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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ジアリール大環状化合物を含む併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/529 20060101AFI20221213BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20221213BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20221213BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221213BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221213BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
A61K31/529
A61K31/5377
A61K31/506
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61P43/00 111
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019560071
(86)(22)【出願日】2018-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 US2018015150
(87)【国際公開番号】W WO2018140554
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2021-01-15
(31)【優先権主張番号】62/450,455
(32)【優先日】2017-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/619,165
(32)【優先日】2018-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516221454
【氏名又は名称】ターニング・ポイント・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Turning Point Therapeutics,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ジンロン・ジーン・ツイ
(72)【発明者】
【氏名】ダヨン・ジャイ
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/112806(WO,A2)
【文献】特表2016-540993(JP,A)
【文献】特表2014-513706(JP,A)
【文献】特開2014-177456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00-45/08
A61K 31/00-33/44
A61K 39/00-39/44
A61P 35/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのさらなる抗癌剤の治療的有効量と組み合わせた、患者における癌の処置での使用のための、治療的有効量で、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物または薬学的に許容可能なその塩を含む医薬組成物であって、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物が
【化1】
または薬学的に許容可能なその塩であり、さらなる抗癌剤がゲフィチニブおよびオシメルチニブから選択されるEGFR阻害剤または薬学的に許容可能なその塩である、医薬組成物。
【請求項2】
癌がALCL、NSCLC、神経芽細胞腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、成人腎細胞癌、小児腎細胞癌、乳癌、ER乳癌、トリプルネガティブ乳癌、結腸腺癌、神経膠芽腫、多形膠芽腫、未分化甲状腺癌、胆管細胞癌、卵巣癌、結直腸癌、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、血管肉腫、類上皮血管内皮腫、肝内胆管細胞癌、甲状腺癌、スピッツ腫瘍(spitzoid neoplasms)、肉腫、星状細胞腫、脳ロワーグレード(lower grade)神経膠腫、分泌乳癌、乳腺相似癌、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph-様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺がん、頭頸部扁平上皮癌、小児神経膠腫CML、前立腺癌、肺扁平上皮癌、卵巣漿液性嚢胞腺癌、皮膚(skin cutaneous)黒色腫、去勢抵抗性前立腺癌、ホジキンリンパ腫、漿液性および明細胞子宮内膜癌、口腔癌、子宮内膜癌、内分泌性癌、皮膚癌、胃癌、食道癌、喉頭癌、膵臓癌、結腸癌、膀胱癌、骨癌、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、直腸癌、腎臓癌、肝臓癌および肺癌からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
癌が非小細胞肺癌である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
癌が結直腸癌である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
癌が膵臓癌である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
癌がトリプルネガティブ乳癌である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
癌が頭頸部扁平上皮癌である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
さらなる抗癌剤がゲフィチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、請求項1~7の何れかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
さらなる抗癌剤がオシメルチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、請求項1~7の何れかに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本願は、両方の開示の全体が参照により本明細書中に組み込まれる、2017年1月25日提出の米国特許仮出願第62/450,455号明細書および2018年1月19日提出の同第62/619,165号明細書に対する35U.S.C.§119(e)のもと、優先権を主張する。
【0002】
本開示は、少なくとも1つの他の癌治療剤、例えばEGFR阻害剤と組み合わせてジアリール大環状分子で癌を処置するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
EGFRは、NSCLC、HNSCC、悪性神経膠腫および結直腸癌を含むいくつかの固形悪性腫瘍において発現され、異常なまたは脱制御されたEGFR活性は多くの腫瘍形成過程に寄与することが知られている。肺癌は、先進国において癌死亡の主原因であり続けている。肺で始まる癌は、細胞が顕微鏡下でどのように見えるかによって、2つの主要なタイプ、非小細胞肺癌および小細胞肺癌に分けられる。非小細胞肺癌(扁平上皮癌、腺癌および大細胞癌)は一般に小細胞肺癌よりもゆっくりと他の臓器に広がる。肺癌症例の約75パーセントは非小細胞肺癌(例えば腺癌)として分類され、他の25パーセントは小細胞肺癌である。疾患が進行した患者に対して、化学療法は、生存において中程度の利益をもたらすが、顕著な毒性という代償を払っており、腫瘍成長を方向付ける重要な遺伝子病変に特異的に標的にされる治療剤が必要とされていることは明確である(Schiller J Hら、N Engl J Med,346:92-98,2002)。
【0004】
EGFRの過剰発現(上方制御として知られる)または過剰活性をもたらす突然変異は、肺癌、肛門癌および多形膠芽腫を含む多くの癌と関連している。EGFRまたはファミリーメンバーの突然変異、増幅または誤制御は全上皮癌の約30%に関与している。その結果として、いくつかの癌タイプでEGFRの突然変異が同定されており、2つのアプローチ:(1)EGFRへのリガンドの結合を妨げる標的化モノクローナル抗体(mAB)および(2)受容体の細胞内触媒活性を阻止する低分子チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)を使用する、EGFRに対する抗癌治療剤の開発をもたらした。タンパク質キナーゼは、細胞成長、増殖および生存に対する重要な制御因子である。遺伝的およびエピジェネティックな変更が癌細胞において蓄積し、悪性過程を推進するシグナル伝達経路の異常な活性化をもたらす(Manning,G.;Whyte,D.B.;Martinez,R.;Hunter,T.;Sudarsanam,S.The protein kinase complement of the human genome.Science 2002,298,1912-1934)。これらのシグナル伝達経路の薬理学的阻害は、標的化癌治療剤に対する有望な介入機会である(Sawyers,C.Targeted cancer therapy.Nature 2004,432,294-297)。
【0005】
第一世代の低分子HER TKIとしては、ゲフィチニブ(Iressa(登録商標))およびエルロチニブ(Tarceva(登録商標))が挙げられ、両者ともEGFRに可逆的に結合する。ゲフィチニブは、腫瘍においてEGFR突然変異を有する進行性NSCLCの全ての処置ラインにおいて適応され、エルロチニブは、事前の化学療法後の進行性NSCLCの処置として適応されるが、EGFR突然変異陽性NSCLCの全ラインにおいて開発中である。これらの新しい薬物は、EGFRキナーゼドメインを可逆的に標的とする。
【0006】
第二世代の低分子TKIは、EGFRキナーゼドメインに、好ましくはEGFRのシステイン797に不可逆的に結合する不可逆的EGFR阻害剤として設計された。EGFR突然変異を有する患者における初期応答にもかかわらず、後天的な抵抗性が、およそ12か月の中央値の後に発現することが多い。後天的な抵抗性のコンセンサス定義(consensus definition)は、次のもの:薬物感受性と関連することが知られているEGFR突然変異(すなわちG719X、エクソン19欠失、L858R、L861Q)またはEGFR-TKIでの処置からの客観的な臨床的有用性を有する腫瘍;少なくとも24週間にわたるEGFRに対する処置での継続的処置中の、当技術分野で公知のRECIST基準を適用する疾患の全身性の進行、の何れかまたは両方;の単剤EGFR-TKI(例えばゲフィチニブまたはエルロチニブ)での前処置を受けた患者を含む。
【0007】
標的NSCLC治療剤における第一および第二世代のEGFR阻害剤の成功にもかかわらず、臨床応答の持続時間は、後天的な薬物抵抗性の不可避の発達により限定される。一次的なEGFR突然変異(エルロチニブおよびゲフィチニブ感受性と関連する)に加えて、後天的なEGFR-TKI抵抗性がある患者のおよそ半分は、ATPに有利なように受容体親和性を変化させ得る、チロシンキナーゼのATP-結合ポケット中に第2のEGFR突然変異(T790M)を有する。これらの第2の突然変異は癌細胞が突然変異体EGFRを介してシグナル伝達を継続することを可能にし、EGFR-TKIに対する後天的抵抗性を有する患者の一部において、腫瘍成長および増殖がEGFRに依然として依存していることを示唆する。他の内因性または後天的抵抗性機序としては、バイパスシグナル伝達の上方制御(AXL、MET、ERBb2など)、下流経路における活性化突然変異(PI3K、AKT、MEK、RAF)、アポトーシス促進タンパク質BIMの低レベルのmRNAまたは多型、EMTに対する転写プログラムの誘導および表現型の変化、または腫瘍PD-L1レベル上昇の誘導が挙げられる。(Morgillo F,Della Corte CM,Fasano Mら.Mechanisms of resistance to EGFR-targeted drugs:lung cancer.ESMO Open 2016;1:e000060)。
【0008】
当技術分野において、EGFRにより推進される癌の満足のいく処置に対する顕著な医学的ニーズがある。第一選択でのおよび耐性癌により示される無応答性を克服するための上で概説した単剤標的治療ストラテジーに加えて、併用処置も有望であり得る。
【発明の概要】
【0009】
EGFR阻害剤とFAK、SRCおよびJAK2のトリプル阻害剤の組み合わせがEGFRにより推進される癌において堅固な応答をもたらすことが発見された。
【0010】
一態様において、本開示は、宿主動物において癌を処置するための方法であって、少なくとも1つのさらなる抗癌剤の治療的有効量と組み合わせてFAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物の治療的有効量を宿主動物に投与する段階を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、さらなる抗癌剤はEGFR阻害剤または薬学的に許容可能なその塩である。
【0011】
別の態様において、本開示は、治療的有効量の少なくとも1つのさらなる抗癌剤と組み合わせた、患者における癌の処置での使用のための、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物または薬学的に許容可能なその塩を提供する。いくつかの実施形態において、さらなる抗癌剤は、EGFR阻害剤または薬学的に許容可能なその塩である。
【0012】
別の態様において、本開示は、治療的有効量の少なくとも1つのさらなる抗癌剤と組み合わせた、患者における癌の処置のための、治療的有効量の本化合物を含む薬剤の調製における、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物または薬学的に許容可能なその塩の使用を提供する。いくつかの実施形態において、さらなる抗癌剤は、EGFR阻害剤または薬学的に許容可能なその塩である。
【0013】
別の態様において、本開示は、治療的有効量の少なくとも1つのさらなる抗癌剤と組み合わせた、患者における癌の処置での使用のための、治療的有効量で、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物または薬学的に許容可能なその塩を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、さらなる抗癌剤は、EGFR阻害剤または薬学的に許容可能なその塩である。
【0014】
別の態様において、本開示は、固定されたまたは自由な組み合わせで、EGFR阻害剤または薬学的に許容可能なその塩と組み合わせた、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物または薬学的に許容可能なその塩を含む薬剤を提供する。
【0015】
別の態様において、本開示は、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物およびEGFR阻害剤の相乗的組成物を提供し、この2つの成分は、ある場所で互いに接触する。
【0016】
別の態様において、本開示は、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物およびEGFR阻害剤の相乗的組成物を提供し、この2つの成分はヒト身体中でのみ互いに接触する。
【0017】
いくつかの実施形態において、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物は、式IもしくはIIの化合物:
【化1】
(式中、
Xは、NRまたはCHRであり;
およびRのそれぞれは独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、-OR、-C(O)ORまたは-C(O)NRであり;C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-CシクロアルキルおよびC-C10アリール中の各水素原子は独立に場合によっては、重水素、ハロゲン、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、-NHC(O)C-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)C-Cアルキル、-NHC(O)NH、-NHC(O)NHC-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)NH、-N(C-Cアルキル)C(O)NHC-Cアルキル、-NHC(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)C(O)N(C-Cアルキル)、-NHC(O)OC-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)OC-Cアルキル、-NHS(O)(C-Cアルキル)、-NHS(O)(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)(C-Cアルキル)、-NHS(O)NH、-NHS(O)NH、-N(C-Cアルキル)S(O)NH、-N(C-Cアルキル)S(O)NH、-NHS(O)NH(C-Cアルキル)、-NHS(O)NH(C-Cアルキル)、-NHS(O)N(C-Cアルキル)、-NHS(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)N(C-Cアルキル)、-COH、-C(O)OC-Cアルキル、-C(O)NH、-C(O)NH(C-Cアルキル)、-C(O)N(C-Cアルキル)、-SC-Cアルキル、-S(O)C-Cアルキル、-S(O)-Cアルキル、-S(O)NH(C-Cアルキル)、-S(O)NH(C-Cアルキル)、-S(O)N(C-Cアルキル)、-S(O)N(C-Cアルキル)、-P(C-Cアルキル)、-P(O)(C-Cアルキル)、-C-Cシクロアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキルにより置換され;
は独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリールであり;C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリール中の各水素原子は独立に場合によっては、重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキルまたは-ORにより置換され;
は、H、C-Cアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキルであり、C-Cアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキル中の各水素原子は独立に場合によっては、ハロゲン、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、-COH、-C(O)OC-Cアルキル、-C(O)NH、-C(O)NH(C-Cアルキル)、-C(O)N(C-Cアルキル)、C-Cシクロアルキルまたは単環式5~7員ヘテロシクロアルキルにより置換され;
各RおよびRは独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたはヘテロアリールであり;
nは、0または1である);
または薬学的に許容可能なその塩である。
【0018】
いくつかの実施形態において、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物は、式I-aもしくはII-aの化合物:
【化2】
(式中、
Xは、NRまたはCHRであり;
およびRのそれぞれは独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、-OR、-C(O)ORまたは-C(O)NRであり;C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-CシクロアルキルおよびC-C10アリール中の各水素原子は独立に場合によっては、重水素、ハロゲン、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、-NHC(O)C-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)C-Cアルキル、-NHC(O)NH、-NHC(O)NHC-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)NH、-N(C-Cアルキル)C(O)NHC-Cアルキル、-NHC(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)C(O)N(C-Cアルキル)、-NHC(O)OC-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)OC-Cアルキル、-NHS(O)(C-Cアルキル)、-NHS(O)(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)(C-Cアルキル)、-NHS(O)NH、-NHS(O)NH、-N(C-Cアルキル)S(O)NH、-N(C-Cアルキル)S(O)NH、-NHS(O)NH(C-Cアルキル)、-NHS(O)NH(C-Cアルキル)、-NHS(O)N(C-Cアルキル)、-NHS(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)N(C-Cアルキル)、-COH、-C(O)OC-Cアルキル、-C(O)NH、-C(O)NH(C-Cアルキル)、-C(O)N(C-Cアルキル)、-SC-Cアルキル、-S(O)C-Cアルキル、-S(O)-Cアルキル、-S(O)NH(C-Cアルキル)、-S(O)NH(C-Cアルキル)、-S(O)N(C-Cアルキル)、-S(O)N(C-Cアルキル)、-P(C-Cアルキル)、-P(O)(C-Cアルキル)、-C-Cシクロアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキルにより置換され;
は独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリールであり;C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリール中の各水素原子は独立に場合によっては、重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキルまたは-ORにより置換され;
は、H、C-Cアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキルであり、C-Cアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキル中の各水素原子は独立に場合によっては、ハロゲン、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、-COH、-C(O)OC-Cアルキル、-C(O)NH、-C(O)NH(C-Cアルキル)、-C(O)N(C-Cアルキル)、C-Cシクロアルキルまたは単環式5~7員ヘテロシクロアルキルにより置換され;
各RおよびRは独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたはヘテロアリールであり;
nは、0または1である。);
または薬学的に許容可能なその塩である。
【0019】
いくつかの実施形態において、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物は、式I-bもしくはII-bの化合物
【化3】
(式中、
Xは、NRまたはCHRであり;
およびRのそれぞれは独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、-OR、-C(O)ORまたは-C(O)NRであり;C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-CシクロアルキルおよびC-C10アリール中の各水素原子は独立に場合によっては、重水素、ハロゲン、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、-NHC(O)C-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)C-Cアルキル、-NHC(O)NH、-NHC(O)NHC-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)NH、-N(C-Cアルキル)C(O)NHC-Cアルキル、-NHC(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)C(O)N(C-Cアルキル)、-NHC(O)OC-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)OC-Cアルキル、-NHS(O)(C-Cアルキル)、-NHS(O)(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)(C-Cアルキル)、-NHS(O)NH、-NHS(O)NH、-N(C-Cアルキル)S(O)NH、-N(C-Cアルキル)S(O)NH、-NHS(O)NH(C-Cアルキル)、-NHS(O)NH(C-Cアルキル)、-NHS(O)N(C-Cアルキル)、-NHS(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)N(C-Cアルキル)、-COH、-C(O)OC-Cアルキル、-C(O)NH、-C(O)NH(C-Cアルキル)、-C(O)N(C-Cアルキル)、-SC-Cアルキル、-S(O)C-Cアルキル、-S(O)-Cアルキル、-S(O)NH(C-Cアルキル)、-S(O)NH(C-Cアルキル)、-S(O)N(C-Cアルキル)、-S(O)N(C-Cアルキル)、-P(C-Cアルキル)、-P(O)(C-Cアルキル)、-C-Cシクロアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキルにより置換され;
は独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリールであり;C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリール中の各水素原子は独立に場合によっては、重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキルまたは-ORにより置換され;
は、H、C-Cアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキルであり、C-Cアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキル中の各水素原子は独立に場合によっては、ハロゲン、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、-COH、-C(O)OC-Cアルキル、-C(O)NH、-C(O)NH(C-Cアルキル)、-C(O)N(C-Cアルキル)、C-Cシクロアルキルまたは単環式5~7員ヘテロシクロアルキルにより置換され;
各RおよびRは独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたはヘテロアリールであり;
nは、0または1である。);
または薬学的に許容可能なその塩である。
【0020】
上記態様のいくつかの実施形態において、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物は、次の式の化合物
【化4】
または薬学的に許容可能なその塩である。
【0021】
上記態様のいくつかの実施形態において、EGFR阻害剤は、抗体または低分子阻害剤である。上記態様のいくつかの実施形態において、EGFR阻害剤は抗体である。上記態様のいくつかの実施形態において、抗体は、セツキシマブ、ネシツムマブまたはパニツムマブである。上記態様のいくつかの実施形態において、EGFR阻害剤は低分子阻害剤である。上記態様のいくつかの実施形態において、低分子阻害剤は、アファチニブ、ブリガチニブ、セツキシマブ、カネルチニブ(CI-1033)、ダコミチニブ、エロルチニブ、ゲフィチニブ、HKI357、イコチニブ、ラパチニブ、オシメルチニブ、ナコチニブ、ナザルチニブ、ネシツムマブ、ネラチニブ、オルムチニブ、パニツムマブ、ペリチニブ、PF-06747775、ロシレチニブ、バンデタニブ、WZ3146、WZ4002、WZ8040または薬学的に許容可能なその塩である。
【0022】
本開示のさらなる実施形態、特性および長所は、次の詳細な記述から、および本開示の実施を通じて明らかになろう。本開示の化合物は、次の列挙される項の何れかにおいて実施形態として記載され得る。本明細書中に記載の実施形態の何れも、その実施形態が互いに矛盾しない程度に、本明細書中に記載の何らかの他の実施形態と関連して使用され得ると理解されよう。
【0023】
1.宿主動物において癌を処置するための方法であって、少なくとも1つのさらなる抗癌剤の治療的有効量と組み合わせて、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物の治療的有効量を上記宿主動物に投与する段階を含む、方法。
2.FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物が、式IもしくはIIの化合物
【化5】
(式中、
Xは、NRまたはCHRであり;
およびRのそれぞれは独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、-OR、-C(O)ORまたは-C(O)NRであり;C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-CシクロアルキルおよびC-C10アリール中の各水素原子は独立に場合によっては、重水素、ハロゲン、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、-NHC(O)C-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)C-Cアルキル、-NHC(O)NH、-NHC(O)NHC-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)NH、-N(C-Cアルキル)C(O)NHC-Cアルキル、-NHC(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)C(O)N(C-Cアルキル)、-NHC(O)OC-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)OC-Cアルキル、-NHS(O)(C-Cアルキル)、-NHS(O)(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)(C-Cアルキル)、-NHS(O)NH、-NHS(O)NH、-N(C-Cアルキル)S(O)NH、-N(C-Cアルキル)S(O)NH、-NHS(O)NH(C-Cアルキル)、-NHS(O)NH(C-Cアルキル)、-NHS(O)N(C-Cアルキル)、-NHS(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)N(C-Cアルキル)、-COH、-C(O)OC-Cアルキル、-C(O)NH、-C(O)NH(C-Cアルキル)、-C(O)N(C-Cアルキル)、-SC-Cアルキル、-S(O)C-Cアルキル、-S(O)-Cアルキル、-S(O)NH(C-Cアルキル)、-S(O)NH(C-Cアルキル)、-S(O)N(C-Cアルキル)、-S(O)N(C-Cアルキル)、-P(C-Cアルキル)、-P(O)(C-Cアルキル)、-C-Cシクロアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキルにより置換され;
は独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリールであり;C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリール中の各水素原子は独立に場合によっては、重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキルまたは-ORにより置換され;
は、H、C-Cアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキルであり、C-Cアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキル中の各水素原子は独立に場合によっては、ハロゲン、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、-COH、-C(O)OC-Cアルキル、-C(O)NH、-C(O)NH(C-Cアルキル)、-C(O)N(C-Cアルキル)、C-Cシクロアルキルまたは単環式5~7員ヘテロシクロアルキルにより置換され;
各RおよびRは独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたはヘテロアリールであり;
nは、0または1である);
または薬学的に許容可能なその塩である、項1に記載の方法。
3.上記FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物が、次の式の化合物:
【化6】
または薬学的に許容可能なその塩である、項1または2に記載の方法。
4.上記癌が、ALCL、NSCLC、神経芽細胞腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、成人腎細胞癌、小児腎細胞癌、乳癌、ER乳癌、トリプルネガティブ乳、結腸腺癌、神経膠芽腫、多形膠芽腫、未分化甲状腺癌、胆管細胞癌、卵巣癌、結直腸癌、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、血管肉腫、類上皮血管内皮腫、肝内胆管細胞癌、甲状腺癌、スピッツ腫瘍(spitzoid neoplasms)、肉腫、星状細胞腫、脳ロワーグレード(lower grade)神経膠腫、分泌乳癌、乳腺相似癌、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph-様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺がん、頭頸部扁平上皮癌、小児神経膠腫CML、前立腺癌、肺扁平上皮癌、卵巣漿液性嚢胞腺癌、皮膚(skin cutaneous)黒色腫、去勢抵抗性前立腺癌、ホジキンリンパ腫、漿液性および明細胞子宮内膜癌、口腔癌、子宮内膜癌、内分泌性癌、皮膚癌、胃癌、食道癌、喉頭癌、膵臓癌、結腸癌、膀胱癌、骨癌、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、直腸癌、腎臓癌、肝臓癌および肺癌からなる群から選択される、項1~3に記載の方法。
5.上記癌が、非小細胞肺癌、転移性非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、転移性頭頸部扁平上皮癌、結直腸癌、転移性結直腸癌、膵臓癌または転移性膵臓癌である、項1~4の何れか1項に記載の方法。
6.上記癌が、非小細胞肺癌である、項4に記載の方法。
7.上記癌が、結直腸癌である、項4に記載の方法。
8.上記癌が、膵臓癌である、項4に記載の方法。
9.上記癌が、トリプルネガティブ乳である、項4に記載の方法。
10.上記さらなる抗癌剤が、EGFR阻害剤または薬学的に許容可能なその塩である、項1~9の何れか1項に記載の方法。
11.上記さらなる抗癌剤が、EGFRの抗体またはEGFRの低分子阻害剤である、項1~10の何れか1項に記載の方法。
12.上記さらなる抗癌剤が、EGFRの抗体である、項1~10の何れか1項に記載の方法。
13.上記抗体が、セツキシマブ、ネシツムマブまたはパニツムマブである、項13に記載の方法。
14.上記さらなる抗癌剤が、EGFRの低分子阻害剤である、項1~10の何れか1項に記載の方法。
15.上記低分子阻害剤が、アファチニブ、ブリガチニブ、セツキシマブ、カネルチニブ(CI-1033)、ダコミチニブ、エロルチニブ、ゲフィチニブ、HKI357、イコチニブ、ラパチニブ、オシメルチニブ、ナコチニブ、ナザルチニブ、ネシツムマブ、ネラチニブ、オルムチニブ、パニツムマブ、ペリチニブ、PF-06747775、ロシレチニブ、バンデタニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項14に記載の方法。
16.上記さらなる抗癌剤が、ゲフィチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項1~9の何れか1項に記載の方法。
17.上記さらなる抗癌剤が、オシメルチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項1~9の何れか1項に記載の方法。
18.上記さらなる抗癌剤が、エルロチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項1~9の何れか1項に記載の方法。
18a.上記さらなる抗癌剤が、イコチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項1~9の何れか1項に記載の方法。
19.治療的有効量の少なくとも1つのさらなる抗癌剤と組み合わせた、患者における癌の処置における使用のための、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物または薬学的に許容可能なその塩。
20.上記FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物が、式IもしくはIIの化合物:
【化7】
(式中、
Xは、NRまたはCHRであり;
およびRのそれぞれは独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、-OR、-C(O)ORまたは-C(O)NRであり;C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-CシクロアルキルおよびC-C10アリール中の各水素原子は独立に場合によっては、重水素、ハロゲン、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、-NHC(O)C-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)C-Cアルキル、-NHC(O)NH、-NHC(O)NHC-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)NH、-N(C-Cアルキル)C(O)NHC-Cアルキル、-NHC(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)C(O)N(C-Cアルキル)、-NHC(O)OC-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)OC-Cアルキル、-NHS(O)(C-Cアルキル)、-NHS(O)(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)(C-Cアルキル)、-NHS(O)NH、-NHS(O)NH、-N(C-Cアルキル)S(O)NH、-N(C-Cアルキル)S(O)NH、-NHS(O)NH(C-Cアルキル)、-NHS(O)NH(C-Cアルキル)、-NHS(O)N(C-Cアルキル)、-NHS(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)N(C-Cアルキル)、-COH、-C(O)OC-Cアルキル、-C(O)NH、-C(O)NH(C-Cアルキル)、-C(O)N(C-Cアルキル)、-SC-Cアルキル、-S(O)C-Cアルキル、-S(O)-Cアルキル、-S(O)NH(C-Cアルキル)、-S(O)NH(C-Cアルキル)、-S(O)N(C-Cアルキル)、-S(O)N(C-Cアルキル)、-P(C-Cアルキル)、-P(O)(C-Cアルキル)、-C-Cシクロアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキルにより置換され;
は独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリールであり;C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリール中の各水素原子は独立に場合によっては、重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキルまたは-ORにより置換され;
は、H、C-Cアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキルであり、C-Cアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキル中の各水素原子は独立に場合によっては、ハロゲン、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、-COH、-C(O)OC-Cアルキル、-C(O)NH、-C(O)NH(C-Cアルキル)、-C(O)N(C-Cアルキル)、C-Cシクロアルキルまたは単環式5~7員ヘテロシクロアルキルにより置換され;
各RおよびRは独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたはヘテロアリールであり;
nは、0または1である);
または薬学的に許容可能なその塩である、項19に記載の化合物。
【0024】
21.上記FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物が、次の式の化合物:
【化8】
または薬学的に許容可能なその塩である、項19に記載の化合物。
22.上記癌が、ALCL、NSCLC、神経芽細胞腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、成人腎細胞癌、小児腎細胞癌、乳癌、ER乳癌、トリプルネガティブ乳、結腸腺癌、神経膠芽腫、多形膠芽腫、未分化甲状腺癌、胆管細胞癌、卵巣癌、結直腸癌、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、血管肉腫、類上皮血管内皮腫、肝内胆管細胞癌、甲状腺癌、スピッツ腫瘍(spitzoid neoplasms)、肉腫、星状細胞腫、脳ロワーグレード(lower grade)神経膠腫、分泌乳癌、乳腺相似癌、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph-様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺がん、頭頸部扁平上皮癌、小児神経膠腫CML、前立腺癌、肺扁平上皮癌、卵巣漿液性嚢胞腺癌、皮膚(skin cutaneous)黒色腫、去勢抵抗性前立腺癌、ホジキンリンパ腫、漿液性および明細胞子宮内膜癌、口腔癌、子宮内膜癌、内分泌性癌、皮膚癌、胃癌、食道癌、喉頭癌、膵臓癌、結腸癌、膀胱癌、骨癌、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、直腸癌、腎臓癌、肝臓癌および肺癌からなる群から選択される、項19~21の何れか1項に記載の化合物。
23.上記癌が、非小細胞肺癌である、項19~21の何れか1項に記載の化合物。
24.上記癌が、結直腸癌である、項19~21の何れか1項に記載の化合物。
25.上記癌が、膵臓癌である、項19~21の何れか1項に記載の化合物。
26.上記癌が、トリプルネガティブ乳である、項19~21の何れか1項に記載の化合物。
27.上記癌が、頭頸部扁平上皮癌である、項19~21の何れか1項に記載の化合物。
28.上記さらなる抗癌剤が、EGFR阻害剤または薬学的に許容可能なその塩である、項19~27の何れか1項に記載の化合物。
29.上記さらなる抗癌剤が、EGFRの抗体またはEGFRの低分子阻害剤である、項19~27の何れか1項に記載の化合物。
30.上記さらなる抗癌剤が、EGFRの抗体である、項19~27の何れか1項に記載の化合物。
31.上記抗体が、セツキシマブ、ネシツムマブまたはパニツムマブである、項30に記載の化合物。
32.上記さらなる抗癌剤が、EGFRの低分子阻害剤である、項19~27の何れか1項に記載の化合物。
33.上記低分子阻害剤が、アファチニブ、ブリガチニブ、セツキシマブ、カネルチニブ(CI-1033)、ダコミチニブ、エロルチニブ、ゲフィチニブ、HKI357、イコチニブ、ラパチニブ、オシメルチニブ、ナコチニブ、ナザルチニブ、ネシツムマブ、ネラチニブ、オルムチニブ、パニツムマブ、ペリチニブ、PF-06747775、ロシレチニブ、バンデタニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項32に記載の化合物。
34.上記さらなる抗癌剤が、ゲフィチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項19~27の何れか1項に記載の化合物。
35.上記さらなる抗癌剤が、オシメルチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項19~27の何れか1項に記載の化合物。
36.上記さらなる抗癌剤が、エルロチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項19~27の何れか1項に記載の化合物。
36a.上記さらなる抗癌剤が、イコチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項19~27の何れか1項に記載の化合物。
37.治療的有効量の少なくとも1つのさらなる抗癌剤と組み合わせた、患者における癌の処置のためのFAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物の治療的有効量を含む薬剤の調製における、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物または薬学的に許容可能なその塩の使用。
38.上記FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物が、式IもしくはIIの化合物:
【化9】
(式中、
Xは、NRまたはCHRであり;
およびRのそれぞれは独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、-OR、-C(O)ORまたは-C(O)NRであり;C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-CシクロアルキルおよびC-C10アリール中の各水素原子は独立に場合によっては、重水素、ハロゲン、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、-NHC(O)C-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)C-Cアルキル、-NHC(O)NH、-NHC(O)NHC-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)NH、-N(C-Cアルキル)C(O)NHC-Cアルキル、-NHC(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)C(O)N(C-Cアルキル)、-NHC(O)OC-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)OC-Cアルキル、-NHS(O)(C-Cアルキル)、-NHS(O)(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)(C-Cアルキル)、-NHS(O)NH、-NHS(O)NH、-N(C-Cアルキル)S(O)NH、-N(C-Cアルキル)S(O)NH、-NHS(O)NH(C-Cアルキル)、-NHS(O)NH(C-Cアルキル)、-NHS(O)N(C-Cアルキル)、-NHS(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)N(C-Cアルキル)、-COH、-C(O)OC-Cアルキル、-C(O)NH、-C(O)NH(C-Cアルキル)、-C(O)N(C-Cアルキル)、-SC-Cアルキル、-S(O)C-Cアルキル、-S(O)-Cアルキル、-S(O)NH(C-Cアルキル)、-S(O)NH(C-Cアルキル)、-S(O)N(C-Cアルキル)、-S(O)N(C-Cアルキル)、-P(C-Cアルキル)、-P(O)(C-Cアルキル)、-C-Cシクロアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキルにより置換され;
は独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリールであり;C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリール中の各水素原子は独立に場合によっては、重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキルまたは-ORにより置換され;
は、H、C-Cアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキルであり、C-Cアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキル中の各水素原子は独立に場合によっては、ハロゲン、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、-COH、-C(O)OC-Cアルキル、-C(O)NH、-C(O)NH(C-Cアルキル)、-C(O)N(C-Cアルキル)、C-Cシクロアルキルまたは単環式5~7員ヘテロシクロアルキルにより置換され;
各RおよびRは独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたはヘテロアリールであり;
nは、0または1である);
または薬学的に許容可能なその塩である、項37に記載の化合物。
【0025】
39.上記FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物が、次の式の化合物:
【化10】
または薬学的に許容可能なその塩である、項37に記載の使用。
40.上記癌が、ALCL、NSCLC、神経芽細胞腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、成人腎細胞癌、小児腎細胞癌、乳癌、ER乳癌、トリプルネガティブ乳、結腸腺癌、神経膠芽腫、多形膠芽腫、未分化甲状腺癌、胆管細胞癌、卵巣癌、結直腸癌、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、血管肉腫、類上皮血管内皮腫、肝内胆管細胞癌、甲状腺癌、スピッツ腫瘍(spitzoid neoplasms)、肉腫、星状細胞腫、脳ロワーグレード(lower grade)神経膠腫、分泌乳癌、乳腺相似癌、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph-様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺がん、頭頸部扁平上皮癌、小児神経膠腫CML、前立腺癌、肺扁平上皮癌、卵巣漿液性嚢胞腺癌、皮膚(skin cutaneous)黒色腫、去勢抵抗性前立腺癌、ホジキンリンパ腫、漿液性および明細胞子宮内膜癌、口腔癌、子宮内膜癌、内分泌性癌、皮膚癌、胃癌、食道癌、喉頭癌、膵臓癌、結腸癌、膀胱癌、骨癌、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、直腸癌、腎臓癌、肝臓癌および肺癌からなる群から選択される、項37~39の何れか1項に記載の使用。
41.上記癌が、非小細胞肺癌である、項37~40の何れか1項に記載の使用。
42.上記癌が、結直腸癌である、項37~40の何れか1項に記載の使用。
43.上記癌が、膵臓癌である、項37~40の何れか1項に記載の使用。
44.上記癌が、トリプルネガティブ乳である、項37~40の何れか1項に記載の使用。
45.上記癌が、頭頸部扁平上皮癌である、項37~40の何れか1項に記載の使用。
46.上記さらなる抗癌剤が、EGFR阻害剤または薬学的に許容可能なその塩である、項37~45の何れか1項に記載の使用。
47.上記さらなる抗癌剤が、EGFRの抗体またはEGFRの低分子阻害剤である、項37~45の何れか1項に記載の使用。
48.上記さらなる抗癌剤が、EGFRの抗体である、項37~45の何れか1項に記載の使用。
49.上記抗体が、セツキシマブ、ネシツムマブまたはパニツムマブである、項48に記載の使用。
50.上記さらなる抗癌剤が、EGFRの低分子阻害剤である、項37~45の何れか1項に記載の使用。
51.上記低分子阻害剤が、アファチニブ、ブリガチニブ、セツキシマブ、カネルチニブ(CI-1033)、ダコミチニブ、エロルチニブ、ゲフィチニブ、HKI357、イコチニブ、ラパチニブ、オシメルチニブ、ナコチニブ、ナザルチニブ、ネシツムマブ、ネラチニブ、オルムチニブ、パニツムマブ、ペリチニブ、PF-06747775、ロシレチニブ、バンデタニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項50に記載の使用。
52.上記さらなる抗癌剤が、ゲフィチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項37~45の何れか1項に記載の使用。
53.上記さらなる抗癌剤が、オシメルチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項37~45の何れか1項に記載の使用。
54.上記さらなる抗癌剤が、エルロチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項37~45の何れか1項に記載の使用。
54a.上記さらなる抗癌剤が、イコチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項37~45の何れか1項に記載の使用。
55.治療的有効量の少なくとも1つのさらなる抗癌剤と組み合わせた、患者における癌の処置での使用のための、治療的有効量で、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物または薬学的に許容可能なその塩を含む、組成物。
56.上記FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物が、式IもしくはIIの化合物:
【化11】
(式中、
Xは、NRまたはCHRであり;
およびRのそれぞれは独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、-OR、-C(O)ORまたは-C(O)NRであり;C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-CシクロアルキルおよびC-C10アリール中の各水素原子は独立に場合によっては、重水素、ハロゲン、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、-NHC(O)C-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)C-Cアルキル、-NHC(O)NH、-NHC(O)NHC-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)NH、-N(C-Cアルキル)C(O)NHC-Cアルキル、-NHC(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)C(O)N(C-Cアルキル)、-NHC(O)OC-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)OC-Cアルキル、-NHS(O)(C-Cアルキル)、-NHS(O)(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)(C-Cアルキル)、-NHS(O)NH、-NHS(O)NH、-N(C-Cアルキル)S(O)NH、-N(C-Cアルキル)S(O)NH、-NHS(O)NH(C-Cアルキル)、-NHS(O)NH(C-Cアルキル)、-NHS(O)N(C-Cアルキル)、-NHS(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)N(C-Cアルキル)、-COH、-C(O)OC-Cアルキル、-C(O)NH、-C(O)NH(C-Cアルキル)、-C(O)N(C-Cアルキル)、-SC-Cアルキル、-S(O)C-Cアルキル、-S(O)-Cアルキル、-S(O)NH(C-Cアルキル)、-S(O)NH(C-Cアルキル)、-S(O)N(C-Cアルキル)、-S(O)N(C-Cアルキル)、-P(C-Cアルキル)、-P(O)(C-Cアルキル)、-C-Cシクロアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキルにより置換され;
は独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリールであり;C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリール中の各水素原子は独立に場合によっては、重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキルまたは-ORにより置換され;
は、H、C-Cアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキルであり、C-Cアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキル中の各水素原子は独立に場合によっては、ハロゲン、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、-COH、-C(O)OC-Cアルキル、-C(O)NH、-C(O)NH(C-Cアルキル)、-C(O)N(C-Cアルキル)、C-Cシクロアルキルまたは単環式5~7員ヘテロシクロアルキルにより置換され;
各RおよびRは独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたはヘテロアリールであり;
nは、0または1である)
または薬学的に許容可能なその塩である、項55に記載の組成物。
57.上記FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物が、次の式の化合物:
【化12】
または薬学的に許容可能なその塩である、項55に記載の組成物。
58.上記癌が、ALCL、NSCLC、神経芽細胞腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、成人腎細胞癌、小児腎細胞癌、乳癌、ER乳癌、トリプルネガティブ乳、結腸腺癌、神経膠芽腫、多形膠芽腫、未分化甲状腺癌、胆管細胞癌、卵巣癌、結直腸癌、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、血管肉腫、類上皮血管内皮腫、肝内胆管細胞癌、甲状腺癌、スピッツ腫瘍(spitzoid neoplasms)、肉腫、星状細胞腫、脳ロワーグレード(lower grade)神経膠腫、分泌乳癌、乳腺相似癌、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph-様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺がん、頭頸部扁平上皮癌、小児神経膠腫CML、前立腺癌、肺扁平上皮癌、卵巣漿液性嚢胞腺癌、皮膚(skin cutaneous)黒色腫、去勢抵抗性前立腺癌、ホジキンリンパ腫、漿液性および明細胞子宮内膜癌、口腔癌、子宮内膜癌、内分泌性癌、皮膚癌、胃癌、食道癌、喉頭癌、膵臓癌、結腸癌、膀胱癌、骨癌、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、直腸癌、腎臓癌、肝臓癌および肺癌からなる群から選択される、項55~57の何れか1項に記載の組成物。
59.上記癌が、非小細胞肺癌である、項55~58の何れか1項に記載の組成物。
60.上記癌が、結直腸癌である、項55~58の何れか1項に記載の組成物。
61.上記癌が、膵臓癌である、項55~58の何れか1項に記載の組成物。
62.上記癌が、トリプルネガティブ乳である、項55~58の何れか1項に記載の組成物。
63.上記癌が、頭頸部扁平上皮癌である、項55~58の何れか1項に記載の組成物。
64.上記さらなる抗癌剤が、EGFR阻害剤または薬学的に許容可能なその塩である、項55~63の何れか1項に記載の組成物。
65.上記さらなる抗癌剤が、EGFRの抗体またはEGFRの低分子阻害剤である、項55~63の何れか1項に記載の組成物。
66.上記さらなる抗癌剤が、EGFRの抗体である、項55~63の何れか1項に記載の組成物。
67.上記抗体が、セツキシマブ、ネシツムマブまたはパニツムマブである、項66に記載の組成物。
68.上記さらなる抗癌剤が、EGFRの低分子阻害剤である、項55~63の何れか1項に記載の組成物。
69.上記低分子阻害剤が、アファチニブ、ブリガチニブ、セツキシマブ、カネルチニブ(CI-1033)、ダコミチニブ、エロルチニブ、ゲフィチニブ、HKI357、イコチニブ、ラパチニブ、オシメルチニブ、ナコチニブ、ナザルチニブ、ネシツムマブ、ネラチニブ、オルムチニブ、パニツムマブ、ペリチニブ、PF-06747775、ロシレチニブ、バンデタニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項68に記載の組成物。
70.上記さらなる抗癌剤が、ゲフィチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項55~63の何れか1項に記載の組成物。
71.上記さらなる抗癌剤が、オシメルチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項55~63の何れか1項に記載の組成物。
72.上記さらなる抗癌剤が、エルロチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項55~63の何れか1項に記載の組成物。
72a.上記さらなる抗癌剤が、イコチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項55~63の何れか1項に記載の組成物。
73.固定されたまたは自由な組み合わせで、EGFR阻害剤または薬学的に許容可能なその塩と組み合わせて、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物または薬学的に許容可能なその塩を含む、薬剤。
74.上記FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物が、式IもしくはIIの化合物:
【化13】
(式中、
Xは、NRまたはCHRであり;
およびRのそれぞれは独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、-OR、-C(O)ORまたは-C(O)NRであり;C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-CシクロアルキルおよびC-C10アリール中の各水素原子は独立に場合によっては、重水素、ハロゲン、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、-NHC(O)C-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)C-Cアルキル、-NHC(O)NH、-NHC(O)NHC-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)NH、-N(C-Cアルキル)C(O)NHC-Cアルキル、-NHC(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)C(O)N(C-Cアルキル)、-NHC(O)OC-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)OC-Cアルキル、-NHS(O)(C-Cアルキル)、-NHS(O)(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)(C-Cアルキル)、-NHS(O)NH、-NHS(O)NH、-N(C-Cアルキル)S(O)NH、-N(C-Cアルキル)S(O)NH、-NHS(O)NH(C-Cアルキル)、-NHS(O)NH(C-Cアルキル)、-NHS(O)N(C-Cアルキル)、-NHS(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)N(C-Cアルキル)、-COH、-C(O)OC-Cアルキル、-C(O)NH、-C(O)NH(C-Cアルキル)、-C(O)N(C-Cアルキル)、-SC-Cアルキル、-S(O)C-Cアルキル、-S(O)-Cアルキル、-S(O)NH(C-Cアルキル)、-S(O)NH(C-Cアルキル)、-S(O)N(C-Cアルキル)、-S(O)N(C-Cアルキル)、-P(C-Cアルキル)、-P(O)(C-Cアルキル)、-C-Cシクロアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキルにより置換され;
は独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリールであり;C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリール中の各水素原子は独立に場合によっては、重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキルまたは-ORにより置換され;
は、H、C-Cアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキルであり、C-Cアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキル中の各水素原子は独立に場合によっては、ハロゲン、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、-COH、-C(O)OC-Cアルキル、-C(O)NH、-C(O)NH(C-Cアルキル)、-C(O)N(C-Cアルキル)、C-Cシクロアルキルまたは単環式5~7員ヘテロシクロアルキルにより置換され;
各RおよびRは独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたはヘテロアリールであり;
nは、0または1である)
または薬学的に許容可能なその塩である、項73に記載の薬剤。
75.上記FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物が、次の式の化合物:
【化14】
または薬学的に許容可能なその塩である、項73に記載の薬剤。
76.ALCL、NSCLC、神経芽細胞腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、成人腎細胞癌、小児腎細胞癌、乳癌、ER乳癌、トリプルネガティブ乳、結腸腺癌、神経膠芽腫、多形膠芽腫、未分化甲状腺癌、胆管細胞癌、卵巣癌、結直腸癌、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、血管肉腫、類上皮血管内皮腫、肝内胆管細胞癌、甲状腺癌、スピッツ腫瘍(spitzoid neoplasms)、肉腫、星状細胞腫、脳ロワーグレード(lower grade)神経膠腫、分泌乳癌、乳腺相似癌、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph-様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺がん、頭頸部扁平上皮癌、小児神経膠腫CML、前立腺癌、肺扁平上皮癌、卵巣漿液性嚢胞腺癌、皮膚(skin cutaneous)黒色腫、去勢抵抗性前立腺癌、ホジキンリンパ腫、漿液性および明細胞子宮内膜癌、口腔癌、子宮内膜癌、内分泌性癌、皮膚癌、胃癌、食道癌、喉頭癌、膵臓癌、結腸癌、膀胱癌、骨癌、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、直腸癌、腎臓癌、肝臓癌および肺癌からなる群から選択される癌に対し相乗効果をもたらす、項73~75の何れか1項に記載の薬剤。
77.上記癌が、非小細胞肺癌である、項73~76の何れか1項に記載の薬剤。
78.上記癌が、結直腸癌である、項73~76の何れか1項に記載の薬剤。
79.上記癌が、膵臓癌である、項73~76の何れか1項に記載の薬剤。
80.上記癌が、トリプルネガティブ乳である、項73~76の何れか1項に記載の薬剤。
81.上記癌が、頭頸部扁平上皮癌である、項73~76の何れか1項に記載の薬剤。
82.上記EGFR阻害剤が、抗体または低分子阻害剤である、項73~81の何れか1項に記載の薬剤。
83.上記EGFR阻害剤が、抗体である、項73~81の何れか1項に記載の薬剤。
84.上記抗体が、セツキシマブ、ネシツムマブまたはパニツムマブである、項83に記載の薬剤。
85.上記EGFR阻害剤が、低分子阻害剤である、項73~81の何れか1項に記載の薬剤。
86.上記低分子阻害剤が、アファチニブ、ブリガチニブ、セツキシマブ、カネルチニブ(CI-1033)、ダコミチニブ、エロルチニブ、ゲフィチニブ、HKI357、イコチニブ、ラパチニブ、オシメルチニブ、ナコチニブ、ナザルチニブ、ネシツムマブ、ネラチニブ、オルムチニブ、パニツムマブ、ペリチニブ、PF-06747775、ロシレチニブ、バンデタニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項85に記載の薬剤。
87.上記EGFR阻害剤が、ゲフィチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項73~81の何れか1項に記載の薬剤。
88.上記EGFR阻害剤が、オシメルチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項73~81の何れか1項に記載の薬剤。
89.上記EGFR阻害剤が、エルロチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項73~81の何れか1項に記載の薬剤。
89a.上記さらなる抗癌剤が、イコチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項73~81の何れか1項に記載の薬剤。
90.FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物およびEGFR阻害剤の相乗的組成物であって、この2つの成分がある場所で互いに接触する、相乗的組成物。
91.上記FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物が、式IもしくはIIの化合物:
【化15】
(式中、
Xは、NRまたはCHRであり;
およびRのそれぞれは独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、-OR、-C(O)ORまたは-C(O)NRであり;C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-CシクロアルキルおよびC-C10アリール中の各水素原子は独立に場合によっては、重水素、ハロゲン、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、-NHC(O)C-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)C-Cアルキル、-NHC(O)NH、-NHC(O)NHC-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)NH、-N(C-Cアルキル)C(O)NHC-Cアルキル、-NHC(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)C(O)N(C-Cアルキル)、-NHC(O)OC-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)OC-Cアルキル、-NHS(O)(C-Cアルキル)、-NHS(O)(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)(C-Cアルキル)、-NHS(O)NH、-NHS(O)NH、-N(C-Cアルキル)S(O)NH、-N(C-Cアルキル)S(O)NH、-NHS(O)NH(C-Cアルキル)、-NHS(O)NH(C-Cアルキル)、-NHS(O)N(C-Cアルキル)、-NHS(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)N(C-Cアルキル)、-COH、-C(O)OC-Cアルキル、-C(O)NH、-C(O)NH(C-Cアルキル)、-C(O)N(C-Cアルキル)、-SC-Cアルキル、-S(O)C-Cアルキル、-S(O)-Cアルキル、-S(O)NH(C-Cアルキル)、-S(O)NH(C-Cアルキル)、-S(O)N(C-Cアルキル)、-S(O)N(C-Cアルキル)、-P(C-Cアルキル)、-P(O)(C-Cアルキル)、-C-Cシクロアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキルにより置換され;
は独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリールであり;C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリール中の各水素原子は独立に場合によっては、重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキルまたは-ORにより置換され;
は、H、C-Cアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキルであり、C-Cアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキル中の各水素原子は独立に場合によっては、ハロゲン、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、-COH、-C(O)OC-Cアルキル、-C(O)NH、-C(O)NH(C-Cアルキル)、-C(O)N(C-Cアルキル)、C-Cシクロアルキルまたは単環式5~7員ヘテロシクロアルキルにより置換され;
各RおよびRは独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたはヘテロアリールであり;
nは、0または1である)
または薬学的に許容可能なその塩である、項90に記載の相乗的組成物。
92.上記FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物が、次の式の化合物:
【化16】
または薬学的に許容可能なその塩である、項90に記載の相乗的組成物。
93.上記場所が、癌または癌細胞である、項90~92の何れか1項に記載の相乗的組成物。
94.上記場所が、ALCL、NSCLC、神経芽細胞腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、成人腎細胞癌、小児腎細胞癌、乳癌、ER乳癌、トリプルネガティブ乳、結腸腺癌、神経膠芽腫、多形膠芽腫、未分化甲状腺癌、胆管細胞癌、卵巣癌、結直腸癌、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、血管肉腫、類上皮血管内皮腫、肝内胆管細胞癌、甲状腺癌、スピッツ腫瘍(spitzoid neoplasms)、肉腫、星状細胞腫、脳ロワーグレード(lower grade)神経膠腫、分泌乳癌、乳腺相似癌、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph-様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺がん、頭頸部扁平上皮癌、小児神経膠腫CML、前立腺癌、肺扁平上皮癌、卵巣漿液性嚢胞腺癌、皮膚(skin cutaneous)黒色腫、去勢抵抗性前立腺癌、ホジキンリンパ腫、漿液性および明細胞子宮内膜癌、口腔癌、子宮内膜癌、内分泌性癌、皮膚癌、胃癌、食道癌、喉頭癌、膵臓癌、結腸癌、膀胱癌、骨癌、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、直腸癌、腎臓癌、肝臓癌および肺癌からなる群から選択される癌である、項90~92の何れか1項に記載の相乗的組成物。
95.上記癌が、非小細胞肺癌である、項90~93の何れか1項に記載の相乗的組成物。
96.上記癌が、結直腸癌である、項90~93の何れか1項に記載の相乗的組成物。
97.上記癌が、膵臓癌である、項90~93の何れか1項に記載の相乗的組成物。
98.上記癌が、トリプルネガティブ乳である、項90~93の何れか1項に記載の相乗的組成物。
99.上記癌が、頭頸部扁平上皮癌である、項90~93の何れか1項に記載の相乗的組成物。
100.上記EGFR阻害剤が、抗体または低分子阻害剤である、項90~99の何れか1項に記載の相乗的組成物。
101.上記EGFR阻害剤が、抗体である、項90~99の何れか1項に記載の相乗的組成物。
102.上記抗体が、セツキシマブ、ネシツムマブまたはパニツムマブである、項101に記載の相乗的組成物。
103.上記EGFR阻害剤が、低分子阻害剤である、項90~99の何れか1項に記載の相乗的組成物。
104.上記低分子阻害剤が、アファチニブ、ブリガチニブ、セツキシマブ、カネルチニブ(CI-1033)、ダコミチニブ、エロルチニブ、ゲフィチニブ、HKI357、イコチニブ、ラパチニブ、オシメルチニブ、ナコチニブ、ナザルチニブ、ネシツムマブ、ネラチニブ、オルムチニブ、パニツムマブ、ペリチニブ、PF-06747775、ロシレチニブ、バンデタニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項103に記載の相乗的組成物。
105.上記EGFR阻害剤が、ゲフィチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項90~99の何れか1項に記載の相乗的組成物。
106.上記EGFR阻害剤が、オシメルチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項90~99の何れか1項に記載の相乗的組成物。
107.上記EGFR阻害剤が、エルロチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項90~99の何れか1項に記載の相乗的組成物。
107a.上記さらなる抗癌剤が、イコチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項90~99の何れか1項に記載の相乗的組成物。
108.FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物およびEGFR阻害剤の相乗的組成物であって、この2つの成分がヒト身体においてのみ互いに接触する、相乗的組成物。
109.上記FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物が、式IもしくはIIの化合物:
【化17】
(式中、
Xは、NRまたはCHRであり;
およびRのそれぞれは独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、-OR、-C(O)ORまたは-C(O)NRであり;C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-CシクロアルキルおよびC-C10アリール中の各水素原子は独立に場合によっては、重水素、ハロゲン、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、-NHC(O)C-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)C-Cアルキル、-NHC(O)NH、-NHC(O)NHC-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)NH、-N(C-Cアルキル)C(O)NHC-Cアルキル、-NHC(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)C(O)N(C-Cアルキル)、-NHC(O)OC-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)OC-Cアルキル、-NHS(O)(C-Cアルキル)、-NHS(O)(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)(C-Cアルキル)、-NHS(O)NH、-NHS(O)NH、-N(C-Cアルキル)S(O)NH、-N(C-Cアルキル)S(O)NH、-NHS(O)NH(C-Cアルキル)、-NHS(O)NH(C-Cアルキル)、-NHS(O)N(C-Cアルキル)、-NHS(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)N(C-Cアルキル)、-COH、-C(O)OC-Cアルキル、-C(O)NH、-C(O)NH(C-Cアルキル)、-C(O)N(C-Cアルキル)、-SC-Cアルキル、-S(O)C-Cアルキル、-S(O)-Cアルキル、-S(O)NH(C-Cアルキル)、-S(O)NH(C-Cアルキル)、-S(O)N(C-Cアルキル)、-S(O)N(C-Cアルキル)、-P(C-Cアルキル)、-P(O)(C-Cアルキル)、-C-Cシクロアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキルにより置換され;
は独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリールであり;C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリール中の各水素原子は独立に場合によっては、重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキルまたは-ORにより置換され;
は、H、C-Cアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキルであり、C-Cアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキル中の各水素原子は独立に場合によっては、ハロゲン、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、-COH、-C(O)OC-Cアルキル、-C(O)NH、-C(O)NH(C-Cアルキル)、-C(O)N(C-Cアルキル)、C-Cシクロアルキルまたは単環式5~7員ヘテロシクロアルキルにより置換され;
各RおよびRは独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたはヘテロアリールであり;
nは、0または1である)
または薬学的に許容可能なその塩である、項90に記載の相乗的組成物。
110.上記FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物が、次の式の化合物:
【化18】
または薬学的に許容可能なその塩である、項108に記載の相乗的組成物。
111.上記EGFR阻害剤が、EGFRの抗体またはEGFRの低分子阻害剤である、項108~110の何れか1項に記載の相乗的組成物。
112.上記EGFR阻害剤が、抗体である、項111に記載の相乗的組成物。
113.上記抗体が、セツキシマブ、ネシツムマブまたはパニツムマブである、項112に記載の相乗的組成物。
114.上記EGFR阻害剤が、低分子阻害剤である、項111に記載の相乗的組成物。
115.上記低分子阻害剤が、アファチニブ、ブリガチニブ、セツキシマブ、カネルチニブ(CI-1033)、ダコミチニブ、エロルチニブ、ゲフィチニブ、HKI357、イコチニブ、ラパチニブ、オシメルチニブ、ナコチニブ、ナザルチニブ、ネシツムマブ、ネラチニブ、オルムチニブ、パニツムマブ、ペリチニブ、PF-06747775、ロシレチニブ、バンデタニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項114に記載の相乗的組成物。
116.上記EGFR阻害剤が、ゲフィチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項114に記載の相乗的組成物。
117.上記EGFR阻害剤がオシメルチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項114に記載の相乗的組成物。
118.上記EGFR阻害剤が、エルロチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項114に記載の相乗的組成物。
119.上記さらなる抗癌剤が、イコチニブまたは薬学的に許容可能なその塩である、項114に記載の相乗的組成物。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1a図1aは、様々な用量での、PC9細胞における、EGFR阻害剤ゲフィチニブ、化合物1ならびに、ゲフィチニブおよび化合物1の細胞生存能%を示す。(〇)ゲフィチニブ;(□)化合物1;(△)ゲフィチニブ+化合物1。
図1b図1bは、PC9細胞における、EGFR阻害剤ゲフィチニブおよび化合物1のコンビネーションインデックス(Combination Index)(CI)を示す。CI=0.685。
図2a図2aは、様々な用量での、PC9細胞における、EGFR阻害剤オシメルチニブ、化合物1ならびに、オシメルチニブおよび化合物1の細胞生存能%を示す。(〇)オシメルチニブ;(□)化合物1;(△)オシメルチニブ+化合物1。
図2b図2bは、PC9細胞における、EGFR阻害剤オシメルチニブおよび化合物1のコンビネーションインデックス(Combination Index)(CI)を示す。CI=0.600。
図3a図3aは、様々な用量での、H1975細胞における、EGFR阻害剤ゲフィチニブ、化合物1ならびに、ゲフィチニブおよび化合物1の細胞生存能%を示す。(〇)ゲフィチニブ;(□)化合物1;(△)ゲフィチニブ+化合物1。
図3b図3bは、H1975細胞における、化合物1とのEGFR阻害剤ゲフィチニブのコンビネーションインデックス(Combination Index)(CI)を示す。CI=0.845。
図4a図4aは、様々な用量での、H1975細胞における、EGFR阻害剤オシメルチニブ、化合物1ならびに、オシメルチニブおよび化合物1の細胞生存能%を示す。(〇)オシメルチニブ;(□)化合物1;(△)オシメルチニブ+化合物1。
図4b図4bは、H1975細胞における、化合物1とのEGFR阻害剤オシメルチニブのコンビネーションインデックス(Combination Index)(CI)を示す。CI=0.612。
図5a図5aは、PC9細胞における、対照、EGFR阻害剤ゲフィチニブ、化合物1ならびに、化合物1とのゲフィチニブの組み合わせのコロニー形成画像を示す。
図5b図5bは、PC9細胞における、対照、EGFR阻害剤ゲフィチニブ、化合物1およびゲフィチニブと化合物1の組み合わせの、%コロニー形成面積のグラフ表示を示す。(A)対照;(B)ゲフィチニブ;(C)化合物1;(D)ゲフィチニブ+化合物1。
図6a図6aは、PC9細胞における、対照、EGFR阻害剤オシメルチニブ、化合物1およびオシメルチニブと化合物1の組み合わせのコロニー形成画像を示す。
図6b図6bは、PC9細胞における、対照、EGFR阻害剤オシメルチニブ、化合物1およびオシメルチニブと化合物1の組み合わせの%コロニー形成面積のグラフ表示を示す。(A)対照;(B)オシメルチニブ;(C)化合物1;(D)オシメルチニブ+化合物1。
図7a図7aは、H1975細胞における、対照、EGFR阻害剤ゲフィチニブ、化合物1およびゲフィチニブと化合物1の組み合わせのコロニー形成画像を示す。
図7b図7bは、H1975細胞における、対照、EGFR阻害剤ゲフィチニブ、化合物1およびゲフィチニブと化合物1の組み合わせの%コロニー形成面積のグラフ表示を示す。(A)対照;(B)ゲフィチニブ;(C)化合物1;(D)ゲフィチニブ+化合物1。
図8a図8aは、H1975細胞における、対照、EGFR阻害剤オシメルチニブ、化合物1およびオシメルチニブと化合物1の組み合わせのコロニー形成画像を示す。
図8b図8bは、H1975細胞における、対照、EGFR阻害剤オシメルチニブ、化合物1およびオシメルチニブと化合物1の組み合わせの%コロニー形成面積のグラフ表示を示す。(A)対照;(B)オシメルチニブ;(C)化合物1;(D)オシメルチニブ+化合物1。
図9図9は、NCI-H1975細胞における、化合物1、オシメルチニブまたは化合物1とオシメルチニブの組み合わせの抗増殖を示す。(●)化合物1、IC50=4000nM;(□)オシメルチニブ、IC50(部分的)=13.4nM;(■)化合物1(1μM)+オシメルチニブ、IC50=100nM;(▽)化合物1(3μM)+オシメルチニブ、IC50=3nM。
図10図10は、NCI-H1975細胞における、化合物1、エルロチニブまたは化合物1とエルロチニブの組み合わせの抗増殖を示す。(●)化合物1、IC50=4000nM;(▲)エルロチニブ、IC50=6236nM;(◆)化合物1(1μM)+エルロチニブ、IC50=5000nM;(○)化合物1(3μM)+エルロチニブIC50=1000nM。
図11図11は、化合物1が用量依存的にパキシリンのリン酸化を阻害したことを示すゲル画像を示す。
図12図12は、1μM濃度での、化合物1、オシメルチニブ(AZD9291)、エルロチニブ、化合物1+オシメルチニブ(AZD9291)および化合物1+エルロチニブによる、STAT3、ERKおよびAKTシグナル伝達経路の阻害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明をさらに記載する前に、本発明は、記載される特定の実施形態に限定されず、当然ではあるが変動し得ることを理解されたい。本発明の範囲が添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書中で使用される用語が、特定の実施形態のみを記載する目的であり、限定するものではないことも理解されたい。
【0028】
別段の定めがない限り、本明細書中で使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の通常の技術者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中で参照される、全ての特許、出願、公開出願および他の刊行物は、それらの全体において参照により組み込まれる。このセクションで表記される定義が、参照により本明細書中に組み込まれる特許、出願または他の刊行物で表記される定義と反するかまたはそうでなければ一致しない場合、このセクションで表記される定義が、参照により本明細書中に組み込まれる定義よりも優先する。
【0029】
本明細書中で使用される場合および添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈から別段の明らかな指示がない限り、複数の参照物を含む。特許請求の範囲が何らかの任意の要素を排除するために立案され得ることにさらに留意されたい。このように、この記述は、請求項要素の引用または「ネガティブな」限定の使用と関連して、「専ら」、「のみ」などのこのような排除的な用語の使用に対する先行詞として働くものとする。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「含むこと(including)」、「含有すること(containing)」および「含むこと(comprising)」という用語は、それらのオープンな非限定的意味で使用される。
【0031】
より簡潔な説明を提供するために、本明細書中で与えられる定量的表現の一部は、「約」という用語により、限定されない。「約」という用語が明示的に使用されるか否かにかかわらず、本明細書中で与えられる量は全て、実際の与えられる値を指すものとし、これはまた、このような与えられた値に対する実験および/または測定条件ゆえの当量および近似を含め、当技術分野の通常の技術に基づき理論的に推測されるこのような与えられる値に対する近似値を指すものともすることを理解されたい。収率がパーセンテージとして与えられる場合はいつも、このような収率は、特定の化学量論的条件下で得られ得る同じ実体の最大量に対して収率が与えられる実体の質量を指す。パーセンテージとして与えられる濃度は、別段の指示がない限り、質量比を指す。
【0032】
別段の定めがない限り、本明細書中で使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の通常の技術者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中に記載のものと類似または同等のあらゆる方法および材料も本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法および材料をここで記載する。本明細書中で言及される全ての刊行物は、その刊行物が引用されるものに関連する方法および/または材料を開示し、記載するために、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0033】
特に指定のない限り、本発明の実施形態の方法および技術は、一般に当技術分野で周知の従来の方法に従って、および本願を通じて引用され、論じられる様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載のように行われる。例えば、Loudon,Organic Chemistry,Fourth Edition,New York:Oxford University Press,2002,pp.360-361,1084-1085;SmithおよびMarch,March’s Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure,Fifth Edition,Wiley-Interscience,2001を参照のこと。
【0034】
本明細書中に記載の化合物に対する化学命名は、一般に市販のACD/Name 2014(ACD/Labs)またはChemBioDraw Ultra 13.0(Perkin Elmer)を使用して導いた。
【0035】
明確にするために、個別の実施形態の文脈で記載される、本発明のある特性は、ある単一の実施形態において組み合わせてまた提供され得ることが認められる。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で記載される、本発明の様々な特性はまた、個別に、または何らかの適切なサブコンビネーションでも提供され得る。可変要素により表される化学基に属する実施形態の全ての組み合わせは、具体的に本発明により包含され、まさに、それぞれおよび全ての組み合わせは個々に明確に開示されるかのように、安定な化合物である化合物(すなわち、生物学的活性について、単離され、特徴付けられ、試験され得る化合物)をこのような組み合わせが包含する程度に、本明細書中で開示される。さらに、このような可変要素を記載する実施形態で列挙される化学基の全てのサブコンビネーションも、まさに、化学基のそれぞれおよび全てのこのようなサブコンビネーションが個々に明確に本明細書中で開示されるかのように、本発明により具体的に包含され、本明細書中で開示される。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「治療的有効量」という用語は、処置されている疾患または障害の症状の軽減を含む、生物学的または医学的応答を患者において引き出す活性化合物または医薬品の量を指す。一態様において、治療的有効量は、疾患または症状を処置または軽減し得るものである。何れかの特定の患者に対する具体的な治療的有効用量レベルは、処置される障害および障害の重症度;使用される具体的な化合物の活性;使用される具体的な組成物;患者の年齢、体重、総体的健康状態、性別および食餌:使用される具体的な化合物の投与時間、投与経路および排泄率;処置の持続時間;使用される具体的な化合物と組み合わせて、または同時に使用される薬物;などの因子を含む様々な要因に依存する。代表的な用量は、毎日約0.1mg~1g、または毎日約1mg~50mg、または毎日約50~250mg、または毎日約250mg~1gの範囲である。総投与量は、単回でまたは分割投与単位で与えられ得る(例えばBID、TID、QID)。
【0037】
本明細書中で使用される場合、「疾患」という用語は、癌、疼痛、乾癬、関節リウマチ、真性多血症、本態性血小板血症、潰瘍性大腸炎および骨髄線維症を伴う骨髄化生を含むが限定されない。
【0038】
本明細書中で使用される場合、「癌」という用語は、ALCL、肺癌、例えば、腺癌を含む、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺扁平上皮癌、大細胞癌、および大細胞神経内分泌腫瘍、小細胞肺癌(SCLC)、神経芽細胞腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、成人腎細胞癌、小児腎細胞癌、乳癌、例えばトリプルネガティブ乳癌、トリプルポジティブ乳癌、ER乳癌およびHER2過剰発現乳癌など、結腸腺癌、神経膠芽腫、多形膠芽腫、甲状腺癌、例えば未分化甲状腺癌など、胆管細胞癌、卵巣癌、胃癌、例えば胃腺癌など、結直腸癌(CRC)、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、血管肉腫、類上皮血管内皮腫、肝内胆管細胞癌、甲状腺乳頭癌、スピッツ腫瘍(spitzoid neoplasms)、肉腫、星状細胞腫、脳ロワーグレード(lower grade)神経膠腫、分泌乳癌、乳腺相似癌、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph-様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺がん、皮膚癌、例えば皮膚(skin cutaneous)黒色腫など、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、小児神経膠腫CML、前立腺癌、卵巣漿液性嚢胞腺癌、皮膚(skin cutaneous)黒色腫、去勢抵抗性前立腺癌、ホジキンリンパ腫および漿液性および明細胞子宮内膜癌を含むが限定されない。「癌」という用語は、原発癌または原発腫瘍および転移性癌または転移性腫瘍の両方を含むことが認められよう。例えば、転移性NSCLC、転移性CRC、転移性膵臓癌、転移性HER2過剰発現乳癌、転移性EGFR発現結直腸癌、転移性HNSCCなど。「癌」という用語は、上皮増殖因子受容体の上方制御などの、疾患進行につながり得る、ある種の遺伝子の上方制御またはある種の遺伝子における遺伝子突然変異を含む癌を含むことが認められよう。
【0039】
本明細書中で使用される場合、「EGFR阻害剤」という用語は、上皮増殖因子受容体(ErbB-1またはHER-1としても知られるEGFR)を阻害することが当技術分野で知られるあらゆる化合物または薬剤を含むが限定されない。EGFR阻害剤は、EGFRに対する特異性を示すかまたはEGFRを発現する癌に標的化される標的化薬剤を含むことが認められよう。EGFRを阻害する化合物または薬剤は、抗体(例えばモノクローナル抗体またはmAb)などの生体分子、低分子薬物/阻害剤または標的化薬剤であり得ることが認められよう。適切なEGFR阻害剤の例としては、アファチニブ、ブリガチニブ、セツキシマブ、カネルチニブ(CI-1033)、ダコミチニブ、エロルチニブ、ゲフィチニブ、HKI357、イコチニブ、ラパチニブ、オシメルチニブ、ナコチニブ、ナザルチニブ、ネシツムマブ、ネラチニブ、オルムチニブ、パニツムマブ、ペリチニブ、PF-06747775、ロシレチニブ、バンデタニブ、WZ3146、WZ4002、WZ8040および薬学的に許容可能なその塩が挙げられるが限定されない。例えば、米国特許第6,002,008号明細書、同第7,019,012号明細書、同第6,251,912号明細書、国際公開第02/50043号パンフレット、国際公開第2004/074263号パンフレット、同第2005/037824号パンフレット、同第2008150118号パンフレット(具体的には、実施例36の化合物、1-(4-(4-(3,4-ジクロロ-2-フルオロフェニルアミノ)-7-メトキシキナゾリン-6-イルオキシ)ピペリジン-1-イル)プロプ-2-エン-1-オン、または国際公開第2011155793号パンフレットで開示されるように酸性添加物とともに形成されるその塩)を参照のこと。
【0040】
化学的定義
本明細書中で使用される場合、「アルキル」という用語は、炭素原子の鎖を含み、これは、場合によっては分岐状であり、1~20個の炭素原子を含有する。ある実施形態において、アルキルは有利に、C-C12、C-C10、C-C、C-C、C-C、C-CおよびC-Cを含む限定される長さであり得、例示的には、C-C、C-C、C-CおよびC-Cなどを含む、このような特に限定される長さのアルキル基は「低級アルキル」と呼ばれ得ることをさらに理解されたい。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどが挙げられるが限定されない。アルキルは置換され得るか、または未置換であり得る。典型的な置換基としては、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロ、カルボニル、オキソ、(=O)、チオカルボニル、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、ニトロおよびアミノまたは本明細書中で提供される様々な実施形態で記載されるようなものが挙げられる。「アルキル」は、上記で提供されるものなど、他の基と組み合わされて、官能性アルキルを形成し得ることが理解されよう。例として、「カルボキシ」基との、本明細書中で記載されるような、「アルキル」基の組み合わせは、「カルボキシアルキル」基と呼ばれ得る。他の非限定例としては、ヒドロキシアルキル、アミノアルキルなどが挙げられる。
【0041】
本明細書中で使用される場合、「アルケニル」という用語は、炭素原子の鎖を含み、それは場合によっては分岐状であり、2~20個の炭素原子を含有し、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合(すなわちC=C)も含む。ある実施形態において、アルケニルは、C-C12、C-C、C-C、C-C、C-CおよびC-Cを含む、有利に限定された長さであり得ることが理解されよう。例示的に、C-C、C-C、C-CおよびC-Cを含む、このような特に限定された長さのアルケニル基は、低級アルケニルと呼ばれ得る。アルケニルは、アルキルについて記載されるように、または本明細書中で提供される様々な実施形態で記載されるように、未置換であり得るか、または置換され得る。例示的なアルケニル基としては、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-、2-または3-ブテニルなどが挙げられるが限定されない。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「アルキニル」という用語は、炭素原子の鎖を含み、それは場合によっては分岐状であり、2~20個の炭素原子を含有し、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合(すなわちC≡C)も含む。ある実施形態において、アルキニルはそれぞれ、C-C12、C-C、C-C、C-C、C-CおよびC-Cを含む、有利に限定された長さであり得ることが理解されよう。例示的に、C-C、C-C、C-CおよびC-Cを含む、このような特に限定された長さのアルキニル基は、低級アルキニルと呼ばれ得る。アルケニルは、アルキルについて記載されるように、または本明細書中で提供される様々な実施形態に記載されるように、未置換であり得るか、または置換され得る。例示的なアルケニル基としては、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-、2-または3-ブチニルなどが挙げられるが限定されない。
【0043】
本明細書中で使用される場合、「アリール」という用語は、完全に共役されるパイ電子系を有する6~12個の炭素原子の全炭素単環式または縮合環多環式基を指す。ある実施形態において、アリールは有利に、C-C10アリールなどの限定されたサイズのものであり得ることが理解されよう。例示的なアリール基としては、フェニル、ナフタレニルおよびアントラセニルが挙げられるが限定されない。アリール基は、アルキルについて記載されるように、または本明細書中で提供される様々な実施形態に記載されるように、未置換であり得るか、または置換され得る。
【0044】
本明細書中で使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、全炭素5員/6員または6員/6員縮合二環式環または多環系縮合環(「縮合」環系は、その系中の各環が、その系中の各他環と炭素原子の隣接対を共有することを意味する)基を含む、3~15員の全炭素単環式環を指し、ここでこの環の1つ以上は1つ以上の二重結合を含有し得るが、シクロアルキルは完全に共役されるパイ電子系を含有しない。ある実施形態において、シクロアルキルは有利に、C-C13、C-C、C-CおよびC-Cなどの限定されたサイズのものであり得ることが理解されよう。シクロアルキルは、アルキルについて記載されるように、または本明細書中で提供される様々な実施形態に記載されるように、未置換であり得るか、または置換され得る。例示的なシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロへキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、アダマンチル、ノルボルニル、ノルボルネニル、9H-フルオレン-9-イルなどが挙げられるが限定されない。グラフ表示で示されるシクロアルキル基の代表例としては、適宜に結合される部分の形態での次の実体が挙げられる:
【化19】
【0045】
本明細書中で使用される場合、「ヘテロシクロアルキル」という用語は、3~12個の環原子を環中に有する単環式または縮合環基を指し、ここで少なくとも1個の環原子はヘテロ原子、例えば窒素、酸素または硫黄などであり、残りの環原子は炭素原子である。ヘテロシクロアルキルは、場合によっては1、2、3または4個のヘテロ原子を含有し得る。ヘテロシクロアルキルはまた、窒素に対する二重結合(例えばC=NまたはN=N)を含む、より多くの二重結合の1個も有し得るが、完全に共役されるパイ電子系を含有しない。ある実施形態において、ヘテロシクロアルキルは有利に、3~7員ヘテロシクロアルキル、5~7員ヘテロシクロアルキルなどの、限定されたサイズのものであり得ることが理解されよう。ヘテロシクロアルキルは、アルキルについて記載されるように、または本明細書中で提供される様々な実施形態に記載されるように、未置換であり得るか、または置換され得る。例示的なヘテロシクロアルキル基としては、オキシラニル、チアナリル、アゼチジニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、1,4-ジオキサニル、モルホリニル、1,4-ジチアニル、ピペラジニル、オキセパニル、3,4-ジヒドロ-2H-ピラニル、5,6-ジヒドロ-2H-ピラニル、2H-ピラニル、1、2、3、4-テトラヒドロピリジニルなどが挙げられるが限定されない。グラフ表示で示されるヘテロシクロアルキル基の代表例としては、適宜に結合される部分の形態での次の実体が挙げられる:
【化20】
【0046】
本明細書中で使用される場合、「ヘテロアリール」という用語は、窒素、酸素および硫黄から選択される1、2、3または4個の環ヘテロ原子を含有し、残りの環原子が炭素原子であり、完全に共役されるパイ電子系も有する5~12個の環原子の単環式または縮合環基を指す。ある実施形態において、ヘテロアリールは有利に、3~7員ヘテロアリール、5~7員ヘテロアリールなどの、限定されたサイズのものであり得ることが理解されよう。ヘテロアリールは、アルキルについて記載されるように、または本明細書中で提供される様々な実施形態に記載されるように、未置換であり得るか、または置換され得る。例示的なヘテロアリール基としては、ピロリル、フラニル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、キノリニル、イソキノリニル、プリニル、テトラゾリル、トリアジニル、ピラジニル、テトラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、チエニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリルおよびカルバゾロイル(carbazoloyl)などが挙げられるが限定されない。グラフ表示で示されるヘテロアリール基の代表例としては、適宜結合される部分の形態での次の実体が挙げられる:
【化21】
【0047】
本明細書中で使用される場合、「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は-OH基を指す。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「アルコキシ」は、-O-(アルキル)または-O-(未置換シクロアルキル)基の両方を指す。代表例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなどが挙げられるが限定されない。
【0049】
本明細書中で使用される場合、「アリールオキシ」は-O-アリールまたは-O-ヘテロアリール基を指す。代表例としては、フェノキシ、ピリジニルオキシ、フラニルオキシ、チエニルオキシ、ピリミジニルオキシ、ピラジニルオキシなどが挙げられるが限定されない。
【0050】
本明細書中で使用される場合、「メルカプト」は-SH基を指す。
【0051】
本明細書中で使用される場合、「アルキルチオ」は、-S-(アルキル)または-S-(未置換シクロアルキル)基を指す。代表例としては、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、シクロプロピルチオ、シクロブチルチオ、シクロペンチルチオ、シクロヘキシルチオなどが挙げられるが限定されない。
【0052】
本明細書中で使用される場合、「アリールチオ」は、-S-アリールまたは-S-ヘテロアリール基を指す。代表例としては、フェニルチオ、ピリジニルチオ、フラニルチオ、チエニルチオ、ピリミジニルチオなどが挙げられるが限定されない。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を指す。
【0054】
本明細書中で使用される場合、「シアノ」は-CN基を指す。
【0055】
「オキソ」という用語は、カルボニル酸素を表す。例えば、オキソで置換されるシクロペンチルはシクロペンタノンである。
【0056】
本明細書中で使用される場合、「結合」は共有結合を指す。
【0057】
「置換される」という用語は、指定の基または部分が1個以上の置換基を有することを意味する。「未置換の」という用語は、指定の基が置換基を有さないことを意味する。「置換される」という用語が構造系を記載するために使用される場合、置換は、その系上の何らかの結合価が可能な位置で起こるものとされる。いくつかの実施形態において、「置換される」は、指定の基または部分が1、2または3個の置換基を有することを意味する。他の実施形態において、「置換される」は、指定の基または部分が1個または2個の置換基を有することを意味する。さらに他の実施形態において、「置換される」は、指定の基または部分が1個の置換基を有することを意味する。
【0058】
本明細書中で使用される場合、「任意の」または「場合によっては」は、引き続いて記載される事象または環境が、起こり得る必要がなくてよくかつその記載が、事象または環境が生じる例およびそれが生じない例を含むことを意味する。例えば、「C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリール中の各水素原子が独立に場合によっては、C-Cアルキルにより置換される」は、アルキルが、各アルキル基に対する水素原子の置き換えによりC-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリールの何れかの上に存在し得るがその必要はないことを意味し、この記載は、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリールがアルキル基で置換される状況およびC-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリールがアルキル基で置換されない状況を含む。
【0059】
本明細書中で使用される場合、「独立に」は、引き続いて記載される事象または環境が、他の同様の事象または環境に対して、それだけについて読まれるべきであることを意味する。例えば、いくつかの同等な水素基がその環境で記載される別の基によって場合によっては置換される状況において、「独立に場合によっては」の使用は、その基上の水素原子の各例が別の基により置換され得、水素原子のそれぞれを置き換える基が同じであってよいし、または異なっていてよいことを意味する。または例えば、その全てが一連の可能性のあるものから選択され得る複数の基が存在する場合、「独立に」の使用は、基のそれぞれが、あらゆる他の基から区別されて一連の可能性のあるものから選択され得、その環境で選択される基は同じであってよく、または異なっていてよいことを意味する。
【0060】
本明細書中で使用される場合、「薬学的に許容可能な塩」という用語は、医薬において使用され得るイオンに対応する塩を指す。一般的には、S.M.Bergeら、”Pharmaceutical Salt,”J.Pharm.Sci.,1977,66,1-19を参照のこと。好ましい薬学的に許容可能な塩は、薬理学的に効果があり、不要な毒性、刺激性またはアレルギー性の応答なしに、対象の組織との接触に適切であるものである。本明細書中に記載の化合物は、十分に酸性の基、十分に塩基性の基、両タイプの官能基、または各タイプの複数を保持し得、したがって、多くの無機または有機塩基および無機および有機酸と反応して、薬学的に許容可能な塩を形成する。このような塩としては、
(1)無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸塩、硝酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などとの、または有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、(D)または(L)リンゴ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸またはマロン酸などとの、親化合物の遊離塩基の反応により得られ得る、酸付加塩;または
(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオンまたはアルミニウムイオンにより置換されるか;または有機塩基、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメタミン、N-メチルグルカミンなどと配位するかの何れかの場合に形成される塩
が挙げられる。
【0061】
薬学的に許容可能な塩は、当業者にとって周知であり、任意のこのような薬学的に許容可能な塩は、本明細書中に記載の実施形態と関連して企図され得る。薬学的に許容可能な塩の例としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキシン-1,6-ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、プロピルスルホン酸塩、ベシル酸塩、キシレンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩およびマンデル酸塩が挙げられる。他の適切な薬学的に許容可能な塩の一覧は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th Edition,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985で見出される。
【0062】
本明細書中で示される何れの式も、構造式ならびにある改変物または形態の化合物を表すものとする。例えば、本明細書中で与えられる式は、ラセミ形態または1つ以上のエナンチオマー、ジアステレオマーまたは幾何異性体またはそれらの混合物を含むものとする。さらに、本明細書中で与えられる何れの式も、このような化合物の水和物、溶媒和物もしくは多形体またはそれらの混合物も指すものとする。例えば、印
【化22】
を含有する構造式により示される化合物は、印
【化23】
が連結される炭素原子について両方の立体異性体を含み、具体的には結合
【化24】
の両方が、
【化25】
の意味に包含されることが認められよう。例えば、いくつかの代表的な実施形態において、本明細書中で提供されるある化合物は、式
【化26】
により記載され得、この式は、適切な炭素原子での両方の立体化学配置、この例においては具体的に
【化27】
を有する化合物を包含することが理解されよう。
【0063】
実施形態
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載の方法は、EGFR阻害剤と組み合わせてFAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物の治療的有効量を、処置を必要とする患者に投与することを含む、癌の処置に関する。阻害剤が、細胞表面受容体(すなわち受容体チロシンキナーゼ)またはキナーゼ(すなわち非受容体チロシンキナーゼ)などの別の物質の活性を低下させるかまたは抑制する任意の物質であることが認められよう。「阻害剤」の定義は、当業者にとって周知であり、一般的用語「阻害剤」の本明細書中での使用は、通常および通例の意味であることが理解される。「FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物」は、生体標的であるFAK、SRCおよびJAK2の3つ全てに対する親和性を有する化合物であることが認められよう。
【0064】
キナーゼのJanusファミリー(JAKs)は、JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2を含み、サイトカインおよび増殖因子の生理的シグナル伝達に必要とされるサイトプラスチック(cytoplastic)非受容体チロシンキナーゼである。(Quintas-Cardama Aら、Nat.Rev.Drug Discov.2011,10(2),127)。JAK/STAT経路の異常な制御は、癌(JAK2)および関節リウマチ(JAK1、JAK3)を含む、複数のヒト病理学的疾患に関連付けられてきた。JAK2(JAK2V617F)の機能獲得突然変異は、MPN患者において高頻度で発見されている。(Levine RLら、Cancer Cell 2005,7,387)。JAK2のJH2シュードキナーゼドメインにおける突然変異は、構成的にキナーゼ活性をもたらす。JAK2V617F突然変異を含有する細胞は、サイトカイン依存的増殖能を獲得し、腫瘍となることが多く、標的化治療薬としてのJAK阻害剤の開発に対する強力な論理的根拠をもたらす。さらに、JAK2/シグナルトランスデューサーおよび転写3(JAK2/STAT3)の活性化因子の過剰活性化は、異常な樹状細胞分化の原因であり、癌における異常な樹状細胞分化および免疫抑制骨髄細胞の蓄積をもたらす(Nefedova Yら、Cancer Res 2005,65,9525)。Pten-ヌル老化腫瘍において、JAK2/STAT3経路の活性化は、腫瘍成長および化学療法抵抗性に寄与する免疫抑制腫瘍微小環境を確立する(Toso Aら、Cell Reports 2014,9,75)。TEL(ETV6)(TEL-JAK2)遺伝子およびPCM1遺伝子を有するJAK2遺伝子融合が、白血病患者で見出されている(Lacronique Vら、Science 1997,278,5341,1309-12.Reiter Aら、Cancer Res.2005,65,7,2662-7)。JAK/STAT3シグナル伝達経路がEGFR阻害剤抵抗性のEGFR-突然変異体非小細胞肺癌(NSCLC)細胞において異常に増大され、JAK2阻害がEGFR阻害剤に対する抵抗性獲得を克服し、これは、EGFR依存性NSCLCの処置のためのJAK阻害剤およびEGFR阻害剤での併用療法の使用を後押しすることが報告された(Gao SPら、Sci Signal.2016,9(421):ra33)。JAK/STAT3シグナル伝達は、抗腫瘍免疫を抑制しながら増殖、生存、血管形成、腫瘍代謝を含む、腫瘍およびその環境における癌の特徴を助長する(Buchert Mら、Oncogene,2016,35,939-951)。JAK阻害剤でのJAK/STAT3経路のサイトカイン依存性活性化の阻害はまた、薬剤抵抗性を得た他の癌遺伝子中毒癌細胞に対するオルソゴナルな(orthogonal)処置機会も可能にし得る。JAK2遺伝子の限局的な増幅が、9p24-増幅腫瘍の群中の化学療法後のトリプルネガティブ乳癌(TNBC)において観察され、腫瘍形成能および化学療法抵抗性での役割を示唆する(Balko JMら、Sci Transl Med.2016,8(334):ra53)。
【0065】
c-Srcは、非受容体型チロシンキナーゼである。Srcファミリー(SFK)は、52~62KDaの分子量を有し、ヒトでは8種類のメンバー(Src、Fyn、Yes、Lyn、Lck、Hck、BlkおよびFgr)から構成される。Srcおよびそのファミリーメンバーは、多くのタイプの癌で脱制御される。Srcは、EGFR、HER2およびc-Metを含む、多くのRTKの重要な下流トランスデューサーである。Srcシグナル伝達の活性化は、標的化抗内分泌療法、受容体チロシンキナーゼ療法、従来からの化学療法および放射線療法に対する治療抵抗性の付与に関連付けられている。(Zhang Sら、Trends Pharmacol Sci.2012,33,122)。SRCは、DNA合成、受容体代謝回転の調節、アクチン細胞骨格再編成、遊走、接着、浸潤、運動性、および生存に必要とされるシグナル伝達経路への関与を含む多くの方法で増殖因子受容体からのシグナル伝達を促進し得る。(Bromann PA,Oncogene 2004,23,7957-7968)。上皮-間葉系移行(EMT)および転移の発生などの腫瘍進行関連事象におけるSrcの重要な役割は、Src活性を阻害することによって癌細胞遊走を制御する、強力な転移抑制因子、N-myc下流制御遺伝子1(NDRG1)との相互作用を通じて報告された(Liu Wら、Oncotarget.2015,6:35522-35541)。EGFR阻害剤が、EGFR-活性化突然変異を有するNSCLC患者の殆どにおいて顕著な成功を達成したにもかかわらず、EGFR突然変異を有する患者のサブセットはEGFR-TKIに不応性である。EGFR阻害剤に対する抵抗性は、報告によると、SRC活性化および上皮-間葉系移行(EMT)の誘導を含む。EGFR-TKIに対する主要な抵抗性は、より高いレベルのCRIPTO1発現と関連する。CRIPTO1は、SRCおよびZEB1を活性化してマイクロRNA-205(miR-205)下方制御を介してEMTを促進した。最近、選択的SRC阻害剤であるサラカチニブは、ALK阻害剤抵抗性細胞株を再感受性化し得ることが報告され、ALK阻害剤抵抗性の克服におけるSRC阻害の治療的役割を示している(Crystal ASら、Science 2014,346,1480-1486)。
【0066】
接着斑キナーゼ(FAK)は、125kDa非受容体型チロシンキナーゼであり、接着、生存、運動性、転移、血管形成、リンパ脈管新生、癌幹細胞機能、腫瘍微小環境および上皮-間葉系移行(EMT)において重要な役割を果たす。(Golubovskaya VM,Front Biosci(Landmark Ed).;19:687-706)。核FAKは、ケモカイン転写、Tregsおよび抗腫瘍免疫の回避を調節し、低分子FAKキナーゼ阻害剤VS-4718は、Tregsの枯渇を推進し、CD8+T細胞介在抗腫瘍応答を促進する。(Serrels Aら、Cell 2015,163,160-173)。したがって、FAK阻害剤は免疫介在性腫瘍退縮を惹起し得る。FAKは、ヒト膵管腺癌(PDAC)で過剰活性化され、免疫抑制腫瘍微小環境(TME)と相関する。接着斑キナーゼを標的とすることは、マウスモデルにおいて、繊維性および免疫抑制性のPDAC TMEを克服することにより、膵臓癌をチェックポイント免疫療法に対し応答性にする(Jiang Hら、Nat Med.2016,Jul 4[Epub ahead of print])。
【0067】
本明細書中に記載の化合物は驚くべきことに、FAK、SRCおよびJAK2の全3つの阻害剤であることが示されており、このような処置を必要とする患者において癌を処置するためにEGFR阻害剤と組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態において、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物とEGFR阻害剤の組み合わせは、癌のための処置を必要とする患者において相乗的応答をもたらし得る。いくつかの実施形態において、癌を処置するための方法は、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物の治療的有効量およびEGFR阻害剤の治療的有効量の組み合わせを投与することを含む。いくつかの実施形態において、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物およびEGFR阻害剤は同時処方される。いくつかの実施形態において、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物およびEGFR阻害剤は同時に投与される。いくつかの実施形態において、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物およびEGFR阻害剤は、個々に処方され、同時に投与される。いくつかの実施形態において、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物およびEGFR阻害剤は個々に処方され、順に投与される。いくつかの実施形態において、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物およびEGFR阻害剤の連続投与は、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物を最初に投与し、EGFR阻害剤を2番目に投与することで遂行され得る。いくつかの実施形態において、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物およびEGFR阻害剤の連続投与は、EGFR阻害剤を最初に投与し、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物を2番目に投与することで遂行され得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、前記FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物は、式IもしくはIIの化合物:
【化28】
(式中、
Xは、NRまたはCHRであり;
およびRのそれぞれは独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、C-C10アリール、-OR、-C(O)ORまたは-C(O)NRであり;C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-CシクロアルキルおよびC-C10アリール中の各水素原子は独立に場合によっては、重水素、ハロゲン、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、-NHC(O)C-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)C-Cアルキル、-NHC(O)NH、-NHC(O)NHC-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)NH、-N(C-Cアルキル)C(O)NHC-Cアルキル、-NHC(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)C(O)N(C-Cアルキル)、-NHC(O)OC-Cアルキル、-N(C-Cアルキル)C(O)OC-Cアルキル、-NHS(O)(C-Cアルキル)、-NHS(O)(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)(C-Cアルキル)-NHS(O)NH,-NHS(O)NH、-N(C-Cアルキル)S(O)NH、-N(C-Cアルキル)S(O)NH、-NHS(O)NH(C-Cアルキル)、-NHS(O)NH(C-Cアルキル)、-NHS(O)N(C-Cアルキル)、-NHS(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)N(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)S(O)N(C-Cアルキル)、-COH、-C(O)OC-Cアルキル、-C(O)NH、-C(O)NH(C-Cアルキル)、-C(O)N(C-Cアルキル)、-SC-Cアルキル、-S(O)C-Cアルキル、-S(O)-Cアルキル、-S(O)NH(C-Cアルキル)、-S(O)NH(C-Cアルキル)、-S(O)N(C-Cアルキル)、-S(O)N(C-Cアルキル)、-P(C-Cアルキル)、-P(O)(C-Cアルキル)、-C-Cシクロアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキルにより置換され;
は独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリールであり;C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環もしくは二環式ヘテロアリール中の各水素原子は独立に場合によっては、重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキルまたは-ORにより置換され;
は、H、C-Cアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキルであり、C-Cアルキルまたは3~7員ヘテロシクロアルキル中の各水素原子は独立に場合によっては、ハロゲン、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、-COH、-C(O)OC-Cアルキル、-C(O)NH、-C(O)NH(C-Cアルキル)、-C(O)N(C-Cアルキル)、C-Cシクロアルキルまたは単環式5~7員ヘテロシクロアルキルにより置換され;
各RおよびRは独立に、H、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたはヘテロアリールであり;
nは、0または1である)
または薬学的に許容可能なその塩である。
【0069】
いくつかの実施形態において、Rは、HまたはC-Cアルキルである。いくつかの実施形態において、Rは、Hまたはメチルである。いくつかの実施形態において、RはHである。いくつかの実施形態において、Rは、メチルである。いくつかの実施形態において、Rは、Hである。いくつかの実施形態において、Rは、C-Cアルキルである。いくつかの実施形態において、Rは、メチルである。いくつかの実施形態において、Rは、-ORである。いくつかの実施形態において、Rは、-ORであり、Rは、Hである。いくつかの実施形態において、Xは、NRである。いくつかの実施形態において、Xは、CHRである。いくつかの実施形態において、Rは、Hである。いくつかの実施形態において、Rは、Hである。いくつかの実施形態において、nは、0である。いくつかの実施形態において、nは、1である。
【0070】
本明細書中で、FAK、SRCおよびJAK2に対する活性を示す強力な低分子多標的キナーゼ阻害剤であることが示された大環状化合物は、式:
【化29】
により表される、(7S,13R)-11-フルオロ-7,13-ジメチル-6,7,13,14-テトラヒドロ-1,15-エテノピラゾロ[4,3-f][1,4,8,10]ベンゾオキサトリアザシクロトリデシン-4(5H)-オン(本明細書中で「化合物1」とも呼ばれる)、
式:
【化30】
により表される、(7R,14R)-12-フルオロ-7-ヒドロキシ-14-メチル-5,6,7,8,14,15-ヘキサヒドロ-4H-1,16-エテノピラゾロ[4,3-g][1,5,9,11]ベンゾオキサトリアザシクロテトラデシン-4-オン(本明細書中で「化合物2」とも呼ばれる)および
式:
【化31】
により表される、12-フルオロ-5,6,7,8,14,15-ヘキサヒドロ-4H-1,16-エテノピラゾロ[4,3-g][1,5,9]ベンゾオキサジアザシクロテトラデシン-4-オン(本明細書中で「化合物3」とも呼ばれる)
を含むが限定されない。
【0071】
化合物1-3は、抗腫瘍特性を含む特性を有し、これは、受容体および非受容体型チロシンキナーゼの阻害を通じて薬理学的に媒介される。化合物1~3は、化合物1、2および3の調製について参照により本明細書中に組み込まれる国際公開第2015/112806号パンフレットで開示される。
【0072】
上記態様のいくつかの実施形態において、FAK、SRCおよびJAK2を阻害する化合物は、次の式の化合物:
【化32】
または薬学的に許容可能なその塩である。
【0073】
癌は、ALCL、NSCLC、神経芽細胞腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、成人腎細胞癌、小児腎細胞癌、乳癌、ER+乳癌、トリプルネガティブ乳、結腸腺癌、神経膠芽腫、多形膠芽腫、未分化甲状腺癌、胆管細胞癌、卵巣癌、結直腸癌、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、血管肉腫、類上皮血管内皮腫、肝内胆管細胞癌、甲状腺癌、スピッツ腫瘍(spitzoid neoplasms)、肉腫、星状細胞腫、脳ロワーグレード(lower grade)神経膠腫、分泌乳癌、乳腺相似癌、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph-様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺がん、頭頸部扁平上皮癌、小児神経膠腫CML、前立腺癌、肺扁平上皮癌、卵巣漿液性嚢胞腺癌、皮膚(skin cutaneous)黒色腫、去勢抵抗性前立腺癌、ホジキンリンパ腫、漿液性および明細胞子宮内膜癌、口腔癌、子宮内膜癌、内分泌性癌、皮膚癌、胃癌、食道癌、喉頭癌、膵臓癌、結腸癌、膀胱癌、骨癌、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、直腸癌、腎臓癌、肝臓癌および肺癌を含むが限定されない、EGFR、EGFRの上方制御または何らかのEGFR突然変異が介在し得るか、またはこれらが関連し得る何らかの癌であり得ることが認められよう。
【0074】
いくつかの実施形態において、本開示は、1つ以上の治療剤での前処置を受けたことのある患者における疾患の処置の方法を提供する。いくつかの実施形態において、患者は、1つ以上の化学療法剤で予め処置されている。また他の実施形態において、患者は、1つ以上の化学療法剤で予め処置されており、その処置に対する後天的抵抗性を発現している。また他の実施形態において、パテント(patent)は、1つ以上の化学療法剤で予め処置されており、その処置に対するバイパス耐性を発現している。また他の実施形態において、パテント(patent)は、1つ以上の化学療法剤で予め処置されており、FAK、SRCまたはJAK2により制御される処置に対するバイパス耐性を発現している。
【0075】
本明細書中に記載の化合物の1つ以上での処置前に患者が処置され得る他の化学療法剤としては、キナーゼ阻害剤、アドレノコルチコイドおよび副腎皮質ステロイド、アルキル化剤、ペプチドおよびペプチド模倣シグナル伝達阻害剤、抗アンドロゲン薬、抗エストロゲン剤、アンドロゲン、アクラマイシン(aclamycin)およびアクラマイシン(aclamycin)誘導体、エストロゲン、代謝拮抗剤、白金化合物、アマニチン、植物アルカロイド、マイトマイシン、ディスコデルモリド、微小管阻害剤、エポチロン、炎症および炎症促進剤、プリン類似体、ピリミジン類似体、カンプトテシンおよびドラスタチンが挙げられるが限定されない。
【0076】
本明細書中に記載の併用療法と関連した使用のためのEGFR阻害剤が、本明細書中で定められるような任意のEGFR阻害剤であり得ることが認められよう。EGFR阻害剤の適切な例としては、EGFRの抗体またはEGFRの低分子阻害剤が挙げられる。いくつかの実施形態において、EGFR阻害剤は、アファチニブ、ブリガチニブ、セツキシマブ、カネルチニブ(CI-1033)、ダコミチニブ、エロルチニブ、ゲフィチニブ、HKI357、イコチニブ、ラパチニブ、オシメルチニブ、ナコチニブ、ナザルチニブ、ネシツムマブ、ネラチニブ、オルムチニブ、パニツムマブ、ペリチニブ、PF-06747775、ロシレチニブ、バンデタニブまたは薬学的に許容可能なその塩であり得る。いくつかの実施形態において、EGFR阻害剤はセツキシマブ、ネシツムマブまたはパニツムマブであり得る。
【0077】
医薬組成物
処置目的のために、本明細書中に記載の化合物を含む医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含み得る。薬学的に許容可能な賦形剤は、無毒性であるか、対象への投与に対して生物学的に適切な物質である。このような賦形剤は、本明細書中に記載の化合物の投与を促進し、活性成分と適合する。薬学的に許容可能な賦形剤の例としては、安定化剤、滑沢剤、界面活性剤、希釈剤、抗酸化剤、結合剤、着色剤、充填剤、乳化剤または矯味剤が挙げられる。好ましい実施形態において、本発明による医薬組成物は、滅菌組成物である。医薬組成物は、当業者にとって公知であるかまたは利用可能となる配合技術を使用して調製され得る。
【0078】
このような組成物を管理する国および地方の規制に従う組成物を含み、滅菌組成物も本発明によってまた企図される。
【0079】
本明細書中に記載の医薬組成物および化合物は、様々な剤型の調製のための当技術分野で公知の従来の方法に従い、適切な医薬溶媒もしくは担体中の溶液、エマルション、懸濁液または分散液として、または丸剤、錠剤、薬用キャンディー、坐薬、サシェ、ドラジェ、顆粒剤、粉剤、再構成用の粉剤、または固形担体を伴うカプセルとして、処方され得る。本発明の医薬組成物は、適切な送達経路、例えば経口、非経口、直腸、鼻腔、局所または眼の経路によって、または吸入によって投与され得る。好ましくは、本組成物は、静脈内または経口投与用に処方される。
【0080】
経口投与の場合、本発明の化合物は、錠剤またはカプセルなどの固形で、または溶液、エマルションもしくは懸濁液として、提供され得る。経口組成物を調製するために、本発明の化合物は、例えば1日約0.1mg~1gまたは1日約1mg~50mgまたは1日約50~250mgまたは1日約250mg~1gの投与量を得るように処方され得る。経口錠剤は、希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味料、香味剤、着色剤および保存剤などの適合性の薬学的に許容可能な賦形剤と混合される活性成分を含み得る。適切な不活性増量剤としては、炭酸ナトリウムおよびカルシウム、リン酸ナトリウムおよびカルシウム、ラクトース、デンプン、糖、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール,ソルビトールなどが挙げられる。代表的な液体経口賦形剤としては、エタノール、グリセロール、水などが挙げられる。デンプン、ポリビニル-ピロリドン(PVP)、デンプングリコール酸ナトリウム、微結晶セルロースおよびアルギン酸は、代表的な崩壊剤である。結合剤としては、デンプンおよびゼラチンが挙げられ得る。滑沢剤は、存在するならば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであり得る。必要に応じて、錠剤は、消化管での吸収を遅延させるためにモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの物質でコーティングされ得るか、または腸溶性コーティングでコーティングされ得る。
【0081】
経口投与用のカプセルとしては、硬ゼラチンカプセルおよび軟ゼラチンカプセルが挙げられる。硬ゼラチンカプセルを調製するために、活性成分を固形、半固形または液体希釈剤と混合し得る。軟ゼラチンカプセルは、活性成分を水、油、例えばピーナツ油またはオリーブ油など、流動パラフィン、短鎖脂肪酸のモノおよびジグリセリドの混合物、ポリエチレングリコール400またはプロピレングリコールと混合することによって調製され得る。
【0082】
経口投与のための液体は、懸濁液、溶液、エマルションまたはシロップの形態であり得るか、または凍結乾燥され得るか、または使用前の水または他の適切なビヒクルでの再構成のための乾燥製品として与えられ得る。このような液体組成物は場合によっては:薬学的に許容可能な賦形剤、例えば懸濁剤(例えばソルビトール、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲルなど);非水性ビヒクル、例えば油(例えば、アーモンド油または分別ヤシ油)、プロピレングリコール、エチルアルコールまたは水;保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピルまたはソルビン酸);湿潤剤、例えばレシチンなど;および、必要に応じて香味剤または着色剤を含有し得る。
【0083】
静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内または皮下経路を含む非経口使用の場合、本発明の薬剤は、適切なpHおよび等張性に緩衝化された、滅菌水溶液または懸濁液中で、または非経口で許容可能な油中で提供され得る。適切な水性ビヒクルとしては、リンゲル溶液および等張性塩化ナトリウムが挙げられる。このような形態は、アンプルまたは使い捨て注射装置などの単位用量形態で、そこから適切な用量が引き抜かれ得るバイアルなどの複数回投与形態で、または注射用処方物を調製するために使用され得る固形もしくは予備濃縮物で与えられ得る。例示的な注入用量は、数分間~数日の範囲の期間にわたり、医薬担体と混合される薬剤約1~1000μg/kg/分の範囲である。
【0084】
鼻腔、吸入または経口投与の場合、本発明の医薬組成物は、例えば、適切な担体も含有する噴霧処方物を使用して投与され得る。本発明の組成物は、坐薬として直腸投与のために処方され得る。
【0085】
局所適用の場合、本発明の化合物は、好ましくはクリームまたは軟膏または局所投与に適切な同様のビヒクルとして処方される。局所投与の場合、本発明の化合物は、ビヒクルに対して約0.1%~約10%の薬物の濃度で医薬担体と混合され得る。本発明の薬剤を投与する別の方式は、経皮送達をもたらすためのパッチ処方物を利用し得る。
【0086】
実施例
化学物質および試薬
化合物1、2および3は、国際公開第2015/112806号パンフレットに記載の方法に従い調製し、具体的にはそこに記載されるような実施例90、93および103を参照のこと。国際公開第2015/112806号パンフレットは、化合物1、2および3の調製について参照により本明細書中に組み込まれる。
【0087】
ゲフィチニブは、Tocris Bioscienceから購入した。オシメルチニブ(AZD9291)は、Selleck chemicalsから購入した。薬物は、10~100mmol/L保存溶液の濃度でジメチルスルホキシド(DMSO)中で調製し、-20℃で保存した。さらなる希釈液を、使用前に培地中で最終濃度に作製した。ホスホ-EGFR(Tyr1068)、ホスホ-EGFR(Tyr845)、ホスホ-STAT3(Tyr705)、ホスホ-AKT(Ser473)、ホスホ-ERK1/2(Thr202/Tyr204)、ホスホ-パキシリン(Tyr118)、ホスホ-YAP1(Ser127)、ホスホ-TRKBおよびβ-アクチン抗体は、Cell Signaling Technology(Beverly,MA)から購入した。ホスホ-YAP1(Tyr357)は、Abcam(Cambridge,UK)から購入した。IRDye800CWヤギ抗ウサギおよびIRDye 800CWヤギ抗マウス抗体はLI-COR Biosciencesから購入した。
【0088】
細胞株
EGFRエクソン19欠失(E746-A750)を有するヒト肺腺癌PC-9細胞は、Dr.Mayumi Ono(九州大学、福岡)の承認のもと、F.Hoffmann-La Roche Ltd.により提供された。感受性L858Rおよび抵抗性T790M突然変異の両方を有するヒト肺腺癌H1975細胞は、American Type Culture Collection(ATCC)より購入した。全ての細胞株は、5%COにて37℃細胞培養インキュベーターにおいて、1%ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン(Gibco)および10%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco)を補充したRPMI(Roswell Park Memorial Institute培地)1640中で維持し、マイコプラズマ汚染について定期的に評価した。
【0089】
インビトロアッセイ
実施例1:細胞生存能アッセイ
細胞を次の密度:2x10、3x10および4x10で96ウェルプレートに播種し、24時間インキュベートした。次に、細胞を、一般的には個々のIC50値の1/8、1/4、1/2、5/8、3/4、7/8、1、1.5および2に相当する用量で投与される薬物の連続希釈液で処理した。インキュベーションの72時間後に、0.5mg/mLのMTT(テトラゾリウムに基づく半自動比色3(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)試薬(Sigma Aldrich)を37℃で2時間、ウェル中の培地に添加し、生存可能細胞中のホルマザン結晶を、100μL DMSOを用いて可溶化し、マイクロプレートリーダー(Varioskan Flash Thermo Electron)を使用して分光光度法で550nmでの吸収度で定量した。生存率を次に、薬物処理ウェル中の細胞数を対照ウェル中の細胞数により除することによって計算した。組み合わせた薬物のデータをその後、ChouおよびTalalay法(Chou TC.Drug combination studies and their synergy quantification using the Chou-Talalay method.Cancer research.2010;70:440-6)によって分析した。コンビネーションインデックス(Combination Index)(CI)値<1、=1および>1は、それぞれ相乗的、相加的効果および拮抗作用を示した。
【0090】
PC9細胞における、EGFR阻害剤(ゲフィチニブまたはオシメルチニブ)、化合物1、およびEGFR阻害剤と化合物の細胞生存能%を示す結果を図1aおよび2aで示す。対応するコンビネーションインデックス(Combination Index)(CI)を示す結果を図1bおよび2bで示す。
【0091】
H1975細胞における、EGFR阻害剤(ゲフィチニブまたはオシメルチニブ)、化合物1、およびEGFR阻害剤と化合物1の組み合わせの細胞生存能%を示す結果を図3aおよび4aで示す。対応するコンビネーションインデックス(Combination Index)(CI)を示す結果を図3bおよび4bで示す。
【0092】
実施例2:コロニー形成アッセイ
細胞を、RPMI、10%FBS中で細胞1000個/ウェルで6ウェルプレートに播種した。細胞を24時間培養し、次いで培地を、阻害剤ありまたはなしの、RPMI、1%FBSに置き換えた。72時間後に培地を除去し、全部で10日間、阻害剤なしの新鮮な培地に置き換えた。実験終了時に、培地を除去し、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄した。コロニーを固定し、エタノール10%中の0.5%クリスタルバイオレットで15分間、同時に染色した。染色液を吸引し、ウェルを、背景が透明になるまで脱イオン水で洗浄した。ウェルを次に写真撮影した。半定量的測定の場合、クリスタルバイオレットを、一晩TritonX-100 0.5%溶液を用いてコロニーから抽出し、吸収を570nmで測定した。
【0093】
PC9細胞での、対照、EGFR阻害剤(ゲフィチニブまたはオシメルチニブ)、化合物1、およびEGFR阻害剤と化合物1の組み合わせのコロニー形成画像を示す結果を図5aおよび6aで示す。%コロニー形成面積のグラフ表示を示す結果を図5bおよび6bで示す。
【0094】
H1975細胞における対照、EGFR阻害剤(ゲフィチニブまたはオシメルチニブ)、化合物1、およびEGFR阻害剤と化合物1の組み合わせのコロニー形成画像を示す結果を図7aおよび8aで示す。%コロニー形成面積のグラフ表示を示す結果を図7bおよび8bで示す。
【0095】
実施例3.酵素キナーゼ阻害アッセイ1
FAK、SRCおよびJAK2に対する酵素性キナーゼ阻害を、Erofins Kinase Profiler(商標)パネルを使用してEurofinsで評価した。全ての化合物を、100%DMSO中の50x最終アッセイ濃度の実験用保存液に対して調製した。必要に応じて、より濃縮された保存液を、100%DMSOを使用して手作業で50xに希釈した。粉末として供給された化合物を100%DMSO中で10mM保存液に再構成し、その後50xにさらに希釈した。試験化合物の50x保存液の必要とされる体積をアッセイウェルに添加し、その後、酵素および基質を含有する反応混合液を添加した。反応を、10μM濃度でのATPの添加によって開始させた。ATP添加前に酵素/基質混合液との化合物の予備インキュベーションは行わなかった。データを、特注の社内分析ソフトウェアを使用して扱う。結果を、DMSO対照のパーセンテージとして、残存するキナーゼ活性として表す。これは次の式:(試料数値の平均-ブランク数値の平均)/対照数値の平均、を使用して計算される。
【表1】
【0096】
実施例4.酵素キナーゼ阻害アッセイ2
キナーゼ阻害IC50を、参考文献(Anastassiadis Tら、Nat Biotechnol.2011,29,1039)に記載の手順に従い、Reaction Biology Corporation(www.reactionbiology.com,Malvern,PA)で決定した。必要とされるコファクターと共に特異的なキナーゼ/基質ペアを、反応緩衝液;20mM Hepes pH7.5、10mM MgCl2、1mM EGTA、0.02%Brij35、0.02mg/mL BSA、0.1mM Na3VO4、2mM DTT、1%DMSO中で調製した(個々のキナーゼ反応成分の具体的な詳細については、補足表2を参照)。化合物を反応物中に送達し、~20分後に、ATP(Sigma,St.Louis MO)および33P ATP(Perkin Elmer,Waltham MA)の混合物を10μMの最終濃度に添加した。反応を室温で120分間行い、続いて反応物をP81イオン交換ろ紙(Whatman Inc.,Piscataway,NJ)上にスポット状に添加した。未結合のリン酸を、0.75%リン酸中でろ紙をよく洗浄することによって除去した。不活性酵素を含有する対照反応由来のバックグラウンドの差し引き後、キナーゼ活性データを、ビヒクル(ジメチルスルホキシド)反応に対する試験試料中のパーセント残存キナーゼ活性として表した。IC50値および曲線フィットを、Prism(GraphPad Software)を使用して得た。
【表2】
【0097】
実施例5.NCI-H1975肺癌細胞増殖アッセイ:
NCI-H1975細胞5000個/ウェルを384ウェル白色プレート中で24時間、播種し、次いで、化合物1、AZD9291(オシメルチニブ)またはエルロチニブ、1mMもしくは3mMの化合物1+様々な濃度のAZD9291またはエルロチニブで72時間(37℃、5%CO)処理した。細胞増殖を、製造者のプロトコールに従い、CellTiter-Gloルシフェラーゼ-に基づくATP検出アッセイ(Promega)を使用して測定した。IC50決定を、GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad,Inc.,San Diego,CA)を使用して行った。結果を図9および図10にまとめた。NCI-H1975肺癌細胞株は内因的にEGFR L858R/T790M二重突然変異を発現するにもかかわらず、第3世代の不可逆的EGFR阻害剤AZD9291は、細胞増殖の非常に部分的な阻害を示した。発明者らは、NCI-H1975細胞増殖に対するエルロチニブまたはAZD9291と組み合わせた化合物1の相乗効果を調べた。化合物1単独は、高濃度(IC504μM)でNCI-H1975に対する部分的阻害活性のみを有した。強力な相乗作用がAZD9291および化合物1の組み合わせで観察された。AZD9291は、3μM濃度の化合物1の存在下において、3nMのIC50でNCI-H1975を強力に阻害した(図9)。この組み合わせは、AZD9291処理単独と比較して、殆ど完全な細胞増殖抑制を引き起こした。NCI-H1975細胞株中にT790M突然変異が存在するために、エルロチニブは、NCI-H1975細胞増殖の阻害に対し感受性でなく、化合物1が3μM濃度で存在した場合、IC50は6236nMから1000nMに改善された(図10)。
【0098】
実施例6.細胞キナーゼリン酸化アッセイのための免疫ブロッティング
NSCLC NCI-H1975細胞を、10%ウシ胎児血清および100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI培地中で(EGFR L858R/T790M二重突然変異を有する)培養した。細胞50万個/ウェルを24ウェルプレートに24時間播種し、次いで化合物1、エルロチニブまたはAZD9291、または化合物1とエルロチニブもしくはAZD9291の組み合わせで4時間処理した。細胞を、処理後に回収し、10mM EDTA、1XHaltプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤(Thermo Scientific)を補充したRIPA緩衝液(50mM Tris、pH7.4、150mM NaCl、1%NP-40、0.5%デオキシコール酸、0.1%SDS)中で溶解させた。タンパク質溶解物(およそ20μg)を、MESランニング緩衝液(Life Technologies)を用いる4~12%Bolt Bis-Trisプレキャストゲル上で分離し、Trans-Blot Turbo Transfer System(Bio-Rad)を使用してニトロセルロース膜に転写し、リン酸化EGFRおよび総EGFR(Sigma)、リン酸化パキシリンおよび総パキシリン(Cell Signaling Technology)、リン酸化STAT3および総STAT3(Cell Signaling Technology)、リン酸化AKTおよび総AKT(Cell Signaling Technology)、リン酸化ERK(Cell Signaling Technology)およびチューブリン(Sigma)を標的とする抗体で検出した。抗体を一般的には、穏やかに撹拌しながら、4℃で一晩インキュベートし、続いて洗浄し、適切なHRP-複合化二次抗体とインキュベートした。膜を、化学発光基質と室温で5分間インキュベートした(SuperSignal West Femto,Thermo Scientific)。化学発光画像を、C-DiGit Imaging System(LI-CORBiosciences)を使用して得た。結果を図11および図12にまとめた。化合物1は、NCI-H1975細胞において、EGFRリン酸化を阻害せず、SRC/FAK基質パキシリンのリン酸化を用量依存的に阻害した(図11)。1μMの濃度で、化合物1は、EGFR、AKTおよびERKのリン酸化に対する最小の阻害を有し、STAT3およびパキシリンのリン酸化に対して顕著な阻害を有した。1μMの濃度で、AZD9291は、EGFR、AKTおよびERKのリン酸化対して顕著な阻害を有し、STAT3およびパキシリンのリン酸化に対して最小の阻害を有した。1μMの濃度で、エルロチニブは、EGFR、AKT、ERK、STAT3およびパキシリンのリン酸化に対し最小の阻害を有した。化合物1およびAZD9291の組み合わせは、EGFR、AKT、ERK、STAT3およびパキシリンのリン酸化を顕著に阻害し、NCI-H1975細胞の抗増殖における相乗効果をもたらす。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12