分析のためのサンプルは、流体又は半流体特性を持つことができる、又は、入力される光エネルギーがサンプルと相互作用することを可能にし、結果として得られる光特性が評価されることを可能にする、溶媒又は他の媒体等のキャリア媒体内に懸濁される、液体、固体、気体、又は粒子状物質とすることができる。分析される液体又は流体懸濁サンプルは、キュベットとして知られるサンプルコンテナ内に通常収容される。キュベット(しばしば、石英から作られる)及びキャリア媒体は、光学相互作用に寄与する場合があり、サンプル内に存在する場合がある分析物の存在及び/又は量を正確に判定するために、これらの材料の特性を考慮することが重要である場合がある。キュベットから検出される、結果として得られる光に対するキュベット材料及びキャリア媒体のいずれの寄与も、キャリア媒体(使用される場合)のみを収容するリファレンスキュベットを通した光特性又は透過特徴の測定によって考慮することができる。
【0009】
代替的に、特定の分析物についての較正データは、特定の溶媒又はキャリア媒体を使用して得られている場合がある。この場合、サンプルセル又はキャリア媒体を用いるリファレンス測定を行うことは必要ない。また、キュベット及び/又はキャリア液体による吸収は、データ分析中に数値的に又は計算的に反映することができる。
【0010】
本明細書に含まれている、文書、行為、材料、デバイス、物品等のいずれの議論も、これらの事物のうちの任意の又は全ての事物が、従来技術の基礎の一部を形成する、本出願の各請求項の優先日以前に存在したために本開示に関連する分野において共通の一般的知識(common general knowledge)であった、又は、理解されている、関連すると見なされている、又は、当業者によって組合されていることを合理的に予想されている可能性がある、という承認として考えられない。
【0011】
本開示の幾つかの実施形態は、サンプルを分析する光学分光計モジュールであって、
2つ以上のサンプルホルダであって、それぞれのサンプルホルダは、
光学分光計モジュール内の固定ロケーションにおいてサンプルを受取り、再現性よく位置決めし、
光ビームを受信し、それにより、サンプルホルダ内に収容されるサンプルが、受信される光ビームに曝露されることを可能にし、
サンプルホルダを透過した光がサンプルホルダを出ることを可能にする、
ように適合される、2つ以上のサンプルホルダと、
2つ以上の電熱コンポーネントと、
を備え、それぞれの電熱コンポーネントは、サンプルホルダの温度を制御するためにそれぞれのサンプルホルダに熱的に結合される、光学分光計モジュールに関する。
【0012】
幾つかの実施形態において、2つ以上の電熱コンポーネントはそれぞれ、熱電デバイスを備える。サンプルホルダのうちの少なくとも1つのサンプルホルダはリファレンスとして使用することができる。2つ以上のサンプルホルダは、高熱伝導率を有する材料から形成される。
【0013】
2つ以上のサンプルホルダと周囲空気との間の熱交換を支援するように適合される熱交換コンポーネントを更に備えることができる。幾つかの実施形態において、熱交換コンポーネントは、2つ以上のサンプルホルダと熱的に結合された複数のベーンと、複数のベーン上に空気を吹付けるように配置されたブロワとを備える。熱交換コンポーネントは、液体が通って流れることを可能にする内部チャネルを備えることもできる。
【0014】
幾つかの実施形態において、光学分光計モジュールは、2つ以上の電熱コンポーネントに結合された1つ以上の温度コントローラを更に備える。1つ以上の温度コントローラは、電熱コンポーネントのそれぞれを個々に制御することができる。
【0015】
光学分光計モジュールは、それぞれのサンプルホルダに取付けられた支持体を更に備えることもできる。幾つかの実施形態において、光学分光計モジュールは、2つ以上の支持体を備え、それぞれの支持体は、1つ以上のサンプルホルダに取付けられる。
【0016】
幾つかの実施形態において、サンプルホルダのうちの少なくとも2つのサンプルホルダはギャップによって分離される。ギャップは低熱伝導率を有する材料を含むことができる。2つ以上のサンプルホルダは所定の位置に固定することができる。
【0017】
光学分光計モジュールは、2つ以上の検出器を更に備えることができ、それぞれの検出器は、1つのレセプタクルに隣接して位置して、サンプルを透過した光を直接測定し、リファレンスサンプル及び1つ以上のサンプルからの同時測定を可能にし、それにより、1つ以上のサンプルによる光吸収レベルが判定されることを可能にする。
【0018】
それぞれのレセプタクルは少なくとも1つの側壁を備えることができ、側壁は、2つ以上の光ビームのうちの1つの光ビームを受信するように適合される開口と、サンプルを透過した光が2つ以上の検出器によって測定されることを可能にするために開口に対向して位置決めされた出口とを画定する。
【0019】
それぞれのレセプタクルは、サンプルセルを受取るためにレセプタクルの上方端に開口を画定する、上記の請求項のいずれか1項に記載の光学分光計モジュール。
【0020】
本開示の幾つかの実施形態は、
幾つかの実施形態による光学分光計モジュールにおいて光を受信することと、
2つ以上のサンプルホルダ内に受取られる試験サンプルを受信される光に曝露することと、
所定の温度になるように2つ以上のサンプルホルダのうちの少なくとも2つのサンプルホルダの温度を制御することと、
を含む、光学分析方法に関する。
【0021】
幾つかの実施形態において、温度を制御することは、異なる所定の温度になるようにそれぞれのサンプルホルダの温度を制御することを含む。
【0022】
本方法は、リファレンス信号を取得するために、サンプルホルダを透過した光の強度を検出器によって測定することを含むこともできる。
【0023】
幾つかの実施形態において、本方法は、サンプル信号を取得するために、1つ以上の試験サンプルを透過した光の強度を測定することを更に含むことができ、透過した光の強度は1つの検出器によって測定される。
【0024】
本方法は、リファレンス信号をサンプル信号と比較することによって、1つ以上の光吸収レベルを判定することを含むこともできる。
【0025】
幾つかの実施形態において、温度を制御することは、空気ブロワ又は流動性流体によって、熱交換コンポーネントとサンプルホルダとの間の熱を交換させることを含む。
【0026】
温度を制御することは、熱電デバイス又は抵抗加熱器によってサンプルホルダを制御可能に加熱することを更に含むことができる。
【0027】
本明細書を通して、「備える、含む(comprise)」という用語又は「備える、含む(comprises)」若しくは「備えている、含んでいる(comprising)」等の変形は、述べられている要素、完全体若しくはステップ、又は要素、完全体若しくはステップの群の包含を意味するが、他のいかなる要素、完全体若しくはステップ、又は要素、完全体若しくはステップの群の排除も意味しないことが理解されよう。
【0028】
図1を参照すると、幾つかの実施形態による光学分光モジュール100が示される。光学分光モジュール100は、モジュール式システムの一部として提供することができる。光学分光モジュール100は2つ以上のサンプルホルダ110を備える。各サンプルホルダ110は、光学分光モジュール100内の固定ロケーションにおいてサンプル(図示せず)を受取り、再現性よく位置決めするように適合することができる。
【0029】
サンプルホルダ110のうちの任意の1つ以上は、リファレンスセル又はサンプルセル(図示せず)を受取ることができる。リファレンスセル及びサンプルセルはキュベットとすることができる。リファレンスキュベットはキャリア液体を収容するように構成され、サンプルキュベットは液体試験サンプルを収容するように構成される。
【0030】
サンプルホルダ110は、しかし、空のままにされ、リファレンスキュベットなしで又はリファレンス材料なしで使用されて、透過した光をリファレンスビームとして測定することによって、器具の変動を補正するためのリファレンス信号を取得することができる。
【0031】
各サンプルホルダ110は、離散的な電磁又は光ベース放出(例えば、光ビーム)を受信し、それにより、サンプルホルダ110内に(例えば、キュベット内に)収容される1つ以上の試験サンプルが、受信される光ビームに曝露されることを可能にするように適合することもできる。
【0032】
各サンプルホルダ110は、サンプルホルダ(及び、サンプルホルダ110内に収容される任意のリファレンスサンプル又は試験サンプル)を透過した光がサンプルホルダ110を出ることを可能にするように更に適合される。
【0033】
サンプルホルダ110は1つ以上のレセプタクル111を画定することができる。幾つかの実施形態において、サンプルホルダ110は2つ以上のレセプタクル111、112を画定する。各レセプタクル111、112を、固体サンプル又はキュベットを受取るように適合することができる及び/又は形作ることができる。同じサンプルホルダ110によって画定されるレセプタクル111、112によって受取られるサンプル又はキュベットは、サンプルホルダ110を通して互いに熱的に結合されるのと実質的に同様である又は同じであるように有利に制御される温度を有することができる。
【0034】
1つの構成において、各サンプルホルダ110によって画定される1つ以上のリファレンスレセプタクル111は、1つ以上のリファレンス信号を取得するために1回以上のリファレンス測定を行うために使用することができる。1つ以上のレセプタクル112はそれぞれ、サンプル(又はサンプルを収容するキュベット)を受取って、光特性又はサンプルを通る透過特徴を測定し、サンプル信号を取得することができる。
【0035】
別の構成において、リファレンス測定は、サンプル測定に対して別々に行われ、各サンプルホルダ110内の各レセプタクル111、112は、サンプル測定中にサンプルを受取る。
【0036】
更に別の構成において、リファレンスレセプタクル111のうちの1つのリファレンスレセプタクルは、リファレンス測定のために使用され、別個のサンプルホルダ110上の他のリファレンスレセプタクル111のそれぞれのリファレンスレセプタクル及びそれぞれのサンプルレセプタクル112は、サンプル測定のためにサンプルを受取る。
【0037】
レセプタクル111、112は、直角プリズム又は立方体等の選択された形状の本体を有するキュベットを受取るように構成されるキュベット開口117を備えることができる。キュベット開口117は、10mm~20mmの範囲内の寸法を持って(例えば、正方形として)形作ることができる。レセプタクル111、112は、30mm~50mmの範囲の深さを有することができる。キュベット開口117は、収容されるように設計されるキュベットの寸法よりわずかに大きいサイズに決定されて、クリアランスを提供する。例えば、レセプタクル111、112は、14mm×14mm正方形開口及び40mmの深さを備えて、12.5mm×12.5mm正方形ベース及び45mmの高さを有する本体を備えるキュベットを収容することができる。クリアランスは、対角線上に取付けることができるばね又は他の弾性変位式コンポーネントによって占められて、キュベットをその4つの側面のうちの2つの側面に関してレセプタクル111、112の角に位置付けることができる。レセプタクル111、112は、キュベットの高さより小さい深さを有することができるため、取外すためにキュベットが指で把持されることを可能にするのに十分な量のキュベットが露出される。
【0038】
光学分光モジュール100は2つ以上の電熱コンポーネント120を更に備える。各電熱コンポーネント120は、それぞれのサンプルホルダ110に熱的に結合されて、サンプルホルダ110並びにサンプルホルダ110によって受取られた1つ以上の試験サンプル及び任意のリファレンスサンプルの温度を制御する。
【0039】
温度を、所定の測定温度の動作マージン以内であるように制御することができる又は少なくとも測定することができる。動作マージンは、0.05°~5°の範囲内とすることができる。例えば、測定温度は所定の温度の0.05°以内とすることができる、又は、測定温度は所定の温度の2°以内とすることができる。動作マージンは、光学分光計モジュール100の用途に依存する、例えば、動作マージンは、実験の温度敏感性又は温度に対する関心の目標物質における吸収に依存する場合がある。測定は、サンプルの温度が動作マージン以内である間に行うことができる。測定は、サンプルの温度が変化している間に行うこともでき、サンプル温度は、一定温度に保持される必要はない。
【0040】
幾つかの実施形態において、熱界面材料(例えば、グラファイトフォイル、窒化ホウ素含浸シリコーン、放熱グリース)等の熱伝導性材料は、電熱コンポーネント120とサンプルホルダ110との間の熱結合を改善するために使用することができる。
【0041】
2つ以上の電熱コンポーネント120の装備は、各サンプルホルダ110の温度が個々に制御されることを有利に可能にする。したがって、複数の同時測定を、分析のための時間量を低減するために有利に実施することができる。例えば、測定が或る特定の期間内に行われる必要がある反応を含む実験において、異なる温度でのサンプルのバッチ(batch)の順次測定は可能でない。異なる温度の異なるサンプルホルダにわたってサンプルのバッチを分割することによって、光学分光モジュール100によって同じ期間後に同じバッチを同時に測定することが可能である。
【0042】
サンプルホルダ110は、ギャップ114によって互いから分離されて、サンプルホルダ110が直接物理的接触状態にある場合に比べて、サンプルホルダ110間の熱伝導を低減することができる。分離、及び、結果として得られるサンプルホルダ110間の熱伝導の低減は、各サンプルホルダ110の温度が個々に制御されることを有利に支援する。
【0043】
少なくとも約1mmのギャップ114は、サンプルホルダ110間の十分に低減された熱伝導を提供することができる。幾つかの実施形態において、ギャップ114は2mm~10mmである。幾つかの実施形態において、ギャップ114は10mmより大きい。ギャップ内の放射及び対流熱伝達の効果を、ギャップ内に断熱材料を付加することによって更に低減することができる。
【0044】
幾つかの実施形態において、電熱コンポーネント120は、サンプルホルダ110の温度を制御可能に調整するために、電熱変換器又はペルチエデバイス等の熱電デバイスを含む。各ペルチエデバイスを、光学分光モジュール100のサンプルホルダ110とベース102との間でサンプルホルダ110に結合することができる。ペルチエデバイスの第1の側面はサンプルホルダ110に結合することができ、ペルチエデバイスの第2の対向する側面はベース102に結合される。この構成は、サンプルホルダ110を互いから断熱するのを有利に支援することができる。
【0045】
1つ以上のペルチエデバイスを、各サンプルホルダ110について使用することができる。ペルチエデバイスを、熱的に直列に又は並列になるように配置することができる。幾つかの実施形態において、電熱コンポーネント120は熱交換コンポーネント(図示せず)を備える。熱交換コンポーネントは、熱を、ペルチエデバイスの一方の側面から対向する側面に伝達して、試験サンプル及び任意のリファレンスサンプルの温度が制御されることを可能にするのを有利に支援することができる。ベース102は、例えば、全てのサンプルホルダ110に対して共通のヒートシンクとして働くことができる。
【0046】
熱交換コンポーネントは、サンプルホルダ110を冷却するのを支援するために複数のベーンを有するヒートシンク(図示せず)を含むことができる。光学分光モジュール100はブロワ又はファン(図示せず)を備えることもできる。ブロワ又はファンは、複数のベーンにわたって空気を方向付け、それにより、ヒートシンクへの又はヒートシンクからの熱伝達を更に支援するように配置される。
【0047】
幾つかの実施形態において、熱界面材料は、ペルチエデバイスと熱交換コンポーネントとの間の熱結合を改善するために使用することができる。
【0048】
また、ペルチエデバイスを、サンプルホルダ110を加熱するために電気的に駆動することができる。この動作モードにおいて、熱交換コンポーネントは、ペルチエデバイスに伝達するために周囲空気から熱を取出すために使用することができる。
【0049】
熱交換コンポーネントは、内部チャネルを通して液体が流れることを可能にする、当該内部チャネルを含むことで、電熱コンポーネント120を介して液体とサンプルホルダ110との間で熱を伝達することができる。例えば、熱交換コンポーネントは、水が熱交換コンポーネントを通して流れることを可能にすることができる。
【0050】
他の実施形態において、電熱コンポーネント120は、試験サンプル及び任意のリファレンスサンプルの温度が制御されることを可能にするために、サンプルホルダ110を加熱する抵抗加熱デバイスを備えることができる。
【0051】
図2を参照すると、幾つかの実施形態による光学分光計モジュール200が示される。光学分光計モジュール200は2つ以上のサンプルホルダ210を備える。サンプルホルダ210は、上記で述べたサンプルホルダ110と同じであり、レセプタクル211、212を画定することができるが、サンプルホルダ210は支持体218に更に結合される。支持体218は、光学分光計モジュール200のサンプルホルダ210とベース202との間でサンプルホルダ210に取付けられる。それにより、支持体218は、ベース202からサンプルホルダ210を分離する。
【0052】
各サンプルホルダ210は、電熱コンポーネント220に熱的に結合される。電熱コンポーネント220は、光ビーム261、262がレセプタクル211、212によって受信されることを可能にし、対応する検出器240がレセプタクル211、212を透過した光を測定することを可能にするように位置付けられる。幾つかの実施形態において、熱制御コンポーネント220はレセプタクル211、212の下に位置する。
【0053】
サンプルホルダ210は、サンプルホルダ210、キュベット、リファレンスセル、サンプル、キャリア液体、及びリファレンス物質の均一な加熱を支援するために高熱伝導率材料から形成することができる。例えば、サンプルホルダ210は、アルミニウム合金、銅、又はグラファイト等の高熱伝導率材料から形成することができる。
【0054】
高熱伝導率材料の熱伝導率は約50W/mKより大きいものとすることができる。高熱伝導率材料の熱伝導率は約100W/mKより大きいものとすることができる。
【0055】
幾つかの実施形態において、電熱コンポーネント220は、2つ以上のサンプルホルダ210に熱的に結合することができるため、2つ以上のサンプルホルダ210は、実質的に同じ温度になるように制御することができる。各電熱コンポーネント220及び各支持体218は、それにより、リファレンスレセプタクル211を画定する1つ以上のサンプルホルダ210及びリファレンスレセプタクル212を画定する1つ以上のサンプルホルダ210に接続することができる。
【0056】
幾つかの実施形態において、支持体218は、ヒートシンク又は冷却用コンポーネントとして働いて、電熱コンポーネント220からの熱伝達を支援する。したがって、支持体218は、高熱伝導率材料から形成することができる。
【0057】
他の実施形態において、支持体218は、サンプルホルダ210より低い熱伝導率を有する材料から形成されて、サンプルホルダ210とベース202との間の熱伝導を減少させることができる。熱伝導の減少は、隣接するサンプルホルダ210上のレセプタクル211と212との間の熱伝導を有利に低減し、したがって、サンプルホルダ210を断熱するのを支援する。例えば、支持体218は、ポリマー(例えば、ポリカーボネート)又は鉄合金(例えば、鋳鉄)等の低熱伝導率材料から形成することができる。
【0058】
低熱伝導率材料の熱伝導率は約10W/mKより小さいものとすることができる。低熱伝導率材料の熱伝導率は約1W/mKより小さいものとすることができる。
【0059】
2つ以上の電熱コンポーネント220を設けることは、各サンプルホルダ210の温度が独立に制御されることを可能にする。これは、測定が、異なる温度で同時に実施されることを可能にする。有利には、これは、異なる温度で測定を行うために必要とされる総時間量を低減する。
【0060】
幾つかの実施形態において、光学分光計モジュール100、200は、電熱コンポーネント120、220に結合された温度コントローラ(図示せず)を更に備える。温度コントローラは、電熱コンポーネント120、220を制御するように構成され、それにより、サンプルホルダ210及び試験サンプル及び任意のリファレンスサンプルの温度が制御されることを可能にする。
【0061】
幾つかの実施形態において、温度コントローラは、電熱コンポーネントのそれぞれを個々に制御するように適合されるため、各サンプルホルダ210の温度は独立に制御される。代替的に、2つ以上の温度コントローラが設けられて、各サンプルホルダ210の温度は独立に制御することができる。
【0062】
また、光学分光計モジュール100、200は、電熱コンポーネント120、220の1つ以上の電熱コンポーネント及び/又は試験サンプル又は任意のリファレンスサンプルの温度を測定する複数の温度センサ(図示せず)を備えることができる。熱温度コントローラが温度センサに結合されて、測定される温度をフィードバックシステム内で制御することができる。
【0063】
幾つかの実施形態において、光学分光計モジュール200は光分配コンポーネント230を更に備える。光分配コンポーネント230は、光源(図示せず)から光250を受信し、2つ以上の光ビーム261を同時に提供するために、受信された光250を分配するように適合される。各光ビーム261は、レセプタクル211を画定する対応するサンプルホルダ210によって受信される。光分配コンポーネント230は、レセプタクル212を画定する1つ以上のサンプルホルダ210によって受信される1つ以上の光ビーム262を提供するように適合することもできる。
【0064】
例えば、光分配コンポーネント230は、光ファイバー束又はミラーのネットワーク(図示せず)を含むことができる。幾つかの実施形態において、光分配コンポーネント230は、狭い波長範囲を有する(単色)光ビーム261、262を生成するモノクロメータコンポーネントを含む。生成される光は、例えば、0.1nm~5nmの範囲の波長を有することができる。
【0065】
サンプルホルダ210は、レセプタクル211、212において光ビーム261又は1つ以上のビーム262を受信するように適合される。例えば、サンプルホルダ210は、レセプタクル211に受取られるキュベット内に光ビーム261が方向付けられることを可能にするために、開口215aを画定する第1の壁213aを備えることができる。また、レセプタクル212は、レセプタクル212内に受取られるキュベット内に光ビーム262のそれぞれが方向付けられることを可能にするために、更なる開口216aをそれぞれが画定する第1のサンプル壁214aを備えることができる。
【0066】
また、各サンプルホルダ210は、レセプタクル211及びレセプタクル212を透過した光がレセプタクル211、212を出ることを可能にするように更に適合される。これは、リファレンスサンプル及び1つ以上のサンプルを透過した光の強度の測定を可能にするためにそれぞれの対応するレセプタクル211、212に隣接して設置される検出器240が、2つ以上のサンプルによる複数の光吸収レベルを判定することを可能にする。例えば、レセプタクル211を画定するサンプルホルダ210は、第1の壁213aに対向して第2の壁213bを備えることができる。出口215bを画定する第2の壁213bは、レセプタクル211を横切り、キュベット(存在する場合)を通って送信されたリファレンスビーム261が、検出器240のうちの1つの検出器に方向付けられることを可能にする。また、レセプタクル212を画定するサンプルホルダ210は、第1のサンプル壁214aに対向する、更なる出口216bを画定する第2のサンプル壁214bを備えて、サンプルレセプタクル212を横切り、キュベット(存在する場合)を通って送信された試験ビーム262のそれぞれが、検出器240のうちの別の1つの検出器に方向付けられることを可能にすることができる。
【0067】
幾つかの用途において、同時測定を行い、吸収レベルを同時に判定することが可能であるものとすることができる。
【0068】
光学分光計モジュール200は2つ以上の検出器240を更に備えることができ、各検出器240は、対応するサンプルホルダ210にすぐ隣接して位置付けられて、リファレンスサンプル及び試験サンプルを透過した光を採取又は測定し、リファレンスサンプル及び1つ以上のサンプルからの同時測定を可能にし、それにより、1つ以上の試験サンプルによる光吸収レベルが同時に判定されることを可能にする。光学分光計モジュール200は3つ以上の検出器240を備えることができ、各検出器240は、レセプタクル211、212を画定する対応するサンプルホルダ210にすぐ隣接して位置付けられる。
【0069】
幾つかの構成において、光ビーム261及びレセプタクル211は、リファレンス測定を実施するために使用することができる。光ビーム262及びレセプタクル212は、試験サンプルの光学測定を実施するために使用することができる。測定は、順次に又は同時に実施することができる。
【0070】
幾つかの実施形態において、各検出器240は、その対応するレセプタクル211、212に取付けられ、リファレンスサンプルを透過した光を直接測定する。これは、検出器240とレセプタクル211、212との間に更なる光学コンポーネントが全く存在しないため、透過光の強度のいずれの損失も、有利に最小にする。サンプルホルダ210が移動せず、所定の位置に固定されるため、レセプタクル211、212に検出器240を直接取付けることは或る程度実用的である。光学分光計モジュール200において移動機構は必要ない場合がある。これは、光学分光計モジュール200内に検出器240を直接含む更なる空間を光学分光計モジュール200内に有利に提供する。
【0071】
幾つかの実施形態において、開口215a及び更なる開口216aは、約2mm~5mmの範囲内の寸法を有することができる。例えば、開口215a及び更なる開口216aは、約2mmの幅及び約2.5mmの高さを有することができる。
【0072】
図3を参照すると、幾つかの実施形態による光学分光計モジュール100、200内に含まれるように適合されるサンプルホルダ310のセットが示される。各サンプルホルダ310は、リファレンスレセプタクル311又はレセプタクル312のいずれかを画定する。サンプルホルダ310は、共通ヒートシンク322を共有するが、その他の点ではサンプルホルダ110、210と同じである。6つのサンプルホルダ310が、示す実施形態において設けられ、サンプルホルダ310のうちの2つは、下にある電熱コンポーネント320を見ることを可能にするために示されない。
【0073】
電熱コンポーネント320は、上述した熱電デバイスである。電熱コンポーネント320の上側321は、リファレンスレセプタクル311及びサンプルレセプタクル312のベースに熱的に結合される。ヒートシンク322は、電熱コンポーネント320の下側(図示せず)に熱的に結合される。ヒートシンク322は、熱消散を支援するために電熱コンポーネントから外方に延在する複数のベーン324を備える。
【0074】
電熱コンポーネント120、220、320は、-10℃~110℃の範囲にわたってサンプルホルダ110、210、310の温度を調整するように適合することができる。幾つかの実施形態において、電熱コンポーネント120、220、320は、0℃~60℃の範囲にわたってサンプルホルダ110、210、310の温度を調整するように適合することができる。
【0075】
また、サンプルホルダ310は、サンプルホルダ310を光学分光計モジュール100、200内の所定の位置に固定するのを支援する支持体318を備えることができる。支持体318は、例えば、レセプタクル311、312をヒートシンク322に取付ける。サンプルホルダ310と支持体318との間の熱伝達を制限するために、支持体318は、低熱伝導率材料から形成することができる。
【0076】
幾つかの実施形態において、レセプタクル311、312は約40mmの高さを有する。開口315a、316a及び凹所313b、314bは、円形であり、レセプタクル311、312のベースの上の15mm又は20mmに心出しすることができる。サンプルホルダ310のベースが電熱コンポーネント320によって温度制御されるため、ベースに最も近いリファレンス又はサンプルの部分は、所望される所定の温度により近いものとすることができる。したがって、開口315a、316a及び凹所313b、314bを、上部ではなくキュベットのベースの近くに位置付けることは、ベースにより近いリファレンス又はサンプルの部分が分析されることを可能にする。それにより、これは、より正確かつ信頼性のある分析に有利につながることができる。
【0077】
幾つかの実施形態において、サンプルホルダ310は、撹拌コンポーネントを更に備えることができ、撹拌コンポーネントは、キュベット内の液体サンプルが撹拌されることを可能にして、サンプル内の温度差及び他の不均一性を最小にする。
【0078】
幾つかの実施形態において、サンプルホルダ110、210及びサンプルホルダ310のセットは、測定中に固定されるが、その他のときは取外し可能であるものとすることができる。サンプルホルダ110、210、310を、例えば、ねじ、クリップ等の締結具によって、又は、所定の場所に入れる(slotting)ことによって固定することができる。サンプルホルダ110、210及びサンプルホルダ310のセットは、例えば、保守、修理、又は置換のために取外すことができる。
【0079】
また、光源モジュール(図示せず)に取外し可能に結合された光学分光計モジュール100、200を備える分光システムが開示される。光源モジュールはランプを含む。例えば、ランプは、最大300Hzのレートで最大0.5J/パルス(/フラッシュ)のエネルギーを有するパルス状光出力を生成することが可能である高出力フラッシュランプとすることができる。有利には、出力光強度を、最大8つの光ビームであって、それぞれが光学分光を実施するのに十分な強度を有する、最大8つの光ビームに分割することができる。また、出力ランプは、190nm~2500nmの波長範囲にわたる光を生成する。幾つかの実施形態において、ランプは、加圧されたキセノンガス内に収容された電極を備えるショートアークフラッシュランプとすることができる。例えば、光源モジュールは、Exelitas Technologies社によって生産された1100シリーズFX-1160ショートアークフラッシュランプを含むことができる。
【0080】
分光システムをモジュール式システムとして設けることは、異なる用途のためのモジュール間の相互交換及び相互運用を有利に可能にする。例えば、光源モジュールは、取外すことができ、本明細書で開示される光学分光モジュール100、200と別の光学分光モジュールとの間で相互交換することができる。これは、共通モジュールを使用して、コストを節約する、又は、必要である場合、故障したモジュールをすぐに相互交換する柔軟性をエンドユーザーに提供する。
【0081】
また、光源モジュールは、狭い波長出力の(単色の)光ビーム250を生成するモノクロメータコンポーネントを備えることができる。
【0082】
分光システムは、光学分光モジュール100、200から光強度データを受信するように適合される計算ユニットを更に備えることができる。計算ユニットは、プロセッサを備え、プロセッサは、リファレンスサンプルからの検出された光の測定された強度を1つ以上の試験サンプルのそれぞれと比較し、それにより、1つ以上のサンプルによる光吸収レベルを判定するように適合される。
【0083】
図4を参照すると、幾つかの実施形態による光学分析方法400を示すフローチャートが示される。方法400は、410にて、光学分光計モジュール100、200で光250を受信することを含む。方法400は、420にて、光学分光計モジュール100、200の光分配コンポーネント230によって、受信された光250を2つ以上の光ビーム261、262に分配することを更に含む。サンプルホルダ110、210、310によって受取られたリファレンスサンプル及び試験サンプルは、430にて、光ビーム261、262に曝露される。また、方法400は、440にて、電熱コンポーネント120、220、320を使用して、異なる所定の温度の動作マージン以内に2つ以上のサンプルホルダ110、210、310のうちの少なくとも2つのサンプルホルダを維持することを含む。
【0084】
各サンプルホルダ110、210、310がそれ自身の電熱コンポーネント120、220、320を備えるため、異なる所定の温度を取得することができる。上述したように、サンプルホルダ120、220、320は、ヒートシンク322等の熱交換コンポーネントを備えることもできる。幾つかの実施形態において、熱は、サンプルホルダ120、220、320、及び、空気ブロワ、ファン、又は流動性の水を有する熱交換コンポーネントによって交換される。
【0085】
サンプル測定中のサンプルホルダ120、220、320の所定の温度は、上述したように、熱電デバイス又は抵抗加熱器等の電熱変換器によってサンプルホルダ120、220、320を制御可能に加熱することによって動的に維持することができる。
【0086】
受信された光250は単色とすることができる。代替的に、方法400は、広帯域光として光250を受信することと、光分配コンポーネント230によって単色光ビーム261、262を生成することとを含むこともできる。
【0087】
光学分析方法400は、450にて、リファレンス信号を取得するために、レセプタクル111、112、211、212、311、312を透過した光及び任意のリファレンスの強度を検出器によって測定することを更に含むことができる。方法400は、452にて、サンプル信号を取得するために、1つ以上の試験サンプルを透過した光の強度を1つ以上の検出器240によって測定することを更に含むこともできる。透過したそれぞれの光ビームの強度は1つの検出器240によって測定される。
【0088】
方法400は、460にて、目標物質の1つ以上の光吸収レベルを判定することを含むこともできる。これは、例えば、リファレンス信号をサンプル信号で割ることによって実施することができる。
【0089】
幾つかの実施形態において、方法400は、リファレンス及び1つ以上の試験サンプルについて強度スペクトルを同時に取得するために、異なる波長で曝露すること(430)及び測定すること(450)を繰返すことを含む。
【0090】
また、方法400は、或る範囲の異なる所定の温度にわたって繰返されて、その範囲の温度にわたって1つ以上の試験サンプルについて光吸収データを同時に取得することができる。例えば、リファレンスサンプル及び試験サンプルの温度を、連続的に又は周期的に変更することができ、測定は、温度が所定の温度の動作マージン以内であるときに行うことができる。
【0091】
当業者には、本開示の広い全体的な範囲から逸脱することなく、上述した実施形態に対して多数の変形及び/又は変更を行うことができることが理解されよう。したがって、本実施形態は、全ての点において、限定的ではなく例示的なものとしてみなされるべきである。
なお、出願当初の特許請求の範囲の記載は以下の通りである。
請求項1:
サンプルを分析する光学分光計モジュールであって、
2つ以上のサンプルホルダであって、各サンプルホルダは、
該光学分光計モジュール内の固定ロケーションにおいてサンプルを受取り、再現性よく位置決めし、
光ビームを受信し、それにより、該サンプルホルダ内に収容されるサンプルが、前記受信される光ビームに曝露されることを可能にし、
該サンプルホルダを透過した光が該サンプルホルダを出ることを可能にする、
ように適合される、2つ以上のサンプルホルダと、
2つ以上の電熱コンポーネントと、
を備え、各電熱コンポーネントは、前記サンプルホルダの温度を制御するためにそれぞれのサンプルホルダに熱的に結合される、光学分光計モジュール。
請求項2:
前記2つ以上の電熱コンポーネントはそれぞれ、熱電デバイスを備える、請求項1に記載の光学分光計モジュール。
請求項3:
前記サンプルホルダのうちの少なくとも1つのサンプルホルダはリファレンスとして使用される、請求項1又は2に記載の光学分光計モジュール。
請求項4:
前記2つ以上のサンプルホルダは、高熱伝導率を有する材料から形成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学分光計モジュール。
請求項5:
前記2つ以上のサンプルホルダと周囲空気との間の熱交換を支援するように適合される熱交換コンポーネントを更に備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学分光計モジュール。
請求項6:
前記熱交換コンポーネントは、前記2つ以上のサンプルホルダと熱的に結合された複数のベーンと、前記複数のベーン上に空気を吹付けるように配置されたブロワとを備える、請求項5に記載の光学分光計モジュール。
請求項7:
前記熱交換コンポーネントは、液体が通って流れることを可能にする内部チャネルを備える、請求項5に記載の光学分光計モジュール。
請求項8:
前記2つ以上の電熱コンポーネントに結合された1つ以上の温度コントローラを更に備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の光学分光計モジュール。
請求項9:
前記1つ以上の温度コントローラは、前記電熱コンポーネントのそれぞれを個々に制御する、請求項8に記載の光学分光計モジュール。
請求項10:
各サンプルホルダに取付けられた支持体を更に備える、請求項1~9のいずれか1項に記載の光学分光計モジュール。
請求項11:
前記光学分光計モジュールは、2つ以上の支持体を更に備え、各支持体は、1つ以上のサンプルホルダに取付けられる、請求項1~9のいずれか1項に記載の光学分光計モジュール。
請求項12:
前記サンプルホルダのうちの少なくとも2つのサンプルホルダはギャップによって分離される、請求項1~11のいずれか1項に記載の光学分光計モジュール。
請求項13:
前記ギャップは低熱伝導率を有する材料を含む、請求項12に記載の光学分光計モジュール。
請求項14:
前記光学分光計モジュールは、2つ以上の検出器を更に備え、各検出器は、1つのレセプタクルに隣接して位置して、サンプルを透過した光を直接測定し、前記リファレンスサンプル及び前記1つ以上のサンプルからの同時測定を可能にし、それにより、前記1つ以上のサンプルによる光吸収レベルが判定されることを可能にする、請求項1~13のいずれか1項に記載の光学分光計モジュール。
請求項15:
各レセプタクルは少なくとも1つの側壁を備え、該側壁は、
前記2つ以上の光ビームのうちの1つの光ビームを受信するように適合される開口と、
サンプルを透過した光が前記2つ以上の検出器によって測定されることを可能にするために前記開口に対向して位置決めされた出口と、
を画定する、請求項1~14のいずれか1項に記載の光学分光計モジュール。
請求項16:
前記2つ以上のサンプルホルダは所定の位置に固定される、請求項1~15のいずれか1項に記載の光学分光計モジュール。
請求項17:
各レセプタクルは、前記サンプルセルを受取るために前記レセプタクルの上方端に開口を画定する、請求項1~16のいずれか1項に記載の光学分光計モジュール。
請求項18:
請求項1~17のいずれか1項に記載の光学分光計モジュールにおいて光を受信することと、
2つ以上のサンプルホルダ内に受取られる試験サンプルを前記受信される光に曝露することと、
所定の温度になるように前記2つ以上のサンプルホルダのうちの少なくとも2つのサンプルホルダの温度を制御することと、
を含む、光学分析方法。
請求項19:
前記温度を制御することは、異なる所定の温度になるように各サンプルホルダの温度を制御することを含む、請求項18に記載の光学分析方法。
請求項20:
リファレンス信号を取得するために、サンプルホルダを透過した光の強度を検出器によって測定することを更に含む、請求項18又は19に記載の光学分析方法。
請求項21:
前記方法は、サンプル信号を取得するために、1つ以上の試験サンプルを透過した光の強度を測定することを更に含み、透過した光の前記強度は1つの検出器によって測定される、請求項18~20のいずれか1項に記載の光学分析方法。
請求項22:
前記リファレンス信号を前記サンプル信号と比較することによって、1つ以上の光吸収レベルを判定することを更に含む、請求項20に従属する場合の請求項21に記載の光学分析方法。
請求項23:
前記温度を前記制御することは、空気ブロワ又は流動性流体によって、熱交換コンポーネントと前記サンプルホルダとの間の熱を交換させることを含む、請求項18~22のいずれか1項に記載の光学分析方法。
請求項24:
前記温度を前記制御することは、熱電デバイス又は抵抗加熱器によって前記サンプルホルダを制御可能に加熱することを含む、請求項18~23のいずれか1項に記載の光学分析方法。
図1
図2
図3
図4