(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】質量分析を使用する低存在量のポリペプチドの絶対定量のための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/88 20060101AFI20221213BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20221213BHJP
G01N 30/06 20060101ALI20221213BHJP
G01N 30/72 20060101ALI20221213BHJP
G01N 30/86 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G01N30/88 J
G01N27/62 D
G01N27/62 V
G01N27/62 X
G01N30/06 E
G01N30/06 Z
G01N30/72 C
G01N30/86 J
(21)【出願番号】P 2019566179
(86)(22)【出願日】2018-06-01
(86)【国際出願番号】 US2018035716
(87)【国際公開番号】W WO2018223076
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-05-25
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】マーサ・ステイプルズ
(72)【発明者】
【氏名】ミッシェル・ブッシュ
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-542763(JP,A)
【文献】特開2008-164511(JP,A)
【文献】特開2006-105699(JP,A)
【文献】国際公開第2015/049763(WO,A1)
【文献】特表2008-542766(JP,A)
【文献】特表2016-524711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 - 30/96
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む複数のポリペプチドを含むサンプル中の第1のポリペプチドの絶対定量のための方法であって、
第1のポリペプチドは、第2のポリペプチドよりも少なくとも10倍低い存在量であり、
該方法は、
(a)液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)の技術を使用して、複数のサンプルローディング量で、複数のポリペプチドのペプチド産物を分析して、複数のサンプルローディング量のそれぞれで、複数のポリペプチドのペプチド産物のイオンのMSシグナルを得ること、
ここで、複数のサンプルローディング量は、第1のサンプルローディング量および第2のサンプルローディング量を含み、
第1のサンプルローディング量は、第2のサンプルローディング量よりも多く;
(b)(i)第1のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第1のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(A);
(ii)第2のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(B);
(iii)第1のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセット(C);ならびに
(iv)第2のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の
数mのセット(D)
についてのMSシグナルの平均または合計を計算すること、
ここで、A、B、CおよびDは、MSシグナルの平均を使用してすべて計算されるか、またはMSシグナルの合計を使用してすべて計算され;ならびに
(c)以下の式:
[(A)/(C)]×(第1のローディング量での第2のポリペプチドのモル)×[(D)/(B)]
またはその数学的に等価な式に基づいて、第1のサンプルローディング量中の第1のポリペプチドの絶対量を決定すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む複数のポリペプチドを含むサンプル中の第1のポリペプチドの絶対定量のための方法であって、
第1のポリペプチドは、第2のポリペプチドよりも少なくとも10倍低い存在量であり、
該方法は、
(a)複数のポリペプチドのペプチド産物のイオンのMSシグナルを得ること、
ここで、前記ペプチド産物のイオンのMSシグナルは、液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)の技術を使用して、複数のポリペプチドのペプチド産物を分析することによって得られ、
ペプチド産物のMSシグナルは、第1のサンプルローディング量および第2のサンプルローディング量を含む複数のサンプルローディング量のそれぞれについて得られ、
第1のサンプルローディング量は、第2のサンプルローディング量よりも多く;
(b)(i)第1のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第1のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(A);
(ii)第2のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(B);
(iii)第1のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセット(C);ならびに
(iv)第2のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の
数mのセット(D)
についてのMSシグナルの平均または合計を計算すること、
ここで、A、B、CおよびDは、MSシグナルの平均を使用してすべて計算されるか、またはMSシグナルの合計を使用してすべて計算され;ならびに
(c)以下の式:
[(A)/(C)]×(第1のローディング量での第2のポリペプチドのモル)×[(D)/(B)]
またはその数学的に等価な式に基づいて、第1のサンプルローディング量中の第1のポリペプチドの絶対量を決定すること
を含む、前記方法。
【請求項3】
MSシグナルの平均が、第1のポリペプチドの絶対量を決定するために使用される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
MSシグナルの合計が、第1のポリペプチドの絶対量を決定するために使用される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の
数mのセットは、複数のサンプルローディング量、または第1のサンプルローディング量および/もしくは第2のサンプルローディング量から、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの定量誤差に基づいて選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の
数mのセットを選択することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む複数のポリペプチドを含むサンプル中の第1のポリペプチドの絶対定量のためのペプチド産物の適格なイオンのセットを選択するための方法であって、
第1のポリペプチドは、第2のポリペプチドよりも少なくとも10倍低い存在量であり、該方法は、
(a)液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)の技術を使用して、複数のサンプルローディング量で、複数のポリペプチドのペプチド産物を分析して、複数のサンプ
ルローディング量のそれぞれで、複数のポリペプチドのペプチド産物のイオンのMSシグナルを得ること、
ここで、複数のサンプルローディング量は、第1のサンプルローディング量および第2のサンプルローディング量を含み、
第1のサンプルローディング量は、第2のサンプルローディング量よりも多く;ならびに
(b)第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセットを選択すること、
ここで、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の
数mのセットは、複数のサンプルローディング量、または第1のサンプルローディング量および/もしくは第2のサンプルローディング量から、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの定量誤差に基づいて選択される、
を含む、前記方法。
【請求項8】
第2のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセットを選択することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ペプチド産物の適格なイオンの上位の
数nのセットのそれぞれは、適格なイオンの中位の
数mのセットのそれぞれと相違する、請求項1~6および8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
MSシグナルは、イオン化強度である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
MSシグナルは、ピーク高さである、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
MSシグナルは、ピーク面積である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
MSシグナルは、ピーク体積である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
サンプル中の複数のポリペプチドのペプチド産物は、LC/MS技術を使用してペプチド産物を分析する前に、サンプルの消化によって得られる、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
サンプルを得ることをさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
サンプル中の複数のポリペプチドを処理して、ペプチド産物を産生させることをさらに含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
サンプルの処理は、以下の1つまたはそれ以上:
(a)サンプルを遠心分離して、複数のポリペプチドを単離すること;
(b)サンプル中の複数のポリペプチドを精製すること;
(c)その後の処理および質量分析法分析と不適合の構成成分をサンプルから除去すること;
(d)複数のポリペプチドを消化して、ペプチド産物を産生させること;ならびに
(e)ペプチド産物を精製すること
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
LC/MS技術は、液体クロマトグラフィー技術によってペプチド産物を分離することを含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
LC/MS技術は、ペプチド産物の得られたMSシグナルを処理することを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
LC/MS技術は、以下の1つまたはそれ以上:
(a)アミノ酸配列によってペプチド産物を識別すること;
(b)タンパク質識別子によって第1のポリペプチドを識別すること;ならびに
(c)タンパク質識別子によって複数のポリペプチドの1つまたはそれ以上を識別すること
をさらに含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
第2のポリペプチドの絶対量を決定することをさらに含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
第1のポリペプチドは、宿主細胞タンパク質である、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
第1のポリペプチドは、バイオマーカーである、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
第1のポリペプチドは、第2のポリペプチドよりも少なくとも100倍低い存在量である、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
第2のポリペプチドは、宿主細胞によって産生される組換えポリペプチドである、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
第2のポリペプチドは、治療用ポリペプチドである、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
サンプルは、細胞培養サンプルである、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
サンプルは、血液または血清サンプルである、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
第2のポリペプチドは、血清アルブミンである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
サンプルは、医薬品またはその中間体である、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
サンプルは、精製または濃縮されている、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
ペプチド産物は、複数のポリペプチドのトリプシンペプチド産物である、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
複数のサンプルローディング量は、総タンパク
質0.1~25μgの範囲のサンプルローディング量を含む、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
第1のサンプルローディング量は、総タンパク
質10μgである、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
第2のサンプルローディング量は、総タンパク
質1μgである、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
ペプチド産物の第2のセットのMSシグナルに基づいて、第2のサンプルローディング量を選択することをさらに含む、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
ペプチド産物の第1のセットのMSシグナルに基づいて、第1のサンプルローディング量を選択することをさらに含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
複数のサンプルローディング量のそれぞれは、同じ総体積を有する、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
nは、1以上である、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
nは、3である、請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
mは、1以上である、請求項1~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
mは、3である、請求項1~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の
数mのセットは、それぞれのペプチド産物の配列に基づいて選択される、請求項1~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
治療用ポリペプチドの製造において混入ポリペプチドを検出するための方法であって、(a)治療用ポリペプチドを含むサンプルを得ること;
(b)混入ポリペプチドがサンプル中に存在するかどうかを決定すること
を含み、
混入ポリペプチドの存在は、請求項1~43のいずれか1項に記載の方法を使用するサンプル中の混入ポリペプチドの絶対定量に基づく、
前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年6月2日に出願された米国仮特許出願第62/514,587号の優先権を主張し、その開示を、その全体を参照によって本明細書に組み入れる。
【0002】
本発明は、単純または複雑なポリペプチド混合物から得られるペプチド産物の液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)分析による、低存在量のポリペプチドの絶対定量のための方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
ポリペプチドの定量のための質量分析(MS)に基づくさまざまな多くの技術が当技術分野において公知である。例えば、ポリペプチドは、代謝に基づく技術(例えば、細胞培養中のアミノ酸を使用する安定同位体標識(SILAC))、ペプチド標準に基づく技術(例えば、選択反応モニタリング(SRM)および複数反応モニタリング(MRM))、および標識に基づく技術(例えば、タンデム質量タグ(TMT))を使用して定量することができる。これらの方法は、SILACのための限定的なサンプル源、SRMおよびMRMの広範囲におよぶ開発ならびにコスト、ならびに標識に基づく技術の追加のサンプル処理および相対的存在度の収率などの欠点が十分に実証されている。
【0004】
MSに基づくポリペプチドの定量方法を簡素化し、上述の制限のいくつかを回避するために、MSに基づく無標識定量技術が開発された。しかしながら、現在の無標識定量技術には、低い精度および高いばらつきがあり得、ほとんどの無標識技術は、2つまたはそれ以上のサンプルの間の相対的な定量比(例えば、スペクトル計数)をもたらすのみであり得る。
【0005】
MSに基づくタンパク質の無標識絶対定量のための1つのアプローチは、その後に他のタンパク質の絶対定量のための質量分析法分析に適用される、一点較正測定を作成するためのタンパク質標準を使用することを含む。非特許文献1;特許文献1。しかしながら、一点較正の使用、ならびにサンプルおよびタンパク質標準の別々の酵素消化によって生じる相違は、この方法の定量のばらつきの主な原因であり得る。
【0006】
このように、当技術分野において、高感度、精密性および正確性があり、ハイスループット方式でさまざまな多くのポリペプチドサンプルに適用することができる、改善されたMSに基づく無標識絶対定量技術の必要性が存在する。
【0007】
特許出願および刊行物を含む、本明細書において引用されるすべての参照文献は、それらの全体を参照によって組み入れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【文献】J.C.Silvaら、Mol Cell Proteomics、5巻、144~56頁、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、相対的に高存在量の別のポリペプチドを含むサンプル中の低存在量のポリペプチドの無標識絶対定量のための方法を提供する。例えば、本発明は、治療用ポリペプチドなどの組換えポリペプチドを産生する能力がある宿主細胞を含む培養系中の低存在量の宿主細胞タンパク質またはその下流の産物を定量するための方法を提供する。本方法は、高存在量のポリペプチドの濃度およびペプチド産物のMSシグナル、ならびに低存在量のポリペプチドのペプチド産物のMSシグナルを使用して、低存在量のポリペプチドの絶対量を計算する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの態様において、本発明は、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む複数のポリペプチドを含むサンプル中の第1のポリペプチドの絶対定量のための方法であって、第1のポリペプチドは、第2のポリペプチドよりも少なくとも10倍低い存在量であり、方法は、(a)液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)の技術を使用して、複数のサンプルローディング量で、複数のポリペプチドのペプチド産物を分析して、複数のサンプルローディング量のそれぞれで、複数のポリペプチドのペプチド産物のイオンのMSシグナルを得ること、ここで、複数のサンプルローディング量が、第1のサンプルローディング量および第2のサンプルローディング量を含み、第1のサンプルローディング量が、第2のサンプルローディング量よりも多く;(b)(i)第1のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第1のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(A);(ii)第2のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(B);(iii)第1のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセット(C);ならびに(iv)第2のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位のセット(D)についてのMSシグナルの平均または合計を計算すること、ここで、A、B、CおよびDが、MSシグナルの平均を使用してすべて計算されるか、またはMSシグナルの合計を使用してすべて計算され;ならびに(c)以下の式:
[(A)/(C)]×(第1のローディング量での第2のポリペプチドのモル)×[(D)/(B)]
またはその数学的に等価な式に基づいて、第1のサンプルローディング量中の第1のポリペプチドの絶対量を決定することを含む、方法を提供する。
【0012】
別の態様において、本発明は、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む複数のポリペプチドを含むサンプル中の第1のポリペプチドの絶対定量のための方法であって、第1のポリペプチドは、第2のポリペプチドよりも少なくとも10倍低い存在量であり、方法は、(a)複数のポリペプチドのペプチド産物のイオンのMSシグナルを得ること、ここで、前記ペプチド産物のイオンのMSシグナルが、液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)の技術を使用して、複数のポリペプチドのペプチド産物を分析することによって得られ、ペプチド産物のMSシグナルが、第1のサンプルローディング量および第2のサンプルローディング量を含む複数のサンプルローディング量のそれぞれについて得られ、第1のサンプルローディング量が、第2のサンプルローディング量よりも多く;(b)(i)第1のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第1のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(A);(ii)第2のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(B);(iii)第1のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセット(C);ならびに(iv)第2のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位のセット(D)についてのMSシグナルの平均または合計を計算すること、ここで、A、B、CおよびDが、MSシグナルの平均を使用してすべて計算されるか、またはMSシグナルの合計を使用してすべて計算され;ならびに(c)以下の式:
[(A)/(C)]×(第1のローディング量での第2のポリペプチドのモル)×[(D)/(B)]
またはその数学的に等価な式に基づいて、第1のサンプルローディング量中の第1のポリペプチドの絶対量を決定することを含む、方法を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態において、MSシグナルの平均は、第1のポリペプチドの絶対量を決定するために使用される。
【0014】
いくつかの実施形態において、MSシグナルの合計は、第1のポリペプチドの絶対量を決定するために使用される。
【0015】
いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位のセットは、複数のサンプルローディング量、または第1のサンプルローディング量および/もしくは第2のサンプルローディング量から、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの定量誤差に基づいて選択される。
【0016】
別の態様において、本発明は、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む複数のポリペプチドを含むサンプル中の第1のポリペプチドの絶対定量のためのペプチド産物の適格なイオンのセットを選択するための方法であって、第1のポリペプチドは、第2のポリペプチドよりも少なくとも10倍低い存在量であり、方法は、(a)液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)の技術を使用して、複数のサンプルローディング量で、複数のポリペプチドのペプチド産物を分析して、複数のサンプルローディング量のそれぞれで、複数のポリペプチドのペプチド産物のイオンのMSシグナルを得ること、ここで、複数のサンプルローディング量が、第1のサンプルローディング量および第2のサンプルローディング量を含み、第1のサンプルローディング量が、第2のサンプルローディング量よりも多く;ならびに(b)第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセットを選択すること、ここで、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位のセットが、複数のサンプルローディング量、または第1のサンプルローディング量および/もしくは第2のサンプルローディング量から、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの定量誤差に基づいて選択される、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、第2のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセットを選択することをさらに含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、ペプチド産物の適格なイオンの上位のセットのそれぞれは、適格なイオンの中位のセットのそれぞれと相違する。
【0018】
いくつかの実施形態において、MSシグナルは、イオン化強度またはピーク高さまたはピーク面積またはピーク体積である。
【0019】
いくつかの実施形態において、本方法は、サンプルを得ることをさらに含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、サンプルは、精製または濃縮されている。いくつかの実施形態において、本方法は、サンプル中の複数のポリペプチドを処理して、ペプチド産物を産生させることをさらに含む。いくつかの実施形態において、サンプルの処理は、以下の1つまたはそれ以上:(a)サンプルを遠心分離して、複数のポリペプチドを単離すること;(b)サンプル中の複数のポリペプチドを精製すること;(c)その後の処理および質量分析法分析と不適合の構成成分をサンプルから除去すること;(d)複数のポリペプチドを消化して、ペプチド産物を産生させること;ならびに(e)ペプチド産物を精製すること、を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、LC/MS技術は、液体クロマトグラフィー技術によってペプチド産物を分離することを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、LC/MS技術は、ペプチド産物の得られたMSシグナルを処理することを含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、LC/MS技術は、以下の1つまたはそれ以上:(a)アミノ酸配列によってペプチド産物を識別すること;(b)タンパク質識別子によって第1のポリペプチドを識別すること;ならびに(c)タンパク質識別子によって複数のポリペプチドの1つまたはそれ以上を識別すること、をさらに含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、本方法は、第2のポリペプチドの絶対量を決定することをさらに含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドは、宿主細胞タンパク質またはバイオマーカーである。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドは、第2のポリペプチドよりも少なくとも100倍低い存在量である。
【0026】
いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、宿主細胞によって産生される組換えポリペプチドまたは治療用ポリペプチドまたは血清アルブミンである。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳類の宿主細胞などの宿主細胞にトランスフェクトされたベクターから発現する。
【0027】
いくつかの実施形態において、サンプルは、細胞培養サンプル、または血液もしくは血清サンプル、または医薬品もしくはその中間体である。
【0028】
いくつかの実施形態において、サンプル中の複数のポリペプチドのペプチド産物は、LC/MS技術を使用してペプチド産物を分析する前に、サンプルの消化によって得られる。いくつかの実施形態において、ペプチド産物は、複数のポリペプチドのトリプシンペプチド産物である。
【0029】
いくつかの実施形態において、複数のサンプルローディング量は、総タンパク質約0.1~25μgの範囲のサンプルローディング量を含む。いくつかの実施形態において、第1のサンプルローディング量は、約10μgの総タンパク質である。いくつかの実施形態において、第2のサンプルローディング量は、約0.5μg~10μg、もしくは3μg~6μg、または1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、もしくは6μgの総タンパク質である。
【0030】
いくつかの実施形態において、本方法は、ペプチド産物の第2のセットのMSシグナルに基づいて、第2のサンプルローディング量を選択することをさらに含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、本方法は、ペプチド産物の第1のセットのMSシグナルに基づいて、第1のサンプルローディング量を選択することをさらに含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、複数のサンプルローディング量のそれぞれは、同じ総体積を有する。
【0033】
いくつかの実施形態において、nは、1以上であるか、またはnは、3である。
【0034】
いくつかの実施形態において、mは、1以上であるか、またはmは、3である。
【0035】
いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位のセットは、それぞれのペプチド産物の配列に基づいて選択される。
【0036】
別の態様において、本発明は、治療用ポリペプチドの製造において混入ポリペプチドを検出するための方法であって、(a)治療用ポリペプチドを含むサンプルを得ること;(b)混入ポリペプチドがサンプル中に存在するかどうかを決定することを含み、混入ポリペプチドの存在が、本明細書において提供される定量方法を使用するサンプル中の混入ポリペプチドの絶対定量に基づく、方法を提供する。
【0037】
別の態様において、本発明は、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含むサンプル中の第1のポリペプチドの絶対定量のためのシステムであって、システムは、(a)質量分析計と(b)コンピューターを含み;(c)コンピューターの実行時に、(i)第1のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第1のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(A);(ii)第2のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(B);(iii)第1のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセット(C);ならびに(iv)第2のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位のセット(D)についてのMSシグナルの平均または合計を計算することを含む処理を行う、格納された指示を含む非一時的なコンピューター可読媒体を含み;ここで、A、B、CおよびDが、MSシグナルの平均を使用してすべて計算されるか、またはMSシグナルの合計を使用してすべて計算され;以下の式:
[(A)/(C)]×(第1のローディング量での第2のポリペプチドのモル)×[(D)/(B)]
またはその数学的に等価な式に基づいて、第1のサンプルローディング量中の第1のポリペプチドの絶対量を決定する、システムを提供する。いくつかの実施形態において、本システムは、液体クロマトグラフをさらに含む。
【0038】
別の態様において、本発明は、実行時に、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含むサンプル中の第1のポリペプチドの絶対定量のための処理を行う、格納された指示を含む非一時的なコンピューター可読媒体であって、処理は、(i)第1のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第1のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(A);(ii)第2のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(B);(iii)第1のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセット(C);ならびに(iv)第2のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位のセット(D)についてのMSシグナルの平均または合計を計算することを含み;ここで、A、B、CおよびDが、MSシグナルの平均を使用してすべて計算されるか、またはMSシグナルの合計を使用してすべて計算され;以下の式:
[(A)/(C)]×(第1のローディング量での第2のポリペプチドのモル)×[(D)/(B)]
またはその数学的に等価な式に基づいて、第1のサンプルローディング量中の第1のポリペプチドの絶対量を決定する、媒体を提供する。
【0039】
本発明のこれらおよび他の態様ならびに利点は、後記の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかになるだろう。本明細書に記載の各種の実施形態の1つ、いくつかまたはすべての性質は、組み合わせて、本発明の他の実施形態を形成することができることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】異なるサンプルローディング量でスフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ(ASM)を含むサンプルのLC/MS分析から観察された40個の最も豊富なペプチド産物イオンについてのMSピーク面積のヒストグラムを示す図である(LC/MS分析あたりのサンプルローディング量は、それぞれのペプチド産物のバーのセットの左から右に、1μg、2.5μg、5μg、7.5μg、10μg、12.5μg、15μg、18μgおよび20μgの順である)。サンプルローディング量の全体でのそれぞれのペプチド産物イオンについての平均パーセント誤差を、ペプチド産物のバーのセットの上部に示す。
【
図2】6点の濃度ポイントにわたる、3つのペプチド産物の中位のセット(中位3;正方形)および3つのペプチド産物の上位のセット(上位3;菱形)の合計ピーク面積を示す図である。中位3つのペプチド産物の線形回帰に対するR
2は、0.98であり、上位3つのペプチド産物の線形回帰に対するR
2は、0.87である。
【
図3A】4つの異なるアッセイオケージョン(オケージョンA、オケージョンB、オケージョンC、オケージョンD)での4つのサンプル(それぞれのバーのセットの左から右に、ロット1、ロット2、ロット3、ロット4)のためのHi-3(
図3A)およびMid-3(
図3B)の定量方法の比較を示す図である。Hi-3方法(
図3A)について82%の相対標準偏差であり、Mid-3方法(
図3B)について16%の相対標準偏差であった。
【
図3B】4つの異なるアッセイオケージョン(オケージョンA、オケージョンB、オケージョンC、オケージョンD)での4つのサンプル(それぞれのバーのセットの左から右に、ロット1、ロット2、ロット3、ロット4)のためのHi-3(
図3A)およびMid-3(
図3B)の定量方法の比較を示す図である。Hi-3方法(
図3A)について82%の相対標準偏差であり、Mid-3方法(
図3B)について16%の相対標準偏差であった。
【
図4】各種の治療用タンパク質の製造ロットの全体で、上位8つの識別された宿主細胞タンパク質の相対的な存在量を示す図である。
【
図5】治療用タンパク質の精製プロセスの段階全体で、識別された宿主細胞タンパク質の相対的な存在量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む複数のポリペプチドを含むサンプル中の第1のポリペプチドの絶対定量のための方法であって、方法は、第1のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第1のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(A);第2のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(B);第1のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセット(C);ならびに第2のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位のセット(D)についてのMSシグナルの平均または合計に基づいてサンプル中の第1のポリペプチドの絶対量を決定することを含み、ここで、A、B、CおよびDが、MSシグナルの平均を使用してすべて計算されるか、またはMSシグナルの合計を使用してすべて計算される、方法を提供する。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドは、サンプル中の第2のポリペプチドよりも存在量が少ない。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドの絶対量は、以下の式:
[(A)/(C)]×(第1のローディング量での第2のポリペプチドのモル)×[(D)/(B)]
によって決定される。
【0042】
本発明の方法は、本明細書において、Mid-3とも称する。本明細書で使用される場合、イオンに対する言及において使用される「適格な」とは、本明細書に記載の定量方法に適切なペプチド産物イオンを指す。いくつかの実施形態において、適格なペプチド産物イオンは、非トリプシンペプチド産物イオン、または翻訳後の修飾を有するペプチド産物イオンを除く。
【0043】
本明細書に記載の本発明の方法は、例えば、当技術分野において公知の無標識絶対定量方法(例えば、Hi-3;J.C.Silvaら、上記を参照のこと)と比較して、サンプル中のポリペプチド濃度のより大きなダイナミックレンジにわたって、改善されたポリペプチド定量の精度および再現性を提供する。理論に縛られることを望まないが、無標識絶対定量方法は、サンプル中の複数のポリペプチドのそれぞれの等モル量を仮定して、ポリペプチドのペプチド産物の最も豊富なイオンの上位nからの平均MS検出器応答が、複数のポリペプチドのそれぞれの全体で類似するという知見に基づく(すなわち、ペプチド産物の濃度は、検出器応答と相関する)。したがって、未知の濃度のポリペプチドの量は、既知の濃度の標準ポリペプチドとの比較によって決定することができる。しかしながら、絶対定量のためのポリペプチド標準のペプチド産物の最も豊富なイオンを使用すると、劣った精度および再現性をもたらす。例えば、定量の不正確さは、MS検出器の飽和に起因するペプチド産物のトップイオン化のための非線形の挙動の観察に起因して起こる。さらにまた、このような方法は、既知量の標準ポリペプチドにおけるスパイク、または未知の濃度のポリペプチドを含有するサンプルと別に、LC/MS分析での既知量の標準タンパク質サンプルを分析することに依拠する。両方のアプローチは、定量精度の低下およびばらつきの増加をもたらす。例えば、任意の数のサンプルへの既知量の標準ポリペプチドの再現性のよい等分は、困難であり、未知のポリペプチドを含有するサンプルとは別の酵素反応で消化された標準ポリペプチドに基づく定量計算の較正は、消化完了の程度に基づいて追加のばらつきを生じる。
【0044】
本発明は、改善されたポリペプチド定量の精度および再現性を達成する要素を統合した定量方法を提供する。第1に、本発明の絶対定量方法は、既知濃度でポリペプチドを含み、サンプル中の他のポリペプチド(例えば、製造サンプル中の治療用タンパク質、または血清サンプル中のアルブミン)と比べて高い存在量であって、スパイクされたか、または別々に分析された標準ポリペプチドとの比較を必要としない、ポリペプチドサンプルシステムの利点がある。第2に、本発明の絶対定量方法は、高い存在量のポリペプチドの上位nのペプチド産物イオンのMS検出器の飽和を回避する、2つの濃度でのMS測定を使用する。第3に、本発明の絶対定量方法は、上位のペプチドと比較して低減した定量誤差を有するペプチド産物イオンの中位のセットをさらに利用して、全体的な定量誤差が低減される。本発明の方法の利点は、当技術分野において公知の無標識絶対定量方法(すなわち、Hi-3)との直接の比較で実証された。例えば、実施例2に示すように、一連のアッセイおよびサンプルにわたって、本発明に開示の方法は、16%の相対標準偏差を達成したが、Hi-3方法は、82%の相対標準偏差を有していた。
【0045】
下記でより詳細に議論するように、本発明は、既知濃度で低存在量のポリペプチドよりも相対的に存在量が高い別のポリペプチド(例えば、第2のポリペプチド)からの情報を使用する、低存在量のポリペプチド(例えば、第1のポリペプチド)のMSに基づく無標識絶対定量のために有用な方法であって、方法は、以下のいずれか1つまたはそれ以上:(a)ローディング研究を行って、低存在量のポリペプチドの定量のためにデータが得られ、および/または分析される2つのサンプルのローディング濃度(例えば、第1のサンプルローディング量および第2のサンプルローディング量)を決定すること;(b)ポリペプチド定量のための適格なペプチド産物イオンを選択すること(例えば、第1のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット、ならびに第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセット);ならびに(c)MSシグナル(例えば、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドのペプチド産物からのMSシグナル)を使用して、低存在量のポリペプチドの絶対ポリペプチド量を決定すること、を含む方法を提供する。
【0046】
第1のサンプルローディング量および第2のサンプルローディング量を決定するためのローディング研究の実施
本発明は、所望のアッセイのダイナミックレンジにわたるサンプルのローディング研究を行うための方法を提供する。ローディング研究から得られるMSシグナル情報は、例えば、第1のポリペプチドのペプチド産物が検出可能である(第1のポリペプチドは、第2のポリペプチドと比べて低い存在量である)第1のサンプルローディング量の選択、第2のポリペプチドの適格な最も高い存在量のペプチド産物イオンの上位数nがMS検出器を飽和しない第2のサンプルローディング量の選択、ならびに第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセットが定量誤差の低減(すなわち、最も豊富なペプチド産物イオンと比べて、線形の挙動の増加)を実証する第1のサンプルローディング量および第2のサンプルローディング量の選択を可能にする。
【0047】
いくつかの実施形態において、本方法は、液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)の技術を使用して、複数のサンプルローディング量で、複数のポリペプチドのペプチド産物を分析して、複数のサンプルローディング量のそれぞれで、複数のポリペプチドのペプチド産物のイオンのMSシグナルを得ることを含み、ここで、複数のサンプルローディング量は、第1のサンプルローディング量および第2のサンプルローディング量を含み、第1のサンプルローディング量は、第2のサンプルローディング量よりも多い。いくつかの実施形態において、MSシグナルは、イオン化強度である。いくつかの実施形態において、MSシグナルは、ピーク高さである。いくつかの実施形態において、MSシグナルは、ピーク面積である。いくつかの実施形態において、MSシグナルは、ピーク体積である。
【0048】
いくつかの実施形態において、ローディング研究から得られる情報は、ポリペプチドの定量のためのその後のサンプルの分析に適用することができる(例えば、LC/MS技術による追加のサンプル分析のための2つのサンプルローディング量の選択)。
【0049】
いくつかの実施形態において、複数のサンプルローディング量は、少なくとも2つのサンプルローディング量を含む。いくつかの実施形態において、複数のサンプルローディング量は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15のサンプルローディング量を含む。
【0050】
サンプルローディング量は、使用されるLC/MS装置に応じて(例えば、クロマトグラフィーカラムのローディング量に基づいて)、変化させることができる。いくつかの実施形態において、複数のサンプルローディング量は、約0.1μg~約100μg、約0.1μg~約75μg、約0.1μg~約50μg、約0.1μg~約40μg、約0.1μg~約30μg、約0.1μg~約20μg、約0.1μg~約15μg、約0.1μg~約10μg、約1μg~約30μg、約1μg~約20μg、約1μg~約15μg、または約1μg~約10μgの範囲のサンプルローディング量を含む。
【0051】
いくつかの実施形態において、サンプルローディング量は、約0.5μg、約1μg、約1.5μg、約2μg、約2.5μg、約3μg、約3.5μg、約4μg、約4.5μg、約5μg、約5.5μg、約6μg、約6.5μg、約7μg、約7.5μg、約8μg、約8.5μg、約9μg、約9.5μg、約10μg、約10.5μg、約11μg、約11.5μg、約12μg、約12.5μg、約13μg、約13.5μg、約14μg、約14.5μg、約15μg、約16μg、約17μg、約18μg、約19μg、約20μg、約21μg、約22μg、約23μg、約24μg、約25μg、約26μg、約27μg、約28μg、約29μg、または約30μgである。
【0052】
いくつかの実施形態において、複数のサンプルローディング量は、第1のサンプルローディング量および第2のサンプルローディング量を含み、第1のサンプルローディング量は、約10μgであり、第2のサンプルローディング量は、約0.5μg~10μg、もしくは3μg~6μg、または1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、または6μgである。
【0053】
いくつかの実施形態において、第1のサンプルローディング量は、第1のポリペプチドのペプチド産物のMSシグナルに基づいて選択される。いくつかの実施形態において、第1のサンプルローディング量は、第2のポリペプチドのペプチド産物のMSシグナルに基づいて選択される。いくつかの実施形態において、第1のサンプルローディング量は、第1のポリペプチドのペプチド産物のMSシグナルおよび第2のポリペプチドのペプチド産物のMSシグナルに基づいて選択される。
【0054】
いくつかの実施形態において、第2のサンプルローディング量は、第2のポリペプチドのペプチド産物のMSシグナルに基づいて選択される。
【0055】
いくつかの実施形態において、ローディング研究において分析されたその後のサンプルローディング量は、以前に分析されたサンプルローディング量からのデータに基づく。
【0056】
それぞれのサンプルローディング量の体積は、使用されるLC/MS装置に応じて(例えば、サンプルループのサイズに基づいて)、変化させることができる。いくつかの実施形態において、複数のサンプルローディング量のそれぞれは、同じ総体積を有する。いくつかの実施形態において、複数のサンプルローディング量のそれぞれの体積は、約1μL~約60μL、約10μL~約60μL、約20μL~約50μL、または約30μL~約50μLである。いくつかの実施形態において、複数のサンプルローディング量のそれぞれの体積は、同じであり、約1μL~約60μL、約10μL~約60μL、約20μL~約50μL、または約30μL~約50μLである。いくつかの実施形態において、複数のサンプルローディング量のそれぞれの体積は、約5μL、10μL、15μL、20μL、25μL、30μL、35μL、40μL、45μL、50μL、55μL、または60μLである。
【0057】
第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドの適格なペプチド産物イオンの選択
本発明は、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む複数のポリペプチドを含むサンプル中の第1のポリペプチドの絶対定量のためのペプチド産物の適格なイオンのセットを選択するための方法であって、第1のポリペプチドは、第2のポリペプチドと比べて低い存在量である方法を提供する。例えば、本発明は、第1のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット、ならびに第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセットのいずれか1つの選択のための方法を提供する。
【0058】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、第1のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第1のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセットを選択することを含む。
【0059】
いくつかの実施形態において、本方法は、第2のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセットを選択することを含む。
【0060】
ポリペプチドのMSで識別されたペプチド産物の数は、ポリペプチドの濃度および特性に応じて変化する。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドの濃度および特性は、第1のサンプルローディング量で、限定された数のペプチド産物の識別をもたらす。いくつかの実施形態において、nは、1以上であり、ここで、nは、整数である。いくつかの実施形態において、nは、3である。いくつかの実施形態において、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。
【0061】
いくつかの実施形態において、最も強いMSシグナルを有するペプチド産物の適格なイオンは、例えば、誤った酵素的切断、翻訳後の修飾、ならびに重複するLC溶出プロファイルおよび同位体分布を含む特定の特性を有するペプチド産物イオンを除外することができる。例えば、サンプルがトリプシンで消化され、最も強いMSシグナルを有するペプチド産物が、非トリプシンペプチド産物である場合、このペプチド産物は、第1のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット、または第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセットの選択から除外することができる。いくつかの実施形態において、最も強いMSシグナルを有するペプチド産物の適格なイオンは、起源のポリペプチドの一部として再現性よく存在しない一部のポリペプチドが起源のペプチド産物イオンを除外することができる(例えば、ポリペプチドの切断産物が起源のペプチド産物、したがって、起源のポリペプチドとして同じ濃度でサンプル中に存在することができない)。
【0062】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセットを選択することを含み、ここで、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位のセットは、複数のサンプルローディング量、または第1のサンプルローディング量および/もしくは第2のサンプルローディング量から、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの定量誤差に基づいて選択される。一般に、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセットのペプチド産物イオンのそれぞれは、第2のポリペプチドのペプチド産物のイオンの総セットと比べて最も低い定量誤差を有することに基づいて選択される。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセットのペプチド産物イオンのそれぞれは、第2のポリペプチドの最も豊富なペプチド産物イオンよりも低い定量誤差を有する。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセットのペプチド産物イオンは、最も強いMSシグナルを有する第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセットよりも低い定量誤差を有する。
【0063】
いくつかの実施形態において、最も低い定量誤差を有するペプチド産物の適格なイオンは、例えば、誤った酵素的切断、翻訳後の修飾、ならびに重複するLC溶出プロファイルおよび同位体分布を含む特定の特性を有するペプチド産物イオンを除外することができる。例えば、いくつかの実施形態において、サンプルがトリプシンで消化され、最も低い定量誤差を有するペプチド産物が、非トリプシンペプチド産物である場合、このペプチド産物は、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセットの選択から除外することができる。いくつかの実施形態において、最も強いMSシグナルを有するペプチド産物の適格なイオンは、起源のポリペプチドの一部として再現性よく存在しない一部のポリペプチドが起源のペプチド産物イオンを除外することができる(例えば、ポリペプチドの切断産物が起源のペプチド産物、したがって、起源のポリペプチドとして同じ濃度でサンプル中に存在することができない)。
【0064】
いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセットの選択は、ローディング研究から得られた定量誤差に基づく。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセットの選択は、複数のサンプルローディング量から得られた定量誤差に基づく。いくつかの実施形態において、定量誤差は、複数のサンプルローディング量の平均パーセント誤差である。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセットの選択は、第1のサンプルローディング量から得られた定量誤差に基づく。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセットの選択は、第2のサンプルローディング量から得られた定量誤差に基づく。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセットの選択は、第1のサンプルローディング量および第2のサンプルローディング量から得られた定量誤差に基づく。
【0065】
いくつかの実施形態において、mは、1以上であり、ここで、mは、整数である。いくつかの実施形態において、mは、3である。いくつかの実施形態において、mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。
【0066】
いくつかの実施形態において、nは、mに等しい。いくつかの実施形態において、nは、mに等しくない。いくつかの実施形態において、nおよびmは、2以上であり、ここで、nおよびmは、整数である。いくつかの実施形態において、nおよびmは、3である。
【0067】
いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位のセットのそれぞれは、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位のセットのそれぞれと相違する。いくつかの実施形態において、適格なペプチド産物イオンは、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位のセットおよび第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位のセットの数である。
【0068】
いくつかの実施形態において、適格なペプチド産物イオンは、カルバミドメチル化されたシステインを含む。いくつかの実施形態において、適格なペプチド産物イオンは、カルボキシメチル化されたシステインを含む。
【0069】
低存在量のポリペプチドの絶対ポリペプチド量の決定
本発明は、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む複数のポリペプチドを含むサンプル中の第1のポリペプチドの絶対ポリペプチド量を計算するための方法であって、方法は、第1のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第1のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(A);第2のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(B);第1のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセット(C);ならびに第2のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位のセット(D)についてのMSシグナルの平均または合計に基づいてサンプル中の第1のポリペプチドの絶対量を決定することを含み、ここで、A、B、CおよびDが、MSシグナルの平均を使用してすべて計算されるか、またはMSシグナルの合計を使用してすべて計算される、方法を提供する。
【0070】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドの絶対量は、以下の式:
[(A)/(C)]×(第1のローディング量での第2のポリペプチドのモル)×[(D)/(B)]
または数学的に等価な式に基づいて決定される。
【0071】
いくつかの実施形態において、A、B、CおよびDは、MSシグナルの平均を使用してすべて計算される。いくつかの実施形態において、A、B、CおよびDは、MSシグナルの合計を使用してすべて計算される。
【0072】
いくつかの実施形態において、MSシグナルは、イオン化強度である。いくつかの実施形態において、MSシグナルは、ピーク高さである。いくつかの実施形態において、MSシグナルは、ピーク面積である。いくつかの実施形態において、MSシグナルは、ピーク体積である。
【0073】
いくつかの実施形態において、最も強いMSシグナルを有する第1のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセットは、あらかじめ定められる。いくつかの実施形態において、最も強いMSシグナルを有する第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセットは、あらかじめ定められる。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセットはあらかじめ定められる。いくつかの実施形態において、第2のサンプルローディング量で最も強いMSシグナルを有する第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(B)、および第2のサンプルローディング量で第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位のセット(D)の比は、あらかじめ定められる。
【0074】
いくつかの実施形態において、第1のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第1のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(A);第2のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(B);第1のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセット(C);ならびに第2のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位のセット(D)についてのMSシグナルの平均または合計は、サンプルの2回のLC/MS分析から決定される。いくつかの実施形態において、2回のLC/MS分析の追加の反復分析が行われる。
【0075】
いくつかの実施形態において、第1のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第1のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(A);第2のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(B);第1のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセット(C);ならびに第2のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位のセット(D)についてのMSシグナルの平均または合計は、サンプルの2回のLC/MS分析から決定され、ここで、LC/MS分析は、ローディング研究の一部ではない。いくつかの実施形態において、2回のLC/MS分析の追加の反復分析が行われる。
【0076】
いくつかの実施形態において、定量方法は、既知量の2つまたはそれ以上のポリペプチドからのMSシグナルを含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、本方法は、第2のポリペプチドの絶対量を決定することをさらに含む。第2のポリペプチドのタンパク質量を決定するための方法としては、例えば、ELISAおよびウエスタンブロットが挙げられる。
【0078】
アッセイごとに未知の濃度の2つ以上のポリペプチドを、本発明の方法を使用して、識別および定量することができると考えられる。例えば、上記に開示された式から、第1のサンプルローディング量で最も強いMSシグナルを有する第1のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(A)を、第1のサンプルローディング量で最も強いMSシグナルを有する別のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセットで置き換えて、他のポリペプチドの量を計算することができる。
【0079】
サンプルおよびサンプルの調製
本発明の方法は、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む複数のポリペプチドを含むサンプル中の第1のポリペプチドの絶対定量のために有用であり、ここで、第1のポリペプチドは、第2のポリペプチドと比べて低い存在量である。
【0080】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドは、第2のポリペプチドよりも少なくとも約10倍低い存在量である。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドは、第2のポリペプチドよりも少なくとも約100倍低い存在量である。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドは、第2のポリペプチドよりも少なくとも約1000倍低い存在量である。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドは、第2のポリペプチドよりも少なくとも約2倍~約1×109倍低い存在量である。例えば、第1のポリペプチドは、10億分の1の量で測定される。
【0081】
いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、第1のポリペプチドよりも少なくとも約10倍高い存在量である。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、第1のポリペプチドよりも少なくとも約100倍高い存在量である。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、第1のポリペプチドよりも、少なくとも約1000倍高いか、または1×109倍高い存在量である。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、第1のポリペプチドよりも少なくとも約2倍~約1×109倍高い存在量である。
【0082】
LC/MS技術による分析のために、サンプル中で複数のポリペプチドのペプチド産物を産生させるために必要なサンプル調製技術は、当技術分野において公知である。
【0083】
いくつかの実施形態において、サンプル中の複数のポリペプチドのペプチド産物は、LC/MS技術を使用してペプチド産物を分析する前に、サンプルの消化によって得られる。いくつかの実施形態において、サンプルの消化は、プロテアーゼを使用する酵素消化を含む。いくつかの実施形態において、酵素消化は、トリプシン、Lys-C、IdeS、IdeZ、PNGアーゼF、サーモリシン、ペプシン、エラスターゼ、Arg-C、TEV、Glu-C、Asp-N、および第Xa因子の1つまたはそれ以上を使用して行われる。いくつかの実施形態において、サンプル中の複数のポリペプチドのペプチド産物は、トリプシンペプチド産物である。
【0084】
いくつかの実施形態において、サンプルの消化は、酸加水分解などの化学的消化を含む。
【0085】
いくつかの実施形態において、本方法は、サンプルを得ることを含む。LC/MS分析のためのサンプルを得るための技術は、当技術分野において公知であり、例えば、組織(例えば、血液、血漿)の採取、および細胞培養が挙げられる。
【0086】
いくつかの実施形態において、サンプルは、精製または濃縮されている。いくつかの実施形態において、本方法は、サンプル中の複数のポリペプチドを処理して、ペプチド産物を産生させることを含む。いくつかの実施形態において、サンプル中の複数のポリペプチドの処理は、(a)サンプルを遠心分離して、複数のポリペプチドを単離すること;(b)サンプル中の複数のポリペプチドを精製すること;(c)その後の処理およびLC/MS分析と不適合の構成成分をサンプルから除去すること;(d)複数のポリペプチドを消化して、ペプチド産物を産生させること;ならびに(e)LC/MS分析の前にペプチド産物を精製することの1つまたはそれ以上を含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドは、宿主細胞タンパク質である。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、宿主細胞によって産生される組換えポリペプチドである。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、抗体(例えば、組換え抗体)、または酵素(例えば、組換え酵素)、またはペプチド(例えば、インスリン)などの治療用ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、ウイルス粒子のキャプシド(例えば、遺伝子治療のためなど)などのウイルスタンパク質である。いくつかの実施形態において、サンプルは、細胞培養サンプルである。いくつかの実施形態において、サンプルは、医薬品またはその中間体である。
【0088】
いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドは、循環バイオマーカーなどのバイオマーカーである。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、血清アルブミンである。いくつかの実施形態において、サンプルは、血液または血清サンプルである。
【0089】
液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)の技術
本発明は、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む複数のポリペプチドを含むサンプルのタンデム質量スペクトルを発生させるためのLC/MS技術の多様なアレイを考慮する。
【0090】
いくつかの実施形態において、LC/MS技術は、液体クロマトグラフィー技術によってペプチド産物を分離することを含む。本出願によって考慮される液体クロマトグラフィー技術は、ポリペプチドを分離するための方法を含み、液体クロマトグラフィー技術は、質量分析技術と適合する。いくつかの実施形態において、液体クロマトグラフィー技術は、高速液体クロマトグラフィー技術を含む。したがって、いくつかの実施形態において、液体クロマトグラフィー技術は、超高速液体クロマトグラフィー技術を含む。いくつかの実施形態において、液体クロマトグラフィー技術は、高流量液体クロマトグラフィー技術を含む。いくつかの実施形態において、液体クロマトグラフィー技術は、マイクロ流量液体クロマトグラフィー技術またはナノ流量液体クロマトグラフィー技術などの低流量液体クロマトグラフィー技術を含む。いくつかの実施形態において、液体クロマトグラフィー技術は、質量分析計と連結されたオンライン液体クロマトグラフィー技術を含む。いくつかの実施形態において、オンライン液体クロマトグラフィー技術は、高速液体クロマトグラフィー技術である。いくつかの実施形態において、オンライン液体クロマトグラフィー技術は、超高速液体クロマトグラフィー技術である。
【0091】
いくつかの実施形態において、キャピラリー電気泳動(CE)技術、またはエレクトロスプレーもしくはMALDI技術を、質量分析計にサンプルを導入するために使用することができる。
【0092】
いくつかの実施形態において、質量分析技術は、イオン化技術を含む。本出願によって考慮されるイオン化技術は、ポリペプチドおよびペプチド産物を帯電させる能力がある技術を含む。したがって、いくつかの実施形態において、イオン化技術は、エレクトロスプレーイオン化である。いくつかの実施形態において、イオン化技術は、ナノエレクトロスプレーイオン化である。いくつかの実施形態において、イオン化技術は、大気圧化学イオン化である。いくつかの実施形態において、イオン化技術は、大気圧光イオン化である。いくつかの実施形態において、イオン化技術は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)である。いくつかの実施形態において、質量分析技術は、エレクトロスプレーイオン化、ナノエレクトロスプレーイオン化またはマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)を含む。
【0093】
いくつかの実施形態において、LC/MS技術は、質量分析技術によってペプチド産物を分析することを含む。オンライン液体クロマトグラフィー技術と連結される本発明によって考慮される質量分析計としては、高分解能質量分析計および低分解能質量分析計が挙げられる。したがって、いくつかの実施形態において、質量分析計は、飛行時間型(TOF)質量分析である。いくつかの実施形態において、質量分析計は、四重極飛行時間型(Q-TOF)質量分析である。いくつかの実施形態において、質量分析計は、四重極イオントラップ飛行時間型(QIT-TOF)質量分析である。いくつかの実施形態において、質量分析計は、イオントラップである。いくつかの実施形態において、質量分析計は、シングル四重極である。いくつかの実施形態において、質量分析計は、トリプル四重極(QQQ)である。いくつかの実施形態において、質量分析計は、オービトラップである。いくつかの実施形態において、質量分析計は、四重極オービトラップである。いくつかの実施形態において、質量分析計は、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FT)質量分析計である。いくつかの実施形態において、質量分析計は、四重極フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(Q-FT)質量分析計である。いくつかの実施形態において、質量分析技術は、陽イオンモードを含む。いくつかの実施形態において、質量分析技術は、陰イオンモードを含む。いくつかの実施形態において、質量分析技術は、飛行時間型(TOF)質量分析技術を含む。いくつかの実施形態において、質量分析技術は、四重極飛行時間型(Q-TOF)質量分析技術を含む。いくつかの実施形態において、質量分析技術は、イオン移動度質量分析技術を含む。いくつかの実施形態において、イオントラップまたはシングルもしくはトリプル四重極アプローチなどの低分解能質量分析技術が、適切である。
【0094】
いくつかの実施形態において、LC/MS技術は、ペプチド産物の得られたMSシグナルを処理することを含む。いくつかの実施形態において、LC/MS技術は、ピーク検出を含む。いくつかの実施形態において、LC/MS技術は、ペプチド産物のイオン化強度を決定することを含む。いくつかの実施形態において、LC/MS技術は、ペプチド産物のピーク高さを決定することを含む。いくつかの実施形態において、LC/MS技術は、ペプチド産物のピーク面積を決定することを含む。いくつかの実施形態において、LC/MS技術は、ペプチド産物のピーク体積を決定することを含む。いくつかの実施形態において、LC/MS技術は、アミノ酸配列によってペプチド産物を識別することを含む。いくつかの実施形態において、LC/MS技術は、ペプチド産物のアミノ酸配列決定を手作業で確認することを含む。いくつかの実施形態において、LC/MS技術は、タンパク質識別子によって第1のポリペプチドを識別することを含む。いくつかの実施形態において、LC/MS技術は、タンパク質識別子による複数のポリペプチドの1つまたはそれ以上を識別することを含み、これは、データベース検索またはライブラリー検索における識別である。
【0095】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドのペプチド産物の識別は、スペクトルライブラリーを使用して達成することができる。一般に、スペクトルライブラリーの使用は、ポリペプチドシステムに関して得られた知識の補完を可能にし、データ分析の速度の向上および誤りの減少をもたらす。
【0096】
絶対定量方法の使用
本明細書に開示されるMSに基づく無標識絶対定量方法は、低存在量のポリペプチドおよび比較的高存在量の別のポリペプチドを含むサンプル中の低存在量のポリペプチドの定量を含む使用のために、特に適している。本明細書に開示されるMSに基づく無標識絶対定量方法は、例えば、治療用タンパク質の精製における低存在量のタンパク質の定量などの複数工程のプロセス中の1つの工程を構成することができる。
【0097】
いくつかの実施形態において、本発明は、治療用ポリペプチドの製造において混入ポリペプチドを検出する方法であって、(a)治療用ポリペプチドを含むサンプルを得ること;(b)混入ポリペプチドがサンプル中に存在するかどうかを決定することを含み、混入ポリペプチドの存在が、本明細書において開示される方法を使用するサンプル中の混入ポリペプチドの絶対定量に基づく、方法を提供する。いくつかの実施形態において、混入ポリペプチドは、宿主細胞タンパク質である。いくつかの実施形態において、混入ポリペプチドは、キャプシドタンパク質などのウイルスタンパク質である。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、治療用ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、2つ以上の混入ポリペプチドが、サンプル中で検出される(例えば、サンプル中の混入ポリペプチドの総量が定量される)。1つの実施形態において、サンプルは、さまざまな工程で組換えポリペプチドの純度についてアッセイするために、組換えポリペプチド(例えば、治療用ポリペプチド)の製造プロセスの間のさまざまな工程で取得される。識別されるより低量の混入ポリペプチド(例えば、宿主細胞のポリペプチド)は、より高い純度の組換えポリペプチドを示す。
【0098】
いくつかの実施形態において、本発明は、治療用ポリペプチドを製造する方法であって、方法は、(a)製造プロセスの段階、例えば、細胞培養物の回収または精製工程から治療用ポリペプチドを含むサンプルを得ること;(b)サンプル中の混入ポリペプチドを識別すること;(c)サンプル中の混入ポリペプチドのレベルを決定することを含み、ここで、混入ポリペプチドのレベルが、本明細書において開示される方法を使用するサンプル中の混入ポリペプチドの絶対定量に基づく、方法を提供する。いくつかの実施形態において、混入ポリペプチドは、宿主細胞タンパク質である。いくつかの実施形態において、混入ポリペプチドは、キャプシドタンパク質などのウイルスタンパク質である。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、治療用ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、2つ以上の混入ポリペプチドが、サンプル中で検出される(例えば、サンプル中の混入ポリペプチドの総量が定量される)。1つの実施形態において、サンプルは、さまざまな工程で組換えポリペプチドの純度についてアッセイするために、組換えポリペプチド(例えば、治療用ポリペプチド)の製造プロセスの間のさまざまな工程で取得される。識別されるより低量の混入ポリペプチド(例えば、宿主細胞のポリペプチド)は、より高い純度の組換えポリペプチドを示す。
【0099】
いくつかの実施形態において、本発明は、治療用ポリペプチドを精製する方法であって、方法は、(a)精製プロセスの1つまたはそれ以上の段階、例えば、細胞培養物の回収または精製工程から治療用ポリペプチドを含むサンプルを得ること;(b)サンプル中の混入ポリペプチドを識別すること;(c)精製プロセスの1つまたはそれ以上の段階で、サンプル中の混入ポリペプチドのレベルを決定することを含み、ここで、混入ポリペプチドのレベルが、本明細書において開示される方法を使用するサンプル中の混入ポリペプチドの絶対定量に基づく、方法を提供する。いくつかの実施形態において、混入ポリペプチドは、宿主細胞タンパク質である。いくつかの実施形態において、混入ポリペプチドは、キャプシドタンパク質などのウイルスタンパク質である。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、治療用ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、2つ以上の混入ポリペプチドが、サンプル中で検出される(例えば、サンプル中の混入ポリペプチドの総量が定量される)。1つの実施形態において、サンプルは、さまざまな工程で組換えポリペプチドの純度についてアッセイするために、組換えポリペプチド(例えば、治療用ポリペプチド)の製造プロセスの間のさまざまな工程で取得される。識別されるより低量の混入ポリペプチド(例えば、宿主細胞のポリペプチド)は、より高い純度の組換えポリペプチドを示す。
【0100】
いくつかの実施形態において、本発明は、遺伝子治療製品中の混入ポリペプチドを検出する方法を提供する。本方法は、例えば、(a)精製プロセスの1つまたはそれ以上の段階、例えば、細胞培養物の回収または精製工程から遺伝子治療ベクターを含むサンプルを得ること;(b)サンプル中の混入ポリペプチドを識別すること;(c)精製プロセスの1つまたはそれ以上の段階で、サンプル中の混入ポリペプチドのレベルを決定することを含み、ここで、混入ポリペプチドのレベルは、本明細書において開示される方法を使用するサンプル中の混入ポリペプチドの絶対定量に基づく。いくつかの実施形態において、遺伝子治療製品は、キャプシドなどのウイルスタンパク質に関連する。いくつかの実施形態において、遺伝子治療製品は、キャプシドなどのウイルスタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、遺伝子治療ベクターは、キャプシドなどのウイルスタンパク質に関連する。いくつかの実施形態において、遺伝子治療ベクターは、キャプシドなどのウイルスタンパク質を含むウイルス粒子の部分である。いくつかの実施形態において、混入ポリペプチドは、宿主細胞タンパク質である。いくつかの実施形態において、混入ポリペプチドは、キャプシドタンパク質などのウイルスタンパク質である。いくつかの実施形態において、混入ポリペプチドは、遺伝子治療製品に関連しないウイルスタンパク質である。いくつかの実施形態において、混入ポリペプチドは、遺伝子治療製品の一部ではないウイルスタンパク質である。いくつかの実施形態において、混入ポリペプチドは、ヘルパーウイルスタンパク質である。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、キャプシドタンパク質などのウイルスタンパク質である。いくつかの実施形態において、2つ以上の混入ポリペプチドが、サンプル中で検出される(例えば、サンプル中の混入ポリペプチドの総量が定量される)。1つの実施形態において、サンプルは、さまざまな工程で遺伝子治療製品の純度についてアッセイするために、遺伝子治療製品の製造プロセスの間のさまざまな工程で取得される。識別されるより低量の混入ポリペプチド(例えば、宿主細胞のポリペプチド)は、より高い純度の遺伝子治療製品を示す。
【0101】
いくつかの実施形態において、本発明は、遺伝子治療製品を製造する方法を提供する。本方法は、例えば、(a)精製プロセスの1つまたはそれ以上の段階、例えば、細胞培養物の回収または精製工程から遺伝子治療ベクターを含むサンプルを得ること;(b)サンプル中の混入ポリペプチドを識別すること;(c)精製プロセスの1つまたはそれ以上の段階で、サンプル中の混入ポリペプチドのレベルを決定することを含み、ここで、混入ポリペプチドのレベルは、本明細書において開示される方法を使用するサンプル中の混入ポリペプチドの絶対定量に基づく。いくつかの実施形態において、遺伝子治療製品は、キャプシドなどのウイルスタンパク質に関連する。いくつかの実施形態において、遺伝子治療製品は、キャプシドなどのウイルスタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、遺伝子治療ベクターは、キャプシドなどのウイルスタンパク質に関連する。いくつかの実施形態において、遺伝子治療ベクターは、キャプシドなどのウイルスタンパク質を含むウイルス粒子の部分である。いくつかの実施形態において、混入ポリペプチドは、宿主細胞タンパク質である。いくつかの実施形態において、混入ポリペプチドは、キャプシドタンパク質などのウイルスタンパク質である。いくつかの実施形態において、混入ポリペプチドは、遺伝子治療製品に関連しないウイルスタンパク質である。いくつかの実施形態において、混入ポリペプチドは、遺伝子治療製品の一部ではないウイルスタンパク質である。いくつかの実施形態において、混入ポリペプチドは、ヘルパーウイルスタンパク質である。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、キャプシドタンパク質などのウイルスタンパク質である。いくつかの実施形態において、2つ以上の混入ポリペプチドが、サンプル中で検出される(例えば、サンプル中の混入ポリペプチドの総量が定量される)。1つの実施形態において、サンプルは、さまざまな工程で遺伝子治療製品の純度についてアッセイするために、遺伝子治療製品の製造プロセスの間のさまざまな工程で取得される。識別されるより低量の混入ポリペプチド(例えば、宿主細胞のポリペプチド)は、より高い純度の遺伝子治療製品を示す。
【0102】
いくつかの実施形態において、本発明は、遺伝子治療製品を精製する方法を提供する。本方法は、例えば、(a)精製プロセスの1つまたはそれ以上の段階、例えば、細胞培養物の回収または精製工程から遺伝子治療ベクターを含むサンプルを得ること;(b)サンプル中の混入ポリペプチドを識別すること;(c)精製プロセスの1つまたはそれ以上の段階で、サンプル中の混入ポリペプチドのレベルを決定することを含み、ここで、混入ポリペプチドのレベルは、本明細書において開示される方法を使用するサンプル中の混入ポリペプチドの絶対定量に基づく。いくつかの実施形態において、遺伝子治療製品は、キャプシドなどのウイルスタンパク質に関連する。いくつかの実施形態において、遺伝子治療製品は、キャプシドなどのウイルスタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、遺伝子治療ベクターは、キャプシドなどのウイルスタンパク質に関連する。いくつかの実施形態において、遺伝子治療ベクターは、キャプシドなどのウイルスタンパク質を含むウイルス粒子の部分である。いくつかの実施形態において、混入ポリペプチドは、宿主細胞タンパク質である。いくつかの実施形態において、混入ポリペプチドは、キャプシドタンパク質などのウイルスタンパク質である。いくつかの実施形態において、混入ポリペプチドは、遺伝子治療製品に関連しないウイルスタンパク質である。いくつかの実施形態において、混入ポリペプチドは、遺伝子治療製品の一部ではないウイルスタンパク質である。いくつかの実施形態において、混入ポリペプチドは、ヘルパーウイルスタンパク質である。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、キャプシドタンパク質などのウイルスタンパク質である。いくつかの実施形態において、2つ以上の混入ポリペプチドが、サンプル中で検出される(例えば、サンプル中の混入ポリペプチドの総量が定量される)。1つの実施形態において、サンプルは、さまざまな工程で遺伝子治療製品の純度についてアッセイするために、遺伝子治療製品の製造プロセスの間のさまざまな工程で取得される。識別されるより低量の混入ポリペプチド(例えば、宿主細胞のポリペプチド)は、より高い純度の遺伝子治療製品を示す。
【0103】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、混入ポリペプチドの存在に基づいてプロトコールを調整することをさらに含む。例えば、精製プロセスは、識別および定量された混入ポリペプチドの存在に基づいて調整することができる。このような調整は、治療用ポリペプチドなどの標的ポリペプチドの純度を改善するための方法を提供する。
【0104】
いくつかの実施形態において、本発明は、個体の疾患を処置する方法であって、個体が、個体のバイオマーカーの量に基づいて、処置のために選択される方法を提供する。いくつかの実施形態において、バイオマーカーは、血清サンプル中で定量される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドは、バイオマーカーである。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、血清アルブミンである。
【0105】
いくつかの実施形態において、本発明は、個体の疾患を評価する方法であって、個体が、個体のバイオマーカーの量に基づいて評価される方法を提供する。いくつかの実施形態において、バイオマーカーの量は、血清サンプル中で定量される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドは、バイオマーカーである。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、血清アルブミンである。
【0106】
いくつかの実施形態において、本発明は、個体の疾患を診断する方法であって、個体が、個体のバイオマーカーの量に基づいて疾患を診断される方法を提供する。いくつかの実施形態において、バイオマーカーの量は、血清サンプル中で定量される。いくつかの実施形態において、第1のポリペプチドは、バイオマーカーである。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、血清アルブミンである。
【0107】
システム
本発明は、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む複数のポリペプチドを含むサンプル中の第1のポリペプチドの絶対ポリペプチド量を決定するために有用なシステムおよび非一時的なコンピューター可読媒体を提供する。
【0108】
いくつかの実施形態において、本発明は、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含むサンプル中の第1のポリペプチドの絶対定量のためのシステムであって、システムは、(a)質量分析計と(b)コンピューターを含み;(c)コンピューターの実行時に、(i)第1のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第1のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(A);(ii)第2のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(B);(iii)第1のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセット(C);ならびに(iv)第2のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位のセット(D)についてのMSシグナルの平均または合計を計算することを含む処理を行う、格納された指示を含む非一時的なコンピューター可読媒体を含み;ここで、A、B、CおよびDが、MSシグナルの平均を使用してすべて計算されるか、またはMSシグナルの合計を使用してすべて計算され;以下の式:
[(A)/(C)]×(第1のローディング量での第2のポリペプチドのモル)×[(D)/(B)]
またはその数学的に等価な式に基づいて、第1のサンプルローディング量中の第1のポリペプチドの絶対量を決定する、システムを提供する。いくつかの実施形態において、本システムは、液体クロマトグラフをさらに含む。
【0109】
いくつかの実施形態において、本発明は、実行時に、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含むサンプル中の第1のポリペプチドの絶対定量のための処理を行う、格納された指示を含む非一時的なコンピューター可読媒体であって、処理は、(i)第1のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第1のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(A);(ii)第2のサンプルローディング量で、最も強いMSシグナルを有する第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセット(B);(iii)第1のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセット(C);ならびに(iv)第2のサンプルローディング量で、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位のセット(D)についてのMSシグナルの平均または合計を計算することを含み;ここで、A、B、CおよびDが、MSシグナルの平均を使用してすべて計算されるか、またはMSシグナルの合計を使用してすべて計算され;以下の式:
[(A)/(C)]×(第1のローディング量での第2のポリペプチドのモル)×[(D)/(B)]
またはその数学的に等価な式に基づいて、第1のサンプルローディング量中の第1のポリペプチドの絶対量を決定する、媒体を提供する。
【0110】
当業者は、いくつかの実施形態が、本発明の範囲および趣旨内で可能であることを認識するだろう。ここに、本発明を、以下の非限定的な実施例を参照することによって、より詳細に記載する。以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、当然ながら、その範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【0111】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合を介して共有結合したアミノ酸を含むポリマーを指す。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、タンパク質である。いくつかの例において、タンパク質は、2つまたはそれ以上のポリペプチド(例えば、多量体タンパク質、ホモマータンパク質、多タンパク質複合体)を含む。ポリペプチドは、非アミノ酸部分でさらに修飾することができる。例えば、ポリペプチドは、酵素的に媒介された修飾および/または化学的修飾(例えば、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ホルミル化、グリコシル化、酸化)をさらに含むことができる。このような修飾は、例えば、細胞系の環境中で、またはサンプルの処理および/もしくは分析技術の結果として、生じる。
【0112】
本明細書で使用される場合、「ペプチド産物」という用語は、ポリペプチドの分解処理後に得られるペプチド結合を介して共有結合した2つまたはそれ以上のアミノ酸を含むポリマーを指す。例えば、ペプチド産物は、化学消化(例えば、酸加水分解)または酵素消化(例えば、トリプシン消化)を含むポリペプチドの分解処理後に得られる。いくつかの実施形態において、ペプチド産物は、トリプシンペプチドである。いくつかの実施形態において、ペプチド産物は、より大きなポリペプチドの末端フラグメントである。いくつかの実施形態において、ペプチド産物は、ポリペプチドの内部フラグメントである。
【0113】
「含む」という用語は、本明細書において、他の構成成分、成分、工程などが場合により存在することを意味するために使用される。例えば、構成成分A、BおよびCを「含む」物品は、構成成分A、BおよびCからなる(すなわち、のみを含有する)ことができ、または、構成成分A、BおよびCだけでなく、1つもしくはそれ以上の他の構成成分も含有することができる。「含む」およびその文法上の同等のものは、「からなる」または「から本質的になる」を含むことが理解される。
【0114】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限および下限、ならびに述べられた範囲内のその他の述べられた値または間にある値の間の、それぞれの間にある値は、文脈が他を明確に指示しない限り、下限の単位の10分の1まで、本開示の範囲内に包含され、述べられた範囲において任意の具体的に除外された限定に対することが理解される。述べられた範囲が、1つまたは両方の限定を含む場合、これらを含む限定のいずれかまたは両方を除外する範囲も本開示に含まれる。
【0115】
本明細書における「約」の値またはパラメーターへの言及は、その値またはパラメーターそれ自体に対する変動を含む(および記載する)。例えば、「約X」に言及する説明は、「X」の説明を含む。
【0116】
本明細書で使用される場合、および添付の特許請求の範囲において、単数形の「a」、「or」および「the」は、文脈が他を明確に指示しない限り、複数形を含む。
【実施例1】
【0117】
ASMのペプチド産物イオンの中位のセットの改善された線形MSシグナル応答を実証するASMのローディング研究
本実施例は、第1のサンプルローディング量および第2のローディング量の選択のためのスフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ(ASM)を含むサンプルを使用するローディング研究を実証した。さらにまた、本実施例は、ASMの最も高い存在量のペプチド産物イオンの上位のセットと比較して、ASMのペプチド産物イオンの中位のセットの改善された線形MSシグナル応答を実証した。
【0118】
三反復で、ASMサンプルを、LysCおよびトリプシンでの消化の前に、変性、還元およびアルキル化した。LC/MS分析を、1μg、2.5μg、5μg、7.5μg、10μg、12.5μg、15μg、18μg、および20μgの消化されたサンプルに対して行った。クロマトグラフィーを、CSH130 C18 1.7μmの材料で充填された2.1×150mmカラムを有するACQUITY UPLCを用いて行った。データを、Xevo Q-Tof G2-XSで低衝突エネルギーおよび高衝突エネルギーの交互スキャンを使用して取得して、前駆体およびフラグメントイオンの情報を生成した。上位40個の最も豊富なASMのペプチド産物イオンのサンプル量の範囲にわたる、それぞれのペプチド産物イオンについてのMSピーク面積および平均パーセント誤差を計算した。
【0119】
図1は、異なるサンプルローディング量でのスフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ(ASM)を含むサンプルのLC/MS分析から観察された40個の最も豊富なペプチド産物イオンについてのMSピーク面積のヒストグラムを示す(LC/MS分析あたりのサンプルローディング量は、それぞれのペプチドのバーのセットの左から右に、1μg、2.5μg、5μg、7.5μg、10μg、12.5μg、15μg、18μgおよび20μgの順である)。サンプルローディング量の全体でのそれぞれのペプチド産物イオンについての平均パーセントの誤差を、ペプチドのバーのセットの上部に示す。
【0120】
図1に示すように、最も豊富なASMのペプチド産物は、特に、総サンプル量の増加につれて、すべてのペプチド産物イオンに比べてより高い誤差を有する。ペプチド産物イオン分布の中位のペプチドは、総サンプルローディング量が20μgまでであっても、すべてのペプチド産物イオンに比べてより線形に挙動し、より低い誤差を有する。
【0121】
ローディング研究のデータを使用して、第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの上位の数nのセットおよび第2のポリペプチドのペプチド産物の適格なイオンの中位の数mのセットを選択することができる。例えば、ASMのペプチド産物の適格なイオンの数n、例えば、3の上位のセットは、ペプチドA(z=4)、ペプチドB(z=3)およびペプチドC(z=4)から選択されるペプチド産物イオンを含むことができる。ASMのペプチド産物の適格なイオンの数m、例えば、3の中位のセットは、ペプチドD(z=2)、ペプチドM(z=4)、ペプチドO(z=1)、ペプチドM(z=3)、ペプチドB(z=2)、ペプチドL(z=2)、ペプチドP(z=1)およびペプチドQ(z=1)から選択されるペプチド産物イオンを含むことができる。
【0122】
さらにまた、ASMローディング研究から収集されたデータを使用して、ピーク面積の合計に対してカラムにロードされたサンプル(μg)を、3つの最も豊富なペプチド産物イオンの上位のセット(上位3)および3つのペプチド産物イオンの中位のセット(中位3)を使用するそれぞれのサンプルローディング量についてプロットした(
図2)。上位3つのペプチド産物のセットの非線形の挙動は、最適なサンプルローディング量(10μg)を大きく下回ることが分かった。中位3つのペプチド産物のセットは、ローディング研究のサンプルローディング量の全体にわたって線形に挙動し、したがって、中位3つのペプチド産物イオンが本発明の定量技術のために適切であることが実証された。線形回帰についてのR
2も中位3つのペプチド産物のセットを使用して改善された(0.87の上位3つのペプチド産物のセットと比較して、0.98の中位3つのペプチド産物のセット)。
【0123】
2.5μgロードに対してそれぞれの濃度でのそれぞれのペプチド産物のセットについてのパーセント誤差を表1に提示する。中位3つのペプチド産物のセットについて予想された比および観察された比の間のパーセント誤差は、すべてのサンプルローディング量について、上位3つのペプチド産物のセットより低かった。
【0124】
【実施例2】
【0125】
ポリペプチドについての量を決定する方法
本実施例は、4つの異なるオケージョンでアッセイされた治療用タンパク質産物の4つのタンパク質製造ロットを使用して、Hi-3方法と比較して、Mid-3方法の定量の再現性の改善を実証した。
【0126】
タンパク質Xの4つのタンパク質製造ロット(ロット1、ロット2、ロット3、ロット4)を、実施例1に開示されるようにして、調製および分析した。Hi-3方法について、200fmolのClpB標準(大腸菌シャペロンClpB)ペプチド産物を、内部標準としてそれぞれのサンプル中でスパイクした。
【0127】
Hi-3方法によって測定されたように、スパイクされたClpBタンパク質産物に対して宿主細胞タンパク質の総ppmを、それぞれのタンパク質製造ロットについてプロットした(
図3A)。Hi-3方法の定量測定は、82%の相対標準偏差を有していた。
【0128】
Mid-3方法によって測定されたように、宿主細胞タンパク質(HCP)の総ppmを、それぞれのタンパク質製造ロットについてプロットした(
図3B)。Mid-3方法の定量測定は、16%の相対標準偏差を有していた。
【0129】
Mid-3方法についてポリペプチド量を計算するために使用した式は以下の通りである。
[(高サンプル量のロードでのHCPの上位3つのペプチド産物イオンのピーク面積の合計)/(高サンプル量のロードでの治療用タンパク質産物の中位3つのペプチド産物イオンのピーク面積の合計)]×(高サンプル量のロードでの治療用タンパク質産物のfmol)×[(低サンプル量のロードでの治療用タンパク質産物の中位3つのペプチド産物イオンのピーク面積の合計)/(低サンプル量のロードでの治療用タンパク質産物の上位3つのペプチド産物イオンのピーク面積の合計)]
【0130】
Mid-3方法と比較して、より高い誤差を生じる内部標準としての200fmolのClpBペプチドを用いるHi-3方法の使用。Mid-3方法を使用すると、絶対定量は、再現性が大幅に高くなった。最大のばらつきは、スパイクされた内部標準に起因したが、酵素消化における相違も生じた。カラム上に10μgで、ペプチド産物の中位のセットが、それらが線形に挙動するので、定量のために使用するのにより適していた。
【実施例3】
【0131】
検出のためのMid-3定量方法の適用、および治療用タンパク質の精製の間の宿主細胞タンパク質の追跡
本実施例は、ハイスループット検出のために本明細書に開示されたMid-3定量方法の適用、および細胞培養物の回収から収集されたサンプルから最終脱塩プロトコール後に収集されたサンプルを含む、治療用タンパク質の精製プロセスの間の複数の段階での混入した宿主細胞タンパク質(HCP)の追跡を実証した。本実施例は、後の段階の精製サンプル中のHCPの無標識定量のための保持時間およびm/zによるHCPのペプチドの追跡のためのソフトウェアの使用、ならびにさらにスループットを改善するため、および絶対定量を最適化するためのスペクトルライブラリーに基づく検索の使用をさらに実証した。
【0132】
方法:
治療用タンパク質(タンパク質X)の細胞培養系の製造の後、サンプルを細胞培養の回収から、および最終の薬物サンプルを含む5段階のタンパク質精製プロセスで収集した。三反復で使用して、再現性および収率のデータを含む、下流の測定の統計的検出力を提示した。サンプルを収集した後、回収サンプルを、製造者の指示書に従って3k MWCO Amicon Ultra-15フィルター(EMD Millipore)を通して濾過して濃縮し、残りのサンプルを用いて変性および消化される前に、質量分光分析を妨げる添加物を除去した。簡潔には、Amiconデバイスの水すすぎ工程を終え、次いで、サンプルあたり400μgの総タンパク質または治療用タンパク質を、15mLの総容積まで、トップに添加された50mMの重炭酸アンモニウム(Ambic)とともに添加した。その後、最終の遠心分離工程の前に、15mLの50mMのAmbicの洗浄を終えた。最終濃度は、1.4および1.7mg/mLの総タンパク質または治療用タンパク質の間として測定された。それぞれのサンプル(Amiconで濾過した回収物から原薬(DS)、同様にブランク消化)からの三反復のアリコートを、50mMのAmbic中1mg/mLに希釈し、Rapigest(Waters、0.1%の濃度に50mMのAmbicで再構成した)と1:1で混合し、0.05%のRapigest、50mMのAmbic中0.5mg/mLのタンパク質の最終溶液を作成した。サンプルを60℃で15分間インキュベートして、タンパク質の変性を確実にした。ジスルフィドの還元を、50mMのAmbic中10mMの1,4-ジチオスレイトール(DTT)(Pierce)を用いて、60℃で1時間行った。サンプルを、室温まで放冷した後、50mMのAmbic中20mMの2-ヨードアセトアミド(IAA)(Pierce)でアルキル化し、暗所で30分間、室温でインキュベートした。Lys-C(Promega、15μg/バイアル)を、0.125μg/μLの濃度で50mMのAmbic中で再構成し、酵素:基質比が1:50でそれぞれのサンプルに添加した。サンプルを37℃で終夜インキュベートした。翌朝、トリプシン(Promega、100μg/バイアル)溶液を、50mMのAmbic中0.4μg/μLで調製し、1:25の比でサンプルに添加し、37℃で3時間インキュベートした。Rapigestを、2.05%のギ酸(EMD Millipore)の添加による酸切断によって除去した。サンプルを37℃で30分間インキュベートした後、12,000rpmで15分間遠心分離して、切断されたRapigestおよび任意の未消化タンパク質をペレット化した。それぞれのオートサンプラーバイアルを、20μgの消化サンプル、400fmolのHi3大腸菌標準(Waters)で調製し、LC-MSへの注入のために、0.1%のギ酸で60μLの最終容積に希釈した。
【0133】
消化サンプル(カラムに30μLまたは10μg)を、1.7μmのCSH C18カラム(2.1mm×150mm、Waters)を使用するLC-MS分析のために、Waters XEVO G2-XS QTof質量分析計が取り付けられたWaters ACQUITY H-Class UPLCシステムに注入した。質量分析計をセットして、感度モードにおいて0.3秒のスキャンで、500~2000の質量範囲にわたってMSEデータを収集した。すべてのサンプルを、清浄段階内で無作為な順序で実行した(すなわち、ブランクおよび原薬を、最初に、一緒に無作為化して実行し、mid-プロセスカラム溶出サンプルを、次に、無作為化して実行し、最後に細胞培養の回収物を無作為化および実行した)。UPLCは、添加物として0.1%のギ酸を有する水およびアセトニトリル(ACN)、ならびに30分にわたって5~40%のACN、5分にわたって85%のACNの勾配、2分間の保持、3分にわたって初期状態に戻り、5分間の保持の、250μL/分の流速での、45分の総グラジエント時間のグラジエントを使用した。
【0134】
MSデータのファイルを、MSE検索アルゴリズム(Waters)を使用して配列データベースに対して検索する前に、ピーク摘出および前駆体/生成物イオンのアラインメントのために、プロテオミクスソフトウェア(Nonlinear Dynamics)用のProgenesis Qiにインポートした。データベースは、治療用タンパク質産物の配列、通常の混入タンパク質、チャイニーズハムスター単輸送体データベースおよびそれぞれの逆バージョンを組み合わせた(69,916の総配列)。識別を、4%以下のFDRで、1つのペプチドあたり3つのフラグメント、1つのタンパク質あたり7つのフラグメント、および1つのタンパク質あたり少なくとも2つのペプチドの要件で行った。>5のペプチドスコアおよび<10ppmのペプチド質量誤差を使用して、<1%のFDRを得るために、さらなるフィルタリングを利用した。一般に、ペプチドの識別は、最も上流のプロセスのサンプル、例えば、回収ンプルで行ったが、これは、常にそういうわけではない。タンパク質についての傾向と一致しなかったペプチドは、定量に含めなかった。タンパク質を、ClpB(Hi-3)または産物に対して線形に挙動するペプチド(Mid-3)についての上位3つのペプチドと比較して、1タンパク質あたり上位3つのペプチドの存在量に基づいて定量して(すべて3回の注入に対する)、それぞれのサンプル中に存在するタンパク質の相対量を決定した。
【0135】
結果および議論:
治療用タンパク質の製造混合物中で比較的低存在量のHCPの分析のためにプロテオミクス発見ソフトウェアのツールを使用する1つの危険性は、治療用タンパク質からの豊富なイオンが、HCPとして間違って識別されることである。最近、豊富なタンパク質に対する人為現象が、デコイの割合よりも非常に高い割合で他のタンパク質として間違って識別されていることが示された(Kongら、Nature methods.、2017年;14巻(5号):513~520頁)。HCPもタンパク質レベルで正しく識別されるが、それらのHCPに対するいくつかのペプチドは、不正確である可能性があるか、または他のイオンに干渉される可能性があり、したがって、これらは、定量のために使用するべきではない。
【0136】
本明細書に開示される方法は、精製プロセス全体にわたって強度パターンの直交する物理化学的性質を使用して、そのような偽陽性の識別および干渉を有するペプチドを取り除く。プロテオミクスのためのProgenesis Qi内で、それぞれのペプチドを、識別スコアおよび質量精度、ならびに全実験におけるペプチドの傾向の可視化にそってリスト化した。m/zおよび保持時間でそれぞれのペプチドの検出を示す画像も、他の干渉イオンが観察されるように示した。例えば、観察された干渉を有するペプチドは、定量のために使用しなかった。
【0137】
全精製プロセスからのサンプルの分析のためのLC-MS分析時間は、約2日で終了した(単一サンプルについてのLC-MS分析時間は約45分であった)。HCPからのペプチドを含むすべてのペプチドの識別の手作業での検証には、およそ2週間かかった。検証後、治療用タンパク質製造サンプルからの識別されたHCPの最終リストを定量した。
図4に示すように、通常のHCPは、7つの製造ロットの間で識別された。精製プロセス、例えば、精製プロセスのそれぞれの工程の間でのHCPの除去の説明を提供する主成分分析(PCA)を理解するために、統計解析を行った。さらなるHCPの分析は、精製プロセスの間で類似の挙動をするタンパク質をグループ化する階層的クラスタリングを含んでいた。階層的クラスタリングは、精製プロセスのそれぞれの工程の間で除去されるタンパク質を発見するために、ノードの調査を可能にした。これらのデータを使用して、特定のHCPが最終の治療用タンパク質産物から除去されたことを確実にする精製プロセスを理解および最適化した。治療用タンパク質から適切に精製されないHCPを、例えば、pI、分子量、疎水性、活性および免疫原性を含むHCPの物理化学的性質に基づいて、精製プロセスを最適化することによって除去した。ソフトウェアも、精製プロセスの過程にわたってHCPの存在を自動的に監視するために使用した。
【0138】
アッセイオケージョン間のHCPの絶対定量におけるばらつきの最大の原因は、スパイクされた内部標準の量、または消化されたタンパク質であるHCPに対するペプチドレベルの内部標準の量のいずれかであった。スパイクされた内部標準は、通常、絶対定量のために使用されることを意味するHi-3のClpBペプチドであった。標準の可溶化、アリコートおよび保存に高度の注意を払ったが、変動は、例えば、操作者間でのピペッティングの違い、またはアッセイオケージョン間の酵素消化の変化に起因して生じた。スパイクされた内部標準の使用に代えて、本明細書に示すように、治療用タンパク質のペプチドを使用することができるが、しかしながら、治療用タンパク質からの最も豊富なペプチドは、しばしば、質量分析計のダイナミックレンジを超える存在量であり、すなわち、最も豊富な治療用タンパク質のペプチドは、質量分析計の検出器を過度に飽和する。最も豊富なペプチドの方法(Hi-3方法)を使用すると、最も豊富なペプチドが、例えば、検出器の飽和に起因して、非線形の挙動を有することが観察された。対照的に、Mid-3ペプチドと呼ばれる中位のイオン化分布のペプチドは、存在量に基づくシグナルの線形挙動を有することが観察された。本明細書に示すように、Mid-3ペプチドからのデータを統合するMid-3ペプチド方法は、より低い誤差を生じ、カラム上で18μgまで線形挙動を示した。