(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体及びその構築方法
(51)【国際特許分類】
A21B 1/04 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
A21B1/04
(21)【出願番号】P 2020119626
(22)【出願日】2020-07-13
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】598064912
【氏名又は名称】桜井 博
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】弁理士法人小竹アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】桜井 博
【審査官】竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103266769(CN,A)
【文献】米国特許第06076318(US,A)
【文献】特公昭30-006680(JP,B1)
【文献】特開2006-230210(JP,A)
【文献】特開2011-078401(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101261082(CN,A)
【文献】中国実用新案第210802034(CN,U)
【文献】中国実用新案第211552449(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性を有する構成部材を複数組み付けて構成されるドーム状の天井部分の基礎構造体であって、
前記構成部材のそれぞれは、組み付けた状態で前記天井部分の外側を向く六角形状の外面と、組み付けた状態で前記天井部分の内側を向くと共に前記外面よりも小さな六角形状の内面と、前記外面の周縁と前記内面の周縁とに連接し、前記外面から前記内面に向かうにつれて傾斜した
6つの側面とを有
し、更に6つの角部を有する平板状の部材であり、
前記構成部材のうちの隣接する3つの構成部材は、前記側面同士が対峙するように組み付けられることで、前記隣接する3つの構成部材の有する角部が3つ合わさって、前記角部において有する前記外面と前記側面とに開口した弧状の溝部により環状の溝部が形成されていると共に、前記環状の溝部にリング状の連結部材が圧入されて、前記隣接する3つの構成部材が前記外面側で連結されていることを特徴とする食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体。
【請求項2】
前記隣接する構成部材の間に目地が介在していることを特徴とする請求項1に記載の食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体。
【請求項3】
前記構成部材の内面に有底の孔部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体。
【請求項4】
耐熱性を有する構成部材を複数組み付けて構成されるドーム状の天井部分の基礎構造体の構築方法であって、
前記構成部材として、組み付けた状態で前記天井部分の外側を向く六角形状の外面と、組み付けた状態で前記天井部分の内側を向くと共に前記外面よりも小さな六角形状の内面と、前記外面の周縁と前記内面の周縁とに連接し、前記外面から前記内面に向かうにつれて傾斜した
6つの側面とを
有し、更に6つの角部を有する平板状の部材が用いられ、
前記構成部材のうちの隣接する3つの構成部材を、前記側面同士が対峙するように組み付けることで、前記隣接する3つの構成部材の有する角部が3つ合わさって、前記角部において有する前記外面と前記側面とに開口した弧状の溝部により環状の溝部を形成し、前記環状の溝部にリング状の連結部材を圧入して、前記隣接する3つの構成部材を前記外面側で連結することによりドーム状の天井部分の基礎構造体を構築することを特徴とする食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーム状の天井部分を有するピザ窯等の食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体及び前記天井部分の基礎構造体を構築するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示されるアーチ状の天井部分を有する石窯は、前記天井部分の基礎構造体について、複数の耐火ブロックをアーチ状に組み上げて構築するときに、天井部分の内面側から外面側にかけての厚みを有する略台形の柱状の耐火ブロックを複数組み上げ、これらの耐火ブロックの自重を利用するようになっている。このように耐火ブロックの自重を利用することは、耐火レンガによりピザ窯の天井部分の基礎構造体を略半球のドーム状に組み上げる場合にも行われる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示される石窯のようにアーチ状の天井部分の基礎構造体を構築するために耐火ブロックや耐火レンガの自重を利用する方法では、各耐火ブロックや耐火レンガの厚みを上述するように厚くしなければならないので、窯全体の重さも大きくなるという不具合を有する。また、耐火ブロックや耐火レンガを組み上げてアーチ状やドーム状の天井部分の基礎構造体を構築するには熟練した技能を必要とするので、一般人には窯の天井部分の基礎構造体の構築作業を行うことが容易でなかった。
【0005】
しかも、上記特許文献1に示される石窯は、耐火ブロックを必要なときに組み付けて天井部分の基礎構造体を構築することを目的としていることから、天井部分の基礎構造体の耐火ブロック同士は連結手段等で固定されていない。このため、特許文献1の石窯の天井部分に物等が不用意に当たれば耐火ブロックが崩れるおそれがある。また、特許文献1の石窯の天井部分の基礎構造体を移動させることも困難であるので、天井部分の基礎構造体の構築を、石窯の設置場所でしなければならないという不具合も有する。
【0006】
そこで、本発明は、ドーム状の天井部分の基礎構造体でありながら、軽量で強度も有し、更に運搬性を備えた食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体、並びに、前記食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体を構築するための方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体は、耐熱性を有する構成部材を複数組み付けて構成されるドーム状の天井部分の基礎構造体であって、前記構成部材のそれぞれは、組み付けた状態で前記天井部分の外側を向く六角形状の外面と、組み付けた状態で前記天井部分の内側を向くと共に前記外面よりも小さな六角形状の内面と、前記外面の周縁と前記内面の周縁とに連接し、前記外面から前記内面に向かうにつれて傾斜した6つの側面とを有し、更に6つの角部を有する平板状の部材であり、前記構成部材のうちの隣接する3つの構成部材は、前記側面同士が対峙するように組み付けられることで、前記隣接する3つの構成部材の有する角部が3つ合わさって、前記角部において有する前記外面と前記側面とに開口した弧状の溝部により環状の溝部が形成されていると共に、前記環状の溝部にリング状の連結部材が圧入されて、前記隣接する3つの構成部材が前記外面側で連結されていることを特徴としている。食品加熱用窯は、例えばピザ窯である。耐熱性を有する構成部材は、例えば耐火レンガである。基礎構造体を構築する作業の台への当接面積を増やして、基礎構造体の台の上での安定を得るために、外面及び内面が六角形状の構成部材と合わせて、最も下端の環状部となるように、前記構成部材の半分の補助的な構成部材も用いるようにしても良い。
【0008】
これにより、食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体は、平板状の構成部材で形成されているので、自重を利用して厚みのある耐熱部材を積み重ねる構成とする場合よりも軽量化が図られている。そして、食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体の各構成部材は、隣接する3つの構成部材が側面同士が対峙するように組み付けられることで、隣接する3つの構成部材の有する角部が3つ合わさって、角部において有する外面と側面とに開口した弧状の溝部により環状の溝部が形成されて、環状の溝部にリング状の連結部材が圧入されることにより、隣接する3つの構成部材が外面側で連結されるので、構成部材を組み付けて基礎構造体とした状態から崩れるおそれがないため、食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体を構築した後に当該基礎構造体を運搬することが可能である。
【0009】
請求項2では、食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体は、前記隣接する構成部材の間に目地が介在していることを特徴としている。これにより、隣接する構成部材の形状が同形状でなく寸法に多少の差異があっても目地によりその寸法の差異を吸収して構成部材同士を組み付けることが可能となる。
【0010】
請求項3では、食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体は、前記構成部材の内面に有底の孔部が形成されていることを特徴としている。構成部材の内面に有底の孔部を形成したことにより、構成部材を組み上げて天井部分の基礎構造体を構築したときに、天井部分の内面の総面積が多くなるので、食品加熱用窯の加熱性能、保熱性能が高まる。
【0011】
そして、この発明の食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体の構築方法は、耐熱性を有する構成部材を複数組み付けて構成されるドーム状の天井部分の基礎構造体の構築方法であって、前記構成部材として、組み付けた状態で前記天井部分の外側を向く六角形状の外面と、組み付けた状態で前記天井部分の内側を向くと共に前記外面よりも小さな六角形状の内面と、前記外面の周縁と前記内面の周縁とに連接し、前記外面から前記内面に向かうにつれて傾斜した6つの側面とを有し、更に6つの角部を有する平板状の部材が用いられ、前記構成部材のうちの隣接する3つの構成部材を、前記側面同士が対峙するように組み付けることで、前記隣接する3つの構成部材の有する角部が3つ合わさって、前記角部において有する前記外面と前記側面とに開口した弧状の溝部により環状の溝部を形成し、前記環状の溝部にリング状の連結部材を圧入して、前記隣接する3つの構成部材を前記外面側で連結することによりドーム状の天井部分の基礎構造体を構築することを特徴としている。これにより、食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体をドーム状に構築する作業を、熟練した者でなくても簡易に行うことが可能となる。そして、食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体の各構成部材のうち、隣接する3つの構成部材が側面同士が対峙するように組み付けられることで、隣接する3つの構成部材の有する角部が3つ合わさって、角部において有する外面と側面とに開口した弧状の溝部により環状の溝部が形成されて、環状の溝部にリング状の連結部材が圧入されることにより、隣接する3つの構成部材が外面側で連結されるので、構成部材を組み付けて基礎構造体とした状態から崩れるおそれがないため、食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体を構築した後に当該基礎構造体を運搬することが可能である。
【発明の効果】
【0012】
以上に述べたように、請求項1から請求項4に係る発明によれば、食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体は、平板状の構成部材を組み上げて構築されているので、自重を利用した厚みのある耐熱部材を組み上げる場合よりも軽量化を図ることができる。また、請求項1から請求項4に係る発明によれば、食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体の各構成部材は、隣接する3つの構成部材が側面同士が対峙するように組み付けられることで、隣接する3つの構成部材の有する角部が3つ合わさって、角部において有する外面と側面とに開口した弧状の溝部により環状の溝部が形成されて、環状の溝部にリング状の連結部材が圧入されることにより、隣接する3つの構成部材が外面側で連結されるので、構成部材を組み上げて基礎構造体とした状態から崩れるおそれがないため、食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体とした後に当該基礎構造体を運搬することが可能である。したがって、基礎構造体を組み上げた後、食品加熱用窯を設置する場所に基礎構造体を運搬することができ、必ずしも食品加熱用窯を設置する場所で基礎構造体を組み上げる必要性がなくなる。
【0013】
特に請求項2に係る発明によれば、隣接する構成部材の形状が同形状でなく寸法に多少の差異があっても目地によりその寸法の差異を吸収して構成部材同士を組み付けることが可能となる。
【0014】
特に請求項3に係る発明によれば、構成部材の内面に有底の孔部を形成したことにより、構成部材を組み上げて天井部分の基礎構造体を構築したときに、天井部分の内面の総面積が多くなるので、食品加熱用窯の加熱性能、保熱性能を高めることが可能となる。
【0015】
特に請求項4に係る発明によれば、食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体をドーム状に構築する作業を、熟練した者でなくても簡易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体を構築するための構成部材の形状を示した説明図であり、(a)は構成部材の外面側を示した説明図、(b)は構成部材の側面側を示した説明図、(c)は構成部材の内面側を示した説明図である。
【
図2】
図2は、食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体を構築するための
図1の構成部材に対し補助的に用いられる補助的構成部材の形状を示した説明図であり、(a)は補助的構成部材の外面側を示した説明図、(b)は補助的構成部材の側面側を示した説明図、(c)は補助的構成部材の内面側を示した説明図である。
【
図3】
図3は、構成部材及び補助的構成部材により食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体をドーム状に組み上げるための型枠部材を示した説明図である。
【
図4】
図4は、型枠部材を利用して構成部材及び補助的構成部材を組み上げる工程の途中段階を模式的に示した説明図である。
【
図5】
図5は、構成部材同士を連結する連結手段の構成を示した拡大図である。
【
図6】
図6は、食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体が組み付けられた状態(まだ型枠部材がある状態)を外側から示した説明図である。
【
図7】
図7は、食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体が組み付けられた状態(型枠部材が外された状態)を示す概略断面図である。
【
図8】
図8は、組み付けられた食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体をパレットの上に構成された食品加熱用窯の床部分に載せる工程を示す説明図である。
【
図9】
図9は、組み付けられた食品加熱用窯の天井部分の基礎構造体をパレットに固定する工程の一例を示す説明図である。
【
図10】
図10は、この発明の基礎構造体が適用された食品加熱用窯の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0018】
図10において、食品加熱用窯(以下、窯と略する。)1の完成した状態の一例が示され、
図6、
図7において、窯1の天井部分の基礎構造体(以下、基礎構造体と略する。)10の完成した状態の一例が示されている。そして、
図1において、基礎構造体10を主に構成する構成部材20が単体にて示され、
図2において、基礎構造体10を補助的に構成する補助的構成部材30が単体にて示されている。
【0019】
図1に示される構成部材20は、この実施形態では、窯1に入れられた燃料の発する熱(例えば200℃から300℃の熱)に耐えられる耐熱性を有する部材として耐火レンガが採択されている。
図6、
図7に示されるように、複数の構成部材20のそれぞれは、基本的に同じ寸法のものが用いられている。
【0020】
構成部材20は、基礎構造体10を組み付けた状態で基礎構造体10の天井部分の外側を向く正六角形状の外面20aと、基礎構造体10を組み付けた状態で基礎構造体10の天井部分の内側を向くと共に外面20aよりも小さな正六角形状の内面20bと、外面20aの周縁と内面20bの周縁とに連接し、外面20aから内面20bに向かうにつれて傾斜した
6つの台形状の側面20cとを有した平板状をなしている。外面20a、内面20b、側面20cのそれぞれは、基本的には全体的に見て平らな面となっている。但し、耐火レンガであることから、外面20a、内面20b、側面20cに多少の凹凸を有していたり、若干において曲面状となっていたりしても許容される。また、側面20cの傾斜は、基礎構造体10を、外面が略半球形状のドーム状に組み付けたときに、
図4に示されるように、基礎構造体10の中心Pに向かって延びる一点鎖線の直線Lに沿うように設定されている。
【0021】
構成部材20は、隣接する構成部材20若しくは下記する隣接する補助的構成部材30との連結手段として、各角部において
図1(a)、(b)に示されるように、外面20aと側面20cとに開口した弧状の溝部21を有する。各構成部材20の溝部21は、この実施形態では、隣り合う3つの構成部材20、20について、
図5に示されるように、一の構成部材20の側面20cと他の構成部材20の側面20cとが対峙し、且つ、必要に応じて間に目地40が介在した状態で、配置した場合に、3つの角部が合わさった点を正面から見て、略円形の環状の溝部Aが形成可能になっている。そして、各溝部21の深度は、3つの構成部材20、20、20が相互に斜めの状態にて組み付けられても、3つの構成部材20、20、20の組み付けで構成される前記溝部Aに前記連結部材Bを装着することができるような寸法が設定されている。連結部材Bは、溝部Aに圧入されるので、溝部Aから容易に外れることがない。
【0022】
また、構成部材20は、
図1(c)に示されるように、内面20bに開口した有底の孔部22が形成されている。この実施例では、孔部22は、内面20bの中心に円形状に開口しているが、構成部材20の強度を維持することが可能であれば、必ずしも内面20bの中心に開口していなくても良く、孔部22の開口の形状も円形状でなくても良い。構成部材20に、このように内面20bに開口した孔部22を設けることにより、構成部材20を組み付けて基礎構造体10を構築したときに、天井部分の基礎構造体10の内面全体の面積を、孔部22を有しない場合に比し大きくすることが可能である。これにより、窯1内の保熱を高めることができ、ピザ等の食品をより少ない燃料で加熱することが可能となる。
【0023】
補助的構成部材30は、この実施形態では、構成部材20を組み付けて基礎構造体10を構築するにあたって、構成部材20の6つの角部のうち2つの角部が上下に位置するかたちで組み付ける場合に、基礎構造体10の最も下側の環状部分を構成するために補助的に用いられている。補助的構成部材30は、
図2に示されるように、
図1に示される構成部材20を半分に切った状態の平板状の形状となっている。
【0024】
すなわち、補助的構成部材30は、基礎構造体10を組み付けた状態で基礎構造体10の天井部分の外側を向く、構成部材20の外面20aの1/2の五角形状の外面30aと、基礎構造体10を組み付けた状態で基礎構造体10の天井部分の内側を向くと共に外面20aよりも小さな、構成部材20の内面20bの1/2の五角形状の内面30bとを有する。
【0025】
補助的構成部材30の側面30c、30c’、30dのうち、構成部材20の側面20cと対峙する側面30cは、構成部材20の側面20cと同様の形状、角度にて傾斜した傾斜面となっている。補助的構成部材30同士で対峙する側面30c’は、構成部材20の側面20cと同様の角度にて傾斜しつつ、その形状は構成部材20の側面20cの1/2の大きさとなっている。基礎構造体10を構築したときに補助的構成部材30の下方となる側面30dは、傾斜しておらず、台100の平な上面にガタツキなく当接することが可能な平な面となっている。これに伴い、側面30c、30c’の傾斜は、構成部材20の側面20cと同様に、基礎構造体10を、外面が略半球形状のドーム状に組み付けたときに、基礎構造体10の中心Pに向かって延びる一点鎖線の直線Lと同様の直線(図示せず。)に沿うように設定されている。
【0026】
補助的構成部材30の3つの角部に形成された溝部31は、構成部材20の溝部21と同様の形状をしている。すなわち、各補助的構成部材30の溝部31は、この実施形態では、隣り合う3つの構成部材20、30(補助的構成部材30が2つの場合と補助的構成部材30が1つの場合とがあり。)について、
図5に示されるように、構成部材20の側面20cと補助的構成部材30の側面30c、並びに、補助的構成部材30の側面30c’同士も対峙し、且つ、必要に応じて間に目地40が介在した状態で、配置した場合に、3つの角部が合わさった点を正面から見て、略円環状の溝部A’が形成可能になっている。補助的構成部材30の内面に形成された孔部32は、補助的構成部材30が構成部材20を半分にした形状となっていることに伴い、前述した構成部材20の孔部22の半分の形状となっている。
【0027】
上記した構成部材20及び補助的構成部材30を組み付けて基礎構造体10を構築する方法の一例について、
図3から
図7を用いて説明する。
【0028】
まず、
図3に示されるように、作業台等の上面が平な台100に外形状が半球状(この実施例では内部が空洞)の型枠部材101を置く。型枠部材101は、木材等で成る線状部材を複数組み合わせることで、外形状が網状の半球形状等のものとしても良い。
【0029】
次に、
図4に示されるように、型枠部材101の外周縁部の全周にわたって、補助的構成部材30を環状に配置した後、構成部材20を、型枠部材101の天井側に向けて適宜に組み付けていく。このとき、この実施形態では、
図5に示されるように、対峙する位置にある補助的構成部材30の側面30c’と補助的構成部材30の側面30c’との間、対峙する位置にある補助的構成部材30の側面30cと構成部材20の側面20cとの間、並びに、対峙する位置にある構成部材20の側面30cと構成部材20の側面20cとの間に目地40を介在させる。このように目地40を介在させることにより、構成部材20、30の形状に寸法誤差が生じても、構成部材20、30を適宜に組み付けていくことが可能となる。もっとも、構成部材20、30間に目地40を介在させる場合には、
図5に示されるように、溝部21、21、21で円形のリング状の連結部材Bが挿入可能な略円形の環状の溝部Aが形成され、溝部21、溝部31、31或いは溝部21、21、溝部31で円形のリング状の連結部材Bが挿入可能な略円形の環状の溝部A’が形成されるように、目地40の幅等を調整する。
【0030】
そして、溝部A、溝部A’に円形のリング状の連結部材Bを圧入し、更にモルタル等を溝部A、A’に満たすことで、補助的構成部材30、30同士、補助的構成部材30と構成部材20、構成部材20、構成部材20同士が連結されて、
図6、
図7に示されるように、一体化されたドーム状の基礎構造体10が構築される。
【0031】
次に、基礎構造体10を用いて窯1を構築する方法の一例について、
図8から
図10を用いて説明する。
【0032】
図8に示されるように、パレット2の上に断熱材で成る層状部材3を配置した後、更に層状部材3の上に耐火レンガ等の耐熱部材4を配置して、窯1の基部及び基礎構造体10の底部分を形成しておく。このとき、耐熱部材4及び層状部材3は、基礎構造体10の底部の面積と略同じ上面の形状(面積)を有し、更に、耐熱部材4及び層状部材3の周囲にはパレット2の外面が表出した状態になっている。
【0033】
そして、
図8に示されるように、型枠部材101から外した基礎構造体10を作業台等の台100から移動させて、耐熱部材4の上に載せる。このとき、ピザ等の食品を窯1から出し入れする出入口5や、窯1内の熱等を排出するための煙突6を設けるために、構成部材20の一部を基礎構造体10から取り外す作業も合わせて行ってもよい。
【0034】
更に、
図9に示されるように、基礎構造体10の外面に複数の円状の外装リング102(この実施形態では、最も大径の外装リング102a、外装リング102aよりも小径の外装リング102b、最も小径の外装リング102cの3つ)を装着する。これら外装リング102は、基礎構造体10をパレット2に固定するためのワイヤ104を通すことができる挿通部103が形成されている。この実施形態では、ワイヤ104を、基礎構造体10のドームの上側中心を通り且つ外装リング102a、外装リング102b、外装リング102cの挿通部103を2回通すと共に、その両端を、パレット2に打ち付けられた頭部を有する固定具105の頭部に巻き付ける等して、ワイヤ104で基礎構造体10がパレット2に固定された状態としている。もっとも、基礎構造体10をパレット2に固定する方法は、
図9に示される固定方法に限定されることはない。
【0035】
最後に、
図10に示されるように、基礎構造体10の外面に、基礎構造体10内の熱が外部に逃げないように、外層部7を設けつつ、エントツ6を設けたり、出入口5の更に外側に、アーチ状の出入り部8を設けたりすることで、窯1が出来上がる。
【0036】
なお、構成部材20や構成部材30の大きさや数は、構築する窯1の大きさに合わせて調整されるので、構成部材20、構成部材30の大きさや数は示さない。もっとも、窯1の軽量化の観点から、構成部材20の厚み(構成部材20の側面20cの短手方向の寸法)は、
図1に示されるように、構成部材20の内面20bの対向する角間となる全長よりも小さいことが望ましい。
【符号の説明】
【0037】
1 食品加熱用窯
10 基礎構造体
20 構成部材
20a 構成部材の外面
20b 構成部材の内面
20c 構成部材の側面
21 溝部(連結手段)
40 目地
101 型枠部材
A 溝部(連結手段)
B リング状の連結部材(連結手段)